PFAS年10トン程度排出か 静岡市清水区の化学工場、2000年代初頭まで
23時間前
発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)を使用していた静岡市清水区三保の化学工場従業員の血液から高濃度のPFASが検出された問題で、2000年代初頭まで工場から毎年、10トン程度のPFASが敷地外に排出されていたとみられることが19日までに明らかになった。07年には、大気中や敷地外の水路への排出はほぼなくなっていたことも分かった。
三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場から周辺に排出されたPFOAの量を示す資料群
工場は、フライパンの表面加工などに用いられる「テフロン」を作る過程の界面活性剤としてPFASの一種PFOAを使用していた三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場。PFOAは13年に全廃した。静岡新聞社が入手した資料や関係者などによると、00年前後から、PFOAの再利用を主目的に、敷地外の水路へ出るPFOAの回収のための施策が実行されたという。
工場敷地外へのPFOA放出は、敷地内南西の煙突など数カ所から大気中に排出されていたほか、大半が敷地外北側の水路に向かって延びる側溝から行われていた。水路は数百メートルで清水港に注ぐ。入手した資料によると、01年には合計11・4トンのPFOAが敷地外に放出されていて、このうち8・9トンは水路に注ぐ側溝から、2・5トンが煙突などから大気に排出されたとみられることが分かった。
また、工場内ではこれまで明らかになっている08~10年の期間前後にも従業員の血液検査を継続し、モニタリングを続けていたことを同社総務法務部が19日、明らかにした。担当者によると、00年、11年、12年、13年にも従業員の血液検査を実施した。同社は、在籍中の従業員や退職者を含め今後希望者には血液検査を行うとしている。
地元連合自治会長 「対応しっかりした会社」 農業関係者 情報望む声 三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場が過去に扱っていたPFASを巡る一連の問題で、地元の静岡市清水区三保では、住民らに健康被害が具体的に認められない中、比較的落ち着いた対応の人が多い。
三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場のある三保半島では野菜栽培も盛ん。白いビニールハウス群も見える=6月中旬、静岡市清水区三保(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
三保地区連合自治会の桜田芳宏会長は「化学工場として、地域への対応はしっかりしてきた会社だと捉えている」とする。毎年自治会役員らを対象に工場内の使用物質や土壌汚染の状況などの説明や工場見学が行われてきた。PFASについては、今年9月に工場内で発生した爆発事故から約1週間後の自治会役員向け説明会の際に、工場側から過去の使用や市と相談して適切に対処する旨の説明があったといい、対応へ信頼を示す。
三保地域の農業関係者らは「地元ではそれほど話題に上っていない」と口をそろえる。収穫時期を迎えている農作物もあるが、「行政や農協からの情報提供がない。安全性にも関わる問題。子どもたちのことを考えると不安だし、収入にも影響する。現状や出荷見通しなど、しっかりと説明してほしい」と求める。
周辺海域の影響見ていくべき 京都大医学研究科の原田浩二准教授(環境衛生学)の話
三井・ケマーズフロロプロダクツが過去に環境中に排出したPFOAの量は初めて定量的になったが、大阪府のダイキン工業の工場の事例などを検討する過程で、おおよその規模感は想定できた。ダイキンの場合、2002年時点で12トンを河川や空気中に排出したことが分かっていて、ほぼ同じ時点としては同規模程度の排出量だ。ダイキンは12年に工場でPFOAを全廃したにもかかわらず、16年の調査で工場から半径5~10キロ圏内の複数の井戸から1リットル当たり100ナノグラムと、現在の国の目標値の2倍の濃度だった。三井・ケマーズ社清水工場の場合、排水が清水港に注いでいて、周辺の海域への影響も見ていく必要がある。