ようこそひより至上主義の教室へ 作:tanaka
どうでもいいのですが、ジムのランニングマシンはやだ、というのを前回最新刊未読で書いていて、最新刊でかなりジムが重要な場所になってて驚きました。
食べれる野草図鑑(簡易版)を作り終えたので、折角だから海でも見ようとデッキの方へ移動する。
カラーコピーなどできないし、全部白黒で、絵も手書き。素人にも簡単に同定できるような、分かりやすくておいしい野草などそう多くはない。そもそも無人島に生えているかも分からないし、無人島でサバイバルをさせられるのではないかというのも、あくまでも最悪の想定だ。
「まあ、この人数でわざわざ無人島に行ってペーパーテストをやるとも思えないし」
だからといって本当にただ楽しく過ごせるだけというのもあり得ないだろうし。備えあれば患いなしだ。
日が照っていて、デッキへ出るとやはり暑い。
波がキラキラと白く光る様は、映像なんかでみたら綺麗だけれど、実際見ると目を焼かれて痛い。
「あ」
「あ? げ……」
咄嗟に目を逸らした先に、見知った顔を見つけた。向こうも俺の声で気づいたらしいのだが、心の底から嫌そうに顔をゆがめた。
「伊吹じゃん。こうして話すのは殆ど初めてだよね」
「…………」
声をかけてみたが、まるで話しかけてくるなと言わんばかりに睨みつけられる。ここまで嫌われているのはちょっと予想外だ。
最近は大人しく振舞っていた。官能小説を音読することもないし、教室で自作のR18漫画のペン入れをすることもしていない。
期末試験では当然のように全教科満点だったし、今までクラスで一番貢献した生徒は誰かと言われれば、たぶん俺だろう。
最近は昔ほど女子から煙たがれることも無くなったので、おおよそ評価は回復したと思っていたのだけれど。
信頼は築くのが難しいが崩すのは一瞬だとよく言われるが、条件次第で、俺は違う意見だ。人間は一度下した評価をそう簡単には撤回しない。自分が間違っていたと認めるのは簡単じゃないからな。信頼が崩れるのは、大勢からの信頼を失った時。周りが一切評価しない人を評価するのは、それはそれでエネルギーがいる。
とはいえ、これはあくまで能力面での話であって、人間性に対する評価は簡単に変わるので――というか変えることに慣れているというのが正しいのかもしれない――俺も気を付けておこう。
そして、大勢からの信頼を得た時。周りが、あの人昔はアレだったけれど最近いいかも、なんて言い出した時。場合によってはそれぞれで俺の過去の行いを勝手に弁護して、俺に対して好印象を持ち始める。
そもそも人は能力の高い人間に対して、好印象を持ちやすいし。嫉妬する場合もあるけれど。
まあ、何をやっても自分のことを嫌う人というのは出てくるものだから、伊吹はイレギュラー、みたいなものだと思おう。どれだけ完璧に組んでもバグは発生するし。
つまり伊吹はバグっている。
「可哀そうに……」
「はぁあ!? 可哀そうなのはあんたの頭でしょうが!!」
心の底から伊吹を憐れむと、俺を無視していた伊吹が掴みかかるような勢いで言った。
「いや、俺は頭いいけれど」
頭いいと一言で言っても、記憶力がいい、知識がある、問題解決能力が優れている……と様々だが、おおよそその様々全てで平均を大きく逸している自信がある。
「ちっ!!」
俺の言葉にイラついたのか、頭に向けて回し蹴りを放ってきた。反射的に腕でガード。普通距離を取るべきだが、あえて距離を取らない。
「っ!! ムカつく!」
つい受けてしまったけれど、もしかしたら寸止めするつもりだったのかも。流石にイラついて蹴り飛ばすほど理性がないわけではないだろうし。ちょっとビビらせてやろうという考えだったのだろう。
「一応言っとくと、フリでも暴行罪成立するからね」
学校とは違って監視カメラもないし、目撃者がいない限りは、それこそ怪我をしたという事実でもない限りは問題にできないだろうけれど。
周りを見渡すと、デッキにいる何人かが俺と伊吹に注目していた。気づいていない人の方が多いようだが、これ以上は騒ぎになりかねない。問題になったとしてもいくらでも言い訳は出来るけれど、面倒なことは面倒だ。
俺の言葉に、伊吹は忌々し気に鼻を鳴らして、船内の方へ戻っていった。
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えてまいります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』
ちょうどそのタイミングで、そんなアナウンスが流れた。伊吹は戻ってこない。あの性格上引き返してくることはないだろう。
少しすると、放送を聞いてきたらしい、そこそこの人数の生徒が出てきた。
その中に神のようなオーラを纏いし女子生徒を見つけて、すぐに駆け寄る。
「ひより!」
「……修治くんも先ほどの放送を聞いて?」
「いいや、俺は最初からここにいたんだけれど、やっぱり意味深な放送だったよね」
「はい。不自然ない言い回しでしたよね」
「……? あれ? あ、そうか……」
「? 修治くん?」
「あ、いや。イルカとか珍しい生き物でも見れるのかと思って」
どうやら違うみたいでがっかりしていると、ひよりは不思議そうに小首を傾げていた。
最新刊面白かったですね。ここだけの話、昔一之瀬メインの書いてました。消しましたが。なので一之瀬は好きです。
以前から綾小路は坂柳のクラスに行くとばかり思っていたのに、今回で一之瀬クラスの可能性を少し高めました。何だかネット上の感想では真逆のこと言ってる人多くて、あれ? ってなってるんですが。環境づくりをしているのなら一之瀬クラスですかね。育てているのならば、色々メタ読みも込みで、坂柳クラスかなと思いますが。
一応一之瀬に惚れているから一之瀬クラスに行く説も筆者の中で根強く人気。地球空洞説くらい有力。
南雲君普通に三年生内で負け筋あるのが今回で見えて不安。チケット渡すの早かったね。鬼龍院先輩も読めてなかったみたいだし、堀北の裁量でかなり負け筋減ったけれど。
網倉のビジュアル滅茶苦茶刺さった。一年生編7巻のひより並に表紙の子で刺さったのはじめてかもです。
所でひよりは? 出て無くない? なんで?