うおっ乳デカいね♡ 違法建築だろ   作:珍鎮

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目白押し

 

 

 ──なんだこれ。

 

「前髪が白い……どうしてなの……」

 

 メジロマックイーンとの激ラブラブデートへ向かう当日の朝の事だった。

 先日買い込んだ少し良いお値段の衣服に身を包み、寝癖等で無礼をかまさない為にも髪をセットするべく洗面台の前に立ち──困惑した。

 

「サンデーの髪くらい白くなってやがる……」

 

 俺の右眼の上辺りの前頭髪が白く変色しているのだ。

 まるで艶やかな純白の髪を持つあの相棒を彷彿とさせるような、透き通るような綺麗な白髪だ。

 ともすればウマ娘に多く見られる髪の特徴のそれとどこか似ており、まだ白い部分の範囲が狭いおかげでなんとかメッシュ風に留まっているが、これが更に広くなるとマズい。

 

「急なイメチェンは困惑を招くだけだよな……? しかも一部前髪だけの意味不明な白……」

 

 これがオシャレな服装や髪型を見せ続けてきたファッションマスター男子ならまだしも、シンプルな服かつずっと黒髪一色で過ごしてきた俺のような一般男子が突然の遅い高校デビュー髪染めをしてきた場合の相手に与える困惑のデカさは割とシャレにならない。苦笑い待ったなし。

 

 というか、今日の俺はこれまでの礼と謝罪のためという、最も誠意が求められる理由でメジロマックイーンに会いに行く予定なのだ。気まぐれ髪染めは流石に真面目さが足りていないと感じる行為だと思います。参ったね。

 

 確かに合同イベントの頃辺りから白い髪は数本ほど発見していたが、急にここまで増えるなんて思いもしなかった。

 まさか、これも先日ウマ娘に変身した件が関係しているのだろうか。突然髪色が変色した気分はどうだ? 感想を述べよう。

 

「……こまった。真面目な話をする日なのに……」

 

 ただひたすらに困ってしまった。おい! 顧客満足度が不足してるよね。

 当然ながらこの家に即座に髪を黒く染めるカラーリング剤などあるわけもなく、途方に暮れた俺は腕時計が刻む時間の経過に焦りながら、とにかく何か見つかればとタンスを漁り始めた。

 

「なんかないかなんかないか」

 

 バタバタと部屋を散らかしながら衣服を漁り続けて数分。

 

「おっ」

 

 ついに何とかできそうなアイテムを発見し、それを手に取った。

 ちなみに相棒のタンスから出てきたドロップアイテムだ。サンデーさん! 衣料品の力、お借りします。

 

「ニット帽……これしかないな。極力前髪を出さないようにすればいけるはず」

 

 いつの事だったか、確か二人で大した用もなくショッピングモールを練り歩いていた際に、あいつが冬用のアイテムが欲しいと言い出して買った物だ。

 ……確かウマ娘用の耳穴が無くて使いづらかったニット帽で、まともに使ったのは二、三回程度だったな。無理して被らなくていいと俺が言った次の日からこいつはタンス世界の重鎮と化した。

 しかし僥倖だ。

 ウマ娘用ではないおかげで俺が使っても違和感がない。時間も無いし使うならコレだろう。

 

「……なんで脱色したかは分かんねぇが、とにかく隠せたし……いくか」

 

 そんなわけで同居人の帽子を深くかぶりつつ、俺は事前に伝えられていた位置情報を辿り、大恩人メジロマックイーンが待っているであろう遊園地へ向けて出発するのであった。

 

 

 ……

 

 …………

 

 

「ここ……だよな?」

 

 ──そうして初めて訪れた遊園地は、一言で言えば閑散としていた。

 いや、違う。

 明らかにそんなレベルの話ではなかった。

 どう見ても眼前の遊園地は()()()()()()()

 受付には誰も立っておらず、待機列はおろか周辺一帯にまるで人影が見当たらないのだ。

 

「──あっ、秋川さん、こちらですわ!」

 

 辺りを見渡しながら目的の人物を探そうと四苦八苦している俺の背中に声がかけられた。

 その方向へ振り返って見ると、やはりそこには探していた張本人が、ほんの少し息を切らしつつ立っていた。

 

「お、おはようございますっ」

「うん、おはようマックイーンさん」

「申し訳ございません、こちらから集合場所を指定しておきながら遅れてしまうなんて……」

「いや、いま集合時間の三十分前だよ。俺が早く来すぎたんだ、ごめん」

 

 かつてのドーベルと同じく予定時間の遥か前に集合しちゃった。僕たち似た者同士だね~♡ 呉越同舟。

 

「……ていうか、遊園地がどう見ても休園日に見えるんだけど……?」

「あ、はい、その通りです。営業再開は三日後からですわ」

「えっ」

 

 マックイーンの反応からして日程を間違えたわけではなさそうだが、であれば開いていない遊園地にわざわざ集まった理由とは一体。

 

「ここはブライトのお父上様が管理されていらっしゃるパークの内の一つでして、本日は休園日での立ち入りの許可を頂いているのです。観覧車だけは動かしていただいていますが、ほぼ貸し切りとはいえスタッフの方々もいらっしゃるのでその点はご心配なく」

「……あ、あぁ。うん」

 

 なんか唐突にスケールのデカい話が出てきて思わず慄いてしまったが、今日の会話の本題ではないのでグッとこらえて飲み込んだ。

 ドーベルがやたら庶民っぽい印象が強いだけで、メジロの名を冠するウマ娘たちは基本的に誰も彼もが言葉そのままの意味でお嬢様なのだ。こういう事もあるだろう。ブライトというウマ娘が誰なのかも分からないが一旦置いておく。

 というか一般人的なリアクションをしている場合ではなく、まず他に言うべき事があるはずだ。

 

「ありがとう、マックイーンさん。今日の為にこんな準備までしてくれて」

 

 そう素直に礼を言うと、マックイーンは少しだけ目を伏せつつ微笑んだ。

 

「いえ、私にとっても必要な事でしたから。……では、参りましょうか」

 

 俺と会うときはいつもどこか緊張しがちだったマックイーンだが、今日は肩に力こそ入っているものの普段と違って落ち着き払っている。あの合同イベントで手を貸してくれた時と同じ雰囲気だ。

 凛としている、と言えばいいのだろうか。とにかく美人だ。求婚したいかも。

 

 ──本来なら施錠されているであろうスタッフ用の出入り口を通り、パーク内に足を踏み入れて初めに感じたのは、真冬特有の少し強い乾いた寒風だった。

 誰もいない。

 マックイーンと俺以外に、広々とした解放感のある遊園地の中を闊歩している人物は、誰一人として存在していなかった。

 

 かなり異様な光景だ。テーマパークの貸し切りなんて夢のまた夢だと思っていたが、実際にしてみると優越感よりも寂寥を覚える。

 こんなにも大きくて華やかな、しかし他に誰もいない静寂な世界を、独り占めして心から楽しめるとはとても思えない。出来ればみんなで訪れてワチャワチャしたいね。乱交パーティユニヴァース・フェスティバル。

 

「……私は世間からそれなりに顔が認知されているウマ娘です。お隣を歩いていたら秋川さんにご迷惑をお掛けしてしまうかもしれません」

「だからここを用意してくれたのか」

「変装をしても以前バレてしまった事があるので、こだわるなら場所かな、と思いまして。……きっとお互い、他人に聞かれては困る内容ばかりでしょうし」

「……そうだな」

 

 とはいえドでかい遊園地を貸し切りにしてしまうとは行動力の化身すぎ。もしお付き合いしたらもうその日から一週間後には挙式の日程が決まってそう。

 

「でも大丈夫なのか? 一日中使うわけでもないのにここを使わせて貰っちゃって」

「東京の別邸は諸事情で使用中ですし、まさか秋川さんのご自宅に上がりこむワケにもまいりませんから」

 

 スゲェ短期間で俺の家に出入りし始めたウマ娘にたくさんの心当たりがあるのだが今は黙ってた方がよさそう♡

 

「……ふふっ、そんなに緊張なさらず。一般の方からすれば少々常識の異なるやり方ではあるかもしれませんが、これはそこまで大変な無茶を行っているわけではありませんわ」

 

 どうやら焦燥が顔に出てしまっていたらしく、隣を歩くマックイーンに気を遣わせてしまったようだ。深く反省しこの経験を次回以降のデートに活かします。

 

「なので安心なさってください。貸し切りなんてよくある事ですから」

「よくあっていい事なのか……?」

 

 お金持ちの感覚はイマイチ把握しづらいが、本人がいいならそれでいいのだろう。

 それにもし逆玉の輿に乗れたら俺もいつかは分かるかもしれない。お見合いで紹介したい男性がいるんですけどご一考いただけますと幸いです。秋川葉月という男性なのですが……。

 

「あちらの観覧車です。アレに搭乗している間の二十五分はこの世界から切り離され、誰にも聞かれることなく二人だけでお話が出来ますわ」

 

 なんかすごい言い回しをしているマックイーンの案内で進んでいくと、唯一稼働しているアトラクションこと観覧車が目に入った。

 そこでようやく一名だけスタッフと思わしき……というか執事みたいな恰好の老紳士を発見した。マックイーンさんあの人の事をじいやとか呼んでそう。

 

「お待ちしておりました、お嬢様」

「じいや」

 

 あマジで呼んでた。実在するんだ、お嬢様に仕える渋イケ老執事って。

 

「ありがとうじいや、観覧車は問題ありませんか?」

「もちろんでございます。通常営業日同様にご搭乗いただけますので、どうかごゆるりと」

「えぇ。では早速乗りましょう、秋川さん」

「あ、あぁ。……あの、ありがとうございます」

 

 一応乗る前に礼を言うと、執事の老紳士はあまりにも丁寧なお辞儀のみで返事を返してくれた。え、めっちゃクールでかっこいいのだが。将来はあんな男になりたい。憧れる紳士ランキングでバイト先の店長と同率一位になっちゃった。

 

 

 そんなこんなで観覧車に乗りこみ、約三十分の空の旅──もとい二人きりの完全密室プレイが幕を開けたのであった。

 もはや動いてないのではと錯覚するような非常にゆったりとした速度で個室は上昇を続け、執事の姿が小さくなり始めた辺りで、俺は正面からの視線に気がついた。

 

「──秋川さん」

 

 俺も前を向いた。

 瞬間、空気の切り替わりを感じた。

 観覧車の中は不気味なほどの静寂に包まれ、ここで感じられる音は彼女の声と、自分が発する声のみだと直感した。

 

「本日はここまでお越しいただき、ありがとうございます」

 

 マックイーンは喉を鳴らして緊張を飲み込み、眦を決して俺と相対した。

 必然、こちらにも伝播した緊張感が俺の肩を強張らせる。

 

「まず、秋川さんと私で認識の齟齬があること……それを確認いたしましょう」

「齟齬……?」

 

 あるだろうか、そんなものが。

 メジロマックイーンは俺を助けてくれた。

 俺は彼女に助けられたことに対して、心に抱いて当然の感謝の念を覚えている。

 そのことは以前の電話で伝えたはずだ。

 多少は大袈裟に聞こえたかもしれないが、あれは気持ち云々の話ではなく、この現実で実際に行動してくれた彼女の救助活動に対して、俺は人として言って当たり前の礼を伝えたつもりだ。

 ……もしかしてそれが間違っているのだろうか。

 まさか中学の時みたいに、相手の事を考えず自分だけ勝手に盛り上がってる? 盛り上がるのは下半身だけで十分なのに。

 

「……私は、決して大したことはしておりません」

「それは──」

 

 言いかけて、喉に待ったをかけた。

 あの頃と違って今の俺はコミュニケーションの仕方を山田やベルを通して学んだはずだ。それを今実践しなくていつやるというのか。

 

「……ごめん、続けてくれ」

「では……一つ。私は夜の学園寮で水浸しの秋川さんを見つけた際、独断であなたを匿いました」

 

 そのおかげで俺は社会的な死を免れ、ゴールドシップの案内で安全にトレセン学園を脱出する事が出来た。

 

「次に、商店街で倒れている貴方を発見し、救急車を呼びました」

 

 マックイーンが呼んでくれたからこそ大事に至る事はなく、ほんの数日で回復する事が出来た。

 

「最後に、ライスさんたちと共に府中に残り秋川さんを探していた──これらの行為に対して、貴方は強い感謝の念を抱いていらっしゃる。……なんでもする、という言葉が当たり前のように出てくるほどに」

「……そうだ、その認識で間違ってない」

 

 改めて肯定すると、マックイーンは再び自信なさげに目を伏せてしまった。

 

「……繰り返しになりますが、私はお礼に()()()()と言ってくださるような大層な事など……していません」

「──」

 

 あぁ。

 そうか。

 なるほど。

 

「私は、ただ自分がやるべきだと感じた行動を……咄嗟に取っただけに過ぎません。……ですから、使うだとか命令だなんてそんな……」

 

 マックイーンは身じろぎしつつ、次第に居心地が悪そうに視線を右往左往させ始めた。

 サイレンスを諭した時や、ドーベルを慮ってショタハズキの提案を断ろうとしていた時に見た、あの精悍な目つきをしていない。

 いかにも令嬢らしい楚々とした気品のある佇まいは鳴りを潜めた。

 

「……も、申し訳ございません。言うべき言葉が纏まっていなくて……」 

 

 いま俺の目の前に座っているのは、間違いなくただの普通の、会話に悩む一人の少女であった。

 

 そうだ。

 ようやっと理解した。

 俺は──キモかったのだ。

 

「ごめん、マックイーンさん」

「……?」

 

 確かにメジロマックイーンは恩人だ。

 事実だけを鑑みれば、積極的な奉仕こそが恩人である彼女に対して相応しい恩返しになるはずだった。

 

 だが、違った。

 そうではないのだ。ひたすらにキモい俺は自分の贖罪の事ばかり考えすぎていて、それを受ける側に立つマックイーンの心境までを考える事が出来ていなかったのだ。

 なのでキモい提案ばかり彼女に言ってしまっていた。

 なんでもするだとか、使ってくれだとか命令してくれだとか、目の前にいるこの普通の少女をただひたすらに困らせていただけだった。

 メジロマックイーンが欲しているものは、どんな命令にも従う傀儡なんぞではなかったというのに。

 

「浅慮だった。……俺、自分の伝えたい事ばっか喋ってたよな。本当に悪かった」

「え、えと……」

 

 今一度メジロマックイーンと秋川葉月の関係性を思い出してみた。

 確かに顔を合わせる機会はそれなりにあったが、そこにはいつも()()()()()()()()()()()

 

 メジロマックイーンは、俺に対して非常に好意的に接してくれている。

 それは一度転びそうなところを助けた過去も起因しているかもしれないが、なにより彼女が俺という人間を知ろうとしてくれている事が特に大きい。

 これまでの俺はその行動の意味を、ただドーベルの友人だから良くしてくれているのだと勘違いしていた。

 だがそうではなかった。

 

「……あー、ごめん。俺もなんて言ったらいいか分かんないや」

「そ、そうなのですか? それは……なんとも、困りましたわね……」

 

 助けたのはきっかけだった。

 ドーベルから来る繋がりも、決して彼女がいなければ成立しないような、薄く細い脆弱なものではなかった。

 俺が歩み寄らなかっただけなのだ。

 あのイベントの頃から、マックイーンはドーベルがいなくとも近づいてきてくれていた。

 それなのに俺は一枚の壁を隔てていて、その理由は他でもなく、彼女を()()()()()として認識していたからだ。

 

「マックイーンさん、観覧車が一周するまであと何分くらい?」

「え? あ、えぇと……この位置ならあと二十分くらいかしら……」

「よかった、まだまだ時間はあるな」

 

 だから──壁を壊そう。

 あの妄想家な漫画作家先生も関係なく。

 メジロかどうとか、有名ウマ娘だからなんだとか、そんな事も一度忘れて。

 

「雑談でもしようか、マックイーンさん」

「……っ!」

 

 このマックイーンという一人の少女に対して、俺というどこにでもいる一人の男子高校生として接してみよう。

 気遣いの達人で、凛々しい強さを兼ね備えていて、しかしどこか押しに弱い部分もある──そんな彼女と俺は改めて友人になりたい。

 利害関係も恩も借りも一旦横に置いといて、まずメジロマックイーンというウマ娘と普通に話して、彼女の事を知ってみたい。

 

「ほら、お互いに言いたい事も纏まってないしさ。話しながら頭ん中を整理して、準備ができた方から改めてそれを伝える……って感じで」

「……えぇ。そうですわね、良い提案だと思います」

 

 そうして俺の意図が伝わったのか、先ほどから硬くなっていたマックイーンの表情が綻び、ようやく安心したような穏やかな顔をみせてくれた。うひょ~顔面の造詣が美術品の如く。ふうふ に なりたそうに こちらをみている!

 

「話そうか、なにか」

「なにを……お話ししましょう?」

「どうしようか……」

「……」

「……」

 

 あれ。

 

「思いつかないな……」

「そ、そうですわね。……一対一で向かい合い、話題を探り合いながらお話をする……て、なんだかお見合いみたい……」

「……あの、ご趣味は」

「あ、えと、野球観戦などを……」

「なるほど……」

「はい……」

「……」

「……」

 

 無言の時間が、約五秒。

 

「……プっ」

「ふふっ……」

 

 ついに我慢しきれず、お互いに吹き出してしまった。

 

「何だろうな、この状況」

「もしかして私たち……あまり会話をしたことが無かったのでは?」

「そうかな? ……そうかも。思い返してみると俺たちって、話すときにいつも他の誰かがいたよな」

「えぇ、ドーベルでしたりライスさんだったりと……気がつかない内に、彼女たちに会話の間を取り持って頂いていたのかもしれませんわね」

 

 二人きりで会うことはほとんど……というかただの一度も無かった気がする。

 合同イベントの際に彼女と問題を解決したことはあったが、アレも結局二人きりの時間は皆無だった。交際条約未締結。ますます攻略したくなってきたね。オラッ! ベロをお出し。

 

「──秋川さん」

「ん? ……うおっ。……ど、どしたの」

 

 俺の名前を呼んだめじょまっきーんは、いつの間にか向かい側から隣の席に腰を下ろしていた──なんだこの甘い匂い!? 想定外のグッドスメル。本当のマゾ、真実のマゾ。

 

「改めて……私とお友だちになっていただけますか?」

 

 ふわりと柔らかい笑みを浮かべおって生意気な女。世界を肯定する笑顔をしている……。

 

「……ああ。これからもよろしく、マックイーンさん」

 

 彼女が差し出したすべすべ白皙なおててを握り、やっとこさ俺はメジロマックイーンと“友人”になる事が出来たのであった。ちょっとかわいすぎてガチでキショい笑い出る。

 

「では──そろそろ私にも教えて頂けますでしょうか」

「えっ?」

「いつの間にか行方を晦ましてしまった山田ハズキさんの事や、そもそも学園の寮で水浸しになって倒れていたワケなどです。きっとドーベルは知っているのでしょうけれど、彼女には一度も質問していませんわ。秋川さん本人から許可を頂いて知るべき情報だと思っていたので」

 

 ここまで隠し通していた秘密の開示を求められたが、修学旅行で知り合ったデジタルはおろか出会って数日段階のタマモクロスにすら共有してしまった情報だ。もうマックイーン程の距離感の相手であれば隠し立てする必要もない。全てを知って内縁の妻となれ。んぉ~ぽっぴんひゃん!

 

「もちろん話させてもらうけど、ちょっと長いよ」

「望むところですわ」

「あと気になる部分が逐一出てくるだろうけど、質問は最後でお願い」

「承知いたしました」

 

 では語る事としよう、秋川葉月のビギンズナイトを。腰抜かすなよ。下のじいやに殺されるので。

 

 

 ……

 

 …………

 

 

「──? っ???」

 

 十数分後、観覧車から出てきたのは秘密を喋りきって若干スッキリした顔の俺と、情報の波で見事に混乱しきって張り付いた笑顔のまま表情が固定されてしまったメジロマックイーンの二人であり、結局じいやさん以外の周辺にいたらしい他のスタッフたちからは怪訝な視線を受けてしまうのであった。許してください! 婿になります。メジロハッヅキーンになります。

 

「マックイーンさん、この後はどうしようか」

「不思議なオバケはともかく儀式と称してウマ娘複数人で男性の家にお泊まりとは一体何事──」

「あの、マックイーンさん?」

「へっ? ……ぁっ、は、はい。このあと、ですか。えぇと……この後はですね……」

 

 あまりにも混乱し過ぎていて反応が可愛い。

 なんか逆にちょっと困らせたくなってきた。

 しっかりと友達になったのだし軽口の一つくらいは許されるだろう。スルーされた場合が怖いがイクぞイクぞ! 我がものとするぞ! 

 

「じゃあさ、とりあえず俺とこのまま続きをしよう。デートの」

「デートのッ!?!!??!?!?」

 

 スルーどころかめっちゃ食いついてきちゃった。おもしれ女ランキング暫定一位に躍り出たよ。成ったな……♡

 

 


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