将棋の第54期新人王戦決勝3番勝負の第2局が23日、大阪市の関西将棋会館で行われ、現役最年少棋士の藤本渚四段(18)が10月1日付でプロ入りした上野裕寿(ひろとし)四段(20)を181手で下し、3番勝負を1勝1敗のタイに持ち込んだ。上野のデビュー年、プロ2戦目でタイトル獲得の快挙は持ち越しになった。第3局は31日に同所で行われる。

戦型は相掛かり。難解な中盤戦を経て、両者とも持ち時間3時間を使い切り、1分将棋に突入。劣勢になった上野は粘りを見せ、一時は逆転に成功したが「終盤はチャンスが来たのかなと思ったが、1分将棋になり正解が分からなかった」と振り返った。

兵庫県加古川市出身の上野と香川県高松市出身の藤本は井上慶太九段門下。先にプロ入りを決めたのは藤本だが、上野が兄弟子にあたる。新人王戦の同門対決は42年ぶりとして注目を集める。

上野は三段枠で出場した新人王戦で、現在、竜王戦7番勝負で藤井聡太竜王に挑戦している伊藤匠七段ら実力者を破り決勝に進出した。「1年目から活躍し、タイトルを取りたい」。力強い宣言通り、プロ入り1カ月もたたずに、大きなチャンスを得た。

藤井が新人王を獲得したのは、デビュー2年目、114戦目だった。上野が第3局に勝てば、プロ入り3戦目での快挙となり、“藤井超え”となる。新人王優勝者はタイトル保持者との非公式の記念対局が恒例となっている。タイトル保持者が複数の場合、新人王の希望などを聞き、調整するが、今回は8冠を独占する「藤井一択」。第3局に向け上野は「準備をしっかりして、いい将棋を指したい」と意気込んだ。【松浦隆司】