曖昧な楽園
2023
年
11
月
18
日
(土)
ポレポレ東中野
ほか
ロードショー
監督・脚本:小辻陽平
奥津裕也、リー正敏、矢島康美、内藤春、トムキラン
高橋信二朗、竹下かおり、文ノ綾、新井秀之、三森麻美
撮影:寺西涼|照明:西野正浩|録音:中島光、太田達成、高橋信二朗|美術:猪狩裕子、石倉研史郎、山崎綾乃、藤村嘉忠
編集:小辻彩|整音:飯田太志|制作協力:サウンドブリックス|音楽:Osier(LuckGun)|主題歌:アカリノート
2023年|日本|カラー|167分
2023
年
11
月
18
日
(土)
ポレポレ東中野
ほか
ロードショー
監督・脚本:小辻陽平
奥津裕也、リー正敏、矢島康美、内藤春、トムキラン
高橋信二朗、竹下かおり、文ノ綾、新井秀之、三森麻美
撮影:寺西涼|照明:西野正浩|録音:中島光、太田達成、高橋信二朗|美術:猪狩裕子、石倉研史郎、山崎綾乃、藤村嘉忠
編集:小辻彩|整音:飯田太志|制作協力:サウンドブリックス|音楽:Osier(LuckGun)|主題歌:アカリノート
2023年|日本|カラー|167分
TRAILER
INTRODUCTION
交わらない二つの物語によって生まれた、奇跡のような映画
交通量調査員をしながら、同居する母の介助をしている達也。宇宙基地のような巨大団地に住む植物状態の老人を世話するクラゲ。幼馴染のクラゲと一緒に、老人を連れバンで旅に出る雨。不特定の場所と時間を舞台にあてどのない旅を描いた二つの物語は、決して交わることのないまま並行していく。無機質な都市の風景のなか、生と死をめぐる旅、そしてそれぞれの抱える家族の物語を描いたのは、これが初長編映画となる小辻陽平監督。ツァイ・ミンリャン監督をこよなく愛する小辻監督は、ときにSF映画のような雰囲気をまといながら、孤独さを抱えて生きる人々の姿を静かな筆致で映し出す。
実験的アプローチによって、監督と俳優との関係を捉え直す
「曖昧で不確かな瞬間をこそ映したい」という小辻監督の信念のもと、本作は、脚本作りから演出まで、「即興」を重視した手法が採用された。事前の打ち合わせから、リハーサル、撮影現場まで、監督と俳優たちはつねに対話を重ね、共同作業によって物語を構築していく。それは、準備段階から撮影現場まで、どこまで作り手の想像を超えたものを映画に取り入れられるかという実験的アプローチであり、監督と俳優との関係性を捉え直すための取り組みでもあった。曖昧さのなかから生まれでる奇跡のような瞬間を捉えた『曖昧な楽園』は、現代社会を生きる人々のためのロードムービーであり、映画づくりの新たな可能性を私たちに提示してくれる。
INTRODUCTION
交わらない二つの物語によって生まれた、奇跡のような映画
交通量調査員をしながら、同居する母の介助をしている達也。宇宙基地のような巨大団地に住む植物状態の老人を世話するクラゲ。幼馴染のクラゲと一緒に、老人を連れバンで旅に出る雨。不特定の場所と時間を舞台にあてどのない旅を描いた二つの物語は、決して交わることのないまま並行していく。無機質な都市の風景のなか、生と死をめぐる旅、そしてそれぞれの抱える家族の物語を描いたのは、これが初長編映画となる小辻陽平監督。ツァイ・ミンリャン監督をこよなく愛する小辻監督は、ときにSF映画のような雰囲気をまといながら、孤独さを抱えて生きる人々の姿を静かな筆致で映し出す。
実験的アプローチによって、監督と俳優との関係を捉え直す
「曖昧で不確かな瞬間をこそ映したい」という小辻監督の信念のもと、本作は、脚本作りから演出まで、「即興」を重視した手法が採用された。事前の打ち合わせから、リハーサル、撮影現場まで、監督と俳優たちはつねに対話を重ね、共同作業によって物語を構築していく。それは、準備段階から撮影現場まで、どこまで作り手の想像を超えたものを映画に取り入れられるかという実験的アプローチであり、監督と俳優との関係性を捉え直すための取り組みでもあった。曖昧さのなかから生まれでる奇跡のような瞬間を捉えた『曖昧な楽園』は、現代社会を生きる人々のためのロードムービーであり、映画づくりの新たな可能性を私たちに提示してくれる。
STORY
交通量調査員として働く達也(奥津裕也)は、身体の不自由になってきた母(矢島康美)と、一軒家で二人暮らしをしている。夜毎、母からのトイレを報せる呼び出しブザーが鳴り、日常的な介助に応じている達也。行き交う人々の数をかぞえて記録するばかりの仕事にも、カプセルホテルで過ごす夜にも、どこにも居場所を見出せずにいる。
クラゲ(リー正敏)は、顔見知りだった独居老人(トムキラン)の部屋へ毎日のように通い、植物状態の老人の世話をしている。だが、老人の住む団地は老朽化によりもうすぐ取り壊されようとしていた。ある日、久しぶりに再会した幼馴染の雨(内藤春)を老人の部屋に案内するクラゲ。ささやかな交流を深めていくなかで、団地の取り壊し期日は迫っていく。やがてクラゲと雨は、老人を連れてバンで旅に出るが……。それぞれの抱える家族についてたどる旅の物語。
COMMENT
あなたがカメラの前に立ってくれて、私がそれを撮影する。あなたが映画のなかに存在することの感動。他には何もいらない。ただそれだけで奇跡的なことなんだ…。映画を撮っていてそう思えた瞬間があったことを思い出した。物語ることよりも大切な瞬間がある。死んでいることと生きていることの隙間を彷徨う者たちの静止したような時間が重ねられる中で、映画は彼らが「存在すること」と出逢おうとする。交通量調査をする達也にとって無為な時間に堆積する母親の抑圧が感情に点火する瞬間が訪れるが、雨とクラゲの場合、発火する感情もないまま死に接近し、生きているものと死にゆくものとの存在の差を測定するように彼岸への道行きを開始する。彼らは孤独であり、世界と断絶した闇の中にいるのかもしれないが、『曖昧な楽園』は希望を捨てない。映画=カメラはそれが誰であれそこに写る者を決して否定しない奇跡的な装置であることをこの映画がよく知っているからだと思う。この果敢な挑戦を讃えたい。
諏訪敦彦(映画監督)
時が止まったような巨大な団地。足元でかすかに点滅する光。車が行き交う灰色の道路。まるで遠い星のどこかを映したような無機質さにまず引き込まれた。そしてそこを行き交う人々はみなぼんやりと輪郭を失っていて、なるほどこれはSF映画なのだと確信したが、その確信は間違いだったかもしれない。でもたしかにここに映るのは、どこかには存在するがどこにも存在しない場所であり、私はその曖昧さに惹かれたのだ。
月永理絵(ライター、編集者)
生きていない生。死んでいない死。その曖昧な時間が見事に紡がれる。時折り青く燃え上がり、音を立ててパチパチと弾ける。送り火を見守っている時のように、気持ちが澄んでいく。好みを超えて食らってしまった。
高橋泉(脚本家)
現実を生きる為の非現実。哀しみのない世界を夢みて悲しみを受け入れる。
やまだないと(漫画家)
実体を掴もうとするほど、するすると零れ落ちていく。思いを口にすると、自分の言葉じゃなくなってしまう。そんな時、内に残るのは"曖昧"な感覚。私は一生この感覚から逃れられないでいる。けれど、この映画はそんな"曖昧"が溶けていく。溶けて、音を立てず静かに消えていく。情緒の流れるところに。
小川あん(俳優)
『曖昧な楽園』には映画づくりに対する真摯な姿勢が映っている。それは、小辻陽平の日々を生きる姿。
仙頭武則(映画プロデューサー)
生も死も、交わらない2つの物語も、翳りの中でスペクトラムに関わり合っている。ショットの一つ一つ、その一秒一秒が、目の前からはぐれてしまった世界との関わりを取り戻そうとするかのように。そこに映画の呼吸が生まれている。全10,063秒。こんな呼吸を共にするために映画館の暗闇がある。『曖昧な楽園』を映画館で味わってほしい。
小原治(ポレポレ東中野)
INTERVIEW
初長編『曖昧な楽園』もうひとつの物語
第36回 東京国際映画祭コンペティション部門に正式出品された本作についてのロングインタビュー。前作から5年、自主映画でありながら、世界の断片を追いかけ続けた制作の過程を記録した。「予想もしていなかったことに出会えることが、自分が映画を作る上での醍醐味」と語る監督自身の言葉を読み進むうち、ただ映画が好きで、偉大な監督たちに憧れ、映画づくりへの純粋な眼差しを持って実人生と向き合うひたむきな姿が浮かんでくる。
監督
小辻 陽平
1985年福井県生まれ。ENBUゼミナール監督コース卒業後、特別支援学校で教員として働きながら自主映画製作を行っている。初監督作品『岸辺の部屋』(17)が仙台短編映画祭2017「新しい才能に出会う」部門に入選。本作が初長編作品。
CAST
奥津裕也
(達也)
宮城県出身 1984年生まれ
映画『しんしんしん』で 映画デビュー。その演技のリアルさから、無名ながら注目を浴びる。2023年には自身初となる長編映画『ピストルライターの撃ち方』の主演を務める。瀬々敬久監督の作品にも多数出演していて『護られなかった者たちへ』、『ラーゲリより愛を込めて』が上げられる。その他の活動としては『劇団狼少年』の主宰もしていて、年に数回舞台俳優としても活動している。
リー正敏
(クラゲ)
1999年福岡生まれ、東京育ち。
芸術家のシンガポール人父と幼稚園絵画講師の日本人母の間に生まれる。
高校卒業後に徒歩での日本一周を思い立ち、日本中の動物園や水族館を巡りながら一年以上かけて完遂する。
ひとり旅の孤独な夜を数々の映画に元気づけられた経験や、父がパフォーマンスアートという身体表現に生きる人間だった影響もあり役者を志す。
クラゲのなかではサカサクラゲとミズクラゲが好き。
矢島康美
(直子)
40代からENBUゼミナール、文学座プラチナクラスにて演劇を始める。現在は映像に脇役として様々な役で多数出演している。ラジオパーソナリティ(市川うららFM)、『八芳園』(佐藤雅彦研究室)『RICE BALL』(大石結介監督)、『死神ターニャ』(塩出太志監督)、『聴こえてる、ふりをしただけ』(今泉かおり監督)、『奇特な幸子』(宮原周平監督)では福井短編映画祭・主演女優賞を受賞。
内藤春
(雨)
1999年4月13日生まれ、東京都出身。
幼少期はアメリカ、ロシア、イギリスに在住。
日本映画大学身体表現・俳優学科卒業。
アーティストRan 「piece of gum」MV出演。
トムキラン
(老人)
北海道生まれ71歳。特技はモダンバレエ 乗馬 小型船1級 珈琲自家焙煎。172cm64kg
介護福祉士やケアマネジャーの資格を有し高齢福祉に関しての知識が豊富で、その方面の演技に好評を博している。
小劇場演劇中心に活動していたがコロナ禍となり映像出演も増えている。
最新舞台は劇団夜想会「祖国への挽歌」
最新映像は「青は藍より出でて藍より青し」ぬくまるあおぬ監督
高橋信二朗
(雨の父)
横浜出身。サラリーマンから俳優の道へ。映画・Vシネマで数多くの作品に出演。参加作品/Vシネマ『日本統一』シリーズ/映画『恋人たち』(15/橋口亮輔)、『おっさんずぶるーす』より主演作『トイレのおっさん』(22/越坂康史)、『ベイビーわるきゅーれ2』(23/阪元裕吾)など。
竹下かおり
(雨の母)
関西芸術座を経て数々の舞台に出演。周防正行監督「それでもボクはやってない」で映画初出演。主演を務めた石原海監督「ガーデンアパート」はロッテルダム国際映画祭でワールドプレミア後、全国公開された。本年度公開の天野大地監督「勝手に死ぬな」はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で観客賞受賞、戸田彬弘監督「市子」は釜山国際映画祭にノミネートされている。NHK「どうする家康」TV東京「晩酌の流儀2」出演
文ノ綾
(デリヘル嬢)
1991年生まれ。新潟県新潟市出身。文ノ 綾はフミノ アヤと読みます。「文」は文字や文章、「綾」は彩りという意味があります。私が大切にしたい想いです。名前だけでも覚えていただけたら嬉しいです。
新井秀幸
(派遣会社社員)
1981年生まれ 愛知県出身
2007から俳優活動を始め、以後気鋭の監督の作品に出演する。
主な出演作品は、今泉力哉監督『最低』廣末哲万監督『FIT』安川有果監督『激写!カジレナ熱愛中!』
2023年は、鈴木宏侑監督『めためた』(脚本、主演11/25 ユーロスペースにて公開予定)宮崎大祐監督総監修オムニバス作品『テン・ストーリーズ』山西竜也監督『Poltergeist』(主演)佐野竜馬監督『ペインと愛と望』(主演)知多良監督 『ゴールド』
三森麻美
(ラジオ音声)
1986年生。2011年ENBUゼミ映像俳優コースに通い中野坂上デーモンズの憂鬱と共に活動。主な出演:辻野正樹監督『明日に向かって逃げろ』、井上真行監督『なけもしないくせに』、奥田裕介監督『世界を変えなかった不確かな罪』、内田英治監督『神と人との間』、石井岳龍監督『パンク侍、斬られて候』、NHK『おかえりモネ』等。2023年ミモらランドを旗揚げ、別役実戯曲『トイレはこちら』出演・初演出をつとめる。
高橋信二朗
(雨の父)
横浜出身。サラリーマンから俳優の道へ。映画・Vシネマで数多くの作品に出演。参加作品/Vシネマ『日本統一』シリーズ/映画『恋人たち』(15/橋口亮輔)、『おっさんずぶるーす』より主演作『トイレのおっさん』(22/越坂康史)、『ベイビーわるきゅーれ2』(23/阪元裕吾)など。
竹下かおり
(雨の母)
関西芸術座を経て数々の舞台に出演。周防正行監督「それでもボクはやってない」で映画初出演。主演を務めた石原海監督「ガーデンアパート」はロッテルダム国際映画祭でワールドプレミア後、全国公開された。本年度公開の天野大地監督「勝手に死ぬな」はSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で観客賞受賞、戸田彬弘監督「市子」は釜山国際映画祭にノミネートされている。NHK「どうする家康」TV東京「晩酌の流儀2」出演
文ノ綾
(デリヘル嬢)
1991年生まれ。新潟県新潟市出身。文ノ 綾はフミノ アヤと読みます。「文」は文字や文章、「綾」は彩りという意味があります。私が大切にしたい想いです。名前だけでも覚えていただけたら嬉しいです。
新井秀之
(派遣会社社員)
1981年生まれ 愛知県出身
2007から俳優活動を始め、以後気鋭の監督の作品に出演する。
主な出演作品は、今泉力哉監督『最低』廣末哲万監督『FIT』安川有果監督『激写!カジレナ熱愛中!』
2023年は、鈴木宏侑監督『めためた』(脚本、主演11/25 ユーロスペースにて公開予定)宮崎大祐監督総監修オムニバス作品『テン・ストーリーズ』山西竜也監督『Poltergeist』(主演)佐野竜馬監督『ペインと愛と望』(主演)知多良監督 『ゴールド』
三森麻美
(ラジオ音声)
1986年生。2011年ENBUゼミ映像俳優コースに通い中野坂上デーモンズの憂鬱と共に活動。主な出演:辻野正樹監督『明日に向かって逃げろ』、井上真行監督『なけもしないくせに』、奥田裕介監督『世界を変えなかった不確かな罪』、内田英治監督『神と人との間』、石井岳龍監督『パンク侍、斬られて候』、NHK『おかえりモネ』等。2023年ミモらランドを旗揚げ、別役実戯曲『トイレはこちら』出演・初演出をつとめる。
STAFF
撮影
寺西涼
1995年神奈川県出身。東京藝術大学絵画科を卒業後、映画美学校フィクションコースで学ぶ。その後フリーで映像制作や撮影部をしながら、近頃では劇伴制作も行なっている。監督、撮影、音楽などを勤めた長編『屋根裏の巳已己』がPFFアワード2020で準グランプリを受賞。近作には『蛋ヶ岳学会事件』『うらぼんえ』などがある。
照明
西野正浩
1991年生まれ。映画美学校フィクションコース卒業。照明作は「愛をたむけるよ」「距ててて」「十年とちょっと+1日」等。
編集
小辻彩
1987年生まれ。ENBUゼミナール監督コース卒業後、監督やスタッフとして自主映画制作に携わる傍ら、フリーランスとして企業PR、動画コンテンツなどの編集、映像制作を行なっている。主な作品に、小辻陽平監督『岸辺の部屋』(編集)がある。
主題歌『星の駱駝 曖昧な楽園ver』
アカリノート
大学在学中より「誰かの心をそっと照らすような’アカリ’みたいな’音’」という意味合いの 「アカリノート」という名前で音楽活動を開始。2006年より本格的に都内を中心にライブ活動を始め、以後全国各地様々な場所で1000本以上のライブを行いつつ、現在までに12枚のオリジナル自主音源を制作。またフォトグラファーとしても静かに活動しており、様々なミュージシャンのアーティスト写真などを手がけている。
THEATER
東京都
ポレポレ東中野
2023年11月18日〜12月8日
CREDIT
監督・脚本:小辻陽平
撮影:寺西涼
照明:西野正浩
録音:中島光、太田達成、高橋信二朗
美術:猪狩裕子、石倉研史郎、山崎綾乃、藤村嘉忠
編集:小辻彩
整音:飯田太志
制作協力:サウンドブリックス
音楽:Osier(LuckGun)
主題歌:アカリノート『星の駱駝 曖昧な楽園Ver』
宣伝デザイン:ウタリトリ(濱本順由、岩瀬直美、佐藤若菜)
製作・配給:曖昧な楽園製作委員会