前回は八幡vs葉山の決戦を書くためだけの回で、それをぶっ込んじゃうと他の文章全てが邪魔にも思えてしまう気がして分けたんですが、逆に文字数が少なくて薄い気がしたんですよね。どうしよう。
ちなみに今の目標は調整平均のゲージを赤く染めることです。
「おは斬首」
「開幕血みどろやめて?……って、比企谷くん!?」
朝起きて、完全虚無の空きっ腹に苦しみながらも耐えること二時間。ようやく朝食のビュッフェがオープンしたので向かうと、深雪、北山、光井の1-A女子3人組とスバル、エイミィの2人の合わせて5人セットが。空きっ腹に腹の虫がえげつない悲鳴を上げてたのに対して達也は「ドラゴンのいびきか?」とか言ってくるしさ。あいついつかシバこ。
「おう、八幡さんですよっと」
そう言って空席のところにトレーを置いて着席。『頂きます』の挨拶もそこそこにかき込み始める。
「うわ、昨日以上に食べてる」
「昔話みたいな山盛りの白米ってこの速度で消えてくんだ……」
「ドラゴンボ○ルとかでしか見ない勢い」
「
「行儀悪い」
「(ゴクン)……悪い。昨日ガス欠寸前までやったから夕方から半日分爆睡してて胃袋スッカラカンだったんだよ」
そう言って空になった器を持ってビュッフェ周回二周目。再び山盛りにして席に戻る。
「……確かに、昨日のアレは凄まじかった」
「僕も後でエイミィに見せてもらったけど、激戦だったね。八幡の高い防御性能と相手の攻撃性能がぶつかりあった衝撃、その後の八幡の最後の雷撃……生で見たエイミィたちからすればとんでもなかったんじゃないかな?」
「そうね。衝撃がお腹の底まで響くくらいだったわ」
『
「まァそんなこたぁいいんだよ。昨日は昨日で今日は今日だ。俺と深雪、北山は氷倒しの決勝。光井は波乗り準決勝と決勝だ」
「そうだね。……深雪、負けないから」
「私も、全力で雫に立ち向かうわ」
「おー、バチバチだねぇ。あ、光井」
「どうしたの?」
「俺が教えた『アレ』、今日は存分に使っていいぞ。そも予選で一瞬だけって指定したのもソレに頼りすぎないようにするためだし、どうせアレは
俺がそう言うと、苦虫を噛み潰したような顔をする光井。そんな嫌か俺が教えた魔法使うの。
「……八幡さんが教えたという魔法、どんなものなのか私は知らないのだけれど……ほのか、どんな魔法なの?」
「うーん……一言で言うと『絶対喰らいたくない』。学校で私と達也さん、比企谷くん、渡辺先輩の四人で練習の時に比企谷くんが使ってみせたんだけど……」
「……だけど?」
「先輩相手に圧勝してた」
「……………」
そして、その会話を盗み聞きする影がひとつ。
「そーいやなんかさっきから俺一高男子に睨まれてんだけどなんかした?心当たり多すぎてわかんねーんだけど」
目線を向けられている方を見ると、森なんとかを始めとした一高の一年男子の姿が。なんだテメェら。喧嘩なら買うぞ。
「あー……達也さんがメンテナンスを担当した女子側が早撃ち優勝だったり氷倒し上位独占、今日も波乗り準決勝にほのかが出るのに対して」
「男子側は森なんとかが早撃ちの決勝に進出した程度、もう一人の決勝進出した奴も達也と交流がある俺だから散々に達也のこと虚仮にしてた反動で肩身がせめぇと。ざまぁねぇな」
「歯に衣着せるって概念ないの?」
「相手は選ぶさ」
逆に言えばこいつらに忖度する意味もねぇって判断したってことなんだけど。
「……ごちそうさん。ま、腹八分目ってとこか」
「あれだけ食べて?」
「今日試合がないから少なめなスバルとエイミィの食事量を足して三倍したみたいな量食べてたけど」
「普段は流石にこんな食わねーよ。昨日晩飯食ってなかったから食欲に狂ってた」
「いつも何かしらに狂ってると思うけど」
「否定はしない」
否定はしないけどそれはそうとしてムカつくものはムカつく。
「そういや今日のタイムスケジュールってどうなってたっけ」
「午前にほのかの波乗り、午後は……順番としては比企谷の一戦目、私と深雪の決勝、最後に比企谷と一条の最終戦だね」
「ありがと雫。じゃ、私はそろそろ準備しなきゃ。三人も頑張ってね」
そう言って席を立つ光井。それに手を振って応えると、俺もトレーを持って席を立つ。
「飯食い終わって長居もまずいからな、俺もそろそろお暇させてもらう。……二人とも、決勝頑張れよ」
そう言って立ち去る。一戦目はどうとでもなるが……将輝相手がどうなるかだな。ま、なるようになるさ。
暇つぶしにうろうろしていると、モニターが設置されたちょっと広めの休憩室ような場所と、そこにいた人物が目に留まる。
「お、将輝に真紅郎」
「……八幡か。随分と緊張がないようだな」
「自然体なのさ」
そんな軽口を叩き、休憩室に入り相席。
「確か、一高からも波乗りの準決勝に進出した選手がいたな」
「光井のことか。まあ中々に強く仕上がってるぜ?ボードのハンドリングは渡辺先輩に、魔法に関しては俺と達也の二人がかりで面倒見たからな」
「……恐ろしい組み合わせですね」
そんな雑談に興じていると、人影がやってくる。
「……葉山か。また中々に強い奴と会う日だ」
「まあね。……座ってもいいかな?」
「俺は構わねぇよ。……二人は?」
「俺も構わない」
「僕も大丈夫です」
「そうか。それじゃあお言葉に甘えて、相席させてもらおう」
十師族の分家の人間に十師族、その右腕たる天才……また錚々たる面々だな。
「いや、その十師族の分家の人間を倒した君が言っても皮肉にしかならないだろ」
「だな」
「ですね」
おっと、多勢に無勢。話変えよ。
「……お、そろそろ波乗り始まんぜ」
俺がそう言うと、全員の目がモニターに向く。
「一高からは光井が」
「三高からは四十九院」
「……二高からは、雪乃ちゃんと結衣が出る」
準決勝は6人を3人ずつに分け、その3人ずつの中の勝者同士がタイマンする。つまりまずこの準決勝に勝てなければ、決勝には挑めない。さて、対戦カードはっと。
「……光井と由比ヶ浜、後一人が別んとこの奴」
「雪乃ちゃんと四十九院さん、そしてもう一人だね」
「……葉山。由比ヶ浜の腕は?」
「結衣は腕はいいんだが……本人の得意分野が炎系統だからね。気質の問題でこうなっただけで、魔法の分野としてはバトル・ボードにも向いてないんだ。もう一つの出場競技である氷倒しも初戦敗退だったからなぁ……」
「……一応聞くが、相手は?」
「君のところの北山さんだね」
「そりゃ相手が悪いわ。一高一年の実技三位だぞ」
「……一応確認なんだけど、一位と二位は?」
「俺と深雪」
「……規格外め。と言っても雪乃ちゃんもその司波さんに三回戦で惜しくも敗退してるし、俺も君に負けてるからね。……今年の一高ヤバすぎるでしょ。師補十八家の娘を倒したり十師族の分家倒したり上位独占したり。これで一条を君が倒したら二十八家の魔法師としての権威総崩れだよ」
「何それ面白そう。やろっかな」
「やめて?????」
まあアイツら普通にそこらの良いとこの家の魔法師を越える強さあるしな。俺?俺はまあ裏技使ってるバグ枠なので。
「で、将輝。お前んとこのあののじゃロリはどーなんだよ」
「のじゃロリ……まあそうか。あいつは神道系の名家の出身だよ。得意分野は水系統」
「……葉山。お前の幼馴染、詰んだんじゃね?」
「雪乃ちゃんが得意なのは水……というよりは分子運動の減衰による凍結系統だからなぁ。コース凍らせていいなら勝つだろうけど」
まあそりゃあな。総武中学の氷の女王は伊達じゃねぇわ。
「……あれ、『将輝』?」
「ああ、こいつの妹が俺のファンなの」
「ちなみに妹からの尊敬を取られた将輝は割と本気で八幡の殺害計画を練ってましたね」
「ヒエッ…」
「もう破棄したから大丈夫さ」
「何も大丈夫じゃねぇなァ!?」
「……苦労してるんだな」
「憐れむ目で見るくらいならこいつ止めんの手伝えや」
結構怖いんだぞコレ!
「……いや、話がズレてますよ。波乗りの話だったでしょう」
「あ、そうだった。ありがとな真紅郎」
「ふむ……八幡、そちらの光井ほのかは何が得意なんだ?」
「知ーらね。一応一高の実技五位取ってっけど。なんか達也曰く『光のエレメントへの親和性が高い』とかなんとか」
「光か……そういえば予選の時の閃光魔法、もしかしてお前か?」
「いや、アレは達也の仕込み。俺はまた別」
渡辺先輩曰く、俺の開発した魔法と達也の開発した魔法の違いは一発で分かるらしい。達也のは『殴るなと言われたら殴らないけど環境弄って有利にするタイプ』、俺のは『殴るなと言われたら殴らないけど蹴るし斬るし撃つし吹き飛ばすし爆破するタイプ』らしい。どういうことだよ。良く聞いたら『ルールの穴をつく達也とルールに書かれてないことなら何してもいいと思ってる俺』とのこと。……納得してしまった。
「あー……」
「確かに」
「なんでお前ら俺の批判に対して理解示してんだよ」
泣くぞ。しめやかに密やかにつつましく派手に騒がしく仰々しく泣くぞ。
「……まあいいや。ほら、始まるぞ」
スタートと共に閃光魔法を行使する光井。予選の時と違ってゴーグルを付けてないからフラッシュ炊いてこないと予想したみたいだが、アイツにボードのハンドリング仕込んだのは事故さえなけりゃ本戦の一位取ってたであろう渡辺先輩だぞ。フラッシュの影響があるほんの数秒間、
「……まさか、『ゴーグルの有無』までブラフにするとは」
「まあアイツはこういう腹芸は苦手な奴なんだけどな。外付けのゲスヘッドで補わせてもらった」
俺のことだけど。
「さて、予選の再演のようにノーガードのところに叩き込まれたフラッシュだ。もう目自体は機能してんだろうが、物はっきり見るにゃもうちょっと時間が掛かるだろうな」
由比ヶ浜らがもたついている間に、突き放し続ける光井。こりゃジュース飲みながらのんびり見れるな。
「……カーブの際、妙に膨らんでいるな。何か苦手だったりするのか?」
将輝の指摘の通り、光井のカーブは入りと共にカーブの中間地点で大外近くまで出て、そのまま方向転換。カーブの出口の最内側に向かうように曲がっている。確かに妙に見えるだろうな。
「スピードってのは直線が一番出しやすい。じゃあ葉山、どうしてもスピードを落とさざるを得ないカーブで可能な限り早く進むにはどうすればいいと思う?」
「……そりゃあ、一番短い経路である最内側を……」
「うんにゃ、そうしたらスピードを落としすぎる。だから俺と達也は別の解を出した。
「……なるほど、そういうことですか。あのコーナリングはカーブではなく、カーブの入口と出口の最内側と大外の中間点を頂点とした巨大な三角形。カーブがきついほどスピードを落とさなければならないのなら、『スピードを落とした上でカーブを回る時間よりも方向転換も含めた上で短く回れる速度・ポイントを計算すればいい』」
「そゆこと。そのために急加速と急停止を仕込んでおいた。これが俺と達也の『最適解』だ」
そうこうしているうちに、三周目も終盤。こりゃ光井の勝ちで決まりだな。
「……っ!結衣!」
決勝進出を焦ったのだろう、由比ヶ浜が急加速。光井を跳ね飛ばしてでもという勢いでゴールへと突っ込む。
「……アホが。んなもん効くかよ」
モニターの映像には魔法による想子光などが映るようになっており、非魔法師でも問題なく視聴が可能となっている。それ故に、モニターにはっきり映った。光井の手元、持っていたCADが光り──────次の瞬間、突如由比ヶ浜の身体がふらつきボードから滑り落ちる。そのまま水の中へと沈み、制御を失ったボードはあらぬ方向へ。そして後続を大きく突き放した光井は、悠々自適にゴール。決勝戦へと駒を進めるのだった。
「……今のは」
「今のが俺の仕込みさ。カラクリを知った友人や先輩には『悩みあるなら聞くよ』『人間性に問題があると思う』『違法じゃなかったら何してもいい訳じゃないんだぞ』『精神科紹介しようか』『やられる側は死ぬほど嫌』『「こころのノート*1」とか読まずに育ってきた人間?』と言われた、俺が開発したオリジナル魔法」
「めっちゃ散々に言われてるじゃん」
「俺知らんとこで皆の故郷焼いたりしたんかな……まあいい。そんなカラクリを知ったやつからの顰蹙率脅威の90%越えのクソ魔法。その名も──────」
その後、準決勝第二回戦が開始。俺と将輝、真紅郎の予想通り水系統が得手である四十九院が雪ノ下を圧倒。ってか葉山も口では雪ノ下を支持してたけど内心諦めてたろアレ。
そして、試合は決勝に。光井と四十九院のタイマン勝負となった。
「……で、君が光井さんに教えたっていう魔法。『侵気楼』とやらは一体どんな魔法なんだい?」
「……まあ、教えたところでどうにもならないもんだし良いか。今教えたところで四十九院に教えるには手遅れだし」
そんな中、決勝戦が開幕。閃光魔法を行使する光井に対して目を閉じながらスタートダッシュすることで対応する四十九院だったが──────
『……ッ!?』
目を開いた瞬間、『幻視の霧』が襲いかかる。
「『侵気楼』は振動・収束・発散の三系統を利用した系統魔法だ。『発散』の相転移により周囲の水分を気体にして霧を生成、『振動』と『収束』による光波操作による偏光で景色を歪める……要は人工的に『蜃気楼』を作り出す魔法だよ」
「……蜃気楼?それだけでこんな効果があるのか?」
「『振動・収束』による偏光の操作だな。これで水面やフェンス、他の選手との距離の目算を狂わせるんだ。やろうと思えば『視界の中にいるはずなのに見えない』なんてことも出来る。フラッシュ焚いたのに反応して目を閉じたまでは良いが、目を閉じさせるのが目的とまでは読めなかったみたいだな」
この前舌戦ツアーさせられた仕返しだ。気の済むまで手のひらで踊っていけ。気が済んだところで終わるかどうかは知らんがな。
「この魔法のエグい部分は『喰らうと自分の視覚を信用出来なくなる』部分だ。実際には喰らってなくても影響を受けているんじゃないかと、自己に対しての疑心暗鬼に陥る。外部から獲得する情報の大半を視覚に頼っている人間故の高い効果だな」
「お前人の心ないよ」
「パラノイア量産魔法とかヤバいぞ」
「規制されませんかこれ」
「違いますーあくまでこれは光波に干渉するだけですー。勝手に自分自身すら疑って狂っちまう雑魚なのが悪いんですー」
「カスだろこいつ」
「世のため人のために殺しといた方がいいんじゃないか?」
「それ昔作者が無機物性愛者のリア友にL○NEで真夜中に『グランドピアノに興奮するんだけどどうしよう』って言われた時の反応だろ」
「だが光井さんが無自覚にやらかしてしまう前に責任を比企谷に取らせた方がいいだろう」
「やらかしてしまう前なのかよ。禰豆子が人食う前に鱗滝さんと冨岡さんと炭治郎腹切らされてんじゃねぇか。まあ待てって、それくらいちゃちゃっと治せるから安心しろ」
「……人工的に精神疾患を発症させる魔法を開発するのもそれを片手間に治療出来るのも異常過ぎるだろう」
まあ異常ではある。でも精神疾患の方は副次的効果なんだよなぁ。
「……だけど、こちらは水場では無類の力を発揮する。目が信用出来ないなら、信用出来るものを基準に置けばいい」
将輝がそう呟くと、戦況に変化が。コースから波が消え、お互いが加速により滑るようにコースを進んでいく。それに対して光井が『侵気楼』を行使、視界を狂わせて妨害を図るが……。
「……チッ、そういうことか」
『侵気楼』を受けた瞬間、周囲に複数の渦を生成する四十九院。渦は小さく、互いに影響はほとんどない。
「あいつ、事象改変の適用位置を基準として自分の状態を知覚したな?」
「……すまん、比企谷。さっぱり分からんから説明してくれ」
「あののじゃロリ、周囲に渦を幾つか作ったろ。あの渦は全部回転が異なるんだよ。一秒間の角回転速度や回転方向がな。それを展開することで、光井がどう視覚を弄っても必ず複数の渦が視界に入るようにしやがった。自分が作った渦だからな、見えてる渦が分かれば視点の位置も分かる。そうやって自分の周りが見えてないなりに正しい周囲との相対距離を算出したんだ」
「……何の気なしに言ってるけど、中々に高等技術じゃないか」
「そうかな」
「そうでしょうか」
「目使わなくても周囲くらい分かるだろ」
「ダメだここに居るの俺以外
失敬な。俺はこの2人よかマシだろ。*2
「比企谷、相手が同じ手段で対策取ってきたらどうする?」
「秒単位で視点を変えさせる」
「お前マジでさ」
確定乗り物酔いだぞ。
「だが相手はお前じゃない。四十九院も渦によって徐々に距離を詰めている……勝つのは俺たち三高だ」
「どうだろうな。……考えても見ろよ。そっちが視界から逆算して位置を確認しなきゃならないのに対して、こっちは普通に確認出来る。ほら、見ろよ」
光井が更に加速。四十九院も遅れて加速するが──────手遅れだ。
駄目押しのブーストを掛けた加速は、光井と四十九院の距離を広げることも縮めることもなく……そのまま、波乗り優勝の座を光井が手にした。
「……さて、俺は昼の氷倒しの三戦のうち最初と最後だからな。そろそろ行かせてもらうぜ」
俺はそう言って席を立ち、休憩室を後にした。
「……将輝、気付いていますか」
「何がだ」
「『侵気楼』……アレはその性質上、殺傷性ランクの対象外。つまり……」
「……まさか、『モノリス・コード』でも?」
「可能性は大いに。……改めて、警戒の度合いを大きく引き上げる必要がありそうだ」
波乗りも終わり、暫しの休息時間を空けて午後。今日の氷倒しの初戦は俺の試合だ。……ま、瞬殺でいいか。
「圧壊しろ!」
加速のプロセスを組まない移動魔法により、相手の氷柱を纏めて捩じ切る。これで俺の勝ちだ。この程度なら将輝も問題なく勝つだろう。……後は、俺とアイツの決戦だ。
天幕に戻り、備え付けのモニターを眺める。順番的にはほぼ同じ時間に将輝の試合と深雪と北山の試合だからな。深雪達優先で観よう。
「……『共振破壊』と『
北山は情報強化で氷柱を保護してるみたいだが、アレは魔法による変化こそ防げても周囲の影響は受けるからな。このままではジリ貧だろう。そう思って見ていると、北山が懐から拳銃型CADを取り出した。ありゃ特化型か。
「……同時使用?また高等技術だな。……達也の仕業か?」
そしてその特化型CADから放たれたのは……高出力の熱線。超音波の量子化だな。確か……『フォノンメーザー』だったか。
放たれた『フォノンメーザー』は深雪の氷柱を破壊、深雪の凍結による巨大な氷柱の牙城に傷を叩き込む。
『……フォノンメーザーまで使うなんて。改めて、本気で行くわ!』
そうして、深雪が新たな魔法を行使。見ているだけで背筋が凍りそうな冷気が溢れ出し、陣地を覆い隠していく。
「……『ニブルヘイム』か。高等魔法のオンパレードすぎるだろ」
……だが、俺としては幸運だ。全部
北山は情報強化の出力を上げて耐えようとするが、さっきも言ったが情報強化は周囲の影響自体は受けてしまう。再び発動された最大出力の『氷炎地獄』が襲いかかり──────勝負は決した。
「……どんでん返しが見たかったが、そう上手く行かないか」
トイレ行こ。
トイレで用を足して戻る最中。通路を歩いていると、北山と鉢合わせた。
「……試合観たぞ」
「……うん」
……そのまま立ち去る気にもなれず、近くの自販機でジュースを2本購入。1本は北山に渡し、適当に目に付いた通路の座席に座る。
「やっぱり深雪は強いね。氷柱を1本壊すだけで終わっちゃった」
「まァ伊達に実技2位はやってねぇわな。っつーかあいつ相手に氷柱1本でも壊せる奴が一高に何人いると思ってんだ」
多分北山と深雪本人くらいだろ。俺も出来なくはないが。
「……北山は本気で頑張った。そして深雪もそれに応えて全力を出し、結果として北山が負けた。それだけの話だ」
「……慰めの言葉とか言わないんだね」
「あんなもん敗者への侮辱だ。慰めりゃ敗北がなくなるのか?気休めの言葉でその戦いがなくなるのか?……違うだろ。だから俺は決して……ごめん嘘。気に食わねぇやつには煽りも込めて慰めの言葉は吐くが、少なくともダチにそんな言葉は言わねぇ。俺がお前にかける言葉は慰めではなく、健闘を讃えるもんだけだ」
「……比企谷らしいね」
「そりゃどーも。……ところで、音使いの技術には色々あってな」
「……?」
「音を使って、
「……それじゃあ、少し甘えさせてもらおうかな」
そう言って北山は俺の方へと倒れ込み、俺の胸元に顔を埋め……いや、これ以上は北山の名誉のためにも言わないで置こう。
俺は北山を労うようにその背を撫でさすり、音を相殺する封音結界を唄うのだった。
そして唄うこと5分。ようやく落ち着いたのか、北山が顔を上げる。目尻も頬も赤いな。ハンカチを取り出し、まだ濡れている目元の水分を拭き取る。擦ると腫れるから、ハンカチに水分を吸わせる感じだな。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
CADを使用し、服についた染みを蒸発させて消す。これでこの後の試合も問題ないな。
「……この後の試合、勝算はあるの?」
「ん?んー……ま、後は野となれ山となれ」
「やる気あるの……?」
少し呆れた目をする北山。すると、何か意を決したように口を開く。
「……
「……おう」
そう言って、北山……いや、雫は立ち去った。
「……ったく、あんにゃろー……」
んなこと言われたら、勝つしかねぇじゃねぇか。
本日のプログラム、最終試合。
SNSでエゴサしたら応援ツイが沢山あったが……ま、今の俺にゃ誤差の範囲だ。
「よう、将輝」
「……八幡」
「ここまで散々はぐらかす物言いしてきたが……全撤回だ」
「……?」
「この勝負、俺が勝つ」
「……ああ、俺こそ。今の俺にとって、お前を倒さずに得られる勝利の栄冠に価値は無い」
俺のその啖呵に、将輝は驚いたような顔をして──────気を引き締め、言い切った。
「始めようぜ、新人最強を決める戦いを」
俺たちは入場口から試合会場に入場。互いに櫓に上がり、向かい合う。
歓声が響く中、俺たちが櫓に上がった瞬間に世界から音という概念そのものが奪われたかのように静まり返った。
2人の決勝戦を会場にて生で観戦しに来ていた非魔法師の一般人は、後にこう言った。
「あの時は全員が同じ気持ちだった。あの2人のオーラに呑まれて、誰も声を出せなかった。……下手に騒いで2人の集中を削げば、次の瞬間殺されているだろう。そう思えるほどの気迫だった」
と。
耳が痛くなるほどの静寂の中、刹那たりとも集中を切らさず櫓の上で仁王立つ八幡と将輝。そして、試合開始のブザーが鳴った──────
八幡が『爆裂』を宣言した瞬間、全ての氷柱が消し飛んだ。
氷柱が消し飛び、試合が終わった瞬間に世界に音が戻る。観客席からは一瞬で試合が終わってしまったことを惜しむ声、どちらが勝ったのかを予想する声など、数多の声が飛び交う。
約30秒の審議・カメラ確認の末──────会場のモニターに、勝敗が映し出される。
「……言ったろ」
男子アイス・ピラーズ・ブレイク新人戦。
優勝、比企谷八幡。
オリジナル魔法
『
振動・収束・発散の三系統を複合した魔法であり、『発散』によりコースに大量に存在する水の一部を気体に変化させることで発生する水蒸気を起点として『振動』『収束』で歪んだ光景を見せる、『蜃気楼』の魔法。
作中ではほのかが使用し、他の選手に『選手同士の距離の誤認』『壁や水面との距離の誤認』を引き起こさせた。
その性質上、喰らい続けると『見えているものが真実か偽物かわからなくなる』ためにボードや魔法の操作そのものが覚束なくなるというある意味では魔法師殺しとも言える魔法。名称は『
比企谷八幡
実は、ス○バにはドレスコードがあってジャージで入るとつまみ出されると本気で信じている。
四十九院沓子
あの性格悪い魔法比企谷が作ったやつじゃろ。
光井ほのか
よくわかったね。
というわけで九校戦、新人戦三日目でした。今回は雫との仲が深まる回という位置付けです。次回は四日目……の前にちょっとしたイベントです。それではまた次回。