――佐藤は紗季に出会うまで「待ち」の姿勢だったわけですが、そこに共感する部分はありますか?
三浦 劇的な出会いというか、妄想してしまうようなところは共感できるかもしれないです。「こういうシチュエーションがあったらいいな」とか「こうしたらうまくいくんだろうな」とかは、思ったりしますね。自分よがりなんですけど、もともと一人っ子なので、妄想して遊ぶことに長けているんだと思います(笑)。
――最近考えたシチュエーション、何かありますか?
三浦 言えませんよ……! おかしな人だと思われそうなので、やめておきます(笑)。
――(笑)。紗季を演じた多部さんとは三度目の共演になりました。
三浦 4年ごとに共演しているので、20代前半の自分も知っているし、その頃自分が現場でどういう立ち居振る舞いをしていて、どういう風に共演者と接していたかも全部見られていますし、どんな芝居をするかも当然知っている。自意識過剰かもしれないですけど、今回も自分が果たしてどう佐藤を演じるかも見られているんじゃないかな、と思うがゆえに、リラックスではなく心地よい緊張感を持って、常に多部さんとはお芝居ができました。
――初めて組んだ今泉監督については、どのようなイメージを持たれていましたか? 過去作はご覧になっていましたか?
三浦 何作か拝見していたのと、以前、『こっぴどい猫』を観て、とても興味深いなと思っていたんです。『アイネクライネナハトムジーク』に関しては、際立って気の利いた設定ではないからこそ、監督がどう料理するかが楽しみのひとつでした。監督に関していえば、ご自身の作品に自分で出ることも多々ある方なので、ビジュアルのインパクトがすごく強くて(笑)。何となくしゃべりにくい雰囲気の方なのかな、と思っていたりしたんです。けれど、非常にやわらかくて、構えない、しゃべりやすい方だったので驚きました。初日から印象ががらりと変わりましたね。
――「監督がどう料理するかが楽しみ」だったという完成作に関しては、どんな風にご覧になりましたか?
三浦 本当に、期待値を優に超えた作品を作っていただけたな、と感じました。なんか……こんなにいい作品に出られていたんだ、という幸福感に包まれて席を立ったんです。ただただ本当に幸せな気持ちになったの で「監督、ありがとうございます……!」という感謝しかなかったです。演じていても幸せだったし、観ても幸せな気持ちにさせてもらえる作品で、終始、顔がほころんでいた印象があります。