イスラエルから拉致された人質203人「混乱する戦闘の中で、奇跡的な救出策はない」
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【エルサレム=酒井圭吾】イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの地上作戦に伴って、イスラム主義組織ハマスに拉致された約200人の人質を生還させるシナリオが危ぶまれている。イスラエルにとって「人質救出よりもハマスの壊滅が優先事項」(元イスラエル軍将校)であるためだ。
イスラエル軍は19日、拉致された可能性が高いのは203人と発表した。大半はイスラエル人だが、18日までに判明した外国籍保有者は米英独やロシア、タイなど25か国の78人に上る。高齢者は10~20人、18歳以下は30人で乳児や幼児も含まれているとみられている。
軍は既にガザに小規模部隊を潜入させ、情報収集を行った。人質問題担当の専門管理局も軍に設置し、軍情報機関員や対外情報機関モサド、民間の専門家ら数百人が対策にあたる。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は「救出にあらゆる手段を尽くす」と強調し、ハマス掃討と特殊部隊による救出作戦を両立させる意向を示している。
救出作戦の難航は必至だ。イスラエルの予備役軍情報将校などによると、人質はガザの地下トンネルや地下
パレスチナ情勢に詳しいブリュッセル自由大学のヨナサン・ホルスラグ教授は「ハマスは既に十分な時間が与えられ、攻撃を受けた際の対抗策は用意されているだろう。混乱する戦闘の中で、奇跡的な救出策はない」と指摘する。英BBCは専門家の話として「ハマスは、追い込まれれば人質の殺害をためらわない」と伝えている。
ハマスの軍事部門カッサム隊の報道官は16日、SNSで人質に関し「状況次第では解放する」と交渉の余地があることを示唆したが、ハマス壊滅を最優先させるイスラエルと解放交渉が進む可能性は低い。
人質の家族は連日、メディアやSNSで解放を訴える。米ニューヨークでは19日、バイデン米政権に外交交渉などを求めるデモも行われた。人質に多数の犠牲が出れば、国内外からネタニヤフ政権への批判が出かねないが、情報将校は「ハマス壊滅が優先事項であることは不変だ」と指摘した。