東京電力福島第一原発で、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しに向けた準備が難航している。採取予定の量は数グラムだが、政府と東電は成功すれば成果になるとアピール。しかし、この取り出し計画の意義そのものを疑う声すら出る。
推計880トンの燃料デブリ、取り出しは廃炉の最難関
燃料デブリは非常に強い放射線を放ち、人が近づけない。1~3号機で推計880トンあるとされるが、硬さや成分も分からない。まさに廃炉作業の最難関だ。
政府と東電は2011年12月の工程表で、10年以内に燃料デブリの取り出しをめざすと明記。後に調査が進んだ2号機で21年から取り出しを始めると決めたが、装置の不具合や開発の遅れで作業を2度延期。今は今年度後半に始めることをめざしている。
燃料デブリの取り出しは段階的に進める方針で、2号機での試験的な取り出しは「最初の一歩」だ。
構想は、①2号機で数グラムの燃料デブリを試験的に取り出す②2号機で取り出す量を徐々に増やす③30年代初頭に3号機でさらに多い燃料デブリの取り出しを始め、その後、1号機にも展開する、というものだ。
2号機で試験的に取り出した燃料デブリの分析結果や、取り出し装置の挿入ルートをつくる作業の経験は、その後の作業に生かせると説明する。
「役に立つのか」 専門家が意義を疑う理由
一方、こうした説明について、日本原子力学会の廃棄物検討分科会で主査を務める柳原敏・福井大客員教授(廃止措置工学)は「今後の燃料デブリ取り出しにどれだけ役に立つのか」と疑問視する。
試験的に取り出す量は、1~…
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