魔法科高校の音使い   作:オルタナティブ

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男子アイス・ピラーズ・ブレイク新人戦、その後の話です。短めです。


第二十一話

「……言ったろ。勝つって」

 

モニターに八幡の勝利が映し出された瞬間、爆発のような歓声が湧き上がる。勝利の栄冠を手にした八幡は拳を天に突き上げた。

 

「……八幡」

 

「ん?」

 

ふと、将輝が声をかけてきた。

 

「……さっきの、『爆裂』は」

 

「あー、アレか。別に爆裂じゃねぇよ。ハッタリだハッタリ」

 

そう言いきった八幡に、目を丸くする将輝。

 

「ぶっちゃけお前の『爆裂』を止めたりとかは無理そうだったからな。それより早く魔法を使ってぶっ壊すことにシフトした。最大出力の『共鳴崩壊(レゾナンス・バースト)』でな」

 

「ならば、何故……」

 

「速度が不安だったんだよ。これ以上の速度は今の俺にはちぃと厳しい。ならばどうするか。相手を遅らせればいい」

 

「っ……そういうことか。『爆裂』は一条家の秘術。それを口頭で宣言し行使することで、俺を驚かせることで思考を僅かに停止させたのか」

 

「そゆこと。ついでに事前に勝利宣言しておくことで、『まさかこの状況でそんなことをするはずがないだろう』っていう先入観を刷り込んだのさ」

 

「だが、それを知った以上二度は通じないぞ」

 

「マジシャンは同じ手品を同じ相手に二度はしない。だが、マジシャンは何度でも観客を欺くもんさ」

 

次も勝つ。遠回しな未来の勝利宣言に、将輝は軽く噴き出して言葉を返す。

 

「……氷倒しは俺の負けだ。だが、モノリス・コードこそは」

 

「適度にやるのと適当にやるのは大違いなんでね。モノリス・コードも優勝して、今年の新人最強の称号でも貰って帰らせてもらうぜ」

 

「さすがにそれまで取られたら十師族形無しなんでね。──────だからこそ、最後の勝ちまでは譲らない」

 

「人王ゲーティアかよ」

 

「始めよう、カルデアのマスター。お前の勝ち(価値)を、私の手で焼却する……!じゃない」

 

「まあそれはどうでもいいとして」

 

「話散らかした挙句放置なの正気か。で、何だ」

 

「明後日だ。明後日、お前と俺の最後の決戦を始めようや」

 

「……そうだな。それまで、首を洗って待っていろ」

 

「鏡にでも言っときなその言葉は」

 

そう言って、2人は互いに背を向けて歩き出す。そこに勝者も敗者もなく、ただ次の戦いに向けて自らの刃を研ぐ戦士が2人いるだけだった。

 

 

 

 

 

少し時間が経ち、16時頃。一高の天幕にて、三巨頭こと真由美、克人、摩利の3人が話し合っていた。

 

「氷倒し新人戦男女共に優勝、波乗りも女子優勝!流れは完璧に一高に向いているわね!」

 

「そうだな。後は明日のミラージ・バットと明後日のモノリス・コード。それが終われば俺たち二年・三年が尽力する番だ」

 

「ま、こっから全種目で一高が初戦敗退して三高が優勝するくらいでなければ逆転はないだろうな」

 

そう言って、ある程度余裕を持てた笑みを浮かべる摩利。……そして、次の一言で空気が重苦しいものになる。

 

「……だが、一高選手としては非常に有難いが十師族や百家としてはなぁ」

 

十師族は魔法師の世界でのある種の特権階級。十師族とそうでない魔法師の間には越えられない力の差があるとされ、それ故に魔法師の中で『十師族を倒せるのは十師族だけ』という暗黙にして鉄の掟が存在する。だが……。

 

「八幡くん、『クリムゾン・プリンス』倒しちゃったからなぁ……」

 

「冗談抜きで十師族の権威が地に落ちかねないぞ」

 

「大丈夫か?明後日のモノリス・コードでも一条が負けた日にはとんでもないことになるぞ」

 

害悪自由人・八幡の行動に心なし頭痛がしてきた3人だった。

 

「……どうする?モノリス・コードでは手を抜くように言い含める?」

 

「いや、一高選手としての面を考えると不可能だ。後……」

 

「「後?」」

 

「奴の性格を考えると『十師族にとって不味いことになるから手加減してくれ』なんて言った日には喜び勇んで全力を出して本気で十師族を滅ぼしかねない」

 

「……確かに。あの子そういうことニッコニコでやるタイプだもの。そもそもあの子、参加理由が『優秀成績収めたら夏休みの宿題が無くなるから』なのよ。そんな子に言っても無駄でしょ」

 

「……強い後輩がいるのは今後も安泰ということで先輩としては心強いが、裏目に出ることってあるんだなぁ」

 

痛み止めを飲む真由美と天を仰ぐ克人、現実逃避を始める摩利。八幡の自由人ムーブで真由美の胃は限界だった。

 

「……仕方ない。こうなったらモノリス・コード本戦だ!辰巳と服部に頼んで十文字のワンマンプレーで優勝を得るしかない!」

 

「……それしかないか」

 

「仕方ないわね……」

 

八幡の人間性と実力を最悪の形で信頼した結果だった。

 

「ところで、胃薬と痛み止めいる?」

 

「……胃薬を貰おう」

 

「真由美、私にも頼む。痛み止めだ」

 

それはそうとして3人の心は1つだった。せめて十師族がヤバいことになる結末にならないといいなぁ、と。

ネタバレするとその願いは叶わないのであった。

 

 

 

 

 

そして更に時が経ち、時刻は18時。何故か達也に『飯食わずに暫く外ほっつき歩いてろ』と言い含められた上で部屋を追い出された八幡は、暇潰しがてら施設を歩き回っていた。

 

「暇だなー……何故追い出されたんだ俺は」

 

そう呟き、食堂に行こうとして……やめる。

 

「あっぶね。飯食うなって言われたのに食いに行きそうになったわ」

 

そうして引き返し、改めてうろうろしていると、八幡は知人に出くわした。

 

「げ」

 

「げ、とはなんじゃ」

 

「じゃあ『ご』で」

 

「ご……」

 

出くわしたのは四十九院沓子。これまた暇だったのか、八幡の傍に来て話し始める。

 

「いやあ、まさか一条を降すとはのぅ」

 

「降した訳じゃねぇよ。勝負はモノリス・コードに持ち越しだ」

 

「ほう。ならば一条にはそっちで勝ってもらわねばな。……勝算はあるのか?」

 

「チーム次第。こっちが無駄にプライドの高い雑魚2人なんでな。そっちがプライド特大の無能を連れてたらワンチャンってとこか。ま、アイツはそれで勝ったところで自分の勝ちとは認めないだろうがな」

 

「じゃろうな。となれば、彼奴が狙うのは……」

 

 

 

「「お主()との一騎打ち(タイマン)」」

 

 

 

「まあそれしかないだろうな」

 

「うむ。……む、何か鳴っておるぞ」

 

沓子が八幡の私服のポケットを指差す。八幡がポケットに手を突っ込み中のものを引っ張り出すと、確かに端末に着信が。

 

「……あ、戻ってきていいみたいだ」

 

「なんじゃ、追い出されとったのか?」

 

「なんか知らんけどな。じゃ、そろそろ俺は部屋に戻る」

 

「そうか。それでは、また明日じゃ」

 

「おう」

 

 

 

 

 

「……結局何で追い出されたんだろうか」

 

そんなことを呟きながら部屋へと向かう。そして部屋の前に着いたんだが……

 

「……なんか沢山いるな」

 

扉の向こうから心音と抑えた呼吸音がめっちゃ聞こえる。えーっと……まず達也だろこれ。んで深雪、雫、光井、レオ、エリカ、柴田、幹比古……これいつもの面々勢揃いですね。はい。え、何。入ったら袋叩きにされたりすんのかな。そん時は全力で抵抗するんだけど。

 

「……」

 

懐からCADを取り出し──────部屋に突入!

 

パパパパパパパパパパパパパパパパ!!!!!

 

「何何何何何」

 

何もわからん。ガトリングの銃撃音かよ。

 

『Happy Birthday 八幡!』

 

「待てや!!!!!」

 

俺がそう叫ぶと、部屋の中にいた全員が楽しそうな顔をしていたのがスンッと真顔になる。こっわ。

 

「どうしたパパパ八幡。今日誕生日だったからパパパパパパパパ皆で祝おうと思ったんだパパパ」

 

「そうなのパパパパパパパパそりゃありがとな。でもこの不意打ちはパパパビックリしたパパパパパパパパうるっせぇなぁ何時まで鳴ってんだコレェ!?

 

耳痛くなってきたんだけど。

 

「……ようやく鳴り止んだ。マジで煩かったんだけど何これ」

 

「火薬なし百連装クラッカーだな」

 

「火薬なし百連装クラッカー」

 

なんだそのヤベェ代物。評価できるポイントが火災報知器に引っかからない火薬なし部分しかねぇ。

 

「とりあえず質問。これやろうって言い出したの誰?」

 

「まず八幡の誕生日を祝おうって言い出したのがレオ」

 

「俺だな」

 

「……まあ納得の面子ではある」

 

こういうことやろうって言い出す筆頭だな。

 

「ただエリカが『普通に祝ってもつまんない』って言い出した」

 

「言ったわね」

 

「犯人お前かよ」

 

何で祝われる側のはずの俺が一番疲れてんだよ。

 

「それで派手に行くのを考えた結果沢山撃てるクラッカーを人数分用意して八幡が入ると同時に使ったら楽しいと思ったのよ」

 

「小学生の感想かよ。……ってか火薬なしはともかく、百連装クラッカーとか何処で買ったんだよ。そもそも売ってんのか?」

 

「あ、それ作ったの達也だ」

 

「俺だな」

 

「達也ァ!?」

 

想定外の人選過ぎるだろ。いやそういうの作れるかで言えば作れそうだけど自分の技術をそういうことに使わなさそうって意味で。

 

「お前はそういう悪ふざけしないと信じてたのに……」

 

「いや、俺としても楽しそうだったからな」

 

「助けて雫、サイコパスに虐められてる」

 

「私がどうこうできる範囲じゃないでしょ」

 

いやまあそれはそうだけど。助けを求めて縋り付くと雫に頭を撫でられた。情けない絵面ではあるが、撫でられて気が楽になってるあたり本気で疲れてるかもしれん。

 

「っていうか雫たちは止めなかったのかよ」

 

「僕が知った頃には手遅れだった」

 

「まあ幹比古は知り合ったの九校戦始まってからだったしな」

 

「私とほのかは『楽しいことする』とだけ聞かされてた」

 

「私は一応止めたんですが……」

 

「お兄様が楽しそうなので」

 

「やっぱこいつら3人が主犯か」

 

俺がそう言うと、その3人から声が上がる。

 

「俺たちの何処が主犯なんだよ」

 

「そうよ。ただ達也くんにクソやばいクラッカー作ってもらっただけでしょ」

 

「俺は頼まれたのを作っただけだぞ」

 

「黙れお前らに発言権があると思うなよ計画犯扇動犯実行犯」

 

お前らマジで何なの?

 

「……片付けは3人でやれよ」

 

「問題ない。クラッカーのテープの端は本体に繋がってるから……ほら」

 

そう言って達也が手に持ったクラッカーを引っ張ると、繋がったテープが引き上げられる。

 

「しっかりしてんなクソが。その頭をもっと別のことに活かせや」

 

マジで頭痛くなってきた。

 

「まあそれはそうとして」

 

そうとすんな。

 

「改めて、八幡。誕生日おめでとう」

 

「……俺友達に誕生日祝われんの初めてなんだけどどうすりゃ良いんだ?」

 

「アンタ本当に高校まで悲しい人生送ってきたのね……」

 

「初手百連装クラッカーな時点で経験があっても参考にならんだろ」

 

「反省しろよお前ら」

 

「「「はい」」」

 

そうして、紆余曲折ありながらも俺は魔法科高校(ここ)で出来た友人と共に祝う初めての誕生日を過ごすのだった。

ちなみにバースデーケーキは大好物のチョコレートケーキだった。やったぜ。




司波達也
実行犯。八幡の音使いによる無意識の影響が原因で、深雪以外への感情が少し出るようになっている。普通の人間を100、本来の達也を5とすると今は15くらい。八幡に贈るつもりだったものは持ち込めなかったので後日贈る予定。

司波深雪
八幡の影響による達也の感情の発露を薄々勘づいている。これにはお兄様大好きな深雪もにっこり。八幡には雪の結晶型のブローチを贈った。

北山雫
ブランシュ襲撃の際の一件と今日の一件で八幡への好感度が大分高い。ほとんど無自覚の恋愛感情。後は何かしらのきっかけで自覚するだけ。頑張れ、相手は無自覚鈍感人たらしのクソボケだぞ。八幡には水色の雫があしらわれたピアスを贈った。

光井ほのか
雫の気持ちを何となく察している。雫が自分の恋路を応援しているので雫の方も応援するつもり。八幡には光のエフェクトのような刺繍がされたハンカチを贈った。

西城レオンハルト
計画犯。八幡にはガントレット型のCADを贈った。八幡に自分と同じ近接戦闘系の魔法を布教しようと考えている。

千葉エリカ
扇動犯。八幡にはサーベル型のCADを贈った。八幡に剣を使う魔法を布教しようと考えている。

吉田幹比古
百連装クラッカーに内心めちゃくちゃビビっていた。八幡へは知り合ったばかりで誕生日も知らなかったので無し。

柴田美月
3人を一応止めようとしていた数少ない良心。二科生組のはっちゃけのブレーキは幹比古と美月に託された。いらなさ過ぎる。八幡へはヘッドホン型CADを贈った。

比企谷八幡
誕生日を迎えて16歳になった。なのに祝われる際に準備のためとはいえ部屋を追い出され戻ったら百連装クラッカー×8の八百連装クラッカーのテープを浴びたとても可哀想な奴。初めて友人に誕生日を祝ってもらえたのでその全てを許した模様。それはそうとしてめっちゃCAD貰ってビビった。え、本当に貰っていいの?……じゃあ貰うけどお前らの誕生日の時にはしっかりプレゼント贈るから覚えとけよ。

一条将輝
決着は明後日。魔法科高校新人最強を決めよう。

四十九院沓子
偶然八幡と出くわした。モノリス・コードでの将輝vs八幡がどう転ぼうと面白いので勝ち確。

七草真由美
八幡がやらかさないことを願っている。叶わぬ願い。

渡辺摩利
百家の人間なので十師族が凋落しても他2人と比べてダメージは低いが面倒なので八幡には自重して欲しい。不可能である。

十文字克人
八幡を止めようにも止められないのでやらかす前提で動くことにした。一高最強の良心。がんばれ克人まけるな克人。

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