投稿が早い?
実は前話と合わせて出すつもりだったけど合わせると長すぎて切った方がいいなとなったんですよね。なので今回の半分以上は既に書いてあった部分で、後からちょっとだけ加筆しただけです。次回は普通にそこそこ時間かかります。
「凄いじゃない達也くん!これは快挙よ!」
戻って来たところで丁度終わったらしく、会長らに聞いたところ北山とエイミィ、もう一人滝川という女生徒により新人戦スピード・シューティング女子の部はトップ3を一高が独占したらしい。ええやん。
そしてその成果に会長は大はしゃぎ。達也の背を歓喜のままに叩こうとし……疲れてて叩くのは可哀想ということで代わりに俺がシバかれた。おい。
「会長、程々にしてください。司波くんが困っています」
「困ってんの俺なんだよな」
その後ムカついた俺が会長をシバき返すなんてこともありながら、改めて北山たちの評価に入る。褒められた北山が『達也さんのお陰』と言い、他2人もそれに賛同。それに達也が謙遜する中、北山が使用した魔法についての話に移った。
「特に北山さんが使用した魔法ですが、大学の方から『インデックス』に正式採用するかもしれないと打診が来ています」
「そうですか。では……そうだな、八幡」
「ん?」
里美のクラウド・ボールのための魔法起動式をスナック菓子を食べながら考案していると、達也に声をかけられる。
「どうした」
「昨日言ったことは覚えているか」
「おう」
「あの件はどの範囲まで適用できる?」
「命賭けろ、張れ程度までなら。いくら何でも100%死ぬ『命捨てろ』までは流石に即答は出来ん。話くらいは聞くが」
「では、お前は顔も知らない赤の他人からの批判を受けても平気か?」
「有象無象の陰口でどうこうなるほど暇人じゃないさ」
「そうか。『能動空中機雷』は使えそうか?」
「魔法なしでも出来るんだ、魔法で出来ない道理はない」
「なるほど。……では市原先輩、開発者について問い合わせがあれば八幡の名前を出してください」
その言葉に驚いたのは渡辺先輩と北山だった。
「何を言ってるんだ!?」
「そうだよ、凄く名誉なことのはずでしょ?」
その言葉に、達也は冷静に答える。
「……この魔法は、軍事転用が容易です。仮に軍事転用された日には、開発者へのバッシングは免れないでしょう」
「……だから、一般家庭である司波とあくまで使用しただけである北山の代わりに比企谷がバッシングを浴びると?」
「俺は別に気にしないんで。事情を知らない阿呆100万人に非難されようと、事情を知る人1人に味方して貰えるなら俺はその全てを許容する」
「それに、波動を放つという点では八幡の音使いとしての技術に類似するものがありますからさほど違和感はないでしょう。仮に俺の名前を出すとしても、あくまで主導は八幡であり俺と八幡で共同開発したものと銘打つつもりです」
「ま、一般人とはいえこれでも音楽家として社会的地位はそれなりにあるんで。達也が馬鹿正直に名前出すよかバッシングは少ないでしょうよ。仮に軍事転用されようと、それは転用した奴が悪いのであって『俺は悪くない』」
俺はそう言うと、即席ながら完成した里美強化の魔法起動式を持ってその場を立ち去った。
「いよーっす、里美」
「おや、比企谷君。どうかしたのかい」
もちろん向かった先は里美がいる場所。なお知らなかったので割と無駄に歩き回った。
「何、諸事情で里美にクラウド・ボールで優勝してもらいたい理由が出来てな。手ェ貸しに来た」
「……諸事情?」
「……さっき三高の生徒に会ってな」
「三高の?……誰と会ったんだい?」
「えーと……何だったか。『デスゲーム開始』みたいな異名の女」
「……もしかして、『エクレール・アイリ』のことかな」
「それ」
そう言うと、頭を抱える里美。バフ○リンいる?
「そんで……その一色って奴にバカにされてムカついたからな。里美を優勝させて鼻っ柱叩き折っちゃろって思って」
「俗物的だ……」
「俺みたいなのが世俗から離れたら多分それはテロなんだよな。ほら言うだろ?嘘つきは泥棒の始まり、厭世はテロリズムの始まりって」
「全く言わないけど」
まあそれはそれとして。
「……つまり?」
「あのムカつく女にぎゃふんと言わせたいから手伝ってください」
土下座する勢いで頼み込んだ。
「悲しい生き物だ……具体的には、どうやって?」
「とりあえず強化プランとしては『2つ』。技術を身につけるのと新たに魔法を使うことだな」
「魔法って……何かいいものがあるのかい?」
「無かった。ので
「作った!?え、魔法を!?」
「達也が作った魔法が『インデックス』に登録されるらしいからな。せっかくだし俺もちょっと作ってみようと」
基本骨子はなんとなくイメージ出来てたから15分で出来たし。
「俺はアイツに一泡吹かせたい。里美は優勝を狙える。利害は一致してるはずだぞ?」
「……それじゃあ、お願いするよ。今の僕では、勝ち目はあっても勝算はないからね」
「っし、じゃあ説明するぞ。まずこれは──────」
そうしてクラウド・ボールのための魔法の内容を教え、CADに新たに登録。あ、達也に新しく魔法登録させたこと伝えとかないと。
魔法のインストールや使い方など、いくつかの注意事項も伝えている最中。試合が終わり私服に着替えたエイミィがやって来た。
「あ、エイミィ」
「スバル……あら、比企谷くんも一緒だったのね」
「諸事情でな。ちと入れ知恵もしてた」
「……私の記憶が確かなら、明日って『氷倒し』の予選だったわよね。大丈夫なの?」
「
俺がそう言うと、呆れた目になるエイミィ。
「仮にも学校の代表生徒として来る面々を雑魚呼ばわり……逆にどのラインから『雑魚』じゃなくなるのよ」
「他校だと……三高なら一条か吉祥寺、二高なら……葉山あたりか。うちで言えば最低でも森崎クラスは連れてこい」
誰が聞き耳立ててるか分かんなかったから、流石に達也やレオ、エリカの名前は出せなかった。アイツらも俺ん中でしっかり強えやつ側に入ってるけどな。
「そこ今年の一年の中でもかなりの上澄みなんだけど?」
「知るかよ」
「……葉山、ね。確か二高の……この前の懇親会で、雪ノ下って子ともう一人の女の子と一緒に居たわね。知り合い?」
「ああ。昔ちょっとな」
半分黒歴史だが。
「雪ノ下に関しては聞いたことがあるわ。確か……師補十八家の分家だったはずよ」
「ふーん」
「興味無さそうね」
「そういうの興味ねぇし。偉かろうが雑魚は雑魚だし、下賎だろうが強えやつは強えのさ」
「……今の魔法社会で、それを堂々と言える人間が一体何人いるのかしら」
「九島烈とか言ってたじゃん」
「あの人はそれを言っても誰も文句をつけられない権力持ってるから……」
それはそう。……あ、始まるぞ。光井のバトル・ボード予選だ。
「光井にも入れ知恵したし、それがどう活きるかだなー」
「ほのかにも仕込みしたの?」
「言い方」
ちょっとやらしい言い回しすんなや。
「別に大したことはしてねぇよ。ちょっとした手品を教えただけだ。今回使うかもわかんねぇし」
「短い付き合いだけど、ろくなことしそうにないのは容易に想像つくし……」
「エイミィさん?????」
「あ、それは僕も同意」
「里美さん?????」
いじめか?これ。……あ、そうだ。遮光板取り出しとこ。
「何それ」
「気をつけろー。目ェやられるから閉じとけ」
「「え?」」
試合が始まった瞬間──────激しい閃光が会場を埋めつくした。
「いやー、遮光板持っといて良かった」
「うぐう……目が……目が……」
「もっと早くに言ってくれ……」
「悪い悪い」
「……で、今のが入れ知恵かい?」
「いや、これは達也のだな。水面からの照り返しを魔法で強化した代物だ」
他の選手がスタートダッシュに失敗する中、唯一上手くいった光井は先頭を独走。そんな中、追いつくために他校の選手が大波で妨害を図る。
「あ、危ない!」
「あの程度なら問題ねぇよ。俺経由で話通して、練習期間は渡辺先輩に鍛えてもらったんだぞ」
俺の言った通り、光井は放たれた大波を器用に乗りこなし更に加速していく。
「今の光井止めたきゃ、高さも厚さもその倍は持ってこい」
あ、妨害の波を放ったっぽい選手が大波に飲み込まれた。ざまぁねえや。……さて、光井は俺が教えた魔法を使うかね。『使うにしても予選の間は一瞬だけにしろ』って厳命しといたんだが……あ、焦った選手が思いっきり飛ばして来た。渡辺先輩の時みたいな事故は……ま、
次の瞬間、なんの前触れもなく加速していた他校の選手が崩れ落ち水中に沈んでいった。
「今のは……あれが?」
「おう。あれこそが俺の仕込みだな。その正体は決勝で光井が使ったら──────と言いたいところだが、あいにく俺の『氷倒し』と同日だからな。仕方ないから先行公開だ。本来ならネタばらしは明後日なんだ、それまで誰にも言うんじゃねぇぞ?」
俺はそう言って二人に釘を刺すと、俺が光井に教えた魔法の正体を明かした。
「……エグい」
「人の心落としてきたの?」
「お前らその言い草何なん?」
失礼にも程があるだろ。
「いやだって……ねぇ?」
「ルール上はセーフだけど……うん。絶対喰らいたくない」
一瞬だけにさせたからまだセーフだろ。いや決勝とかになると知らんけど。
そうして、光井は予選を一位で突破するのだった。
その日の夜。夕食を食い終えた俺が暇つぶしにぶらついていると、ある二人組に出会った。なんか今日はよく人と鉢合わせるな。
「……アンタらは、確か三高の」
「……比企谷八幡、でしたか」
出会ったのは、三高の生徒……一条将輝と、吉祥寺真紅郎だった。……なんか睨まれてるけど俺何かしたかな。にしても三高の奴とばっか出くわしちゃう。
「確か……『氷倒し』と『モノリス・コード』での参戦でしたね。『モノリス』の方は僕も出場するので、お手柔らかにお願いします」
「アンタら相手に手加減したら負け確なんだよなー……ところで吉祥寺さんよ」
「……どうかしましたか?」
「君の連れがめっちゃ睨んでんだけど俺なんかした?」
ちょっと怖いんだけど。
「あー……はい。比企谷さんが原因ではあるんですが、悪い訳じゃないので気にしないでください」
「お、おう……」
「……将輝には妹が二人いるんですが、貴方の演奏会を見に行ったことで下の妹がファンになったらしく」
「そうなのか?そりゃ嬉しいが……」
確か三高は……石川だったか。そういや去年石川のあたりで演奏会したな。観衆にどっかの小学校の生徒が一学年分来てたっけ。
「妹さんが貴方の出場を知った結果、将輝の精神に多大なダメージが入りました」
「本当に何があったの!?!?!?」
マジでわかんねぇ。
「今回九校戦に来る際……」
数日前、一条家にて
「お兄ちゃん」
将輝が九校戦会場へと向かう車両が停車している場所に向かうために家を出ようとしていた時、末の妹である瑠璃に呼び止められた。
「どうしたんだ、瑠璃」
その声に当然ながら答える将輝。『クリムゾン・プリンス』としてのドンパチや、尚武の校風を掲げる三高の学年首席を務める将輝にとって、二人の妹は猫可愛がりするほどに大切な妹だった。最近辛辣になって来ているせいで夜な夜な枕を涙で濡らしているが。
「お兄ちゃん──────」
すわ今から九校戦に向かう自分への応援の言葉か、と期待した将輝に──────
「九校戦に出る八幡さんのサインを貰ってきて!」
絶望が叩きつけられた。
「それ以降、思い出してはショックを受けていまして………いや、貴方が悪いわけではないのですが」
「ッスーーーーー……うん。なんかごめん」
「……いや、良いんだ。家族に比企谷の演奏会の映像を見せてもらったが素晴らしい腕だったからな。魔法師の性質上顔も整っていてその魔法の腕も九校戦の代表選手として参加出来る程度には立って……」
「怖ぇよ!?おい吉祥寺こいつ止めろ!」
「無茶言わないでください。何なら来るまでの最中に将輝に軽率に口出ししたクラスメイトが殴り飛ばされてました。グーで」
「ひえっ……」
大丈夫?氷倒しの際にどさくさに紛れて殺されそうなんだけど。
「あ、あー……じゃあ、こうしよう。とりあえずサインは書く。んでもって、夏休みのどこかでそっちに遊びに行こう。一条に『妹がファンだから会ってくれないか』って頼まれたとかそういう理由でっち上げて。そうすりゃ妹からの尊敬度もちったぁ上がるだろ」
「……良いのか?」
あ、一条が反応した。
「……俺だって命は惜しい」
「……すまないな。せめてものお詫びに、こちらに訪れた際は一条家が持て成すことを約束しよう」
「おう……一条も大変なんだな」
「将輝と呼んでくれ……どうせ今月中に俺以外の一条に会うのが確定しているからな」
「では、僕のことも真紅郎と」
「……わかった。それなら俺のことも名前で呼んでくれや。名前呼びしといて苗字呼びされんのは居心地が悪い」
その後連絡先を交換し、改めてどんな内容・理由で来ることになったのかを綿密に決めた後に解散した。そして部屋に戻ってきて。
「……ふぅ」
一息ついた。そんな俺を見て、達也が声をかけてくる。
「……どうした?そんな疲れた様子で」
「いや……兄って怖ぇなって」
「……?」
そうして、俺はベッドに飛び込んでそのまま眠ってしまった。
一方その頃、将輝と真紅郎はというと。
「……なあ、真紅郎」
「どうした、将輝」
「一つ気になったよな」
「ああ、ずっと目に付いてたからな」
「「あのサメの寝間着何なんだろう……」」
比企谷八幡の秘密
妹がいるのもあり、面倒見の良さのおかげで音楽家としての八幡のファンは年下女子が多い。次点で大人のお姉様方。
一条将輝の秘密
実は、隠れシスコンであることを自認しているが周囲にはバレていないと思っている。
吉祥寺真紅郎の秘密
実は、将輝がシスコンであることをうっかり沓子に漏らしたら想像以上のスピードで学校中に話が回っていてかなりビビっている。