私は「桃山商事」というユニットで、女性たちの恋バナに耳を傾け、そこから見える恋愛とジェンダーの問題をコラムやラジオで発信する活動を行っている。
現在38歳。私事で恐縮だが、2017年の元旦に結婚をし、現在は妻と二人で暮らしている。そんな自分に、「このままだと婚活が迷宮入りしそうだ」というウートピ編集部のY子さんが「結婚について考える企画をやってみませんか?」と声をかけてくれた。
普段は恋愛相談や失恋話ばかり聞いている桃山商事の清田が、自分自身の結婚についてはどう考え、どんな毎日を送っているかに興味を持ってくれたようで、あわよくば自身が結婚を考えるうえでのヒントにしたい、と。
今回はそのプロローグとして、Y子さんの力を借りながら自分の結婚観について考えてみた。
普段恋バナの相談に乗っている人の恋バナが聞きたい
清田:Y子さんは最初、「普段女性の恋愛相談に乗っている僕が結婚するまで(仮)」というテーマのエッセイ連載を提案してくれたんですよね。
Y子:はい。普段は相談を受ける側の清田さんに、自身の結婚について書いてもらったらおもしろい連載になるなって思ったんです。普段あれだけ恋愛の話を書いてるのに、自分の結婚生活についてはあまり語られていませんよね? それで、「YOUも結婚語りしちゃいなよ」的な。あとは個人的に、男性がどんなタイミングで結婚を意識するのか気になっておりまして。
清田:なんですかそれは(苦笑)。お話をもらって、自分なりにいろいろ考えました。桃山商事ではこれまで約1000人の恋バナを聞いてきましたが、中でも結婚にまつわるお悩みはかなり多い。たくさんの相談に耳を傾けてきたことで、自分の中に多種多様な学びが蓄積している実感があります。
実際に結婚できたのも桃山商事の活動あってこそだと感じています。ただ、いざエッセイにしようと思うと、何を書けばいいのかさっぱりわからなくなってしまい。
Y子:活動で得た「学び」の部分であったり、奥さまと結婚したいと思った理由であったり、まさにそういった部分に興味があります。
清田:う〜ん。ものすごくざっくり言うと「結婚に対する考え方が少しずつ変化していく中で、たまたま良い縁に恵まれ、結婚することができた」って感じになると思うんだけど、それを具体的な言葉にしていくためには、自分にとって結婚がどういうものなのかを今一度考えてみる必要があるなと感じまして……。
結婚が特権的なポジションなのはなぜ?
Y子:なるほど。いったん根本から考えてみるってことですね。
清田:自分の中には元々、「結婚という関係がなぜ特権的なポジションに位置づけられているのかわからない」という感覚があったんですね。というのも、僕は大学時代からずっとルームシェアをしていて、一人暮らしをしたことがない。
さらに、前に所属していた会社は大学のサークルをそのまま起業したものだし、桃山商事の活動も学生時代の友人たちと一緒にやっている。そういう中でパートナーシップや居場所の問題についてずっと考えてきた感覚があります。
Y子:結婚されたときもルームシェアをされていたんですよね。
清田:そうなんです。中学からの同級生で、桃山商事の活動も一緒にやっていた佐藤さんという男性と、当時はまだ恋人だった今の妻の3人で暮らしていました。ルームシェアと同棲が合体したような形ですね。
その前は高校や大学の同級生だったり、桃山商事のメンバーだったり、何度か相手が替わりながらずっとルームシェアをしていたんですが、僕としては“疑似家族”のような感覚がありました。
前に所属していたのは24歳のときに同級生5人で立ち上げた会社でちょっとした“運命共同体”みたいな感じがあったし、現在の桃山メンバーである森田とワッコには、ある種の“相方”みたいな感覚を抱いています。
Y子:清田さん、どんだけ友達に囲まれて暮らしてるんですか! 「一人じゃ暮せない病」とか……?
清田:ホントですね(笑)。まあ、こうやっていろんなパートナーシップがある中で、結婚というものが一番「親密なもの」とされているのはなぜなのか……。もちろん感覚的に違うことはわかるんだけど、そのあたりがまだうまく言葉にできない。
アクセス権を与え合うのがパートナーシップ?
Y子:確かに、具体的に何が違うんですかね。
清田:個人的には、パートナーシップを結ぶ=「アクセス権を互いに開放する」ってことなのかなと考えていて。
例えば桃山商事のパートナーだと、スケジュールや労力というものに関するアクセス権を開放し合ってる感覚がある。「この日空けといて」とか、「この作業をお願い」とか。もちろん無制限に開放してるわけじゃないけど、例えばユニット内で発生した仕事に謝礼が発生することはないでしょ。それって「共有財産」になってるからだと思うんですよ。
それが恋人同士だと「身体に関するアクセス権」を開放し合ってることになるのかもしれないし、通帳が一緒の夫婦は「財産に関するアクセス権」を共有しているのかもしれない。
Y子:なるほど。アクセス権を与え合うのがパートナーシップであり、関係性によって開放の度合いが変わる……と。そう考えると、私が結婚できない理由が何か見えてきました(苦笑)。私はアクセス権を他者に開放したくないのかもしれない。時間も、お金も、労力も。
清田:それって具体的にどういう感じなんですか? ちょっと後編で聞かせてください。
*後編は6月9日(土)公開予定です。
(清田隆之/桃山商事)