国連「人類の進歩が5年後退」 新型コロナや気候変動、ウクライナ侵攻で

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新型コロナウイルス感染症のパンデミック、気候変動の悪化、ウクライナ侵攻といった世界的危機は教育、平均寿命、生活水準面での数十年にわたる人類の進歩を世界中で後退させ始めている。国連が8日に発表した報告書で警告している。

国連開発計画(UNDP)は、パンデミックを中心とする過去2年間に立て続けに起こった未曾有の危機により人類の進歩が5年後退したと述べた。

これは世界的な問題で、国連が設定した人間開発指数が過去2年間に10カ国中9カ国で後退したとUNDPは強調した。人間開発指数は各国の生活水準、教育水準、平均寿命などを幅広く測定し、国内総生産(GDP)などの経済的要素とともに豊かさを評価するものだ。

UNDPは2020年と2021年に指数が世界的に低下したと指摘し、30年以上前に指数調査を開始して以来、2年連続で同指数が低下したのは初めてという。

全体として、この2年間は5年間の進歩を消し去り、人間開発を2016年の水準に戻したとUNDPは述べている。

南米、カリブ海諸国、サハラ以南のアフリカ、南アジアは特に大きな打撃を受けており、一部の国は回復し始めたものの進展にはムラがあり、多くの国にとって危機はまだ深まっているとUNDPは警告している。

今年の指数ランキングではスイス、ノルウェー、アイスランドが上位を占め、米国は21位だった。ニジェール、チャド、南スーダンが最下位だ。

過去2年間は新型コロナの大流行が不安定要因となっていたが洪水、干ばつ、暴風雨などの異常気象や災害を発生させている気候変動の悪化がさらに不安定にしている。パンデミックによる混乱は広範囲におよび新型コロナウイルスによる死亡やその他の健康被害のために明らかに寿命に影響を与えただけでなく、学校や職場の閉鎖、広範囲にわたる経済封鎖も引き起こした。

一部の国を除いて平均寿命が短くなり、米国の平均寿命は2年連続で低下した。全米学力調査の報告書によると、休校やその他の混乱によって米国の読解レベルは20年前に押し戻された。また黒人、ヒスパニック、多民族の生徒は白人生徒よりも混乱の影響を受け、多くの学校が遠隔教育に移行したためにテクノロジーへのアクセスがさらなる格差の拡大を招いていることがデータで示されている。

報告書ではウクライナでの戦争の影響については詳しく述べられていないが「計り知れない人的被害」をもたらしていると指摘している。数値化すれば、その影響は相当なものになりそうだ。ロシアとウクライナはともに農業大国であり、穀物をはじめとする食料の主要輸出国だ。ロシアは世界有数の肥料輸出国でもある。戦争でこれらの供給が途絶え、食料価格が高騰し、多くの人々が飢餓に瀕している。ロシアは世界最大のエネルギー輸出国の一つでもあり、価格の高騰によりエネルギー危機を引き起こしている。

UNDPチーフのアヒム・シュタイナーはインタビューで「2022年の見通しは厳しい。深刻な混乱が起きており、それは何年にもわたるだろう」と語った。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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編集=木内涼子

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