ポイント
吸虫・条虫と異なり、各論を覚えようとしてはいけません。線虫の覚えるべきポイントは僕が提示していくのでそれに従ってください。
吸虫に関してのまとめはこちら。
条虫に関しては、こちら。
原虫に関しては、こちらをご覧ください。
ブロックに分けて説明していきますね!
線虫を解剖する
まずは基本的な線虫の体の特徴から説明します。
- 雌雄異体(吸虫・条虫との違い)
- 虫卵から発育した幼虫が脱皮を繰り返し第一期から第五期までの発育ステージがある。
- オスには、生殖器官(交接嚢・交接刺)を持つ。
- 口から始まり、肛門に終わる消化管を持つ。
まずはここを覚える
感染形と感染経路
基本的に感染系は「第三期幼虫」です。
経口・経皮・胎盤・乳汁のすべての感染経路をとれるのは「犬鉤虫」と「豚糞線虫」です。
また、「犬小回虫」は乳汁感染しません。感染経路 感染形 寄生虫名 経口感染 成熟卵 回虫類・鞭虫類・蟯虫類 第一期幼虫 犬肺虫 第三期幼虫 自由世代 犬鉤虫・糞線虫(牛・豚)・肺虫(牛・糸状)
円虫類・毛様線虫類・腸結節虫類中間宿主内 豚肺虫(ミミズ)・広東住血線虫(ナメクジ)
顎口虫(淡水魚・ヘビ)・アニサキス(海水魚)経皮感染 第三期幼虫 自由世代 鉤虫(牛・犬)・糞線虫(牛・豚・乳頭) 中間宿主内 糸状虫 胎盤感染 第三期幼虫 犬鉤虫・豚糞線虫・回虫(牛・犬) 乳汁感染 第三期幼虫 犬鉤虫・豚糞線虫・回虫(牛・犬・猫)
体内移行の経路
気管型移行
分かりやすく言うと、口から入って何故か気管を経由して小腸まで行くタイプです。
気管型移行するのは回虫類(犬小回虫を除く)です。
動物病院では回虫に寄生されている保護ニャンコがたくさん来ます。
その中で吐物から回虫が出てきたんですね。
これは、まさしく気管を上行していたことを感じさせてくれた症例です。
皮膚から感染する線虫も気管型移行する!
上記のグラフにて紹介した、
鉤虫(牛・犬)・糞線虫(牛・豚)は皮膚から血行性に心臓に向かって気管を上行、
その後飲み込まれて目的の小腸まで届きます。
腹部型移行
腹部型移行は、
一旦腸管の粘膜内に入って成長し、また腸管腔に舞い戻ってくる移行のことです。
代表例は「犬小回虫」です。
他にも「鞭虫類」「腸結節虫」「毛様線虫類(オスタルテーグ胃虫)」がいますが、まずは回虫の仲間はずれ「犬小回虫」を覚えてください。
腸結節虫は、その名の通り腸壁の炎症により「肉芽腫性結節」が形成されます。
全身型移行
全身型移行の場合は、
腸管から血行性に全身組織に移行します。
代表例は何度も出てくる「回虫類」「鉤虫類」なんですが、
特徴として(6ヶ月以上の)成犬に感染した場合の移行形態になっています。
要するに、同じ回虫・鉤虫による感染でも、感染した終宿主の年齢によって移行形態が異なるということです。
糞便から何が出てくるか?
ウンコから
①卵が出てくるのか、
②幼虫(第一期幼虫)が出てくるのか
③ウンコからは出てこないのか
に分けられます。
幼虫が出てくるやつ
覚え方があります。
覚え方
「市場1の猛犬、ハイチュウ食べて胃の中血だらけ、でもただの糞」
市場 → 糸状肺虫
1 → L1幼虫が糞便から出てくる
猛 → モーって鳴く牛肺虫
犬 → 犬肺虫
ハイチュウ → 肺虫
胃の中 → 胃虫
血 →広東住血線虫
ただの糞 → 糞線虫
ちょこっと解説すると、猛犬なのにハイチュウで出血してしまうギャップと胃からの出血なのに、メレナではなくただのウンコが出たっていう猛犬らしさを表現しました。
「犬肺虫」は第一期幼虫で排出されたあと、
そのまま終宿主に経口的に感染します。
ウンコに出てこないやつ
ウンコに出ないやつは、
「旋毛虫」
「蟯虫」
「豚腎虫」
「肝毛細線虫」
「糸状虫」です。寄生虫名 寄生部位 備考 旋毛虫 筋肉 トリヒナスコープにて発見 蟯虫(馬蟯虫が重要) 肛門 肝毛細線虫 肝臓 毛細線虫は鞭虫の仲間 豚腎虫 腎臓 ミミズの経口摂取 糸状虫 血管内
卵が出てくるやつ
②③以外です。これはダルいので覚えません。
やっぱり各論も少しだけ。
糞線虫のキーワード
自家感染
ただの糞線虫は、自家感染します。自家感染するものを下記にまとめました。
- 有鉤条虫
- 小型条虫
- 糞線虫(ただの糞線虫ね)
- クリプトスポリジウム
オガクズ
オガクズ豚舎で集団発生しやすい。他にも「鞭虫」がいます。
- 糞線虫
- 鞭虫
子牛のポックリ病
子牛が急死する場合があります。
肺虫
ぜんぜん違うぞ、豚肺虫!
豚肺虫は「中間宿主(ミミズ)が必要」です。
豚肺虫は「虫卵で排出」されます。ゴロの中に豚肺虫が入ってなかったのはこのためです。
虫卵で排出されるため、豚肺虫は「浮遊法」で検出できます。楽ちんだ!!
一方で牛肺虫や糸状肺虫、犬肺虫はL1幼虫を検出します。
犬肺虫は、第一期幼虫が終宿主に経口的に感染するのでしたね。
毛様線虫
重要なのは床屋マークの
「捻転胃虫」
「オステルターグ胃虫」です。
捻転胃虫は吸血性が強いため貧血等が起こってきます。
春季顕在化現象
寒い時期になると、感染していても糞便中に虫卵を排出せずに休眠し冬を越します。そして春になるとこれでもかと大量の虫卵を排出する現象です。
僕もぬくぬく布団に入っていたい人間なので気持ちは分かります。
鶏の線虫
鶏開嘴虫
成熟卵やミミズの摂取により感染します。
鶏の気管に寄生するため面白い鳴き声で鳴くみたいです。笑
鶏盲腸虫
鶏開嘴虫と同様、成熟卵や「ミミズ」の摂取によって感染します。
セットで覚えたいのは、「Histomonas meleagridis」という原虫の感染(鶏ロイコチトゾーン)です。この原虫は、鶏盲腸虫の中に寄生しており、寄生虫(鶏盲腸虫)が寄生虫(ヒストモナス原虫)を媒介するという面白いシステムが起こっています。
糸状虫
長すぎるので、こっちにまとめました。糸状虫も超重要なので覚えてください!!
病気の名前が重要なのさ
寄生虫名 | 病気 | |
---|---|---|
円虫 | 普通円虫 | 前腸間膜動脈瘤 |
無歯円虫 | 肝臓の肉芽腫・石灰沈着 | |
腸結節虫 | 腸管壁に肉芽腫・石灰沈着 | |
広東住血線虫 | 好酸球性髄膜脳炎 | |
回虫 | 豚回虫 | 豚の肝臓白斑症(ホワイトスポット) |
犬回虫 | 幼虫移行症・異所寄生 | |
馬胃虫 | 幼虫による顆粒性皮膚炎・夏創 | |
顎口虫 | ヒトの遊走性浮腫 皮下腫瘤 皮膚爬行症 |
馬胃虫の「夏創」と混同するのは、頸部糸状虫の「夏癬」ですね!本当に紛らわしいので注意してください!
線虫を懲らしめたい!
線虫の駆虫、特に小動物臨床に至っては簡単に殺虫することができます。
線虫の駆虫には「イベルメクチン」「ピランテル」「サロラネル」等が用いられます。少なくとも、イベルメクチンは絶対に覚えたいですね!
小動物臨床でよく出会う寄生虫
最後に
意外とダルい線虫の暗記も「そんな覚えることねぇじゃん!」と思っていただけたのでは?ここまで知識として覚えれば、国家試験で十分に戦っていけるレベルです。
後は、この記事を読み倒すことと問題演習によって力を伸ばしていきましょう!