FULL CONFESSION(全告白) 39
GEN TAKAHASHI
2023/10/20
基本的に映画作家・GEN TAKAHASHIの作文。
第39回『相棒』の闇 ②
黒幕は誰だ?
前回①の続きである。
東映TVPのライン・プロデューサ―山崎が、私に報酬金額を提示したことによって、同社もブラック企業だと判明したことに間違いはない。派遣先業者なのに、派遣労働者の私とギャラの交渉を始めちゃってるんだから、言い訳はできない。
弁明の余地があるとしたら、東映TVPと山崎自身も、労働者派遣業法の知識がなく、昭和の時代から「なんとなくそれでやってきた」という、惰性の営業をやっていて、これが法令違反だとは知らなかったということだろうが、東証一部上場企業の東映グループ会社として通用する釈明ではない。
しかし私自身は、東映TVP社長や山崎に、故意はないように思える。
特に、東京大学卒で東映入社したエリート学歴の東映TVP社長・丸山真哉氏は、この6月(2023年)に晴れて就任したホヤホヤの新社長で、彼にとっては本件『相棒22』が社長としての初仕事となったのだ。
丸山社長が、スタッフを前にして「(東映TVP)社長に就任して最初の仕事が『相棒』という大きな作品で、身が引き締まる思いです」と挨拶したその場に私もいた。
仮にも、新社長としての成功を期した最初のドラマで、故意犯(自分の行為が犯罪だと自覚している犯罪)という愚かなことを容認しないだろう。
そうすると誰が、アームと東映撮影所だけで通用している「特殊な労基法」を運用しているのだろうか?
実行犯は「元映画監督」
ここに、東映東京撮影所に常勤している、ひとりの「元映画監督」が登場する。いまのところ、仮に「草刈」としておこう(いまのところね)。
草刈は、私よりも3歳年長で、名だたる映画監督が加盟する「協同組合 日本映画監督協会(理事長・本木克英)」に在籍して委員職にも就いている。私も若い頃は、同協会に所属していて、大島渚監督、深作欣二監督、特に親しかった崔洋一監督らと交流していた。
そんな歴史ある映画監督協会に籍を置く草刈が、東映東京撮影所でどんな仕事をしているかと言うと、東映TVPの「マネージャー」と、問題のアームの「人事部長」を兼任しているのだ。
「マネージャー」というのが具体的に何をやる立場なのか想像できないが、古株のスタッフに聞いた話では、草刈はもの凄く長い間、東映TVPの助監督や、テレビドラマの監督をやっていて、アームを含めた撮影所の人間関係に通じていることから、東映とアーム両社の中間管理職として働いているのだという。
あれ?待てよ。前回①で述べたとおり、草刈が「マネージャー」となっている東映TVPは、アームから人材を派遣される派遣先である。
アームはスタッフの派遣元で、その「人事部長」は草刈だ。つまり、派遣元と派遣先の担当者、責任者が草刈という同一人物だということになる。これは「あり」なのだろうか?
わからないことは役人に聞くに限る。私は、わからないことは、すべて役所に聞く。税金払ってるんだから。
私は東映本社(中央区)を管轄する「中央労働基準監督署」に電話して、「派遣元と派遣先の担当者が同一というのは適法なのか?」と質問した。
担当職員は「え?」と意表を突かれたような声を出して「ちょっと調べます」と時間を取った。結果、職員は「法令上、そのような規定が見当たりません」と回答した。想定されていない、という意味だ。
そりゃあそうだよな。たとえば自分で自分を殺しても殺人罪は構成されないから、殺人罪の条文に「殺す人間と殺される人間が同一の場合」などと書かれていないようなものだ。
「労働者派遣業法」というのは、派遣元と派遣先という個別の企業が、公正に取引するよう定めた法律なのだから、両方を自分でやっている場合を想定した法律条文は存在しないというわけだ。
ところが、東映TVPとアームは、両社でひとりの怪しい元映画監督・草刈を雇って労働者を「売り買い」しているのだ。
この点についても、私は、東映法務部、顧問弁護士と面談した際に、両社の担当者が、同じ「草刈」であることに問題はないのか?との質問書を手交している。東映側では「事実を確認します」という。
この一点だけでも、東映とアームの間には「ただならぬ関係」があるのではないか?と、疑いを抱くにじゅうぶんだが、両社をつないでいる怪しい元映画監督・草刈は、実際、かなり疑わしい人物だった。
実は、私はとっくに東映TVPとアームの業態に疑いをもった7月初週に証拠集めを始めていた。その一環で、用事もないのに電動チャリンコに乗って、私の自宅・新宿から1時間かかる、練馬区大泉学園の東映東京撮影所まで通っては、所内にある草刈のデスクを訪ねていた。
そこで親近感たっぷりに、昭和の東映撮影所の話で油断させて、ペラペラ話す草刈から、いろいろな情報を引き出していた。諜報活動の基本だ。私は若い頃、興信所調査員として働いた経験もある。だから私は、草刈の来歴やプライバシーについても、一定程度、知っている。
そこで明確にわかったことは、草刈は、東映TVPとアームの両社から給料を得ているということだ。
詳細は伏せるが、還暦をすぎて東映との雇用契約の更改を余儀なくされた草刈は、収入が減ることになった。でも扶養家族もいるから、その不足分をアームの人事部長としての仕事で埋め合わせているのだ。これは草刈自身が私に語ったことだ。要するに、撮影所内での腐れ縁とでもいおうか、アームは、東映定年後の草刈を情実で拾ってあげたのである。
そこまでは理解できる話だ(労基法や派遣業法違反の疑いの事実はべつとして)。
しかし、だからといって草刈が、若いスタッフに違法な誓約書を書かせていい理由になるはずがない。
「元映画監督」でアームの草刈は、いまも、東映や日本映画監督協会という肩書きを看板にして、映像専門学校や大学の就職説明会に出向いては、東映TVPのテレビドラマ制作で働かせるための若い人材を「捕獲」している。就職求人どころか、極めて悪質な違法労働契約で、無知な若者を過重労働の現場に縛りつけるための「人さらい」同然である。私は、アームが就職説明会に参加している複数の学校法人にも、本件問題を公益通報している。
私が本件を告発した理由は2つある。
ひとつは、東映という映画会社が、アームと不法行為を共同実行する東映TVPの問題を自覚して、改善することを訴えるという目的。もうひとつは、「映画監督」を名乗りながら若者を食いものにしている、草刈に対する、映画人としての激しい怒りである。
映画・映像制作業界で働く皆さんへ
繰り返しになるが、労働基準法違反とは、それほど軽い犯罪ではない。同法違反を取り締まる、労働基準監督署の監督官は、警察官と同じく刑事訴訟法上定められた「司法警察職員」で、容疑者を捜査、逮捕、送検する権限がある。労基法違反で最も重たい刑では懲役10年というものまである。
アームの不法労働契約は、これも繰り返しになるが、そもそも法的に契約として無効なので、いかなる場合でも従う義務はない。
本件当事者に限らず、またスタッフ、俳優に限らず、べつの事業分野で働く人たちも、よく覚えておいて欲しいことだが、日本のすべての国民には「契約の自由」という権利が憲法で保障されている(むろん、民法でも規定されている)。本件のように、違法な条件に応じる義務を強要する契約行為は、それ自体が犯罪なので、とっとと警察に電話すれば良いだけだ。
このことを知らずに「誓約書に署名しちゃったから、途中で辞めたら違約金を払わされるし、給料を払わないとか、いますぐ社宅を出てけ!とか報復されて、路頭に迷っちゃいますう~!」と、怖がっている若いスタッフがいるが、まったく心配する必要はない。
アームがわざわざ「契約書」だとか「誓約書」だとかいう書面に署名させる意味も法的な根拠も、まったくない。ただの「こけおどし」だ。
もしもアームの人間から「辞めたら給料も払わないし、社宅も追い出すぞ?」などと脅かされたら、労基法より簡単な「脅迫罪」で現行犯逮捕できる。
現行犯=脅かされた瞬間に「現行犯逮捕!」と宣言すれば、警察官ではない一般人でも被疑者を逮捕できる。これを私人逮捕という(常人逮捕ともいう)。
「じゃあ、辞めますとアームに言いに行くので、ついて来てくれませんか?」という要望があれば、私はスケジュールの都合がつく限りはボランティアでアームを私人逮捕に行くので、いつでも下記までご連絡下さい。私は手錠も保有していますので。
メールアドレス takahashigen.1965@gmail.com
これを起案した人物は「元映画監督」の草刈である疑いが強い
大学は法学部卒だという草刈は、これら「契約書」や「誓約書」がなんの法的拘束力もない、アームがデタラメを書いた偽造私文書にすぎないことを知っているはずだ(知らなかったら、さらに問題だが)。
というよりも、この「誓約書」は明らかに草刈自身が起案している。私はアーム社長・藤田氏とも会っているが、申し訳ないが、藤田氏にはこのような書面を書ける素地がない。「カールおじさん」が実写で出てきたような、呑気なオヤジさんだからね。
一方、草刈は、私大法学部で、それらしい法律用語を覚えているはずだから、法律家が一読すれば馬脚をあらわす「なんちゃって契約書」や「それっぽい誓約書」くらいは書けるだろう。
そんなものを若い社員スタッフに書かせることで、あたかもこれらが法的拘束力を発効すると錯誤させる効果があることを承知で署名させているのだとすれば、これほど悪質な自称・映画監督も他にいまい。
アームの労働契約、誓約書を新入社員に強要した実行犯が、草刈であった事実は、当該の被害者スタッフたちが証言している。
以下は、私とスタッフとの、LIENでの一問一答である。「草刈」は本稿での仮名なので、実際の画面では、草刈の実名が書かれている。
私
「アームの契約書には給料や残業代、休日の規定(有休など)が書いてあったか、または説明がありましたか?契約書と誓約書は「草刈氏」が説明して、署名するように言いましたか?」
スタッフ
「紙に書いてあったかはあまり覚えてないですけど、給料は固定給、残業代はなしとは口頭で聞いています。
有休に関しても紙に書いてあったかは覚えてないですけど、そういった休日の規定や有休は存在していないと思います。
契約書、誓約書も「草刈さん」が説明してたと思います」
この証言からは、アームの不法行為については、草刈が主犯であると推認される。
仮に労働基準監督署がアームを捜査、逮捕、送検する場合は、対象事業者は株式会社アーム代表・藤田氏になるが、違法な誓約書を書かせた被疑者は草刈になるから、労基法とはべつに草刈個人を強要罪で刑事告発することもできる。
ちなみに、これら証言のLINE記録も、東映法務部と東映顧問弁護士に提出済みだ。
東映は大丈夫?
なお付言しておくと、強要罪(刑法第223条)ならびに、労働基準法違反は「非親告罪」である。ある犯罪の被害者が、告訴や被害を申告しなくても起訴できる犯罪という意味だ。
この反対が、被害者本人の告訴がなければ起訴できない犯罪で、それを「親告罪」という。
本件でいえば、アームの不法行為の被害者であるスタッフは、労基署や警察に被害を申し立てているわけでもなく、刑事告訴もしていない。しかし、本件アームの不法行為はいずれも「非親告罪」のため、被害当事者ではない第三者が刑事告発し、送検することが可能な犯罪である。
仮に、本件被害者スタッフが「自分は、これも修行だと思っているし、残業代や休みがないのも、そういう業界だからしょうがないと納得している。だから自分は被害者だとは思っていない」と言ったとしても、本件は非親告罪なので、当該スタッフの親や友人、第三者である私が、東映TVPやアームを刑事告発することが可能なのだ(手続きは大変だけどね)。
ただ現実には、司法警察権を持つ労働基準監督署も、面倒な捜査は敬遠して、第三者による刑事告発はおろか、被害者自身による刑事告訴でさえ、ほとんど受理しない。とにかく面倒くさいからだ。
一方、東映本社は、本件とはべつの事案による労基法違反で、中央労働基準監督署から「是正勧告」を受けている。
朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASQ4G6QGNQ4GUCVL027.html
この事案の女性は、アームでななく東映の社員だったが『相棒』でも仕事をしていた。是正勧告という「行政指導」だけで済んでいるのは、単純に労基署が面倒くさがっているだけのことである。
本来であれば、3度の是正勧告を受けながら平然と違反を繰り返すような悪性の高い企業は、逮捕者が出ていなければおかしい。だって、この女性の事案以後にも、東映グループである東映TVPは、本稿「相棒の闇」に明らかな、労基法違反を事実上、容認しているのだから。
なぜ、東映グループは、この是正勧告というものを無視できるのか?それは、是正勧告が、なんら法的拘束力がない行政指導にすぎないことを知っているからだ。
何度、立ち入り調査(臨検という)を受け、是正勧告を出されても、東映グループには痛くもかゆくもないのである。
もちろん、是正勧告された対象に関しては「はい、ここは改善しました!」と労基署に報告するのだが、べつの類型事案までをも抜本的に改善することがない。だから、本件アームの問題も放置しているのだ。
特に賃金の面で、労働基準法を守るよりも守らない方が、企業の利益は大きくなると、東映は信じているのかもしれない。
テレビ朝日が、東映の筆頭株主
『相棒』はテレビ朝日で放送されているが、その理由は、テレ朝こそが東映の筆頭株主(17.12%)だからである。
『相棒』に留まらず、沢口靖子主演『科捜研の女』、上川隆也主演『遺留捜査』、内藤剛志主演『警視庁・捜査一課長SP』など、東映TVP制作のドラマのほとんどが、テレビ朝日で放送されているのも同じ理由だ。
なので、テレビ朝日は、本件「相棒の闇」問題を株主総会で厳しく追及すべきだろう。何度でも言うけど『相棒』は、正義の警察官のストーリーであって、若者を食いモノにする不法事業者の話ではないのだから。
それとも、テレビ朝日も「労基法違反なんて、どうってこともない」とでも考えるのだろうか?
私は若い頃、著名なジャーナリストのお誘いでテレビ朝日で仕事をしたこともあるが、警察相手にも斬り込んでいく気概があった局だと記憶しているんだがなあ。
他方、私が面談した東映法務部も顧問弁護士も、労基署の是正勧告がなんらの有形力を持たないことを承知しているから、実際には私の告発など「言っとけば?」てなもんで、東映グループとしても、了見を入れ替えて問題を改善しようなどとは思わないかもしれない。
だから、私は「相棒の闇」をこのブログで告発したのだ。万一、事実確認の結果「これはヘタに動いたらマズイから、放置しておこう。いざとなっても、せいぜい行政指導止まりで済む」などと、東映グループが、映画の編集のように本件問題を「カット」できないように。
いまのことろ無事でいる東映TVPやアームは、労基署の怠慢によって助かっているようなものだ。
日本の同調圧力
また、ただでさえ同調圧力が強い民族性の日本人社会で、さらに映画撮影所という閉じられた区域(事実、許可がない者は立入禁止)では、草刈のような「洗脳教育係」の存在価値が、むしろ高く評価される。その意味で草刈は、北朝鮮の工作員と同じ性質の任務を担っているともいえるだろう。
「先輩」に不法な誓約を強要されても、それが通過儀礼だと信じてしまう若き映像制作スタッフがいるのは、「ドラマ業界、これが普通だよ」などといった、洗脳教育による「思考停止のメカニズム」が機能するからだ。
だから、私のような内部告発者を敬遠したり、敵視していく傾向が、東映のような旧態依然とした日本の映画業界には、2023年の現代でも色濃く残っている。
そして、こうした悪弊を、まるで日本映画界の精神文化であるかのように語り、たまに後輩スタッフに、安いビールと安い焼肉を振る舞って(決して高いものは奢らない)、親切な先輩ヅラをしている草刈のような「ニセ映画人」こそが、日本映画業界の病巣なのである。
だから、賢明な日本人スタッフの多くが、外資系映像配信業者のオリジナル作品に流出し、歴史ある東映の撮影所では、犯罪行為に手を染める人材派遣業者を黙認しなければスタッフを掴まえられないという、悲惨な状況が常態化しているのだ。
ところが、当の東映TVPは、自分たちのやっていることの何が問題なのかさえ、まるで理解していない。
東映東京撮影所内で、同社のベテラン社員らと雑談していたら、彼らからこんなセリフが飛び出した。
「Netflix(ネットフリックス)や、Amazon(アマゾン・プライム・ビデオ)の作品にスタッフを取られちゃって、本当に人手不足なんですよ。ウチとギャラもそんなに変わらないっていうのに。なんでですかねえ?」
これこそが、"外の世界”をまったく知らない、日本のガラパゴス的映像制作事業者の認識なのである。
本稿では詳述を割愛するが、ギャラが「そんなに変わらない」というのは、単純に、日本映画界の相場観としての、手取り報酬額(助監督ではチーフ月額70万円、セカンド50万、サード30万円(通称7・5・3=しちごさん)のことを言っているだけだ。
労働条件を合わせていえば、少なくともNetflixの現場と、アームから派遣されるスタッフの労働環境は大きく違う。
本件「相棒の闇」被害当事者で、アーム社員のサード助監督は、月額30万円どころか「月給21万円、交通費、残業代なしで、1カ月まるきり休みなし」という労働環境にいる。それ以前に、アームでは就業条件の明示さえないというのに、よくぞ欧米と「変わらない」と言えたものだ。
だから、昭和時代のまま開き直っているかの東映の仕事は、『相棒』に限らず、多くの映像制作スタッフから敬遠されているという事実がある。そのことさえ東映グループは承知していないようだ。
そして、ついには「人が来ねえなら、嘘八百と脅し(たまのメシと酒)で騙して連れて来て働かせりゃいい」とでもいう、かつての東映映画『仁義なき戦い』に出てくるチンピラみたいな男が「人事部長」なる名刺を持って、撮影所の若いスタッフのやる気を搾取し、東映からの派遣手数料収入で食うという、不法業者アームとの「腐れ縁」状況が固定化したのだろうと想像できるのである。
次回は、アームが自分の「相棒」たる東映TVPに対してさえ虚偽報告をしながら、不法営業を続けている証拠を公開する。
アームよ「震えて眠れ」。なお、この表現は「脅迫にあたらない」との最高裁判例がある(笑)。
次回、『相棒』の闇 ③ に続く
(たぶん⑤くらいまであるんじゃねえか?笑)
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