ようこそひより至上主義の教室へ 作:tanaka
地雷要素
1、未来設定(卒業後)です。
2、メタ要素わずかにあります。
3、キャラ崩壊(たぶん軽微)あります。
俺はその日、ひよりと共にアニメ観賞をしていた。
事のきっかけは二時間前。
とあるアニメの続編制作が決定したので、そうだ、アニメ全話もう一度見ようと考えていた頃。
海外ミステリの新刊を山ほど抱えたひよりが俺の家を訪ねてきた。重そうな荷物を持たせたままにするわけにもいかないので、荷物を引き取って、お茶を入れていると、停止したアニメの映し出されたテレビの画面をひよりがじっと眺めて、
「これはどのようなお話なのでしょう?」
と、意外にも興味を持ったらしい。
「まだ一話の最初の方だから、一話だけ見てみる?」
ひよりの前にお茶を出し、横に座ってリモコンを手に取り尋ねてみると、数秒考えこむような仕草をしてちらりと持ってきた本の山を見て、
「では、一話だけ」
☆
先ほども言ったが、それが二時間前の事。一話だけだと言ったひよりだったが、二話になった時に「二話までは見てみましょう」と言い、三話になったときに「三話までは見た方がいいと何かで見たことがあります」と言い。
俺としては食い入るようにアニメを見ているひよりという少し珍しいものが見れて嬉しいのだが、まさかあの山のようなミステリよりアニメに興味を示すとは。
しかし真剣な表情のひよりはかわいいなぁ。
見終えた頃にはすでに夜になっていた。
「どうする? おゆはん食べてく? 冷凍か、あるいは配達かになるけれど」
「二択ですか? せっかくなら世界で一番おいしそうな方がいいですが……冷凍の方が早く食べられますね」
笑顔でそう言われ、俺は冷凍庫から適当なものを出して、電子レンジの中に放る。
世界で一番おいしそうな方とは、あるいは俺の手料理の事だろうか。
そう言えば以前俺の作った料理を食べて、俺の料理以外受け付けなくなった親戚は、長年のリハビリの末に最近克服したらしい。今度俺の作った料理を盛りに行こうかな。
ひよりはたまに俺の料理を食べてみたいと匂わせるような発言をして来るのだが、これはあれだろうか、逆プロポーズみたいなものだったりするのだろうか。
俺自身は自分の料理を食べても問題ないし、そこまでの料理を作れるなどあまりにファンタジーな話で俺自身少し前まで半信半疑だったのだが。
だが、だ。卒業間際に面白半分で龍園に盛って見たところ、龍園が卒業式の日に泣きながら俺と一緒に住んでくれというくらいには一度食べたら忘れられなくなる料理を作れることは間違いない。そのことはひよりも知っているはずなので、興味半分で食べたがっているというわけでもないだろう。つまりは――
チンッ! と音を立てた電子レンジによって思考が中断された。
夕食を食べ終えたひよりは、テーブルの上に置いてあったリモコンを手に、俺の膝の上に座ってきた。
「ひ、ひより?」
「もう一度見ましょう」
「え?」
「もう一度見ていいですか?」
「えっと……さっきのアニメ?」
「はい」
「い、いいけれど」
俺の曖昧な返事に、こくりと小さく頷いたひよりはそのままテレビの電源を付けて、配信サイトにログインし、一話目から再生を始めた。
ここまでハマるのは意外ではあるがまあ、そこまで面白がってくれるのならいいか。
俺もアニメを楽しめるから良いやと考えてからすぐに、膝の上にひよりが座り抱きしめるような状態になっていては集中できないことに気が付いた。俺はこんなにドキドキしているのだから、ひよりだってこんな状況では集中できないのではないだろうか。
なんとなく膝の上のひよりに触れるも、
「すみません、良いところなので」
とすげなく言われ、内心で泣いた。
まあ、ひよりが楽しんでくれるのならばそれが一番かな。
なんて暢気なことを考えてから十二時間後。
「もう一回見ましょう」
昨日は結局深夜まで掛かってアニメを二周して、遅くに目を覚ましたかと思うと、俺の用意した菓子パンを食べながらひよりはそんなことを言った。これには「菓子パンを小さなお口で食べるひよりは可愛いなぁ、そのうち結婚して俺の料理しか食べれない体にしてやるぜ」なんて馬鹿な考えを巡らせていた俺も思わず固まった。
「もう一回って……もう一回? アニメを?」
「はい」
「そ、そうか。まあ、そんなに面白かったのならいいけれど」
「特に無人島でのエピソードがいいですね」
「まあ、山場だからね。俺もあのあたりが好きだよ。特に王に命令されて従者が飲み物を取りに行くシーンで一瞬だけ映る女の子が可愛くて」
「そうですか」
本当に最近になって、俺が他の女の子の話をしていても素っ気ない返事をしてくるのは、寧ろひよりにしては嫉妬してくれている方なのだと気が付いた。ひよりは、プラスの感情に起因する表情はよく見せてくれて、マイナスの感情はそこまで人に見せない。
別に嫉妬してほしいなんて歪んだ気持ちはない――こともないけれど、わざわざ不安がらせる必要もないのでわざわざやろうとは思わないのだが。
結局ひよりはそのあとも三回アニメを見返した。
俺がアニメに嫉妬してひよりに慰められるのはまた別の話である。
アニメや二年生編六巻楽しみです。アニメが放送されたら続き書きます。
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