習作SS
目を覚ますとそこは、見知らぬラボラトリだった。ベッドの上から起き上がった『彼』は、麗しい肢体にしつらえてあったスーツを纏い、手元のウェアラブルデバイスを装着して歩き出す。左手の甲には、雨を纏う龍の刺青。ライネル(雨)と名を与えられたと自覚した『男であり女でもある彼』は、研究所を進む。
教わらずとも知っている多くの知識、抜け落ちた己に関する記憶。起動したウェアラブルモニターに刻まれていた『survive(生き延びろ)』のメッセージ。
猛毒が染み込むように、真綿で己の首を絞めるように、じわじわと死滅していった人類、そして彼らに見切りをつけ『帰って行った』神々たち。それはこのエルトゥーラ王国もまた同様であった。
ライネルは格納庫に自然と足を運び、そこに鎮座していた機動兵器に乗り込む。
汎用型機動装甲兵装『VARSAS(ヴァーサス)』。機体式別名〈グレンデル〉に乗り込んだライネルは、『既に知っている操縦方法』に従い、それを駆る。
生き残りのコミュニティが送信しているラジオ放送を受信し、指定されたラジオタワーに向かうが……?
ライネルの正体とは? 彼を突き動かす、生き延びることへの使命感とは、果たして——。