FULL CONFESSION(全告白) 42

GEN TAKAHASHI
2023/10/27

基本的に映画作家・GEN TAKAHASHIの作文。

第42回 『相棒』の闇 ⑤


速報!日本映画監督協会、「草刈」に事情聴取?

 噂が飛び込んで来たので、当初の予定だった「相棒の闇」⑤の内容を第6回以降に先送りにして、本稿⑤を速報とする。
 
 協同組合・日本映画監督協会(理事長・本木克英。以下「監督協会」)が、本稿の主要登場人物になっている「草刈」を事情聴取しようという話になっているらしい。
 私と面識のある、某有名監督からの情報でわかったことだが、事実であれば、東映TVPや東映よりも動きが早い。さすが「映画監督」協会というべきか。

 むろん、監督協会は警察ではないから、私の知人の監督がいう「事情聴取」とは大袈裟な言い方だろう。
 基本、監督協会は「組合員の相互扶助」の理念にもとづいて、仲間を守る!という活動をしている結社だから、要するに「草刈から話を聞いて、必要なら味方になろう」という会議でも開くことになったのかもしれない(だが逆なら、草刈はピンチだ)。

 この噂が事実なら、いまだ、草刈に事実確認さえしていないだろうと思われる、東映TVPを含む東映グループよりも、監督協会は俊敏に反応したということになる。このことは、私にとって非常に興味深い。
 なぜなら、本稿告発の主旨のひとつが、「映画監督」を名乗る草刈への、私の怒りだからだ。私憤でもあるが、仮にも「映画監督」としての義憤である。

監督協会と崔洋一監督の想いで

 監督協会の現在の理事のなかには、あの山田洋次監督を含めて、私の存在を知っている映画界での先輩監督や後輩監督が何人もいる(監督協会の会員数は487名・2022年7月現在)。
 このなかで、私に一番よくしてくれて気が合った先輩監督は崔洋一氏だった。写真家出身の崔洋一のフレームが、私は崔さんと出会う前から大好きで、崔さんの映画は必ず劇場公開初日に観ていた。崔洋一の映画は、日本映画界の最高峰たる映像のひとつだが、日本映画史的に彼の評価は不当に足りないと私は思う(在日朝鮮韓国人だから?)。

 私の劇場映画監督デビュー作『心臓抜き』(1992年)という一般的どころか業界でもほとんど知られていない映画がある。まったく売れなかったが、監督協会新人賞にノミネートされて、NHKでも放送された(当時で300万円の放送料)自主映画だ。
 その公開翌年の「中野武蔵野ホール」での再上映では、崔さんの方から「おまえ、なんで、おれをトークゲストに呼ばないんだ?」という言い方で、頼んでもいないのにトークショーの出演を立候補してくれて、タダで来てくれたうえに、その後の酒席も奢ってくれた(確か、いまでも私がよく行く新宿2丁目の伝説的バー「bura」だ)。

 私の映画に「崔洋一」本人役で、本格的に出演してくれたこともある。崔さんとは長年の戦友だった成田裕介監督(『あぶない刑事』『ビーバップ・ハイスクール』が有名)も”崔洋一の助監督”役で一緒に出てくれた。
 大先輩監督2人を役者として日活撮影所のセットに呼びつけて、なんと朝まで完全徹夜の撮影につき合わせてしまったのだが、私はなにも悪いとは思っていなかったし、崔さんも怒るどころか「まあ、おれも役者待たせるしな」とか言いながら、カジノのセットで成田さんと賭け事をしていたのを思い出す。
 撮影が朝に終わって、用意しておいたギャラを崔さんと成田さんに渡そうとしたら、成田さんは「おまえからカネなんて受け取らねえ」と、すごくカッコよく固辞されたが、崔さんは、成田さんに「バカ、おまえ、こういうのは貰っとくんだよ」と言いながら満面の笑顔で、私から封筒を受け取った。   
 30年前の話だから、もうバラしていいと思うけど、実は崔さんとは最初からギャラ交渉が成立していて、私の言い値を崔さんが即答でOKしていたのだ。
 このとき私が崔さんに渡した封筒には、あらかじめ合意していた現金30万円が入っていて、成田さんのは10万円だった。ごめんなさい、成田さん(でも、成田さんは1円も受け取らなかった。おれも見習います)。

 崔さんと、私に個人的な交流があったことを知る人は少ない。まさか私が”死人に口なし”で、話を作っているのではない。
 ただ単に、多くの人間が、”有名人”の話にしか反応しないからだ。崔洋一は誰でも知っているが「高橋玄」なんて誰も知らない。だから、その交流を誰も知らないのだ。
 崔さんは、私によくしたって何の得もなかったのに、映画版『月はどっちに出ている。』(1994年)の受賞総なめ&大ヒット御礼宴会が、同作の撮影にも使われた明治記念館(神宮外苑)で開かれた際にも、この映画になんらの関係もなかった私を招待してくれた。
 だから、その後、監督協会内部の権力争いで、崔さんが悪者になっていたという事情も知らない。日本にいなかったし、崔さんが悪いという話を聞く気もなかったからだ。

 私の「映画監督」としての態度は、崔さんから影響を受けていると思う。振り返れば、私が劇場映画監督デビューする1992年の前から交流があった映画監督は、崔さんしかいない。 
 崔さんは、在日左翼だったが、私は民族派右翼だ。互いにそれを理解しつつ、崔さんは喧嘩屋で、私も空手二段の腕自慢だったのに、朝まで呑んでも「朝まで生テレビ!」みたいな場面は一度もなかった。
 たまに「崔さんの助監督だったんですか?」と言われるが、仕事の関係はひとつもなかったし、1年に1度会うか会わないかでしかなかった。

 いつ頃のことか忘れたけど、崔さんが、メディアだかネットで、反目(はんめ=敵方)に対してコメントを出したことがあった。
 その啖呵は「おれを見かけることがあっても、半径10メール以内に近づかないようにな。なにが起きても責任取りかねるんで」というものだった。昔もいまも、こんな啖呵をマスコミで発言できた映画監督は、崔さん以外にいないだろう(いたら教えて)。
 本稿告発をしている私の言葉として、そのまま「元映画監督」草刈に送る。

 崔洋一は、間違っても若い助監督に違法「誓約書」など書かせたことはない。草刈、てめえはなんだ?それで、よく恥ずかしげもなく「映画監督」を名乗って、監督協会で委員会などやっているな。
 草刈に告ぐ。
おれは崔さんより気が短いから、どこかでおれを見かけても、半径20メートル以内に近づくなよ。なにが起きても責任取りかねるんで。

日本映画監督協会のみなさんへ

 先述のように、監督協会には、事務局長の南場さんを含め、私を知っている先輩・後輩監督が、たぶん10人以上はいる。それにしても、南場さんという人は、謎のイケメンで、もちろん私よりも年長だから、たぶんもう60代後半だと思うけど、監督協会事務局長というより、歌舞伎町のホストクラブのオーナーみたいな「濃い」お顔立ちだったと記憶している。

 ともあれ、監督協会が草刈から、本件告発にかかわる事情を聞いて、対応を検討されるというのであれば、監督協会ウェブサイトにも掲載されている、現理事長・本木克英氏の「理事長挨拶」と矛盾しない方針で臨まれるよう「元日本映画監督協会会員」にして、現職「映画監督」の私から、この旨を上申致します。
 ただし、草刈は「ウソつき」なので、必要なら私も聴取に応じますよ。個人特定を忌避すべき被害者保護のため、このブログでは公開できない証拠も、私は保有しているので。

日本映画監督協会 理事長・本木克英(『空飛ぶタイヤ』『シャイロックの子供たち』など監督)
理事長挨拶 抜粋
「目下、映画・映像業界は大きな変革期を迎えています。すべての制作現場において、あらゆる暴力やハラスメントを排除していくのは当然のことであり、それを生み出してきた幾多の要因を真摯に検証し、具体的に改善していかなければなりません。2019年より映画製作者連盟や映職連など映画・映像諸団体が取り組む「映画制作現場の適正化」ガイドライン策定に私たちも参加してきましたが、この取り組みが実効性を持つよう今後も積極的に関わっていきます。当協会内においても、これまで許容されてきた価値観や意識の改革を図るべく、これらの問題に関する議論を重ねております。」

全文は以下を参照されたい。
https://www.dgj.or.jp/about/msg/


次回、『相棒』の闇 ⑥に続く
(こんな話が舞い込むもんだから、もっと続くのかねえ。嫌な渡世だなあ)

 

 
 

 


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映画作家・GEN TAKAHASHIの作文。 旧監督名義・高橋玄で映画代表作『CHARON』『ポチの告白』『ゼウスの法廷』『GOTH』『陽光桜-YOKO THE CHERRY BLOSSOM-』『D5/5人の探偵』など。主に新宿、台北、ニューヨークで活動。

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映画作家。監督代表作に『陽光桜』『CHARON』『ポチの告白』『名もなき絆』、最新作『カニの夢を見る』他がU-NEXT、Amazon Prime Videoなどで配信中。公式サイト:何処かより https://www.gentakahashi.co/
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