世界を代表する歌姫、ホイットニー・ヒューストンさん(享年48)の急死の報は、驚愕を通り越して、茫然自失だった。その死因が正式発表されていないということもあり、薬物死や自殺説まで飛び交って、当面彼女のニュースがメディアを騒がせることだろう。ここ十数年の乱れた私生活が取り沙汰されるにつれ、どことなくマイケル・ジャクソン死亡時を思い起こさせる。
しかしホイットニーさんが不世出の偉大なシンガーであることは、動かし難い事実だ。叔母にディオンヌ・ワーウィック、母にゴスペル歌手シシー・ヒューストンを持ち、10代そこそこの頃から美貌と歌唱力で頭角を表してきた、いわば名サラブレッド。サンタナやジャニス・ジョプリンを見出した敏腕レコードマン、クライヴ・デイヴィスの肝いりでソロ・デビュー(84年)してからは、一気にスターダムに登りつめている。
お膳立てされたスター街道とはいえ、並外れた実力があったからこそ厳しい米ショウビズ界を制したのだ。全アルバム総売上枚数1億枚超、ビートルズの記録を破った7曲連続1位獲得、破格の「アイ・ウィル・オルウェイズ・ラヴ・ユー」メガ・ヒット…輝かしい記録の数々がその証左でもある。
その歯車が狂い出したのが、ボビー・ブラウンとの結婚(92年)から。映画「ボディガード」大ヒットの最中、しかもスター同士の結婚とあって、当時大いに世間を騒がせたが、ほどなくしてボビーのDVや薬物による数度にわたる逮捕、果てはホイットニーさん自身の薬物疑惑が浮上して、2000年代以降は私生活の話題ばかりがメディアに載ることに。
本人もコカインや大麻の使用、さらにはセックス依存症に至るまでを、一部のインタビューで認めており、ここ十数年は歌手としてのヒットはほぼ皆無という状態に陥っている。
09年の復帰作のプロモーションで米テレビ出演の際に、やつれ果てた容姿、挙動不審、ボロボロな歌唱が目撃されているが、薬物使用は死の直前まで途絶えていなかったのか?
スターでいることの重圧は知る由もないが、世界を舞台にする芸能界の光と影を短い間に体現したホイットニーさんは、死の間際に何を思ったのだろう。(音楽ジャーナリスト・KARL南澤)
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