刀剣の豆知識

日本刀の持ち方と構え方 - ホームメイト

文字サイズ
日本刀の操作で最も大切なことのひとつが、その持ち方です。正確な方法で持つことによって安全に刀を扱えるだけでなく、刀の持つ威力を存分に発揮することにも繋がります。そして、もうひとつ大切なのが構え方。時代や剣術の流派、対戦相手によって異なりますが、よく知られているのは「五行の構え」(ごぎょうのかまえ)と称される方法です。日本刀を正しく扱うために、刀の基本的な持ち方と、日本刀の代表的な構え方である五行の構えについて詳しく解説します。

日本刀の構造と名称

日本刀の持ち方と構え方の所作をスムーズに行うためには、刀の各部位について知っておくことが大切です。刀を持つときや構えるときに必要な部位の名称と役割などについて、「刀身」(とうしん:刀の本体にあたる部分)と「」(こしらえ:刀における外装全般を指す。[刀装:とうそう]とも呼ばれる)に分けてご説明します。

刀身の各部名称

刀身の各部名称

刀身の各部名称

上身(かみ)

刀身の中でも「」に収める部分。

鋒/切先(きっさき)

刀身の先端部分のこと。流派や時代によって特長があり、刀工の個性が顕著に現れる部位でもあるため、日本刀鑑賞における大きなポイントのひとつになっている。

茎(なかご)

刀身の「」(つか:手で握る部位)に収まる部分。などが切られる部位であり、所持者の身長などに合わせて磨上げる(すりあげる)際には、この茎部分を短く詰める。

物打(ものうち)

刀身において、鋒/切先から3寸(約9cm)ほどのところにある部分。最も良く切れる部位であるとされ、切る際には主にこの部分を用いる。

拵の各部名称

拵の各部名称

拵の各部名称

鞘(さや)

埃や雨露などから保護するために、刀身を収めておく刀装具。

鯉口(こいくち)

鞘の入口部分。鯉の口が開いたような形状になっていることから、この名称が付けられている。動物の角で作られた物が多い。

柄(つか)

日本刀を手で握る部分。「鮫皮」(さめがわ)と呼ばれるエイの皮を巻き付けた上に黒漆を塗り、革緒などで巻き締めた物が多く見られるが、金や銅、錦などを用いて作られた物もある。

柄頭(つかがしら)

柄を補強するため、その先端部分に装着された金具。単に「頭」(かしら)と呼ばれることもある。

鍔(つば)

刀身と柄の間にある刀装具。柄を握る手の保護や、刀全体の重心を調節するために取り付けられている。

鎺(はばき)

と刀身が接するところに嵌める(はめる)金具。鞘から刀身を抜け落ちにくくするだけでなく、鞘の中で刀身が浮かぶ状態にして、鞘に刀身が触れるのを防ぐ役割がある。

日本刀の抜刀と納刀

日本刀の持ち方や構え方について知る前に理解しておきたいのが、鞘から刀身を抜く「抜刀」(ばっとう)、同じく鞘に収める「納刀」(のうとう)の方法です。両者を正しく行うことで、一連の所作を美しく見せることができます。

抜刀の方法

抜刀は、鞘から刀身を抜く右手の所作のみに注目してしまいがちですが、同様に大切なのが鞘を掴んでいる左手での所作です。

抜刀の際にまず行うのが、左手で「鯉口を切る」こと。これは、鎺を左手の親指で柄の方向に押し出す所作を指します。

その後、右手を柄に掛け、刀身を物打辺りまで鞘から抜くのです。抜いている刀身が鋒/切先まで来たら、鞘を水平にして左手で後ろへ引き、右手で一気に刀身を抜くのが、抜刀の基本的な手順となっています。

納刀の方法

納刀

納刀

納刀は、刀の抜き方と逆の流れで行います。まずは、あまり力を入れずに左手で鞘を掴んで固定しますが、右手で持つ刀の刃は上に向けておくようにしましょう。

鞘にある鯉口の少し下を左手で握り、刀の鋒/切先を鯉口に乗せます。その後、鞘が水平になるように左手首を少し持ち上げ、鋒/切先が鯉口の中に入ったら右手の力を抜いて、滑らせるように刀身を鞘へ収めるのが基本的な方法です。

日本刀の持ち方と注意点

日本刀の基本的な持ち方

刀は両手を使って、斜め上から軽く押さえるようなイメージで握るのが基本。左手は柄頭から5cmほど離れたところに、右手は鍔の下ギリギリに置き、親指と人差し指で柄を挟んで持ちます。

このとき、刀身の「」(むね:刃の反対側にある背の部分。別称[峰:みね])の延長線上に、両手の親指と人差し指の中間点を乗せるようにしましょう。また、右手の人差し指は鍔に触れますが、親指は鍔に触れないようにして握ることが大切です。

日本刀を持つときの注意点

刀を持つ際にまず注意したいのが、指の力加減です。親指と人差し指は握る力が強いため、さほど力を入れる必要はありません。逆に強く力を入れる意識は小指と薬指に向けるようにし、中指は親指と人差し指、及び小指と薬指の中間ぐらいの力加減が適切です。

柄に対して直角に持つことも、握り方における間違った例のひとつ。30°~45°程度の角度で、やや斜め上の方向にして持ちます。

この他に注意したいのが、柄を握る手首の状態。手首を真っ直ぐにしておくと状況に合わせて手の関節を動かすことが難しくなるため、手首は軽く折るようにしましょう。

日本刀の構え方 「五行の構え」を徹底解説

五行の構えとは

日本刀における「五行の構え」は、①「中段の構え」(ちゅうだんのかまえ)、②「上段の構え」(じょうだんのかまえ)、③「下段の構え」(げだんのかまえ)、④「八相/八双の構え」(はっそうのかまえ)、⑤「脇構え」(わきがまえ)という5種類ある構え方の総称です。

これらは戦国時代に考案された、武士が甲冑(鎧兜)を着用して真剣を用いる剣術「介者剣法」(かいしゃけんぽう:別称[介者剣術])の名残だと言われており、現代において五行の構えは、剣道や「なぎなた」の競技にも使用されています。

  1. 中段の構え(水の構え、正眼/青眼[せいがん]の構え)

  2. 構え方
    中段の構え

    中段の構え

    正中線(せいちゅうせん:体の前面中央を頭から真っ直ぐ縦に通る線)に沿うように、体の真正面に刀を構える。

    このとき、左手は丹田(たんでん:おへその少し下)に来るようして、鋒/切先は相手の喉元の高さに向ける。

    メリット

    甲冑(鎧兜)を着ていても構えやすく、他の構えにもスムーズに移行できる。

    デメリット

    前面に一定のスペースが必要なため、障害物が多くある場所や、乱戦になった場合などは、構えたまま振り向くとぶつかってしまう危険性がある。

  3. 上段の構え(火の構え、天の構え)

  4. 構え方
    上段の構え

    上段の構え

    刀を頭上に振りかぶった状態で構え、左手はおでこから拳1個分ぐらい空けたところに置く。

    メリット

    そのまま振り下ろす動作だけで相手を切れるため、最速で攻撃することが可能。また、刀の長さ(リーチ)を最も活かせる構えだとも言える。

    デメリット

    攻撃的な構えではあるが、構えている間は首から下が空く状態になるため、防御には向いていない。

  5. 下段の構え(土の構え、地の構え)

  6. 構え方

    刀の鋒/切先を水平より少し下げた低い位置(目安は相手の足元)に付ける。

    メリット

    中段や上段の構えに比べると、体力の消耗が抑えられる。また、スペースを省けるため、素早く振り向くことが可能。

    デメリット

    上半身に対する防御力が低い。また、機敏に動くことが難しいため、攻撃にはあまり向かない。

  7. 八相/八双の構え(木の構え、陰の構え)

  8. 構え方
    八相(八双)の構え

    八相(八双)の構え

    左足を前に出し、刀を右側に寄せる。このとき、右手は右のこめかみの辺りから拳1個分ほど空けたところに置く。

    刀身は垂直に立てて刃は相手のほうに向け、鍔が口元辺りに来るようにする。

    上段の構えを変形させた構え方だと推測されており、装飾が施されたの着用時など、刀を振りかぶることが難しい場合に用いられる。

    メリット

    前腕を「八」の字に構えることで腕への負担が軽減され、体力の消耗が抑えられる。また、全方向の敵に素早く対応することが可能。

    デメリット

    構えていないほうの半身がガラ空きになる。

  9. 脇構え(金の構え、陽の構え)

  10. 構え方

    右足を引いて体を右斜めに向け、刀を右脇に取り、鋒/切先を後ろに隠すように下げて構える。刀は地面と水平にして柄を腰骨辺りに置く。

    メリット

    後ろから奇襲を受けた場合でも刀身をそのままにして、体のみで振り返るようにすることで、即座に下段の構えへ移行するなどして対応できる。

    手裏剣などの隠し武器を取り出すときにも、相手に発見されづらくなる。

    デメリット

    左半身に隙が生じて無防備になるため、相手の攻撃を誘いやすくなる。