2020年 02月18日 (火) 18:46
どこかの貴族家の幼女Aのお話です。幼女Aは気に入ってたので、同名の別人かもしれない形でよろしければ、どうぞ。どこかの短編の続編として投稿は致しません。
あくまで、こちらまで見に来てくださった読者様へのお礼SSです。例の覚悟完了令嬢を気に入られた方、蛇足でも読みたい勢の方、幸せになって欲しい方のみお読みください。
m(_ _)m
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【アーシャベルと不機嫌なくまさん】
よく晴れた朝のことだ。とある高位貴族の子供部屋で、末娘のアーシャベルが、しきりに首をかしげていた。目の前の棚には、テディベアがズラリと並んでいる。彼女の腕にもまた、くまのぬいぐるみが抱かれていた。
「アーシャベル様、どうかなさいましたか?」
乳母が優しく声をかけた。アーシャベルが振り返る。言おうかどうかモジモジ迷った彼女は、乳母へそうっと問いかけた。
「……アーシャをわらわない?」
「はい」
「しんじてくれる?」
「はい」
「くまさんが、ふえてるの」
「まあ」
「それでね、夜のあいだにね、いっしょに寝ていたくまさんと、新しいくまさんが、いれかわったみたいなの。どうしてかしら?」
うつむいた乳母が、可笑しそうにクスクス笑う。真剣に悩んでいたアーシャベルは、ぷくりと頬を膨らませた。
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幼いアーシャベルは、少女型のお人形が苦手であった。
苦手だとわかったのは、今年のお誕生日のことである。アーシャベルは姉から女の子のお人形を差し出された。人形職人が仕上げた素晴らしい一品だ。造形が生々しく、ふっくらした唇がわずかに開いていて、奥には歯が覗いていた。アーシャベルと同じ緑色の瞳。人形が彼女を、じっと凝視してくる。
出来が良すぎた人形に、アーシャベルは辛うじて悲鳴を飲み込んだ。
『かわ……かわいい、わ。ありがとう、おねえさま』
ニコリ。どうにか笑った。
震える手で恐る恐る贈り物を受け取ろうとしたときだ。人形が姉の背中へ素早く隠される。美しい銀髪を靡かせた姉は、サッとどこかへ行ってしまった。
目を丸くしたアーシャベルが、止める暇などない素早さだった。
その日のうちに、アーシャベルは姉からテディベアを貰った。あの人形は、お店の人が間違えてしまった物で、急いで交換してきたという。
贈り物のぬいぐるみを、アーシャベルは喜んで受け取った。
嬉しくて、毎夜、ぬいぐるみをベッドへ持ち込み、一緒に眠った。
ある日、何故かくまが一匹増えていた。数日後、オヤツを食べて部屋へ戻ると、また一匹増えていた。くまは仲間を呼び寄せて、棚がズラリとくまで埋まった。
ついに満員になった時、大喜びで家族へ報告しに行った。廊下を歩いていたアーシャベルは、父が誰かへ話す声を聞いた気がした。
『いいかい。もう買い与えては駄目だよ。気持ちはわかるが、棚だって一杯だし、ものには限度というものがだね……』
その日をさかいに、くまは仲間を呼ばなくなった。棚一杯まで増えたから、きっと寂しくなくなったのだろう。どのくまと眠るか選ぶのが、アーシャベルの楽しみになっていた。
先月、一匹のくまと共にベッドへ潜り込んだアーシャベル。彼女の元へ、姉がおやすみを言いにきた。退室間際、ふと姉が棚へ顔を向けた。添い寝担当くまの不在によってできた、一匹分の空間。姉がその空間を食い入るように見つめているのを、アーシャベルは気付かなかった。
□
膨れっ面のアーシャベルは、くまをギュッと抱き締めた。昨夜の添い寝担当くまと、いつの間にかすりかわっていた、新参者のぬいぐるみだ。
ルーキーくまは、素人が作ったらしく、残念な代物である。目玉の位置が悪いのか、ムスッと不機嫌そうな面構えだ。
「ひどいわ。わらわないって言ったのに」
「申し訳ございません。おゆるし下さいませ、アーシャベル様」
「うん。いいよ」
こくっと頷いたアーシャベルへ、乳母が穏やかに提案した。
「そうですわ。お姉様へお尋ねになってはいかがでございましょうか?」
「そうね。おねえさまなら、なんでもしってるもの」
廊下へ出たアーシャベルは、姉の部屋へ向かった。腕には、まだくまを抱いている。扉の前まで近づくと、中から母の声が微かに聞こえた。
「ふふっ、こんどはウサギをあげたいの? それでは型紙を探してみましょうね。あとは色を決めて……」
母がいるなら、ちょうどいい。二人に尋ねてみたら、きっと何かわかるだろう。
アーシャベルと不機嫌なくまは、意気揚々と姉の部屋へ入っていった。
(了)
本編がアーシャに厳しかったので、ほのぼのしたSSにさせていただきました。
(*´ー`*)
喜んでいただけたなら、書いた甲斐がございます。
アーシャのぬいぐるみ(手作り)が増えて、パパ殿が苦笑いしそうですね。
(・(ェ)・)(・(ェ)・) ̄(=∵=) ̄