『VIVANT』に出てきた「別班」…この自衛隊の極秘組織に入ると、別人格になってしまう「ヤバすぎるワケ」

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組織図にはないが「確かに存在」

自衛隊幹部や元別班員への取材でその謎を明らかにしたのが、『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)の著者で、共同通信編集委員の石井暁氏だ。同書は、TBS系日曜劇場『VIVANT』の参考文献となっている。

 

「市ヶ谷の防衛省には、偽の看板をつけた部屋があり、そこには別班長と、数人のスタッフがいます。『別班』は、陸上自衛隊にある情報部隊の一つ、指揮通信システム・情報部の『別の班』のことで、組織図に載っていませんが確かに存在しているのです」(以下、「 」内は石井氏の発言)

別班の隊員たちが出勤するのは、渋谷や新宿、池袋、品川のマンションの一室にある「アジト」だ。2~3人がグループになってそこを根城にし、朝鮮総連の関係者に会い北朝鮮情報を集めたり、外国からの旅行者を買収して外国の情報を取ったりしている。

収集した情報は報告書としてまとめられ、上にあげられる。別班員は数十人いるとも言われるが、OBにもその正確な規模は分からない。別班の実態は経験者にすらつかめないほど謎に包まれているのだ。彼らの生活には多くの制限がある。

「別班員は、表の世界から姿を消した存在です。『年賀状を出すな』『防衛大学校の同期会に行くな』『自宅に表札を出すな』『通勤ルートは毎日変えろ』など細かく指示をされるのです」

活動は偽名で行われ、何枚もの名刺を使い分けることになる。髪の毛やひげを伸ばし、外から見て自衛官だと気づかれることはない。別班員同士もコードネームで呼び合うため、お互いの本名も知らない。もちろん家族にも何をしているのか明かすことは許されない。

もちろん、自分の感情を完全にコントロールしなければならないから、絶対に素の自分は表に出せないし、どんな時でも自然な笑顔をつくらなければならない。

日々、別人格の自分を演じていれば、別班員たちの心身に“異変”が起こるのも当然だろう。

つづく後編記事《『VIVANT』に出てくる「別班」経験者がはじめて明かした「本音」…別班員はなぜ「別人格」になってしまうのか?》では、ホンモノの別班OBが証言した「別班に入って自分は変わってしまった」理由に迫ります。

(「週刊現代」2018年11月17日号を一部改編)

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