2008年06月25日

バカの壁日記

rakugaki.jpg

落書き:世界遺産・大聖堂の壁に「岐女短」(毎日jp)

 岐阜市立女子短期大学(松田之利学長)は24日、今年2月の海外研修で訪れたイタリア・フィレンツェ市のサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂に落書きした学生に厳重注意したことを明らかにした。この大聖堂を含む歴史地区は世界文化遺産に指定されているが、教会から「謝罪してもらえれば、修復の費用負担は不要」との回答があったため、学生と学科長が、それぞれ英文で書いた謝罪文を郵送したという。


一番上がその問題の落書き写真。
拡大していただければ、他にも落書きを消した後が見える。
実際、この大聖堂以外にも、世界各地で文化遺産建物への落書き(日本人含む)は珍しい行為ではないという。(海外のみならず、日本の寺社や城郭・旧跡の類でもよく見るものだ)
だから当のイタリアでは別に記事や話題にもなっておらず、「よくある落書きの一つ」とスルーする雰囲気だとも言われているのだが…

いずれにしろ、わざわざ所属(学校)名を書き残してくるあたりがもうバカ丸出しである。
しかもこの学生たちは「生活デザイン科」の生徒で、一般に連想されるグラフィックデザイン等とはまた違った内容の科らしいが、「デザイン」と銘打たれた専攻で、優れた文化に触れるための研修旅行で、それに対して学ぶ、尊重するではなく「名前かいてこー♪」という発想が出てくるあたりがもう終わっている。


きょうび、公立といえども短大は生徒数が集まらずに経営難、またなかなか就職実績が伸びなかったりしてどこも苦労しているときに、こんな形で学校名が有名になったのはかなり致命的だろう。
今後、なんの罪もない同期や後輩たちの就職活動に大きなネックとなるのは明白。それを考えれば、(まだ卒業していないのならば)「口頭注意」とか甘いことを言っていないで、即退学処分でもフォローできないくらいの行為だと思うんだが。

この一件が発覚したのは、とある個人がイタリアに旅行した際に発見して大いに嘆かわしく感じ、写真を撮影してブログに掲載したことから始まるのではと言われている。
その情報源とされるブログには、筆者が短大側に報告し、学校側からの返答文も掲載されている。
そこに大体の事後対応についても書かれているのだが、ちょっと引っかかる部分も…

岐阜市立女子短期大学・女子大生の愚行【続編】(☆ゲイと負け犬のセレブな日常☆)

その後、駐日イタリア大使館、及び
イタリア政府観光局と相談し、
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の
担当者と直接コンタクトを取りました。
まずは口頭で謝罪を行い、同時に修復等の
対応についても話し合いました。 その結果
、修復につきましては当局に
一任させてくださいとの指示を受けました。

ただ、そのときの感触では、これ以上建物に
手を加えることには否定的であるように受け取りました。

その後、自宅にて謹慎していた当該学生全員に
謝罪文を書かせました。担当教員も経緯を説明した
謝罪の手紙を書き、学生の謝罪文と共に、サンタ・マリア・
デル・フィオーレ大聖堂へ郵送いたしました。

その学生たちは、その後、深く反省して
ボランティア活動などに積極的に
参加しているようでございます


ネットでは、教会の対応について
「寛大でこっちが申し訳なくなってくる」
という感想が多い。事実そうだと思うが、
「日頃から落書きが多いから”やれやれまたか”という感覚」
も混じっているかもしれない。
というよりも、落書きをやらかしたバカ6名がこの対応から
「金で解決できる問題ではない、そういう愚行をやらかした」
「自分たちの恥を長々と晒され続ける(なにしろ油性ペン)」

という意味合いを読み取ることができたのかどうかが気になる。

また、ひっかかったのが
「深く反省してボランティアにも参加」…
の部分。
ボランティアは、あくまで「個人が自発的に行う無償(原則)奉仕活動」であって、「何らかの罰・償い」や「改悛・改心のための(あるいはそのデモンストレーションとしての)労働」ではないはず。その論理で行くと、世の中のボランティアに携わる人たちは何か過去に罪を犯したり、反省すべきことをやらかしたかのような意味合いが生じてしまうのだが…普通にボランティアしている人たちにきわめて失礼な表現だと思う。
「反省」と「ボランティア」を直接結び付ける文脈を用いるのは、対外文書としていささか軽率だったのではないだろうか。

とはいえ、短大側としても、ハタチにもなる生徒相手に
「お前たちは自分たちが何をしたのか分かっているのか!」
「謹慎して毎日反省文を書きなさい」
とか、中学生相手のような指導をしなければいけないわけで、それもまた災難と言えば災難ではある。
旅行の事前学習やしおり的なものの中で「建物や美術品を傷つけたり、落書きなどはしないこと」などという注意事項が入っていたかどうかは知らないが、「もう高校も卒業した子たちに対しては不要だろう」というのが一般的な判断だろうし。来年からは間違いなく太字で追加されるだろうけれども。まあ次回からは間違いなくフィレンツェには行けないと思うが…
(調べてみたら、岐阜市とフィレンツェは姉妹都市らしい。台無しですな。)


こういう非常識な話を聞く度に、
「旅券交付の際には講習や試験を課して、バカは海外に出さない」
「海外でこのような不祥事や恥を晒して明るみに出た人間には、長期間・あるいは永久に旅券を没収する」
というような法改正でも行った方がいいんじゃないだろうかと思う。

試験といっても、ごく簡単な常識○×もので
「ファッションであれば、宗教施設の中で胸元や臍などを大きく露出しても構わない」
「既に落書きがある建造物には落書きをしてもいい」
くらいのレベルで。

そして今回の落書き女が将来結婚でもすることになって
「新婚旅行はイタリアなんかどうかな?俺前から憧れてたんだ~」
「ごめん……私、もう海外行けないんだ……」

というようなシチュエーションでもあれば、ようやく自分の犯した愚行の大きさに初めて心から気付くんじゃないだろうか。

つまるところ、落書きされた壁を見て
「これだけ落書きされているのだから自分もやってもいいだろう。日本語の落書きもあるし。」
と思うか、
「文化遺産、しかも宗教施設にこんなに落書きがあって、同じ日本人として恥ずかしい。こうはなりたくない。」
と思うかの、人間性の問題なのだろうと思う。

実際海外に行くと、旅の恥はかき捨て的な恥ずかしい行動を取るのは年配層にも少なくない。
(そもそも海外でのマナーやリテラシーがない場合や、ツアコンの注意に対して『若僧(ヒラ)が何を抜かす』という態度で耳を貸さないなど。後者は特にエラい人に多い。)
だから、年齢や性別を以て「これだからゆとりは」「スイーツは」とカテゴライズして叩けばいいという問題ではないはずだ。
今回の件については、ネット上で「同じ日本人として恥ずかしい」「あってはならない行為」という批判意見が多いのは、ある意味頼もしく感じている(例によって「個人を特定しろ」「名前を晒そう」と言いだす連中がいるのは行きすぎだと思う。あくまでこれを「恥」と感じる人がまだまだ多いということについて。)。

「恥ずかしい行為」について、ハッキリと「恥ずかしいことだ」と指をさすことが、これからの抑止力になりうると思う。
また勿論、ネットやメディアだけでなく、個々の家庭やコミュニティにおいて、幼少時から折に触れて
「建物や公共の場に落書きをしてはいけない」
「落書きは恥ずかしい行為だから、他の人がやっているからと言って真似をしては絶対にダメ」
「みっともないね…」
と根気よく躾けていくしかないのだろうなあ。


こうした「サインを残す恥ずかしい行為」をするのは日本人だけではないらしいのだが、昔から
「●●参上」
的な落書きは国内の観光地などでとにかくよく見かける。
なぜこうも名前を残して来たがるのか。
単純にヤンキーマーキング的な行動(特に修学旅行などでありがち)もあるのかもしれないが、個人的には、「千社札」の習慣が曲解された形で継承されてしまった部分もあるのでは?と思っている。そのことについてはまた稿を改めて。


posted by 大道寺零(管理人) at 16:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
>今回の件については、ネット上で「同じ日本人として恥ずかしい」「あってはならない行為」という批判意見が多いのは、ある意味頼もしく感じている

全く同感ですね。救いとしてはこの点にのみある様な気もして淋しい限りなのですが、それでも誰かが言い続けるしかないんでしょうね(T.T) 

お詫び・・・すみません。また紹介させてもらいました(^ ^;Δ 不適切でしたら叱ってやって下さい<(_ _)> 
Posted by 蜻蛉 at 2008年06月28日 05:05
>>蜻蛉さん

ご紹介ありがとうございました。うれしゅうございます。

叩きのための叩き(個人名や写真を晒せなど)は論外ですが、まだ「他山の石とする心」が残っている人がいるということは悪いことではないと思ったのです。
「あのバカ学生と同じ真似はするまい」と感じて自分は絶対にやらない、あるいは同行者に釘を刺すなど、個人個人が意識すれば愚行は少しでも減るのではないかなあと…

その後京産大の生徒の落書きも発覚して、こちらは停学処分がくだされてましたね。
個人的には、岐阜女子短大のように学校ぐるみで行ったわけではないので、本来学校側が声明を出したりする筋合いではないのでしょうけども、この流れで所属付きの落書きが出てきたのでは致し方ないといったところなのでしょうか。
Posted by 大道寺零 at 2008年06月28日 17:34
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