◆側近も知らない山田氏の私生活

 もっとも奇妙なのは支援者はおろか近しい事務所スタッフでも人となりをほとんど知らないことだった。知られているのは、限られた公開情報のみ。当時の秘書は山田氏の自宅にいったこともないと話していた。

 いまはネットのあちこちにかかれているが、山田氏の政治活動の始まりがピースボートであることも、2016年当時は、ほとんどの人は知らなかった。それでいて、取材からこのことを知った筆者が尋ねてみると隠すでもなく話し出した。ただし、常に自分がキーマンとしての視点で、である。山田氏の話の大半は「自分のネゴシエイトによって○○を実現した」というものばかりだ。それがどこまで本当なのかわからない。

 人となりを見せることのない山田氏だから、推測することは難しい。山田氏が見せているのはオタク文化に関心を寄せ、マンガ・アニメの表現の自由を守っている議員としての姿のみ。もしかすると虚像かもわからないその姿をオタク層は必死に支持していたのである。取材を重ねる中で、その光景がハッキリ見えたので筆者は山田氏を取材するのをやめた。

◆表現の自由を訴えてきたのに表現を恫喝

 そして今日まで、山田氏の虚像は肥大化し続けた。物書きの中にもその虚像になにかの利益を見いだし進んで提灯記事を書き連ねる者もいた。とりわけ支援者の狂信を露わにしたのはインボイス制度の問題だ。

 個人事業主の多いオタク業界で多くの人々が悲鳴を挙げる中で山田はこの訴えをスルーし続けた。支援者たちは、そのことで山田氏を批判することはなかった。

『週刊文春』の報を受けてSNSにおける支持者たちの態度は様々だ。「この程度で」と疑問を呈する者。「議員は仕事をしてくれればそれでいい」と強弁する者。あるいは応援してきたことを悔やむ者。しかし、大半はSNSでのいつもの饒舌さを封印して、沈黙しやりすごそうとしている。せいぜいがX(旧Twitter)山田氏の謝罪文のリンクをリポストしている程度である。山田氏を知る記者からは、辛辣な意見が。

「オタクの味方だと思っていた山田氏が、自分たちを煽っていた2019年の参院選の時には裏ではパパ活をやっていたわけですよね。もう、どうしていいかわからなくなっているという人が大半でしょう。おまけに、謝罪文では反省しているのかと思いきや“性行為の対価として現金を支払った内容は事実無根”だとして法的措置をちらつかせています。これまで“表現の自由”を訴えてきた人物が訴訟をチラつかせて報道機関を恫喝をしようとしているわけです。どうやっても、擁護するのは無理です」

 自身を「マンガ・アニメを守る議員」として売り続けてきた山田氏。その賞味期限は突然に切れた。一方で混乱する支援者たちの姿には、昨今のジャニーズファンにも似た空気を感じる。虚像を信じた者たちのこれからは、どうなるのだろうか。

<TEXT/昼間たかし>

【昼間たかし】
ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』