近作の『愛がなんだ』と比べても、まったく違う作品になっているので、監督はこう言うと嫌がるかもしれないけど……、実はめちゃくちゃふり幅のある監督なんだなと思ったんです。『愛がなんだ』も一見ものすごくエッジが効いていそうですけど、そうじゃないというか、生ぬるいヴェールを被った突起物のような映画でもあるし。そんな映画も作れるのに、これだけ幸せな、朗らかな、ランタンのようなぬくもりのある映画を丁寧に作ることもできる。いつか、すっごくエッジが効いているものを作る日もくるんじゃないか、という期待さえしてしまう、とても才能のある監督だと思います。天才じゃないかと、今パッと思いました。
――映画のテーマのひとつは「出会い」だと思うんですが、三浦さんが「これは大きかった」と思うようなこれまでの「出会い」を挙げるなら?
三浦 そうですね……なかなか優劣はつけられないんですけど。近々のことでいうと、2013年に「キンキーブーツ」という舞台に出会ったときに、ニューヨーク在住のプロデュースで関わっている日本人の方に、観劇後、「どうできあがっていったのか」というプロセスをうかがったんです。そこで、「日本でやるときには、こういう風になっていればいいよね」という夢も語ってくださって。その出会いがなければ、僕は「キンキーブーツ」に出ていなかっただろうと思います。さらにいえば、ミュージカルで歌を練習していなかったら、その先の主題歌を歌うこともしていなかっただろうし。その出会いが今経験する土壌を与えてくださっているんだなと思うと、すごく感慨深いです。活躍によって、恩返ししていきたいと思います。
――「キンキーブーツ」は初演も再演も拝見しましたが、本当に素晴らしかったです。三浦さんが演じたローラとの出会いや、そのほか舞台での身体を用いた表現が、映像においても演技の幅を広くしたような印象は、ご自身で持っていますか?
三浦 観てくださって、ありがとうございます。自分の中では、身体表現はまだまだ大きく学ばないといけないと思っているんです。「キンキーブーツ」の前に「地獄のオルフェウス」という舞台で、プロデューサーに「興味があれば読んでみて」とメソッド演技という本を渡されたんです。そこで読んだものが『アイネクライネナハトムジーク』の佐藤を作る上でもすごくヒントになったので、舞台からの学びは生きているように思います。