FULL CONFESSION(全告白) 41
GEN TAKAHASHI
2023/10/26
基本的に映画作家・GEN TAKAHASHIの作文。
第41回 『相棒』の闇 ④
アーム社長の本業は、練馬の不動産屋
本稿は、国民的人気ドラマ『相棒 season 22』(テレビ朝日放送)の裏に隠された闇を、1~4話までスタッフだった制作当事者の私が告発する第4回である。
昨日は、初回拡大スペシャル「無敵の人」後編となる第2話が放送されたが、そのストーリーは、巨大な警察権力の陰謀に立ち向かう主人公・杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)の、警察官でありながら反権力という孤高の闘いを描く内容だ。
私はあんなにカッコよくないが、映画界の末席に身を置きながら、映画界の巨大権力でもある東映グループ内部の腐敗を告発するという意味では、私もまた「無敵の人」なのである。その撮影準備を私がやっていたという皮肉な事実は、なにやら天の采配めいている。
さて、前項までに述べた、『相棒』をはじめとする、東映TVP制作のテレビドラマ作品にスタッフを投入している不法人材派遣会社・株式会社アームとは、結局、何者なんだ?という話をしよう。
先に結論をいえば、不法人材派遣業者アーム社長・藤田高弘氏の本業は「練馬の不動産屋」である。
藤田氏は、人材派遣会社アームの本社事務所を、東映東京撮影所内に置きながら、練馬区で営む「株式会社Room」という、町の不動産屋の社長を兼任している。親も不動産屋で、藤田氏は2代目というわけだ。
藤田家が経営する不動産屋は、東映撮影所近隣の賃貸物件を、多くのスタッフらに仲介していた縁もあり、昔からアームとの関係があった。
スタッフたちは、「早朝から未明まで」休みなく働くことになるので、自ずと職住近接が望ましくなる。
東映では通勤の交通費が出ない。若いスタッフは賃金も安いから、撮影所から遠いところに住むだけで、交通費が生活を圧迫する。そして、なによりも睡眠時間を確保するため、撮影所に近いエリアに住む人たちが少なくない。こうして、スタッフを束ねるアームと、その住居を手配する藤田氏の、互いの利害が一致する関係性が、いつのまにか構築されていった。
やがて、アームの先代社長が亡くなったことから、藤田氏が経営を引き受けるかたちで現在に至った。だから、藤田氏はアームの創業者ではない、映画・テレビドラマ業界に無知な、異業種の商売人なのである。
本稿①で述べたように、私は、1984年(昭和59年)=19歳のときに初めて東映東京撮影所の門をくぐったのだが、その時代からアームという会社は撮影所内に存在していた。労働者派遣事業法が施行される前の時代だ。私自身、当時のアームに登録するかたちで、東映撮影所で映画の助監督をしたことがある。
※劇場版『仮面ライダー 世界に駆ける』が、私の名前が助監督として映画のクレジット・タイトルに記載された最初の作品である。
いま思い起こせば、当初からアームは「ブラック」だったのかもしれない。くだらんダジャレで恐縮だが、まさに「仮面ライダーBLACK」の時代だしな。
元アーム社員から届いた匿名投書
東映撮影所との長いつきあいのうち、町の小さな不動産屋が、東映撮影所への人材派遣を担うようになったというわけだが、要するに、アームでは不法に新入社員を引き入れると同時に、東映東京撮影所に至近のアパートを「社宅」として貸す一石二鳥の商売をしているのだ。
そんな不動産業者・藤田氏だから、映画事業や撮影所については、まったく無知で、実際に映画界やテレビドラマ制作業界での人間関係も、皆無といってもいいほどである。
そこに東映定年後の自らの減収を埋め合わせるべく、アームに入り込んだのが「人事部長」草刈だ。
前項までに述べたが、草刈は、アームによる不法行為の主犯といって間違いないだろう。だって、不動産業しか知らない藤田社長が、東映を舞台にした「絵」を描けるはずがないからだ。
なにしろ、アームは事実上、東映から降りて来る人件費=スタッフの報酬を、振り込むだけの業務をしている会社だ。社長の藤田氏以下、3名ほどのベテラン社員も、撮影所に長くいるものの映画業界人ではなく、あくまでも事務方の職員だ。
だから、スタッフの人選や、業界未経験の新入社員の教育係として、草刈は「人事部長」なる名刺を持つようになったのである。
ところが、草刈はその肩書きに見合った仕事もしていないようだ。
ここで、本稿「相棒の闇」①~③を読んで、匿名投書(メール)をくれた「元アーム社員スタッフ」の内部告発を紹介しよう。
私のブログにメールが来るなど、真夏に雪が降るより珍しい。
内容を読むと、私が東映TVPの労働環境と草刈について記事にして告発したことに感謝してくれているのだから、苦手なSNSもやってみるものだ。
この元アーム社員は、私が本稿記事で一切開示していない「草刈」の実名を書いてきたので、間違いなく本物の被害当事者である。
まず、この内部通報の一部を紹介しよう。
元アーム社員スタッフ
「何より「草刈」さんからのモラハラ発言により、このままアームで仕事をするのは難しいと判断しました。
「草刈」さんに関しては新人教育として、私たちの"先生"的なポジションでした。ただ、どの作品に行っても「草刈」さんの新人だということでイジられたり変な扱いをされることも多かったです。
また、新人教育の担当と名乗っておきながら作品に配属された後は、たまに現場に顔出して文句を言いにくる(声出せ、俺が若い頃は〜)だけで、実際の業務に関しては、上司に教えてもらうことがほとんどでした。
また「草刈」さんが管理している新人の同期の中でも、休みが多い子がいたり、同じ給料なのに仕事量が違う子がいたりと、いろいろ納得いかないことが多かったです。
他にも、いろいろ思うことはありますが、なにより相棒も含め東映テレビプロの労働環境について発信してくれたこと本当に勇気がもらえました。
私自身、もう東映と関わりたくないと思っていますので、失礼ながら名前は伏せて連絡させていただきました。」
この元アーム社員スタッフは、草刈のモラハラが原因で、アームを辞めたと証言している。
私から見た草刈は「映画監督になれなかったコンプレックスを、新人スタッフ教育という”監督ゴッコ”で、夢破れた自我を保とうとしている、還暦を過ぎたクズ」でしかない。
私は2カ月ちょっとの間、草刈の「痛すぎる発言」をいくつも聞いたが、今回の内部告発メールをくれた元アーム社員スタッフが表現する「草刈像」は、私が見たそのままだ。
投書メールの中で特に興味深い点は「草刈の新人というだけで」撮影所内ではマイナス評価になっていたという証言だ。
これは私の想像と合致する。というのも、草刈が撮影所内で、若いスタッフたちに「兄貴風」を吹かせている滑稽さを、正規の東映本社の社員たちは不快に思っているであろう光景を、私自身が何度も目撃していたからだ。
「東映も知っていた」
さらに、この投書メールには、決定的な事実が書かれていた。
本稿での引用は、本人特定を避けるために、本人の許諾を得たうえで一部だけを公開したものだが、アーム問題については、東映TVPもじゅうぶん承知していたという事実が書かれていたのである。
これこそ、体験者でしか知り得ない、東映TVPと「相棒の闇」であり、私同様、投書の主はすでにアームと東映から去っている。
だが、私は東映TVPを去っても映画監督であり、「元映画監督」草刈と違って現役の映画監督である。
本稿冒頭で述べたが、私は、この東映東京撮影所から映画人としてのスタートを切った。初日から数日の仕事は、松田優作監督・主演映画『ア・ホーマンス』の美術装飾応援助手だった。映画のラストシーン、路上で撃たれた石橋淩演じるヤクザが運び込まれる救急車を作った(白のバンに「東京消防庁」の文字を貼り付ける)のが、私の映画界での初仕事だった。
また、私の祖父は東映動画(現・東映アニメーション)の創立者で重役だった。だからといって、祖父の人脈が私のキャリアの助けになったことは一度もないが、私にとっての「映画」は、東映東京撮影所から始まった。
だから、本稿に述べている「相棒の闇」は、ただ単に「労基法をちゃんと守らなきゃダメですよー」という軽い話ではなく、映画・映像制作に大志を抱く若いスタッフたちを食いものにし続ける、大企業「東映グループ」内部の腐敗を告発しているのだ。
少なくとも、東映東京撮影所での慢性的スタッフ不足に対する「需給調整」という点では、東映TVPがアームの犯罪行為を黙認している疑いは極めて強いままなのである。
本稿冒頭で、『相棒 season22』前編(第1話)・後編(第2話)は、そのストーリーが、本稿内部告発「相棒の闇」とシンクロしていて皮肉だと述べた。
2話のクライマックス・シーン。水谷豊氏演じる杉下右京が、警視庁公安部部長・御法川(演・田中美央)を厳しく批判する。
杉下右京(水谷豊)
「上層部の一部は、あなたの意向に乗ったうえで黙認しているのでしょう。
私物化した権力が横行する社会こそ、テロが起きる要因となるものです」
これに激昂した公安部長は
「一(いち)警察官の君に、組織の何がわかる!」と怒鳴りつける。
すると右京は、こう一喝する
「ならば伺いましょう!
あなたに一市民の何がわかるというのですか!!」。
この一連のセリフは、私が持っている決定稿と呼ばれる印刷台本にはないから、撮影の際に改訂されたものだ。私は撮影現場に立ち会うパートではないから変更されたことは知らず、放送を見て感心した。
もちろん、本稿「相棒の闇」は、ドラマの第1回放送日に公開を始めたから、私の告発行動と、杉下右京のセリフが関係するはずもない。
しかし、この杉下右京のセリフは、私のなかで、こう意訳される。
「東映上層部の一部は、東映TVPの意向に乗ったうえで黙認しているのでしょう。私物化した権力が横行する撮影所こそ、日本の映画業界が腐敗する要因となるものです」
22年にわたって人気ドラマ『相棒』を作ってきた東映TVP、東映とテレビ朝日は、自分たちのドラマのセリフに反するような、組織内部の腐敗を黙って見ているだけなのだろうか?
次回、『相棒』の闇 ⑤に続く
(いろんな話が来てるから、まだ続くかも?)
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