「PFAS」基準値6120倍 静岡市の化学工場敷地外 2002年、側溝から検出

2023.10.17

 発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)を使用していた静岡市清水区三保の化学工場従業員の血液から高濃度のPFASが検出された問題で、敷地外の側溝からも2002年、現在の国の目標値を上回るPFASが検出されていたとみられることが16日までに分かった。専門家は「市が行う地下水などの調査で検出される蓋然(がいぜん)性は高い」とする。

現従業員に加え全てのOBらも対象にした健康相談を実施する三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場=16日午後、静岡市清水区三保(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
現従業員に加え全てのOBらも対象にした健康相談を実施する三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場=16日午後、静岡市清水区三保(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
現在の三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場が2002年に実施した敷地内の井戸などの水質検査結果を示す資料=ロバート・ビロット弁護士提供
現在の三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場が2002年に実施した敷地内の井戸などの水質検査結果を示す資料=ロバート・ビロット弁護士提供
現従業員に加え全てのOBらも対象にした健康相談を実施する三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場=16日午後、静岡市清水区三保(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
現在の三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場が2002年に実施した敷地内の井戸などの水質検査結果を示す資料=ロバート・ビロット弁護士提供

 工場は、2013年までPFASの一つで現在は製造・輸入が禁止されたPFOAを使っていた、当時の三井・デュポンフロロケミカル(現在の三井・ケマーズフロロプロダクツ)の清水工場。米国のロバート・ビロット弁護士が静岡新聞社に提供したデュポン社側の資料から明らかになった。
 資料は2002年8月に工場敷地内の井戸など10カ所を調査した結果が示されたもの。公道沿いの敷地外の側溝からPFOAを1リットル当たり30万6千ナノグラム検出したことが記録されている。環境省は20年5月にPFOAを水質汚濁防止のための要監視項目とし、河川や地下水などの暫定目標値として、1リットル当たり50ナノグラム以下を設定。現在の基準と比較すると、6120倍となる。
 また、資料によれば、敷地内から公共の側溝に排出される水からは、現在の暫定目標値の3万800倍に相当する1リットル当たり154万ナノグラムを検出。10カ所全てで目標値を超え、最も低い敷地南東の井戸でも3万1700ナノグラムだった。
退職社員ら含め健康相談実施へ
 三井・ケマーズフロロプロダクツ総務法務部は16日、2013年まで使用していたPFOAを念頭に、現在の従業員だけではなく同社OB会とも協力し、過去清水工場に勤務した全社員らも対象にした健康相談を近く呼びかけることを明らかにした。社内の診療所とも連携し、血液検査を実施することも検討する。また、すでに地元自治会には過去のPFOAの使用状況などについては概要説明済みといい、近く再度自治会長らには環境省が示している健康影響への見解なども丁寧に説明するとした。
広範な土壌や海域調査必要
 京都大医学研究科の原田浩二准教授(環境衛生学)の話 2002年に現三井・ケマーズフロロプロダクツが行った調査からは、高濃度のPFOA(約1万種あるPFASの一種)が清水工場敷地外に漏出していることがうかがわれる。他地域の例から考えれば、静岡市が今後行う河川や水路、地下水の調査で高濃度で検出される蓋然(がいぜん)性は高い。大阪府のダイキン工業の工場の事例では、約1キロ離れた井戸水からも比較的高い濃度のPFASが検出されている。大気を通じて拡散した可能性もあり、広範囲の土壌調査や海域の調査までレベルを上げる必要があるのではないか。清水工場の場合、現在も別のPFASを用いて有機フッ素樹脂の「テフロン」を製造している。日本で輸入や製造が禁止されているPFOAなどだけではなく、他のPFASの安全性も米国などでは懸念されている。清水工場周辺では、想定される種類のPFASの残留調査も併せて行うことも検討する必要があり、この点、三井・ケマーズ社の積極的な協力が求められる。

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