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男性は昨年から、岸田首相のほか、安倍元首相などの偽動画を制作・投稿し始めた。理由について、「総理大臣は、誰でも知っている象徴的な存在だから、注目を集めやすい」と説明。「混乱させる意図はなく、『笑ってほしい』という目的で作った。風刺のようなもの」とした。
日本テレビは「日本テレビの放送、番組ロゴをこのようなフェイク動画に悪用されたことは、到底許すことはできない」として、必要に応じてしかるべき対応をとるとしている。
名誉棄損の恐れ
著作権法30条の4では、著作物をAIに無断で学習させることを原則的に認めており、権利者側から批判が上がっている。大量のデータを学習した生成AIを悪用し、容易に偽情報を作り出すことができるようになり、社会の混乱を招くことが懸念されている。不名誉な発言をさせた動画を拡散すれば、名誉
生成AIを使った偽動画に詳しい東京工業大の笹原和俊准教授(計算社会科学)は、今回のケースについて、「ニュース番組を装ってSNSに投稿したことでより多くの人の注目を集めて拡散されてしまった。偽動画の内容によっては、社会を混乱させる恐れがある」と指摘する。
その上で、「動画は、文字で書かれたものよりも五感に訴えるため、より直接的にネガティブなイメージを植え付けてしまう。印象操作という点で悪質だ」と批判。「生成AIの急速な発展に受け手のリテラシー教育が追いついていないのが現状で、まずは拡散の舞台であるプラットフォーム側への対策が必要だ」としている。
「社会を分断」海外で問題化
海外では、著名な政治家の偽動画や偽画像が問題になるケースが相次いでいる。総務省は今年の情報通信白書でこういった海外事例を紹介し、「偽・誤情報の流通により社会の分断が生じ、民主主義の危機につながるおそれがある」と指摘している。
同省の調査によると、2021年、欧州の議員が、ロシアの議員の偽動画と気づかずにビデオ電話会議を実施。ロシアによるウクライナ侵略では、ゼレンスキー大統領が国民に投降を呼びかける偽動画が動画投稿サイトなどに投稿された。
米国では今年に入ってから、バイデン大統領が第3次世界大戦の開始を告げるAI偽動画が政治活動家によって作成され、拡散した。また、トランプ前大統領が逮捕されるAI偽画像がX(旧ツイッター)上で拡散された例もあった。
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