【完】これは圧倒的美貌で凱旋門賞馬になる俺の話 (SunGenuin(佐藤))
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本編
プロローグ
次からは主人公語り手になります。
ウマ娘は最高だし架空馬転生二次創作も最高だなって気持ちで書いてます。
2021/07/02 追記
CMパロの部分を微妙に修正しました。
横を見ても前を見てもどこを見てもSS産駒がひしめく'02年初夏。
日本競馬界は海外産馬を取込み、より優れた競走馬の産出に熱中していた。
「産まれたか?」
あるひとつの馬房の前を、数人の男たちが取り囲んでいた。
スーツ姿の男がその集団に声をかけると、内側から一人が顔を出し、首を振った。
「まだか」
「予定より長引いています」
「長引いているも何も、もう7月に入っちまったぞ」
馬の出産予定時期は1月から始まり、3月から4月がピークとなる。
早生まれの馬ほど、2歳戦線での仕上がりがいいことから、近年は長くても5月いっぱいの誕生馬が主流だ。
この牧場でも、2歳戦線から活躍する馬を輩出するために、種付け時期から妊娠期間をもとに出産予定を見積もっていた。
それでいうと、男たちが取り囲んでいる牝馬は、出産予定からすでに2か月近くが過ぎようとしていた。
腹は出産を控えた牝馬そのもので、受胎していないなんてことはないだろう。
スーツ姿の男も、周りを囲んでいた作業着姿の男たち──厩務員たちも、牝馬が産気づく素振りさえ見せないことに焦りを感じていた。
「どうなっちまうんだ、このまま」
海外まで広げれば夏生まれの馬ももちろんいる。
しかし、それは種付け時期の兼ね合いからそうなるものであって、出産予定から2か月以上経っての夏は、男たちには想定外の出来事である。
この牝馬はこれが初産だったが、全姉の馬はすでに数頭産んでおり、いずれも出産予定を1週ほど過ぎることはあっても、ほとんど誤差の範囲でのことだった。
すわ、このまま産み切れず母馬となるはずだったこの牝馬ごと死んでしまうのではないか。
男たちの間にピン、と緊張の糸が張った。
まさに、その時だった。
「ア!」
「エッ、出てる、出てる出てる!」
今まで一つもそのそぶりを見せなかった牝馬が突然、ふるふると身体を震わせた。
産気づいたのだ。
ようやくだ、と一安心する間もなく、2か月以上も予定を過ぎた牝馬の出産に気を抜くわけにはいかない。
男たちはアレを持ってこい、それをどかせと、ごうごうと怒鳴りあいながらも、力む牝馬のそばを離れなかった。
「あと少しだ、がんばれ、がんばれよ」
「出た!出たぞお!」
「よくやったピュアレディ!えらい、頑張った!」
「息してるか?」
「してる、身体も震えてるし……よしよしその調子だぞ、立て!立ってくれ!」
初産にも関わらず牝馬──ピュアレディは落ち着いていて、思った以上に小気味よく仔馬を産んだ。
ぽとん、と藁の上に横たわる仔馬は、産みの粘液に濡れもがきながらも、男たちの声にこたえるようにゆっくりと立ち上がった。
「立った!ピュアレディの仔が立ったぞ!」
ひときわ声の大きな男がそう叫ぶと、馬房前の男たちだけでなく、牧場全体からワッと歓声があがった。
蝉の鳴き声が近い、7月2日のことだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
THE LEGEND
誰もが目を疑った
本当かと咽び泣いた
2006年 フランス 凱旋門賞
ハナを譲らない
影も踏ませない
ターフを駆け抜ける白い軌跡
美貌の天馬
── サンジェニュイン
「太陽だっ!太陽がぐんぐん、ぐんぐんロンシャンのターフを駈け昇る!」
「見よフランス、世界、これが、これが諦めないということだ──……!」
正真正銘 お前が太陽だ
◇◆◇◆◇◆◇◆
きらめくステージに、一人のウマ娘が立っていた。
伏せられた顔に浮かべられた表情は笑顔か、それとも感動の涙か。
「アンコール!アンコール!」
観衆の声にこたえるように、娘は顔を上げた。
「サンジェニュイン、歌います!」
そのウマ娘の名前は、サンジェニュイン。
ヒトは彼女を「太陽のウマ娘」あるいは──「美貌のウマ娘」と呼んだ。
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1.あの牡馬と一発
ピュアレディも架空馬です。
5/30 ちょい修正しました
自分が馬になったと分かったとき、真っ先にやったこと。
それは『息子』の確認だった。
『よかった、ついてる!ついてるわ!』
飛び跳ねては首を勢いよく振り下ろす。
馬になってもついてきてくれてありがとうな、息子よ。小さくてもしっかり揺れ動いているマイサンに思わず安心して笑う。
いや笑ってる場合じゃねえわ。
なんで俺は馬になってんだよ。
「お、今日も元気に飛び跳ねてんな!」
明るい声に金髪ピアス……俺の担当厩務員の兄ちゃん、タカハル!
どこをどうみても厩務員には見えないけど、馬への愛情は本物だ。
俺を産んだあと、役割を終えたとばかりに育児放棄をかました母馬・ピュアレディに代わって、俺にミルクをくれるのがこのタカハルだ。
頭より少し上の位置に向けられた哺乳瓶に、必死になってしゃぶりついた。
人間の俺がやめろと言っているが、馬の俺は止められないのだ!
「美味いか?」
美味い、美味すぎるぞお!
「わはは!すげえ勢いで飲んでるわ」
「いやもう元気っつうか、狂気っつうか……この馬ちゃんと走んのかなあ」
黒髪の男── タクミがあきれたように言う。
いやほんとそれな。
俺でもわからん、俺走るんかな?
まあ馬だし走るか。
走るわ!
……なんか俺知能さがってない?気のせいか。
「だいじょうぶだって!父馬も幼駒時代から相当やんちゃだったみたいだし、そういうのは血なんだろ、な?マイサン!」
しかも俺の名前マイサンなのかよ。文字通り『俺の息子』じゃん。
「マイサンて、幼名そのまんまでいくんか?」
「ピュアレディのオーナーさんにとっては『私の息子』で間違いないしな」
「ああ……にしてもキャラ濃い人だったな」
次に会うのは半年くらいがいいな、と老け顔のタクミが言う。
お前タカハルと同い年とは思えんくらい老けてんなほんと。
だがタクミの言うこともわかるのだ。
実はわが母馬・ピュアレディは内国産牝馬ではなく、アメリカからの輸入牝馬なのである。
その全姉はクルーピアレディーと言って、サンデーサイレンスの初年度産駒で皐月賞馬・ジェニュインの母だ。
ピュアレディは彼女の全妹として、ジェニュインのような馬の産出を期待されていた。ただ競争成績がないことから、わが牧場も所属している社来本社ではなく、グループ内でも割と貧弱なここでの繁殖が決まった、らしい。
タカハルが「ここにも運が回ってきた」とニコニコしながら教えてくれた。
らしいって他人事なのは、俺があまり競馬に明るくないことと、母馬と一緒に生活するどころか、話したことがないからだ。
話しかけようとしたらガン無視されたし。
本当にこの人、いやこの馬から生まれたんか俺は。
さてそのピュアレディのオーナー、アメリカのさるファームの代表者なんだが、その人が昨日この牧場まで来ていたのだ。
理由はもちろん、ピュアレディの産んだ仔馬、つまり俺を見るためだ。
「オーゥ!なんてキュートなんでショウ!マイサン!マイサン!ワタシのニワでかいたいデース!……イッショにUSAきますカ?」
じょうだんデース、などと付け加えていたが、目はギラギラしていたし声がガチだったと思う。
見た目がマのつく厳ついオッサンに加え、声も低くて迫力があるので、見た目のパリピ具合に反して意外と場に流されやすいタカハルは完全に圧に押されていた。
ギリギリ頷きそうになっていたが、先にタクミが正気に戻ったことで俺はこの牧場に残っている。
ありがとうタクミ、老け顔なんて言って悪かった。今度からはシニア顔っていうよ。
「……よし、飲み切ったな!」
「乳離れまでまだまだかかる、な」
「こういうのなかなかできない体験だし、それに俺たちがやんないとマイサンが育たないしな」
育ててくれてサンクス。
ところで俺、なんで馬になってんの?
「まさかピュアレディが育児放棄するとは思わなかったよ」
「初産でまだ気持ちが追い付いてないんじゃないかって牧場長は言ってたけど、ピュアレディは完全にマイサンのこと眼中になくってさあ」
腹を痛めて産んだ仔馬が眼中にない母馬がいるってマ?
その仔馬はマジでかわいそう……俺のことじゃん。泣いた。
ところで俺、なんで馬になってんの?
「心配しなくても、俺たちがちゃんと面倒みるからな、マイサン!」
「立派な競走馬になってくれよ」
そう言って俺の鬣を撫でる二人。
タカハル、タクミ……俺、頑張るよ!
絶対に世界に名前を刻んでくるよ!
俺たちの戦いはまだまだこれからだ!
~完~
いや何も終わってないわ。
まだまだこれからなのはそれはそうだけど、何も完結してないわな。
のったりと背を押されながら馬房に戻って、タクミが用意してくれたふかふかの寝藁に寝転ぶ。
寝藁の塩梅はタクミのほうが絶妙。タカハルはどさっと入れとけばいいって思ってるところあるからなあ。馬はそういうとこシビアよ。
……いやだからなんで俺は馬になってんだよ。そこだよ。
シビアも何も、俺の環境が一番シビアだろ!
馬って、馬ってなに!?ウマ目ウマ科がどうとかが聞きたいんじゃない。
なんで俺が、人間だった俺が馬になっているのかってことだ。
馬自体は好きだ。
親父がギャンブラーだった影響で小さい頃は競馬場にも行ったことがあった。
ヒトを背に乗せてグングン前へと突き進む競走馬たちを格好いいなと思ったこともある。
ただギャンブラーでも比較的ライトだった親父が、ある1頭の馬と出会ってからは豹変したように金遣いが荒くなっていって、しまいには俺と母を棄ててからはなんとなく、馬を避けるようになっていた。
この数年は家計が火の車だったこともあるけど、何より心情的なもので競馬のケの字もない生活を送っていた。
が、そんな俺はここ1ヶ月ほどあるソシャゲにハマっていた。
『ウマ娘プリティダービー』
そう、避けていた競走馬の、よりにもよって擬人化作品だ。
まさか自分が競走馬を主題にした作品にハマるとは思っていなかったけど、偶然みたアニメ版からずるずると沼に落ちていった。
今ではただでさえ少ない財布の中身を叩いて少額課金を繰り返す毎日。
ハルウララちゃんもあと少しで星3になるところだったのに!
ごほん。
クソギャンブラー親父が入れ込んでいた馬が現役を引退すると、親父もそのあとを追うように行方知れずとなった。
母は専業主婦だったが、金を渡さなくなった父の代わりに働きづめとなり、俺が高校を卒業する前に過労死してしまった。
両親は駆け落ちだったため、頼れる祖父母も親戚もなかった。
天涯孤独の四文字がこれほど似合う男もいない、とか、その顔がすべてを物語る男だなと言われてきた。
……前の四文字はともかく、顔がすべてを物語るってもうそれ、悪口じゃない?顔は普通だと思って生きてきたんですけど。
だが天涯孤独になったとえはいえ、俺は不幸な人間だったとは思っていない。
親父はくそ野郎だし、俺も母も不運ではあったが、それなりに幸せだったからだ。
母の死によって学費も生活費も自分で稼ぐことになり、日夜バイトに勤しんでいたわけだが、もしや俺も母と同じく過労死してしまったのだろうか。
最後の記憶がコンビニバイトの帰りに新聞配達のバイトをして、ものすごく眠くて駅のベンチに横になったところだから、死んだのならほぼほぼ過労死だと思う。
だとしたら親子そろってとんでもない死に方だ。
過労死するってわかってたならクソ親父見つけ出して殴り合いするんだったな。あとコンビニに来てたクレーマーはっ倒して、同僚にセクハラする店長も蹴って、金のない俺に金せびりにきた自称親友もブチのめしておけばよかったな!
……俺の未練物騒すぎィ!?
あ、あとはそう、ウマ娘に実装される前にあの馬と、最後に親父の惚れたあの牡馬(ウマ)と一発……── ウマ娘?
── ようやく気付いたか。
『だれ!?おばけ!?』
突如聞こえた声に跳ね起き、馬房をぐるぐると回る。
誰もいねえ、なんだこの声は。
── 神じゃよ
『愛じゃよ、みたいに言うなよ』
── それはハリ〇タ、いやゴホン、お前もようやく自分の現状に気づけたようじゃな
『やっぱりハ〇ポタじゃん。神も〇リポタ見るんだ』
── 名作だからの……いやそうじゃなくて、おぬしな、まず転生をしておる
『そうですね。最後にウマ娘思い浮かべたからこの仕打ちなんすか?』
── この仕打ち!?これはお前の未練を晴らすのに一番最適な転生方法なのじゃ!
はて、未練。
確かに山ほどあるけど。
全部物騒なやつだし……つまり馬の強力な後ろ蹴りで相手をぶちのめせ、とかそういうやつか?
よしきた、まずは親父を俺の目の前に連れてきてくれないか?まだ仔馬だけどいけるだろ。
── 驚くほど物騒!さすがの神も引くぞ!それと違うから、それじゃないからのおぬしの未練は!
ん?これ以外に未練なんて……あるとしたらハルウララちゃんを星3にしてうまぴょいできなかったことくらいだけど。
まさか馬として馬のハルウララちゃんと意味深うまぴょいしろ!ってことか!?
── 何もかもが違うんじゃよ!ええいもう話が進まん!とにかく、おぬしの未練を晴らすにはその姿こそが最適!なのだが……
面倒になってるじゃん。
ていうか自称神、もしかして俺の考えてることわかってない?
── わし、神じゃから!……ごほん、ひとつ詫びなければいけないのは、飛び切り美しい馬にはできたんじゃが、性別をいじくれなくてのう
ん?
── 今のおぬしは牡馬
そうね、マイサン(息子)がぶらついているマイサン(名前)だからね!
── それ全然うまくないぞ
そんなあ。
── 話を戻すぞ!……おぬしが牡馬になったことで、人間だったころの未練、『最後に惚れた牡馬と一発……』を叶えられなんだ、すまんな
ちょっと待ってくれ。
── なんじゃ
『最後に惚れた牡馬と一発』だと?
俺そんなこと言った覚え……あるある、あるな!
正確には「最後に親父の惚れた牡馬(ウマ)と一発殴りあうべきだったな」だよ!
最後まで聞いとけよ!!
── ……電波がわるくなったのう
電波じゃねえだろコレ!!そんな科学的なやつなの!?
── まあ馬生をまっとうできれば次は人間になれるぞ……一発の未練が解消できないとフフッ、次はどうなるかわからんがの!
フフッじゃないんだよ!!未練って殴り合いのほうだよね!?そうだよね!?
── 競走馬は出会いが少ないと聞くからのう。ただ同性馬はエンカウント率が高いゆえ、難易度が下がるから、解消できないと次の生でも人間になれぬよう設定しておいたわい
最悪じゃねえか。ポンコツ神様需要はねえんだよ!
── 想像以上に無礼じゃな!?もうよい、詫びに牡馬にしこたま好かれる魅了を追加した!最後まで無事、コレ名馬!じゃあな!
ヒヒーン!?
「マイサンどうした!?」
「なんの騒ぎだこれは!」
「それが、マイサンが嘶きながら馬房を跳ね回ってまして……」
「なんで!?」
「わかりません!」
こうして俺の馬生がはじまった。
6/15 追記
いくつか文章を足しました。
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2.愛じゃよ
しっかしこの主人公、馬になったことでちょっと頭がガバガバ……ま、大丈夫やろ!
食欲の秋だ!2003年も秋が深まってきた頃、1歳と数ヶ月の俺、名前はマイサン。
今日から調教師の下へお引っ越しである。
時の進みが早くてキレそう。
「マイサン、元気でやるんだぞ!」
「寂しくっても嘶きながら飛び跳ねるなよ」
タカハル、タクミ……ここまで育ててくれてサンクス!
でもあれは別に寂しくてやったわけじゃねえから!
あの自称神があんなこと言って消えたから怒りでやったんだわ!
「それじゃあ目黒さん、マイサンを、いやサンジェニュインをよろしくお願いします!」
マイサン改めサンジェニュイン、ちょっと言いづらいけどヨロシク!
……マジで言いづらいな。これ似たような血統だってタクミが言ってた「ジェニュイン」に寄せた感じ?
もっとオリジナリティある馬名なかったんすか。
「ちょっとうるさ……ヤンチャな馬ですが、慣れれば言うこと聞くいい子なので!よろしくお願いします!」
タクミいまうるさいって言おうとしなかった?
目黒さんも苦笑いだよ!
「責任もって預からせていただきます」
手綱を引かれて馬運車乗り込む。
時の流れはクソほど早かったが、短いわけではなかった。
主担当のタカハルとはそれこそ朝から晩まで長い時間を過ごした。
寝るギリギリまで馬房の外にはタカハルがいるし、いつ起きてもそこにいるのだ。……あいついつ寝てたんだ?
放牧中はタクミが柵の外からこっちを見ていたし、俺が腹を空かせて近づけば哺乳瓶からミルクをくれた。
離乳時期になっても人間の記憶があるために飼い葉が食べれず、細くなっていく俺のためにタクミが飼い葉を食い始めたときは狂ったかと思ったが、そこまでされて食べないわけにはいかず食べるようになった。
味覚はちゃんと馬仕様になっていたみたいで、飼い葉は意外と美味かった。ウマだけに!ドッカンドッカンの場面だわこれ。
「ばいざんん~~!!げんぎでな~~!!」
その声に振り返れば、タクミがだばだば涙を流していた。
いやタカハルじゃなくてお前が泣くんかい!
タカハルお前はフリでもいいからちょっとは泣いとけ!
「愛されてるな、サンジェニュイン」
べ、別にもらい泣きなんてしてないんだからな!
ヒィン……
さて俺は北海道出身なのだが、関西は栗東所属の調教師預かりとなることが決まった。
いくらグループ内でも下の方の牧場出身とはいえ、あの社来グループ傘下である。……社来グループが競馬界でどれくらいの力を持っているのか、実はよくわかっていないのだがタカハル曰く「やばい」らしい。あいつ時々語彙力なくなるな。
そんなやばい社来グループの本社預かりの馬とは比べものにならないだろうけど、結構いいところに入れてくれたらしく、着いた先は立派な建物だった。
「目黒くんおつかれ。サンジェニュインの調子はどうかな?」
「テキ!お疲れ様です。馬運車での長旅なので疲れているかな、と思ったのですが、降ろしてみたら結構元気でして」
テキ?敵!?
50代半ばくらいのイケオジだが、こいつ敵なの?後ろ蹴りしとく?
「ほー、馬体も思ったよりガッシリしてるし、頭も落ちてないし……長旅も苦にならん体力があれば2歳戦線からいい感じに飛びそうだな」
「あのジェニュインの母の全妹が肌馬ですからね、期待できますよ」
「ようやっと俺にもいい馬が回ってきたのかな。……サンジェニュイン、きっちり調教していくから頑張ってくれよ」
うん?調教ってことは、この人が調教師なのか。
ちょっとのんびりめのおじさんって感じだが。
テキってこっちでの調教師の呼び方なんかな?
俺はウマ娘はやってたし小さい頃競馬場にいったこともあったけど、実はそこまで競馬に詳しくない。
馬には脚質があって得意な距離があって、というのはゲームを通じてなんとなく理解していたが、こういった専門用語となるとサッパリなのだ。
とはいえ人間の言葉は理解できるので、ほかの馬よりは調教も上手くいくと思うんだよな!ウマだけに!ドッ!
~完~
いや完じゃねえわな。
調教舐めてたわ。
「ん?……飼い葉ぜんぜん減ってないな」
食べる気力もないんよ。
やばくない?
水飲むのでいっぱいっぱいだぞ。
馬房でしばらく横になって休みたいレベルだわ。
「調教も2歳馬にしてはかなりペース早いからな……ちょっとスローにするようにテキに言うか」
ぜひそうしてくれ。
ていうかペース早かったのかよ。
ほかの同年代の馬も同じくらいやべえのかと思ってたじゃん。
まあ他の同年代みたことないんだが。
ここ俺以外に馬いないんか?
「目黒くん、どうした?」
「あ、テキ。ちょうどいいところに」
テキ── これ、調教師って意味であってたわ。
ここのテキの名前は本原佳己っていうんだが、本原佳己厩舎に来てからざっくり3ヶ月半が経った。
今は2005年の1月である。俺も括りとしては2歳馬となっていた。
もう息をつく間もないくらい調教、調教調教、そして調教!の日々を過ごしていたらあっという間である。
最初はなんでもかんでも目新しくて、そんで褒められるのがうれしくて、体力が切れるまで調教を受け続けていた。
馬になった影響なのかマジで褒められるとうれしくて足が止まらん。
すごいぞ、もう脚がすいすい動くのなんのでな……。
調教を受けては褒められ、うれしくなって1日に何セットもメニューを繰り返していたら途中からクッソハードになっていた。
「サンジェニュインが完全にバテてるみたいで、少しペースを落とした方がいいかもしれません」
「あー……2歳馬とは思えんペースになってたからね。サンジェが教える端から吸収していくのが面白くてついつい伸ばしてたけど、そらそうだよなあ」
教える端から吸収する優秀な馬でごめんな!でもペース落として!
「こんなに飼い葉残して……ごめんなあサンジェ、明日からはペース落とそう」
ちゃんとごめんなさいできる人間が一番えらい!許す!
その証拠にほら、飼い葉ちょっと食んでやるぞ。
ほれ、全然食欲はないけど食ってはいるから元気だせ!そこまで落ち込むなテキ。
なんか娘に「お父さんのと一緒に洗わないで!」って言われた親父みたいな顔だぞテキ。
「ペースは落とすとして、新馬戦の予定はどうしますか?クラブからは夏に、というお話だったかと思いますが」
「サンジェは夏生まれだし、もうちょい後でもいいと思ってるよ。……馬体は夏生まれとは思えないくらい仕上がってるがな」
そんなに俺の身体をじろじろ見るな!えっちだぞ。
「ですね。早生まれの2歳馬と比べても遜色ないどころか、サンジェニュインの方が勝ってるとさえ思えます」
「お、結構言うねえ」
それは身内贔屓ならぬ担当厩務員贔屓では?
1月生まれより7月生まれの方が馬体しっかりしてるとか、そうはならんやろ。
「言いたくもなりますよ。それくらいほかの馬と違う。もう風格から違いますよ。サンジェニュインの方が体重もありますし」
なっとるやろがい!な状態だったわ。
そういや神がなんか見た目をいじくったみたいなこと言ってたし、それだろうか。
丈夫な身体にしてくれたのは素直に感謝なのだが、魅了はやっぱりいらんて……。
「生まれが遅い分、母馬の中でたんまり栄養をもらってきたのかもな」
「生産牧場の担当厩務員が「出たときからデカかった」と言うくらいなので、テキの言う通りかもしれませんね」
俺、デカかったのか。
育成牧場のときから「スタミナある」とか「健康体」とかは言われてきたから、ああ俺って丈夫なんだって自覚はあったけど、大きさまではわからなかった。
だって俺、自分以外の馬は母馬以外あったことないんで!
何故か生産牧場のほうでもここ本原厩舎でもほかの馬たちとあったことがないのだ。
なに?秘蔵っ子の俺をそんじょそこらの馬と会わせられないって?
よせやい、照れちまうだろ!
「デカすぎて他馬たちに混ぜられなかったくらいだしな」
……秘蔵っ子の俺をそんじょそこらの馬と会わせられないって?
よせやい、照れちまうだろ!!
「とはいえ新馬戦もあるし、近いうちに会わせるよ」
「うちの厩舎にいる馬は全頭サンジェニュインより小さいですけど、大丈夫ですかね」
全頭俺より小さい?
それなら最悪蹴れば……勝ったな!飼い葉食うか。
「……うーん、うちにはいないけど、近くの厩舎に結構デカめの牡馬がいるから、まずはその子と併せるか」
負けたから寝るわ。
2000~3000文字くらいで毎日投稿してえなって気持ちはあるんですよ
6/15 追記
文章の追加と、不要な箇所を削除しました。
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3.俺たち親友だもんな
タイトルみたいなこと言うヤツ、学生時代テスト前にだけ現れてはノート写したら消える思い出しかないんだよね。
涙でちゃ↑う↓
神は言った。
── 牡馬にしこたま好かれる魅了を追加した!
俺は思った。
牡馬にしこたま好かれる魅了、別にウフフな魅了じゃない可能性も十分にあるんじゃない?
魅了ってさあ、恋愛とかそういうのじゃなくてもほら、男から見ても格好いい男!的なそういう、そういうのあるじゃん。
ほかの牡馬からみても俺がめちゃくちゃ強そうに見える、そういうタイプの魅了。
……勝ったな!ちょっと他馬に会ってくるわ。
目黒さんに手綱をひかれてパッパカパカパカ歩くこと数分、調教スタッドである。
いま俺がいる本原厩舎は栗東トレーニングセンター内にあるわけだが、その厩舎の他に平地調教コースをはじめとした様々な施設があるのだ。
今日は近所の厩舎所属──つまり同じ栗東で他の調教師預かりの馬と、調教師や馬主、競馬関係者が立ち入りできる『調教スタッド』にて会うことになっている。
今日会う馬との相性がよければそのまま併走する予定もあるらしい。
大人しくて落ち着いた、静かな馬だってテキは言っていた。
けどまあ最悪の場合、俺が脱走の生き恥をさらすかもしれないけどそれは相手のオッス馬次第だから怒るなよ、テキ!
「そう言えば今日の相手、サンジェニュインの父馬・サンデーサイレンスの初年度産駒の仔らしいですね」
「ああ。三冠を取ったかも知れないと言われた、あのフジキセキの仔だよ」
ふん、その馬がどこのどいつか知らないが── エッ、フジキセキ!?
フジキセキって言ったいまフジキセキっていったじゃんテキ、フジキセキの子!?
マジ!?俺の寮長が!?いや俺の寮長ではないが!
……ごほん。
ふ、フン、タカハルが言っていたサンデーサイレンス伝説みたいに、その馬が厩務員のシャツ噛みちぎっていようが半殺しにしていようが構うか!
とっととフジキセキに似た可憐なツラ見せんかい!あ、いや俺が見せ行くんだったわ。
とっととこのツラ見んかい!!
「どうしたサンジェニュイン、ほら入るぞ」
「ちょっと震えてるな、ボロか?」
うんちじゃねえわ。
武者震いだからこれ!
「あ、本原さーん!」
「居住くん!いや、すまないね突然お願いして」
「いえいえ、僕の管理馬もなかなかでかくて併せ馬が年上ばっかりになってしまって困ってたんです。本原さんに声をかけていただけてよかったです」
「そういってもらえると助かるよ。……その子が例の?」
「はい!この子がフジキセキ産駒── カネヒキリ号です」
現れた馬はデカかった。
馬体の大きさで言えばほぼ変わらなかったが、早生まれと夏生まれの差が筋肉の厚みでよくわかった。
── 負けたわ。
こんなヤツにうまぴょい挑まれたら負ける自信がある。なんですかその仕上がりは。
ツヤッツヤの栗毛しやがって、イケメンホース気取ってるんですか。
俺の方が神がかったイケメンホースだからな!神が作っただけに。ドッカンドッカンの場面だぞこれ。
「落ち着いてますね」
「結構のんびりした馬なんですよ。でも調教は真面目にこなしてくれるので」
感心したように目黒さんがうなずく。
ケッ、俺だって調教は真面目にこなしてるっての!
件の馬、カネヒキリは俺をジッと見つめたまま動かない。
マジでジッと見つめられている。
穴があきそうだし、それ以上にカネヒキリの目ん玉が乾きそうである。
視線が合わないようにそらしつつ、カネヒキリの馬体を盗み見る。
パッと見の馬体ができすぎてて意識が飛びそうになったけど、当初俺が思っていた展開とは大分違う。
俺は神のクッソいらない詫びの産物によって、あらゆる牡馬という牡馬に襲われるイメージを持っていた。
俺が一瞬でも隙を見せれば夜のレジェンドレースが始まってしまうと思っていたのだ。
だけどもしや、それはただの自意識過剰だったのではないだろうか。
まったく売れていない自称芸能人が、ファンに囲まれるのを危惧してグラサンマスク装備するレベルの自意識過剰では?
ヒヒィン、恥ずかしすぎる……!
「どうどう、サンジェ、どうした?」
「……こっちは落ち着きがなくてすみません」
「ははは、いやいや、元気でいいじゃないですか」
カネヒキリ、いやカネヒキリくんに顔合わせる資格ねえわ、これ!
ごめんなカネヒキリくん、俺のこと襲っていやんばかんされるのかと思っちまって!そうだよな、そんなことあるわけないわ。
いくら神が言ってたからって、変に捉えすぎたんだわコレ。
今まで他の馬にもあったことがなかったら妙に警戒しすぎてしまった。
はあ恥ずかしい、マジ顔赤くない?いや俺は白いが。
「それにしても、本当に真っ白なんですね。突然変異なんでしたっけ?」
「うん、そうみたいだね。サンデーサイレンスは青鹿毛で、母馬が黒鹿毛だから」
「シラユキヒメと同じですね」
そう俺ってば白毛!
同じ父を持つ馬にも突然変異で白毛の馬がいたらしいが、その馬以上に真っ白らしい。
白い身体が太陽の光を反射してキラキラするので、生産牧場でも夏はタクミがグラサンするレベルだ。
緑の牧草地!空を見上げる白馬!絵になるだろ?他の牧場スタッフもいつもキレイキレイって言ってくれたもんだぜ。
そんな自慢の白毛が真っ赤になりそうなくらい恥ずかしい。
変態の冤罪だわコレ……マジですまんかったな、カネヒキリくん。
ちょっとテキ、今日はおいとましようぜ!
心身整えてからまたカネヒキリくんとは併せ馬したいわ。
ほらテキと目黒さんいくぞ!
「ちょお、本当にどうしたんだサンジェ!」
「いたたたた、痛い待って引っ張らないでくれサンジェニュイン」
今回はお忙しいところ時間とってもらったのにすんませんっした!
牡馬という牡馬に好かれる魅了など存在しない!
現にカネヒキリくんは俺を見つめたまま何もしてこないしな!
神の虚言だったわけよ。
はあ、マジで恥ずかしかった。
心身鍛え直して、今度は邪念を捨てたスペシャルな俺として併せ馬お願いしたいですね。
そして俺たちの戦いはまだまだ続く!
~完~
ん?
「うおっ、カネヒキリちょっと、ちょっと進むなって」
調教師の握ってた手綱からもがくカネヒキリくん。だが視線は俺に固定されたままである。
俺、一歩後ずさる。
カネヒキリくん、一歩前に出る。
俺、二歩後ずさる。
カネヒキリくん、二歩前に出る。
俺、一歩前に出る。
カネヒキリくん、二歩前に出る。
カネヒキリくん、三歩前に出る。
カネヒキリくん、五歩前に出る。
……出る、出る出る、めっちゃ出てくる!
「……何が起きてるんだ、これ」
「……わかんないです」
ぴとん、と鼻先同士がくっつく。
カネヒキリくんの視線は俺に固定されたままで、ただその圧が倍々に膨れ上がっているような気がする。
マジでなに?ガンつけられてる?
「カネヒキリ、サンジェニュイン号が気に入ったのか」
エッそうなのこれ?
「じっと見つめ合ってますね、気が合うんでしょうか」
「それにしてはなんか温度差がすごそうだけどね……まあとりあえず、走らせてみようか」
お互いの手綱を厩務員が引き、それぞれの鞍上に栗東の見習い騎手が乗る。
馬装も人を乗せる調教もスイスイ終わってしまったので、実はだいぶ前から見習いのあんちゃんたちとは知り合いだ。
カネヒキリくんは乗せた経験はあんまりないようで、ちょっと暴れていたが俺が視界に入った瞬間落ち着いたようだ。
2頭横並びなのに顔が完全にこっちを向いている。鞍上のあんちゃんがカネヒキリくんを前に向かせようとした途端、指図するなと言わんばかりに暴れ出したので、そのまま走ることになった。
カネヒキリくん、首疲れないんか……?
軽く合図をもらってパッパカ走り出す。
隣のカネヒキリくんも同じタイミングで走りだし2頭で並んだ。
コーナーを曲がる一瞬以外は俺の方を向いたままのカネヒキリくん。
最終コーナーまでは俺もカネヒキリくんを気にしていたが、直線に入ってからは「抜いてやるぞ!」と思って足に力を入れた。
結果、先着はカネヒキリくん。
最後まで俺の方を向いたままだったのに、速いペースで走ったはずだったのに、カネヒキリくんは強かった。
最後はちょっとガチめに走った俺よりも、カネヒキリくんの方が速かったのだ。
それがとても、とてもとても、悔しかった。
「カネヒキリ号はちょっと速かったな、サンジェ」
前を向かずに横の馬をガン見。
そんな舐めプ戦法に負けた馬がいるらしい。
俺のことだね!
「サンジェニュインも最終直線で力を出していたような気がするのですが、ここで生まれ月の差がでてしまったのでしょうか」
「そうかもしれない。何はともかく、これは併せ馬をしなければ判断できなかったところだ。これからも他の馬たちと走らせて様子をみたいな」
俺も力が……力が、ホシイ……!
もう何も怖くないからどんどん併せ馬しようぜ!
前言撤回は男らしくないが前言撤回するわ。
めちゃくちゃ怖いことあった。
「サンジェニュイン、ほらもう他の馬たちいないからでてきてくれ」
それほんとだろうな目黒!!お前嘘だったら今後も目黒って呼び捨てしてやるからな!!
「……頼むよ、そこから出ないと馬房に戻れないぞ」
そんなこと俺にもわかってんだよ目黒。
だけどな、お前も同じ目にあったらここに、四方八方を壁に囲まれたここに逃げ込むからな。
「そんなに牡馬たちに囲まれたのがきいているのか」
当たり前やろがい!
威圧感のある牡馬どもに鼻息荒く囲まれ、ケツに鼻先を、おっきい息子さんを押しつけられたんぞこっちはよお!
それも1頭2頭の話じゃないんだよ。
その場にいた3歳以上の牡馬全頭にな、やられたんだよ。
この場で意味深うまだっちが始まっちまうかと思ったわ。
シルエットは俺の方がデカくても、1歳以上の差はもうどうにもならんのやぞテキにもそう伝えておけや!
ヒィン……!
カネヒキリくんは実在したフジキセキ産駒のウッマです。
このお話ではサンジェニュインくんの次によく出る馬です(巨大ネタバレ)
牡馬という牡馬に好かれる魅了なんてない!
……そうだね。
※競走馬はそのままの名前でいきますが、ヒト族たちの名前は微妙に変えてます。
感想クソうれしくてリロードする手がとまんねえな。
養分もっとください(お願いします)
6/15 追記
文章の加筆と修正を行いました。
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4.噂のサンジェニュイン
なんでかわからんけど投稿するたびに文字数が増える。
でも今のとこ毎日更新はできてる!えらい!(自賛)
さて、今回もまた時が進んでるゾ!
どんどん進ませましょうね~!
死んで、人から馬になって。
未練を解消できないと死ぬぞと言われて。
── 正直、べつにいいか、と思ったりもした。
なにせ一度死んでいる。
馬の寿命も人間に比べれば瞬く間で、そう長くないのもわかっていたから。
でも最近は、もうちょっと生きてみたいなと思う。
手のひらクルックルで笑っちまうけど。
「サンジェニュイン、気持ちいいか」
例えば、馬房でブラッシングをしてもらっているとき。
「明日には生産牧場の人が来るからな」
例えば、遠く北海道からタカハルとタクミが遊びに来ると知ったとき。
「この前の併せ馬でのタイム、テキもすごい喜んでたな。俺も鼻が高いよ」
例えば、俺の調教の成果をテキや目黒さんが喜んでくれたとき。
とても嬉しくなった。
それと同じくらい悔しくなった。
気持ちいいよ、ありがとう、来てくれて嬉しい、無理しないで、俺頑張ってるよ、もっと頑張るからね。
自分の口から言葉にして伝えられないのがこんなにもどかしいとは思わなかった。
こんなに辛いとは思わなかったんだ。
だだっ広い牧草地を好きに走り回って、疲れたら寝転んで、草や水や風の匂いをかいで。
そうして見上げた空が美しいことを、馬になって初めて知った。
人間だったころは働き詰めだったから。
食費と学費を稼ぐために何件も掛け持ちして、疲れから丸まった背に倣うように俯いて歩いていた。
『不運だっただけで、不幸ではなかった』
『ほどほど満足できる人生だった』
『一度死んだし、まあいいか』
なんて、ハリボテだった。
俺を生かすために1年以上時間を使ってくれたタカハルやタクミ、生産牧場のスタッフたち。
俺が立派な競走馬になれるように調教をつけてくれるテキ、健康でいられるように世話をしてくれる目黒さん。
俺は独りなんかじゃなくて、思った以上にたくさんの人に支えられて生きているのだと、最近になってわかった。
そしてそれが、自分で思う以上にうれしくてたまらなかったんだ。
言葉が通じないなら。
この気持ちを、喜びを返すにはどうしたらいいんだろうと悩んだりもした。
けどきっと、答えはシンプルなんだ。
「よし、きれいになった。── お前が走る日が、本当に楽しみだよ」
ああ、楽しみにしててくれよ、目黒さん。
どんなレースでも一番にゴールに飛び込んで、あんたたちが育てた馬は、俺は、サンジェニュインは最高の競走馬だって言わせてみせる。
育ててきてよかった、俺に出会えてよかったって、きっと言わせるからな!
「じゃあ早速3歳馬たちとの併せ馬に行こうか」
それはもうちょっと精神を整える時間をくれないか?
え?だめ?
ア──ッ!!
「ヒィン……」
「元気出せよ、サンジェニュイン」
また牡馬どもに囲まれたぞクソッ!
あのカネヒキリくんとの併せ馬を皮切りに、俺は栗東トレセン内の馬たちと併せ馬をするようになった。
2度目の併せ馬は同年代の牡馬たちだったが、こちらはカネヒキリくん同様、俺をガン見するだけで息子をこんにちは!させたりはしなかった。
馬房に戻るときに俺から離れたがらないこと以外は、終始平和に終わったのである。
俺は感動した。同時に恥じた。
あらゆる牡馬に好かれるなどありえん、やはり身体を狙われているだの夜のレジェンドレースだのは被害妄想だ。
俺が美しいあまりにガン見される以外の害はないし、これは勝ったな!
どんな馬でもかかってこんかい!!
── そう、俺は慢心していた。
認めよう。安心しきっていたのだ。
その結果が、年上の3歳以上の牡馬たちとの併せ馬での悲劇である。
相手は俺よりも小さな馬だったが、3歳牡馬ということもあって風格はしっかりと備わっていた。
カネヒキリくんと出会う前だったらバリバリに警戒していただろうが、2歳牡馬たちとの併せ馬で油断しきっていた俺は、相手の目がギンギンになっているのに気づいてなかった。
そして瞬く合間に── 相手の馬の息子がオッキッキ状態で真横にいたのである。
これが1頭だけならこんな馬もいるのかで済んだかもしれないが、なんと、会う3歳以上の牡馬全頭がその状態になった。
口からなっさけねえ嘶きが漏れたし、馬なのに脱兎のごとく逃げだした。
狭いところがストレスになるという馬でありながら、四方を壁で囲まれた小屋に隠れるレベルの恐怖である。
この件を経て、俺は気づいた。
俺に興味津々でガン見してくるだけで無害なオッスたちはみな2歳牡馬、つまるところまだ繁殖期を迎えていないオッスどもである。
逆に俺を相手に戦闘状態になっているオッスどもは3歳以上。バリバリの繁殖可能牡馬だ。
今はまだいいがあと1年したら同年代牡馬たちみんな── いやこの考えはもうやめよう、精神が汚染されるわ。
「目黒さん、お疲れ様です」
「あ、高山さん。お疲れ様です。カネヒキリ号は追い切りですか?」
「ええ。あとちょっとですし」
ところで季節は夏だ。
2004年の7月である。
本当に時が進むの早すぎてキレそう。
調教調教、休んで併せ馬、調教調教と繰り返しているうちに新馬戦シーズンに突入して1ヶ月が経っていた。
馬体は早生まれ勢や通常生まれの馬たちと比べてもかなり仕上がっているほうだと思うが、カネヒキリくんにガン見されながらの併せ馬を繰り返しているうちに、さらにガッシリとしてきたと思う。
とはいえ筋肉の重みでスピードが落ちるなど言語道断。
目黒さんに小まめに体重測定をしてもらい、一番スピードが出せて、かつパワーを落とさない馬体作りが今の目標だ。
襲い掛かってくる牡馬どもから逃げ切り、かつ蹴り落とせるだけのパワーを絶対に手に入れて見せるぞ!!
マイ併せ馬フレンズ、カネヒキリくんとの付き合いも半年近く経ち、いまや俺たちはズッ友である。
きっと3歳になってもズッ友だって信じてるからなカネヒキリくん……!
2頭そろって2歳馬にしてはデカいので、他馬への影響を考慮していつもは2頭のみの時に併せ馬をしていたが、新馬戦シーズンで調教スタッドは満杯状態のときに会うのは初めてだ。
なんだか新鮮だな、カネヒキリくん!
「……カネヒキリ号、相変わらず近いですね」
「なんかすみません……サンジェニュイン号のことすごい好きみたいで、無理に引き離すと暴れちゃって」
相変わらずのゼロ距離だけど、3歳牡馬たちと違って立ち上がらないのでまだオッケーです!
なにが立ち上がらないって、ナニだよ言わせんな!
「新馬戦は確か7月末でしたっけ」
「新潟5Rですね、ヤネは柴上さんです。カネヒキリとの相性もいいので、期待できそうですよ」
高山さん── カネヒキリくんの厩務員は自信満々である。
カネヒキリくん強いしな。俺のことガン見しながらでも先着してくし。ほんと何アレ?
まあ最近は俺もカネヒキリくんに勝てるようになったのでね、強くなってはいるから。
震えてない、これは武者震い!
「あれ、なんか騒がしいですね」
「ほんとだ。あっちは3歳牡馬の……」
ん?
「うわああイブキッ、とまれイブキィ!」
「アッすみませんすみません、ラタフィ頼む戻ってきてくれ!」
厩務員、調教師、そして騎手たちの怒号、悲鳴が響き渡る。
あちらは今月末にレースを控えた3歳牡馬がいるスペース。
……逃げるぞ目黒ォ!!
「ちょ、目黒さんあれあの馬たちガード越えようとしてませんか!?」
「してますね……」
してるっていうかもう越えてんだよ!障害物レースに出場予定なのか!?
ガードを飛び越えたその脚力はレースで見せろや!
ヒィン勘弁して、厩務員さんたち手綱を離さないでえ!!
「どうどうサンジェニュイン、ほらもう捕まってるから、こっちまでこないぞ」
目黒さん!あんたあの馬たちの目が見えないんか!?
ヤってやるぜ、俺はヤってやるぜって目してるんだが!?
こんなところに居られるか!俺は馬房に戻らせて貰う!!
「これが、噂の……」
エッ噂!?なってんの!?
「サンジェニュイン号はやたら牡馬に懐かれるって聞いてましたけど、想像以上になんか、すごいですね」
言葉濁してるけど完全にドン引きしてるじゃん。
これは懐くとかそういうレベルじゃないんだよ。
もうね、狙われてる。
この神が作り給うた美しい馬体を狙われてるんだわ。
ナルシスト?俺が息子オッキッキした牡馬どもに囲まれてる姿見てもまだ言えるんか?
「あ、ジョッキーが見えたので私たちはこれで……」
逃げるな高山ぁああ!!
「エッうお、カネ、カネヒキリちょっとなんだ、そっちじゃないって」
立ち去ろうとした高山をカネヒキリくんが逆に引っ張って歩き出す。
……ん?エッ、カネヒキリくんまさか、そんなまさか。
「カネヒキリお前……サンジェニュイン号を守ろうとしてるのか?」
かっ、カネヒキリくぅん……!!
俺の前に堂々と立つカネヒキリくんの馬体が3割増しででかく見える。
わずか半年の付き合い、それも月1、2回の併せ馬の時しか会わないのに……俺を年上の牡馬から守ろうとするなんてそんなのときめ── ……かない!!
あっぶねえ、思わずトゥンクってなりそうだった。
っふー、カネヒキリくんの友愛に胸打たれたわ、マジでありがとうなカネヒキリくん!
3歳馬になってもこの友愛は続けていこうな!
「ほらこっちだからカネヒキリ。……それじゃあこれで!」
「ハイ、また併せ馬よろしくお願いしますね」
「こちらこそ!……うおっ、ちょ、カネヒキリ今日は一緒に走れないから、ほらこっち、暴れんなっていま怪我したらシャレになんないから頼む頼む」
我が友・カネヒキリくんの新馬戦は7月31日の新潟に決まっているらしく、最終調整中の今は騎手による追い切りが本格化している。
カネヒキリくんクッソ早いしぶっちぎりの1位を取って元気に帰ってきてくれ。
そいじゃ、いつまでも俺が見えてるといつまでも動かないだろうからここでな!
「カネヒキリ~~!頼むから言うこと聞いてくれえ!」
高山の頑張りに期待!
「カネヒキリ号も新馬戦か……サンジェもそろそろ決めないとな」
水うめえ!
……お、テキ。なんだ俺もそろそろデビューか。
場所はどこだ?カネヒキリくんと同じ新潟か?
「夏生まれだし、ギリギリまで調整したいからな。それに、距離ももう少し欲しい。
「12月だと……移動も考えると阪神ですか?」
なんと、俺は阪神か。
新潟だったらカネヒキリくんに馬場状態聞いて参考にできたのに。
「そうだな、阪神がいいだろう。確か、12月19日の阪神5Rが芝の2000メートルだったはずだ。クラブのほうにはこっちから伝えるよ、たぶん了解は得られると思うし、そのつもりでスケジュール組んでくれるかい」
「わかりました。……いよいよお前もデビューだぞ、サンジェニュイン」
テキや目黒さんたちが俺を撫でる。
それに目を細めながら、ウンウンと内心で頷いた。
2歳馬ならまだ俺には立ち上がってこない……レース場で他馬を気にせずの済むのは大きいわ。
よし、テキ、目黒さん!1着でゴールすっからしっかり見てろよな!
俺がそう嘶いて見せると、2人は楽しげに笑った。
サンジェニュイン 牡 2
真っ白な馬体にクリックリのおめめ
某検索窓で「白い馬 かわいい」で検索したときに出てくるかわいい馬のいいとこ取りみたいな馬(ガバガバ)
今回フラグをたてられるだけ立てた
カネヒキリ 牡 2
名前を検索すればイケメンな姿がたくさん見られる実在馬
今のところは主人公を襲わない理性あるオッス
主人公に新馬戦1着で帰ってこられるやろ、と思われている
テキ(本原)
オリジナルヒト族 男 50代
主人公をかわいがっているが、熱がこもると調教がエグくなる
目黒さん
オリジナルヒト族 男 40代
主人公の担当厩務員
割と冷静に見えて、牡馬に囲まれる主人公に何かあれば心中する覚悟がある
5話ごとに1話ウマ娘回をやるので次回、ウマ娘ワールド!
6/15 追記
文章の加筆と修正を行いました。
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side:ウマ娘 ー Ep.1
今回はウマ娘回。
サンジェニュインがウマ娘になるならカネヒキリくんもウマ娘にならないわけがない(確信)
凱旋門賞馬なのに実装がめちゃくちゃ遅くて2ch にスレが立つウマ娘がいるらしい……
低いバイブに促されるようにして、少女がスマートフォンを開く。
時刻は午前11時。
「優駿たちの頂点、URAファイナルズの開催が決定、か……」
そよ風に揺れるカーテンの隙間から、燦々とした日の光が差し込む。
暗がりの部屋に伸びる小さな影にまたひとつ、影が重なった。
「……出るのか?」
「どうかな、トレーナーくん次第だろうけど── どうせなら出たいな」
ひときわ強い風が吹き抜け、カーテンごと少女の髪を揺らした。
光に縁どられた輪郭は淡く輝いていて、暗がりの中でさえ少女を神秘的に見せる。
やわらかくウェーブした髪も、青い瞳を縁取る睫毛も、桜色に薄く染まる肌さえもが白い、その少女。
暴言さえ知らぬような口も、スマートフォンを持つ手も小さく細くみえる。
卓上に並ぶショートケーキ、マカロン、あらゆる愛らしいお菓子ですら、少女の可憐さの前では引き立て役にはなれない。
開かれた窓から飛び込む声に耳を澄ませ、楽し気に微笑むその表情のまま ──
「あらゆるレースで、あらゆる場所で、頂点に立つのはこのオレ── サンジェニュインだ」
振り落とされたフォークがケーキを崩す。
さながら、豪奢な凱旋門を粉砕する一本の槍のように。
美しく整っていたケーキの、その裂かれた隙間から流れる赤色が、少女をさらに美しく見せた。
「あ、クリームとんじゃった……」
「……これで拭え」
「カネヒキリくんサンクス~!」
……少女をさらに美しく見せた、はず。
神は言った。
── まあ馬生をまっとうできれば次は人間になれるぞ……一発の未練が解消できないとフフッ、次はどうなるかわからんがの!
つまり未練が解消できなければ、次の生は人間にはなれない、ということである。
馬としての晩年、薄れゆく意識の中でこの事を思い出して、思った。
『でもまあ、この馬生すごい楽しかったし、次人間じゃなくてもいいかな』
悔いばかりの人生とは異なり、馬生では未練なく生きようと思ったが、競走馬とは厳しい競走世界。
勝敗により、もちろん残る思いはある。
もっと勝ちたかったとか、仲間のレースを見守りたかったとか、最期にあいつをぶちのめしておけばよかったとか。
ん?なんか最後のやつは人間の時の未練と変わらな── ごほん、とにかく結局未練はあった。
だけど、人間だった時よりも馬生は何倍も濃く、充実した日々だったことに間違いない。
俺は精一杯生きた。
未練はあっても悔いはなかった。
ただもし、次また競走馬になれたら、次こそは……。
死に際にそう思ったのがダメだったんだろうなあ。
「わ、あのウマ娘さんかわいい!」
「ほんとだー!色白ですっごいスタイルいい!レースでは見たことないけど、まだデビュー前なのかな?」
制服姿の娘さんたちがヒソヒソと言い合う。ヒト的には小声だろうと、このウマ耳にはしっかりはっきり聞こえるのである。
目が合ったのでニッコリ微笑んでおく。
かわいい?サンクスサンクス!
「おばあちゃんみてー!!ウマむすめのおねえちゃん!」
「あら、ほんとねえ。かわいいわねえ」
お嬢ちゃんもかわいいよ。
「あっ、おててふってくれた!」
「よかったねえ」
女子高生と幼女、そして様子をうかがっていた男子中学生にもサービスサービスゥ!してその場を立ち去る。
このままここでニコニコしているとさらに人が増えて近隣住民に迷惑をかけてしまう。
圧倒的美少女ウマ娘は引き際もスマートに済ませるものだ。
今の激ウマギャグでドッカンドッカンの場面やな!
「お、カネヒキリくん!待たせたみたいだな」
「……待ってない。今ちょうどきた」
嘘つけ1時間前からオレの後をつけてただろ。
視線の強さが競走馬時代から一切変わってないんだわ。
── 改めて、自己紹介でもしておこう。
俺の、オレの名前はサンジェニュイン。
神が作り給うた圧倒的美少女ウマ娘。
そしてこっちは竹馬、いや竹バのズッ友・カネヒキリくん。
日に焼けた健康的な肌とスラッと高身長、ふわふわ栗毛が最高にクールなウマ娘。
共にトレセン学園高等部栗東寮所属のウマ娘である。
……どうしてこうなったんだ。
「サンジェニュイン、聞いているのかサンジェニュイン!」
「ヒィン、ハイ、ハイ聞いてます!」
目の前に御座すのは女帝・エアグルーヴ副会長。
奥で微笑んでいるのは皇帝・シンボリルドルフ会長。
横で腕を組み目を閉じているのは我がズッ友。
オレは今、エアグルーヴ副会長から叱責されていた。
「まったく何度言えば学習するのだ貴様は!」
「それはほんとそう」
「は?」
「弁解のしようもございません」
叱責の理由はただひとつ。
登校するたびにウマ娘大名行列を作ってしまうことについてだ。
オレを取り囲む大勢のウマ娘が邪魔で登校に支障をきたしていると、また生徒会宛にクレームが入ったのだろう。
「よりによって生徒会の一員たる貴様が風紀を乱してどうするんだ」
めちゃくちゃ深いため息をつきながら、エアグルーヴ先輩が眉間をぐりぐりと押していた。
ストレスかけてすんませんほんと……。
とはいえこれはオレが作りたくて作っているわけではない。
前世の業と言うべきか、神の詫びの残りカスというべきか。
『あらゆる牡馬に好かれる魅了』の効果が、ウマ娘になっても解消されなかったのである。
「まあまあエアグルーヴ、彼女も反省しているじゃないか」
「会長は黙っていてください!あなたはこのウマ娘に甘すぎるんです!!」
「す、すまない……」
ルドルフ会長は謝りつつもオレに飴ちゃんを差し出す。
エアグルーヴ先輩の怒りのボルテージがあがった。
ウマ娘はみんな女子じゃん、牡馬すなわちオッスを魅了する効果なんて効かなくなァい?
転生してしばらくはそう思っていた時期もありました、はい。
確かにウマ娘は「娘」とあるだけあって全員女の子なわけだが、元となった魂── 別世界の名馬の魂には、その名馬の性別がのっかっているのである。
前々世でプレイしていたときは明言されていなかったが、元の魂が牡馬ならば右耳に、牝馬ならば左耳にリボンをはじめとしたアクセサリーがついている。
前世オッス馬だったオレはもちろん右耳にリボンをつけていた。
これを思い出して、ちょっと、いやまさかそんなことは、と自分を誤魔化していたが、あるウマ娘との出会いで確信してしまったのである。
そのウマ娘というのが……。
「彼女は囲まれたくてそうしているわけではありません。そもそも非があるのは、彼女を囲って困らせている相手のウマ娘どもでは?」
「か、カネヒキリくん……!」
相変わらずオレ以外が相手だと淀みなく話すね!
カネヒキリくんとの再会は2歳、ウマ娘用の託児所。
ひときわツヤッツヤの栗毛をなびかせる美幼女ウマ娘になっていたので初見ではわからなかったが、オレの顔を見た瞬間のあのガン見、どうみてもカネヒキリくんです久しぶりだねえ!
カネヒキリくんとは馬時代に死に別れて以来だったのでオレのテンションは最高値に達していたが、彼、いや彼女には他のウマ娘同様前世の記憶はなかった。
それに関してちょっと残念だなとは思うものの、視線の圧が全然変わっていなかったのでさみしさは感じていない。
暇さえあればオレをガン見し、どこに行くにも一緒、というのは競走馬時代からだったので違和感もないのだ。
そんなカネヒキリくんだが、幼少期から一緒に過ごした効果なのか、オレの魅了の影響はそこまでないようだ。
前世でも最期まで俺のこと襲わなかったもんな。
今世でも何かと右耳リボンウマ娘たちに囲まれるオレを助けてくれるし……やっぱり信頼できるのはお前だけだよマイ併せ馬フレンズ!
「……サンジェニュイン、貴様その表情だぞ」
「えっ?」
「一見儚げに見える少女にキラキラとした顔で見つめられると……矜持が高い者ほど侍る真似に興じたがる、ということなのかもしれないな」
「……今のギャグ、ドッカンドッカンいきそうですね!」
キョウジが高い者ほど侍る真似にキョウジたがる。
激ウマギャグじゃん、さすがルドルフ会長だギャグのセンスも高いッ!
「ん?……おお、確かに!今のはよかった!」
「ハイ!」
「ああ……会長、これさえなければ……!」
エアグルーヴ先輩のやる気が落ちたような音がするけど、気のせいだな!
生温い視線になったのがバレたのか、その後めちゃくちゃ叱られた。
「はんせいぶん、10まい……」
提出期限は明日までなので、これは徹夜確定である。
競走馬時代から「あらゆる牡馬に好かれる魅了」をどうにかしようと色々手を尽くしたりした。
クラシックシーズンに入ってからの他馬への影響を考慮すると、もう俺のケツだけの問題ではなかったからだ。
しかし相手は「神が与えた魅了」である。
最期まで克服はかなわず、結局効果を薄めるにとどまった。
とはいえ、効果を薄めることができるならウマ娘でもそれをやればいい、という話である。
ところがどっこい、その馬時代には効いた「薄める」方法は、ウマ娘にはまったく効果がなかったのである。
無念……だがどうしようもない。他の方法を見つけねばならない。
「オレもなんとかしたいけど、どうしよう」
このままでは最悪、出走停止である。
せっかくトレーナーまで捕まえ、もとい見つけたというのに、レースに出れないなんて嫌だ。
何か、何か方法を考えなければ……!
「── お困りのようだね、サンジェニュインくん」
「た、タキオンさん!!」
「おや、タキオン姉さん、でいいと言ったのに」
白衣に萌え袖、手に持った怪しげな試験管。
光速の粒子ことトレセンのマッドサイエンティスト、アグネスタキオンさんである。
ちなみにウマ娘としては親戚のお姉さんだ。
オレもタキオンさんも魂の元がどっちもサンデーサイレンス産駒で、その繋がりだと思われる。
母馬が同じ馬だけを「兄弟姉妹」と称するので兄弟ではないが、血はつながっている。
ちなみにカネヒキリくんとは競走馬時代は叔父と甥という関係。
俺と母馬違いのフジキセキの産駒がカネヒキリくんなのだ。
「悩み事はさしずめ……モテモテすぎること、かな?」
「……まあ、そうですね」
身もふたもない話だが、端的に言えばそう。
「そんな君に!この新薬を上げよう!モルモッ、トレーナーくん、例のモノを」
スッと現れるタキオンさんのトレーナー……居たの!?
「これを飲んだものは普段の魅力が半減する。含まれている物質はすべて身体に無害なものだから安心してくれたまえ」
「いや全然安心できない色合いなんですけど」
「ふふ……面白いだろう?」
「面白いとかそういう次元じゃないんですけど!?」
手渡された試験管は虹色で、薬は薬でも頭がパッパラパーになりそうな色合いである。
飲んだら魅力がどうたら以前に、ウマ娘生命も危うい代物にしか見えない。
「ふむ……これを飲めばたちまち魅力が半減し、追い掛け回されることも減るだろうが……」
なん、だと……?
「お、追い掛け回されることが、減る……!?」
「そうとも。誰の視線をも気にすることがない快適な学園生活。……過ごしてみたくないか?」
ゴクリ、と喉が鳴る。
過ごしてみたい。
視線には慣れ切っているが、それはそれとして過ごしてみたいのだ。
誰の視線も感じず、誰にも囲まれず、のびのびと。
「飲むかい?」
耐えろサンジェニュイン。
これは孔明の罠、いやアグネスタキオンの罠。
成分にレース禁止成分が含まれている可能性もあるんだ!
正解は「飲みません!」だ。
タキオンさんもこの返答を待っているはず。
微笑みながらオレを見るタキオンさんに頷く。
わかっていますよ、オレの答えはもちろん──
「飲みますッ!」
オレは普通のウマ娘になるぞ、ジ〇ジ〇──ッッ!!
「ッよせサンジェニュイン、飲むな!」
「ふぁっ?かにぇひきりくん?」
「ああ、遅かったか……ッ!」
カネヒキリくんはその場に崩れ落ちた。
オレの身体は虹色に光り輝いた。
……反省文は20枚に増えた。
── アグネスタキオンのやる気が上がった!
── カネヒキリのやる気が下がった!
── エアグルーヴのやる気が下がった!
── サンジェニュインのやる気が下がった!
── サンジェニュインの魅力が50下がった!
サンジェニュイン(ウマ娘)
固定スキル:CHARMING・CHARM
(レース序盤から中盤にかけて自分より後ろのウマ娘を掛かりやすくする)
自他共に認める圧倒的美少女ウマ娘
競走馬時代の記憶を丸々持って転生
今世でも右耳リボンウマ娘に追われている
日常ではカネヒキリくん(ウマ娘)にガン見されながら、
ハルウララちゃんと仲良くキャッキャしている
見た目の儚げ天使美少女とは逆にオレ口調娘なので、
ウマ娘プレイヤーからはそのギャップで愛されている
カネヒキリくん(ウマ娘)
日に焼けた健康的な肌、高身長、スタイル抜群、ふわふわ栗毛は短髪
イケウマ娘としてめちゃくちゃモテるが、
視線がサンジェニュインで固定されている
実装はサンジェニュインより先
サポカすらない未実装のウマ娘の話を延々とすることで有名だった
エアグルーヴ先輩
魂の元が牝馬なのでサンジェニュインはちょっと手の掛かる後輩レベル
会長とサンジェニュインが似たようなギャグセンスをしているため、
頻繁にやる気が下がっている
シンボリルドルフ会長
魂の元が牡馬なのでサンジェニュインにゲロ甘い
ただ孫に対する祖父のようなゲロ甘さなのでサンジェニュインも懐いている
アグネスタキオン
サンジェニュインとは親戚同士
お姉さんと呼ばせたかがっているがなかなか呼んでくれない
体質改善には真面目に協力しているつもり
アグネスタキオンのトレーナー
よく虹色に発光している姿が目撃されている
次回は競走馬回に戻るゾ!
※投稿頻度のアンケートご協力ありがとうございました!
6/15 追記
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5.俺の晴れ舞台
楽しいのでもっと送ってください!!
日課の日刊あさってたんですけど(ここ激ウマギャグ)
拙作と同じタイトルの小説が載ってて
「アイエエ!?タイトル被りなんでえ!?」
と思ったら拙作でした。
……日刊乗るなら連絡くれよ運営ちゃん!!
カネヒキリくんの視点も入れようと思ったけど雰囲気180度違うからやめた。
新馬戦である。
もうサックサク時が進んだ。
調教やってると1日が早すぎるんだよなあ!
「着いたぞサンジェニュイン」
はいはい降りますよー!
よっこらせ、と馬運車から降りる。
ここは阪神競馬場、俺の晴れの舞台だ。
「やあ、目黒さん」
「水野さん、ご無沙汰しています」
目黒さんがピシッと背筋を伸ばして挨拶を返すと、水野と呼ばれたおっちゃんがにこにこと笑った。
このシルクハットを被ってスーツを着たおっちゃんが俺の馬主である。
いや、正しくは俺の「馬主たちの代表者」みたいな人だ。
「ジェニュインも好走する馬だったからね、サンジェニュインにも期待していますよ」
あいよ、任せときな水野さん!
一口馬主の兄ちゃん姉ちゃんたちのためにサクッと1着キメてくるからな!
そう、俺の馬主はクラブ法人「サイレンスレーシング」が募集した一口馬主さんたちである。
一口おいくら万円という値段を複数人が出し合って、テキへの俺の預託料など諸々の経費を工面してくれているのだ。
俺がレースに勝てば出走手当にプラス報奨金の何割かが一口さんたちに戻るらしいので、たくさん勝ってお金を還していきたい。
水野さんはそのクラブ法人のお偉いさんなのだが、6月からの新馬戦シーズンで続々と同クラブの所有馬が華々しくデビューしていったことで、もうずっとニッコニコでご機嫌のようだ。
ちなみに俺の母の全姉・クルーピアレディーの輩出したジェニュインも一口馬主さんたちに支えられた馬だ。
こっちは「社来レースホース」っていうクラブが所有していて、俺が生まれる3年くらい前から種牡馬── 種付けを仕事とする馬として、主に地方で活躍する産駒を輩出していると聞いた。
全妹を母に持ち、父親も同じサンデーサイレンス産駒の俺は、血統で言えばこのジェニュインと全く一緒。
ジェニュインは脚があまり強くない馬だったらしいのだが、馬体が大きいにもかかわらず目立った虚弱さやケガもなかった俺は、一口さんたちの間でもそこそこ人気があるらしかった。
この情報はどこからかって?
俺の頼れる厩務員・目黒さんから!
……目黒さん、割と最初から俺に話しかけてくれる人ではあったんだが、ちょっと大きい独り言程度だったんだよな。
それがカネヒキリくんと初めて会った日から明らかに俺に向かってしゃべりかけてて……いやまさか、な。
あ、そうそう、そのカネヒキリくんなんだが、7月末に新馬戦を終えた。
結果は── 4着。
カネヒキリくんの厩務員が言うには、どこか走りづらそうにしていたらしい。
中盤になっても馬群の中でもがいていたようで、このまま掲示板入りさえも逃すか、と思ったら終盤で伸びてなんとか4着に食い込んだようだった。
続く8月に小倉で2歳未勝利戦── まだ勝ち上がりのない馬たちのみで競われるレース ── に参戦。鞍上を変えたのが響いたのかここでは掲示板を逃して11着だ。
どちらも芝でのレースだったので、陣営は次はダートに出そうか検討中だそう。
ちなみにここまでカネヒキリくんとは一切会っていない。
精神的ショックがでかいとかどうとか……あっちの厩務員の言うことはよくわからなかったけど、併せ馬は当分先のことになりそうだ。
「行ったか……サンジェニュイン」
うん?
目黒さんが俺と視線を合わせ、口を開いた。
「期待だなんだ、考えなくていいぞ。思うがまま走ってこい。お前が走る道を、鞍上の騎手が整えてくれるから」
そう言って目黒さんが俺の首をなでる。
その後ろに、手を振る騎手の姿が見えた。
「大丈夫。お前が強いことを、誰よりも俺が信じているよ」
その言葉は、魔法の言葉のように聞こえた。
「芝2000メートルです。メンバー10頭の新馬戦。断然人気はもうこの馬、ディープインパクト。単勝の人気1.1倍になっていますよコレ」
「いやあ、こんなに被っていいものでしょうか」
「馬体重は452キロということで、まあそれほど大きいサンデーサイレンス産駒ではないんですけどね」
「そうですねえ……同レースに出走しているサンデーサイレンス産駒、こちらは白の馬体、サンジェニュインは492キロと比べると明らかですね」
「そうなんですよねえ。ただね、うーん、春と比べたら多少なんというか結構大きくはなっている、ということでね。例えばお兄さんのブラックタイド、お姉さんレディーブロンドが見せてくれたあの、あの瞬発力を期待したいです」
人々の目には鹿毛だけが映っていた。
流星を放つほどの強さは、人の目に他馬が映ることを許さない。
だが馬たちの目には白が、ただ曇りなき白が映り込んでいた。
少し煤けた芝を歩く、まぶしいほど純白の馬体。その馬からにじみ出る気迫に押されてか、周囲の馬たちがにわかに騒がしくなった。
各自の鞍上は宥めるように綱を手に持つ。それでも馬たちはなかなか落ち着けず、首を伸ばしては白馬を見ようとする。
だがその白馬はただ、ただ前だけを向いていた。
「4番のディープインパクトが1番、1番、1番人気となっています!」
張り上げられた期待の声に声援が重なる。
このレースの主役は鹿毛── ディープインパクトだろうか?
それとも……。
「さあ阪神競馬5レース、いよいよ2歳の新馬戦が行われようとしています。芝、距離は2000メートル、2歳馬10頭のデビュー戦ゲート前は、まずランドフラックが1番ゲートに誘導を受けてます」
順番に誘導を受ける馬たちを、背後からジッと見つめる力強い視線に、断然1番人気に推された馬の鞍上がハッと後ろを振り向いた。
── 白い馬が、自分たち、ディープインパクトを睨み付けている。
射貫く瞳は大きく、それを縁取るまつげの白さまでもが、鞍上の男にもよく見えた。
大柄の馬体を雄大に見せ、頭を下げることなく前を、ただ前だけを見る姿には得体の知れないオーラが揺蕩う。
誘導を受けるまでの瞬く合間、彼はその白い馬から目が離せなかった。
「最後は大外10番サンジェニュインがゲートに収まりまして……スタートしました」
開け放たれたゲートから飛び出して、馬たちが1番を目指して走り出す。
「10頭目指す先は1コーナーカーブ、ここでアキノセイハがすーっと先頭に、ッいや交わしてハナを奪ったのは10番、白い馬体の10番サンジェニュインです!」
「先頭から3馬身離されて2番手アキノセイハ。ぐんぐん差をつけていくサンジェニュインに後方の馬たちは間に合うでしょうか」
「まだチャンスはあると思いますが、さらに差を広げるサンジェニュイン、少し掛かり気味か、一息つけるといいですが」
ターフを駆け抜ける白い弾丸にスタンドからどよめく声が広がる。
「続く3番手はタイペルラ、テイエムカイブツが並びます。その内はコンゴウリキシオーで前4頭広がっている状態」
「6番手も広がってディープインパクト、内にランドフラックさらにコンバットマニアが続きまして、その後ろからパルテアンショット、最後方にヒカルゼットが追いかける形となって、先頭サンジェニュイン除く9頭で揉み合うように走っています」
「サンジェニュイン独走!大逃げを続けてその差は4馬身5馬身と伸びていくぞ、後方の馬たちはいつ切り込むか」
「これは本当に新馬戦なのかわからなくなるくらい、非常に速いペースです。さあまだサンジェニュインが先頭だぞ、逃がしていいのか?先段にじわりじわりコンゴウリキシオー、外からディープインパクトが先頭を狙っている、サンジェニュインの背はまだ遠いか?」
力強く大地を蹴り続ける、白い馬体は止まらない。
逃げ切れるか?逃げ切れるんじゃないかこのまま、スタンドで馬券を握る男たちの手に汗がにじむ。
ゴールまで残りわずか、背後から迫る衝撃音に鞍上が振り返り、すかさず鞭を振り上げる。
走れ、伸びろ、残せ、逃げろ逃げろ、逃げ切れ!
「ディープインパクトがコンゴウリキシオーを交わして伸びる、サンジェニュインの背はもうすぐそこだ、抜けるか?抜けるか?」
白い馬体から伸びる影を踏む、たった1頭の鹿毛馬。
「ディープインパクトかサンジェニュインかディープインパクトか!?わずかにサンジェニュイン再び交わすも残り100メートル!」
「コンゴウリキシオーが2頭を追うも届かない!」
「2頭揃ってゴールだ!白と黒の馬体がほぼ同時にゴール板を踏み抜いたようです」
「体勢はディープインパクトの方がやや有利か?写真判定が待たれますが」
競馬場全体が風に揺られるようにざわめいていた。
1.1倍のオッズなど、すでに妄信できないだろう。
それくらいゴール前の競り合いは白熱していて、握りしめた馬券の価値を大きくブレさせた。
「── 結果が出ました。1着はディープインパクト!2着馬サンジェニュインとはハナ差……8センチ!?ハナ差8センチの決着です。わずかに8センチ、されど8センチ。結果が出ればそれがすべてです」
空に馬券が舞う。
さんざめく声は怒りか喜びか。
どちらにせよ、ゴールしたあとも先頭を走り続けるその馬には届かない。
馬はただ前へ前へと走っていた。
まるで走り足りないかのように脚を動かし続け、そして訴えるように嘶いた。
『エエエエ!?ディープ!?ディープインパクトなんで!?親父の惚れた馬なんでええ!?……アッおいちょっと近寄んな、近寄るなってば!!』
「何故かサンジェニュインが走り続けていますね、他の馬たちもそれをずっと追いかけているようです」
「一体どうしたのでしょ、あ……ディープインパクトの鞍上から竹騎手が落ちました」
『来んなよおおおおお!!!!誰かたすけでええええ!!!!』
めちゃくちゃ訴えるように嘶いた。
なおこの新馬戦、主人公除く9頭中7頭が牡馬!(爆笑)
サンジェニュイン 牡2
2歳にしてはデカイ
でも足腰強いしケガもしたことない
今回深い衝撃さんと新馬戦が被り、惜しくも1着を逃す
そしてレース後に牡馬どもに追いかけ回される
カネヒキリくん 牡2
残念ながらまだ未勝利
芝じゃ上手く走れなかったよ……
じゃあなんでサンジェニュインに先着できてたのかってお前、
先着しないとサンジェニュインの顔がちゃんと見えないからだよ
ディープインパクトさん 牡2
主人公のクソ親父が惚れた牡馬、つまりこいつが……いやこれ以上はよそう
主人公より小せえが主人公より強い(確信)
レース後、鞍上の竹さんを振り落として主人公のケツを追いかけた
竹さん ヒト族 男
レジェンドジョッキー
やべえオーラビンビンの白い馬に何かを感じた模様
ディープインパクトさんに振り落とされてケツが痛いがそれ以外はケガしてない
目黒さん ヒト族 男
誰よりも主人公の強さを信じている厩務員
どうやら主人公が言葉を理解しているのを理解しているらしい
今回主人公は負けたけど次は勝てるって信じてる
騎手くん ヒト族 男
今回一瞬も出番がなかったが詳細は次回でたぶん明かされる。たぶん。
次回、掲示板回!
小ネタとは別の掲示板回です。
6/15 追記
阪神5Rの2歳新馬戦レース実況は史実の実況をベースとしています。
実況参照元:https://www.youtube.com/watch?v=Eqj0VXGUDD4
主にレースが始まる前の冒頭、
「芝2000メートルです。メンバー10頭の新馬戦。断然人気はもうこの馬、ディープインパクト。──」
からの前説部分は、一語一句すべて書き起こしというわけではありませんが、口調やニュアンスを変えたりしている程度で、ほぼ史実を写す形となっています。
この部分は「ディープインパクト」という馬が、新馬戦の時点でどれほど人気があって期待されていたのかを、当時の人々に強く強く印象付けた部分だったと思うので、どうしても史実の部分を使いたい思いがあり載せました。
レース直前のアナウンサーの
「4番のディープインパクトが1番、1番、1番人気となっています!」
は、史実でアナウンサーが発言した
「4番のディープインパクトが断然、断然、断然の1番人気となっています」
の「断然」を「1番」にすり替えただけなのですが、断然を3回繰り返すほど圧倒的な人気だったことを表現するのに、これ以上シンプルな方法もないと思い、改変した形で使用させていただいています。
最後の
「わずかに8センチ、されど8センチ。結果が出ればそれがすべてです」
は、史実の「○○騎手!もう勝てばそれがすべて記録です」をどんな形でもねじ込ませたかった悪あがきです。この史実の部分恰好よくない?恰好いい(確信)
レース実況も丸々の書き起こしにならないよう注意していますが、史実のレースをベースにしているため、途中の順位等は沿うようにしています。なるべく自分の言葉に言い換えてはいるのですが、何分実況素人のためおぼつかない点もあるかと思いますが、ちょっとゆるしてほしいです。ゆるしてください。
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閑話 掲示板回 Ep-1
なんか間違ってるような気もする……気になる点があったら教えてクレメンス!
気づいたらブクマ数が1000超えててスクショ3回くらい取った。
ブクマしてくれたみんなサンクスサンクス!!
感想もドッシドシ送ってくれてサンクスサンクス!!(もっとくれ)
あとこれは小説に全然関係ない余談だけど、
サンジェニュイン(ウマ娘)は「敗因(はいいん)」を「はんいん」って読んでる。
2004年新馬戦スレ
451:名無し競馬おじさん ID:MgvhAd+g4
今日の阪神5R新馬戦、最後くっそ面白かったなwww
452:名無し競馬おじさん ID:wPAX8VyT1 >>453
>>449
朝日杯のマイネルレコルトはやっぱ格が違うわ
2歳G1より後に新馬戦出る馬でいいやついるのかよ
453:名無し競馬おじさん ID:r8b9IMzrC
>>452
本日の早漏おじさんはコチラ
454:名無し競馬おじさん ID:3IlEJdPzB
今日の阪神5Rっていうと勝ち馬はディープインパクトか
455:名無し競馬おじさん ID:wxeb4wxyw >>459
事前オッズ1.1倍の馬が勝ってもうま味ないわな
456:名無し競馬おじさん ID:uVh42fTpZ
言うて血統も生産牧場も馬主も鞍上もガッチガチだから外すという選択肢もないという……
こんなことならサンジェニュインも馬券に絡めとけばよかったわ
457:名無し競馬おじさん ID:+KJondrZQ >>458 >>459
鞍上も竹で買わない理由がなかったもんな
でもまああのレースは俺的にはサンジェニュインの方がインパクトあった
458:名無し競馬おじさん ID:lFWRmhYv6
>>457
ディープより深い衝撃やったなサンジェニュインwww
459:名無し競馬おじさん ID:Ah7FNvql6
>>455
おまいら静かに!455がなんかギャグいってるわ
>>457
あの白馬は完全に予想外なんよなあ
460:名無し競馬おじさん ID:n3Eh0kOHA
サンジェニュイン、口に出しても言いにくいし文字にしても書きづらいな
461:名無し競馬おじさん ID:ODmQtznji >>462 >>463
ジェニュインだしジェニュイン産駒か?
462:名無し競馬おじさん ID:u1TDyi4Sg
>>461
ちゃうで
463:名無し競馬おじさん ID:662M4yEH4
>>461
一瞬何言ってるかわかんなかったわ
サンジェニュインはジェニュイン産駒じゃなくてサンデーサイレンス産駒ね
464:名無し競馬おじさん ID:LUKhbxnuV >>467
この新馬戦だけでサンデーサイレンス産駒が3頭いるのはワロタ
465:名無し競馬おじさん ID:+uEL3ZpcT
時代を強く感じたわ
466:名無し競馬おじさん ID:pYYtjUHMh
懐古おじさんたちはやく前向いて
サンジェニュインは血統も申し分なかったのに人気は意外やったな
467:名無し競馬おじさん ID:EeK0rufwz
>>464
他の新馬戦も結構か数がサンデーサイレンス産駒なのよな
468:名無し競馬おじさん ID:3qqzsmSNL
今日の阪神見てないからサジェニュインどんな馬だって検索したら白すぎwww
469:名無し競馬おじさん ID:iVThVu4l6 >>470
2歳の葦毛で白いのは珍しい
470:名無し競馬おじさん ID:ewWa4l5my
>>469
サンジェニュインは葦毛じゃなくて白毛やぞ
471:名無し競馬おじさん ID:xOZf86ymg
同じSS産駒のディープインパクトやテイエムカイブツよりも人気低かったの、ふつーに馬体の大きさと毛色
472:名無し競馬おじさん ID:5zXTgy88H
パドックでのおとなしさを見たワイ、サンジェニュインを入れてニッコリ
473:名無し競馬おじさん ID:S0afkdpTV >>474 >>475
2歳馬にしては確かにデカかったけど毛色は関係あるか?
474:名無し競馬おじさん ID:vGkPQxPhA
>>473
葦毛は走らないって言われてた時代があったし、白毛のG1馬はまだいないからじゃね
475:名無し競馬おじさん ID:QuY8EGSs0
>>473
白毛よりも夏生まれの方が人気下げてたと思われ
476:名無し競馬おじさん ID:M13PfIEV8
誕生が2002年7月2日で72(夏)生まれwww
477:名無し競馬おじさん ID:9cIDWJd2q
7月生まれとか買わん(買わん)
478:名無し競馬おじさん ID:cZpFsQzeF
夏生まれであの馬体はデカすぎるんよなあ
479:名無し競馬おじさん ID:Ekxz5ssd4
勝ち馬のディープが小柄だから、叩き合いの時はマジでサンジェニュイン勝ちきっちゃうんじゃないかとひやひや
480:名無し競馬おじさん ID:R8j0570/J
オッズがマジだけあってディープインパクト強かったな、こいつがクラシック席巻しそう
481:名無し競馬おじさん ID:Ow6/1C+B1
8センチハナ差のサンジェニュインもツッヨツヨやったやん
もうこの2頭やぞ
482:名無し競馬おじさん ID:jp/3t0xvM >>483 >>484
どっちが強いとかもういい、それよりレース後の話をさせろよ
483:名無し競馬おじさん ID:99qgwt0x/
>>482
せっかちおじさん落ち着けよ
484:名無し競馬おじさん ID:bEiq+6I2X
>>482
重賞ちゃうんやしレース後とかなんもおもんない
485:名無し競馬おじさん ID:FEuK6R9Hl
今回のレースはレースもおもろかったけどレース後は爆笑だった
486:名無し競馬おじさん ID:uPNFZ2kCM
語るんなら語れ、読み流してやる
487:名無し競馬おじさん ID:jp/3t0xvM >>488 >>489 >>490 >>511
レース後、9頭中7頭がサンジェニュインのケツ追って走り続けてた
488:名無し競馬おじさん ID:izH934iGg
>>487
??????
489:名無し競馬おじさん ID:lRt/RX+yN
>>487
日本語で頼む
490:名無し競馬おじさん ID:4ICNA+r2n >>491
>>487
アレふつーにみんな興奮しててわかりやすい白馬のサンジェニュインを先頭に走ってただけちゃうん?
491:名無し競馬おじさん ID:mFrQBMWWa
>>490
ディープから落ちた鞍上の竹が
「ゴールした後からディープの鼻息が荒かった、サンジェニュインしか見えていない状態だった」
って語ってる
492:名無し競馬おじさん ID:HzHzABHpB
竹が馬から落ちてるのオモロ
493:名無し競馬おじさん ID:ePTPknuHQ
竹を振り落としてでも追いかけたいケツか
494:名無し競馬おじさん ID:+HpUqXdAi >>495
サンジェニュインって牡馬じゃなかったっけ?
495:名無し競馬おじさん ID:L/zXOjj4k >>496
>>494
せやで
496:名無し競馬おじさん ID:d8+tV/KPM
>>495
???????
497:名無し競馬おじさん ID:X3iGDPo2U
今日の阪神新馬戦は10頭中8頭が牡馬、セン馬1頭に牝馬1頭
498:名無し競馬おじさん ID:zD0TeZGTA
牡馬のサンジェニュインを他の7頭の牡馬が追っかけてたってことかよwwwwww
499:名無し競馬おじさん ID:R6y1Ie91g
どうしてそうなったんだよwwwwww
500:名無し競馬おじさん ID:cgwIV6gz5
芝2000メートルを大逃げしてさらには差し競り合いまでしたのに、
その後も脚を緩めることなく先頭で走り続けたサンジェニュイン、絶対クラシックで馬券に絡むでしょ
501:名無し競馬おじさん ID:7yrzltHJ4 >>502 >>503
テイエムカイブツ、コンゴウリキシオーらがどんどんペース落ちして止まるなかで
止まることなくひたすら走るサンジェニュイン
502:名無し競馬おじさん ID:30SpjbHAg
>>501
体力おばけなのはわかった
503:名無し競馬おじさん ID:X3Imi45Uv
>>501
化け物級の体力wwww
504:名無し競馬おじさん ID:tfRBkKFhQ
ステイヤー向きなんやろな
夏生まれであの馬体の仕上がりなんやし、まだまだおっきくなりそう
505:名無し競馬おじさん ID:yktF2pU9r >>506
結局なんでサンジェニュインは他の牡馬に追われてたん?
506:名無し競馬おじさん ID:Jcq030lWq
>>505 初レースの興奮プラス美しすぎる白馬のケツが目の前にあったからじゃね?
507:名無し競馬おじさん ID:g7XCcLxy9
サンジェニュインの顔がかわいいのは人間の目でもわかるが、
フェロモンも出てない同性相手に鼻息が荒くなるディープはわからん
508:名無し競馬おじさん ID:hc9QYPgCT >>509 >>510
次も牡馬にケツおっかけられてたらサンジェニュインの美貌は同性も狂わせるってことが証明できるやろ
509:名無し競馬おじさん ID:dwnWzSp3u
>>508
いやな証明だな
510:名無し競馬おじさん ID:Fs5W9qtb0
>>508
さすがにソレはないwww
511:名無し競馬おじさん ID:YvX19r9gn >>512
>>487
レース後のおもしろエピならギャン泣きサンジェニュインも追加しろ
512:名無し競馬おじさん ID:sMFrnXkk4
>>511
????????
513:名無し競馬おじさん ID:Fg+xselb4
目にゴミでも入ったんかwww
514:名無し競馬おじさん ID:03/sKmEOg >>515 >>516
レース後の爆走後、他の牡馬たちが戻っていくのを見て速度を緩めたサンジェニュインが、
検量室に戻るときに目からボッタンボッタン涙流してて、ずっと厩務員がタオルで拭いてた
515:名無し競馬おじさん ID:pPQoHtsY5
>>514
汗拭いてるのかと思ったら涙拭いてたんか
516:名無し競馬おじさん ID:NC0TPkRbD
>>514
レース負けたのが悔しくてないてたんやろか
517:名無し競馬おじさん ID:thCBIqLDu >>518
感情で泣いてると思ってるヤツにマジレスすると、砂埃が目に入っただけだと思う
518:名無し競馬おじさん ID:HDs/OWJHf
>>517 ワイは普通に悔しくて泣いてたと思ってるで
竹が「すれ違いざまに睨まれた、負けたことをわかっている」って言うてた
519:名無し競馬おじさん ID:dulUGJH+h
他の牡馬が走り続けていたのはサンジェニュインのケツ追っかけたんだろうけど、
サンジェニュインは負けが認められなくてずっと先頭走ってたのかもしれんな
520:名無し競馬おじさん ID:FZUNLK4dV
そう考えるとサンジェニュインを応援したくなってきたな
521:名無し競馬おじさん ID:IkgLgKZVB
たとえ何度牡馬にケツ追われても逃げて勝ち上がってクラシックで活躍してほしいわ
522:名無し競馬おじさん ID:AhI3RSxtS
ディープの次走は年明けの若駒Sで、サンジェニュインはまだ発表ない
523:名無し競馬おじさん ID:dYP1ic1qY
若駒Sか、そのままクラシック準備に入りそうやな
524:名無し競馬おじさん ID:p5fcW6hCg >>525 >>526
ディープインパクトもマジで強かったから、ソイツとハナ差決着だったサンジェニュインも強い
まだ馬体・白毛・夏生まれで警戒して馬券買われない今のうちに儲けたいわ
525:名無し競馬おじさん ID:1T1Z9Xovq
>>524
サンジェニュイン、今回で強さを証明したので次からは人気上がると思うぞ
526:名無し競馬おじさん ID:svFYa9QKw
>>524
給料全部つぎ込めよ
527:名無し競馬おじさん ID:wzw18napS >>528
伸びしろがあるのはサンジェニュインの方だし、ディープインパクトとぶつかっても次は勝ちそう
528:名無し競馬おじさん ID:pzZWiToYU >>529
>>527
それは厳しくね?
529:名無し競馬おじさん ID:DGRANVKav
>>528
なんで?短距離や中距離路線だと伸び悩むかもしれんけど、
あのスタミナなら菊花賞や天皇賞は距離不足まったくないやん、クラシック入るならそこら辺強いと思う
530:名無し競馬おじさん ID:9WvEAmhA4
ディープが中段から4,5馬身差をまくって勝ったこと忘れてる競馬おじさん
531:名無し競馬おじさん ID:UXnF4kini
中段先行のレースだったけどディープインパクトは末脚がキレるから後方下がってもまだ伸びそうやん
長距離への距離不足まったく不案内のはこっちも一緒、で素質比べになると白馬は負けそう
532:名無し競馬おじさん ID:1A0+E0Q4+ >>534
この話題だけで200使いそうなのワロタ
そろそろ黒いのと白いのとで別スレ立てた方がよくね?
他の新馬戦の話もさせろや
533:名無し競馬おじさん ID:xlL4RzPmh
色で分けるなや
534:名無し競馬おじさん ID:Ptf0ldtRB >>535 >>536
>>532
そろそろ言われると思って立てといたぞ
つ 2005年楽しみな黒いのと白いののスレ
535:名無し競馬おじさん ID:49Y/LRW5z
>>534
トンクス
536:名無し競馬おじさん ID:IlOo+mj4U
>>534
スレッド名がテキトーすぎるのよwwww
537:名無し競馬おじさん ID:00OarEJ3l
以下、黒いのと白いのの話は専スレでヨロ
538:名無し競馬おじさん ID:VvIeVjURM >>538
そろそろマイネルレコルトが絶対強い話していいか?
539:名無し競馬おじさん ID:dBHe5gI3j
>>538
マイネルレコルトおじさんも専スレいってどうぞ
掲示板って難しいんやなあ(白目)
ウマ娘プレイヤー目線書けるのかコレェ……いや書くんだよ(豹変)
明日は休日なので2~3話くらい更新するゾ!
あと1000文字以下のSSはTwitterの方にぶち込んどくので、
もう人生でナニも読むものないくらい暇になったら読んでどうぞ
次回、競走馬回!
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6.ドキドキ♡馬運車2頭旅
(感想でピンクフェ○モン思い出す人多くて芝)
これが本日1話目!!
次話から新キャラ増えちゃ→う↑
騎手の名前が出たけど影薄くて泣きそうなので次話でどうにかします(ほんとかな?)
あと白毛馬の歴史とか調べてたら大変、
このサンジェニュインとか言うウッマ、史実白毛馬たちの歴史的記録を奪ってしまう……!
(二次創作なので許してほしい)
今度被害者一覧でもつくるか……
新馬戦、2着で終わったサンジェニュインです。
ぐやじい~~!!!!
「ずいぶんな大泣きだな」
「すみません目黒さん。なんか目に砂埃入っちまったかな……」
「いや、単純に負けたのが悔しくて泣いてるんだろう。芝木くん、あとはこっちでやるからもう休んでいいよ」
「いいんですか?」
「ああ。また今度頼むよ」
「わかりました。……サンジェ、またな」
おー、おつかれ、またな、芝木くん。
俺がそう嘶くと、芝木くんは小さく笑って去って行った。
彼は俺の主戦騎手ってヤツになった芝木くんという若手の騎手だ。
目黒さんと合流するまでの間、ボロクソに泣いていた俺の涙を拭ってくれた。
2000メートル走った後も俺が大爆走したこともあって、芝木くんもグッダグダのヘロヘロ状態だと言うのに、文句のひとつも言わないどころか、よく頑張ったなと撫でてくれるような優しいやつだ。
すまんな芝木くん、俺の逃亡劇に付き合わせて……。
いやこれ俺が謝るやつじゃないわ、俺のケツ追っかけ回してた牡馬どものせいじゃない?
そもそもと言えば、レース中から俺のことをガン見していたあの馬のせいないんですけど。
思い出すだけで涙出そう!!
── 阪神5R新馬戦は芝2000メートル
パドックでは枠順的に最終だったこともあって、俺のことを気にしていた牡馬はいなかった。
大人しく、姿勢よく、顔も上げてしっかり前を向いて歩いていたのが好評だったようで、俺の評判はそこそこ。
その割には人気はあまり上がらず……というのも、俺が夏生まれでまだ調教が完成していない疑惑が立っているらしい。
失礼な、こちとら厩舎にきて3ヶ月でほぼやること終わった馬やぞ!!
後は白毛が馬券に絡んだ記録があんまりないらしく、目黒さんが言うには、俺と同じ突然変異の白毛馬・シラユキヒメが1度馬券に絡んだくらい、のようだ。
まあ白毛の総数がそもそも少ないからそこら辺は仕方ない気もするけど。
ちなみにこのシラユキヒメ、白毛だけでなく、父馬も俺と同じである。
パドックが終わって返し馬、ここで他の牡馬たちが完全に俺に気づいたようで、ちょっぴり騒がしくなった。
各自の鞍上がなんとか手綱を取ってくれていたので、俺に飛びかかったり、俺をガン見して動かなくなったり、というのはなかったのが一番嬉しい。
俺がいるせいでレースが壊れる、とか言われたくないもんな。
だが問題はゲート入りする時に起きた。
「4番ゲートにディープインパクト入ります」
ディープインパクト。
鹿毛の馬体が静かに黒を帯びる、小柄な馬。
── 親父が惚れて、家庭捨ててでも追っかけた牡馬
その本人、もとい馬である。
エエエエ!?ディープ!?ディープインパクトなんで!?
そう思いながらも、ゲートが開いたと同時に脚が前へと動く。
条件反射でゲートスタートが切れるよう、ずっと練習した成果がココに来てはっきりでた。
ありがとうゲート練習、やってなかったら完全に出遅れてた!
先頭に7番アキノセイハを見据えた時点で、1コーナーを曲がりきる前に交わしてハナを取る。
鞍上の芝木くんには「ペースが早すぎる」と一瞬ブレーキをかけられたけど、ソレを押し切って走り続けた。
「サンジェ……体力持つのかッ?」
持つんじゃない、持たせるんだよ!!
自分でも速いペースで走っていた自覚はあった。
だが、ここで脚を緩めて中段につけて見ろ、間違いなく馬群に飲み込まれた後、俺を気にして前に出れない馬もろともズッブズブの展開やぞ!
それに、あのとき中段先行していたディープインパクトのあの視線……お、思い出すだけで脚が勝手に早くなっちゃう~~!!
「突っ切るか……もう少し踏ん張ってくれサンジェ!」
パシン、と芝木くんが鞭を振り落とす。
芝木くんが馬をシバくってフフ、激ウマギャグじゃんね!!
今は笑えんけどレース後にドッカンドッカンの場面やぞ!!
脚に力を入れ、ゴールへと一目散に駆けていく。
目黒さぁん!!テキ!!それから一口馬主の兄ちゃん姉ちゃん!!
1着キメたるぞってエエエエ!?ディープ!?ディープなんで!?
── 4馬身は離したつもりが真横にディープインパクトがいた。
な、何を言っているかわからないと思うが、走っている俺にもわからない!!
この馬の末脚やべえんだなあ!?
「頑張れサンジェッ!差し切れ!」
一度は差し切るも残り100メートル、最後ほぼ同時にゴール板を抜けたみたいだけど、写真判定によるとハナ差わずか8センチという非常に惜しい負け方をした。
ぐやじい、ぐやじい~~!!!!
だがゴール後の俺にとって一番重要なのはそこじゃなかった。
『そこの君!!待ってくれ、ッハァ、名前を、名前を教えてくれ……!!』
『あああああ!!!!来ないでよおおおお!!!!』
『キレイな馬体だな……ハァ……ハァ……トモ、トモダチに……!』
『ヒィン……!!』
鼻息の荒さがレース直後の疲れによるものか興奮によるものか区別できなかったけど、たぶんどっちもあったんだろうなあ。
牝馬のタイペルラとセン馬のコンバットマニア以外の7頭が俺を追っかけてきたのだ。
火事場のバ鹿力が出たのか、それともいつものハードな調教が功を奏したのか、俺は誰にも捕まることなく走り続けた。
1頭また1頭とペースを落としていくなか、ゴールしてすぐに騎手を振り落としたディープインパクトだけが最後まで俺を追っていた。
……これ何が一番怖いって、7頭の中で先頭で俺を追っていたディープインパクトがずっと無言だったことだよ。
ようやくディープもペースを落として厩務員たちに連れて行かれたあと、俺もようやく走るのをやめた。
最後にはブモブモ泣いてしまったため、芝木くんが、検量室に戻ってからは目黒さんがずっとタオル片手で俺の涙を拭いてくれていた。
……ごめんよ目黒さん、絶対勝つって信じてくれてたのに。
「そう落ち込むなよ。今回は惜しかったけど次がある、次は勝てるよサンジェニュイン」
うなだれる俺の鼻筋をなでる目黒さんはいつも通りだった。
ていうかやっぱり言葉が理解できてるのわかってない?
「目黒さん、大変です~!」
「こら、サンジェニュインの前だぞ、声量落として」
「す、すみません……サンジェもごめんね」
気にするな、と鼻を鳴らす。
ちょっと着崩したスーツ姿の若い男は、本原厩舎の厩務員の一人だ。
今日は目黒さんのサポートに来ていて、馬運車の手配やら何やらをしてくれている。
ちょっとおっちょこちょいな兄ちゃんだけど、本当に馬が好きなのがわかる仕事ぶりなので俺も大好きだ。
ニコニコしてるところとかタカハルっぽくて謎に安心するしな。
「それでどうした?馬運車が遅れているのか?」
「それなんですけど、来る途中でパンクしちゃったらしくて……」
マジかよ。
こっからどうやって帰るんだ?徒歩か?
まあ目黒さんくらいなら俺が乗せて帰れるけど……馬って道路走れる?
疲れてるからさすがにちょっとは休憩させてほしいけどな。
「テキには言ったか?」
「ハイ、言いました。……あのぉ、ソレでなんですけど」
男がモジモジしててもかわいくはないぞ、はよ言って。
「沼江さんがですね、馬運車、一緒にどうかとおっしゃってまして……」
ん?それって……。
「沼江さんってディープインパクトの先生じゃないか」
「エエその、馬主さんもオーケーだしてるらしく……帰る先は同じ栗東なんだからと」
それってディープと同じ車……密室……牡馬2頭何も起きないはずがなく……?
……いやだああああ!!!!
アイツとまた同じ空間にいるのやだやだやだ!!
追ってくる目がガチだったんだぞ、もうカネヒキリくんの視線の圧とかまだかわいいレベルの鋭さだった!!
アイツと密室に入れてみろ、意味深レジェンドレース開催、ディープインパクトここでも圧勝!!だぞ!?
うわあああこんなところにいられるか!!俺は馬房に戻らせてもらうッッ!!
アッ戻る馬運車がないんだったわ……!
「どうどうサンジェニュイン」
「ま、まあ嫌がりますよね……アレされたあとだと……」
「うん、そうだな……沼江さんが用意した馬運車はもう確認したか?」
「ア、はい!中見ましたけど、2頭立てでちゃんと仕切りもありましたし、僕ら乗るスペースもありましたよ。さすが売れっ子というか、最新のボディでしたね」
「ならいいんじゃないかな……サンジェニュイン、ほら落ち着けって、話を聞いてくれ」
うおおおおいやだああああ!!
うおおん、ん?
「いいかサンジェニュイン、馬運車は確かに密室だし、2頭立てだから不安に思うだろうけど、ちゃんと真ん中に仕切りがあるから大丈夫だ」
本当か?それ仕切り破かれてレーススタートッ!てならないか?
「馬運車には俺たち厩務員も乗り込むから、何かあっても助けられるよ。少なくとも2頭きりじゃないから怖くないだろ?」
……まあ2頭だけで乗るわけじゃないなら、大丈夫、か?
いやでもなあ、ディープインパクトってば鞍上の人間振り落としたじゃん、制止聞かなそう。
あんな狭いところで暴れたら止めに入った目黒さんもケガしそうだし、それはやだな。
「強いストレスになるのはわかってる。でも何よりも早く、お前を馬房で休ませてやりたいんだ。頼むよ、今日はディープインパクトと一緒に乗ってくれないか」
目黒さん……そんなに俺のことを思ってッ!
わかった、そこまで言うなら俺も腹をくくるわ。
まあ馬体は俺の方がデカいしな!最悪この鍛え上げられた後ろ足で蹴り返してやるわ!
うん、ヘーキヘーキ!
「ヨシ、じゃあ早速行くか」
おうよ!
ほれ若手くん、俺の手綱引いて早く。
「……僕、馬に言葉で理解させる厩務員初めて見ました。ていうか人の言葉理解してるっぽい馬も初めて見ました」
それな。
「よーしよしディープインパクト、うん、そっちじゃなくて隣ね!そこサンジェニュイン号のスペースだから!」
あああああ!!!!この馬ずっと目が血走ってるよおおおお!!!!
やっぱり降りる!!徒歩で帰る俺!!
「なんとか入った……じゃあ出発お願いします」
降ろしてよおおおお!!!!!
新馬戦から2日が経った。
ディープインパクトとドキドキ♡馬運車で2頭旅!を終えてから2日だ。
マジで怖かったしどちゃくそ疲れた。
その日は飼い葉も食べる気になれず爆睡し、起きた頃には朝日が昇っていた。
「おお、今日は飼い葉食いもいいな」
「食べっぷりイイですねえ……それに写真で見る以上に白い!」
昨日は何もする気が起きなかったけど今日は腹減ってるんだわ。
あとめっちゃ食ってめっちゃ鍛えてパワーつけるんだよ。
次はあの馬を蹴り飛ばす!!絶対だ!!
それよりテキ、後ろの怪しいおっちゃんは誰だよ。
「史上2頭目、白毛馬のJRAレース馬券絡み……イイ記事になると思います。今回は取材を許可していただきありがとうございます、本原センセイ」
ほ?
「サイレンスレーシングからも許可が出ましたので」
「一口馬主からしても夢を見れるレース運びでしたし……それでは普段の調教の様子と、過ごし方、それから今後の目標の3本仕立てでお願いします!」
「それはいいんですけど、馬は臆病なので声量とカメラのフラッシュだけ、気を遣ってもらえれば」
よく見るとおっちゃんの腕に「西スポ」の文字があった。
どっかのマスメディアのようだ。競馬情報とかが載っているやつかな?
いつの間にか横に控えてた目黒さんに手綱をひかれて馬房を出る。
とりあえず写真写りがいいようにポーズきめとく?
「今日なんですけどね、併せ馬の予定があるので、午前中はソレを先にやります」
「ほうほう、併せ馬!厩舎にいる2歳馬はサンジェニュイン号しかいないと聞いていましたが」
「ハイ、ですので他の厩舎に協力をお願いして併せ馬をします」
ん?俺以外に2歳馬っていないんだっけ?
それより併せ馬か、併せ馬ってそれ相手はカネヒキリくん?カネヒキリくんなんだよね?
そうじゃなくても相手も2歳馬なんだよな?
ねえテキ、ねえ目黒さん、まさか3歳馬とか言わないよね?
そうだったら新聞に載せられる写真とかねえぞ!!
牡馬に興奮する牡馬をお出しすることになっちゃう~~!!
「あ、見えてきましたね」
「おお、あの子が今日の相手ですね」
もうちょっとゆっくり行かないか?
あと距離を、距離を取ろうよ、ねえ、ねえったら目黒さん!
「コチラ取材で同行している笹島さんです」
「笹島です!前回の取材以来ですかねえ」
「おや、ご存じで」
大柄の馬体がのっそりと振り向く。
これが栗毛なら駆け寄っていたが、光に照らされる毛並みは黒鹿毛で、目はギラギラと燃えていた。
「ええ。ラジオたんぱ杯2歳Sは実に見事でした。今後注目の1頭ですよ ── ヴァーミリアン号は」
サンジェニュイン 牡2
新馬戦2着で惜敗
それ以上にレース後にケツ追われたのと2頭立て馬運車がトラウマ
今後脚質に関係なく逃げ馬になるしか選択肢がない(確信)
ディープインパクトさん 牡2
他の馬がキレイだなんだ愛を叫んでいるなか、
終始無言のままトップスピードで主人公を追っていた
視線の圧がカネヒキリくんを上回るレアケース
馬運車ではしゃぎ主人公にトラウマを刻みつける
カネヒキリくん 牡2
併せ馬を望まれているが未だ再会できていない
ダートデビューするための訓練を積んでいるとかいないとか
そうこうしているうちに新しい馬が併せ馬に選ばれちまったぞ
ヴァーミリアン 牡2
芝の重賞も取っているが、
後にダート適正の方が高いと判明するやべえ馬
カネヒキリくんに並ぶほどのダート賞歴を持つことになる
ギラギラした状態で併せ馬に参戦
目黒さん ヒト族 男
完全に主人公がヒトの言葉を理解しているとわかっている
手綱も鞭もいらねえ、言葉で言うこと聞かせるんだよ!
なんだこれ?
若手の厩務員 ヒト族 男
先輩厩務員が言葉で馬を操作し始めて戦慄している
芝木くん ヒト族 男
2003年度JRA賞最多勝利新人騎手を取ってる何気にすごい騎手
こいつの話は次話でする
テキ ヒト族 男
最近影が薄い
笹島 ヒト族 男
取材のおっちゃん
すでにヴァーミリアンを取材済み
次話で登場した後の出番はない
6/15 追記
文章に加筆修正を行いました。
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7.結局は抗えない
本日2話目の更新です。
ヴァーミリアンくん、父エルパサの産駒はそろって気性がアレと聞いたのでイロイロひねりました。
捻りすぎィ!?!?
やっぱり主人公を見つめてばかりの牡馬では面白み……いや芸がないかとおもいましてね
新しいヒト族も追加しました
2021/06/06 追記
2005年1月22日の小倉2R3歳新馬戦が牝馬限定戦なのを忘れていました。
ので、1月23日の小倉3R3歳新馬戦に急遽レースを変更します。
これによって物語に支障とか変更とかは正直ないです!!
ガバガバですみません!!
「サンジェニュイン号は実に大人しい馬ですね」
「そうですね、調教で手が掛かることはないです」
おっちゃん、もっと褒めてくれてもいいんだぞ?
ふふん、と鼻を鳴らし、鞍上の見習い騎手くんの指示通り、パッパカラッと走り出すと、横にいた黒鹿毛── ヴァーミリアンも脚を動かす。
「2頭とも非常に落ち着いていますね」
「今日が初併せだったんですが、まあ、相性は悪くなさそうです」
今日の併せ馬は俺をベースにしているため、ヴァーミリアンの鞍上がペースを落とすように綱を操るが、ヴァーミリアンがそれを振り切ってスピードを上げる。
……俺の方を完全に向きながら。
「みてますねえ」
「……見てます、ね」
「白い馬体が気になるんでしょうか?」
「えぇ……はい、あの、たぶんそうですね」
テキッ!嘘つくんじゃあない!!
いやある意味嘘ではないよね、俺の身体が気になるのはそう。
クソッ、何もかもが意味深!
わずかにヴァーミリアンが先着した状態でゴールすると、ヴァーミリアンから引き離すように俺の鞍上が綱を引いた。
この見習いくん、併せ馬のときやちょっとした調教の時も時々俺に乗っているので、俺が牡馬に異常に好かれるのを知っているのだ。
ちなみにヴァーミリアンの鞍上も見知った見習いくんで、彼はカネヒキリくんと併せ馬するときに乗っている。
俺とヴァーミリアンとの間に2馬身くらいのスペースを持とうとしているが、まあ、うん、そう上手くはいかないよな。
「ははは、仲良しだ」
「ですね。……サンジェ、もうちょっとだけ耐えてくれよ」
ちょっとテキ、ソレだと俺がいつも耐えれなくて暴れてるみたいじゃねえか!
……その通りだな。
いやでもこのヴァーミリアン、出だしの目のギラギラには慄いたけど、実際に走ってみると悪い馬ではない。
確かに鞍上を無視して先着しようとはするけど、顔が完全に俺の方を向いているように、おそらくカネヒキリくんみたいなタイプなのだろう。
この前のディープインパクトや3歳牡馬たちと違って追いかけてくるわけでもない。
いいじゃないか、平和だ、平和よ!
こういう併せ馬だったらカネヒキリくん以外の馬ともやりてえよ。
相変わらず俺をジッとは見つめてくるが何もしないヴァーミリアンに、嬉しくなってニッコリ笑った。
へへっ、仲良くしような、ヴァーミリアンくん!
『ケッ、ニコニコ笑ってんじゃねえぞ、この可愛い子ちゃんが!いくら馬体が最高にセクシーでキュートな瞳してるからって俺様は負けねえからな!!』
ん?
『レースとなりゃそのプリティフェイスが多少はクールガイなツラに変わってるかもしれねえが、おキレーなままじゃ勝てねえレースもあるんだよ』
うーん?
『そのふわふわでスリスリしたくなるような真っ白な身体を汚されたくなかったらとっととおうちに帰ってママのおっぱいでも吸ってな!観光牧場で手厚く世話されながらたんまりにんじんもらってる方がお似合いだぜ!ッハハハ!!』
これは── 魅了が効いて、ない、のか……!?
エーッすごいな!?
今まで会う牡馬全頭が俺の(魅了の)前に屈していったというのに……ヴァーミリアンくんすげえわ!!
もうなんだよ、俺のことすごい見てくるから効いてたのかと思っちゃったじゃん!
ただガンつけてただけね、はいはいはい、わかった。
── こいつと絶対トモダチになろう
俺のケツを追っかけない貴重な同性だ。
もし一緒のレースになったとき、ヴァーミリアンくんと仲良くなっていれば仲裁とかしてくれるかもしれない。
そうじゃなくても、魅了が効かない同性とか普通に安心できる。
『……なにニコニコ笑ってんだよ』
『ヴァーミリアンくん、今は俺のこと嫌いでもいつかトモダチになってくれよ!』
あわよくば俺の貞操を守る手伝いをしてくれ!
『ハ……?嫌い……?』
ん?そういう話じゃないんか?
『嫌いとは一言も言ってねえだろこのエンジェルちゃんが』
……なんか風向きが変わったな。
いや気のせい、気のせいだよね!
『ハァ、首を傾げるなバブちゃんか?毛の先っぽまで可愛さを詰め込むな!ぶどうみてえなツヤツヤまるまるのおめめしやがって……牡馬なめてんのか?』
『ヒ、ヒェ……舐めてないです……!』
「ちょ、止まって」
「お前ちゃんと綱引けよ……!」
「引いてるってうわっ、ちょ、ヴァーミリアン」
『カーッ、においまでイイとかなに?神が作り給うた傑作か?』
そうです。
「おお、ヴァーミリアン号とサンジェニュイン号の鼻が!絵になりますねえ」
「そう、ですね……」
そうですねじゃないだろテキ!
助けて、止めてこの馬を!
ぐいぐい来る、鼻先から圧がぐいぐい来てるんだよお!
『「ボクは誰よりもかわいいです。かわいくてごめんなさい」と言え』
『ヒェ……』
『言え』
『ぼ、ぼくは誰よりもかわいいです、かわいくてごめんなさいぃ……!』
トモダチになりたいって言ったの撤回するわ。
後日、雑誌に掲載された記事には「お互いの鼻をスリスリ♡仲良しな2頭」という題で写真が載ったらしい。
一方的にやられてたんだよこっちはよぉ……!
怒りにまかせて雑誌を噛みちぎったらテキに叱られた。
もう新年である。
取材から超スピードでサックサク時が進んだ。
調教やってると日付の感覚が本当にない、キレそう。
ヴァーミリアン?……そいつの話はよそう。
「サンちゃーん、ブラッシングいくよー」
あいよ!
手綱をひかれて馬房から出る。
このお姉さんは本原厩舎の厩務員のひとりで、去年までは4歳牝馬を担当していたイサノちゃん。
今は目黒さんの助手という形で俺付きとなっている。
というのも、イサノちゃんが担当していた4歳牝馬が引退したのである。
戦績がどうなったとしても4歳で引退させる、というのが馬主との話し合いであったらしく、クリスマスまでを厩舎で過ごした後に生産牧場の方へと帰って行った。
この牝馬は俺の数少ない話し相手で、戦績気にせず本馬が楽しめるレースにのみ出走していたからか、かなりのんびりとした性格だ。失礼ながら母親のような包容力に勝手に癒やされていた。
そんな牝馬── ハルノメガミヨさんは今年の春から繁殖牝馬になるんだそう。
イサノちゃんは本当だったら3歳牝馬付きになる予定だったんだけど、なんと本原厩舎の3歳馬たち全頭が去年末で引退・転厩してしまい、いまこの厩舎にいるのは3月引退予定の6歳セン馬と、3歳牡馬という括りになった俺・サンジェニュインだけになったのだ。
ちなみに去って行った3歳馬たちの内訳は、4頭いるうち1頭が繁殖牝馬になるため、2頭がケガ、1頭が馬主の意向による転厩である。
2頭はともに同じレースに出ていて、コーナーを曲がる時に躓いた1頭に、もう1頭が接触したことによるケガだった。
転厩していった1頭はこの2頭のケガを見た馬主が、テキ── 本原さんに預けるのが不安になったみたいで、何度か協議を重ねたが結局は転厩が決まったらしい。
なんで知っているのかと言うと、これも目黒さん……ではなく、その助手となったイサノちゃんの独り言を聞いたからだ。
こっちは目黒さんとは違って俺に話しかけているわけではなく、あくまで独り言の範囲である。いやソレが本来の厩務員の姿で、目黒さんがオカシイ……。
「今日は芝木くんが来る日だねえ、あ、ここ気持ちいか?よーしよしよし」
ああ、そこいいですわ……。
芝木くんは俺の主戦騎手だ。
なんと2003年のJRA賞最多勝利新人騎手である。
すごーい!何がすごいかはわからんかったけど。
目黒さんが言うには、デビューしたその年で30勝以上をあげた騎手の中で、1番の勝利数を持つ新人騎手に与えられる称号らしい。
つまり芝木くんはデビュー年で30勝以上勝っている、今後最も期待できる騎手の一人ということだ。
この本原厩舎所属の騎手なわけだが、2003年度は今よりも競走馬の数も多かったらしい。それでも有名な厩舎よりは馬の数も── いっちゃなんだが馬の質も下がる中でよく30勝もできたものだ。
ちなみに3月に引退するセン馬のガンジョウメイバ先輩とのレース数・勝利数が一番多いらしい。
ガンジョウメイバ先輩はその名の通り非常に身体が強く、今まで熱も出したことがなければケガをしたこともないとか。無事これ名馬!すげえ!
「……ふふ」
どうしたイサノちゃん、思い出し笑いなんかして。
「白馬と芝木真白……ふふ……」
白馬とは言わずもがな俺である。
芝木真白というのは芝木くんのフルネームだ。
下の名前が「ましろ」の芝木くんが、真っ白い馬の俺に乗る、これが面白くて笑っているんだな。
フフ……確かに面白い……俺たち笑いのセンスが似てるわ!
「この前の新馬戦、見に行けたら……サンちゃんに乗ってた芝木くん、絶対格好よかったよね……」
ほっぺたをちょっと赤くしながら言うイサノちゃん。
なに?ほの字か?甘酸っぱい恋の予感なのか?
「誰もいないよね……あのねサンちゃん、ここだけの話、私ちいさいころから白馬の王子様に憧れてたんだ」
女の子は誰しもが憧れるっていうもんな。
イサノちゃんは髪の毛も耳の下でバッサリ切っていて、スーツでも着ようものなら「ザ・現代のクールな女性像」みたいな雰囲気になる女性だ。
年明けからそう経っていないけど、仕事ぶりは実に真面目で、浮ついたところも見たことがなかった。
テキに対しても目黒さんに対しても、厩舎で同期っぽい厩務員たちに対しても、どこか一線を引いたような空気だった。
「似合わないのはわかってるんだけどね」
そんなことないさ。
誰しも「似合わない」ことなんてないんだよ。
持論だけどね。
「初めてサンちゃんを見たとき、王子様が乗ってる白馬だ!って思っちゃってね……芝木くんが主戦だった聞いたときは、乗ってる姿がすぐに想像できて……あ、テキの声だ、や、やばいやばいごめんねサンちゃん、すぐブラッシングすませるからね!」
急がなくていいぞイサノちゃん、何本か毛がブラシに絡まっててちょっと痛いぞ。
それにしても俺が「王子様の乗っている白馬」か。
この場合の王子様は間違いなく芝木くん。
どうみても芝木くんに惚れていそうなイサノちゃん……白馬の俺……閃いた!
「イサノ、サンジェの様子はどうだ?」
「はい、テキ。飼い葉食いは問題なし、水も飲んでます。ブラッシングで多量の抜け毛もなし、毛艶もいいです。調子がいいと思います」
「そうかい。イサノはよく馬を見てるからね……今日は目黒くんがいないから、このままイサノが連れてってくれるかな。芝木くんはもうコースの方にいるから」
「あ、は、はい。わかりました」
ナイスだテキ!
ようし、いくぞイサノちゃん、おら早く、早くいくぞ!
「ははは、サンジェはなんか張り切ってるな、芝木くんが気に入ったのかな?」
「……新馬戦で相性が良かったと聞きました」
「そうだね、序盤スピード出してたサンジェをセーブしようとしたときは折り合いに欠いているかと思ったけど、中盤からは本当に息が合っていた」
やっぱり今後も主戦は芝木くんにしよう、とテキが言うと、イサノちゃんはちょっぴり頬を赤くして笑った。
「次走なんだが、まあ発表したとおり、1月23日の小倉3R3歳未勝利戦に出そうと思う」
よう芝木くん、前より身体が絞れてるんじゃない?
「よしよしサンジェ……本当に人懐っこいなあ」
芝木くんは騎手界隈では大柄だ。
通常騎手というのは小柄な人が多いんだが、芝木くんは175cmとかなりデカい。今いる現役ジョッキーの中でもとびきりデカいんじゃないだろうか。
騎手の学校に入学したときは160後半だったらしく、体重も50ギリギリだったのが入学してしばらく経つとぐんぐん伸びたらしい。
今の体重は52kgと、175センチの成人男性としてはかなり痩せている、とイサノちゃんが言っていた。
「テキ、小倉3Rの3歳未勝利戦というと、芝右回りの2000メートルですか?」
「うん、新馬戦をね、2000走らせても緩くならなかったから。未勝利戦も同じ長さでいかせるよ。芝木くんもソレで問題ないな?」
「ハイ。距離に全く不安はないです。レース後も先頭を走り続ける根性がありますし、差し競り合いも悪くなかった、この馬はもっと上に行きます」
嬉しいこといってくれるな芝木くん!
んふふ、人馬一体で上を目指そうな!
「頼むよ、芝木くん。……サンジェは白毛で、馬券に絡むだけで「快挙」だの「史上何頭目」だのと言われるが、俺はこいつにつける「史上初」は、G1勝利だって思ってるんだ」
テキ……!
「俺もテキと同じ気持ちです。こいつにG1を勝たせてやりたい、世界初の白毛のG1馬になれるくらいの素質がこいつには十分にあるんです。その鞍上に乗せていただけるのは、騎手としてこれ以上の喜びはないと思っています」
芝木ぐん~~!!
俺、頑張るからな!!
例え牡馬どもにケツ追われても、ケツ守りつつ逃げ切って勝つからな!!
でもやばい時は芝木くんも振り落として逃げるかもしれない、その覚悟だけしといてくれ。
~ 完 ~
いや俺の物語はまだまだ終わらないけどね!
「未勝利戦の前に、最後の追い切り含めてカネヒキリ号と併せ馬をするよ」
お、カネヒキリくん!?久しぶりの併せ馬じゃん。
「あちらは2月に未勝利戦が控えているけど、まああくまでうちのサンジェがベースで。時間はちょっと多めに取ってるよ」
カネヒキリくんの次走は2月かあ。
確かダートのヤツに出るっていってたな。
会場は京都だったっけ?
次こそは俺が先着するわ!
「タイムを念入りにつけるんですか?」
「というよりは……これが最後の併せ馬だからな」
え?
またクセ馬が増えちゃった……
サンジェニュイン 牡3
年が明けて括りとしては3歳牡馬
初併せのヴァーミリアンが魅了の効かない初の同性かと思いきやそんなことなかった
厩務員ちゃんの甘酸っぱい恋を叶えるキューピッドになろうとしている
それより先に自分が他の牡馬にキューピッドされないか心配しろ
カネヒキリくん 牡3
まだ再会できてないがこちらも3歳牡馬になった
次走が2月のダート戦だと判明したが、
それと同時に次回の併せ馬がラストランだと判明してしまった
ヴァーミリアン 牡3
ちょっと様子がおかしい口の悪い同年代牡馬だと思われていたが
ちょっとどころか大分様子がおかしかった
魅了が効いてないようでナナメ上に変な効き方をした
なおこちら、実は普段はディープインパクトと併せ馬をしている模様
テキ ヒト族 男
取材回ではよく目が泳いでいた
主人公はG1もとれると強く信じている
イサノちゃん ヒト族 女
本原厩舎の若手厩務員
現役競走馬が主人公と3月引退予定のセン馬しかいなくなってしまったため、
急遽主人公の厩務員・目黒さん付きの助手になることに
恋愛に等興味はない!とラオウ顔で言っていそうな雰囲気だが、
実はバリバリに恋愛に興味があり、白馬の王子様に夢を見ている
芝木くんがすき
芝木真白くん ヒト族 男
2003年JRA賞最多勝利新人騎手に選ばれたすげーやつ
ただ身長がかなりあるので、斤量を気にした他の厩舎になかなか所属できず、
唯一声をかけてくれた本原に恩義を感じて所属
主人公と心中してでもG1を目指す漢
笹原 ヒト族 男
取材のおっちゃん
主人公がヴァーミリアンに鼻先でグリグリされていた写真を取る
数年後、これがウマ娘界隈で拡散する
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8.ちょっと寂しいね
楽しい感想サンクスサンクス!!
最近感想版にも牡馬の魂宿した読者が現れてて芝
主人公をえっちだと思っているのは牡馬の証ですよ!!!!
今回はちょっとレース多め
フルゲートの都合上、レースを回避していただいたお馬さんが何頭かいます
次話はウマ娘回なので、その後に史実改変で勝利・出番が削れたお馬さんを紹介していこうと思います
え?馬身差つけすぎ??史実には50馬身とか意味分らない差をつけてるウッマもいるぞ(恐怖)
ここは二次創作ということでちょっと多めに見てほしい……見て!(豹変)
「カネヒキリ号はダート路線に入る。サンジェはクラシック── 芝の三冠路線に進む以上、調教も変わっていくからね。これ以上の併せ馬は2頭にとってもよくないだろう」
テキの言うことはもっともだった。
芝が得意な馬がダート馬と併せるメリットなんて、それこそダートを走る時くらいのもの。
もし俺に合わせるなら、ダートを走るカネヒキリくんに無理矢理芝を走ってもらうことになる。
俺にとってもカネヒキリくんにとっても、一緒に練習するのはもう意味がないのだ。
わかっていても、落ち込んだ感情をなかなか引き上げられなかった。
今日は1月20日。
俺の次走3歳未勝利戦まであと3日の時点で、追い切りのための併せ馬が始まった。
相手はもちろんカネヒキリくんだ。
7月末以来の、約4ヶ月ぶりの再会である。
『カネヒキリくん久しぶり!なんかめっちゃ筋肉ついてるねえ!』
カネヒキリくんは前にあったときよりも身が引き締まって、とてもムキムキになっていた。
といっても無駄なムキムキさではなく、スピードとパワーの合間をほどよく取ったいい身体付きだ。
芝時代よりも少し太く見えるのは、ダート向けに筋肉量を増やしたからだろうか。
「今日もよろしくお願いします」
「こちらこそ。……それじゃあ始めましょうか」
俺とカネヒキリくんにいつもの見習いくんたちが騎乗する。
カネヒキリくんの鞍上は慣れたもので、俺の前を行きたがるカネヒキリくんを上手く誘導してスタート準備に入った。
スタート位置からカネヒキリくんの視線は俺に固定されている。
この視線の圧、4ヶ月ぶりだからか懐かしくて思わずニッコリしてしまった。それと同時に4ヶ月も会わなかったのに一切圧が変わっていないことに慄いた。
「始め」
鞍上の合図で走り出す。
今日は俺のレース前併せだから芝のコース、距離は2000メートル。
今までの芝の最長が1800メートルのカネヒキリくんには少し長い距離だ。
先行はいつも通りカネヒキリくんで、顔も相変わらず俺の方を向いたまま。
だけど前よりも足取りはしっかりしていて、踏み込みのパワーがある分、確かに芝は走りにくそうだった。
徐々にスピードが上がる。
カネヒキリくんの鞍上が綱を引いて下がらせようとするけど、これまたいつも通り、嫌がって前に進もうとスピードが上がった。
いわゆる掛かり気味の状態なのだが、横向いて俺を見るカネヒキリくんの顔はちょっと涼しげで、まだゆとりがありそうに見えた。
『一緒に走ると楽しいねえ』
第3コーナーを回った。
カネヒキリくんは先行しているけど、ちょっと苦しそうだ。
でも前に行きたがってる。そのくせ顔は俺の方を向いてる。
『ダート練習は大変だった?やっぱり芝走りにくいよな』
カネヒキリくんからの返事はない。
というか今まで何か返ってきたことがない。
『たまには話そうよ』
いつも俺を見つめて、ただ見つめて。
他の牡馬みたいに追いかけることなく、一番近くにいるのに見ているだけだったカネヒキリくん。
一番静かで、一番安全で、一番いいやつだなって思った。
『……話そうよ』
第4コーナーに入ると、カネヒキリくんは明らかに失速していった。
本人は前に行きたそうにしているが、どうみてもスタミナ切れしている。
斜め前じゃなくて、後ろからカネヒキリくんの視線を感じるのは初めてだった。
俺はその視線を背中に感じたまま、脚に力を入れる。
直線に入って加速し、前を目指す。
テキの定めたゴール線を越えてから速度を緩め、さらに100メートルすぎたところで脚を止めた。
後ろを振り返ると、カネヒキリくんは少し息が上がっているようだった。
「うぅん、やっぱり難しいですね」
「そうですね……去年の夏までなら競り合えたんですけど、もう一緒に走らせるのはやめた方がいいですね」
今日走ってみてわかる。
確かにもう、一緒には走れない。
カネヒキリくん、今日で最後だよ。
何度かそう言おうと思ってカネヒキリくんを見るけど、上手く言葉にできなかった。
俺を見つめる瞳が、あまりも曇りなくまっすぐだったからだ。
初めて併せ馬をしたカネヒキリくん。
出会ったときから無口で、表情もあんまり変わらないけど、いつも俺を見つめてはどこまでも付いてこようとしたカネヒキリくん。
……今日で最後なのかあ。
『ちょっと寂しいね』
カネヒキリくんからはやっぱり返事がなくて、それで変わらず俺を見つめたままだった。
その日、最後の併せ馬のあと。
いつも通り俺に付いていこうとしたカネヒキリくんを担当厩務員が宥める。
こうなると目黒さんが俺の手綱を引いてカネヒキリくんの視界から外そうとするんだけど、今日は最後だからってことで、うちの厩舎の近くまで一緒に歩くことになった。
道中もカネヒキリくんは静かだったけど、せっかく最後なんだしと思って、明後日レースがあること、絶対に勝ちたいこと、カネヒキリくんもレース頑張れ応援してるよってこと、いろいろ言いたいことはあったけど、とりあえず思いつくものを全部言った。
やっぱりカネヒキリくんからの返事はなくて、終始無言のガン見だったけど、これがカネヒキリくんなんだものな、と思って俺は自分を納得させることにした。
「それじゃあ、ありがとうございました!」
カネヒキリくんの担当厩務員・高山がそう言って頭を下げると、テキが「こちらこそ」と返した。
これで正真正銘、さよならである。
同じ栗東トレセンだから、どこかのタイミングではお互いの姿を見ることもあるかもしれない。
けどもう、こんなに近くで会うことはなくなるんだろうなと思うと、やっぱり寂しくなった。
『バイバイ、カネヒキリくん』
脚を動かす俺を追うようにカネヒキリくんも歩き出すけど、それを高山がなんとか押しとどめる。
今度こそ、俺の姿が視界に入ったままだと動かない、ということで目黒さんに手綱をひかれて馬房に戻った。
イサノちゃんが入れ替えた寝藁に寝転ぶ。
しばらくゴロゴロしたけど、さみしさはなかなか拭えなかった。
1月22日の夕方、京都10Rの若駒ステークスをディープインパクトが着差5馬身の圧倒的スピードで制したと目黒さんから聞かされた。
ほとんど鞭を振らずに持ったままの圧勝だと言うから、もしちゃんと鞭を入れたりなんかしたらどれだけ跳ぶことやら。
俺は恐れおののきながらも飼い葉をむしゃむしゃ食べた。
明日は未勝利戦である。
絶対負けられない戦いがそこにあるのだ。
2005年 1月23日 小倉3R 3歳未勝利戦
「芝右回り2000メートル、フルゲートでの開催です」
「注目の1番人気はサンジェニュイン。新馬戦では良血馬ディープインパクトのハナ差2着で敗れましたが、8センチ差と非常に強い競馬を見せました」
「枠番5の10ですが、前後の馬が落ち着かないため、パドックは別周となりましたがこちらはいかがでしょうか」
「そうですね、ただ非常に落ち着いた歩行だったので問題ないかとは思います。馬体は12月よりも少しドッシリとした感じでしょうか」
「堂々とした佇まいです。今回も大逃げを見せてくれるのでしょうか」
鞍上の芝木くんは緊張しないタイプらしく、俺がちょいと見上げるとニコニコしている。
それがあまりにもいつも通りだったので、俺も緊張しているのがばからしくなって力が抜けた。
「ようしサンジェ、行くか!」
おうよ!
「10番サンジェニュインもスーッと収まりました」
「両隣の馬がちょっと騒がしいでしょうか、サンジェニュインは気にしていないようです」
「さあ全頭収まりまして……小倉3R3歳未勝利戦、スタートしました。テンポ良く飛び出したのは10番サンジェニュイン」
「ぐんぐん上がっていきます、この時点で2番手12番マイネルアットーレとはすでに4馬身、いやさらに5馬身6馬身と差が開いている、そこからさらに離れて3番手は4番トーホウロッド、6番テイエムハヤブサがそれに並びます」
「サンジェニュイン掛かり気味でしょうか。かなりペースが早くなっているように感じますが、他の馬は少し脚が伸び悩んでいるか?」
身体が軽い。
踏み切るというよりはむしろ、跳んでる感覚に近かった。
「サンジェニュインはすでに3コーナーに入っているぞ!2番手は依然マイネルアットーレですサンジェニュインにはもう追いつけないか?3番手トーホウロッド、テイエムハヤブサを追うのは8番シンライ、3番スコッツデールだ、スーッと上がってきたのはマルブツダンディ7番です」
「── さあサンジェニュインはたった1頭4コーナー、ここを抜ければ直線だが先頭から2番手12番マイネルアットーレまですでに……何馬身差でしょうかここからではわからない差の広がり、圧倒的すぎる、これは、これはもう誰も届かない!」
後ろの音が遠い。
突き刺さっているはずの視線も、いまは何一つ感じない。
鞍上の綱を持つ手が緩む、完全に馬なりで今日は鞭一つ打っていない。
ただ気を緩めることなく、目指すはゴール板だけ。
「大大大楽勝だサンジェニュイン!2着馬はまだ来ないぞ!これがデビュー2戦目、走りはすでにクラシック級か!……いま2着馬が来ました、3頭の叩き合いを制して7番マルブツダンディ、3着マイネルアットーレとはクビ差2:02.4だがサンジェニュインの1:58.0は衝撃的すぎました。小倉芝2000メートルのコースレコードを0.5秒上回るレコードタイム、白毛馬初の未勝利戦1着であり初のレコードホルダーとなりました!」
2005年 2月12日 小倉10R あすなろ賞
「天候は曇りですが良馬場の発表です、芝右回り2000メートル、11頭で競います。ここでの1番人気も6枠7番サンジェニュイン」
「コースレコードを持っていますからね、納得の人気です」
「2番人気は5枠5番ミツワスカイハイ、前走でサンジェニュインの2着馬だった7枠9番マルブツダンディは4番人気に入りました。3番人気は6枠6番オープンエアー、末脚の伸びに期待です」
続く3戦目も小倉の芝2000メートルが選ばれたのは、未勝利戦での走りの結果だろうか。
ものすごい走りをした自覚はあるが、あれはなんというか、その場の勢いというか、なんか身体がふわふわしてたからそのまま走ってたらああなったんだよなあ。
あのあと取材がたくさんきて大変だったし。夜しか眠れない日々が続いた。
「ここで勝って重賞戦への弾みをつけるぞ、サンジェ」
そう言って俺の首筋をぽんぽんとなでる芝木くんに、返事の代わりに身体を震わせる。
── これが終わったら重賞戦。
続くは3月6日の報知杯弥生賞、GⅡだ。
若駒ステークスを制したディープインパクトがすでに出馬を表明しているので、2度目の対戦となる。
「全頭ゲートに収まりまして── いまスタートしました」
「今回もハナを行きますサンジェニュイン、小倉はこれで2戦目。芝2000はすでに手中か、その後ろを追うのは2番グッドエモーション、1番ニシノウラシマ」
「2番人気ミツワスカイハイは最後方からの競馬となりました。3番人気オープンエアーは中段のこの位置、4番人気マルブツダンディはやや後方にいるか、先頭との差は12馬身以上あります」
前回の小倉を走って思ったんだよね。
圧倒的大逃げをかませば誰も俺のケツを狙わない。
やはり逃げこそが至高!!
そうですよね、ツインターボ師匠……!!
今回は俺以外の10頭中6頭が牡馬だったけど、パドックと返し馬、それからゲート入りでは多少騒がれたとしても、走り出せばあとは逃げるだけ。
いまはたぶん10馬身差は開いているから、牡馬どもの鋭い視線も刺さらん!!
このままぶち抜いて、牡馬どもが来る前にターフからおさらばするぞ!!
「独走状態のサンジェニュイン、脚色はまったく衰えていません!この馬はどこまで速くなるのか?白い馬体が流星のようです」
「6番オープンエアーが一気にまくってきたがこれはもう無理だ!1着はサンジェニュイン!……2秒遅れてオープンエアーが2着に入ります。最後方から上がってきた3着ミツワスカイハイの末脚は見事でしたが、サンジェニュインの大逃げには届きませんでした」
おし、やってくる前に帰るぞ芝木くん!
2着でゴール板を抜けたオープンエアーと目が合う前に検量室に駆け込む。まあたとえ目が合ったとしてもあちらも俺を無理に追ったせいでバテバテ、最悪追いかけっこになっても負けんがな!!
勝ったわ!!この戦法で行けばディープインパクトにも勝てるはず!!……たぶん。
いやもうアイツのことは考えるのはやめよう、ほれテキに目黒さん、はよ馬運車に乗ろう。
小倉競馬場から栗東トレセンに着いた時にはあたりはちょっと暗くなっていた。
まだ2月だからか日が短いのだ。
テキと目黒さんにすごいすごいと褒められながら手綱をひかれて厩舎を目指す。
お前は本当にすごい?……ふへへ、それほどでもあるぜお二人さん。
いやあ走った走った、追いかけられるストレスもないので飼い葉モリモリ食える気がする。
ご飯とっとと済ませてはよ馬房でゴロゴロしたいわ。
「ん?なんか厩舎の前が騒がしいな」
目黒さんが立ち止まるのにつられ、綱を持ってひかれていた俺も脚を止める。
何かあったんだろうか。
見慣れない男たちも複数人いるようだ。
「あ、目黒さん、テキ……!」
「近藤さん、どうしたんだこれは」
近藤さんっていうのはイサノちゃんのことね。
近藤イサノちゃんがフルネームなのだ。
「それがちょっと、その、ですね」
言いよどむイサノちゃん。
テキと目黒さんの続きを促す視線に折れたのか、口を開いたそのとき、人混みの隙間から栗毛の馬体が滑り出た。
「うわああああカネヒキリとまれええええ!!!!」
ズンズン進む大柄な馬はカネヒキリくんだった。
1月未勝利戦前の併せ馬以来だったが、まだ1ヶ月も経っていないのにさらに馬体が大きくなったように見える。
たしか明日はダートの未勝利戦が控えていたはず。
どうしてうちの厩舎の前にいるんだカネヒキリくん。
そんな俺のハテナを読み取ったのか、目黒さんが口を開いた。
「どうしてここにカネヒキリ号が……」
「それがその、どうもサンちゃ、サンジェニュインに会いに来たようで……」
俺に?
一瞬目黒さんの綱を持つ手が緩んだので、その隙にカネヒキリくんの近くまで出る。
「あ、サンジェニュイン……!」
大丈夫!カネヒキリくんは俺を襲わない。
『カネヒキリくんおひさ!どうしたの、俺に会いにきたのか?あ、未勝利戦も今日のレースも勝ったぞ!ふふん』
カネヒキリくんは相変わらず無口だ。
もしかしたら自分のレース前に俺と併せ馬しようとして待っていたのかもしれない。
未だ話したことがないからわからないけど、カネヒキリくん的にはあの日が最後の併せ馬ではなかったのかもしれないな。
できればしてあげたいけど、俺はダート未経験なので相手馬としては力不足だ。
カネヒキリくんが万全の状態でレースに出れるように、ちゃんとした相手とやらせるべきだよな。そう言えばヴァーミリアンはダートコースも走れるって言っていたような気がする。
もう夕方だけど、いまから併せ馬頼めるだろうか。
俺がウンウン考えている間に、カネヒキリくんが目の前まで来ていた。
俺がちょっとでも動けば鼻がピトッとくっつきそうな距離だ。
『どうしたんだよ、カネヒキリくん。言ってくれなきゃ解らないぜ』
だいたい最後の日に俺が何度話しかけても無視したのになんだよもう、とちょっと思わないでもない。
けどカネヒキリくんは口より目の方がものを言う悪癖があるので、そのちょっとウルウルとした目じゃなくて、口から言葉が出るのを待ってみることにした。
『……ぅ』
『ん?』
ちっちゃいけどなんか聞こえた。
『……おめでとう、サンジェニュイン』
嘶き以外ではじめてカネヒキリくんの声を聞いた。
馬体に見合った低い声はちょっとかすれていたけど、確かに聞こえたよ。
『……俺のお祝いするためだけにここで待ってたのか?』
カネヒキリくんがちょっとうなずく。
……明日は自分が未勝利戦なのに、大事な1日が控えているのに、その5文字を言うためだけにここで待っていたのか。
頭の中に、ずっと俺を見つめていたカネヒキリくん、隣にいたカネヒキリくん、一緒に走ったカネヒキリくんが過っては消えていく。
身体がぽかぽかしてきた。
馬になって初めて、トモダチからお祝いされた。
トモダチから、お祝い、された……!!
俺がうれしさのあまりカネヒキリくんにすり寄ると、カネヒキリくんは一瞬固まった後、目にもとまらぬ早さで駆け抜けていった。
なんとか連れ戻そうとしていた厩務員たちを置いて。
これがレースで飛び出たら1着間違いなしの走りだなあ、と俺がぼんやり思っている間に、カネヒキリくんの背中は林の中へと消えていった。
その後「放馬ああああ!!!!」の叫び声があたりに響いて、厩務員たちが慌ててカネヒキリくんを追っていく。
カネヒキリくんが見つかって厩舎に連れ戻されたのは、それから1時間後のことらしい。
なんか……ごめんな……。
俺はカネヒキリくんの厩舎がある方角に向かって頭を下げた。
2005年 2月13日 京都2R 3歳未勝利戦 ダート右回り1800メートル
カネヒキリくんは先行体勢でレースを進めると、最終で2着に7馬身差をつけて圧勝した。
芝での惨敗を覆す、圧倒的な勝利だった。
喜びに沸く所属厩舎の厩務員たちを横目に、俺はのんびりその場に横たわった。
「サンちゃんん……頼むよ起き上がってえ……」
まあちょっとだけ待ってくれイサノちゃん。
トモダチの初勝利である。
盛大に祝わなくちゃトモダチとは名乗れん。
俺は騒ぐこともなく、静かにそのときを待った。
林の奥から栗毛の馬体が歩いてくるのを、静かに待っていた。
圧倒的……友情回……ッ!!
サンジェニュイン 牡3
未勝利戦をとんでもねえ馬身差で勝ちレコード更新した(白毛初尽くめ)
一応数年後レコードは抜かれる(確信)
初併せ馬フレンズとのどうしようもない別れに動揺し、
一生懸命話しかけるも返事がなくてしょんぼりしたが今はハッピー!
併せ馬はしなくなったが、お互い時々会いに行く仲になった
今は心にターボ師匠を宿し、大逃げでディープに勝とうとしている
カネヒキリくん 牡3
主人公と出会ってから約1年経ってから初めて会話が成立
こいつ、今までずっと無言で主人公をガン見していたんすよ(恐怖)
喋りたくなかったわけではなく、脳内では割と騒がしかった
すりすりされて一瞬気を失っていたが、
何をされたのか理解した途端世界に生まれた喜びを叫びに走った
ダート未勝利戦でとんでもねえ強さを見せつけて勝った後、
帰厩したら主人公が待ち構えていたので今度はその場に倒れたらしい
ディープインパクトさん 牡3
若駒ステークスをすげえ強さでかった意味わかんない馬
主人公の新・併せ馬フレンズのヴァーミリアンとも併せ馬している
1月に入ってヴァーミリアンと併せ馬したら主人公の話されて興奮したとかどうとか(都市伝説)
芝木くん ヒト族 男
小倉での主人公の走りをみて重賞勝利を確信
基本主人公の馬ナリで勝てそうな時は無理に鞭を打たない主義
テキ ヒト族 男
うちのサンジェニュインはディープインパクトにも負けないと確信
目黒さん ヒト族 男
うちのサンジェニュインはディープインパクトにも以下略
イサノちゃん ヒト族 女
うちのサンジェニュインはディー以下略
6/15 追記
小倉2Rの3歳未勝利戦、小倉10Rのあすなろ賞はどちらも「レース結果」「コーナー通過順位」を元にオリジナルで実況部分を書いています。
というのも、2005年の該当レースの実況をyoutubeで探し当てることができず……もし該当レースの実況動画等をご存じの方がいればメッセージください。聞いてみたいです。
この実況部分を書くために用いたコーナー通過順位や出走馬等の情報は下記のサイト
になります。
netkeiba.com
https://db.netkeiba.com/?pid=race_top
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side:ウマ娘 ー Ep.2
5話後のウマ娘 - Ep.3 で続き書くわよ
オリジナルチーム作るのはウマ娘二次創作の醍醐味、あなたもそう思いますよね?(圧)
6/7 追記
オリジナルチームの名称は恒星ではありません。
理由としては以下の2つがあります。
①公式が今後追加するかもしれないチーム名と被らないようにするため
②他のウマ娘が「勝たせてください」と3回願っても絶対叶えてくれないチームにしたいため(白目)
というわけで恒星ではありませんが許して(サンジェニュインが)なんでもするから!
ディープさん「ん?いまなんでもするって……」
中央トレセン学園において、最強のチームとはどこか?
多くのトレーナー、ウマ娘が声をそろえてこういうだろう。
「それはチーム・リギルだ」
入部テストで最速のタイムをたたき出したウマ娘のみが所属を許される高み。
敏腕トレーナー・東条ハナの指導に絶対の信頼を置く、非常に統率のとれたエリートチームだ。
無敗の三冠ウマ娘・シンボリルドルフを始め、驚異の末脚でレースを制する女帝・エアグルーヴや、スーパーカーの異名を取る最速のウマ娘・マルゼンスキーなど、そうそうたる面々が名を連ねている。
もはや並び立つもの無しと謳われながら、しかし東条ハナは否定する。
「【最強のチーム】の定義がもし、最強のウマ娘が在籍していることだとしたら、私たちだけを最強だと断定するのは、あまりにも愚策」
シンボリルドルフは無敗の三冠ウマ娘であり、制した冠の総数は七冠。
しかし今に至るまで、国外の冠を取ることは叶わず。
最強とは何か。
何を以って最強と称するか。
何を取れば、何を成し遂げれば、何を制すれば最強なのか。
東条ハナは言う。
「私は、このリギルと双璧を成し、時に圧倒するチームを知っている」
そのチームの名は── メテオ。
夜空を最速で駆ける、乙女たち。
「お、遅れました──っ!」
「……ん?どうしたスペ」
チーム・スピカのトレーニングルームには、ノートパソコンを前に作業をするトレーナーの男がひとり。
がらんとした室内を見て、部屋に飛び込んだスペシャルウィークが首を傾げると、トレーナーが苦笑いで口を開いた。
「スペ、今日は休みだぞ」
「……あれ?」
「グラウンドの改修があるって言ったろ?」
「……ああ!」
思い出したのか、スペシャルウィークは赤く染まった頬を誤魔化すように掻いた。
中央トレセン学園に転入してからのスペシャルウィークにとって、この曜日はいつも通りの時間に練習が始まるものだと身体に染みついていたのだろう。
真面目な性格の証だよな、とトレーナーは笑みを浮かべた。
「うぅ……せ、せっかく来ちゃったので、トレーニングルーム……」
「グラウンドの改修に合わせてトレーニングルームもメンテナンスが入ってるからな、今日は練習できる場所ないぞ」
「そんなぁ……」
スペシャルウィーク本人の感情に連動するように、耳がぺたん、と垂れた。
感情がすぐに出るやつだなと思いながらも、トレーナーはそういえば、と口を開いた。
「トレーニングはできないけど、運が良ければ特別なやつらには会えるかもしれないぞ」
「特別なやつら、ですか?」
「おう。お前も聞いたことないか?── チーム・メテオ」
チーム・メテオ。
そういえばどこかで聞いたことがあるような。
スペシャルウィークは奥底にしまってしまった記憶を掘り返すように瞳を閉じた。
どこだったかな、どこで聞いたんだっけな。
確かスピカに入ってから聞いたはずだ、と必死に思い出そうとする。
メテオ、メテオ、メテオ。
『ねえスペちゃん、メテオってチーム知ってる?』
『メテオ?── うーん、聞いたことないです』
『えっ、スペ先輩メテオ知らないんですか!?』
『まさかあのメテオを知らないウマ娘がいたなんて……さすがスペ先輩……』
『え!?そんな知らないとまずいチームなの!?』
『少なくとも学園にいるウマ娘で知らないコはいないと思うけど……そんなスペちゃんのために、ボクが教えてしんぜよー!メテオはね──』
「世界を制したウマ娘がいる、チーム……!?」
「やっぱり知ってたか。海外でのシーズン前半の結果を報告しに一時帰国してるんだと」
俺も久々にみたよ、とのんびり口にするトレーナーを横目に、スペシャルウィークは頭を抱えていた。
(ま、まずいまずいまずいよ!そんな、そんな特別な人たちと会えるってそれ、そんなのテイオーさんにバレたら……)
スペシャルウィークの脳裏に、あの日のトウカイテイオーの言葉がよみがえった。
『ボク、カイチョーのことももちろん憧れてるんだけど、このウマ娘は別っていうか……なんていうのかなー、上手く言葉にできないんだけど、すっごい好きなんだよね』
照れ臭そうに笑うトウカイテイオー。
『もしもこのウマ娘に直に会えたらボク……嬉しくって気失うかも……いや気を失ったらもったいないから絶対に意識もたせるけど!』
ふん、と鼻息を荒くするトウカイテイオー。
『スペちゃんスペちゃん……ないとは思うけどもしメテオの── ちゃんに直接会うことがあったら、絶対にボクを呼んでよ、何を置いても駆けつけるからね!』
目がギラギラと輝くトウカイテイオー。
『……言わないなんて、無しだから』
「と、トレーナーさん!これからテイオーさんたち呼んでいいですか!?そのチーム・メテオに会えるならその、私ひとりだけっていうのはズルいかなっていうか!」
「別にいいが……確かあと30分したら学園を出るはずだぞ。っていうか確実に会えるとは言ってな──」
「30分!?」
常のトウカイテイオーならば、今から呼べば間に合う時間だ。
栗東寮から学園まで、そう離れてはいないのだから。
しかし今は、今はその30分という時間に絶望するしかない。
「スペ聞いてるか?」
「今のテイオーさんじゃ、間に合わない……」
骨折した脚は未だ不安を抱えている。
リハビリの途中にある彼女に、好きなウマ娘が来てるから走って来いなどとは口が裂けても言えまい。
もし知ってしまったら、トウカイテイオーは走って来てしまうだろうか。
そのチームが、ウマ娘がどれほどすごいのか瞳を輝かせて語ったトウカイテイオー。
少しだけ考えて、スペシャルウィークは覚悟を決めた。
「スペー?……だめだこりゃ、聞こえてないな」
「トレーナーさん!」
「うお声でかっ、なんだどうした」
「そのチーム・メテオって、どこで会えますか!?」
「理事長に報告したら飯食うって言ってたから、今頃食堂じゃ── ってもういねえじゃねえか」
室内を全力疾走するのはやめろよ、とトレーナーの声がスペシャルウィークの背中を追う。
しかしウマ娘のスピードに声が敵うわけもなく、追いつかずに空中に溶けた。
食堂の前まで来たとき、スペシャルウィークはまたもや頭を抱えた。
扉の前に【一般ウマ娘立ち入り禁止】の看板が立てかけられていたからだ。
「そーだよね、学園中のウマ娘が知っているくらい有名なチーム……そう簡単には会えないよねえ……」
食堂の曇りガラスの向こう側に、何人かのウマ娘が見えた。
全員が食堂の扉に背を向ける形で座っているので、その顔までは見ることができない。
「なんとかして会えないかな……せめてサインだけでも貰えたらな」
そのサインはもちろん、トウカイテイオーに渡すつもりだった。
2度目の骨折をしてからはというものの、トウカイテイオーはどこか気落ちして元気がない。
いっぱい助けてもらったトウカイテイオーを励ます意味も込めて、スペシャルウィークは彼女が好きだと満面の笑顔で言った、そのウマ娘のサインが欲しかった。
直接会うことが叶わなくても、そのサインがトウカイテイオーの奮起の源のひとつになればと願った。
「と、飛び込んでみる?……いやいや、立ち入り禁止って書いてあるしそれはさすがに……いやでも……」
「なぁに躊躇ってんだスペ、ウマ娘は度胸だろうが!」
「度胸ってそれはそうなんですけどってゴールドシップさん!?え!?あれいない!?今のなに……!?」
葦毛の悪魔のささやきが聞こえつつも、根が真面目なスペシャルウィークには、立ち入り禁止の看板を越える蛮勇を行うことはできない。
チーム・メテオが学園を出るまであと30分もないだろう。
こうなったら出る隙を狙って声を掛けるのが一番勝機があるだろうか?
いやしかし、出る時間ギリギリではサインを書いて貰えないかもしれない。
スペシャルウィークが葛藤からついに蹲ると、その身体を大きな影が覆った。
「もし、そこのお嬢さん。あなた、体調悪いの?」
「あっいいえ大丈夫です元気です、ココ邪魔ですよねどきま──!?」
それは純白だった。
髪が、肌が、服が、そのすべてが、白で埋め尽くされていた。
唯一色づいた瞳の蒼が、白の中で浮かび上がる。
蒼穹を思わせる丸い瞳は、蹲ったままのスペシャルウィークを見下ろしていた。
その姿をみたとき、オレは興奮で思わず紅茶を吐きこぼした。
ほんとごめんねカネヒキリくん拭いてもらって……あっ顔はいい自分でやるから……ありがとうね。
ごしごしと顔を拭って、もう一度前を向いた。
食堂の窓からはウマ娘がひとり、頭を抱えているのが見える。
少しだけ赤み掛かって見える黒鹿毛に特徴的なホシ、後ろでまとめられた白い編み込み。間違いない。
エエエエ!?スペちゃん!?スペちゃんスペシャルウィークナンデ!?!?
「どうしたサンジェニュイン」
「ルドルフ先輩、あの子は……」
「うん?……ああ、あれはチーム・スピカの」
チーム・スピカの!?
エッ、ここアプリ版ウマ娘じゃないのか!?
オレがここがアプリ版だと思っていた理由で、一番大きいのはゴールドシップの所属しているチームがシリウスだったことだ。
チーム・シリウスはアプリ版ウマ娘でプレイヤーがトレーナーをしているチーム。
先代トレーナーの引退によってサブトレから昇格したプレイヤーは、継いだ途端メンバーが1人だけになったチームを、新エースのメジロマックイーンとともに再生していく。
ゴールドシップはそのストーリーの途中でチームに加わる。
アニメ版ではチーム・スピカの最古参として登場するゴールドシップがシリウスにいることで、オレはここがアプリ版ウマ娘の世界だと思っていた。
「……ゴールドシップってシリウスですよね?」
「君がゴールドシップを知っているとは意外だったな。……いや、彼女は確かスピカに移籍したはずだよ。君が渡仏した数日後くらいだったか。今じゃスピカの最古参だ」
なあにそれ……。
まさかオレがフランスに行っている間にアニメ版ストーリーが進んでいたとは。
あれ、そういや次のシーズンってトゥインクル・シリーズでは……?
スペちゃんが居てトゥインクル・シリーズが始まるってそれ、もしかしてもう2期始まってる?
ということはトウカイテイオーVSメジロマックイーンのあの激アツ勝負が生で見れる可能性が!?
こうしちゃいられねえ、スペちゃんに話しかけよう!!
身なりをただし、外面を取り繕う。
オレじゃなかったワタクシは美貌の天馬、純白のお姫様純白のお姫様純白のお姫様おほほほほ!!
……ヨシ、いくわよ!
── このときのオレはすっかり忘れていた。スペシャルウィークも右耳リボンウマ娘だということを。
【速報】サンジェニュイン(ウマ娘)は脳内ガバガバなのが判明
チーム・メテオ
リギルと同じくらい強いということにしておいた(適当)
主に海外レース経験があったり海外を視野に入れているウマ娘が所属
リーダー:ディープインパクト
メンバー:ターフ組(ディープもここ)
サンジェニュイン
シーザリオ
ラインクラフト
メンバー:ダート組
カネヒキリ
ヴァーミリアン
ウマ娘プレイヤーからは「SSの産駒と孫で作る最強チーム」「02年最強組」「どうしてここを一つにしたのか」「トレーナーがサンデーサイレンス」と言われている
スペシャルウィーク
アニメ版2期のスペちゃん
元気のないテイオーさんを励ますため、
テイオーさんの推しウマ娘にサインをもらいに行ったところ、
とんでもねえ純白に目を焼かれてしまう
右耳リボンウマ娘の末路が見える見える
トウカイテイオー
アニメ版2期のテイオーさん
よりによってサンジェニュインを推している
まだ実物を見ていないためセーフ
サンジェニュイン(ウマ娘)
キレデレお嬢ヤクザ・ヴァーミリアン(ウマ娘)の圧によって
人前では「純白のお姫様」「一人称わたくし」で通っている
つまり本当に一人称が「オレ」だと知っているのは
アニメ版だと同じチームのメンバーと生徒会、
アプリ版だと仲のいい友人と「トレーナー(プレイヤー)」だけ
……属性盛りすぎぃ!?
カネヒキリくん(ウマ娘)
ちょっとサンジェニュインを赤ちゃんだと思っている節がある
スピカトレーナー
アニメ版のあの人
次話「主人公の被害者一覧」&「競走馬回」
次もサービスサービスゥ!!
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【紹介】主人公の被害者一覧
圧倒的感謝!!!!!!!!!!!
ひとつだけ、掲示板回の誤字なのですが、これ掲示板住人も誤字脱字やらかすので誤字脱字報告大丈夫です(白目)
ほかの時はめちゃめちゃ助かります!特に「て」「を」「は」「に」の抜けや誤字指摘には命救われました!!
以下本題
まず始めに、この回を読み飛ばしてもストーリーには影響ないです。
というかこれは小説ではなくマジで被害者紹介です。
ほんと読み飛ばしてOKなんですけど、このレースで負けたウッマはどんなウマ、をちょっと知りたい方向け。
架空馬である「サンジェニュイン」が存在したことによって、史実と違う結果になってしまったお馬さんたちを紹介しています。
主にレース結果等が変わってしまったお馬さんです。
作中のレース順に紹介。
2004年 12月19日 阪神2R 2歳新馬戦 芝2000メートル
史実勝ち馬:ディープインパクト
2着馬:コンゴウリキシオー
美貌馬時空勝ち馬:ディープインパクト
2着馬:サンジェニュイン
被害馬はディープさん以外の全馬。その中で2着から3着になったコンゴウリキシオーさんをご紹介。
◎コンゴウリキシオー
最新話時点の被害馬の中で唯一 Wikipediaがある。
それを見るとレースの詳細まで載っているので、ここではざっくりといきます。
コンゴウリキシオーさんは皐月賞、東京優駿(日本ダービー)、ジャパンダートダービーなどGⅠにも出走したお馬さん。
主な勝ち鞍はGⅡの金鯱賞、マイラーズCなど。
ちなみに金鯱賞の2着はコンゴウリキシオーが3着だった毎日杯(GⅢ)の勝ち馬・ローゼンクロイツで、
マイラーズCはウマ娘にも登場している魔女っ娘・スイープトウショウが2着馬。
マイラーズCでは2006年に1つ年上のダイワメジャー(ダイワスカーレットの半兄)が記録した「1:36.2」を
4秒も縮める「1:32.2」の大レコード記録を叩きだしているよ。
この記録は2014年、ディープさんの息子・ワールドエースが0.8秒縮めて「1:31.4」を出すまでの7年もの間、破られることはなかった。
強いやん!!
芝にもダートにも果敢に挑戦していて、上記の通り芝のGⅡで2回の1着を取ったほかに、
カネヒキリくんが1着を取ったダービーグランプリ(ダ・GⅠ)で掲示板入り(4着)、
かきつばた記念(ダ・JpnⅢ)では1着を取っていたり、芝・ダートを問わない幅広い活躍をしたよ。
ちなみに名前が名前なので内国産かと思いきやアイルランド産。
競争時期は2004~2009年で、'08年と'09年にはあのウオッカとも同じレースで走ったよ(戦った2レースはいずれもウオッカが1着)
美貌馬時空では魅惑のおしりが前を走っていたので頑張って脚を動かすも、
ディープさんに抜かれ、先頭にも追いつけず……後の戦歴を見ると1600メートルが一番適性が高かった中で、2000メートルの3着に食い込んだのはすごい。
ちなみにレース後に主人公に「名前をおしえてくれ」っていったのはこの馬。
2005年 1月23日 小倉3R 3歳未勝利戦 芝右回り2000メートル
史実勝ち馬:マルブツダンディ
2着馬:マイネルアットーレ
美貌馬時空勝ち馬:サンジェニュイン
2着馬:マルブツダンディ
このレースは例年通りのペースで進んでいたらしいです。
つまりサンジェニュインの走りがオカシイ(確信)
ここでは2着馬のマルブツダンディと、サンジェニュインがいたことで出走を回避することになってしまったイケイケヨシヨシをご紹介。
◎マルブツダンディ
父・ダンスインザダークはサンデーサインレス産駒で、当時はバブルガムフェロー、イシノサンデーらと「サンデー四天王」と呼ばれていたよ。
戦績は8戦5勝、主な勝ち鞍は報知杯弥生賞(GⅡ)、菊花賞(GⅠ)で、そのほかのレースでも2着か3着のみ、馬券から外れたことはない非常に優勝な成績で種牡馬入り。
自身も優勝した菊花賞勝ち馬を3頭輩出し、特に2001年産駒のデルタブルースはオーストラリアのメルボルンカップで優勝するなど、長距離適性の高い産駒が多かった。
母父としては宝塚記念、天皇賞・秋を制したラブリーデイなどの活躍馬を出しているよ。
ちなみに2021年のフローラステークスでは、ゴルシ産駒の優良株ユーバーレーベンとオルフェーヴル産駒スライリーとの競り合いを制し、見事優勝したクールキャットの母父もこのダンスインザダーク。
母アローアゲインはトニービン産駒。
21戦4勝で大レースを制したことはないけど、その母ジユウジアローは毎日王冠(GⅡ)、新潟大賞典(GⅢ)を始め8勝と活躍。
父トニービンはイタリアの競馬界で名を広め、ミラノ大賞典を2連覇し、同年にフランス凱旋門賞も制覇した活躍が高く評価され、社○グループが購入。
以後日本で種牡馬生活を送ったよ。直仔として、ウマ娘ファンに特に知られているのはウイニングチケットとエアグルーヴ。
母父としても活躍馬をだしており、アドマイヤベガ、カレンチャンが特に有名。(ウマ娘に実装されていないけどハーツクライの母父もトニービン)
こうして見るとマルブツダンディ自体もなかなかの良血だったんだけど、史実だと3歳未勝利戦での勝利以降は勝ち上がることができず、同年4月23日のムーニーバレ(500万)を8着に終えると引退することに。
その後どうなったかは探し方が悪いのかネットでは見つからなかったよ……。
美貌馬時空ではカネヒキリくんとのサヨナラで奮起したサンジェニュインによって、生涯唯一の勝利を奪われることになった。
4秒以上も差をつけてすまない……!!
実況の「2着馬はまだ来ないぞ!」のあと4秒後にゴールする姿がy◎utubeに残ることになる。
しかもこのお馬さんは続くあすなろ賞でもサンジェニュインと同じレースになったよ。
悪夢かな?
余談だけど、史実では2着馬、この時空では3着馬になってしまったマイネルアットーレは、馬の近況をしっかり目に報告してくれることで名が知られているラフィ○ンターフマンクラブ所有。
同年6月に初勝利を挙げるも骨折し、長期間の休養を経ても完治は難しいと診断されたために、翌年に競走馬登録を抹消し以後、同クラブで乗馬として過ごしていることが報告されている。
扱いが違う……。
◎イケイケヨシヨシ
もう名前が面白いんよ……。
父タヤスツヨシはサンデーサイレンスの初年度産駒でダービー馬。
ちなみにこの年のダービー2着は同じくサンデーの初年度産駒で皐月賞馬・ジェニュイン。
母レインボーチーフは地方のダートレースで活躍した元競走馬。
イケイケヨシヨシが新馬戦と10月までの2歳未勝利戦をすべてダート路線で進んできたのも、おそらくこの母の活躍から考えたもの。
ただし一度も馬券に絡めなかったため、11月から芝路線へ。
ここでも馬券に絡めず、最高順位は2月6日の3歳未勝利戦の6着に止まった。
同年4月に出走したレースで8着となった後に引退してしまった。
ネットで近況を検索するとヒットせず、作者は頭を抱えることに。
ごめんよイケイケヨシヨシくん……。
芝は2000と1800のみに出走していたが、6着となったレースでは通過順位が4コーナーまでずっと1位通過だったことを考えると、もしかしたらもう少し短いコースだったら1着もあったかもしれん。
すべては過ぎたことなのでタラレバしか言えないけど。
2005年 2月12日 小倉10R あすなろ賞(500万以下) 芝右回り2000メートル
史実勝ち馬:オープンエアー
2着馬:ミツワスカイハイ
(3着馬:マルブツダンディ)
美貌馬時空勝ち馬:サンジェニュイン
2着馬:オープンエアー
大逃げかませば牡馬どもにケツを狙われることもない!!
そういうことですよね、ターボ師匠!の回
「なにそれ怖……知らん……」
なんかターボ師匠が震えてるかもしれんけどこの回の被害馬はこちら。
◎オープンエアー
オープンエア、ではなくオープンエアー。
伸ばし棒を忘れると牡馬ではなく牝馬になってしまう。
父・ダンスインザダーク……ん?
まさかのマルブツダンディと同じダンスインザダーク産駒だよ。
サンジェニュインはダンスインザダークに何か恨みでもあるのかな?
新馬戦からの走りを見ると、追い込み・差し型の競馬を得意としていたみたいだよ。
史実は優勝したあすなろ賞では後方からスタートしたにもかかわらずぐんぐんと伸びていって、同じく後方から伸びたミツワスカイハイを最後半馬身ほど差し切っている。
逆に4コーナーまで通過順位1位だったグッドエモーションが6着に沈んでいるのを見ると、このレースは後方スタートの馬ほど有利だったみたいだ。
逃げてスタミナ落ちした馬の屍を踏み越える戦法だね!ん?ディープさん……?
まあ「スタミナ落ちせず逃げ続ける」を地で行くサンジェニュインとか言う逃げるために逃げる馬がいたことで差し切れなくなってしまったわけなのだが……。
翌年に障害レースに路線変更するまでは芝の平地競走を走っていたオープンエアーだけど、あすなろ賞以外では目立った成績を見せることができずにいたよ。
それでも2006年の障害4歳以上未勝利では2着馬に0.4秒、大体2馬身差ほどをつけて勝利!!
このレース以降は障害レースにのみ出走するんだけど、残念ながら勝ち鞍をあげきれずに同年8月に引退。
個人馬主ということもあって、引退後どうしているかまでは残念ながら探せなかったよ……。
余談だけど2着馬(この時空では3着馬)のミツワスカイハイは菊花賞(GⅠ)にも出走。
15番人気でありながらそれより上の10着でゴールしている。
ちなみにたった1度だけだけどレジェンドジョッキー・タケさんが乗ったこともあるよ。
ていうかあれ、この馬もダンスインザダーク産駒……。
史実では1~3着までダンスインザダーク産駒が占める結果だったのかあ……頭が痛くなってきたな。
またまた余談だけど、史実で4コーナーまでぶっちぎって逃げていたグッドエモーションは引退後、大阪で乗馬になったんだそう。
新しい名前はデイジー。
だから前2頭との差……。
今回は以上ッッッ!!!!
話が進んでクラシックレースだったり、それこそ凱旋門賞出走した後とかに、こうやってまた被害者を紹介していく予定です。
このレースでサンジェニュインに負けた馬、こういう経歴だったんだな、と知る機会になればと思います。あとは1着奪ってすまないという贖罪。
サンジェニュインの魅了にやられちまった馬たちは被害者じゃないんか?というか意見に関してですが、彼らは彼らでこの物語が終わった後にまとめて紹介させていただこうとかなと思います。
少なくともカネヒキリくんは被害者じゃなくね?割といい思いをしてるんだが……?とワイの中の誰かが囁いとるわ……。
本日はもう1話、更新するよ!!
以下、小ネタアンケートへの協力に圧倒的感謝!とともに、新しいアンケートを立ち上げたのでまたまた協力お願いします。
選択肢の競走馬たちは、現在公式で未実装かつ、海外レースへの出走経験があるサンデーサイレンス産駒またはその子供のお馬さんたちです(実績問わず)
このアンケートの結果をどうするかって言うと、次回のウマ娘回で使います(圧倒的ネタバレ)
回答ヨロシクヨロシクゥ!!
6/7 追記
アンケート選択肢の「ステイゴールド」さんですが、当小説ではモブウマ娘「キンイロリョテイ」さんとは別のウマ娘として扱います。
ご理解いただけたらと思います。
6/10 追記
アンケート終了しました。ご協力いただきありがとうございました。
6/15 追記
ご紹介させていただいた競走馬たちの情報は、あればWikipediaから、なければ下記サイトで該当レースを絞り込んだのちそれぞれの競走馬の戦績やサイト内の掲示板から参照しています。
netkeiba.com
https://db.netkeiba.com/?pid=race_top
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閑話 掲示板回 Ep-2
アレは嘘だ。
とても掲示板回が書きたくなったのでうまむすプレイヤー掲示板回にしました。
次回こそが競走馬回です!!!!(おそらく)(たぶん)(メイビー)
冒頭は「全力出すところ間違えるとダメ」なヒト族がギャップの塊みてーなウマ娘に出会ってしまうやつです。
このヒト族は次の掲示板回にも元気に登場します。
「私、社長にプロポーズされたのよ」
その日は付き合ってから10年目の記念日だった。
高級レストランのディナーを予約して、ガラにもなく花束まで買って。
10年も一緒にいてくれてありがとうって、これからも一緒にいてくれと、プロポーズする予定だった。
高校生の時から、遠距離になった大学時代もせわしない新社会人のときも上手くやれていたと思ってた。
でもそう思っていたのは俺だけだった。
「連れて行くお店はパッとしないし、プレゼントもおままごとみたいだし」
出会った頃、陸上部のエースだった彼女。
日焼けするのが嫌で、年中長袖だったのが印象的だった。
真夏の大会でひとり、白い肌でコーナーを曲がる彼女の、絶対に勝つって真剣な表情が好きだった。
一見大人しそうに見えて、誰よりも元気いっぱいな彼女が好きだった。
でもいつからか彼女は変わった。
大学に入ってカフェでバイトを始めると、ちょっと男勝りなしゃべり方も今時の女子っぽいしゃべり方になっていって、アウトドアが好きだったのに外に出るのを嫌がるようになった。
デートに行くお店のグレードはどんどん上がり、要求されるプレゼントの値段も年に見合わないものになっていく。
しんどいと思った。
でも、それ以上に彼女が好きだった。
例えそれが無理なお願いでも、できるだけ叶えてやりたい、笑顔が見たいって思うほど。
「きっと恋に夢見てたんだよね。あなたとは恋ができたけど、一緒になるのは無理」
無理って、無理って言うことないだろ。
買ったときは鮮やかに見えた真っ赤なバラも、ゴミに変わるだけだと思ったら薄汚く見える。
すれ違う全員から指を指されているみたいで顔を上げられない。
そうして俯く自分の顔がショーウィンドウに映って、並べられているテレビの中からでさえ笑われているような気がする。
なあ、この10年間はなんだったんだ?
結局お互いは一緒になれないって、思うためだけの10年だったのか?
ダイヤのネックレスもブランドもののバッグも海外旅行も、俺にとってはこれ以上ないものだった。
でもそれは、彼女に取ってはままごとレベルに過ぎなかったのか。
「彼女がすべてだったのに」
── お前は全力なのがいいところだけど、力を注ぐところを間違えると一気にダメになるよな
中学生の時、初めて飼ったペットのハムスターが死んだとき。
食事も満足にとれなくなった俺に親友が言った言葉を思い出す。
「……その通りだったな」
ずっと握りしめていた花束が手からこぼれ落ちていって、全身からも力が抜ける。
もう何もかもがどうでもいい。
もう、どうにでもなってしまえ。
『── やっとみんな会えたね』
パッとショーウィンドウ全体が明るくなる。
そのまぶしさに思わず目を閉じる。
軽快な音楽が鳴り響いて、雑に歩いていた通行人たちが足を止める音がする。
『新・ウマ娘、登場!』
目が慣れてきたとき、一番最初に飛び込んだのは白だった。
『── よお、トレーナー!オレと一緒に頂点、極めにいこうぜ!』
テレビの向こうから、手を差し出す少女。
白い髪をなびかせ、青い瞳が俺を射貫く。
その手を、俺は──。
【祝】サンサンファイト、日本ダービー制覇!21
720:名無しのうまむすトレーナー ID:kk4CNmMpW >>723 >>724
日本ダービーから1ヶ月ちょっとで21スレ消費するとかやっぱりココのメンツ頭おかしいな
723:名無しのうまむすトレーナー ID:5hiaNPfPo
>>720 お、アンチかてめー
724:名無しのうまむすトレーナー ID:pMFz5AmD3
>>720 頭おかしいのは認めるけど指摘されると腹立つ
726:名無しのうまむすトレーナー ID:p4xdtAKlP >>729
サンサンファイト以外にほら、サントゥナイトが宝塚取ったんでね
729:名無しのうまむすトレーナー ID:Grp7aF5gs
>>726 めでたいほんとめでたい
731:名無しのうまむすトレーナー ID:TxEnaMtw9 >>732 >>734
サントゥナイトは太陽なのか夜なのか
732:名無しのうまむすトレーナー ID:fTThKJs5b
>>731 マジレスするとサントゥナイトの英語名は「Sun To Knight」で「太陽から騎士へ」って意味であって夜ではないんよね
734:名無しのうまむすトレーナー ID:E/KIYrqjH
>>731 恥をさらすだけになっちまったな
735:名無しのうまむすトレーナー ID:3QwDa0J7F
名前に「サン」がついてると「サンジェニュイン産駒だな」って思う身体になっちまった
736:名無しのうまむすトレーナー ID:5uNsyl5D/
サンサンファイトとサントゥナイトの活躍はサンジェニュインもニッコリやろな~
つーかここ数年でサンジェ産駒すごい活躍するから、白くてやたら強い走りをする馬は「サンジェニュイン産駒」だと思ってしまうわ
737:名無しのうまむすトレーナー ID:2Leb4QmmP >>738 >>741
エプソムCでディープサクナミに追われてた葦毛ってサンジェニュイン産駒?
738:名無しのうまむすトレーナー ID:/bnSpiRJA
>>737 節子ちゃう、それはロージズインメイ産駒の牝馬で時期遅れのフケだったんや
741:名無しのうまむすトレーナー ID:fbc19JIaz
>>737 ユニコーンステークスでゴール後に走り続けていたのがサンジェニュイン産駒
742:名無しのうまむすトレーナー ID:Vl05XsvHV >>746
>>741
サンクス
あれ最後まで追ってたのってカネヒキリ産駒だよな?
744:名無しのうまむすトレーナー ID:4he7ZA638
サンジェニュイン産駒、父がやたら同性馬に追いかけ回されるのは知ってたけど産駒まで追われてるのは草
746:名無しのうまむすトレーナー ID:WyW6h4qFO
サンジェニュ系白の一族の牡馬はやたら同性馬に好かれる、これ競馬界の常識だから
>>742
それは父父カネヒキリのネヴァーネヴァーくんやで
カネヒキリはもう死んでる
747:名無しのうまむすトレーナー ID:HTYj/3zaz
トレセントレーナーの俺、ウマ娘カネヒキリからサンジェニュイン沼に入ったんだが、調べれば調べるほどカネヒキリが語るサンジェニュインそのまんまで芝
749:名無しのうまむすトレーナー ID:GPkEjSG30
最近ウマ娘ユーザー増えてきたな
751:名無しのうまむすトレーナー ID:y0vPiqWPV >>753 >>756
ウマ娘のカネヒキリがサンジェニュインの話しかしないってマ?
753:名無しのうまむすトレーナー ID:EJAdsTTAv >>760
>>751 サンジェニュインの話しかしないは嘘
正しくは「サンジェニュインと明言されているわけではない「親友のあの娘」や「美貌の白バ」の話しかしない」やで
756:名無しのうまむすトレーナー ID:BW7x2rlGS
>>751 一回(サンカネ)吸ってみろ、飛ぶぞ
758:名無しのうまむすトレーナー ID:V50K9Lyzh >>761
カプ厨は専用スレいってもろて……
ここはサンジェニュイン産駒お祝いスレなので
760:名無しのうまむすトレーナー ID:V50K9Lyzh >>761
>>753
ほんとに名前が出てるわけじゃないのに「親友のあの娘 = サンジェニュイン」ってなってるの芝
761:名無しのうまむすトレーナー ID:WfAXlzIPU
>>758
カプ厨は専用スレイケは気持ちわかるが、
【サンカネ】に関しては現役時代の雑誌で2頭ひとまとめにするときも使われてたからそこまで目くじら立てないで欲しいわ
それにここお祝い専スレじゃないし、サンジェニュイン関連全般で、いまたまたまお祝いしてるだけ
>>760
カネヒキリが言及する白馬なんてサンジェニュイン以外おらんやろがい!!
ニヨニヨ動画の「カネヒキリハッピーラブラブライフ」を100万回視聴してもろて
種牡馬時代のまだ生きてるカネヒキリとサンジェニュインの生活が見れる
763:名無しのうまむすトレーナー ID:cW0tR30us
ウマ娘やってないからどんなもんか調べたらこれ、サンジェニュイン未実装やんけえ!!
764:名無しのうまむすトレーナー ID:BAoIOLc4U
凱旋門賞馬なのに未実装のウマ娘がいるらしい
766:名無しのうまむすトレーナー ID:W39SItCZ2
俺がウマ娘やらない理由、サンジェニュインがいないからです
767:名無しのうまむすトレーナー ID:M2p34Ab2q >>769 >>770 >>773
逆に俺はカネヒキリ、ヴァーミリアンからサンジェニュインをしった勢なんだが、この馬なんでめっちゃ人気なん?
769:名無しのうまむすトレーナー ID:K27Q2b61l
>>767 日本競馬初の凱旋門賞馬にして、世界初の白馬の凱旋門賞馬だから
770:名無しのうまむすトレーナー ID:oIhrwqI1w
>>767 白馬の凱旋門賞馬で産駒も白馬でくっそ強い
773:名無しのうまむすトレーナー ID:dHmXdO4+3 >>776 >>777
>>767 白毛でくっそ強いって意見が多いし俺もそうだけどそれ以上に「同性に死ぬほどモテた」ってエピソードが好きすぎるから
社来スタリオンのHPに載ってる「2011年名馬4頭ハッピーショット」(5ch命名)は何度みても「イイ」ってなる
776:名無しのうまむすトレーナー ID:Dp35kTU+I
>>773 これが本音
777:名無しのうまむすトレーナー ID:GiiR4BccH
>>773 間違いなくてすき
779:名無しのうまむすトレーナー ID:VNKF69F6m
サンジェニュインの同性にモテるエピ、何度見ても元気になるから定期的に見てる
780:名無しのうまむすトレーナー ID:fRwAX0eGk >>781 >>782
同性にモテてるやつ、どのレースのやつ?それとも雑誌とか?
あ、ウマ娘勢です
781:名無しのうまむすトレーナー ID:YuNBgS5Zq >>784
>>780 全レース
782:名無しのうまむすトレーナー ID:vxOf8uw6H >>784
>>780 全部
784:名無しのうまむすトレーナー ID:7/0ZDWQG8
>>781
>>782
???????????
787:名無しのうまむすトレーナー ID:v51xbOPBT
意味が分らないと思うが、サンジェニュインはすべてのレースで牡馬から追いかけられている
JRAもさんっざん調査したが原因がつかめず、結局「他の馬がサンジェニュインの顔が好きすぎる」(意訳)ということで落ち着いた
ちなみにマイルドに「モテる」などと表現されているが、正確には牡馬のオッスな部分がオッス!と立ち上がってしまうくらい牡馬に好かれた
このままじゃレースにならねえ!ってことでパドック別周やメンコをつけて対策が取られたくらいだゾ
788:名無しのうまむすトレーナー ID:utheXu5gF
何度見ても意味がわからないねえ!!
791:名無しのうまむすトレーナー ID:yGrXpV2LG >>794
他の牝馬に興奮していたとかそう言うのではなく?
794:名無しのうまむすトレーナー ID:GcpVEH0hm
>>791
全頭牡馬の2005年日本ダービーでもレース後に追いかけられてる
youtube で検索すれば見れるぞ
これは対策が取られた後だから牡馬のオッスがオッス!してないだけで全頭興奮状態になってるやつ
796:名無しのうまむすトレーナー ID:g2TfHswsf
ヒィン……
799:名無しのうまむすトレーナー ID:X5G8xEODG
リアルタイムで追ってた競馬おじやけど、マジでパドックは全部別周やったな
801:名無しのうまむすトレーナー ID:RoL6CRPSC
本人はクッソ大人しいのに周りがクッソ落ち着かなくなるから引き離されるサンジェニュイン
803:名無しのうまむすトレーナー ID:DTA3bKHF9 >>804 >>806
逃げ馬はよく「異次元の逃亡者」「誇り高き逃亡者」とか言われるけど、俺サンジェの逃げはガチ逃げだと思ってる
804:名無しのうまむすトレーナー ID:xylFFYDBj
>>803 これは草
806:名無しのうまむすトレーナー ID:FlMuVNiVo
>>803 わかる、なんか命掛かってた
807:名無しのうまむすトレーナー ID:0I33Lgy4m
少なくとも他の牡馬に囲まれたくないから逃げ一本だったっていうのはありそう
809:名無しのうまむすトレーナー ID:RCGDRGtDx >>813
サンジェニュインが出るレースは本番と番外編があるから……もちろんゴールするまでが番外編、ゴールした後が本番や
810:名無しのうまむすトレーナー ID:WPw6IhTRS
2本立ての馬とか面白すぎてずるい
813:名無しのうまむすトレーナー ID:yzTm06Ych
>>809 逆なんよねえ!
815:名無しのうまむすトレーナー ID:3quOwtiw7
うまむすサンジェ早くみてえなあ
816:名無しのうまむすトレーナー ID:dlLlQ1gAQ >>817
サンジェニュインなんで実装されないん?
他にも実装されないウマ娘いるけどなんかソレっぽいたち絵はあるのに、サンジェニュイン立ち絵すらない
817:名無しのうまむすトレーナー ID:vSxOf7u2w
>>816 馬主の意向なんちゃう
819:名無しのうまむすトレーナー ID:iXg5GfH5h
馬主が同じサイレンスレーシングのヴァーミリアンは実装されてるのに……
822:名無しのうまむすトレーナー ID:gK03L8g2U
貴重なダートウマ娘、カネヒキリと同時実装で命助かりました
824:名無しのうまむすトレーナー ID:rjktLrEBE
真面目な話、サンジェニュインは凱旋門賞の前にドバイシーマクラシック、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSに出走したときに英国女王にも拝謁、王子の一人が背中に乗ってるからな
826:名無しのうまむすトレーナー ID:FU+/Hb5Hf
日本でも皇族に撫でられてるゾ
827:名無しのうまむすトレーナー ID:0tK8agviP
白馬として世界初を連発しまくったウッマですからねえ……
829:名無しのうまむすトレーナー ID:9lDsaWpKk
王族が乗った馬を萌え化する勇気がなかったか……
830:名無しのうまむすトレーナー ID:NMOgCz903
言うてシャイゲやしな、さらっと実装しそう
実装して!!!!
832:名無しのうまむすトレーナー ID:Xj5PeTQ8T
カネヒキリのためにも実装してやってほしい
俺もうカネヒキリの「このレースに勝って、彼女の親友に相応しいのはこの私だと証明する」「そうするまでは合わせる顔がない」を聞いた後にURA優勝しても「あの娘は……まったく、どこへ言ったんだか」を聞くと胸が痛んだわ
834:名無しのうまむすトレーナー ID:Bv2LhURhb >>835
カネヒキリのそこにいない親友の話、だんだんと「俺の心が汚いから見えないだけでそこにいるんじゃないか?」ってなってきて辛い
835:名無しのうまむすトレーナー ID:50OLKq0Y9
>>834
大丈夫おれもつらい
838:名無しのうまむすトレーナー ID:AMJCaO/T6
サンジェ産駒の活躍もすさまじいし、本馬もまだ存命だからな
840:名無しのうまむすトレーナー ID:eNlAXZ34N
まだまだ種牡馬として活躍しそうっていうか今回のを受けてさらに需要が高まった感じあるから、それ考えるとブランド維持で実装はないかなあ
841:名無しのうまむすトレーナー ID:5LbjeSMKj
あの、ヴァーミリアンさんもご存命ですが……
842:名無しのうまむすトレーナー ID:4Uo+UHrU9
お嬢ヤクザは種牡馬として大成しなかったゆえ……乗馬になったはず
843:名無しのうまむすトレーナー ID:sekPlikr5
世知辛いのう
いやまあお嬢ヤクザは繋養先のノータンスタリオンでサンジェニュイン産駒の白馬とハッピーライフ送ってるし……
846:名無しのうまむすトレーナー ID:QV2qR7CDF >>848
おまえたちい!!!!タイムリーで朗報ですわよ!!!!
848:名無しのうまむすトレーナー ID:L9QvjmgKS
>>846 この流れでそのしゃべり方はお嬢ヤクザを思い出すのでやめて
851:名無しのうまむすトレーナー ID:DcfqjcHmV
【速報】サンジェニュイン実装決定
852:名無しのうまむすトレーナー ID:u3zYIoScY >>855
【即オフ】サンジェニュイン実装欠点
855:名無しのうまむすトレーナー ID:TwFmUQZNV
>>852 慌てすぎ落ち着け
856:名無しのうまむすトレーナー ID:dAY6wVXtk
うまむす公式みたら本当に実装じゃん……
きたああああああああああああああああ
859:名無しのうまむすトレーナー ID:7cHFeXBIt
うまむすアンストしたわい、インストしなおす
862:名無しのうまむすトレーナー ID:7RYmZ3mI/
なに?ガチャの確率が低い?何のための稼ぎだと思ってるんだ?
864:名無しのうまむすトレーナー ID:xKJBrwsAd
サンジェ産駒で儲けた金をサンジェ(ウマ娘)に使う
健全ですね!!!!
867:名無しのうまむすトレーナー ID:tWDjUkJLA >>868
そのために競馬やってるまである
868:名無しのうまむすトレーナー ID:Gw4qqbWhK
>>867 一緒にするな、俺はサンジェ産駒が好きで競馬してるのでサンジェ課金は儲け以外の全金額を出すッッッ!!!!
870:名無しのうまむすトレーナー ID:DokOzS8ft
うれちいうれちい
873:名無しのうまむすトレーナー ID:dJ6RSvBIP
マジよくでサイレンスレーシングが許したな
876:名無しのうまむすトレーナー ID:NVyeRW5Kf
英国王子が乗った白馬の凱旋門賞馬を実装とかサイゲの勇気に敬礼
878:名無しのうまむすトレーナー ID:xaDNd7wZ7
下手なキャラ付けできんでしょ
880:名無しのうまむすトレーナー ID:5OmIrcqnF >>883
牡馬におっかけられて逃げまくってた性格だし、見た目と合わせて臆病天使ちゃんみたいな性格だったら推せる
883:名無しのうまむすトレーナー ID:jdaqoRhb4
>>880 サンジェというだけで推せ
・
・
・
999:名無しのうまむすトレーナー ID:Xzv/NsJwE
【速報】アニメ版ウマ娘5期でサンジェニュイン&ディープインパクトがメインのチーム・メテオ編の公開決定
1000:名無しのうまむすトレーナー ID:6dk6r1kBf
これにはカネヒキリも失神
さらっと引退後に種牡馬入りして産駒が活躍していることが明らかにされるサンジェニュイン(馬)
以下オリジナル産駒(オリジナル産駒???????)
サンサンファイト 牡3
父・サンジェニュイン、母はキングカメハメハ産駒
前走皐月賞では惜しくも2着だったが、迎えた日本ダービーを1番人気で制して白馬のダービー馬の称号を手に入れた
所属厩舎はディープインパクトさんと同じで鞍上も竹騎手
非常に落ち着いた性格だが逃げ一本の戦法ですべてを察する
サントゥナイト 牡4
父・サンジェニュイン、母はクロフネ産駒
前走・ドバイシーマクラシックを制覇し、今年度の宝塚記念を1番人気で逃げ切り勝ち
所属厩舎は父と同じ本原厩舎で担当厩務員はイサノちゃん
驚くほど警戒心がなく、追いかけられると解っていながらお喋りしたさに牡馬に近づく
ディープサクナミ 牡5
父・ディープインパクト
エプソムSでフケを出していたロージズインメイ産駒牝馬に興奮して追いかける
ネヴァーネヴァー 牡3
父父・カネヒキリ
カネヒキリくんのラストクロップからつながったダート王の血筋
無言ガン見を引き継ぎ、ユニコーンステークスでサンジェ産駒をケツを無言で追う
ユニコーンステークスではちゃっかり勝ってる
なおケツを追ってたサンジェ産駒とは同じ厩舎
ヴァーミリアンさん
ウマ娘プレイヤーからはその言動から「お嬢ヤクザ」と呼ばれ愛されている。
会いに行けるお嬢ヤクザなので、ネット上には今の写真がいっぱいある。
2017年シーズンで種牡馬を引退し、今は乗馬として過ごしている。
カネヒキリくん
アプリ版ウマ娘リリース時にはすでに死去
ウマ娘としては「そこにいない」未実装ウマ娘の話をすることで有名
サンジェニュイン
アプリ版ウマ娘リリース時も存命
まだまだ元気に種牡馬生活を送っているが、牡馬に追いかけられるのは今も変わらない
同じ血統で種牡馬としてはややインパクトに欠けるジェニュインとは異なり、G1ホースを何頭も輩出している不思議な馬
いまは亡きディープさんに代わってSSの筆頭後継種牡馬をやっている
産駒は3割白馬で、スタミナが異常にあること、それから逃げ馬で有名
2016年以降、ずっと隣の馬房が空いている。
6/15 追記
「サイゲって出せない馬は本当に名前も出さないのでカネヒキリくんのURAシナリオで名前がでるのは不自然では」(意訳)
というメッセージをいただき、
作者ワイ「ほんまやん」(ほんまやん)
となったので掲示板回も修正いたしました。
メッセージをくれた方、改めてありがとう……!ありがとう……!
そしてまた別の方からも
「全頭白馬とか、主人公オッス馬で大種牡馬だと……産駒の数が多すぎィ!?(このままじゃ全レース真っ白になって)まずいですよ!」(原文ママ)(原文ママ掲載許可もらってます)
とご指摘いただいたので、
作者ワイ「確かに!?!?」(確かに!?!?)
と我に返ったので全頭から3割にしました(3割もまだ多いほうやんけえ!?)
メッセージくれた淫夢ニキ、ありがとう……!ありがとう……!
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9.対決前の騒がしさ
仕事の合間合間に感想読むのが癒やしになってるよ!!(だからもっとくれ)
【報告】
匿名をやめてマイページを紐付けたよ。
かなり未来の話になるウマ娘のサポカ妄想やうまむすサンジェの能力値などは今後は活動報告でボソボソやる予定。
ということでもしうまむすサンジェ関連の感想やスキルネタ等があれば感想欄ではなく活動報告のコメントの方によろしくです。
今日は宣言通り競走馬回だよ!!
弟が生まれた。
『へえ、弟さんは白毛じゃないんですね』
『俺のは突然変異だから。弟はクロフネの3年目産駒だって』
ターフコースをゆっくりと歩きながら会話する。
3月2日、予定通り生まれた弟は馬体はそこそこ大きいけど脚元に不安無しで健康だ、と目黒さんが教えてくれた。
なんで目黒さんが知ってるかっていうと、同日に北海道のタカハルから電話が来たからだ。
その内容を馬である俺に教えに来る目黒さんに関しては、うん、もう深くは考えないことにする。
俺の母馬・ピュアレディの2頭目。
父親が違うから、括りとしては「半弟」というのに当たるらしい。
葦毛だと言うクロフネの血が濃く出たのか、弟も葦毛で顔立ちもちょっぴり似てるんだとか。
そんな弟だが、どうも俺同様母馬が育児を放棄してしまったようで、今後はタカハルとタクミ、それから同時期に仔を産んだ他の牝馬に育てて貰うことになっている。
生まれて数分は身体中の粘液をペロペロ舐めて貰えた俺だが、弟は生まれた瞬間に母馬が興味を失ったようで、一目見ることもしなかったみたいだ。
……生んだ自覚がないとかそういうレベルじゃないと思うんですけど?これ来年も同じだったら兄弟たちが不憫すぎるな。
母馬よ、いったいなぜ育ててくれないんだ。
いつか母馬に聞いてみたいけど、昔会ったときに「なんだこのガキ」みたいな目で見られたからマジで興味ないんだろうな。
俺は中身が元人間だし、タカハルやタクミの言葉も理解できるけど、そうじゃない弟は寂しい思いをしてしまうんじゃないだろうか。
目黒さんによれば弟も俺と同じサイレンスレーシングで一口馬主を募集する予定らしい。
『弟も時期がきたらここに来るってテキは言ってはいたけど』
『よかったじゃないですか!厩舎に1頭で寂しいって言ってたけど、賑やかになりますねえ』
『うん』
「サンジェニュイン~~……頼むそろそろ走ってくれ……」
お、騎手のあんちゃんの泣きが入ったな。
この前見習いから勝利騎手になったっていうのに、自覚が足りんぞ自覚が。走って欲しけりゃ鞭を打たんかい!いややっぱやめて、女の子の前で鞭打たれてから走るの恥ずかしいわ。
さて、茶番はここまでにして、そろそろちゃんと走るとするか。
『おしゃべりに付き合ってくれてありがとね、シーザリオちゃん』
『いえいえ、他の馬がいないなんてそんな寂しいの、私だったら嫌ですもん。これくらいならいつでも付き合いますよ』
なんて心優しい娘さんだろうか。
俺、心がぽかぽかしてきましたわ!
『ほんとありがと~!じゃあそろそろ鞍上も泣き始めたし、走ろうぜ!』
『はい!……ッシャオラァ!!』
『えっ!?いや速……っ!?!?』
3コーナーを回ったところで脚に力を入れる。
動き出した俺たちに鞍上が「うおっ」だの「急発進はやめてくれ」だのわめいてるけど、仕方ない走れといったのはそっち!
それよりシーザリオちゃん速すぎ!?
完全にキマった目をした彼女と競り合う。
ゴール直前でなんとかギリギリ先着できたけど、本番さながらのドキドキが心臓に悪すぎる。
加速し始めた時のガンギマリ顔が嘘のように、ゴールした途端にのほほんとした穏やかな顔になったシーザリオちゃん、君が一番恐ろしいわ。
「サンジェニュインは調子いいですね」
「だなあ。今日の併せ馬は初めての相手だし、どうなるかと思ったが相性がいいみたいだな」
「サンちゃんが自分から近づくなんてめったにないですよ。……今は何故か距離空いてますけど」
今日は3月3日。
報知杯弥生賞、3日前である。
「テキ、目黒さんに近藤さん、併せ馬はどうでした?」
芝木くんじゃん、追い切りに来たんか?
「おお芝木くん、うん、結果はよかった。シーザリオ号とも相性は悪くなくてね。……相手が牝馬だったからかな、追い回されないってわかっているのか、ずいぶん落ち着いていたよ」
「ヴァーミリアン号に対しては未だに腰が引けてるみたいですからね」
水を飲みながらテキたちの話に耳を傾ける。
今日の併せ馬の相手であるシーザリオちゃんは、カネヒキリくんと同厩舎の牝馬だ。
青毛というなかなか珍しい毛色で、日が当たらないところだと黒鹿毛にも見えるんだけど、一転して光が当たれば青色のシルエットが浮かぶ、実に美しい馬体を持っている。
このシーザリオちゃん、走っていない時はとても穏やかでのんびりとした性格の持ち主なのだが、いざ走り出すと人が、いや馬が変わったようにオラオラ系になってしまうのだ。
完全にサンデーサイレンスの血だよね、と言ったのはイサノちゃんである。
そんな馬鹿な……と思ったがサンデーサイレンスの血を引いているヴァーミリアンのあのやばさを思い出すと謎の納得感がある。
あいつはオカシイ。
しっかしそんなヤバい血が自分にも流れているのかと思うと恐ろしいな。
……ん?カネヒキリくんもサンデーサイレンスの血を引いてる?
だまらっしゃい!!
「今回の弥生賞は11頭立て。注目すべき馬は9枠11番のディープインパクト、1枠1番のアドマイヤジャパン、7枠7番のマイネルレコルトの3頭だけだと思っている」
「ダイワキングコンも強い走りをしているように見えましたが」
「1着を逃した2歳新馬戦、3歳未勝利戦はともに1200メートル。勝ち馬になったレースはダートの1400と1600だ。距離不安もあるし、芝不適正の可能性もある」
報知杯弥生賞は中山の芝右回り2000メートルだ。
そのダイワキングコンとやらは知らん馬だが、勝ち上がったレースがダートで、しかも最長が1600だと、400延長した弥生賞が厳しい見方にはなるよな。
俺もダートの2400に出るぞ!って言われたら暴れる。
「朝日杯FSを制したマイネルレコルトの脚質は先行でほぼ間違いないだろうね。若干鞭を嫌がるそぶりを見せるが、基本は乗り手に従順に見える。2000は初だが、新潟2歳Sも朝日杯FSも余裕のある勝ち方だったからか、距離を不安視する声はそこまでないようだ」
マイネルレコルトは聞いたことがある。
たしか去年末のGⅠで優勝して最優秀2歳牡馬っていうのに選ばれていたはず。
すごい馬も出走するんだな……いやそのすごい馬と俺もやりあうんだった。
「アドマイヤジャパンは新馬戦から全レース芝2000だから距離不安は一切なし。むしろラジオたんぱ杯2歳ステークス3着、京成杯1着はかなり強いポイントだ。京成杯が不良馬場でありながらも2着馬に2馬身差をつけている。パワーがかなりある馬だな」
ラジオたんぱ杯2歳ステークス!
バリバリに聞き覚えある。
ヴァーミリアンが勝ったってドヤ顔で言ってたレースだな。
たしか2着馬には1馬身差っていってた気がする。
そういやヴァーミリアンのやつが、
「やはり弥生賞か……いつ出発する?俺様が帯同する」
とか言っていたが、結局出走は取りやめたんだろうか。
「その2歳ステークスの勝ち馬はヴァーミリアンですよね。俺はてっきり弥生にも出ると思っていたんですけど」
「あちらはスプリングステークスへの出走を決めているよ。ディープインパクトと、それからうちのサンジェとの叩き合いを回避するためだろうね」
「なるほど……でもあれ、スプリングステークスってサンジェも出ますよね?」
ん?え?俺って弥生賞の後は、えーと、確かGⅠの皐月賞に直行するんじゃなかったっけ?
「うん、最初は皐月賞へ直行しようと思ったんだが、この馬が1800もいけるか、ちょっと見たくなってね。こっちは馬ナリでいいから、皐月賞が本番なのは頭に入れておいて欲しい」
「了解です」
スプリングステークスは確か……3月20日か。
弥生賞が3月6日だから、そこから2週間後かあ。
未勝利戦からあすなろ賞は20日間くらいだったから、それよりも短いんだな。
飼い葉をむっしゃむしゃ食べながらテキの方に顔を戻すと、イサノちゃんが何やら言いたそうにモジモジしていた。
「どうしたイサノ」
「いや、あの……中1週ではちょっとハイペースなんじゃないかな、と。皐月賞出走を考えると、疲労回復やケガ防止も含めて、直行の方がいいかと思いました」
イサノちゃん、俺の身体を心配してくれているんだな。
なんだか感動しちゃって飼い葉を食べるスピードが上がった。
「イサノがそう思うのも理解できるけどね、サンジェには並外れたスタミナがある。よほど無理な調教や走り方でもしない限り、スプリングステークス出走は問題ないと思っているよ。ただ「絶対」がないのが競馬だ。弥生賞の結果次第でまた改めて決めよう。……それでいいかな?」
「は、はい!テキ」
テキはずいぶんと俺のスタミナを評価してくれているようだ。
確かに今までの2000メートル、走った後でもあまり息切れはしなかったし、したことがあるのは新馬戦で他の牡馬どもに追いかけられた時くらいだしな。
いっぱい走ると食欲は減るけど、その分、夜は爆睡できてしまうので翌朝の目覚めがいい。きんもちい!のだ。
まあ爆睡とは言っても2時間くらいで、途中で何度か起きてしまうけど。
それがどうしてそうなるのかは不明だが、俺がもっと寝ようと思っても途中で身体が勝手に起きてしまうのだ。
妙に辺りが気になって、ちょっとウロウロしてからようやくまた眠気がきて2時間爆睡する、そしてまた起きて、を朝になるまでに3回ほど繰り返している。
馬と言う生き物がそういうシステムになっているのか、それとも俺の人間時代の分刻みのシフトタイムで働いていた日々がそうさせるのか……後者だったら魂に刻まれすぎだろ。
まあ今となってはどっちでもいい。
2時間とはいえしっかり眠れているのが影響しているかも解らないけど、俺は体力の回復が早いほうだという自覚はあった。
レースの翌日なんかは「今日は走らんぞお!」という気持ちになるのだが、その次の日からは「まあ走れと言われたら走る」になり、3日目には「騎手?いいよ乗りなよ」となる。
レースから1週間も経てばちょっとハードな調教にもついて行けるようになるので、他の競走馬たちに比べたら早いのではないか、とは前々から思っていた。
それを踏まえると今回のスケジュール、あまり苦にはならないような気もする。
「……俺の正直な気持ちを言うとね、敵じゃないんだよね」
テキが敵じゃないのは当然だろ。
え?そこじゃない?
「アドマイヤジャパンもマイネルレコルトも確かに強敵だろうけど、この2頭にサンジェが、うちのサンジェニュインが負けているとはまったく思わない。むしろ勝っているとすら思っている」
テキそれフラグじゃないか?
大丈夫かそんな啖呵切って。
その2頭はどっちも重賞レースで勝ってるんだろ?
普通に強いじゃん……いや強いから普通じゃないか。
なあテキ、実際に走るのは俺なんだが。
「同感ですテキ。ここまでの3戦すべて乗ってきて、そして他のアドマイヤジャパンたちのレースを見ても、やっぱりサンジェの方が強いと思います」
芝木くんまで!?
目黒さんとイサノちゃんもウンウンうなずかないでくれる!?
「ここまでの仕上がりは完璧だ。距離も芝もこの馬にピタリとハマっている。唯一懸念があるとすれば──」
あるとすれば?
「ディープインパクトだけだ」
二度と同じレースを走りたくない馬ナンバーワンじゃん。
もうやる気が絶不調だわ。
目黒さんは何故かまだ自信満々な顔だけど、イサノちゃんが「確かにそいつは強敵だ」って顔してる。
わかるアイツは強すぎる。
だいたいなんだよ追い込みって。
なんであんな位置から先頭をトップスピードで駆け抜けてた俺に追いつけるの?差せちゃうの?
おまけにレース後も俺のケツ追っかけてくるし、馬運車では鼻息荒かったし……アイツとレースするくらいならヴァーミリアンのキレ芸を真正面から浴びた方がマシ!
あ、うそごめんどっちもイヤ!!
「それでもサンジェが勝ちますよ」
芝木くぅん!?
だからこれ実際に走るのは俺なんだって!
自信満々にするたびにフラグがボコボコ立ってるんだよ!
何のフラグかって負けフラグに決まってんだろ!
テキも嬉しそうに頷くんじゃないよ!
イサノちゃんも目をうっとりさせないで、これ俺へのプレッシャーでかすぎるんよ!!
「弥生賞まであと少しだ。厩舎一丸となってサンジェをサポートするぞ!」
おおー!!と拳をあげる3人。
絶対負けられない戦いがはじまっちゃったな……もう知らん!!寝るわ!!
またディープインパクトに競り負けても怒るなよな!!
俺は飼い葉が入っていたバケツをひっくり返し、不貞寝をキメた。
サンジェニュイン 牡3
ガンジョウメイバ先輩が引退されたので、
3月時点で本原厩舎唯一の所属馬となった白毛のオッス馬
弟が生まれたので来年の9月くらいには2頭になるから寂しくない(なお今は)
競馬にも馬産にも縁のない人生だったため、複数回に分けて睡眠→起床はともかく、1回2時間ぶっ通しで爆睡することを異常だと知らない
回復力が異常なのは睡眠の影響というよりは「疲れにくい体質」というだけ
厩舎の期待を一身に背負うが、期待のされ方が負けフラグみたいな感じでドキドキしている
シーザリオちゃん 牝3
15話もやってきて初の牝馬
パッパはスペシャルウィークさん
カネヒキリくん・ヴァーミリアンと同厩舎
一見穏やかのんびり娘に見えるが、
レースとなるとちょっとオラついた性格になってしまうお茶目な一面も
今回が初併せ馬だったが、相性が良かったので今後の回数が増える(確定)
ヴァーミリアンさん 牡3
この時点では「まだ」芝でいい成績を出している
相変わらず会うたびに主人公に性癖の圧を掛けている
弥生賞に帯同しようとしたがお前はスプリングSに出るのだ!された
カネヒキリくん 牡3
今回名前だけ登場
その目に映るのは7月13日ジャパンダートダービーただひとつ
目指せ、砂の王者!!
主人公には3日に1度会いに行く
会いすぎでは?????
本原厩舎のみなさん
ガチ(ガチ)
うちのサンジェニュインはディープインパクトにも負けない!!!!
どでかい負けフラグみたいなことを平然と言うので主人公も震えている
6/16 追記
カネヒキリくんとヴァーミリ院、間違えたヴァーミリアンを同厩舎としていたんですけど、これ完全作者の頭の中で一緒になってただけで史実は別厩舎です。
感情のままに書くとアカン、それがよくわかるミスでしたわね……(反省)
修正したので見逃してください(懇願)
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10.戦いの後に ─ 報知杯弥生賞
16話目にしてようやく報知杯弥生賞です。
何度か「報知賞弥生杯」って書いちゃって修正した。
もう残っていないはずだ(白目)
もうちょっとサクサク進めたいけど、この次に掲示板回挟みたい気もする。
半分掲示板、半分競走馬回にするか(絶対途中で嫌になる)
6/10 追記
弥生賞の実況は全部ではありませんが、スタート冒頭の走り(1番手が誰で何馬身離れているか)は2005年3月6日の弥生賞実況をベースとしています。
レース流れを史実に沿いながら進めるにあたって史実実況をもとにしていますが、
「「先頭を伺う先段レットバトラー、」以降の実況はレース結果サイト等の通過順位をもとに言葉選びなどは自分で創作しています。
ズブズブの競馬おじさんではないためリアルな感じには見えないと思いますがこれが精いっぱいです。ゆるして。
「── 競馬場に足を運ぶだけの価値がこの馬にあると思っています」
記者の前でそう力強く宣言した。
嘘は何一つない。
この馬には、ディープインパクトには、この数年で遠のいてしまった競馬ファンたちの、その情熱を取り戻すだけの輝きがあるのだから。
社来グループが、生産牧場が、馬主が。
深い情熱と執念によって続けられてきた血統研究のその成果に、僕が花道を作ってやりたい。
そのためには──。
「最後に、このレースで他に注目している競走馬がいれば、教えてください」
脳裏に1頭の白馬が過った。
少し長い鬣をなびかせて、あのとき僕をじっと睨み付けてきたあの馬。
もしディープインパクトの前に立ちはだかる壁があるとするなら、この馬だけだろうと確信していた。
「7枠9番のサンジェニュインは、全レースで逃げ先行の戦法を取っていますよね。この馬の素晴らしいところは、ゴール手前になってもまったくダレないことです。とにかくスタミナがある。逃げ馬は距離が伸びれば途中で力尽きる馬も多いですが、この馬には「尽きる」ことを期待できないので。新馬戦の時のように、最後は競り合いになる可能性が高いでしょう」
だが最後に競り勝つのは絶対、絶対ディープインパクトだ。
2005年 3月6日 中山 報知杯弥生賞 芝右回り2000メートル
枠順 | 馬番 | 馬名 | 人気 |
1 | 1 | アドマイヤジャパン | 4 |
2 | 2 | ブレーヴハート | 7 |
3 | 3 | レットバトラー | 5 |
4 | 4 | ダイワキングコン | 11 |
5 | 5 | ニューヨークカフェ | 8 |
6 | 6 | マチカネオーラ | 10 |
6 | 7 | マイネルレコルト | 3 |
7 | 8 | ニシノドコマデモ | 9 |
7 | 9 | サンジェニュイン | 2 |
8 | 10 | エイシンサリヴァン | 6 |
8 | 11 | ディープインパクト | 1 |
「天候は曇りですが良馬場の発表となりました2005年報知杯弥生賞GⅡ。出走馬11頭で争われます。注目の一番人気は大外の8枠11番ディープインパクト。もうね、圧倒的1番人気ですよ」
「ここまで無敗の3歳馬です。パドックでの様子も非常に良好。鞍上の竹騎手も今日のレースにかなりの自信を見せていますね。ここを勝って無敗のままクラシック参戦となるのか、楽しみです。あと気にされている方もいるようなのですが、確かに今回の11頭の中では最も小柄ですが、実体重よりも馬体を大きく見せるオーラのある馬ですし、馬体差はそこまで気にならない走りを見せてくれると思います」
「後方スタートになっても自身より大きな馬を追い差しできるのがこの馬の持ち味。さ、続いて2番人気はサンジェニュイン。白毛の馬体が芝に映えますねえ。枠順は7枠9番となりましたが、逃げ先行を得意とする馬ですが外枠で不利になる可能性はあるでしょうか」
「正直可能性は低いと思いますよ。小倉芝2000のコースレコードを出したレースでは大外スタートでしたがハナを奪ってそのまま大差でゴールしています。新馬戦はディープインパクトに惜敗しての2着でしたが、続く未勝利戦からここまで連勝していますし私が一番注目している馬です。ただ不安があるとすれば馬群に飲まれた経験がないので、ハナをとれずに中団につけたときにどうなるかですね」
「ここで勝てば白毛初の重賞勝ち馬になりますサンジェニュイン。スタートに注目して見ていきましょう。続く3番人気はマイネルレコルト──……」
返し馬を終えてゲート前。
パドックは安定の別周 ──枠順馬番にかかわらず一番最後に回ること── で済ませた。
11頭立て最後の11番がディープインパクトだったため、俺が最後尾を歩いていたときにやたらと振り返ってガン見されたけど、まあ前みたいに追いかけられなかったから完全に無視した。
続々とゲートインしていく他の牡馬どもを横目に、俺は空を見上げていた。
うわあ、くもりだなあ。
『ヘイ!そこの白い美馬ちゃん!!いいケツしてんね!』
「あ、こら後ろ向くなよカフェ」
ぴよぴよ。
鳥さんだなあ。
『君、先行馬は好き?俺トップスピードで走るからさ、ほらみてこの脚』
「うわわ立ち上がんなってキング頼むよゲート前だぞお」
お、あの雲の形うんちじゃね?
ウケる。
『なんだこの扉ジャマ!……かわいこちゃ~ん!お話しようぜえ~~!』
「はははこいつめ、元気だなあ」
「ノリさん笑ってる場合じゃないです!ジャパンもうゲートインしたのになんでえ!?」
「今日のゲート入りはちょっと難航してますかね、1枠1番のアドマイヤジャパンが一度ゲートから出て入り直しとなりました。他の奇数番はそのまま誘導されています。いま9番サンジェニュインがゲートに収まりました」
「とても落ち着いた様子です。11番ディープインパクト、ゲート前で一度立ち止まりましたが無事入りました」
「続いて偶数番が順に誘導されていきます。ダイワキングコンやや嫌がっているか……アドマイヤジャパンが再びゲート入りしまして全頭準備が整いました。少しゲート内が騒がしいでしょうか。無事スタートが切れるとよいですが」
鞍上の芝木くんが俺の鬣を撫でる。
「サンジェニュイン、落ち着いてな」
わあってるよ。
だいじょうぶ気にしない気にしない。
例え両隣からガン見されてても、鼻息荒く話しかけられてても気にしない。
俺は冷静、冷静だから。
『マジでこの壁邪魔だぞ!ねえ~!もっとお顔見せて~!!』
『ヒョオッ!?うわびっくりした──ッア!?』
「サンジェ……!」
やっちまった~~!!
「ゲートが開きました。2005年3月6日報知杯弥生賞スタートです、が直前にニシノドコマデモが立ち上がり、隣ゲートのサンジェニュインもちょっと出遅れたか。2頭やや遅れてのスタートとなりました」
まずいまずいまずい!!
脚を前に出してできるだけ長いスライドで走る。
くっそう、出だしから先頭走って逃げ切ろうとおもってたのにい!!
フラグ回収してるじゃんもう~~!!
「まず先頭を行くのは4番ダイワキングコン。2番手は外からマイネルレコルト7番です。全体緩い流れになって内から3頭レットバトラー、ブレーヴハートとアドマイヤジャパンが先段に加わっていきます」
「まずまずのペースですね。アドマイヤジャパンがしきりに後ろを気にしているのがちょっと気になります」
「6番マチカネオーラ、2馬身離れてなんとか立ち上がってきましたサンジェニュイン、その外にディープインパクトは後方から4番手だ、エイシンサリヴァンがその内、最内のニューヨークカフェにニシノドコマデモが並びます」
目の前を走る横並びの馬体が壁になってなかなか馬群から抜けられない。
ちょっと下がってから外側に進出しようとしても、すぐ後ろにいるのがディープインパクトだからソレもできない。
くそっ、どうしようどうしよう……!
「落ち着けよサンジェ、このまま内側をキープして上がろう、な?」
イヤだ!
さっきからケツへの視線がすごいんだよ主にディープインパクトからの視線がな!!
このままじゃゴールより先に公開うまぴょいが始まっちゃうだろーがッ!!
前に出させろ~~!!
「少し緩い流れのまま1コーナー回ります、依然ダイワキングコンが先頭半馬身のリードを取りますが、コレをマイネルレコルトが第1コーナーカーブから第2コーナー向かうところで並び3番手をちょっと離しています」
「先頭を伺う先段レットバトラー、ブレーヴハート、アドマイヤジャパンはまだ横並びだ、マチカネオーラがちょっとダレ始めたか。後ろサンジェニュインが2馬身差を縮めてマチカネオーラを躱そうとしています」
「鞍上の芝木騎手が綱を後ろに引いていますね、馬が前へ前へと行きたがるのを止めているようです」
「完全に掛かっている状態ですがサンジェニュイン、マチカネオーラを抜かして外に出ます。後方にいたディープインパクトも少しずつ外に進出しすーっと伸びていきますよ」
先頭まであと何頭コレ!?
実況なんか言ってたっけ?
いや言っててもわかんないわかんない、走ってる最中に他の音まで聞こえるかってんだ!!
ああもう、少なくとも目の前にいる3頭は絶対抜かす!絶対抜かすぞ!
芝木ィ、手を緩めろや!
「……覚悟きめるか。サンジェッ!!先頭まで一気に抜かしてちぎるぞ!!」
おうよ!!
って、エッ?先頭まで一気!?
それは覚悟キメすぎなんだよなあ!?
「3コーナー回って先頭は4番ダイワキングコン、ダイワキングコンが走り続けますが7番マイネルレコルトとの競り合いが続いています。先段はアドマイヤジャパンとレットバトラーが膠着状態、ブレーヴハートは1馬身半下がっている」
「いっぱいいっぱいに見えますね。とはいえ鞍上に焦りは見えません、まだ想定内でしょうか」
「そのすぐ後ろ外から白毛の馬体サンジェニュインが猛追します。ブレーヴハートをサッと抜き去ると、アドマイヤジャパンとレットバトラーに並んで、ッいや並ばず躱す!躱していきますサンジェニュイン、脚色はまったく衰えていません!」
「ぐんぐん突き放していきます。このまま競り合う2頭を捉えきることができるでしょうか」
前は残り2頭。
どちらも俺をみて若干速度が緩んだ。
……こうなるのほんとイヤ!!!!
「サンジェニュイン完全に突き放したか!」
「先頭がサンジェニュインにかわった途端レースが一気にハイペースになりました」
「後方もスピードが上がってきたか、2番ブレーヴハートも再び上がってくる、最後方シンガリは9番エイシンサリヴァンも先行するニシノドコマデモ、ニューヨークカフェに追い縋ります」
お前らちゃんと走れよな!!
この顔と馬体見て見惚れるのは仕方ないけどな、それで手を、じゃなかった脚を抜かれると顔だけで勝ったみたいになるだろ俺が!!
いや俺の顔は完全に「勝ち」なんだけどそうじゃないんだよね、レースはレースだから、俺は俺の走りで勝ちたかったのに。
ぐぎぎぎ、なんか悔しい……!!
こういう勝ち方いやだわ!!
「う、そだろ……」
あん?どうした芝木……ッ!
え?
「ッ大外から!大外からディープインパクトが上がってサンジェニュインを抜かしました──!」
はあ?
「鞍上竹はまだ鞭を使っていないぞ、持ったまま直線に入ります、サンジェニュインは追いつけるか?」
こういう勝ち方はいやって言ったけど負けてもいいとは言ってないんだわ……!!
もうやだなにこの馬、なにこの馬!?
脚に力を入れ、首をぐっと前に出す。
なんか心臓がバックバクいってるけど気にしてる場合じゃない。
もっと速く、速く走らなければ。
前へ、ひたすら前へ……!!
うなれ俺の末脚、力を貸してくれターボ師匠ッ!
いやターボ師匠に末脚パワーはなかったわ猛省。
くっそお、スズカ俺だ~~!!今だけ俺に異次元の末脚を!!
「残り200メートルだ!サンジェニュインはまだ諦めていないか!差が詰まる1馬身、半馬身、あと少しか間に合うか、あっディープに鞭が入る芝木も鞭を振る、最後は完全に一騎打ちだ!」
真横のディープインパクトと一瞬だけ視線が合う。
けどお互い前を向いて、最後の叩き合いに入った。
「ディープかサンかディープかサンか!?」
唸れ俺のスズカ式末脚~~!!
差しっきれぇ!!
「ディープインパクト、サンジェニュイン2頭そろってゴールしました!3着入線はアドマイヤジャパン、アタマ差でマイネルレコルトが4着入線です。1着と2着は写真判定が行われます。お手持ちの馬券はお捨てにならず、そのままお持ちください」
ゴール板を抜ける。
詰めていた息をバァッと吐き出しながらも、視線だけはずっと前。
芝木くんの鞭もとっくに止んでいたけど、それでも俺は脚を緩めず、そのままターフを走り続けた。
走り続けようとした。
「サンジェ……?」
あれ?
なんか身体がめっちゃ重い。
えぇ、すっごい重いんだが……芝木くんちょっと降りてくれない?
このままだと走って逃げ切れん……他の牡馬に追われてうまだっちされちゃう。
「サンジェ、止まれサンジェ!」
だから止まれないってば!
ここで止まったら追われちゃうんだから……ほんとなにこれ、なんか身体が……。
うん?
芝、近くね?
「サンジェニュイン!!」
あれえ……目の前、真っ暗じゃん。
「写真判定の結果── 1着はディープインパクト、2着はサンジェニュインとなりました。ハナ差3センチです」
そのアナウンスに競馬場がドッと沸いた。
思わず息を飲む接戦。
最後の最後まで、ゴールした後でさえどちらが1着になったのかわからないくらいの競り合い。
手に汗握るとは、まさにこのこと。
トライアルレースでさえこの熱戦ならば、クラシック本戦ではどうなるのか。
競馬場に足を運んだファンだからこそ、これからを期待して止まない。
今年のクラシックは例年以上の盛り上がりを見せるだろうと、ファンも、そしてJRAも確信していた。
その、一瞬までは。
会場は途端に、悲鳴と怒号であふれた。
目の前でその馬体が崩れ落ちた時、僕は思わず手を伸ばしていた。
ディープインパクトの鞍上で、届きもしない距離で、それでも手を伸ばしていた。
「さ、さん、サンジェニュイン……!!誰か馬運車を、馬運車を早く!!」
目の前で取り乱す若い騎手にろくなアドバイスもできず、ターフに横たわる白い馬体に昔の記憶がフラッシュバックしていく。
輪郭も顔も毛並みだって全く似ていない、それでも倒れ伏すその姿に、栗毛の馬体が重なって目が離せなくなってしまった。
「──ッ!ディープインパクト、落ち着こう、ちょっと離れよう」
ディープインパクトがサンジェニュインに向かって歩き出したことで、沈んでいた意識がすっと戻ってきた。
相棒が倒れてひどく動揺している若い騎手を刺激しないよう、姿が見えるギリギリまで距離を取る。
他の騎手たちも同様の考えのようで、それぞれがグッと手綱を引いて後退していた。
その中でただ一人、ベテランの縦山さんだけが駆けつけた厩務員に馬の手綱を預け、騎手── 芝木くんに近づいた。
「芝木くん、今スタッフに馬運車お願いしてきたからね。だから君も治療を受けて、ね?」
その言葉を聞いて初めて、芝木くんがケガしていることに気づいた。
サンジェニュインが倒れる手前、ギリギリで飛び降りたように見えていたけどそうじゃなかったみたいだ。
「お、俺の、俺のことなんていいんです!さん、サンジェニュインが……ッ!サンジェを先に、どうか」
自分はいいからと頭をふる姿に息が詰まる。
よく見ると右足が赤くなっているように見えた。
倒れる寸で飛び降りる前に鞍の部品に引っかかってしまったのかもしれない。
痛いだろうに、駆けつけた救急車に乗ることも拒否した芝木くんはずっと、サンジェニュインを見つめていた。
一切目が離せなくなる、その気持ちは痛いほどよく分った。
僕にも同じ経験があったからだ。
「竹騎手も、戻りましょう」
「あ、ああ、はい、そうですね」
どれくらいそうしていたか、馬運車がついていよいよサンジェニュインを移動させる段階で、僕は縦山さんや他の騎手たちとともに一度検量室へと戻ろうと綱を引く。
ディープインパクトは離れたくないのか、なかなかその場から動こうとはしなかったけど、それは僕も同じだったからなかなか強くは押せなかった。
「サンジェニュインは大丈夫でしょうか」
「……どう、ですかね。走っている最中に倒れたわけではなかったので、結構、減速してからだったから」
あの馬と同じように。
ゆっくりと失速していって、騎手を派手に振り落とさないように、ゆっくりゆっくり。
そうして最後はぱたりと、倒れてしまった。
「予想通り、サンジェニュインが一番の強敵だったな」
「……沼さん」
「しかし惜しいことだ。あの熱戦、次の皐月賞でも競い合う相手はサンジェニュインか、それかヴァーミリアンかと思っていたが」
まるですでにサンジェニュインが死んだかのような口ぶりだった。
確かに、動かず倒れている姿に希望を見ることはできないだろう。
けど僕は、あの場を立ち去る前の芝木くんの言葉が頭から離れなかった。
『サンジェは、サンジェはまだ生きています!生き足掻いているんです!!』
生き足掻いている。
それは若手特有の、受け入れられない現実逃避の言葉にも聞こえるけど、芝木くんのあの目は本気なのだとすぐわかった。
本気で、サンジェニュインはまだ生きていると、生きようと足掻いているのだと信じている。
それがどうしようもなく、眩しかった。
「僕ならきっと、生き足掻いているとまでは言えなかったでしょうね」
「竹?」
「サンジェニュインは皐月賞に出ますよ。そしてまた、僕とディープインパクトが勝ちます」
あの先頭を絶対に譲らない根性の大逃げを指して、彼をこう呼ぶ人が居るのは知っていた。
── 白のサイレンススズカ
けれど僕は、サンジェニュインをそう呼ぶことを受け入れられない。
サイレンススズカは僕の理想のすべてだった。
彼と別れてから何頭もの馬に乗った。
彼に似た馬を探し続けた。
けど見つからなかったよ。
だってサイレンススズカはこの世に1頭しかいなかったから。
代わりなんてなかったんだ。
ディープインパクトと出会ったことで、僕はいよいよ、サイレンススズカとの夢物語を閉じたつもりだった。
それなのにどうして、君は僕の前を鮮やかに走ったのか。
僕はサンジェニュインを白のサイレンススズカと呼ぶなんて、やっぱり受け入れられない。
どんなに強く、理想の馬に見えても、生涯そう呼ぶことはないだろう。
だって生涯、僕は彼の背に乗れないんだから。
序盤と終盤に竹さんを使う戦法
……やめて!竹さんのサイレンススズカへの思いで、サンジェニュインをいい感じ思わせてしまったら、ケツ追っかけられてるから逃げてるだけのサンジェニュインがウマ娘になったあと美談にされちゃう!!
お願い、死なないでサンジェニュイン!あんたが今ここで倒れたら、テキや目黒さん、芝木くんとの約束はどうなっちゃうの? レースはまだ残ってる。ここを耐えれば、凱旋門賞馬にだってなれるんだから!
次回、「サンジェニュイン死す」。うまぴょいスタンバイ!
サンジェニュイン 牡3
こっそり「白のサイレンススズカ」と呼ばれている(少数)
まさかの出遅れ(白目)
初めて馬郡の飲み込まれ、中段からのスタートになるも根性で先頭へ
と思ったらディープさんに抜かされ、終盤は差し合いをすることに
そしてレース後……
芝木くん ヒト族 男
サンジェニュインの主戦騎手
いますっげえ病んでる
竹さん ヒト族 男
亡き相棒・サイレンススズカと主人公を重ね気味
でもこいつの背には(芝木くん乗るから)生涯乗れんのやろ?
じゃあスズカとは呼べんな!(大泣き)
ディープインパクトさん 牡3
その日、馬房に戻っても何も食べなかった
6/15 追記
競走馬の病気、怪我、それに関連した予後不良の認識についてご指摘いただいた中で、竹騎手のセリフが誤解を招く恐れがあるという指摘に納得したため、セリフを修正いたしました。
元のセリフは、
「僕ならきっと、薬を打ってくれと言ってしまうでしょうね」
でしたが、主人公はレース中に怪我等で予後不良の診断を受けたわけではないので、この場面で竹騎手が薬に言及するのは違うのではないか、という点で修正しています。
レジェンド騎手をモデルとした作中人物に誤解を招く発言をさせてしまい、申し訳ありませんでした。
以後描写には十分注意してまいりたいと思います。
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11.はい
なかなか返信できずすみません。全文は読んでいるので、折を見て順に返信させてください。
さてその感想についてですが、読者のみなさんにお願いがあります。
1:他作品のタイトル、キャラクターの名前を感想欄に出すのはおやめください
2:他作品のセリフを引用し、感想欄に出すのはおやめください
以前前書きに載せていた件ですが、該当の作品が非公開→公開になり、作者様がご自身の活動報告にも状況を載せているため、こちらの文章を削除いたしました。
なぜ以前あのような文を載せていたのかについては、後日改めて活動報告にまとめさせてください。
よろしくお願いいたします。
辺りを緊張による鋭い空気が包んでいた。
横たわる白い馬体の前に座り込む獣医は、少し身体を離すと背後に立つ人々と向き合った。
あまりにも静かだから、誰かのツバを飲む音さえも鮮明に聞こえた。
「外傷はありませんが、心拍がかなり弱っています。残り1時間といったところでしょうか」
そこで耐えきれなくなったのか、まだ若い女性が涙を流した。
泣き声だけは必死にあげないよう、唇を固く結んでただ、涙を流していた。
「……可能性は1%もありませんか」
「え?」
「サンジェニュインが起きる可能性は1%もありませんか」
50代にさしかかろうかという男の、その真剣な眼差しを受けた獣医が一歩後ずさる。
決して目を逸らすことは許さないと、言葉のない確かな感情がそこにあった。
「も、もちろん1%もないとは言えません。しかし……」
「なら1時間ください」
「心拍はかなり弱っています!衰弱していくだけという可能性の方が高いのです。その覚悟を……」
競走馬の獣医には、命を守り、時に看取る者としてのプライドがある。
もう天に還るだけというなら、どんなに受け入れがたい現実でも、受け入れる覚悟を持つべきなのだ。
獣医だけでなく、調教師も、厩務員も、乗り手である騎手も。
死は定められたとき以外にも、いたずらのようにやってくるのだと、受け入れる覚悟を。
「お願いです。1時間だけ、ください」
落ち着いた声だった。
「……いますぐ死ぬとは申しません。重篤な怪我でもなく、薬を使うこともない。ですが」
「わかっています。それでもこの子が起き上がる可能性に賭けたい。今すぐ「ああこの馬は死ぬんだ」と覚悟する以上に、私が、私たちがこの子の生命力を信じたい」
信じることすべてが報われるわけではない。
しかし、信じないで手のひらから零れ落ちる以上に、それは強い覚悟に見えた。
「お願いです、1時間でいい、1時間だけ、時間をください。その1時間でダメならば、私たちも向き合う覚悟を決めましょう」
男は深々と頭を下げた。
自分よりも一回りは年下だろう獣医に、恥も外聞も捨てて頭を下げた。
「……わかり、ました」
立場も全く異なる二人の男の共通点は、ただ馬を愛しているということだった。
「サンジェ……ずいぶん遠くまで走っているな」
男は── テキの本原はそう言って白い馬体を撫でた。
厩務員の目黒が、近藤が、そして騎手の芝木が周りを囲む。
瞼を閉じ、静かに横たわる姿に普段の活発さはない。
それでもかすかに聞こえる息と、手のひらから伝わる弱々しい脈打ちに、その馬のすべてを託すしかなかった。
「まだゴールを探しているのか?その先には……その先のゴールは、お前にはまだ早いよ」
新馬戦でゴールした後も走り続けた姿。
負けて泣きながら戻ってきた姿。
併せ馬で負けると不機嫌になって、満足するまでやり直そうとする姿。
一度褒めるとなかなか調教を止めようとせず、疲れ果てるまで走り続ける姿。
誰よりも負けん気が強かったから、お前は勝つまで走っているのだろうか、サンジェニュイン。
「走るならここで走ってくれ」
そこにはまだ、俺たちの誰一人とて行けない。
「走るならここで、俺たちの目の前で、芝木くんを背負って走って、また俺たちのところへ帰ってきてくれよ」
泣きっぱなしでも構わない。
負けるのが嫌なら勝てるまで何度だって挑もう。
そこには相手はいない、そこには。
「最後は笑顔でゴールしよう」
お前は強い馬だ。
何度だって言うよ。
お前は強い馬だ、サンジェニュイン。
「今日のゴールは、ここだぞ」
本原の目から涙が一滴、こぼれ落ちる。
それが白い毛に吸い込まれていく。
ふる、と馬体が小さくゆれた。
ソレは言った。
「まだ走りたいか?」
俺は答えた。
「走りたい。まだ終わってない」
決着はどうなった?
俺は勝てたか?
俺の鞍上は無事か?
テキ、目黒さんイサノちゃん、芝木くんカネヒキリくん、なあまだ始まったばかりだろう?
俺は、まだ、ここでは終われないんだ!
「……いいだろう。戻るといい」
満足そうな声で、ソレは応えた。
飼い葉、うめ!!
「サンちゃん食いつきいいね」
イサノちゃんおっすおっす!
なんか飼い葉美味いわ……ブランド変えた?いやブランドがあるのかは知らんけど。
味が違うんよね、もう段違い。
某赤い髪の男がベンチに座ってるMマークの100円ハンバーガーと、クソお高いレストランのナイフとフォークを使って食べるハンバーガーレベルで違う。
クソお高いレストラン行ったことないけど、たぶんそんな感じ。
「……本当に元気になったね」
お?うんまあね、というかあの日から元気だったって言うか。
テキが過保護すぎんよ、1週間調教も併せ馬も中止とか。
もう走り出したくてたまんねえよ、背中に盗んだ重りつけて走りてえ3歳の夜もあるんだよ。
いやレース直後に体力切れ起こした俺が悪いんだけどさ。力みすぎて終盤の差し競り合い、たぶん息止めてたんだよね俺。
結構力んだ状態でバクシン!違った爆走してたから、ゴール後に勢いよく息を吸い込んだことで身体がびっくりしたんだと思う。たぶん。おそらく。獣医もそんなこと言ってた気がする!
で、俺が倒れたことで芝木くんも怪我しちゃったって言うし、マジでごめんな芝木くん。
あのレースは俺が突っ走ったのがそもそも悪いんだわ。
でも後ろから明らかにケツ狙ってる視線受けたら逃げずにはいられないっていうか、太陽が俺に逃げろと囁いたというか。
あのまま内沿い進んでまったりしてたらうまだっち!されちゃってたかもしれん。
あとディープインパクトと差し競り合いまでいかなかったかもしれなかったし。……そもそも出遅れなければ?あれは俺が集中力を欠いたせい!
隣のウッマが俺に興奮してしまうのはしかたないことなんよね。神が作り給うた美貌馬やぞ、興奮しない牡馬の方がオカシイまである。
なんか俺どんどん自分が美貌馬だってことになれ始めてきたな……気をつけよ。
ゴール後ぶっ倒れて心配かけちゃったけど、レース結果的にはハナ差3センチだったしヨシ、的な案件じゃない?
いやヨシじゃねえな。
……やっぱり何度思い出しても悔しいわ!!なにハナ差3センチって!!
俺がぶっ倒れるほど走っても差し切られるとか泣いちゃう~~!!!!
実際に目が覚めた後で俺が負けたって知らされたときには泣いたけどな!!!!
俺以上にテキが大号泣してたからすぐ引っ込んだけど。
テキだけじゃなくて目黒さんもイサノちゃんも芝木君も泣いてたよね。
みんな期待しててくれたのに負けてごめんな。
「はい水、交換したよ」
イサノちゃんさんくすー。
1週間の調教禁止とかもキツかったけど、何がキツかったって面会も禁止だったことだよね。
JRAのGⅡレース初・白馬が2着、それも1着とハナ差だっていうから取材依頼が殺到したらしい。
俺が休養に専念できるように一律で断って対処してるんだとか。
それは嬉しいしテキ最高だと思うんだけど、カネヒキリくんが遊びに来てくれてもずっと会えないし。
ていうか今もカネヒキリくんいるよね?ちょっと外が騒がしいもんな、絶対来てるだろ。
なーイサノちゃんカネヒキリくんに会わせてくれよ、会話に飢えてるんだよこっちは。
調教解禁は明日だけど、今日の午後って実質明日じゃないか?
今もう午後だしさ。
「サンちゃん袖つかまないで……カネヒキリ号に会いたいの?」
贅沢言えば会いたいぞ。
無理だったら会話だけでもさせてくれ。
一方通行は結構しんどいんだ。
「もう……わかったよ、テキに言ってくるからちょっと待っててね」
やったぜ!
イサノちゃんを見送り、許可が下りる間ちびちびと水を飲む。
飼い葉も水も美味い。これ天然水か?
……ん?
外なんかさらに騒がしくなってない?
暴れ馬でもでた?
あれっ?
あ、ええ!?カネヒキリくんじゃん!!
エッなんでここにいんの?どうやって来たんだよ。
……柵を跳び越えてきた!?カネヒキリくんすげえ!
柵を越えるとかもうそれ平地競走の馬がやることじゃないよ、障害レースに出れるレベルだよ。
俺の身体?へーきへーき、ピンピンしてるよ!
脚は治ったのかって、そもそも脚は怪我してないからな。
カネヒキリくんなんでそんなに脚心配してんの?あ、ゆっくりでいいよ。飼い葉食いながら聞く。
うんうん、ふむ、なになに……俺がこの前のレースで粉砕骨折で走れなくなって生産牧場に戻って繁殖に入ったはずだけど行方知れずって聞いた!?
なにその情報!!
なってないよ粉砕骨折!!
見てよこの元気な脚と腰を!!
誰から聞いたんだよそんなデマ……ヴァーミリアンから?なんでアイツがそんなこと言うんだよ。
うん、ヴァーミリアンとディープインパクトが併せ馬をよくやる?へえ、あそこそういう繋がりだったんだ。
で、ディープインパクトからヴァーミリアン、そこから厩舎が近いカネヒキリくんに情報が回ったわけだ。
いや下手な伝言ゲームか!!!!
も~、そんな心配しなくていいって、大丈夫だからほんと。
体力の使い方間違えてバテちゃっただけだから!
ヴァーミリアンにも言っておいてね、俺ピンピンしてるし、次会ったら蹴っ飛ばすからなって!
え?ほんとに怪我してないのかって、本当だよ隠してないってば。
暗がりだから見えないって言っても、馬房内は日陰になるようになってんだからそりゃね。
ちゃんと見たい?外出れたらよく見えるかもだけど。
あっこらダメだってカネヒキリくん、馬房の扉壊したら絶対厩務員たちに叱られるって、ダメだってば!
「あ、あ、カネヒキリ号発見!発見!」
「サンちゃん大丈夫!?」
イサノちゃ~ん!!
カネヒキリくん止めてえ~~!!!!
2005年楽しみな黒いのと白いののスレ part.9
881:白と黒の名無し競馬おじさん ID:ABnS1qfM5
保守
882:白と黒の名無し競馬おじさん ID:5dzlwxfvX
保守
883:白と黒の名無し競馬おじさん ID:onld/f4gR
保守
884:白と黒の名無し競馬おじさん ID:1CchI/2ki >>885
他のスレも見てきたけどこのスレが一番お通夜って感じだったな
885:白と黒の名無し競馬おじさん ID:qYyNisgbG
>>884
途中からイッチ消えたと思ったら巡回してたんか
886:白と黒の名無し競馬おじさん ID:N09xSj0qj
誤情報に賭けた
887:白と黒の名無し競馬おじさん ID:x146zaWnS >>888
JRAからも元原きゅう舎からも正式なお知らせ出てないんだから確定ではないだろ
888:白と黒の名無し競馬おじさん ID:EzsOellst
>>887
震えてそう
889:白と黒の名無し競馬おじさん ID:dcwRIwQGX
中段から一気にぐんぐん伸びてきて、先頭にたってからも黒いのと叩きあってた白いの、体力の限界だったんかな
890:白と黒の名無し競馬おじさん ID:DkHc6zBoo
逃げ先行馬で中段につけられてかなりストレスたまってたのが観戦席からでもわかるレベルってなんなんだよ
891:白と黒の名無し競馬おじさん ID:pAuQ/9LQ6
シバキの操縦が悪い
892:白と黒の名無し競馬おじさん ID:q5tCvZ8gl
いやシバキじゃなくてアレは隣のニシノドコマデモが立ち上がって出遅れたのが痛い
893:白と黒の名無し競馬おじさん ID:8AVRk+fz9
人気も低い駄馬が良くも逃げ馬の邪魔してくれたわ
894:白と黒の名無し競馬おじさん ID:3Yewop1Kr
ニシノドコマデモ叩いてるやつ、絶対キョウエイボーガン知らないやつ
895:白と黒の名無し競馬おじさん ID:QPNNVQKva >>896 >>897
シバキが悪いだのニシノドコマデモが悪いだのどうでもいい、今はただサンジェニュインが無事かどうかが知りたい
896:白と黒の名無し競馬おじさん ID:Sgm4ziU0r
>>895
これなんよ
897:白と黒の名無し競馬おじさん ID:XepY4kBfC
>>895
まずは知らせがほしい
騎手が他馬がもう散々このスレでも他のスレでもやり合ってたでしょーが、ソレはマジでもういいいいんだわ
898:白と黒の名無し競馬おじさん ID:GuqyMwf43
出遅れにニシノドコマデモの立ち上がりの影響はなかった、とはもうお世辞には言えないでしょう。
立ち上がりの理由は馬にしかわからんが、ゲートが開いた後に明らかにサンの方にヨレそうになったニシノドコマデモの綱を操った中田の頑張りは見事。
出遅れたとはいえ飛び出しの反応もよく、すいすい中段につけてゴールまで行けたのはサンのスタミナを見事にアピールできてたし、この馬は馬群に入っても強いって解ったのは純粋に良かった。
ていうかよりサンへの期待が増した。
はやく無事なのかしりたい。
899:白と黒の名無し競馬おじさん ID:e+663Ce1L
出遅れ、初の馬群から競馬、それでも一回先頭に立って余裕もって追い込んできたディープと競り合い、ハナ差3センチ
期待しかないでしょ
900:白と黒の名無し競馬おじさん ID:K7iTMgYt7
クラシックは絶対この2頭だと思ってた俺が通りますよっと
901:白と黒の名無し競馬おじさん ID:B5ODGcPTo
ほんとに良かったから何度でも言うけど、サンジェニュインが倒れた後に駆け寄ろうとしていたディープインパクト、マジで良かった
902:白と黒の名無し競馬おじさん ID:TBhtz+hfM
2戦しかしてないけど、ディープの中じゃまともに走れるのはサンだけの可能性
903:白と黒の名無し競馬おじさん ID:OCB8kPmVs
前がハナ差8cm、今回がハナ差3cm
成長してるぞサンジェニュイン!!!!
904:白と黒の名無し競馬おじさん ID:BnpHPaukb >>905
すげえ熱かった
久々に競馬場いきてえ!って思うほどに良かった
905:白と黒の名無し競馬おじさん ID:AX42wnG90
>>904 ワカル
最後までどっちが1着かハラハラした
次2頭が出るレースは競馬場いきてえわ
906:白と黒の名無し競馬おじさん ID:dchwxXZn+ >>908
誰かサンがどうなってるか情報持ってるやついないの?
907:白と黒の名無し競馬おじさん ID:XXgpnjBpV
公式以外は誤情報だぞ
908:白と黒の名無し競馬おじさん ID:1CchI/2ki >>909 >>910 >>911
>>906 本原厩舎の公式サイトにお知らせが載ってる
909:白と黒の名無し競馬おじさん ID:bbXRk4dLi
>>908 まじか
910:白と黒の名無し競馬おじさん ID:mjX62ggKb
>>908 ありがとうイッチ
911:白と黒の名無し競馬おじさん ID:CTLB9WNsj
>>908
あの……「サンジェニュイン号についてお知らせ」より下が読み込めないんですけど……
912:白と黒の名無し競馬おじさん ID:lvU4mIngV
俺はサイトまるまるにアクセスエラーでた
913:白と黒の名無し競馬おじさん ID:mDu7bHvG/
イッチのやつ他のスレに転載されてる
そこから広まってみんな一気にアクセスしてるっぽい
914:白と黒の名無し競馬おじさん ID:1CchI/2ki
転載www
自分で見つけましょうね^^
エラーで見れないやつは本文コピるわ
下開けといて
915:白と黒の名無し競馬おじさん ID:1CchI/2ki >>916 >>917 >>918 >>919 >>920
トンクス
サンジェニュイン号についてお知らせ
2005年3月6日の中山競馬所・報知杯弥生賞のゴール後に倒れたサンジェニュイン号について、競馬関係者のみなさま並びのファンのみなさまにはご心配をおかけしているかと思います。
ご報告が遅れてしまって申し訳ありません。
ゴール後、サンジェニュイン号は倒れてしばらく意識不明の状態が続き、獣医による診察が行われていました。
その際、サンジェニュイン号には目立った外傷はなかったものの、意識が戻らない中で心拍数の低下が見られたため、回復することは難しいだろうと、獣医により残り1時間の命だと
916:白と黒の名無し競馬おじさん ID:cnHxx3aIS
>>915 ああああああああああああああ
917:白と黒の名無し競馬おじさん ID:ewfB+GE5v
>>915 残り1時間……残り1時間……
918:白と黒の名無し競馬おじさん ID:gbJ7Usqmo
>>915 死んだとか嘘だあああああああうわああああああ
919:白と黒の名無し競馬おじさん ID:7f8VAD4Dc
>>915 勝利を追い続けた白馬に黙祷
920:白と黒の名無し競馬おじさん ID:TqrfBOrMU
>>915 サンは星じゃなくて太陽になったんだ……;;
921:白と黒の名無し競馬おじさん ID:1CchI/2ki >>922 >>923 >>924 >>925 >>926 >>927
スマン、途中送信したww
続きね
その際、本馬には目立った外傷はなかったものの、意識が戻らない中で心拍数の低下が見られたため、回復することは難しいだろうと、獣医により残り1時間の命だと診断が下されていました。
しかし、サンジェニュイン号はわずか1%の可能性に打ち勝ち、当日の内に意識が戻り、自立して歩けるほどに回復しました。
現在は栗東トレーニングセンター、本原厩舎に無事帰厩し、馬房でくつろいでいます。
予定していたスプリングステークスは回避いたしますが、続く皐月賞には出走予定です。
サンジェニュイン号の回復を信じてくださった皆様、本当にありがとうございます。
サンジェニュイン号は皐月賞に向けて調整を続け、またターフで力強く走り姿をみなさまにお見せできるよう厩舎一同、努力して参ります。
引き続き応援よろしくお願いいたします。
以上
922:白と黒の名無し競馬おじさん ID:8OixThwXD
>>921 生きてた、生きてた!!!!!!!
923:白と黒の名無し競馬おじさん ID:4NiVz03Hk
>>921 1時間の余命宣告を覆したのか、これはもうサンジェニュインの執念というか厩舎の執念というか
924:白と黒の名無し競馬おじさん ID:pDM1reln/
>>921 よかった……もうよかったとしかいえん……
925:白と黒の名無し競馬おじさん ID:XttD1ZhL1
>>921
もういま手汗がひどい
サンジェニュイン号が元気そうでよかった
926:白と黒の名無し競馬おじさん ID:JrJ7Ive+A
>>921 写真がどう見ても笑っているように歯科見えなくて、おかしいんだけどそれ以上に涙出てきた
927:白と黒の名無し競馬おじさん ID:FmbCOvUk7 >>928
>>921
神はイマスカ?
はい or いいえ
928:白と黒の名無し競馬おじさん ID:1CchI/2ki
>>927 はい
前話が「レジェンド騎手曇らせ」って言われたのには笑いましたわね
騎手曇らせタグを追加するべきか(白目)
サンジェニュイン 牡3
おそらく一回は「向こう」に渡ったと思われるウッマ
気絶してる間にみんなが泣いてる……勝てなくてすまん……
栗東トレセンの馬たちの間で下手くそ伝言ゲーム形式で現状が伝わってしまっている
カネヒキリくん 牡3
ディープさん→ヴァーミリアン経由で聞いた噂がやばすぎて連日本原厩舎まで通った
実際に目に見て確認するまで信じられないタイプの馬
ディープインパクトさん 牡3
ショックすぎて途切れ途切れに話してしまった結果、話が拗れた
ヴァーミリアン 牡3
話を拗らせた馬
次の併せ馬までずっと上の空
はたしてスプリングステークスは大丈夫なのか。
テキ(本原) ヒト族 男
1%の可能性を手繰り寄せる男
まだそのゴールに向かうには早すぎるぞサンジェ!
竹さん ヒト族 男(今回出番なし)
後輩から電話で「サンジェニュイン号回復したみたいですね」と聞かされて腰が抜けた(安心と喜びで)
まあ、乗れないんやが
6/15 追記
10話のあとがきにも載せていますが、競走馬の病気、怪我、それに関する予後不良の認識についてご指摘をいただき、冒頭で獣医が心拍低下による予後不良の診断を言い渡していましたが、心拍低下、あるいは心不全の場合に通常行われないという指摘に納得したため、修正を行いました。
修正に従って、冒頭部分と掲示板も合わせて修正を行っています。
執筆当時かなりあいまいな知識で書いていたので、この機会に再度調べることができ、メッセージをくださった方には大変感謝しています。
改めて、メッセージありがとうございました。
修正前をお読みくださった方々へ、獣医の予後不良診断に関する誤った描写をしてしまい、大変申し訳ございませんでした。
ただの二次創作といえばそれまでなのですが、だからこそ誤った知識のまま描写していい場面ではなかったです。
今後このようなことがないよう、注意してまいりたいと思います。
今回の修正では、下記の書籍も合わせて参照しています。
「サラブレット101頭の死に方」(著:大川慶次郎氏 他)
こちらにて心不全、心臓麻痺等のケースで予後不良の診断はないことをベースとしています。
6/16 追記
カネヒキリくんとヴァーミリアンを同厩舎としていたのですがこれは作者の妄想上の話で史実とは別です。
妄想をさらっと反映してしまい申し訳ないです(大反省)
修正したので許してください(懇願)
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12.皐月雨
全然感想返信できてなくて申し訳ない……その内ちゃんと返信するから許して……
タイトルは「サミダレ」ではなく「サツキアメ」
ここ作者の妙なこだわり!!
6/16 追記
ヴァーミリアンの血統のところで名前を挙げた菊花賞馬ソングオブウインドさんですが、勝ったのが2006年で思いっきり未来の話だったので修正しました。
メッセージをくださった方、ありがとうございました!!
『生きてる~~!!よかった~~!!』
冒頭の台詞を浴びせられたのは今日だけで23回目。
誰に浴びせられているかって?
すれ違う馬全頭にだよ……!
「なんか今日は一段と他の馬が寄ってくるねサンちゃん」
ちょっと疲れ気味にそう言ったのはイサノちゃん。
それもそのはず、さっきから一歩進んでは絡まれ、一歩進んでは絡まれの繰り返しをしているからだ。
疲れるよね、本当にごめん。
でも俺にはどうしようもないんだ。
「今までみたいにサンジェニュインに興奮して、と言う感じではないみたいだけどな」
「そうですね……牡馬だけじゃなくて牝馬もいましたし。うーん、どちらかと言うと久々に会った仲間、みたいな」
「そうそう。みんなサンジェニュインの周りを一周していくし、案外体調を心配してたり、なんてな」
冗談めかして言う目黒さん。
それ大正解なんだよなあ……!
まさか俺が弥生賞で気絶した話が最悪の伝言ゲームで栗東の馬たちに広がるとは。
バリエーションは多岐に渡るけど、一番多かったのは「粉砕骨折からの引退、種牡馬入りのはずが行方不明」で、次点で多かったのは「レース後に死亡」だったな。
いや死亡て。どんだけ尾びれ背びれ着いたんだよその伝言ゲームは。
「だが他の馬たちでこんな調子なら……ヴァーミリアン号が中山に行っていて良かったな」
「ああ……いたら確実に、そうですね」
言葉にはしないが明らかにやべえやつ扱いしている目黒さんとイサノちゃん。
おいヴァーミリアン、お前厩務員たちからもなんかヤバイやつ扱いされてるぞ……!!
アイツは俺を前にするとこの美貌に対して異様にテンションが上がっちゃうだけで、カネヒキリくんの話によると気性はちょっと荒いけど調教には従順だし、根はすごい真面目な馬らしいんだよ。
だからあんまりヤバイ馬扱いを……ていうかなんで俺がヴァーミリアンの弁明してるんだ。
普段は俺が「かわいくってごめんなさいと言え!」とか「このエンジェルちゃんが!」って罵られてんだぞ。
……ん?罵られてるか?
いいやなんかアイツのこと考えるとヘンな深みにハマりそうだ。
さて調教を再開してから1週間が経った。
時の流れが速くてキレそうだが、今日は3月20日、スプリングステークス当日である。
出走予定ではあったが、まあ大事を取ってスプリングステークスは回避することになった。
俺はすこぶる元気だったのだが、テキが大変に嫌がったのだ。
「元気な姿を見せるのは皐月賞の時でいい」
そう言ってサイレンスレーシングのお偉いさんを退けてしまった。
お偉いさん方としてはスプリングステークスに出走させて「サンジェニュインは元気です!大丈夫です!」をやりたかったんだろうけど。
テキがあんまりにも凄むので、すごすごと退散していった。
すげえなテキ。
「千葉の方は雨だって聞いたけど、大丈夫ですかね」
「中山は曇りのようだぞ。高山さんから電話貰ったんだが、今のとこ良馬場の見込みらしい」
今日のスプリングステークスにはヴァーミリアンが出走している。
ここ栗東から中山までは距離があるので、昨日のうちに中山競馬場に入厩済みだそうだ。
実はヴァーミリアンとは弥生賞の前に行った併せ馬以降、一度も会っていない。
カネヒキリくん伝手に調教を頑張っていることと、俺のトンデモ話をほかの馬にも広めたことしか聞いてないのだ。
後半に関しては今度併せ馬する時にとっちめる予定だが、かなり心配そうにしていたと聞いたので、軽く体当たりする程度でおさめてやろうと思う。
確かに伝言ゲームは最悪だったが、元をたどればディープインパクトが途切れ途切れに伝えたのも悪いので。
そうそう、牡馬に広めたのはヴァーミリアンだけど牝馬に広めたのはシーザリオちゃんらしい。
……シーザリオちゃん!?!?
今度の併せ馬、3頭でやる必要があるみたいだな。
この伝言ゲーム下手くそなヴァーミリアンだが、目黒さん曰くちょっとガレてたとか。
ちなみに「ガレる」っていうのは「痩せてる」って意味。
前より馬体重が減って、調子はあんまり良くないようだ。
「ここまで全戦芝だが成績は悪くない。ただ昨年末のレースから馬体重も減ってるし出走期間も空いたから、そこらへんがどう響くかだな」
「ヴァーミリアンの血統的にはダート・芝どちらにも利きそうなんですよね?」
「そうだな。芝で走れることはすでに本馬が見せているし、母の方だと半兄のサカラートはダートで活躍した馬だよ」
飼い葉を貪りながら話を聞く。
最近やたらと草が美味いので食べ過ぎてしまうのだが、俺も出走まで後2週間くらいになったのでそろそろセーブしないとな。
「馬体重や輸送もまあ心配ではあるんだが、鞍上もなあ」
「乗り替わりがあったんでしたっけ」
「ああ。今まで乗ってた竹騎手から南村騎手に変わったんだよ」
乗り替わり。
俺はしたことないけど、人気の騎手を乗せている馬には度々あるらしい。
例えばディープインパクトの鞍上も竹騎手だが、この竹騎手はディープインパクト専属の騎手というわけではなく、今回のヴァーミリアンや俺の大親友・カネヒキリくんにも乗っているのだ。
仮にディープインパクトとカネヒキリくんが同じレースに出走する場合は、どちらかの騎手を変える必要がある。
これを「騎手の乗り替わり」と言うんだそう。
今回どっかで被ってしまったんだろうか?
普段は会うたび俺に性癖プロレスをしかけてくるヴァーミリアンだが、あれでちょっと繊細なところもあるのだ。
レースで怪我とかしなければいいけど……。
「よし、馬体もキレイになったぞ、サンジェニュイン」
お、ブラッシング終わりか。
いつもツヤツヤにしてくれてサンクス目黒さん!
「もう大丈夫ですか?」
「ああ、連れてっていいよ」
芝木くんじゃん。
中にも入らずにどうしたんだ。
いつもならブラッシング代わりますって言ってやってくれるのに。
馬房の扉を開けて貰い、手綱を引かれるより先に前に出る。
芝木くんの前に立つと、表情がいつもより冴えない気がしたけど気のせいだろうか。
だがそう思ったのは俺だけじゃないらしい。
芝木くんが来るといつも目黒さんの影に隠れてしまうイサノちゃんが、かなり心配そうな顔で芝木くんの顔を覗き込んだ。
「し、芝木さん……?」
「……うん?」
「元気ないですけど、また馬主から何か言われたんじゃ……」
馬主?
俺のか?
「あー……まあ、仕方ないことです」
「いや芝木くん、あれは芝木くんだけが悪いわけじゃないよ。テキもそう言っているだろう?」
「そう言っていただけるのは嬉しいんですけど……あの時、コース取りを間違えたなとは、思うんですやっぱり」
ああ、弥生賞でのことか。
芝木くん、アレは俺が力みすぎた結果の自業自得なんだよ。
そもそも俺がちゃんとゲートから抜けて先頭が取れてればなあ。
体力消耗したのも、中団につけた後にどうしても前へ行きたくて上手く折り合いが取れなかったせいだし。
コース取り自体は、芝木くんは俺を内に寄せて徐々にあげていこうとしたんだろ?
それを無視してぐいぐい前に引っ張った俺が悪いわな、うん。
だから気にするなよ芝木くん。
俺はいまピンピンだしさ、むしろ中団から差し返す脚が自分にあるんだと知れたから結果オーライみたいなところがある。
最悪飲み込まれても逃げ出せるってのが解ったのは大きいんだぞ?
主に精神の安定的な意味でな!
失うものはあったけど、得るものもあったってことだ。
ほれ芝木くん、顔をあげて。さ、俺に乗って乗って!
今日も元気に調教だぞ!
「……サンジェ。お前は本当に優しい馬だな」
もー、そんなこと……ある!なんてな。
はい手綱持って、テキんとこに行くぞ!
「……皐月賞も、お前に乗りたかったよ」
あん?乗るんだろ何言ってんだ。
そんな芝木くんは俺に乗れないみたいな……乗らないの?
「芝木くん」
「テキには、俺が主戦騎手だと言っては貰えました。けど、誰がサンジェの背中に乗るか、それを決めるのは馬主です。サイレンスレーシングです。俺は……皐月も、ダービーも、その後も、コイツの背には……」
そう言って俺の首筋に顔を押しつける芝木くん。
声は震えて、言葉は途切れ途切れで。
詰まった息は冗談には思えなくて。
それで。
俺の周りだけ、雨みたい。
2005年3月20日 中山11R フジTVスプリングステークス GⅡ 芝1800メートル
「なかなか雲は晴れませんが中山競馬場11R、良馬場の発表となりました。フジTVスプリングステークスGⅡを争うのは16頭。1番人気はペールギュントです。前走シンザン記念は1番人気に応えて見事1着。本レースでも好走を期待されています」
「体重はマイナス6キロですが馬体は堂々としていてトモの張りも良いように見えます。ここまでの全レースですべて馬券圏内に絡んでいますし、当然の1番人気と言えるのではないでしょうか」
「続いて2番人気は前走から3ヶ月経って久しぶりのレースとなりました、ヴァーミリアン。デビューから乗っていた竹騎手がトップガンジョーに騎乗しているため、本日は南村騎手に鞍上が代わっています」
「ラジオたんぱ杯2歳ステークスでは2着に1馬身差です。先行につけることができればまず外れないでしょう。気になるのは前走から3ヶ月経って馬体重がマイナス8キロ。ややガレているように見える点と、落ち着きのなさ。鞍上が替わった影響でしょうか」
「3番人気にはパリブレストが押されました。デビューは12月とやや遅めですが、クロッカスステークスと続いて2連勝。ここを勝って無敗で皐月に駒を進めて見せると陣営も自信を見せています」
「勝ち鞍は1600と1400なので距離が気になる点かもしれませんが、母父スペシャルウィークはダービー馬、距離適性は問題ないでしょう。この馬もやや先行で攻める戦法ですから、レースでは位置取りに注目したいですね。期待の1頭です」
ファンファーレが鳴り響き、振り落とされた旗を合図に、青々とした芝の上を馬たちが疾走していく。
マイクを握る実況の声は熱さを孕んで競馬場を包み、馬たちがゴール板を踏み越すその直前に、馬券の嵐として舞い踊った。
1着:ダンスインザモア
2着:ウインクルセイド
3着:トップガンジョー
・
・
・
14着:ヴァーミリアン
2005年4月17日 中山11R 第65回皐月賞 GⅠ 芝右回り2000メートル
「晴れ渡るような青空が中山競馬場を包みます。いよいよクラシック第1戦、皐月賞です。早速本レースに出走する有望な3歳馬たちを紹介していきましょう」
軽快なアナウンサーの声をバックに、一生に1度の大舞台を迎えた3歳馬たちが手綱を引かれて歩く。
1頭1頭、この日のためだけに生産者、調教師、厩務員、そして騎手に並々ならぬ情熱を注がれて生きてきた。
続く道は灼熱のダービー、大輪の菊花賞。
目指すは三冠、すべての冠を頭上に戴く── 最強の馬。
「──……これまで4戦2勝2敗、負けた相手はただ1頭。その1頭もまた、この競馬場にいる。鞍上はこれまでを共にした
白い馬体がターフに躍り出る。
その瞬間に競馬場を包んだ歓声は、口伝で、文字で、動画で。
あらゆる媒体で後世に残るほど大きく、大きく響き渡った。
「──……7枠14番、ここまで圧倒的な強さを見せつけ、無敗で駒を進めました。最後方から魅せる鬼の末脚。すべてを追い抜いた後、伸びる影を踏める馬はただ1頭。その1頭と勝負をしに来たのだと鞍上の
頭上から照りつける太陽が、鹿毛の馬体を金色に縁取る。
まるでこれこそ運命の馬。
この馬こそがレースを制するのだと言わんばかりに光り輝いていた。
完璧にも思えるその姿には、走る前から結果が見えているようにさえ思えた。
それは「サンデーサイレンス産駒VSサンデーサイレンス産駒」の、見飽きたレースになるはずだった。
この十数年、競馬界に強く根を張ったその存在。
またこいつの産駒か。
またこの産駒同士の戦いか。
零れるため息。やるせなさ。それを上回る「つまらない」と言う感情。
ブラッドスポーツと言えばそれがすべてだ。
しかし遠のく客足はなかなか戻らない。つまらない、と言う感情には打ち勝てない。
そのはずだったのに。
鹿毛のサンデーサイレンスと、白毛のサンデーサイレンスの戦い。
2005年4月17日、中山競馬場は、熱かった。
レースの前説はオリジナルです(爆死)
誰か競馬実況の資料書籍とか知ってたらメッセージくださいお願いですなんでもするから(なんでもするとは言ってない)
ちなみにスプリングステータス、皐月賞は下記サイトのデータをベースとしています。
フジTVスプリングステータス
https://db.netkeiba.com/race/200506020811/
第65回皐月賞
https://db.netkeiba.com/race/200506030811/
皐月賞の本番は「13.夢想 - 第65回皐月賞」です。
競走馬回を掲示板含めて5回やったので、次回はウマ娘回に入ります。
のでこの続きは明後日くらいです。
サンジェニュイン 牡3
いざゆかんクラシック
想像以上に栗東の馬たちに下手くそ伝言ゲームが広がっていた
カネヒキリくん 牡3
3日に1回が2日に1回になった
主人公が元気だってわかったので飼い葉食いもすっかり元通り
ヴァーミリアン 牡3
まだ主人公と再会できていないことでとんでもないことになってる
芝で初の大敗を喫してしょんぼり
ディープインパクトさん 牡3
皐月賞で再会
次回(明後日)ゲート前でひと悶着……?
芝木くん ヒト族 男
とんでもねえ……とんでもねえことになったぞ……
竹さん ヒト族 男
サンジェニュインがちゃんと皐月賞に出てきてホッとした
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side:ウマ娘 ー Ep.3
昨夜、階段から転げ落ちて救急車で運ばれた作者です。
更新できずすまん。
今回はウマ娘回。
そして次回が皐月本戦。
「もし、そこのお嬢さん。あなた、体調悪いの?」
「あっいいえ大丈夫です元気です、ココ邪魔ですよねどきま──!?」
食堂の窓から見えた一人のウマ娘。
どこからどうみてもスペシャルウィークですありがとうございます!
このうまむすワールドがアプリ版じゃなくてアニメ版時空だったのは予想外だったけど、今はそんなの関係ねえ!
スペシャルウィーク、話しかけるしかねえ!と勢いで食堂を飛び出して声を掛けた。
カネヒキリくんや付き合いの長いウマ娘の前では一人称もしゃべり方も競走馬時代のままで過ごしているけど、その他一般生徒の前ではなるべくツンと澄ましたちょっとお嬢様っぽいしゃべり方で通している。
というのも、普段のしゃべり方だと妙な輩── 8割は右耳リボンウマ娘だが ── に絡まれやすいのだ。
声色も意識してちょっと低めにし、お高くとまった感じの、ちょっと近寄りがたい雰囲気を醸すことで対策をしている。
お嬢様っぽい口調になったのはヴァーミリアンとか言う性癖ヤクザ……ごほん、チームメイトからのアドバイス。
結果として遠巻きでヒソヒソされたりガン見されたりはするものの、直接絡まれたりすることは大分減った。
ありがとう性癖ヤクザ、ありがとうヴァーミリアン!
と、心の中で感謝を捧げつつ、今目の前にいるスペシャルウィークを見る。
オレが声を掛けてから体感で5分くらいが経っているのだが、スペシャルウィークはオレを見つめたまま固まってしまった。
目ん玉乾いてしまうのでは?と思うくらい見開かれているし、口はあんぐりと開いている。
── この表情、山ほど見た!
コレは完全にオレに見蕩れている顔である。
急にこんな美貌を前にしたら固まってしまうのも必然か……こう思ってしまうほど自分の顔に自信付いちゃったのもどうかと思うが。
「お嬢さん?」
「はっ……す、すみませんあんまりにもキレイだったので宇宙が見えてしまい──!?」
宇宙。
新しい表現だな。
「はへ……」
「ちょ、ちょっと本当に大丈夫!?」
突然その場に座り込むスペシャルウィーク。
ぺたんと地面にお尻をつけた形になってしまっている。
トレーニングをしていたのか、それとも予定でもあったのか、ジャージだったのが幸いだ。
スカートだとその座り方はいろいろ見えちゃうからネッ!!!!
「立てる?」
「……すみません、驚きで腰が抜けちゃって……」
驚きすぎでは?
照れ臭そうに頬を掻くスペちゃんに視線を合わせるように、オレもその場にかがんだ。
「あなた、食堂を見ていたわね。誰かに何か用でもあった?」
食堂にはオレたちチーム・メテオ── オレやカネヒキリくん、ヴァーミリアンも入っているチームね!そのメンバーと、それから生徒会のメンバーがいる。
スペちゃんと他のメンバーに面識はないはず。
用があるとしたら生徒会のメンバーか?
オレがいるからと立てて貰った立ち入り禁止の看板だが、入ったら斬り捨て御免!されるわけではない。
もし他の子に用事があるんならオレが取り次ぎして……あわよくば仲良くなって、テイオーVSマック戦を最前列で一緒に応援させて貰おう。
「用と言いますか……あの、あのたぶん無理だとおもうんですけどぉ……」
「うん?」
もじもじと指遊びするスペちゃん。
は?かわいいな。
アニメとかアプリで見てたときも思ったけどスペちゃんのビジュアルと仕草、可愛さ百点満点が過ぎる。
かわいい……オレも可愛いがかわいいのベクトルが違う……。
「呼んでいただきたい方が、いまして……」
「どなたかしら。シンボリルドルフ会長?エアグルーヴ副会長?ナリタブライアンもいるけれど」
「あっ、いえあの、生徒会の方々じゃなくてですね……えっと、──……ュインさんを」
「うん?」
あんだって?
「さ、サンジェニュインさんを呼んでいただけますか──……!?」
急に立ち上がったスペちゃんにびっくりしながらも、真剣そのものの顔でオレを見下ろすスペちゃんの顔を見上げた。
なん……だと……!?それ、オレじゃないか!!
「そう……用件は?」
えーなんだろ、レースのことか?
最近はフランスでちょろっと走ったくらいで……あれって日本でも放送されたんかな?
あ、いやアメリカのレースか?テイオーVSマックはアニメ2期、確かこの時期はサイレンススズカがアメリカに行っている頃だから、それ絡みだろうか。
「よ、用件はあの……本人に直接……」
「うん。だから用件は?」
「え……だから本人……え?」
「え?」
目を丸くするスペちゃん。
どうしたんだそんな丸くして。
オレが首を傾げると、スペちゃんが震えながらオレを指さした。
「あ……え……さ、サンジェニュインさん……?」
「おー、……ごほん、ええ。わたくしがサンジェニュインよ」
そう、天を駆る美貌の馬、じゃねえやウマ娘とはこのオレ、サンジェニュインだ!!
立ち上がってスペちゃんと目線を合わせ── いやあれ、スペちゃん小さくない?
いやオレが大きいのか。
競走馬としてはカネヒキリくん、ヴァーミリアンと同じくらいおっきかったしなあ。
でかいのふたりに囲まれて過ごしてるから感覚麻痺してたわ。
スペちゃんも「えっデカ!?」って顔してこっち見てる。
考えてることすぐ表情にでちゃうんだなスペちゃん……。
「それで、わたくしに何か用があったのでしょう?」
「……はっ、またちょっと意識飛んじゃった……。あ、あの、はいそうです!用と言いますか、お願いといいますか」
ふむ、お願いとな?
お耳触らせてとか、デートしてとか、握手会開いてとかのお願いじゃなければなんでもオーケーなのだが。
オレが首を傾げてる間に、スペちゃんが意を決したように口を開いた。
「さ、サインをいただけますか──……!?」
サイン。
「わたくしの?」
「はい!!サンジェニュインさんのサインがほしいです!!」
めっちゃ食い気味に言うじゃん。
うーん、サインか。
サインね。
……サイン!?!?
エッオレのサインとかそう言うの喜ぶのヴァーミリアンとか熱心なファンくらいなんだが……。
スペちゃんはオレのファンだった!?
でもオレの顔わかってなかったっぽいし、誰かに頼まれてたのかな。
いやいいんだけどね……今までも左耳リボンウマ娘ちゃんからサイン頼まれたと思ったら右耳リボンウマ娘ちゃん用だった、とかよくあるから。
それはそれでちょっとフクザツなんだが、鼻息荒くガンギマリした目で見つめられながらサインするよりはマシだからな!!
「サインだけど、どこにしたらいいのかしら?」
「えっっ!!い、いいんですか!?」
「ええ。減るモノじゃないし、私的なサインはダメって言われてないもの」
トレーナーには「誰に渡したか報告だけはしろ」と言われてるからスペちゃんの名前は後で報告するが。
うちのトレーナーは見た目でいろいろ損しているが、オレたち担当ウマ娘に対しては「父親か?」「おじいちゃんかよ」という態度を取る優しい男だ。
オレと一緒に歩くと職質しかされないが本当に優しい男なのだ。本当だぞ!
トレーナーのパンツと一緒に洗濯しないで!とか言ったら大真面目にショック受けると思う。トレーナーのパンツと一緒に洗濯されたことないけど。
「それで、どこにしたらいいの?」
「あ、はい!……あっ」
その「あっ」は明らかにまずい「あっ」だな。
スペちゃんの顔にも「しまった──!!」って書いてるわ。
「もしかして書くものがない、の?」
恐る恐る頷くスペちゃん。
うーん、オレも今日は紙もペンも持ち歩いてないし。
あ、カネヒキリくん持ってるかな?
いやカネヒキリくんも今日は手ぶらだったはず。
書いておくから後日渡す、って言う風にするか……。
「── まったく、トレセン学園の生徒ともあろうウマ娘が、サイン色紙もサインペンも持っていないなんて、お笑い種でしてよ!!」
なんだあ?このお上品なヤクザみたいな声は……。
「そこの芋ウマ娘、これをお使いなさい」
「これは、サイン色紙とペン……!?」
「いつ何時サインタイムが訪れるかわからないもの……今後は忘れず常備なさい」
「はい!ありがとうございます!」
サインタイムってなんだよ、とか、お前はなんで常備してるんだよ、とかいろいろ言いたいことはあるけどあえて突っ込まないからな。
スペちゃんも返事するな。
この、赤髪を縦ロールにしたいかにもなお嬢様ファッションを着こなす目の前のウマ娘こそ、競走馬時代からニッチな性癖の圧を仕掛けてきた砂の王者その2、ヴァーミリアンである。
暇さえあればオレにサインしろと色紙片手に追いかけてくるので、こいつのサイン攻撃のおかげでサインスピードが上がったと言っても過言ではない。
ヴァーミリアンからスペちゃん、スペちゃんからオレに渡ったサイン色紙を黙々と仕上げる。
「あなた、サンジェニュインのサイン色紙は── それすなわち聖遺物ですわ」
「せいいぶつ」
頭おかしいのも過言ではない。
というか何言い出してるんだお前は。
「サンジェニュインとはエンジェル。そのエンジェルのサインなのですから当然ですわ。……ゆえに、そのサイン色紙を汚したり失くしたり汚したりしてごらんなさい。どうなるか、わかっているわよね」
「ど、どうなるんですか……!?」
聞くな。
どうもならん。
「天罰が下る……いいえ、わたくしが『下す』わよ。覚悟なさい」
「てんばつ……は、はい!失くさないようにします!!」
ヴァーミリアンが下すならそれはもう人為的なものでは?
オレは訝しんだ。
というかスペちゃんに変な思想を植え付けるな!
「ヴァーミリアン、この娘はわたくしとお話しているのよ」
「あら、失礼。見慣れないウマ娘とお喋りしてるものですから……それにそろそろお時間ですわ。サインが済んだのなら用はもうないでしょう」
確かにサインは書き終わったが。
後は宛先だけな。
「あなた、このサインは誰宛かしら」
「あっ、宛先はスペシャ── うっ!」
「ちょっと!?」
自分の名前を言いかけて自分で頬を打つスペちゃん。
乱心か!?
「すみません口と手が勝手に」
口と手が勝手に!?
「宛先はト、トトトトト」
「ト?」
トトトトトさん?
そんなウマ娘いたっけ。
「ごほん。……宛先は、ト、トウ、トウカイテイオーさん、宛てに、お願い、……します!!」
ギリギリまで考えたな。
はいはい、トウカイテイオーさん宛てね。
……トウカイテイオー!?!?
アイエエエ!?!?テイオー!?!?テイオーナンデ!?!?
「テイオーさんはサンジェニュインさんの大ファンなんです!」
「トウカイテイオー、聞いたことがありますわね。確かシンボリルドルフによくひっついていた娘では?サンジェニュインのサインを欲しがるとは……見所のある娘ではありませんか」
「……そう」
いや「そう」じゃないんだわオレ。
動揺が一周回ってそっけない感じになっちゃったけど。
トウカイテイオーがオレを認識していたとは……まあ凱旋門とか取ったし知ってはいるかな?とは思っていたけど。
大ファンとか……えへへへ……。
スペちゃんを挟んだ形とはいえトウカイテイオーにサインを書くことになるとはなあ。
人生何があるかわかんねえな!!
「……『トウカイテイオーさんへ サンジェニュインより』── これでいいかしら」
「はい!!ありがとうございます!!家宝にします!!いや私じゃなくてテイオーさんがですけど……!!」
家宝にすな。
「奉りなさい」
「いや奉んな……ごほん、喜んでいただけたようでなにより。それでは、わたくしたちはここで。移動しなくてはいけないの」
「あの、あのサイン本当にありがとうございます!!次のレースは絶対に見に行きます!!」
次のレースも海外なんだが大丈夫か?
……デカいレースだからテレビ中継があるか。
スペちゃんも見るなら、ド派手に決めておきたいな。
大逃げ?馬鹿野郎そこに右耳リボンウマ娘がいたら大逃げ以外に選択肢がないやろがい!!
「スペシャルウィークさん、ごきげんよう」
「おぉ……ご、ごきげんようです!……ん?あれ?名前教えたっけ?」
ヴァーミリアンを伴って食堂に戻る。
扉をくぐる前に、あ、と思い出して振り返った。
「チーム・スピカの次のレース── きっと見に行くわ」
楽しみ過ぎて笑ってしまった。
いやあ、スペちゃんが食堂前で蹲っててくれて助かった。
おかげでここがアニメ時空だってわかったし、であればスピカのレースはなるべく生で見たい。
スケジュール調整して絶対見に行くぞ~~!!!!
「……意外ですわ、あなたが他のウマ娘のレースを見に行く、なんて言うとは。それに、自ら外に出て話しかけにいくなんて」
ヴァーミリアンが何故か拗ねた声でそう言うので、オレは首を傾げて口を開いた。
「は?そんな意外か?」
「意外にもほどがありましてよ。あなたの世界はてっきり、カネヒキリと、このチーム内で完結しているものとばかり……いつからあの娘を知っていらしたの?」
うーん、前々前世から!
違った前々世からだな。
まあそんなこと言ったら頭おかしいやつでしかないんだが。
「さあ。ずっと前からかな」
「──……スペシャルウィーク、ねェ。覚えたぞその名前」
「なんか言った?」
「いいえ。ただあなたが気にしているウマ娘のレース……わたくしも気になるだけ、ですわ」
1期のレースも最高オブ最高なのだが、2期レースもこれまた手に汗握る最高のレースだった。
語彙力が完全に溶けてしまったので最高としか言えなくて悔しい。
テイオーとマックのレース、栄光と挫折、苦悩、ツインターボ師匠のレース、出てくるウマ娘たちの葛藤、走り、青春、そのすべてが。
この目で、この耳で、この心で!
感じられるなんて、奇跡か?
「楽しみだなあ」
カネヒキリくんに貰ったリンゴジュースを飲みながら、オレは見れるかも知れないレースに胸を弾ませていた。
「エンジェルちゃんの目に映るウマ娘が雑魚じゃ話になんねえ。そうだよな?」
「……この娘はターフの走者だぞ」
「ハッ、何のためにアタシたちが部門ごとに分かれてると思ってんだカネヒキリ。ターフを走る者には、同じ者を宛がうのが常だろうが」
ヴァーミリアンが頬杖をついて見つめる、視線の先。
ストローに口をつけ、小さな子供のようにちゅうちゅうとジュースを飲む、そのあどけない姿。
仲間にしか見せない、いや仲間にしか見せることができない「ありのまま」のサンジェニュイン。
汚れなき美貌の天バ。
そのレースに、ひとつの憂いもあってはならない。
その生活に、ひとつの危険もあってはならない。
「出番だぞ……オルフェーヴル」
黒いマスクをつけたウマ娘が振り返る。
表情の全貌を知ることはできないが、その目つきは穏やかで、見る者を落ち着かせた。
「勝てば良いんですよねっ?」
「ああ。完膚なきまでにたたきのめしてやれ。……アタシたちの方が強いって、思い知らせてやれ」
ヴァーミリアンの目は赤く、赤く燃えていた。
「サンジェニュインにふさわしいかどうか……見極めてやるよ、チーム・スピカ!」
そんなヴァーミリアンを見つめる、ふたりのウマ娘がいた。
「……ヴァーミリアンちゃんってどうしていつもヘンな方向にいっちゃうんスかね」
「うーん、小さい頃からサンちゃんさんがカネちゃんさんにしか懐かないから、じゃないですかあ?アンちゃんさんったら、出会ったタイミングは同じなのにいつまでも気安い仲になれないから……」
一人は鹿毛の髪の毛をポニーテールにしたウマ娘だ。
いかにもスポーツ娘らしいはつらつとした表情でケーキを口に運んでいた。
もう一人は青毛をハーフアップに、優雅に紅茶に口をつけている。
丁寧な口調ながら、声の調子はからかい混じりだ。
「嫉妬っスか、ジェラシーってやつっスか!」
「右耳リボンウマ娘の嫉妬は嫌ですねえ」
本バたちはひそひそ話のつもりかも知れないが、ヴァーミリアンの耳にはしっかりと届いていた。
赤毛が逆立ち、目尻も上がっている。
ゆらゆらと揺れ動く様はまるで幽鬼のようでさえあった。
「ラインクラフト!シーザリオ!お黙り!!」
「怒ったっス~~!!」
「きゃっきゃ!」
「これは遊びじゃなくってよ~~!!!!っぐえ!!」
逃げるラインクラフトとシーザリオを追いかけ回すヴァーミリアンの襟を、何者かがつかんだ。
その何者かの顔を見た瞬間、のんびりとその光景を眺めていたオルフェーヴルが視線を逸らす。
「貴様ら、ここを、どこだと、思っているんだ……?」
シーザリオは言う。
まるで冥府のそこから響いてきたかのような声だった、と。
「離しなさいなエアグルーヴ~~!!」
「ここで離すバ鹿がいるか!!ヴァーミリアン、ラインクラフトにシーザリオ貴様らもこっちに来い!!!!」
オルフェーヴルは後に「地獄でしたね。ヴァーミリアン先輩の怒りとかそんなものはただのままごとでした。アレが『ガチ』の怒りってやつですよ」と恐怖に顔を強ばらせながら語ったという。
その頃、ヴァーミリアンたちの喧噪をバックミュージックに、サンジェニュインはカネヒキリとのティータイムを楽しんでいた。
「これ美味しいねえ!」
「気に入ったか?」
「うん!」
テーブルに並ぶスイーツはすべてカネヒキリのお手製である。
サンジェニュインの満面の笑顔を正面から浴びて死にかけのカネヒキリを見ながら、おそらく最も得をしたウマ娘はカネヒキリだろうな、と最後まで傍観に徹していたシンボリルドルフは苦笑いを浮かべた。
ディープさん以外のチーム・メテオ、だいたい登場してて芝。
サンジェニュイン ウマ娘
まだスペちゃんが右耳リボンウマ娘だという事実を忘れている
ガバガバなので自分の発言・行動がのちに何を引き起こすか深く考えてない
考えろ!!!!
カネヒキリくん ウマ娘
今回も得をした
ちょっと複雑な気持ちはあるけどサンジェニュインが元気だしな~と思ってる
でも何かあれば一番厄介なことになりそうなウマ娘No.1
ヴァーミリアン ウマ娘
お嬢ヤクザでありただのヤクザでもある
荒れた口調が素であり、お嬢様口調は『サンジェニュインという美貌の天バ』の傍にいるウマ娘として相応しい口調を追求した結果
性癖のこだわりが強すぎるのでたまに厄介な事態を引き起こす
根はただただ仲間思いで愛情深い娘
ラインクラフト ウマ娘
競走馬回未登場
後輩キャラのようなしゃべり方をするが同年代
ヴァーミリアンやカネヒキリの過保護にあきれつつ、楽しいな~と思っている
シーザリオ ウマ娘
口調は丁寧だが人をからかうのが好き
過干渉すぎでは?と思いつつもサンジェニュインが気にしてないしいいか、と放任している
オルフェーヴル ウマ娘
チーム・メテオのド新人
サンジェニュインに続く凱旋門賞制覇を目指して特訓中
ヴァーミリアンに世話を焼かれており、よく行動を共にしている
メテオ内では非常に従順な後輩だが、外に放つと……
スペちゃん
今回ギリギリだったウマ娘
理性と友情が勝りサインの宛名はトウカイテイオーにしたがたぶん渡すときも理性と本能が格闘することになる
エアグルーヴ
チーム・メテオはもっとエアグルーヴさんに感謝したほうがいい
シンボリルドルフ
レースのこととなれば厳しく指導するが、それ以外は割と放任
おじいちゃんポジションに収まっている
メテオのトレーナー
一歩進むごとに職質を受ける容貌
ウマ娘たちへの愛情は深く、行動は父親とかおじいちゃんみたいな感じ
マックイーンをチームに入れたかったがスピカに入ってしまったのでしょんぼりしてる
※ちょっとしたお願い※
誤字脱字の多さでお馴染み作者ですが、
感想欄で誤字報告を頂くと見逃してしまう、というガバガバなところがあります。
お手数おかけいたしますが、もし誤字脱字を見つけた場合は「誤字報告」機能を利用してお知らせ頂けると大変助かります。
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13.夢想 ─ 第65回皐月賞
1万文字超えてて笑っちゃう。
文字数配分できないのがバレてしまったな。
今後は5000前後でやりたい(できるとは言ってない)
レースシーン、クソ難しすぎぃ!
サンジェニュインと言う架空馬がログインしたことで、パドックでの様子、返し馬での様子、ゲート入りでの様子などが史実と異なる馬たちがいます。
あらかじめご了承ください。
それにしても前話(ウマ娘回)との温度がひどくて書いてる作者が風邪引く。
※作中に登場する「柴畑喜臣騎手」のモデルは名前からどなたか連想できると思うのですが、史実(現実?)ではそこまで口数の多い方ではないとのこと。性格と口調、口数に関しては創作ということで見逃してくださいお願いします。※
乗り替わりなんて嫌だ。
俺がそう駄々を捏ねたところで通じはしない。
でも「仕方がない」と割り切るには、俺は長い時間、芝木真白という騎手と共に過ごしてきたのだ。
「サンジェ、柴畑さんは乗りこなしが上手い人だから、中段につけても上手く誘導して貰える。無茶なんかさせない。柴畑さんを信じて、まっすぐ走るんだぞ」
俺に騎乗した最後の日、芝木くんはそう俺に言い聞かせるように言った。
でもそれは、芝木くん自身が自分に言い聞かせているようでもあった。
離れ際、つい袖を食んで引き留めた。
芝木くんは一瞬だけ瞳を潤ませて、もう行かないとと繰り返す。
でもなかなか離せない、離したくない。
食んだまま芝木くんを見つめて、どうしても行ってしまうのかと目で訴えて。
一緒に過ごす内に俺の感情を汲み取るのが上手くなったから、何で引き留められているのかわかっているんだろう?
俺の目も潤んでいるんだろうな。
泣きそうなんだよ。
泣いて背に乗ってくれるなら泣きわめいたけど、きっとそうじゃないと解っているから泣かなかった。
「お前は本当に賢い馬だ、サンジェ」
そう思うなら解ってくれよ、芝木くんじゃないと俺、よくわかんないよ。
だいたい、芝木君くんが言ったんじゃないか。
俺はGⅠも勝てる馬だって、世界初の白毛のGⅠ馬になれるって。
芝木くんが言ったんじゃないか……。
「サンジェニュイン」
目黒さんが俺の背を撫でる。
聞き分けてくれと、手のひらが言う。
ああ、もう時間だ、別れの時間だ。
あと少しで、新しい騎手が来るから。
「乗せてくれてありがとう、サンジェニュイン」
芝木くんがそう言って俺の顔を撫でるから、俺は食んでいた袖をそっと離した。
濡れた袖を見て芝木くんが笑う。
そしてハの字になりかけた眉を引き締めて、俺に笑顔を見せた。
「俺の夢はずっと、ずっとお前だよ」
栗東トレーニングセンターにも春が来た。
桜並木から風が鋭く吹いて、桜の花びらが舞う。
舞って、舞って、舞い散って。
俺は実感した。
春は別れの季節だ。
吹き荒れる花の嵐が、積み上げた夢を連れ去るから。
芝木くんが離れて1時間。
テキが見慣れない男を伴って帰ってきた。
穏やかな顔立ちをしていて、年下のイサノちゃんにも深々と頭を下げるので、物腰も柔らかそうである。
俺の新しい鞍上は優しいおっちゃんのようだ。
いや、まだ40手前だから、お兄さんと言った方が良いのだろうか。
「
「こちらこそ。柴畑騎手、サンジェニュインをよろしくお願いします」
芝木くんの次の騎手として、サイレンスレーシングが依頼した柴畑さんは関東のリーディングジョッキー ── かなり上手い騎手らしい。
とにかく馬を損なわない競馬をする、と評判なのだとイサノちゃんも、別れ際の芝木くんも言っていた。
馬を損なわない、それすなわち故障をさせない柴畑さんは、調教師や馬主からの信頼が厚いようだ。
「しかし、サンジェニュイン、レースでも見ましたが、目の前にすると圧倒されるほど白いですね」
「夏場は少し眩しいくらいですよ」
談笑の合間に柴畑さんを見る。
174センチもあった芝木くんと比べると、数センチは確実に低いだろう身長。
体重だって芝木くんより軽いだろうな。
腕前は、そりゃデビュー3年目と十数年やっている騎手を比べる方が酷だろう。
まったく正反対の騎手が選ばれた理由なんて、わかりきっている。
決して壊さない競馬、安心安全の実績、厚い信頼、それら全部が、俺のために選んだ騎手であることくらい、わかってるんだよ。
でもそこではない『感情』の部分が、俺を意固地にしていた。
「今日は軽い運動からお願いしようと思います。まず慣れるのを第一に。普段の調教では見習い騎手が乗って走っていますが、追い切りを含め、サンジェニュインは全レースを芝木くんと出走したので、他の騎手に不慣れです」
「わかりました」
目黒さんが俺の手綱を引く。
今まで芝木くんが乗っていた鞍に別の騎手が乗るのだと、改めて思うと身体が上手く動かない。
まるで身体が感情に縛られているみたいだ。
「サンジェニュイン……」
ごめん、目黒さん。
それから柴畑さん。
決して乗せたくないわけじゃない。
乗せないわけにもいかない。
わかっているんだけど、今はどうしても身体が言うことを聞かないんだ。
俺が申し訳なくて首を下げると、その横を目黒さんが撫でた。
「ゆっくりでいいですよ。知らないヤツが背中に乗るんだ、嫌がるのは当然です。マシロには特別賢い馬だって聞いてます。皐月まではあと3週間ほどですが、その間に少しでも認められるように頑張りますよ」
宥めるように俺を撫で続ける目黒さんに、柴畑さんはそう言って笑った。
笑うと目尻に皺ができて、それが柴畑さんをより温和に見せた。
……この人が、威張り散らすような騎手だったらよかったのに。
そうしたら泣いて暴れて、芝木くんじゃなきゃ走らないからなって駄々を捏ねたかもしれない。
けど柴畑さんはどこまでも落ち着いていて、ただまっすぐと、俺の目を見ていた。
「芝木くんとは親しいんですか?下の名前で呼んでいるようですが」
「ああ。マシロの親父さんが医者なんですよ。今はもう畳まれているんですけどね、美浦に近いところで開業してて、騎手になりたての頃はよく世話になったんです。マシロがほんの豆粒だったときから知ってますね」
「芝木くんが関東出身なのは聞いてましたが、そういった繋がりだったとは」
芝木くんは暇さえあれば俺に顔を見せて、よく家族の話をしてくれた。
3兄弟の末っ子で、上2人の兄とは年が離れていること。
どちらも自立していて、片方がお父さんの病院を継いで今は東京に居城を構えていること。
家の一部が病院になっていたから、患者が一番の遊び相手だったこと。
その中でも特に、
芝木くん、この柴畑さんが、芝木くんの憧れたお兄さんなのか?
俺が見ていることに気づいて、垂れ目を丸くした柴畑さんがまた笑った。
少しだけ、俺の身体から力が抜けた。
あれから柴畑さんは頻繁に俺の下に顔を出すようになった。
普段は美浦── 関東の方がツテが多いから、そちらで乗ることが多いのに、ほぼ毎週、時間があれば3日連続で俺に乗ったりする。
急な乗り換えだったとはいえ、乗る頻度の高さを心配したテキが柴畑さんに声を掛けると、柴畑さんは「馬のやる気と本気を引き出すのが仕事なので」と笑った。
調教や併せ馬で俺に乗っている
賢い馬イコール拘りが強い、というのが一部の間では実しやかに囁かれているそうで、柴畑さんは俺の癖を把握するのに余念がない。
その癖関連で最近知ったが、俺は走るときに馬体全体が前のめりになりがちらしい。
もしトップスピードで走ったときに躓きでもしたら首から地面に埋まるだろう。
そうならないよう、レース中では芝木くんがきっちりと綱を持って、前のめりになりすぎないように制御していたようだ。
弥生賞で倒れたときに、首から突っ込まずにいられたのも、馬体に外傷がなかったのも、芝木くんがギリギリまで俺の綱を持っていたからだと柴畑さんは考えている。
俺もそうだと思う。
起きたとき、身体のどこも痛くなかった。
獣医さんも「減速していたとはいえ走っている状態で倒れたのに外傷がないのは奇跡」って言われた。
自分は右足を怪我したのに、芝木くんはそれでも極限まで俺の綱を手放さなかったこと。
それが何よりも、芝木くんの俺への深い愛情を感じさせてくれた。
柴畑さんは頻繁に会いに来たり乗ったりするだけじゃなくて、俺に良く話しかける人だった。
他の馬に対してもそうなのかはわからないけど、乗ってるときや、普通に手綱引いて横並びの時も、世間話だったり他の馬の話だったりをしてくれた。
今日の調教が終わって馬房で飼い葉を食べている間も、俺に今週のレースで騎乗する馬について延々と話しかけてくる。
相手は馬なのに、真面目にレース内容の相談までしてくるから疑問に思ったイサノちゃんが聞くと、柴畑さんは「これがマシロとの約束なんだ」と教えてくれた。
「約束、ですか?」
「うん。元々ね、クラブの方も乗り換えの騎手は俺で、って最初から決めてた訳じゃないんだよ」
えっ、そうなのか?
俺は飼い葉を口からポロリと落として柴畑さんとイサノちゃんの話に集中した。
「弥生賞はね、俺もあの場にいたんだよ。ブレーヴハートに乗ってたんだ」
ブレーヴハート。
確か弥生では先段にいた馬だったはずだ。
芝木くんと一心同体、覚悟決めてイッキに突っ込んでいったときに躱した馬。
そうか、あの馬の鞍上は柴畑さんだったのか。
「普通逃げ馬が出遅れるとね、やる気なくしてダレるか、暴走してフラフラになるか。ともかく、好走するケースは稀なんだよ。だけど弥生賞のサンジェニュインは、前へ前へとは行きたがっていたものの、ふらつくことなくまっすぐと走り続けていた。躱されたときに思ったのは、あっこいつ無茶しやがって、じゃなくて……こいつ、上手くなったなあ、だったよ」
本当にふらつきなんて感じなかった。
俺の綱は芝木くんがしっかり握っていたし、鞭はただ、前へ前へと後押ししてくれた。
「マシロは、そりゃ新人賞も取ったり光るものは持ってたんだが、とにかく馬の自由にさせて自分からは勝負をなかなか仕掛けない、仕掛けどころがズレる悪癖があったんだけどな。弥生はまさに、ここだという仕掛けどころをピタリとハメてきたと思ってる。たぶん、あの場面で仕掛けなかったらディープインパクトとの競り合いすらできなかったんじゃないかな」
俺もそう思う。
あのタイミングじゃなければ、後ろから追い込んでくるディープインパクトに追いつくどころか、かなり差をつけられていた可能性がある。
それに、下手したらディープインパクトとの競り合い以前に、掲示板入りさえできない可能性もあった。
そんな中で覚悟を決めて鞭を打ってくれた芝木くんは、やっぱりすごいんだ。
「……無事だったのは結果論だ、と言われればそれまでだけど、俺からしてみれば、あの瞬間の1頭と1人、まさに『人馬一体』だと思ったよ」
その柴畑さんの言葉が、俺の胸にじんわりと響いた。
なあ、芝木くん、どうして今この場に居ないんだ?
俺のせいで、俺の位置取りが悪くてごめんなって謝っていた芝木くん。
出遅れたのは俺が隣に気を取られていたからだ。
体力を消耗したのは、コース取りを考えていた芝木くんを無視して俺が前へ行こうとしたからだ。
それでも俺の望みに沿うよう、必死に鞭を打って前へ前へ、よれないように首を支えてくれたのは芝木くんだ。
他の誰でもなく、あの瞬間、もっとも俺の声を聞いてくれたのは芝木くんなんだよ。
「サイレンスレーシングから依頼を受けて、すぐに「はいわかりました」とは応えられなかった。この馬はマシロのお手馬だし、実は同時期にビッグプラネットで皐月に出てくれないかっていう別の打診があって、俺はそれと迷っていたんだ」
「ビッグプラネットというと、同じ栗東の」
「ああ。それでどうしようか迷っていたときに、マシロから電話が来たんだ」
『柴畑さん、もし、もし迷っている理由が俺を気にしてのことなら、迷わずサンジェニュインに乗ってください』
『いやしかし、サンジェニュインはお前のお手馬だろ?当日レースが被ってるわけでもあるまいし……』
『サンジェは!……サンジェニュインはGⅠを、クラシックを取れる馬なんです。あいつはそれだけ強い馬だ。でも、でも俺が鞍上では力になれない。弥生の時みたいに、あいつをターフに沈めてしまうかもしれない』
「弥生でのことがよっぽど記憶に残っていたんだろうな。直後の取り乱しの酷さから、これはしばらく引きずるだろうなとは思ってはいたんだが、想像以上に追い詰められていたんだろう。レース後にちゃんとケアしてやるべきだったと、今になって思うよ」
『……勝手なことをしたのは解っていますが、サイレンスレーシングに乗り替わりに柴畑さんを推薦したのは俺です』
『なんだって?』
『お願いです。サンジェニュインに乗ってください。あの馬はもっと上へ行くんです。高いところへ行くんです。その場所まで、あいつを導いてやってください』
「あんまりにも真剣だったから、人の知らないところで勝手に推薦するな、とも怒れなくてな。ビッグプラネットが皐月を回避してNHKマイルのほうに出るって決まったことも重なって、俺はサンジェニュインの鞍上を引き受けることにした」
俺は涙が出そうになって、それでも必死に耐えた。
いま泣いたら、あの時泣かずに笑った芝木くんに笑われる気がした。
「そんときね、あいつ自分勝手に俺を推しておいて、じゃあ俺が乗り替わりますってなった途端、約束してくださいなんて言い出してな」
柴畑さんがおどけたように肩をすくめた。
『柴畑さんが思う何十倍も、サンジェニュインに話しかけてください』
「あいつは賢い馬なんです、言葉全部が通じなくても、こっちの気持ちは確実に伝わってる。何度でも、例え理解できないことだろうと、なんでも何度でも話しかけてください、ってね」
「それは……芝木さんらしいですね……」
「やっぱりあいつもサンジェニュインに頻繁に話しかけてたの?」
「それはもう、世間話から何まで、ずっとしゃべり続けてましたよ」
言葉のキャッチボールなんてなかった。
けど、確かに俺と芝木くんは、話をしていた。
とてつもなくくだらないことから、ド真面目なことまで、なんだって。
「俺自身は、そこまで口数が多い方じゃないから、どんなこと話せば良いんだと思って思いつくもの全部口に出してるだけなんだけどね、サンジェニュインは聞き上手だからついついレースの話までしてしまう」
「口数多くないって……実際にお会いするまでは無口な方だとは聞いてましたが、なんというか……良い意味で裏切られたといいますか」
「えっ、そう……?口数はあんまり……人前だと」
「たぶんですけど、柴畑さんが思っている以上に口数、多いと思います」
それはそう。
思わずフフッと笑ってしまった。
柴畑さんは口数が多い。
俺の前と、それから芝木くんの話をしているときは。
「自分の息子じゃないんだけど……似たようなものだと思ってる、からかな」
少し照れ臭そうにしながら、柴畑さんが話を続ける。
「約束通りにね、会うたび会うたび話しかけ続けたら、マシロが言う通り耳が完全にこっちを向いてるし、日を追うごとに俺に慣れてきてるなあ、ってわかるんだよ。話してる内容が伝わってなくたっていい。ただ、俺とサンジェニュインの1人と1頭が向き合うっていうのが大事なんだなって改めて思った。……この年になって、15歳も年下の騎手に気づかされるとは」
俺もまだまだだな、と言いながらも、柴畑さんは嬉しそうだった。
小さな子供が大きくなった姿を見る、親のような顔をしていた。
それも一転して、挑発的な表情に変わる。
「でも俺だって、懇願されたからとか、先に打診されてた馬が回避したから、っていう理由がすべてじゃないよ。俺自身が勝ちたいと思ったからだ。クラシックはまだ取れてない。諦めたわけでもない。数奇なめぐりあわせではあるけど、勝てるかもしれない馬に乗れる、チャンスが来たとも思ってる」
柴畑さんが俺をじっと見つめる。
「俺はお前と皐月賞、勝つつもりでいるぞ、サンジェニュイン」
まるで、俺に宣戦布告するみたいな、強い声だ。
その声に、言葉に、俺は芝木くんがいないこの2週間を振り返った。
テキたちが心配するほど俺に乗ってくれた柴畑さん。
絶えず俺に話しかけてくれる柴畑さん。
俺のブラッシングをしてくれる柴畑さん。
俺にリンゴをくれる柴畑さん。
俺は強い馬だと撫でてくれる柴畑さん。
全部、芝木くんから柴畑さんへ繋いだナニカ。
俺の顔の横に添えられた手に、そっと頭を乗せた。
自分から柴畑さんに触れるのは初めてだった。
手のひらから狭まった視線の先で、柴畑さんがまた目を丸くしている。
そのままじっと見つめていると、目尻に皺が寄って、眉が下がっていく。
どこまでも穏やかな笑顔を見て俺は……俺も、嬉しいなと思えるようになった。
一番に背中に乗せたいのは、やっぱり芝木くんだ。
けど今は、今は柴畑さんを背に乗せて、風のように駆け抜けたいとも思う。
馬房の扉をかじる。
イサノちゃんが「外に出たいの?」と困ったような顔をするから、出してくれと再びかじると、静かに扉が開いた。
「どうした、サンジェニュイン」
柴畑さんの周りをゆっくりと回る。
この人に俺からアクションを返すのも、もしかしたら初めてかもしれない。
2週間も一緒にいたのに、意固地なやつって思われてるだろうな。
「サンジェニュイン?」
身体を軽く寄せる。
柴畑さん、と視線で呼ぶ。
春は別れの季節だ。
でも、きっと出会いの季節でもあったんだろう。
今日も桜並木から揺れる花弁が地面を彩る。
ようやく盛りを迎えた桜から舞う、眩いほどの花嵐。
それは連れ去った夢を抱くように、背中を押す風になった。
2005年4月17日 皐月賞。
俺は、2人の騎手を乗せて走る。
お守りのように馬券を握りしめ、視線を前に向けた。
今日は3歳クラシックレースの一冠目、皐月賞が開催される日だ。
北海道から千葉・中山競馬場まですっとんだのは、
「さあ返し馬── 6番のサンジェニュインがちょっと他馬に絡まれている、のでしょうか?」
「あれは14番のディープインパクト、と、5番のヴァーミリアンですね。少し後ろで近づきたそうにしているのはアドマイヤジャパン、鞍上の縦山騎手が押さえています」
「なぜかピタリとサンジェニュインの横に付けているディープインパクトとヴァーミリアン。3頭の鞍上が離そうとするのです、が……ヴァーミリアンが離れたがらないのか馬体を揺らしています」
「あ、ディープインパクトが離されていきますね。かなり嫌がっているようです」
白毛の馬を挟む鹿毛と黒鹿毛はターフによく映えた。
それぞれの鞍上がディープインパクトが
厩務員も間に入って馬たちを引き離そうとする。
挟まれているサンジェニュインは実に堂々とした、どこか大人びた落ち着きを持っていた。
両隣が暴れている分と、それから馬主贔屓も相まって、どの馬よりも格好良く見えた。
つい馬主贔屓と言ってしまったが、俺はしがない一口馬主である。
親父が個人馬主だった縁を辿って、贔屓にしていた社来系のサイレンスレーシングで細々と馬に出資していた。
馬には詳しくなかったから、クラブから薦められる馬に金を出して、ほどほどに勝てればいいなという程度。
特に競馬に強い興味があるわけではなく、株などと同じ、投資のような感覚だった。
そんな俺が、自分自身で選んで出資した馬が、サンジェニュインだった。
「各馬がいよいよゲートイン。一生に一度の皐月、泣いても笑ってもこれっきりのレースが始まろうとしています。ゲート前ちょっと騒がしいか、アドマイヤフジが一度くるりと回りますが鞍上の福沢、上手く誘導しました」
「マイネルレコルトもスーッと入っていくのですが、3枠5番のヴァーミリアン、しきりに隣のサンジェニュインを気にしてなかなかゲートに入りません。大丈夫でしょうか」
黒鹿毛の馬体が何度も振り返る様に、見ていた観客の反応は半々。
おそらく馬券を握っているだろう男たちがその落ち着きのなさに天を仰いでいたり、方や子供連れが「かわいいね」と囁きあったり。
反応はそれぞれだが、異口同音に「今年のクラシックはいつもと違う」と口にしていた。
「──なんとか収まりましたがゲート内から首だけ振り返っていますね。そうしてる間に何故かパドックで馬っ気を出していた7番ペールギュントも興奮が治まってきたか、大人しく誘導を受けています。……奇数最後は17番スキップジャックがするりとゲートに収まったので偶数組も動き出しました」
「トップガンジョーは竹騎手がディープインパクトを選んだため大牧騎手に乗り替わりましたが、こちらは暴れる様子もなく落ち着いています。コンゴウリキシオーに続くように6番サンジェニュインも収まると、隣のヴァーミリアンもようやく前を向きました」
「サンジェニュインが入ってくるのを待っていたのでしょうかね」
ゲートの向こう側に白い馬体が見えて、俺は思わず笑みをこぼした。
サンジェニュインには一目惚れだった。
出資のカタログを渡されて、今回もオススメの馬に出しますよと、その一言を言うほんの1秒前。
めくったページにサンジェニュインがいた。
白い馬体が珍しかったわけじゃない。
確かに白毛は珍しいようだけど、馬の毛並みに強い興味のなかった俺にとっては、そこは重要ではなかった。
俺が、絶対にこの馬に出資しようと思ったのは、その馬と目が合ったと思ったからだ。
写真越しに何を、と思われるのは解っていた。
実際にサイレンスレーシングのスタッフには怪訝な顔をされた。
けど、本当に目が合ったのだ。
写真の向こう側から、視線を逸らすなと言わんばかりに丸く、力強い目をしていた。
サンジェニュインの募集価格は2000万円。
1口50万で40口の募集。
この皐月賞にはサンジェニュイン以外にもサイレンスレーシングの馬が出走しているが、その中では最安値だろう。
隣ゲートのヴァーミリアンで2400万、7番のペールギュントとローゼンクロイツは共に6000万。
1口単価も60万と150万で、ヴァーミリアンとでさえ10万も違う。
サンデーサイレンスの初年度産駒で皐月賞馬・ジェニュインと全く同じ血統を持ちながら、その募集価格が他馬と比べても低い価格だったのには訳がある。
母馬が未出走馬であること、7月生まれであること、母馬の育児放棄による人工育成だったこと。
回収率を考えると、と暗に考え直せと言うスタッフに、それでもこの馬に出したいと押し通した。
この馬が良かった。
この馬が走るところ見たかった。
理由はそれだけで十分に思えた。
「14番ディープインパクト、返し馬ではやや気を揉みましたが、さすがは絶対の支持率、1番人気の貫禄ここにありか落ち着いた脚運びです」
この鹿毛とは今回が3戦目だな、と馬券を握り直す。
1戦目は新馬戦、2戦目は弥生賞。
何れもハナ差で惜敗した苦い相手だ。
思い出すのは新馬戦で涙を流す横顔と、弥生賞で芝に伏せる姿。
特に弥生賞には胸が締め付けられる思いだった。
無事の知らせを受けるまでの数時間、生きた心地がしなかったと親父にこぼしたら、それが馬主心ってやつだと返された。
一口だろうと、個人馬主だろうと、お前が選んだ馬が命がけで走ってるのが競馬だぞと、親父は言葉を重ねた。
「弥生ではゲート抜けしたアドマイヤジャパン、今回は特に苦もなくスムーズに収まります。18番のダンスインザモアもこれを待ってましたと誘導を受け、今、無事に全頭ゲートイン完了です」
負けても良いとは言わない。思わない。
けど、無事に帰ってきてくれとは、思い続けている。
「── ゲートが開き各馬スタート、っとディープインパクト、ディープインパクト出遅れです!何かに躓いたのでしょうか14番ディープインパクト、出遅れましたが鞍上の竹騎手は落ち着いているように見えます」
「この馬は後方からの競馬を得意としています。上手く盛り返して追い込めるか、注目です」
ディープインパクトが出遅れたその瞬間、辺りから悲鳴が響いた。
嘘だろ、と頭を抱えているのは馬券を握る男たちだろうか。
サンジェニュインの勝利を願ってやまない俺としては、最大の壁であったディープインパクトの出遅れはむしろありがたい。
だが解説が言うように、ディープインパクトという馬は後方からの競馬を得意としている。
とにかく追い込みの末脚が良い。
油断をしていると、後ろからあっさりと差されてしまうだろう。
俺はサンジェニュインと、それから今日その鞍上に乗っている騎手に、逃げ切れよと念を送った。
「1コーナーカーブを抜けて、先頭を見てみましょう。ハナを切るのはこの馬、サンジェニュイン。騎手が変わろうと逃げのスタイルは崩さない。ここから2馬身開いてコンゴウリキシオー、内にエイシンヴァイデン、ダイワキングコン、アドマイヤジャパンがじわっと上がって隣はパリブレストが追走します。それに続くのはダンスインザモア、ヴァーミリアンが躱そうかという位置にいますね」
「さらに内側にはスキップジャック、トップガンジョーがいるので、それを避けて外から回りたいというデルーカ騎手の作戦があるのかもしれません」
「その4頭を伺うように3番マイネルレコルト、シックスセンスとペールギュントが並んでその後ろ1馬身開いてストラスアイラ、ローゼンクロイツ、ディープインパクトは後方から2番目、シンガリはタガノデンジャラスが2馬身差を必死に追います」
ひときわ目立つ白い馬体だけを追う。
先頭をひたすら走り続けるサンジェニュインは、まるで白い弾丸のようだった。
「もう一度先頭から振り返ってみましょう。6番サンジェニュインが変わらず1番手、おおっと2コーナーカーブが上手く曲がれずちょっと外に出ます、体勢がブレたことで柴畑騎手ちょっと落ちそうになりましたがなんとか持ち直していますね。外に回ってしまうも後方との差を徐々に広げていく。2000メートルは得意な距離だサンジェニュイン、ただ前走よりペースは遅いでしょうか」
「コーナー曲がるときに勢いをつけすぎたのでしょうか、落馬しなくてよかったです。今回のレースでは終盤での競り合いを想定し、脚をためながらの逃げを打っているのかもしれません。鞍上の柴畑騎手は先行からの好位追走を得意とし、ハナを取って逃げる競馬を苦手としていましたがそちらの影響の方が気になりますね」
第2コーナーを曲がる時に一度馬体が揺れ、すわ落馬かと思った寸で目をつむってしまったが、鞍上の柴畑騎手は上手くやれたようで、外に出たことで結果スタミナを消費してしまっているが落馬事故よりはいいだろう。
このように、実際に走るのは馬だが、その馬をいかにスタミナロスを抑えて走らせるか、コーナー曲がるときのさじ加減の操縦など、騎手の腕に掛かっている。
成績を考慮して騎手を替えるとは事前に言われていた。
それが関東でも名の知れた名手ということで、期待に胸を膨らませた一口馬主も多いだろう。
かく言う俺もその一人だ。
前走まで乗ってきた芝木騎手が悪いとは思わない。
ただ、弥生でのあの取り乱しを思い出すと、しばらく引き離すというのは、正解な気もするのだ。
「サンジェニュイン独走か。しかしコンゴウリキシオー、コンゴウリキシオーが必死にその背を追います。少し間を開けてエイシンヴァイデンとダイワキングコンはまだ脚を十分に残した走りか。アドマイヤジャパンが先団を追って1馬身半の位置にパリブレストがいます。ダンスインザモア、ヴァーミリアンは競り合っているがややヴァーミリアンが優勢でしょうかこれはどうでしょう」
「ヴァーミリアンにはまだ体力がありそうです。ダンスインザモアが脚をためられているか、心配ですね」
「外からスキップジャック、スキップジャックが上がろうとしますがマイネルレコルトやや苦しいか。シックスセンスが淡々と先段を目指します。その影に隠れるようにトップガンジョー、アドマイヤフジ、1馬身開いてローゼンクロイツ、ストラスアイラとディープインパクイトが並び掛けている、タガノデンジャラスは変わらず苦しい競馬、巻き返すことができるでしょうか」
「つばき賞で見せた鋭い末脚に期待したいです」
幼い頃、何故親父が馬に熱中しているのか解らなかった。
けど今なら解る。
走る馬の一瞬の輝きに勝る熱は、今この場にはなかった。
力強く芝を蹴って進むその姿を見て、黙っていられる人間などいない、そんな場所。
「さあ4コーナーここを曲がって後は直線、中山の直線は短い、短い……あっ後方から、後方から鹿毛の馬体、竹騎手がいくぞと鞭を振って追い上げてくるのはディープインパクト!ディープインパクトです!」
やっぱり来たな、と歯を食いしばる。
出遅れて後方の競馬にもかかわらず、脚色は全く衰えた様子もない。
鞍上に必死感もない。
ただ、追い上げるぞという強い感情が走りに現れていた。
「まだ先頭はサンジェニュインだ!サンジェニュインが進む進むハナをゆくがそれをディープインパクト狙いを定めて、いまコンゴウリキシオーも抜いてさあ最後の直線中山の直線!柴畑が最後の鞭だ竹も振って行け行けと前に押して2頭の競り合い!」
思わず前のめりになった。
食いしばっていた口を開いて、行け!逃げろ!走れ!頑張れ!と、止めどなく言葉があふれていく。
世界中に言って回りたかった。
今、中山競馬場で、俺の好きな馬が、ただ1位を目指して走っている。
「鬼の末脚ディープインパクト!逃げる逃げるサンジェニュイン!」
ゴールまで残り200メートル。
ヒートアップする声援は、逆に無音にさえ思えた。
「意地の追い込みディープが並ぶがサンも粘る!粘る粘るがどっちが勝つかディープかサンかディープかサンか!?2頭そろってゴールイン!!……3馬身半離れて3着争いを制したのはシックスセンスとなりました」
「1着入線に関して、写真による審議が行われます。お手持ちの馬券はお捨てにならず、そのままお持ちください」
どっと力が抜けて、椅子に深く座り混む。
それはどうやら俺だけじゃなかったようで、辺りを見渡すと大体の人が疲れたような顔をしていた。
目の前のレースに集中力を振り切っていたからだろうか、じんじんと頭痛がして思わずこめかみを押した。
写真判定の結果はまだつかない。
ちらほらとどちらが勝っただろうと囁く声が聞こえるが、そのどれもが自信なさげに揺れているのは、それほどの接戦だったからだ。
俺は握りすぎてぐしゃぐしゃになった馬券を見つめた。
サンジェニュインの名前をなぞって、願わくばと空を仰いだ。
願わくば、サンジェニュインが1着でありますように。
それから長い長い審議の末、掲示板に『確定』の文字が点った。
2005年4月17日 第65回皐月賞 掲示板
中山 | 11R | 確定 |
Ⅰ | 6 | 同着 |
Ⅰ | 14 | 同着 |
Ⅲ | 10 | 3 |
Ⅳ | 16 | 1 |
Ⅴ | 17 | 1 1/2 |
たぶん修正します(ガバガバ)
レースシーン難しすぎてあかんのや……!!
今回ベースにした情報
第65回皐月賞(G1)
https://db.netkeiba.com/race/200506030811/
あとちょいちょい実況者さんの台詞や2005年ブランドCMを意識した台詞が入ってます。
ちなみに史実でG1初の1位同着馬が出たレースは2010年5月23日の東京競馬場で開かれた第71回優駿牝馬(オークス)でのアパパネさん、サンテミリオンさんの同着1着です。
これについても今度紹介をしたい。
出走馬の紹介はまた改めて。
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14.戦いの後に ─ 裏・皐月賞
※ちょっと誤字脱字対応遅れてます少々お待ちを
更新できず申し訳ない。
顎、痛すぎちゃってどおしよっ!ふじ~さふぁりぱーくっ!!って感じの日々を過ごしていました。
日々だけに顎にヒビが入ってました(ドッカンドッカン)
とはいえ今は元気です。
皐月賞・日本ダービーの被害馬紹介は一緒にやった方がいい(出走馬の被りが多い)と思ったので日本ダービーの後に被害馬紹介やります。
今回は本番レース、違った番外編レースという名のゴール後の爆走と前日入りの話と走りきった後の話です(いろいろ混ぜすぎぃ!)
栗東から中山競馬場までは距離がある。
ので、栗東所属の馬が中山競馬場などの関東のレースに出走するときは、前日入りと呼ばれるレース1日前の入厩が基本だ。
GⅠクラスの大レースともなれば、2,3日前には入厩し、中山競馬場に馬を馴れさせる、ということが行われる。
俺は比較的移動を苦にしないタイプの馬なので、今回も本番1日前── 前日入りという形で入厩することになった。
皐月賞前日、中山競馬場出張馬房に脚を踏み入れたのは4月16日の夕方のことだった。
『あああああ生きてるよかったああああ!!!!』
出オチである。
『この天使ちゃんがあ……脚痛くないか身体辛くないか元気か無事かあ!?!?』
『うわうるさっ』
『無事ならちょっと跳んでみろいややっぱりやめろ安静にしてろ健康でいろ!!!!』
重症である。
無事を確かめられている俺よりもお前の方が大丈夫かヴァーミリアン。
『ひっぐ……おお……お前生きててよかった……!』
そんなことを嘶きながら泣き出すので、側にいたヴァーミリアンの厩務員がギョッとした顔でタオルを取りに行ってしまった。
待って、俺と目黒さんを置いていくなヴァーミリアンの厩務員……!
ヒィンヒィン鳴き続けているヴァーミリアンに、さすがの目黒さんもドン引きである。
わかる、俺が姿見せた瞬間に跳ね上がって首ズボッて出してきたしな。
ヴァーミリアンの馬房前を通り過ぎて、その隣の部屋に入った。うーん、厩舎よりちょびっとだけ狭いか。
用意された水桶に頭を突っ込みつつ、横目でヴァーミリアンを見る。
ちょっと痩せたか?
限界までこっちに首を伸ばそうとしてるのでそろそろ首痛めそうだな、と水桶から頭を上げた。
もうそれ以上はやめろ、俺が首を伸ばすから。
『体力使い切って気絶しただけだって……おおげさだなあ』
俺がそう思ってのんびり口にすると、ヴァーミリアンがカッと目を見開いた。
『おおげさなわけあるか!!あの、あの他馬よりも神経図太くて何事にも動じない── というか感情あるのか定かでないディープインパクトが、声を震わせながらお前が倒れただ起き上がらないだボソボソ言うんだぞ!?あの他馬に一切興味のない走り屋ディープがだぞ!?』
めちゃくちゃ悪口じゃん。
ディープインパクトそんなに他馬に興味ないか?
俺と会うときいつもガン見だしケツ見てくるしすごい鼻息荒いし興味津々では?
『あいつ、走れればそれでいいみたいなとこあるし……感情が無いは言い過ぎた。自分より前に他馬がいると苛ついて追い抜くくらいの感情はある』
逆にそれ以外の感情はないみたいな言い方やめろ。
いや知らんけど、俺ディープインパクトとは一回も話したことないからわからんけど。
『まあディープはガキの頃から母馬とか周りの馬どもに【勝つためだけ】にっていろいろ── いやディープの話はいいんだよ!お前、本当に身体は大丈夫なのか?走れるのか?』
『問題ないってば。すごい元気だし、明日勝つのは俺だからな!!』
『胸を張るな可愛いなクソッ!まあ勝つのは俺様だがな!!』
キレながら褒めるの本当に器用なやつ~~!
急にテンションが上がったのかフンフンと鼻息を荒くするヴァーミリアン。
そういや、ヴァーミリアンとレースで走るのは初めてだ。
よく併せ馬はするけど、お互いの騎手乗せて競り合い、はしったことなかったしなあ。
追い切りはヴァーミリアンはディープインパクトとやってるし、俺は今回の追い切りは年上の牝馬とやった。
カネヒキリくんはダートだし、シーザリオちゃんは桜花賞があったし。
柴畑さんは「ヴァーミリアンは先行に着くと好走する」って言ってたから、レースでは先頭争いすることになるかもしれない。
いくらよく会う仲間だからって油断してたら負けちゃう。
俺は気を引き締めるべく、飼い葉の入った桶に顔を突っ込んだ。
うめえ!!
翌朝。
皐月賞当日、寝不足である。
『調子悪いのか、どこか痛いのか、人間どもに知らせるか!?』
『いいから……そういうのいいから声のボリューム落とせ……』
寝不足の理由は言わずもがな、このヴァーミリアンと、それから近くの部屋に入っていた馬たちである。
『寝てるのに起こすなよお……』
『お前が寝過ぎなんだよ!大体他の馬が起きる時間にまだ横になってれば気になるだろ!』
解せぬ。
寝入って30分も経たずに起き上がるってなに?
30分寝る、起こされて15分くらい馬房の中でウロウロ、また寝入って30分で起こされて、を朝日が昇るまで繰り返されたんだぞ。
あんまり寝た気がしない。
思わず大きく口を開けてあくびをすると、横から熱い視線を感じた。
『……ヴァーミリアンはうるさいけど、お前はお前でなんか言えよ── ディープインパクト』
出張馬房にはもちろんディープインパクトもいて、朝、部屋から出された時からずっと俺の横にピタリとつけている。
パドック回るために手綱を引かれた時なんか、エッお前そんなに暴れる!?ってくらい暴れてたが、視界から俺が消えた瞬間大人しくなったらしい。
まあパドック回り終えていざ返し馬、の今、また真横に張り付かれているわけだが。
すごいぞ、俺の姿を確認した瞬間、鞍上の制止振り切って走ってきたからな。
「うぅん、サンジェニュイン、本当に牡馬に好かれるというか」
そういや柴畑さんがいるときはいつも牝馬と走ってたから初見なのか。
いや、前走も一緒だったから見てはいたけど、俺の鞍上から見るのが初めてなんだな。
やばいだろ?モテすぎてこまっちゃう~!とかそういう次元じゃないからなコレ。
俺の左右に張り付くヴァーミリアンとディープインパクトをちらりと見つつ、あくまで気にしていないように振る舞う。
反応なんて返したら逆にひどいことになりそうだし……堂々としていた方が柴畑さんも落ち着くだろうしな!
俺はグッと首をあげてひたすら前を向いた。
遙か向こう側、視線に収めるべきはゴール板ただひとつ── だからそう、俺の目に、フルオッス!なオッスなど映っていない!
映ってないったら映ってない!!!!
『はぁ……はぁ……かわいい……』
『顔が圧倒的に可愛い……近づきたい……ハァ……ハァ……』
ヒィン……!!!!
絶対にレースは逃げ切ってやる。
俺は決意を新たにゲートに向かって脚を動かした。
決して怖くて逃げたわけではない。
これは戦略的逃げだ!!!!
『ばかばかばかああああああ!!!!!来るなってばあああああ!!!!!』
ゴール板を並んで通過したあと、俺は脚にさらに力を入れて大地を蹴り続けた。
目指すゴールなどない。
ただ脚を止めるわけにはいかない。
男には、俺には、絶対に負けられない戦いがあるのだ。
『ああああああうまだっちされちゃううううう!!!!!なんでまだ走れるんだよばかあああ!!!!!』
続々と落ちていく他の馬を横目に、一切スピードが落ちないディープインパクトには恐怖しかない。
なんでお前まだ走れてるんだ。
スタミナも化け物なんですか?
躓いたくせにすっげえ勢いで追い上げてきて、今回もゴール前で競り合いになった。
ハイハイどうせまたハナ差!!どうせ俺の負けだろ!!
うぎぎ、ぐやじいい!!!!
追いかけられている恐怖と悔しさで涙が止まらん。
走りながらでも泣いているのがわかるのか、柴畑さんが俺の首を撫でて宥めようとする。
すまんな柴畑さん勝てなくて……柴畑さんクラシックレースでまだ勝ったことないって言ってたのに。
この3週間、俺に必死に向き合ってくれた柴畑さんを勝たせたかったけど、また負けちゃった。
ぼたぼた泣きながら走っているうちに、だんだんと疲れが押し寄せてきてスピードが落ちる。
ずっと追走してきていたディープインパクトが脚を止めたのが見えたため、さらに100メートル走ったところで俺も脚を止めた。
「やあっと止まったか……サンジェニュイン、すごい走ったな……」
付き合わせてごめんな柴畑さん。
結局勝てなかったし……アナウンス聞くとまだ審議中みたいだけど、前2回ともハナ差負けだったし、今回も差し切れた気がしないし。
また負けちゃったよ……今回結構いけると思ったのに。
そりゃ途中でコーナーうまく曲がれなくて柴畑さん落としそうになったけどさあ……。
あのロスがなければ先着できてたかも……そう思うとさらに悔しさが募る。
今日はいつもより身体が軽かった。
ここ最近調子がいいっていうのもあるけど、物理的に軽かった。
馬体重はむしろ増えたのになんでだろうって思ったが、鞍上の柴畑さんが芝木くんよりも軽いからだ。
出だしからあんまりパワー使わずにスイスイ先頭走れたし、柴畑さんが上手いポジション取りをしてくれたおかげで途中までかなり余力を持てた。
ただまさか、その【軽さ】がコーナーカーブで仇になるなんて。
俺はもともとパワーがある方で、馬体の大きさもあって走るときは前のめりになりやすい。
スピードもガンガンでるけど調節が上手くないから、コーナーに差し掛かった時に減速して曲がる、っていうのが苦手だった。
けど今までレースでコーナーカーブを苦に感じたことはない。
何故なら今までのレース、曲がるときは芝木くんの【重み】がブレーキになっていたから。
今回その重みがなかったことで、コーナーで勢いを殺せなくて体勢がブレた上、柴畑さんを落としそうになった。
結果、柴畑さんの騎乗が上手かったことで落とさず、俺も芝とこんにちはすることなく完走できたわけだが。
あんなに調教頑張ったのに。
ディープインパクトなんて躓いて出遅れだし、これは俺、さすがに勝ったでしょ、って慢心したのがダメだった。
反省。大反省だ。
俺は申し訳なさから首を下げつつ、柴畑さんに背中を撫でられながら検量室に戻ろうとした。
戻ろうと振り返って、思わず柴畑さんを落とした。
『アイエエ!?ディープ!?ディープなんで!?』
俺から100メートル後ろで止まったはずのディープインパクトが真後ろにいた。
な、なにを言っているかわからねーと思うが、俺が一番わかってない。
驚きで腰から力が抜け、芝にごろんと寝転がった。
ひ、ヒェ……なんでここにいるんだよお……!
「サンジェニュインどうした、どこか痛いのか!?腰か、脚か、ちょっと待ってろ、馬運車呼んできてやるからな」
いや待って待って怪我してない怪我してない、腰抜かしただけだから!
咄嗟に柴畑さんの袖を食んで引き留める。
本当にマジでどこも痛くない。ビックリしただけだからと目で訴え続ける。
そうやって俺が柴畑さんと目を合わせている間にも、ディープインパクトが俺の腹をつっついたりグリグリ頭を押し付けてくる。
やめろばかばかばか、腹をぷにぷにするな匂いを嗅ぐなあ!!
……あ、鞍上振り落とした。
「うわ、大丈夫か、
「は、はい……あっ、ディープ!」
ディープインパクトの鞍上が慌てて綱を持とうとするも時すでに遅し。
その後、俺が立ち上がるまでの数分間、ディープインパクトは真横で寝転がりながら俺をガン見していた。
しばらくして【同着】のアナウンスが響くと、柴畑さんとディープインパクトの鞍上── 竹騎手が笑顔で握手を交わす。
GⅠでの、それもクラシックでの同着優勝は史上初らしく、競馬場は熱い歓声に包まれた。
……俺も熱い視線に絡まれていた。
何度手綱を引いても離れようとしないため、勝利会見も2頭並んで行うことになり、双方の関係者がウィナーズサークルに会すると、あたりからは小さく歓声が上がった。
互いの馬主(俺のは一口さん代表)が苦笑いを浮かべる中、2頭の皐月賞馬として未来永劫競馬史に刻まれるだろうワンシーンのため、俺は視線に焼かれながらもキメ顔をカメラに向けた。
後日、皐月賞の特集記事を目黒さんに見せてもらうと、【視線が逸らせない!?ディープインパクトの熱視線とクールなサンジェニュイン】と題して俺をガン見するディープインパクトと目が死んでる俺のツーショットが掲載されていた。
こんなのが競馬史に残るなんて嘘だ……涙が止まらん。
ヒィン……!!
「え?どういうことですか、テキ」
皐月賞から2日開けた朝。
昨日は丸一日マスメディアの対応に追われ、騒がしかった厩舎も一時の静けさを取り戻していた。
というか無理やり取り戻した。
無理に取材を受けて馬の── 俺の体調が崩れてレースに不利が出たら責任取れんのか、いずれ億単位になるかもしれない馬だぞ、とテキが遠回しに伝えたところ日程が延期になったのだ。
テキすげえ!!!!そして俺の価値上がりすぎィ!?!?
まあ同着とはいえGⅠ勝ったしな。
JRA史上初のクラシック同着ってのもそうだけど、俺自身が白毛初のGⅠ馬なのでそれ関連でも価値が上がったのかもしれない。
競馬に詳しくない層への受けもいいらしくて、俺の生まれ牧場では早速「サンジェニュインソフト」としてソフトクリームが売られているらしい。
あとぬいぐるみやストラップも生産予定だとか。
商魂に熱くて何よりだわ。
そのうち俺の名前のついたパチモンまで作られそう、なんてな。
いろいろ未来に思いを馳せつつ水桶に頭を突っ込んでいると、目黒さんから困惑したような声が聞こえた。
話し相手はテキのようだ。
ちなみにイサノちゃんはおつかいに出ている。
「うぅん……JRAからな、サンジェの馬体検査を行う、と」
「馬体検査って……薬を疑われてるんですか?」
薬、とな?
水桶から頭を出して、それとなく耳を目黒さんたちに向ける。
俺の馬体検査の話から、なぜ薬に飛ぶのか。
「いやいや、薬じゃなくてな。……皐月賞での、ほら、他馬が馬っけだした件で」
「ああ……え、あれが、うちのサンジェニュインに関連したものだと?そんな断定的な、いや、この短期間で話が来るってことは、複数意見が上がったってことですか」
馬っ気……うっ、頭が。
フルオッスした牡馬どもの姿は記憶に新しいが、フルオッスしてても皐月賞は全頭真面目に走っていた。
残念ながら掲示板入りを逃したヴァーミリアンとて、普段は俺のケツを追っかけたりしているがレースでは真剣そのもの、俺がゲート入りした後は落ち着きだって見せていたし。
「まあそうだろうね。まさかうちのサンジェやヴァーミリアン、ディープインパクト以外の全頭が馬っけを出すとは……」
俺のせいじゃないけど俺のせいなんだよな、すまんなんか。
いややっぱり俺のせいじゃない。
全部神が悪いわ。
「馬体検査って言っても、うちのサンジェニュイン、どう見ても牡馬ですけど……」
「そうなんだが……牝馬が出すフェロモンを疑似的に出せてしまうのでは、とかなんとか、とにかく検査したいと。日本ダービーでも皐月のようなことがあっちゃ堪らんだろうし」
日本ダービーは3歳馬の頂点を決める大レースらしい。
皐月賞同様、一生に一度の大舞台で、愛馬がフルオッスしてる姿なんて誰もみたくないだろう。
俺もそんな大レースでほかの馬がフルオッスしてる姿を見たくない。
これは神によってつけられた呪いのようなものだが、もし科学的にどうこうできるなら俺も精神的ストレスを軽減できる。
……いいんじゃないか?馬体検査。
「社来やサイレンスレーシングからはなんと」
「やむを得ないと。日本ダービーにはサンジェを憂いなく出したい気持ちもあるんだろう」
「……わかりました。サンジェニュインは知らない場所でも動揺するような馬ではないので、輸送は問題ないです。飼い葉食いも悪くないですし、体調も整った状態で検査を受けられると思います」
「うん、それじゃ日程のやり取りをしてくるよ。……サンジェ、しばらく知らないところで身体を見られたり触られたりするが、大丈夫、痛いことはないからな」
おっす、わかってるよテキ。
スムーズに馬体検査受けてスマートに帰ってくるからな!!
日本ダービーまでそんなに日がないし、今度こそディープインパクトに先着して見せる。
俺は決意を新たに、最近さらに美味く感じられるようになった飼い葉に頭を突っ込んだ。
うめえ!!!!
ここまでディープインパクトさん、無言!
※全頭オッスさせた以上、検査はやむを得ないですよねえ※
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15.これでヨシ!
今回の被害者:研究員の皆さん
※研究員の皆さんは完全に捏造です。
「サンジェニュイン、1週間後に迎えに来るからな」
あいよ、ここまで送ってくれてありがとう目黒さん!
「それでは、サンジェニュインをよろしくお願いします」
「はい、お任せください」
来た車に乗って帰厩する目黒さんを見送ると、俺は研究所の人に手綱を引かれて施設へと向かった。
研究所というのはここ、栃木県にあるJRAの競走馬研究所のことだ。
運動科学研究室、というところで、俺の馬体の検査や調査を行うらしい。
「写真では見ましたけど本当に立派な白毛馬ですね」
「思ったよりでかいよね。あとビックリするくらいおとなしい」
「たしかに!ふつう初めてきた場所だとだいたいの馬が興奮したりするんですけどねえ」
興奮して検査が遅れたら帰厩日数伸びるかもしれないじゃん。
日本ダービーに向けて早く調教始めたいから、サクサク検査を頼むぞ兄ちゃんたち。
「輸送してすぐに検査、はできないから、ひとまず馬房に入れて……明日の調子みてレントゲンとかエコー、あと血液採ろうか」
「了解です。……ようし、しばらく暮らす馬房にいくよー」
30代ちょっとくらいの兄ちゃんに綱を引かれる。
もう片方は40代くらいの眼鏡の兄ちゃんで、幾分か威厳がある。主におなかに。
引かれるままに脚を進めると、案内された研究所の厩舎にはすでに数頭、馬が入っていた。
この馬たちも俺みたいに馬体検査で来てるのだろうか?
「サンジェニュイン号の部屋はここだぞ。隣はストレートリリー号、6歳の女の子だ」
そう紹介された牝馬が、突っ込んでいた水桶からタイミングよく顔を上げた。
額にちょん、とのった流星が特徴的な、栗毛の牝馬だった。
『あら、新入り?若いわね』
『あ、どうも……サンジェニュインです、えーっと、3歳です』
なんか3歳って名乗るのに抵抗あるな。
俺が首を上下に振りながら挨拶すると、牝馬── ストレートリリーさんもゆっくりと頭を振った。
『わたし、ここでは結構長いの。困ったことがあったらいってね。あ、そうそう、身体にペタペタ変なの貼られるかもしれないけど、それはわたしたちには害はないから気にしないように。……ここに来たばっかりの若い馬たちはみんな、あれにびっくりして最初暴れちゃうのよね。隣のモズクサンライズとか、今はいないけどタナカノホシとか、人間に怪我させるくらい暴れてて── って、あらいやだ、わたしまたたくさんしゃべっちゃった。いやねえ歳取ると言葉が止まらなくなっちゃって』
『あ、はい……』
ストレートリリーさんはおしゃべりが好きなようだ。
俺は用意された飼い葉と水に口を付けながら、隣でしゃべり続ける彼女に耳を傾けた。
その話をまとめると、まず、ストレートリリーさんをはじめとしたこの研究所にいる馬たちは、俺のように馬体検査で一時的に滞在している、というわけではないらしい。
若い馬だと2歳からこの研究所にいるそうで、ストレートリリーさんは2歳からもう4年近くここで生活しているんだとか。
サラブレッドではあるけど競走馬ではない、らしく、レースには出ないものの、研究所にあるコース等でほとんど毎日走っているそうだ。
今日もストレートリリーさんは謎の機械を身体に取り付けられた状態でコースを走ったり、謎の筒を口にはめられて息を吸ったり吐いたりしたらしい。
……これだけ聞くと怪しい施設でしかないな。
身体にペタペタ変なの貼られる、とのことだが、それはおそらく心拍とかそういうのを計測するための装置なんじゃないか、と思う。
健康診断とかで心電図をとるときのほら、あの丸いアレ。
謎の筒についてはわからないけど、息を吸ったり吐いたりさせられてるってことは、肺の検査だろうか。
俺の検査を行うという、運動科学研究室では競走馬の能力向上を目的に様々な研究をしている、と目黒さんが言っていたから、その一環なんだろうな。
『……それにしてもあなた、牡馬なのよね?』
『はい、そうですけど』
『うーん……ならなんでこっちなのかしら』
なんでこっちなのかしら?
『ここ、牝馬しかいないのよ。牡馬は後ろの厩舎なんだけど……』
そのストレートリリーさんの言葉に重なるように、もうひとつ声が響いた。
「やっぱり……主任、ストレートリリーも平常ですし、ほかの牝馬たちも変わりないですね」
「うーん、こりゃ書類にあった通り、牡馬相手にしか見られない現象、なのかどうか。……ま、今日はここに置いといて、明日明後日の調子次第で4日目以降に牡馬に会わせるか決めるか」
「ですね。馬体の検査優先で。牡馬にしか効かないなら何かしらの成分は検出できそうですし」
さっきここに俺を連れてきた兄ちゃんと、片方は初めて会うおじさんだ。
主任と呼ばれているから、結構偉いおじさんなのだろうか。
2人の会話を聞く限り、俺がここ、牝馬の厩舎に入れられたのは反応を見るためだったようだ。
確かに入ってしばらくは牝馬たちもざわざわしていたが、あれは新入りが入ってきたことによるざわめきで、俺単体に対する興奮ではなかったと思う。
それに興奮はすぐに引いて、今じゃストレートリリーさん以外はこちらに関せず、の姿勢だ。
時折視線が合うと3秒くらいは見られるものの、すぐにふいっと逸らされる。
……考えてみれば生産牧場で過ごして以来、他馬がいるのに視線を感じない時間を初めて過ごしている。
俺は何故かそれにひどく感動してしまい、飼い葉を爆食いして爆睡した。
サンジェニュイン号が研究所に来てから3日目。
2日目はレントゲンやエコー、血液検査などの医療周りを行い、3日目の今日は運動機能検査を行った。
それらが終わってから2時間後。
検査結果を前に、運動科学研究室の研究者たちは頭を抱えていた。
「レントゲンもエコーも、血液検査も見たが、まあ間違いなく牡馬なんだよな」
「ですよねえ……触診も言わずもがなで。尿も採って調べたんですけど、牝馬の出す成分は確認できませんでした」
研究者たちの前に並べられているのは、サンジェニュイン号の検査結果だ。
レントゲンでもエコーでも、もちろん触診でも、疑われていた牝馬の特徴は見えなかった。
血液検査にも異常はなく、尿などからも変わった結果はない。
まったくおかしなところのない、完全な牡馬を示す数値だけがそこにあった。
研究者たちに交じっていた獣医が、1枚の紙を指さした。
「特筆していえば、骨格は平均的なサラブレッドよりもしっかりした作りだということ。骨の密度が良く、筋肉も柔らかいので怪我をしにくい身体なのは間違いないでしょう。減速していたとはいえ、走行中に倒れた時も外傷はありませんでした」
3月の弥生賞を例に挙げた獣医に続くように、研究者の一人が口を開いた。
「骨格もそうなんですが、私が驚いたのは心肺機能ですね。トレッドミル運動負荷試験で、ここまで顕著な例はなかなかないと思います。心臓はオペラオーと比べれば平均よりやや大きい程度── しかし平均以上であることは間違いないです。何より肺の機能。酸素を取り込む能力が非常に高い。1回の呼吸で得た多量の酸素を、大きな心臓で全身の筋肉に届けることができる、これがサンジェニュイン号が最後までバテずに走り切れる要因の一つだと思います」
新馬戦から皐月賞まで、出遅れによって中団からのレースとなった時でさえ、果敢に攻める走りを続けられた源。
生まれ持った肺の機能と、それを活かす大きな心臓は、他馬がいくら望んでも得ることができない恵まれたものだろう。
2001年から馬齢は生まれ年を0歳とし、翌年の1月1日に加算される方式に変わったため、夏生まれのサンジェニュイン号も書類上では「3歳牡馬」となるが、生まれ月から数えればまだ2歳9か月。
他の馬とは4か月近い月齢差がある。
月齢差は人間に換算すると年単位の差であり、ふつう、サンジェニュイン号の身体はまだ出来上がっていないと考えるところだ。
しかし、この2日間の検査結果は研究者たちに純粋な驚きをもたらした。
早熟といえばそこまでだ。
だが早熟と言い切るには、サンジェニュイン号の身体のバランスは成長途中と言えた。
「……検査結果は大層良いんだけどね、まあ、知りたかったのはこれじゃないというか」
「……【牡馬を発情させる要因】とか、わかんないですそんなの……」
研究員たちは頭を抱えた。
検査の主目的は【牡馬を発情させる要因】【牝馬のフケに類似した体質】の特定。
だが何度見てもサンジェニュイン号は牡馬であり、同性を発情させるようなフェロモンも確認できない。
わかったのはサンジェニュイン号の強さの源と、本馬が非常に大人しく、そして感情豊かだということくらい。
依頼してきたJRAにいったい何と回答すればいいのか……主任と呼ばれる男が悩まし気にしていると、若い研究員が口を開いた。
「もうやっぱり、直接会わせて反応見るしかないですよ」
「……そうなるかあ」
「それしかないです」
研究員たちは視線を合わせると頷き合い、それぞれの仕事をするべく立ち上がった。
サンジェニュイン号が研究所に来てから4日目。
数頭の牡馬と会わせるべく、施設内の多目的ルームへとサンジェニュイン号の手綱を引くのは若い研究員── 橋本だ。
今から何と会うのか、歩いているうちに察したのかサンジェニュイン号の脚運びが鈍く、ほとんど引きずるように連れていた。
本当に感情がはっきりした、それでいて賢い馬だなあ、と橋本は考えつつも、こんなに同性の馬に会うのを嫌がっているのに会わせるのも酷だなと、サンジェニュイン号に少し申し訳なく思った。
しかしこの顔合わせを経て得られた結果で、今後サンジェニュイン号のストレスを減らせる可能性もあるのだ。
少しだけ我慢してくれよと、橋本は祈るような気持ちで多目的ルームに入った。
……入って後悔した。
「えっ、発情した牝馬とかいます……?」
「全頭牡馬なんだよなあこれが……」
「ヒエ……」
研究所で繋養している牡馬たちはどれも気性が穏やかで、物事に動じない馬だったはずだ。
しかし橋本の眼前にいる牡馬たちは全頭馬っ気を出していて、その興奮からか前脚を上げたり身体を揺らす馬もいた。
ギンギンになった下腹部を見ないようしているのか、サンジェニュイン号は瞼を閉じていた。
橋本も瞼を閉じて現実逃避したくなったが、残念ながら研究員にそれは許されていない。
この状態のサンジェニュイン号の毛を数本、それから唾液を採取する。
それらはすぐさま他の研究員の手によって解析に掛けられ、サンジェニュイン号も発情した状態なのか、牝馬のフケに似た成分がそれらに含まれているかを調べるのだ。
だがしかし── やはりと言うべきか、サンジェニュイン号は発情した状態になく、また牝馬のフケに似た成分も確認できなかった。
研究員たちはまた頭を抱えた。
なぜ、いったいなぜ……!!
あの手この手で様々な検査を行うも、サンジェニュイン号には異常が見つからない。
ただ眼前の牡馬たちが元気に興奮しているだけである。
原因もつかめないまま数十分が経過し、橋本はサンジェニュイン号のストレスも考えて、いったん外に連れ出すことにした。
動き出したサンジェニュイン号にほかの牡馬たちがついていこうとするので、研究員総出で止める。
こんなに気性が荒い馬たちは初めて見たと、長年研究所に勤める研究員は唖然としたように呟いた。
それから数分が経つと、エッと大きな声を出して立ち上がった。
「……ん!?」
「えぇ……なんでぇ……」
馬っ気を出していた牡馬たちが次第に落ち着きを取り戻し始めたのだ。
早い馬は下半身もすっかり落ち着いた様子で、目つきも普段通りのんびりとしたものに戻っていた。
まるでさっきの出来事が夢幻だったかのようにさえ感じるほどに。
しかしサンジェニュイン号が再び多目的ルームに現れると、全頭がまた馬っ気を出すので、研究員たちは頭が可笑しくなりそうだと天を仰いだ。
翌日、5日目。
4日目とは異なる牡馬たちを呼び、サンジェニュイン号に会わせると、こちらもまったく同じ状態になった。
会わせる場所やシチュエーション、距離など、いくつかパターンを変えても、牡馬たちから見える範囲にサンジェニュイン号がいれば、例外なく馬っ気が出てしまう。
それを十数回繰り返していると、馬も人間も、疲労困憊であった。
特にサンジェニュイン号のストレスが強く、あくまで預かっている身としては、これ以上付き合わせるのは今後の体調にも影響が出ると主任は気を揉んでいた。
サンジェニュイン号を昼休憩に送り出した後、疲れからテンションがハイになっていたひとりの研究員が、閃いた、と言ってある仮説を立てた。
「は?サンジェニュイン号の顔を、隠す?」
「はい……あの、何言ってるか自分でもわかんないんスけど、なんかこう、フェロモンとかそういうことじゃなくて、もう単純に、そう単純にですよ、あの……顔が好きなんじゃないかなーって」
正気か?
誰もそう口にはしなかったが、その場にいる研究員全員、心の中でそっとつぶやいた。
口に出す気力すらなかった。
「わかってるんスよ、おかしいこと言ってるのはわかってるんスけど、逆にそれ以外になくないっスか……?」
「確かに」
全然「確かに」ではなかったが、研究員たちはみんな疲れていた。
「顔を隠す、ねえ……一般的なのはメンコか」
「あっ、そういや前にシルクファンシー号がつけてたメンコ、残してあったと思います!」
取ってきます、と研究員の一人が走り出す。
場に少し明るい空気が戻って、あたかも事態が好転したかのような雰囲気さえ漂っていたが、研究員たちの心は一つだった。
「まあ、そうはならんと思うが」
人はこれを、フラグという。
「そうなったな」
「なりましたねえ……」
研究員たちの前には、栗色のメンコをつけられたサンジェニュイン号が立っていた。
メンコをつけるときに多少嫌がられたものの、つけた後は大人しく、橋本に綱を引かれて再び多目的ルームに現れた。
牡馬たちはサンジェニュイン号が入ってきたと分かると一斉に視線をそちらに向け、できるだけ近くに行こうと綱を持つ研究員たちを引きずろうとする。
それは今までと変わりないように見えたが、劇的な変化があった。
── 馬っ気が出ていないのである。
「興奮するのは変わらないが、数分もすると徐々に落ち着きを取り戻していくな。興味がなくなったわけでもなく、まだチラチラとみているようだが……なにより、馬っ気がでなくなるとは」
「やっぱり顔が好きってことなんスよ!!!!」
「うるさいよ……馬たちが驚くだろう」
「す、すんません」
しかし、その研究員が言うことは外れていない、ということの結果が目の前にあった。
試しにメンコを取ると、興奮状態は一層激しくなり、下腹部が張っていくのが見えたため、主任は慌ててメンコをつけなおした。
どうやら本当に【顔が好き】であるらしい。
「これぇ……どうやって報告すんだよ……」
「【牡馬にとって非常に魅力的で好かれる顔立ちをしている】ってことで、いいんじゃないですかね……」
「できるかそんな報告。……お前がするか?」
「嫌です」
それから期限日まで、馬房の中以外ではメンコをつけた状態で牡馬たちに混ぜたところ、特に揉め事が起きるわけでもなく、通常の馬と同じように過ごすサンジェニュイン号を見て、初日から担当していた橋本が感動に目を潤ませた。
「あんなに嫌がってたのに……よかったなあサンジェニュイン号……!」
「……まあ、これでヨシ、ということで」
丸1日の経過観察を経て、主任の男はJRAに以下のように回答した。
【検査結果として、サンジェニュイン号は間違いなく牡馬である。牝馬のフケに似た疑似フェロモンも確認できていない。牡馬数頭との生活実験を繰り返したところ、メンコによって顔の一部分を隠すことで相手の興奮は抑えられることが分かった】
JRAはこの文章を3度見し、5回にわたって研究室に電話で確認したという。
今日は俺が研究所に来てから7日目。
「それでは、お世話になりました」
「はい!……サンジェニュイン号、元気でな」
おう、兄ちゃんも元気でな。
来た当初から世話をしてくれていた研究員の若い兄ちゃんに別れを告げ、目黒さんと一緒に馬運車に乗り込んだ。
はじめの5日間お世話になった牝馬のストレートリリーさんには昨日のうちに挨拶をした。
彼女は別れになれていないらしく、かなり寂しそうにしていて、いつまでも「元気でね」と俺に声をかけ続けてくれた。
5日目の夜から混ぜてもらった牡馬の野郎どもにもさっき挨拶したし、残すものは何もない。
4日目から毎日のようにうまだっち! した牡馬どもと同じ空間に入れられた時には殺意も湧いたが、検査のためだと我慢し続けた。
この兄ちゃんをはじめとした研究員たちがみんな死んだ目で牡馬どもを眺めていたので、それに同情心が募ってしまった、というのもある。
なんか……ごめんな……俺の美貌が圧倒的すぎるあまり……。
「格好いいものをもらったな」
目黒さんがそう言って俺の顔を── メンコを撫でる。
だろ?格好いいだろ?
栗色のメンコは今朝、兄ちゃんが餞別にとくれたものだ。
研究所で過ごしていた時は、昔この施設にいたシルクファンシーという馬が使っていたものを借りていたが、自前の物があったほうがいいだろうと買ってくれた。
馬の色覚からだから実際には違うんだろうけど、このメンコの色が一番カネヒキリくんの毛色に似ている。
どうだ目黒さん、ちょっとカネヒキリくんっぽくない?
格好いいでしょ。
「嬉しいんだな、サンジェニュイン」
そりゃあもう!
研究所にはいろいろ期待して行ったわけだが、その期待通りになった、と思っている。
まあ全部が全部期待通り、ってわけじゃないけど。
少なくとも俺を見てほかの牡馬が馬っ気を出さないようにしたい、という願いは叶えてもらえたわけだし。
視線は一向になくならなかったが、変に身体を摺り寄せられることもなく、昨日は丸1日牡馬のいる厩舎で過ごせた。
あと自由時間に牡馬数頭と放牧地で遊べたし。
普通に遊ぶとか初めてだった、楽しかった。
「しかし……まさかメンコでどうこうなる問題だったとはな」
それな!
メンコでどうにかなるんかよコレ。
科学的も何もなかったな、顔を隠すっていう非常に原始的な方法だったわ。
顔を隠しましょう、って提案した研究員絶対疲れてたと思うし、そうはならんやろって思ってたんだろうな。
なっとるやろがい、という結果になったけど。
あの時の主任の顔すごかったな、信じられないのか5回くらいメンコつけたり外したりされたわ。
まあそれがメンコの効果を証明することになったわけだが。
ぐびぐび、と水を飲む。
あと3日もすれば5月になる。
日本ダービーは5月29日だと目黒さんは言っていた。
あと1か月だ。
今度こそディープインパクトに勝つ。
栗東に向かう馬運車の中で、俺はダービーに思いを馳せた。
次回、ダービーに向けて調教!調教調教!調教~~!!
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16.走る理由
今日のリアル競馬、牡馬が牡馬に乗っかるという……とんでもねえことが起きちまったな!
現実が空想を超えるな……!
外野の俺は思わず笑ってしまったのですが、これ関係者からすりゃたまったもんじゃねえっすよ!!
怪我をしてしまった騎手の方の回復と、やらかしちまった馬たちの今後が健やかであることを願いつつ本編わよ。
作中の日本ダービーが近いのでしっとりさせました(しっとりしてるとは言ってない)
5千文字前後とちょっとあっさり目にしました。
次回が長いので(巨大ネタバレ)
『カネヒキリくん見て見て、カネヒキリくん色のメンコ!どうだ?格好いいだろう?』
栗東に帰厩した3日後、どこから聞いたのか、カネヒキリくんが遊びにきた。
せっかくなので買ってもらったメンコを目黒さんに付けてもらう。
元々は無地の栗色のメンコだったのだが、イサノちゃんが太陽のマークを刺繍してくれた、俺の、俺だけのメンコだ。
よく見えるよう、馬房から出て陽の光が十分に当たる場所に陣取る。
頭をちょいっと下げて、伺うようにカネヒキリくんを見つめると── カネヒキリくんは立ったまま気絶していた。
『ちょっ、カネヒキリくん!?エッちょっと、エッ!?カネヒキリくーん!?!?』
それからしばらく、カネヒキリくんは目を合わせてくれなかった。
……似合ってないのかな。ちょっとしょんぼり。
5月に入ってすでに6日が経った。
7日にはヴァーミリアンが京都新聞杯に出走するのだが、追い切りの相手は俺ではなくディープインパクトが務めるため、今日は別の馬と併せ馬をしていた。
『いやあ、併せ馬してくれて助かったっス~~!』
『こちらこそ、大レースを制した馬と走れていい経験になった!』
『なははは、同じくらい大きいレースを勝った馬に言われると、なんか照れるっスね』
顔に白色の綱──
今年の牝馬クラシック路線、桜花賞の勝ち馬である。
レース自体は皐月賞より前に終わっていたのだが、顔を合わせたのは今日が初めてだった。
元気な明るい女の子で、シーザリオちゃんとはまた違った存在感がある。
口調は体育会系の下っ端みたいな感じだが、脚運びは軽やかではあるものの実に力強く、並の馬なら躱された一瞬のうちに大差をつけられてしまいそうなくらい。
桜花賞では粘り強い競馬で、猛追するシーザリオちゃんを振り切っての優勝だったらしい。
シーザリオちゃんとも併せ馬をしたのでわかるが、彼女の末脚はかなり伸びる。
追い込みは相当なスピードで行われただろうに、それから逃げ切るラインクラフトちゃんの脚、精神力共に並じゃあないのは明らかだ。
『次のレースはシーザリオちゃんとは別なんだっけ?』
『そっスね。人間がなんかごちゃごちゃ言ってたんスけど、ま、出るレースは選べないっスからね』
結構さっぱりした性格でもあるようだ。
彼女の次走はNHKマイルカップ。GⅠのレースだ。
NHKマイルCは、確か目黒さんの話では牝馬クラシック路線のレースではなかったはず。
次は確か優駿牝馬、オークスだったかな。
シーザリオちゃんはそのオークスに出走する予定だと、前に本馬から聞いていた。
彼女は桜花賞で負けた相手── つまりラインクラフトちゃんなのだが ── と戦うのを楽しみにしていた。
好敵手を得るとさらに強くなれるから、とニコニコ笑って。
サンジェニュインさんもいるでしょう、好敵手!と言われて咄嗟に脳裏によぎったのは鹿毛の馬体だったが、いやアレは敵だから!好敵手ではないから!!
……だが、ラインクラフトちゃんが言う通り、出走するレースを俺たち馬が選ぶことはできない。
仕方ないと割り切るしかないのだろうが、少し口惜しい気もする。
『もし出走するレースを自分で選べたら、シーザリオちゃんと同じレースに出たいと思う?』
そう聞いたのはただの興味だった。
『うーん、そうっスねえ。人間の話ってマジでごちゃごちゃしてて意味わからないんスけど、要するに、そのレースでは自分は勝てない、って思われたから回避することになったんだと思うんスよね。だとしたら── 出ないっスね』
それは言外に「負けたくない」という意味を含んでいるように聞こえた。
というか、完全に「負けたくない」という気持ちが十分に籠っていたと思う。
けどそれ以上の何かが、その奥底にあるような気がした。
『やっぱり勝ちたい気持ちって大事だよな』
訳知り顔で頷いた俺の横に並ぶと、ラインクラフトちゃんは悩まし気に首を振った。
『まあ大事っスけど、自分はふつーに、要らない傷を作りたくないんスよね』
『要らない傷?』
『そっス』
お互いの鞍上が下りて、今度は厩務員に手綱を引かれながらコースをゆっくりと回る。
彼女はどう言うべきなのか悩んでいるような仕草を見せた。
『自分で言うのもなんスけど、自分、血統がいいんスよね。あ、これはサンジェニュインくんもそうか』
『まあ、悪くはない血統だと思う、たぶん』
馬の血統にはそんなに詳しくないけど、生産牧場にいた時に面倒を見てくれたタカハルやタクミは、俺の血統は好走する血だとかなんとか、言っていた。
勝ち負けと血統になんの関係があるのだろうか、と俺が首を傾げていると、ラインクラフトちゃんが話を続けた。
『自分の実家、社来なんスけど── これもサンジェニュインくんと一緒か。……ま、社来の、それも結構昔から繋げてきた、いわゆる名牝の血筋ってやつなんスよ。ママ、あー、お母さんは未勝利だったんスけど、いつかこの血でテッペンを取りたいって故郷の人間たちが自分らの血を繋いでくれたんス』
ラインクラフトちゃんの横顔は凪いでいた。
『お母さんのお母さん、のそれまたお母さんのお母さんがファンシミンっていう名前で、なので自分らはファンシミン系って言うんスけどね、その血を、牝馬の自分が繋ぐには、レースでいい結果を出して、優秀な牡馬と子供を作る必要があるんスよ。結果が出なくても自分のお母さんみたいに血を繋ぐことはできるけど、どうせならもっといい牡馬と作ったほうがいいじゃないっスか』
子供を作る。
それは競走馬としては当たり前のことで、ほんのすこし、俺の頭から抜けていたことだった。
『自分、走るのは好きなんでレースは嫌いじゃないんスけど、勝たなきゃって思うんスよ。自分の勝利は自分だけの物じゃないんで』
【自分の勝利は自分の物だけじゃない】
『……レースでいい結果だして、次世代を繋ぐのが、ラインクラフトちゃんの夢ってことか』
『いや、違うっスけど』
『違うんだ!?』
俺はずっこけそうになって、手綱を引いていた目黒さんが心配そうに俺の身体をさすった。
大丈夫だぞ目黒さん!なんも痛くない、ちょっとびっくりしただけだから。
俺は体勢を持ち直すと、ラインクラフトちゃんの横顔を覗いた。
『夢っていうか、うーん、レースに自分の夢とかないじゃないっスか』
ラインクラフトちゃんは淀みない調子で話を続けた。
『夢を見るのは人間っスよ。自分は、その人間の夢と、その人間が繋いだ血をしょって走ってるんス。ママたちがそうしてきたように。……うん、やっぱり夢じゃないっスね。ま、目標ってとこっスか。しいて言うなら、自分の子供が活躍してくれるのが夢っス!』
明るく、軽口を叩くように言い切った彼女が俺に視線を向ける。
『サンジェニュインくんもそうっしょ?』
その言葉に、俺は何も返せなかった。
ラインクラフトちゃんがNHKマイルCを2着馬に1馬身と3/4差をつけて勝った知らせが届いたのは、それから2日後の5月8日。
風の冷たい夜だった。
ダービーまで残り14日に迫った日の朝。
俺は馬運車の前にいた。
行先は北海道のノータンファーム。
乗るのはもちろん俺、ではなくヴァーミリアンだ。
『まだそのだっせぇメンコつけてんのか』
『真っ赤なクロスのメンコつけてるお前に言われたくないわ』
ムスッとした様子のヴァーミリアンは、1週間くらい前の5月7日、京都新聞杯で12着に沈み、日本ダービーを断念することになった。
秋のレースに焦点を合わせるため、長期休養に入ることにしたようだ。
しばらくはノータンファームで放牧され、気分をリフレッシュしたのち再度調教を行う予定だと目黒さんは言っていた。
不機嫌そうなのは最近のレース結果が芳しくないから── ではなく、俺がメンコをつけているからだ。
研究所から帰厩して以来ずっとつけている栗色のメンコは、ヴァーミリアンには不評である。
初めて見せたのはカネヒキリくんと会った翌日だったのだが、見た瞬間から「ダサい!」「似合わない」「邪魔」と捲し立てられ、挙句はぎ取られそうになった。
メンコの部分とはいえ、固い人参をシャリシャリかみ砕く口で食まれたので、ドキドキがハンパじゃなかった。
そんなに似合ってないのかよ、と思ったが、しかしほかの牡馬への効果が高いので外す気はない。
俺の栗色のメンコがださいなら、ヴァーミリアンがつけてる黒地に赤のXがデザインされたメンコはださくないんか?
『いつ帰ってくるんだ?』
『わかんねえ。人間どもの声色もそんなに良くねえし、俺様はしばらく実家かもしれねえな。……あーあ、絶対おふくろがうるさいぜ』
憂鬱そうな声でヴァーミリアンがため息をついた。
ヴァーミリアンの母馬は賑やかな馬なのだろうか?
『おふくろも、1勝クラスだけど競走馬だったんだよ。兄貴も砂でいい成績残してて、芝はお前が取ってこいって送り出された。ここ最近勝ててねえって言ったら怒るぜ。親父の血を見せろ!とか言って』
ヴァーミリアンの父親は芝で活躍した馬だったらしい。
海外のレースでもいい成績を残したんだとか。
母馬が俺の父でもあるサンデーサイレンス産駒の良血なのも相まって、ヴァーミリアンは生まれた時から期待されていたようだ。
その寂しそうな横顔を見ていると、脳内にあの日のラインクラフトちゃんの言葉が蘇った。
── 夢を見るのは人間っスよ。自分は、その人間の夢と、その人間が繋いだ血をしょって走ってるんス
ヴァーミリアンも同じなんだろうか。
そこに自分の夢はなくただ、ただ、願いもせずに繋がれた血を繋ぐためだけに、走っているのだろうか。
喉までせりあがったものは、けど言葉にならず、音にもならず、小さな嘶きとなった。
それがずいぶん弱気に聞こえたのか、ヴァーミリアンが明るい声で口を開いた。
『まあ意地でも戻ってきてやるけどな!その時はダサいメンコ脱いどけよなァ!あとメンコじゃプリケツは隠せてねえぞ天使ちゃんがッ!!……あばよ!!』
『プリケツっていうんじゃねえええええ!!!!……ッあばよ!!元気でなあ!!』
少ししんみりとした空気が台無しだ。
いや、わかってて台無しにしたんだろう。
普段から性癖ヤクザみたいな振る舞いの牡馬だけど、実は繊細で、空気を読むのが上手いやつだから。
黒鹿毛の馬体が馬運車に収まると、車がゆっくりと動き出す。
いまだ肌寒いだろう北の大地へと、俺の友達を乗せて。
ダービーが近づくにつれ、物思いにふける時間は増えていった。
頭の中に常に、ラインクラフトちゃんの言葉が響いている。
その時々によって言葉はまちまちで、けどいつだって最後の言葉は一緒だった。
── サンジェニュインくんもそうっしょ?
疑いのない声だった。
まっすぐとした目で、違わないと信じていた。
それに言葉を返せなかった俺は、じゃあ何を背負っているんだろうか。
自分の夢を?
……そもそも、馬になりたくて成っているわけじゃないのに。
けど、それでも走りたいと思ったのは、自分の意志に他ならない。
タカハルやタクミに育てられ、テキや目黒さんとの調教の日々を経て、いつか、あんたたちの育てた馬は最高の馬だよと、そう思ってもらいたくなった。
そこに背負うものはなかった。
漠然と、そうありたいだけだったから。
それが少しずつ、変わっていったのはいつからだろう。
新馬戦で負けたとき?
カネヒキリくんともう一緒に走れないと知ったとき?
弥生賞で倒れたときか、鞍上が芝木くんから柴畑さんに変わったときか?
それとも、皐月賞でディープインパクトと同着になったとき?
漠然とした気持ちに埋まった、何かの種が芽吹きそうな気がする。
でもまだ、いつかその芽から咲く花の名前が、今の俺にはわからない。
そもそも、その花さえ自分の「夢」なのかがわからない。
夢を見るのは人間だと言い切り、血を繋ぐために走っているラインクラフトちゃん。
海外レースで活躍した父と、良血の母という重い期待を背負うヴァーミリアン。
シーザリオちゃんだって、ダービー馬の父を持ち、ずっとずっと期待されていると言っていた。
怪我で引退を余儀なくされ、幻の三冠馬とまで呼ばれた馬を父に持つカネヒキリくんは、ダート路線に変更する時はどんな気持ちだったんだろう。
そんな、考えればキリのないことをずっと、ずっと考え続けている。
俺はどうして、レースで勝ちたいのか。
なんのために勝ちたいのか。
どうして最高の馬と呼ばれたいのか。
どこに種を蒔いたかさえわからなくなった思考の畑に水を撒いたのは、カネヒキリくんの言葉だった。
『
温度のない声だった。
『背負うものもない』
すべてを断じる声だった。
『走っているのは
畑からにょき、と芽が出る。
『【勝ちたい】理由なんて── 負けたくない、それだけだ』
そうして知った花の名前は、俺の目を覚ますには十分すぎた。
負けたくない。
負けたくない。
負けたくない。
誰が相手でも、負けたくない。
生産牧場の、馬主の、厩舎の、騎手の、俺の馬券を買うすべての人間の夢を背負う以前の、たったひとつのシンプルな理由。
その理由こそが、最後に俺の背中を押すと、知ってしまった。
「── 初夏の足音が近づいてまいりました。第72回東京優駿。芝2400メートルの左回り。晴天に恵まれ、馬場も良の発表です」
2005年5月29日 東京競馬場。
史上初、2頭の皐月賞馬が揃ったそのレースに押し掛けた観客たちはみな、声を揃えてこう言う。
“ゴール後に響き渡ったあの歓声を、生涯忘れることはないだろう”
そしてその馬に後年、心を込めたキャッチフレーズが寄り添う。
“── 諦めない、だから愛した”
出したくてたまらなかったラインクラフトちゃんさんが登場です。
ラインクラフトちゃんさんは、その血筋を見ると社〇グループさんの「血を繋ぐ」の強い意志が見れるのでこの描写に……
まだまだ出番はあるよ!!!!
次回、日本ダービー!!そのあとに掲示板回!!
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17.今だけは ─ 第72回東京優駿
有識者ニキネキたちから日曜日のオッス馬たちはオッスオッス!してなかった、あれはそういう喧嘩みたいなもの、という知識を得てまたひとつ賢くなりました。
なおさらこの話の主人公が大変な状況に置かれているのがわかってしまったわね……
主人公のことはさておき。
本日で初投稿から1か月経ちました。
ちなみに初投稿日の16年前が作中、東京優駿日本ダービーの開催日です。
つまり本日6月29日から16年1か月前にサンジェニュインが出走しました(美貌馬時空)
リアルタイムです(リアルタイムではない)
史実では出走したシャドウゲイトさんに代わって主人公が必死に走るので最後まで読んでくださいお願いします主人公がなんでもするから……!!
【特集:第72回東京優駿直前】
《勝った後も、馬は泣いていた── もう1頭の皐月賞馬・サンジェニュイン号》
史上初、2頭の皐月賞馬が誕生してからまだ1か月あまり。
片や無敗の、片や白毛初の。
伝説は思わぬところからやってくるというが、今年の皐月賞ほど、予想外のレースはなかっただろう。
今回は白毛として初のGⅠ勝ち馬であり、皐月賞馬となったサンジェニュイン号について少し語っていきたいと思う。
サンジェニュイン号の血統については、右記の図を見ていただければあとは文字にして語ることはない。
名種牡馬・サンデーサイレンス号の初駒であり、皐月賞馬となったジェニュイン号とまったく同じ血統のこの馬は、調教を苦にせず真面目に取り組む、おとなしい性格だと言う。
初産の母馬による育児放棄から人間に育てられたため、非常に人懐こいサンジェニュイン号は騎乗馴致もコース調教もスムーズに熟し、万全の状態でデビュー戦に挑んだ。
そこで最大のライバルとなるディープインパクト号にハナ差8センチと惜敗するが、続く未勝利戦では小倉2000メートルを大逃げでレコード勝ち。
トップスピードで逃げているにも関わらず、最後まで失速せずに走り切る抜群のスタミナがあり、差し競り合いにも果敢に挑む勝負根性が持ち味だ。
ディープインパクト号とはデビュー戦から3戦し2敗引き分けの状態だが、負けた2戦は「ハナ差数センチ」の大接戦であり、2頭の実力差はさほどないと見える。
調教時の大人しさとは裏腹に、非常に負けず嫌いな一面もあり、また、勝ち負けを理解しているとも言われている。
その理由として真っ先に挙げられるのが、レース後に流す大粒の涙だ。
快勝した未勝利戦、あすなろ賞では涙を見せなかったサンジェニュイン号が、新馬戦や皐月賞で涙を流す姿は、読者諸君の記憶にも新しいのではないだろうか。
厩務員の胸に顔を寄せる姿が競馬場の大スクリーンに映ると、思わず貰い泣きしてしまった、という若い競馬ファンも多い。
私はすっかり年老いてしまったが、サンジェニュイン号の負けて悔しがる、とでもいうのか、あの大泣きを見ていると、馬はただ漠然と走らされているわけではないのだな、と心を擽られる。
ゴール後も走り続ける足腰の強さや土壇場の勝負根性、血統的にも
ライバルのディープインパクト号と共に3歳世代頂点を争う馬であることに相違ないだろう。
心配事があるとすれば、この馬は他の馬の関心を引きやすいのか、パドックや返し馬等で絡まれやすい傾向にある。非常に我慢強い馬なので、それがストレスになっていなければ良いと思う。
東京優駿ではぜひ、喜びの涙が見たいものだ。
「サンジェ、お前は強い馬だ」
東京競馬場についたその日の夜、テキはそう言って俺の
「どんな調教にも文句を言わなかったな。嫌がりもせず、ただ毎日頑張って熟してくれた」
研究所から戻ってからの日々がひとつ、またひとつと頭の中に浮かんでは流れていく。
「完璧な馬など存在しない。お前も完璧ではない」
シミひとつない白い首に手を添えて、まっすぐと俺の目を見つめたテキの顔は、穏やかだった。
「けど、お前は最高だ」
── 最高のお前がした努力は、お前自身を裏切らない。
どんな形であっても実になるのだと、言葉が通じるかも定かではない馬に、毎日のように言い聞かせて。
そしてこうも言った。
「努力を裏切るのは、諦めだ」
だから諦めるな。
苦しさの中にある、お前だけの光を見つけ出せ。
「お前は諦めない馬だ、サンジェ。それは、それこそが、名馬の条件だと、俺に信じさせてくれ」
その力強い声を、瞳を、手の熱さを。
俺はきっと、忘れないだろう。
初めての東京競馬場。
レース本番2日前に入厩した出張馬房には何頭か見慣れた馬がいて、全頭が俺を見ると急に元気になったりしたが、まあメンコの効果かうまだっち!はしていない。
すげえなメンコ!もう一生外さんとこ!あっごめん嘘、蒸れるから夜は外すわ!
飼い葉食ったり水飲んだりしてのんびり過ごし、迎えた5月29日、日本ダービー当日。
『うおおおおん!!!!かわいこちゃんごめんなああああ!!!!』
『うわ声でっか!!もう良いって、わざとじゃないのは解ってってから!!』
どでかい声で叫びながら俺に駆け寄ってきた黒鹿毛の馬体。
そう、弥生賞で隣ゲートに入っていた、俺の美貌に興奮して立ち上がってしまった、あのニシノドコマデモだ。
『かわいこちゃんも出遅れちゃったし……レース後倒れちゃったしぃ……!アッ身体は大丈夫!?』
『俺の顔が良すぎたのが悪いんだよ……ごめんなこんな美貌が隣のゲートで。あと身体は平気!全然元気だから気にすんなよ』
この顔に興奮しないとかオカシイまである。
……いやオカシイわな、ごめん、もうだんだんと自分の美貌を疑わなくなってきたわ。
でも俺の美貌が圧倒的なのは事実なのですまんな。
『でも……でも……』
『意外と気にしぃなんだな……うーん』
ニシノドコマデモはゲート立ち上がりの影響で弥生賞では7着に沈んだが、皐月賞の後に行われたダービートライアルレース── 日本ダービーの優先出走権が得られるレースのこと ── の一つ、テレビ東京杯青葉賞では6番人気にも関わらず、後ろからの競馬で怒涛の追い込みをキメて2着に滑り込んだと目黒さんに聞いた。
同レースは日本ダービーが開かれるこの東京競馬場開催で、しかも距離も同じ2400メートルだ。
1着馬であり、今回の日本ダービーにも出走しているダンツキッチョウとはタイム差なし、クビ差での2着という好成績。
日本ダービーに出走する馬は全頭が油断できない敵だが、2400メートルを走ったことのない俺にとって、ニシノドコマデモは強敵の1頭と言える。
なのでこんなことを頼むべきではないのだが、どうせなら全力の相手と競り合いたいからな!
『今回のレースではよそ見せず、俺のケツ追わず、全力で走ってくれよ』
これで手打ちな、と笑いかけると、ニシノドコマデモもうなず── かなかった。
むしろ悩まし気な表情を浮かべていた。
『エッそれは……全力で走るのはもちろんだけど、かわいこちゃんのケツを追わないのは……譲れない』
『うん、ちょっと俺から離れてくんない!?!?』
もういろいろ台無しである。
こいつメンコ効いてないのか????
ケツを見るなケツを。
「サンジェニュイン、そろそろ行こうか」
あっ目黒さんナイスタイミングぅ!!
あばよ、ニシノドコマデモ!返し馬とゲート前で会おう!
目黒さんに手綱を引かれて出張馬房から装鞍所内の馬房へ移動する。
装鞍所は字面の通り、鞍を装着するところだ。
ここで前検量が終わった柴畑さんを待つ。
騎手はレース当日、出走前と後にそれぞれ1回、検量をする。
出走前に行う検量を、前検量と呼ぶのだ。
騎手には決められた重量── 負担重量というのだが、それで騎乗することが義務付けられているそうで、これに違反すると、たとえ俺が1着を取ったとしても失格になってしまうのだとか。
ちなみに負担重量には
あ、柴畑さん!
「柴畑さん、お疲れ様です。持ちます」
「ありがとうございます。……サンジェニュイン、調子は大丈夫か?」
無問題!超元気!
柴畑さんと目黒さんの二人掛かりで鞍を着けてもらう。
この瞬間って本当にテンションあがるよなあ!
戦い前の高揚感ってやつか?
「よし。── それでは目黒さん、よろしくお願いします」
「はい、任されました。行こうか、サンジェニュイン」
おうよ!
威勢よく嘶いて脚を進める。
これからパドックをぐるりと回って、観客の皆さんに調子の良さをアピールだ!
今回も別周だからって買うのを躊躇わないで!俺の馬券を買って!
俺をセンターで勝たせてくれ!……これは別のやつだな。
ん?あれ、今の俺って何番人気だっけ?1番?1番かな?
「サンジェニュインは2番人気か」
2番ン!?!?
俺、皐月賞勝ったじゃん!!……同着だったけど。
1番人気はどこのどいつだ!?
「1番は……ディープインパクトか」
ああ……まあ、そうだわな。
あいつも皐月賞馬だし、デビューしてから無敗だもんな。
俺と同じ社来グループ出身だけどあっちはなんかグループぐるみで推されてない?
社来の星!みたいな感じで……同じ社来なのに……。
……べ、別に悔しくないから。
この嘶きは悔しい嘶きじゃないから!!
ヒィン……!!
「……サンジェニュイン、1番人気が必ず勝つわけじゃないぞ」
わ、わかってるって!
たださあ、やっぱりさあ、1番人気って良くない?
1番人気って、それだけ多くの人に「この馬は勝つぞ!」って思われてる証っていうかさ。
もちろん1番人気に推されたからって好走確実ってわけじゃないけど……それまでのレースを評価してもらえてるって気がしちゃうんだよな。
「1番と2番でオッズの差はそれほどない。僅差だよ」
ええ……ほんと?
「本当。……馬券の1番人気じゃなくったって、俺にとってはサンジェニュインが1番だよ」
目黒ざん゛……!
俺も目黒さんがナンバーワン厩務員だよ!
「それでも不安なら── 昔、大舞台を勝った騎手の名言を、お守り代わりに教えてあげよう」
そう言って、パドックを回り切る前に、目黒さんが優しい声で囁いた。
「【1番人気なんていらない、1着だけが欲しい】」
声は深く、深く響く。
「……お前はきっと、そういう馬だよ」
俺の鬣を撫でた手は、言葉以上に優しかった。
「止まーれー!」
おっと、騎乗合図だ。
目黒さんとはここでお別れである。
「柴畑さんと、それと何よりも自分自身を信じて、楽しく走れよ、サンジェニュイン」
ぎゅう、と目黒さんが俺を抱きしめる。
手早く離れると、俺に騎乗する柴畑さんの片足をひょい、と軽く支えた。
柴畑さんが軽い騎手とは言え、目黒さん力ありすぎでは?こわ……。
いや、まずはごく自然と俺と目黒さんで会話が成立することに恐怖を覚えるべきだわ。
目黒さんマジで俺の言葉を理解してない?してるよね?
ちょっ、目を逸らさないで目黒さん!!
「よし、ありがとうございます目黒さん」
「いえ。今度はこちらから言うべきですね。……よろしくお願いします、柴畑騎手」
「はい!任されました!」
俺の鞍上で柴畑さんが力強く頷いたのがわかる。
俺も目黒さんに力強く嘶いて見せた。
「……今日も勝ちに行こうな、サンジェニュイン」
おう!よろしく頼むぞ、柴畑さん!
手綱が軽く揺すられ、いざ行かん返し馬!
日本ダービーの俺は、皐月賞とは一味違う馬なんだって、ここにいる全頭に叩きつけてやる!
このメンコを見ろ、ガン見しろ!でも近寄んな!!
『あああああ!!!!どうしてえええええ!!!!』
「さあ返し馬、ですが……」
「5番のディープインパクト、もう完全に8番のサンジェニュインにくっついてますね」
「鞍上もこれにはそろって苦笑い。皐月賞でもサンジェニュインから離れようとしないなど、まあかなり仲がね、いいんでしょうかね」
「ですかねえ……サンジェニュインはちょっと、いやかなり嫌そうに見えます」
ディープインパクトが俺から離れない。
な、なにを言っているかわからないと思うが、やられている俺が一番わかっていない。
うまだっちしてないよな?下半身も衝撃!なことになってないんだよな?
チラ見するとディープインパクトのインパクト!な部分は大人しかった。
鼻息も荒いわけじゃないし、パッと見は興奮状態にはないように見えるが、俺がちょっと身じろぎするだけでピタッと張り付いてくるんだわ。
前世コバンザメか?
「なんか、前に会った時より距離が近くないか……?」
「……本当に、すみません」
ディープインパクトの鞍上が死にそうな声してんぞ。
お前普段から迷惑かけてんのか?やめてやれよ騎手の人たちは減量だなんだ大変なんだぞ。
この際こうやって俺にくっつくのはもうどうでもいいから、今度から騎手の人を労わってやれよ。
わかったか?
え、わかんない?
どっち?
『……お前マジで喋んねえな!!なんなの!?』
結局ほぼくっついた状態で待機場を駆けた。
他馬は思った以上に俺に寄り付かない。
これもメンコの効果だろうか、興奮気味ではあったが、多くは自分自身に集中しているように見えた。
メンコ、やっぱりすげえな!
……逆に顔を隠さないとうまだっち!予備軍だらけになるって、俺の顔……美しすぎっ!!
そうこうしているうちに、感度の良い耳が音楽を捉える。
カチッ、と俺の中で、
「一部混乱もありましたが、返し馬を終えてゲート前。ファンファーレが軽やかに、そして高らかに鳴り響きます。天気に恵まれて晴れの良馬場。世代の頂点を争う18頭が1頭、また1頭とゲートに誘導されていきます。これが生涯ただ1度切りの勝負。勝ったその瞬間から、その馬は生涯、こう呼ばれます。── ダービー馬、と」
ゲート前、馬の、騎手の、いろんな人の熱が伝染していく。
ビリビリと、まるで殺気にも似た鋭い感情が、頭絡のこすれる音さえ熱く感じる熱量で身体を駆け抜ける。
「3枠5番、これ以上言うことは何もないでしょう。ここを勝てば無敗のダービー馬。もはや敵は皐月を分け合うサンジェニュインただ1頭か?小さな身体に大きな闘志を宿して、無敵の末脚・ディープインパクト」
小柄な馬体がするり、ゲートに入っていく姿を眺める。
「……
ぽんぽん、と俺の首筋を柴畑さんが撫でる。
振り向くと、のんびりした顔で俺に微笑んだ。
「1枠2番、ニシノドコマデモ。日本ダービートライアル・青葉賞では6番人気からの2着入線。後方から差す競馬で、まさに西のどこまでも駆け抜けようかと言う馬です。弥生賞ではゲートで立ち上がって出遅れてしまいましたがはたして今回はどうなるでしょうか」
『かわいこちゃ~ん!お互い頑張ろうな~!!』
『こっち見んな!ちゃんと前向いて走れよな!!』
完全に後ろを向いたままゲートに向かうニシノドコマデモに声を飛ばす。
わかったあ、と調子のいい声が聞こえて、少し張っていた肩の力が抜けた。
「3枠6番はアドマイヤフジ。皐月賞から3戦連続で鞍上は
ようやく、俺の番だ。
係員が俺の綱を手に持ち、開かれたゲートへ脚を進める。
「装いを新たに、ダービーが初お披露目となった栗毛のメンコに太陽の刺繍が眩しい白の馬体、4枠8番にサンジェニュインが誘導されていきます。史上初の2頭の皐月賞馬、その片割れ。目指すは白毛初のダービー馬です」
ゲートに収まった、その瞬間。
離れた場所から、ほとばしるエネルギーを感じる。
狭苦しいゲートに隔たれてもなお、叩きつけるように、熱く、熱く。
俺は一度、強く目を瞑った。
その暗闇の中をたくさんの光が飛び交う。
今までの日々、積み重ねたすべて、そしてこれから。
「全頭収まりまして── 東京優駿日本ダービー、今、スタートしましたっ!」
張りつめていた息を吐き出し、脚を前へ、前へと押し進めた。
「全頭鼻先揃ったきれいなスタートです。ハナを切るのはこの馬、8番サンジェニュイン」
「堂々とした走りです。抑え気味にしていた皐月賞とは打って変わって非常にスピードのある逃げ方。この馬のスタミナなら最後まで持つでしょう」
最初のコーナーを目指して、まずは内によりつつ
皐月賞では最後にディープインパクトと競り合うことを前提にしていたため、2着馬2馬身差を意識して走っていた。
飛ばしすぎず、されど抜かされないくらいに早く。
だが日本ダービーでそれらをやっている余裕はない。
勝ちたい。
夢を背負うとか、それ以前に。
負けたくないから、今、一番俺に合う走り方で、勝ちに行く。
「4馬身離されて2番手につけるのは10番コスモオースティン、1馬身差で外から13番ダンツキッチョウ、差がなく16番シルクトゥルーパーと17番シルクネクサスが並んで、さらに1馬身空けたところに7番インティライミ、11番ペールギュント、並んで4番エイシンニーザンと14番アドマイヤジャパンが続く、2馬身離れて6番アドマイヤフジがやや、やや内に寄っているか、後方集団は2番ニシノドコマデモが先行して3番ローゼンクロイツが半馬身差で追走。1番ブレーヴハート、9番コンゴウリキシオーは珍しい後方からの競馬、その横並びを伺うのは1番人気のディープインパクト落ち着いています。12番マイネルレコルトがその内側からなかなか抜け出せないか。18番ダンスインザモアが外からじわりと伺って、シンガリは15番シックスセンス」
皐月賞の後、調教の中で柴畑さんは俺にこういった。
【競馬は信頼関係だ、サンジェニュイン】
お前は前を向いてくれ。
前だけを見て走ってくれ。
後ろは俺が見る、そこは俺の領分だから。
俺はお前の脚を誰より強く、信じるから。
『……俺も、柴畑さんを信じてるよ』
一度強く、手綱を扱かれる。
その瞬間、スピードを上げたままコーナーカーブへと突入した。
「皐月で苦戦したコーナーカーブ、速度を上げた状態で上手く回りましたサンジェニュイン!さあぐんぐん進む1頭を追いかけて、先行中段につけていた7番インティライミがここで上がってきました!」
トップスピードを保ったままコーナーを曲がれるよう、何度も練習をした。
柴畑さんを落として、かすり傷、打撲を負わせた回数は十を越してからは数えるのをやめた。
蹄鉄がありえない早さですり減るから、装蹄師さんを何度も何度も呼び寄せた。
そうした積み重ねが、俺に自信を与える。
距離は今まで出走したレースよりも400メートル伸びている。
最初は温存する戦法だったのを、それでも走らせてくれと願ったのは俺だ。
今まで一度も文句を言わなかった調教で、先行追走をしようとした柴畑さんを激しく拒んだ。
解ってる、勝つために柴畑さんも必死なのは解ってんだ。
でもやっぱり、
「5番ディープインパクトがローゼンクロイツを抜いて前へ、じわりじわり影を伸ばして上がっていきます」
「この馬にしてはやや速いペースです。先頭を走るサンジェニュインとの差を縮めたい思惑でしょうか」
「もう1度先頭から見てみましょう。ハナを進むサンジェニュインから5馬身に差が広がってコスモオースティン、ここまで上がってきたかインティライミが前コスモオースティンを抜かしに掛かる、それに並ぼうとシルクトゥルーパー、ダンツキッチョウはややペースが落ちているか1馬身離されています。半馬身空いたところにシルクネクサス、ペールギュントが2馬身差を詰めようと追いかけていますが……──」
身体にまだ疲労感はない。
むしろ、いつもより脚が軽く、早く動いているような気さえする。
この脚なら、この脚ならば1馬身でも、2馬身でも大きく差をつけられる。
差だったらなんだっていい。1ミリでも1センチでもいい!
ディープインパクトよりも前へ、どの馬よりも前へ。
油断などしない。慢心などない。
取るに足らないその小さな差こそがすべてなのだと、俺自身、痛いほど知っているから。
知っているのに!
「早くもサンジェニュインが3コーナーへ入って── 来た!来たぞ来たぞ、ディープインパクトだっ!早くもディープインパクトここで仕掛けに来たかっ!?鞍上から鞭が入って一気にスピードを上げてきた!いいのか竹、ここで仕掛けていいのか!?」
思い知る。
このレース、本気なのは、負けたくないのは、俺だけじゃない。
「衝撃の末脚!大外から先行集団を一気に抜き去って、今、トップを奪い取ったのはディープインパクト!」
鹿毛の馬体に交わされる。
寸で差し返し、されど再び交わされ。
頭絡がジワリ、顔に食い込むほど頭を前へと前へと倒す。
「4コーナー曲がってさらにディープ!ディープが差をつける!1馬身、2馬身、3馬身!サンとの間に差が広がっていくがこちらも負けじと駆ける!残り400メートル!2頭からさらに離れてコスモオースティンが、いやインティライミが絡もうと必死に脚を動かします」
腹に、尻に、柴畑さんの鞭が唸って全身が痺れる。
その痺れに、信頼に、応えたいのに。
目の前の緩やかな坂が、今はただ高い壁にしか見えない。
ああ、どうして最後はいつも、ディープインパクト、お前がそこにいるんだろう。
「もう無理か、追いつけないかサン!ぐんぐん差をつけてディープインパクトの脚、脚、脚!緩みなく前へと駆けて行く!ディープだ、ディープインパクトだ!ここで勝てば無傷の……──!?」
……苦しい、苦しい、苦しい!
もう脚を止めたい、休みたい。
でも、それでもと足掻く。
その苦しみの先に、光があると信じて。
俺は絶対、負けたくない!
「しかし太陽だっ!太陽が昇る昇るサンジェニュイン!東京競馬場の坂、諦めを知らぬ太陽の猛追!3馬身が2馬身、1馬身とあともう少しだぞ!だがディープも粘る!粘る!逃げる!ディープインパクトっ!追いすがるサンジェニュインが並ぶ!ダービーもこの2頭の最終決戦!どっちが勝っても2冠馬だ!竹が、柴畑が、鞭を振って首を押して、それいけと2頭が狙うのは!」
ディープインパクト、お前にだけは、負けたくない!
「世代の頂点ただひとつ……──!2頭並んでゴールイン!」
鳴り響いたはずの歓声が、無音、静寂。
ゴール板を踏みぬく、その刹那。
真横のディープインパクトと確かに、目があった。
「3着入線はインティライミ。2馬身離れてシックスセンスが4着。5着は3頭のもつれあいか、ニシノドコマデモが体勢有利に見えました」
「1着と5着に関して審議を行います。確定するまでお手持ちの勝馬投票券はお捨てにならずにそのままお持ちください」
ドッ、と爆音のように【声】が響いて、世界が騒がしくなっていく。
いつも通り、ゴールした後も脚を緩めることなくターフを駆け抜けた。
後ろに迫る熱視線を振り払いながら、ただ前へ、ひたすら前へと。
その走りから1頭、また1頭と馬が離れていく。
鈍くなった脚を労わるようにゆっくりと速度を落とすころには、俺の傍にいるのはディープインパクトだけになっていた。
静止して息を整える。
あがる息の音さえも煩わしくて頭を振ると、柴畑さんが宥めるように俺の首を撫でた。
それからしばらく、ぼーっと青空を見上げて、思い出したように瞳を閉じた。
吐き出された熱は湯気のようにのぼって俺を包む。
一瞬とも思えるレースを夢に見て、まどろむように、俺はその鹿毛に振り向いた。
『負けたくないなあ……お前もそうだろ?』
応える声はない。
「先に5着の審議が付きました。……5着入線はニシノドコマデモ!果敢な攻めの走りで掲示板に滑り込みました」
ただ丸い瞳がじっと俺を見つめていた。
その目を見ていると、ふと、シーザリオちゃんの言葉が脳裏を掠めた。
── 好敵手を得るとさらに強くなれるから
── サンジェニュインさんもいるでしょう、好敵手
違うと
過去、これほどの仕上がりはなかった。
テキも、目黒さんも、柴畑さんも、この日のために尽くされた熟慮のすべてが、俺を磨いて光らせる。
脳裏にまた、別の声がする。
── 完璧な馬など存在しない。お前も完璧ではない
── けど、お前は最高だ
そう、今日の俺は最高だった。
最初から1着以外は考えなかった。
ただ前へ、この脚を、頭を、鼻の先を突き刺して。
そのためだけの疾走だった。
それでもディープインパクト、お前に勝てないのだとしたら。
「さあ1着もそろそろ決まろうかと言うところ」
「正直どっちが勝ってもおかしくはないですよ。ディープが勝てば無敗のダービー馬、サンが勝てば初の白毛のダービー馬が誕生します」
── ああ、受け入れよう
ディープインパクト。
お前が俺の、生涯の
「掲示板が
東京競馬場は晴天。
だけど、太陽は雲に隠されたまま、日本ダービーの幕が下りる。
場内に響き渡る歓声に背を向けて、俺はじっと、じっと目の前の馬を見つめ返した。
俺よりもずいぶんと小柄な鹿毛。
闘気のように揺らめく熱を纏うディープインパクトは、どこか別世界を生きているようにさえ思えた。
「結果がすべて、それが競馬であります。勝者にはより大きな祝福の声を!……しかし、しかし私は彼にも拍手を送らずにはいられない。彼の、サンジェニュインの疾走こそが、私の、夢でありました……!」
そうして鳴り響いた拍手は雨のようだった。
視界は鮮明で一切の揺らぎはない。
霞んだりもしない。
そこに水気はなく、ただ平坦な世界が広がっているだけ。
それからさえも切り離された場所に今、立っている。
おめでとう、と頭上で交わされる声も、雨も、すべてが遠く聞こえた。
ごめんな、と柴畑さんが言う。
お疲れ様、とテキが言う。
頑張ったな、と目黒さんが言う。
俺の馬体に触れ、顔に触れ、心に触れ。
やさしさの膜がきれいなドームを作って包み込もうとする。
それでも涙は出ない。出せない。
今だけは、どうしても、泣きたくなかった。
次回 ウマ娘回、ではなく、もう1話だけ競走馬回にお付き合いください。
次回で完結です。
第一部がな!!!!
今回の話を書くにあたって参照した資料
・騎手の1日:週末編
→検量室、装鞍所、パドックなどの知識
・東京優駿2005年5月29日
→史実の日本ダービーの出走馬情報、騎手情報、コーナー通過順位、レース映像
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18.満足するまで
前話、思ったよりいろいろな意見が感想欄に寄せられてて嬉しかったです。
主人公が凱旋門賞を制覇するのは2006年。
それまであと1年あるので、その1年でどんなレースに、どんな風に主人公が挑んでいくか、もうしばらくお付き合いいただければと思います。
今回のサブタイトルはいつも通り競走馬回のタイトルなのですが、8割掲示板回です。
掲示板はPC版の2ch(今は5ch)の表示形式を再現していたのですが、頻繁に「未来にレスしてますよ」と誤字報告を戴くので(8割コレ)
再現を諦めてシンプルにやることにしました。
そのうち他の掲示板回も修正します。
2005年黒いのと白いのを応援するスレ34
514:この名無しが熱い ID:2ZH0eA+lP
2日経ってようやく落ち着いてきたか
前スレまですっげえ勢いだったな
515:この名無しが熱い ID:XlsJabSZQ
まあ熱かったからな
516:この名無しが熱い ID:j9eu0pxfx
久々に競馬場に行ったわ
517:この名無しが熱い ID:vcp9smvu3
マジで悔しい……差せたと思ったのに……
518:この名無しが熱い ID:1ex5M6zS9
サン単勝一点買い俺、馬券を捨てられず
519:この名無しが熱い ID:PeopK2Ggq
>>518 おま俺
520:この名無しが熱い ID:9nowRmONF
>>518 いつの間に書き込んだんだ俺
521:この名無しが熱い ID:IcW9ZwI7f
負けたらぶちまける馬券を捨てられないギャンブラー大発生やな
522:この名無しが熱い ID:KtrujLlJC
ゴール板踏んだ瞬間とか俺「っしゃあ差したぞワレェ!」って叫んだからな
隣のディープ単勝買いおじさんも同じこと叫んでたが
523:この名無しが熱い ID:YdXO6Ea+1
サン買いおじ「差したぞワレェ!」
ディープ買いおじ「差したぞワレェ!」
1cmとか目視じゃわからないわ
524:この名無しが熱い ID:pGtAgfw4V
まーた写真判定かよ、と言いながらディープ、サン、インティライミの3連複を買った俺はほくそ笑んでました
525:この名無しが熱い ID:/uZSf0dtu
インティライミじゃなくてシックスセンスを入れた俺、大泣き
526:この名無しが熱い ID:1IEVcwdyL
この2頭が揃うと単複決まったようなものだからつまらんな
527:この名無しが熱い ID:Wt1NdvE5l
>>526 出たよネット競馬おじだろ、さては行ってないな府中
528:この名無しが熱い ID:unk/nIdOl
結局2頭の競り合い、なのはまあ気持ちわかるんだが、その競り合いが熱いんよ
529:この名無しが熱い ID:x09YEue2Q
ダービー、信じられないくらいサンジェニュインが勝つと確信してた
530:この名無しが熱い ID:izdhiBOcm
気迫が他の馬と段違いだったからな
パドックと返し馬はまだ目つきも穏やかだったけど、ゲート抜けた瞬間の目つきがプロ
531:この名無しが熱い ID:ir93r08aI
返し馬でディープに張り付かれて嫌がってたのが嘘みたいだよな
532:この名無しが熱い ID:8T0ZUn38c
これが同一人物、もとい同一馬かあ
konoumaga.sgo/sugirunen.img
533:この名無しが熱い ID:mfnxx0ay9
>>532 顔つき違いすぎwww
534:この名無しが熱い ID:AsRQ+M2k5
>>532 前スレでも別角度からの写真あったけどマジで別人やんwww
535:この名無しが熱い ID:eu22wjhU5
サンジェが必殺仕事人なのはそうなんだが、ディープも並の状態じゃなかったよな
536:この名無しが熱い ID:oaVI1g7ad
返し馬でサンに張り付くあたりメンタルが鋼なのは確か
537:この名無しが熱い ID:0U5SzCqwj
あれめっちゃ竹が頭下げててワロタ
538:この名無しが熱い ID:0cFZEotTe
弥生とか皐月とか、サンが出るレースって牡馬が馬っ気出し過ぎじゃない?
サンは出したことないのに……サンって牡馬なんかほんとに
539:この名無しが熱い ID:KzpUu+CJ1
サンが牡馬かどうか、信じられないそこのあなたはJRA公式サイトを見てどうぞ
540:この名無しが熱い ID:/koz+zC/u
おそらく未来永劫語られることになるJRAの競走馬研究所の見解
541:この名無しが熱い ID:LnCnNIEA9
要約すると
「サンジェニュインは間違いなく牡馬なんだけど顔が良すぎて他の牡馬が臨戦状態になる」
だからなアレ
542:この名無しが熱い ID:qIIogyI9c
何度見ても笑う
543:この名無しが熱い ID:JPqpTk23g
その衝撃で霞む「サンは平均より大きな心臓と強い肺を持ってる」報告
544:この名無しが熱い ID:ST6tdj3wG
そんなオペラオーみたいな結果なのにドトウみたいなレースってどういうことなんですかねえ
545:この名無しが熱い ID:4G4Y6abMW
圧倒的僅差のオペラオー&ドトウと、ゴール抜けても写真判定をするまでどっちが勝ったかわからないディープ&サンジェではまた違うんだよなあ
546:この名無しが熱い ID:TxwIeBHuc
一回沈んだかと思ったのに諦めずに走るから、ディープ馬券の俺も思わず「行けーっ!差し返せーっ!」と言ってしまう
547:この名無しが熱い ID:fVSuk2yMa
後方大外から先頭集団を一気に抜き去ったディープの末脚、これはもう何も言う必要はないでしょ
ただそれと同じくらい、サンの懸命の走りも、何も言う必要がないくらい良かったってだけ
548:この名無しが熱い ID:X1nsFejCb
>>547 これなんだよなあ
549:この名無しが熱い ID:nq8SNdf6y
マジで夢を見せてくれてありがとうサン……今回は負けたけど次走が楽しみ
550:この名無しが熱い ID:0oxlzAJla
「サンジェニュインの疾走が私の夢でありました」には「俺もー!」って叫び返したかったな
551:この名無しが熱い ID:SB/64Lfj3
きったねえギャンブラーしかいないはずの競馬場で、あんなきれいな拍手を耳にするとは……
552:この名無しが熱い ID:690k8uCTo
競馬場に足を運んでる時点で >>551 もきったねえギャンブラー、把握
おそらく全裸なんやろな
553:この名無しが熱い ID:bkQ6Ws9xF
失った賭け金よりも満足感が強い
554:この名無しが熱い ID:hR+2/E32F
競馬場には子供連れで行くマイルドギャンブラーパパだっているんだぞ
俺のことだ
555:この名無しが熱い ID:5KYnCvM4k
子供が気に入って買ったサンの馬券、負けたのでいつもみたいに投げ捨てようとしたら子供に泣かれた
556:この名無しが熱い ID:Rs8xISowE
サンがいた生産牧場、皐月の後から「サンジェニュインソフトクリーム」とか「おうちのサン」と称してぬいぐるみとか売ってるよな
557:この名無しが熱い ID:EdwWSYSfy
白毛とかめっちゃ目を惹く
競馬詳しくないダチにサンの写真見せたら「白馬の王子が乗ってる馬じゃん!」って言われた
558:この名無しが熱い ID:suRecf2ip
人から見ても美形ホースって感じだから、そら馬どもからしたら、ねえ?
559:この名無しが熱い ID:kp8tIob7l
わざわざ検査した結果がコレでふざけてんのかってレベルだけど、さんざん検査してもこれ以外ないってんならもうそれは神の悪戯なんよ
560:この名無しが熱い ID:iMN2CrjS9
なんかレース思い出すだけで泣けてきたわ
ほんと悔しい、俺が乗ってたわけでも走ってたわけでもないけど悔しいわ
561:この名無しが熱い ID:VJ6GEI+Oq
わかる……
562:この名無しが熱い ID:nLWdcH1mI
写真判定ついた時の「負けたかああああ!?!?ほんとに負けたかああああ!?!?」感は異常
563:この名無しが熱い ID:U4RPWPCz4
1cm差とかさあ……そんなんほぼないも同然なんよ
564:この名無しが熱い ID:l6avdGFfR
されどそれが競馬と言うもの
結果が出た以上勝ち馬1頭、それ以外の17頭は負け
565:この名無しが熱い ID:w9pkZJWVg
つらいがこれが現実
566:この名無しが熱い ID:x11mmi6mR
ハナ差8cm、3cm、同着ときて今回が1cmか
567:この名無しが熱い ID:/jy/xuF0p
むちゃくちゃ惜しい
次走こそディープに先着して単独優勝してほしいわ
568:この名無しが熱い ID:D7E9mrl+S
と言いつつ俺はディープの単独優勝に賭けるッッ!!!!
次はなんだろ、菊花賞?
569:この名無しが熱い ID:7BcoplRv5
その前にトライアルレース出るんじゃないか
570:この名無しが熱い ID:QTIPSGb6o
どのレースに出てもサンを応援するが、ダービー後の様子が気がかりで気がかりで
571:この名無しが熱い ID:HNrvTiQq/
>>570 ダービー後になんかあったっけ?
572:この名無しが熱い ID:EdBEyWDtp
牡馬に追いかけられてたやつならいつものことだゾ
573:この名無しが熱い ID:lW7FKU5gT
あー、俺も、ゴールした後の様子は気になってたわ
負けたのに泣いてなかったもんな、サン
574:この名無しが熱い ID:tHSboPD6b
確かに
575:この名無しが熱い ID:ZmH3/DiLS
マジ?
576:この名無しが熱い ID:QIOnw/yr2
勝ち負けを理解していると評判のサンが負けても泣いてない、だと?
577:この名無しが熱い ID:yh4oDkJWG
それ、いわゆる「格付け」ってやつが済んだってことじゃないの?
578:この名無しが熱い ID:WhsyZPk/L
どゆこと?
579:この名無しが熱い ID:Q9nEauyDf
あー……
同着除けば3敗だから、ディープとサンの間でどっちか上かの順位付けがついて、もう勝った負けたの状態じゃないってことか?たぶん
580:この名無しが熱い ID:5NGm/Vta6
ええ……
581:この名無しが熱い ID:N/Wt+mWVW
ダービー後に心が折れる馬が多いって聞いてたけど、そっかあ、サンもおれちゃったか
582:この名無しが熱い ID:zY8cR3Fc8
かなし
583:この名無しが熱い ID:AAksErShy
いや、俺は折れたとは思わんけど
むしろ覚悟ついたって顔に見えた
584:この名無しが熱い ID:158YMlEH/
俺は泣くのを我慢してる顔に見えたよ
レース前からすんごい気合入ってたからさ
サン自身も負けたのはわかってるけど、涙を見せたくないのかもな
585:この名無しが熱い ID:KcsUVDd9P
みんな馬に夢を見すぎwww
586:この名無しが熱い ID:qcrPpH2PQ
馬券っていう夢を見てんだから今更だろ
587:この名無しが熱い ID:ucxE9VzaC
サンの涙だけは感情からだって信じられる
588:この名無しが熱い ID:w90cvlmVQ
あそこまで感情が豊かな馬もそういない
鞍上の乗り替わりで食欲減少、柴畑が毎週通ってサンに話しかけ続けてようやくまともに騎乗できるようになった、とか何度聞いても良いわ
589:この名無しが熱い ID:itFp1ZSMf
あすなろ賞までだけど、終わった後とか芝木にじゃれついてたり仲良さそうだったからな
乗り替わりは悪手なんじゃねーのってこのスレでも話題になってたけど
590:この名無しが熱い ID:pKtX02hhi
喜臣さんの皐月のインタビューで毎週芝木に騎乗のアドバイスもらってたって言ってたな
591:この名無しが熱い ID:l7r10i9jI
若手にアドバイスをもらうベテラン……
592:この名無しが熱い ID:3NmR23z7J
サンの騎乗に関しては芝木のほうが慣れてますので
593:この名無しが熱い ID:OhKxZHibI
弥生のアレがなければ皐月もダービーも芝木だったんだろうなあ、と思うと
594:この名無しが熱い ID:3ebA7PdvW
芝木に戻らんかな?
サンは芝木のほうが合ってるだろ
595:この名無しが熱い ID:bjSfOHeOv
言うて皐月でサンを同着優勝に導いたのは柴畑やぞ
596:この名無しが熱い ID:EbyyMmksI
弥生でもハナ差3㎝まで導いたのは芝木だぞ
乗り手が若手でもベテランでも、接戦を演じるサンは本当に強い馬だわ
597:この名無しが熱い ID:7knNOSL1E
芝木も今はGⅢとかOPとかほそぼそ乗ってるけど騎乗うまいんだよな
598:この名無しが熱い ID:XkesEO0C7
そもそもなんで乗り替わったんだっけ?柴畑が欲出した?
599:この名無しが熱い ID:Q/plqUAI2
>>598
弥生でサンが倒れたのがトラウマになってサンに騎乗できなくなったから
クラブの意向もあって乗り替わり提案されたときに柴畑を推したって芝木自身がインタビューで答えてたぞ
600:この名無しが熱い ID:q3L99k9TF
はえー、そういうことか
601:この名無しが熱い ID:uGggycS0r
心の傷は簡単には癒えないだろうが、菊花賞出るなら芝木に乗ってほしい
602:この名無しが熱い ID:aNDtKIeoY
芝木が乗ってる時のサン、走りながら表情が変わるのすき
603:この名無しが熱い ID:CZ10+8/+P
アレ芝木も口が動いてるから会話してるわ
604:この名無しが熱い ID:sw9G/+wVs
レース中におしゃべりするなww
けどま、走り終わった後に芝木にすりよるサンは見たい
605:この名無しが熱い ID:sxfbDIHMk
柴畑になってからは走り終わった後に騎手にじゃれついたりしなくなったからな
お上品なお坊ちゃんになっちまって……
けど勝ちに行くならこのまま柴畑だろ、もしくは外国人騎手乗せたりして
606:この名無しが熱い ID:cj04yXngX
また乗り替わりとかまずいですよ!
607:この名無しが熱い ID:71T0DzOzH
でも柴畑はなあ、そもそもサンの脚質とあってねえじゃん
608:この名無しが熱い ID:cZw0VgQTk
先行つけながらの追走が得意で、ハナはむしろ不得手な柴畑が乗っててハナ差に持ち込んでるの、馬の素の力を感じる
609:この名無しが熱い ID:mK0AF+PRO
>>608 喜臣さんの成長も感じられるやろ
けど俺個人としては、
サンに乗せるなら騎乗にヘンな癖ついてない慣れ親しんだ芝木か、
それこそ変幻自在の天才騎手・竹がいいんじゃないかって思う
610:この名無しが熱い ID:1DQuqLe8t
竹さんはディープの主戦なので永遠にないです……
611:この名無しが熱い ID:Mv7o4nJF3
竹がいっちばんサンの脚に合ってるのにいっちばん乗る可能性ないの笑う
612:この名無しが熱い ID:mbeO8nsWz
ディープの馬主が竹創を手放すとは思えんし
613:この名無しが熱い ID:8IJdH4mTT
あとディープとサンって今後もレース被るでしょ
被ってる限り竹が乗るのは無理
614:この名無しが熱い ID:tbbFVyfPL
馬に合わせるのが得意な縦山さんは?
615:この名無しが熱い ID:oboo/SjUX
騎乗停止で急な乗り替わりにサンが対応できるとは思えん……
616:この名無しが熱い ID:TgOq3Vg90
>>615 ノリさんが騎乗停止くらうのを前提にすな
617:この名無しが熱い ID:juT+zW7Fh
言うてどの騎手も騎乗停止食らう可能性はあるからな
絶対がない、それが競馬だぞ
618:この名無しが熱い ID:zAx0wC6zA
その通りなんだが最初に使われた意味合いと違うんだよなww
619:この名無しが熱い ID:/38im903v
国内のレースは芝木
海外のレースは竹
これやろ
620:この名無しが熱い ID:14Ojkwq1E
>>619 サンが海外のレース出るならそれはイコールでディープも出るってことなんよ……
621:この名無しが熱い ID:k0/umkZK5
サンは海外行くのにディープがいかない、は戦績や背後にいる関係者を見ると無いからな
622:この名無しが熱い ID:9F7Q23ZSS
サンジェニュインがいるところにディープインパクトありだぞ
623:この名無しが熱い ID:yP1mrp15t
(サンにとって)地獄ww
624:この名無しが熱い ID:tQLoOFi81
国内レースでもバッチバチに競り合ってほしいんだが、こんなに拮抗してんだから海外レースにでてワンツー取ってきてほしい気持ちもある
625:この名無しが熱い ID:0s7/lxUdQ
わかる
626:この名無しが熱い ID:b0M8lQ2Ly
海外レースで日本の競走馬がワンツーフィニッシュとか夢がある
627:この名無しが熱い ID:bwjD04GjO
ええやん夢かたっていこうや
628:この名無しが熱い ID:nPzpUgntK
そうだぞ、夢はおっきく
凱旋門賞に出走→サンとディープが他馬を蹴散らしてワンツーだ!!
629:この名無しが熱い ID:Ai/9dqQYw
>>628 でかすぎるんよ
630:この名無しが熱い ID:WKtK/QXZQ
>>628 そうなったらいいね(白目)
631:この名無しが熱い ID:LVpSKFyfK
いまだ凱旋門賞馬を出せてない国からワンツー出すとか難易度上がりすぎィ!
632:この名無しが熱い ID:34O2S6TAw
ダビスタかな?
633:この名無しが熱い ID:sLBGRYI9H
凱旋門賞出走さえどうなるか
634:この名無しが熱い ID:11uJHMauq
ディープは今の勢いのままなら出そうじゃね?
635:この名無しが熱い ID:ktY2nYLGw
社来が全面的にバックアップしてるからな
たぶんデビュー前からプランに凱旋門が入ってると思われ
636:この名無しが熱い ID:Py/cnuBJi
サンは?サンも社来じゃん
637:この名無しが熱い ID:MjO1IZhmP
サンジェは本原厩舎ってのでお察し、最初は期待されてなかったんだなあ
638:この名無しが熱い ID:wOojaVryg
蓋を開けたらビックリするくらい強かったわけだが
639:この名無しが熱い ID:2ucYfb16d
ここ最近のJRA、やたらとサンとディープをセットにしてくるので社来も裏から手をまわしてんだろ
640:この名無しが熱い ID:722lX8ZtU
そろえたくなるのはわかる
色、見た目、脚質、性格、どれをとっても真逆だもんな
それが競り合って白熱のレースを見せてんだから並べたくもなる
641:この名無しが熱い ID:wVXhfa/+X
このままギリッギリの1着2着を続けたら調子乗ったJRAが2頭揃って凱旋門にぶち込みそう
642:この名無しが熱い ID:qpkFJV92b
ありそうなのが笑えなくて好き
643:この名無しが熱い ID:gPsgul6qc
このままディープが勝ち続けるならあってもディープ1頭だろ
もし2頭とも凱旋門出走が決まったら競馬場前で全裸になるわwww
644:この名無しが熱い ID:zXZIC6K8q
>>643 あ、もしもしお巡りさんですか?
645:この名無しが熱い ID:KFGT2XO39
通報されてるww
646:この名無しが熱い ID:ppqPAAty9
まったく惜しくない >>643 を亡くしたわ
647:この名無しが熱い ID:Z7o7igNm+
でも見たいよなあ、日本の馬が2頭、凱旋門賞っていうでっかいレースで競り合うの
648:この名無しが熱い ID:lZoxGEpTZ
なあおまいら、ディープが奇跡ならサンはなんだと思う?
649:この名無しが熱い ID:Jw7S7T2fc
真の奇跡?
650:この名無しが熱い ID:d8L4N83zA
ばっかお前、そんなの「太陽」に決まってんだろ
651:この名無しが熱い ID:Z2vPPE4Lm
奇跡にもっとも近い馬、ディープインパクト
太陽にもっとも近い馬、サンジェニュイン
652:この名無しが熱い ID:rhSehVJXv
>>651 サンが焼けそう
653:この名無しが熱い ID:D8uiZ+6B5
まあ凱旋門賞出るとしてももっと先の話だろ
クラシックはまだ終わってねーし、国内のレースだってほかにもあるんだから
654:この名無しが熱い ID:R73W0A/x9
菊花賞楽しみ
ディープは二冠馬になった以上菊花賞出ないプランはないでしょ
あとはサンだけど、こっちもディープが出る以上はね
655:この名無しが熱い ID:9VHifANtE
菊花賞はサンに勝ってほしいわ
鞍上は芝木でな!
656:この名無しが熱い ID:1lpW4IPfz
日本ダービー終わってまだ2日なのにもう菊花賞の話してるわ
657:この名無しが熱い ID:IfHzL1ESU
サンのスタミナえっぐいから菊花賞は期待しかない
あとは鞍上がどうなるか
658:この名無しが熱い ID:k2pxPe0in
鞍上の不安とダービーで心折れてないか、ここだけだな
659:この名無しが熱い ID:LjWty4XtW
菊花賞、3連複のあと1頭迷うわ
660:この名無しが熱い ID:NqIj45+PS
>>659 上2頭が決まってる前提かよww
661:この名無しが熱い ID:Vkgo9x6Ii
菊花賞たのしみ~
662:この名無しが熱い ID:r4PsN6IjD
2頭の菊花賞を楽しみにしているお前たち、悲報です
http://net.news/news_daked/tunagtte_nai.html
663:この名無しが熱い ID:k1FQLkSo7
>>662 ふぁっ!?
664:この名無しが熱い ID:E2KYvTVpN
>>662 嘘じゃん
665:この名無しが熱い ID:PeHi5xm/C
>>662 いやいや、これまだ未定だろ?
666:この名無しが熱い ID:kQaRn9YjM
ページ読みこみ出来ない俺を誰か助けて
667:この名無しが熱い ID:zs35a+M1v
>>666 サンジェニュイン、秋以降イギリスに飛ぶプランを検討中
668:この名無しが熱い ID:hfU0KHEBp
クソだわ
669:この名無しが熱い ID:97khYfnJw
まっっっっって!?!?!
670:この名無しが熱い ID:lcXR1oD4W
どうして……どうして……
671:この名無しが熱い ID:W6cUdUdX/
これ、国内で2頭が当たって消耗するのを防ぐためか?
672:この名無しが熱い ID:oqtKQtdZK
どっちも社来の馬、潰し合いを避けて片方を盛り上げるつもりかよ
673:この名無しが熱い ID:SzjH0u8yE
いやいやいや……
今が盛り上がりどきじゃん
674:この名無しが熱い ID:/flHSPtAn
ディープを安全にかつ完璧に無敗の三冠馬にするためとかだったら他の馬を舐めすぎでしょ
675:この名無しが熱い ID:1CaBdcPrw
しかしまあディープを焦らせるのなんてサンジェニュイン以外いないのもまた事実
676:この名無しが熱い ID:7O4LsvMMp
現時点ではね、今後はわからん
677:この名無しが熱い ID:vqpzCDF7L
サンがイギリスで潰される姿が見える見える
678:この名無しが熱い ID:UMXo/CnVR
勘弁してくれ、俺の愛馬が……俺の愛馬じゃないけど俺の好きな馬が……
679:この名無しが熱い ID:iVKxgObH5
まあまてお前ら、まだ検討段階だぞ
680:この名無しが熱い ID:QWABlHSTf
こういうやつの取材受けてる関係者ってマジでなんなんだろうな
681:この名無しが熱い ID:mwRQWXhHO
関係者(関係者だとは言ってない)だぞ
682:この名無しが熱い ID:H/sniP+Yw
ダービー終わって2日でこんなプランが検討されるとかないわ
ほぼデマだと思っとこ
683:この名無しが熱い ID:yTDl2CHSv
海外レース出走で信じられるのは凱旋門賞だけ!
はい、解散!
日本ダービーから3日後。
栗東トレーニングセンターの会議室で、3人の男たちに1人の男が向き合っていた。
「それは決定事項ですか」
怒りを耐えるような、苦しい声だった。
「いえ、まあ、まだ決定事項ではないです。ただ」
「決定事項でないなら、それを、待っていただきたい」
押しとどめるような言葉に、スーツを着た男たちからざわりとした空気が漏れだす。
一度強く目を閉じると、覚悟を決めたように口を開いた。
「サンジェニュインは、菊花賞を勝ちます」
「し、しかしですねえ、あの、我々もね、サンジェニュインが勝つことを信じてはいますよ。ええ、もちろんです。ただ、国内レース以外でも活躍できるんじゃないかな、と」
「皆様のご不安、お悩み、重々承知しています。活躍の場を求めて海外に飛び出す馬がいるのもわかっています」
その言葉に、スーツの男の表情が和らいだ。
「わかってくれますか本原先生!いやあ、サンジェニュインならきっとイギリスでも……」
「しかし、あえて言わせてください。サンジェニュインは菊花賞を勝ちます」
ゆるぎない自信が、まるで質量を持ったように顕在する。
スーツの男が一歩、退くと、今度は本原が一歩、前に出た。
「日本ダービーのハナ差1センチは、ただの敗北ではありません」
「……と、申しますと」
「あの敗北は、サンジェニュインの心に深い傷と、それから勝利への渇望を与えました。男子三日会わざれば刮目してみよ。……どうしても海外で走らせたいということであれば、それは、今日のサンジェニュインを見てからにしていただけませんか」
その気迫に押されてスーツの男が思わず頷くと、張りつめていた空気が嘘のように、本原は穏やかな笑みを浮かべた。
「我々人間が思う以上、馬っていうのは、強かな生き物なんですよ」
整備された芝の上を、風を切り裂いて走る。
指定された距離は2400メートル。
腹を打たれる感覚に脚を早め、目の前の坂を駆けあがった。
「……上がり33.1です」
イサノちゃんがタイマーを持った腕を上げる。
クールダウンでさらに100メートル、速度を落としてゆっくりめに走った。
鞍上の
「そんな……ダービーからまだ3日でこれか……?」
「鞭が入ったのは最後の1発だけだったのに……それでこのタイムが出るとは……!」
身体の疲労感が完全に抜けたわけじゃなかった。
それでもどうしてか、脚が前へ、前へと行きたがる。
不思議なくらいまだ身体が走りたがっていた。
「帰厩した夜からずっと走りたがっていたんです。この2日はさすがに休ませていたのですが、今日はいよいよ我慢できなくなって……ダービーと同じ距離を走らせました」
無理を言った自覚はあった。
それでも、今、走りたかったから。
テキが俺の
走ったばかりでまだ熱の籠る身体には、すこしひんやりと感じられた。
「疲れは抜けきっていなかったでしょう。それでもサンジェニュインは走りますよ。満足するまで」
そう、満足するまで走る。
走って、走って、走り切って。
その先にディープインパクト、あいつに勝利する瞬間があると信じている。
「今の走りを見て、それでもなお不安が拭えないと仰るのであれば、私も覚悟を決めます」
「……いえ、そうですね。走りを、タイムを見て、まだ再考の余地があるとわかりました。今日見たものは必ず上に持ち帰ります」
「そうですか」
「はい。……今日は本当にいいものを見せていただけました。サンジェニュイン、いい走りだったね」
スーツ姿の男がそう言って俺に微笑んだ。
含みのない、心からの賛辞だ。
首を伸ばして頬にすり寄ると、男は少し嬉しそうに笑い声をあげた。
それから1週間後。
俺の今後のスケジュールが正式に発表された。
6月半ばから1か月の放牧を経て、次走は9月25日の神戸新聞杯。
そのトライアルレースから菊花賞、有馬記念に向かうプラン。
その結果次第で、年明け2006年の海外進出が、決まる。
~ 完 ~
これにて第一部完!!!!
次回、ウマ娘回!(と被害馬紹介を同時にアップします)
ちなみにその次もウマ娘回です。
サンジェニュイン 牡3
ダービーの敗北を経て、何かのスイッチと覚悟が同時にガンギマリした模様
弥生の気絶、鞍上変更、皐月の同着、ダービーの敗北と覚醒要素は揃ってる!!
ここを耐えればマリクにだって勝てるんだから!!!!
次回、城ノ内、死す!デュエルスタンバイッ!!!!
ディープインパクトさん 牡3
初登場からここまでまさかの無言
皐月ではツーショット撮影ができたもののダービーでは不可です
ゴール後しばらく主人公のガンギマリオーラに押されていた
6月半ばから主人公と同じタイミングで同じ場所で放牧される
やったねディープさん、同じ牧草地に夜間放牧される予定だぞ!!!!
テキ ヒト族 男
こちらはとっくのとうに覚悟ガンギマリ
うちのサンジェニュインは日本一ィ!!!!
スーツのひと ヒト族 男
別に意地悪で言ってるわけじゃない
サンジェニュインの将来を良くするためにいろいろと考えている人
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side:ウマ娘 ー Ep.4
ウマ娘回ッッッッ!!!!
主人公のポンコツがこれでもかというほど炸裂。
ちなみに次回もウマ娘回だよ。
被害馬紹介を同時更新すると言ったな……?意外と時間が掛かってるので先にウマ娘回を2話アップするゾ(これは決して紹介を後回しにしているわけではないんだからねッ!)
フランス遠征が思った以上に長引いてしまい、結局2期最終回に間に合わなかったウマ娘がいるらしい。
オレのことだ!!ちくしょう!!
「そんなに見たかったんスか?」
「ああ……きっとすごいレースだったんだろうなあ……生で見たかったぜテイオー……マックイーンちゃん……」
スペちゃんにサインを渡してからだいたい3か月が経っていた。
本当なら1か月くらいで遠征を終えて、レースが始まる時期を見計らってさりげなくチーム・スピカの近くで観戦しようと思ってたのに。
気づいたら1か月、また1か月と遠征が延びてしまった。
ちなみに延ばした2か月はそれぞれ、ディープインパクトが遠征先で片頭痛に苦しんで1か月、ヴァーミリアンが太り気味で1か月。
ふたりともめちゃくちゃ苦しんでたから、レース観戦で帰国したいとか冗談でも言えなかった。
オレもさすがにそこまで空気読めないわけじゃないし、まあ、仲間のほうが大事だし。うん、へへへ。
というかオレとスペちゃんが出会ったころにはテイオーVSマックイーン戦、とっくに終わってたわ。
フランスで「テイオー約1年ぶりのレース・有馬記念で優勝!劇的復活」っていうニュースを見た瞬間悟ったよな。
テイオーの怪我、てっきり日本ダービー後の骨折で来年の春天でテイオーVSマックイーン戦だと思っていた。
ここがアニメ時空だと気づいてから、今年のダービー馬はテイオーだって思い込んでしまったな。
スペちゃんと出会った時期が時期だったからつい……。
オレとディープインパクトがクラシックレースを競り合ったのはもう2年も前で、去年はドバイシーマや凱旋門賞を中心に海外のレースに出ていたから、どうしても国内のレースに疎くなってしまう。
今年も凱旋門賞2連覇を目指して遠征に出ていたわけだし。
ディープインパクトは自分が出走するレース以外には興味がないし、オレもレースに集中すると周りが見えなくなってしまうんだよなあ。
ん?というかこの前のがテイオーの有馬なら2年前にダービー馬になったのはテイオー?
……オレとディープのクラシック、ってあれ、うん?いや……スペちゃ……!?
じ、時空のゆがみを感じる。
これ以上考えるのは止そう。
世界から弾き飛ばされちゃう……!!
「とりあえず2戦分。1年前の春天はリギルが撮影していたのをパク、いや貰ってきたっス。こっちは前に頼まれてたツインターボのやつっスよ」
「ラインクラフトちゃんありがとう~~!!!!愛してるぜ!!!!っていうか今パクったっていわなかった?」
「嬉しいけど冗談でも言わないでほしいっス、自分の命が無いんで」
「そ、そこまで……?っていうか今パクったっていったよな?」
オレとディープ、ヴァーミリアン、それからカネヒキリくんの4人で海外遠征に行っていた期間中、ラインクラフトちゃんとシーザリオちゃん、それから年下のオルフェーヴルはトレセンに残留。
もし間に合わなかったらかわりに撮ってくれ!とレースを撮影してもらったのだ。
とは言え、結果としてテイオーVSマックイーン戦はとっくに終わってたので撮影できず。代わりに去年リギルが撮影したものを焼いてきたらしい。
……本当にパクってないよな?ちゃんと許可もらってるよな!?
あいまいに微笑むラインクラフトちゃんから目をそらしつつ、渡されたDVDを見つめた。
現実逃避ではない。断じて!
もう1つはツインターボ師匠のレースだ。
こっちは今年の9月開催のオールカマー。ラインクラフトちゃんが撮影したものだ。
そう、あのアニメ版ウマ娘2期で誰しもがツインターボ師匠に惚れたあの、あの名レースである。
馬時代もいれるともう40年以上も前のことだけど、そのレースでのツインターボ師匠のセリフは未だに覚えている。
"これが、諦めないってことだ……!トウカイテイオー……──!!"
それだけ鮮やかで、それだけ心に残るフレーズだったから。
やっぱり生で見れなかったのは残念だけど、仕方がない。
「ツインターボ師匠のレース、DVD擦り切れるまで見るぞ……!」
「……前々から思ってたんスけど、なんでツインターボのこと師匠呼びなんスか?年下っスよね?」
パックのにんじんジュースを啜りながら首を傾げるラインクラフトちゃん。
君すきだねえそのジュース。オレはりんごジュースのほうが好きだよ。
「うーん、心の師匠、ってヤツかな」
「ますますわかんないっスわ」
ラインクラフトちゃんがわからないのも無理はない。
オレとツインターボ師匠に直接の面識はないからな!
しかもこの世界線のツインターボ師匠はオレより年下だし。
ウマ娘ワールドに競走馬時代の年代がまるまる反映されないのはわかってたけど、当事者になると謎のむずがゆさを感じるわ。
テイオーとマックイーンちゃんも年下だしな。……たぶん。うん。エッそうだよな?
「サンちゃんさ~ん、クラフトちゃんさ~ん!ミーティングはじまりますよ~!」
「いま行く~!……あっ、ラインクラフトちゃん、オレがこのDVD頼んだって他の
「バレたら血の雨が降るし最初からそのつもりっス!」
「理解力高くて助かるう!」
ツインターボ師匠がヴァーミリアンに性癖の圧を受けてるところなんてみたくないからな……!
テイオーとマックイーンちゃん?スペちゃんの件で何故かチーム内に伝わってるけどなんともないし、ま、ヘーキヘーキ!……たぶん。
チーム・メテオのミーティングルームには、可動式のホワイトボードの代わりにタッチパネル型スクリーンが設置されている。
そのスクリーンに背を向けるように、2人の男がオレたちの前に立っていた。
ボサボサの黒髪に目つきの悪い、黒スーツの男。パッとヤのつく自由業を営んでいそうだ。
もう一人は整えられた焦げ茶の髪に穏やかな目つきをした、見上げるほど背の高い男。
「全員揃ったな?
「ハイ。……今日みんなに集まってもらったのは、今年のURAファイナルズについての話だ」
「わたくしたちは出走しない、という話だったかと思いますが── かわりましたの?」
そう言ってうちわを扇ぐヴァーミリアンに、芝木くん── じゃなかった芝里くんが頷いた。
芝里くんはチーム・メテオのサブトレーナーだ。
もう見た目が競走馬時代の主戦騎手・芝木くんにしか見えないし、名前も芝木くんじゃねえか。
アニメ1期の
ていうかヴァーミリアンはなんでうちわ持ってんだ。
1月だぞ寒くないのか。
「昨年10月の凱旋門賞。これをサンジェニュインとディープインパクトがワンツーで収めた。特にサンジェニュインは凱旋門賞2連覇だ。海外へ日本のウマ娘をアピールする、という目論見は達成できただろう」
よくやった、と芝里くんがオレとディープインパクトに目線を向ける。
そう、オレ、凱旋門賞を2連覇した!
競走馬時代では年齢や体力的なもので1回しか出走できなかったレースも、ヒトの形を持つウマ娘ならではの特徴か、大きな故障さえなければいつまでも走っていられるからな。
調子乗って今年も凱旋門賞行っちゃうか!?なんて。
エッちょっとトレーナー、なに「それもいいな」って顔してんだ。
違うぞ、冗談だからな。さすがに今年は無理かもしれん。
……ディープは出る?ならオレも出てやらあ!!!!
「URAファイナルズも今年で5回目。出走条件はすでにクリアしているから、出走自体に問題はない。……お前たちには各部門を優勝してもらうぞ」
パッとスクリーンが明るくなる。
芝里くんは横に移動すると、順にオレたちの名前を呼んだ。
「芝の長距離部門、3000メートルにはディープインパクト、サンジェニュイン。長距離でお前たちに敵うウマ娘はいないと思ってる。期待してるぞ」
「おうよ!戦うぜ、こぶしで── じゃなくてこの脚で!」
パシンッ、と太腿を打つと、隣にいたディープもしっかりと頷いた。
お前はなんかしゃべらんかい!!
「芝の中距離部門、2400メートルにはシーザリオ。気がかりあるとすれば脚だけ。それ以外の不安感はないな。脚の調子を見ながらやっていこう」
「わかりました。頑張ります」
日本とアメリカのオークスを制したシーザリオちゃんが中距離部門か。
となるとラインクラフトちゃんはマイル部門か?
「芝のマイル部門、1600メートルにはラインクラフト。正直全く心配していないが、不安なことがあれば言ってくれ」
「にゃはは、いざってときは頼るっス」
ラインクラフトちゃんはメテオの中でも珍しく海外レースに参加していない。
しかし国内の芝のマイルレースにはほとんど参加しており、実力も折り紙付きだ。
たぶんメテオの中で一番トレセン内の交流関係が密なのはラインクラフトちゃんだな。
「ダートの中距離部門、2000メートルにはカネヒキリ、ヴァーミリアン。どちらかはマイルに回そうと思ったんだが──」
「私は譲りません。中距離で勝ちます」
「わたくしも譲れませんわ!中距離でこそ、輝く緋色!ですわ」
「と、言うだろうと思ったから2人ともいれることにした。同チームだが、レースではライバルだ。共に頑張ってくれよ」
早くもバッチバチに視線で牽制し合うカネヒキリくんとヴァーミリアン。
この2人はダート路線に変えた時から走るレースがよく被る、っていうことでライバル関係にある。
今のところカネヒキリくんが優勢っぽいので、URAファイナルズで決着をつけようとしているのだろう。
ま、URAファイナルズを決戦の場にしようっていうのは、何もこの2人だけじゃない。
オレとディープインパクトもまた、このURAファイナルズが最後のレースになるんだと思う。
トレーナーに直接言われたわけじゃない。けど、不思議とそんな予感がした。
「ここまでしてきた努力はお前らを裏切らねえ。お前らが諦めねえ限りはな」
おそらく微笑んだのだろう── 凶悪な顔つきのせいで厭らしく睨みつけたようにしか見えないけど、そういってトレーナーはオレたち1人1人の顔を見つめた。
揃いも揃ってクセウマ娘で、実力から引く手数多だったにも関わらず、チーム入りしても長続きしなかったオレたちを、一手に引き受けてくれたトレーナー。
初対面のときからどこか懐かしく、故郷の親父たちを感じさせる暖かさで見守ってくれた。
どうせ最後のレースになるのであれば。
オレが勝つにせよ、ディープが勝つにせよ、このトレーナーに「URAファイナルズ勝ちウマ娘のトレーナー」という称号をあげたい。
そう思ったのはオレだけじゃないだろう。
「安心なさい、トレーナー!チーム・メテオ、だれ一人かけることなく、完全!優勝しますわ」
胸を張って答えるヴァーミリアンに続くように、オレも口を開いた。
5年前、チーム入りするにかけてくれた言葉が脳裏に響く。
「── オレと、オレたちと頂点、目指そうぜ、トレーナー!」
そういうと、トレーナーは目尻を緩ませて、眩しいものを見るように頷いた。
感動の場面で、あ、と思い出したように芝里くんが口を開いた。
「ちなみにチーム・リギルからは芝の長距離部門にミスターシービーとシンボリルドルフが出走するそうだ」
「はえ……?」
難易度クソゲーかよ。
解散!!!!
次回もウマ娘回ッッッッ!!!!
時空がゆがむゆがむ~~!!!!
オレたちがダービーを争っていたまったく同じ時間軸に別のダービー馬がいる。
な、何を言っているかわからねえと思うが、オレが一番わかってねえ(by サンジェニュインさん)
そしてなんやかんやあって毎年開催されているURAファイナルズ。
主要部門をメテオで独占しようとしてる……リギルは……スピカは……カノープスは……!?
でえじょうぶ、リギルからミスターシービーさんとシンボリルドルフさんが出走だ!(白目)
7/2 追記
下の凱旋門賞のくだりで「白毛の」とつけるのを忘れてたのでつけました。
史実では2連覇だったり親子制覇をした競走馬もしっかりいるゾ!
ちなみに凱旋門賞2連覇でワンツーきめたのは2回目の凱旋門賞だゾ(1回目の着順は本編でやるから振り落とされずについてきて欲しいですね!!!!)
サンジェニュイン ウマ娘
痛恨の時間軸把握ミスを犯す
ついでに時間軸のゆがみに気づいてしまった
白毛の凱旋門賞2連覇というウマ娘でしか(今のところ)実現できないことをやった
自他共に認める美貌のウッマ娘
にんじんよりりんご派
ディープインパクトさん ウマ娘
メテオのリーダーはこのウマ娘のはずだが喋らなくて芝
実は偏頭痛なんてなかった疑惑がある
にんじん派
カネヒキリくん ウマ娘
現・ダートの女王様
ヴァーミリアンと被ったダートG1の勝率は今のところカネヒキリくんが上
にんじん派
ヴァーミリアン ウマ娘
ダートの女王の座を虎視眈々と狙う
ついでに主人公の親友の座も狙っている
最近「ウマ娘用特殊栄養士」「ウマ娘用特殊調理師」という資格を得た(この資格はずいぶん前にカネヒキリくんが取得済み)
バナナ派
ラインクラフト ウマ娘
マイルクイーン
1人だけ海外遠征がないことをちょっぴり気にしているものの明るく前向き
トレセン内の交友関係が広く、いろいろ知っている情報屋さんみたいな感じ
にんじん派
シーザリオ ウマ娘
二つの国の女王様
少し前まで脚元不安で休養していた
URAファイナルズは久々のレースなので気合いが段違い
角砂糖派
トレーナー ヒト族(?) 男
本名:
髪の毛ボッサボサで目つき悪くて笑うと悪役みたいな感じ
ウマ娘への愛情は人一倍ある
うちのウマ娘が最高なんじゃい!!
マックイーンをチームに入れたかった
サブトレーナー ヒト族 男
本名:芝里シロウ
アニメを見た競馬ファンから速攻でモデルを特定されてる
何一つ隠してなくてワロタ
普段はサンジェニュインの付き添いで世界中を飛び回っている
あだ名は「シバキくん」
ウマ娘サンジェニュインのボディに関するアンケート、ご協力いただきありがとうございました!
圧倒的大差で「出すとこ出せ」派の勝利で決着がつきました。
ので、サンジェニュインは出すと出したボディにします!!!!
今回から新しいアンケートを設置したので、よければどうぞ。
※アンケートに関するネタなどは感想欄ではなく、活動報告の方にコメントをお願いします。
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side:ウマ娘 ー Ep.5
本日2話目の更新です。
どっちもウマ娘回。
いつか絡ませよう絡ませようと思っていたウマ娘ちゃんと絡めることができてうれしい。
あとこれはどうでもいいんですけどプロローグをちょっと修正しました(主にCMパロの部分)
※誤字報告に関して※
前話で「有マ」としている部分は誤字ではないです。
ウマ娘世界には「馬」の漢字が違う、ということで、その部分をカタカナにしているだけですのでご了承ください。
「さあ、反省するっスよ!」
「あ……あ……」
「サンちゃんさん、今回のは言い逃れできませんからねえ」
URAファイナルズ出走が決まってから1か月。
ガッチガチに冷え切った2月の朝。
オレはチーム・メテオのミーティングルームで正座をしていた。
「サンジェニュインちゃん、さあ、コレを読み上げるっス!」
そう言って目の前に立つラインクラフトちゃんが紙を1枚、オレの顔の前に広げた。
「うぅ……お、オレはぁ……」
「【わたし】は!」
「わ、わたしはぁ……昨晩のさむ、寒さに耐えきれず……」
「耐え切れず!?」
「耐えきれず……カネヒキリくんのベッドにぃ……忍び込みましたぁ……!」
はぁ、とため息をはいたシーザリオちゃんがこめかみを揉み込んで、まるで頭が痛いかのような仕草を取りながらも、続きを促すように口を開いた。
「それで?」
「うっ……うっ……それでぇ……あったかくなって寝ちゃって……そのまま朝まで一緒に寝ました……」
「その結果?」
「カネヒキリくんを気絶させましたぁ……っ!!!!」
そう、カネヒキリくんを気絶させてしまった。
ことのあらましはこうだ。
昨晩、いったん寝に入ったものの、途中あまりの寒さで起きてしまったオレは、とにかく身体をあっためようと寮を抜け出して走った。
不運なことにその日は栗東寮の暖房器具が全部屋壊れていて修理に出されていた。
カイロをずっと握っているわけにもいかないし、それに握っている箇所しか暖かくならない。
それよりは走った方が身体がぽっかぽかになると思ったのだ。
しかし時は2月である。
いくらか走って温まったところで、動きを止めれば流れる汗が北風に吹かれて余計体温が下がってしまう。
ブルンブルンになりながら部屋に戻り、パジャマに着替えなおしてさあ寝るぞ、となっても寒くて寒くて眠れなかった。
どうしよう……と思ったオレは、寒くて寝れないけど眠い、という状況下で閃いた。
「カネヒキリくんのベッド入ろう」
今思えば「どうしてそうなった」としか言いようがない閃きだったのだが、その瞬間のオレにはナイスアイデアだったのだ。
オレの部屋からカネヒキリくんの部屋は、実は室内にある扉で繋がっている。
もしもの場合にってことで、カネヒキリくんが理事長に掛け合って改装してくれたのだ。
カネヒキリくんはこの扉に鍵を掛けないので、いつでも入り放題だった。
これがヴァーミリアンやディープインパクトだったら忍び込まなかっただろうが、相手は竹バのずっ友・カネヒキリくんである。
なんの躊躇いもなくカネヒキリくんの部屋に忍び込んだオレは、そのままカネヒキリくんのベッドに入り込んだ。
筋肉質なカネヒキリくんにぺったり張り付いていたらものすごく暖かくて、それが気持ちよくて、カネヒキリくんを抱き枕にしてそのまま寝落ち。
翌朝、ほとんど同じタイミングで起きたカネヒキリくんが、目が合った瞬間気絶してしまったので思わず叫んだところ、ラインクラフトちゃんとシーザリオちゃんに現行犯で捕まってしまったのだ。
ちょっとあったまったら抜けようと思ってたのに……おそるべしカネヒキリくんのぽかぽか体温!!
「今、カネヒキリちゃんの高体温おそろし~!とか思ったっスね」
「なんでわかんのお!?」
「顔に全部出てるっスよぉ……!」
くっ、オレの顔が表情豊かなばかりに……!
「サンちゃんさん、まだ読み終わってないですよね」
シーザリオちゃんがトントン、とオレの肩を叩く。
このままスルーしてくれてれば良かったものを……!
しかしシーザリオちゃんとラインクラフトちゃんの目がマジなので、オレも覚悟を決めて口を開いた。
「アッハイ……えっと……ね、寝起きにぃ……」
「寝起きに?」
「寝起きに世界一かわいい笑顔を見せてごめんなさい!!!!」
羞恥プレイか?
「良く言えました」
「いくらカネヒキリちゃんがサンジェニュインちゃんの顔の良さに慣れているからって、寝起きの、それも心の準備ができていないときに、世界一かわいい、ふにゃふにゃトロトロ笑顔なんて浴びたら……気絶もするし鼻血だって出すに決まってるっスよ!!!!」
「意識のないウマ娘って重いですよねえ……鼻血の手当ても大変でした」
本当にすまんな、カネヒキリくん。
そしてカネヒキリくんを医務室まで運んでくれてありがとう、ラインクラフトちゃん、シーザリオちゃん。
自分の顔の良さは自覚済みだけど、オレに耐性ができていると思っていたカネヒキリくんがあんなことになるとは。
もっと表情を引き締めなきゃ……!!
そうオレが決意を固めていると、いつの間にかオレの後ろに回っていたラインクラフトちゃんが、何かをオレの首に嵌めた。
「とりあえず、今日1日はこれで過ごして貰うっス」
ラインクラフトちゃんの言葉に首を傾げていると、ニコニコしたシーザリオちゃんがオレに鏡を見せた。
オレの首にぶら下がる札には、達筆な字でこう書かれていた。
【世界一かわいくてごめんなさい】
やっぱり羞恥プレイじゃねえか。
昼である。
羞恥プレイ札をぶら下げながら過ごした午前、控えめに言って地獄。
この圧倒的美貌により普段から人一倍視線を集めるオレだが、今日は右耳ウマ娘だけじゃなく左耳ウマ娘にもガン見された。
しかもクスクスされたし……うぅ、圧倒的屈辱……!!
人目を避けるため、今日は裏庭でお昼ご飯を食べることにする。
お弁当は意識を取り戻したカネヒキリくんが作ってくれた。
今日くらいは大丈夫、なんとか食料を手に入れる、と言うと何故かカネヒキリくんが絶望顔を見せるので今回もおまかせすることにした。
病み上がりのカネヒキリくんを働かせてしまった罪悪感がひどい。
オレなんて普段はお風呂とトイレ掃除しかしてないのに、カネヒキリくんはオレの分のごはんまで作ってて本当にすごい。偉い。助かる。うれしい。大好き。
それに比べてオレってやつは……お風呂とトイレ掃除しかできないなんて……オレってカバ……!
「あれえ、サンちゃん!サンちゃんもここでお昼だったんだね!」
オレ以外誰もいないはずの裏庭に響いた声に慌てて表情を取り繕う。
だが振り向いた先にいるウマ娘が誰だかわかって、顔から力が抜けた。
「ウララちゃん……!うん!久しぶりだねえ!」
ハルウララちゃん。
競走馬としてはオレよりも年上だった彼女も、このウマ娘ワールドでは年下の中学生だ。
彼女がトレセンに来て間もない頃に偶然知り合って以降、お互いをあだ名で呼ぶくらい仲良くなった。
ウララちゃんは物怖じしない性格なので、人前ではツンツンしているオレや、ヴァーミリアンたちにも臆さず話しかけてくれる稀有なウマ娘。
普段はオレに近づくウマ娘を厳しく選別しているカネヒキリくんも、ウララちゃんに会ってくる、と言うとノータイムでオーケーサインを出してくれるほどだ。
ヴァーミリアンだって、オレがウララちゃんの前で素の口調で話してても文句言わないしな。
去年はほとんど海外にいたから会うのは久しぶりだけど、ウララちゃんのお花さんのような笑顔は何度みても癒されるなあ!
「一緒に食べてもいいー?」
「もちろんだ!あ、そうだ!今日のお弁当はねえ、カネヒキリくんがいーっぱいサンドイッチ持たせてくれたんだ!ウララちゃんも一緒に食べよ」
「いいの!?やったー!」
ぴょんぴょん飛び跳ねるウララちゃん。
かわいい~~!!!!
「このタマゴサンドが一番美味しいんだよ!」
「わあすごい!お店のみたいだねえ!」
「味もお店みたいなんだよっ!!」
カネヒキリくんの料理の腕は一流である。
見た目から、それこそ味まで、これでお金取ってないとか無理なレベルで美味しいのだ。
オレは諸事情により食堂の利用や外食ができないから、普段からカネヒキリくんの料理にお世話になっている。
サンジェニュインというウマ娘はカネヒキリくんの料理で作られているといっても過言ではない。
『凱旋門賞2連覇したウマ娘を作ったメニュー』とかでレシピ本を出したら爆売れすると思う。
いやそういうタイトルじゃなくても爆売れする。絶対する。
「ふわあ、すっごいおいし~~!!」
「でしょ!?でしょ!?カネヒキリくんの料理は世界一ィ!!なんだよっ!!」
オレが作ったわけじゃないけど、カネヒキリくんの料理を褒められるとどや顔したくなっちゃうな。
もっとカネヒキリくんを褒めろ……!!!!
「あれえ、サンちゃん、その首にあるのって……」
「ウララちゃん、これにはどうか触れないでほしい」
「うん?よくわからないけど、わかった!でもサンちゃんは本当に世界一かわいいと思うよ!」
ウララちゃん……世界一かわいいのは確かにオレだが、世界一愛嬌があるのはウララちゃんだよ……!!!!
それからしばらく、オレとウララちゃんはどのサンドイッチが一番美味いか、最強サンドイッチ決定戦で盛り上がった。
カネヒキリくんが持たせてくれたサンドイッチが底をつき、最強サンドイッチはタマゴサンドだ!と決まったところで、そういえば、とウララちゃんが表情を輝かせた。
「わたしのトレーナーがねっ!ウララ、URAファイナルズ出れるって教えてくれたんだ!」
「えっほんと!?オレもでるんだよ、URAファイナルズ!ウララちゃんおめでとう!!」
ウララちゃんはちょうど1年前、優しくて、それでいて実績もあるトレーナーのチームに入った。
ウマ娘1人1人の適性を大事に育ててくれるトレーナーさんのようで、それまで適性もわからぬまま芝で走っていたウララちゃんに、ダートで走る道を切り開いた。
そのトレーナーに会うまでのウララちゃんは、いつもレースでビリっけつで、トレーナーにも恵まれなかった。
なかなか勝ち上がれず、本人も周りもどうしたものかと悩んでいた時期が嘘のようだ。
ウララちゃんが去年、ダート短距離の重賞を勝ち上がったと聞いた時は、時差も忘れて鬼電してしまったほど嬉しかった。
今、それと同じくらい嬉しい。
「えへへっ!ありがとう、サンちゃん!」
ああ……ウララちゃんの笑顔が眩しい……!
ニッコニコのウララちゃんに、出走する部門を聞くとダートの短距離部門のようだ。
「むずかしい話はよくわからなかったんだけど、トレーナーがね、なんとかギリギリ出れるよって!去年、おっきいレースも頑張ったからかなあ」
「きっとそうだよ!!」
ダートといえば我らがメテオのダート女王・カネヒキリくんやヴァーミリアンがいるから、よくこの2人の完全二強状態、なんて呼ばれたりしている。
そんな中でひたむきに努力を重ねたウララちゃんは、間違いなくすごいのだ。
ウララちゃんすごい、とオレが言うと、ウララちゃんも嬉しそうに笑いながら、サンちゃんもすごいねえ、と言う。
お昼休憩終了のチャイムが鳴るまでの間、オレたちはお互いを褒め続けた。
サンジェニュインとハルウララが微笑み合う、その光景を見つめていた3人のウマ娘がいた。
「ア……ア……浄化されちまう……浄化されちまう……ッ!」
半分顔面が溶けかかったこのウマ娘、名をヴァーミリアン。
「ふむ……多めに持たせて正解だったな。やはりタマゴサンドが好評か……」
腕を組み、サンジェニュインらの様子をじっと眺めるウマ娘は、カネヒキリ。
今朝、思わずご褒美ショットを寝起きで見てしまい、気絶してしまったウマ娘だ。
今はすっかり正気を取り戻し、しかし直視するのには時間がかかるから、と遠くから眺めている。
そして無言で、目を見開いたままのウマ娘の名は、ディープインパクトといった。
何をしたかったのか、胸の前で手をぎゅっと握ったまま固まっていた。
「カネヒキリお前、こんな光景を前によくも冷静でいられるな、と思ったがサングラス……アタシの分は!?」
「ない」
間も置かずに否定したカネヒキリに、ヴァーミリアンが悔しそうに唇をかんだ。
カネヒキリはスカしたようにサングラスを掛けていたが、このサングラスの意味が意味なだけに、完全にイロモノにしか見えなかった。
「キーッ!おいディープ、お前も今はサンジェニュインが離れてるんだから何か話せよ。……ディープ?……うわ、目がガンギマリしてらあ」
ヴァーミリアンがディープインパクトの顔を覗き込むと確かに、目が完全に開いた状態で、ヴァーミリアンたちの声も聞こえていないかのようだ。
眉を顰め、しかし声色には心配の色を乗せたカネヒキリが口を開く。
「気絶してるんじゃないか?」
「まっさかあ。お前じゃあるまいしそれはないだろ……ないよな?」
カネヒキリがあまりにも真摯な声で言うので、ヴァーミリアンも心配になってちょん、とディープインパクトの頬をつついた。
その瞬間、固まっていたディープインパクトがプルプルと身体を震わせた。
何度か口を動かすが声は聞こえない。
「うわっなに?……えー、【か】?【わ】、【い】、【い】……?それな~~!!」
カネヒキリも静かに同意した。
「ウララちゃんばいばーい!!」
「うん!サンちゃんまたねえ!」
昼の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと、サンジェニュインもハルウララも、互いの教室に戻るべく裏庭を後にした。
ハルウララの午後の授業は座学だ。
眠くなったらどうしよう、と思いながらも、満腹のお腹をさすっていた。
裏庭を抜けて中等部の校舎に続く道に入ったところで、ハルウララは見慣れたウマ娘の姿を見つけて、今度は目を丸くした。
「キングちゃん!キングちゃんも今かえりな、っの!?」
「う、う、ウララさん……!」
「うわあ、どうしたの、キングちゃん」
キングちゃん、と呼ばれたこのウマ娘。名をキングヘイローという。
ハルウララの親しい友人の一人で、頼れる同室者だ。
そんなキングヘイローが、いつになく真剣な顔でハルウララの肩をつかんでいた。
「ウララさんさっきの方って……」
「さっきの?サンちゃんのことかなあ?」
ハルウララが首を傾げながらそういうと、キングヘイローは衝撃を受けたように一度、よろけた。
「さ、サンちゃん!?あだ名で呼び合うほど親しいの!?学年違うわよね!?」
「お友達だよお!えっとねえ、トレセンにきたばっかりのころに、迷子になってたら助けてくれたんだっ!」
ハルウララはあの日のことを思い出してにっこりと笑った。
トレセンに来た当初、不安でいっぱいだったハルウララにとって、あの日サンジェニュインが差し伸べてくれた手はまさに救いの手だった。
それこそ、適性もわからない状態で芝を、そして大逃げで走っていたのは、サンジェニュインに憧れたからに他ならない。
今は己の適性を受け入れ、ダートで、追い込みをかけて先頭集団を一気に抜き去る走法で勝利を重ねられるようになった。
ダメダメだ、と言われたハルウララを見捨てず、親身になってサポートしてくれたトレーナーにも感謝しているが、トレーナーが見つからない間も併走してくれたサンジェニュインには同じだけ感謝していた。
「そ、そんな繋がりがあったなんて……孤高の姫ウマ娘と呼ばれたサンジェニュイン先輩があんなに柔らかく……ウララさん効果なのかしら……?」
ブツブツと何事かをつぶやくキングヘイローを見て、思い至ったようにハルウララが声を上げた。
「あっ、キングちゃん、サンちゃんと仲良くなりたいの?次はいっしょにお話する?」
「えっいいんですの!?……ごほん、いえそれは、ええまあ、ええどうしてもと先方が……いえ絶対にお話したいですわよろしくお願いしますウララさん」
「わかったあ!」
キングヘイローは実に素直なウマ娘である。
「うヘーッくちっ!!ズッ、うー……誰かがオレの噂してるな……」
サンジェニュインは生まれてこの方、一度も風邪をひいたことがなかった。
次回こそ、被害馬紹介!!!!
弥生賞~日本ダービーまでです。
サンジェニュイン ウマ娘
ウマ娘専用託児所でカネヒキリくんと再会してからというもの、カネヒキリくんに対するスキンシップが激しい
困ったとき、寂しいとき、悲しいとき、嬉しいときはカネヒキリくんに報告だっ!!
ウララちゃんと仲良し
メテオ組もウララちゃんが相手なら文句言わない
さすララ
カネヒキリくん ウマ娘
圧倒的被害ウマ娘
主人公の顔面やスキンシップに慣れていると思われているが、回復が異常に早いだけで毎回クリーンヒットして死にかけている
今回は起き抜けのノーガード状態で、世界一かわいいウマ娘の、ふにゃふにゃでトロトロな笑顔を見せられて気絶した
まるで少年漫画の主人公のようなラッキース○ベがサンジェニュイン相手にのみ発動する謎スキル持ち
ヴァーミリアン ウマ娘
よく溶けてる
うちわはサンジェニュイン相手にテンションがヒートアップしたときに冷ますためのものだが今日は忘れてきたらしい
ウララちゃんのこともかわいがっており、ダートの走法指導などをこっそりしていたこともある
ディープインパクトとは生まれてからずっと一緒の幼馴染みなので、口パクはある程度理解できる模様
ディープインパクト ウマ娘
かわいさの衝撃をもろに受け、声がでなくなった状態でも「かわいい」と言う
趣味は「アルバム作り」であり、サンジェニュインのスクラップブックも作っている
かわいいテロを頻繁に受けるカネヒキリくん羨ましいな、と思っている
ちなみに今回主人公が首から提げている札の字を書いたのはこのウマ娘
ラインクラフトちゃん ウマ娘
サンジェニュインの悲鳴が聞こえたから駆けつけてみれば、倒れていたのはカネヒキリくんというオチで頭を抱えた
頭を抱えたが、それはそれとして状況が面白すぎるな、と思っている
こうやってチームメンバーと馬鹿騒ぎする日常がずっと続けば良いのになあと思いつつ、それが無理なことだと一番わかっている
シーザリオちゃん ウマ娘
メテオのメンバーは本当に飽きが来なくていいなあと思っている
カネヒキリくんを医務室に運んだのはこのウマ娘
身長差・体格差がえぐいので、まあ運んだって言うよりひきずったが正しい
主人公に札をつけることを提案したのもこのウマ娘
クレイジーだが常識人、常識人だがクレイジー!
ハルウララちゃん ウマ娘
かわいい
これ以上言うことがない
キングヘイローちゃん ウマ娘
葛藤したけどすぐにメーターが振り切れた
永遠にウララちゃんとキャッキャしてほしい
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【紹介】主人公の被害者一覧 part.2
圧倒的被害馬、紹介回ッッッッ!!!!
※この紹介回は飛ばしてもストーリー上の問題はないのですが、もし、サンジェニュインが出走したレースに、史実ではどのような馬が出走していたのか、気になる方がいればお読みいただきたいです。
※個人がインターネットを使ってできる限りで調べたものなので、「最新情報はこう!」「今はここにいる」などの情報があれば、メッセージ頂ければと思います。
今回紹介するのは弥生賞から日本ダービーに出走したお馬さんたちです!!!!
7/8 追記
ロンドンブリッジの初仔・ダイワルシエーロの父表記が誤っていたので修正しました。
メッセージくれた有識者ニキネキ、サンクスサンクス!!!!
2005年 3月6日 中山11R 第42回報知杯弥生賞 GⅡ 芝右回り2000メートル
史実勝ち馬:ディープインパクト
2着馬:アドマイヤジャパン
美貌馬時空勝ち馬:ディープインパクト
2着馬:サンジェニュイン
史実では10頭立てだったこのレースも、サンジェニュインが出走したことによって11頭立てになったよ!
このレースの被害馬はディープさん以外の全頭としか言いようがないんだけど、全頭紹介するのは作者が発狂しちゃうので、今回は2着馬のアドマイヤジャパンさんと、美貌馬時空で元気に立ち上がったニシノドコマデモさんをご紹介。
◎アドマイヤジャパン
最新話の時点で、前回の被害馬紹介にも出た2歳新馬戦の被害馬・コンゴウリキシオーさんに次いで、Wikipedia 持ちのお馬さんだよ。
Wikipedia を見たほうが圧倒的に圧倒的にわかりやすいんだけど、今回は血縁回りもさらっと絡めてさらっと紹介していくよ!
ディープインパクト世代は、今の若い人からすると、ディープさんとか言う深すぎる衝撃があったせいでちょいと地味な印象があるかもしれない。そんなディープ世代で、ディープさんの同年代のライバルと言えば、でちょくちょく名前が出てくるのがこのアドマイヤジャパン(固定ライバルじゃないのがこれまた……)
弥生2着、皐月3着、菊花2着と好走してるからね!!
このお馬さんの父は皆さんお馴染み「サンデーサイレンス」だよ。
この種牡馬について語ることはもうないのでサラッと行くね。
母は「ビワハヤヒデ」のビワの冠で有名な馬主さんが所有していた「ビワハイジ」で、こちらは1995年の阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神3歳牝馬ステークス)を含め、3度の重賞勝ちをしているよ!
アドマイヤジャパン以外の産駒だと、特に有名なのはGⅠを6勝した「ブエナビスタ」だね!
ちなみに母父は「カーリアン」で、ニジンスキー産駒。母父の主な産駒に、凱旋門賞馬のマリエンバードや、日本ダービー勝ち馬のフサイチコンコルドもいるよ!すげえや!
フサイチコンコルドはダンスインザダーク世代なんだけど、あんまり身体が強くなかったみたいで、クラシックは皐月賞を回避して日本ダービー出走を目指したよ。同じくダンスインザダークも皐月賞を回避していて、両馬はダービーで戦うことになったわけだね。
迎えたダービーはダンスインザダークが1番人気に推されていたんだけど、フサイチコンコルドは残り100メートルの時点でダンスインザダークを交わしてゴールに飛び込んだ。
この時の実況で、旅客機のコンコルド(イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機)になぞらえて「音速の末脚」と呼ばれたよ。かっけえな!
とまあ、母の近縁も大活躍しているし、母自体も活躍しているし、父も言わずもがなで、アドマイヤジャパンはいわゆる「良血馬」だったわけだね。
馬主は「アドマイヤ」の冠で有名な馬主さんで、所有馬の中で特に知名度が高いのは、ウマ娘にもなっている日本ダービー馬「アドマイヤベガ」さん!!
他にも2003年・2004年の2年連続で最優秀ダートホースに選ばれたアドマイヤドンや、ドバイデューティーフリー、宝塚記念を制したアドマイヤムーンなども有名だね。
鞍上はデビュー戦と短期間の乗り替わり以外は縦山騎手がずっと主戦を務めたよ(騎手の方に関しては縦を横に変えてご検索ください)
アドマイヤジャパンは2006年4月2日の産経大阪杯を最後に競走馬を引退すると、翌年2007年に日高町のブリー○ーズスタリオンステーションにて種牡馬入り。
中央重賞勝ちの産駒は出せなかったものの、2018年にホッカイドウ競馬にて開催される地方重賞・北海道優駿にカツゲキジャパンが勝利!おめでとう!
翌年2019年には種牡馬を引退し、ヴェルサイユファームさんにて引退馬として繋養されているよ。
ヴェル○イユファームさんはTwitter アカウントがあるので、Twitter やってる方はもしかしたら見たことあるかもしれないね。
ちなみに同ファームにはタイキシャトルもいるよ!
2021/07/04 追記
タイキシャトルは移動したので今は一緒じゃない、という情報を貰ったよ!
ありがとう有識者ニキネキ!!
美貌馬時空ではゲート入りの際に興奮して鞍上を振り落としてゲート抜け。
でもスタートは小気味よく飛び出して好位につけ、サンジェニュインとディープさんのデッドヒートを眼前に見ながら3着入線した。
ゴール後にサンジェニュインがぱったり倒れてしまった時は、立ち上がらせようと駆け寄ろうとするものの縦山騎手に制止され、手綱を厩務員さんに渡されて退場。
その後、栗東に帰厩するととんでもない噂話を耳にしてしばらくしょんぼりした。
皐月賞で無事な姿を目撃し、返し馬の時に話しかけようとしたものの、ディープさんとヴァーミリアンの壁、そして鞍上に阻まれて断念した。
史実では3着に付けた皐月賞だけど、サンジェニュインがいたことによって4着入線になったよ!ゴール後も変わらず爆走するサンジェニュインを見て安心しつつ、疲れたので素直に退場した。
秋レースでは菊花賞でまた登場するよ!!お楽しみに。
◎ニシノドコマデモ
隣にすっげえ美貌の馬が入ってきた……こうしちゃいられねえ!!
そして立ち上がったらあんなことになってしまったお馬さん(美貌馬時空)
史実の彼はどんなお馬さんだったのか。
ニシノドコマデモの血統をさらっと見てみよう。
父は「キングヘイロー」で母は「ニシノチャペル」という配合。
……キングヘイロー!?!?2度見くらいした。キングヘイロー産駒だったのか。
母のニシノチャペルはセイウンスカイの半妹で、父はサッカーボーイ。このお馬さん、あのオグリキャップの同期だよ!
超スピードの持ち主で知られたサッカーボーイはテンポイント(流星の貴公子と呼ばれた春天覇者。それよりもその死のほうが有名かもしれない)の再来と呼ばれ、最後の最後に差してくるその脚は、馬名になぞらえて「弾丸シュート」とも呼ばれたよ。
クラシックシーズンは怪我に泣かされ、ついに無冠で終えてしまったけれど、同年のマイルチャンピオンシップでは後続に4馬身差をつけて圧勝した。強いやん……!?
そんな強い母父と、不屈の精神で知られた超良血の父を持つニシノドコマデモは、関係者の希望を一心にしょっていた。
キングヘイローの産駒と言えば、同じくウマ娘に実装されている「カワカミプリンセス」が特に有名なんだけど、初年度産駒でもあり、キングヘイローを「オープン勝ち馬の父」にしたのはこのニシノドコマデモなんだよ。
日本ダービートライアルレース・青葉賞で2着、続く日本ダービーでも6着に入るなど、重賞勝ちこそ最後まで叶わなかったものの健闘したんだ。
2005年の11月に左前屈腱炎となり、それから長期間の休養に入ることに。
この間に、半弟の「ニシノイツマデモ」「ニシノコンドコソ」がデビューして行ったよ。
2007年に一度復帰の兆しがあったものの、回復しきれず同年にJRAの登録を抹消。引退か、と思ったら地方競馬(金沢)に移籍し、2008年にレース復帰!やったね!
ダートが合っていたのか、復帰してから4戦4勝で、中央で鍛えた脚の強さを見せつけたよ。
だけど2008年、今度は岩手に移籍して臨んだ格上挑戦のレース。小雨の降る中、ここで2番人気に推され、勝てばまた中央移籍のチャンスが!?と思われていたところで、レース中止。またも怪我をしてしまい休養することになっちゃったよ。
それから約2年。復帰できないまま、2010年4月に地方登録も抹消。引退してしまった。
今はどこで何をしているのだろう……ご存じの方はメッセージください。
美貌馬時空ではサンジェニュインの美貌を前にゲートで立ち上がってしまい、2頭揃って出遅れる悲劇が起きちゃったよ。
しかもゴール後にサンジェニュインがぱったり倒れてたのですごく焦った。
かわいこちゃんが倒れてる~~!!俺が立ち上がっちゃったから~~!!と泣きながら美浦に帰厩した。
皐月賞には出走できなかったけど、ダービートライアル・青葉賞で2着入線しダービーに出走。
ここでサンジェニュインと再会できた!かわいこちゃんが元気でよかった、と思いながら、サンジェニュインとの約束を守ってケツ追わずに真剣に走った結果、史実では掲示板入りを逃したダービーを、ゴール直前でマイネルレコルト、アドマイヤフジを差し切って5着入線。
ダービーではなんだかんだで得をした結果になった。
2005年 4月17日 中山11R 第65回皐月賞 GⅠ 芝右回り2000メートル
史実勝ち馬:ディープインパクト
2着馬:シックスセンス
美貌馬時空勝ち馬:ディープインパクト
同着馬:サンジェニュイン
史実では12番人気のシックスセンスさんが2着入線するという、この馬の馬券勝った人はシックスセンスが炸裂したんやろなあ、と思わずにはいられない。
美貌馬ではディープさんとヴァーミリアン以外の15頭が元気にうまだっち!するというトンデモない事態になったため、正確に言えば15頭の被害馬がいる。
けどまあ15頭書くと作者が発狂してしまうため、今回はシックスセンスさんと、それから主人公が出走することで皐月賞を回避することになってしまったビッグプラネットさんを紹介するよ!
◎シックスセンス
シックスセンスにもWikipedia があるよ!
詳細はWikipedia さんを参照してもらうとして、ここではそれらをザッとまとめたり、血統についてもザッと触れるよ!
シックスセンスの父は「サンデーサイレンス」なのでもうここは何も言わない。
というか皐月賞はサンデー産駒(ディープさん)、サンデー産駒(シックスセンス)、サンデー産駒(アドマイヤジャパン)だったんだね……とんでもねえな!!
いやサンジェニュインが入り込んでも結果同じだったな……とんでもねえな!!
母は「デインスカヤ」で、その父は「デインヒル」というアメリカ産の競走馬。あんまり競馬に詳しくない作者みたいな人間は「デインヒル……?わからん」となるかもしれないけど、種牡馬としては様々な距離を走る数多くの活躍場を輩出して大大大成功しているよ!
後継種牡馬も順調に育っていて、デインヒル系が形成されつつあるのだとか……(デインヒルのWikipedia に詳細があるよ!)
日本で走ったデインヒルの直仔で、ウマ娘ファンに有名なのはファインモーションさん!とはいえ、ファインモーションさんは日本国内産馬ではなく、外国産馬という扱いだったよ。
母父としても高い成績を持っていて、有名なのはゴールドシップやオルフェーヴルと同じステイゴールド産駒のフェノーメノさん。春天2連覇のお馬さんです。ちなみにフェノーメノはステマ(ステイゴールド×メジロマックイーン)配合じゃないよ!
他にも、父ガリレオ(英ダービーと愛ダービーの覇者)と母父デインヒルの配合は、日本で言うステマ配合みたいな激ヤバ配合だったらしく、生涯戦績14戦14勝という完全無敗の馬・フランケルをはじめ、活躍馬を多数輩出したんだ。
余談だけどガリレオは2010年から11年連続で英国のリーディングサイアーに輝いてるよ!種牡馬としてもすっげえ!!
さて、シックスセンス本人、じゃなくて本馬?に話を戻すと、この馬、生涯戦績が「惜しい!」と言いたくなるような成績をしている。2歳未勝利戦の勝利から、クラシックシーズンは1度も勝てないまま古馬(4歳)になった。
まず第1に、シックスセンスは弱い馬ではないよ。ディープインパクトの輝きがでかすぎて陰りがちだけど、あの世代は有力馬もかなりいた。
そんな中で、2歳時のデイリー杯2歳ステークスの8着を除くと、シックスセンスは全戦で掲示板入りするという、まさに「善戦マン」と呼ばれるお馬さんだったんだ。
そう、ナイスネイチャさんやステイゴールドさんのように。
クラシックレースには全戦出走し、菊花賞後は海外の香港ヴァーズにも挑戦した。
結果は惜しくも優勝できなかったけど、その頑張る姿に勇気をもらったファンは多かったみたいだよ。
あと皐月では彼に複勝賭けて懐があったかくなった人もいたみたいだね……!!
年明け2006年、4歳になって挑んだGII京都記念に勝つと、2004年の未勝利戦以来の優勝ということで、マスコミや調教師が「シックスセンスは史上最強の1勝馬だ」と呼んだとか。
この重賞勝ちを最後にシックスセンスは引退。クラシックの名脇役も、いよいよ種牡馬になったわけだ。
引退した2006年は社〇スタリオンステーションで繋養され、翌2007年にレック〇スタッドで繋養。サンデー産駒の種牡馬が多かったから、あんまり良い牝馬には恵まれなかったみたい。
中央・地方に多くの馬を送り出したけど、重賞勝ちのないまま2010年1月に骨折で安楽死。
8年という短い生涯を駆け抜けて行ったよ。
わずか3世代しか残せなかったけど、2008年産の牝馬ガールズストーリー(母父ブライアンズタイム)がなんとか繁殖に上がって今も細々とシックスセンスのラインを繋いでる。
ガールズストーリーの19が今年、もしくは来年、地方か中央かで走るかもしれないので、今はそれが少し楽しみです。
美貌馬時空の皐月賞では2着から3着に落ちるも、後方から差す競馬で多くのファンに期待をさせたよ。
ここでもなんとか掲示板入りは死守しているので、善戦マンの称号は変わらず。
ただ皐月賞で元気に馬っ気だしてたのでこのことだけが美貌馬時空のWikipedia に追加されるかもしれないね……。
◎ビッグプラネット
史実では皐月賞に出走。4コーナーまでずっと先頭をひた走っていたよ。
美貌馬時空にて、サンジェニュインが皐月賞に出走するために、NHKマイルに専念する名目で皐月賞を回避することになってしまった。本当にすまん。
しかも出走したNHKマイルにはラインクラフトちゃんがいたよ。皐月賞出てもNHKマイル出てもボッコボコやないか!!!!
ちなみに史実の皐月賞の着順は12着。
この時の鞍上は、皐月でサンジェニュインに乗った柴畑さん(畑の部分を田にしてご検索ください)
頑張って逃げていたものの、出遅れたはずなのに大外からすっとんできたディープインパクトさんに抜かされ、力尽きてしまったよ……。
そんなビッグプラネットの血統は、まず、父が「ブライアンズタイム」というアメリカの競走馬。
主な勝ち鞍にフロリダダービーやペガサスハンデキャップ(ペガサスステークス)があるよ。
日本で種牡馬として長く繋養されていたので、ウマ娘の元になったお馬さんや、その周辺を調べるときに目にした人も多いのでは?
ウマ娘スウィープトウショウの父・エンドスウィープ、のさらに父・フォーティナイナーとは、競走馬としても種牡馬としてもライバル関係だったよ。
このブライアンズタイムの産駒でウマ娘ファンに特に有名なのは、シャドーロールの怪物と呼ばれた「ナリタブライアン」(1991年産)さんと、そして「マヤノトップガン」(1992年産)さんだね!
他にも、「1番人気はいらない、1着だけがほしい」でお馴染みの「サニーブライアン」もブライアンズタイム産駒。
父父としては、タニノギムレット産駒のウオッカも、このブライアンズタイムの血縁だよ。
続いて母は「ロンドンブリッジ」でこちらはGⅢのファンタジーステークスを勝ったお馬さん。
その父は「ドクターデヴィアス」と言うイギリス産の競走馬だったよ。エプソムダービーやアイリッシュチャンピオンステークスが主な勝ち鞍。
ジャパンカップにも出走経験があって、この時のレースにはトウカイテイオーもいたよ!ドクターデヴィアスは残念ながら10着。そのまま引退し、日本で種牡馬生活を送ることになったんだ。
種牡馬入りしてからも数々の重賞勝ち馬を輩出したドクターデヴィアスだけど、そのうち、1995年産のロンドブリッジはかなり優秀な繁殖牝馬となったよ。
ロンドンブリッジの初仔はサンデーサイレンスとの間に設けた牝馬・ダイワエルシエーロ。この初仔がいきなり優駿牝馬(オークス)を勝つよ。めっちゃすごい!
続いて2番仔となったのが、今回の被害馬・ビッグプラネット。クラシック勝ちはできなかったものの、アーリントンカップや京都金杯など重賞勝ちをしたんだ。
さらにはビッグプラネットの半妹である8番仔ブリッツフィナーレ(父・ディープインパクト)が産んだ「キセキ」(父・ルーラーシップ)が菊花賞を勝っているよ。
とまあ、こうやってビッグプラネットの血縁を見ていくと、ビッグプラネット自身も結構な良血馬だよ。
引退後は種牡馬にならず、東京競馬場で誘導馬になった、という情報(2009年9月時点と2011年11月時点)や、今は千葉県に移動しているという情報(2014年4月時点)など、いろいろあって正確なものが掴めなかったよ。
もし今のビッグプラネットがどうしているか、ご存じの方がいればメッセージください。
2005年 5月29日 東京10R 第72回東京優駿 GⅠ 芝左回り2400メートル
史実勝ち馬:ディープインパクト
2着馬:インティライミ
美貌馬時空勝ち馬:ディープインパクト
2着馬:サンジェニュイン
サンジェニュインが最高の状態で挑み、それでもなおディープさんに敗北した日本ダービー。
史実では後方からの競馬となったディープさんが、4コーナーカーブの大外から先頭集団を一気にぶち抜くとんでもねえ脚で2着に5馬身差を叩きつけたよ。この時、シックスセンスも一緒に大外からがってきたんだけど、ディープさんの末脚がえぐくてえぐくて……一回動画みてください。
美貌馬では先頭をサンジェニュインが走っていたことでいつもより高ぶっていたディープさんと、常にない迫力でダービーにやってきたサンジェニュインを見てまずいなと思った竹さんの考えが一致した結果、早めに仕掛けてきた。そしてあの結果です。
これ、サンジェニュインも被害馬という括りで良いのでは????
今回は2着から3着となったインティライミさんと、サンジェニュインの出走によってダービーを回避することになったシャドウゲイトさんを紹介していきます。
◎インティライミ
話には関係ないんだが、香港表記が「太陽祭」でフフッ、となってしまった。
この太陽祭さん、アドマイヤジャパンやシックスセンス同様Wikipedia があるので、詳細はそちらを参照していただくとして、ここではざっくり紹介していくよ!
父は親の顔よりも多く見た「サンデーサイレンス」……ではなく、そのサンデー産駒である「スペシャルウィーク」だよ。
スペシャルウィークもあまりにも有名すぎるので説明を略すけど、母父の「ノーザンテースト」も有名すぎるんだよなあ……!
理事長がノーザンテースト説、が一時期流行ったのでノーザンテーストにも詳しいウマ娘ファンもいるとは思うんだけど、今回はサラッと触れるよ。
ノーザンテーストといえば、世界の大種牡馬・ノーザンダンサーの直仔で、馬主が社〇グループの創業者。
数々の名牝と交配され、GⅠ競争を制した産駒を多く輩出。日本競馬の血統を瞬く間に塗り替えたよ。
特に有名な産駒として、ウマ娘にも実装されているマチカネタンホイザや、オークスを制したダイナカールと、その娘・エアグルーヴ、春天覇者のアンバーシャダイの産駒には宝塚記念を制したメジロライアンがいたよ。
主要なサイアーライン(父系)としてメジロライアンとその息子であるメジロブライトが頑張っていたけど、2013年にライアン産駒の牝馬がJRAの登録を抹消したことで、ノーザンテースト系の競走馬はいよいよ、JRAから姿を消すことになった。
あれ、でも、インティライミに子供がいれば血自体はつながっているのでは?
残念ながらインティライミは種牡馬にはなれなかったよ。
8歳まで現役を続けたインティライミは、大敗した最後のレースで屈腱炎が判明してしまい、同年2月に現役を引退したんだ。
引退後はヴァーミリアン同様、ノー〇ンホースパークで乗馬として繋養されることが決まった。
そんなインティライミの現役時代。
初の重賞制覇となったのは2005年のダービー前哨戦となる京都新聞杯。
後方からの競馬となった状態からまくって前に出ると、内側を突いて上がってきたコメディアデラルテと競り合ってハナ差勝利。
史実のダービーではこの勝利が高く評価されて、皐月賞2着馬のシックスセンスを押さえて2番人気に推されるよ。
結果として日本ダービーでディープインパクトに5馬身差つけられるも、コスモオースティンを交わして先頭に立った鮮やかな走り方から、菊花賞こそはこのインティライミがディープインパクトの三冠を阻むかも、と期待されていたんだ。
だけど裂蹄(蹄の病気)になってしまい、菊花賞への出走は断念せざるを得なかった。
さて、ここからのインティライミはかなり苦戦を強いられる。
7か月半にも及ぶ長期休暇を経て挑んだ2006年の日経新春杯では、アドマイヤフジに1馬身差をつけられて敗北。
続く阪神大賞典でも1着のディープインパクトから遅れること4秒、0.1秒を1馬身差とすると、かなりの差での敗北を喫してしまう。この時の順位は8着。
それからしばらく勝ちきれない日々が続いて2007年の秋レース。
GⅢ朝日杯チャレンジカップで2着馬に2馬身差をつけると快勝。約1か月後の京都大賞典でも果敢に走って優勝した!おめでとう!
しかし、これが最後の勝利になってしまった。
以後インティライミは勝ち上がることができず、2010年にレースに出た後になって裂蹄が発覚、引退することになってしまった。
ちなみに最新のインティライミはノーザンホー〇パークではなく、ノー〇ンファーム Yea〇ling でリードホースをしているんだそう。
引退後の動向をみると、〇ーザンホースパーク→慶應義塾大学馬術部→ノーザンホースパー〇→ノーザ〇ファーム Yea〇ling とちょいちょい移動しているみたい。
今は仔馬たちに慕われ、のんびりとした余生を過ごせているようで少し安心しました。
◎シャドウゲイト
シャドウゲイトにもWikipedia あるよ!詳細はそちらを見てもらいつつ、ざっくりとシャドウゲイトの活躍を紹介するよ。
史実では日本ダービーに出走。その時の総獲得賞金は約1500万円と、他の馬たちよりはちょっと低め。
ダービートライアルのプリンシパルステークスに出走すると、低人気だったにも関わらず2着入線して優先出走権をゲット!
だったんだけど、美貌馬ではデビュー戦からずっと逃げのスタイルで走っていた同馬に、今回はダービー出走権を譲ってもらうことにしたよ。すまん。
シャドウゲイトは他にも菊花賞や他のGⅠ競争にも果敢にチャレンジしていて、2007年に日刊スポ賞中山金杯(GⅢ)で後続に7馬身差をつけて重賞を初制覇すると、続いてシンガポールで開催されたシンガポール航空国際(GⅠ)で初のGⅠ勝ちを収めたよ。
それから2年ほどは勝ちに恵まれなかったものの、2010年、8歳になって挑んだトヨタ賞中京記念(GⅢ)では後続に1馬身以上をつけて勝った。
9歳になった2011年は、身体の衰えも目立つようになって1戦も勝てなかったけど、天皇賞・秋に出走したりと精力的に走ったよ。
同年12月の中日新聞杯(GⅢ)での10着を最後に翌年に競走馬登録を抹消した。
けど、競走馬自体を引退したわけではなく、なんとアイルランドにある厩舎に移籍したんだ。
そして2012年、移籍後の初レースで10歳ながらレコードタイムをたたき出してしまう。
好スタートに思われたが、次のレースでは8着と破れてしまった。
シャドウゲイトはこのレースを最後に引退し、アイルランドで種牡馬生活をおくることになったよ。
10歳になってもレコードタイムをたたき出す成長性を高く評価されているみたい。
海外の大レースを勝った馬の父親がシャドウゲイトだった!なんてこともそのうちありそうだね!
そんなシャドウゲイトの血統にちょっとだけ触れるよ。
シャドウゲイトの父は「ホワイトマズル」というイギリスの競走馬だよ。
勝つときはド派手に勝って、負けるときは微妙なことになる、そんな感じの馬だったみたい。
競走馬を引退した後は日本で種牡馬生活を送っていたよ。
主な産駒には2004年の天皇賞・春を勝ったイングランディーレや、2002年の優駿牝馬(オークス)を勝ったスマイルトゥモロー、2007年菊花賞馬のアサクサキングス。
ちなみにスマイルトゥモローはファインモーションと同期だよ!
母は「ファビラスターン」で、母父は「サンデーサイレンス」だね。
ファビラスターンは重賞勝ちなしのまま繁殖牝馬となったよ。
シャドウゲイトはそんな母の2番仔として生を受けたんだ。
そしてファビラスターンに「重賞勝ち馬の母」「GⅠ馬の母」の称号をプレゼントしたのも、このシャドウゲイトだったんだね。
アイルランドにいる、ということで近況がつかめないけど、もしご存じの方がいればメッセージください!
以上、弥生から日本ダービーまでの被害馬紹介でした。
後書きに今回の紹介を書くために参照したウェブページ等を書いているので、詳細が気になる方はそのウェブページ等を参考にお調べください。
次回、掲示板回ッッッッ!!!!
今回の紹介を書くために参照した資料
netdekeiba.com
→こちらのウェブサイトで各競走馬の名前で検索し、競争成績や血統、そして掲示板での投稿を参照させていただきました。
Wikipedia 持ちの競走馬たち※リンクは各競走馬のページに飛びます
アドマイヤジャパン
シックスセンス
インティライミ
シャドウゲイト
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閑話 掲示板回 Ep-3
掲示板回 Ep.-2 から約1ヶ月が経ってて芝生えました。
なので初投稿です。
前話の被害馬紹介でヴェ○サイユファームの情報ありがとうございました!
追記する形で修正を入れました。
今回の話は時間軸の都合上、オリジナル産駒(????)がワサワサ出てきますのでご注意
ここにきてタグ「史実改変」が効き始めたゾ
【総合】サンジェニュイン専用スレ 28
113:俺は名無しだって食っちまう ID:7DaK3Q7aJ
クッッッソほどスレがのびたので、整理用にここまでのまとめ
7月2週目:サンジェニュイン&ディープインパクトの実装決定(あくまで実装決定の報告のみ)
詳細については追って発表、ウマ娘追加以外の大型アプデもあると明言される
↓
7月3週目:サンジェニュイン&ディープインパクトのビジュアル、声優、PV、実装時期が正式に発表
サンのみPV、実装時期の明言なし
前に「これディープじゃね?」と噂されていたウマ娘をベースにしていると思われ
サンジェニュインのデザインは完全初出、新作
同時にカネヒキリ、ヴァーミリアン、シーザリオ、ラインクラフトの既存サポカのPUイベが開催予告
また、全ウマ娘の「適性」に「洋芝」を追加(ディープは芝A、洋芝B、ダートG)(サンは未発表)
↓
7月4週目:ディープインパクト実装 レア度星3(実装当日はディープインパクトの命日7月30日)
PUガチャ開始。RとSRのサポカがガチャに追加実装(PU有り)
2002年産組のサポカPU開始
ディープのURAストーリーに7割サンが出てくることでスレが盛り上がる
サンジェニュイン産駒サントゥナイトの凱旋門賞出走が正式に決定(鞍上未定)
サンとの親子制覇を期待する競馬おじたち大量発生
ちょっと書き疲れたわ
下明けといて
114:俺は名無しだって食っちまう ID:7DaK3Q7aJ
サンクス
8月1週目:サンジェニュインのPVと詳細情報が発表される
適性は「芝:B、洋芝:A、ダート:G」
今後のサンジェニュイン実装に合わせて、現在ディープインパクトのみ出走可能なレース(例:凱旋門賞)に全ウマ娘が出走可能になるようアプデを入れるとツイート有り
↓
8月2周目:実装発表から1か月が経過
サンジェニュインの実装時期が正式に発表される(凱旋門賞当日実装(つまり10月))
実装までさらに2か月あるのかよ、とスレ民騒然
一部のアホが運営に凸ったためスレにてボッコボコにされる
のちに運営から「サンジェニュイン実装に合わせて大型アプデを行う都合上時間が掛かっている」と弁解が入る
この時点でスレにいた名探偵から「海外レースが解放されるのでは?」と考察が入ってまたスレが盛り上がる
↓
8月3週目:アニメ版ウマ娘5期の詳細が発表される
メインはサンジェニュインとディープインパクトのクラシックレース
スピカ、リギル、カノープスに次いで、新チーム・メテオの存在が明らかに
メンバーが全員2002年産組ということで早くも「チームメテオ」タグがpixivとTwitterで流行る
↓
8月4週目:
カネヒキリ×母父サンジェニュイン産駒のライメイヒビキ(牝・8)が同月末付けでJRA競走馬登録を抹消し引退、繁殖入りの発表
同厩舎所属の父父カネヒキリのネヴァーネヴァー(牡・3)と父サンジェニュインのサンヴィーナス(牝・3)が共に放牧のため栗東を離れる
ロンドンタウン(父カネヒキリ)産駒のライノユメ(岩手所属)がダービーグランプリ出走確定
現時点でデビューから無敗のため、ダービーグランプリ優勝後に中央に移籍の可能性アリ
↓
9月1週目:JRAの新ブランドCM「THE ULTRA STAGE」シリーズ開始
一発目が「THE ULTRA STAGE ディープインパクトVSサンジェニュイン」
使用レース「2005年クラシックレース(皐月賞・東京優駿・菊花賞)」
サブタイトル「【熱戦】の意味を知った」
↓
9月2週目:イマココ
115:俺は名無しだって食っちまう ID:GHz1fNgIc
イマココ、じゃないんだよなあ……
116:俺は名無しだって食っちまう ID:xK8EkoZRV
実装発表から2か月経っても実装されないウマ娘がいるらしい
117:俺は名無しだって食っちまう ID:qLfDnQ4CT
実装発表だけで伝説を作るんじゃないよ
118:俺は名無しだって食っちまう ID:4qKsKKpyw
クソ濃密な2か月間をありがとうサンジェニュイン
そしてここからさらに1か月濃密な時間が来る
119:俺は名無しだって食っちまう ID:MV3CoN++z
凱旋門賞まだぁ?
120:俺は名無しだって食っちまう ID:3vA/B6G37
まだです
121:俺は名無しだって食っちまう ID:KWAUDK9A8
実装に3か月かかるとか誰も思わないでしょ
122:俺は名無しだって食っちまう ID:+sdwmFpLZ
>>121
俺は思ってたゾ
123:俺は名無しだって食っちまう ID:UlCUyGsWN
>>122 絶対にウソだゾ
124:俺は名無しだって食っちまう ID:TDfy+kE85
サンインパクト実装おめでとう(白目)
125:俺は名無しだって食っちまう ID:AInlgbgQg
混ざってる混ざってる
126:俺は名無しだって食っちまう ID:bG0BjUEKu
実装発表から長引いても一緒に実装されると思ってました
まさかディープインパクトが先に実装されるとは
127:俺は名無しだって食っちまう ID:NVQxV95R0
誕生日とかなんかの記念レースの日に実装ならともかく、命日に実装とかシャイゲさんさあ……
128:俺は名無しだって食っちまう ID:mPL5+e2xg
シャイゲに人の心はない
129:俺は名無しだって食っちまう ID:oLpHBIK/d
サンの実装を凱旋門賞当日にするだけの理性はあるのに
130:俺は名無しだって食っちまう ID:SQ2QZZLiL
アレは理性っていうか、実装引き延ばしてもギリギリ許される日を選んだだけ感
131:俺は名無しだって食っちまう ID:ejPdGB8n9
実装発表から3か月も待たせるんだからかなりの大型アプデがはいるぞこれは
132:俺は名無しだって食っちまう ID:UExvXoWt2
もしかして俺のハルウララちゃんが有馬記念でぶっちぎるなんてことありますか?
133:俺は名無しだって食っちまう ID:OotbgJHwd
お前のハルウララちゃんではないが、アプデ前から可能性はゼロじゃなかっただろ
俺はゴールドシップで凱旋門賞制覇を目指すぞ!
134:俺は名無しだって食っちまう ID:PNp7ZdV9a
オルフェーヴル、結構前に実装されたのに凱旋門賞がなかったの未だに根に持ってる俺
135:俺は名無しだって食っちまう ID:N6e7gC47Q
>>134 2戦とも2着と大健闘したのにな
136:俺は名無しだって食っちまう ID:RqYT1sf3C
>>134 モヤモヤは確かにするんだが、日本馬初の凱旋門賞馬・サンジェニュイン実装まで延ばしてたということであれば納得せざるを得ない
まあ実際にはウマ娘になって初めて凱旋門賞を走ったのはディープインパクトさんなんだが……
137:俺は名無しだって食っちまう ID:Sur6RllyJ
オルフェーヴルの凱旋門賞で好きなエピソード、フランス遠征前に1回社来に戻ったところ、スタッフの綱の引き方が気に入らなかったのか暴れ出したオルフェが、たまたま移動中だったサンジェニュインを見た瞬間に大人しくなったってやつが最高
138:俺は名無しだって食っちまう ID:1HhsW9biH
それも好きだけど、フランス遠征期間中ずっとサンジェニュインの巨大ポスターを厩務員が持ち歩いてたエピも好き
139:俺は名無しだって食っちまう ID:fn11MwNR6
>>138 意味が解らなくて草
140:俺は名無しだって食っちまう ID:FfAZrxPB9
>>139 「サンジェニュイン 牡馬 モテる 美形」で検索検索ゥ!!!!
141:俺は名無しだって食っちまう ID:fgtS5KbPd
2005年の競走馬研究所の報告書も面白いからオススメだぞ
142:俺は名無しだって食っちまう ID:SOQPoXA0G
>>113 さりげなくウマ娘になってない産駒たちの情報載せてるの草
143:俺は名無しだって食っちまう ID:boJrFbToW
ネヴァーネヴァーくんとサンヴィーナスちゃんを一緒に放牧してええんか!?
144:俺は名無しだって食っちまう ID:MY4kMHyyQ
>>143 流石に違う牧草地やろ
145:俺は名無しだって食っちまう ID:YCRb8Q64c
カネヒキリの血を信じろ
146:俺は名無しだって食っちまう ID:Rqt29DpI1
気づいたらうまぴょいしてそう
147:俺は名無しだって食っちまう ID:uXUj6i8uv
恋人配合はダートも芝も結構走るんだよなあ
148:俺は名無しだって食っちまう ID:q3k/2K101
カネヒキリ、サンジェニュイン産駒の牝馬を相手にするとやけに時間が掛かったエピが好き
149:俺は名無しだって食っちまう ID:pYJeKdv4H
秒で種付け終わらせるカネヒキリさんの葛藤を感じるな
150:俺は名無しだって食っちまう ID:u1f99Kx35
実際にのしかかるまでが長かったらしいし
151:俺は名無しだって食っちまう ID:po6StJ+I/
カネヒキリ産駒の活躍を見ると、JRAで重賞勝ちしてる馬はロンドンタウン以外だとほぼ恋人配合か
強いな
152:俺は名無しだって食っちまう ID:w2ciK69US
岩手で無双してるライノユメ、血統見たら母父がちゃっかりサンジェニュインでここも恋人配合かよお!
てかサンデーサイレンスの4×3でさらっと奇跡の血量なの芝
153:俺は名無しだって食っちまう ID:6KQo7hNRq
芝(なお適性はダート)
154:俺は名無しだって食っちまう ID:yUTIB3wty
SSも奇跡の血量といえばデアリングタクトだけど、ここにロンドンタウン×母父サンジェニュイン産駒が入ってくるのか
155:俺は名無しだって食っちまう ID:8CTqU8pqI
正直期待しかない
カネヒキリが2016年で死んじゃったんで6世代しかいないのが悔やまれるが、
サンデーサイレンスの3×3のライノヒビキとか、種牡馬にはなれなかったけど芝でも走ったハシルヒカリノユメとか
母父サンジェニュイン牝馬との相性がめちゃくちゃよかった
今からでもカネヒキリ産駒を繁殖にあげてクレメンス
156:俺は名無しだって食っちまう ID:keD5W8fSr
恋人配合は父カネヒキリの怪我の多さを、圧倒的丈夫さを持つ母父サンジェニュインがカバーするから安定感がすごい
ちょっとステマ配合っぽいよな
丈夫な身体で、カネヒキリ譲りのパワーと、サンジェニュイン譲りのスピード
サンデーの3×3なのにカネヒキリとサンジェニュインが穏やかな馬だからか気性難はめったにないのがステマと逆かww
157:俺は名無しだって食っちまう ID:XylJ/pXyp
この普通に使われてる「恋人配合」なんどみてもおもしろいな
158:俺は名無しだって食っちまう ID:zLmUfYrqy
今更だけどなんで恋人配合なん?
159:俺は名無しだって食っちまう ID:Ni9dLOs1M
公式で恋人だからだよ
160:俺は名無しだって食っちまう ID:OyUCrgWZD
??????
161:俺は名無しだって食っちまう ID:nXOrt3Mla
頭おかしくなったか?
162:俺は名無しだって食っちまう ID:GtAyzXLT9
まだ恋人配合の成り立ちをしらねえにわかが生きてたのか
カネヒキリハッピーラブラブライフでも見てろ
https://niyoniyo.com/id=114514/
163:俺は名無しだって食っちまう ID:EBdJpdcD4
タイトルが草生えるけどこの動画が一番わかりやすい
164:俺は名無しだって食っちまう ID:8n5dX3B8b
カネヒキリとサンジェニュインのハッピーラブラブライフを実際の動画と共に紹介していくやつな
想像以上に2頭がべったりしてて草
ちな恋人配合は生産者も使ってるんやで……絶望しただろ?
165:俺は名無しだって食っちまう ID:DKuDFt0Fp
>>162 本当に「ハッピーラブラブ」で芝
166:俺は名無しだって食っちまう ID:12PgcjwqB
あの、ここはウマ娘スレのはずなんだが?
167:俺は名無しだって食っちまう ID:VTl3Wo9YF
いいえ、ここはサンジェニュイン総合スレです
168:俺は名無しだって食っちまう ID:qNv10XWqW
サンジェニュイン関連だったら何話してもいいんだゾ
ここ2か月はたまたまウマ娘の話題が多かっただけ
169:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
ちょっといいですか?
最近アプリ版ウマ娘始めたんですけど、サンジェニュインが実装されるのはまだ当分先ってことですか?
170:俺は名無しだって食っちまう ID:1EzstIrhr
お?完全素人兄貴か?
171:俺は名無しだって食っちまう ID:nfNUt80hc
>>169 せやで
これ >>113 >>114 見てクレメンス
172:俺は名無しだって食っちまう ID:JQrR4CZKY
やっぱり実装長くないっスか!?おれ、ちょっと運営どついてきます!!
173:俺は名無しだって食っちまう ID:6U/eBxyO6
アホ凸者のコピペで草
174:俺は名無しだって食っちまう ID:vpfwtrZP1
正義感()に駆られて運営凸ったアホがいるらしい
175:俺は名無しだって食っちまう ID:P9CmF27pi
スレでクソほどボコられてたの、スッキリした気持ちと同じくらいかわいそうになったな
176:俺は名無しだって食っちまう ID:lIBfc3ejG
当時のスレにもアホを先導したアホがいたので……
177:俺は名無しだって食っちまう ID:DZBoVDMqj
まーたアホ凸者くんの話題でスレが乗っ取られそうじゃん
178:俺は名無しだって食っちまう ID:wGfqp7Pnq
もう次回から1のコピペに「アホ凸者の話題禁止」って入れてほしい
179:俺は名無しだって食っちまう ID:ZXpiTpXPl
次回立てるときに検討するわ
180:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
答えてくれてありがとうございます!
181:俺は名無しだって食っちまう ID:5MuLK7XBb
話の流れ変えよ
素人兄貴はどうしてウマ娘始めたん?サンジェニュイン?
182:俺は名無しだって食っちまう ID:pMyBn3S5Z
この前のPVがCMで使われてからウマ娘DL増えたっぽいしな
183:俺は名無しだって食っちまう ID:RHNW11okT
ギャップがえっちでよかった
184:俺は名無しだって食っちまう ID:yFucEWNQr
えっち講評ニキひさしぶり
185:俺は名無しだって食っちまう ID:j8y+k+yMI
外見:瞳と唇以外、髪の毛、肌、衣装全部白!クールビューティーな感じ、一人称「わたくし」でも可笑しくない
中身:一人称「オレ」!!!!弾けるエネルギー!!!!ふにゃふにゃ笑顔!!!!
186:俺は名無しだって食っちまう ID:zhDXGPi1T
ギャップありすぎて草
187:俺は名無しだって食っちまう ID:/c7jU1Dz9
凱旋門賞馬をあそこまでふにゃふにゃにするなんて……
シャイゲありがとう!!!!(課金)
188:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
アプリ始めたのはCMでサンジェニュインを見たのがきっかけなんですけど、
元になった馬がいると知っていろいろ調べているうちにここにたどり着きました
189:俺は名無しだって食っちまう ID:vr5ptbBuE
素人兄貴はCM勢か
よかったよなあのCM
190:俺は名無しだって食っちまう ID:DCj9NTilI
クールな見た目から飛び出た第一声が「よお!トレーナー!」
191:俺は名無しだって食っちまう ID:Et3i4Wgv5
最高に痺れたね
192:俺は名無しだって食っちまう ID:tRd8PMX31
お前と頂点極めにいきてえ~~!!!!
193:俺は名無しだって食っちまう ID:b9Jz2vvYU
絶対三冠取らせるって誓った
194:俺は名無しだって食っちまう ID:5cR/7/Do1
ディープ推しの「絶対皐月同着とかさせねえから」はサン推しにとっても同じ
195:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
サンジェニュイン、調べれば調べるほどいい馬で
関連書籍はあらかた買いました
実装までの間に読もうと思ったのですがそれも今日で読み切ってしまって
何かおすすめの媒体はありますか?
196:俺は名無しだって食っちまう ID:0W3IXNMsY
ダービーをぶっちぎりで優勝させてやるから……と思って女神像貯めてる
197:俺は名無しだって食っちまう ID:751Dmyk/1
>>195 サンの関連書籍とか結構あるけど集めたんか
金額ばかにならんかったろ
198:俺は名無しだって食っちまう ID:zxFY/QQDf
素人兄貴思ったよりズッブズブにはまってて草
199:俺は名無しだって食っちまう ID:N/i5/Bl+o
>>195 活字読み終わったんなら映画やな
200:俺は名無しだって食っちまう ID:N80bzPu1V
漫画もあるぞ
週刊少年ジャンパーで短期連載されてたディープVSサンの日本ダービーを描いた「ハナサ」
タイトルはダサいが中身は面白い
201:俺は名無しだって食っちまう ID:v3wzREffd
映画版はハリウッドのと国内のがあるけどハリウッドはやめとけ
あれはサンの映画っていうかジョッキーと一口馬主の娘のラブストーリーだったから
事実にも基づいてないし、サンはただのスパイス
202:俺は名無しだって食っちまう ID:KdwHaZsIq
>>201 フランス競馬とイギリス競馬の関係者から大バッシングを受けた映画じゃないですか!
あと関係ないのに何故か炎上した芝木ジョッキー
203:俺は名無しだって食っちまう ID:gDxQZlFT0
レースシーンが適当だったしサン役の馬が明らかに葦毛だったし……
204:俺は名無しだって食っちまう ID:hfPaa7bnx
国内のやつはいろんな賞もらってたからさすがに素人兄貴も視聴済では?
205:俺は名無しだって食っちまう ID:s+jcAStZs
サンの映画が売れたおかげでウララの映画が劇場でも見れるようになったの嬉しかった
206:俺は名無しだって食っちまう ID:NbjvV03Lw
キャスト豪華だったのに上映されずDVDでコソコソ売られたハルウララ映画な
207:俺は名無しだって食っちまう ID:sc0E3WRaG
ハルノキボウがJRAでデビュー戦勝った時に高知の映画館で上映されてたゾ
208:俺は名無しだって食っちまう ID:2Cg4CyCVR
ウマ娘はじめた当初、ウララ全戦全敗で繁殖に上がれなかったのはそらあなあ、と思ったけど実は1回子供作ってたのびっくりした
209:俺は名無しだって食っちまう ID:chiXmIKOT
逆に意外と知られてないことにサン推しおじさんは驚いたよ
210:俺は名無しだって食っちまう ID:NUIF6R86s
ウララの最後の馬主はあんまり印象の良くない人で、ディープやサンと配合するって言って集めた金が結局何に使われたのか分からずじまいだった
ある日突然その馬主に連れられて行ってしばらくの間行方不明になってたウララは、
実は目黒さんに引き取られて知り合いの牧場へ→縁あってサン×ウララで配合
仔が生まれて1歳になるまではその牧場で暮らして、生まれた産駒を目黒さんの知り合いが馬主になってJRAに登録すると、
ウララは目黒さんが支援して立ち上げた「ハルウララの会」に世話をされる形で千葉の牧場へ←イマココ
211:俺は名無しだって食っちまう ID:3PZ9Iw1EN
目黒さんって誰だよ
212:俺は名無しだって食っちまう ID:jkQuvZrop
サンの現役時代の厩務員だよ
サンが引退すると同時に厩務員を辞めて、サンに関する書籍や、サンの産駒について情報を発信してたりする
213:俺は名無しだって食っちまう ID:m/oDjrGVm
これ関連で目黒さんが「なんでウララを支援しているのか」の理由が「サンがウララを気に入ってるから」なの好き
214:俺は名無しだって食っちまう ID:pShxIOMaa
サンを中心に生きてる男の中の男
215:俺は名無しだって食っちまう ID:WOgzsMRIT
一般的にネットに上がってるのは「馬主に恵まれないウララだったが牧場の人には恵まれて今も健やかに暮らしている」だけだからな
行方不明の間の空白は意外と知られてなかった
Wikipediaにも書かれてなかったしww
216:俺は名無しだって食っちまう ID:TnZKB6mdn
>>215 アプリ版リリースされてから1年くらいでWikipedia に追加されたっぽい
217:俺は名無しだって食っちまう ID:ItlCUdi9f
ハルノキボウは重賞勝ちこそできなかったけどオープン馬にはなれたからな
218:俺は名無しだって食っちまう ID:HHMpFXkQk
現役時代のウララの調教師がハルノキボウがオープン馬になったのを見て泣いたやつ、ああ、この人も本当はウララを勝たせてやりたかったんだなあと思えた
219:俺は名無しだって食っちまう ID:+Ol6OMZZz
ウマ娘でウララとサンのやり取りがあることに期待
220:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
書き込み遅れてすみません
サンジェニュインの国内の映画というと
「SUNGENUIN 太陽の馬」
で合ってますか?
名前だけは聞いたことがあったのですが未視聴です
221:俺は名無しだって食っちまう ID:Nt6hXe9gD
>>220 素人兄貴、投稿時間とかルールないし好きにすればええんやで
スレ民も自由にやってるから
222:俺は名無しだって食っちまう ID:PeeaY12bL
太陽の馬で合ってる
俺も映画館で上映されてた時はスルーしてたけど、ウマ娘にハマってから速攻でDVDレンタルして見た
223:俺は名無しだって食っちまう ID:d1TxWvrbM
あれ、サンの生まれから凱旋門賞まできれいにまとめてるから2時間が全然苦にならなかったな
224:俺は名無しだって食っちまう ID:NjX+OrtpT
登場人物のリアル感がよかった
225:俺は名無しだって食っちまう ID:HLisiLVIK
流行りの俳優女優アイドル使わず、完全オーディションで人間を決めたのがいい
226:俺は名無しだって食っちまう ID:sy4r8xuH2
サン役の馬が当歳馬から現役まで全頭サンジェニュイン産駒なのもニッコリポイント
227:俺は名無しだって食っちまう ID:XcYXMqf9E
ちな各種ポスター、パンフレット、DVDのパッケージはサンジェニュイン(本物)やで
228:俺は名無しだって食っちまう ID:r28yAKNgr
この顔の良い俳優、芝木ジョッキーそっくりすぎだろ、と思ったら芝木の従弟で草
229:俺は名無しだって食っちまう ID:pXXxLzZ0o
シバキはほら、ジョッキーにならなかったら顔で食っていけた男だから……
230:俺は名無しだって食っちまう ID:7Xcnpdi1m
映画制作時はカネヒキリもディープも存命だしヴァーミリアンもまだ社来にいたんだよなあ
しんみりしちゃうぜ
231:俺は名無しだって食っちまう ID:g78vkoPxz
2011年社来ハッピーショットの出番か
migikara_kuri_shiro_kage_kuro.img
232:俺は名無しだって食っちまう ID:T4xPXwmvH
いつもの3K1Sやん
233:俺は名無しだって食っちまう ID:5eOFo53cq
カネヒキリヴァーミリアンディープを3Kってまとめるのやめろww
それ毛の色
234:俺は名無しだって食っちまう ID:pveDCj3dl
ちょっとおまいら!!!!!!
サンジェニュインの勝負服アレ、アレってブルマじゃないか!?!?!?!?
235:俺は名無しだって食っちまう ID:iejMgrS+W
>>234 1か月前に議論されつくした話題ありがとう
236:俺は名無しだって食っちまう ID:YuzU5QimM
>>234 1か月前からタイムスリップしてきたんか?
237:俺は名無しだって食っちまう ID:T5VugjJaq
ブルマっつーかウララちゃんの衣装と似たようなモン
238:俺は名無しだって食っちまう ID:+16pOpClG
生足魅惑のマーメイドやぞ
239:俺は名無しだって食っちまう ID:b9/SkUWAK
つまり頭が魚?
240:俺は名無しだって食っちまう ID:kgyvwpvgM
ウマですわよ
241:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
みなさんありがとうございます
さっそくDVD買いました
242:俺は名無しだって食っちまう ID:Duq+HBf+8
素人兄貴、行動力ありすぎぃ!
243:俺は名無しだって食っちまう ID:V6TO/70sO
サンジェニュインに金使いすぎて破産しそう(コナミ)
244:俺は名無しだって食っちまう ID:30WsRKcX6
後からハマるといくらあっても金足りなくてこまるよな
245:俺は名無しだって食っちまう ID:S18rT7blo
借金だけはするんじゃねえぞ素人兄貴
246:俺は名無しだって食っちまう ID:3UDY8LZm3
ウマ娘、とりあえず6万行けば天井で交換できるからね……6万で耐えるんだぞ
247:俺は名無しだって食っちまう ID://cnvn5bZ
素人兄貴、サンジェニュインの生産牧場が出してるサンのぬいぐるみも集めてそう
248:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
なんか心配してもらってるようですみません
借金はしてないです、自分で稼いだ金で集めたいので
完凸はさせたいので集めきるまではガチャまわそうと思います
サンジェニュインのぬいぐるみがあるんですか?
知らなかったです
良い情報ありがとうございます
249:俺は名無しだって食っちまう ID:k8PjJkfve
>>247 おいなに素人兄貴に燃料投下してんだよ
250:俺は名無しだって食っちまう ID:MICUkoD9g
これは廃課金の匂い
251:俺は名無しだって食っちまう ID:+3Me0tNLi
マジで素人兄貴、金の使い過ぎには注意な
サン爆おじさん思い出すわ
252:俺は名無しだって食っちまう ID:Y0yQM40R6
サン爆おじさんは素人兄貴とは別じゃん
253:俺は名無しだって食っちまう ID:xg2Bijk47
サンのグッズがバカ売れすると気づいて買い占め高額転売しようとしたクズ→サン爆おじさん
サンジェニュインの沼にズッブズブに嵌って散財→素人兄貴
254:俺は名無しだって食っちまう ID:QcuiwfRfk
完凸までにいったい何万掛かるのか(白目)
255:俺は名無しだって食っちまう ID:RCFHD64N5
運がよければ20万でおわるんじゃね?
256:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
サンジェニュインのガチャ用に100万は用意してます
足りればいいですけど……
257:俺は名無しだって食っちまう ID:FKzV5nQlf
ファッ!?!?!?
258:俺は名無しだって食っちまう ID:o3KdCZaD/
100まん!?!?
259:俺は名無しだって食っちまう ID:Gl2TR2M1M
正気失ってて草
260:俺は名無しだって食っちまう ID:Kp7vTbZMl
シャイゲの太客
261:俺は名無しだって食っちまう ID:htumbhUbD
ウマ娘が初のソシャゲなのか????
262:俺は名無しだって食っちまう ID:ExOX2QY3j
なんだあこのリミッター外れた素人は……
263:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
学生時代から諸事情で金貯めてたんですけど、
もうその必要がなくなったので
264:俺は名無しだって食っちまう ID:1PTYfnMwT
諸事情……奨学金返済用のお金とか使ってない?
265:俺は名無しだって食っちまう ID:gSMs02Hd5
将来のために貯めてたんだったら使うのは止せ、一時の感情に流されるな
266:俺は名無しだって食っちまう ID:NanBLPDn4
素人兄貴が道を踏み外す瞬間に立ち会っているのか俺たちは
267:俺は名無しだって食っちまう ID:rjBNMgdJD
重大すぎる
268:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
あ、深い事情とかないです
ただ結婚しようと思ってた恋人にプロポーズする前にフラれたので金が余ってるだけです
269:俺は名無しだって食っちまう ID:WXdmZwSD8
十分深い事情で草
270:俺は名無しだって食っちまう ID:M44EM91Ne
かわいそうすぎる
271:俺は名無しだって食っちまう ID:QdshkrLRj
もう……好きなだけ金を使いな……
272:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
ひとまず100万はガチャで使おうと思ってるんですけど、実装当日はフランスにいるのでフランスでもウマ娘ができるかが不安です
273:俺は名無しだって食っちまう ID:eSkUWj0eF
もしかして凱旋門賞見に行くんか?
274:俺は名無しだって食っちまう ID:JPRHjjW5S
凱旋門賞見に行けるのはうらやましい
素人兄貴、サントゥナイトの写真取れたらアップしてクレメンス
275:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
凱旋門賞見に行くのと、あとはフランスとイギリスにいるサンジェニュイン産駒を見て回る予定です
最大の目的はサントゥナイトなのでもちろん写真撮りますよ!
将来的に馬主になれたらなって思ってます
276:俺は名無しだって食っちまう ID:S8Mjp+6AQ
うーん、もう、推し方の規模がね、でかすぎるわ
277:俺は名無しだって食っちまう ID:VHgFvWK7T
こんな豪快に金を使うやつを振った恋人、大物を取り逃がしたのでは?
278:俺は名無しだって食っちまう ID:itXbpyvjV
フラれたからこうなった可能性もある
279:俺は名無しだって食っちまう ID:h6BLJyIMQ
逆にこう言うところがフラれた原因の可能性も
280:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
あ、サンジェニュイン基金とかあるんですね
ちょっと入れてきます
281:俺は名無しだって食っちまう ID:j4gxACYKL
この素人兄貴が数年後、ダービー馬のオーナーになるとはこの時誰も知らなかった──
282:俺は名無しだって食っちまう ID:Kfr8Mqy63
>>281 本当になりそうで草
次回、第二部開始!!!!
さらっとウララちゃんと子供作ったことになってるサンジェニュインとか言う馬がいるらしい……
カネヒキリ産駒のロンドンタウンくんは史実馬で、2年連続コリアカップ(韓国GⅠ)を制したお馬さんです。
昨今の事情により、現実世界では日高の牧場で種牡馬として生活を送っています。
無事受胎し、産駒は順調にいけば来年、生まれるんだそう。
楽しみですね!!!!
以下オリジナル産駒(????)
ライノヒビキ 牝8
カネヒキリ産駒(母父サンジェニュイン)
サンデーサイレンスの3×3で濃いめ
中央・地方で堅実に戦い、掲示板から落ちたことはない善戦ウーマン
父とは異なり1度も怪我をしたことがない丈夫な身体(母父譲り)
ダート・芝両方を走ったタフさを評価されてめでたく繁殖牝馬に
ハシルヒカリノユメ 牡13
カネヒキリ産駒(母父サンジェニュイン)
初年度産駒の1頭
中央の芝2000メートルでデビュー勝ちし、ドゥラメンテ、キタサンブラックらと競り合った
惜しくもクラシック無冠のまま4歳になって引退するも、それまで全戦3着以内だった
諸事情で種牡馬入りはできず、現在は乗馬としてノータンファームで繋養されている
ライノユメ 牡3
カネヒキリ産駒ロンドンタウンの牡馬
母父サンジェニュインのため、サンデーサイレンスの4×3持ち
岩手でのデビュー戦からずっと無敗
このまま行けば中央移籍できると関係者から期待されている
サンヴィーナス 牝3
サンジェニュイン産駒の白毛の牝馬
走法は大逃げ一択
同じ厩舎所属のネヴァーネヴァー(父父カネヒキリ)とは仲良しだがケツの危機をたまに感じてる
将来の配合相手がネヴァーネヴァー一択になるとは夢にも思っていない女の子
ハルノキボウ 牝14
サンジェニュイン産駒(母ハルウララ)
ハルウララ唯一の仔
中央のダート1200メートルで大逃げして大差勝ちを収めると、続くなでしこ賞でも勝利
重賞レースでは優勝できなかったものの、常に1桁順位に食い込んだ
10歳まで現役を続けた後は母のいる千葉の牧場で繋養されている
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19.まばたく間
第二部、ぬるっと開始です。
ところで未返信の感想が409件になってました(ドッ)
ワロてる場合じゃないんだよね……ほんとすまん。
そしてたくさんの感想ありがとうございます。無事作者の糧になってます。
毎秒読んでます。
いつか絶対返信しきってやるからな……!!
※一部助走つけて先に返信しているものもありますが他の感想蔑ろにしてるわけではないです信じて
「難しいことを承知でお願いします。竹騎手に── サンジェニュイン号に乗って頂きたいんです」
僕にはディープインパクトがいる。
全戦乗ると約束している。
だから乗れない。
すぐにそう返すべきだったのに。
耐えがたい苦痛が全身に走って、チカチカと目の前に光が飛んで。
制御不能の唇が戦慄いて言葉を発する。
「……考えさせてください」
もうずっと前から視界の端に佇む、その栗毛の馬が、何か言いたげに僕を見ていた。
放牧中である。
『っざけんなディープインパクト……マジで……』
隣り合う牧草地から一番離れた場所で、俺はぐったりと横になっていた。
先ほどまでディープインパクトと同じ牧草地に放たれていたのだが、にじりよってくるヤツから逃げ回ってヘロヘロ。
マジであいつ、クッソほど追いかけてきた……言葉通じてないんか?
もしかして俺の馬語って下手?馬語にも日本語英語があるって話だったらもう無理だぞ。
そもそもの話、なんで同じ牧場にディープインパクトがいるのかと言うと、俺とディープインパクトが同じタイミングで放牧に出されたからだ。
いや嘘ついたわ。
正確にはディープインパクトは放牧に出されているわけではなく、北海道にあるという、管理調教師の出張厩舎で調教されている。
夏の栗東はクソ熱いので、熱中症やらなんやらを避けるために北海道まで移動してきたようだ。
6月中旬、俺は社来スタリオンステーション早来へ、ディープインパクトは沼江調教師の出張厩舎へ。
北海道に移動した日も馬運車も同じだったが、滞在先もあって7月半ばに入るまでの約1か月間、まったく顔を合わせなかった。
……が、8月まで残り2週間となった昨日の昼、ディープインパクトがここ、早来にやってきた。
そろそろ栗東に戻るということで、最後の一休みをさせに来たらしい。
俺はディープインパクトが来るまでの間、わざわざ生産牧場から世話をしに早来まで来てくれたタカハルと、それはもうのんびりと過ごしていた。
食っちゃ寝て、時々牧草地を走って、そこでも寝転がって、ひたすらぐうたらしていた。
ぐうたらしすぎて丸々太ったくらい。
寝ながら食う草が美味すぎて笑う。草だけに。ドッカンドッカン!
いや笑ってる場合じゃない。自分でも引くレベルの太りっぷりだ。
タカハルは秋のレースに向けて厳しい調教に耐えるための肉だから、と言っていたけど、こんなんテキもブチギレ案件では?
これは9月に向けてしっかり絞らないとな、と決意を固めていたところで、俺がゴロゴロしていた牧草地にディープインパクトが放たれた。
それも昼間ではなく、夜間放牧に出されてしまったのだ。
夜の牧草地、牡馬2頭、1頭は笑っちゃうくらいの美貌ホース、メンコなし、何も起きないはずがなく……。
ま、何も起きてないけど!起こさないけど!?
絶対起こさないために一晩中走り回ってた結果がこのバテってワケよ。
「急に体重減ったな」
調教で絞る必要もなくなったね!
ラッキー!!じゃねえわマジで。
っていうかさあ、北海道に出張厩舎あるとかディープインパクト、ズルくない?
俺も調教受けたかったんだが。可能なら俺もずっと練習していたかったんだが?
テキの出張厩舎はないんか?
ハ?うちのテキは実績がそこまでない、ってうるせえ、俺が出すわ!!
「どうどう、どした、急に暴れて。……あ、ディープインパクトに会えて嬉しかった?」
逆なんだよなあ!!
あっタカハルそれ、そうそう右側ね、そんまんま掻いて。
「あっこら、濡れた馬体押し付けんなって、もー……マイサンお前ってやつは、レース中は格好いいのになあ」
レース以外でも格好いいやろがい!!
軽く頭でタカハルの腹を押すと、頭上から「ッヴェ」というおよそ人間から出ないだろう呻きが聞こえた。
タカハルお前、なんか腹が柔らかくなってない?
ちゃんと絞っておかないと三十路とか四十路になったときに響くってテキも言ってたぞ!
「や、やめ、やめやめえ!突っつくなってもー、お前ってやつは。わかったわかった、レース以外も格好いいよ」
ちゃんと訂正できて偉い!
人間、何事も素直なほうが得するぞ。
素直すぎると弾かれるという人間社会のバグはあるけどな!
俺が鼻息を出すと、タカハルが苦笑いを浮かべながらも俺の頭を撫でた。
「……あの甘えん坊のマイサンが、競走馬としてすっごく立派になってさ。皐月もダービーも見に行ったけど、もう、本当に格好良かった。俺もタクミも鼻が高いよ」
もお、よせやい、本当のこととはいえ照れるう!
って、タカハルもタクミも見に来てたのか!?
先に言えよもお~~!!
弟の世話もあるだろうけど、次こそはディープインパクトをボッコボコにするから、菊花賞も見に来てくれよ!
「マイサンが頑張ってくれてるおかげで、お前の弟も、まだ一口募集始まってないのにもう問い合わせきてるんだって」
お、そうなのか!
いいこと、なのかな?
一口募集の集まりがいいと厩舎とかそこらへん優遇してもらえるんだろうか……。
でも、うーん、俺はまあ、身体が丈夫だっていうのと、常にモチベ高いから重い調教熟せてるって恩恵があるしなあ。
弟が確実に走る保証はないけど、競馬はブラッドスポーツだっていうから、同じ母親の弟に注目がいってるのか。
……これ全部目黒さんから聞いたやつだけどな!
「これからも楽しく、元気に走るんだぞ」
おうよ!
ま、レースは楽しいばっかりじゃないけど、ぶっちゃけ走り終わったときとか辛いし。
でも走るのは好きだから、これからも元気に頑張るよ。
だからそんな心配そうな顔するな。
ちゃんと怪我なく、元気な姿でまた牧場に戻るぜ!
「ははは、よしよし……お前は本当に人の感情に敏感だな」
これでも元は人間だったんでね。
タカハルまだなんか気にしてることあるだろ?
オラオラ吐いちまいな!
ここには馬しかいないからな!
「はぁ……こんなに感情に聡いのに、また乗り替わりなんてどうなるんだか」
ほうほう乗り替わりねえ……エッ乗り替わり!?
俺の鞍上が柴畑さんじゃなくなる、ってコト……!?
マジで!?
7月中旬。
それは関東のとある病院の一室だった。
本原
ベッドに横たわる柴畑の傍で、本原は心配そうな表情を浮かべる。
その顔を見て、柴畑はさらに申し訳なさそうに頬を掻いた。
「すみません、先生」
「いえいえ!体調は本当に大丈夫なんですか?」
「いやあ……まあ、御覧のあり様で。どうにか9月には間に合うと思うのですが……」
柴畑には持病の腰痛があった。
ここ数年、その痛みは増していて、ほんの1か月半ほど前の日本ダービーも、この痛みを押して騎乗した。
サンジェニュイン号という馬は、誰が見ても完璧な逃げ馬だった。
出だしから一切落ちないスピード、終盤になっても伸びる差し脚。
体幹のしっかりした馬で横ブレはしないが、その走りについていくためには、鞍上にも同じくらいのブレなさが求められる。
柴畑は美しく、優れた騎乗フォームの持ち主だった。
しかし、それをもってしてもダメージを完全に軽減するには至らない。
「皐月賞と日本ダービーの間隔は約1か月ほど。回復しきれないまま乗っていたので、ちょっと、ガタがきたみたいです」
6月半ばに放牧に出されたサンジェニュイン号を見送ると、柴畑は控えていた騎乗依頼を順に熟した。
ハナ取りを苦手とし、先頭集団内で好位追走する乗り方を得意とする柴畑は、馬を損なわない乗り手として、調教師や馬主から好意的に見られることも多い。
しかし、いざ勝負の、レースの結果を見たとき、大事にするあまり勝機を逃がしてしまうことも多かった。
それが、サンジェニュイン号に騎乗してからは少しずつ、見方も変わってきた。
騎乗依頼は例年より少し増え、この夏はほぼ毎週、どこかしらの競馬場にいた。
「サンジェニュインにはクラシックを取らせて貰った恩があります。菊花賞であの子が憂いなく走れるよう、上手く乗ること。それが俺にできる恩返しだと思っていたのですが……」
9月までには腰も少しは良くなっているだろう。
だがそうだとしても、柴畑は今、サンジェニュインの背に乗るべきではないと考えていた。
「入院に至る一番の要因は、この間の落馬だと聞いてましたが……」
「はい。レース中じゃなくてゴール後でよかった。レース中だったら俺も、何より馬が無事ではいられなかったかもしれない」
ほんの2日前のレースで、柴畑は馬の背から落ちた。
ゴール後、速度もすっかり落ちて検量室に戻ろうと綱を引いた時、腰に激しい痛みが走った末の落馬だった。
直前に綱から手を放していた事が功を奏したのか、柴畑の落馬で馬自体に影響はなかったが、それがもしレース中に起きていたらと考えたくもない。
そしてそれが、サンジェニュイン号に乗っている最中に起こらないなどと、今の柴畑には自信をもって言うことはできなかった。
「大事なレースです。本音を言えば俺が乗りたい……ですが、不安要素はなるべく減らすべきだ。クラブとも相談をしましたが── 乗り替わり、という結論になりました」
「そう、ですか……しかし、サンジェは非常に繊細な馬です。特に自分に乗る相手には、深い信頼関係を要求します」
「わかってます、経験者ですから」
初戦から共に戦った芝木からの乗り替わり時、柴畑には1か月近い時間があった。
その時間のうち、7割がサンジェニュインとの信頼関係構築の時間だったといってもいい。
正しく騎乗して調教を行えたのは、最後のわずか1週間ほどだったのだ。
「皐月賞、日本ダービーを経て、サンジェニュインは精神的にも成長したと思います。まさに今こそ、人馬一体で挑むべき時期なのも理解した上で、それでも乗り替わりするべきだと思いました」
柴畑としては悔しい以外の言葉はなかった。
騎手としてデビューしてから二十年近く、取れなかったクラシックの一冠を共に勝ち得た馬の鞍上を譲る。
今までまったく経験がなかったわけではないが、今ほど、柴畑を乗り替わりの相手に選んだ芝木の苦悩が理解できたことはない。
ただ悔しく、情けなく、叫び出しそうな気持を押し込んで、後任の騎手を推薦した。
「マシロはやっぱり、立派な男です。こんな手放しがたい気持ちを、アイツはどうやって誤魔化したんだか」
「それだけ、サンジェのことを思ってくれてました。柴畑さんも、サンジェのことを考えてくれて、本当にありがとうございます」
本原は深く頭を下げた。
勝てる馬に乗って、より多くの栄光を得たい騎手は山のようにいる。
でも、自分の栄光よりも馬を、サンジェニュイン号を大切にしてくれているのだと分かる、その思いの深さの分だけ、頭を下げ続けた。
芝木も、柴畑も、サンジェニュイン号に関わるすべての人間が、こうして何よりサンジェニュイン号と言うただ1頭の馬を愛してくれることが、何よりも嬉しかった。
「……サンジェニュインは、愛した分だけ愛し返そうとしてくれる。俺が注いだ以上に、
照れくさそうに柴畑が笑うと、本原も笑顔で頷いた。
サンジェニュイン号が栗東トレーニングセンター・本原厩舎に帰厩したのは、それから2週間後のことだった。
北海道から栗東に帰厩して2日が経った。
輸送の疲れを取る名目でゴロゴロしていたが、やっぱり栗東の夏はクソあっつい。
馬房前には氷がぶら下げられて、大型の扇風機がずっと回されているので幾分かマシレベルだけど。
北海道のほうが断然涼しかったなあ。
こんなクソ真夏に栗東で調教を受けてたとか、カネヒキリくんすごすぎるわ。
芝以上にダートコースとか暑そうだし……え?そうでもない?馬房のほうがやばい?
マジかよ、それはそれで嫌だな。
眼前でちょっとダルそうにしているカネヒキリくんとは、芝コースに向かう途中で偶然会った。
最後に会ったのは俺が放牧に出される数日前だから約1か月半ぶり。
6月4日開催のGⅢユニコーンステークスにカネヒキリくんが勝った時以来だ。
次走が7月中だからその時は直前の応援もできないな、と言った時のカネヒキリくんのショック受けた顔に胸が痛んだ。
俺はいっつも応援してもらってたというのに……ごめんなカネヒキリくん。
帰厩したらすぐに会いに行こう、とは思ってたんだが、思った以上に夏の栗東が暑くて馬房に引きこもってたら2日経っていた。
そしてさっき。
目があった瞬間、当然のように日陰まで移動して立ち止まる俺たちに、厩務員たちもすっかり慣れた様子だ。
順応力たっけーな!
「そういえば遅くなりましたが、カネヒキリ号、おめでとうございます」
「ありがとうございます~!いや、もう、厩舎みんな嬉しくて嬉しくて」
「かなり差をつけたとか」
「そうなんですよお!もう圧倒的強さで!後続に4馬身!」
4馬身!?
すげえじゃんカネヒキリくん!!
ぶっちぎってるじゃねえか!!
も~!もっと主張してよ威張ってよお!!
ジャパンダートダービーで4馬身差つけて圧勝しましたって看板首から下げてよお!!
今日の俺のおやつ人参の予定だから後で厩舎まで届けにいくわ!
人参好きだったよな?
え?カネヒキリくんのおやつは林檎なのか。
エッいいっていいって!俺が人参あげたいんだよ、ほんとにおめでとうカネヒキリくん!
ああ、友達が勝つってめちゃくちゃ嬉しいなあ……!!
やばい、テンションブチ上がってきたわ。
ちょっとスリスリしていい?
あ、ダメですか、そうですか……。
「シーザリオ号も米オークスを勝ったとかで。めでたいことが続きますね」
「えっへへへ、そうなんです、頑張ってくれまして、へあっへへへ」
笑い方めっちゃやばいけど相当嬉しいんだなこの厩務員。
そう、カネヒキリくんに続き、シーザリオちゃんもオークスを勝った。
オークスとはいっても日本で行われた優駿牝馬ではなく、アメリカのGⅠであるアメリカンオークスだ。
これはもう管理調教師もうっはうは、喜びの雨でびっしょびしょに違いない。
ちなみに優駿牝馬の方もシーザリオちゃんが勝ってる。
しかも後方から追い込む競馬で上がり33.3秒というクソヤバスピードである。
中山と東京で競馬場は違えど、皐月賞2000メートルで同じ追込・差し型のディープインパクトが出した上がり3ハロンは、えーと目黒さんが言ってたのは確か34秒台。
出遅れたのに34秒台のアイツもアイツで可笑しいのだが、脚元があんまり良くない、って言ってたシーザリオちゃんがこの活躍だよ。
この快勝で弾みをつけて挑んだアメリカンオークス。
シーザリオちゃん、レースレコードを叩き出して圧勝した。
初めて聞いた時は思わず盛大に嘶いてしまった。当然だろこんなん嘶くわ。
それもレースレコードだけじゃなくて、シーザリオちゃんはお父さんが内国産で、かつ日本で調教された馬として初めての海外GⅠ制覇を達成したんだとか。
他にもいろいろ『初』尽くめだったらしく、テレビでも連日シーザリオちゃんが話題になってるみたい。
すっげえ、マジですっげえよ!!
俺と入れ違いで早来に放牧に出されちゃったみたいでまだ会えてないけど、今度併せ馬する時は盛大に祝おう。
っはー、やっぱり友達が勝つってテンション上がるう!!!!
カネヒキリくん、ちょっとスリスリしていい?
……あ、やっぱりダメっすか。そうっすか。
休憩に入るカネヒキリくんを見送り、じゃあ俺もそろそろ芝のコースに向かうか、と目黒さんに引かれて歩き出した。
カネヒキリくんと会えて喋れたことで幾分か気もまぎれたが、いざコースが近くなるとだんだん気分も下がってきた。
別に調教を受けたくないわけではない。
むしろ早く受けて勝負勘を取り戻したいレベルなのだが、今日ばかりはちょっと憂鬱だ。
「……カネヒキリ号と会えてすっかり気分も良くなったと思ったら、サンちゃんやっぱり元気ないですね」
「ああ、ま、なんとなくだとしても解ってるんだろうな── 柴畑さんから乗り替わるの」
そう、乗り替わり。
アレ別にタカハルの妄言でもなんでもなくマジだったわ。
嘘じゃん、芝木くんから乗り替わったのが3月半ばくらいだぞ?
そこからまた4か月ちょいで乗り替わりとか。
俺、今回は怪我してないし柴畑さんだって危険な乗り方はしてないのに。
一体全体なんでだよ、と思っていたら、どうも柴畑さんの方が怪我をしたらしい。
落馬して腰を打ったんだそう。
マジか、柴畑さん大丈夫なのか?
コース練習の時に何度か柴畑さんを落とした俺が言うのもなんだが、落馬っていうのは一歩タイミングがズレると死に繋がる。
各馬が死力を尽くして走るレース中に落馬なんてしたら、後続の馬に蹴られてそのまま、っていうケースもあると前に目黒さんが教えてくれた。
ダービー前のコース練習では、万一を想定してヘルメットやクッション性の防具などを着用して貰っていた。
今回は幸いにもゴール後に十分減速した状態だったから大惨事には至らなかったみたいだが。
目黒さん、俺のおやつの人参を持って見舞いに行ってきてくれよ。
あ、今日の分はカネヒキリくんにあげるから明日以降のやつで頼む。
明日のおやつが林檎だったとしてもそれを見舞いに持ってってくれ。
乗ってる最中に腰が痛くなって思わず落馬しちゃったんだろ?
前から腰の具合はあんまり良く無そうだったし……確実に俺とのコース練習も響いてるよな。
ごめんねって代わりに言ってきてほしいお願い。
「おおどうしたどうした。柴畑さんが気になるのか?……大丈夫、もう退院してるよ」
お、そうなのか?
よかったあ!!
柴畑さん、何度か腰を摩ってるとこ見たことあるけど、マジで俺のコース練習での無理が今回の落馬を引き起こした可能性が高いと思ってる。
そこに落馬の衝撃が加わってさらに痛いことに……本当にごめん柴畑さん。
もう退院してるみたいだけど、あんまり無理しないでほしい。
とはいえ、馬の背に乗って走るのが職業である以上、俺がどうこう言える話じゃないのは解ってるんだけど。
……うん?今まだ7月だし、退院済なら別に、俺の鞍上を乗り換えなくてよくない?
菊花賞は10月だしさ。
これ、腰を痛めた以外にも理由があるんじゃないか?と目黒さんに視線を合わせると、目黒さんが苦笑いを浮かべた。
「レース中に腰を痛めて、お前にも怪我をさせるかもしれないって、柴畑さんから申し出たみたいだぞ」
そんなの起きないぞ、とは言えなかった。
俺だって弥生の時みたいに、騎手を乗せたままターフにダイブする可能性だってある。
だけど、だけどさあ……ここまで一緒に走ってきたんだ。
クラシックレース最後の菊花賞も、俺は柴畑さんを── その柴畑さんを後任に選んでくれた芝木くんをも乗せて走るつもりだった。
皐月賞やダービーと同じ、一生に1度のレースなんだよ。
来年はもう走れないんだ。
すべてのレースが一度きりだと言われればそれまでだけど、クラシックレースはそれらとは一線を画すレースだ。
ここで走って勝った馬に贈られる称賛の声はそのまま騎手にも向かう。
俺は、俺が勝つことを通して柴畑さんにも恩返しがしたかったのに。
「さみしいよな。けど、どうかわかってくれ。こんなお願いはしたくないが……みんな、お前の最良を考えてるよ」
解ってるよ、それが痛いほど解るから苦しいんだ。
理屈じゃないんだぜ、目黒さん。
芝木くんの時の悲しみが、今だって完全に溶け切ったわけじゃない。
それは結構長く、ずっと長く、引きずっていくかもしれないって最近になって受け入れられたよ。
その痛みごと、走る覚悟ができただけなんだ。
それも柴畑さんっていう、芝木くんのことをちゃんと評価してくれてる人が俺の背中に乗ってるからこそ、できたことなんだぜ。
今日これから会う騎手はどんな人だろう。
芝木くんや柴畑さんと走った日々を否定しない、優しいやつだったらいいな。
嫌なやつでもいいよ。それを理由で全力で拒否してやる。
「お、見えてきたな」
入り口を抜けて、目黒さんの声に反応して頭を上げた。
こんな真夏に芝のコースを走る馬は少数派だ。
ちらりとあたりを見回すと、俺以外の馬はいないようだった。
「あ、こんにちは── 竹騎手」
「はい、こんにちは。……ダービー以来だね、サンジェニュイン号」
その人が振り返ったとき、この人か、という驚きよりも先に、その背後に目がいった。
美しくなびく栗毛の馬体。
鼻まですっと伸びた白い流星の持ち主と確かに、目が合ったはずなのに。
どうしてかまばたく間に、その馬はいなくなっていた。
ただ脳裏に焼き付いて離れない。
吊りあがった目に、俺は強く、強く睨みつけられていた。
秋レースだし、竹さんのターン(ドッ)
投稿初期の頃を必死で思い出しながら書きました。
サンジェニュイン 牡3
放牧で丸々太ったのにディープさんと夜間放牧に出されてすぐ減った
ディープ式ダイエット(笑)
お友達が勝つとうれしいうれしい
が乗り替わりはさみしいさみしい
ディープインパクトさん 牡3
涼しい北海道でも調教調教
この夏1番ハッピーな過ごし方をした
カネヒキリくん 牡3
現在重賞2連勝中でブイブイ言わしてる
夏バテにも負けず元気に調教中
主人公にスリスリされるのを回避したが、されたいかされたくないか、で言えばメチャクチャされたい
理性の勝利
シーザリオちゃん 牝3
このたび無事、2つの国の女王になった
主人公と入れ替わるように社来スタリオンステーション早来へ
また併せ馬できる日は来るのだろうか……
竹さん ヒト族 男
人生のデカすぎるターニングポイントを迎えてしまった
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20.次の夢【挿絵有】
シコシコ書いてたテキストファイルが破損してました(爆笑)
リプで助けてくれた有識者ニキネキ、サンクスサンクス!!
竹さんのターンッッ!!ドロー!!
トラップカード【(竹の)逃げ馬頂上決戦】発動ッッ!!(嘘)
※注意※
作中の竹さんにはモデルがいますが、ここの竹さんの独白や感情描写は作者の妄想によって生み出されており、モデルの方の感情とは直結していませんのでご了承ください
ところでこちらは素晴らしく優しい方が描いてくださった美貌のウッマ娘です!!!!
あかがちEX さん、心からサンクスサンクス……!!!!
https://img.syosetu.org/img/user/361271/82567.png
100万回見てください。
希望で胸がいっぱいだった。
勝てる気しかなかった。
競馬に絶対はないけれど。
あの日の彼と、僕には、輝かしい未来しか見えなかった。
まばたく間に消えた栗毛の馬。
最後に俺を睨み付けた目が焼き付いて離れず、すこしボーッとしていた俺の手綱を目黒さんが引く。
顔を前に向けると、そこにはレースで嫌になるくらい見慣れた騎手が立っていた。
目が合うと目尻が下がって、どこか懐かしそうに俺を見た。
エッ、この人、ディープインパクトの鞍上じゃねえか!
今日は新しい騎手と会わせるハズじゃ── この人なの!?
嘘だろ!?なんで!?敵だっただろ!
というか俺に乗るならディープインパクトはどうすんだよ!
竹騎手は素晴らしい実績を持つ名騎手で、ディープインパクトとの組み合わせはすごく高く評価されてるって。
ダービーまで無敗で制したから、この1人と1頭が離れることはないって。
だから菊花賞の最大の敵もこいつらだぞ頑張ろうなって言ってたのに~~!!
菊花賞まであと3ヶ月ってタイミングで、よりによって俺に乗り替わりとか……!
うぐぐ、嫌だ……!
俺はガッチガチに強いディープインパクトに、今度こそ勝つって決めてるんだよ!
この乗り替わりで仮に俺がディープインパクトに勝っても、ディープインパクトは騎手交替で調子が良くない、逆に俺は凄腕騎手を乗せて調子が良いから、とか言われるぞ。
絶対言われるッ!!
そうなったら俺だけじゃなくてテキも、目黒さんも、なんだったら竹騎手もイロイロあることないこと言われちゃう。
竹騎手もさあ、そりゃ負け通しではあるけど、一応ディープインパクトと一番競り合う馬ってことでライバル位置にいる俺に乗り替わりとか、ディープインパクトの関係者に恨まれそうじゃん。
というか揉めたよな。揉めないわけないでしょ勝てば三冠だもんな!
次のレースでディープインパクトに会ったときに「この泥棒馬!」とか言われちゃうんじゃ……。
嫌だ。嫌すぎるそんなの。
このひと乗せるの嫌だ~~!!
竹騎手そのものが嫌なわけじゃないけどさあ!!
タイミングってモンがあるだろお!!
ねえ目黒さんん……!!
「うわっ、どうどう、どうしたどうした。落ち着けサンジェニュイン」
落ち着けるかってんだよお!
なあ、いったん厩舎に戻ろう?
戻ってもうちょっと冷静に考えようぜ。
竹騎手以外に声かけなかったの?
もっとこう、なんか穏便な騎手をさあ……前にヴァーミリアンに乗ってた海外の
オー!ペガサス!って言いながら俺の写真撮りまくりだったあの兄ちゃんノリが合いそう。
弥生でゲート抜けしてたアドマイヤジャパンの鞍上とかも優しそうだし……ラインクラフトちゃんやシーザリオちゃんの鞍上貸して貰えないかな。
もうとにかく竹騎手はまずいですよお!!
あれから俺なりにいろいろ考えたりしたんだぞ?
悔しいけど、世間的にはハナ差1センチだろうが3センチだろうが、勝ち負けはハッキリついてる。
実力差の無い対等なライバル2頭として見る人もいれば、結局はディープインパクトに負けてるんだから勝負にならない、と考える人もいる。
そこはしかたない。
着差を抜いた純粋な結果として、俺がディープインパクトに負けてるのは確かだから。
でもそれを、俺は混じりけの無い【対等なライバル関係】にしたい。
今は俺がディープインパクトの背中を追ってるだけ。
アイツに勝つまでは死ねない、強い未練があるだけ。
神戸新聞杯で、菊花賞で、有馬記念で。
これからのあらゆるレースで、俺は、ディープインパクトに勝つ。
俺が勝つレースのディープインパクトの鞍上には、竹騎手じゃないとダメなんだよ。
「うーん、一体どうして……あ、もしかして。サンジェニュイン、竹騎手が新しい騎手だと思ったのか?」
……ほ?
違うんか?
そういう流れじゃないのかコレ。
「違う違う。竹騎手はディープインパクト号の騎手だからな、サンジェニュインに乗るのは難しいよ」
「……今日は用事があって来てたんだよ。誤解させてごめんね、サンジェニュイン」
2人が苦笑いで俺を見る。
……ああ、なんだもう~~!!
俺の早とちりかよハッズ!!!!
ごめんな竹騎手、めっちゃ拒否って。
いや違うんスよ、別に竹騎手に乗られたくないってんじゃないです。
普通にね、こう、タイミングを考えて貰ってですね……。
んもう……いやよかった。
もし乗られたらあの手この手、いやあの脚この脚で振り落としてた。
竹騎手に罪はないが……あなたにはディープインパクトに乗ってて欲しい。
あなたが乗ったディープインパクトをボッコボコに負かすのが今のとこの目標だからな!
「しかし驚きました。サンジェニュインは賢いとは聞いていましたが、乗り替わりも理解しているんですね」
竹騎手が感心したように頷いた。
フフ、もっと褒めていいんスよ?
「人の区別がしっかりついてるんですよ。誰が自分を世話してて、誰が自分と一緒に走るのかわかってるので……その分、乗り替わりは大きな負担です。前の騎手を恋しがるので」
「なるほど……後任の騎手は決まったんですか?」
「ええ。3日前になんとか」
俺の次の騎手、決まったの3日前かよ。
俺が帰厩する前じゃねえか!
ギリギリにもほどがあるだろ。
「それは……その節は、お返事が遅れて本当にすみません」
「ああっ、やめてください竹騎手、頭を上げてください。大丈夫です、むしろしっかり考えて貰えたと、クラブもテキも納得していました。もちろん俺もですよ」
「……そう言って頂けると助かります」
これ、一応、竹騎手にも騎乗依頼が入ってたけど、ディープインパクトに乗るから断ったってことか。
で、断るまでに時間が掛かって結果的に他の騎手に声を掛けるのが遅くなったから、正式な後任は3日前に決まったって感じ?
クラブ── 俺の馬主はサイレンスレーシングという法人クラブなわけだが、ここがどうやって騎手に依頼を出してるのかはわからないけど、その依頼に対して受けるかどうか、って時間かかるもんなのかな。
竹騎手は超売れっ子らしいし、あっちこっちから依頼がありそうだからしゃーなしか。
……そういえば前まで一緒だったハルノメガミヨさん、ラストランは竹騎手が乗ったんだっけ。
なんか脚が軽くなって身体も軽くなってスピードもガンガン出てテンション爆上がりしてずっと走れそうとかなんとか……竹騎手はゲームのバフアイテムか何かか?ちょっと気になるな。
……いやいやっ!この人は俺の鞍上には乗せん!!
次相まみえるときはレースでディープインパクトの背に乗ってるときだ……ッ!
「後任の騎手は今日からですか」
「そうなんですけど……なにやらトラブルがあったみたいで。今テキが電話で話をしているのですが── ああ、テキ、電話終わりましたか」
目黒さんが顔を向けた方へ俺も視線を向ける。
テキが小走りでこっちに向かっているのが見えた。
表情はあんまり良くない。
「ダメだなあ。向こうの手続きが長引くって、午後から来るみたいだ」
「そうですか……それじゃ、いったん厩舎に戻って休ませますか」
エッ、戻るのか?
乗り替わりは憂鬱だったけどさ、調教を受ける気だけはあったんだけど。
俺が早来でゴロゴロしている間もディープインパクトは調教を受けてたし、早いところ遅れを取り戻したいし。
目黒さんかテキか、俺の背中に乗ってパッパカやることはできないのか?
見習いの
俺がテキに顔をすり寄せると、ちょっと笑顔を浮かべて俺の頭を撫でた。
撫でてくれのサインじゃないんだが……あ、もうちょい右で。
「いやあ、このまま調教はすすめたいな。……竹騎手、ご挨拶遅れてすみません。お久しぶりですね」
「こちらこそ、すぐご挨拶に伺えず。……その節は、その」
「ああ、いいんですいいんです。無茶を言ったのは分っていたので」
すごく気まずそうな竹騎手の背をテキが叩く。
騎乗依頼断っただけでそこまで気まずい顔するか?
テキは怒ってないって目黒さんも言ってたでしょ!
あ、いまいい音したな。
「隈作るほど悩んでくれたんでしょう?もうそれだけで十分ですよ」
テキにそう言われて初めて気づいたのか、竹騎手が自分の顔に手を当てていた。
このホースアイでは竹騎手の目の隈はわからなかったけど、テキが真っ正面から指摘するくらいにはクッキリついてるんだろうな。
ていうかそんなに悩んだのか……三冠まであと1つの馬なら速攻でディープインパクトを選びそうなもんだけど。
ハッ、まさか俺の溢れ出る才能に惹かれて……?
ま、負けっぱなしなのは認めるけど、俺も何も得ずに負けたわけじゃないし……強がりじゃないしい!!
「実績出せば出すほど、自分のココロだけでは選べないもんが増えます。それは当然のことなんです。あなたが悩んだ時間は、あなたの優しさの証だ。そして選んだものは、あなたの誠実さの証。少なくとも俺たちにはそう見えましたよ」
テキが優しい声で竹騎手に語りかけた。
自分のココロ、の下りはわからなかったけど、竹騎手が悩んだ理由もわからないけど。
俺に乗せるために出されたたくさんの誘惑を振り切って、約束したディープインパクトの背に乗ると答えたのなら。
確かにテキの言うとおり、これ以上誠実な騎手もいないだろう。
でもまあ、菊花賞は俺が勝つけどな!
……鞍上が誰か知らんけど。
「ま、どうしても申し訳ないって気持ちが抜けないなら── ちょっとサンジェに乗って貰えませんか」
「え?」
いましんみりした空気だったのにナー!
竹騎手の目がまん丸。
ていうか乗らないって話だったでしょテキ!
「これからもし、時間が余っているなら。後任の騎手が来るまでの間、調教を手伝ってくださいよ」
そう言ってテキがニッコリ笑う。
ハハーン、調教ね。
新しい騎手は午後から来るって言ってたし、俺は調教受けたいし。
……ええやん、調教で乗るだけなら問題ないよね?無いな!
「そ、れは……」
「ああ、そうしていただけると助かりますね。サンジェニュインは朝から走る気満々だったので、馬房に戻しても不貞腐れそうで……よかったなサンジェニュイン、レジェンドが乗ってくれるぞ」
やっほーい!!
ここで竹騎手のクセを掴んでレースに活かそうなんて、思ってないんだからねっ!
……盗める技術は盗んどこう!!
「え、いや、あの……」
竹騎手 は 完全 に 混乱 している!
「乗ります?乗りません?」
テキの後ろからヒョッコリ、と顔を出す。
こちとら美貌の白毛馬だぞ。
このイケメンかわいいホースに乗ってターフを駆け抜けたくない?
ディープインパクトは後方からの追込タイプの馬……ハナを突っ走るのは気持ちいいぞお!
超高速で芝の果てまで連れてくぜ!
あ、コーナーカーブでは馬体に体重掛けてくれよな!
そうじゃないと俺と竹騎手、そろって芝に埋まっちゃう。ドッ!
「……の」
「の?」
キラッキラの目で竹騎手を見つめると、竹騎手が俺からそっと視線を逸らした。
おい、この目から逸らすとは……美貌のウッマやぞ!
「ちなみに、沼江先生にはもう許可を頂いてます」
「乗らせて、ください……」
勝ったわ!!!!
……ていうかテキ、沼江先生が誰かは知らんけど、事前に許可取ってるとか最初から調教で俺に竹騎手乗せる気だったのでは?
俺は訝しんだ。
「はい、これ綱です」
目黒さんから竹騎手に俺の綱が渡される。
ヘヘ、旦那、俺は大人しい馬ですんでね……。
手荒な真似と牡馬にうまだっちされない限りは鞍上落としませんので。
竹騎手が俺に跨がり、綱を握った、その瞬間。
俺は彼を振り落とした。
『栗毛の馬、いるじゃん!?!?』
どうしてこうなったのか。
「ブモモッ!」
「……ああ、ごめんごめん、ちょっと考え事してたよ。じゃあ、行こうか」
「ヒィンッ!」
まるで僕の言葉を理解しているように、サンジェニュインが嘶く。
芝を蹴る脚は軽やかで、柴畑さんから聞いていたとおり、横ブレのしない体幹の良さが解る。
走ること自体が好きなのだろう、ただまっすぐ前を向いて走っていた。
コースをゆっくりとしたスピードで1周し、綱を引いて止まらせると文句を言いたげに僕に振り向いた。
【なんで止まるんだよ】
言葉はなくても、なんとなくそう言っているのがわかる。
本当に感情表現の豊かな馬だ。
時折、それでは済ませられないくらい僕らの話を理解しているときもあるけど。
僕はサンジェニュインの頭を撫でて宥める。
ごめんな、と声を重ねると、仕方なさそうに鼻を鳴らした。
「サンジェお前、なんてエラソーな……」
そう言って苦笑いを浮かべた本原先生に声を掛けた。
「脚は非常にいいです。久しぶりに人を乗せたとは思えないくらい……指示にも素直に従いますし」
「うんうん、よかった。これなら十分、9月に向けて仕上げられるな。竹騎手」
「はい」
本原先生の目は、時々直視できない。
あまりにもまっすぐだから、僕の中にある溶かしきれない思いまで見透かされそうな気分になる。
いや、もう見透かされているのかも知れない。
だから先生は、沼江先生に── ディープインパクトの管理調教師に許可を貰ってまで、僕をサンジェニュインに乗せたのだろう。
「いつもならここで休憩、にするのですが……サンジェがまだ走り足りなさそうなんでね。申し訳ないのですが、最後に2400メートル、走ってきて貰えますか」
「……わかりました」
僕がスタート位置に進むようサンジェニュインを促すと、彼は嬉しそうに嘶いた。
どうやら本当に走り足りなかったようだ。
本原先生が「サンジェ、本番のつもりでいいぞ」と声を掛けると、返事をするように身体を揺らした。
覗き込んだ目は、前だけを見ていた。
「……行きます」
「お願いします!」
綱を揺する。
するとサンジェニュインは美しい姿勢で走り出し、ぐんぐん、前へと進む。
やはり、この馬は出だしが良い。
瞬発力がある馬は他にもいるが、それを中盤から終盤まで保てる馬はそうそういない。
サンジェニュインは高い瞬発力でハナを取り、先頭をトップスピードでキープできる。
中盤、他の馬が上がってきても変に掛かることなく、勝負所を見逃さない。
ただ、弥生賞の時のように中団からのスタートになると、焦って前へ行きたがるクセが在るようだ。
自分が先頭じゃないことが許せないのだろうか。
負けん気の強さも、この馬が強い理由のひとつだと思うけれど。
……その姿がなおさら、僕に幻視させるのかもしれない。
コーナーカーブで馬体に体重を掛ける。
スピードがある分、ここでブレーキの役目を果たすのも騎手の仕事の一つだ。
上手く曲がれたのを感じて、身体を浮かせる。
サンジェニュインはまるで本当に追走者がいるかのように、第3コーナーカーブを目指して加速を続けた。
僕もそっと鞭を構える。
もし、コレが本番のレースだったら。
この場にディープインパクトは確実にいるだろう。
ディープが勝負を仕掛けるなら、ダービーのように第3コーナーからだ。
それより前は早すぎて、それより後は遅すぎる。
思考を巡らせ、想像力を働かせ。
ここにいないディープインパクトを見る。
サンジェニュインを抜かそうと上がってくる末脚を捻じ伏せるには──……ここだ!
1発、2発。
サンジェニュインの最もいいタイミングで入れた鞭に反応して速度を上げる。
首がぐっと沈み、前だけを追い求める走りに変わる。
あるはずのない、耳を
あとすこし、あとすこしだ。
第3コーナーを曲がりきる、その瞬間。
真横を、
「な……ッ」
鞍上には誰もいない。
ただ風に揺れる、1番のゼッケン。
サンジェニュインの目にもハッキリと映ったのか、スピードが上がり差が縮む。
大歓声の中を縫って、ひたすらに栗毛の馬体を追いかけた。
僕は、僕は、ただサンジェニュインに乗ったまま、目の前の光景から目を逸らせない。
2度、3度、瞬きをしても確かにそこにいた。
栗毛の馬体に、緑のメンコ。
鼻先に向かう白い流星が、
どういうことなのか、まるでわからなかった。
わかりたくなかった。
どうして、なんで。
いつも視界の端にいた彼。
僕に向かって何か言いたげな顔ばかりする彼。
【忘れるな、誰のせいでああなったのか】
聞こえるはずのない声が頭に響く。
わかっている。
忘れていない。
誰のせいで── 僕のせいでああなったこと。
どうして鞭を打ったのか。
どうしてスピードを上げ続ける彼を止めなかったのか。
どうして、どうして、どうして。
絶え間ない自己への問いかけ。
尽きぬ後悔と、フラッシュバックするあの瞬間。
浅くなる息と意識を、鋭い嘶きが切り裂いた。
「ヒィン──……!」
ずっと前を向いていた白い顔が、僕を振り返る。
疾走の中で無理矢理響かせた
一瞬だけ見たサンジェニュインの目は丸く、力強く。
僕に訴えていた。
【負けるのは嫌だ】
僕は自然と、鞭を握っていた腕をしならせた。
サンジェニュインが再び前を向いて、脚がさらに前へ、前へと動く。
栗毛の馬はまだ、ずっとずっと先にいた。
驚くほどの大逃げ。
疾駆する馬を追って、サンジェニュインの馬体全体に力が入っていくのが解った。
徐々に距離が縮まっていく。
3馬身差から2馬身差へ、1馬身、半馬身、そして第4コーナーへ。
あと少し、あと少しで栗毛の馬体を追い抜く。
その時になって、僕の目から、涙があふれて止まらなくなった。
「やめてくれ」
2頭が並ぶ。
「抜かさないで」
サンジェニュインが必死に走る。
「待ってくれ」
サンジェニュインが頑張って走る。
「まだ、まだ」
サンジェニュインが、先頭を、走る。
「スズ──……!」
思わず振り返った。
離れていく栗毛。
その鞍上に── あの日の僕がいた。
希望で胸がいっぱいだった。
勝てる気しかなかった。
競馬に絶対はないけれど。
あの日の彼と、僕には、輝かしい未来しか見えなかった。
まだ青臭い顔をした僕が誇らしげに鞭を振るう。
彼は── サイレンススズカは、僕と目が合うとどこか、満足げに笑った。
「サンジェニュイン」
鞭を振るう。
残り400メートル。
前に誰もいない、正真正銘の先頭を、サンジェニュインが駆け抜けていく。
その風に吹かれて乾いた涙が跡になって、僕を前へと向かわせた。
あと少し。あと少し。
離れていた栗毛の馬体が横に並ぶ。
僕はもう、振り向かない。
その代わりただ、ただ前だけを見た。
ラスト100メートルの競り合い。
僕らだけの、競り合い。
「負けるな、サンジェニュイン」
首を押して、鞭を振るって。
行け、行け、行け、サンジェニュイン!
白い馬体が少しだけ、先を走った。
スピードを落として、やがて立ち止まったサンジェニュインが振り向いた。
上がる息を押しとどめて、その視線の先を見る。
「……僕を、ずっと見守っていたんだね」
栗毛の彼は、何も言わなかった。
その代わりに、レース以外でよく見せる大人しい、優しい目で僕を見つめ返した。
ずっと恨まれているのだと思っていた。
追い立てて、走らせて。
君は誰よりも走るのが好きだったから、あの瞬間、どれほど無念だったろうと思った。
けど違った。
今日、走って。
君が僕を見つめる、あの言いたげな顔の意味が少しだけわかった。
「情けないところを見せたな」
まったくだよ、と言いたげに彼が鼻を鳴らす。
「……いますぐに、は、やっぱり無理だけど。でも、たぶん、今日からは」
言葉が詰まりそうになって口をつぐんだ。
目がまた熱くなって、必死に耐える。
「今日から、は……新しい夢を見るよ」
僕がそう言うと、彼は嬉しそうな顔をした。
ぐるり、左旋回。
鞍上の【僕】を揺らして、そのまま僕らに向かって駆ける。
空が透けるほど薄い希望の塊が僕らを貫いて、振り返った先にはもう、彼らはいなかった。
耐えていた涙があふれる。
歯を食いしばって止めようとしても止まらず、白毛の馬体をぬらしていく。
サンジェニュインがちらりと僕を振り返ると、小さく身体を揺らして首を逸らした。
柔らかい鬣が顔に触れる。
「……涙を拭おうとしてくれたのか?」
「……ヒィン」
照れ臭そうな声を笑って、笑って、涙があふれて。
僕は、その優しさに甘えて顔を伏した。
ふわりとした鬣が重く濡れる。
くぐもった呻き声が漏れる。
濡れて気持ち悪いだろうに、嗚咽が煩わしいだろうに。
サンジェニュインはじっと、黙って、僕を乗せてくれた。
いつか、この痛みを思い出にできる日が来るだろうか。
胸にできた空洞を見つめて、ここに傷があったのだと、何気ない記憶にできるだろうか。
それはいつかな。
来年かな。十年後かな。それともずっとできないでいるだろうか。
答えはまだない。答えをくれる誰かもいない。
でも少し、これだけはと思うことがある。
僕は一生、サイレンススズカを忘れないだろう。
心に傷があったことや、涙を忘れて、空洞を撫でる手が止まっても。
今日、僕らのずっとずっと先を走り抜けた栗毛の馬体を、何度でも思い出す。
例えば東京競馬場に来た時に。
例えば栗毛の馬を見た時に。
例えば大逃げする馬を見た時に。
ふっと、重苦しい記憶として現れるだろう。
けどそれにはきっと、もう苦しさだけじゃない。
繰り返してきた楽しい思い出が、記憶に花を添えてくれるのだ。
僕の視界の端に、もう栗毛の馬体はない。
言いたげな顔もない。
その代わり、記憶の中にしっかり刻んで、忘れはしない。
僕の傷を連れ去ったスズカの、去り際の満足げな顔が、これからの僕を支えてくれる。
できた空洞に花を詰めて、僕は少しだけ、これを愛おしく思えた。
「……いつかまた、僕を乗せてくれるかい」
そう囁くと、サンジェニュインは「仕方ないな」と言いたげに小さく嘶く。
鼻息を吐く姿は大人ぶっている子供にも見えて、僕は今日、1番大きな声で笑った。
次回、おばけとサンと新騎手と神戸新聞杯!
サービスサービスゥ!!!!(詰め込みすぎ)
竹さんのターン、終了!(ドッカンドッカン)
サンジェニュインに(調教で)乗れないとは言ってない。
(レースで)乗れるとは言ってない。
何一つ嘘はない。
彼を忘れるのは無理だろうし、というか忘れる必要は無いのでは?とボブが怪しんだのでこうなりました。
スズカさんに傷(あの日の竹さん)を連れてってもらい、空いた場所に、竹さんの次の夢を詰めて頂こうと思います。
※あくまでこの世界線の話です。
……数年後、美少女と化したスズカさんとサンジェニュインをお出しされる竹さん!?!?
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IF:それは夢にまで見た(サイレンススズカ全弟主人公)
顎ヒビ入っててクソ痛いので、本編の更新がなかなかできないです(申し訳ない)
お詫びに以前番外編に載せていたIF話を加筆修正したものをそっと載せます。
※番外編は修正のため非公開にしています。
本編との違いは年代、血統含めていろいろありますが、変わらないのは白毛の美貌ウッマで凱旋門賞馬ってところです(ドッカンドッカン)
今回はあえて主人公の視点を一切ださずに書きました。
それはそれは、暑い夜だった。
風もなく、セミの鳴く声もなく、静かな空間に響くのは誰かの唾を飲む音だけ。
「もう7月だぞ」
誰かが小さく、そう漏らした。
「どうなっちまうんだ……ワキア、ただでさえここ最近具合が悪いってのに」
「まさか、腹の仔ともども、死んじまうなんてこと」
「縁起でもねえことを言うなっ!」
「大声を出すな。ワキアも集中している。……もう少しだけ、見守ろう」
男たちの視線の先には、寝藁に横たわる1頭の牝馬がいた。
昨年、1996年の8月に1度大きく体調を崩して以来、スタッフたちの心配の多くはこの馬だった。
馬の名を、ワキア。
ここ、稲蒔牧場の主たる繁殖牝馬だ。
その腹は大きく膨らみ、今にも仔が生まれそうに見えた。
しかし出産予定を2ヶ月以上過ぎてもなお、ワキアは産む気配を見せない。
時折小さく身動ぎしてスタッフたちの目を惹くが、期待は悉く裏切られた。
稲蒔牧場で一番若いスタッフが、我がことのように両手を合わせ、天に祈った。
「頼む、頼むよ神様、まだ母ちゃんと末っ子を連れて行かないでくれ」
固く両手を合わせ、必死に頼み込む。
その祈りが通じたのか、ワキアが寝転んだまま片足を上げ、緩く尾を振った。
「あ、あ、鼻だ……っ」
「出てる!頑張れワキア、がんばれっ」
スタッフたちの声援を受けて、ワキアが小さく嘶く。
まず飛び出た鼻先は白かった。
ワキアは鹿毛で、サンデーサイレンスは青鹿毛。
しかし同血統の兄には鼻先の白い栗毛がいたことから、このときスタッフの誰もが不思議には思わなかった。
そんなことを不思議がっている暇もなかった。
仔はすでに14ヶ月もワキアの中にいる。
母にとっても仔にとっても、今がもっとも危険な瞬間だ。
この出産が無事に終わることだけが、スタッフたちの願いだった。
「首まできた、そうだあと少し」
稲蒔が馬房の扉に手をかけ、じっと、ただじっとワキアを見つめた。
仔の前脚が1本見えたところで、ワキアが立ち上がった。
その衝撃で仔がすぽん、と抜ける。
現れた仔は、鼻先だけでなく全体が白かった。
「葦毛、いや、白毛……!?」
「白毛だ……」
ワキアが仔の身体を舐める。
まだ目が開ききっていない仔は、母の献身を受けて必死に立ち上がろうと藻掻いていた。
14ヶ月も腹の中にいた分、他の仔よりは大きな馬体に見える。
しかしその四肢は細く、頼りないのは同じだ。
それでも必死に、懸命に、立ち上がろうとしている姿が、稲蒔には眩しく思えた。
「がんばれ」
今日、何度その言葉を口にしただろう。
それでも絶えず、言葉はあふれる。
「がんばれ」
応援してやまない。
「がんばれ!」
応援せずにはいられない。
「がんばれ!!」
力強い応援に応えるように。
仔は、確かに、立った。
1ヶ月後。
1997年8月。
長い妊娠期間を経たワキアは、元々の具合が良くなかったこともあり、起き上がれなくなっていた。
もはや為す術はなく、稲蒔と、長く担当してきた牧場スタッフがその最期に立ち会った。
瞳を閉じる瞬間まで仔を心配してか、傍らで母を見つめる仔を優しく舐め続ける。
その光景に、牧場のあちらこちらからすすり泣く声が聞こえた。
アメリカから日本に呼び寄せてこれまでずっと、「スズカ」の冠を付けた競走馬を産んでくれたワキア。
期待の牡馬を産みだし、その馬が翌年の宝塚記念に勝利すると、これが稲蒔牧場にとって久々のG1勝ち馬となった。
たくさんの希望と、たくさんの思い出をくれたワキアに、牧場スタッフが寄せる気持ちは大きいものだった。
稲蒔はぐっと涙を堪えて、別れを惜しむ母仔を黙って見つめ、それでも堪え切れず空を見上げた。
良き日に、が似合うほど美しい青空。
照りつける太陽の中で、ワキアは言葉を遺すように小さく嘶くと、とうとう瞳を閉じてそのまま、2度と開けることはなかった。
それから月日が巡って、1998年10月1日。
母を失った仔を、稲蒔が己が仔のように手ずから育て、1年後。
図体ばかり大きく、頼りなく思えた白い馬体にもしっかりとした筋肉がついた。
物怖じせず、人見知りもせず。
人に良く懐いて従順な仔は、牧場内で「マイサン」と呼ばれてかわいがられた。
稲蒔にとって「
マイサンは稲蒔牧場の最有力馬として稲蒔の、そしてスタッフ全員の期待を背負い、栗東トレーニングセンターに入厩した。
マイサンはここで、幼名を競走馬名に改めたが、厩務員たちからは親しみを込めて「サン」と呼ばれ続けた。
そのサンを迎え入れた
2頭が顔を合わせたのはこれが初めてであったが、文字通り馬が合うのかよく馬房の扉から顔を出しては、見つめ合って嘶き合う。
サンは感情表現の豊かな馬で、人にも、兄にも、他の馬にもよく懐いた。
甘えて頬をすり寄せたり、小さく嘶いては厩務員たちの気を惹こうとしたり。
そんなサンを、厩舎の人間だけでなく、他の馬たちもかわいがっているようだった。
特に兄のサイレンススズカは、馬房から出されるとしばらくサンの馬房前に立ち止まり、その顔を数度舐めてからでないと歩き出そうとしなかった。
小柄な兄と大柄な弟。
まだ若い担当厩務員が、発売されたばかりのチェキカメラを構えて取った1枚の写真には、確かに小柄な栗毛と大柄な白毛が2頭、微笑み合うように映っていた。
この写真が、2頭が共に映った最初で最後の写真となった。
同年はサイレンススズカが無敗のまま天皇賞・秋を目前に控え、橋本厩舎はやる気と期待に満ちあふれていた。
もしサイレンススズカが秋天を制したら。
いつかその弟であるサンがその後を追って勝利する姿を、誰もが夢に見た。
兄弟の秋天制覇。
稲蒔が、橋本が、厩務員が、騎手が、関係者すべてが浮かべた夢。
それは空に飛ばしたシャボン玉のようにはじけ、そして2度と、浮かぶことはなかった。
見上げた空は晴天。
馬場は良。
東京競馬場の芝2000メートル左回り。
何を追ったのか。
何を目指したのか。
響き渡る声援を背に受けて、サイレンススズカは虹の向こう側まで走り抜けていった。
1998年11月1日。
空っぽの馬房を、帰ってこない兄を。
待ち続けたサンが涙を流したのは、翌日11月2日の昼だった。
沈黙の日曜日から約1年が経った1999年10月31日。
15時35分発走の11Rに第120回天皇賞・秋を控えた、その日の3Rは3歳新馬戦。
東京競馬場は芝2000メートル左回り。
オッズは1.1倍。
1番人気に押された白毛馬は、ターフでその時を待っていた。
10時40分発走の、たかが3歳新馬戦に、押しかけた観客は5万人。
1枠1番のゼッケンを付けた馬は、その鞍上に
愛くるしい丸い瞳に雄大な馬体。
揺れる鬣の白さなど、ひとつも重なるところはないはずなのに。
固く馬券を握る観客の目には、栗毛が重なっていた。
ゲートに収まる姿に、誰もが口々につぶやく。
「無事に走りきってくれよ── シャイニングスズカ」
その名に、祈りを込めて。
「14番グッドラックボーンがゲートに収まりまして── 3歳新馬戦スタートしました。綺麗な脚並、まず勢いよく飛び出したのは1枠1番シャイニングスズカ。ぐんぐんぐんぐん後続を引き離してもう5馬身、いや8馬身差になろうかというところ。2番手で後を追うのはユーワシーザー、半馬身内側にサニーカンパラーン。すぐ後ろ3番人気スプリングシオン、マイネルクリムゾン、フェンネルシーズが横並び。外から外からグッドラックボーンが内を伺うか、ホッカイロンフェンとウィンパートナーが競り合いながらこの位置。直ぐ横にエーピーリュウエンが続きます。シロヤマライズが内から徐々に上がろうかというところ、最後方にモリスガタ、2番人気エアシャカールはここからで大丈夫なのか鞍上は熊川騎手です。シャイニングスズカ、これで初レースなのか圧巻のスピード!」
白毛の馬体が第1コーナーを抜け、第2コーナーを抜け。
8馬身、9馬身、10馬身と後続に差を付けて駆けていく。
迎える第3コーナーを前に、騎手が固く綱を握った。
「さあ間もなく第3コーナー手前、迎えた1000メートルの標識をシャイニングスズカ抜けていくっ!通過タイム58秒台!58秒台は重賞クラスだぞシャイニングスズカ!さあ大欅を── ッ大欅を越えて第4コーナーへ向かうその脚は緩まないっ!」
響く声援は怒号にも、悲鳴にも似ていた。
ただ違うのは、そこに籠もる感情に、深い愛情が滲んでいたこと。
「東京競馬場の直線は長いぞ!まだ伸びる伸びるシャイニングスズカ、その未来に光が差す!誰にも影を踏ませないまま、今、1着でゴールイン!完璧な大逃げ、シャイニングスズカ……っ!」
誰にでも、忘れられないレースがある。
この日、ゴール前に控えたカメラマンが構えたそのカメラには、美しい光が写っていた。
「天皇賞・秋が開催されるこの良き日に、シャイニングスズカ、シャイニングスズカです。父はサンデーサイレンス、母はワキア。その全兄は──……」
その瞬間、競馬場に吹き抜けた風が観客の涙を誘う。
力強い疾走がもたらした喜びの涙が芝に降る。
白い馬体に割れんばかりの歓声が注がれ、雲の隙間から光が差した。
「その全兄はサイレンススズカ……っ!弟が、白毛の弟が夢を連れてデビュー勝ちです……!」
絶えず、絶えず、夢の続きを望む声が熱く、響き続けた。
The Dream
2000年 天皇賞・秋
最速の希望 シャイニングスズカ
夢は叶うか
いいや、叶えるんだ
シャイニングスズカ 牡
英名:ShiningSuzuka
香港表記:光輝鈴鹿
1997年7月2日生まれ
父:サンデーサイレンス
母:ワキア
全兄:サイレンススズカ
1999年10月31日の3歳新馬戦(現2歳新馬戦)でデビューし、逃げ切り勝ち。
2000年のクラシックレースはエアシャカール、アグネスフライトらと競い合い皐月賞、日本ダービーを制覇し二冠馬となった。
ダービー後は距離の都合から菊花賞を断念し、4歳(現3歳)での凱旋門賞制覇を目指して海外遠征。
凱旋門賞を目指したのは、シャイニングスズカの芝への踏み込みの深さや力強さが洋芝で活きると判断されたため。
キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、フォワ賞を経て凱旋門賞に出走。
2着馬Sinnder(シンダー)とのハナ差2cmの接戦を制して見事、日本調教馬として初めての凱旋門賞馬となった。
帰国後は天皇賞・秋、有馬記念に出走。
凱旋門賞から検疫を経ての天皇賞・秋への出走は、その短さから関係者から批判の声も上がったが、馬主が、何より生産者の稲蒔らが熱く要望し、熟考を重ねて出走を決定した。
鞍上は変わらず竹創騎手が務め、大逃げで始まったレースでは最後まで影を踏ませることなく逃げ切り、同年無敗で参戦したテイエムオペラオーに勝利した。
テイエムオペラオーのゴールデンイヤーとも表されたこの年、同馬に黒星を付けたのはシャイニングスズカだけである。
1000メートル通過タイム57秒台と、同レースでサイレンススズカが出したタイムに並んだ。
続いて出走した有馬記念にて、ゴール後に心肺停止状態で倒れ、生死の境を彷徨うも無事回復。
大事を取り、有馬記念での勝利を最後に現役を引退した。
デビューからわずか1年という短い時間だったが、その名の通り光り輝いた競走馬生活となった。
その後は社来グループで種牡馬として繋養されている。
初駒は2002年に誕生し、ディープインパクトと同世代になった。
初年度産駒であり、日本生産でイギリスで競走馬生活をスタートし、英ダービー・愛ダービーを制したSunnyFantastic(サニーファンタスティック)など、産駒は海外での活躍が目立つ。
200×年、サンライトスズカが無敗で日本ダービーを制し、父子制覇となった。
数々の重賞レースを制した活躍から、急逝した全兄・サイレンススズカの評価もますます高まった。
両馬の主戦騎手を務めた竹創騎手は、両馬を指して「逃げ馬の最高峰」と呼び、どちらがより優れているのかは、実際に並べて走らせないとわからない、と語った。
2021年7月3日、23歳の誕生日翌日に永眠。
7月3日と4日の福島、小倉、函館の第11Rを追悼競争とした。
墓はサイレンススズカと同じく、故郷の稲蒔牧場に建てられ、墓標には「兄弟の夢、ここに光差す」と刻まれている。
国内の後継種牡馬にシャイニングエール、ハレルヤマーチ、サンライトスズカ。
海外ではイギリスにSunnyFantastic、GlorySweet(グローリースイート)、フランスにLumineuxHelissio(リュミヌゥヘリシオ)、アメリカにShiningPassion(シャイニングパッション)らが後継種牡馬とされている。
なおウマ娘ではモロモロの事情で初期実装はされないがサイレンススズカの妹がいると匂わされている。
ワキアさんは史実ではブライアンズタイムの仔を受胎し、1997年8月に亡くなるところを、このIFでは不受胎→サンデーサイレンス種付けで受胎し、主人公を出産後に亡くなります。
わずか1年の競走馬生活で伝説を作り上げるシャイニングスズカとかいうウッマがいるらしい……。
ちなみにレース実況は動画が手に入らなかったのでオリジナルです。
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21.その重みを信じたい
IFススズ全弟のネタやIFマック産駒ネタをTwitterでドボドボ投稿してる。
→ @mttari_n
本編の更新遅れててすまないだ。
(顎と康大事にシコシコ更新するから)待っててくれよなあ!
今回のほんへ。
竹さん吹っ切れすぎぃ!?!?
おばけとサンジェと鞍上と神戸新聞杯!(の出だし)
約9000文字です。
俺は今、栗毛の馬に絡まれていた。
『いくら可愛くても下手な走りしたらブッとばす』
『ヒェ……』
なんだあ……このおばけは……。
そう、この栗毛、おばけである。
いやなんていうか、頭がおかしくなったわけではなく、本当におばけなんだわ。
その証拠に俺以外誰も反応してない。
最初は乗り替わり嫌すぎて幻覚でも見えてんのかと思ったんだけど、思い返せば
その後すぐに見えなくなったんだけど、調教で竹騎手を乗せた瞬間、また見えるようになった。
しかも目の前にいたから驚きすぎて竹騎手落としちゃうし、落とした瞬間また見えなくなるし。
もう1回竹騎手を乗せたらまた見えるようになったから、たぶん竹騎手絡みなんだよなあ。
馬のおばけに憑かれてるとか……やっぱり降りて貰ってもいいっすか?
目黒さんにも視線で訴えかけたが無視されたわ。
仕方ないから栗毛と目を合わせないように調教を熟した。
幸い、栗毛さんは調教中は何も言ってこない。
ただひたすら見てくるだけなのである。
なんかガン見だけだった頃のカネヒキリくん思い出すなあ、栗毛だし。
カネヒキリくんだと思えば、まあ……いややっぱダメだわ、栗毛さんカネヒキリくんと違って小柄だし、ガン見はガン見でもこう、なんていうか品定めされてる感じがする。
栗毛さんは俺より小柄なんだけど、謎の迫力があるというか。
そんな栗毛さんのガン見を横に、軽い運動をいくつか順調に熟す。
放牧中もゴロゴロする以外だと適度に走っていたのもあって、脚はそこまで鈍くはなっていないようだ。
1回ディープインパクトに追いかけ回されたのもあって馬体も絞れてるしな!!
竹騎手も「非常に良い」って言ってるし。
だろ?ディープインパクトみたいに調教は受けられなかったけど、まあゴロゴロしっぱなしだったわけじゃないんだわ。
俺もちゃんと考えてるんですう!なあ、テキ!
満足げに頷いたテキが、最後は2400メートルだと言った。
芝のコース、2400メートルは日本ダービーと同じ距離。
最後にここを走って、今日の調教は終了だ。
「サンジェ、本番のつもりでいいぞ」
おうよ!
気合い入れに身体を揺する。
俺の顔を覗き込んだ竹騎手が一度頷くと、綱をしっかりと握った。
細かい揺れが身体全身に伝わる頃には、俺の中にあるスイッチが、確かに押されていた。
「……行きます」
「お願いします!」
綱が揺すられ、勢いよく飛び出す。
イメージはゲート開門。
17頭の隙間を縫い切って、ハナを走る感覚。
そう、俺が一番。
俺が先頭。
誰も俺の影を踏めない。
第1コーナーカーブが見え、スピードを1段階上げる。
前倒しになる身体を、竹騎手の体重が引き留めるから加速したまま曲がりきれる。
レジェンドジョッキーというのは、初めて乗る馬の癖もなんとなくわかるものなのだろうか。
それとも柴畑さんに俺のクセを聞いたのか。
解らないけれど、竹騎手の体重の掛け方はどこか、慣れているようだった。
さらに第2コーナーを曲がって、向かい第3コーナーを目指す。
大体この第2コーナーあたりから、いわゆる先行馬とよばれる集団が距離を縮めに来る。
先頭を走る逃げ馬にプレッシャーを掛け、騎手との呼吸を乱すためだ。
馬はよっぽどレースに集中できる性格じゃ無い限り、後ろから追ってくる馬を気にしてしまう生き物。
ペースが乱れて速度が落ちたり、逆に残り距離を無視した大逃げに打ってしまいがちになる。
逃げを打つ馬の大半は馬群に飲まれるのを嫌がる、ちょっと神経質な馬が多いと目黒さんは言っていた。
そんな逃げ馬に対してこの作戦は確かに有効だろう。
── けど、俺はそんなことではペースを崩さない。
コーナーを目前にして速度をさらにもう1段階上げる。
神経を研ぎ澄ませ、鞍上の息遣い、腕の動き、微かな鼓動にも耳を傾けて。
先行馬は俺に追いつけはしない。
追いつかせるような走りはしていない。
影を踏まさず、並ばせず、絶対の距離で駆ける。
……けど、たった1頭だけ、このタイミングで上がってくるだろう馬を、知っている。
脳裏を過る日本ダービー、第3コーナー手前。
まるで風がその背を押すように、鹿毛の馬体が大外から駆け抜ける。
その瞬間の驚愕、悔しさ、惨めさ。
苦しくてたまらないターフを、それでも藻掻きながら走り続けた。
そんな俺の疾走を無に還した、あの馬の末脚が目の前に浮かぶ。
あいつは、あいつなら、── ここでくるだろうな。
背後に、鹿毛の追走者を幻視した。
ぐっと力を入れたタイミングで竹騎手の鞭が入る。
俺の『今』と、竹騎手の『今』がピタリと重なりあって、世界が加速する。
首をぐっと下げて前へ、ただ前へ。
もう先頭を譲りたくはなかった。
ディープインパクトにも、他の誰にも。
そう、俺の横を駆け抜けた、栗毛の馬にも。
その背に騎手はいない。
ただ風に揺れるゼッケンは濃紺。
書かれている文字は俺には読めないけれど、ああ、
お前もいつかこの芝を駆け抜けた、どこかの名馬だったんだな。
誰かが愛した、誰かが応援した、誰かが惜しんだ馬なんだな。
栗毛が前を行く。
ぐんぐんと芝を蹴り上げて、一切の無駄をそぎ落としたフォーム。
その走り方はまさに理想的。
他馬の追随を許さない、完璧な逃げだ。
追走するものを振り落とし、追いつけないと思わせるほど突き放す。
……悔しい。悔しい。俺はまだ、足りていないのか。
ハミを噛んで、顔を伏せて、それでも前を向く。
いや、いや、ここで嘆くだけでは変われないのだと、誰よりも俺が知っているから。
もう1度顔を上げて、その背中を目に焼き付ける。
俺は、アレを抜かす。
絶対に、俺が、抜かす。
脚に力を入れる。
一瞬で吸い込んだ酸素を心臓が大きく叩いて身体に回し、気が漲る。
竹騎手。
いつでもいい。
いつでもいいから、タイミングをくれ。
その鞭で、俺の1歩を彩ってくれよ。
── けれど待てど待てども鞭は入らない。
栗毛がもっとずっと先を行く。
俺の脚も少しずつ鈍っていく。
おい、どうしてだ。
なんで鞭を打たない。
これじゃ負けちまう。
ああ、嫌だ、嫌だ。
もう負けるのは、嫌なんだよ……!!
『タケェェエエエ!!ッ打て──……!!』
栗毛と竹騎手になんらかの関係があることは、うっすら解っていた。
けど、今はそんなこと、知ったことか。
よお、竹騎手。
あんたは今、誰に乗ってんだ?
その栗毛の馬か?
違うよな。
あんたが、今、乗ってんのは、この俺だ!
俺に乗って、俺で駆け抜けて、俺と一緒に、今、目の前にいる馬に勝つんだよ!
無理矢理引き出した叫び声が風を切り裂いて、トモに、鞭が入った。
加速する。
芝を蹴り上げ、頭を下げ。
栗毛を捉えて。
この光の中で漏れる、確かに存在した小さな願い事を潰して。
叶えられない。叶えたくもない。
俺にはもう、前しか見えないから。
「サンジェニュイン」
また鞭が入る。
「負けるな、サンジェニュイン」
次に届いた願い事は、叶えてやることにした。
スピードを落として止まる。
上がりっぱなしの息をそのままにして振り返った。
栗毛は、睨み付けてきた馬と同じやつだとは思えないほど穏やかで、その目は丸みを帯びていた。
緑のメンコはよく見ると薄い素材で出来ているのか、そこからうっすらと美しい流星が見えた。
改めて見ると、この栗毛はどこかで見たことがあるような、と思えて首を傾げているうちに、竹騎手が何事かを栗毛に語りかける。
息が上がってまだ苦しい俺には、それを聞いてやる余裕はない。
ただ、話に耳を傾けている栗毛が、ずっと嬉しそうな顔をしていたのが印象的だった。
話が終わったのか、満足げに頷いた栗毛がぐるり、と回る。
そのまま勢いを付けて俺たちに突っ込むと、風に溶けて舞い上がった。
『いい逃げだった』
最後にそう言葉を遺して。
『あんたもな』
俺は、俺の頭上にだけ降る雨に打たれながら、俺たちにしか見えない橋に目を細めた。
その虹の美しさを、競り合った栗毛の走りを、俺は生涯、忘れないだろう。
それほどまでに美しく、輝いて見えた。
「いやあ、竹さんすみません、水浴びまで」
「いえいえ!……軽い調教のはずが、かなり走らせてしまって。すみません」
「なんのなんの。サンジェが満足そうにしているのでこれでいいんですよ。午後からは軽い顔合わせだけの予定でしたし」
シャワーの時間である。
ンン、気持ちいいわ……やっぱり調教後の一浴びはいいな!
マジでコレがなかったらやってらんねえよ。
真夏だぞ!
……あ、竹騎手そこ、違う違う上の方、そうそう。
「……3日前で、ギリギリではありますが、後任の
「竹さんからの推薦だと聞きました。ありがとうございます」
ん?推薦?
「いえ。……長く時間を頂いた分、サンジェニュインにとっての最善を考えるべきだと思いました。騎乗を断った身で何を、とお思いになるとは思いますが、この馬はもっともっと上を目指せる馬だと思っています。いえ、今日乗って、確信しました。もっと上に行くでしょう」
力強く言い切られたその言葉には、迷いもなく、嘘を言っているようにも聞こえなかった。
ただまっすぐと、ありのままを語られているような気にさえなった。
「より質の高い騎手。より経験のある騎手。より才覚のある騎手。最上を求めて考えるとキリはないでしょう。僕もいくつか知人をピックアップしましたし、クラブの方も名のある騎手に多く声を掛けたと思います。サンジェニュインに乗りたい、と名乗りを上げる者もいたでしょうね」
「それほどまでに……」
思った以上の高評価に、俺は若干戸惑っていた。
そら、俺自身は俺ってサイコー!って思うこともあるし、決して弱いつもりはない。
けど競馬っていうのは、結局結果がものを言うスポーツだ。
ハナ差わずか1センチ、されど1センチ。
勝利の女神が微笑んだのは俺ではなかった。
その結果は重く受け止めるべきだし、良いとこやっても結局勝てない、と言う印象を持った人の方が多いと思っていたんだが。
「僕はね、本原先生。大成する馬の共通点は、強い執着心だと思ってるんです」
「それは、勝利への?」
テキの質問に、竹騎手は首を横に振った。
「すべてへの」
さっきまで雨を降らしていたとは思えないくらい、晴れやかな顔で竹騎手が言う。
「走ること。競り合うこと。その先にあるものへの執着心。……執着が過ぎて、その先に向かってしまう馬もいたし、先頭に立つと気が抜けてしまう馬もいたけれど。わずか数分の光の中を、欲しいものを目指して、寄り道せずに走る。当然のように思えて、これが一番、強い馬に必要なものなんです」
俺の鬣を撫でる手は、すこし熱い。
「逃げて、逃げて、差されても差し返して、また逃げて。諦めの悪さは貪欲さの表れ。経験のある質の高い騎手ほど、サンジェニュインに惚れやすい。僕の知人にも何人か、繋ぎを取ってくれって言われました。みんな良い騎手なので、紹介しようかと悩んだのですが……先にも言った通り、サンジェニュインにとっての最善を模索するべきだと僕は考えています」
「その騎手たちでは、サンジェニュインの最善たり得ない、と?」
「うーん、ちょっと、どう言ったら良いのか。難しいんですけど、たぶん、彼らが乗っても良い結果は残せると思います。でも、そうじゃなくて、これからのサンジェニュインのことを考えた時に果たして、この騎手たちで良いのか」
苦悩を表すように、竹騎手は眉間に皺を寄せた。
けど、淡く微笑んで首を振る。
「僕はね、先生。あなた方と同じく、サンジェニュインに相応しく在るに足る騎手を、1人だけ知っているんです」
そう言った竹騎手の声は、どこか悪戯めいて聞こえた。
「本当にギリギリまで悩んだんですけど……彼を見てるとすごい、同族嫌悪!って感じで」
「そんな笑顔で言うことですかそれ」
同族嫌悪ってあんた……。
目黒さんも引いてるぞ竹騎手!
「いいんです。若干の悔しさ込みなので」
「……年下の騎手に言うのもなんですが、竹さん、ちょっと大人げないですね」
「吹っ切れたので。昔の自分が出てきてるのかもしれません」
「いや、うーん、乗せた効果がえぐい方に出てきたか……」
竹騎手、ニッコニコである。
最初にあったときの落ち着きはどこに行ったんだよ。
泣いているよりは笑っていた方が良いのは確かなんだけどな?
「同族だから、似ているから、彼にしたんです。……思えば、自分の未練も乗せていたのかな。せっかく乗れるチャンスがある。今の僕には捨てられないものが多すぎて、そこにしがみつくことはできないし、これが自己満足なのも理解してるんですけど」
空を見上げた竹騎手が、緩く目を細めて思い出すように笑った。
「もし、僕が彼の立場だったら── 何を置いてもその背を譲りませんよ。先生方だって、そう信じていたでしょう?」
「……そうですね。その日を、待っていたのは確かですよ」
苦笑いを浮かべたテキが、それでも嬉しそうに頷いた。
目黒さんが俺の横顔を撫でる。
ゆるやかに、けれど確かに。
穏やかな風が吹いたその瞬間、飛び込んできた白に、目を奪われた。
「ッ遅れて、済みません!」
ここまで走ってきたのだろう、息をするたびに肩もあがって、ボタボタと汗が流れていた。
額の汗を乱雑に拭いて、何度も下げられる頭を遠くに見る。
テキが破顔して、その背を叩いては明るい声色で口を開いて。
目黒さんもどこか嬉しそうに彼に声を掛ける。
それを遠く、遠く見て、じっと見て。
ふいに首を撫でられて横を向いた。
「君にとっての最善は、きっとこれだろ」
解ってるなら聞かないでくれ。
いま、泣くのを我慢してんだ。
「サンジェ」
ずっと、その声が聞きたかった。
「遅れてごめんな」
本当だよ。
皐月賞も日本ダービーも終わったよ。
同着だったけど俺、柴畑さんと皐月賞取ったよ。
柴畑さん、初めてのクラシック優勝だって。
聞いたか?
見たか?
ちゃんと俺が最後まで、怪我なく走りきったのを。
毎週、鬱陶しいくらい柴畑さんに俺の話をしてたらしいな。
それなのに1度も俺に顔を見せに来ない。
あげくにお前、他の馬に乗って重賞勝ちしたんだって?
俺に乗らないで。
俺に乗らないで。
「あと1回でいいから乗りたいって言ったら、怒るか?」
怒るよ。
1回で済ませる気かよ。
お前、俺になんて言ったか忘れたのか?
俺に、サンジェニュインにGⅠを勝たせてやりたいって、世界初の白毛のGⅠ馬になれるって、そう言ったのはお前じゃないか。
あと1回なんてふざけるな。
お前は最後まで俺に乗るんだよ。
俺が全部のレースを終えて、これでおしまいってなるその日まで、俺の背中で、俺とおんなじ世界を見るんだよ。
「……泣かないでくれサンジェ」
泣かずにいられるかこのあんぽんたんが。
お前、お前お前、次、降りるとか言ったらぶちのめすからな。
「……サンジェ、また、一緒に夢を見よう」
その涙声で差し出された言葉を、袖を食んで答える。
そいつは── 芝木くんは、この上なく嬉しそうに、笑った。
「あの、竹さん、今回は本当に」
目黒さんに渡されたタオルで俺の涙を拭き終えて、芝木くんが俺の横にいた竹騎手に深く頭を下げた。
「本当に、ありがとうございました……!」
「……特別なことは何もしてないよ」
竹騎手はそう言って手を振ったけど、さっき竹騎手が言っていた推薦っていうのは、芝木くんのことだったのだろう。
芝木くんが俺の鞍上を降ろされたのは、弥生賞で俺が倒れた原因に芝木くんの騎乗があるからだと判断されたからだ。
これ以上乗せてまた怪我をさせたら、と言う不安から、競馬業界でも名のある、馬に怪我をさせないと評判の柴畑さんに乗り替わりになった。
柴畑さんが俺に乗っていた4ヶ月間、俺は確かに1度も怪我をしていないし、倒れてもいない。
たぶん、柴畑さんが持病を理由に鞍上を自ら降りたとしても、芝木くんにその機会が巡ってくることは無かったんだと思う。
竹騎手をはじめとして他の有力な騎手にも声を掛けていたわけだし。
それでも今、芝木くんが俺の鞍上に戻ってきたのは、竹騎手が推薦してくれたからだ。
「推薦の件は、柴畑さんからも聞いているんです。竹さんがかなり後押ししてくれたって」
「主体は柴畑さんだよ。僕は、君が乗っても問題ない理由を説明しただけ」
「その『だけ』のおかげで、俺はまた、サンジェの背中に乗れます。……それに、今回のことだけじゃないです。あの日から、他の馬の騎乗案件を回してくれたり、他の厩舎に掛け合ってくれたのは竹さんだってテキに聞きました」
「……本原先生」
「いやあ、口が閉まらず」
竹騎手が恨みがましそうにテキを見るが、テキは飄々とした態度でニッコリと笑った。
いまうちの厩舎には、俺以外の馬はいない。
乗れる馬が俺以外に無く、新人で大したコネも無い芝木くんに馬を手配していたのは竹騎手だったようだ。
「竹さんには、本当に、感謝しかありません」
「……後輩のサポートをするのも、先輩騎手の務めだからね」
竹騎手はそう言うけれど、元々の繋がりもなければ、むしろ競り合っただけの新人騎手に馬を回してやるのは、先輩騎手の務めを超えているのでは無いだろうか。
俺はそっと、竹騎手の顔を見た。
少し困ったように眉がさがった竹騎手の耳は、ちょっとだけ赤かった。
「この借りは、レースで返します」
芝木くんの力強い声に俺も小さく嘶く。
それに対して、竹騎手が挑発でもするかのように、ゆるく笑った。
「それは、勝たせてくれるってことかな?」
「いえ」
俺の首に手を回した芝木くんが、笑い返す。
「
「……それが借りの返し方?」
「です」
その瞬間、ふはっ、と声を上げて竹騎手が笑い出した。
小馬鹿にしたような嫌な笑い方ではなく、心のそこから面白いと思っているような、そんな笑い方で。
「っふふ、あー、うん。なんていうか、前にあったときよりたくましくなったな」
「離れている間に、だいぶ、悔しさとか、嫉妬とか、そういうのモロモロを受け入れる覚悟ができたので」
そう言った芝木くんは、前よりもずっと
「……なんだかちょっと、塩を送りすぎたかな」
後悔しそうだよ、と竹騎手がつぶやくと、今度は芝木くんが声を上げて笑う。
「それ、GⅠで俺たちが勝った後にもう1度聞かせてください」
「嫌なヤツだなあ」
そうは言っても顔は笑っていて、言葉にとげはない。
竹騎手は俺に視線を合わせると、じっくりと俺の姿を見て、どこか満足げに頷いた。
「次はレースで競い合おうね」
おうよ!ぎったんぎったんにしてやるからな!
そんな気持ちを込めて嘶くと、竹騎手はまた声をあげて笑った。
この人、笑い上戸なんか?
「それでは、僕はここで失礼します。……本原先生、今回はサンジェニュインに乗る機会をくださり、本当にありがとうございました」
「こちらこそ。今回の件が、次のレースで『塩を送りすぎた』とつぶやくハメにならないよう、こっちはこっちでサンジェにはキビキビ調教に励んで貰いますよ」
「っふふ、そうですね、
竹騎手の背が遠ざかる。
最後に吹いた風は笑い声を含んで、どこまでも優しかった。
「……先輩相手に何を、って言われるかもしれないんですけど」
「うん?」
竹騎手の背を見送ったあと、言いづらそうに芝木くんが口を開いた。
「俺、竹さんにはすごい感謝しているんですけど、あの……ちょっと、苦手意識もあって……あの誤解はしてほしくないんですけど、尊敬はもちろんしてて!憧れなんですけど、なんていうか。今日サンジェに乗ってたのとか、サンジェとなんか通じ合ってるっぽいのとか見てなんか……ど、同族嫌悪?いや嫌悪ではないんだけど……」
俺はその日、目黒さんが大声で笑うのをはじめて聞いた。
2005年 9月25日 阪神 第53回神戸新聞杯 芝右回り2000メートル
「菊花賞トライアル、神戸新聞杯。今年も3歳の秋を告げるレースが始まりました」
「今朝は良馬場の発表でしたが、昼頃から天気が崩れて雨模様。現在は止んで曇り空、実況席からでは変わりなく見えますが、先ほど稍重に変更となりました」
予報では夜からの雨が、大きくズレて降った阪神競馬場。
観衆が見つめるなか、今日の主役である馬が1頭、また1頭と姿を見せる。
「夏を経て、3歳馬たちもますますたくましくなりました。1番人気はやはりこの馬。6枠9番ディープインパクトでしょうか。馬体重はプラマイゼロ。ダービーと変わりなくベストをキープしています。鞍上は
「ダービー後はあえて放牧に出さず、北海道でも調教を続けてきました。管理する沼江調教師も仕上がりには満足の一言。楽しみな1頭です」
「現在の2番人気は8枠14番サンジェニュイン。こちらは1ヶ月ほど放牧に出された後、8月には栗東に帰厩して調教を行っています。馬体重はプラス3キロ。鞍上は皐月賞、日本ダービーを共に戦った柴畑騎手から、弥生賞まで手綱を握っていた芝木騎手に乗り替わりましたがこの影響はどう出るでしょうか」
「よく絞れたキレのある馬体ですね。落ち着きが見えます。芝木騎手も今年の春から夏の重賞戦で高い戦績を上げています。十分勝ち負けに絡めるでしょう」
「2005年のクラシック前半を大いに盛り上げた2頭。今回はどんな走りを見せてくれるでしょうか。注目していきたいですね」
パドックを回る1頭1頭が、このレースに様々な思いを抱いて挑んでいる。
迷いなく、ただ通過点のひとつとして出走する馬。
力を試すために挑んでくる馬。
これが最後のチャンスだとすがって来た馬。
泣いても、笑っても、ただ1度切りのレースだから。
「さあ各馬、返し馬に入ります」
「注目の2頭、ディープインパクトとサンジェニュインは稍重の馬場は今回がはじめて。これがどうレースに影響するのか。不良馬場となった京成杯勝ち馬アドマイヤジャパン、2着のシックスセンスがここで良い脚を見せてくれるでしょうか」
「……うん?ちょっと、サンジェニュインの様子がおかしいですね」
「確かに……脚に異変でしょうか、前片脚を上げたまま止まっていますが、これは」
その困惑が競馬場内に伝染する。
観客席からは小さな悲鳴が聞こえた。
「サンジェ、どうした?」
どうしたもこうしたもねえよ芝木くん。
なんだ、この芝。
「片脚が上がって、まさか、痛いのか……!?ちょっと待ってろ、降りるからな!」
アッ違う違う!
痛いんじゃないそうじゃない。
ほら脚おろした!へいき!
「あれ、痛くは、ないのか……ならどうしたんだよサンジェ」
だからさあ、この芝なんだけど。
ちょっと走ってみるから体感してくれ。
「うおっ」
あ、急に動いてすまん。
けどほら、な?
1歩踏むたび、脚が少し重めに入る。
引き上げる力は必要だけど、むしろそれがイイ。
わかるだろ?
「……なんか、いつもより、脚が軽い?」
そうなんだよ!
なんかさあ、今日の芝、めっちゃ走りやすいわ。
おかえり芝木くん。
そしておめでとう竹さん、無事覚醒。
吹っ切れすぎて覚醒するレジェンドジョッキーがいるらしい。
次回、神戸新聞杯ほんへ!!!!
それにしてもこのオッス馬、人に心配しか掛けねえな。
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22.嗚呼 ─ 第53回神戸新聞杯
さらっと神戸新聞杯。
本当にさらっと。
鞍上が芝木くんだとレース中も会話しだすので書きやすいんだよな、と書いてて弥生のことを思い出しました。
今回のほんへを1行で言うと。
めちゃくちゃ描写は軽いけど頑張って走った主人公と、2頭推してるとは言ってもメディアが2推しとは限らないよな?と言う話。
次回菊花賞!!!!(スピード)
2005年のクラシックレース。
それは一般メディアにも大きく取り上げられたことで、競馬を知らない一般人にすら、競走馬の名前を刻んだ、平成中期の華々しいシーズン。
無敗三冠を目指すディープインパクトと、白毛初のGⅠ勝ち馬となったサンジェニュイン。
走り方も、経歴も、異なる2頭の存在に、世間はかつての競馬ブームを彷彿とさせるほどの盛り上がりを見せ、その関連グッズは飛ぶように売れていた。
競馬業界発展の兆しが見え、JRAは2頭を強く、強くプッシュした。
その世紀のライバル対決。
どちらがどのように勝って、負けたとしても、ドラマチックになるのは目に見えていたから。
「ダービーで格付けは終わっているでしょう!秋からはディープインパクトの無双です。もうサンジェニュインは上がってこれないんじゃないかな」
これまでとんと競馬に触れもしなかった者たちが、訳知り顔でコメントする。
テレビで、雑誌で、新聞で。
競馬に縁のない、無秩序な感情が、競馬場に侵食していた。
「芝木騎手、どうでしょう今日の意気込みは」
「サンジェニュインが勝ちます」
「おお。ディープインパクトの無敗をここで破る!という強い意気込みですね」
「違います」
「え?」
見慣れない腕章をつけた記者が、呆けた顔を見せる。
それを無視して、向けられたマイクをじっと睨んだ。
「【ディープインパクトの無敗を破る】とかじゃなくて、勝つんです。どの馬にも」
サンジェニュインは強い。
サンジェニュインこそが、最高だと、今日この瞬間から証明する。
ディープインパクトの無敗記録を破る?
三冠阻止?
違う。
そこでは終わらない。
競い合う相手はディープインパクトだけじゃないから。
「もう誰にも負けません。サンジェニュインは、勝ちます」
大口叩いてるって言われたってかまわない。
調子に乗ってるとか、空気が読めないとか。
何を言われてもいい。
サンジェニュインが1着でゴール板を踏みぬく、その瞬間。
すべてが【本物】になるだけ。
「行こうか、サンジェ」
大きく身体を揺らして、俺の愛馬が歩き出す。
力強い脚踏み。
前だけを見つめる顔を下に見て、風に揺れる
またこの馬の背に乗れる。
この日を、どれほど、待っていたか。
「……今日も、先頭で走ろう」
愛馬は、当然とばかりに嘶いた。
こちら俺、ゲート前。
続々とゲート入りする他馬はどいつもこいつもソワソワしている。
『かわいこちゃんひさしぶり~!』
『ひさしぶり!前向け!』
「うおっどうどう、落ち着けよジャパン」
「いいね、元気だね」
「ノリさぁん……呑気にしてる場合じゃないですって……!」
なかなかゲートに入らず騎手を焦らせる馬。
……なんかアイツ、そうアドマイヤジャパンな。
うっすらうまだっち、いや気のせいか。
そうだよなメンコあるし。
ヘーキヘーキ!
『なァんでまだクソダサいメンコつけてんだ!?』
『うるせー!真っ赤なメンコつけてるヤツにだけは言われたくねえ!!』
『お前なァ……かわいい顔かくすのは悪いことだぞ』
『そこまで!?』
ゲート入りしたのにやかましい馬。
というかヴァーミリアンいつ帰厩したんだよ。
8月に入っても姿見なかったけど。
本人、いや本馬元気そうだしいいか。
『ハ?セクシーボディだけ見せられてカワイイフェイスは見せられないとか、悪いに決まってんだろ。なァ、お前もそう思うよな、ディープ』
じっと無言で俺を見る馬。
『……お前はお前でなんか言えよ!!!!』
無言は余裕の表れですか、話すまでもないってことか、オオン!?
「どうしたサンジェ、落ち着け」
今回も変わらず騒がしい中で、時は淡々と進む。
首を2回、優しく叩かれて、目の前のゲートへと脚を進めた。
そうだ、もうこいつらに構っている暇はない。
息を整え、前を見つめて。
やることはひとつだけ。
「さあ最後に8枠14番サンジェニュインがゲートに誘導されて、今、おさまりました。いよいよ神戸新聞杯── スタートしました」
ゲートが開いたその瞬間、ゴールを目指して駆け抜ける。
「出遅れはありません。テンよくスタートしたのはやはりこの馬14番のサンジェニュイン。いつも通り抜群の瞬発力でぐんぐん、後続を引き離しにかかります。その背を見る二番手集団はこちら、ストーミーカフェを先頭に、1馬身差アドマイヤジャパン、そのすぐ横にテイエムヒットベがつけています。差がなく、トーセンディライト。その内側にヴァーミリアン、後を追うのはマチカネキララ、エイシンニーザンが続く。ローゼンクロイツは徐々に外側、シックスセンスが追随します。1馬身半はなれてトーセンマエストロ、そこからさらに1馬身差トウカイトリック、最後方から2番目に1番人気のディープインパクトが続きます。シンガリはシルクタイガー、ここから先頭サンジェニュインに果たして届くのか」
「サンジェニュイン以下はまだまとまった展開。気になるのはその開き。先頭から2番手まですでに10馬身差ですが後方に呑まれるか、それとも突き放すか、どうなるでしょう」
「悠々と第1コーナーを回って向正面から第2コーナー、サンジェニュイン、このスピードのままゴールできるでしょうか。鞍上芝木、勝負に出ているのか」
馬群に呑まれたらイロイロな意味で終わっちゃうので、とにかく先頭を目指す。
ていうかそれ以外いらん。
呑まれても盛り返してやる気持ちだけはあるが。
まずはハナをぶっちぎって、レースのペースをつかむぞ!
おら芝木くん!スピードガンガンに上げるからしっかり掴まれよお!!
「いや先頭で走ろうとは言ったし勝つとも言ったけどな!ちょっと速すぎるんじゃないかサンジェ……!」
ハァン?
速すぎるだと?
なあに言ってんだ芝木くん!!
急に手のひら返すなよもお~~!!
っていうかな、いいんだよこのスピードで。
忘れたんですか誰に乗ってるのか。
忘れてんだな4か月も俺に乗らなかったから!
こちとら牡馬どもから逃げ続けて足腰ともに丈夫!
栗東トレセンで俺の調教風景が【マドンナ調教】とか呼ばれるくらい追い掛け回されてスタミナつきまくってんだよ。
だいたい2000メートルで体力消耗した俺を見たことあるんか?
え?弥生賞?
馬鹿野郎!!アレは出遅れからの中団スタートになって掛かり気味でバテた、ってだけで違うから!!
皐月賞とダービーを経て、スタミナ、スピード、パワーをさらにつけた俺を舐めるんじゃないよ。
いいか芝木くん、お前がかつて俺に言った言葉を思い出させてやる。
──
「早くも1000メートルの標識を過ぎてサンジェニュイン、この時点でごじゅ、エッ57秒台!実にハイペース!これで大丈夫なのかサンジェニュイン、鞍上芝木!2番手が見えない、見えない!」
「これは……逃げ切ればレースレコードもあり得ますよ」
俺の綱を芝木くんが強めに握る。
おっまえレース前のほうが強気だったぞ芝木ィ!
なんで走り出したらちょっと弱気になってんだ。
あーもう、それにな、芝木くん。
このハイスピード、はたから見れば確かに「おいおいアイツ、死んだわ」かもしれないけど、よく考えなくても俺にメリットしかないんだよ。
俺がいるレースはハイペースになりがち、って前にテキが言ってたけど、そうなるのは何も俺が逃げてるから、だけじゃなくて、他の馬が俺を追うから、だ。
意味が一緒?
天と地ほど違うから!
たいていの馬は俺が前にいるだけで勝手にスピードを上げてしまう。
自分で言うのもなんだが俺の顔が良すぎるんでな。
……マジで自分で言うことじゃないな!!
まあ、それで俺に追いつこうと他馬はスタミナを余計に消費する。
逃げ馬は2000メートル以上のレースだと最終コーナーで力尽きて馬群に呑まれて涙、なケースが多いみたいだけど、コレのおかげで他の馬が勝手にスタミナ落とすから、たとえ最終がもつれても勝機は十分にあるわけだ。
今日の芝はむちゃくちゃ走りやすいし、スピードが出てるのもこの芝の影響は確かにあるけど。
とにかく脚が進む。
止まんねえんだよ。
もう、走りやすくて走りやすくて、脚が止まらん。
俺の意思では止まらん。
いやそれはそれでやばいが、まあ疲れたら止まるだろ!
いつもより踏み込みは深いけど、それがいいっていうか。
まさに「こういう馬場を待ってたんだよ!」みたいな、この気持ちよさで負けたら後ろ指差されるどころじゃないんだわ!
というか普通に負けたくねえよ。
負ける気もしない。
勝つ気しかねえわ!
あ、そうそう。
逃げる一番のメリットな。
最後尾からの大外イッキ、なんてかましてくるヤベー馬に差されないためには、影も踏まさずに逃げ切ってしまうのが一番、だろ?
よっしゃ、ここ曲がったら最後の直線。
一気にやるから、とっととキメてくれ、芝木くん!
「会場からもどよめきの声!先頭は未だサンジェニュイン!残り600メートルで後続さらに加速するが届くのか!?あっ、中、中、もつれる集団の中から鹿毛の馬体が躍り出て!ディープ、ディープインパクトが白毛の背を目掛けて必死の追走だ!」
パシン、と1発、鞭が入る。
「ごちゃごちゃ言って悪かったな。お前のスピードと本気、舐めてごめん」
まったくだぜ芝木くん。
覚悟は決まったよな?
「ぶち抜こう。お前のスピードで、全部。1着でゴールしたら、それが【本物】だ」
おうよ!
「ディープが迫る!迫る!鞍上竹、必死に鞭を振って、ディープも追いつこうと懸命に脚を動かすっ!その後ろにローゼンクロイツ、シックスセンスが続くが千切れて、ディープインパクト単独でサンジェニュインを追う!追いつくか、抜けるか、無敗の三冠馬へ、ここは6勝目を挙げたいディープ、落とせない戦いだ!アッ、だがしかし、だがしかし!」
気配を感じる。
いつものやつ。
わかる、お前が来るのはわかってた。
けど、今日は、今日からは。
「サンジェニュインは引かないぞ!残り200メートル。差は、差は、縮まらない……!」
俺が勝つ。
「100メートルを切って、まだ、まだ差は大きいぞ!無敗、ディープインパクトの無敗、ここで途切れるのか!?サンジェニュインの脚はぜんっぜん止まらない!ああ、これはもう、これは決まりか、決まりだ!?……決まった!!サンジェニュイン、1着でゴールイン!!」
今、俺の横に、鹿毛の馬体は、ない。
「2着にディープインパクト!3着はシックスセンス。……これは、なんということでしょうか。無敗三冠を目前に、ディープインパクト初の黒星!写真判定の必要なく、完全に、サンジェニュインが先着しました!」
脚は止めない。
俺の首を2回、芝木くんが優しく叩く。
「サンジェニュインはこれが嬉しい初の重賞単独勝利!走破タイム1分57秒は、トウショウボーイが記録した1分58秒そしてコンマ9を、約2秒、1.9秒も更新しました!レースレコードを刻んだ勝利です!」
「白毛の馬による重賞単独勝利はこれが史上初。まさに歴史に残る走りを見せてくれました」
「続く菊花賞がますます楽しみになってまいりました。サンジェニュインはスタミナも十分に備えていますからね。ディープインパクトとサンジェニュイン。競い合って不足なし!」
脚はまだ止めない。
止まらない。
芝木くんが俺の頭を撫でる。
「やっぱり、お前は、最高の馬だよ、サンジェ」
よせやい。
もっと褒めてもいいんだぞ?
「これで、
芝木くんのその言葉に、ちらり、と後ろを見た。
いまだ走り続ける俺の背を追う、鹿毛の馬体。
頭を下げず、ぐんと首を伸ばして、なおも俺を見つめるその目に、俺は。
『まずは1勝。……新馬戦の分はこれで返したぞ、ディープインパクト』
これで5戦1勝3敗1引き分け。
もう1度見たディープインパクトの目は、黒く、燃えているようだった。
『燃えてるってそっちの意味か!?!?ちか、近寄んなディープインパクト!!!!うっわ、はえ……あっあっ、身体よせんなってば!!!!来んなよもおおお!!!!』
黒く、燃えていた。
「今回の勝ち馬に邪魔され惜しくも無敗を逃しましたが、ディープインパクト一切劣ってないと思います。今回の敗因はどの点でしょうか?」
向けられたマイクに、沼江はにっこりと笑った。
「うーん、まず、順番が違うんじゃないか」
「え?」
マイクを手に持った若い記者の戸惑いを横に、沼江がある方向を指さす。
「おたくら、競馬に慣れてないから仕方ないんでしょうけど。こういう時はね、まずは勝利した陣営に祝いの言葉を送るのが先なんだよ」
沼江は、調教師として長い経歴を持つ。
酸いも甘いも噛み分けて、何度もマイクを、カメラを向けられてきた。
たいていの競馬雑誌や新聞の記者とは顔見知りでもある。
今年の競馬が、例年と違った取り上げられ方をされていることももちろん、知っていた。
見慣れない腕章をつけた若い記者と視線を合わせて、沼江は口を開いた。
「競馬を取り上げていただくのは大いに結構。喜ばしい。ディープインパクトに注目していただけるのもありがたい。けどね、順番間違うのだけはいけないよ。勝利した陣営を蔑ろにするのは」
「蔑ろになんて……!も、もちろんこの後、あちらにもお伺いする予定で」
若い記者は取材に慣れていないのか、それとも、沼江の圧に押されているのか、しどろもどろに返す。
その周りにいる2、3人の記者の腕にも、沼江には見慣れない腕章がついていた。
「取材はあちらを済ませてからで。……ああそれと、サンジェニュインだよ」
「え?」
「私たちが負けたのは【今回の勝ち馬】じゃなくて、サンジェニュインという馬だ」
去り際に、沼江の声が響く。
「2度も聞かれるのはごめんだから、これだけは先に答えておこうか。【敗因は何か】だったね?」
「は、はい」
「敗因はない。ディープインパクトは完璧なレース運びをしたよ。想定通りの走りだった。ディープインパクトもまた、レコードタイムだったからね。邪魔をされたんじゃなくて、ただ負けた。それはディープに原因があったのではなく、答えはシンプルだ」
声は響く、響く。
「ただひたすらに、今日のサンジェニュインは、強かった。ディープを上回るほどに」
とても悔しそうに、そしてとても、楽しそうに。
本原は額の汗をタオルで拭きながら、記者の質問にひとつひとつ答えていた。
「西スポです。お久しぶりです、本原センセイ。さっそくですが、おめでとうございます!」
「笹島さんに取材していただいてからもう半年以上ですか。ありがとうございます」
笹島という記者は以前、サンジェニュインとヴァーミリアンの併せ馬の時に取材に来ていた記者だ。
古くから競馬関連の新聞や雑誌を扱う「西スポ」に所属するベテラン。
我が事のように嬉しい、と言わんばかりに笑顔を浮かべていた。
「あの時の馬が重賞を単独制覇する瞬間に立ち会えるとは!感無量です」
「私もです」
「お話したいことは山のようにありますが、時間がないのでさっくりといかせてもらいますね。今回のレース、春のクラシックからさらに段違いの強さを感じましたが、これについてお話を聞かせてください」
笹島がボイスレコーダーを構えると、他の記者たちも一斉にレコーダーを本原に向けた。
重賞レースを制した経験の少ない本原にとって、この体験は未だに慣れないものだった。
「そう、ですね。ダービーが終わった後から、一皮むけたような、馬自身の精神的成長も影響しているかと思います。元から調教を苦にする馬ではなかったのですが、ここ1か月は何をやらせてもいい結果を出してくれたので、今日は勝てる気しかありませんでした」
「自信たっぷりだったということですね。鞍上は
「夏ごろから予定していたことです。芝木騎手も腕に問題はないですし、サンジェニュインとの相性もいい。今日のレースは特に、終盤は人馬一体を見せてくれました」
話が真横にいた騎手、芝木に移ると、芝木も軽く頭を下げてから口を開いた。
「サンジェニュインは勝ち負けを解っています。もう負けたくない、という気持ちが十分に伝わってきましたし、それがレース結果にも表れている。次も絶対に勝ちます」
「こうやって頼もしいことを言ってくれるので、調教師としても安心です」
おどけたように繋げた本原の言葉に、周りの記者たちからドッと笑いが漏れる。
芝木は少し恥ずかしそうに頬を掻いたものの、顔を隠さずに前を向いて頷いた。
「嘘偽りはないです。勝ちます!」
「わははは、いやあ、本原先生、これはもう、自信しかないですか、菊花賞」
「ですね……自信しかないです。サンジェニュインはご存じのようにスタミナ豊富ですし、この通り、芝木騎手もね。本当に、自信しかない。サンジェニュインは、菊花賞も勝ちますよ」
そう言った本原の表情は、雲間から射す光のように、輝いていた。
「ディープインパクト、無敗ならず。サンジェニュインに夢絶たれる」
そう見出しを付けた号外が配られたのは、その日の夕方だった。
次回、菊花賞!!!!サービスサービス!!!!
サンジェニュイン 牡 3
ようやく先着できたがここがゴールでは無いので冷静
かと思えばその日の夜はしゃぐ
わーい勝った勝った、次も勝つ!
次の馬場も稍重になんねえかな
ディープインパクトさん 牡 3
負けた、だと……?
プリケツがどんどん離れていくのでめちゃくちゃ必死に追った
次も追う(確信)
ヴァーミリアン 牡 3
これが最後の芝レース
あいつめっちゃ早っ!と思いつつゴール後絡みにいく
今後のお前の併せ馬の相手はカネヒキリくんだぞ!
アドマイヤジャパン 牡 3
メンコ、効いてない説がある
芝木くん ヒト族 男
レース前めちゃくちゃ強気だったがいざはじまったらフラッシュバックして思わず綱を強く掴んだ
が、覚悟きめてきっちりぶち抜いた
もう勝てる気しかしない(負けフラグみたいなこと言うな!)
テキ ヒト族 男
取材にはあんまり慣れてない
サンジェニュインの強さを改めて認識
これは菊花賞勝てるわ……!!
厩舎に逆てるてる坊主吊した
沼江調教師 ヒト族 男
ベテラン
レースが終わったとき、勝った陣営にこそ一番最初に賞賛が送られるべき派
サンジェニュインのことは「おもしれー馬」だと思ってる
ブームにのっかったマスメディア
別にクソでもゴミでもない
競馬しらん一般人にウケるような書き出しや記事にしてるだけ
つまり一般人的には「王道ディープインパクトと刺客サンジェニュイン」レベルの認識
一部の競馬ファンからは蛇蝎のごとく嫌われるやり方
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23.傷になる ─ 第66回菊花賞
7/24 23時で予約投稿したはずが7/25 23時の予約になってて慌てて手動投稿した。
すまねえ……すまねえ……!
はい、ほんへ。
今回は菊花賞です。
はー、長かった。
投稿を始めてからざっくり2ヶ月が経とうとしている中でようやくです。
サンジェニュインの大逃げに期待!(巨大ネタバレ)
クラシックシーズン、これにて閉幕。
美貌馬、完!
【お知らせ】
現在パスワード限定にしている美貌馬・番外編ですが、現状、パスワードを公開する予定はないです。
メッセージ等でお問い合わせ頂いてもお返事できません。
すみません。
番外編自体は8月に入ったら全体公開に戻す予定なので、そちらをお待ちください。
【特集:第66回菊花賞直前】
《先頭至上主義 ── 鮮やかな逃げ脚・サンジェニュイン号》
まだ記憶に新しい、第53回神戸新聞杯。
その勝ち馬、サンジェニュイン号の他馬を寄せ付けない大逃げに、私はたまらず「そら見たことか!」と膝を打った。
衝撃の1分57秒。
遡ること29年前、あれは第24回神戸新聞杯勝ち馬・トウショウボーイ号の姿。
刻んだタイム1分58秒9は、それ以前にシルバーランド号が持っていた中京競馬場芝2000メートルの1分59秒9が最短であったところを、1秒縮めたものであった。
これは当時の実況者が思わず「恐ろしい時計」と評したように、あの時代、2000メートルを2分切る馬が現れるとは、誰も思っていなかった。
トウショウボーイ号ののちにハギノカムイオー号の1分59秒8に、キングカメハメハ号の1分59秒と、2分を切る馬は増えたものの、依然58秒の壁は高かった。
それを、1秒9も縮めたのが今年の神戸新聞杯勝ち馬である。
圧倒的だった。もはや語る言葉もいらぬほどの走りでもって、白毛の馬体はゴール板を踏みぬいた。
私は、この馬を本誌の東京優駿前の特集でも紹介した。
力強い脚を持つ馬だ。
豊富なスタミナと勝負根性を併せ持って、白毛のダービー馬も夢ではないと思った。
最高の良血馬と名高いディープインパクト号を相手に、8センチ、3センチ、そして同着。
惜敗の度に大粒の涙を流して、次は、次こそはと思わせてくれた。
迎えた東京優駿、1センチ差と3度目の惜敗を喫するも、涙を見せず頭も下げず、ただ前を見つめる姿に胸を打たれた。
このレースの結果を指して、ディープインパクト号との間に格付けが済んだ、レース後によくある燃え尽き症候群だと、打ち合わせたように並べ立てる、評論などと名乗る感想文には辟易していた。
ゴール後の、あの表情。
左ページに載せた、この表情だ。
これが格付けの済んだ、燃え尽きた馬の顔であろうか。
私には、次のレースへと意識を切り替え、またひとつ、大人になったサンジェニュイン号の顔に見えて仕方がなかった。
負けて強し、を体現した東京優駿の結果ひとつで、私のサンジェニュイン号に対する期待は失われない。
ゆえに、ディープインパクト号に二重丸を打ち、サンジェニュイン号に三角をつける昨今の流れに逆らう形で、第53回神戸新聞杯で私は彼に二重丸を打った。
9月25日。パドックを周ったサンジェニュイン号を見たとき、これまで以上の迫力を感じた。
その迫力そのままに、サンジェニュイン号は誰にも影を踏ませることのないまま、2着馬に8馬身近くも差をつけて圧勝。
これが冒頭の、それ見たことかと叫んだ瞬間だ。
それ見たことか。それ見たことか。
サンジェニュイン号は逃げ切った。格付けが済んだという圧から、燃え尽きたと思われた圧から、敗北から見事に逃げ切ったのだ。
走り切った後のあの誇らしげな表情。
出遅れた弥生賞を除けば全戦、常に先頭を走り続けたサンジェニュイン号。
ゴール後も先頭は譲れないと言わんばかりに走り続ける彼は、間違いなく、先頭至上主義。
続く菊花賞は3000メートルと、どの3歳馬にとっても初めての距離。
血統だけを見れば、同血統のジェニュイン号は菊花賞に向かわずにマイル路線に進む等、一見すると長距離は不向きに見える。
だが忘れてはいけないことがひとつある。
サンジェニュイン号が、これまでのレースでスタミナ切れを理由に失速したことがない点だ。
管理する本原調教師は、サンジェニュイン号の最たる長所としてスタミナを挙げている。
2000メートルを先頭で走り切ってもなお、走り続けることができる体力は、
私は何より、その勝負根性を信じたい。
諦めることを知らず、諦めることを良しとせず、ただひたむきに前を、前を走り続ける。
きっとまた、サンジェニュイン号は逃げるだろう。
ハナをきって、他馬を寄せ付けず、追われても並ばせず、並ばれても抜き返し、最後には1着でゴール板を抜ける。
ふたつめの冠を手に入れ、周りが目の色を変える瞬間を、淀で見ることができるものと、確信している。
「これは……【得意】とか言うレベルじゃないねえ……」
まったくだぜテキ。
「こんなに差がでるんですね」
俺の身体の汚れを拭きながら、イサノちゃんが感心したようにうなずいた。
いやあ、こんなに差が……でるもんなの?
「出るにしても、普通は悪くなる、はずなんだけどなあ」
神戸新聞杯から2週間。
昨日までに2日連続で雨が降って、すっかり重くなった栗東トレセンの芝コース。
もう少し状態が良くなってから調教を始めるところを、今日は荒れた馬場での走破タイムを計測していた。
「1000メートルで53秒台ってお前、カルストンライトオじゃないんだから……これ余裕でレコードタイムだぞ」
マジ?
いやカルス、なんとかが誰かは知らないけど、テキが引き合いに出すってことは相当速い馬なんだよな。
それって俺の脚、やばすぎい!?
「芝木くんが言っていた、良馬場より重いほうが得意かも、は本当でしたね、テキ」
「ああ、うん。いやでもほんと、得意とか走りやすいとかのレベルじゃないよコレ」
それはそう。
今日走ったコースの馬場状態は、目黒さんが言うには重から不良のレベル。
脚も重くなって余計にパワーとスタミナを取られちゃうから、こういった馬場を嫌がる馬は多いのだと目黒さんは言った。
滑って転倒、怪我、落馬などを恐れて、鞍上の騎手もなかなか前へ押せなくなるらしい。
良馬場よりはスローペースになるのが通常だとか。
実際にコースはびっしゃびしゃで、最初に見た時はほんとにコレ走れる馬場なのか?って思ってたけど、テキや目黒さんが言うほど走りにくい感じはなかった。
むしろ
一番走りやすかったのはこの前の稍重の時だけど。
「今までも若干、パワーを持て余しているようには見えてたけど、脚に力がある分だと荒れてた方が好きか……神戸新聞杯が全部を物語っているようなものだな」
あんときはブースト掛かりっぱなしって感じだったからなあ。
鞍上が芝木くんでテンション上がってたのもあるけど、それ以上になんか、地面蹴るのが楽しかったよ。
蹴っても蹴っても疲れずにぐんぐん進むのが面白かった。
脚が全然止まらなくてちょっと怖かったけど。
あと、最後にディープインパクトに絡まれた挙句、ヴァーミリアンやアドマイヤジャパンたちにラチ沿いに追い詰められたのは根に持ってるけどな……!!
許せねえ……菊花賞では逃げ切った後マッハで検量室戻ってやるからな!!
影も踏ませないし馬体も触らせない。
イエス俺の顔好き、ノー俺にタッチ!!!!
「……これ、いよいよ
ん?外?
「まあ、いま考えても仕方ない。まずは目先のこと……菊花賞だ」
「残り2週間。神戸の疲れはすっかり取れてますよ。この通りピンピンで、道悪で1000メートル走ったのにまだ走りたそうです」
だってまだ1000メートルじゃねえか。
菊花賞ってすごい長いんだろ?
体力には自信あるけど、積める努力は積んどかないとな!!
カネヒキリくんからのリークだけど、ディープインパクトは坂路調教増やしてるらしい。
俺もやりたい!!
たぶんだけどアイツ、俺と同じかそれ以上に長距離走れそうな感じだよな?
ゴール後の俺をギリギリまで追ってくるのアイツだけじゃん。
それに神戸は俺が勝ったけど、あれが終わりじゃないし。
菊花賞を勝って、弥生の分を返さないと。
「無理のない範囲でやれるとこまで積もうか。……サンジェが勝つために、できることはなんだってやろう」
て、テキ……!
感動で涙が出そう!!
「そう、やれることはなんでもする!不正以外はね!大量のてるてる坊主作って逆さに吊るして雨ごいだ!!」
いやそれ神頼みじゃねえか!!!!
2005年 10月23日 京都 第66回菊花賞 芝右 外回り3000メートル
「まもなく発走時刻。これが3歳馬によるクラシックレース、最後の大勝負です」
「最も速い馬が勝つ、皐月賞。最も幸運な馬が勝つ、日本ダービー。そして今回のレースは【最も強い馬が勝つ】菊花賞。この大勝負に、3歳馬たちはどのように立ち向かうのでしょうか」
観客の声は遠くに聞こえる。
耳当てを着けているからだ。
時は返し馬。
立ち止まった俺の頭を、鞍上の芝木くんが優しくなでる。
「本日は残念ながら曇り。昨日の午前中は雨も降りましたが、今はその気配もなく、馬場も先ほど【良】の発表がなされました。予報ではもう少しで青空が見えるというところ。最初から晴れていて欲しかったですね」
そう、今日は曇り。
けど良馬場。
良馬場である。
「昨日、雨が降ったときは【やったじゃん!】とか思ったんだけどなあ」
ほんっとそれな!!!!
大量に吊るされた逆さのてるてる坊主に囲まれた2週間。
なんの儀式?なんて思いながらも、2週間も一緒に過ごせば愛着も湧く。
稍重、よろしくな!と毎晩毎朝、てるてるフレンズに祈ったけどダメだったな。
午前中だけだったけど、曇りとか小雨とか続けば明日は稍重くらいにはなるんじゃね?とか思っちゃったよ。
思ってわくわくしてすやすや寝たわ!!!!
はあ、芝、良質。
けど今はこの良質が恨めしい。
湿っててくれよ……重馬場とはいわん、ちょっぴり柔らかくあれよ……!
「馬場はちょっと残念だったけど……サンジェ、お前の脚は良馬場で劣るわけじゃない。重い方が得意なのと、軽い馬場では走れない、はイコールじゃないからな」
芝木くんが宥めるように俺の頭を撫でる。
わかってるけどさあ。
やっぱりちょっと、稍重だとありがたいなって。
脚への負担の差が段違いだったからな。
でもまあ、芝木くんが言う通り、良馬場で好走できないわけじゃない。
今までディープインパクトと接戦だったのは良馬場なわけだし。
それにさ、どのみち【逃げ】るんだ。
良でも重でも、駆け抜ければ一緒!
「返し馬は最後、サンジェニュインがしばらく立ち止まっているように見えましたが、動き出しました。さあゲートへの誘導が始まります。今年の3歳馬、例年より少し賑やかなのが特徴でした。クラシック最後のゲート入りですが、どうでしょう」
「いやあ、はは、最後まで騒がしいですね。ちょっと笑ってしまいました。とはいえ、この世代は賑やかでも強い馬が多いことでも知られています。その中心が、今回も1番人気、ディープインパクト。そしてデビュー以来ずっと競い合ってきたライバル、今回も2番人気に推されていますがオッズに差はありません、サンジェニュイン。この2頭でしょう」
「周りにいる馬たちも並の馬ではありません。愛すべきブロンズコレクター、アドマイヤジャパン。今日は金を狙いたいところ。セントライト記念勝ち馬のキングストレイル、もう1頭の逃げ馬・ストーミーカフェはそろって古馬戦線、天皇賞・秋を選び、今日はいません。期待のインティライミも故障の影響で回避の発表がなされました」
「例年なら菊花賞、多くの馬たちが脚をそろえてやってくるのですが……強すぎる馬2頭を前に、回避が相次いでなんとか17頭立てです」
ゲート前、誘導されていくほかの馬たちを見ながら、ふと、これが最後なんだなあと思った。
別に、これが終わったら人生、いや馬生が終わるわけじゃない。
次のレースもあるだろうし、引退したって牧場に戻るだけだろう。
けど、確かにコレが、最後。
皐月賞、日本ダービーと続いて、俺が、確かな強さを証明できる、最後のレースだ。
「大丈夫だよ、サンジェ」
ほんのちょっとの緊張感や不安に気づいたのか、芝木くんが俺の首を撫でる。
「今日も、お前は最高だ」
……その言葉が、何よりも好きだ。
「── 続いて4枠7番、ディープインパクトが誘導されていきます。前走、神戸新聞杯で無敗記録は途絶えましたが、しかし、しかし三冠にはまだ手が届きます。手ごたえ、気合ともにダービークラスで十分にある、と厩舎からも自信の声。鞍上
「抜群の末脚。長距離の今レース、ペース配分にさえ気を付ければ最終コーナーで一気にまくっていけるだけの実力があります。期待の1頭です」
鹿毛の馬体がゆっくり、ゲートにおさまっていく。
ちらりとだけ視線があって、そらさずに見つめ返してやる。
今日は負けない。
今日も負けない。
勝つのは、俺たち。
「奇数組の最後は17番、サンジェニュイン。安定した脚運びは自信の表れか。神戸新聞杯で1分57秒のレコードタイムでもって優勝したその脚が、菊花賞でどう動くでしょうか。管理する本原調教師からはスタミナ、スピード、パワー、どれをとっても最高クラスまで仕上げたと力強い宣言。今日も手綱は若手1番の実力と呼び声高い、芝木騎手が握ります」
「逃げ馬といえばこの馬。突出したそのスピードは、出走した全レースで他馬にハイペースを強いるほど圧倒的。今回も大外枠ですが、神戸新聞杯でもわかる通り、この馬に枠順は大した影響はありません。今レース、間違いなく注目すべき馬でしょう」
ゲートの幅は芝木くん2人分くらい。
でもそれが、やっぱり狭く感じる。
落ち着かなくなる。
ゲート嫌いな馬の気持ちを、今日になってから思い知るなんて。
確かに嫌だな、これ。
ざわざわして落ち着かなくて、でも、最高に、レースって感じがする。
「さあ、これで16番マルカジーク。つい1週間前、堀川特別で約1年ぶりの勝ち上がりを見せたばかり。前走の疲れは大丈夫か。距離適性はやや不安だが、力強い走りを見せてほしいです。……なんなくゲートにおさまりました」
小さく綱が揺れる。
そろそろだぞ、という合図。
「ようやくこの時がやってきました。本当に、本当に、これがクラシック最後。泣いてもいい。笑ってもいい。けど最後まで見てほしい。3歳馬たちの激走── 第66回菊花賞、スタートしました」
押し開かれたゲートは、栄光へ続く道筋だ。
「スタートは乱れなし。先頭、先頭、ハナを切るのはやはりこの馬、サンジェニュイン。抜群の出だし、他馬を突き離して優々と3コーナーを曲がります。続くのは下り坂だ。それを見る2番手はアドマイヤジャパン、シャドウゲイトが横並び、ややシャドウゲイトが前か。そこから2馬身差ピサノパテック、内沿いにローゼンクロイツ、回って外1馬身のところにコンラッド、フサイチアウステル、1馬身半離れてディープインパクト。いつもより前の位置です。サンジェニュインはホームストレッチまでまもなく。ディープインパクトから斜め1馬身差にディーエスハリアー、半馬身差でアドマイヤフジ、差がなくシックスセンスが続きます。3馬身ほど離れた位置にエイシンサリヴァン、マルブツライト、ミツワスカイハイが三つ巴。すぐ後ろで追うのはレットバトラー、2馬身差マルカジーク、シンガリにぽつんとヤマトスプリンター」
菊花賞は3000メートル。
俺が今まで走った最長は、日本ダービーの2400メートルだ。
そこから600メートルの延長。
正直、イケる、気しかしない。
「飛ばす飛ばすサンジェニュイン!スピードそのままにぐんぐん進みますがこれは正解か。歓声にも怯まず直線1000メートルを通過、この時点でタイムは……58秒台!?は、ハイペースです!桁違いだ!これは
芝木くんの鞭はまだない。
「大丈夫、だろ?サンジェ」
お?
なんのことかわからんけど、スピードとスタミナなら問題ないぞ!!
そりゃあこの前の稍重の時よりはやっぱりね、脚はつらいんだけど、正直まだ余裕なんだよな。
終盤で疲れたとしても、ここで時間と距離を稼ぐことが大事だし。
一番いいのは、俺につられて他の馬たちのスピードが上がって、そこから体力がガンガンに削れることだけど!
ディープインパクトとかどうせ今日も最後方、大外イッキぶち抜き!だろ?
後ろからだと俺の馬体が見えづらいから、あいつそんな早々に前に来たりしないんだよな。
……まあ、
っていうか観客うるさっ!!
スタンド前ってこんなにうるさかったっけ?
なんかプリケツって叫んでるやついなかった?
「第1コーナーを抜けて早くも第2コーナー目前。ここからサンジェニュインに追いつく馬は現れるのか、それともサンジェニュインが力尽きるか。後続ももうすぐ第1コーナー、ここでアドマイヤジャパンがシャドウゲイトを抜いて2番手集団の先頭!徐々に突き放していくっ!シャドウゲイト疲れ始めたか、しかし依然3番手以下とは4馬身以上の開き、おおっとここで中団に潜っていたディープインパクトがひょいとフサイチアウステル交わして、ゆるやかに先頭集団に交ざろうとしています。鞍上竹、どうにか綱を引くがこれは、折り合いを欠いているのか竹!竹!折り合いの天才、竹!」
スタンド前を抜けきって次のコーナー、曲がるときにちらっと右横を見ると、第1コーナーに差し掛かったアドマイヤジャパンが見えた。
そういやこいつも先行逃げのスタイルだったな。
俺がいつも先頭だから、後続の馬がどういった走りで来てるのかイマイチわからないんだよなあ。
ただあの、うっかり中団スタートになった弥生賞ではアドマイヤジャパンの背中が見えてたから、早めに前につけて差し切るっていうスタイルなのかも。
それより、うん……なんかアドマイヤジャパン、いつもより早くない?
気のせいか。
「ペース速いな」
えっそれ俺のこと?
「アドマイヤジャパン、割と早めに脚を使ってきた……サンジェ」
1発、鞭が入る。
ややスピードを上げて、第3コーナーまでの直線を駆ける脚に力を入れた。
ペース速いってアドマイヤジャパンか。
そうだよな、今日のあいつ速いよな。
かなりのスピードで走ってる自覚はあるから、前半15馬身くらいはつけられる!って気持ちだったけど、差はそれよりも短い。
縮まった分のスピードでアドマイヤジャパンが走ってるってことだ。
……こんなんちょっと脚ゆるめてたらヒィン!うまぴょい!だったかもしれないわ。
神戸新聞杯の時も先行で追いかけて来たけどバテてはいなかったから、アドマイヤジャパンは元々スタミナもあるんだろうな。
侮りがたしアドマイヤジャパン。
やっぱどの馬相手でも油断とかダメだな!
いやあ、逃げ打っててよかった!!
逃げ!逃げてればもう大抵のことはカバーできるからな。
ツインターボ師匠もそう言っている。ね、師匠!
「先頭サンジェニュインから2番手アドマイヤジャパンまで依然10馬身以上の差!これを詰めようとシャドウゲイト、エッ!?ディープインパクト!ディープインパクトがもう上がってきたこれは!?第3コーナー手前で内沿いにディープインパクト、シャドウゲイト、ディープインパクトシャドウゲイト!2頭並んでアドマイヤジャパンが眼前まだ3馬身差リード!竹、巧みな綱さばきで脚を溜めながらも2番手集団に交ざろうとディープインパクトが詰めています!」
第3コーナーにはドデカい坂がある。
テキが「魔の坂」とか呼んでたやつだな。
上がり下りがキツいからパワーもスタミナも溜めとけって言われてたけど、まだ、なんか、余裕だな?
これ、一気に上がっていけそう。
なあ、ちょっと一気にドカンとやってみないか芝木くん!?
「いけるかもしれない……サンジェ、ここから一気に上がろうか!」
よしきた!!
わかってんなあ芝木くん!
おお、上がっちゃおうぜ!
「サンジェニュインが、白毛の馬体が淀の坂!淀の坂をためらいなく、疲れた様子も見せず、一気に駆け上がってきたぁ……っ!まだ尽きないかスタミナ!このままいけばレコード勝ちだ!」
……いやキツいな!!
思ったよりキッツい!!
イケるとか舐めたこと言ってごめんな芝木くん、これ普通にキツかったわ。
上がるときにいつも以上に脚に力いれたからなんかちょっとジーンってキてるし!!
マジごめん、ちょっとだけ息入れてもいいか?
「ッまだいけるか、サンジェ!」
……やってやらあ!!
おおやってるよ、そうだよな弱気になってる場合じゃなかったわ、ぶち抜こうなやったろうな!!
「坂を上って少し脚が緩んだサンジェニュイン、これを待っていたとばかりに竹、すかさず鞭を振る!三つ巴からディープインパクトが抜け出して、サンとの距離を縮めにかかる!しかしまだ5馬身差あるぞ!このままサンジェニュインを逃がしていいのかディープインパクト!淀の下り坂、先頭はサンジェニュイン!!その後ろからディープインパクト、その鹿毛が風に乗って駆け行く……!」
2回、連続で鞭が入る。
ディープインパクトが来たって合図。
そうだよな、竹騎手、ここで仕掛けてくると思っていた。
俺たち、結構タイミングが合うよな。
栗毛さんとのレースの時、竹騎手が想定していた差し馬
自分がディープインパクトに乗ってる状態で、もし、あんたが俺に乗ってたら。
第4コーナーで追うには短すぎる。
第2コーナーで追うには早すぎる。
第3コーナー、中盤。
俺がここでもう1段階、息を入れるって気づいて、あんた、ここしかないって思ったろ。
……俺も、そう思ったよ。
「最後のクラシックも、この2頭の大接戦で終わるのか!?残り400メートルを通過して先頭はまだサンジェニュインだ!ここまで乱れぬスピード、口から出るのは「もうすごいスピード」それだけだ!しかし、しかしディープインパクトここは二冠馬の意地!負けてられない、負けていられるものかと猛追を仕掛ける!縮まる、縮まる残り2馬身差……っああ!」
俺が芝木くんに出会う前に、竹騎手、あんたが俺の背に乗ってたら。
きっと俺たち、それはそれでいいコンビになれたと思うよ。
1回キリの騎乗でさえ、怖いくらい、あんたとは息が合う。
鹿毛の気配がぐんぐん近づく。
叩きつけられた闘気に身が竦みそうになって、いや、それは俺も同じだと叩き返す。
負けらんないのは同じだよ。
俺も、お前も、他の馬も。
負けるために走ってるやつなんかいない。
だから。
『負けねえぞディープインパクトォォオオオ!!!!』
お前が意地なら、俺も意地。
「ッしかしサンジェニュイン!まだ伸びるのか!?どこに、今までどこにその脚を隠していたのか!それでもディープインパクト追いすがる!残り200メートル!まだ差が、差がある!!」
闘気が刺さる。
それを刺し返す。
痛い。
お前の覚悟が。
痛い。
前に進む脚が、まだやるのかと内側から叩いてくる。
痛い。
痛いよ。
でも、負けたらもっと、痛いから。
『俺が勝ぁぁあああつッ!!!!』
お前がどこまで自覚しているのか、わからないけれど。
お前が背負っていたモノも重かっただろうな。
俺はお前じゃないから、三冠目前の馬ではないから、その苦しみを表面でしか知らないけれど。
期待されて、愛されて、それに応えられない痛みだけは、よく解るよ。
「ここで並んだディープがサンの影を踏み抜こうとしかし、サンはしかし、しかし、サンだ!サン!サンッ!」
その痛みを癒す術が勝利にしかないことも、よく解っている。
解っているから、勝つことを切望するんだ。
ディープインパクト。
俺の人生にも、馬生にも、ずっとずっと刻まれた馬。
今まで痛みを知らなかったお前に、今日、誰が傷をつけたのかを覚えていろ。
『ッサンジェニュイン──……!』
ああ、お前、そんな声だったのか。
「決まった!決まった!雲晴れ行く淀の空に!真白の太陽が昇ったぁ──ッ!」
独りで抜けたゴール板は、思ったよりも広かった。
「鞍上芝木、ガッツポーズ!ここに、ここに白毛の菊花賞馬の誕生!史上初の白毛のGⅠ勝ち馬、サンジェニュイン!同着の皐月賞を除いては、これが初のGⅠタイトルです!」
芝木くんが俺の頭を撫でる。
よくやったと繰り返し褒める声は、少し潤んでいた。
「ディープインパクト、三冠達成ならず……!しかし上がり3ハロンは驚異の32秒7を刻みました!この馬もコースレコードだ!ディープインパクト、まさに負けて強しの馬……!」
「今回はただ、ただひたすらにサンジェニュイン、強かった……!走破タイムは3分2秒ジャスト!ディープインパクトも3分2秒コンマ5とレコードを大きく更新しましたが、サンジェニュイン、それをコンマ5、上回りました」
「1998年にセイウンスカイが刻んだ3分3秒コンマ2を、ディープインパクトがコンマ7、サンジェニュインが1秒とコンマ2、更新した形となります」
観客の声が身体を震わせる。
それは歓びでもあったし、怒りも含んでいるように聞こえた。
「2005年クラシックは、2頭の皐月賞馬による、ダービーと菊花賞の分け合いで終わりました。変則二冠を除けば史上初、2頭の二冠馬が、今、みなさんの目の前にいます!」
「すべての馬に大きな拍手を。勝ち馬サンジェニュインに、より盛大な歓声をお願いします」
そして鳴り響いた拍手は、地鳴りのようだ。
俺は、まだ走っていた。
脚はずっと痛い。
休みたい。
止めたい。
それなのに、心がまだ、走りたがっているから。
「ゴールしてもなお、走り続ける。これが先頭至上主義、これが逃げ馬。美しき逃亡者、サンジェニュイン……──!」
今日、負けたわけでもないのに込み上げてきた涙は、不思議といつもより、傷に沁みた。
クラシックシーズンはこれで終わりだが作品は完結ではない!!(確信)
次回、ウマ娘回!
その次に掲示板回と裏・菊花賞を挟んで2005年シーズンも終わりに向かっていきます。
引き続き応援、よろしくナス!
サンジェニュイン 牡 3
二冠馬になった
初めての長距離なのに1000m 58秒台で他馬のペースをめちゃくちゃにした馬
そんな逃げで大丈夫か?
大丈夫だ、問題ない(実際は割とギリギリだった)
ディープさん相手にお前に傷を刻んでやったぞ!した
実況によりその美貌が全国に知れ渡るウッマ
ディープインパクトさん 牡 3
2度目の敗北で何かに目覚めてる
2000m の感覚で走ってたら3000m だった、ということに途中から気づいたのにすごい追い上げてきた怖い
初期からの登場馬にもかかわらず30話を経て初発声
刻まれた傷の名前は【サンジェニュイン】
史実よりさらに強くなってる(確信)
芝木くん ヒト族 男
フルネーム:芝木
実況者:そんな逃げで大丈夫か?
芝木 :大丈夫だ、問題ない(ほんとに問題なかった)
竹さん ヒト族 男
息が合うせいで上がってくるタイミングを読まれてしまったが、
サンジェニュインが坂を一気に登ろうとすることをこちらも読んでいた
君たち気が合うね
テキ ヒト族 男
雨乞いしたけど叶わず
でも良馬場で走れないわけじゃないからな!!と思いながらレースに挑んだ
1000m 58秒台だしたときは失神しかけた(そこまで逃げろとは言ってない)
目黒さん ヒト族 男
うわあ、よく走るなあ、と思ってた
帰厩したら山ほど林檎を用意してくれる
今回参照した資料
・第66回菊花賞 - Wikipedia
・netkeiba.com の第66回菊花賞の通過順位、タイム、動画
https://db.netkeiba.com/race/200508040611/
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side:ウマ娘 ー Ep.6
ハムスターとサンジェニュインとレース(の出だし)
「んゃっぴ……うおっ」
目が覚めたらベッドじゃなくて床だった。
「あー……なんか、久しぶりに夢みたからかな」
競走馬だった頃の夢。
もう30年以上も前の記憶だ。
3歳の秋、菊花賞、GⅠではじめてアイツに先着したときの。
「っていうか、こういうのって菊花賞の前とかに見る夢なんじゃないのか?こう、戦いの前のセンチメンタルなやつで……ウマ娘としての菊花賞からもう2年以上経ってるんだが」
ふあ、と短く欠伸をする。
時計を見ると、いつもの時間まで残り30分。
寝癖のついた髪の毛を手ぐしで梳かしつつ、ベッドの方を振り返った。
「朝からうるさくしてごめんな、しろまる」
まったくだぜ、と言いたげに、丸くてふわふわとした生き物がケージの扉を叩く。
白い毛並みに、おおきくてつぶらな瞳。
片の手のひら、に乗り切れないレベルで大きいこの生き物、一応ハムスターだ。
といっても100人に聞いたら100人が「ハムスター?」と首を傾げるくらい大きすぎるわけだが。
早くしろ、とバンバン扉を叩くので、またひとつ謝って棚に手を伸ばす。
おっと、その前にリストを確認しないとな。
壁に貼られた「飼育リスト」を確認する。
そこには朝、昼、夜にわけて、最低限やるべきお世話と、その道具の置き場所が書いてある。
この棚には数種類の餌が入っていて、しろまるの調子や機嫌によって出す餌を変えているのだ。
こいつ、かなりの偏食なので、普通のペットショップで売っているハムスター用の餌は食べてくれない。
エキゾチックアニマル専門店で取り寄せたいい値段のするミルワームや、ちょっとお高いひまわりの種、ゼロの桁数が普通より2つ多い値段のペレットを出している。
下手すると飼い主であるオレよりもいいものを食べている時があるが、食べないよりはマシ。
「おお、いい食いっぷりだな」
いま食わないと死ぬ、というレベルで必死に餌を頬袋に詰め込むしろまる。
誰も取ったりしないのに、ハムスターの本能だろうか。
このしろまるとオレの出会いは約2ヶ月前。
海外遠征を終えて帰国したとき、たまたま立ち寄ったペットショップだ。
はっきりと言うと、一目惚れだった。
まるまるとしたボディ。
白い毛並み。
黒い瞳。
そして、ほかの同年代のハムスターを押しつぶすふてぶてしさ。
こいつを飼いたいな、と思った。
ハムスターは他のペットと比べるととても安価で、その時の持ち合わせでも即決できる値段だった。
でも、オレがしろまるを迎えに行ったのは、一目惚れしてから1週間後。
なんで1週間も掛かったのかというと、忙しかったから、というわけでもなく。
ほんとうに飼うかどうか、めちゃくちゃ悩んだからだ。
自慢では無いが、オレは自分の世話もできないポンコツなのだ。
……マジで自慢にならなくて泣きそうだな。
どれくらいポンコツかというと、まず、料理がまったくできない。
レシピさえあればどうにかなるかと思ったが、包丁も上手く持てないし、火加減はミスる。
電子レンジをうっかり壊してしまったこともある。
米は炊けるけど、無洗米に水入れてスイッチオン、の作業を料理と呼ぶのは各方面からボコボコにされそうなので言わない。
荷物の整理整頓をしよう、と思えば「でもどこにあるか大体覚えてるしいいかあ」と思って続けられないし。
床に落ちてるものはいったんベッドに置いとけばいいか、と思ってしまう。
自覚しているのに、改善を試みても途中で諦める、典型的な私生活ダメダメ野郎なのだ。
とくに食事は死活問題なので、下手すれば命ごと堕落しそうなレベル。
料理も片付けもできなくてどうやって寮生活ができているんだ、という話だが、オレには幸運なことに、オレの命を救うことに躊躇いのない親友がいた。
そう、カネヒキリくんだ。
今でも覚えている。
トレセンに入ったばかりのころ、食事にイロイロ盛られてから食堂が利用できず、実家からの仕送り栄養バーで凌いでいたころ。
指を傷だらけにしたカネヒキリくんが作ってくれた朝食。
めちゃくちゃ美味しかった。
ひさびさに温かいご飯を食べた。
単純に作り立てだから、じゃなくて。
カネヒキリくんが、慣れない手つきで、それでもオレのためにと作ってくれたごはんが温かくて美味しかった。
他人の世話を焼くのって並大抵のことじゃできない。
いくらオレとカネヒキリくんが竹バのずっ友とは言え、オレの世話を焼く義務などないのだから。
それでもあの日から毎食、カネヒキリくんはオレのためにご飯を作ってくれる。
世話を焼かなくてもいいはずなのに、むしろオレのケツ叩いて自立しろって言ってもおかしくないのに、毎日。
カネヒキリくんがオレに与えてくれるものを、オレも返したくて少しずつ、練習した。
トレセンに入る前よりは、できることも増えた。
相変わらず料理はできないけど、炊飯器にホットケーキミックス流してクソデカパンケーキなら作れるようになったし。
電子レンジも爆発しなくなったし。
洗濯はまだ難しいけど、皿洗いは得意。
風呂掃除もできるようになった。
整理整頓はやっぱり苦手だけど。
前より成長したとは言え、それでもやっぱり、カネヒキリくんがオレに与えてくれるものには及ばない気がする。
あの、心を込めたモノには。
そんなオレが、カネヒキリくんがしてくれるようなことを、しろまるにできるだろうか。
どんなに安価で手に入るとはいえ、しろまるも生き物だ。
自分の世話もできないポンコツに飼育されて、はたしてしろまるのハム生は幸せなのか。
もしオレがハムスターで、飼い主がポンコツだったら嫌だ。
じゃあ、飼うのはやめるか、とすっぱり決めることすらもできない。
そんなオレを助けてくれたのも、カネヒキリくんだ。
「予定表を作ればいい。朝はこれをする、昼はこれ、夜はこれ。毎日、やることをリスト化して目に見える場所に置く。……私は直接手伝わないが、サンジェニュインが忘れているときは教えよう」
そう言って、2人で作ったハムスター飼育リスト。
今、しろまるのケージがある壁に貼られているリストが、それだ。
また、困っているときにカネヒキリくんが助けてくれた。
やはりカネヒキリくん、カネヒキリくんはすべてを解決する!
……本当はオレ自身が全部決めなきゃいけないことなんだけどな。
結局また助けて貰っちゃった、とオレが落ち込んでいると、カネヒキリくんが少し困った顔をした。
「べつに、全部ひとりでできるようになることが、一人前の条件じゃ無い」
言葉があるのは、相談するためで。
耳があるのは、その言葉を聞くためで。
目があるのは、その表情を見逃さないためで。
腕が2本あるのは、助け合うためで。
脚が2本あるのは、一緒に歩くためだから。
「力になりたいから、側にいる」
オレは、俺は、このカネヒキリくんの躊躇いのない優しさが、ずっとずーっと、前から好きだ。
しろまるに一目惚れしてから1週間後。
今度はカネヒキリくんと一緒に迎えに行った。
もしかしたらもう誰かに貰われてるかも、と思いながらペットショップに行くと、しろまるだけがそこにいた。
あの日、しろまるが押しつぶしていた他のハムスターたちはみんな貰われていって、ただ1匹、ふてぶてしく餌皿に座るしろまるだけが残っていた。
「この大きさでしょう。並のハムスターよりもズバ抜けて大きいから、なかなかね」
苦笑いを浮かべるペットショップの店長に、必要な道具を教えてもらいながらその場でそろえた。
ケージに、餌皿に、回し車に、砂浴び用のペットハウス。
ふっかふかの床材に、遊び道具。
一般的なペットフードに、冬だったからハムスター用のヒーター。
カネヒキリくんと一緒に荷物を運んで、しろまるは、その日からオレの部屋で生きていくことになった。
「……あ、いけねっ!オレもご飯の時間だ!」
時計をみて、慌てて餌の入った袋を棚に戻した。
給水器の古い水を捨てて、新しく入れたカルキ抜きをした水に栄養液を混ぜる。
何度か飲み口を押して、ちゃんと水が出てくることを確認してセット。
よし、これで朝やることは完了した!
「……サンジェニュイン、おはよう。もう着替えはすんでいるか」
オレとカネヒキリくんの部屋の間にある扉がノックされる。
何かあったときのために、と理事長がわざわざ作ってくれたやつだ。
「お!おはよー、カネヒキリくん!ちょい待って!オレまだ下着!」
「した……ッ扉の鍵は、ちゃんと掛けるように」
外の方は掛けてるよ。
でもこっちの方は別によくないか?
カネヒキリくんも掛けないじゃんね。
と思ったが言わず、着替えの方が優先なのでパパッと着替える。
下着は学校用に使っているものじゃなくて、たゆんたゆんにならないようにがっちり止めてくれるスポーツ用のやつ。
今日は久々のレースなのだ。
「もういいぞ!」
「……ああ、おはよう、サンジェニュイン」
「うん、おはよー!」
カネヒキリくんが机に並べてくれる朝食はだいたい毎日同じやつだ。
甘めの玉子焼き、味噌汁、ソーセージと厚切りのベーコン、それから酢の物。
ご飯だけはオレが炊いたヤツ。
「畜生丸ももう起きてたのか」
「うん、しろまるな!どうしてこう、カネヒキリくんもヴァーミリアンも『畜生丸』って呼ぶんだよ」
カネヒキリくんがケージ前に現れると、溺れるレベルで水を飲んでいたしろまるが動きを止める。
そのままにらみ合う1匹と1人。
どうも相性が良くないらしい。
迎えに行った日はそうでもなかっただろ。
なんでだよ。
「すまない。なんというか……許せなくて」
「なにが!?」
穏健が人の形を取ったようなカネヒキリくんが許せないって、それ相当では?
いったいしろまるの何がカネヒキリくんの逆鱗に触れたんだ。
気になったけど、それよりもお腹が減ったので食べることにした。
レース場への移動時間もあるので、実はゆっくりしている場合でもないのだ。
「カネヒキリくん今日もありがとう!いただきます!」
美味しい、美味しい、とひたすら言いながら食べる。
マジで美味い。
これは金が取れるレベル。
カネヒキリくんが店を開いたら毎日食べに行くよ!
「今日は東京レース場だったか」
「んぐ……うん、国際レースね……むぐ……あふぁらひいやふ」
「飲み込んでからにしろ」
今日、オレが出走するレースは新設されたばかりのレースだ。
国際グレードⅠ ジャパンロイヤルターフ
東京レース場の芝2400メートル、左回り。
去年新設されたばかりの「ワールドロイヤルカップ」という国際レースのうち、「ワールドロイヤルターフ」のトライアルに設定されている。
出走条件は過去1年以内に海外GⅠを3勝以上していること。
外国ウマ娘の出走可で、開催国のウマ娘に限り海外経験がなくても国内GⅠを3勝しているウマ娘が1人まで出走できる。
オレは、このレースの「海外GⅠを3勝以上している」をクリア済みだ。
コレに勝てば、8月にイギリスで開かれるワールドロイヤルターフの優先出走権が得られる。
他にも去年のBCターフ、インターナショナルS、凱旋門賞の勝ちウマ娘にも準出走権が与えられる仕組みになっていた。
オレは凱旋門賞を勝っているため、準出走権を既に得ているが、トライアルレースで得られる出走権よりは優先度が低い。
だからここを勝って優先度を上げる必要がある!
「去年のBCターフの優勝ウマ娘とか、今年の英ダービーのウマ娘とかもこのトライアルを使うらしいから楽しみだ!」
最後の一口を味噌汁で飲み込む。
走ることはいつだって楽しい。
道中、苦しいことも多いけど。
その分だけ、逃げ切ったときの喜びは大きい。
「カネヒキリくん、今日もオレ、頑張るよ!」
そう言って笑ったら、カネヒキリくんが胸を押さえて倒れた。
「か、カネヒキリくん……──!?!?」
めちゃくちゃ救急車呼んだ。
めちゃくちゃ怒られた。
「さあいよいよこの時がやって参りました。GⅠジャパンロイヤルターフ。会場はココ、東京レース場の芝2400メートル、左回り。世界各国から我こそはと優秀なウマ娘が集まっています。注目されていたディープインパクトはこのレースを回避。日本から出走するウマ娘は2人に絞られました。まずはこの
きらびやかな勝負服に身を包んで、18人のウマ娘が並んでいた。
「圧倒的1番人気。凱旋門賞連覇のウマ娘。我が国の太陽、サンジェニュイン」
「自信に満ちた表情です。調子も良いですね、間違いなく優勝候補筆頭でしょう」
「日本で走るのは久々ですが……それについてはどうでしょうか」
「そうですねえ。馬場は荒れていた方がこの
純白の衣装に身を包んだそのウマ娘は、観客のみならず、そのほかのウマ娘の視線さえも奪って止まない。
その存在感、姿、形、目を瞬かせる瞬間さえも、息を飲むほど美しい。
吹き抜ける風すら、その娘のために吹いているように思えた。
「日本からはもう1人、出走します。現在6番人気── スペシャルウィーク」
「ダービー、天皇賞・秋、ジャパンカップの優勝経験があるウマ娘ですね。海外レースの経験はありませんが、なくて6番人気はかなり期待されている証拠です」
「今回はサンジェニュインの背を見る形となりますが、得意の先行差し脚で大波乱起こせるでしょうか」
緊張をしているのか、拳を握るそのウマ娘は、しかし視線だけは前を見たまま逸らさない。
その先にいるのは── サンジェニュイン。
「2番人気はアメリカで最も勢いのあるウマ娘。BCターフの覇者・レッドロックスが堂々の登場です。サンジェニュイン同様、すでに準優先出走権を得ている彼女の出走理由はずばりサンジェニュイン。その背を超すために来たのだと語りました」
「一番の難敵ですよ。鋭い末脚に要注意ですね」
1人、また1人とウマ娘たちがゲート入りする。
狭まった視界で、見据えるのは、白。
ただそれだけ。
「態勢整いました── ジャパンロイヤルターフ。スタート!」
そして、17人のウマ娘の前で、白い翼が広がった。
明日(今日)の20-24時の間でもう1話投稿あります。
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閑話 掲示板回 Ep-4
数分は誤差(土下座)
特殊タグいじってたら過ぎてた……
すまないお詫びに明日2話更新します
※掲示板内の誤字は誤字じゃ無いです
期待の逃亡者・サンジェニュインに夢を見るスレ part.19
1:夢見るギャンブラーナナシ ID:uwbuObRNM
タイトルの通り、2004年デビューの3歳牡馬・サンジェニュインに夢を見るスレです
馬券を握ってないやつ、馬券を捨てたやつは書き込む資格ナシ
サンジェニュインにまったく関係がない話題はNG
以下ノータッチリスト
・アンチ
・荒し
・荒しに触るやつ
前スレ 期待の逃亡者・サンジェニュインに夢を見るスレ part.18
他の馬の話は個別スレにイケ
※他スレでサンジェニュイン最強の話題だすと過激派がキレるので注意されたし
近代競馬の至宝・ディープインパクトを語るスレ 31
最強の逃亡者はサイレンススズカで決まり 59
ツインターボに活躍馬がいたらどんな馬か考えるスレ 24
やっぱりカブラヤオー思い出雑談 11
・
・
・
351:夢見るギャンブラーナナシ ID:uwbuObRNM
はい、神戸当日
352:夢見るギャンブラーナナシ ID:c7I7QZnL4
ダービーからもう4ヶ月近くか
353:夢見るギャンブラーナナシ ID:PcVF9wx5e
ダービーでサンジェニュイン泣かなかったからって世間様は騒ぎすぎwww
354:夢見るギャンブラーナナシ ID:tvyAUb7Ll
『燃え尽きた』とか新聞で書かれてたときは思わず笑っちまった
355:夢見るギャンブラーナナシ ID:Ich01kOSz
まんまるい目ん玉を三角につり上げてディープ睨み付けてた顔が『燃え尽きた』とかもしかして日本語喋ってない説
356:夢見るギャンブラーナナシ ID:4KrwkUB4i
貴重なキレ顔サンジェニュインだぞ、拝んどけ
357:夢見るギャンブラーナナシ ID:hp9+nCIjI
でもぶっちゃけ、格付けは済んでるよな?ww
358:夢見るギャンブラーナナシ ID:hGBXdLO5I
お、出たな格付けマン
359:夢見るギャンブラーナナシ ID:sfLR8JUYl
ディープ厨さん、格付けしか話題にできないのかわいそう……
360:夢見るギャンブラーナナシ ID:3BeSuLB5v
しゃーない
抜群の出だしキメられて、終盤の終盤まで差し合いした1cmを『大差』って言っちまうやつらだからそれ以外言うことがない
361:夢見るギャンブラーナナシ ID:FYJ9pNmgZ
日本ダービーのサンジェニュインの大逃げは完璧だった
しかし1cmといえども負けは負け
あの瞬間はディープが勝ってたってだけ
素直にディープすごい、とは思ったが、これが『もっとも運のある馬が勝つ』ってことかと思いましたね
362:夢見るギャンブラーナナシ ID:LiIBK+XdJ
マジで1cmとかサンジェニュイン陣営からしたら誤差も誤差
363:夢見るギャンブラーナナシ ID:ThTEHbNP3
まあ、競馬は結果がすべてだから……
でもアレでサンジェニュインの強さに確信が持てたので馬券は捨てません
364:夢見るギャンブラーナナシ ID:X0NIP+Wy2
サンジェニュイン泣かなくてエライ
365:夢見るギャンブラーナナシ ID:5N2wULF3l
帰るときの脚もしっかりしてたし、オフィシャルのブログを見てめちゃめちゃ元気ってわかってるしな
366:夢見るギャンブラーナナシ ID:rj2nnuJt6
逆にレース後のディープがサンジェ相手に後退ったのを見ると逆な気もするわww
367:夢見るギャンブラーナナシ ID:rw+Xxtu5i
煮込んだディープ厨さんの『格付けガー』は聞き飽きたので今回の神戸でサンジェニュインには頑張って欲しいわ
368:夢見るギャンブラーナナシ ID:b4eG1NTeS
でもいけるか?
鞍上シバタケから変わったじゃん
369:夢見るギャンブラーナナシ ID:MKnq7uYiV
芝木だしいけるでしょ
370:夢見るギャンブラーナナシ ID:qb1XfjmML
サンは賢いぶん神経質っぽそうだから芝木に戻ったのは逆に良かったんじゃね?
371:夢見るギャンブラーナナシ ID:HDf4k/VJm
賢い……?
ゴール後も爆走するレース狂と賢いはイコールじゃないと思うが
372:夢見るギャンブラーナナシ ID:QD1D2LMOB
>>371 サンが爆走するのは追いかけられてるからなんだよなあ
373:夢見るギャンブラーナナシ ID:M892ncJvH
芝木から柴畑に乗り変わるときに慣らすのに3週間掛かるレベルには繊細やぞ
374:夢見るギャンブラーナナシ ID:6r0LDub2p
サンは芝木に懐いてるから今回の乗り替わりは問題ないやろ
ソースはnatkeiba.com のインタビュー記事
サンの管理調教師が「芝木に戻ったことでサンのテンションも上がってる」って言ってる
375:夢見るギャンブラーナナシ ID:Zo+Xqx6ss
っていうか弥生賞までのレースビデオ見ればわかるじゃんww
レース中もしゃべってんやぞアイツら
376:夢見るギャンブラーナナシ ID:WqK7Gjnes
芝木への乗り替わり発表より、その前に噂になってた竹が乗るやつのほうがインパクトでかくて正直ふーんって感じ
377:夢見るギャンブラーナナシ ID:JaVhkM5cS
竹だけはないやろwwwww
378:夢見るギャンブラーナナシ ID:4C3d7da59
このタイミングで竹がサンジェに乗り替わりとか競馬界が揺れる揺れる
379:夢見るギャンブラーナナシ ID:VDLVKODGT
三冠目前の馬とそのライバル馬
ギリギリでライバルの方に乗るってなったら今後のキャリアを棒に振るじゃ済まないレベル
380:夢見るギャンブラーナナシ ID:LITdTg9YJ
アレどこから出たデマなんだよ
381:夢見るギャンブラーナナシ ID:w1A2dWcbV
>>380 確か栗東関係者とか名乗るやつのリーク
382:夢見るギャンブラーナナシ ID:MnUejRukx
>>380 ディープスレの方で栗東所属を名乗るやつが書き込んだやつが発端やな
383:夢見るギャンブラーナナシ ID:xr63wDPvr
ぶっちゃけ信憑性も何も無いただの対立煽りなんだよなアレ
384:夢見るギャンブラーナナシ ID:7/IrkAqZH
暇人はこれだから……
385:夢見るギャンブラーナナシ ID:foYDmz3VP
お、テレビに神戸映ったぞ
386:夢見るギャンブラーナナシ ID:Y92MpdciV
時間じゃん
お前らちゃんと録画しとけよ~
387:夢見るギャンブラーナナシ ID:Gjlv4oEYc
どうせ大接戦でまたDVD回して確認するからな
388:夢見るギャンブラーナナシ ID:sN5T0jTq9
VHS主流おれ、テープが絡まって録画できない
389:夢見るギャンブラーナナシ ID:ZLk7XGrVD
>>389 だからDVDに変えろとあれほど……
390:夢見るギャンブラーナナシ ID:09R8SGejU
馬場発表変わったな
良から稍重になってる
391:夢見るギャンブラーナナシ ID:TJykaiKsB
ほんとだ
392:夢見るギャンブラーナナシ ID:5ZQKAlYXY
サンジェニュインもディープインパクトも稍重は初じゃね?
393:夢見るギャンブラーナナシ ID:lnNUfrqp2
初だよ
394:夢見るギャンブラーナナシ ID:PlQ99Pd5Y
こりゃどうなるかな
アナウンサーも言ってるけどこれ、ひょっとしたらアドジャとかがぶっ込んでくるかもなww
395:夢見るギャンブラーナナシ ID:lhLDl/Di2
そうなったらもう勇者だよ
396:夢見るギャンブラーナナシ ID:PyT5H88j2
んー、サンジェニュインは踏み込みがめちゃくちゃ重いから稍重でも走れそう
397:夢見るギャンブラーナナシ ID:5GfrvfHfZ
>>396 同意
398:夢見るギャンブラーナナシ ID:514Q3JKb+
サン、今回も別周で笑った
399:夢見るギャンブラーナナシ ID:9wJ4LY4uA
別周じゃない時がない
400:夢見るギャンブラーナナシ ID:92wncEgY3
パドックだとダントツの見映えの良さ
401:夢見るギャンブラーナナシ ID:pnJKGwQdK
走ってるときもダントツの見映えの良さだろーが
402:夢見るギャンブラーナナシ ID:VSCPi8IAv
相変わらず目黒さんがしゃべり掛けてんな
403:夢見るギャンブラーナナシ ID:QB6FCk/8q
アレじゃサンジェが集中できなくね?
404:夢見るギャンブラーナナシ ID:Hgg4imeHK
>>403 逆
観客の方に意識が向かないように目黒さんが話続けてる
405:夢見るギャンブラーナナシ ID:0TRcC1+3J
サンジェニュイン、めちゃくちゃ人が好きらしくて、特に自分の世話をしている人間ははっきり区別がついてるらしいぞ
目黒さんとか、ほとんど四六時中一緒だからベッタベタに懐いてる
406:夢見るギャンブラーナナシ ID:JwRHSw/yP
負けて泣いてるときとかいつも目黒さんの胸に顔を押しつけてるもんな
407:夢見るギャンブラーナナシ ID:J5fDt3vL/
なあお前ら三連単組んだ?
408:夢見るギャンブラーナナシ ID:t7j7oJV+U
単推し
409:夢見るギャンブラーナナシ ID:E8z+lQGxm
サンジェ-ディープ-シックスセンス
410:夢見るギャンブラーナナシ ID:Cb37qtChg
このスレに書き込んでるやつでサンを1着に置いてないやつはいない説
411:夢見るギャンブラーナナシ ID:4/XIXj8O1
サン-ディープは接続で、問題は3着だろ >三連単
412:夢見るギャンブラーナナシ ID:CaahkwnAr
シックスセンス有力かな、アドジャは不安がある
413:夢見るギャンブラーナナシ ID:ztgQD0lsJ
オレはむしろアドマイヤジャパン来ると思ってる
体力さえ持てば最初から先行なんだから3着には食い込めそう
414:夢見るギャンブラーナナシ ID:w3X7tU2Eh
戦績だけみるとストーミーカフェかな
ただこいつとサンは初戦だから早々にサンのペースにハマって馬券まで上がって来れなさそう
415:夢見るギャンブラーナナシ ID:qynl8rOHx
サンが大逃げの前提でワロタ
416:夢見るギャンブラーナナシ ID:21Apq3Ljm
むしろ大逃げしないと思ってるんですか……?
417:夢見るギャンブラーナナシ ID:jxVHF5taM
大逃げしない選択肢がないだろ
418:夢見るギャンブラーナナシ ID:vLwVzhEBl
最後まで逃げを貫いて欲しいのが本音
419:夢見るギャンブラーナナシ ID:6sepU8ong
返し馬はいるぞー
420:夢見るギャンブラーナナシ ID:r+bbcc8/m
シバキ、顔デレッデレじゃんwwww
421:夢見るギャンブラーナナシ ID:Y0m10BirL
これがレース前の騎手インタビューで仏頂面かましてた男と同一人物……?
422:夢見るギャンブラーナナシ ID:1aTVlDKAK
芝木のメディアへの塩対応はなんなん?ww
423:夢見るギャンブラーナナシ ID:Ukq0q2M28
あれは記者の質問が的外れだったから
424:夢見るギャンブラーナナシ ID:LvCX+jJK9
「もう誰にも負けません。サンジェニュインは、勝ちます」
かっこよすぎて惚れた
425:夢見るギャンブラーナナシ ID:xMMLTskC/
>>424 ホ……?
426:夢見るギャンブラーナナシ ID:KeanZo3XO
実際に芝木は格好良いからな
騎手じゃなかったらモデルで食って行けたろ
427:夢見るギャンブラーナナシ ID:9vTEGUYj1
騎手学校入る前に芸能事務所にスカウトされてたけど蹴ったエピすき
428:夢見るギャンブラーナナシ ID:ZYRoNMpd4
デビューしたばっかりの時も「イケメン騎手」「格好良すぎるジョッキー」とかで持て囃されて、騎乗技術に関係ない質問ばかりされるようになったからメディアへの対応が塩なんやぞ
429:夢見るギャンブラーナナシ ID:cRrsNovCy
へー、そうなんだ
430:夢見るギャンブラーナナシ ID:Hzxvk02xs
>>428 ソースは?
431:夢見るギャンブラーナナシ ID: ZYRoNMpd4
>>430 ggrks
『優駿たち』2004年11月号でも読んでろ
432:夢見るギャンブラーナナシ ID:q9I0kAACb
なんかサンジェニュイン、様子おかしくね?
433:夢見るギャンブラーナナシ ID:/TjqUisg3
やばいやばいやばい
434:夢見るギャンブラーナナシ ID:PBnUsQHFf
ええ待って待って
435:夢見るギャンブラーナナシ ID:CqCVGcpt/
テープ絡まってテレビも映んなくなったオレに慈悲を
436:夢見るギャンブラーナナシ ID:5ULoVuPxB
>>435 サンジェが片脚あげたまま止まってる
437:夢見るギャンブラーナナシ ID:lqLVBagvb
故障か?
438:夢見るギャンブラーナナシ ID:B3nOT6/96
勘弁して、また故障で愛馬を失うとか辛すぎる
439:夢見るギャンブラーナナシ ID:w2APnRLAG
いや待てお前ら、違うっぽい
440:夢見るギャンブラーナナシ ID:n/esRjeEi
ちょ、普通に走り出したwwwwwwww
441:夢見るギャンブラーナナシ ID:0uBsTLFia
鞍上の芝木の方が焦ってて笑う
442:夢見るギャンブラーナナシ ID:Avrz07KbE
弥生賞の時と言い、騎手をめちゃめちゃ焦らせる天才か?
443:夢見るギャンブラーナナシ ID:EVBZ7uyow
弥生賞のはわざとじゃなかったろww
444:夢見るギャンブラーナナシ ID:fRzb8504A
っていうか思ったより稍重でも平気そうだな
445:夢見るギャンブラーナナシ ID:Yw1xmi0K5
ぽんぽん飛び始めたぞ
446:夢見るギャンブラーナナシ ID:xXL9s3Q8m
芝木めっちゃ揺れてるwwwww
447:夢見るギャンブラーナナシ ID:KI5+JJy8o
ロデオかな?
448:夢見るギャンブラーナナシ ID:IY6gt55HQ
今までにない奇行でオッズがww
449:夢見るギャンブラーナナシ ID:g24EoCASh
馬鹿め、今までにないおかしさだからこそ買うんだよ!
単勝に50万ぶっこんできた
450:夢見るギャンブラーナナシ ID:av/4LwJOJ
>>449 ばか?????
451:夢見るギャンブラーナナシ ID:YCYmYz1Vw
>>449 突然金銭感覚なくすな
452:夢見るギャンブラーナナシ ID:ckVhdGbqm
まあサンジェニュインに夢を見るスレだからな、その行動もおかしくはない
ちょっと夢を見過ぎな桁だけど
453:夢見るギャンブラーナナシ ID:OpY54lEMI
逆に考えるんだ
サンジェニュインが勝てば何も失うモノはない
454:夢見るギャンブラーナナシ ID://Tdl4xd6
>>453 サンジェニュインに勝ってに背負わせるなww
455:夢見るギャンブラーナナシ ID:7BxJBcY4L
ゲート入り始まった
456:夢見るギャンブラーナナシ ID:3AkZKnk6S
サンジェニュインまだテンション高いなw
457:夢見るギャンブラーナナシ ID:xFs3i3WKA
まーた他馬に絡まれてら
458:夢見るギャンブラーナナシ ID:XIGqNHbI1
顔がいいからしゃーない
459:夢見るギャンブラーナナシ ID:SIIWEkdLP
何度見ても頭おかしくなるけどそうだよな、顔がいいからしゃーない
460:夢見るギャンブラーナナシ ID:GKlsZU3GM
今日の枠、大外か
461:夢見るギャンブラーナナシ ID:sRqB3ahBq
>>460 問題ない、サンジェニュインはどこからスタートしてもハナで突っ切ってくれる
462:夢見るギャンブラーナナシ ID:d54JVRAde
ハナを取ることへの信頼しかないんだよな
463:夢見るギャンブラーナナシ ID:3fDGyl16g
そろそろ
464:夢見るギャンブラーナナシ ID:niLirDGqH
待機
465:夢見るギャンブラーナナシ ID:1xuIr1juK
きた
466:夢見るギャンブラーナナシ ID:NpDVDaHVk
あー、抜群の出だし
467:夢見るギャンブラーナナシ ID:m50ILbKbG
早くね?
468:夢見るギャンブラーナナシ ID:HeNTV06nS
くっっっっっそ早いなwwwwwww
469:夢見るギャンブラーナナシ ID:lCKVPQ2GM
初めての稍重で逃げブースト掛かるウッマ
470:夢見るギャンブラーナナシ ID:SdFdRjUnu
10馬身差以上ついてるwwww
471:夢見るギャンブラーナナシ ID:lnjqPmECC
いけるのコレ?
芝木やっちゃったんじゃない??
472:夢見るギャンブラーナナシ ID:amKPJ6BFu
実況も「芝木勝負に出たか」って言ってるな
473:夢見るギャンブラーナナシ ID:2Fe1rLa72
474:夢見るギャンブラーナナシ ID:eiB+1Gid/
よく見たら芝木の口が動いてる
こんな時もおしゃべりすなwww
475:夢見るギャンブラーナナシ ID:eFsvW0jUR
すっげえスピード
476:夢見るギャンブラーナナシ ID:K8mguBYVr
おいおいおい、これ
477:夢見るギャンブラーナナシ ID:EpWfOuoP0
1000くるぞ
478:夢見るギャンブラーナナシ ID:KX84otWzK
は?
479:夢見るギャンブラーナナシ ID:UYaYBRTQM
やっばいwwwwwwww
480:夢見るギャンブラーナナシ ID:ntkfF7UeK
やりやがったなこいつ
481:夢見るギャンブラーナナシ ID:vIzmHqBoi
あーwwww
482:夢見るギャンブラーナナシ ID:TWCLkw5R/
【速報】サンジェニュイン、1000m 57秒台
483:夢見るギャンブラーナナシ ID:Cic8Sq8Jf
>>482 はっや
484:夢見るギャンブラーナナシ ID:BslxJKJ5h
>>482 とんでもないタイムを刻んでる
485:夢見るギャンブラーナナシ ID:3OiriwAuv
>>382 実況が心配してるなww
486:夢見るギャンブラーナナシ ID:jVx8QU1IA
コレマジでレコード
487:夢見るギャンブラーナナシ ID:AMiPW2rdw
えっいくか?
488:夢見るギャンブラーナナシ ID:aLN/5XBJk
まじか
489:夢見るギャンブラーナナシ ID:vvdPw3rXP
あ
490:夢見るギャンブラーナナシ ID:jd+xV5WuW
えこれ
491:夢見るギャンブラーナナシ ID:F+1e32uO2
いけるいけるいける
492:夢見るギャンブラーナナシ ID:OkAdgLSEa
レコード勝ち
493:夢見るギャンブラーナナシ ID:GeXrMOkCU
もうこれディープ無理だろ
494:夢見るギャンブラーナナシ ID:8hGBcLoM0
行くわ
495:夢見るギャンブラーナナシ ID:gpaSspz+S
でぃーぷでてきた
496:夢見るギャンブラーナナシ ID:gOMY+X0AO
いやでも
497:夢見るギャンブラーナナシ ID:xeIKUqHtn
あっやったなこれ!!!!
498:夢見るギャンブラーナナシ ID:RIUy114uH
200
499:夢見るギャンブラーナナシ ID:F2otwUWSv
もう決まったわ
500:夢見るギャンブラーナナシ ID:GjuKfH+1s
あああああlきた!+
501:夢見るギャンブラーナナシ ID:0FKkBZiB4
きたああああ
502:夢見るギャンブラーナナシ ID:SbokjyAh8
先着
503:夢見るギャンブラーナナシ ID:Eq1NShI7c
ディープにせんちゃっく
504:夢見るギャンブラーナナシ ID:+GXk54hZA
買った
505:夢見るギャンブラーナナシ ID:FUUmsJ7OP
レコード勝ち!!!!!!
506:夢見るギャンブラーナナシ ID:2asXIj385
おいおいおいwwwww
507:夢見るギャンブラーナナシ ID:pOcmc5gWU
走破タイム1分57秒でトウショウボーイのレコードを1.9秒更新だってよ
508:夢見るギャンブラーナナシ ID:AQ/hsuynb
>>507 バケモンか????
509:夢見るギャンブラーナナシ ID:hoLiAN+rT
早さが段違い
510:夢見るギャンブラーナナシ ID:IvQPKrlZp
この脚をダービーで見せろよ!!!!
511:夢見るギャンブラーナナシ ID:ewyr5MNpv
ダービーで負けたからこの脚なんだろ
512:夢見るギャンブラーナナシ ID:fwUiPnuvx
完璧な大逃げじゃん
513:夢見るギャンブラーナナシ ID:aqPtqBOmB
ほんっとに影も踏まさずに逃げ切ったな
514:夢見るギャンブラーナナシ ID:wZzZV+TGc
格付けが済んだ(笑)
515:夢見るギャンブラーナナシ ID:jkTsHffxV
自信満々にコレ言ってたコメンテーター、明日から大丈夫か?
516:夢見るギャンブラーナナシ ID:B4bA+Kgz8
もうコメンテーターとかどうでもいいわ
サンジェニュインおめでとおおおおおお!!!!!
517:夢見るギャンブラーナナシ ID:DX0WkMbrJ
サンジェは弱くない、負けっぱなしの馬じゃ無いってことを勝って証明してくれた
さんきゅーサンジェ、これからもお前の馬券を買うよ
518:夢見るギャンブラーナナシ ID:uASo3PUfE
単勝50万のちゃんねらー、生きてる?
519:夢見るギャンブラーナナシ ID:RiFN/C6BV
そういや50万賭けたやついたな
520:夢見るギャンブラーナナシ ID:8YtTfk4Ln
もううはうはでしょ
521:夢見るギャンブラーナナシ ID:cmBljbUqT
追いかけ回されるサンジェニュイン久々に見た
522:夢見るギャンブラーナナシ ID:V6PcqkEN7
かわいそうだけどホッとする
523:夢見るギャンブラーナナシ ID:j6IctINDm
芝木めちゃめちゃ笑ってて涙出てきた
524:夢見るギャンブラーナナシ ID:/2wjuD9a3
57秒台のスピードにしがみついて手綱を放さなかった芝木もあっぱれだよ
525:夢見るギャンブラーナナシ ID: g24EoCASh
50万賭けたワイ、サンジェに賭けた記念の馬券を取りたい気持ちと戦ってる
526:夢見るギャンブラーナナシ ID:+3u1aRSkf
>>525 とっとと換金してその全額を菊花賞に賭けるんだよ
527:夢見るギャンブラーナナシ ID:boiNK2+9p
>>526 悪魔の囁きやめえやww
528:夢見るギャンブラーナナシ ID:jEyAGaMGM
いやーでも完璧だったな
529:夢見るギャンブラーナナシ ID:9WbiwztRS
もう完璧としか言えん
サンジェを信じて手綱を握った芝木、ここまでサンジェを仕上げた本原厩舎および関係者一同、最高
ありがとう
530:夢見るギャンブラーナナシ ID:nKSNEu0cc
ディープは稍重はじめてだったし、これサンジェはフロックかなあ
531:夢見るギャンブラーナナシ ID:a9K+hDr1/
>>530 サンジェも稍重は初めてなんだが?ww
532:夢見るギャンブラーナナシ ID:A7iniZu6Z
10馬身以上の差がフロックとか正気か?
533:夢見るギャンブラーナナシ ID:Ri4iDhDDR
やめろ触るな
これに構うヤツも荒し野郎だからな
534:夢見るギャンブラーナナシ ID:GmENa6yeW
わざわざ相手のスレにまで出てくるヤツはファンじゃない
対立煽り暇人野郎には無視がいちばん
535:夢見るギャンブラーナナシ ID:EX0bNi66r
本原調教師、にっこにこwww
536:夢見るギャンブラーナナシ ID:CQnM27sqC
ディープんとこの沼江センセが一番最初に握手しにいくの好きだわ
537:夢見るギャンブラーナナシ ID:HA5qK45DB
爽やかライバル関係はいいぞー
538:夢見るギャンブラーナナシ ID:m+9m86fn/
俺たちは馬券握ってるただのギャンブラーだけどギスギス栗東は求めてないからな
539:夢見るギャンブラーナナシ ID:LLw5aPi70
おお、芝木がカメラの前で珍しく笑ってる
540:夢見るギャンブラーナナシ ID:w3ddVheqF
「勝つ以外考えてないです」
当たり前の発言のはずなのに芝木が言うと映画の台詞みたいだなwww
541:夢見るギャンブラーナナシ ID:ILCa1dkFa
っはー、今日の酒は美味い
542:夢見るギャンブラーナナシ ID:Qjdd+Cv+c
もう菊花賞、こいつに全額賭けるってことでいいか
543:夢見るギャンブラーナナシ ID:kn5lEbT0k
>>542 1ヶ月分くらいは保険に残しとけ
544:夢見るギャンブラーナナシ ID:wS4F++C4a
スタミナは一切心配してないから菊花賞にぶちこむ
545:夢見るギャンブラーナナシ ID:DP3HawhSP
血統的には心配
同血統のジェニュインはマイラー寄りだし
546:夢見るギャンブラーナナシ ID:FaUcXMMK3
いやー、今回爆走してもゴール後元気に先頭切ってからかな
547:夢見るギャンブラーナナシ ID:zwqBtJfGd
DVDこれ何回でも見るわ
548:夢見るギャンブラーナナシ ID:2+BRx3xKD
スカッとしたいときに見るビデオ
549:夢見るギャンブラーナナシ ID:bmwwRCNwH
サンジェニュインを早熟駄馬と評した奴らが予想全部外しますように、って神に祈っとこ
550:夢見るギャンブラーナナシ ID:lwnxUfn2s
菊花賞、楽しみになってきた!
期待の逃亡者・サンジェニュインに夢を見るスレ part.25
709:夢見るギャンブラーナナシ ID:wiKY4ZOgx
クッソほどで荒れて気づけば25も終わりか
710:夢見るギャンブラーナナシ ID:FkkNlMt8k
お客様ワラワラきたからな
711:夢見るギャンブラーナナシ ID:xvjxaJPEh
対立煽り8割だから民度が低いのはうちとディープ沼ではなくその他という結果に
712:夢見るギャンブラーナナシ ID:PkfMjj6u5
暇は人をおかしくするんやなって
713:夢見るギャンブラーナナシ ID:spDpsOlMK
まあそんなことはどうでもいい
菊花賞だよ
714:夢見るギャンブラーナナシ ID:Cmj4ZWFdY
当日だね
715:夢見るギャンブラーナナシ ID:UqC932kEw
あれから考察班がいろいろ調べたりして出した結論が
【蹴り出しにパワーを使ってる可能性が高いから重馬場の方が走りやすい可能性】
716:夢見るギャンブラーナナシ ID:dF+hHcMN4
>>715 そうだった場合に菊花賞も稍重だったら勝ちじゃん、ってなったんだよな
717:夢見るギャンブラーナナシ ID:iS0OwMrrU
オレ、めっちゃてるてる坊主作ってさかさに吊した
718:夢見るギャンブラーナナシ ID:GdLuLpCbv
おれも
719:夢見るギャンブラーナナシ ID:ttgiEP+qh
俺もだけど今日、良馬場の発表だなwww
720:夢見るギャンブラーナナシ ID:B3GIJQAtL
ディープスレの方も晴れを願っててるてる坊主つるしたらしいからアッチに負けたかもしれん
721:夢見るギャンブラーナナシ ID:WWWW9eJei
>>720 重のサンジェと良のディープ
どこまでも正反対だなこの2頭
722:夢見るギャンブラーナナシ ID:TyBT8dvU2
ぶっちゃけ言うと世代が違えば良かったのに、って思ってる
723:夢見るギャンブラーナナシ ID:gVxubxY3z
>>722 わかる
724:夢見るギャンブラーナナシ ID:QOiPmRalZ
せめて1歳違いだったらな
725:夢見るギャンブラーナナシ ID:tpzQkPfz9
CBとルドルフが同世代になった地獄が現在
726:夢見るギャンブラーナナシ ID:y9SlEBjQD
たらればいってもしゃーない
727:夢見るギャンブラーナナシ ID:d36dGE2d2
木羽の記事読んだやついる?
728:夢見るギャンブラーナナシ ID:AjukBi91b
ゲート入りはじまったー
729:夢見るギャンブラーナナシ ID:51yw4F968
>>727 菊花賞直前のやつ?
730:夢見るギャンブラーナナシ ID:+VSjVVwBA
うすうすそうかもしれない、とは思ってたが木羽ガチでサンジェのファンだったのなww
731:夢見るギャンブラーナナシ ID:NsabdyQAg
>>729 そうそれ
>>730
「このレースの結果を指して、ディープインパクト号との間に格付けが済んだ、レース後によくある燃え尽き症候群だと、打ち合わせたように並べ立てる、評論などと名乗る感想文には辟易していた」
ここめっちゃすきwww
732:夢見るギャンブラーナナシ ID:LNaQeWzWd
木羽キレッキレじゃん
733:夢見るギャンブラーナナシ ID:R/iRij2yL
「評論などと名乗る感想文」
これわかるわ
734:夢見るギャンブラーナナシ ID:x/wAbJUAX
テレビに出てくる自称競馬ファンの芸能人、最悪すぎるからやめてほしいわ
735:夢見るギャンブラーナナシ ID:thsQ4K8Q1
木羽はまっとうな職を得た俺たちだからな
736:夢見るギャンブラーナナシ ID:eKiLo1JLA
世間様は勝ったサンジェニュインじゃなくてディープ持ち上げたりするし
737:夢見るギャンブラーナナシ ID:CqodiuLVI
一般メディアさんの見出しはクソを煮出したスープみたいなものって昔から言われてっから
738:夢見るギャンブラーナナシ ID:zaMzc/f3M
競馬しらんやつらからしたら数字デカい方がエライみたいなところあるじゃん
俺だって知らんスポーツの記事とか数字見て「へえそうなんだ」で終わりだし
今回は競馬っていうズッブズブに入れ込んでるジャンルだから最悪だなって思ってるけど
739:夢見るギャンブラーナナシ ID:bxBHw8Fzk
わかる
これがまったく知らんスポーツとかだったら俺もふーんって言って終わってた
740:夢見るギャンブラーナナシ ID:UI4t+HJE4
それはそれとしてクソだけどな
741:夢見るギャンブラーナナシ ID:dfYRNcSeQ
それはそう
742:夢見るギャンブラーナナシ ID:LOULZfrqW
ゲート入り終わったぞ
743:夢見るギャンブラーナナシ ID:bSPB6vki8
俺が走るわけじゃ無いのに緊張してきた
744:夢見るギャンブラーナナシ ID:gyTYbuVq3
神戸の全額サンジェニュインにつぎ込んだ
745:夢見るギャンブラーナナシ ID:l3TeEbN7o
>>744 50万ニキ!?!?
746:夢見るギャンブラーナナシ ID:lN91Ukwcr
全額のっけるなよ
747:夢見るギャンブラーナナシ ID:6/dBC0dFS
いや今回もサンジェニュインが勝てば問題ない
748:夢見るギャンブラーナナシ ID:GjGyduazQ
出た
749:夢見るギャンブラーナナシ ID:APfrE/ndU
始まったな
750:夢見るギャンブラーナナシ ID:UoKqc7DsK
うーーん相変わらずいい出だし
751:夢見るギャンブラーナナシ ID:yOst1hGuS
出遅れの心配ゼロ!
752:夢見るギャンブラーナナシ ID:LcJ/nVSe/
なお弥生賞
753:夢見るギャンブラーナナシ ID:UPgM28NhL
アレは外的要因があったからだし
754:夢見るギャンブラーナナシ ID:9GOP1TTpm
>>753 震えてそう
755:夢見るギャンブラーナナシ ID:dAYxI/+KZ
なんか今回もペースおかしくない?
756:夢見るギャンブラーナナシ ID:aCWBBr2oe
サンジェが早すぎる
757:夢見るギャンブラーナナシ ID:CP0XLIPl8
他の馬がサンのスピードにつられて上がってるなww
758:夢見るギャンブラーナナシ ID:Too/x/5a9
先頭を走ることで他馬を強制的に掛かり気味にして体力消費させる馬
759:夢見るギャンブラーナナシ ID:LLgQHZKj9
それにしたって早いわ
760:夢見るギャンブラーナナシ ID:V9QOst3bc
芝木もしかして距離間違えてない?
761:夢見るギャンブラーナナシ ID:3FKZcnveO
ちょ
762:夢見るギャンブラーナナシ ID:9RTs9Dshf
おいおいおいマジか
763:夢見るギャンブラーナナシ ID:GUfBfiprl
あーwwwwww
764:夢見るギャンブラーナナシ ID:lJVQT8JEa
1000m 58秒台で走ってるわこれ(困惑)
765:夢見るギャンブラーナナシ ID:IW8DTdoNr
>>764 は?
766:夢見るギャンブラーナナシ ID:/7Xaywmrv
>>764 3000mだぞコレwwww
767:夢見るギャンブラーナナシ ID:SnfKOQkhx
実況も心配してるな
「これは3000m だぞ大丈夫か」
って言われてる
768:夢見るギャンブラーナナシ ID:5rPgqCSM7
そらそうよ
769:夢見るギャンブラーナナシ ID:VHVVMRbrI
これ終盤まで持つのか?
770:夢見るギャンブラーナナシ ID:2nM+G7RY7
途中でバテそう
771:夢見るギャンブラーナナシ ID:f3XZPMvGB
逃げ切ったら伝説だぞ
772:夢見るギャンブラーナナシ ID:pDDYoCpuV
シャドウゲイト見切れてるじゃんww
773:夢見るギャンブラーナナシ ID:Rvgem8FKi
ひょっとしたらひょっとしそう
774:夢見るギャンブラーナナシ ID:heoolsNHP
てかディープいつもより前だな
775:夢見るギャンブラーナナシ ID:pcfi74h6Y
壁を作られるのが嫌だったんじゃねえの
776:夢見るギャンブラーナナシ ID:fipLimO0v
上がってきたわ
777:夢見るギャンブラーナナシ ID:WF2QeP6yu
ディープきた
778:夢見るギャンブラーナナシ ID:VjSc22G7g
この馬ほんと追い込んでくる脚が強いな
779:夢見るギャンブラーナナシ ID:pBqoFh8F/
シャドウゲイト、アドジャ、ディープで三つ巴
780:夢見るギャンブラーナナシ ID:aPfZQX5tO
サンはまだ一人旅
781:夢見るギャンブラーナナシ ID:bIU/EIYs3
わ
782:夢見るギャンブラーナナシ ID:RBUP8YFle
すっげえええええ
783:夢見るギャンブラーナナシ ID:gEHrLmV8k
淀の坂だぞwwwww
784:夢見るギャンブラーナナシ ID:1jRb2PUrD
止まらずにぶち抜いたな
785:夢見るギャンブラーナナシ ID:r0XF+c2a5
ストライドがデカいからぐんぐん進んでるのが目に見えてわかるの面白い
786:夢見るギャンブラーナナシ ID:VNLcNGtzG
これいけるんじゃ
787:夢見るギャンブラーナナシ ID:H076P9EoU
上がりきって若干ペース落ちてるっぽい
788:夢見るギャンブラーナナシ ID:Rm0pCkPE2
でも他の馬よりはダントツでスピード保ててるよ
789:夢見るギャンブラーナナシ ID:Pm26/AGV8
あディープきた
790:夢見るギャンブラーナナシ ID:xB0aWdnmD
おなじみの展開
791:夢見るギャンブラーナナシ ID:EptCyyd3l
でもまだ差があるから
792:夢見るギャンブラーナナシ ID:7aG3c8ShM
差せそう
793:夢見るギャンブラーナナシ ID:tAnzKUL90
逃げられるはず
794:夢見るギャンブラーナナシ ID:URBtlGrxN
詰め方エグイなおい
795:夢見るギャンブラーナナシ ID:aIzsYypv8
竹これ絶対サンジェがバテるの狙ってきてるだろ
796:夢見るギャンブラーナナシ ID:yBaBE+Z4c
上手い
797:夢見るギャンブラーナナシ ID:tmfTCs4gX
うわっくsならんだ
798:夢見るギャンブラーナナシ ID:vDFfgWsQL
並んでない
799:夢見るギャンブラーナナシ ID:NieC3QwfI
突き放した
800:夢見るギャンブラーナナシ ID:tyGp1uAsM
まだ伸びんの!?
801:夢見るギャンブラーナナシ ID:Pmzm8HeoN
ディープの追い込みエッグい、と思ったがそれ以上にサンの逃げがエグいな
802:夢見るギャンブラーナナシ ID:21lxOYZVM
おお
803:夢見るギャンブラーナナシ ID:Sbt2fBkrO
きた
804:夢見るギャンブラーナナシ ID:/Dx+/0Gob
きまったわ
805:夢見るギャンブラーナナシ ID:B81RsGEvO
ああああいいっすねええ!!!!!!
806:夢見るギャンブラーナナシ ID:s4aaWzRmy
っしゃオラ!
807:夢見るギャンブラーナナシ ID:8M9wXA/J3
勝ちきたこれ!!!!!
808:夢見るギャンブラーナナシ ID:mT4pv4bk0
GⅠ白毛初か?
809:夢見るギャンブラーナナシ ID:egAgjAIQb
皐月賞入れれば2回
810:夢見るギャンブラーナナシ ID:hFN1V5Grn
単独は今回が初
811:夢見るギャンブラーナナシ ID:wvuC4duTD
菊花賞馬サンジェニュインおめええええ!!!!!!
812:夢見るギャンブラーナナシ ID:9U5ReRN9G
ようやくGⅠでディープに勝ったか
813:夢見るギャンブラーナナシ ID:nplvi4wAC
またレコードだぞ
814:夢見るギャンブラーナナシ ID:p2ZX+lByC
3分2秒はもう並じゃねえよ
815:夢見るギャンブラーナナシ ID:NaxI9duw+
前の記録がセイウンスカイなのは笑う
816:夢見るギャンブラーナナシ ID:SXt3D8zf7
これもしかして世界記録じゃね?
817:夢見るギャンブラーナナシ ID:FaNeKbIwz
マジ?
818:夢見るギャンブラーナナシ ID:HJGUTklwg
世界記録持ってたのがセイウンスカイで、ソレ超したってことは世界記録のはず
819:夢見るギャンブラーナナシ ID:pIHOEqtRM
いきなり世界に飛び出すなサンジェニュイン
820:夢見るギャンブラーナナシ ID:V6uRnL9UY
2頭の二冠馬とか生きてるうちに見れるとは思わなんだ
821:夢見るギャンブラーナナシ ID:kHyULo8IX
そもそも同世代に2頭二冠馬はあたまおかしい
822:夢見るギャンブラーナナシ ID:g5zUDsAvy
2005年クラシック、まさにこの2頭の殴り合いだったな
823:夢見るギャンブラーナナシ ID:J6QhkHCVt
この勝ちでもう「善戦マン」とか呼ばれんだろ
824:夢見るギャンブラーナナシ ID:2YxPZv5VW
「美しき逃亡者」
口に出して言いたい日本語
825:夢見るギャンブラーナナシ ID:IHps2f6PG
実況これ、絶対練ってただろwww
826:夢見るギャンブラーナナシ ID:3DuU6p81D
次からスレタイに「美しき逃亡者」入れようぜ
827:夢見るギャンブラーナナシ ID:0pDmNPw9Z
「先頭至上主義」の方がよくない?
828:夢見るギャンブラーナナシ ID:cgsog5v1k
今回解ったのは、実況者が木羽の特集を読んだってことだな
829:夢見るギャンブラーナナシ ID: gyTYbuVq3
額がえぐいことになったわ
830:夢見るギャンブラーナナシ ID:oqVmi9o/J
>>829 全額つぎ込み男、やばいだろうなそりゃ
831:夢見るギャンブラーナナシ ID:1BbgctlnS
>>829 このまま次のレースにその金ぶっこもうぜ!!
832:夢見るギャンブラーナナシ ID:ybPbaoMmN
善戦マン、なかなか勝てない馬、とか言われてたサンジェに夢を託し続けたちゃんねらーが報われる瞬間がこれか
833:夢見るギャンブラーナナシ ID:5T2cdiyn0
サンジェの活躍と同じくらいこの男の結果も気になってきたな
834:夢見るギャンブラーナナシ ID:PtidRTOqg
次のスレ「先頭至上主義にして美しき逃亡者・サンジェニュインに夢を託すスレ」でいいか?
835:夢見るギャンブラーナナシ ID:fqJB3W1dT
夢を見るから託すになるの、イイぞー
836:夢見るギャンブラーナナシ ID:+lAK5YXul
じゃぶじゃぶ託してこ!!!!
・
・
・
907:夢見るギャンブラーナナシ ID:i5nqkSj3X
【悲報】サンジェニュイン、倒れる
http://natdekeiba.com/news
908:夢見るギャンブラーナナシ ID:VMTVijKD3
>>907 ふぁっ!?!?!?
※掲示板内の誤字は誤字じゃ無いです
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24.巣喰い、救われ
2話更新するといったな?
レースシーンがどうしても納得いかなかったので2話更新無理でした(土下座)
でも明日にはブチ込めるよ!!
2005年シーズンも次話で最終回!!
Natdekeiba.com
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【次走は有馬記念】サンジェニュイン、2週間の休養
10月23日に行われた第66回菊花賞を制したサンジェニュイン(牡3、栗東・本原佳己厩舎)の次走が第50回有馬記念に決定したと、10月23日20時に本原佳己厩舎から発表された。
9月に発表されたローテーションでは第25回ジャパンカップへの出走が予定されていたが、菊花賞後のサンジェニュインの消耗が想定より激しく、獣医師を交えた関係者打ち合わせの末これを回避することとなった。
診察を担当した大鳥宗吾獣医師は「極度の疲労状態。普通の馬だったら骨折か、ヒビが入るか、軽くて捻挫はしていそうなレベル。丈夫な骨に助けられた」と語り、関係者はこれを受けて2週間の休養を取ることにした。
疲労状態以外に目立った怪我はなく、帰厩後は飼い葉食いも変わらず良い状態。
管理する本原佳己調教師は「私たちの想像を上回るほど頑張って走ってくれた。まずはゆっくり休んでもらい、次走に合わせて調整していく」としている。
サンジェニュインが菊花賞で叩きだした3分2秒は現在の芝3000メートルの世界レコード。
1998年に同レースでのセイウンスカイの3分3秒9を1.9秒更新したほか、2000年ドンカスターステークスでタガジョーノーブルがマークした3分2秒7を0.7秒更新している。
今後の長距離レースでの活躍がもっとも期待されている1頭だ。
初めて会ったとき、なんて表情豊かな仔なんだ、と思った。
始めて乗ったとき、なんて楽しそうに走る仔なんだ、と思った。
先頭を駆け抜けて、どこまでも、どこまで。
1頭と1人で走りたかった。
あの、春から。
忘れた日は1日も無かった。
毎日毎日、考えていた。
今日はどう過ごしているだろうか。
ちゃんと飼い葉を食べて、水を飲んで、元気にしているか。
週末になると掛かってくる電話で、いつ、死んだと言われるか不安で仕方なかった。
電話口で「今日も元気だ」と言われると、その日の夜だけはよく眠れた。
繰り返し、繰り返し。
夢を見る。
あの瞬間、起き上がらず、冷たくなった馬体を。
自分の絶叫で飛び起きて、朝、人づてに「元気」だと知るまで。
息をすることもままならない。
毎日、顔が見たいと思う。
柔らかい、お調子者のような嘶きを耳にしたい。
風にくすぐられる鬣を撫でて、その背に乗りたい。
だが今の俺にその資格はない。
怖くて仕方が無いんだ。
もしまた、同じようなことがあったら。
2度開かない瞳を想像するだけで、恐怖が底から這い上がってくる。
騎手が抱いてはいけない感情は2つ。
馬への怒りと、恐怖。
そのうちの1つを満たしてしまった身体が、心が、その瞬間を迎えた時にどうなるのか。
食まれて濡れた袖の感触を思い出して手を握る。
潤んだ瞳を思い出す。
さよならを言うのがあんなに辛いなんて。
騎手になるとき、これでもかと覚悟を決めたつもりだった。
けどそれは、本の表紙をなぞるような、そんな軽さでしかなかったと思い知った。
去り際の泣き声が、いつまでも耳から離れない。
別れを告げた季節が過ぎて、青葉が茂る中で白の馬体が踊る。
コーナーカーブ、大きく揺らいだ身体に息を飲んで、それでも駆け抜けた背中に安堵して。
ゴール後、ぽたぽたと涙を流しながらも前を向くお前に、どれほど心を揺さぶられたか。
涙を流すたび、俺の肩に顔を押しつけていた幼さはもうない。
懸命に大人になろうとして、なりきれない、けなげさだけがそこにあった。
夏日が眩しくなったころ、光を反射する白さを懸命に追った。
逃げて、差して、抜かれて逃げ返して。
わずか1センチ差の敗北を喫したとき。
そう、あのとき。
お前は泣かなかった。
だけど顔も下げなかった。
ただずっと、遠くを見て。
みんな、お前が大人になったって言うけれど。
本当はそうじゃない。
心のなかでぐるぐる回る気持ちを押しとどめて、ただまっすぐ、覚悟を決めただけなんだ。
泣きわめきたいはずなのに、全部なかったことにして、大人のフリをしている。
大きな覚悟で蓋をしただけの、強がり。
それに気づいたらもう、だめだった。
背に乗らなければ。
俺もまた、本物の覚悟を決めなければならない。
胸に巣喰う恐怖から、目を逸らさずに。
前を向く時が来た。
栗東トレーニングセンター、本原厩舎。
俺は馬房にごろん、と寝転がったまま、イサノちゃんからマッサージを受けていた。
菊花賞の翌日から毎週のように届いている林檎を食べながら、時々イサノちゃんに声を掛けられてはリアクションする。
あ、この林檎、昨日のやつと味違うわ。
ブランド変わったか?
「サンちゃん、どう?痛くない?」
ぜ~んぜん痛くない!!
もう走って良いんじゃないかこれ。
「感覚は良さそうです」
「うん、だいぶ戻ってきたかな」
「急に立てなくなったときはどうしようかと思いましたが、軽く済んでよかったですね」
「まったくだよ。一時期はどうなるかと……」
いやあ、心配かけてごめんな!!
あの時は俺も「エッ!俺、立てないんだが!?」って焦ってたから……。
めっちゃヒンヒン泣きながら助け求めちゃったわ。
すっげえ早さで芝木くんが滑り込んできたときは別の意味で泣いたが。
「そういえばテキ、クラブとの電話はいいんですか?」
「ああ、もう済んだよ。……まったく、そもそもジャパンカップ出走自体、ローテに入れると厳しいって言うのに。お上が話の通る人らでよかったよ」
あれ、でもダービー後に出してた最初の予定って、菊花賞の後は有馬記念じゃ無かったか?
ジャパンカップの話はどこから来たんだよ。
「神戸新聞杯の結果が良かったから追加、って話でしたよね」
「そう。ディープインパクト相手にあそこまでやれたからね。夢を見たくなったんだろう。登録は間に合うんだけども、俺としては3ヶ月連続で出走させる気はなかったし、疲労状態は歓迎できないけど、回避できたのは本当によかったよ」
なるほどなあ。
自分で言うのもなんだけど最高のスピードで駆け抜けた自信はあったからな。
お偉いさんが「これいけますよっ!」ってなってもしゃーない。
でもあの後、ラチ沿いに追い詰められたことだけは……結局菊花賞でもディープインパクトと同じ馬運車に詰められたし……アドマイヤジャパンも一緒で……ぐぎぎぎ……!
あ、なあテキ、ジャパンカップは確か年齢は限定じゃなかったよな?
来年でいいなら走るぞ!!
クラブのお偉いさんにもそう言っといてくれよテキ。
「しっかしサンジェ、お前、本当に丈夫だなあ」
それな。
自分でもびっくりした。
普通だったら骨折レベルの状態だったらしいからな、俺の脚。
折れてないしヒビも入ってないし、使いすぎて超疲れてるだけだったの、ある意味ラッキーだな!
「でもなあ、頑張って走ってくれるのは俺たちも嬉しいんだけど、あんまり無理しないでくれよ」
ほんと心配かけてごめんなテキ。
でもここでやらないと負ける!って思っちゃったからしゃーない。
あの淀の坂、あそこで一気に駆け上がらないとディープインパクトに差されてた可能性があったわけだし。
実際にあいつ、1回俺に並んだよな?
なんとか抜き返してやったけど。
ソレ考えると、やっぱり淀の坂で一気にやったのは間違ってなかったと思うわ。
最初の1000メートルをぶっちぎったのもそう。
身体壊しちゃ元もこもない、っていうのは解るんだけどね。
行けると思った。
俺も、芝木くんも。
最高の瞬間を、最高のスピードで駆け抜けただけ。
勝つために必要だと思ったら、俺はまた淀でも府中でもなんでも、同じように走るよ。
といってもこれ以上テキを心配させたくないし、反省アピールだけでもしとくか!
テキ、ごめーんねっ!
「……なあんか、反省してないな?」
バレてら。
「いいか、サンジェ。俺たちはお前が勝つ姿を見るのも好きだけど、元気でいてくれる姿が一番なんだ。命を燃やしてまで走るな」
呆れたような声色から一転、テキが厳しい声で言う。
俺の首筋を撫でながらも、視線を合わせるように俺の目を覗き込む。
「削ってはいけないものを対価に得たモノを、名誉だと思うな。虹の橋の向こう側じゃ、お前、自分が勝ったかどうかも解らなくなるんだから」
テキが俺を抱きしめる。
「虹の向こう側なんかじゃなくてここで、俺たちと一緒に泣いて、笑って、生きていこうな」
それはまるで、自分に言い聞かせているように。
くすぐったくて、もどかしくて。
少しだけ、あたたかい。
「お前が無事走りきって、元気にこの腕に戻ってきた時が、いちばん嬉しいよ」
そう言ってテキが俺の鬣を撫でる。
イサノちゃんも優しく俺の身体をさする。
……俺が無事でいるだけで、嬉しそうにしてくれるヒトたち。
だからこそ、俺は、あなたたちに贈りたいんだよ。
最高の馬を育てたという、確かな名誉を。
ごめんな、テキ。
全部約束できなくて。
俺きっと、また走っちゃうと思う。
勝てる可能性のすべてに縋りたいから。
強くあるための手段を選べない。
俺はあんまり頭良くないし、効率のいいこととかわからないから、自分にできる最上を熟すことしかできない。
その中にはテキたちにとっては「無理」だと思うこともあるかもしれない。
でも、だってさ、テキ。
やってみなきゃ「無理」かなんてわからないじゃないか。
その果てに待っているものがなんであれ。
テキたちが、俺が勝てるようにあらゆる手段を用いるように。
俺もまた、尽くすだけ。
けど今度からは、無茶しすぎないようにするよ。
俺だって別にテキたちを泣かせたいわけじゃないからな!
ちゃんと元気に走りきって、ちゃんと、こうやって抱きしめられに戻るよ。
だから泣かないでくれ。
「……さ、明日からはまた調教だぞ」
うん。
「有馬記念には年上の馬たちもいっぱいいるからな」
うん。
「サンジェ」
なあに、テキ。
「誰が相手でも、お前が最高だよ」
知ってる!
走る、駆ける。
どこまでも、どこまでも。
「サンジェ、いいぞ」
坂路を上りきって、あとは一息で直線を抜くだけ。
風のように通り過ぎる景色を横目に、ゴール板を越えたあたりで減速した。
「よしよしサンジェ、いい感じだな」
おう、手応えありだな芝木くん!
「……馬場状態、稍重。2000メートルコース、1000メートル通過タイムは58秒台、走破タイムは1分57秒9です」
タイムを計っていたイサノちゃんがそう言う。
神戸では1分57秒ジャストだったから、それに比べれば10馬身くらい遅め?かな。
でも悪いタイムじゃ無いはず。
そうだよな、テキ!
「相変わらず早いな……サンジェ、お前あんまり息上がってないけど、これ普通じゃ無いからな」
「ははは、いやでも、やっぱり稍重くらいが走りやすいみたいですね。脚の軽さが全然違う。菊花賞は回すのも重かったんですけど、ここだとすいすい行きます」
それはそう。
脚の踏み込みがやっぱり違う。
菊花賞とかダービーの時みたいに良馬場だと、俺、踏み込みに力使っちゃうから脚痛いんだよな。
走れなくなるほど痛い!ってわけじゃないんだけど、1歩1歩、芝を抉るみたいに走っちゃうから、馬場が固いと反動が……。
その点、稍重みたいにちょっと馬場が緩いと助かる。
力入ってもそこまで脚にダメージないし。
「今回の疲労も、固めの馬場で力一杯踏み込みながら走ったことが原因のひとつだから……相当辛かったろ、サンジェ」
辛かったけど、でも走れないわけじゃ無いからなあ。
馬場は稍重か良か選べないわけだし。
……やっぱりてるてる坊主!てるてる坊主を逆さに吊すしかないかっ!
「どう願っても馬場状態は選べない。……けど、
「それって……」
「確定ではないけど……有馬記念の結果によっては、来年、サンジェは海外のレースを主戦場にする可能性がある」
はえ……?
かいがい?
「海外の、特に欧州の馬場は【良】の状態でも日本よりは重めだからね。非常に力のいる馬場だよ。日本調教馬が欧州のレースで勝てないパターンの多くは、こういった芝の適性の違いも大きい」
お、おお、そうなのか。
そうなると、逆も同じパターンってことだよな。
重めがスタンダードの欧州で調教された馬は、日本の馬場への適性が低いって話になるんじゃないか?
でも、この前のジャパンカップに勝ったのは欧州の馬だって目黒さんが言ってた。
「サンジェが重い馬場でこそ楽に走れるように、海外で調教された馬でも日本の芝に適性を見せるものも勿論いる。この前のJCを優勝したアルカセットがその例かな。鞍上の手腕もあっただろうが、高速馬場によく着いていっていた。終盤ハーツクライに追い詰められてのハナ差決着だったけど、終わってみれば日本レコード。欧州年度代表馬のウィジャボード、凱旋門賞馬のバゴ、BCターフの覇者ベタートークナウ、バーデン大賞連覇のウォーサン。スウォードダンサーを制したキングスドラマと、有力外国馬がいずれも馬券に絡めず沈んだ中で特出している」
おお、アルカセットすげえ!!
年度代表馬って、その年でいちばんすごかった馬に与えられるやつだろ?
ってことは欧州のレースでもぶいぶい言わせて、その上で馬場状態の異なる日本でもぶいぶい言わせたってことじゃん。
格好良いなアルカセット!
「初戦がどこかは決まってないけど、もし海外で高い適性が出たら── たぶん、凱旋門賞が最終目標になる、と思う」
「が、凱旋門賞、ですか……!?」
うおっ、びっくりしたぞ芝木くん、急にデカい声出すな!
その、がいせんもんしょう?っていうのは、そんなにデカい声出るくらいのレースなのか?
「凱旋門賞はターフレースの頂点。世界中のホースマンが、その舞台で愛馬が勝つことを夢に見る。……日本調教馬がこのレースを制したことはまだないからね。エルコンドルパサーの2着が与えた希望が大きい分、渇望して止まないけれど」
へえ、エルコンドルパサーが2着。
……エルコンドルパサー!?!?ダートレースでめっちゃお世話になりました!?
エッ、エルコンドルパサーってあのエルコンドルパサーなのか!?!?
ウララちゃんだけじゃダート埋め切れなくて因子でダートAにしてたエル……!!
世界最強は!?そう!!
エルコンドルパサー……!!!!
「おおどうしたどうしたサンジェ」
「急に大きい声だしたから、ですかね……よしよし」
走ってるときより心臓バックン言ったわ!
こんなとこでエルコンドルパサーの名前を聞くとは……。
「ま、なんだ。実際に走らせなきゃわからないけど……少なくとも俺は、うちのサンジェなら。サンジェなら夢の向こう側まで連れてってくれる、そんな気がしてるよ」
よせやいテキ、期待されまくると……応えたくなっちゃう~~!
いやでもエルコンドルパサーが勝てなかったレース、いけるか?
……エルが勝てなかったからってなんじゃい!!
俺は勝つんだよ!!エルの因子を積め!!!!
プランチャ☆ガナドール……!よりは貴顕の使命を果たすべくが欲しいです。
本音言えば強欲だからどっちもほしい。
メジロマックイーンとエルコンドルパサーの因子を継ぎたい……!
「お、鼻鳴らしてやる気だな……話の意味分ってないだろうに」
「でも、何かは感じ取ってるんでしょうね。外でも頑張るんだぞ、サンジェ」
「何を言ってるんだ。君も頑張るんだよ、芝木くん」
「え?」
お?
「海外も君に乗ってもらうつもりだからな」
「えっ!?」
ヒュウ!!
やったじゃん~~!!!!
そうこなくっちゃなあ!?
「神戸新聞杯、菊花賞と、サンジェと一緒にレコードを打ち立ててくれた。十分な功績だよ。それに、海外のレースに出るとあれば地元の騎手を使うのが鉄板だけど、サンジェは乗り替わりに敏感だからね」
急に知らんやつ乗せても俺が掛かって終わるだけだぞ!フリじゃなくてマジだからな。
だいたいのヤツは俺の逃げを「掛かり気味」って思う傾向にあるんだよなあ……実際、柴畑さんも俺に初めて乗ったときは綱引いて下げようとしたし。
掛かり気味なわけじゃないって解ると、それ以降は好きにさせてくれたけど。
それも俺がヒトの話を聞いてるって理解していて、かつ馬を思い通りに動かそうってタイプじゃなかったからできたわけで。
仮にコミュニケーション取る時間設けられても……俺、英語むりだし……。
何より、ここから引退まではアクシデントが無い限りは芝木くんしか乗せるつもりないよ。
「もし凱旋門賞まで行くってなったら、ヨロシク頼むよ。……自信ないなら他の騎手も考えるけど」
テキが意地悪そうに笑うと、戸惑い気味だった芝木くんが表情を変える。
「……いえ、俺に乗らせてください。俺が、サンジェと一緒にテッペンを掴みます」
「はははっ!そうでないとな!……繰り返しになるけど、すべては有馬記念の結果次第だ。ここで、海外に行くか、このまま国内路線を進むかが決まる。芝木くん、有馬記念も頼むよ」
「ハイ!」
海外か、それとも国内か。
俺みたいに鼻を鳴らす芝木くんを横目に、ふと、考えた。
アイツは、どうするんだろうか。
俺が海外に行くとして、アイツは。
もしかして、俺とアイツ── ディープインパクトが同じレースに出るのは、有馬記念が最後なのか……?
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【第50回有馬記念ファン投票】最終結果発表 上位20頭紹介
今年最後の大レース。
中山競馬場で12月25日に行われる第50回有馬記念(3歳以上、GⅠ、芝2500m)のファン投票は、最終的な有効投票総数は1,951,473票となり、昨年より40万件以上増えた結果となった。(JRA報道室発表による)
第2回中間発表までは首位独走状態だったディープインパクト(牡3、栗東・沼江琢馬厩舎)が2位に下がり、わずか114票差でサンジェニュイン(牡3、栗東・本原佳己厩舎)が1位に推された。
出走圏内だったアドマイヤジャパン、シックスセンスらが揃って出走登録を行っていないため、このまま行けば今年の3歳馬はこの2頭のみとなる。
3位は昨年の覇者、ゼンノロブロイ(牡5、美浦・藤浦和成厩舎)が並んだが、2位のディープインパクトとの間に約3万5千票の差がついた。
4位には今レースで引退を発表しているタップダンスシチー(牡8、栗東・佐々倉雄三厩舎)が続いている。
順位 | 馬名 | 得票数 |
1 | サンジェニュイン | 160,411 票 |
2 | ディープインパクト | 160,297 票 |
3 | ゼンノロブロイ | 124,894 票 |
4 | タップダンスシチー | 79,703 票 |
5 | スイープトウショウ | 78,859 票 |
6 | リンカーン | 74,501 票 |
7 | ハーツクライ | 67,494 票 |
8 | アドマイヤジャパン | 62,195 票 |
9 | アドマイヤグルーヴ | 49,226 票 |
10 | ヘヴンリーロマンス | 47,845 票 |
11 | ダンスインザムード | 45,354 票 |
12 | デルタブルース | 45,015 票 |
13 | シックスセンス | 44,784 票 |
14 | スズカマンボ | 39,646 票 |
15 | ダイワメジャー | 34,062 票 |
16 | エアメサイア | 33,583 票 |
17 | ラインクラフト | 32,332 票 |
18 | サクラセンチュリー | 26,596 票 |
19 | ハットトリック | 23,824 票 |
20 | ローゼンクロイツ | 23,042 票 |
次回、(2005年シーズン)最終回ッッッッ!!!!
サンジェニュイン 牡3
疲労骨折とかしててもおかしくない状態だったのに全然骨に異常がなかったウッマ
うそ、俺の骨、強すぎい!?!?
海外レースということの重要さをよく分ってないポンコツ
テキ ヒト族 男
今回の消耗っぷりで海外適性の可能性が高まってしまったヒト族
誰が相手でもうちのウッマが最高なんだ!!!!
芝木くん ヒト族 男
もう誰にも背を譲るつもりがない元気なヒトオッス
ヒィン……!が聞こえた瞬間爆速で馬房に走った
2日に1度マッサージをしに来る(来すぎ)
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25.その時、落ちた涙が今も忘れらんないんだよな ─ 第50回有馬記念
浴びるほど感想欲しい(強欲)
タイトルは執筆の際にBGMにしていた楽曲「麻痺」から。
書いている内に2万文字に達してしまったので分割します。
7月中に終わらなかったよ……すまねえすまねえ……!
明日も投稿あるよ。
「沼江調教師、ずばり、今回もっとも注目している馬は?」
「もちろんサンジェニュインだよ。とはいえ、彼だけがライバルじゃない。3歳馬はディープインパクトと彼だけだし、他の14頭は酸いも甘いも知った古馬たちだ。まさに未知のレース。そう言う意味では、全頭に注目しているよ」
向けられたマイクに穏やかに答える男に、しかし笑顔はない。
第50回有馬記念。
1年を締めくくるその大レースを前に、油断も隙も無かった。
「すみません、橋本調教師、ちょっといいですか!」
「はいはい。なんでしょう」
「ハーツクライは現在3番人気。上は3歳馬が占めていますが、それについては」
「まったくどうとも思ってません。2頭の実力が評価された結果でしょうし、もちろん、ハーツクライがそれに劣るとも思ってませんよ」
きっぱりとそう応えた男は、奇妙なまでに落ち着いていた。
研ぎ澄まされた極限の中では、緊張さえも冷たくなっていく。
あっけに取られた記者を前に、男は、これで答えは済んだとばかりに、早足でその場を立ち去った。
マスメディアたちのマイクは、あらゆる人間に向けられた。
あふれる夢、不安、楽観、心配、期待、諦め。
混沌と化す競馬場の中を、調教師たちは泳ぐように動いていく。
軽やかに、素早く。
一切の雑念を捨て去って、欲しいものはターフにしかないと、誰もが知っていた。
67:有馬に咲く名無し ID:BtPPmX2zW
あとちょっとで始まるな
会場入りしたやついるー?
ぽち、と押した更新ボタン。
読み込まれた最新投稿を見て、片手でガラケーを操作する。
「は、い、っ、て、る、よ、っと」
68:有馬に咲く名無し ID:4BxPgcLow
入ってるよー
69:有馬に咲く名無し ID:UOeeOvwHC
人大須ぎんだけどwww
70:有馬に咲く名無し ID:BDTjhfWLr
売店、いますっげえ混んでるから行くヤツはオススメしない
71:有馬に咲く名無し ID:wiizeJXev
お、ガラケー民ワラワラやん
72:有馬に咲く名無し ID:e/S41x6/e
今日競馬場いってるやつ多いんだなー
73:有馬に咲く名無し ID:MRmu6nPjV
>>72 そらそう
今シーズンのクラシック2強が初の古馬対戦だし
更新ボタンを押すたびに新しい投稿が流れる。
今日は12月25日。
世間一般ではクリスマスの方がメインだろうけど、あたしにとっては、競馬場に行く方が大事だった。
中山競馬場の9Rで開催される第50回有馬記念。
ここで、あたしの好きな馬が走る。
賭けた単勝1万円の馬券を握りしめた。
応援と言うにはちょっと重い金額は、それだけ期待を込めているから。
── 大丈夫、きっと、あんたならやれる。
あたしの好きな馬は、めげない馬だ。
「あ、あの……」
「ん?」
さあ、移動しよう、というタイミングで声を掛けられる。
振り返ると、あたしより5歳くらいは年下の若い女の子が立っていた。
大きい帽子に、色のついたメガネを掛けていて、少し変わった装いだった。
「きゅ、急に話しかけてごめんなさい!あの、その、ば、馬券の買い方を教えて欲しくて」
「馬券の?いいけど、競馬場に来るの初めてなんだ?」
「あ、はい、そうなんです。……すみません素人丸出しのやつがきて」
「いやいや!最初は誰だって素人でしょ!いいよ、あたしが一緒に行ったげる」
話を聞くと、女の子は今年20歳になったばかりだという。
たまたま付けたテレビでレースが映っていて、そこで見た馬を好きになったらしい。
わかる、あたしもそうだった。
惚れたら直に見たくなるもの。
でも競馬場って想像以上にオッサンだらけだよね、と話している内に、話題は馬の話になった。
「── へえ、サンジェニュインか」
「はい。すごいニワカですみません」
「だから謝んないでって。いいじゃんサンジェニュイン。ダービーとかすごい惜しかったし、この前の菊花賞は大逃げキマってて格好良かったよね」
あたしがそう言うと、女の子は自分のことみたいに笑った。
「頑張ってる姿が好きなんです。諦めないで、まっすぐ走ってて」
ああ、同じだなあ、と思った。
あたしもそうだよ。
あたしの好きな馬も、頑張って走る馬だ。
きっと、他の誰かの好きな馬も、頑張って走ってる馬なんだろうな。
「あっ」
馬券買っちゃったけど、せっかくだしパドック行くか、と歩き出した矢先。
風に吹かれ、女の子が被っていた帽子が一瞬、宙に舞う。
こぼれた髪の毛は、白かった。
「……みえましたよね」
「あ、う、うん?うん」
気まずい空気が流れる。
女の子の顔はちょっと青ざめているみたいで、白い髪は見せたくなかったみたいだ。
帽子を深く被り直して、やわく唇を噛む女の子に、あたしは思わず口を開いた。
「めっちゃキレイ!サンジェニュインみたいじゃん!」
言ってから、しまった、と思った。
あたしはそう思ってても、女の子にとってはこの言葉も嫌なものかもしれないからだ。
隠そうとするのは、女の子が望んで得た髪の色ではない可能性もある。
きっとスルーした方がよかったものを、あたしは広げてしまった。
ど、どうしようどうしよう、と内心慌てていると、女の子が目を丸くしてあたしを見ていた。
「……サンジェニュインみたいですか?」
「う、ウン、あたしはそう思うけどそうだよね、言われて嫌な言葉とかもうちょっと考えるべき──」
「っほんとうに、サンジェニュインみたいですか!?」
「少なくともあたしはそう思うカナ!?」
そう言うと、女の子は嬉しそうに笑って、帽子を少し上にズラした。
髪の毛の白さは生まれつきなんだそうだ。
肌も白くて、ろくにお日様にあたれなくて。
人と違う髪の色が嫌でずっと引きこもっていたのを、今日、サンジェニュインに会うためだけに外に出てきた。
「馬の白毛は人間とは違うものだって調べてわかったんですけど、それでも、自分を重ねずにはいられなかった」
自分が走れない太陽の真下を、白い馬体が駆け抜けていく。
周りが鹿毛や黒鹿毛の中でたった1頭だけ白いのに、異端のはずなのに、サンジェニュインは誰よりも目映く走り抜けた。
それは、自分の色を受け入れるのが幸せの近道だと諭す本も、当事者の体験を綴った本でさえ、遠いフィクションのようにしか思えなかった女の子にとって、あまりにも鮮烈だったようだ。
「白い色を受け入れている人なんて、本の中にしかいないと思ってた。けど、本当だったんですよ。サンジェニュインに出会ったことで私、自分の色を誇らしく思えるようになった」
サンジェニュインが走るたびに、自分も頑張るぞって、思えるようになったんです。
そう言った女の子の、メガネ越しのキラキラとした瞳。
ああ、初めて好きな馬の話を誰かにしたときも、あたし、こんな瞳だったかな。
反応のひとつひとつが懐かしくて、そして、とても嬉しかった。
「……あたしの好きな馬はね、ハーツクライって言うんだ」
いっつも2番手のハーツクライ。
走って、走って、追いつけなくて。
まるで、社会の荒波に飲まれて立ち尽くした、あたしみたいで。
でもね。
ハーツクライも諦めない馬なんだよ。
どんなに負けても、最後まで走るんだ。
後方から追い込む脚が前に進むたびに、あたし、頑張ろうって思えるよ。
どんなに後ろにいたって。
どんなに遅れをとっていたって。
俯かないで走るハーツクライの、美しい横顔。
あたしもハーツクライみたいに、この足で夢を追いたくなった。
そしていつかは、後ろからじゃなくて、最初から前で、美しい景色を見るんだ。
「どっちの好きな馬が勝ったって、恨みっこなしだかんね」
あたしが茶化すようにそう言うと、女の子も笑った。
「第50回有馬記念、ここ、中山競馬場はほんの少し、暑いような気さえしてきました」
「ええ、みなさんのね、熱気がすごい」
「今年一番の注目レースと言ってもいいでしょう。ファン投票5位のスイープトウショウを含め、上位20頭のうち半数が回避している今レース。しかし1位のサンジェニュイン、2位のディープインパクトを始め、有力馬は多く出走しています。……出走馬はフルゲート16頭。枠順に沿ってパドックに踊りでます」
「1枠1番のサンジェニュインは今回も別周のため最後の紹介となります」
「……それでは1枠2番、サンライズペガサス。鞍上の蟹江騎手が落馬負傷のため中田騎手に乗り替わりです。前走からプラス8キロ。年齢の心配もありますが善戦を期待したいですね」
・
・
・
「3枠6番にディープインパクト。古馬ひしめくこの有馬で、3歳馬ながら約16万票を獲得し、現在2番人気。馬体重はマイナス4キロ。秋に入ってからは2連敗中ですが、最後に流れを変えたいところ」
「状態は非常にいいですね。落ち着きが見えます。道中も冷静に脚をすすめて、卓越した追い込みで一気にまくり上げてくるかもしれませんよ。この馬はなんといっても末脚自慢。先頭ばかりに気を取られていると狩り尽くされてしまうかもしれません」
・
・
・
「5番人気はハーツクライ。5枠10番に入りました。鞍上はジャパンカップから引き続きグラン・リュベール騎手が務めます。人馬そろって初のGⅠへ、油断は一切なし。馬体重は前走からプラス2キロ」
「ジャパンカップでは勝ち馬アルカセットと同タイム日本レコード。4歳秋から本格化の兆しを見せつけてくれました。この有馬、ハーツクライによって大荒れの展開も十分に予想されますよ」
・
・
・
「ここで別周のサンジェニュインを紹介します。1枠1番の決定に鞍上芝木、勝つための準備は整ったと気合いの一言。前走から馬体重はマイナス3キロ。今世代、最高峰の逃げ馬と呼び声高く、ファン投票では堂々の1位に推されました」
「スピード、スタミナ、パワー。どれをとっても1番人気に不足なしの馬でしょう。心配があるとすれば菊花賞の疲れ。パドックの様子を見る限りでは問題なさそうです。最内からの大逃げに、他馬はどう対策を取るか気になりますね」
2005年 12月25日 中山 第50回有馬記念 芝右2500メートル 良馬場
枠順 | 番号 | 馬名 | 人気順 |
1 | 1 | サンジェニュイン | 1 |
1 | 2 | サンライズペガサス | 10 |
2 | 3 | ゼンノロブロイ | 3 |
2 | 4 | コスモバルク | 11 |
3 | 5 | スズカマンボ | 8 |
3 | 6 | ディープインパクト | 2 |
4 | 7 | ヘヴンリーロマンス | 9 |
4 | 8 | グラスボンバー | 12 |
5 | 9 | タップダンスシチー | 6 |
5 | 10 | ハーツクライ | 5 |
6 | 11 | オペラシチー | 14 |
6 | 12 | ビッグゴールド | 15 |
7 | 13 | コイントス | 16 |
7 | 14 | リンカーン | 7 |
8 | 15 | デルタブルース | 4 |
8 | 16 | オースミハルカ | 13 |
「今、止まれの声が響きました。各馬、返し馬に入ります」
「サンジェニュインが2、3回跳び、ましたが走り出しました。すぐ後ろにディープインパクト、横にハーツクライが背を追うように軽く走っています」
うぅん、固い!良馬場!
今回もてるてる坊主逆さ祈願は無駄だったか……!
それより、ヴァッ、なんだこいつら!!
俺の後ろにピッタリ張り付いて来るんだが!?
「落ち着けサンジェ、あんまり脚を使わないようにな」
そうは言っても芝木くん、ここで俺がうまぴょいされたらレースどころじゃないんだぞ!
ディープインパクトはもうお馴染みみたいな感じになってるけど、もう1頭の馬はどちらさま!?
『やあ、きみがサンジェニュインだろう?』
『……そうだけど、誰?』
毛並みはディープインパクトに似ていたけど、馬体格はかなりイイ。
額の丸からしたたり落ちるように鼻先に伸びる流星が特徴的だった。
『私はハーツクライ。君のことは噂で少し……確かに、メンコをしていても見蕩れるほど美しいな』
『はあ……それはどうも、です』
目黒さん曰く、このレースの3歳馬は俺とディープインパクトだけ。
残りは全頭年上だって言ってたから、このハーツクライ、さんも年上ということか。
ちょっと渋めの落ち着いた声で、メンコがあるとは言え、俺を前にしても結構冷静そう。
っていうか噂ってなんだよ。
前に弥生で倒れたときに流れてた下手くそ伝言ゲームのやつか?
俺が首を傾げていると、ハーツクライさんがひょい、と顔を近づけた。
『とても美しくて、とても速くて、とても強い馬だと聞いてる。
一度言葉を止めたハーツクライさんが、鼻先を付けた状態で小さく嘶く。
『噂以上だな。……それにきみの背のヒト、ずいぶんきみを可愛がっているのがわかる』
お?そこに目を付けるとは……やるな!
そうなんだよ、芝木くんは俺をべったべたに可愛がってんだ。
俺も芝木くん大好きだ。
やっぱり鞍上には自分の好きな騎手を乗せた方がテンション上がるし。
ハーツクライさんの鞍上もいいヒトそうだな!
前にヴァーミリアンに乗ってた海外の兄ちゃんとはまた別の、華やかな見た目の兄ちゃん。
顔の良さなら芝木くんも負けてないが、系統が違うからなんとも……。
『ヒトは良いな。言葉を理解するのは難しいが、声色が甘くて。私もヒトが好きだ』
『えっハーツクライさんも!?だよな、じゃなくてですよねえ!いいっすよねえヒト!めっちゃ可愛がってくれるから応えたくなるっていうか!』
『ああ、わかるとも。私もまた、多くのヒトの愛の上に生きているのでな』
なんだあもう、ハーツクライさんいいヒト、じゃなくていい馬じゃあん!!
えっへへへへ、ヒト好きな馬に悪いやつはいねえからな!
そういや、俺は言葉もわかるけど、一般馬は声色で判断してるって前にカネヒキリくん言ってたな。
ハーツクライさんはかなり聞き分けができるみたいだけど、それだけハーツクライさんが周りの声に耳を傾けてるってことだ。
俺たち馬って、走って食って寝てが基本で、同族以外は割と眼中になかったりする。
ヒトのことは「何故か俺たちにごはんを分けてくれる二足歩行の種族」レベルで考えてる馬もいるしな。
一方でラインクラフトちゃんみたいに、自分たちの血を繋いでくれるヒト、という見方をしてる馬もいる。
カネヒキリくんでさえ、鞍上はレースのペースを掴むための指針、みたいに考えてて、レース以外ではそこまで気にしていないみたいだし。
まあ俺は中身が元ヒトっていうのもあるからなんとも言えないが、純馬であるはずのハーツクライさんのこの様子を見るに、かなりヒトが好きなんだなあ。
『思った以上に気が合いそうだ』
『完全同意』
俺を前にしてもうまだっちしてる様子はないし、めっちゃ落ち着いてるし……。
これが、大人の余裕、ってコト……!?
それにヒト好きはポイントが高い。
是非ともハーツクライさんとは仲良し~!したいわ……ってイタッ、ちょっとディープインパクト!俺の無口を引っ張るな!
『今日はきみと走れるのを楽しみにきた。とはいえ、私も、背の上の彼を勝たせないといけないからな。楽しみだが── 負けはしないぞ』
それではここで失礼する。
そう言って踵を返すハーツクライさん。
武士か何かか?
でも、その目の奥の、ジリジリと燃えるなにか。
俺と話すハーツクライさんは終始穏やかだったけれど、俺よりも長く走っている分、どこか底知れない風格が漂っていた。
すれ違い様に見た目は鋭く、触れたら切れそうな感じ。
『こ、こえ~~!最後のドスの利いた声、なに!?大人こわっ!……でもなんか格好いいわ、ってェ!痛いって言ってんだろディープインパクト!』
言いたいことあんなら俺の無口を引っ張るんじゃなくてお前の無口をやめろや!
……んふふ、今のちょっと上手くなかった?お茶の間ドッカンドッカン!
「こらサンジェ、遊んでないでゲート行くぞ」
遊んでないやい!!
「1年最後のレースだってのに、緊張感がないなあ」
ハ?
バリバリにあるが。
さっきの俺とハーツクライさんの緊迫したやりとり見てなかったのか?
「でもまあ、緊張してない方がいいか。な、サンジェ」
聞いてねえな!
でもそうだな、芝木くんも緊張ゼロだし。
っていうか芝木くんも有馬記念は初なんじゃ無かったのか?
テキが言ってたぞ、この前の神戸も菊花賞も初だったって。
初のGⅠで緊張もなく俺の手綱を握った芝木くんの方がヤバイのでは?
俺は訝しんだ。
「ゲート入りです。まずは奇数組から。1枠1番にサンジェニュインが誘導されていきます」
「ものすごくスムーズですね。係員が押す必要も無くサラっと入りました」
「これまで大外が多かったサンジェニュイン、ゲートで待つ時間に耐えられるでしょうか」
「必要以上にストレスをためないか心配ですね」
めっちゃ他の牡馬からガン見されたけど特に声は掛けられなかったな。
やっぱり……これが大人の余裕……!?
すげえ舐め回すように見られてるけど。視線がすごいけど。
誘導されるままゲート入りして、ほんの一瞬しかない静かな時間を味わう。
んん、でも、ゲートってマジで狭いな。
これもうちょっと広げられないのか?
たぶんゲートがもうちょい広ければ好走できた、っていう馬、いそう。
こんなに狭いと待っている間にイライラがドッカーンしそうだわ。
「サンジェ、集中切らすなよー」
わあーってるよ芝木くん。
でも意外と暇で……俺いっつも最後だったから、最初に入る馬たちがこんなにストレス感じてたとは。
なんでゲート抜けしたんだコイツ、とか思ってごめんなアドマイヤジャパン。
こんな狭いとこでジッとなんかしてらんないよな。
今はここにいない同世代に心の中で謝罪した。
それにしても、ああ、まだかなあ、まだ始まんないかな。
数分も経ってないしまだか。
いや、うーん、でも早く始まってくれよお。
……ああだめだ、なんかイライラしてきたわ。
なんか俺の馬っぽさが日に日に増してない?
「……今日はゲート入りもスムーズ。さあようやく、大外16番のオースミハルカ、今レースには2頭しかいない牝馬のうち1頭です。少々嫌がるそぶりもみられますが……なんとかゲートイン。これで全頭揃いました。いよいよ2005年最後の大勝負── 第50回有馬記念、今、スタートしました!」
ああ、まだかなあ。
「サンジェッ!?」
アッ、ヴァッ!?
「おおっとちょっと出遅れたかサンジェニュイン、それでも最内にスルリと入り込んでぐんぐん伸びる伸びる、現在1番手まで上がりきってさらに伸ばす。古馬相手にも怯むことなく果敢に攻めていきます。その背を追う2番手集団、先頭はタップダンスシチー、2馬身差開いて大外から上がってきましたオースミハルカがこの集団の2番、内からコスモバルクがじわりじわり詰めてきて、この2頭の真ん中にハーツクライという位置。前走まで後方からの競馬を主流としていたハーツクライ、この先行集団の中で果たしてどう動くか。3馬身差開いてオペラシチー、差がなくリンカーン、内から外へ、ゼンノロブロイ上がっていきたいところ。1馬身差でデルタブルース、コイントスが並走、そこにサンライズペガサスが最内、ヘヴンリーロマンスややペースが速いか、2番人気のディープインパクトがここでじっと耐えています。1馬身半開いてビッグゴールド、スズカマンボが追走、最後方にグラスボンバーの流れです」
「レース全体が速めに回ってますね。一瞬出遅れはしましたが、先頭のサンジェニュインが完全にペースを握ってる状態です。後方の馬が届く展開に向くと良いですが、逃げ切りも十分あり得ます」
アッハ~~!!
ハハハ、やばかったな!!
「サンジェ~~!」
いやごめんて芝木くん。
まだかなあってぼうっとしてたらゲート開いてたわ。
一番「やべえ」って思ったの俺だし許して!
あと今回は馬群に飲まれてないのでセーフってことにしてくれ。
「ハナを進むサンジェニュイン、最内を一気に回して早くも第1コーナーに差し掛かろうかというところ。スタンド前の声援はそよ風のごとく!まったく気にする素振りなしで悠々と駆け抜けます」
それにしてもかってぇな!!
やっぱり良馬場、走り辛いわ。
もうちょっとこう、シットリにならない?
あ、ならない、ハイ。
じゃあしゃーない。
走れないわけじゃないし、多少の痛みはがまんがまん。
それに……まだ芝木くんから鞭入ってないから、たぶん、後続とは10馬身差以上開いてる、はず。
これが縮んだら鞭入れるって話だったし。
今のうちにもうちょっと差を付けて、できるだけ終盤に備えないと。
何せ今回も、やばそーなのはディープインパクトだけじゃないみたいだから。
「先頭はまだサンジェニュイン、脚色はまったく衰えていない!2番手タップダンスシチーに現在11馬身差つけているがこのハイペース、終盤まで保てるのか。後続も勢いを増している、タップダンスシチー、1度鞭が入る。オースミハルカを躱してコスモバルク、依然この集団の4番手をキープしていますハーツクライ、そこから2馬身半のところにオペラシチーを躱したリンカーンが上がってくる!」
「ハーツクライ、まだ余裕そうです。ここから一気に狙ってくるかも知れません」
「1000メートルを通過した時点でトップのサンジェニュインは58秒ジャストのハイペース、おっとタップダンスシチー、少し落ちたかコスモバルクが並ぼうというところ、ッいやハーツクライ、早くも前へと動き出した!2番手集団も第2コーナーをカーブするところでハーツクライ、中央を縫って前へ進出していきますっ!」
背後から突き刺すような視線。
芝木くんの鞭がトモに入って、差を詰められていると知る。
「ッ2頭、追ってきてるな……!」
そう苦しげにつぶやいた芝木くんが、さらにもう1回、鞭を入れる。
コーナーを曲がりきったところで、俺を追う2頭の姿が目に入った。
── ハーツクライさんと、ディープインパクトだ。
ハァ?
うそだろ、2頭がかり?
「眼前に見えるのはもうサンジェニュインの背中だけだハーツクライ、懸命の追走!しかししかし、太陽を追うのは1頭だけではありません、後方集団から大外一気に上がってきたのはディープインパクト!コスモバルクを、オースミハルカを、タップダンスシチーを抜いてさあ後はハーツクライ、ハーツクライだ!」
2回、鞭が入る。
「ここが踏ん張りどころだぞ、サンジェッ!」
その芝木くんの言葉に合わせるように、脚にグッと力を入れる。
ああダメだ、集中しないと。
でも視界の端にちらちらと2頭の鹿毛が踊ってかき乱される。
もっと早く波打ちたい心臓と、これ以上は無理だといがみ合う脚との間。
絞りきれる最高だけを、ただ、必死に出す。
今は第3コーナーのカーブを回るところ。
第4コーナーまですぐだ。
大丈夫、俺のスピードは劣ってない。
大丈夫、今日の俺も、最高だから!
「ここで並んだ!並んだ!ディープインパクトがハーツクライに並んで、いやっ!しかしハーツクライ!?ハーツクライが意地の走りで絶対に抜かされない!ディープインパクト勇敢に攻めるがまだハーツクライの意地が上か、どうだ!」
大丈夫、まだ疲労感はない。
菊花賞の時みたいにバテてない。
いける、もうちょっと。
まだいけるだろ俺の身体、脚、心臓。
もっとぶったたけ、まだ、先頭は俺だ!
「サンジェニュインに2回、3回、鞍上から鞭が入ってさらに加速します!まだあるのか、まだ出るのかスピード!ディープインパクト、ハーツクライが懸命に追ってもなお、サンジェニュイン、まだまだ走る!」
第3コーナーを回りきって、第4コーナーに差し掛かったあたり。
背後の気配が、ぐっと濃くなる。
もうすぐ側だって、並ばれそうだって不快感。
全身が、もっと早く、もっと向こう側へ逃げろと追い立ててくる。
……ああ、もう苦しくなってきた。
ダービーの時に味わわされた、あの無力感に似たナニカが迫り上がる。
けど、ここでは止まれない。
俺の脚が止まるのは、ゴールしたときだけ。
「さあ直線!直線に入るぞ!中山の直線は短いがサンジェニュインに届くかディープインパクト、ハーツクライ!1馬身差にまで迫って残り200メートル!夢のグランプリへ、ああ……っ!」
やだ、嫌だ。
抜かされたくない。
絶対やだ。
ディープインパクトにも、ハーツクライさんにも意地があるって解ってるけど。
でも俺にだって、譲れないものがある。
『どいつもこいつも、俺の前を走るな!
ハナをひた走るのは、この俺だけでいい。
「並んだがまだ、まだ、サンジェニュイン粘るか、いやでも、並んだ、並んで誰が抜く、誰が、誰が……!?」
モノクロの世界は、音さえない。
静かな光の中を抜けきったとき。
左横に、2頭、確かにいた。
「3頭並んでゴールイン……!なんということだ、なんということだ有馬記念!3頭、3頭がキレイに横一線に並んでゴール板を踏み抜きました……!」
そして、無音の世界が、一転、爆音に満ちる。
「接戦、接戦、大接戦です!最も勢いのある3歳馬に、古馬の意地を見せたハーツクライが見事に絡みました!一体誰がこの激闘を制して中山競馬場を満たすのか!燦然と輝く太陽が射すか、勝利の絶唱が響くか、それとも鬼の衝撃が走るか!?」
「最後まで3頭もつれて、これはもう、スローにしても誰が先着したか……」
「誰が1着でもおかしくない、ピタリと重なったゴールでした。写真判定は果たしてどうなるでしょうか。まだ確認が続いています」
ああ、苦しい。
最後の100メートル、息を押しつぶして駆け抜けた感覚。
バクバクと打つ心臓の音だけが、今は頭の中に響いていた。
『……きみ、本当に強いのだな』
上がる息を宥めていると、真横のハーツクライさんがそう話しかけてきた。
『ハーツクライさんも、すっごい、強いじゃないですか……』
まだ息が追いつかない俺よりも、ハーツクライさんの方が余裕そうだった。
『これでも君よりは年上で、たくさん走ってきたからな。その分、対策をしたつもりだったのだが……私の力はほんの少しだけ、君の
『及ばなかったって、まだ結果は』
結果はまだ出てない。
俺がそう言おうとしたのが分ったのか、ハーツクライさんが首を横に振った。
『いいや、並んだ瞬間に理解した。競り負けた。逃げられた。……ああ、でも、負けるのはやっぱり、悔しいものだな』
そう言ったハーツクライさんの声は、ちょっと震えていた。
「サンジェ、サンジェ!」
芝木くんちょっとうるさいよ、そう嘶こうとして、でも、視界の端がチカチカする。
ワッと歓声が響いて、耳が痛い。
俺の首をポンポンと撫でる芝木くんを背に乗せたまま、俺は顔を上げた。
中山 | 9 R | 確 | ●●● |
---|---|---|---|
Ⅰ | 1 | ハナ
ハナ
4
1.2 | |
Ⅱ | 10 | ||
Ⅲ | 6 | ||
Ⅳ | 14 | ||
Ⅴ | 4 |
なあディープインパクト。
俺に勝ち続けたお前。
勝つのって、こんなに痛かったっけ?
「3頭それぞれハナ差1センチの決着です!誰が勝ってもおかしくは無かった、あの激戦を制して──……サンジェニュイン1着!暮れの中山競馬場に、太陽の光が射したぁ──っ!」
その瞬間、目の前で流れた涙が焼け付く。
『すまない』
小さな声が。
『すまない』
繰り返し詫びる小さなその声が。
『また、負けてしまった』
まるで自分みたいに思えて。
俺は泣いちゃいけないのに。
きっと今までも同じように、誰にも聞こえない声で繰り返し、繰り返し。
愛に報えなかったことを謝ってきたのだろうと解るから。
『ハーツクライさん』
『……サンジェニュイン』
同じように震える声で呼び合う。
解る。
俺も、ヒトに愛されて、愛して。
それに報いたくて走り続けたから。
俺よりも長く、報いる日を渇望してきたハーツクライさんの、たった1センチ。
『ままならないなあ』
その、諦めにも似た声色。
『ッいいんですか』
ふつりと沸く、怒りのような、悲しみのような気持ち。
『いいんですか、ここで!』
そんなことを言う資格、ハーツクライさんを降した俺にはないのに。
でもどうしても、口に出したくて仕方ない。
いいんですか、本当に。
ままならないって。
仕方ないって。
諦めたフリばかりが上手くなっていく。
でもそれは、本当にフリだけだから。
ならいっそ、本当に諦めましょうよ。
『……良いわけがない』
諦めるフリを、諦めて。
『勝ちたい』
俺たちにはヒトに渡す言葉なんてないから。
『勝ちたいのだ』
走りで、行動で、この命のすべてで。
『私は強いと言ってくれた、私の愛するヒトに』
ああ、俺たちは確かに、気が合う。
『私を信じてよかったと、言わせたい』
最高の馬を育てたのだと、言わせたい。
Natdekeiba.com
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【第50回有馬記念レース結果】 |
12月25日、第50回有馬記念(3歳以上、GⅠ、芝2500m)にて、サンジェニュイン(牡3、栗東・本原佳己厩舎)がファン投票1位に応えてグランプリ初制覇を果たした。白毛の馬によるグランプリ制覇は史上・・・
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新着ニュース
【橋本弘継厩舎】 |
第50回有馬記念(3歳以上、GⅠ、芝2500m)にて、勝ち馬サンジェニュイン(牡3、栗東・本原佳己厩舎)とタイム差無しで2着となったハーツクライが海外遠征を行うこと・・・
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【沼江琢馬厩舎】 |
暮れの第50回有馬記念(3歳以上、GⅠ、芝2500m)にて、秋シーズンからまさかの3連敗となったディープインパクトだが、勝ち馬とハナ差2cmまで迫ったその末脚は・・・
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【ダート界の新星】 |
第7回ジャパンダートダービーを2着馬に4馬身差を付けて圧勝したカネヒキリの次走が、フェブラリーSになることが決まったと、管理する居住昌彦厩舎から発表・・・
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【第50回有馬記念レース結果】サンジェニュイン、1番人気に応えて初のグランプリ制覇 |
12月25日、第50回有馬記念(3歳以上、GⅠ、芝2500m)にて、サンジェニュイン(牡3、栗東・本原佳己厩舎)がファン投票1位に応えてグランプリ初制覇を果たした。 白毛の馬によるグランプリ制覇は史上初。 本格化してきた古馬のハーツクライ(牡4、橋本弘継厩舎)と、同世代のライバルディープインパクト(牡3、沼江琢馬厩舎)を相手に、最後まで果敢な逃げの姿勢を貫いた。 結果として2着馬とのタイム差はなかったものの、1cm差の攻防を制してのグランプリ制覇は、管理する本原佳己厩舎にとって大きな成果となった。 この結果を受けて翌年2006年は海外遠征にも挑戦することが発表されている。 具体的なローテーションなどは年明けに各メディアに発表される予定だ。
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【橋本弘継厩舎】ハーツクライ、海外遠征が決定 |
第50回有馬記念(3歳以上、GⅠ、芝2500m)にて、勝ち馬サンジェニュイン(牡3、栗東・本原佳己厩舎)とタイム差無しで2着となったハーツクライが海外遠征を行うことが発表された。 国内でのGⅠ勝ち鞍はまだないハーツクライだが、ジャパンカップでは日本レコードでの2着、有馬記念ではタイム差無しの2着など、実力の高さは十分に証明されている。 管理する橋本弘継師は「本音を言えばGⅠを勝って臨みたかった。しかし、有馬記念では1cm差とはいえあのディープインパクトを破り、勝ち馬のサンジェニュインとはタイム差無し。秋から本格化してきたこともあり、1度勝負に出たいと思う」とコメントしている。 海外遠征は複数回予定されており、1戦目としてドバイシーマクラシックを予定。 帯同馬には同厩舎に所属するユートピアが内定している。
走法を先行/逃げに変えたハーツクライ。 その勇猛果敢な走りがドバイシーマクラシックでどのような成果をもたらすのか、期待したい。
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【沼江琢馬厩舎】ディープインパクトの次走は阪神大賞典 |
暮れの第50回有馬記念(3歳以上、GⅠ、芝2500m)にて、秋シーズンからまさかの3連敗となったディープインパクトだが、勝ち馬とハナ差2cmまで迫ったその末脚は高く評価されている。 主戦騎手を務めた竹創騎手は当日の様子を「間違いなく調子が良かった。だけどそれ以上に、サンジェニュインとハーツクライが強かった」とコメント。 レース前の「世代最強」候補の評判を落とすような負け方ではなかったと、管理する沼江琢馬師も言葉を続けた。 同レースの勝ち馬サンジェニュインとハーツクライがそれぞれ海外遠征を予定するなか、ディープインパクトは翌年も国内戦を中心とすることが発表されている。
「まずは阪神大賞典からスタートして、天皇賞・春を狙う。翌年の秋以降の予定はまだ未定」とのことだが、「サンジェニュインとはこれで戦績がちょうど半分。いつか決着を付けたいね」と語った。
現時点でのディープインパクトとサンジェニュインの対戦成績は7戦3勝3敗1引き分け。
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【ダート界の新星】フェブラリーSを目標に、カネヒキリ |
第7回ジャパンダートダービーを2着馬に4馬身差を付けて圧勝したカネヒキリの次走が、フェブラリーSになることが決まったと、管理する居住昌彦厩舎から発表された。 春からダート路線に変更したカネヒキリ。 逃げ先行も、差し追い込みもできる豊かな脚でダート戦を席巻した。 現時点でGⅠ3勝。古馬にもまったく引けを取らない走りに、陣営の期待は高まるばかりだ。
「フェブラリーSのあとはドバイワールドカップへの挑戦も考えている」とコメント。 雷鳴のごとき末脚が、世界に届く日も近いかもしれない。
|
次回、本当にクラシックおわり……!!!!
今回のニュースのやつはリンク触れます(というか注釈機能)
2021/08/01 追記
確定の掲示板、PCからだと正常に見えるのですが、スマホだと崩れているみたい。
なのですが、直し方わからないのでスクショを貼っておきます。
【挿絵表示】
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26.きっと君も誰かのヒーロー
タイトルはみんな大好き、JRAのヒーロー列伝のキャッチコピー「僕のあいつも、いつの日かヒーロー」から着想
ヒーロー列伝って、イイよね……!
前話で2005年レースは終わりだったのですが、締めにどうしても挟みたかったのでこれが最終回です。
25話と合わせると2万文字超えるバグで、当初はこれをまるまる25話としてブチ込む予定でした。
さすがに文字数ガバ、ということで分割。
イロイロあって遅れましたがこれにて2005年は終わり!次から2006年!
でもその前に書きたいIFだけ書かせてくれや!
今回のほんへを軽く説明すると
主人公はサンジェニュインのはず……!?
ハーツクライのテキに9割もってかれた、の回
これはまっっっったく本編に関係ないが、俺が初めて見たレースはジャスタウェイの安田記念です
2004年12月19日の新馬戦。
向けられたマイクに、1人の調教師が口を開いた。
「アイツは、悔しくて泣いたんです」
その言葉を信じるのに、私は、1年近い時間を使った。
2005年12月25日。
ハーツクライの状態ははっきり言って最高だった。
これまでの何よりも素晴らしく整った馬体。
精神も安定していて、脚も軽い。
ソラを使うこともなく、集中力は高いまま保たれていた。
よし、これならいける、と思った。
これでいけないなら、もう何もかもがダメだろうと。
「1番人気はサンジェニュイン、2番人気にディープインパクト」
その2頭の名前は、早い段階から知っていた。
ディープインパクトは、社来の叡知を集結させた、期待の良血馬として。
サンジェニュインは、やたらと同性の馬に好かれる、変わった馬として。
後者はともかく前者に関しては、古馬戦線でハーツクライと当たったとき、厳しいレースになるかもしれないと予感していた。
それを強めるように、ディープインパクトは無敗で日本ダービーを制した。
普段、取り立てて競馬を話題にしない一般の新聞でさえも、一面にディープインパクトの写真と名前が踊った。
テレビでも何度か話題に出され、競馬場には真新しい腕章を付けた記者を見かけるようにもなった。
そこまでは私の中では十分にありえた光景だった。
しかし予想外だったのは、競走馬としてそこまで興味を持てなかったサンジェニュインの、その躍動。
日本ダービーまでに2頭が争った4戦のうち、皐月賞の同着を除いてはすべて、サンジェニュインは負けている。
それもすべてハナ差決着だった。
管理しているローゼンクロイツがこの2頭と同世代のため、私はこの目で実際に、あのディープインパクトの「鬼」とまで呼ばれた末脚を見ている。
そして痛みさえ感じるほどの、圧倒的な差を思い知った。
後方から追い込んでくるその脚は、それまで走り続けた他馬を押し潰すような、そんな重圧感を持っている。
思わず、「これは勝てないのも仕方ないな」と口にしてしまった。
それはこれまでの管理馬の努力を踏みにじるものであり、調教師として失格だと言われても仕方ない考えだ。
しかしそれだけ、ディープインパクトの存在感は強かった。
その末脚に対して、逃げ馬が一歩も怯まず、対等に競り合っていたのだ。
どころか、差されては抜き返し、また逃げてみせる。
新馬戦は8センチ、弥生賞は3センチ、日本ダービーは1センチ。
この時点でかなり大柄で、骨格も完成されているように見えたサンジェニュインはしかし、「勝ちきれない馬」だと言われていた。
善戦はできるけど、それ以上はない。
身体が仕上がっていてこれならば、もう。
しかし私は、また違った印象を持っていた。
「まだ身体が出来上がっていないんじゃないか?」
菊花賞は無理ですかね、と続けた調教助手にそう言葉を返したのは、気まぐれでもなんでもなく、ちょっとした意地だったのかもしれない。
世間はサンジェニュインを「白いサイレンススズカ」だと持て囃していたが、小柄ながら抜群の回転で以って高速馬場を駆け抜けていったサイレンススズカと、大柄故のストライドの伸びで走っていたサンジェニュインとでは、その実情は大きく異なる。
確かにどちらも走法は【逃げ】で間違いない。
だが脚の使い方はまるで違った。
似ているというのであれば、サイレンススズカのように小柄でありながら、恐ろしい回転数で追い上げてくるディープインパクトの方が似ている。
それに、比較対象となっているサイレンススズカは、もっとも勢いのあった古馬の姿だ。
一方のサンジェニュインは、すでに完成されているなどと言われているが、よく見ればまだトモのあたりが寂しく、幼駒特有のやわさが抜けていない。
予定日を2ヶ月近く過ぎた夏生まれで、その時から大柄だと聞いてからはますます、確信を強めた。
そしてそれは、神戸新聞杯で眼前に現れた。
【サンジェニュイン圧巻の大逃げ!ディープインパクト初黒星】
そう題打たれたスポーツ新聞の記事。
読んだ瞬間、胸にストン、と落ちてきたもの。
── ああ、やっぱり。
サンジェニュインもまた、本格化を迎えていないだけだったのだ。
私の、ハーツクライのように。
2004年の三冠すべてに出走し、しかし無冠のまま3歳を終えたハーツクライ。
4歳になっても勝ちきれないレースが続き、気づけばシルバーコレクターと呼ばれていた。
上の世代にはゼンノロブロイ、下の世代にはディープインパクトとサンジェニュイン。
同世代で最強と呼び声高いキングカメハメハが早々に引退し、種牡馬入りしたあとは、ダイワメジャーや牝馬のスイープトウショウが前に立ちはだかった。
善戦はする。
見せ場も作れる。
けれどどうしてもあと一歩、及ばない。
惜しい馬、ハーツクライ。
悔しくて仕方がなかった。
日本ダービーの時点で480キロ台だったハーツクライもまた、端から見れば完成された馬体に見えていたかも知れない。
だがあの時はまだ、身の詰まっていない軽さが残っていて、ほとんど素質だけで駆け抜けていたのだ。
大丈夫、この馬はまだまだこれからだ。
もっと筋肉が詰まって、トモの張りがしっかりするようになったら。
素質だけで走っていたクラシックで、あんなにも強く戦えたのだから。
本格化したら、きっと。
ハーツクライはすごい馬なんだ。
他の馬にだって負けていないんだ。
だからいつか、いつかきっと──。
馬の前では悔しさを見せたことはない。
悲しさも、怒りも、なにもかも。
ただ丁寧に、丁寧に世話をした。
これからできあがってくるだろう馬体を、最速で仕上げるために。
その開花の兆しは、2005年の秋シーズン。
ハーツクライは魅せた。
「後方からハーツクライ!ハーツクライ突っ込んできた!いっきに上がってアルカセット!驚異の追い込み!ハーツクライ!アルカセット!ハーツクライどっちだ!並んだ、並んだ!……ゴールイン!」
後方、内から猛烈な追い込み。
秋から乗り替わったリュベール騎手を背に、勇敢に、果敢に仕掛けた。
相手はサンクルー大賞の覇者・アルカセット。
追い込むゼンノロブロイより半馬身差抜き出たアルカセットを追い、流星のごとく突っ込んだ。
あの瞬間、勝利を確信した。
デビュー3年目にしてようやくGⅠに手が届く。
これは勝った、掴んだ、と。
── しかし結果はハナ差での敗北。
日本レコードを叩きだしたアルカセットとまったく同じタイムを刻みながら、2頭の間には「3センチ」の差があった。
この敗北に、関係者からは遠回しに「引退」を勧める言葉も出た。
しかし今、今このタイミングで引退させることはどうしてもできない。
もし引退することになれば── ここで、ハーツクライの血が途絶える可能性は高かった。
2004年の秋、ハーツクライと同じく母父・トニービンのサンデーサイレンス産駒・アドマイヤベガが死んだ。
初年度産駒が走り始めた、その矢先のことだった。
母父トニービン×サンデーサイレンス産駒の牡馬で、中央で目立つ馬はこの2頭。
ハーツクライと、そしてリンカーンだけだ。
もしこの2頭のうち片方しか種牡馬になれない場合、重賞を制していないハーツクライは選ばれない。
選ばれないということは、その血を繋げられないということ。
それだけは、それだけは避けねばならない。
この馬は、そしてその血はきっと大成するのだから。
絶対に血を繋がねばならないと固く誓った。
迎えた2005年の有馬記念。
3歳戦線をにぎわせたディープインパクトとサンジェニュインが揃って出走する、年末最後の大勝負。
正直に言えば、かなり厳しいレースが予想された。
無敗ダービー馬のディープインパクトはもちろん、芝3000メートルの世界レコードを持つサンジェニュインは、古馬に交ざっても「敗北」が想像できないほど、強く見えた。
それでも、それでも。
「ハーツクライは勝つ」
ハーツクライの状態ははっきり言って最高だった。
これまでの何よりも素晴らしく整った馬体。
精神も安定していて、脚も軽い。
ソラを使うこともなく、集中力は高いまま保たれていた。
よし、これならいける、と思った。
これでいけないなら、もう何もかもがダメだろうと。
何より、ハーツクライ自身の努力は他馬を圧倒する。
厳しい坂路調教にも、苦しい追い切りにも耐えて。
元は神経質で、気になることがあればなかなか調教が進まない馬だった。
でもこの秋からは、まるで私たちの願いに応えようとするように、ハーツクライは駄々も捏ねずに励んだ。
中山競馬場に入厩するその日。
完璧に仕上がった馬体に、ハーツクライの努力がしっかりと滲んでいた。
これならば、という私の思い以上に、報われてくれ、と神に願った。
ハーツクライはこんなにも頑張った。
ハーツクライはこんなにも必死に調教を熟した。
人馬共に尽くせる努力はすべてやったのだ。
その上で、いるかもわからない神に縋る。
「ハーツクライに勝利の栄光を」
そうして開いたゲートから、白い馬体が躍り出る。
初の古馬戦。
経験豊富な年上の馬を相手に、サンジェニュインは果敢にも逃げに打って出た。
第1コーナーを回る時点で追走するタップダンスシチーに大差をつけ、その速度は緩みない。
あふれでるスタミナを盾にした大逃げは、他馬のペースを大きく狂わせる。
例年の有馬記念と比べて超高速馬場となったレースで、ハーツクライは2番手集団の先頭に付けていた。
ハーツクライもまた、サンジェニュインの作り出したペースにハマっているように見えた。
……だが、違う。
「2番手集団も第2コーナーをカーブするところでハーツクライ、中央を縫って前へ進出していきますっ!」
鞍上のリュベールが鞭をふるう。
いつもの後方からの追い込みを棄てて、先行追走のスタイルを取ったハーツクライは、どよめく競馬場の中でひときわ眩しく輝いていた。
「ぐんっと伸びてハーツクライ!ここで一気に先頭を捉えるか!?眼前に見えるのはもうサンジェニュインの背中だけだハーツクライ、懸命の追走!」
ハーツクライの馬体が緑に映える。
その後ろからもう1頭、鹿毛が首を突き出した。
「── しかししかし、太陽を追うのは1頭だけではありません!後方集団から大外イッキに上がってきたのはディープインパクト……!」
抜かされ、抜き返し、また差されて差し返した。
ディープインパクトと叩き合いながら、それでもハーツクライは先頭のサンジェニュインを目指して走り続ける。
第3コーナーを過ぎ、第4コーナーを越え。
迎えた直線。
ハーツクライがディープインパクトを張り付けたまま、サンジェニュインに並びかけた。
「並んだ!並んで誰が抜く、誰が、誰が……!?」
残り100メートルでアタマ差抜けたハーツクライがサンジェニュインに差し返され、それでも横並び一線。
「3頭並んでゴールイン──!なんということだ、なんということだ有馬記念!3頭、3頭キレイに横一線に並んでゴール板を踏み抜きました……!」
3歳の両雄に挟まれて、それでもなお光り輝いていたハーツクライが、下を向いていた。
その姿を見て── ああ、負けたのか、と思った。
まだ写真判定は続いていた。
ハナ差なのは確定していた。
助手が必死に「競り勝ってますように」と祈る横で私は、私だけは、うつむいた顔を上げられなかった。
きっと、場内アナウンスで流れる1着馬の名前はハーツクライではない。
その確信以上に、あの大接戦のゴールを見てもなお、ハーツクライが勝ったと自信をもって言えなかったことが、ただ恥ずかしく、情けなかった。
ハーツクライ。
お前は最後まで走りぬいた。
誰にも恥じない見事なレース。
力強い駆け脚で飛び込んだゴール。
私は誰よりもお前の勝利を信じるべきだったのに。
「すまない、ハーツクライ」
お前が足りなかったんじゃない。
私がお前にふさわしくなかった。
ドッと沸きあがる観客の声に包まれたままうつむく。
隣で助手が絶望したように声を漏らしたのを聞く。
勝ち名乗りをあげることもかなわずに散る12月の、寒い中山競馬場。
これからハーツクライはどうなる?
GⅠを勝ち得なかった、アイツは。
茫然とする私の顔に、するりと柔らかい毛が当たる。
驚いて顔をあげれば、ターフから戻ってきたハーツクライが眼前に立っていた。
鞍上のリュベールが真横でその手綱を持っている。
申し訳なさそうに眉を下げる、まだ26歳の青年。
言葉も十全に伝わらない中で、身振り手振り、通訳挟んで、厩舎スタッフに次いでただまっすぐ、ハーツクライという馬に向き合ってくれた。
この青年が、ハーツクライは前での競馬だって十分にこなせると、私たちに力説しなかったら。
今日のレースでこんな接戦を見ることはかなわなかっただろう。
「サンキュー、リュベール」
片言の英語で感謝を伝える。
リュベールはくしゃりと表情を崩して、それでも涙を見せずに頭を下げた。
それに連動するように、ハーツクライが再び、私の頬に顔を摺り寄せる。
まるで慰めるように、励ますように。
その毛が濡れていたことに、2度目になって気づいた。
両手でハーツクライの顔に触れる。
汗で濡れているのではない。
目の周りがぐっしょりと濡れて、ただ濡れて。
丸みを帯びた瞳とかち合ってようやく、私は。
1年前の新馬戦── ディープインパクトに敗北したサンジェニュインの調教師が語った、あの言葉を理解した。
「アイツは、悔しくて泣いたんです」
何を馬鹿な。
馬は感情では泣かない。
そんな馬を見たことはない。
様々な馬を育て、共に生きてきた私は、そう考えてやまなかった。
人の勝手な解釈によって、馬に不必要なドラマ性を持たせるなんて三流のやり方だ、とも。
けれど、けれど。
「悔しかったか、ハーツクライ」
返事はない。
当たり前だ。
馬と人で言葉は通じない。
そこには純然とした壁がある。
わかっている。わかっているのに、顔を上げたハーツクライの、その瞳。
── そうか、ハーツクライ。お前はまだ、諦めていないのか。
濡れた目元が、輝きを失わない瞳が、私に強く訴えてくる。
聞こえないはずの、その声なき声が胸を突く。
すまない、ハーツクライ。
大接戦を演じてくれたのに、信じきれなかったこと。
お前の将来ばかりを見て、今のお前の、その気持ちを考えなかったこと。
ああ、そうだとも。
よりによって私が諦めるなんて。
お前はこんなにも強く、前を向いているのに。
「センセイ」
まだ手綱を持ったままのリュベールが声をかけてくる。
「ハーツクライ、ツヨイ。マケテナイ」
まだ不慣れで、片言の日本語を操って。
だからこそ混じりけのない、純粋な言葉が眩しい。
「I shouldn’t give up, you shouldn’t give up, he shouldn’t give up」
歌うような声に、ハーツクライが瞬きをする。
「One more chance」
奥底に沈みかけていた覚悟を引きずり出される。
「ハーツクライ」
出会ったばかりのころ、まだ神経質で気難しかったお前。
本当はまだちょっと、調教に手が掛かるお前。
でもこの秋のお前は、本当に、今までの態度をひっくり返したようにまっすぐ、前を見ていたな。
負けたら後はない。
重賞を勝てない馬の末路など知れている。
それは間違っていなくて、そこらへんに転がっている真実で。
だけれど、私はきっと。
「どんな瞬間でもお前が勝つと確信していなければならなかったな」
チャンスは残り少ない。
もしかしたらこれが最後なのかもしれない。
焦って、焦って、怖くて。
何十年と調教師をやっていても、まだ恐怖はある。
調教師なんて意外と無力なものだ。
わかっているとも。
それでも。
「絶対に、繋いでやるからな」
次のレースへ。その脚を。
未来のレースへ。その血を。
絶対に。
社来レーシングクラブに呼ばれたのは、有馬記念が終わった、その日の夜のことだった。
「やあ先生」
社来ファーム代表の吉里照臣は、競馬界に身を置いている人間で知らない人はいないほどの有名人だ。
数々の名馬を産み出した社来ファームの代表と言うだけでなく、優れた相馬眼を持つ馬主としても名が知れている。
ハーツクライのみならず、ディープインパクトもサンジェニュインも、社来グループで生産された馬だった。
今回の有馬記念は、社来産の馬が3頭、占めた形になる。
あの三つ巴を誰が制しても、吉里さんにとっては吉報になっただろう。
特に白毛馬のサンジェニュインのグランプリ制覇は、日本のみならず世界中からも注目されることがわかり切っている。
日本の馬産業を心の底から愛している人徳に優れた人であることに間違いはないが、それと同じくらいレース結果に厳しい人でもあった。
それは「より速く、より優れた馬からさらに優れた馬を作り出す」ことを目的としたサラブレッド研究として、何にも勝る「正道」ではあるものの、ハーツクライはまだやれると、その血を繋いでやりたいと思う今の私にとっては、その厳しさこそが最大の壁だ。
何を言われるか。
引退して種牡馬入りならまだ良いが、行先が乗馬であれば何としてでも抵抗しなければならない。
拳を作って向き合うと、吉里さんはにこりと笑顔を浮かべて手を差し出した。
「有馬記念、ハーツクライはいい走りをしたね」
「え……あ、ああ、はい。リュベール騎手が上手くやってくれました」
「うんうん、見事な作戦だった。3頭並びあったときは「これはハーツクライが勝ったかもしれないな」と思ったくらいだ。テンの遅い馬だと思い込んでしまったのが申し訳ないよ」
「……そうです、ね」
吉里さんは機嫌良さそうに話を続けた。
「リュベールくんとは相性も良さそうだね」
「ええ。息が合うみたいです」
「いいね。レースにもそれが良く表れていた。……今回はハナ差1センチで実に惜しかった!JCでアルカセットに同タイム負けをした以上の悔しさだ」
「……はい」
いつ、その口から「引退」が告げられるか気が気でなく、口の中が乾いていく。
そんな私の様子に気づいていないのか、吉里さんは私の肩をポンポンと叩く。
「悔しくて悔しくて、それ以上に──
「え?」
今、なんて。
「正直に言うととても迷った!サンジェニュインもディープインパクトも優れた馬だからこそ、ハーツクライのあの惜敗は「勝ちきれない」を強く印象付けてしまったからね」
反論の余地はなかった。
どれほど私が、ハーツクライは負けていないんだと、強い馬だと言おうとも、結果の前には無力である。
いっそ清々しいほどの完敗ではなく、わずか1センチの惜敗だったからこそ、運も実力のうちと言われるこの競馬界では、ハーツクライの負け方は痛い。
どんなにディープインパクトに迫ろうとも、1センチ差であろうとも、神戸新聞杯、菊花賞で大きく差をつけて勝つまで、なかなか評価されなかったサンジェニュインが、それを物語っていた。
「陳腐な話だけど、瞳がね」
「……瞳?」
「そう、ハーツクライの瞳。びっくりしたなあ。サンデーサイレンスを初めて見た時みたいな、燃える瞳をしていてね。ああ、この馬はまだまだ走るなって思ったんだよ」
私の脳裏にも、瞳の奥がごうごうと燃えるハーツクライの姿が浮かんでいた。
あの、まだ負けていない、まだ、まだと言いたげな、力強い瞳だ。
「もう一皮むけるんじゃないかって、期待してもいいかな?」
その言葉に、私は。
「── もちろんです」
ハーツクライはまだやれる。
むしろ、ここからだからこそ、やれる。
遥か1センチ差の白い背を追いかけて。
ゴール板を先頭で駆け抜けるハーツクライの姿が、私の脳裏にしっかりとあった。
「人馬ともにいい瞳だ。それで次走なんだけど── ドバイシーマクラシック。ここに、リュベールくんと一緒に挑戦してほしい」
ドバイシーマクラシック。
ドバイのナドアルシバ競馬場で開かれる、国際GⅠレース。
そこに、GⅠ未勝利のハーツクライを出走させる……?
「勝てないと思うかい?」
試すような声色に、私は間髪入れずに首を横に振った。
どんなレースだって、ハーツクライは勝つためにひたむきに走るだろう。
ただ、国内でさえGⅠ勝ちがない中での、海外レースへの出走だ。
「ステイゴールドに続け、というわけじゃないけど……血統だけ見ればハーツクライも海外の馬場に適応できる要素は十分に備えている。あとは肝心の脚だけど── これも、有馬記念を見てGⅠ勝ち馬にまったく劣っていないと思った」
── ああ、なんて心地いいんだろう。
ハーツクライの実力を、認めてほしい人に十分に理解してもらえている、この充足感。
のしかかる重圧以上に、その期待に応えたいという情熱のほうが大きくなっていた。
「……ドバイシーマクラシックに向けて、万全の体制で挑みます」
「うん。よろしく頼むよ」
吉里さんが頷きながら笑う。
この部屋に入ったときは緊張と不安でいっぱいだったが、今はただ、希望でいっぱいだった。
夜も深まってきたこともあり、ここでそろそろ、と私が引き下がろうとすると、思い出したように吉里さんに引き留められた。
「そうそう。可能性の話なんだけど、ドバイシーマクラシックにはサンジェニュインも出走する可能性があるよ」
「サンジェニュインが、ですか?」
「うん。ダービー後から海外遠征はプランに入っていたんだけど、予定としては欧州のレース中心かな。あの馬は荒れた馬場のほうが好きみたいでね。出走するレースについてはクラブのほうに一任してるからアレだけど、ま、可能性の話だから」
そうか。
サンジェニュインも海外遠征。
有馬記念であそこまでのパフォーマンスを見せたのだ、海外で走らせたくもなるだろう。
それもまた予想できていたことだ。
ドバイシーマクラシックにサンジェニュインが出走するなら、それじゃあハーツクライは厳しいレースを強いられてしまうか、って?
いいや。
むしろ、好都合だ。
「ハーツクライは負けたままでは終わりません。いつか再戦を、と思っていたので、その機会が早めに巡ってきてよかったです」
「……いいね。ますます楽しみになってきた!」
今度こそ部屋から出る。
扉を閉める間際、吉里さんはまだ、笑っていた。
厩舎へと帰る足が軽い。
早く帰りたい一心で、少しずつ早足になる。
それでもまだ着かなくて、もう決して若くはないのに、気づけば駆け出していた。
星がキラキラと輝く冬の空を見上げて、心の中で叫ぶ。
ハーツクライ。
ハーツクライ、ハーツクライ!
お前はまだ、走れるぞ。
3月17日、早朝。
栗東トレーニングセンターには2台の馬運車がその時を待っていた。
1台にはハーツクライと、その帯同馬を務めるユートピアの2頭が。
そしてもう1台には── サンジェニュインとその帯同馬が乗りこんでいた。
向かう先はドバイ、ナドアルシバ競馬場。
そして目指すは1着、ただそれのみ。
2006年。
多くの日本調教馬が海外レースへと出走していった。
世界でも決して劣らないという証明。
その2頭は何よりも眩しく、何よりも輝いていた。
次回、2006年1月から!(この話の終わりは3月になっているがそのちょっと前からスタートするガバ!再走しろ!)
登場人物
ハーツクライのテキ ヒト族 男
本名:橋本弘継
ダンスインザダーク等を手掛けたベテランのテキ
ハーツクライの信じきれなかった自分を悔やみつつ、諦めないハーツクライと一緒に打倒主人公を掲げる
海外の兄ちゃんその2 ヒト族 男(26)
のちに日本でその名を轟かす名ジョッキーの若き日の姿
本名:グラン・リュベール
秋天、JC、そして有馬と、惜敗が続いてがっくりきていたが、ハーツクライと一緒に魂燃やしてテッペン目指してる
のちにサンジェニュイン産駒でゴルシ&ジャスタと同期のシルバータイム(ジャスタと馬主一緒)の主戦騎手もやる
ハーツクライさん 牡4
神経質ゆえ気難しい面もあるが、基本ヒトがすっき!
そろそろ結果で返してやりてえな~とちょっぴり焦っていたところで有馬記念敗北したが、主人公に煽られた(煽ってない)ことで「やってやらあ!」となった
主人公のことは確かにすっげえ美貌だな、見惚れちゃう、気も合うなと思っているものの、それと勝負はまた別
ディープインパクトさん 牡3
前話にて海外遠征をせずに国内戦に専念することが発表された
なんかよく知らんポッと出の野郎にライバルポジを取られた気がしてバッチバチに燃えてる
2006年はこのウッマから始まるかもしれない(わからん)
サンジェニュイン 牡3
主人公のはずなのに今回いっさいしゃべってない
でも第三者目線でバチクソ注目されていることは明らかになったよ!
2006年は一言で言うとこんな感じ!(嘘)
ハーツクライさん(5)VSディープインパクトさん(4)VSまたしても何も知らないサンジェニュイン(4)
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27.その瞳はまっすぐと
2006年シーズン開始!!!!
タイトル回収に向けて頑張るぞ!!!!(サンジェニュインが)
有馬記念も遠い昔、ではないけど過ぎ去って、今は2006年1月。
俺は2週間の放牧に出された。
「おかえり、マイサン」
ただいまタクミ~~!
元気い!?太った!?
「こらっ、腹をつっつくなって。妙なこと覚えちゃってお前は……」
うーん、タカハルといいタクミといい、牧場の仕事は忙しいはずなのになんでお腹に脂肪が?
「はははっ、最後にあったときより大津くんの腹回り、太くてびっくりしたんだ」
「ちょ、新庄さん!」
「マイサン~!おっきくなったね!大津くんはマイサンが勝つ度に祝い酒飲んだくれてたからビール腹になっちゃったんだよ」
「新庄さん!寝藁は!?」
「あいあ~い!」
シンジョー、相変わらず笑い上戸なんだなあ。
あ、新庄っていうのは牧場スタッフのひとりで、タカハルとタクミがいない時の俺の世話係。箸が落ちただけで笑い転げるような元気な女性だ。実際に運んでた寝藁の束が1つ落ちただけでヒィヒィ言ってた。
で、大津ってのがタクミの名字。
本人は「微妙に言いづらくて自己紹介したくない」って言ってたけど。
「まったくあの人は……自分だって祝い酒してたのに……」
タクミよ、そう赤くなるな!
俺が勝って嬉しかったなら素直にいってくれよもお~~!!
えへへ、勝つ度にビール飲んじゃってもお~~!!
くるしゅうない!もっとビール飲んでいいぞ!!
「ああほら、こいつは理解できるから調子乗っちゃう……マイサンお前、ここには休みに来たんだからあんまりはしゃぐな」
休みだからはしゃぐんやろがい!!
俺の綱を持つタクミを横目に頭を振る。
「うおっとと、お前なあ。トレセンじゃ従順だって評判みたいだけど、相変わらずやんちゃ坊主で」
俺はオンとオフを使いわける男なんだよ。
それにしても、入厩して以来の実家── 社来ファーム・
出る前と変わらず……いや、出る前より明らかに発展してんな!
懐かしさを一切感じないレベルで厩舎がピッカピカになってね?
「ん?どうした、馬房行くぞ」
いやいや、なんか、きれいじゃん。
俺が出るときはこう、もうちょい所帯じみた、こう、庶民感のある建物だったはず。
前の放牧でお世話になった
「……ああ、建物が違うから戸惑ってるのか?これな、お前がレースを頑張ってくれたおかげで、本社からこう、いろいろあってな」
ああ、報奨金的な?
馬相手にずいぶん濁すな。
ぶっちゃけちまえ!誰かに言うこともない馬相手だぞ。
「まあ言っちゃうと、GⅠ級ホースの出身牧場としての体裁を整えた感じだな」
ぶっちゃけたな。
「元からあったリハビリ施設も良くしてもらったし、飼い葉の質も上がったから良いことだらけだよ。……お前は本当によく頑張ってくれた、うちの孝行息子だよ」
……んふふ。
まあ、ちょっとは恩返しができたのか、な?
俺の獲得賞金は、クラブから一口の兄ちゃん姉ちゃんへ、他にはテキたちのお賃金になったりする、って聞いてたけど、俺を生産した牧場はどうなるのか不安だったんだよな。
俺が勝てば勝つほど、この陽来が良くなっていくなら、これからも頑張らないと!
「そうだマイサン」
ん?
「マイサンと同じ栗東のトレセンから1頭、うちで預かっている馬がいるんだよ」
ほーん?
栗東にはそれこそ数え切れないほど多くの馬がいるし、俺はこの美貌だろ?普段は他馬を避けて調教してるから……たぶん知らない馬だなあ。
「シーザリオ号っていうんだが」
知ってる馬だなあ!?
アイエエ!?シーザリオちゃん!?
アメリカから帰ってきたあとに放牧に出されてるって聞いたけど、うちだったんだ!?
前に聞いたときは放牧先は早来だって言ってた気がするけど。
「……お、もしかして知ってる馬か?」
知ってるも何も併せ馬フレンズだわ。
「もうこの際、お前が明らかに名前に反応しているのは無視するが、そのシーザリオ号がな、リハビリのために早来から移動してきたんだよ」
エッ、リハビリってことは、シーザリオちゃんどっか悪いのか!?
前に脚元が不安って言ってたから、もしかしてそれ絡みだろうか。
……心配だなあ。
うちのリハビリは結構評判がいいって前にタカハルが言ってたけど、ほとんど知り合いのいない牧場での生活は窮屈じゃなかろうか。
俺が早来にいたときも、周りの馬が「なんだこいつ、顔イイけどしらねー馬」って顔してきたしな。
なあタクミ、シーザリオちゃんに会わせてくれよ。
なに、暴れたりしないって。
俺が暴れない大人しい馬なのは知ってるだろ?
「会いたいのか?」
頼むよ~!
「……うーん」
何に悩んでんだ、俺は別にシーザリオちゃんをひっぱって「野良レースしようぜ!ギャハハ!」なんてする気もないんだぞ!
善良なオッス馬だ!!!!
「牡馬と牝馬だしなあ」
オッス馬であることが問題だったか……。
いや、よく考えりゃそうだったな、俺とシーザリオちゃんは異性だから同じ牧草地に放てないか。
でも会いたいなあ。
せめて柵越しでも会えない?
マジで大人しくしてるよ俺、なんだったら近くで監視してていいから。
「隣の牧草地ならいいか。……連れてかないと駄々こねるだろうしな」
やっりい~~!!
最後の一言は聞かなかったふりをしてやるよ!
「どうどう、暴れるなって。お前がいるとほんと、賑やかだな」
でもその賑やかさが楽しいんだろ?
口元がにやけてるぜ、タクミ!
1人と1頭でにやにや笑いながら、シーザリオちゃんの牧草地を目指した。
『……あ!おーい、シーザリオちゃあん!!』
牧草地に1頭、青鹿毛の馬体が見えた。
美しい毛並みが風に揺れる、その姿は見覚えがある。
振り返った顔の、小さな流星がきらりと光った。
『あらまあ、サンジェニュインさん!おひさしぶりですね!』
『ひっさしぶりー!いやマジで久しぶり!!』
シーザリオちゃんと最後にあったのは確か皐月賞が終わってすぐのころ。
だいたい9か月くらいは会っていないことになる。
……会ってなさすぎい!?
あの頃は俺も日本ダービーが控えていたし、シーザリオちゃんは日米オークスがあったから、結構すれ違っていたんだよなあ。
本当に久々の再会だったが、前に会ったときよりは馬体は大きく見える、気がする。
『怪我したって?レースで怪我したのか?』
『ああ、いえ、実家に── 生まれ育った牧場にお休みに行ったときに判明したので、実はいつ怪我を負ったのかは……こちらに移動してからはずいぶんよくなりましたよ』
そう言って笑うシーザリオちゃんだったけど、怪我は思ったより大きかったらしく、まだまだ治るには時間が掛かるらしい。
産まれ故郷のノータンファームから、社来ファーム・早来で軽い治療を受けてたみたいだけど、本格的に治療・リハビリに専念すべく、牧場内にリハビリセンターがある俺の実家・陽来に移動してきたようだ。
『まだ痛いのか?』
『いいえ、痛みはもうほとんどないのですけれど……前みたいにうまく走れないのです。治るまでもうちょっと時間が掛かりそうですし、それに』
シーザリオちゃんの表情はあんまりよくない。
……あ、表情とは言ってもたぶん、ヒト目線ではそんなに変わんない。
ただ同族になった影響なのか、俺もずいぶんと喜怒哀楽がわかるようになった。
シーザリオちゃんは明らかに落ち込んでいる。
『それに、って?どうしたんだよシーザリオちゃん』
『……どうも私、ここまでみたいなんですよね』
『ここまで、って?』
言いにくそうにシーザリオちゃんが頭を下げる。
俺がそれを覗き込もうとするので、観念したのか口を開いた。
『もう走れないってことです』
『……えっ!?』
あまりのことで反応が遅れてしまった。
走れないって、シーザリオちゃん、日米オークス制してこれからってところじゃん!
『人間たちの雰囲気が、なんといいますか、そんな感じなのですよ』
『えっ、でもそれって、えっ、どうなるんだ!?』
『……母たちのいる群れに合流、ですかねえ。つまり、繁殖に入るということです』
『はん……ッ!?』
繁殖。
生命体の子孫が増えること。
つまり、子作り。
そ、そりゃあ馬という、血統がものを言う生き物である以上そりゃあ、いやわかってたけど。
シーザリオちゃんは俺と同い年、2006年1月1日付けで4歳になったばかり。
馬の繁殖がいつから可能なのかは知らないけど、俺の感覚的にはこう、ちょっと若いんじゃない!?
『えっ、えっ、俺たちくらいでその、は、はん、繁殖とか入れるの!?』
『さあ……でも、走れなくなった次は、命を繋ぐのが役目だって母は言っていました。私は2つの大きなレースで勝てたから、きっと良縁に恵まれるだろうって』
『……シーザリオちゃんは、それでいいのか?』
口にしてから、ああ聞くべきではなかったな、と思った。
俺たち馬は、例え嫌だと思ったことでも反抗する術はない。
反抗するべきでもない。
ヒトは常に俺たちの最善を考える。
何がこの馬の『最良』たりえるかを模索している。
そのために、時には俺たちの小さな望みさえも、費やす必要があるから。
『いやですよう』
やっちゃったな、と思った俺の目の前で、シーザリオちゃんがあっけらかんと言った。
『もっと自分の脚で走りたいですよう、そりゃあ』
でもね、とシーザリオちゃんが続ける。
『走って、怪我をして、二度と戻って来られない虹の向こう側まで行ったら。……それが一番悲しいことよって、母が言ったのです』
戻って来られない場所。
架かる虹の向こう側。
『それよりは命を繋ぎなさいって』
── 為せなかった夢は、その血が繋ぐでしょう
『いつか彼女も繁殖に入るでしょうね。彼女だって大きなレースを制したのですから。……きっと遠くない未来、私の仔と、彼女の仔が同じレースを駆けるかもしれません』
シーザリオちゃんの瞳は、未来を見ているようだった。
いつの日か見た、ラインクラフトちゃんのあの、まっすぐな瞳に似ていた。
『……サンジェニュインさん、寂しそうな顔』
『……そんな顔してないし』
『していましたよう。……あなただっていつか、その血を広める日が来るでしょう』
来るかな、まったく想像できないんだけど。
そもそも俺、今まで自分が牡馬にうまぴょいされない事を考えてきたけど、自分が牝馬とうまぴょいすることは考えてなかったから。
シーザリオちゃんやラインクラフトちゃんほど、血を繋ぐことにまだ自分なりの意味を見いだせていない。
そんな俺が血を繋げていいものか……でもきっと、いつか、俺の血を繋ぎたいって言われたらきっと、頑張ろうとはするだろう。
俺たち馬は、ヒトに望まれて生きているのだから。
『
『かもなあ』
ふわっと風が吹いて、シーザリオちゃんの鬣が揺れる。
凛とした彼女は、まだまだ走れそうな輝きを持っていた。
けど遠くはない、いつの日か、仔を生む母になるのだ。
そして我が仔に強さを伝えていくんだろうな。
『……でも本当は、やっぱり、自分の脚で勝ちたいですねえ』
こぼれた小さな嘶きは、次いで吹き抜けた風の鋭さにまかれて、俺にしか聞こえなかった。
陽来での放牧はあっという間に過ぎた。
別れ際のシーザリオちゃんは笑顔で、元気そうに見えた。
タクミたちも見送りに来て、道中のおやつにとりんごをバケツごと渡される。
そうして用意されたお馴染みの馬運車に乗って、合間にりんごを食べながら、俺は栗東トレーニングセンターに帰厩した。
「おかえり、サンジェニュイン」
ただいま目黒さん。
もうくったくただわ、やっぱり北海道からこっちって遠いな!
「体重は、見目はそこまで減ってないな。乗ってる時もちゃんと食べられたか?」
りんごたくさん貰ったからな。
あ、ちゃんと飼い葉も食ったぞ!
水も飲んだし。
「よしよし、偉いぞ」
んふふふ、もっと褒めてもいいぞ?
「目黒くんおつかれ。サンジェの調子はどう?」
「テキ。ええ、問題ないです」
「……ウン、ちゃんとリフレッシュできたみたいでよかった。もっと馬体重増えるかと思ってたけど、割と絞れてていいな。ウン」
テキがうんうんと頷く。
放牧中も元気に走り回ってたからなあ。
シーザリオちゃんのリハビリにも付き合ってたし。
それ以外は食っちゃ寝してたから、やっぱりトレセンにいる時よりは太ったんだけどな。
「目黒くん」
「はい」
「クラブから出されたローテ通り── まずはドバイに行こう。ドバイシーマクラシックだ」
ドバイ!
俺の次走は海外って決まってたけど、どこの国の何のレースかは決まってなかった。
ドバイの── しーまくら?シック、らしい。ん?いや、シーマ、クラシックか?
「海外初挑戦でGⅠは正直想定外だけど……サンジェニュインの実力なら問題ないだろう」
「同意します」
テキ、目黒さん……!
はじめてのレースでめちゃくちゃ期待されるとこう、弥生賞前に「絶対うちのサンジェが勝つ!」コールされたこと思い出しちゃうな……。
いやでもまあ、今の俺は、前の俺とはひと味違うから!
国内GⅠも勝てたし、ギリギリとはいえ、いやほんっとギリギリとはいえなんとかハーツクライさんにも勝てたし。
っていうか去り際のハーツクライさんなんかキレてなかった?
めちゃくちゃ鬣を噛まれたんだけど。
こう、グッグッと噛まれて、しまいには尻尾近くまで噛まれたけど。
絶対怒ってたってアレ、怒ってませんって顔してたけど怒ってたってアレえ!
「……でもテキ、そのレースの馬場って」
「……あー、けどまあ、日本よりは」
「それはそうですけど」
身体もすごい押されたから……なんでえ?
俺が勝ったから?
いやでも負けたからって噛むような狭量なひと、じゃねえや馬には見えなかったし。
ディープインパクトとハーツクライさんとおんなじ馬運車に乗って帰ってきたけど、降りるときは「また次のレースで」って言って別れたし。
たぶん怒っては……じゃあ俺なんで噛まれて……っていうかテキと目黒さん、なにコソコソしてるんだ?
ハーツクライさんが怒ってるかどうか考えてて聞き逃しちゃったからもう1回言ってくれ。
「……まあ、現地についたら解るか」
「それでいいんですか、テキ」
「なるようにしかなるまい。俺たちは最善を尽くすのみ。クラブとしては、ドバイはあくまで
「それはまた、豪華な前哨戦ですね」
「まったくだ。……だが、一切手を抜くつもりはないよ。コレまで以上にサンジェには頑張って貰う必要があるし、俺たちもそれ以上に頑張る必要がある」
テキが俺の頭を撫でる。
「頑張れるか、サンジェ」
……おいおいテキ、誰に聞いてるんだ。
今まで俺が頑張ってこなかったとでも?
テキたちが俺のために最善を尽くして頑張ってきたのと同じように、俺もまた、いろいろなものを尽くしてきたよ。
ドバイでも頑張れるか、否か。
答えはもちろん、頑張れる、だ!
「おお、いい嘶きだな」
ドバイでもアメリカでもダートなんでも、かかってこんかい!!
……いやごめん、ダートは走ったことなかったわ許して。
「テキ、今期のローテーションは」
「ウン。ドバイの次はフランス、シーズン初戦をガネー賞で慣らして一度帰国。6月のサンクルー大賞のあと、翌月はキングジョージ6世&エリザベス女王ステークス。調子を見てインターナショナルステークスとフォワ賞、だが、ここはスケジュールがきついかもしれないから、ま、戦績を見て判断。そしてその次は……」
テキが両手で俺の顔を持ち上げる。
「凱旋門賞だ、サンジェ!」
目黒さんが言っていた。
凱旋門賞は、日本の馬が何度も挑戦して、挑戦して、それでも取ることができなかった冠。
日本生まれの、日本調教の馬でその頂に立つことが、日本競馬の目標の一つだと。
「お前なら、きっと取れる」
テキの目がキラキラと輝く。
疑うことのない……いいや、信じることだけを決めた、まっすぐな目だった。
次回、正式なローテーション発表!ひさびさだねカネヒキリくん!はっぴーらぶらぶ!
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28.4歳の俺は格好良い、カネヒキリくんもそうだと言ってる
カネヒキリくんをカネヒキリくんで装飾した本編。
「揉み合いを制してカネヒキリ!カネヒキリだカネヒキリが抜け出したっ!ここから差をぐんっと広げてもう決まりか、これはカネヒキリ圧倒的な強さ!鞍上竹も見事なコース取りですが、何よりも他馬をちぎったその差し脚、まさに稲妻のごとし──ッ!」
2006年2月19日 GⅠ フェブラリーステークス ダート1600メートル
レースは短距離戦と見紛う高速展開の中、中団後方から追走するカネヒキリくんが終盤で一気に抜け出して完勝。
実績もある年上の馬がひしめくなかで、その走りはまさに【差して潰す】ような強さ。
2着馬に4馬身差を付けての圧勝だったとか。
カネヒキリくんすげえ!!!!
ちなみにこのレースの4着はヴァーミリアン。
どうやら出だしでミスったらしく、それでも先行集団に上手くつけたレース運び。
超が付くハイペースの中、2着馬と3着馬に張り付いて、こことタイム差なしでゴールしたみたいだから、スタートをポンっと出れたらカネヒキリくんも危うかったかもしれない。
ヴァーミリアン、俺に性癖の圧をかけてくるやべーところがあるだけで、実力自体は高い馬だからな!
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【いざ海外遠征へ】第23回フェブラリーS覇者・カネヒキリがドバイワールドCに出走 |
ダートの実力馬が揃う中、4歳初戦で見事な差し切り勝ちを見せたカネヒキリ(牡4、栗東・居住昌彦厩舎)は、招待を受けて3月25日開催のドバイワールドカップへ出走することを正式に発表した。 居住師は「実力は申し分ない。今まで通りの勝負根性を発揮するだけ」とコメントしている。
同馬は、同日に開催されるドバイシーマクラシックへ出走するサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)の帯同馬を務めることも発表されているが、これは2頭の相性の良さから結ばれた縁であり、サンジェニュインもまたカネヒキリの帯同馬を務めることが発表されている。
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【海外遠征ローテ発表】 |
2005年度の最優秀3歳牡馬に選出されたサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)の、2006年度春夏のローテーションが所属するサイレンスレ・・・
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「よかったな、サンジェニュイン。ドバイも一緒にいけるぞ」
『んふふふ、もう楽しみ~~!!』
そう、ドバイ。
フェブラリーステークスを圧勝したことで、カネヒキリくんの海外遠征が正式に決まったのだ。
行き先は俺と同じくドバイで、出走するレースはドバイワールドカップ!
同じナルドア、ん?いや、ナドアル……?どっちかは忘れちゃったが、俺が出走するドバイシーマクラシックと同じ競馬場で同日に開催される。
……もしかしたらカネヒキリくんのレース見れる!?とか思ったけど同日なら無理だわな。
カネヒキリくんのめちゃ強レースも見たかったし、俺が走ってるところも見て欲しかったなあ。
でもしゃーない、かわりに一緒に調教とか受けられるっぽいし、しばらく一緒なのは楽しみだなあ!!
「ハーツクライ号にはユートピア号が、サンちゃんにはカネヒキリ号が帯同馬、ですか。……豪華ですね」
「そうだな。まあ、サンジェニュインの帯同馬がカネヒキリ号、というよりは、お互いがお互いの帯同馬、と言うのが正式だが」
帯同馬。
海外遠征などで連れ添ってくれる馬のこと。
大体は同じ厩舎の馬が選ばれるらしく、ハーツクライさんも同厩舎のユートピアさんって馬が帯同馬らしい。
俺の場合は、そもそも本原厩舎にいる馬が俺1頭ということもあって、誰を帯同馬にするのか、テキやクラブのお偉いさんたちはずいぶん悩んだみたい。
最初は同じクラブのヴァーミリアンを帯同馬にするって話もあったみたいだけど、フェブラリーステークスの結果から、ヴァーミリアン側の調教師が難色を示したとかどうとか。
適当にそこらへんの馬を添えるわけにもいかないし、というか知らん牡馬と一緒にぶち込まれたら俺がヒィン!しちゃうだろうし、もういっそ1頭で行った方が良いんじゃないかってテキは思ったらしいよ。
いやまあ、確かに知らんやつと一緒に知らん場所に行っても失敗する予感しかしないもんな。
……組んでくれる相手がいなくて、別クラスの余った人とペア組むことになった運動会練習思い出して切なくなっちゃったよ。
ひとり旅でも俺は気にしねえ!!と強がったところで、親の顔よりは確実に見た、あのディープインパクトの馬主から提案があった。
伝えてくれたイサノちゃんの話が長かったので要約すると、うちのカネヒキリもドバイ遠征に行くので飛行機や滞在厩舎等々ご一緒にいかがですか、という提案だ。
俺はこれにびっくりした。
『カネヒキリくんの馬主ってディープインパクトと同じだったんだ!?!?』
カネヒキリくんと出会った1歳の冬から約2年とちょっと経つけど、今まで同じレースに出たこともなければ、馬主が頻繁にトレセンに顔を出すってこともないから、俺は今まででカネヒキリくんの馬主を知らずにいた。
というか、俺やヴァーミリアンみたいにどこかのクラブの所有馬だと思っていたのだ。
それがディープインパクトと同じ馬主だとは……弥生賞でぶっ倒れたとき、カネヒキリくんがやたらディープインパクトに詳しいなと思ったらそういう。
てっきり生産が同じノータンファームだからそれ繋がりだとばかり。
「……お、カネヒキリ号が来たぞ、サンジェニュイン」
目黒さんがそう言って俺の頭を撫でるので、寝転んでいる状態からバッと立ち上がった。
竹林の向こう側から、栗毛の馬体がのっそりと歩いてくるのが見える。
『カネヒキリく~~ん!!!!』
ぴょん、と跳んでカネヒキリくんにアピールする。
そんな俺の後ろには、出番を待つ馬運車が2台並んでいた。
「うおおお、ッカネヒキリ、頼む、急に走らないでくれ……っ!」
俺の姿を見つけて走り出したカネヒキリくんに引きずられる厩務員、ごめん。
そして急に跳びだした俺に振り回されるイサノちゃんも、ごめん。
でもでもだって、久しぶりなのだ。
カネヒキリくんが去年の11月末、ジャパンカップダートに出走して以来約3ヶ月。
大事な時期だからってことで長いこと、俺とカネヒキリくんは会えない状態が続いていた。
【お互いを帯同馬とする】ことで俺のいるクラブと、カネヒキリくんの馬主が合意したことで、こうやってまた会えるようになったのだ。
『カネヒキリくんカネヒキリくん、久しぶりだなあ!!ますます男前になりやがって!!』
ちょっと見ない間に、カネヒキリくんはまた大きくなったようだ。
栗毛の馬体はいつ見てもぴかぴかで、ちょっと風が吹くだけで鬣がふわふわ揺れていた。
丸い瞳はつやつやしたブドウみたいだ。
額の細い流星が懐かしくて、思わず頬をすり寄せる。
マジで久しぶりだなあ、元気してた?
怪我してない?
俺はぴんぴんだよ!怪我も病気もしてない!
カネヒキリくんはどう?
……ん?カネヒキリくん?
『あ、ちょ、た、立ったまま気絶するなカネヒキリくん……!』
カネヒキリくんは驚き耐性があんまりないのか、こうやって急にすりすりしたりするとよく気絶しちゃうんだよなあ。
ごめんなカネヒキリくん、喜びが抑えきれなくって……。
こういうの急にされたらびっくりするよなあ……今度からしないように、え?別にしてもいい?予告があれば耐えられる?
いや耐えるレベルならしないほうが、ええ?問題ない?むしろやれ?
大丈夫?ほんとに?
じゃあ今からすりすりしていい?
『いやそれは……』
『だめなのかよ!』
「ははは……本当に仲が良い……」
「
「いやあ、本原さん、無理言ってすみません。ドバイはよろしくお願いします」
「いえいえ!帯同馬で悩んでいたところでしたので……ごらんの通り、うちのサンジェニュインはカネヒキリ号に非常に懐いていまして、向かう飛行機だけでなく、滞在厩舎まで揃えていただけたのは本当に助かりました」
俺とカネヒキリくんが『すりすりする』『やっぱたんま』を繰り返している間に、カネヒキリくんの馬主── 金城さんも来ていたようだ。
テキとお互いペコペコしあっているが、テキの言う通り、最悪ドバイひとり旅のところを帯同馬、それもカネヒキリくんというマイベストフレンドウッマを付けてくれて助かっているのだ。
俺は1年以上もの間、厩舎で1頭ぼっちの生活をしていた。
だから正直な話、いまさら誰かと一緒じゃなくても、と思っていたのだが、思い返せば俺は、別に24時間1頭ぼっちというワケではなかったのだ。
確かに厩舎には俺しかいないんだが、ジャパンカップダートが始まるまでは2日に1回会いに来てくれたカネヒキリくんだとか、調教場所で会えば必ず絡みにくるヴァーミリアンだとか、他にも世間話をするようなウッマトモダチもいる。牝馬限定だけど。
対してドバイには、そんなウッマトモダチはいない。
ガチの24時間1頭ぼっち生活。
たぶん、いや確実に、めちゃくちゃ寂しくなる。
そりゃあハーツクライさんも同じレースに出るらしいから調教とか、そうじゃなくてもどっかですれ違ったりはするだろうけど、夜とか、知らない馬だらけの厩舎で眠れる気がしない。
テキたちもそれがわかっているから、俺が牡馬にケツおっかけ回されるのを知っていても帯同馬で悩んでいたのだ。
相手が牡馬なのはもう仕方ないから、なるべく理性あるやつがいいなあ、と思っていたところで差し出された
マジでサンクス、キンジョーさん!!
頬ずりしちゃう!
「ッサンジェ……!」
「おおっ、びっくりした」
白毛の美貌ウッマからのほっぺすりすり~だぞ。
カネヒキリくんには拒否られたが、感謝の気持ちも込めて念入りにやっとこ。
……別に去年のダービーまでディープインパクトに負けた恨みとかは入ってないからな!
これは善意のすりすりだから!!……たぶん。
「本当に人懐こいんですね」
「生産牧場では馬よりも多くの人に囲まれていたようで……」
「へえ……ディープインパクトもそうだけど、瞳が丸くて、なんてかわいいんだろう」
んふふ、だろう?
俺の目はヒトからみてもプリチーなのだ。
イサノちゃんもよく「サンちゃんの目はきらきらしててかわいい」って言うしな!
「何度見ても僕好みの馬で……もっと早くに出会えてたらなあ」
「はは、先に金城さんに見つけられていたら、私はサンジェニュインと出会えなかったでしょうなあ」
「ああ……そう考えると、全部運命なのかもしれませんね」
運命。
きっと、その漢字2文字、ひらがな4文字では収まらないナニカがあるけれど、でも、今はそれがしっくりくるかもしれない。
ヒトからウマになったことを運命だとは思いたくはないけれど。
初めての併せ馬の相手がカネヒキリくんだったこと。
デビュー戦でディープインパクトに出会ったこと。
それら全部が、きっと、偶然なんかではなかった。
「ドバイではカネヒキリと仲良くしてね、サンジェニュイン号」
そう言って俺の鬣を撫でたこの人の目は、テキや目黒さん、芝木くんたちが俺に向けるあの、温かい目に似ていた。
「2頭収まりました!」
用意されていた馬運車2台のうち、1台にカネヒキリくんと一緒に乗り込む。
一緒に馬運車に乗るなんて初めてだなカネヒキリくん~~!!
こっからが長旅だけど、もうそんなんどうでもいいくらいテンション上がってる。
見てカネヒキリくん!隣向けばカネヒキリくんがいるとか、こんなん初めて!!
うずうずがとまんねえ、ちょっとイサノちゃん、俺のメンコとってくれよ!!
この馬運車、俺とカネヒキリくん以外乗らないんだろ!!知ってんだぞ!!目黒さんが言ってた!!
「え、メンコとるの?」
取って取って~~!
「カネヒキリ号いるけど大丈夫かな。……はい、取ったよ」
サンクス!!
っは~、カネヒキリくんの前でもメンコナシは久々だな!!
どうだカネヒキリくん、俺の素顔見るの久しぶり、ん?
『カネヒキリくんしっかり!?!?』
『ハッ……虹が……』
渡りかけてんじゃねえか!!
そんなにびっくりした?俺の顔そんなに??
4歳になってちょっと格好良い寄りになった俺の美貌を見て貰おうと思ったのに……。
あっ、ちょ、薄目で俺を見るな!またメンコしようか!?
『それはナシで』
要らないんかい。
まあいいや、一緒にいるうちになれるだろ。
美人三日で飽きるって言うしな!!……ん?でも俺の場合……いや美人三日で慣れるしな!!うん!!
『まあ前よりは身体も太くなったし、こう、牡馬!って感じが増したはずだから、かわいいよりも格好良い!って感じになってきたし、多少はね?な、カネヒキリくん』
『あ、ああ……かわ……格好良いな』
『だよな!!』
『かわ……格好良い』
んふふ、そう、4歳の俺は可愛いぷりちーキュート!よりもクールナイスガイ格好良いなのだ!
カネヒキリくんもそうだと言っている!!!!
あ、カネヒキリくんこれ、すげえなこれ、横向いただけで鼻先が触れあっちゃうな~~!?
馬運車せまくて最近は好きじゃないけど今日は好き!!!!
ヒュウ、まだ腹減ってないのに飼い葉も食べちゃお!!!!
……あ、いいってばカネヒキリくん、自分の分の飼い葉も俺のバケツにいれなくていいって!
俺そこまで大食いじゃないから!!
「隣はどうだ?」
「いまハーツクライ号とユートピア号が乗り込んでるところです」
「そうか、じゃあそろそろだな。……サンジェ、俺はちょっと遅れるけど、目黒くんや向こうのスタッフの言うことはよく聞くんだぞ」
お、テキは一緒じゃないのか。
そんな言い聞かせなくてもわかってるわかってる、目黒さんの言うことはちゃんと聞くぞ!
……現地スタッフはほら、俺、英語できないからちょっとそこは期待しないでくれ。
『サンジェニュイン!』
『……ん?ハーツクライさん?』
馬運車の外から低い声が聞こえた。
隣のカネヒキリくんもピンと耳を立てる。
『もう乗っているのか』
『乗ってますよ~!カネヒキリくんと一緒に!』
『カネヒキリ……ああ、この前、ユートピアが負けた』
『ちょっとお、ボクだって好きで負けたわけじゃないからねっ!』
『もちろんわかっているとも』
ハーツクライさんの低い声とは別に、ちょっとだけ高めの声が聞こえた。
どうやらこれがハーツクライさんの帯同馬、ユートピアさんの声のようだ。
『カネヒキリくん、前にユートピアさん?とレースしたことあるのか?』
そう言うと、カネヒキリくんは思い出そうとしているのか首を捻って、それからぱちりと目を開けた。
『2度、俺が勝った』
『すげえ!』
『次はボクが勝つよ!』
コソコソのつもりだったけどバッチリ聞こえてらあ。
『今回は同じレースには出ないみたいだけど、また一緒になったら負けないからね!』
ユートピアさんの声は自信に満ちている。
それに対して頷いたカネヒキリくんもまた、王者の風格に満ちている。
っていうか向こうから姿見えないんだから、言葉で返しなカネヒキリくん!
『……次も勝つ』
『なんかいった!?』
『次も勝つって言ってまあす!!』
『受けて立つって伝えといて!!』
『はあい!!』
なんで俺が橋渡ししてんだ。
叫べカネヒキリくん、腹から声だすんだよお!
「ハーツクライ号、ユートピア号、準備整いました」
「よし。……それじゃあ、いってらっしゃい!!」
そう言ったテキに見送られて、俺とカネヒキリくん、そしてハーツクライさんとユートピアさんを乗せた馬運車が2台、栗東トレーニングセンターを出発した。
2006年3月17日のことだった。
『あ、そうそう、今回俺と同じレースに出るハーツクライさん、そうさっきの低い声のお兄さんね!初めてあったのはこの前のレースだったんだけど、ほん──っとうにいい馬だったよ!……最後はなんかめちゃくちゃ鬣噛まれたけど、でもすごい大人っぽくて格好良かったんだよなあ!……え!?どうしたんだよカネヒキリくん震えて、えっどっか具合が、え?具体的にどこが格好良かったか、って?……うーんと、まず【俺】じゃなくて【私】って言ってるとことー、なんか物腰がやわらかくて余裕がありそうなとことー、暴れたりしないとことー、落ち着いてるとことー、あとあとヒトが好きなとこ!これ最大ポイントな!……うん?見た目?見た目も格好良いよな!鹿毛の馬体に額の流星、すらっと長い脚!知り合いの牝馬たちもハーツクライさんの話題だすとキャーキャー言ってたなあ。ちょっと気難しいところもあるけどそこがイイらしくて……カネヒキリくん!?カネヒキリくんってばバケツ噛んだりなんてして、さっきからどうしたんだよ!?』
空港に着いて馬運車から降ろされた途端、カネヒキリくんがハーツクライさんに襲いかかったのはまた別の話。
【海外遠征ローテ発表】サンジェニュイン、凱旋門賞が目標か |
2005年度の最優秀3歳牡馬に選出されたサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)の、2006年度春夏のローテーションが所属するサイレンスレーシングより正式に発表された。
03/25 GⅠ ドバイシーマクラシック 04/30 GⅠ ガネー賞 06/25 GⅠ サンクルー大賞 07/29 GⅠ キングジョージ6世&エリザベス女王ステークス
国内のレースには出走せず、全レース海外への遠征となっている。 ガネー賞後は、結果に依らず1度帰国し、放牧に出される予定だ。 管理する本原師は、海外遠征について「元から踏み込みの深い馬。力のいる馬場でこそ活躍できる。欧州のレースが本番」と語っている。 また、国内に引き続き芝木真白騎手が手綱を握ることが発表され、本人からは「非常に光栄。サンジェニュインと共に頑張ります」とコメントが寄せられている。
ガネー賞、サンクルー大賞ともにフランスのレースであるため、2006年度の凱旋門賞出走も視野に入れているのではないかと思われる。
出走を表明しているレースのうち、ドバイシーマクラシックの帯同馬をカネヒキリ(牡4、栗東・居住昌彦厩舎)が務めることが発表されているが、以降の遠征に誰が付き添うかは未定とのこと。
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次回、ウマ娘回!!オリジナルレースとスペちゃんとススズとカネヒキリキッチン!
サービスサービスぅ!!!!
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side:ウマ娘 ー Ep.7
スズカさんとスペちゃんとカネヒキリくん(一瞬)
カネヒキリキッチンまではたどり着けなかったよ……パーティー料理を作るカネヒキリくん書きたかった……!
今回のほんへ
あれ……スペちゃんが主人公だった……?(そうだよ)
私たちの世界はコンマ。
鼻先、頭、首、身体、指の先、すべて。
作られた差を詰めて、離して、前だけを目指している。
走る時はいつも希望で胸がいっぱいになる。
勝てる気しかしない。
レースに絶対なんてないけれど。
あの日の私には、輝かしい未来しか見えなかった。
「スペちゃんは、負けた瞬間のこと、今でも覚えてる?」
瞼を閉じると思い出す、白い髪が風に揺れる。
「私はいつまでも覚えてる」
目の前に背中があるの。
一瞬抜き去って、ようやくひとりっきりの先頭。
でもナイフを突き刺すように鋭い一差し。
私の目の前に白い翼が広がって、永遠に抜けないような深い感覚。
手を伸ばすけど、届きそうになくて藻掻く。
負けたくないって思いで頭がいっぱいになる。
必死に脚を動かして、飛び込んだゴールで思い知る。
たった一歩でも、彼女の方が先を走っていた。
「誰、誰に私は、
せめてその顔を見て、刻みたかった。
このウマ娘に負けた。
でも、次は負けない。
そのために、覚える必要があったの。
だから気力を振り絞って彼女の前を走って、振り返った。
「“美しかった”」
思わず言葉を失うほど。
私から先頭を奪って、私より早くゴールに飛び込んだ彼女。
「白い髪が風に揺れていたの。ふわふわと、ふわふわと。その隙間から青い瞳が見えて── 私は、初めて」
見蕩れる、という言葉の意味を知った。
風に包まれた彼女が空を見上げる。
雲ひとつない空は吸い込まれそうなくらい青く澄み切って、彼女の瞳を映しているみたいだった。
彼女が片手を挙げる。
人差し指で空を指さす。
“おれのかち”
そう言って目を細めて、笑った彼女。
声のない声が、やけに大きく、耳に焼き付いた。
「……公式レースでもない、ただの模擬レースだったわ。その負けをいつまでも引きずっているなんて、らしくないと思う?」
「い、いいえっ!そんなことは……!」
忘れなさい、って多くのトレーナーに言われた。
彼女をイメージするのはやめなさい、って。
「でも私にとって、彼女に負けたことは単なる「敗北」ではないの」
現役でいるうち、いくつか舐める辛酸とは違う。
もはや甘さすら感じるくらい、酩酊。
「やっと出会えたなって思った」
「……出会えた?」
あの日の白さとまぶしさが脳裏によみがえる。
彼女を真正面から見たときの、見蕩れる気持ちとは別の部分。
「無性に、“いい逃げだった”って、言いたくなる相手に、出会えた」
そう言ったとき、目を丸くして、でも嬉しそうに笑った彼女。
“あんたもな”
そう言って、楽しそうに笑って駆け抜けていった。
「スペちゃん」
「はいっ」
スペちゃんが── 電話越しのスペシャルウィークが、緊張したように返事をする。
「みんな、彼女の美しさにばかり“目を奪われる”けれど……彼女は、とても強いわ」
1000年にひとりの美貌のウマ娘。
後になってから、彼女がそう呼ばれていると知った。
知的で、冷徹で、他者を寄せ付けない、圧倒的なカリスマ性をもったウマ娘だと。
私が一緒に走ったときに感じた印象とはだいぶ違うけれど、誰の目から見ても美しい
その美しさにばかりとらわれて、みんな、彼女の獰猛さに気づいていない。
「誰よりも勝利に
スペちゃんが油断するような
レースに対してまっすぐで、私の背中をひたむきに追いかけているのも知っている。
勝利への貪欲さも、努力を厭わない姿勢も。
だからこそ、私はスペちゃんに強く言い聞かせなければならない。
「彼女は── “サンジェニュイン”は最も警戒し、最も油断してはいけないウマ娘よ」
美しさに潜む、圧倒的な強さ。
彼女が『太陽』と呼ばれていることの意味を、海外レースを重ねる意味を、理解しなければならないわ。
そうでなければ、彼女の後続はただ、文字通り後を追うだけの存在に成り下がる。
「“背を追うだけ”なのは止めなさい」
追って、追って、届かないと、重ねた努力が潰されて無くなるだけ。
「最初から、差し潰すつもりで走るの」
そうでなければ、広げられた翼の前に、絶望するだけ。
寒さが少しだけ収まった時期。
トレーナーさんに集められた私たちチーム・スピカは、新設されたばかりのレース「ワールドロイヤルカップ」についての説明を受けていた。
メインとなる「ロイヤルターフ」の開催国はイギリス。
そこに出走するための優先出走権を得られる、いわゆる
そのうちの一つである、日本開催の「ジャパンロイヤルターフ」の出走条件は、過去1年以内に海外レースを3勝すること。
その厳しい出走条件に、マックイーンさんは「ではわたくしたちは無関係では?」なんて言っていたけど、ちょっと耳が垂れていたから内心ではがっかりしていたのかもしれない。
私たちって国内戦が中心で海外とか出たことないですもんね……と私も思わず耳を垂らしていたら、トレーナーさんがパンパンと手を叩いた。
トレーナーさん曰く、開催国に限り国内GⅠを3勝したウマ娘が1人まで、開催国枠で出走できる、らしい。
スピカ内で国内GⅠを3勝以上しているのは、私とマックイーンさん、テイオーさん、それから今はいないけど、アメリカにいるスズカさんの3人だけ。
スズカさんからは昨日、アメリカで開催される「アメリカロイヤルターフ」に出走するって連絡があったばかり。
去年、優勝した香港ヴァーズの戦績が加算されたことで、外国ウマ娘の出走枠を満たせたみたい。
もし、私がジャパンロイヤルターフに出走して、勝てたら。
そうじゃなくても3位以内に入れたら、ワールドロイヤルターフへの優先出走権を得られる。
そしたら、スズカさんとおんなじレースで走れるんだ!
そう思ったら、どうしても出たくなってしまった。
難しいレースなのは解っているけど、スズカさんと同じレースに出れる機会は少ないから、少しでもチャンスがあるならそれをものにしたい。
私がそう思っていることが他のメンバーにも伝わってしまったようで、テイオーさんとマックイーンさんはちょっと苦笑いを浮かべていた。
マックイーンさんは「国内戦に集中するから」と言って、テイオーさんも、そこまで興味はなさそうに見えた。
……あの情報を聞くまでは。
「ちなみに、うちのトレセンからはチーム・メテオのメンバーも出走する」
「── チーム・メテオだって……!?そ、それって……それって、“サンジェニュイン”が出るってこと、トレーナー……!?」
サンジェニュインさん。
凱旋門賞を2連覇した、このトレセン学園だけじゃない、世界に誇れる日本の至宝。
去年、偶然会ったときにテイオーさん宛てのサイン色紙を書いて貰ってから、私も彼女について調べるようになった。
曰く、
曰く、歩くだけで失神するウマ娘が続出。
曰く、彼女と目が合うのは宝くじを当てるのに匹敵するほどの幸運。
最後の出所はフクキタルさんだけど。
テイオーさんやスカーレットちゃん、ウオッカちゃんも似たようなことを言っていたから、ひょっとしたら本当かもしれない。
思い返してみれば、サンジェニュインさんと対面したのは一度きりだけど、たまたま遠くから彼女を見つけたときも、まるで視線が合う気配がなかった。
美しさだけじゃなくて、その強さも、戦績を見れば明らかだ。
国内は皐月賞と菊花賞の二冠、有馬記念。
国外は凱旋門賞二連覇を始めとして世界各国の大きなレースを制している。
文句の付けようもない、その字の通り、日本を代表するウマ娘だ。
そんなウマ娘が、ジャパンロイヤルターフに出走する。
もちろん、開催国枠じゃなくて、基本の出走条件である海外GⅠレース3勝を達成した上で。
私は思わず唾を飲み込んだ。
とんでもない人もレースに出るんだなあ、私、勝てるかな、なんて。
この時点で出走する気は満々だったけど、サンジェニュインさんのファンだと言って憚らないテイオーさんが、ここで出走を表明した。
サンジェニュインさんが国内のレースを走るのは非常に珍しいらしく、ここを逃したら次いつ一緒に走れるかわからないから、らしい。
気持ちはわかる。
今、チャンスがあるから掴みたいっていうのは、私も一緒だから。
可能なら私もテイオーさんも一緒に出走、がいいけど、無情なことに開催国枠で出走できるのは1人まで。
私か、テイオーさんかのどちらかか。
「あ、言い忘れていたが、リギルからも出走希望者がいる。ので、選抜レースを開くぞ!」
そうした開かれた選抜レースに、テイオーさんと挑んだ。
リギルからはエルちゃんとエアグルーヴ先輩が出走して、選抜レースは苛烈を極めた。
正直、無理かも知れない、と思ったけれど、なんとか終盤のテイオーさんとの競り合いを制して出走権をもぎ取った。
私とテイオーさんの差は、1センチだけだった。
「ボクの分まで、悔いなく走ること!」
そう言って笑ったテイオーさんだけど、控え室に戻るとき、ちょっと泣きそうに見えた。
レース当日まではあっという間だった。
翌日にはけろっとした様子で、びっしり練習するぞ、とはりきったテイオーさんとトレーニングを重ねること数週間。
いよいよ、ジャパンロイヤルターフに出走する日がやってきた。
開催国枠の私以外の17人が、海外GⅠレースを制したウマ娘。
緊張がまったくなかった、と言ったら嘘になる。
不安だってしっかりばっちりある。
けどそれ以上に、ここで勝てたら胸を張って、スズカさんと同じレースに出れるんだと思ったら、やる気の方が不安を上回っていた。
「他の国だと多くて8人なのに、日本のレースにこんなに集まるなんてな」
「見なさいウオッカ、あれ、BCターフに勝ったウマ娘じゃない?」
「あ?……ああ!そういや、なんか特集で見たような」
「きっとサンジェニュインさん目当てね。他のウマ娘も」
それを聞いた私が不思議そうに首を傾げていたからか、スカーレットちゃんが説明してくれた。
サンジェニュインさんは海外レースを中心に走っていて、その戦績はキラキラと輝いている。
彼女に憧れて芝路線に進むウマ娘もいるくらいなんだって。
とにかくファンが多いみたい。
世界中を飛び回っているけど、彼女が滞在するトレーニング施設は常に貸し切り状態で、レース後もすぐに帰ってしまうから、ファンたちはなかなか接触する機会がない。
でも今回みたいに、ホームグラウンドかつ、大きなレースならば。
サンジェニュインさんと話せる機会が他のレースよりも多くなるハズ、だと思ってファンのウマ娘たちが押し寄せているんじゃないか、ってことらしい。
スズカさんが出走したアメリカロイヤルターフは6人、フランスロイヤルターフは8人で競われたみたいだから、日本の18枠フルゲートは異様なんだとか。
「そうなんだあ」
「……なんだかアタシ、スペ先輩のこと心配になってきたわ」
「奇遇だなスカーレット、オレもだ」
「だ、大丈夫大丈夫!レースは……うん!」
「本当ですか!?」
── ゲート入りが始まります。未出走のウマ娘は速やかに退場し、移動を開始してください。出走するウマ娘はゲート入りの準備をしてください
「あ、アナウンス」
「スペ先輩!スペ先輩なら大丈夫です、他のウマ娘もぶっちぎれますよ!」
「大丈夫、なんて無責任なことはアタシは言えませんけど、スペ先輩なら勝てると思ってます!」
そう言ってスカーレットちゃんとウオッカちゃんが私の手を握る。
それを強く握り返して、私は、ゲートへと駆けていった。
このときの私には、希望しかなかった。
溢れ出る、未来への期待だけで満ちていた。
憧れのスズカさんと走れる、世界の舞台を目指して。
なにひとつ、油断も、慢心もない。
格上ばかりだってわかっていたけど、それでも、他の17人に勝つつもりでここにきた。
それなのに。
「出だし良く回って第3コーナー、先頭はサンジェニュイン。ぐんっと後続を突き放して前へ前へと進んでいきます」
「いつも通りのハイスピードですね。大きなストライドでまだまだ差を作れそうです」
「後続のウマ娘はこれについていけるでしょうか。2番手集団を見てみましょう。サンジェニュインから7バ身差、欧州年度代表ウマ娘ウィジャボード。3番人気です。スタート出遅れの響いた残り16人を尻目に、まずまずのスタートでサンジェニュインを追います。その3バ身後ろに2番人気レッドロックスが付けています。出遅れの影響でやや掛かり気味か。さらに2バ身離れてスペシャルウィーク、これはいい位置と言えるのでしょうか」
「やや外側に寄っていますね。もう少し内につけてスタミナ消費を抑えたいところです」
「スペシャルウィークから1バ身差の位置にモブトクロス、ウィニーウィニー、ウォーサンが横並び。その少し後ろにアルカセット、外側をバゴが走っています。それに続くようにパンジャンマックス、ランナーズライク、おっと少しふらついたか内によれたのはシャトーネリアン、シンガリにぽつんとハイライトミー」
「これまでダート戦主流だったハイライトミー、芝レースはやはり苦しい展開のようです」
「先頭のサンジェニュインは上り坂を一気に駆け上がって向正面を抜け、第2コーナーを目指しています」
「サンジェニュインが完全にペースを掴んでいますね。ただここから第1コーナーに向けて緩くも長い上り坂、息が続くといいですが」
「ここで2番手ウィジャボードがさらにスピードを上げて来たっ!サンジェニュインに並ぼうという気概が見えます、それに負けじとレッドロックスも上がるがこれは息が苦しそうだ、外側からバゴがぐんっと背を伸ばしてそれを差し切ろうかというところ、スペシャルウィークはどうした抜け出せないか内側からなかなか前に出れないようです」
「前半飛ばしすぎたのでしょうか、縦長の展開となっていますね」
息が上がる。
苦しい。
どこかでスピードを落として、息を整えなくちゃ。
頭では解っているのに、どうしてもそれができない。
今、スピードを落としたら、絶対に競り負ける。
隣を走るアメリカからきたレッドロックスさんにも、前を走るウィジャボードさんにも。
なにより── 先頭を走るサンジェニュインさんに!
── サンジェニュインばかり見てちゃだめよ
ジャパンロイヤルターフへの出走が決まったその日。
電話口で、そう私に言い聞かせるスズカさんの言葉が浮かぶ。
見過ぎて集中力が途切れちゃう、って意味だと思っていた。
だからレースが始まる前から、なるべく見ないようにしていた。
見蕩れてしまうくらい綺麗なひとだっていうのは知っていたから、身にしみていたから。
走り出したらともかく、ゲート前でだって直視しないように気をつけているつもりだった。
でも、でもどうしても見てしまう。
その、白さ。
「中団で脚をためていたアルカセットが真ん中から飛び出してここで一気に抜け出したっ!ウィジャボードと競り合って先頭のサンジェニュインに迫るがこれは距離が離れすぎているかっ?」
「先頭と2番手集団の差は5バ身、2バ身縮まっていますがここからもうひとつ上り坂が待っている状態、うぅん、追いつけるでしょうか」
「サンジェニュイン悠々ひとり旅だ!ひさびさの東京レース場もなんのその!」
白さが遠のく。
どうしようもなく、全身から焦りが出る。
どうして私はまだここにいるの。
もっと前へ行かなきゃ。
もう集中力が途切れているとか、そういう次元じゃなかった。
身体の全部、魂の奥底から、引きずり出される。
渇望が。
「── ここで3番手集団からスペシャルウィークが飛び出すがもう間に合わないか!しかし驚異の末脚が爆発だ!ウィジャボードとアルカセットに届くか割り込むがどうか!?」
「これは見事です!日本ウマ娘でワンツーフィニッシュ決まるでしょうか」
待って。
「きつい上り坂もなんのその!どんな時でも先頭は譲りませんわサンジェニュイン!」
待ってください。
「もう決まったかこれが世界を制したウマ娘の実力!」
お願い。
「── サンジェニュイン、ゴールイン!見事な逃げ切り勝ち!」
「先頭至上主義、ここに極まれりと言っていいでしょう」
まだ、届いていないのに。
霞んだ視界の中で手を伸ばす。
白さがまだ遠くにある。
私は届くこともままならないまま、ゴール板を抜ける。
上がりきった息が、苦しさを内側から叩いて、それが涙に変わっていくのがわかった。
響いているだろう歓声も耳に入らない。
負けたんだ、追いつけなかったんだって絶望だけが、胸いっぱいに広がる。
なんでこんなにも苦しいのかわからない。
わからないけど、信じられないくらい、傷ついていた。
「──……スペ、スペ!」
「っあ、とれ、とれーなーさ……」
「喋るな、ちょっと息を整えて……そう、吸って、ゆっくり吐いて、いいぞ、その調子だ」
トレーナーさんの声に導かれるまま、息を整える。
いくらか鮮明になった視界のあちらこちらに、私のように、息を荒げているウマ娘たちの姿が見えた。
走る前はあんなにも意気込んでいたレッドロックスさんも、唇を噛んで涙を流していた。
アルカセットさんも、バゴさんも、他の
顔をゆがめて、でも、視線だけはみんな、ひとつを向いていた。
「スペ」
ゆっくりと顔を動かした私の、その視線を塞ぐようにトレーナーさんが前に立つ。
もう一度、顔を動かそうとすると、今度は両手で頭を固定される。
目の前に立つトレーナーさんは、真剣な目で私を見ていた。
「
そのアイツがサンジェニュインさんのことだと、すぐに解った。
「こうなるかもしれないって解ってたのに、俺は……くそっ」
トレーナーさんが唇を噛む姿を見ても、私の頭の中は白さで満たされていく。
あの、白さ。
そう、白さ。
ひらひらと広がった翼の向こう側で、白い髪が風に揺れていた。
顔を覆い隠すように、けれど、悪戯のようにその隙間から青い瞳が見える。
レース中ずっと、今、彼女はどんな顔で走っているんだろう、って。
笑っているだろうか、力んでいるだろうか、それとも。
それが見たくて脚が進み、間違ったタイミングでスタミナが消費されていく。
気づいた時には、上り坂を駆け抜けて、追い抜く力は残っていなかった。
「いいか、スペ。今回の敗北はお前の努力不足なんかじゃあない」
トレーナーさんの言葉が通り抜ける。
「アイツは少し特殊で……」
ダメだ、どうしてもトレーナーさんの言葉が耳に入らない。
頭の中で繰り返されるのは、ゲート前、振り返った彼女の声。
“いいレースにしましょう”
そう言って目を細めた、彼女の、顔が。
「スペ!」
「スペ先輩!」
とめどなく涙があふれる私の両側に、温かいぬくもりが満ちる。
揺れる視界の真ん中にいるトレーナーさんの目に、ひどい顔をした私が映って。
── ああ、私
サンジェニュインさんの目に映ってみたかったんだ、と。
ゴールした後、ただの一度も振り返らない彼女の世界に。
けれど私は、負けた。
彼女の後ろを追うだけの存在になって、決して振り返らない彼女の世界には絶対に入らない。
その事実がただ、ただ痛かった。
観客の誰もがたったひとりのウマ娘に歓声を上げていた。
その素晴らしさを、強さを、美しさを称えて。
彼女はまだ走る。
己の後ろに積み上がった絶望を知らないまま、先頭を走りきった誇りだけを持って。
そこに年相応の喜びはない、そこに年相応の傲慢は滲まない、そこに年相応の高揚感はない。
ただ、誰もが“知的で冷静”と称えるままの、落ち着き払った表情でターフを後にする。
そうして控え室に続く通路に私を見つけた、彼女は。
「── カネヒキリくん!!見てた!?」
大輪の花のように笑って、手を伸ばす。
「どうだったオレ、格好良かったでしょ!」
きらきらと光が満ちる。
「んふふ、久しぶりの東京競ば、じゃなくて東京レース場だったけど、思った以上にしっかり走れたぞ!途中からやべえ上がってくる海外の
くるくると表情が変わる。
「スペちゃんも最後にドアーッ!て追い上げて来たときはビビってめちゃくちゃ加速しちゃったぜ……脚ちょっとジンジンするけどヘーキヘーキ!」
ふんす、と鼻を鳴らして。
「サンジェ、はしゃぐのもいいけどウイニングライブの準備!」
「わあーってるよシバキくん!」
「
一度、パッと離れた手がもう一度、私の手を掴んで引き寄せられる。
「カネヒキリくん」
こつん、と額同士がふれあう。
そうして視界いっぱいに広がった、白さが。
「最後までオレを見ててくれよ、カネヒキリくん!」
もうずっと、お前しか見えないよ。
そうして、太陽のステージが幕を上げた。
すべてを焼き尽くす、光が。
次回、掲示板回!失恋ニキもあるよ!(ポロリ扱い)
明日更新するよ!!
今回の登場ウマ娘
スズカさん 現在アメリカ
さらっと香港ヴァーズ制したことになっているウマ娘
なんか……ウッマ魂を……やべえな(確信)
スペちゃん 現在絶望
ひと一倍頑張り屋さんなので、主人公の白さが眩しすぎた
太陽を直視したらあかんて!!!!
テイオーさん 現在スペちゃんのケア中
貰ったサイン色紙は宝物になった
フクキタルさん 現在宗教
なんか……白い……新興宗教……!!
カネヒキリくん 現在ハッピー
ウイニングライブ?最前列だよ
サンジェニュイン 現在またしても何も知らないウッマ
周囲が思っているような高潔なウッマ娘ではない(本当)
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閑話 掲示板回 Ep-5
今回の話には全然関係ないけど、前話に登場したパンジャンドラ、じゃなくてパンジャンマックスちゃんはオリジナルウマ娘です。
得意料理はローストビーフ、好きな食べ物はフィッシュアンドチップス!!!!
前転が得意だよ!!!!
今回は未来の掲示板回。
話が二転三転する、そう、掲示板だからね!(言い訳)
以下ちょっとしたお願い。
誤字報告機能を使用してご覧になっている方へ。
いつも報告ありとうございます、助かってます。
掲示板回の誤字報告のみ不要です。
よろしくお願いします。
掲示板回の誤字報告のみ不要です。
【総合】サンジェニュイン専用スレ 52
114:俺は名無しだって食っちまう ID:r9Ytp68vx
残り1週間になったな
115:俺は名無しだって食っちまう ID:Yi32Z1K/7
なんだったんだこの1ヶ月は
116:俺は名無しだって食っちまう ID:GdQSBj1En
>>115 濃密だったね……
117:俺は名無しだって食っちまう ID:2BMhxmyAu
ここまでサン引き延ばしたんだから実装まで小出しにするかと思ったら一気にきたな
118:俺は名無しだって食っちまう ID:oR0KyWCWw
・詳細なキャラデザ
・表情差分
・グッズ
・ぱかチューブ出演
加減ってものをしらねえのかシャイゲはよお
119:俺は名無しだって食っちまう ID:DELxLtwec
>>118
知ってたら去年のハーツ&ジャスタ父子実装ももっと時間かけてたはずやで
120:俺は名無しだって食っちまう ID:zryIfpxiq
ハーツクライとジャスタウェイは一気に来たからな
121:俺は名無しだって食っちまう ID:l8vzI0xO3
あのふたりは実装2週間前に突然告知入ってスパンッと実装されたから……
気づいたら始めからいたかのようにハーツ&ジャスタ親子がトレセンに……
122:俺は名無しだって食っちまう ID:aTSs4esXF
今更いってもあれだが、もっとこう、一昨年の02年組実装ローテみたいにできんかったのかシャイゲは
123:俺は名無しだって食っちまう ID:nkunmG11y
シーザリオ&ラインクラフト→ヴァーミリアン&カネヒキリ
の実装ローテは結構早い段階から発表されてたよな
124:俺は名無しだって食っちまう ID:ULM5TPxjz
リーク者の配信みたけどサンジェはかなり下準備に時間かかってたらしい
https://kzYar0.com
125:俺は名無しだって食っちまう ID:pl7aC4KM2
>>124
リークとか言う真偽も定かじゃないクズの配信見てる野郎の発言だから信じない
126:俺は名無しだって食っちまう ID:gsJo4CJIG
マジで言うが、シャイゲのセキュリティガバ云々は一端横に置いて、リーク関連は突然目にしたならともかく「リーク(笑)配信者」の配信みた!はほんまクソだから書き込まないでほしい
127:俺は名無しだって食っちまう ID:YFuERScEP
IDみたらコイツ昨日もリーク(笑)書き込んでるヤツじゃん
128:俺は名無しだって食っちまう ID:edbrND9Jr
url踏ませる回し者なのでスルー
タッチしてるやつも荒しになるのでスルー
129:俺は名無しだって食っちまう ID:pDs8/QVlT
空気悪くて草
130:俺は名無しだって食っちまう ID:/pzh9qEJO
02年組実装ローテ、てっきり最後にディープ&サンジェのサプライズ実装がくるかと思ったがそんなことなかったし、2年越しにドバァッされるなんて……
131:俺は名無しだって食っちまう ID:Ewa+v3T4y
一昨年↓
4月シーザリオ&ラインクラフト、6月ヴァーミリアン&カネヒキリ実装
→ディープインパクト&サンジェニュインがサプライズ実装されるのでは!?
→されなかった……
去年↓
10月ハーツクライ&ジャスタウェイ父子実装
→有馬記念とドバイで戦ったサンジェニュイン&同馬主同厩舎で同時に社来SS種牡馬入りしたシルバータイム父子の実装フラグや!!
→そんなことなかった……
132:俺は名無しだって食っちまう ID:M90AgHBrB
>>131 草
133:俺は名無しだって食っちまう ID:64rWGDwm/
>>131 これなんだよなあ
134:俺は名無しだって食っちまう ID:oa2UJy+e4
なんでもかんでもフラグだと思ってしまう俺たち
135:俺は名無しだって食っちまう ID:0V2UjB1ZQ
フラグいっぱいだったのに一向に実装される気配もなく
136:俺は名無しだって食っちまう ID:9Hx2CvZ0g
しまいにはフラグっぽいものを見て「これは実装されるやろ」大喜利にまで発展したからな
137:俺は名無しだって食っちまう ID:mF9hYBY9H
サンサンファイトがダービー勝ったしサンジェニュイン実装されるやろ(笑)
→された……
138:俺は名無しだって食っちまう ID:bnbui8Mjr
>>137 これなんよ
139:俺は名無しだって食っちまう ID:Tmwq/GIJx
なんでいちばんありえない瞬間に来るんだよ
140:俺は名無しだって食っちまう ID:AhFGSFyAX
いやこれはありえそうでありえないフラグ
141:俺は名無しだって食っちまう ID:78FQYU00Z
結局ありえなくて草
142:俺は名無しだって食っちまう ID:QU38tN+uW
芝木Jの「シャイゲ社長が白いスーツ着てたからサンジェもそろそろ実装だと思います」発言よりはフラグだぞ
143:俺は名無しだって食っちまう ID:l0p1JJubK
>>142 それなんのやつだっけ
144:俺は名無しだって食っちまう ID:V7aNtuQB6
>>142 末期シバキやん
145:俺は名無しだって食っちまう ID:CzcUtJOR7
>>143 ぱかチューブでシバキくぅんがゲスト出演したときのやつやで
146:俺は名無しだって食っちまう ID:KJS/LLylW
愛馬が一向に実装される気配がなくて焦る芝木とかいう騎手がいるらしい
147:俺は名無しだって食っちまう ID:AlbX37cYx
芝木騎手、サンジェニュインの同期が実装される度にサンジェニュインに会いにいってガチャ引くっていうエピだけで好きになった
148:俺は名無しだって食っちまう ID:qHr0J7knh
でもイケメンだから許せない
149:俺は名無しだって食っちまう ID:4JaN373j7
イケメンだけど重度の馬オタクだから好きになれた
イケメンだから顔見る度に殺意わくけど
150:俺は名無しだって食っちまう ID:mielXuxIj
>>149 それは嫌いなのでは????
151:俺は名無しだって食っちまう ID:rCQ/JRwIQ
芝木は馬オタっていうかサンジェオタクの間違いでは?
152:俺は名無しだって食っちまう ID:siGDZ5TBe
太陽の一族の追っかけよ
153:俺は名無しだって食っちまう ID:qOUVQXOB5
追っかけ(主戦騎手)
154:俺は名無しだって食っちまう ID:F36UUxyi/
まあシバキの戦績の半数以上は太陽の一族なので……
155:俺は名無しだって食っちまう ID:TtsGsgvQ1
芝木のクラシックの戦績見たら直近5年全部サンジェ産駒に跨がってて草
156:俺は名無しだって食っちまう ID:4uEyhV3Tg
ある意味で運命の馬だからなサンは
157:俺は名無しだって食っちまう ID:CAkGi+JsZ
芝木の奥さんはよかったな、サンジェが牝かつ人間じゃなくて
158:俺は名無しだって食っちまう ID:7C4la2C83
>>157 なんでだよww
関係ないだろそこはww
159:俺は名無しだって食っちまう ID:8w3eB9wan
>>158 それがどっこい大ありなんです
2005年有馬のインタビューで「好きな(女性の)タイプは?」って聞かれて、たぶん話聞いてなかったからだと思うが「サンジェニュイン」って答えてるからなアイツ
160:俺は名無しだって食っちまう ID:EVgnOztPp
草
161:俺は名無しだって食っちまう ID:Mo1WWer9L
好きな(馬の)タイプだと思ったんやろなあwww
162:俺は名無しだって食っちまう ID:a5orTf1H9
ちょっと、ここはいつから芝木スレに
163:俺は名無しだって食っちまう ID:YEJznxGNy
サンジェニュインを語るとき、俺たちは芝木のことも語りがち
164:俺は名無しだって食っちまう ID:MTtsJbZDN
濃いんだよあの1人と1頭のエピが
165:俺は名無しだって食っちまう ID:+f9aEvrFL
ハリウッド版サンジェニュインの映画で一番キレてたのが芝木っていうのはここだけのヒミツ
166:俺は名無しだって食っちまう ID:9wMWR1v7M
まあご新規サンジェユーザーも、この1ヶ月の流れで芝木って男が刻まれただろうし当然の流れではある
167:俺は名無しだって食っちまう ID:mIBk23Ik6
ぜんぜん当然じゃないんだよなあ
168:俺は名無しだって食っちまう ID:1Z6CyCReg
濃すぎて何があったのかもう思い出せねえ
169:俺は名無しだって食っちまう ID:bCVdlNuAH
>>168 おじいちゃんじゃん
170:俺は名無しだって食っちまう ID:jideovC7j
ボケるのはサンジェに100万課金してからにしてもろて
171:俺は名無しだって食っちまう ID:na1dMlwBp
100万課金は素人ニキがやってくれるからヘーキヘーキ
172:俺は名無しだって食っちまう ID:9swg/IszW
もう素人兄貴じゃないんだよなあ
173:俺は名無しだって食っちまう ID:kHMKz58Lu
>>171 素人ニキ、初めてスレに書き込んで三日で配信者デビューして昨日はウイポでサンジェ系統確立RTAやってたぞ
174:俺は名無しだって食っちまう ID:Bni3VlqUl
ふぁっ!?
175:俺は名無しだって食っちまう ID:xV1eVeGDN
つい一ヶ月前までサンジェのド素人だったフラれ兄貴が成長したな
176:俺は名無しだって食っちまう ID:PDjuVnqUv
成長……?
177:俺は名無しだって食っちまう ID:zNe7cyNNC
>>176 退化っていいたいのかテメー
178:俺は名無しだって食っちまう ID:IEc4mFtEJ
もうすっかり素人じゃなくなったけど、本人はスレでの素人兄貴って呼び方が気に入ったらしくて配信者名は未だに素人兄貴なんだよな
なお配信者としてバズってから元カノから連絡くるようになったらしい
179:俺は名無しだって食っちまう ID:LIuiiJOlq
元カノの手のひらクルーが早過ぎるんよ
180:俺は名無しだって食っちまう ID:iGGbveKVs
よりもどしRTAも同時進行なんか?
181:俺は名無しだって食っちまう ID:Lx/05DKar
>>180 即ブロ決めたらしいからよりを戻すのはないらしい
182:俺は名無しだって食っちまう ID:zG3c4Z+9s
決断早くて草
183:俺は名無しだって食っちまう ID:fKuKGNrUK
まじかあ素人兄貴やってたんか、見たかったわ
184:俺は名無しだって食っちまう ID:AvsajwpHT
いうてウイポRTAやしな
185:俺は名無しだって食っちまう ID:1nAQKikIU
>>184 ウイポだからってナメられたら怒りますよ……!
しっかり20通りのチャート組んで、幼駒評価が全部◎になる配合で挑んでたんですよ素人ニキは!
186:俺は名無しだって食っちまう ID:UeGqQM2hK
狂気の沙汰
187:俺は名無しだって食っちまう ID:Nt04S9JrB
一体何が素人兄貴をそこまで走らせたん?
188:俺は名無しだって食っちまう ID:cSB1FPEUC
サンジェ、狂わせるのは牡馬だけにしてもろて
189:俺は名無しだって食っちまう ID:D0MPcQc+4
マジレスするとサンジェが狂わせているのではなく周りが勝って狂ってる
190:俺は名無しだって食っちまう ID:gATgcE96j
それはそうだがww
191:俺は名無しだって食っちまう ID:ibA9tma5G
罪深いサンの美貌
192:俺は名無しだって食っちまう ID:hMSZe9x0R
社来SSで元気ない牡馬の目の前を素顔で横切るだけの仕事やってたこともあるからなサンジェ
193:俺は名無しだって食っちまう ID:KiqUhjNbX
>>192 どういう状況だよ
194:俺は名無しだって食っちまう ID: hMSZe9x0R
どういう状況ってお前、牡馬はアイツの顔見るとジュニアがコンチハー!しちゃうからそういうことだよ
195:俺は名無しだって食っちまう ID:k7t0d+aal
>>194 ?????
196:俺は名無しだって食っちまう ID:oON3no+lP
かがくてきにしょうめいされたびぼう!!!!
197:俺は名無しだって食っちまう ID:hE3MC93/H
かがくてき(繰り返し牡馬の前に出して反応を確認)
198:俺は名無しだって食っちまう ID:v5tkXn8ij
サンは時に人間のオッスの人生も狂わせるが、だいたいみんなハッピーだから大丈夫
199:俺は名無しだって食っちまう ID:z/e8EtZa+
実際この1ヶ月も俺たちはがいがいしてたけどハッピーだったろ?
200:俺は名無しだって食っちまう ID:AfwsqGMs+
はっぴー……?
201:俺は名無しだって食っちまう ID:6pPoBixFd
・突如として発売されるサンジェのグッズ
・増える転売ヤー
・グッズが手に入らなかったオタクのお気持ちツイート
・サンジェの衣装に関する一口馬主を名乗る匿名のツイート
・夏休みウマキッズに荒らされるスレ
はっぴぃ?
202:俺は名無しだって食っちまう ID:rb/dVGYjC
転売ヤーに関しては公式がグッズにシリアルナンバー付与&再販決定で対策済みなので……
203:俺は名無しだって食っちまう ID:PExeuoJ3b
シャイゲは一気にグッズを解き放つのやめてくれ
204:俺は名無しだって食っちまう ID:X9lCVZyRf
サンジェだけで5種類もグッズでててワロタ
205:俺は名無しだって食っちまう ID:paqTMvnGz
サンジェタオル2枚1セットだけど、もう片方が馬(本物)なのは草だし、馬(本物)の方だけがフリマアプリで大量に出された時はキレた
206:俺は名無しだって食っちまう ID:0eIg9Lwdc
スレはしばらく怒りの投稿マックスだったからね……
207:俺は名無しだって食っちまう ID:xNDWyCNhb
ウマ娘コンテンツからのグッズだからリアルウマ要らんという気持ちはわからないでもないが
ぶっちゃけ馬も追ってるユーザーじゃないとモノホンがプリントされたタオルはいらないからな
なんで馬つけてんだよ
208:俺は名無しだって食っちまう ID:ybZkrMd6Z
萌えキャラ消費したいオタクくんにモノホンプリントしたタオル一緒につけたらこうなるってシャイゲくんわからなかったんですかねえ
209:俺は名無しだって食っちまう ID:aErAU1nCB
>>207 >>208
おそらくタオルグッズ買ってないから知らないんだろうが、ガチ馬がプリントされてるタオル、それからキーホルダーは購入画面で「いる/いらない」が選択できるんやぞ
210:俺は名無しだって食っちまう ID:Ub5ryhOLZ
いらない押せばその分の金額がOFFされるから、馬の方を転売してるやつは画面ちゃんと見てないアホか最初から転売目的なんだよなあ
211:俺は名無しだって食っちまう ID:eZiHuXXeE
間違って「いる」にしたまま買っちゃっても7日以内なら片方だけ返品できるしその分の金も返ってくる
ちな俺も間違えて「いる」を押しちゃったが返せた
ガチファンには申し訳ないが今回はウマ娘の方だけが欲しかったんや……
212:俺は名無しだって食っちまう ID:OYp6hgoCS
>>212 最初から転売するつもりで買っておきながら開き直ってる野郎より断然いいぞ
213:俺は名無しだって食っちまう ID:Z1havMqjQ
俺はぶっちゃけて言えばいらなかったけど、馬の方のグッズは引退馬基金に回ると知って一緒に買った
今はガチ馬のメイショウドトウグッズと一緒に玄関に並べてる
214:俺は名無しだって食っちまう ID:eNS3HRXkh
サンジェグッズは転売もひどかったけどそれ以上に印象に残ったのは大量のサンジェグッズを腕いっぱいに抱えた芝木なんだよ
215:俺は名無しだって食っちまう ID:7yMMMXkpY
>>214 シャイゲからの賄賂って呼ばれたやつかwww
216:俺は名無しだって食っちまう ID:vDA+l6IHr
芝木は自宅にサンジェ部屋というサンジェグッズ専用の部屋があるらしいけど(奥さんのTwitter情報)今回のグッズもそこに並べられたんやろなあ
217:俺は名無しだって食っちまう ID:6PdTREdg/
この前の「ウマ娘!名バに会いに行こう」で満面の笑みで「飾ってます!」(クソデカボイス)いってたから飾られてるで
218:俺は名無しだって食っちまう ID:qsHJ8iFHt
それみたwww
219:俺は名無しだって食っちまう ID:dgDjOhbsj
サンジェ実装2週間前企画でメテオ声優引き連れてサンジェに会いにいったやつか
220:俺は名無しだって食っちまう ID:4tu0nNik1
あれは神回でしたよね
221:俺は名無しだって食っちまう ID:/1dBs7GlG
ナマモノが見れるとは……
222:俺は名無しだって食っちまう ID:DFFMTRaOz
>>221 ナマモノいうなやwww
223:俺は名無しだって食っちまう ID:hHxKp8e2B
>>220 素人ニキじゃん!
224:俺は名無しだって食っちまう ID:YciOo66RV
>>220 素人ニキちっすちっす
昨日のRTAおもしろかったで
225:俺は名無しだって食っちまう ID:auQO/OXfL
さらっと混ざってて草
まああのとき素人ニキも狂ってたからな
226:俺は名無しだって食っちまう ID:Ptij5HJqF
サンジェニュインここがかわいい雑談配信中にゲリラ投稿された「太陽に会いに行こう!~名馬を訪ねて~」を見た素人ニキの「お゛え゛!?!?!?」は歴史に残った
227:俺は名無しだって食っちまう ID:Ei2OIAmFO
(黒)歴史
228:俺は名無しだって食っちまう ID: 4tu0nNik1
あれは狂っても仕方ないやつでした
いままで写真とか動画、それも過去のやつしか見たことなかったので、今を生きるまさに「ナマ」のサンジェニュインを画面越しとはいえ見られるとは
229:俺は名無しだって食っちまう ID:26OhgKLCf
素人兄貴が良い感じに気持ち悪いオタクになってて好感
230:俺は名無しだって食っちまう ID:bJENjQiFO
あのときスレで起きた「サンジェニュイン(ガチ馬)はえっちかえっちじゃないか」論争だけは未だに理解できないんだが
231:俺は名無しだって食っちまう ID:haWipo7fN
>>230 あれは次元が違うから理解しようもない
232:俺は名無しだって食っちまう ID:ofFw911Nu
あの話はえっちだっていってる全員牡馬って結論がついたから
233:俺は名無しだって食っちまう ID: 4tu0nNik1
でも実際えっちだと思うんですよね
234:俺は名無しだって食っちまう ID:konABtbdL
素人兄貴!?!?!?
235:俺は名無しだって食っちまう ID:+8dgs8xtY
完全に狂ってて草
こりゃあ素人兄貴の前世も牡馬の可能性がありますよ……!
236:俺は名無しだって食っちまう ID:Sbf/qv9T/
転売とかサンジェに会いにいく企画とかも濃かったけど、個人的には「サンジェの一口馬主を名乗る匿名のツイッタラーによるお気持ちツイート」が印象深い
237:俺は名無しだって食っちまう ID:YAd3WRogd
ああ、あの訴えられたやつね
238:俺は名無しだって食っちまう ID:KuBjsYG+V
>>237 エッあれ訴えられたんか!?!?
ネタだったんだろ?
239:俺は名無しだって食っちまう ID:Nw2ljJY1Q
一口馬主騙った挙句虚偽の情報ばらまく行為が「ネタ」で済むわけないんだよなあ
240:俺は名無しだって食っちまう ID:DWaq+ShaN
サイレンスレーシングさん、お怒りマックスだったからなアレは
例のツイ垢がツイートし始めてから3日くらい?で更新されたクラブの公式アカウント、ツイート文面からほとばしる怒りがやばいのなんの
241:俺は名無しだって食っちまう ID:rmZVztkxJ
>>我がクラブが誇る最上の名馬と、それを支える一口馬主の皆様の名誉を傷つける行為は、いかなる理由があったとしても見逃せるものではありません
サイレンスレーシングさんはサンジェニュインを所有していたのはもちろん、天皇賞馬のサンサンドリーマー、グランプリホースのサニーメロンソーダ、そんで今回ダービーを制したサンサンファイトをはじめとしたサンジェニュイン産駒、いわゆる太陽の一族を多く所有しているからな
ネタとか言っても「サイレンスレーシングの一口馬主」「サンジェニュインの口数半分持ってた」「サンジェニュインに私的に何度もあったことがある」「実質的な所有者は自分」みたいなのをTwitterで流してたんだから怒り狂うでしょうよ
242:俺は名無しだって食っちまう ID:24WCSfOmW
有志が残したログ見るだけでも相当やばくて草
243:俺は名無しだって食っちまう ID:vYxJkI5f8
匿名だからと言って好き勝手しちゃいけないっていうのがよくわかるね(白目)
244:俺は名無しだって食っちまう ID:CJlG0BJeP
あの垢は最後は「全部ネタです!」って言い張ってたわりには、リプ欄で繰り広げてたレスバは途中からガチっぽいし、途中から他のサンジェ産駒の所有まで自分って言い始めたからもうあたおかとしか
245:俺は名無しだって食っちまう ID:bPWt3n/P+
>>244 その件で金城ホールディングスからも訴えられるんじゃね?という噂
246:俺は名無しだって食っちまう ID:p033rNdx3
金城は関係なくない?ディープ絡み?
247:俺は名無しだって食っちまう ID:nJqxtxZeG
サントゥナイトだろ、金城所有だから
248:俺は名無しだって食っちまう ID:tqQamsBtY
あれナイトってクラブ馬じゃなかったんか!?
249:俺は名無しだって食っちまう ID:4ehUEqdgT
俺もてっきりクラブ所有だとばかりww
250:俺は名無しだって食っちまう ID:hUycUtPvY
金城の持ち馬やぞ>サントゥナイト
251:俺は名無しだって食っちまう ID:xP1ygtW9d
例のアカウントが「凱旋門賞に俺の馬も出るから勝ったらサンジェと親子制覇!」とかツイートしてたんだわ
log_2025_09xx_im.img
252:俺は名無しだって食っちまう ID:vnDhaZGaz
まずいですよ!
253:俺は名無しだって食っちまう ID:yy9wjLX4A
今年の凱旋門賞に出るサンジェ産駒はサントゥナイトだけなんだよなあ
254:俺は名無しだって食っちまう ID:Uw9y0+sbd
去年だったらLove me Sunny と Wieners Helios が出走してたから「どれだ?」ってなるのに
255:俺は名無しだって食っちまう ID:/u18EB1RF
>>254 去年だったらもっとまずいだろww
クルーモイズスタッド所有馬とゴンゴルドン所有馬やぞ!!!!
256:俺は名無しだって食っちまう ID:ZxzJcFJVs
(札束で)殴られちゃ↑う↓
257:俺は名無しだって食っちまう ID:/5dfWSSNb
>>256 絞り取られるの間違いでは??
金城さんはサンジェのことかなり気に入ってたらしくて、たびたび知り合いにも「先に見つけてたらなあ」って言うくらいらしい(ソースは優駿の竹の発言)
ソダシ買ったのもサンジェと同じ白毛で目が気に入ったからだしな
258:俺は名無しだって食っちまう ID:mp1xLMykA
毎年すげえ数生まれてくるサンジェ産駒の中でも、サントゥナイトはSunnyFantastic に次ぐ「サンジェそっくり馬」
259:俺は名無しだって食っちまう ID:VueFpsiEm
英国三冠ぶちかましたサニーファンタスティックと同格とか盛りすぎでは?
260:俺は名無しだって食っちまう ID:ALoSOqcYq
実際似てるんだよなあ
https://omatome.com/サンジェニュイン#そっくり産駒
261:俺は名無しだって食っちまう ID:fxxuC5KcA
>>260 そっくりすぎぃ!?
262:俺は名無しだって食っちまう ID:Dv2uJNgIY
>>260 全部サンでは????
263:俺は名無しだって食っちまう ID:yKStaTRer
そのサントゥナイトの所有匂わせはそら怒るやろ
264:俺は名無しだって食っちまう ID:9r4zzxgrq
でもまああくまで噂だからね、これ以上この話しても違ったらデマ広げたことになるんでおしまいで
それよか夏休みキッズだよ
あの垢のデマが広がったのもキッズがいろんな競馬スレに貼り付けたからじゃん
265:俺は名無しだって食っちまう ID:bWwA/iG3l
ご丁寧に名前も「うまむすスキー」にしていろんなスレ荒らしたからうまむす民度クソじゃんって競馬板で固定になっちゃうやーつ
266:俺は名無しだって食っちまう ID:ZKmMQpD0b
あんなんウマ娘ファンでもなんでもねえ、ただのクズ
267:俺は名無しだって食っちまう ID:R/3G5aZ2h
でも印象はついちゃったんだよなあ
268:俺は名無しだって食っちまう ID:E28Xy1goX
転売の件もあの垢もキッズも、みんな終わったから「あれは大変だった」って空気になってるけど、下手したらサンジェの実装取消だからなアレ
269:俺は名無しだって食っちまう ID:2eDGFPIIo
めちゃくちゃ瀬戸際だったか
270:俺は名無しだって食っちまう ID:l3FpV6IaD
幸いデマに踊らされるやつが少なかったからなんとかなってるレベル
271:俺は名無しだって食っちまう ID:mUbNMEWvE
「少なかった」
272:俺は名無しだって食っちまう ID:/PXmUhjhx
いたことにはいたので……
273:俺は名無しだって食っちまう ID:LpyXHMfn/
嬉々としてデマ広げてサンジェ実装阻止しようとしてたディープ厨、失敬、ディープに失礼だったな
ただのクズども、それやることで自分の推し馬の実装取消とか、実装済みだけどゲームから消えるとか想像できんのだろうか
274:俺は名無しだって食っちまう ID:vEfVRJ9y5
1度取消になったロードカナロア……
275:俺は名無しだって食っちまう ID:H6NSi4Nwn
あれは常識ゼロ絵師(笑)がロードカナロアちゃんのえちちな絵をぶちかました挙句表現の自由っていって所有者に送りつけたからでして
276:俺は名無しだって食っちまう ID:ogplkw+v0
実装1週間で取り消されて、まだ再実装の目処すら経ってないのにもう忘れたんだね
277:俺は名無しだって食っちまう ID:qMhW4O/Im
天井までガチャを回した俺、写真フォルダにはロードカナロアちゃんのスクショがあるのにアプリにいなくて泣いた
278:俺は名無しだって食っちまう ID:6oD5wRDXs
課金ニキかわいそう……
279:俺は名無しだって食っちまう ID:eBukRZSEw
正直な話、おれ、本当にサンジェ実装されるかまだドキドキしてる
280:俺は名無しだって食っちまう ID:43LivsQKh
わかる
281:俺は名無しだって食っちまう ID:mTSMl47NS
この1ヶ月だけで変なのが2回、いや3回
282:俺は名無しだって食っちまう ID:RYQ/1q4VT
芝木くんのは変じゃなかったやろがい!!
283:俺は名無しだって食っちまう ID:B6WJo4daF
>>282 芝木の話はしてないやろがい!!
284:俺は名無しだって食っちまう ID:hi9/5V2Mn
・転売
・お気持ちツイート
・荒しキッズ
3回や
285:俺は名無しだって食っちまう ID:/ImOSrmZI
その間に生サンジェ動画で興奮したり、素人兄貴がウイポRTAしたり、メテオ声優が一足早いうまぴょいメドレーしてくれたりそれなりのハッピーはあった
286:俺は名無しだって食っちまう ID:MCNVCHus5
サンジェ声優は今回が初仕事って情報で不安が
287:俺は名無しだって食っちまう ID:CutF9ARYD
声はよかったぞ
288:俺は名無しだって食っちまう ID:FAW3nvrAI
初めて受けたオーディションでサンジェもぎ取ったんだからそんだけ良かったってことやろ
289:俺は名無しだって食っちまう ID:LFCv6/n7z
希望的コメント
290:俺は名無しだって食っちまう ID:Q4tyxHAca
この間の会いに行く企画はでくの坊と化してたけど、CMで流れたボイスはよかったので……
291:俺は名無しだって食っちまう ID:6gafkaAwD
【速報】サンジェニュイン、種牡馬引退
292:俺は名無しだって食っちまう ID:vs25sShIx
>>291 ファッ!?
293:俺は名無しだって食っちまう ID:X2RvoeYBC
>>291 ま?
サンジェっていま23歳やんな?まだ若いやん
294:俺は名無しだって食っちまう ID:gpu8zoAJq
馬としてはいいお年
295:俺は名無しだって食っちまう ID:mfM2IOz6i
てか発表おそくね?
ハーツクライの時は種付けシーズン終わってすぐだったじゃん
296:俺は名無しだって食っちまう ID:G2BEdddCz
7月の時点では社来は来年もさせる気まんまんだったのにな
https://natdekeiba.com/news/114514888
297:俺は名無しだって食っちまう ID:mBahurBkh
これ、なんかあったか……?
298:俺は名無しだって食っちまう ID:6/hYlayhS
実装1週間前なのにまたトラブル
299:俺は名無しだって食っちまう ID:sLlzkgQZq
平穏無事には行かないのが逆にサンジェっぽくていいな(良くないが)
300:俺は名無しだって食っちまう ID:ZMbX4Z8jp
何事もないといいけど
次回、競走馬回!!!!ポロリもあるよ!!!!
登場人物
完全素人兄貴(失恋ニキ/ID:4tu0nNik1)
一瞬目を離した隙に配信者デビューしてバズってた
芝木くん
い つ も の
いつの間にか既婚者になってた
金城さん
サントゥナイトの馬主だった
クルーモイズスタッド
欧州にあるよ!
サンジェニュインの初年度産駒でいきなり英国三冠馬になったSunnyFantasticはここで生産されたよ
ゴンゴルドン
すげえ金持ちがバックにいるよ!
競走馬回ドバイ編に出てくるよ(巨大ネタバレ)
サイレンスレーシング
サンジェニュイン産駒を多数抱えて、今や太陽一族のクラブと化してるよ!
数少ないヴァーミリアン産駒も抱えてるよ!
メテオ声優
サンジェニュインの声優さんは全世界(!?)から募集されたサンジェ声優オーディションで初めて役をGETしたよ!
つまりド素人だ!!!!
この子が本物の素人姉貴だよ!!!
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29.はえ~、そうだったのか
ドバイに着きました!!!!(やっと!?!?)
ほんへ
・ポロリ(美貌)
・セキュリティガバ
・ぽんこつ
の3本立て!
3月18日の深夜、長旅を終えてドバイに着いた。
『んもお、カネヒキリくんダメだって先輩にまた襲いかかっちゃあ……!』
『後悔はない』
『して!?』
栗東トレセンを出発して、空港に着くやいなやカネヒキリくんがハーツクライさんに一目散に突撃したときは、そりゃあ『死人が出るぞ!』と思ったけど、華麗なバックステップをキメたハーツクライさんの冷静さにより事なきを得た。
すごかった、国民的アイドルグループで活躍できそうなステップだったぞ。
対するカネヒキリくんも、その道のウマ?と言うレベルの気迫だったけど、ハーツクライさんが避けたあとになんとか俺もカネヒキリくんに追いつき、手綱を食んで止めることができた。
ハーツクライさんの帯同馬のユートピアさんが、カネヒキリくんに対してかなり怒ってたけど、まあそれはそう。
トモダチ襲われたら誰でもそうならあ……俺もカネヒキリくんが急に襲われたら怒るもん。
でもカネヒキリくんは理由もなくヒト、じゃなくてウマを襲うような理性無き獣ではないので、これにはきっと理由があるのだ。
怒りはごもっともだが、どうかカネヒキリくんの理由だけでも聞いてくれ、と俺がユートピアさんとカネヒキリくんの間に入った途端── ユートピアさんが固まってしまった。
この瞬間の俺はすっかり忘れていたのだが、馬運車でカネヒキリくんと2頭だけだったからメンコ外してたんだよな。
つまり神様お手製ピカピカ美貌を至近距離で浴びせることになってしまい……その、ユートピアさんの理想郷な部分が花開いてしまった。
彼の後ろに下がってたハーツクライさんも、俺の顔をばっちり視界に収めたみたいで、目をまんまるにした後に元気にうまだっちしてしまい……カネヒキリくんの謎スイッチがオン。
華麗なる手綱捌きと押し込みによりカネヒキリくんがホースストール、馬用の輸送コンテナに入った時は思わず心の中で拍手した。
でも俺のケツを押した厩務員、テメーだけは許さねえ!後で厩舎裏に来いよな!
ハーツクライさんたちが視界からいなくなったからか、飛行機に乗った後のカネヒキリくんはすっかり冷静さを取り戻し、空の旅は静かに始まった。
俺が恐る恐る『なんで襲ったの?』って聞くと、カネヒキリくんは『
牡馬の、こう、なんか触れちゃいけないものに触ってしまっての怒りみたいだ。
よくわからないけど、カネヒキリくんは嘘をつかないので、カネヒキリくんがそう言うのならそうなんだろう。
また刺激しちゃうのもなんなので、俺は納得したことにしてカネヒキリくんの横で眠りについた。
飛行機での輸送はかなりの時間が掛かったはずだけど、カネヒキリくんと喋って寝て食べてとやっているうちに、あっという間にドバイについたってわけだ。
降りる時にまたカネヒキリくんがハーツクライさんを襲いに行こうとした時はどうしようかと思ったけど、事前に察知した厩務員によって手早く厩舎に連れていかれた。
すげえ!その手腕、他の牡馬どもの厩務員も発揮してくんねえかな……!
『おお、ここが俺たちの厩舎』
連れていかれた厩舎には、俺とカネヒキリくん以外にもハーツクライさんやユートピアさん、他にも日本からの馬が6頭いて、合わせると10頭。1棟まるまる埋まっていた。
スタッフも日本の関係者ばっかりで、海外に来たって気はあんまりしない。
というか栗東からの遠征で中山競馬場の厩舎とか美浦の厩舎に入ったのと近い感覚だった。
マジで国内だったりしないか?飛行機に乗ったのはフェイクでは?と俺は真横の目黒さんを覗き込んだのだが、林檎は持ってないぞと前を向かされた。
林檎じゃねえわ!!
「サンジェニュインが角でカネヒキリ号がその隣……助かったな」
「ですね。これで中寄り、両隣が初対面の牡馬だったらと思うと……」
「よしてくれ近藤さん、胃が痛くなってくる」
「あはは……」
マジで両隣が知らん牡馬だったら俺の胃もキリキリだったよ!
右が壁!左がカネヒキリくん!
サイコーの配置だよありがとうセッティングしてくれたヒト!
「寝藁の準備は大丈夫か?」
「はい!飼い葉と水もセットできました」
「よし。……それじゃあおやすみ、サンジェニュイン。また明日な」
あーい、おやすみ!
長旅なのは俺とカネヒキリくんを始めとした馬だけではない。
俺たちと一緒に来た厩務員たちもクタクタなのだ。
くたびれた様子の目黒さんとイサノちゃんを見送って、俺はごろん、と寝藁に転がった。
明日は調教を行わず、わりとのんびり過ごせると聞いている。
旅疲れを癒やすためだと思うけど、ヒト側の準備期間も兼ねているんじゃないか、とも思っている。
2日目、いや到着した日を1日目とすると3日目か?それくらいには本格的な調教が始まるだろう。
そうしたら俺とカネヒキリくんはダートコースでの軽い併せ馬以外、調教が一緒になることはないし、馬房以外ではほとんど顔を合わせなくなるかもしれない。
でもまた併せ馬ができるのは楽しみだし、馬房は隣同士なんだからそれで会えるなら十分だ。
『早く併せ馬やりたいな、カネヒキリくん!』
起き上がって、馬房の窓からにゅっと顔を突き出してカネヒキリくんに話しかける。
すると、カネヒキリくんも馬房の窓から顔を出して頷いた。
それからしばらくカネヒキリくんとお喋りをして、お互い眠くなったところでまた寝藁に転がる。
眠くなるまで喋るとか、なんか噂に聞く修学旅行みたいで楽しい。
ヒトだったころはそれどころじゃなかったから、本当の旅行ってわけじゃないけど、それっぽい体験ができることが嬉しいや。
にこにこうとうとしながら上を見ると、馬房の窓のさらに外側、厩舎のガラス窓から夜空が見えた。
ちょっと黄み掛かってるけどたぶん夜空。
この色覚で星の見分けも、どこに星があるかもよくわからないけど、見ていると不思議と『ああ外国に来たんだなあ』という気分になって、ちょっと寂しくなってしまった。
カネヒキリくんまだ起きてるかな、とまた窓から顔を出して耳を澄ませる。
小さな寝息が聞こえるから、どうやらカネヒキリくんは寝ているようだけど、それが本当にカネヒキリくんの寝息なのか、だんだん不安になってきた俺は、ちょいっと鼻先で扉を押した。
開いた。
『セキュリティガバぁ……!?』
よく見ると馬房の簡易鍵の部分が歪んでいて、たぶん上手くハマっていなかったのだろう。
明日、目黒さんが見つけてパパっと直してしまいそうだなあ、と思いながら、俺はそのまま静かに馬房の外に出た。
誘導なしで、1頭で馬房の外に出るなんて初めてだ。
ここから厩舎の外にまで出るつもりはないけど、ちょっとした冒険みたいでワクワクしてきた。
このタイミングで急にヒトが来たらどうしよ、とドキドキしながら、キョロキョロと辺りを見渡す。
馬の目っていうのは夜でも意外とハッキリとモノが見えるので、ガラス窓の向こう側の景色とか、並ぶ馬房もしっかり見えた。
俺が入っていた馬房の隣まで歩いて、その窓に顔を突っ込む。
寝転がって、小さく上下する馬体をじっくり眺め、うんうんと頷く。
うん、確かにカネヒキリくんだ、ぐっすりおやすみのようである。
ちゃんと隣にいるのがわかって安心できたからか、急に眠気がやってきた。
このまま大人しく馬房に戻って横になればいいだけなのだが、また寂しくなりそうだと思うと、脚が動かない。
けどとても眠くて、眠くて、俺は── カネヒキリくんの馬房についてる取っ手を食んで、引っ張った。
開いた。
『せきゅいてぃがばぁ……?』
カネヒキリくんの左隣の馬房にはユートピアさんが入っている。
隣からごそごそ音がするのが気になったんだろう、窓から顔を出した彼がぎょっとしたような顔を見せたけど、俺はただただ眠くてしかたがなかった。
ちょ、待って!?と俺を制止する声が聞こえたような気がしたけど、頭がふわふわしてうまく聞き取れない。
とにかく眠いのだ。
寝かせてくれ。
のそのそとカネヒキリくんの馬房に入って、その隣に寝転ぶと、俺は深い眠りに落ちた。
起きたら目黒さんにめちゃめちゃ叱られたしカネヒキリくんは意識飛んでた。
あと2頭そろって馬体の検査を受けた。
怒られるのは解るけどこれはなんでえ……?
「もうっ、サンちゃんダメだからね、勝手に馬房から出ちゃ……!」
いやほんと、それはすまんって。
もうしないから許してよイサノちゃん~~!
反省してるから、もうやらんから。たぶん。
「……サンちゃん本当に反省してる?今回のは、そりゃあちゃんと閉まってたか確認できてなかったのも悪いんだけどね、こういうのみんな心配しちゃうんだから」
わかってるわかってる。
ちょっとした好奇心と寂しさと眠気に勝てなかったからやっちゃったけど次はしないよ。
寝起きのカネヒキリくんがびっくりして失神しちゃったし。
俺たち馬は眠りから目覚めまでのスパンが短いけど、それを何回か繰り返す生き物。
1度目の目覚めで俺を見て失神してしまったカネヒキリくんだけど、2度目からは夢だと思っているのか寝ぼけているのか、案外普通だった。
6度目、今度は完全に目が覚めたカネヒキリくんは、夢でもなんでもなく俺が隣にいることにびっくりしてしまいまた意識が……。
俺はなにもカネヒキリくんを驚かせようと、ましてや意識を飛ばそうとしたわけじゃないので、これには大いに反省しているのだ。
次やるとしたらカネヒキリくんが目覚める前に馬房から抜けるぞ!!あ、いや、もうやらないけど、ウン。
「なんか怪しいなあ」
怪しくない、サンジェニュイン、学習するウマ!
「まあ馬房の鍵はいま修理してるから、もうできないと思うけど」
そんなあ……いや、大丈夫です。もうやらないし。うん。
「近藤さん、コースに移動するぞ」
「あ、はーい!……よし、行こっかサンちゃん」
おうよ!
朝からバタバタしてしまったけど、今日はナドアルシバ競馬場のコースを下見に来た。
実際の調教は3日目からで、今日のはあくまでもどういったコースで走るのか、試し歩きをするだけ。これが終わったら馬房でゆっくりできることになっている。
目黒さんたちは、俺が無駄に体力有り余ってるのを知っているから、息抜きも兼ねて連れてきてくれたのだろう。
今回はハーツクライさんも一緒。
おんなじレースに出るから、どうせなら一緒にってことらしい。
「そういえばテキは今日の夜には着くんでしたっけ?」
「予定ではそうだな。もう今頃は栗東を出ているんじゃ無いか?」
モロモロの手続きの都合上、テキは後から来る予定になっていた。
今日の夜に着く予定ってことだけど、芝木くんもだろうか。
海外のレースも芝木くんが乗る予定になっているのだが、芝木くんは俺以外にも乗っている馬がいるので、予定しているレースが終わってからこっちに来ることになっている。
前にテキと同じタイミングで来るって言ってたから、たぶん一緒かな。
芝木くんはよ来い、海外の馬場は日本より重いらしいから俺は確実に走りやすくなるし、そうするとスピードがガンガン上がるから、芝木くんにはそのスピードになれて貰わないと。
『それにしても馬場たのしみ~~!日本のは固かったし、重いバッバ!重いバッバ!んふふ~ん』
『ご機嫌だな、サンジェニュイン』
『いやあ、外の馬場は地元より重いって聞いて!俺、重たい方が走りやすいんですよねえ』
『そうなのか。私は固い方が走りやすいな。重くても負けないが』
『んふふ、俺も負けないんで!……っていうかさっきから
実はずっと俺の真横にいたハーツクライさんに、今朝からずっと鬣を噛まれている。
ごく自然な動作で噛み始めたのと、痛みはないからと突っ込むタイミングを失い、結局移動してる最中も隙を見てはハムハムされている。
俺の鬣、いまベッチョベチョでは??
あ、ちなみに俺とハーツクライさんだけじゃなくて、ユートピアさんも一緒だ。
彼もナドアルシバ競馬場のダートコースを見に行くらしい。
彼には、カネヒキリくんが失神してヒンヒン泣いてた時に、隣から顔を出して叱られた。
年頃のメッスがオッスの部屋にいくな、的な内容だったけど、いや俺はオッスだよって言ったら黙り込んでしまったのだけは解せぬ。
でもまあ、なんというか……すんません俺の顔が美しいせいで……。
朝、馬房を出て対面した時は宇宙猫みたいな顔で俺のこと見つめてきたけど、今は隣のハーツクライさんを虚無の表情で見てる。それどういう感情?
コースの下見には、本当ならカネヒキリくんも一緒に行く予定だったのだが、カネヒキリくんは意識飛ばしてたのもあって今日は安静。本当にすまんかった。
『怒っているわけではないが』
『エッ!じゃあなんですかこれ……』
『ナニ、とは』
『この
『グルーミングだが』
グルーミング。
『え、なんすか、それ』
『……経験がないのか。これは……そうだな、簡単に言うと── トモダチ同士なら誰でもやる挨拶だ』
『は?』
『ん?』
はえ~、そうだったのか、と納得しかけたところで、ユートピアさんからめちゃめちゃ低い『は?』が出た。
クソびっくりした、ヒック!思わずしゃっくりだわ。
『いやいやハーツ、ちょっと』
『間違ってはいない』
『なん、ちょ、は?』
『……トモダチ同士でやる挨拶じゃないんすか?』
『トモダチ同士でやる挨拶だ。ユートピアは疲れている』
いや、ユートピアさんめっちゃ『こいつマジ?』って顔でハーツクライさんのこと見てますけど。
疲れてるだけなのか?ほんとに?
疑いの目でハーツクライさんを見ると、ハーツクライさんは透き通った目で俺を見つめ返した。
『トモダチ同士でやる挨拶だ』
『……そうなのかあ』
『そうだ。私たちはトモダチ同士なのでやる』
『年上のトモダチかあ』
『年下のトモダチだ』
……ならいっか!
トモダチ同士の鬣ハムハムは挨拶らしい。
俺は馬として産まれてからもほとんどの時間をヒトと過ごしているからそういったコミュニケーションには不慣れだ。
もっと早く教えて貰えてたらなあ。
トモダチ……コミュニケーション……鬣ハムハム……ッ閃いた!
『えっもしかしてこの仔、いやもう仔じゃないけどこの馬ってぽんこつ……まずいよ!いちばんまずいのはハーツだけどこんなぽんこつじゃあ……ボク1頭の脚に負えないよ!── ハーツ!ちゃんと冗談だって言いなよ!』
『なにも冗談ではないが』
『エッ正気?……ボクらってトモダチだよね? 』
『当然トモダチだ』
『ボクにあれやろうと思ったことある?』
『ない』
『エッ答え出てるじゃん!?ボクのトモダチがおかしくなっちゃったよ……!?』
トモダチコミュニケーションで頭がいっぱいになっていた俺には、そんなユートピアさんとハーツクライさんのやりとりは聞こえていなかった。
「賑やかですね」
「3頭も揃ってればな。それより……サンジェニュインが牡馬に囲まれても動ぜず、とは。精神的に成長したか、あるいはこの2頭に慣れたのか」
「何はともあれ、ストレスになっていないならいいですね」
「そうだな。まあ、馬場を踏んだ後がちょっと、怖いが」
ん?目黒さんなに?
横顔を撫でられて、思考の海をウフフしてた意識が戻る。
お、なんだもうコースに着いてたのか。
後ろを振り返ったらいつの間にかユートピアさんもいなくなっている。
どこだろう、と頭を動かしたら、少し離れたところに向かっていた。たぶんダートコースがある方だろうか。
俺の側にはハーツクライさん1頭だけが残っている。
「俺は向こうにいる日本の責任者と話をしてくるよ。近藤さん、後は頼む」
「はい、任せてください!……ようしサンちゃん、コース歩きに行こっか!」
おうよ!
ハーツクライさんの方を向くと、そちらはすでに厩務員に誘導されてコースの中に入っていた。
俺もそれに続くように、イサノちゃんのスピードに合わせて進む。
それにしても、この競馬場、なんか派手だなあ。
今はまだ昼だから光ってないけど、たくさんの照明が見える。
なんでこんなに照明があるんだ?夜の競馬が多いんだろうか。
そう不思議に思っていると、イサノちゃんに緩く綱を引かれた。
「……どう?サンちゃん」
どうって、はやくコース入ろ?
まだ固いからコンクリ……あれ?
……ちょ、ちょっとイサノちゃん、さっきの位置まで戻ろう!なっ!
もしかしたら俺の感覚の問題かもしれないから、ねっ!
ぐいぐいとイサノちゃんを引っ張って、さっきまで立っていた位置まで戻る。
うん、コンクリ、固い、この感触覚えた、よし。
「……サンちゃーん」
落ち着けイサノちゃん!
なんかの間違いの可能性がある!
「ここはもうコースだよサンちゃん」
……嘘だあ!!
固いじゃん!?
日本の馬場と変わらないもん!!
テキも目黒さんも海外の馬場は重いって言ったのに……!!
固いじゃん~~!?
あっ、目黒さん!!目黒さんだ!!ちょっとこっち来て早く!!
「近藤さん」
「目黒さぁん……」
「どうだったって、その様子だと、気づいたみたいだなサンジェニュイン」
気づいたってことは、目黒さん最初から知ってたのお!?
「サンちゃーん……」
テキも目黒さんも言ってたじゃん~~!
海外の馬場は日本よりは重いぞって~~!
いや確かに日本の馬場よりは重い方だったけど、俺の想定してた重さと違うっていうか……これは重いの部類に入らないのでは?
俺は訝しんだ。
「なかなか言い出すタイミングがなかった。すまないなサンジェニュイン」
んもお、謝らないでくれよ目黒さん。
俺が浮かれたフルーツポンチだったから言うに言えなかったんだろ?
たぶん日本にいた頃に言われたらちょっとやる気落ちたかも知れないし。
でも重い馬場への期待が高すぎて反動が……この傷を癒やすのに3年は掛かる……!
俺たちの戦いはそれからだ……!
~完~
とはならないけども。
ぽんぽんとその場で跳ねる。
……うん、やっぱり固いわ。
有馬の時よりもちょびっとだけ沈むかな?という程度。
稍重だったら『勝ったな!飼い葉食うわ』くらいの余裕感は持てたかもしれないけど。
でも、実は思ったほど絶望はしていない。
俺には良馬場の菊花賞と、それから同じく良馬場の有馬記念を制したことによる、確かな自信があった。
稍重だけが、俺のステージではないのだ。
むしろ公式レースの稍重は神戸新聞杯だけ。
あの時の時計がエグかったのと、走りやすさが他の馬場と比較にならないくらい良かったから、重い馬場で走りたかっただけで、俺の現時点の戦績だけを見れば良馬場で悲観する必要はないのだから。
……っし、はい!気持ちの入れ替え完了!
まあ、がっかりしてないと言えば嘘になるけど、別にちょっと走り終わった後に脚がジンジンするだけだからな。
欧州の馬場は本当に重いんだろ?
ならここを踏ん張れば、次のレースは楽になるってことだ。
なら頑張る、頑張るぞお!!
「お前はどこでだって走れる、最高の馬だよ」
そう言ってくれるから。
その言葉を嘘にしたくなくて、俺は走るんだよ。
でも欧州の馬場も重くなかったら張っ倒すからな……!!
これ以上は詐欺だからあ……!とブンブンと頭を振る。
うわあ、と声を上げたイサノちゃんから手綱を取った目黒さんは俺と目を合わせると、どこかおかしそうに息を吐いた。
「まったく締まらない馬だよお前は」
尻尾で顔にぱふんっ!てしてやった。
怒られた。
2006年3月25日 ドバイ ナドアルシバ競馬場 ドバイミーティング
2021年時点で、ドバイワールドカップデー、あるいはドバイワールドカップナイトと呼ばれるようになった、ドバイの夜を彩る競馬の祭典。
当時、日本からは10頭もの競走馬が、そのたった1日に詰め込まれた激闘に身を投じた。
国内のみならず国外からも注目を集め、やがて世界的なブームにまで発展する「世界初の白毛のGⅠ勝ち馬」の存在もあり、その当時では珍しく、地上波でドバイミーティングの全レースが放送された。
日本調教馬で一番にレースに出走したユートピアが、後続に4馬身差を付ける形でゴドルフィンマイル(GⅡ)を圧勝すると、日本時間では26日に変わろうという遅い時間にも関わらず、駅では号外が配られ、速報としてニュースにも流れた。
合間にUAEダービー等のレースを挟んで1時間後。
夜も深まった中で、その白毛の馬体が姿を見せると、ナドアルシバ競馬場のあちらこちらから感嘆の息が漏れ聞こえた。
欧州年度代表馬にも選出されたことがある名牝・ウィジャボードら名馬が揃う中にあって、その白さは一点の曇りもなく、現地の実況者すら「美しい馬がやってまいりました」とアナウンスした。
第9回ドバイシーマクラシックの出走馬は15頭。
ファンファーレも響かない異国の大地で、一口馬主の夢を乗せたその白い馬体は、ゲートが開いた瞬間、先頭に立った。
次回、ドバイシーマクラシック本戦!
登場馬
ハーツクライさん 牡5
知らないことを教えてくれるやさしいおにいさん(白目)
結局牡馬だった……ってコト!?
ユートピアさん 牡6
今回の被害馬
この顔でオッス!?マ!?(うまだっちはした)
ハーツクライがおかしくなっちゃったよ(虚無)
おそらく作中いちばんの常識馬
カネヒキリくん 牡4
カネヒキリは激怒した。必ず、かの無知シチュフェチの先輩を除かねばならぬと決意した。カネヒキリには無知シチュがわからぬ。カネヒキリは、ダート馬である。砂上を走り、親友と遊んで暮らして来た。けれども親友に関しては、馬一倍に敏感であった。
サンジェニュイン 牡4
無知シチュ……?
おそらく最優先で鍛えるべきなのはスピードでもパワーでもなく賢さ(サポカ積まなきゃ……)
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30.わずか ─ 2006年3月25日ドバイミーティング①
※ Google翻訳を使用して英文打ちました!!!! ※
前半:サンジェニュイン視点
後半:ヒト視点
※作中に登場するクラブの持ち馬を選ぶ方法は完全な創作です。実際にそのような方法で選ばれているわけではありません※
※ Google翻訳を使用して英文打ちました!!!! ※
ジリ、とノイズが走る。
騒々しい足音が鳴って、照明がコースを照らす。
綺羅星が舞う、ドバイの夜空。
そこに在るのは、太陽か、絶唱か。
「残り100メートルを切っても先頭は依然ユートピア!ユートピア!ユートピアが堂々とした大逃げだ!ゴールは、理想郷はもう目前!── ユートピア1着!後続に5馬身差を付ける圧倒的な走りを見せました。これは大楽勝。日本調教馬は、世界の馬にだって負けていない!それをユートピアが鮮やかに証明してくれました!」
始まったドバイミーティング── わずか1日に詰め込まれた重賞レースは、ユートピアさんの圧勝から幕を上げた。
ゴドルフィンマイルは今回で13回目の開催。
日本で調教された馬がこのレースで勝つのは、ユートピアさんが初めてなのだと目黒さんは言った。
それめちゃくちゃすごいな!思わず嘶いたわ。
厩舎は別だけど、それを抜きにしても同じ国の馬が勝つのはやっぱり嬉しいみたいで、目黒さんもイサノちゃんも表情は明るい。
ヒトたちがニコニコし始めたので、何かあったのかと、隣の馬房で休んでいたハーツクライさんが窓から顔を出した。
俺が『ユートピアさんが勝ちましたよ』って教えたら、とても喜んでいた。
『ユートピアは強い馬だ。勝つのは当たり前ではないけれど、トモダチとしてとても誇らしく思う』
わかる。俺も嬉しいし誇らしい気持ちでいっぱい。
出会ってからまだ1週間ちょっとだけど、ユートピアさんは調教にも真面目に取り組んでいるし、勝つことにだってとても意欲的だった。
彼は俺やハーツクライさんのヒト好きには『イレこみすぎ』だなんて言うけれど、その割には担当の厩務員にべったりなんだよなあ。
ツンデレかな?
対するヒト好き同志ハーツクライさんは、厩務員の服をかじる、頭を噛もうとする、などなど。
あれっ、ヒト、好きなんですよね!?と思わずにはいられない暴れっぷり。
ハーツクライさんの厩務員がやたら重装備なのはなんでだろ、と思ってたけどコレかあ。
どうやら構って欲しくてやるみたいだけど、ハーツクライさん、世間でのあなたの評価は「外だと猫かぶり、厩舎だと暴君」らしいっすよ……!
『私たちのレースはまだ先か』
『ですねえ。他にもレースがあるみたいなので』
『そうか。……ところで、サンジェニュイン、まだ水を飲むのか?』
『すっごい暑いから、ずっと喉が渇いてるんすよねえ。でもそろそろ止められそうなんでやめます』
でもほんとマジで暑いんだわ。
朝よりはマシだけど、もうなんか、夏じゃないかこれ?
しかも単純に暑いだけじゃなくて蒸し暑い。
俺、今日だけで2回くらい水浴びしてるし。
本当は水ももっと飲みたいくらいなんだけど、レース前だからあんまり貰えないんだよな。
理由とかは解らないんだが、レース当日とかレース直前になると水の量をかなりセーブされる。
走る前に食べ過ぎると腹が苦しい、と同じ理論なのか?解らん。
水もっと貰えないかなあ、と思いつつ、ペロペロと塩── 鉱塩ブロックと呼ばれる、塩分とかいろんな成分が含まれているモノを舐める。
去年の夏に
ヒトで言う塩分タブレットみたいな扱いだと思う。たぶん。
「サンちゃん、かなり汗掻いてますね」
「そうだな。ドバイは今が夏季とは言え、連日30度超えはやはり厳しい。少しでも馬の負担を減らす目的もあって、気温が下がる夜にレースが開催されるのだろうが……」
「確かに、朝に比べれば気温は下がっていると思いますが……夜は夜で、やっぱり寒すぎると思います」
それな。
イサノちゃんが言う通り、朝はクソ暑いけど夜も夜でクソ寒いんだわ。
2日目の夜とかは寝藁をマシマシにしてもらって凌いだけど、鍵がぶっ壊れたままだったらもう1回カネヒキリくんの馬房に忍び込んでたからな。
でも最近はバチャク?たぶん馬着だと思うんだが、コレを着せられている。
明け方になると暑すぎるから脱がされるんだが、夜はこれを着ているとそこそこ暖かい。
でもこれ、保温目的のものらしいしそれはわかるんだけど、なんか俺だけ目的違わないか?
初めて着せられた日から、汚したわけでもないのに3着くらい着替えてるんだわ。
カネヒキリくんとかハーツクライさんたちは最初から無地の、黒とか濃い目の色から変わってないのにさあ。
なんか俺だけ柄つきだったし。
しかも俺のだけ全身タイツみたいに耳から全部すっぽりタイプのやつ。
おかしいだろ、他の馬は首までなのに!
それにシマウマ柄とか誰の趣味?
その柄の馬着でメディアの前に出された俺の気持ちわかるか?
絶対ネットで「馬なのにシマウマ柄着てるわww」って笑われてるからな、俺は詳しいんだ。
あと着せ替えする度にメディアの前に連れて行かれるしさあ……今、メディアで俺どういった扱いなの?
おもしろパジャマ馬扱いだったら次の取材の時に立ち上がるからな……!
「ブモブモ言ってる……水、足りないんでしょうか。でもこれ以上は、与えすぎると身体が冷えすぎちゃいますよね」
「いやあ……まあ、大丈夫だろう。たぶん別の理由だ」
俺はやってやるぜ、俺はやってやるぜ……!!
「目黒さん、イサノ」
「テキ」
「お疲れ様です、テキ!」
お、テキだ。
おっすおっすテキ!いやあ、めっちゃ汗掻いてんな!
ちょっ、手汗すごっ!?
「うん、2人もお疲れ様。サンジェも暑いとこよく我慢してるな、偉いぞ」
んふふ、だろ?
もっと褒めてもいいんだぞ。
「目黒さん近藤さん、お疲れ様です」
おうおう芝木くん~~!
なあんで汗掻いてるのに爽やかなツラしてるんだ?
え?イケメンは汗を掻いてもイケメン……?
ゆ、許せねえ……!
「うおっ、どうしたサンジェ、あ、ごめんな今日はリンゴ持ってないんだ」
ちげーわっ!
リンゴじゃねえわ!
『機嫌が良いな、サンジェニュイン』
『みんな揃ったんで!ハーツクライさんのとこは?』
『おそらくそろそろだが……ああ、噂をすれば』
芝木くんにワシャワシャと顔の周りを撫でられながら、ハーツクライさんが顔を向けた方向を俺も見る。
たぶん色は黄色の生地に、太めの黒の縦縞が入った勝負服に身を包んでいるのは、ハーツクライさんの今の主戦騎手。
海外の
コンニチハ、って片言だけど元気よく挨拶してて好感度プラス1億!
元気な挨拶するヒトはだいたい良いやつってじっちゃんも言ってた。たぶんな。
「Hey, good to see you again」
「Yeah, we've hardly seen each other in training」
「We don't have much time to meet when we're in different stables. Besides, we only pass each other on the training tracks」
「That’s right」
ファッ!?
エッ、芝木くん英語できたのか!?
「驚いた、芝木くん、英語できたのか?」
目黒さんとシンクロしたわ。
「ああ、いや、ちょっとだけ。テキスト英語ですよ、勢いで押してます」
「それでも受け答えできてるだけすごいよなあ。空港のやりとり全部芝木くんに通訳してもらっちゃったよ」
全部やって貰うなよテキ。
でも英語からっきしだとできるヤツに頼っちゃうよな、それはわかるわ。
「騎手課程で学んでいた時に、もし海外レースに行くことになったらインタビューとかどうしよう、って考えてた時期がありまして……若気の至りと言いますか」
「あ、それわかります。厩務員課程にいたときに私もちょっと考えてました」
「意外とあるあるかもしれないですね」
俺も中学の時に「もし授業中にテロリストが来たらどうしよう」と思って図書館で軍事関係の……いやそうじゃないな。
もしもに思いを膨らませて知識を得ようとするのは、若いやつなら1回くらいはやるかもしれないけど、実際に身につけられるヤツはそうそういないと思う。
いつか海外レースに出た時にインタビューされたら、と考えて、本当に英語ができるようになった芝木くんは、それだけで十分すごいぞ。
俺なんて「外国に1週間もいりゃあ挨拶くらいは覚えられるだろ」とか思ってたけど、俺が解るようになったのは「cute」と「pretty」だけだったからな……!
現地スタッフにもメディアにも言われすぎて覚えちまったよ。
「あ、お疲れ様です」
「おお、竹さん、お疲れ様です!」
「ユートピア号、おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
確かに俺はキュートでプリティーだからな、と納得したところで、親の顔より見た勝負服が現れた。
竹騎手じゃん、おっすおっす!
カネヒキリくんとはダートコースで併せたりしたから、その時に何度か会ったんだよなあ。
最初は「アイエエ!?タケ=サン!?タケ=サンナンデ!?」と思ったけど、よく考えなくてもカネヒキリくんとディープインパクトの馬主が同じなら、主戦騎手が同じって可能性も十分にあったんだよな、うん。
一瞬、アレッ、ディープインパクトもドバイに来てるっけ!?とか思っちまった。
アイツは6日くらい前に阪神大賞典に出走。直線で他の馬を轢き潰して、いや追い込んで後続に6馬身差で圧勝したらしいからここにいるわけないんだよな。
目黒さん曰く、走破タイムは3分8秒2。
しかも出遅れたって噂だから、それがマジなら出遅れしといて後続に6馬身差はあたおかでは?やっぱりアイツやばい馬だわ。
あ、ちなみに、ユートピアさんの馬主もカネヒキリくんやディープインパクトと同じ個人馬主らしい。
なので鞍上も竹さん。
その竹さんがここにきたってことは、ユートピアさんもそろそろ戻ってくるかな。
他のレースに出走する馬たちも、結構前にここを出てコースの方に向かったし。
ユートピアさん戻ってきたらしつこいくらいお祝いしよ。
その前にカネヒキリくんを起こさないとな。
『カネヒキリくん、カネヒキリくん起きて、鞍上のヒトきたよ!』
『う……っ、ああ……』
『カネヒキリくん具合大丈夫か?』
『ああ……』
この声は……ウマ娘で例えるなら「不調」寄りの「普通」ってとこか?
カネヒキリくんの反応がちょっと鈍い。
お出かけキメて調子を回復したいところだけど、悲しきかなただの馬である俺たちにそれはできないんだなあ。
カネヒキリくんがぐったりしている原因は、俺が水を欲しがっているのと同じ、暑さによるものだ。
朝、起きたばっかりの時はまだまだ元気だったんだけど、外で軽く引き運動している途中からダウン。
俺と一緒に水浴びもしたし、すっきりしたかと思いきやイマイチ上げ切れていないようだ。
ナドアルシバ競馬場の厩舎には各馬房に扇風機がついているし、日も沈んだから割と涼しくなったんだけどな。
適量の水を飲んで鉱塩ブロックも舐めて、風にも当たれたおかげか、連れてこられた時よりはマシな顔色をしているけど。
これは目黒さんに聞いた話だが、俺たち馬っていうのは、本来は寒さに強くて暑さに弱い生き物らしい。
寒すぎるとそれはそれで体調を崩すけど、夜みたいに馬着で対策することはできる。
でも暑さはどうにもならない。
ヒトみたいにマッパになって涼しさを……ってわけにもいかないしな。
っていうか常時マッパだもん俺たち。
マッパでありながら暑いんだわ。
もうどうにもなんねえ、水と塩を摂取して涼しい風を浴びるほかには……!
ゆったりとした動きで馬房の窓から顔を出したカネヒキリくんに、首を伸ばして近づく。
『俺の分の塩も舐める?』
『え……?俺を舐める……!?』
『俺の『塩』な。ダメだわカネヒキリくん耳がイカレてる……』
白毛の俺でさえ日差しがキツイのに、栗毛のカネヒキリくんはさらにつらいよな。
濃い目の鹿毛のハーツクライさんは何故かピンピンしてるけど、ユートピアさん曰くハーツクライさんは暑さにまあまあ強いらしいから論外として。
カネヒキリくんと同じ栗毛のユートピアさんも暑そうだったしなあ。
「カネヒキリ、大丈夫かい」
『おう竹騎手、カネヒキリくんはヤバめだ。もうちょい扇風機を強くしてくれや』
そう思いを込めて竹さんの袖を食む。
「ん?ごめんね、林檎は持ってないんだ」
ちげえよ!
なんでどいつもこいつもリンゴの話になるんですかねえ!
俺、そんなにリンゴをねだって……強請ってるかも知れない!
ダメだ自業自得だったわ。
ちょっと目黒さん!目黒さんなら俺の言葉を汲めるはず。
カネヒキリくんの扇風機をマックスに、そして水をもっと増やして!
「……扇風機か?サンジェニュインの、ああいや、カネヒキリ号の?」
イエスイエス!
さすめぐだわ。
見ろ芝木くん、竹騎手、これが以心伝心、人馬一体よ!
「目黒さんってサンジェの声でも聞こえているんですか?」
「まさか。ただなんとなくわかるだけだ。サンジェニュインは感情豊かだろう?」
「それだけじゃ説明つかない時があるんですけど」
それな。
「偶然偶然」
本当かなあ?
俺は訝しんだし芝木くんも竹騎手も訝しんでる。
「それより。竹さん、休憩は取りましたか?芝木くんも」
あっ、話逸らしたな!
「僕はこれからです。芝木くんはそろそろ検量の時間じゃないかな」
「ですね。それじゃあ俺はここで。……サンジェ、また後でな」
あーい、またな!
軽く俺の頭を撫でた芝木くんを見送って、俺は再びカネヒキリくんの方に顔を向けた。
まだぼーっとしているみたいだけど、風が強くなったことでだいぶ涼しさを感じられるようになったのか、さっきよりは調子は良さそう。
芝木くんもこれから検量ってことは、俺の出走するレースもそろそろ行われるってことだ。
カネヒキリくんが出走する「ドバイワールドカップ」は、このドバイミーティングの花形。
最後の最後に行われるので、始まるまでまだ時間が掛かる。
それまでにカネヒキリくんの調子が戻るといいんだけど。
『カネヒキリくん、あとちょっとで俺、レースに行くけど大丈夫?』
『ああ……』
『目黒さん残してくから、なんかあれば目黒さんにちゃんと言えよ。いや、言葉自体は通じないんだけど、大抵のことは通じるって言うか……視線で訴えればなんとかなるから』
『ああ……』
『カネヒキリくん本当に大丈夫か!?』
『だいじょうぶだ……』
全然大丈夫じゃなさそうで俺は心配だよ。
ずっと側にいてやりたいけど、それもできない。
レースに出ないわけにはいかないからな。
もう一度、首を伸ばして顔を近づける。
『カネヒキリくん、カネヒキリくん』
『ん……?』
『俺、頑張ってレースで勝ってくるからな!だからカネヒキリくんも元気だして、レースで勝ってくれよ!』
そう言って軽くカネヒキリくんの無口を食んで揺らす。
カネヒキリくんが目を丸くするのを横目に、俺はイサノちゃんによって馬房から出された。
……んふふ、今のやりとり青春っぽくて照れちゃ~うッ!!
「サンちゃん、行こっか」
『おうよ!……それじゃあ行くからなカネヒキリくん!またあとで!目黒さんカネヒキリくんのことよろしく!!』
「はいはい、ちゃんと見てるよ。だからこっちのことは心配せず、楽しんで走ってきてくれ、サンジェニュイン」
『おう!……やっぱり言葉通じてない?』
「偶然」
通じてんじゃねえか!!
俺はいいから行ってこいよ、とタカハルに背を押されて、俺は社来スタリオンステーションに来ていた。時刻は11時ジャスト。
受付にスタッフカードを見せると、スタリオン内のひときわ大きな会議室に案内された。
「おお、
「あ、は、はい!ご、ご健勝で何よりです──吉里さん」
「やだな、
「は、ハイ!勝馬さん!」
どうしていきなりお偉いさんが、側人の1人もつけずに入り口付近にいるんだよ……!
俺は自分自身の不運と、俺の近くに吉里さん── サイレンスレーシングクラブの代表・吉里勝馬さんが来た瞬間、素早く目をそらしたスタッフどもを呪った。
見捨てるんじゃあない!
「サンジェニュインはまさに期待の1頭だね」
「あ、は、はい!期待も期待、大期待です!」
「ははは!確か、大津くんと、
「そ、そうです。自分、あ、わ、私と、森重、森重
「そうかい」
勝馬さんはそう言ったきり、しばらく黙った。
サイレンスレーシングクラブの持ち馬は、クラブのセリ担当者がピックアップしたものを、最終的には勝馬さんが決定する。
よりよい馬を、よりよい状態で一口馬主に持って貰うことを理想としているため、選定は念入りに行われるという。
サンジェニュインは2ヶ月以上の遅生まれで白毛、加えて馬体が大きい。
どんな良血だったとしても、これじゃあ選定から漏れるだろうというのが、社来ファーム・
しかしなんの奇跡が起きたか、勝馬さんはサンジェニュインをクラブの持ち馬とした。
見た目ばかりは見事な美しさを誇る
不思議と納得がいった。
サンジェニュインは本当に、本当に素晴らしく見目の良い馬だった。
人間の目から見て、ここまで美しい馬もそういないに違いないと、俺も孝晴も自信を持って言えた。
俺たちだけじゃあない。
すこぶる美しいサンジェニュインは、性格だって良かった。
ちょっと悪戯好きな面はあれど、口で言えばしっかりやめるし、1度注意されたことを繰り返すこともない。
人間に育てられたからか、生来のものか、人懐こいサンジェニュインはなるほど、確かに乗馬向きだろう。
── 競走馬を経ずに、そのまま乗馬になったりして。
別のスタッフが冗談交じりに言った言葉に、そんなわけあるか、と返した声は震えてしまった。
ありえそうだった。
でも本当にそんなことになったら、耐えられる自信はなかった。
サンジェニュインは、走るために生まれたんだ。
そこにお母ちゃんの愛情がなくっても、俺が、俺と孝晴がうんと愛情込めて育てた。
あいつは、愛情ってものを理解している。
俺たちが愛した分だけ、日を追うごとに輝きを増していった。
いいんだ、条件馬でも。
オープンギリギリだってかまわない。
最終的に行き着く先が乗馬だってさ、死ぬよりマシさ。
でも、走らずに乗り馬にするってのだけは、どうしても、受け入れたくなかった。
クラブに引き渡す日が近づくにつれ、不安は膨らんでいく。
このままコイツを連れて逃げちまおうかと思った夜は少なくない。
勝馬さんに会ったのは、そんな夜のひとつだった。
「いきなり土下座されたときは驚いたなあ。“アイツは走る馬なんです”ってね」
「……その節は本当に失礼しました」
穴があったら入りたいレベルの黒歴史だ。
「いやいや、大した根性だと思ったよ。馬のために地面に頭つけられる人間なんて、果たしてどれだけいるか!?……サンジェニュインは最初からレースに出すつもりだったけどね、アレでようやく覚悟が決まったようなものさ」
必死だった。
プライドがないのかって?
違う、サンジェニュインが、俺のプライドだったんだ。
そのプライドを守りたかった、走らせたかった、アイツの脚ならきっとどこまでだって行けると信じていた。
「大津くん」
「はい」
「サンジェニュインは、走ったねえ」
「はい……!」
条件馬どころの話ではなかった。
オープン馬でおめでとうやったー!でも終わらなかった。
サンジェニュインは同着の皐月賞を含めて、2つの冠を手に入れてしまったのだ。
し、しかも、グランプリホースにまでなりやがった……!
すぐ乗馬かも、なんて言われてた、競走馬としてはそれほど期待されていなかった、サンジェニュインが!
俺たちのマイサンが!
わずか3歳でGⅠを3勝もしたのだ。
生産者として── いいや、
「生産者って生き物は、
そう言って勝馬さんが見た先に、1人の男が立っていた。
口を真一文字に結んで、部屋の正面にある大スクリーンを見つめていた。
そうか、あれがハーツクライの生産者、いや、担当者か。
「
元町さんが振り返る。
一瞬だけ視線が交わる。
それだけでわかった。
彼にとっても、ハーツクライがプライドなのだ、と。
「……時間だね。
「うわっ」
バンッと背中を押されながら、前の方へと歩く。
今日は2006年3月25日。
遙か異国、ドバイの大地で、俺の息子が走る日だ。
「今年のドバイミーティングも残るところあと2レースとなりました。芝の最終レースはドバイシーマクラシック。GⅠです。2001年3月24日、当時はまだGⅡの格付けでありました本レースを、日本調教馬のステイゴールドが勝ってから5年。今年出走する2頭はどちらもサンデーサイレンス産駒で、ステイゴールドと同父の牡馬となります」
大スクリーンに映し出される、大きく豪華な競馬場。
ドバイ・ナドアルシバ競馬場だ。
日本とは違って、会場にいる人々はみな華やかな衣装に身を包んでいた。
女性はドレス、男性はスーツ、あるいは両者ともに伝統的な衣装に身を包んでいる人たちもいた。
ただ圧倒された。
その絢爛な様に、日本とは異なる空気感に。
「これを見ていらっしゃる視聴者の皆様に、本レースに出走する2頭をご紹介いたします。番号が若い順に── 5番、ハーツクライ。今年で5歳になりました。前走の有馬記念、前々走のジャパンカップ共に勝ち馬とのタイム差無し2着。有馬記念では勝ち馬サンジェニュインと鼻先1センチ差となります。古馬になってからも成長を見せ、今が花の盛りと言うべきでしょうか。直前の状態も良く、精神的にも安定しているようです。鞍上、騎手ですね、これは前走から変わらずグラン・リュベール騎手が務めます」
その鹿毛の馬体がスクリーンに映ると、おお、と歓声が上がった。
声のした方に視線を向ければ、元町さんを囲むように数人の男たちがいた。
ハーツクライに跨がる騎手── グラン・リュベールに手を合わせている人も何人かいた。
おそらく、元町さんと同じ社来ファームのスタッフだろう。
人数が少なく、手が離せない
本当は、メインの担当である孝晴がこの場にいるべきだと思ったが、その孝晴に背を押されてここにいる。
いちばん心配しているのは俺だろうから、って。
「続いて15番、サンジェニュイン。昨年のクラシックシーズンをディープインパクトと共に盛り上げた1頭です。今年で4歳になりました。この馬をきっかけに競馬を見始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。2000メートルから3000メートルまで、幅広い距離で結果を出しています。本レースを初戦として、春夏シーズンは海外レースが続く予定です。ここを勝って勢いを付けたいところ。鞍上には芝木真白騎手がそのまま跨がります」
マイサン!
俺はちょっとだけ前のめりになって、現れた白毛の馬体を見つめた。
大きくなった。
最後にあったときよりも、馬体というよりは、風格が出たように思えた。
鞍上の芝木騎手は、デビュー戦のときからサンジェニュインに乗ってくれている。
弥生賞から2レースほど離れていたが、神戸新聞杯で再び鞍上に跨がると、サンジェニュインを上手く導いてくれた。
自分とそう年代は変わらない青年だ。
俺や孝晴のほうが3、4歳ほど年上というだけだろう。
改めてみると、まだ幼ささえ感じるようだった。
ああ、そんな若さで、彼はあの日、俺たちに頭を下げに来たのか。
瞼を閉じるとすぐに浮かんだ。
── もしもサンジェニュインがターフに沈むときは、俺も一緒に逝きます
その場のノリで言った、軽い台詞には聞こえなかった。
生半可な覚悟にも見えなかった。
ただまっすぐとした瞳が、サンジェニュインに似ていると思ったのだ。
1頭と1人がゲートへと向かう。
時折上を見るサンジェニュインは、まるで芝木騎手に話しかけているようにも見えた。
まったく、レースギリギリだっていうのに緊張感がない。
でも、なんだかそれが「らしく」思えた。
「最終15番にサンジェニュインが入りまして、まもなくスタートします。第9回ドバイシーマクラシック── いま、スタートしました!」
きた、と誰かが言った。
「ドバイの夜に目映い一閃、ハナを取ったのはサンジェニュインだ!大外から一気に差を広げに掛かります」
15頭の馬の中から、真っ先に飛び出た白毛。
幼い頃から人にばっかり囲まれていたからか、サンジェニュインは馬群が嫌いらしい。
包まれるのを嫌がって、ずっと先頭を取る戦法だった。
今日も自慢のスタートダッシュで幸先良くレースを進める。
俺は心の中で小さくガッツポーズをキメた。
「その後ろに剥がれまいと追走するのは、これまた日本調教馬のハーツクライ。前走同様、先行の構えを取りました。ハーツクライから3馬身後ろにレイマンが続くとオラクルウェスト、ッいやここでアラヤンが出てきましたアラヤンが出て、まずはハーツクライに並ぼうとしますがハーツクライここは交わす。どうでしょうアラヤン少し掛かり気味か、内側からリラックスジェスチャー、コリアーヒルはやや中に入っているでしょうか、レイマン下がって現在3番手にアラヤン、リラックスジェスチャーが4番手」
サンジェニュインの走った跡をなぞるように、鹿毛の馬体、ハーツクライが追走する。
この馬は、昨年の有馬記念より前は「追い込み馬」という印象が強かった。
だがジャパンカップや、有馬記念を見るに、先行で突く競馬の方がより得意になったようだ。
首を低くして、ぐんぐんと前を目指しているのがしっかりと見えた。
実況者が「例年以上のペースだ、ハイペース」と繰り返す。
「先頭のサンジェニュインが向正面を向きまして、後続のハーツクライに3馬身差のリードをつけているところ。しかしそのハーツクライからさらに3番手に上がってきたコリアーヒルまで4馬身差がついています。サンジェニュインとハーツクライがやや飛ばし気味か、しかし脚色は衰えません。固まる中団からオラクルウェスト、アラヤン、シャンティースターが外側へと出ましたが、これをリラックスジェスチャー、リラックスジェスチャーが抜こうかと言うところ。中込には前評判の良かった欧州年度代表馬ウィジャボードが潜んでいます、そのすぐ後ろにはフォルスタッフが追走」
他の馬たちのスピードが遅いのではない。
明らかに、サンジェニュインとハーツクライ。
この2頭のスピードが抜けていた。
とんでもないね、と言った勝馬さんに、その場にいる全員が同意した。
とんでもない、本当に、とんでもない。
俺の口角は上がっていたし、視界の端にいる元町さんの口角も上がっているように思えた。
圧倒しているのだ、今。
世界の名馬たちを、日本調教馬が!
「カーブを上手く抜けてサンジェニュイン、依然先頭をキープしたまま。鞍上芝木まだ鞭を使っていません、完全に馬ナリだ!シンガリのパンチパンチとはすでに10馬身以上差があるぞ。この馬は大逃げしてもまったく落ちないスタミナが最大の武器、このまま逃げ切り勝ちを狙います」
── いいぞ、いいぞマイサン!
もうその名で呼ぶのは、俺たち陽来のスタッフしかいなくなったけど。
マイサン、マイサン。
お前はやっぱり、すごい馬になった。
「しかしそう簡単にはいかせないぞと後続馬、ここで揃ってスピードを上げてきました。まだまだ上がるかなんてスピードだ!……おっとどうしたウィジャボード、ずるずると後ろに下がりますが、ッと巻き返しました中団に戻ります。ここで3番手にフォルスタッフが上がってきて、コリアーヒルちょっと苦しいか。4コーナーカーブを曲がりきって直線、後続集団を尻目に先頭2頭、さらにスピードを上げていくか、ハーツクライに鞭が入りましてその差がするすると縮まっていきます!」
── 頑張れ、ハーツクライ。
小さな囁きが聞こえた。
たぶん、近くにいる他の人にすら聞こえていない。
その声を、離れている俺が、俺だけが、聞いた。
頑張れ、はただの応援じゃない。
そこには言葉にできない愛が滲む。
俺たちはただの生産者だけど、でも、“おや”だから。
頑張れ、は。
愛してるって意味だ。
「2馬身差、1馬身差、縮まっていくぞ残り400メートル!この時点で先頭を争うのは2頭。日本調教馬の2頭です!先頭ひた走るのは純白の馬体サンジェニュイン!1馬身差でそれを追うのはハーツクライ!ハーツクライより後ろはうんと差があるぞ!」
頑張れ、マイサン。
頑張れ、頑張れ。
俺たちに遅い春を、夏の隙間に届けてくれたお前。
白い馬体が踊る。
世界で踊っている。
俺の、俺たちの、息子が。
「ここまで何度辛酸を舐めたかハーツクライ、このレースは絶対ものにしたい!その気迫が、絶唱が脚になってターフを駆け抜ける!もう半馬身しかないぞ、並ぶか、それともサンが逃げ切るか!?」
── 頑張れ、ハーツクライ
── お前は一等やさしく、頑張り屋な馬だ
── 負けるな、お前の脚は、すごいってことを
── いつまでだって信じているから
胸の前で手を合わせる。
神頼みなんて俺らしくもない。
でも違う。
神に祈っているんじゃあない。
誰もの頭上にある、もっとも眩しいものに祈っている。
どうか縁があるというのなら、照らしてやってくれ。
サンジェニュインを、照らしてくれ。
「さあ200だ残り200でハーツ、ハーツクライ、ハーツクライッ!ここで並んだ!鞍上リュベール鞭を振ってさあ前へと押し上げて、ッしかしサンもここでは引き下がれない!芝木の鞭も入って、ぐんっともう1度!これが先頭至上主義ッ!太陽が
誰よりも眩しい、お前。
眩しすぎて、視界が滲んでしまう。
頑張れ、マイサン。
頑張れ──ッ!!
「2頭横並びのゴールイン!リュベール、芝木ともにガッツポーズを見せているが果たしてどうなるか……!?写真判定が行われます。どうか皆様、しばらくお待ちください」
ドッと力が抜けて、崩れそうになるのを必死に耐える。
まだ結果は出ていない。
出ていないけれど、胸の中はすでにいっぱいだった。
走っていた。
マイサンが、サンジェニュインが、あの、期待されていなかった馬が!
本当に走っていた。
夢なんかじゃない。
画面越しに確かに鼓動を感じた。
鳴り響く、勝利へとひたむきに走っていた、美しい鼓動が。
「結果はまだ出ません。時間がかかっているようで……はい、えっ、ああ、はい。はい、失礼いたしました。只今手元の情報によりますと、写真判定のやり直しが行われているとのことです。現時点で2度、やり直しとなっており、現在行われているのは3度目ですね。ちょっとね、スローにしてもなかなか解らなかったので、細かく細かく見ているのだと思います」
部屋の中がどよめいた。
写真判定を3度もやり直すなんて。
いったいどれほどの接戦だったのだろうか。
見ている側にはもはやどっちが勝ったかわからなかった。
同じだけの熱量でゴールに飛び込んだ、白と鹿毛の馬体。
ただこれだけはわかる。
例えどちらが勝っても、会場に響くのは拍手だけ。
「3度目で決着がついたようです。いま、結果がでました!ナドアルシバ競馬場の鮮やかな照明に照らされて、大スクリーンに映し出されたガッツポーズ── リュベール騎手だ!ハーツクライ、ハーツクライが勝ちました!走破タイムは2分27秒とコンマ55秒!レコードタイムです!やった、やったぞハーツクライ!この異国の大地で、初のGⅠタイトルを、コースレコードでものにしました……ッ!」
視界の端で、ひとりの男が泣き崩れていくのが見えた。
溢れ出る涙を拭うこともできず、男は、元町さんは泣き続ける。
ハーツクライ、ハーツクライと、愛息子の名前を呼んで。
俺は、言葉もなかった。
サンジェニュインが負けたからではない。
今、スクリーンに映る横顔が、あんまりだったから。
涙がぽつり、と流れた。
泣くつもりはなかった。
こんなタイミングで泣いたら、悔しさ以外になにがある?
違う、悔しいけれど、その涙ではない。
これは、これは。
「サンジェニュインは──……ああ、サンジェニュイン、顔が下を向いています。うなだれています。鞍上芝木がぽんぽん、ぽんぽんと首を叩きますが……昨年の5月末、ダービー以来の敗北です。ディープインパクト以外に負けたことはありませんでした。負ける度よく泣く、勝ち負けを理解している賢い馬です。今日も……っいいや、泣いていない、今、顔が上がりましたサンジェニュイン、泣いていません。涙はありません。悔しい思いはあるでしょう、しかし泣かずにいる。エライ、エライぞサンジェニュイン。テレビの前の皆さんもどうか褒めてやってください。泣かなくてエライ、エライ」
違う。
違う、そんなの。
エライなんて、違う。
ちっともエラくない。
どうして泣かないんだ、サンジェニュイン。
どうして耐えてるんだ、どうしてそんなに── 強くハミを食んでいるんだ。
光の射さない横側に落ちる影だけが、今、サンジェニュインに寄り添っていた。
「負けはしましたがサンジェニュイン、まだ4歳。まだ海外レース初戦。まだまだこれからの馬です。タイム差無し、ハナ差2センチ2着。写真判定を合計3回、やり直した末の勝敗です。それほど激しい競り合いだったのです。それを制したハーツクライはもちろん素晴らしい馬ですが、最後まで失速することなく戦い続けたサンジェニュインも、十分素晴らしい馬と言えるでしょう。今レースは黒星となりましたが、続くガネー賞への期待も花丸満点」
そんなおきれいな言葉でまとめないでくれ。
サンジェニュインの顔が見えないのか。
あんなに、傷ついた顔を。
「大津くん」
「……あんな顔、初めてみましたよ」
「顔?」
「ズタズタに傷ついてました。涙も流せずに……」
心が折れたと言われた、あのダービーのあとだってあんな顔はしていなかった。
ああ、マイサン。
お前はきっと、誰よりも真剣にこのレースに挑んだんだろう。
だから許せないか、敗北した自分が。
認められないか、泣きわめくことを。
誰もお前を責めたりなど、しないのに。
「大津さん」
す、と手が差し出された。
節くれ立った、牧場で長年働いてきたのが解る、太い指。
元町さんはまだ涙を流したまま、俺の前にいた。
「サンジェニュインは素晴らしい馬です」
負けた馬を褒めるなんて、お世辞か、軋轢をなくすためか、嫌味か。
でもこれは、そんなものではない。
ただ柔らかい、真実を内包していた。
「たった2センチだったとしても、そんなわずかな差だったとしても、サンジェニュインに競り勝てたこと。それはハーツクライの生涯の誉れになります」
そう言って、元町さんは頭を下げた。
「強い馬を作ってくれて、ありがとう」
こんなの、嫌味だって言われて、胸ぐらを掴まれたっておかしくない。
俺の息子は負けたんだぞ。
それに対して、強い馬を作ってくれてありがとう、なんて。
馬鹿にしているのか、からかっているか。
でも違うのだろう。
深く、深く下げられた頭が、身体が震えている。
床を見ると、ぽつりぽつりと涙が落ちていた。
「……ハーツクライは、本当に、強い馬ですね」
嫌味ではなかった。
心から、そう思ったのだ。
ハーツクライは、強い馬だ。
サンジェニュインの大逃げに対して、どこまでも食らいついて、最後。
自分の誇りを賭けて突っ込んできた。
人馬共に、勝利への執着が強く見える一戦だった。
有馬記念ではサンジェニュインの執着が、そして今回はハーツクライの執着が。
相手よりも先にゴールに飛び込んだのだ。
その差、わずか、2センチ。
14頭の馬が私の横を通り過ぎていった。
彼らが冷たく薄暗い通路の向こう側に消えると、それを見計らったように、白い馬体がするりと私の、
馬体からはうっすらと湯気が上っている。
日が沈んで寒さが増してきたからか、ゆらゆらと上るソレを横目に、私は、その馬の顔を見て驚いた。
まばたきすることもなく、前を向いていた。固い表情だった。
その顔に触れて、さらに驚いた。
目の周りが濡れていなかった。さらりとして、胴体には汗が見えるだけ。
── 泣かなかったのね、サンちゃん
そう喉まで迫り上がってきて、結局言わなかった。
サンちゃんは、サンジェニュインはどこまでも前を、前だけを見ていたから。
「サンジェ」
通路の中頃で、サンちゃんの鞍上から芝木さんが降りた。
薄暗いところを進んで、周りには私たちの他に、誰もいなかった。
「サンジェ」
落ち着いた声だった。
けど、その手の力は強く、サンちゃんの顔をぐっと持ち上げると、視線を合わせるように角度を変えた。
「やせ我慢がそんなにエライか」
凜とした声に言葉が乗ると、うっすらと雪が積もったような、冷たさを感じる。
「泣かなかったことを誇らしく思っているか」
鋭く、鋭く。
「悲壮感に浸って、自分を慰めるのは気持ちが良いか」
ハッ、と小さく、嘲るような笑いが漏れる。
サンちゃんは、怒りの籠もった瞳で芝木さんを睨み付けていた。
「よく聞け、サンジェ」
芝木さんの厳しい声を、私も、サンちゃんも、今日、初めて聞いた。
「涙は弱者の証なんかじゃあない」
厳しく、棘のような声色とは真逆に、サンちゃんを撫でる手は優しい。
「涙は、それだけお前がレースに真剣だったから。それだけお前がレースに向き合っていたから。感情が生まれて、渦巻いて、仕方が無いんだ」
芝木さんはそこで言葉を句切って、次を探すように、小さく口を動かした。
「お前が涙を流すのは、きっと、次を見るために必要なことなんだよ」
せき止めていた栓が外れたように、芝木さんから言葉があふれた。
「我慢なんかするな。感情をせき止めるな。いいんだよ、泣いて。泣いていい。ここにいる誰ひとり、涙を流すお前を“弱虫”なんて思わない。“泣き虫”とも思わない。お前はひといちばい、レースに真面目で、真っ直ぐで、正直で……それを誰より、知っているから」
震える声が、愛の証明。
「泣け、サンジェ。枯れるまで、覚悟が決まるまで、何度だって泣け!」
芝木さんがそう言うと、サンちゃんは小さく震えて、やがてその胸に顔を押しつけた。
「ひぃん」
耳を澄ませてようやく、聞き取れるほどか細い嘶きを、サンちゃんは何度も繰り返した。
その目からあふれる大粒の涙は、まるで「負けてごめん」と言っているようで、私も思わずサンちゃんに手を伸ばした。
濡れた背を撫でる。
テキも、タオル片手にその身体に手を添えて、口を開いた。
「お前は何も悪くないぞ、サンジェ。悪いことなんてなんにもない。なんにもないから、謝るんじゃない。今回は、ただ、ただ……ああ、ハーツクライは強かったなあ」
テキがそう言うと、サンちゃんは小さく頷いた。
ハーツクライは強かった。
あの2センチを生み出すほど。
確かにサンちゃんを捉えて、差し切った。
サンちゃんは、並大抵の馬に負けるような調教はされていない。
油断もなかった。
状態も完璧だった。
サンちゃん自身のやる気も、これ以上ないくらいに満ちていた。
それでも負けた。
ハーツクライが全身から醸し出した、勝利への執着を前にして。
テキがゆっくり、サンジェニュインの横っ腹を撫でながら、言い聞かせるように言った。
「お前も強かった。人馬ともに、よく頑張った」
よく頑張った、よく頑張ったよ、サンちゃん。
日本の馬場よりも固くなってしまった
痛かったよね。
よく晴れた日の、栗東のターフで走った後でさえ、馬房に戻れば寝転んでマッサージを強請ってきた。
揉み込んでやると、気持ちよさそうに目を細める。
それくらい、パンパンになった馬場で走る時、サンちゃんは痛い思いをしていた。
サンちゃんの1歩はあまりにも重いから、踏み込む度に芯に響いたはずだ。
それなのに、それに対して文句も言わずに走りきってくれた。
「サンジェ、サンジェニュイン。お前ほど、
か細い嘶きが、2度、3度。
一瞬の静寂を挟んで、再び歩き出したサンちゃんの目に、涙はなかった。
次回、ドバイミーティング、ラスト!
※ Google翻訳を使用して英文打ちました!!!! ※
※作中に登場するクラブの持ち馬を選ぶ方法は完全な創作です。実際にそのような方法で選ばれているわけではありません※
登場人馬
※馬たちの今レースでの実際の戦績を調べて見ると美貌馬世界との違いで楽しくなるのでよければ調べてみてください※
ユートピアさん 牡6
史実では4馬身差で勝ってるよ!
ハーツクライさん 牡5
有馬記念でサンジェニュインに負けたのでこれが初のGⅠになったよ!
コースレコードだ!
ヒト好きのわりには厩舎では厩務員に過激なじゃれ方をするよ!
カネヒキリくん 牡4
夏バテだよ!
スキンシップの多い、夢のような数日だったね!
サンジェニュイン 牡4
前半と後半で落差が激しいよ!
パパだよ!!(ちがう)
子供の表情は画面越しでもわかる、パパだから
人情の元町とはこのヒトのことだよ!
エライヒト族だよ!基本的にはやさしいおっちゃん!
サンジェニュイン陣営(ヒト族のみなさん)
次回いっぱい登場するよ
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31.共鳴 ─ 2006年3月25日ドバイミーティング②
カネヒキリくんのターン
装鞍所で馬具をひとつずつ外される。
大きなタオルで汗を拭かれて、ヒトにされるがまま。
そんな俺を、外から栗毛の馬が見つめていた。
──カネヒキリくん、もう時間だよ
そう言いたかったけど、今、口を開けたらまた泣きそうで。
結局、じっと見つめ返すだけになった。
カネヒキリくん、もう、時間だよ。
竹さんたちも綱を引いているよ。
もう出る時間だ、もうレースに行く時間だから。
『サンジェニュイン』
今、名前を呼ばないでほしい。
声があまりにも優しくて、また、泣きそうだ。
『サンジェニュイン』
なんだよ、カネヒキリくん。
もう、調子は良くなったのか?
万全ならそれでいいよ。
俺になんて構わずに、早く行けって。
俺は、カネヒキリくんの前でなんて、泣きたくないんだ。
『俺は……』
一瞬黙って、俯いて。
また顔をあげたカネヒキリくんの、瞳が。
『俺は勝つ』
轟々と光る、
「ドバイミーティングもこれで最後。最も注目される一戦、ドバイワールドカップ。日本調教馬でこのレースを制した馬は未だ存在しません。昨年のジャパンカップダート、そして今年のフェブラリーステークスを圧倒的な差し脚で勝ち上がりました、日本ダート界の新星・カネヒキリ。その競走馬名の意味はハワイ語で「
鮮やかな照明がダートコースを照らす。
僕はカネヒキリの鞍上で、静かに、その時を待っていた。
閉じた瞼の裏に、これまでカネヒキリと過ごした日々が思い出された。
僕がカネヒキリに初めて乗ったのは、彼が芝へ再挑戦した毎日杯。
勝たせることもできず、見せ場を作ってやることもできず。
騎手として不甲斐ないと思っていた僕に対して、カネヒキリ、君は常に堂々としていたね。
世間がまだ皐月賞で沸き上がっていた頃、君はダートのオープン戦を勝ち上がり、重賞へ駒を進めた。
そうしてあっと言う間に、君は3歳ダートGⅠを2勝して、同世代のダート王になったんだ。
古馬ひしめく中央GⅠジャパンカップダートでも、君は堂々とした走りで後続を圧倒した。
なんて強い馬だと、君の鞍上で僕が震えていたことなんて、君には意味のないことだろうけれど。
今日、僕と君は、ドバイにいる。
世界中のホースマンに、カネヒキリという雷鳴を聞かせるために。
「ゲート入りです。5番カネヒキリ、今朝は猛暑による体調不良の情報もありましたが、そこまで大きく調子を崩しているようには見えません。ここまで交流重賞を含めて多くの功績を挙げています。鞍上は共にダート重賞を制しました竹創騎手がそのまま跨がりまして、今、ゲート入りしました」
ドバイでの数日は、君にとってどんなものだっただろうか、カネヒキリ。
毎日会う君は、栗東で見ていた時よりもキラキラしていた。
親しい友と横並びの馬房で、朝に、夜に、調教の合間に、一体何を話していたのだろうか?
できれば僕の悪口じゃないと良いけれど。
ぽんぽん、と軽く首の横を撫でる。
猛暑で思った以上に調子を落として、そもそも出走できるのか心配だった。
控えの厩舎で佇む君は、僕や他の人の呼びかけには答えないのに、サンジェニュインの嘶きひとつで起き上がる。
ゆっくりとした動きで馬房の窓から首を出して、右隣のサンジェニュインを覗き込んだ。
僕は目黒さんみたいに、サンジェニュインやカネヒキリの思っていることを正確にはくみ取れない。
けれど、君が誰よりもサンジェニュインと仲が良くて、彼の前では格好をつけたがることだけは、わかっているよ。
レース直前の装鞍所。
君は如何にも調子が悪そうな顔をした。
目黒さんと僕と、それから居住先生がどれほど困ったか。
それなのに、装鞍所の扉が開いてすぐ、白い馬体が見えると顔を上げた。
元気です、と言い出しそうな顔をして。
思わず笑いそうになって、ぐっと堪えた。
友達の前ではいつだって格好良い、男前であろうとする君の、プライドが愛おしかった。
押してもひっぱっても、なかなか装鞍所から出ようとしなかったカネヒキリ。
サンジェニュインをじっとじっと見つめていたカネヒキリ。
あの時、2頭にしか解らない何かが確かにあった。
僕がそれを探ろうとするのは無粋だろう。
ただ確かなことは、装鞍所を出てからのカネヒキリは、一度も下を向かなかったこと。
「……ここを勝って、サンジェニュインを笑顔にしてやろうな、カネヒキリ」
装鞍所を出る直前の、少し陰りのある白毛を思い出してそう声を掛けた。
カネヒキリは答えない。
当然だ、人の言葉など知らない。
でもどうしてか僕には、カネヒキリが力強く頷いたように見えた。
「世界の名馬たちが揃いまして、ドバイワールドカップ── スタートしました!」
明け開かれたゲートから、栗毛の馬体が勢いよく飛び出た。
内側に沿うよう、逃げを打つ馬の後ろにつきながら進路を操る。
馬が最短で、あるいはもっとも気持ちよく走るために手綱を握り、動かすこと。
それが騎手の役目だと、僕は思っている。
眼前を走るのはブラスハット。
その横にスターキングマンが張り付いて、カネヒキリとの差は1馬身ほど。
前へ行きたがるカネヒキリをセーブするために手綱を引くと、いつもなら1度は粘るカネヒキリが、今日は素直に従った。
ペースを落として最内に身体をすり込ませる。
ここからスタミナを抑えつつ、最後の直線で差し脚を使う。
特に今日は、フェブラリーSの時と比べれば決して万全とは言えない状態だ。
先頭の馬とは2馬身から4馬身差の位置をキープして、抜け出すための隙をわざと作る。
その隙は、カネヒキリに「焦る必要は無い」と思って貰うためにも必要なものだ。
内につけてペースをキープすると、ほんの一瞬だけ周りを見る余裕が生まれる。
この一瞬で、今、周りにいる馬の呼吸を見る。
どこで脚を多く使うか、どこで息を入れ、どこで緩み、どこで力を入れるのか。
その呼吸が少しでも解れば、ゴール前の競り合いで有利になるから。
3つ目のコーナーを曲がったところで、外側から6番のゼッケン── マグナグラデュエイトが駆け上がっていくのが横目に見えた。
この馬は昨年のアメリカGⅡ・クラークハンデキャップの勝ち馬だ。
これまでの勝利距離は2000メートル未満。
まだ2000メートルの勝ち鞍はない。
カネヒキリはジャパンダートダービー、ダービーグランプリ、ジャパンカップダートで2000メートル以上の経験がある。
距離の面だけを見れば、この馬は終盤で差し切れる。
問題はエレクトロキューショニストだ。
カネヒキリとほぼ同じ、中団からの好位追走はもちろん、後方からの豪快な追い込みも熟す脚の持ち主。
昨年までの勝ち鞍はすべてが芝であり、豪華なメンバーが揃っていた昨年のインターナショナルステークスで、僕が騎乗していたゼンノロブロイを2着に差し切って勝った馬でもある。
ドバイワールドカップの前哨戦・アルマクトゥームチャンレンジラウンドでは初のダート戦でありながら7馬身差の圧勝。
芝・ダートどちらも熟せる高い実力を持つ馬だ。
このレース、もっとも厄介になるのはエレクトロキューショニストだろう。
おそらくだが、僕らと同じように直線に立った瞬間、差し込んでくる可能性が高い。
1度ステッキを鳴らして、徐々に徐々に前に進出させる。
握った綱から、触れる足からカネヒキリの呼吸を感じて、僕は一度だけ唾を飲み込んだ。
想定していたよりはまだ、消耗もない。
首を下げ、速さを求める姿勢も崩れていない。
大丈夫だ、カネヒキリは、やれる。
「最終コーナーを曲がって直線を向きました!ここでエレクトロキューショニスト!エレクトロキューショニストが上がってきて、ブレスハットを軽々交わしてもう苦しいか後続馬も一気に駆け出しました!」
読み通り、エレクトロキューショニストがハナを奪う。
それを眼前に見て、僕は、カネヒキリの手綱を── 緩めた。
その瞬間、雷鳴が響く。
「先頭、先頭、エレクトロキューショニストが先頭!追うのはウィルコ、マグナグラデュエイトここが先頭争い── ッいや!雷鳴だ!カネヒキリが中央の混み合いから一気に駆け抜けてッ!轟々と響くのは勝利の勝ち鬨か!?エレクトロキューショニストに並んでッ!あと少しだカネヒキリ!鞍上竹が首を前へ前へと押し出して!それいけ、それいけ、それいけ──ッ!」
3馬身が2馬身に、さらに1馬身に、半馬身、差がなく。
カネヒキリの脚が唸る。
1歩進むたびに振動が大きくなっていく。
まるですべての力を脚に込めるように、カネヒキリは前を目指して走っていた。
頑張れ、カネヒキリ。
あと少しだ。
あと少しで、ゴールに届く。
残り200メートルで1度、ブレた身体を綱を引いて修正する。
かなり無理をしているだろう。
痛いな、カネヒキリ。
辛いだろう、ごめんな、あと少しだ。
あと少しだから。
100メートル、90メートル、80、50、30。
轟々と、怒りさえはらむように。
砂は抉られ、ただ前へと時が進む。
僕らの身体を風が叩くけれど、その痛みさえ、カネヒキリのエネルギーに変わっていく。
ドバイの地に、今、雷神が降りた。
「── 2頭、並んでゴールイン!カネヒキリが体勢有利に見えました!これは決まりか、日本調教馬初の、初のドバイワールドカップ制覇かカネヒキリ!?」
脚を緩めるカネヒキリの頭を撫でる。
想像していた以上の、持っていた力のすべてを出し切ってくれた。
調子は万全とは言えなかった。
最後の100メートルなんて、カネヒキリは意地だけで走っていただろう。
そんな苦しさの中で、カネヒキリ、君は「世界」の冠を手に入れたんだよ。
「見事な差し切り勝ちだ、カネヒキリ」
言われるまでもないと、カネヒキリが鼻を鳴らす。
まだ結果は出ていないけれど、僕らは勝利を確信していた。
次に目を開いた時には、意味も分らない大声が、僕らのための祝福に変わるだろう。
「結果が出ました。第11回ドバイワールドカップ、この激しい叩き合いを制した『ダート王』は──」
祝福の雨が降る。
豪雨の隙間から、美しい
いつまでも響く歓声を花束に、カネヒキリは歩き続ける。
光り輝くビクトリーロード。
その先の白さに捧げる、痺れるような花束。
Natdekeiba.com
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【日本初】ドバイワールドCをカネヒキリが差し切り勝ち |
現地時間の3月25日、ドバイのナドアルシバ競馬場で開催されたドバイワールドカップ(GⅠ・ダート2000m)を、竹創騎手が騎乗したカネヒキリ(牡4、栗東・居住昌彦厩舎)が差し切って制した。 2着馬のエレクトロキューショニストと直線で競り合いながらも、ゴール前でカネヒキリが粘り切ってのクビ差1着となった。
カネヒキリは、父はデビューから4戦無敗で報知杯弥生賞を制したフジキセキ、母・ライフアウトゼア、その父・Deputy Ministerという血統だ。 これまでに2005年の3歳ダート2冠(ジャパンダートダービー、ダービーグランプリ)、ジャパンカップダート、2006年のフェブラリーSなどを制している。 これが初の海外遠征だったが、持ち前の差し脚を活かした力強い走りを見せ、鞍上の竹騎手も「最後まで粘ってくれた」と高く評価している。
日本調教馬によるドバイワールドカップ制覇は初めてのことで、同日開催のドバイシーマクラシックを制したハーツクライに続いて首GⅠ制覇2頭目となった。また、カネヒキリを管理する居住昌彦師にとっても、2005年のアメリカンオークスを制したシーザリオに続いて2頭目の快挙となった。
今後のスケジュールでは、海外遠征を続けるサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)の帯同馬としてフランスに向かう予定となっていたが、レース明けて現地時間26日、屈腱炎を発症していることが判明し、急遽帰国することが明らかとなっている。 復帰時期は未定だが、現役は続行する見通しだ。
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【海外2戦目】 |
ドバイシーマクラシックで惜しくもハーツクライの2着に敗れてしまったサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)だが、次走のガネー賞に向けて・・・
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『── いい?わかった?牡馬がよってきたら?』
『ケツをぶったたく!』
『よし!もうボクらはいないんだから、ちゃんと1頭でもやること!』
『おっす!』
3月26日。
ドバイミーティングから一夜明けて、俺たちは空港に来ていた。
ある者は帰国し、ある者はまた次のステージへ……ちなみに俺は後者!
というか俺だけが後者!
俺はこのままフランスのレースに出走するので、明日には別の飛行機に乗ってドバイを発つ。
なので俺は空港に行く必要は無かったのだが、どうしてもみんなを見送りたくて連れてきて貰った。
日本からの出走馬は俺もいれて10頭。
いろんな馬がいた。
ハーツクライさんやユートピアさんほどではないけど、みんな性格が濃くて、でも穏やかな馬たちばかりだった。
厩舎が馬でいっぱいな日々を過ごしたのは、ドバイに来てからが初めてのことだった。
慣れるかな、と心配だったけど、違和感もなくこの10日余りの日々を過ごしてきた。
正直に言おう。
めちゃくちゃ寂しい。
栗東では1頭ぼっちだったんだから、また1頭に戻ったって大丈夫。
そんなことを思っていた俺を殴ってやりたい。
無理だよ、寂しい。
俺以外の嘶きひとつ聞こえない厩舎を想像すると、悲しい気持ちでいっぱいになる。
馬の本能なのか、それとも今まで1頭だった反動なのか。
でも駄々をこねたってどうにもならない。
俺は見送ることしかできない。
それしかできないなら、笑顔で見送りたかった。
『ユートピアさんもお元気で~!』
『次会うときは併せ馬しよ!』
『はあい!』
ユートピアさんが大きく嘶く。
『ハーツクライさん、次は俺、勝つんで~!』
『挑まれる側に立つのは初めてだ。……楽しみにしている』
『首洗って待っててくださいよ~!』
ハーツクライさんが落ち着いた声色で嘶く。
『カネヒキリく~ん!!』
ぽんぽん、とその場で跳んで、運ばれていくカネヒキリくんにアピールする。
なんかの器具で固定されたカネヒキリくんが、顔だけをこちらに向けた。
『カネヒキリくん、俺、次は勝つからあ!』
カネヒキリくんから返事はない。
『また、併せ馬しよう……!』
また、走ろう。
一緒に。
だから早く元気になって。
レースが終わって帰国したら、何度だってお見舞いに行くよ。
リハビリは俺の実家がオススメ!
って、叫びたいことはいっぱいあるけど、時間がないから。
『また会おうね~~!!』
絶対に、絶対に、会おうね。
『サンジェニュイン』
カネヒキリくんは最後に、俺の名前だけを呼んだ。
いつもと変わらない、優しい声で。
その日の夜、10日もみんなと過ごした厩舎でたった1頭。
外に続く窓から空を見上げた。
今、みんなは空の旅かと思うと、見上げずにはいられなかった。
暗い、暗い空だ。
星ひとつ、この目では見えないけれど。
それ以外で湧き上がる寂しさを誤魔化す方法は、俺には思いつかなかった。
まだ寒くて、寂しい、夜だった。
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現地時間3月25日に始まったドバイミーティング、その芝の花形レース・ドバイシーマクラシック(GⅠ・芝2400m)を、ハーツクライ(牡5、栗東・大橋弘継厩舎)が好位追走でレースを進めると、ゴール前でサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)を差し切り、初のGⅠレース制覇を果たした。2頭のタイム差は無し、着差はハナ先2cmとなった。
ハーツクライの父は大種牡馬・サンデーサイレンス、母は中央9勝を挙げているアイリッシュダンスで、母父は凱旋門賞を制したトニービンという血統。クラシックシーズンを始め、2005年のジャパンカップ、有馬記念などで2着と好走し、素質の高さを見せていた。
日本の調教馬がドバイシーマクラシックを制覇したのは、2001年に同父のステイゴールドが制して以来5年ぶりであり、GⅠ格上げ後の制覇は同馬が初となる。同日のゴドルフィンマイル(GⅡ・ダート1600m)には、大橋弘師が管理するユートピアが出走、これを制覇しており、大橋弘継厩舎は出走した管理馬がどちらも快勝する快挙を成した。
気になる次走だが、現在は未定とのこと。
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ガネー賞参戦へ、サンジェニュイン |
ドバイシーマクラシックで惜しくもハーツクライの2着に敗れてしまったサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)だが、次走のガネー賞に向けてやる気十分に調教を受けているとのこと。 ドバイの現地時間3月27日にフランスに向けて出発し、現地時間28日には到着が確認されている。滞在する厩舎はシャンティイ競馬場の国際厩舎と発表されている。
管理する本原佳師は「体調も良好、気力も十分。不安なことがあるとすれば、帯同馬がいないこと」としており、サンジェニュイン自体はいたって問題がないことをアピールした。帯同馬として同行する予定だったカネヒキリは屈腱炎により帰国している。
次走のガネー賞でも、鞍上は芝木真白騎手が務める。4月中旬から再び合流し、調教に参加する予定だ。帯同馬がいないため、現地での調教相手がどうなるかは未定。 白毛のGⅠ勝ち馬として国内外から注目を集めるサンジェニュイン。海外遠征の初戦では涙を呑む形となったが、2戦目となるガネー賞では逃げ切り勝ちを見たいと、多くの関係者が望んでいる。
ガネー賞の後は結果に依らず帰国する予定。放牧ののち、再びフランスに戻るスケジュールとなっている。
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次回、ガネー賞本戦
登場人馬
カネヒキリくん 牡4
今回の主役
史実と違ってここを勝ったことで屈腱炎発症時期がズレた
これにより長期間登場無しのため主役を張る
竹創 ヒト族 オッス
目黒さんレベルを目指そうとするな
サンジェニュイン 牡4
前を向くのは単純では無いけど一度向いたら話は早い
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32.証明 ─ 2006年4月30日フランス・ガネー賞
みんなと別れた翌日、俺も再び飛行機に乗り、フランスの首都・パリを目指した。
1頭ぼっちになったコンテナには、カネヒキリくんのサポートで一緒に帰国した目黒さんに代わって、イサノちゃんとあともうひとり、フランスで一緒に世話をしてくれるという現地スタッフ。
ナイスマッスル!肩にちっちゃいジープ載せとんのかい!と叫ばれそうな、筋肉ムキムキのおっちゃんだ。
祖母が日本人だというおっちゃん── ピエールさんは、名前も見た目も「俺が想像するフランス人」にぴったり。
ピエールとか名前おっしゃれー!だと思ったし、イサノちゃんも似たようなことを言ったけど、ピエールさん本人は「ピエールなんて「太郎」と同じ意味だよ」と大笑い。
っていうかすっごい流暢な日本語だな!
幼少期は日本語学校に通っていて、家でも日本語をよく使うんだそう。
「イサノ、って名前は新鮮だな。どういう漢字なの?」
「ああ、カタカナなんです。親が新撰組……えっと、結構昔の」
「わかるわかる、御用改めであるー!のやつだね」
「それです。その新撰組の局長で、近藤勇っていう人がいたんですけど、両親が揃ってその人のファンでして」
「……ああ!君のファミリーネームって「近藤」だから」
「お恥ずかしながらそうです」
へえ、イサノちゃんの名前はそこから来てたんだ。
そのまま
飼い葉を食べながら、名前だったり出身地だったりで盛り上がる2人に耳を傾ける。
フランスへの道のりは長かったけど、ピエールさんがお喋り好きなのも相まって、退屈せずに過ごすことができた。
「無事到着、っと。どうかなイサノ、サンジェニュインの様子は」
「はい、やつれた様子もなく元気です」
「よかった!イサノ、サンジェニュイン── Bienvenue en France!フランスへようこそ!」
コンテナから降りて、見上げた空は、見蕩れるほど青かった。
空港から降りてすぐ、俺は検疫を行うための厩舎へ向かった。
そこで数日を過ごしたのだが、俺がいた期間は偶然にも牝馬とセン馬── 去勢された馬しかいなかったため、とても穏やかな日々を過ごせた。
俺以外は7歳、8歳という年上ばかりだったこともあり、俺は最年少としてちやほやされつつ、遠征経験が豊富な彼女たちからいろんな話を聞くことができた。
フランスでの活動拠点となる、シャンティ、ん?シャンティン?シャンティイの方か?
シャン、なんとか競馬場の近くにあるというだだっ広いトレーニング施設のことや、そこで注意すべきこと、涼しい木陰、脱柵の方法などなど。
本来なら幼少期に形成されるはずだという、馬界の常識というものが俺にはほとんどない。
ハーツクライさんがグルーミングを教えてくれるまで、その存在すら知らなかった。
っていうかここで聞いた話だとハーツクライさんのグルーミングが真っ赤な嘘なんだが?
トモダチなら誰とでもやるやつじゃなかったわ、親密な関係の上でお互いにやる行為だったわ。
あのひと、じゃなくてあの馬からかったな……!
許さねえ、次のレースでぎったんぎったんにしたやらあ!
フンス、と鼻を鳴らしていると、ゆらゆらと揺れていた馬運車が止まった。
今日は検疫厩舎から調教場の方へ移動する日。
どうやら目的の場所に着いたようだ。
これからお世話になる厩舎まで綱を引かれて歩く。
脚を止めないままキョロキョロと辺りを見渡して、俺は内心すごく感動していた。
どこを見ても緑でいっぱいだ。
足場はふかふかの砂地で、上を見るとものすごく高い木がドーム状に重なり合って、その隙間から射し込む太陽の光がキラキラして見えた。
栗東もいろんな施設があって、緑もあることにはあるんだが、こんな「森のアーチ」みたいな空間はない。
くんくん、と鼻を動かすと、草木と花と土のやわらかい匂いがした。
俺がお世話になるのは、外国馬向けに開放されている国際厩舎というところのようだ。
厩舎内の角側の馬房を与えられて、そこでごろん、と寝転がる。
今日は休息日。とにかくまったりと、厩舎の空気に慣れるようにする。
ついさっきまでは一緒だったテキは、挨拶回りがあるとかで通訳さんを連れて慌ただしく出て行った。
寝藁マシマシの馬房で、あまりの暇さからごろごろと転がって遊ぶ。
そんなことをしながらも、頭の中にはドバイで一緒だったみんなの姿があった。
みんなはもう日本に着いただろうか。
カネヒキリくんはちゃんと安静にしてるかな。
馬房に戻ってきてからずっと辛そうだったから、痛み無く穏やかに過ごせているといいな。
目黒さんが言うには、カネヒキリくんがなった「屈腱炎」っていうのは、単なる怪我じゃなくて慢性化する病気らしい。
まだ治療法もなくて、今はただ安静に、痛めた部分を冷やしたりすることしかできないみたいだ。
復帰するのに数ヶ月かかるだろうと言ったのはテキ。
本当に重い病気だったのに、カネヒキリくんは最後まで戦って、粘り切って勝った。
俺に「勝つぞ」って言った通りに。
『俺も勝つよ、カネヒキリくん』
ジリジリと痺れが残る脚を掻いて、俺は月末に控えたレースに思いを馳せた。
「おや、お昼寝中かな?サンジェニュイン、友達を連れてきたぞ~」
しばらくうとうとしていると、厩舎の扉がガラッと開けられて、ツナギ姿のピエールが入ってきた。
トモダチ?
えっ、誰か日本から来た!?
寝藁から起き上がって、馬房の窓から顔を突き出す。
誰が来た?
カネヒキリくんはないとして、ハーツクライさん戻ってきたか?
それとも……同じクラブだしヴァーミリアン?
さすがにディープンパクトはないだろうけど、えっ誰だ?
「今日からこの厩舎で一緒に過ごす、パンジャンマックスだ」
そう言ってピエールさんが持つ手綱の先を見ると、カネヒキリくんに似た栗毛で、でも
はじめて見る馬だ。
「あれ、ピエールさんその馬って」
飼い葉の入ったバケツを手に、イサノちゃんが厩舎の外から声を掛ける。
「フランスギャロから紹介された馬だよ。パンジャンマックスは、正確にはイギリスの馬なんだけどね、昨年末に去勢手術を受けたから今年のクラシックには出走できないし、管理調教師にも不幸があって……この仔の母馬を管理していたフランスの調教師に預けられたばかりなんだ」
その馬を、パンジャンマックスを見ると、顔は下を向いて、尻尾は力なく垂れ下がっていた。
耳はせわしなく動いて、周りを警戒しているようだった。
聞けば3歳だという。
俺も相当珍しい馬生を送っているけど、俺と1つしか変わらない歳で、なんとも波瀾万丈な馬生を送っているようだ。
パンジャンマックスよ、そう警戒するな、馬生も長ずれば良いこともあるって検疫厩舎にいたマダムが言ってたぞ。
イサノちゃんも似たようなことを思ったのか、パンジャンマックスに触れようとして威嚇されていた。
「人見知りなんだよ、ごめんね。馬相手にはこんなことしないやつだから」
「いいえ、こちらも急に触ろうとしてすみません。サンちゃ、サンジェニュインも相手が牡馬でなければ気にしないので」
そんな俺が四六時中オッスのこと気にしてるみたいな。
してるけどな!
俺は物理的なうまぴょいをされる気は一切ないんだわ。
レースに出始めて3年目だが、出る度にうまだっちするオッスたちや、メンコあっても興奮気味のやつらを見ると、この美貌を確信するほかない。
俺がメンコをつけてても目が血走ってるオッスとか、発情してる牝馬が近くにいるのに俺の方に向かってくるオッスとか、イサノちゃんも見たやろがい!
穏やかで優しいハーツクライさんやユートピアさんでさえ、俺の素顔を見て元気にうまだっちしてたんだから。
あんなん経験したらオッスどもを警戒せずにはいられないって。
「サンジェニュイン、どうか仲良くしてやってよ」
心配するなピエールさん、俺を襲ってこない限りはなんもしないぞ。
見るからに大人しそうだし、セン馬なら俺の顔を見たってどうにもならんだろう。
検疫厩舎にいたセン馬のおっちゃ、お兄さん方、いやお姉さん方?は「すごい美貌だな~」とは言うけど俺に対して鼻息を荒くすることはなかったし。
イサノちゃんに馬房の扉を開けてもらい、パンジャンマックスの前に立つ。
俯いた顔にも俺の白い脚が見えたのか、心細いと書かれた顔が上を向いた。
『初めましてだ、パンジャンマックス。俺はサンジェニュイン。よろしくな!』
俺はそれなりにデカい方だ。
威圧的にならないようにちょっと首を下げて、伺うように見た。
パンジャンマックスは俺より一回りくらい小さく見える。
2歳頃から顔を合わせていたカネヒキリくんやヴァーミリアンは、俺と同じくらいの体格で結構大きい。
あの頃を思い出してパンジャンマックスと比べるけど、2歳頃の俺たちよりも小柄に見えた。
細くない?飼い葉食べてる?
生まれつきなのかな……ディープインパクトも同い年だけど小さいし。
「サンちゃんもお兄ちゃんだね」
俺の横にきたイサノちゃんが、そう耳打ちする。
お兄ちゃん。
俺には去年産まれた、父親違いの弟が1頭いる。
今年で1歳になる弟は、順調にいけば今年の秋、本原厩舎に入厩するらしい。
俺が有馬記念を勝ったことで、弟の募集は開始前なのにすでに予定数以上の問い合わせが来てるとかなんとか。
その弟とパンジャンマックスは2歳違いになる。
……そうか、そういえば俺、もうお兄ちゃんなんだったわ。
もう1度パンジャンマックスを見て、俺は決心した。
『パンジャンマックス!俺のことは兄貴だと思ってなんでも聞いてくれよ!』
馬の常識に関しては自信ないけど、レースのことなら答えられるはず!
自信満々にウンウンと頷きながらパンジャンマックスの目を見る。
それからしばらく2頭で目を合わせていたが、パンジャンマックスはぽかん、とした表情のまま返事をしない。
うーん、やっぱり、急にこんなデカいのが目の前に現れてびっくりしているのだろうか。
そう思って1歩、後退るとパンジャンマックスが1歩、前に出た。
やったことあるパターンだな。
『……ぁ』
『なんて?』
目をうるうるとさせたパンジャンマックスが、何事かを小さく呟いた。
俺が首を傾げて聞き返すと、パンジャンマックスは俺に頬をすりあわせながら──
『ままぁ……!』
『ママじゃないが!?』
そこはせめてパパと呼んでくれ。
2006年4月30日 フランス ガネー賞 GⅠ ロンシャン競馬場芝・2100メートル
「やあ、最悪の馬場だけど今年も春のGⅠが始まるよ。実況はアラン・ベルナント、解説はミシェル・ドーヴァー」
「よろしく」
「よろしくミシェル。今日は8頭立て。去年のガネー賞にも出走したプライド、アークール賞を勝ったマンデュロ、その2着馬のコレカミノが地元の馬としてはかなりの名声を集めているね」
「そうだね。ただこの3頭はGⅠ勝ちの経験が無いのが痛いかな。それで言うなら、唯一の外国馬であるサンジェニュインは、ダントツの戦績だよね」
「僕も彼には注目しているよ。世界初の白毛のGⅠホースだ。かわいいパジャマを着てる馬だって言ったら、今日初めて競馬場にきたお客さんにも通じるかな?おっと、もちろん毛色以外にも注目しているよ?クラシック2冠に、日本の年末に行われるグランプリレース・有馬記念では古馬を相手に逃げ切り勝ち。正直、1頭だけ飛び抜けてる。この馬を買わない選択肢がない、って人も多いんじゃない?」
「少なくとも僕は、この馬の実力で最下位だけはないと思っているね。そんなことがあったら……一体何人の予想家が泣くか」
「ちょっと見てみたい気もするけどね。ただプライド陣営もかなり自信があるみたいだ。この馬は去年のジャンロマネ賞、フォア賞の勝ち馬で、チャンピオンSや香港カップでも2着に入っている実力馬だね。ガネー賞は定量戦。牡馬は58キロ、牝馬はそこからマイナス1.5キロの56.5キロだから、その軽さを活かして終盤の争いに食い込めるかがキモかな」
「鞍上はグラン・リュベール。この騎手、サンジェニュインとは縁があるよ。有馬記念、ドバイシーマクラシックではハーツクライに騎乗している。有馬記念では負けたけど、ドバイでは勝ってるね。これもあってプライドの人気がちょっと上がってるみたいだ」
「いいね、そういうドラマみたいなのは好きだよ。……おっと、僕らがお喋りしている合間に返し馬が始まったね」
ざわざわとした空気を浴びながら、俺はロンシャン競馬場の芝の上で止まっていた。
こ、これは……!
「どうした、サンジェ」
芝木くん、もう言葉はいらねえよ。
今から走るので感じてくれ、この、重さを……!
「うおっ」
は、走りやすい~~!
いや、シャンティイ競馬場の馬場でも何度か調教を受けたから解ってたけど、ああ、走りやすいわ!
踏み込んだらしっかり沈む、蹴り出しの力が痛みになって返ってこない。
なんて素敵な馬場なんだ!
良馬場の時でさえ抜群の走りやすさなのに……重馬場ってこんなに走りやすいんだなあ!?
「……馬場に喜んでいるのか、サンジェ」
痛くないのはやっぱり嬉しいからな!
テンション上がっちゃう~!
「はは、調子が最高潮になってよかったよ」
やっぱり……重い馬場を……フランス最高だな!
「……フランスの実力馬たちが勢揃いだけど、サンジェ、お前と、俺とで、1番にゴール板を踏もう」
はしゃぐ俺の鬣を、芝木くんがゆっくりと撫でる。
風が俺たちに強く吹き付ける。
四方八方から刺さる視線が、俺の身体を突き刺して、でも。
「今日も、いつだって、お前は最高だ」
もちろん、知っている。
「8番にサンジェニュインが入って、態勢完了。2006年ガネー賞── スタート」
「見事なスタートだね。乱れなし」
「先頭はサンジェニュイン、外側から一気に抜けて駆け出す。2番手集団にニヤーオナー、ヴァトーリーが続いて、その2馬身後方はひとかたまり、コレカミノ、ロイヤルハイネスが並んで、半馬身差の位置にマンデュロ、プライドはやや遅れているか、モンテアーが最後方。重馬場だからスローペース、かと思いきや、先頭がぶっちぎってるね」
「大荒れの馬場のスタートダッシュで先頭と2番手に10馬身差もあるレースは初めてだよ」
「僕も!」
海外レースは、GⅠだとゲートを割って少数になることも多いのだとテキは言った。
去年のガネー賞は10頭立ての予定で、1頭が回避したため9頭立て。
今回のレースと1頭しか変わらない。
逃げ馬は勝てない傾向が強い、とも言っていたけれど、今日のレースは重馬場。
俺なら、チャンスはある。
そうだろ?テキ、芝木くん!
「2コーナー過ぎて先頭はまだサンジェニュイン。これはどうだろう、後続はまだ伸びる気配なし。コレカミノは少し掛かり気味じゃないか?2着馬のニヤーオナーのすぐ後ろにぴたりとつけているよ。プライドは馬群から外側に進出、直線前にどこまで差を縮められるかが勝利の鍵だ」
「サンジェニュインのスピードが一切落ちないのが怖いね。踏み出す度に白い馬体が泥んこだ。コレカミノは一杯一杯な気がする。仕掛けが早かったんじゃないかな」
「もうすぐ3コーナー、ここまでサンジェニュインの騎手はステッキを使ってない。まだ余裕がありそうだ。ヴァトーリー、ペースが落ち始めたか中団グループに下がっていくね、代わりにマンデュロ、プライドが競い合うように上がってきた。けどサンジェニュインとの差が大きすぎる、ここから差し返せるかな?」
びゅんびゅん、と風を切って進む。
芝木くんからの鞭がまだ入らないってことは、後続にかなりの差をつけることができている、ってことだろう。
ターフを蹴り上げる度に身体が、時間が前へ前へと動く。
俺ってほんと、重い馬場が合うんだなあ。
ドバイの直線で痺れた、脚の痛みを思い出してハミを噛む。
悔しさがこみ上げる。
勝つつもりでいたのに、俺は奥底で、油断していたのだろう。
無自覚に、恥ずかしげもなく、俺が勝つだろうけどっていう、傲慢さ。
俺が一番忘れてはいけなかったのに。
負けた悔しさの中にある、勝利への渇望。
「思い」の強さで、2センチ、競り負けた。
もう二度と、同じ過ちは犯さない。
「おいおい、まだ加速するのかい?もう一度言うけど、今日は不良馬場にかなり近い重馬場だよ。第4コーナーまであと100メートルでサンジェニュインがさらにスピードをあげてきた、懸命に差を縮めようとコレカミノも必死に追うけど、これはもう絶望的か、マンデュロとプライドがなんとかコレカミノに並んで早くも2着争いって感じだ」
「桁違いのスピードだよ、ここまで大逃げしてまだそんな脚があるなんて……」
テキたちは今回のレース、俺を「実力は完全に突き抜けてる」と評した。
けど、それがなんだっていうんだろう。
同じ事はドバイでも言われた。
欧州年度代表馬のウィジャボードら名牝を相手にしても逃げ勝つだろう、って。
でも結果、俺は負けたんだ。
心の柔らかい部分が生んだ慢心を引きずって。
ああ、恥ずかしい。
自分がナンバーワンみたいな、そんな勘違い。
違う、勝つまではナンバーワンじゃない。
ゴール板を1着で突き抜けて、初めて、俺はそのレースでナンバーワンになるのだ。
「直線を向いてぐんぐん、ぐんぐんサンジェニュインが伸びる、ステッキも使わずに、まるで、まるで馬の意思だけでレースをしているみたいだ」
レースに絶対はない。
だからこそ、油断も、慢心もない。
常に自分を疑え。
自分がナンバーワンであることを疑え。
ゴール板を踏む、その瞬間まで、他馬に心を許すな。
「サンジェニュイン、大楽勝だ!……もう笑っちゃうよ、先頭を追う実況カメラには一切他の馬が映ってないんだから」
「走破タイムは?」
「2分11秒ジャスト!しつっこいくらい繰り返すけど、今日は重馬場だ!デタラメなタイムだね!」
「サンジェニュインに有り金全部賭けたそこの君、おめでとう!」
大歓声を浴びた瞬間に、ナンバーワンだと叫べる。
ガネー賞から一夜明けたシャンティイ調教場。
青ざめた表情の本原が、駆け込むようにして厩舎に入った。
「大変なことになった」
「どうしたんですか、テキ。びしょ濡れじゃないですか、タオルを」
「いや、後でいい。それよりも、ああ、本当に大変なことになった」
その額には、雨に紛れて冷や汗が流れている。
深刻そうな表情を前に、イサノは息を飲んだ。
「金銭トレードだ」
「え?」
一度息を吐いた本原が、繰り返すように口を開いた。
「ゴンゴルドンが、サンジェニュインを欲しがっている」
レースの参考資料
馬場状態 - wikipedia
https://w.wiki/3yYM
2006年ガネー賞
https://racedb.com/cgi-bin/race.cgi?id=40206043005
「Very Soft」を、Wikipedia記載の情報を参考に「重馬場」としています。
※netkeiba.com など一部のサイトでは「稍重」とされています。
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閑話 掲示板回 Ep-6
掲示板回のみ、誤字報告、レス違い報告等不要です。
先頭至上主義にして美しき逃亡者・サンジェニュインに夢を託すスレ part.61
1:夢見るギャンブラーナナシ ID:pnOr77nx7
タイトルの通り、2004年デビューの4歳牡馬・サンジェニュインに夢を託すスレです
馬券を握ってないやつ、馬券を捨てたやつは書き込む資格ナシ
サンジェニュインにまったく関係がない話題はNG
以下ノータッチリスト
・アンチ
・荒し
・荒しに触るやつ
前スレ 先頭至上主義にして美しき逃亡者・サンジェニュインに夢を託すスレ part.60
他の馬の話は個別スレにイケ
※他スレでサンジェニュイン最強の話題だすと過激派がキレるので注意されたし
近代競馬の至宝・ディープインパクトを語るスレ 85
最強の逃亡者はサイレンススズカで決まり 70
ツインターボに活躍馬がいたらどんな馬か考えるスレ 43
やっぱりカブラヤオー思い出雑談 19
・
・
・
掲示板回のみ、誤字報告、レス違い報告等不要です。
596:夢見るギャンブラーナナシ ID:ieh3CQYv5
ドバイは盛大に地上波で放送したのにガネー賞移らないなんてクソ
597:夢見るギャンブラーナナシ ID:4q4TIjw9S
しゃーないだろ1頭しか出てないんだから
598:夢見るギャンブラーナナシ ID:nMQpeUv5T
ドバイ→日本調教馬が10頭
ガネー賞→我らがサンジェニュイン1頭(帯同馬なし)
599:夢見るギャンブラーナナシ ID:t0Y/c/KZR
>>598 どうしてもね・・・あつかいが・・・
600:夢見るギャンブラーナナシ ID:ZJSqvbByh
グリーンチャンネル契約すればすべて済む話だぞ
601:夢見るギャンブラーナナシ ID:aG2RaFTGY
まあ海外レースなんでほぼ馬券握れないんだが
602:夢見るギャンブラーナナシ ID:V+49K9ir5
心で握れ
603:夢見るギャンブラーナナシ ID:foSWy6n1Z
買いたいけど海外レースの馬券の買い方解らなくて死んだ
604:夢見るギャンブラーナナシ ID:7hdIiux6R
>>603 成仏しろ
605:夢見るギャンブラーナナシ ID:gLtNrtx/G
ガネー賞の結果まだ?
めちゃくちゃnatdekeiba.com のサイトリロードしてる
606:夢見るギャンブラーナナシ ID:6VrikJZkf
わからん
607:夢見るギャンブラーナナシ ID:QwUU3r2L4
たぶん勝ってる(祈り)
608:夢見るギャンブラーナナシ ID:PPMYe80ld
ドバイが惜しかっただけにガネー賞勝って欲しいわ
609:夢見るギャンブラーナナシ ID:t+nnGeKyc
負けはしたけど2cmだしそこまでダメージはない
っつーか相手フロックだろ
610:夢見るギャンブラーナナシ ID:EvtO1RzJK
タイム差なしだし悲観する内容ではないからな
問題はフランスの馬場に適応できるか
611:夢見るギャンブラーナナシ ID:Ig/bkHqtO
>>609 相手がフロックだって言い張るのは差し競り合いに負けたサンジェに失礼
612:夢見るギャンブラーナナシ ID:np5pEAnTt
競馬にフロックなんてないぞ
あるのは「勝った」「負けた」
613:夢見るギャンブラーナナシ ID:OX5SNWAod
サンジェファンの俺も驚くほどの差し脚だったからなハーツクライ
よくわからん地元の馬に負けるよりは納得できる
614:夢見るギャンブラーナナシ ID:XDzzkoLn7
ドバイの後からフロック説マン増えてんな
頼むからやらかすのはこのスレの中だけにしとけよ
他スレでやったらただの害悪野郎だからな
615:夢見るギャンブラーナナシ ID:MJo4xVHz7
サンは弱くない!をぎゃあぎゃあ言うと一周回って弱く見えるんですね
ここまで騒がないとフォローできないような弱い馬なんだ・・・って
ただのアンチなのでノータッチで行きましょう
616:夢見るギャンブラーナナシ ID:gMguXALmw
楽しい話しようぜ
>>610
調教内容はイイらしいぞ
木漏れ日の中で芝木を乗せて歩くサンジェの写真でも見て安心しろ
http://natdekeiba.com/horse_id=114514&photo_id=893
617:夢見るギャンブラーナナシ ID:cLcknz6um
>>616 神々しっ
618:夢見るギャンブラーナナシ ID:d12N4ZkLr
シャンティイ調教場での写真か
あそこってそんな森のドームみたいなのがあるんだな
栗東もそんな感じなの?
619:夢見るギャンブラーナナシ ID:dg3mVBbmq
さすがフランスギャロが管理するトレセンだな
そして人馬ともにキラキラしてやがる >>616
620:夢見るギャンブラーナナシ ID:i1ypOh1e1
ただの調教帰りのワンシーンのはずなのに映画ポスターみたいで笑う
621:夢見るギャンブラーナナシ ID:RhOhHtojb
>>618 緑が無いわけではないけど、あんな自然のドームです!みたいなのは・・・
622:夢見るギャンブラーナナシ ID:fEOOnuf66
シャンティイはものすごく広いし、歴史もかなりのもんだからなあ
623:夢見るギャンブラーナナシ ID:Pl0gdcx90
木々の隙間から入り込む太陽光とか、その中を歩く白毛の馬とか、そんなんイラストでもなかなか
624:夢見るギャンブラーナナシ ID:VfM+6x1cU
>>616 これ撮ってるの、フランスギャロのお抱えカメラマンだぞ
625:夢見るギャンブラーナナシ ID:SKolhHRxC
プロじゃん
626:夢見るギャンブラーナナシ ID:mZUA5rGpZ
>>624 マジ????
627:夢見るギャンブラーナナシ ID:Cx3ozDq2p
そんなタイミングよく調教帰りにカメラマンいる?
日本向けの写真で予定合わせて撮ったに1票
628:夢見るギャンブラーナナシ ID:n98kvX5/9
>>624 フランスギャロの競馬新聞に載ってたし、そこにカメラマンの名前が載ってた
フランスギャロのサイトみれば解るぞ
>>427 ハリケーンランの取材帰りに出くわしたらしい
全部フランス語だけど興味あればソース↓
http://kaigai_no_hitoblog.com
629:夢見るギャンブラーナナシ ID:QoHO74Bef
撮影:プロならこのクオリティも納得
630:夢見るギャンブラーナナシ ID:V5KJt2ilO
あれ? >>616 サンジェの厩務員かわった?目黒さんじゃないな
631:夢見るギャンブラーナナシ ID:lmEOQo/P2
芝木がデカいからサンジェの大きさを正常に認識できてなかったけど、やっぱデカいなこいつ
632:夢見るギャンブラーナナシ ID:i3jcLv/Bg
このデカさであのスピードとはたまげたなあ
633:夢見るギャンブラーナナシ ID:DtbLhR3Zh
デカいから1歩1歩がエグイんだわ
634:夢見るギャンブラーナナシ ID:TXaxC6PsU
>>630 変わってないぞ
目黒さんが一時帰国したから代理の人だな
635:夢見るギャンブラーナナシ ID:GSTtZZAlw
代理の女性厩務員が小柄な分、マジでサンジェがでっかく見えるしたぶんこれが正常
636:夢見るギャンブラーナナシ ID:M96ncuupS
おそらくこの女の人がちっさいのではなく、単純にサンジェがデカすぎるだけ(結論)
637:夢見るギャンブラーナナシ ID:U81whDxb8
こんなでかいウッマなのに、男馬に追いかけ回されて腰抜かすらしい
638:夢見るギャンブラーナナシ ID:G+wTHd67b
>>637 皐月賞の話するのやめーや
639:夢見るギャンブラーナナシ ID:nCZzCFHR3
ガネー賞の結果きた!!!!
http://natdekeiba.com/news_id=0430114574
640:夢見るギャンブラーナナシ ID:UnY9En/Rb
>>639 ナイス
641:夢見るギャンブラーナナシ ID:Gs1d2EMKG
>>639 URLたすかる
642:夢見るギャンブラーナナシ ID:LO5Nh8NOi
>>639 急にスレが過疎ったと思ったらアクセスできなくてワロタ
643:夢見るギャンブラーナナシ ID:hxHUfQ9rD
殺到しすぎ
644:夢見るギャンブラーナナシ ID:aZ7wAQ9J4
マジで見れないがwww
645:夢見るギャンブラーナナシ ID:xbh1N8OWC
誰かコピペ頼むわ
646:夢見るギャンブラーナナシ ID:/vSvmRPkk
みんな無言だしたぶん勝ったなこれ(震え声)
647:夢見るギャンブラーナナシ ID:DEHRjgY7g
負けたらドバイみたいに叫んでるだろうしな
648:夢見るギャンブラーナナシ ID:jURwMwKG2
向こう重馬場だったらしいけど、故障とかないよな?
649:夢見るギャンブラーナナシ ID:g5VhPSAkl
>>648 不吉なこと言わないでくれ
650:夢見るギャンブラーナナシ ID:E6R1oInsf
はーっ
最高だなおい
651:夢見るギャンブラーナナシ ID:Sf7DMqKkv
お、戻ってきたか
652:夢見るギャンブラーナナシ ID:AmGkjgMZ3
もうアクセスできるわ
http://natdekeiba.com/news_id=0430114574
653:夢見るギャンブラーナナシ ID:w6iMqvPUG
強くて笑い転げてた
654:夢見るギャンブラーナナシ ID:N2WfPJxKE
これが俺たちの愛馬(違う)
655:夢見るギャンブラーナナシ ID:RQRKahAi3
26馬身差wwwwwww
は?
656:夢見るギャンブラーナナシ ID:Lw9uCbWZ1
そんなことある????
657:夢見るギャンブラーナナシ ID:NrXojpjJA
ゴール前の写真、マジでサンジェニュインしか写ってねえwww
658:夢見るギャンブラーナナシ ID:jgdwmdFQP
負けるときは僅差、勝つときは大差
この2択以外にないのか?
659:夢見るギャンブラーナナシ ID:zvGu9M7fP
勝っても負けても派手な馬だな
660:夢見るギャンブラーナナシ ID:RLluDch2i
どうしたら重馬場で26馬身差も出るんですかねえ
661:夢見るギャンブラーナナシ ID:QRlY/GikA
わからん、俺はもうこの馬のことは深く考えないようにしている
662:夢見るギャンブラーナナシ ID:44ZMWgP+Z
ドバイで惜敗してやる気ダウンしたかと思ったらいきなり大差勝ちすな
663:夢見るギャンブラーナナシ ID:TMm2mWhdp
でもあれだな、今回の勝利でやっぱサンジェはヨーロッパ向きなのがわかったな
664:夢見るギャンブラーナナシ ID:M7ankVZq+
>>663 神戸新聞杯(稍重)のぶっちぎりはまぐれでもなんでもなかったってワケ
665:夢見るギャンブラーナナシ ID:ylBXKfYyM
次は50馬身差!とかなってももう驚かん
666:夢見るギャンブラーナナシ ID:wqy52UCJd
>>665 それはさすがにない(震え声)
667:夢見るギャンブラーナナシ ID:vuNYV2OLl
でも重馬場が本来のステージだったとすると、日本の良馬場でディープと僅差ギリギリだったことの説明がつかないんだが・・・
668:夢見るギャンブラーナナシ ID:8w5m7798o
サンに説明つくことあったか?
まず牡馬に好かれる顔って時点で(ループ)
669:夢見るギャンブラーナナシ ID:EI/kcVT77
かがくてきにしょうめいされた
670:夢見るギャンブラーナナシ ID:IDaoqCL3O
せめて鞭のひとつでも入ってりゃあ
671:夢見るギャンブラーナナシ ID:a5E0bzK+G
持ったまま26馬身差つけるやつがあるか
672:夢見るギャンブラーナナシ ID:UQR3zNNDt
コレカミノは泣いていい
673:夢見るギャンブラーナナシ ID:Bkqj/Hy02
ドバイでファッションショー開いてた馬とは思えんな
674:夢見るギャンブラーナナシ ID:vR4pEN77M
馬着でパリコレでて来そうな馬って言われてたのは爆笑
675:夢見るギャンブラーナナシ ID:UZ3o3dwVK
シマウマ柄着せたの誰だよww
676:夢見るギャンブラーナナシ ID:kggLI7Ope
ドバイはサンジェのファッションショー半分、レース半分
677:夢見るギャンブラーナナシ ID:infBWf3vd
>>675 翌日に来てたスーツ柄の馬着は良かったな
678:夢見るギャンブラーナナシ ID:ISjkaQEYe
ファッションショーとレースっていう仕事掛け持ちしてたサンジェはジャパニーズビジネスマンだよ
679:夢見るギャンブラーナナシ ID:Vx0kNYI7s
牡馬から逃げ回っていたサンジェがドバイでやっていけるかと思ったら、俺らの知らないうちに男(カネヒキリ)できてたな
680:夢見るギャンブラーナナシ ID:MnU6LHuQ3
>>679 その言い方やめろwww
681:夢見るギャンブラーナナシ ID:rfL38Rax6
俺らの知らないうちに、っていうかたぶん先に出会ったのはあっちだから、ポジション的には俺たちが間男では?
682:夢見るギャンブラーナナシ ID:9MXPamIUP
そもそもなんでサンジェとカネヒキリがデキてる前提で話してるんですかねえ(恐怖)
683:夢見るギャンブラーナナシ ID:mF4943gLl
サンジェにも仲の良い同性がいたことに安心した
牝馬だとラインクラフトと仲いいってのは向こうの厩舎ブログで見てたけど、異性だと帯同馬とか輸送とか一緒にするのは難しいらしいじゃん
カネヒキリと一緒に写ってたドバイの写真も毎日楽しそうだったしな
その分、フランス遠征に帯同馬なしっていうのはキツいと思ったが
684:夢見るギャンブラーナナシ ID:vTkrVq981
>>683 わかる
カネヒキリ以外に帯同馬つけられなかったんかな
685:夢見るギャンブラーナナシ ID:ab+4ax/Z+
まあガネー賞圧勝(白目)なんでもうそこはいいわ
686:夢見るギャンブラーナナシ ID:ZEHTYdEXH
次の遠征も帯同馬なしか?
687:夢見るギャンブラーナナシ ID:mVdvdCrwM
元々他馬とつるむ馬じゃないんだし、カネヒキリが屈腱炎ですぐ戻って来れないんだからそうじゃない >>686
688:夢見るギャンブラーナナシ ID:RrilvH1Vk
てっきり種牡馬入りかと思ったら現役続行で泣いた
ドバイワールドカップ勝ったんだから休ませたれ
689:夢見るギャンブラーナナシ ID:Mv6wXtZXy
日本でのダート馬の評価がアレなんで・・・
690:夢見るギャンブラーナナシ ID:Lgx3IwPnk
正直サンとカネヒキリの2ショット気に入ったからまた一緒に旅行してほしい
691:夢見るギャンブラーナナシ ID:hD0sYKaKB
俺はサン単推しだからサンが元気にやれるなら相手は誰でも良いわ
692:夢見るギャンブラーナナシ ID:7lpe8R3Tn
ってかさ、海外競馬ってラビット多いらしいけどサンはそういうのナシなんだな
693:夢見るギャンブラーナナシ ID:NI4uOXL5C
ラビット?ウサギ?
694:夢見るギャンブラーナナシ ID:Eld3GJnEZ
>>693 ペースメーカーな
本命の馬を勝たせるために、囮役とかする2番手の馬
695:夢見るギャンブラーナナシ ID:gqlzYfYYq
急にスレ過疎ったな
696:夢見るギャンブラーナナシ ID:pL7tyXYon
白いのと黒いのとの本スレでどっちが強い論争が白熱してる
697:夢見るギャンブラーナナシ ID:IYHUTJ2XM
まあたクソみたいな最強論で殴り合ってるのか
698:夢見るギャンブラーナナシ ID:OHnMafnCt
>>694 トンクス
699:夢見るギャンブラーナナシ ID:38gIw0zWP
>>692 いらんだろ
サンジェニュイン自体が逃げ馬なんだから、レースのペースも何も自分で握れるからな
700:夢見るギャンブラーナナシ ID:VdSpIM1xn
海外レースって前の方走ってる馬はだいたいラビットだからなあ
刺し追い込みの馬が多いんだっけ?
701:夢見るギャンブラーナナシ ID:jTg5tOXG1
しらん
702:夢見るギャンブラーナナシ ID:7GDPP5kkd
サンジェが出てるレース以外に興味ない
703:夢見るギャンブラーナナシ ID:IxkzRaCmD
ライトなファンはそうだろうな
704:夢見るギャンブラーナナシ ID:VkuJ99ZMX
>>700 そもそもが日本みたいな高速馬場じゃないってことが前提だからな
こっちはスピード命!みたいなところあるけど、向こうは良馬場でも質が違うし
705:夢見るギャンブラーナナシ ID:VkuJ99ZMX
なんでサンジェの大逃げは向こうの人にはかなりウケたっぽいよ、新鮮で
あと連投スマン
706:夢見るギャンブラーナナシ ID:PkAf+fZ11
へえ
707:夢見るギャンブラーナナシ ID:sTDXyuJE5
【速報】ユートピア、約5億円でゴンゴルドンに金銭トレード
708:夢見るギャンブラーナナシ ID:VXpATtXmu
>>707 マジか
709:夢見るギャンブラーナナシ ID:6TXUDEs4g
>>707 びっくりだけどスレチだわ
710:夢見るギャンブラーナナシ ID:3MoAugdWU
>>707 そういうのもあるんか、っていうか5億は多いんか?少ないんか?
711:夢見るギャンブラーナナシ ID:xySfm8BSf
現時点の獲得賞金のほぼ同額だな
712:夢見るギャンブラーナナシ ID:zBqmEzii5
ユートピア、ドバイではサンジェとも仲よさそうだったから残念だ
713:夢見るギャンブラーナナシ ID:hovC1MyaU
>>709 ところがどっこい、スレチではないんです
http://yahhoi.news_speed/top_id=1919893
714:夢見るギャンブラーナナシ ID:n8uxh0zUV
ゴンゴルドンはドバイだから、転厩もするってことか
715:夢見るギャンブラーナナシ ID:FWVUe9QBl
ここまで育てた大橋調教師は手放しがたかっただろうな~
716:夢見るギャンブラーナナシ ID:dnXrOU7uj
>>713 これまじ????
717:夢見るギャンブラーナナシ ID:STjl2Mx7R
>>713 大ニュースじゃねえか
718:夢見るギャンブラーナナシ ID:Tpc96FnOC
>>713
>契約状況は明らかになっていないが、関係者によると移籍金は2000万ドルを予定しているとのこと
えげつない額だな
719:夢見るギャンブラーナナシ ID:SLd7KBujW
2000万ドルってだいたい20億くらいってこと????
720:夢見るギャンブラーナナシ ID:Kth9IXDnF
これマジで移籍しないよな?あくまでもこれくらいの金額が予定されてるだけだもんな?
721:夢見るギャンブラーナナシ ID:cpdrJz6AO
>>720 額が額だから移籍もある
722:夢見るギャンブラーナナシ ID:S3oZy/P+c
芝GⅠも勝ったエレクトロキューショニストを金銭トレードした後にダート戦に出したところだぞ
移籍したらサンジェも凱旋門賞とかには出ないんじゃないの、これ
723:夢見るギャンブラーナナシ ID:3oQSt5p2Z
サンジェの今の賞金いくら?1億はこしたよな?
724:夢見るギャンブラーナナシ ID:TrhFAzyk5
>>723 少なくともユートピアよりは持ってるぞ
725:夢見るギャンブラーナナシ ID:A3m7cHcf3
金の問題じゃねえ
いやマジで、えっほんとに
サイレンスレーシングさすがに手放さないだろ、血統も良い白毛だぞ海外GⅠ勝ちだぞ
凱旋門いくならこの馬しかいないじゃん
726:夢見るギャンブラーナナシ ID:zRffsLsv/
これからどうなるんだ・・・
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【海外GⅠ制覇】サンジェニュインが仏GⅠ・ガネー賞を圧勝 |
現地時間の4月30日、フランスのロンシャン競馬場で開催されたガネー賞(サラ4歳以上、GⅠ・芝2100メートル)に出走したサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)は、前日の雨の影響で重馬場(仏=Heavy soft)の中、ゲートが開いたと同時に先頭に立つと大逃げし、持ったままゴールイン。走破タイムは2:11:0と、2着馬に5秒近く差をつけた。着差は26馬身。 2着に入線したコレカミノのタイムは2:16.2と、前年のガネー賞(重)で勝利したバゴのタイムから1秒近く縮める好走であり、重馬場としては決して悪い時計ではない。
この勝利を受けて、管理する本原佳己調教師は「重い馬場を苦にしないパワーを持っているとは思っていたが、想像以上のレースだった。次走も期待できる」とコメントしている。所有するサイレンスレーシングからも「とても強い競馬でした。支援してくださった一口馬主様を始め、関係者の皆様とこの喜びを分かち合いたいと思います」と喜びの声が上がった。
フランスGⅠを白毛馬が制するのは史上初。フランスの現地メディアを始め、ヨーロッパ各国、アメリカなど競馬が盛んな地域で多く取り上げられた。 ますます注目が高まったサンジェニュインだが、5月初旬に日本に帰国し、2週間の放牧に出されたのち、再びフランス遠征を行う。次走はサンクルー大賞を予定しているとのこと。 |
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33.譲れない
今回のメイン:ヒト族視点
後半ちょろっと:サンジェニュイン視点
今回の更新に合わせてニヤニヤ大百科も更新しました。
https://syosetu.org/novel/259581/1.html
「会合の結論から言うと── この金銭トレードに応じる気はないよ」
「代表……!」
私を呼ぶ役員たちの声色は2つに分かれた。
ひとつは安堵、ひとつは落胆。
そんな役員たちに指示を飛ばしてから、私はこれまでを回想した。
JRA経由でゴンゴルドンから金銭トレードを持ちかけられたのは、ドバイミーティングから明けて3月26日。
要らぬ動揺を生まないよう、この話は一部の役員にのみ伝えた。
サンジェニュインを生産した
そもそもの話として、私はこの金銭トレードにハナから応じる気はなかった。
理由はいたってシンプルだ。
“私がサンジェニュインに夢を見ているから”
生産者としては到底褒められたものではないが、たったそれだけが、私が彼を譲りたくない理由だった。
サンジェニュインの父は社来グループが誇る大種牡馬・サンデーサイレンス。
母のピュアレディーこそ未出走馬だが、その全姉は皐月賞馬・ジェニュインを産んだクルーピアレディーだ。
5代血統表には母父父としてボールドルーラーの名前があり、その代表産駒としてセクレタリアトや、日本で種牡馬として繋養されたロイヤルスキーの父・ラジャババ、種牡馬として大成功を収めるワットアプレジャーらがいる。
このロイヤルスキーは、2000年のダービー馬・アグネスフライトと2001年の皐月賞馬・アグネスタキオンの母・アグネスフローラや、他の直仔にワカオライデン、孫にユキノビジンやエアジハードらを輩出した。
スピードを重視し、スプリンター、マイラーを求める声が大きくなった昨今の流行を見て、私は、早期に活躍するマイラーを作るための血統モデルとしてジェニュインを選んだ。
ボールドルーラーの直仔やその孫世代にはマイラーも多く、ジェニュインもまた、古馬になってからマイルチャンピオンシップ1着、安田記念で2着、秋の天皇賞で3着とマイル路線で好走した。
最終的にはGⅠ勝ちは2勝に
もし、ジェニュインに頑丈な脚さえあったならば。
2001年の時点で母であるクルーピアレディーは18歳を超えており、もうこれ以上無理をさせることはできなかった。
どうにか近しい血統で再現できないかと思い、白羽の矢が立ったのがその全妹であるピュアレディーだ。
当時のピュアレディーは、競走馬として出走することも、乗馬として活躍することもないまま、少しだけ裕福な一般家庭の珍しいペットとして暮らしていた。
その経歴だけで言えば、繁殖に上がれるような牝馬ではない。
しかし注目すべき点は、彼女がこれまで一度も大病を患うこともなく、そして怪我をすることもなく生きてきたことだ。
小柄ながらどっしりとした脚、腰、蹄の形。
父方の祖父であるボールドルーラーも小柄だったが、後躯の形の良さを受け継いで見栄えがよく見えた。
そんな彼女を導入するのにかかった費用は約12万ドル。
これが安価か高価かは、これから彼女が産むことになる馬の成績で決まるだろう。
2001年春の種付けから、約1年後の夏。
2か月遅れての出産となったが、ピュアレディーは無事に牡馬を産んだ。
青鹿毛の父と栗毛の母とは異なり、大柄で白い毛色のこの馬は、1歳の秋に栗東トレーニングセンターに入厩した。
競走馬名の“サンジェニュイン”は、生産された陽来の陽と、父サンデーサイレンスから「サン」を、血統のモデルとなったジェニュインからその名を継いだものだ。
当初の目標は、朝日杯フューチュリティステークスを最終とする2歳マイル路線。
だがサンジェニュインの体躯等から、マイル路線では厳しい戦いになるとサイレンスレーシング内で反対意見が多くなり、また、本原調教師からの懇願も相まって、その初戦は12月19日の阪神競馬場2000メートルとなった。
胴の長い身体つきはステイヤーを想起させ、メジロマックイーンやスーパークリークのような先行型か、それともライスシャワーのような差し型か。
白い馬が後方から伸びてくる様はきっと目立つぞと、関係者の間でも話題になり、管理する本原調教師もそのつもりで調教を進めていた。
だが結果として、サンジェニュインは我々の予想を裏切り、飛び出しの良さと無尽蔵のスタミナ、圧倒的なスピードを盾にした大逃げを見せる。
今やトレードマークとなった栗色のメンコもまだなく、白い鬣が風に揺れる姿は様々な競馬雑誌の表紙にもなった。
社来期待の良血馬・ディープインパクトの差し込みを受けながらもハナ差2着。
8センチまで健闘して見せたその勝負強さは、3歳のクラシックでも発揮された。
皐月賞は同着、日本ダービーはハナ差1センチ2着、菊花賞は後続を4馬身突き放して1着。
古馬を相手にした有馬記念でも1センチとギリギリではあるが競り勝って見せた。
そして4歳の4月30日。
サンジェニュインは、文字通り世界を照らした。
あの日のロンシャン競馬場は重馬場。
力強い踏み込みでえぐられた芝が目に焼き付く。
先頭を映すカメラにたった1頭、ゴールを目指し続ける横顔だけが映り続けた2分11秒。
永遠にすら思えた。
一瞬にすら感じられた。
ゴールしてからも5秒近く、後続はやってこない。
まるで単走だと、共にレースを見ていた役員たちから言葉があふれる横で、いつからか私の中に根付いていた思いがふっと起き上がる。
── この馬そのものが、歴史になるのではないか?
選んだ血統が思った通りに成長するとは限らない。
目論見を外れた成長を、選択の失敗だと言う生産者もいる。
サンジェニュインは確かに、私が生み出したかったマイラーではなかった。
がっかりしたし、残念にも思った。
その一点のみをみれば失敗だったかもしれないが、今の私にとって彼は、希望という光だ。
すべて結果論だと解っている。
彼が成果を出したからこそ、こうして喜べているのだと。
だが、それと同時に、こうも思うのだ。
歴史は、人が想像できないところで生み出される。
冴えない外見と馬主死亡の不運が重なり、まったく期待されていなかったセントサイモンが、誰もが知る大種牡馬になったこと。
父が短距離向き血統で、兄姉の成績が振るわず馬主にすら見向きもされていなかったトキノミノルが、10戦10勝のダービー馬として伝説になったこと。
『こんな醜い馬が走るわけない』と蔑まれ、馬運車事故にも巻き込まれたサンデーサイレンスが、米国年度代表馬に輝いたこと。
そうして今、期待外れの成長を遂げながらも、白毛馬として史上初を連発するサンジェニュインもまた、そういった歴史の中にいるのではないか、と。
彼は、私たちのまったく想像の及ばない世界へと、私たちを連れて走っているのではないだろうか。
『夢』という長距離レースを、ひた走る白い希望が見える。
彼の目指すその先に、優駿の門が見えたのは、きっと私だけではないはずだ。
そしていつか、彼に似た白毛の仔が力強くターフを蹴る、その日に、夢を見ている。
私が夢の形を見れたガネー賞から、明けて2日後の今日。
社来グループとゴンゴルドンの会合として設けられた交渉の場に、白いカンドゥーラが揺れた。
ゴンゴルドンのオーナー直々にお出ましとは、まったく予想もしていなかったが、それだけ相手が本気だということの証明だろう。
彼らから提示される移籍金は、私が「譲らない」と言うたびに跳ね上がる。
箝口令を敷いたはずの金銭トレードの話題がマスコミに漏れた際、その金額は20億円だと報道され、やれ十分な金額だ、高額すぎるなどと専門家ぶったタレントたちがコメントしていたが、とんでもない。
その程度の金額を提示されたのなら、私は話が来たその瞬間に断りの電話を入れている。
実際にゴンゴルドンから提示されたのは、
話が進むにつれ、こちらが乗り気でないと知ると90億円、100億円と積み重なって、120億円と口にされた時は何の冗談かとさえ思った。
現役引退後の種牡馬入りを見越した、社来ファームへの種付け権の優先や庭先取引の融通にまで話が広がっても、私は頑なに拒み続けた。
こちらが交渉を進める気はないのだと理解して貰うまでに掛かった9時間は、すなわちゴンゴルドンが粘った時間でもある。
その時間と金額が、ゴンゴルドンのオーナーもまた、私と同じような夢を見ていることを表していた。
「いつか私は、
カンドゥーラを風に揺らしたゴンゴルドンのオーナーが、そう言葉を残して去る。
その目の光は、道楽でも、気まぐれでもなく、ただ間違いのない真実を告げるように輝いていた。
「代表、中央スポーツ社から「凱旋門賞には出すのか」と問い合わせが来ていますが」
その言葉に、私は閉じていた瞼をゆっくりと持ち上げた。
脳裏にあのオーナーの言葉が蘇る。
『いつか私は、
そのセリフに、心の中で言い返す。
── 私は、
日本調教馬の前に堅く閉ざされた門が、音を立てて開かれていく感覚。
あふれ出る光の在り処は、その門からではない。
わずかに空いた門の隙間を目指して、真っ直ぐにひた走る、白毛の軌跡が輝く。
「「当然だ」と答えてくれ」
その眩しさの後に見えるのは──……
フランスから日本に帰国して約28日が経った。
検疫を受けるためにJRAの競馬学校で5日くらいのんびりしたあと、着地検査?ってやつで牧場に戻って、23日間くらい1頭だけで調整を行った。
普通は21日間らしいんだが、なんでかわからんけど伸びたっぽい。
帰国する前からイサノちゃんやテキの顔色が良くなかったから、日本で何かトラブルでも起きたんだと思うが。
俺が突っついても教えてくれないし、頼れるウマリンガル・目黒さんも居なかったから聞けず仕舞いだったけど……っていうか俺の感覚が可笑しくなっているだけで、普通は馬相手に事情なんか説明しないんだよなあ。
一般常識を取り戻せ俺!と思いながら過ごしているうちに、テキたちの顔色も明るくなって栗東にも戻れた。
「サンちゃん、栗東に戻ったけどまたすぐフランス行くからね~」
俺の鬣をブラッシングしながらイサノちゃんが言う。
次もフランスのGⅠレースだもんな、わかってるわかってる。
でもまた飛行機かあ。
あのコンテナはそこそこ広いし、イサノちゃんやピエールさん、今回は目黒さんもいるからそこまでストレスにはならない。
ただ、飛行機特有の、離陸するときのブワッとなる感覚があんまり好きじゃないんだよなあ。
「これでよし、っと」
お、終わったか?
じゃあ早速行くぞ!
「ちょっ、サンちゃん!?今日は調教場いかないよ!」
調教場じゃなくてカネヒキリくんとこの厩舎だよ。
目黒さんの話ではノータンファームに戻ってるってことだけど、やっぱり直接見ない限りはな!
それに同じ厩舎のシーザリオちゃんも、俺がフランスにいる間に現役引退して繁殖入りしたって聞いたし。
本当にいないのかだけ見る!
あとデルタブルース先輩たちにも挨拶しにいくぞ!
馬にも先輩後輩関係があるからな……カネヒキリくんとこには、併せ馬の相手で色々お世話になってるから念入りにやっとかないと。
「あっすみませんすみません、すぐ出ていきますので……!」
ほんと一瞬で出ていくから許してくれカネヒキリくんとこの厩務員たち。
『デルタブルース先輩、ハットトリック先輩、お久しぶりです!』
『サンジェニュインくんじゃないか、外から帰ってきたんだな』
『外で会って以来だなサンジェニュインくん』
デルタブルース先輩は、俺と同じサンデーサイレンス産駒のダンスインザダークっていう馬がお父さんで、つまり親戚だ。
ハットトリック先輩は父馬が同じなので、母馬違いの兄ってやつだな。
と言っても、母馬が違うと「兄弟」というくくりにはならないらしい。
俺たちの父馬であるサンデーサイレンスって馬は、それはもうえげつないくらい多くの種付けを熟したらしいので、父馬が同じ馬同士を兄弟にするともういろいろヤバイもんな。
ディープインパクトもサンデーサイレンスの仔だし。
ちなみにこの2頭はどちらも牡馬だけど、カネヒキリくんに会いに頻繁に顔合わせしていたら、半年くらいで俺に慣れてくれた。
たまに俺を見て固まることもあるけど、他馬に比べれば大分マシ。
『カネヒキリは実家に帰っているよ。ここにはもうしばらく戻って来ないんじゃないか?』
『シーザリオもだな。あちらは、部屋に別の馬が入ってきたからもう戻って来ないと思う』
『エッ、別の馬が?』
『ああ。まだ2歳の若い牝馬なんだが── おおい、
『噂ってなに!?なにを噂してんの!?』
ハットトリック先輩の呼びかけに、シーザリオちゃんが入っていた馬房から1頭の馬が顔をのぞかせた。
ディープインパクトみたいな鹿毛の馬体に、大きめの流星が額にある。
馬体はなかなか大きいけど、俺よりはちょっと小さめかな?
ただでさえ丸い目が、俺をみた瞬間に大きく開かれた。
『騒がしくしてごめんな。あ、俺はサンジェニュイン。よろしくね!』
牝馬相手には常に低い姿勢で接したほうが好感度高い、ってラインクラフトちゃんが言っていた。
俺、牝馬たちからするとオッスどもを侍らせてるオッス、っていう印象らしくて、会うと『どいつが本命なのよ』って絡まれるんだよなあ。
どいつも本命じゃないが!?!?
あと、将来的にはこの栗東にいる牝馬たちとも、その、まあ血を繋ぐ時が来るかもしれないけど、その時に『ヤった相手がオッス侍らせる馬とか嫌っス』ってラインクラフトちゃんに言われて……俺は……!
そうでなくても俺、デカイし白くて迫力あるから、年下にはなるべく低姿勢でいたほうが良いのだ。
俺は無害、やさしい年上オッスですよ!とアピールするために1歩下がると、向こうも1歩前に進んだ。
デジャヴだよもう……これ流行ってるのか?
……あ、馬房の扉にあたってる。
『なあ、だいじょ──』
「サンちゃん~~!そろそろ戻ろうね……!」
『うおっ!待ってイサノちゃん、あとちょっと、あとちょっと……!』
「もうまずいからね、厩舎の人の視線が……!」
ああ~~!
まだ名前も聞いてないのにい!
『デルタブルース先輩、ハットトリック先輩、それから名も知らぬ牝馬ちゃん!また次の調教でえ!』
『またなー』
『元気でー!』
ズルズルと引きずられながら、俺はカネヒキリくんとこの厩舎を後にした。
っていうかイサノちゃんの力つっよ!?
世界を目指せる腕だろこれはあ!?
『……先輩、あの馬は』
『おお、やっと復活したかあ』
『初めてみるとびっくりするもんなあ、あの顔』
うんうん、と訳知り顔の2頭の馬が頷く。
馬房の窓から少しだけ顔を出した牝馬が、少し気落ちしたように声を漏らした。
『サンジェニュイン……さん』
『
『今回はヒトに連れていかれちまったけど、また話す機会もあるさ。そう気を落とすなよ── ウオッカ』
閉じられた厩舎の扉を見つめて、その鹿毛の牝馬は小さく嘶いた。
次回、ウマ娘回!うまぴょいうまぴょい
ネクスト更新日:9/5
今後のスケジュール↓
https://syosetu.org/user/53018/
10月で完結予定です。
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side:ウマ娘 ー Ep.8
ギリギリの投稿です
ウオッカちゃん視点の短い話
※ウオッカの一人称は公式サイトの「俺」を採用
※メジロマックイーン、ゴールドシップの呼び方はBD版採用
ジャパンロイヤルターフから2週間が経った。
最初こそ酷く落ち込んでいたスペ先輩も、1週間が過ぎたあたりからやけ食いに走り、過去イチで太っちまっていた。
さすがにコレはダメだとトレーナーにどつかれ、今日からトレーニングが再開される。
俺は前にもやったようにスペ先輩のトレーニングに付き合うことになっていた。
腹筋100回、背筋100回、腕立て伏せ100回、それから腿上げ100回と、タイヤ引きを50往復する予定になっている。
大丈夫、これは前にスペ先輩がやったトレーニングだから楽勝だろ。
今回も俺は最後まで付き合うつもりだ。
俺にはマックイーンみたいな実家のツテや、テイオーみたいな生徒会とのコネってのもないからな。
スペ先輩のためにできることって言ったら、これくらいだ。
俺はスペ先輩が待つグラウンドに向かいながら、あのレースの事を思い出していた。
ワールドロイヤルカップのひとつ、ワールドロイヤルターフの予選として、世界各地で前哨戦となるローカル版のロイヤルターフが開催されている。
日本で開催されたジャパンロイヤルターフは、他国にはない特別なルールが設けられていた。
それが「本レースに未出走のウマ娘は、ゲート入りのアナウンス以降、会場に立ち入り禁止」ってルール。
学園内に設けられたライブビューイング会場からでしか、俺たち未出走のウマ娘はレースを見ることが許されていない。
会場入りが許されたのはレース終了後。
先頭で駆け抜けるサンジェニュイン先輩がゴール板を踏んだ瞬間から、俺たちチーム・スピカは会場を目指して走った。
飛び込んだ会場で目にしたものを、俺はしばらく忘れられないだろう。
トレーナーに抱えられながら、大粒の涙を流すスペ先輩の姿は、今も目を閉じる度に浮かんでしかたがなかった。
泣きじゃくるウマ娘なんて見ない日はほとんどない。
それがレースともなれば、必ず1人は会場の隅で力なく俯いているもんだ。
優勝劣敗の世界。
勝者の誕生に敗者は不可欠だから当然だと、頭のどっかでは解っているのに。
負けたこと、届かなかったこと、それ以上のナニカを抱いて涙を流すスペ先輩は、あまりにも痛々しかった。
後から知ったことだが、世間では、あのレースで負けたウマ娘に対して「相手が悪すぎた」と同情する声が多いらしい。
世界一のウマ娘が出走してたんだから仕方が無い、と。
『世界一のウマ娘』
それは、サンジェニュイン先輩というただひとりを指したもの。
長く日本のウマ娘の前に閉ざされていた凱旋門賞を2度も制し、欧州の数々のレースで成功した。
影を踏むことさえ許さない激走に、人は夢を見て、ウマ娘は絶望する。
開かれた優駿の門は、だけどたったひとりが大きな壁になったと、そう答えるトレーナーも多い。
実際にうちのトレーナーがそうだった。
“サンジェニュインは素晴らしいウマ娘だが、あの眩しさが他のウマ娘からチャンスを奪う”
実際に走る俺たちウマ娘と、トレーナーとでは目線が違うのは当然だ。
だけど、それはあんまりだろ。
サンジェニュイン先輩は、周りのウマ娘のチャンスを奪うために走っているわけじゃない。
むしろ、チャンスを与えるために走っているんじゃねーのか?
日本のウマ娘は長く海外レースでは負けっぱなしだった。
それを、あの人の走りが“日本のウマ娘も強い”と証明してくれたんだろ。
その光を浴びるだけ浴びて、あの人がチャンスを奪ってるって言うのは、俺は違うと思うぜ。
俺がそう言うと、トレーナーも、スカーレットもぽかんと口を開けた。
アンタもそういうの考えてるのね、とスカーレットは言ってやがったが、おいそれどういう意味だよ。
考えなしって言いてーのかこいつは!
俺が噴火寸前ってとこで、スカーレットが重ねるように口を開いた。
“癪だけどアタシもウオッカと同じ意見。……トレーナーが言ったやつは、あの人に追いつこうと走ってるウマ娘をバカにしてるのと一緒よ”
一言余計だが、スカーレットも良いことを言うじゃねーか。
サンジェニュイン先輩が2度、天に掲げたトロフィーは確かに世界一の証だ。
世間が「世界一のウマ娘が相手じゃ」と言うのも理解はできる。
けど、だから勝てないのは仕方がない、は理解できない。
その壁を越えようと練習する。
その壁の向こう側が見たくて走る。
俺も、スカーレットも、あのレースのスペ先輩や他のウマ娘も。
壁は大きく、高く。
それでも誰一人負けるために走ってるヤツなんかいない。
勝つためだけに脚を回してんだ。
それでも追いつけなかったなら、それは仕方が無いんじゃなくて、ただサンジェニュイン先輩の執念が上回ったからだ。
俺たちの言葉に何か思うことがあったのか、トレーナーはしばらく考え込むような仕草を見せると、そうかもしれないな、と小さく呟いた。
このトレーナーの良いところは、自分の意思はしっかり持ってるけど、その基準になってる知識とかを更新できるってとこだな。
頭ごなしに否定せず、俺やスカーレットの意見を受け止めて、意味を一緒に考えてくれる。
そういうヤツだから、俺はコイツのことを── いや、今はコイツのことはいいんだよ。
ブンブンと頭を振って、妙に熱くなった頬を叩く。
こんなとこでもたついてる場合じゃ無かった、早くスペ先輩のとこにいかねーと!
俺は軽く伸びをしてから、再び前を向いて、固まった。
── 白い。
トレセンの制服はいろんなところに紫色が入っているし、その人も同じ服を着ているはずなのに、真っ先に浮かんだ言葉は白色だった。
だって、そうなるくらい、白い。
顎のすこし下まで伸びたふわふわとした髪の毛も、瞬きする度に光って見える白いまつげとか。
さっきまで考えていた人が急に目の前に現れた、っていう衝撃もあって、俺はしばらく呆けちまった。
淀みない脚捌きで歩いていたその人── サンジェニュイン先輩も、入り口の真ん中で立ち止まる俺に気づいて止まった。
少し剣呑そうな表情をしてんのは、初対面でジロジロ見られているからか?
テイオーがよく「真珠みたいな指先」だと言う、人差し指が天を指した。
空?どういうことだ?
よくもわたくしの道を邪魔したわね、星になりなさい、ってことなのか?
俺はテイオーやスペ先輩みたいに、サンジェニュイン先輩をみたって動揺しないぞ、と思っていたのに。
頭の中がいっぱいいっぱいになってしまって、上手く身体が動かなかった。
いつもサンジェニュイン先輩の右手に握られている扇はない。
あったらスパンッとその扇で首を切られていたかもしれねーな、と思って冷や汗がでる。
サンジェニュイン先輩じゃねーけど、前にヴァーミリアン先輩が学園に不法侵入したヤローを扇でぶちのめしてたし。
普段は口元に添えられてる、あの太陽マークの扇の役目はソレだと思ってるからな!
いつまでも動かない俺に何を思ったのか、もう1回サンジェニュイン先輩が空を指さす。
軽く見上げると、そこには曇りのない青空だけがあった。
なんだ?何が言いたいんだ?と首を傾げたら、先輩は瞬時にレースの姿勢を取って俺に向かって走り出す。
マジでなんだ!?タックル!?壁にたたきつけられるのか俺は!?
思わず1歩、後ろに下がろうと脚を動かしたところで、あっという間に俺の目の前まで駆けてきたサンジェニュイン先輩に腕を掴まれ、抱き寄せられた。
その直後、ガシャン、と大きな音が響いて、俺は思わずその音の方を振り返る。
俺の立っていた場所に、ただの破片と化した植木鉢が落ちていた。
サンジェニュイン先輩が上を指さしていたのは空じゃなくて、上にある植木鉢に気をつけろ、ってことだったんだ。
「ッぶねえな……」
頭上から、低い声が聞こえた。
今の、誰の声だ?
自分が今どんな状態にあるのかも忘れて、俺は正面を向いた。
キラキラとした白さが目の前いっぱいに広がって、頭に浮かんだ「眩しい」という言葉を慌てて飲み込む。
間違いない、サンジェニュイン先輩だ。
テレビでは何度も見たキレイな顔だが、こんな近くで見たことはない。
さっきまでの俺と同じように落ちた先を見ていたサンジェニュイン先輩の視線とかち合って、俺は、自分の顔が赤くなっているだろうな、と解っちまってさらに赤くなる。
「怪我はないか、ウオッカ……じゃねえや、ぅおほんっ!……あなた、怪我はなくって?」
「うへぇ……!?あっ!あっハイ!あっていうかスミマセン助けて貰っちまって……!」
なんか今、声が変わったような……ッいやそれよりも早く離れねーと!
「ほんと、スミマセン!」
「よくってよ……身の回りのものには気をつけることね。レースも近いのだから」
「う……ちょっと考え事してて……っていうかアレ、なんで俺の名前、レースも……」
俺の言葉に対して、サンジェニュイン先輩は一瞬言葉を止めると、何事も無かったかのように頷いた。
スカートのポケットから栗色の扇を取り出し、キレイな動作で開いて口元を隠す。
学園でよく見かけるサンジェニュイン先輩の姿はコレだ。
先輩は扇をパタパタと仰ぎながら、再び口を開いた。
「有望なウマ娘はある程度頭にいれているわそれじゃあわたくしはこれでその破片は生徒会に言っておくから気にしなくて良いわおほほほ!次からは周りをちゃんと見るのよおほほほ!」
パシン、と扇を閉じたサンジェニュイン先輩は、俺に駆け寄ってきたときのように風の速さで校舎へと入っていった。
その姿には、テレビや、遠くで見るときのような近寄りづらいオーラや、儚げな雰囲気はない。
逆に、俺に向かって走り出した真剣な顔や、俺の腕を引いたあの力強さなんて── ふと、じんわりと熱い左腕の存在を思い出して、ぼぼぼ、と顔が熱くなった。
腕を引かれた。
やわらかくて、俺よりもか弱そうな見た目で、細くて、華奢なのに。
「先輩って、俺よりデカかったんだなあ……」
カッケェなあ、と初めて。
そう初めて、サンジェニュイン先輩はキレイじゃなくてカッケェなと、思った。
一方その頃。
「あぶねえ!!思わず素が出るとこだった……ごまかせてよかったなあ」
扇を扇ぐ白いウマ娘がひとり、のんきに歩いていた。
次回もウマ娘回!うまぴょいうまぴょい!
ところで次回は9/12に更新すると言ったが明日も更新がある。
早漏ですまん。
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side:ウマ娘 ー Ep.9
「年度予算を1回で使い切るとは何事だ!?昨年の「次は気をつける」とはなんだった……おい、話を聞いているのか!?── ハーツクライ!」
「聞いている。しかし、奉仕活動には時々痛みが伴うもの……致し方なし」
「何が「致し方なし」だ貴様ァ!」
さっきの出来事── 2階の植木鉢が落ちてきた件について生徒会に報告をしに来たのだが、もう開ける前からUターンしてえわ。
扉越しからでも聞こえる怒声の主はエアグルーヴ先輩で、怒られているのはハーツクライ先輩。
予算がどうの、奉仕がどうのって聞こえたから、またハーツクライ先輩が支給された年度予算をスッカラカンにしたのだろう。
ハーツクライ先輩はトレセン内で「奉仕部」という部活動に取り組んでいる。
活動内容は「地域への恩返し、奉仕活動」で、その一環としてゴミ拾いをしたり、地域のイベントに積極的に参加したりしているのだ。
なんでまた奉仕部なんて、って思ったけど、たぶん競走馬の時の「ヒト好き」っていうのがこういう形で出てきたんだろうなあ。
俺以外のウマ娘には前世の記憶、つまり競走馬だったときの記憶は引き継がれていないみたいだけど、カネヒキリくんのガン見とか、ヴァーミリアンの性癖ヤクザとかを見るに、あの頃のクセが魂に刻まれているやつらも多い。
いや、ここはシャイゲが生み出した世界のようなものだから、シャイゲがそういう解釈をしてキャラ付けしただけだと思うんだが……それだと「オレの性格が前世まんま」の理由とか、そもそも記憶持ったままなのがわからないし、ウマ娘は「異世界の競走馬の魂」を宿してるしまあ細かいことはいいかあ!
むずかしいこと考えると頭痛くなるしな!
それよりハーツクライ先輩のことだよ。
トレセンでは部活動の予算は1年に1度、1月に配られる。
つい2ヶ月前に配られたばっかりなのに、ハーツクライ先輩ってば今度は何をしたんだ。
去年も1回で予算を使い切ってたけど、その時は『街の皆さんにお礼パーティー』の会場代と料理代に消えたんだっけな。
あの時は会長も「それは奉仕活動というかただのパーティーだな」って苦笑い。
そういやあの頃はハーツクライ先輩もまだメテオにいたから、日野トレーナーと当時のサブトレたちが謝罪に行ったんだった。
先輩が疾病を頻繁に発症するようになってからは、療養と立て直しを兼ねてメテオから独立。
サブトレの1人だったロナルドさんを専属トレーナーにしてからは徐々に体調も良くなって、今は国内のレースを中心に活動している。
奉仕部の方でもロナルドさんを振り回しながら元気にやっているようだ。
今更だけど奉仕部ってライトノベルみたいだよなあ。
この場合の主人公ポジションはロナルドさんな!ヒロインはもちろんハーツクライ先輩だ。
出会い方からしてラノベみたいだったしな……なんだよ曲がり角でぶつかったのが初対面って。
パン食ってたら少女漫画だったぞ!
「……扉の前でどうした、サンジェニュイン」
「アッヒョ!……オ!?ブライアン先輩か~!いやあ、エアグルーヴ先輩がお怒りマックスでなかなか入れなくて……へへ……」
「そうか。サングラスつけるから振り返るな。眩しい」
「オレは蛍光灯だった……?」
「直射日光」
「酷くなってる……!」
眩しい、と言いながらサングラスを掛けるナリタブライアン先輩だが、ここは室内だ。
オレの美貌は、オレの名前に「サン」が入ってることもあってよく「太陽みたい」だと言われるけど、だからって物理的に眩しくはないはずなんだよなあ。
あ、そのサングラス見たことある!
カネヒキリくんとヴァーミリアンが持ってるやつと同じだ。
オーストラリアで人気の紫外線カットのやつ……オレ、ほんとになんだと思われてんだ?
っていうかいつ来たんだよブライアン先輩、一言くらいかけて!思わずアッヒョ!とか言っちまったわ。
「あっなに普通に開けようとしてんすか、まずいですって今あけたらオレたちもゲンコツですよお!」
「知るか。やつらのいざこざは私には関係ない。……行くぞ」
「う~ん最高にクールな態度そこに痺れる憧れるう!でも今はほんとにヤバイ!怒り狂うエアグルーヴ先輩は野生の熊より怖いんすよ!?」
野生の熊は野生の熊というだけで怖いので、生息域に行かなければ避けることもできるけど、エアグルーヴ先輩は避けられないのだ。
そういう意味ではエアグルーヴ先輩の方が怖いまである!
筆記テストで赤点ギリギリを取る度に隠しても即バレ、地の果てまで追いかけ回された末にケツ蹴られてるオレが言うんだ、間違いない!
「── ほう、それで。野生の熊より怖い私に、貴様は何の用があって来たんだ?」
「そらもう……あっ」
「何を青ざめているサンジェニュイン。野生の熊にでも出くわしたような顔をして」
「あっあっ、違うんですう!誤解なんですう!」
「何が誤解か!サンジェニュイン、そこに直れ……ッ!」
「ヒィン……!ほんとスミマセンスミマセンでもあの先に報告させてえ……!」
ヒィンヒィン言いながら正座しつつ、オレは植木鉢の話をした。
校舎に続く扉は東西南北に1つずつあって、本当にただの扉なのだが、それぞれ北門とか南門って呼ばれている。
今回、植木鉢が落ちてきたのは北門だ。
2階から何個か小さな植木鉢が吊るされていて、春になると花が咲いてとても華やかになる。
1つ1つが小さいとは言え、それなりに重い素材の植木鉢が上から落ちてくるのだ。
直撃したら軽傷じゃ済まない。
エアグルーヴ先輩や、奥の席に座っていたルドルフ会長も同じ事を考えたのか、厳しい顔で頷いた。
「植木鉢を吊るしていた紐が劣化している可能性があるな。エアグルーヴ、たづなさんに連絡をして確認をしてくれ。ハーツクライ、ユートピア、落ちた植木鉢の回収を頼む。北門は高等部生が多く利用しているからな、ブライアンはタイシンたちにも連絡してくれ。あとは向こう側で他の高等部生に広めてくれるだろう」
エアグルーヴ先輩たちが頷いて動き出す。
テキパキと指示を飛ばすルドルフ会長はやっぱりすごいウマ娘だ。
オレは脚の痺れに耐えながら、スムーズに動いていく先輩たちを眺めていた。
オレがトレセンに来たばかりの頃の生徒会長はミスターシービー先輩だったが、ルドルフ会長が三冠ウマ娘になると代替わりが行われた。
副会長はエアグルーヴ先輩とブライアン先輩の2人。
会計ポジションにディープインパクト、書記ポジションにオレ。
オレがいたポジションには前までハーツクライ先輩がいたのだが、奉仕部に専念したいってことで代替わりをした。
それでも生徒会の業務は結構な頻度で手伝いに来るので、ルドルフ会長は「書類上は庶務ということにしている」って言ってたな。
今回も当然のように生徒会の一員として指示を受けて動いてる。
あっちょっとハーツクライ先輩やめ、やめて!去り際に脚突っつくなあ!
なに?脚を突っつくのは親しいウマ娘がやることだって?
隣のユートピアさんがマジかコイツって顔してるから嘘だなそれ……!
オレはもうだまされねえからな……!
耳も引っ張るのやめてえ!?
「ハーツ、どうしてサンが絡むとおかしくなるんだ……!?もう行くよ!」
……あ、ユートピア先輩に引きずられていったわ。
ブライアン先輩も連絡が済んだそうで早々に生徒会室を後にした。
ぬるっとオレの背後にいたかと思ったらサラッと消えたな。
オレも自然な動作で立ち去りたかったわ。
脚ぷるっぷるだからできねえけどな!
内心で唸りつつ、周りをちらっと見た。
今、生徒会室に残っているのはオレと会長、それからたづなさんに電話してるエアグルーヴ先輩だけ。
ミスターシービー先輩はいない。
あの人の場合はいるときの方が珍しいけど!
それにしても、ヴッ、脚が痺れて死にそう……!
「サンジェニュイン」
「あい……」
「もう正座しなくていい。……それより、助けたウマ娘の名前はわかるか?解らなければ特徴だけ教えてくれ。本人も気づいていないだけでどこか怪我をしている可能性もあるからな」
苦笑いを浮かべながらもオレの前に立つルドルフ会長。
その手を借りてなんとか立ち上がる。
今のオレ、マジで生まれたての仔馬だわ。
「あい……名前はわかります。ウオッカです。スピカの」
「スピカのウオッカか。……珍しいな」
珍しいって、ほとんど高等部生しか使わない北門を中等部のウオッカが使ったことが、かな?
中等部の生徒はほとんど南門を使うもんな。
あっちの教室からだと北門は遠いから、珍しいと言えば珍しいけど。
でも北門からは調教場、もとい練習コースが近いから、南門から出て外を回るよりは早いんだよなあ。
「会長、たづなさんと連絡が取れました。業者に頼んで各門の点検をしてくれるそうです」
「わかった。立て続けですまないが、このままウオッカの様子を見に行ってくれないか」
「わかりました。……サンジェニュイン、戻ったら昨日の小テストの点数を確認する。逃げられると思うなよ」
「ヒエ……」
昨日の小テストは数学、点数は15点!
もちろん100点満点中だ!……死んだな。
後でカネヒキリくんに遺言のメール送らないと。
「……ウオッカとは前からの知り合いなのか?」
入れて貰った紅茶に口をつけながら、オレはルドルフ会長の言葉に頭を振った。
「いや?直接話したのは今回が初めてですね」
実は競走馬だった頃もそこまで長い時間一緒にいたことはなかった。
ウオッカは「俺」より2つ下だったし、「俺」は海外にいた時間の方が長かったからなあ。
ただすごい素直なやつで、たった2回しか併せ馬はしたことがなかったけど、ヒネくれた事は言わずに納得できるアドバイスは取り入れてくれた。
馬格は「俺」やカネヒキリくんよりはやや小さめだけど、それでも500キロ近い体重にしっかりついた筋肉質な身体つきをしていたのを覚えている。
牡馬の俺よりも牝馬にモテてたのは意味が分からなかったけど、まあ、たぶんアッチも牡馬にモテまくった「俺」のこと意味分からなかっただろうな!
引退後はいろいろあって血を繋ぐことになったりとそこら辺でも縁はあった。
ウオッカは海外で繋養されていたから、その仔とは会ったことはない。
でも日本や欧州でしっかり結果を残してくれたみたいで、引退後は無事に種牡馬入りできたと聞いた。
ただあの当時の日本は「俺」やディープインパクトの産駒が多すぎたから、その仔は欧州のでかい牧場で繋養されたと聞いている。
オレが昔に思いを馳せていると、ルドルフ会長は少し険しそうな顔をしていた。
「そうか……」
うん?なんだ?
なんか妙な雰囲気が……。
「そうだ、サンジェニュイン。アップルパイが好きだったな?」
「大好物です!!!!」
思わず食い気味に叫んでしまった。
さっきまで妙な雰囲気を漂わせていたのは錯覚だったのか、ニコニコとしたルドルフ会長を見つめる。
「ふふっ、なら丁度よかったな。私のトレーナー君がアップルパイをホールで差し入れてくれてな。一人で食べるのも味気ないと思っていたんだ。エアグルーヴたちにも後で出すが、先に一切れ頂いてしまおうか。もちろん後でカネヒキリにも成分表を渡しておく」
「ひゃっほーうッ!食べます食べます!いーともっ!」
「……今のは「eat」と「いいとも」を掛けたのか!ふふっ、いいな!」
「ふへへ……」
お茶の間ドッカンドッカンですわ!
ルドルフ会長の痺れるようなダジャレで盛り上がりつつ、アップルパイを楽しんだ。
「う……な、なんだこの悪寒は……!?」
> シンボリルドルフ の 調子が上がった!
> サンジェニュイン の 調子が上がった!
> エアグルーヴ の 調子が下がった!
「遅かったじゃないウオッカ。もうとっくに始まってるわよ。朝から張り切ってた割に遅刻なんて……」
「へーへー、悪かったよ。っていうか、どんな状況だよ、コレ」
熱くなった顔を冷ましてたらすっかり遅れちまった。
待たせてるよな、と顔を見せると、スペ先輩は謎の青ジャージと走っている。
それだけなら誰か別のやつと併走してんのか、ってなるんだが、どうも様子がおかしい。
併走っていうか、スペ先輩が青ジャージのヤツを追いかけ回してた。
「あの青ジャージは?」
「シルバータイム先輩。サンジェニュインさんの親戚だって」
「サンジェニュイン先輩の!?」
スカーレットにそう言われて、走る2人をもう一度見た。
青ジャージの髪色は確かに白だった。
でもまさか、あのサンジェニュイン先輩の親戚がこのトレセンにいたなんて。
「親戚がいるってのは聞いたことあったけど、海外のトレセンだと思ってたぜ」
「海外のトレセンにもいるみたいよ。今年からクラシックに参戦する親戚が海外にもいるって言ってたし」
「ふーん……で、なんでその親戚ってやつがスペ先輩と走ってんだ?いや、この場合は、スペ先輩に追いかけ回されてるっていうのが正解か」
猛スピードで走る2人の表情は解らない。
けどいつもよりも前傾姿勢で走っているスペ先輩は、まるで狩人だった。
「アタシが連れてきた」
「うおっ!?ご、ゴールドシップ先輩……!」
俺とスカーレットの間に出てきたゴールドシップ先輩は、お馴染みのルービックキューブをいじりながら笑う。
相変わらず読めない人だ。
でも変人じみた行動の裏で、結構仲間思いな一面もあるから嫌いになれないんだよな。
「シルバーは走り方がサンジェニュインに似てっからな、練習相手には丁度いいんだよ。スペがお前のお姉様にボコられたから協力してくれ、って言ったら快く力を貸してくれたぜ」
そう言ってゴールドシップ先輩がウインクすると、グラウンドの方からすげえ勢いで1人のウマ娘が走ってきた。
白い髪の毛、肌、緑味の強い青い目はなるほど、確かにサンジェニュイン先輩の親戚だ。
顔つきも先輩に似ているけど、先輩よりは鋭い目つきに、髪の毛は胸辺りまで伸びていた。
サンジェニュイン先輩が「絶対的な美しさ」だとしたら、この人は「隙のある美しさ」ってとこか。
そのシルバータイム先輩はハァハァと息を荒げながら、目の前のゴールドシップ先輩を睨み付けていた。
「ッなにが……っはぁ、なにが快くだぁ……!?拉致ったの……げほっ……はぁ……はぁ……拉致ったの間違いでしょおがあ……ッ!」
「お、逃げ切ったのか~!さすがシルバー!ヨッ、ネクストサンジェニュインポジション!」
「煽ってるな?そうなんだよな?どーせあたしはサニファに勝てないですよ!後継者カッコ笑いだわ!殴っていい?殴って良いよね!」
「短気は損気!」
「やかましい!」
バシン、とゴールドシップ先輩の肩を叩くシルバータイム先輩は、言葉の割には怒ってはいなさそうだった。
少しの間じゃれ合っていた2人だが、シルバータイム先輩は俺に気づくと汗を拭いながら落ち着いた表情を見せた。
「言っとくけど、協力するのは今回限りだから」
「そんなこと言わずに……スピカ入っちまえよ、ほれ、紙!もう判も押してあるぜ!へへっ、気が利くだろ?」
「なに勝手に人のハンコ使ってんの!?っていうか筆跡も似てる!?」
「超頑張った。ドーナツの真ん中開けるバイトよりも気をつかったぜ!」
「そこに使うなよ……はぁ……」
短い時間だが、シルバータイム先輩が苦労人なのはよく解った。
スカーレットの耳打ちによると、2人は同期らしい。
トレセン入った頃からゴールドシップ先輩の奇行に付き合わされてるってことか。
想像しただけで頭が痛くなってきたのか、スカーレットは額に手を当てていた。
「あたしは「太陽一族」の者として、2度と協力することはできないわ」
冷たさすら感じる声でシルバータイム先輩が言い切る。
“太陽一族”
サンジェニュイン先輩と血の繋がりがある白毛のウマ娘はそう呼ばれている。
色以外の特徴として、その名前に太陽を連想させるキーワードが入っているらしい。
この一族のウマ娘は、一族内はもちろん、世間からも「サンジェニュインの栄光を継ぐこと」を期待されているんだとスカーレットは言った。
目の前のシルバータイム先輩の名前には、太陽を連想させるようなキーワードが入っているようには見えねえけど、この人も例に漏れず、ソレを期待されているウマ娘なんだろう。
重い使命だな、と押し黙った俺とスカーレットを気にもとめず、ゴールドシップ先輩が笑う。
その笑顔は、シルバータイム先輩の空気すら変えた。
どうやらシルバータイム先輩にとって、ゴールドシップ先輩は大きな存在のようだ。
一方的な関係じゃ無かったことが嬉しい反面、謎のむずがゆさを感じる。
な、なんだこれ……3ハロンの恋人たちを見たとき以上の恥ずかしさ……!
「こんなことを言ってっけど、こいつ頼み込んだら絶対に協力するからお前らも土下座するぞ!」
「テキトーなこと言わないで!?」
3回土下座したら協力してくれた。
> ゴールドシップ の 調子が上がった
> シルバータイム の 調子が下がった
> シルバータイム は コンディション「一族の異端者」になった
次回、競走馬回!ヒィンヒィン!
ネクスト更新日:9/12
登場ウマ娘(非公式のみ)
ハーツクライさん
奉仕部とかいうラノベみたいな部活動してる
年度予算を1回で使い切る天才
ユートピアさん
ハーツクライさんとそのトレーナーのツッコミ役をしながら元気に暮らしてる
サンジェニュイン
レース成績はイイが座学の成績はヒィン
シルバータイム
前世はサンジェニュインの産駒、ウマ娘では親戚
ゴルシ&ジャスタ世代で厩舎も一緒だった
母と母父は次の掲示板回の時にでるよ!
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34.こんなの聞いてないよ
※注意※
着地検査が3ヶ月以上となる条件の1つを、この物語では以下のように変更しています。
元:海外遠征60日以上
変:海外遠征65日以上
完全にローテーションのミスですが許してください。
あ、ありのまま今、起こった事を話すぜ!
『カネヒキリくんとこの2歳牝馬ちゃんと併せ馬してたら、この牝馬ちゃんの名前が“ウオッカ”だった』
な、何を言っているのかわからねえと思うが、俺も何を言われたのかわからなかった。
頭がどうにかなっちまいそうだった……!
鬣噛まれるとか性癖の圧迫とか、そんなチャチなモンじゃあ断じてねえ。
もっとやばくて恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……!
っていうかマジで、エッ!?って感じだったんだが。
アイエエ!?ウオッカ!?と叫びそうだったのを必死に堪えたわ。
さすがにもう4歳だしな……2歳の牝馬の前でヒヒーン!と叫ぶワケには……俺にもプライドがあるので!
いや、でもほんとびっくりしたわ。
ウオッカとかダスカとかゴルシとか、ウマ娘の中では割と新しい方の馬だって言うのはネットで見たことあるけど、この年代だったんだなあ。
ゴルシはもうちょっと後だっけ?
ウララちゃんは、前に目黒さんとイサノちゃんが連敗がどうのこうの、引退がどうのこうのでウララちゃんの名前を出してたから、ウララちゃんもこの世代のはず。
引退の話題が出てたのは去年だったから、もう引退したのかな?
会ってみたいけど、もう引退してるなら無理だよなあ。
引退してなくても、確かウララちゃんって地方競馬が主戦場だったはずだから、どっちみち会えないか。残念。
あと、ウオッカと言えばダスカだけど、ウマ娘と同じく馬としても同世代だって聞いたから、ダスカもいるのか。
もしかして俺が気づいていないだけで、とっくにダスカと出会っている可能性が、いやいや、トレセンは栗東の他にも美浦があるし!
でもウマ娘のダスカって栗東寮所属だから……ひょっとして……?
い、いや、これ以上は考えたらだめだわ。
俺はダスカにまだ会ってない。
会ってないったら会ってない。
「では、そういうことで。また機会があればよろしくお願いします。カネヒキリが戻ってきたら連絡しますね」
「ハイ。よろしくお願いします」
お、テキたちの話が終わったか。
じゃあそろそろ厩舎に戻るとしますか。
でもその前に水浴びしてえな。
今日の併せ馬はダートコース、しかも今日は風が強かったから砂を結構浴びてしまった。この前のガネー賞ほどじゃないけど、馬体もそこそこ汚れたし。
厩舎に戻る前にこの汚れを落として欲しい。
『あの、ちょっと待ってください』
目黒さんに水浴びを訴えていたら、遠くにいたウオッカが駆け寄ってきた。
おいおい、大丈夫か?
綱を持ってた厩務員が思いっきり引っ張られてるけど。
すげえハァハァ言ってるのに、それでも綱から手を離さないのはさすがプロだわ。
っていうかあれ?この厩務員、どっかで見たことあるわ。カネヒキリくんの厩務員のサポートに入ってたヒトじゃね?
カネヒキリくん、俺を見かけると走り出しちゃうから、いつの間にか2人掛かりで綱を持つようになってたんだよな。
いつもの厩務員にプラスしてこのヒトがもう片方の綱を持ってたっけ。でもドバイには居なかったんだよなあ。
息を整えている厩務員くんを覗き込んで鼻を鳴らす。おうお前、カネヒキリくん元気?
屈腱炎は治るのに時間かかるって聞いたけど、いつ頃なら会えるか知ってる?せめてお見舞いくらいいきたいんだが。
『あの……』
『うん?ああ、うん。どうした?』
『さっきの……初めて負けました。どこがダメだったか教えてください』
ああ、そうそう、もう1つびっくりしたことがあったんだよ。
俺の中の「ウオッカ」っていう馬のイメージは、俺が競馬をやっていなかったって言うのもあって、完全に「ウマ娘のウオッカ」だったんだけど、実際に馬のウオッカにあったことでイメージ変わったわ。
元気っていうより大人しいし、すごい見つめてくるんだよなあ。視線の圧がすごい!
『うーん、ダメなところか』
『教えてください。強くなりたいです』
勝利に貪欲なところは、ウマ娘のウオッカに似ているけど。
いや、この場合は「ウマ娘のウオッカ」が「史実の馬のウオッカ」を忠実に再現している、っていうのが正しいのか。
っと、今はウマ娘のことじゃなくて、ウオッカのダメなところね。でも、うーん、ダメなとこかあ。
ようするにアドバイスをくれってことだよな。
今日の併せ馬は、俺とウオッカだけじゃなくて、デルタブルース先輩やハットトリック先輩とも一緒だ。
調教コースはダートで、デルタブルース先輩と俺が、ハットトリック先輩とウオッカがそれぞれ1本ずつ走って、最後に4頭でって感じだな。
俺がデルタブルース先輩たちと併せ馬をするようになったのは、シーザリオちゃんがアメリカのオークスに出走するために渡米した頃。
デルタブルース先輩は2004年の菊花賞の勝ち馬で、ハットトリック先輩は東京新聞杯とかのマイル路線で勝ち鞍を挙げていた実力馬。
去年のマイルチャンピオンシップっていうGⅠレースにも勝ってるぞ!
その2頭を相手に、まだ2歳のウオッカが併せ馬をしているのは、普通にすげえんだよなあ。
しかも先輩相手にずっと先着してるっていうんだから、とんでもねえよな。
俺が2歳くらいの頃はまだカネヒキリくんとどっこいどっこいだったぞ。
先輩相手に負け知らずとか、その時点で十分強いんだが、今日の併せ馬では俺が大差で勝っている。
後ろを振り返ったら結構な差がついていたのはびっくりした。終わった後に目黒さんから「レースじゃ無くて併せ馬だぞ」って軽く叱られたし、デルタブルース先輩たちにも「年下相手だよ」とコッソリ言われた。
差をつけすぎると心が折れる若い馬もいるらしい。
実力差がある相手と併せ馬をする場合は、鞍上の
あとちょっとで勝てたのに、とやる気を刺激することで調教に身が入るようになるんだ、と目黒さんが言っていた。
それを聞いて、ああなるほどな、と思いはしたんだが、とはいえ手を抜かれるのって正直イヤじゃん。
いやわかる、やりたいことはちゃんと解っている。
俺も1センチ差でディープインパクトに負けたときに「次は勝つ」って燃えたし。
でもそれは相手が本気だったからであって、ギリギリの勝負を手を抜かれて演出されるのとはワケが違うんだわ。
手抜きか本気かなんてどうせ馬にはわからないだろ、って?
そりゃあ大多数の馬は「なんで走ってんだろ」くらいの感覚かもしれないけど、だからこそ「あ、あの馬べつに走りたくて走ってるわけじゃないな」とかは解るんだよ。
ヒトが思う以上に俺たち、そういうところは敏感だぞ。
勝ち負けにしたって、明確なものはわからなくても、ヒトの声色、動き、接し方でなんとなく自分の立ち位置を理解しているもんだ。
ラインクラフトちゃんもヴァーミリアンも、シーザリオちゃんやカネヒキリくんだってそう。
ディープインパクトだって、別に俺のケツだけ追っかけてるわけじゃないからな。
アイツもちゃんと勝ちってものを解ってるから、最後の最後に俺と競り合うんだよ。
俺のケツ追ってるだけならさ、別に真横に並ばずにずっと後ろに居たっていいんだから。
ウオッカもたぶん、手抜きかどうかすぐに解るタイプだと思う。
俺を追ってる彼女は真剣そのものだったし、これで手抜きしてウオッカを勝たせたり、ギリギリで俺が負けたとしたら、どうして手抜きするんだって怒るパターンだぞ。
相手が真剣なら、こっちも真剣にやらなきゃ失礼ってもんよ。
……なに?併せ馬でレースさながらの激走をされるとお互いに疲労がたまり過ぎてよくない?
今後の調教スケジュールが狂う?
それは本当にすまんと思っている。
『教えてください』
あ、ウンウンわかったわかった、わかったから近い。
距離感バグってる?
若い娘がオッスに鼻先くっつけるんじゃあないよ!
後ろでデルタブルース先輩とハットトリック先輩も心配そうに見てるわ。
併せ馬の勢いで俺がいじめてるように見えてるのか?
大丈夫だっていじめないって。
いまアドバイス考えるから、ちょっと待ってて。
今日の併せ馬でウオッカがダメだったところ、ダメだったとこ……うーん。
正直言うと、そんなにダメだなと思ったところはないんだよな。
俺はまだ馬歴4年、競走馬歴2年目の若手なので、こういうアドバイス的なものはデルタブルース先輩たちの方が適任だと思うんだが、2頭に視線を向けたら『やらかしたのはお前だろ』という視線を返されたわ。
ウィッス、サーセン。
でもなあ、今回の併せ馬で俺がウオッカに大差をつけることができたのは、別にウオッカに非があったわけじゃないんだよな。
単純に俺が走り慣れてたのと、俺のスピードが群を抜いていただけっっていう。
自分で言うのもなんだけど、スピードは同世代の中でもかなり有る方だと思ってるからな、俺。
しかも前日が雨だったからダートコースもちょっぴり重くなってたし。
俺にとっての条件が良すぎるってのもあるわ。
そもそも俺自身は「ケツ追われるのがイヤ」って理由だけで先頭をひた走っている逃げ馬なので、走法も何も、スピードに身を任せているだけ。
コース取りなんかは鞍上の芝木くん頼りで、芝木くんがここだってタイミングで合図をくれるから、それに合わせて最高速度を出してるに過ぎない。
俺の主戦騎手は芝木くんだが、調教のすべてに芝木くんが騎乗しているわけではない。
芝木くんにもそれなりの依頼が入ってるからな!なので芝木くんが乗れない時、例えば今日の併せ馬とかで俺に乗ってる若い
そんな技巧もクソもない、スピードゴリ押しの俺ができるアドバイスとか、なくない?
そう思ってウオッカを見るも、きっと良いアドバイスが貰えると信じている彼女の目はキラッキラしている。
ぐぅ……期待されると応えたくなる……ッ!
俺にできるアドバイス、アドバイス……スピードって目線で、あるとすれば……あッ!?
そうだ、スピードで思い出したんだが、今日一緒に走った感覚なんだけど、ウオッカは一瞬のスピードはあるけどあんまり持続力は無い、って感じがするんだよな。
なんというか、瞬発力?って言えばいいのか?その瞬間のスピードはスゴイんだが、長時間キープできるわけじゃないみたいだから、終盤になるとズルズル落ちていきそう。
確かに速いんだけど、最初から最後までそのスピードを維持できないみたいだから、ここぞって時に使った方が良さそうだ。
今回の併せ馬でもそう。出だしは俺のすぐ後ろにいたのに、終盤はかなり失速してたし。
あと、スピード以外だと、パワーもかなりある方なんじゃないかな。
パワーのある馬は重い馬場を苦にしない、って前にテキが言っていたけど、ウオッカの場合は重馬場っていうよりは坂に向いてそうだなと思った。
今回は坂路じゃなくてダートコースだったし、相手が重馬場だと脚が進む俺だから物足りなく見えたかも知れないけど。
……そういやウマ娘のウオッカは、脚質は先行か差しだったよな?
どっちかが適性Aだったと思うんだけど、差しの方だっけ。
ヒトだった頃の俺は、ダスカを先行で、ウオッカを差しで育成してた、ような気がする。
確か、ウマ娘ウオッカの固有スキルがややこしい条件で、差しだと割と効いてた、ような記憶があるわ。
もう5年近く前だからその記憶もあやふやになっちゃってるが。
ウマ娘はストーリーとかキャラの関係性とか、あと脚質なんかも史実をベースにしてはずだから、すっごいメタな話になるけど、史実のウオッカも差し寄りの脚質でほぼ間違いないんじゃないか、と思ってる。思いたい。
今回のように、逃げる俺に並ぼうと初っぱなから飛ばすんじゃなくて、中段で力を溜めてから終盤に差し切る、って走り方をしたほうがウオッカは楽なのかもなあ。
ただまあ、そこらへんは騎手とか調教師が指導していく領分であって、ただの馬である俺が口を出して良いところではないので……。
うーん、マジで「アドバイス」と言っても言えることがほとんどないわ。
無理矢理なにか言うとしたら、とりあえず鞍上の言うことは素直に聞いた方が良いってことだけか?
『ヒトの言うことを、ですか。ヒトが何言ってるかわからないんですけど』
『それはアレだよ、考えるな、感じろ!』
これはマジでそう。
言葉を聞くっていうよりは、手綱の指示に従う、かな。
綱を引かれたら止まる、緩んだら全力で行く、みたいな。
まあ明らかに行けるって時に綱を掴まれたら俺は抵抗するが!
これは言わんとこ。
『綱を引かれたら止まる、緩んだら全力で行く……わかりました!ありがとうございました。またよろしくお願いします』
そうウオッカがブモブモ言う度に鼻がくっつく。なんか鼻息、荒いねえ!?
『なんで距離感はバグったまんまなんだよ……ウン、よろしくネ。カネヒキリくん帰ってきたらまた寄るから』
1歩下がって、くるりと回る。
俺の綱を持って歩く目黒さんに付いて歩き出したところで、あ、と思い出して振り返った。
『見に行けるかわからないけど、来年のダービー、楽しみにしてる!頑張れよー!』
俺がヒトだった頃にネットで見た情報と記憶が間違っていなければ、ウオッカはウン十年ぶりに日本ダービーを制する牝馬、のはずだ。
今年デビューってことはクラシックシーズンは来年。
その頃に海外にいるかどうかはわからないけど、テレビでもなんでも良いから見れたら良いな。
「どうしたサンジェニュイン、デートの約束でもしたのか?」
「おいおいサンジェ、お前ってヤツは……相手は2歳だぞ!ははは!」
『してねえわ!ははは、じゃないんだよテキ!俺は年下に興味ないし……いやまずまだ馬を恋愛対象にしたことないからな……!?』
前にシーザリオちゃんに発情期来てたのにも気づかなかったし。
全然気づかなかった、って言ったらシーザリオちゃんに尻尾で殴られたよ。
ラインクラフトちゃんにも「正気っスか?」って言われた。
正気だよ!
……エッもしかして俺って、オッスとして不能、ってコト!?
そ、そんなわけないし……ちょっとそういうのに鈍いだけだから……たぶん。
問題ないし、牝馬の発情期につられず冷静にレースに挑めるってことだから、ね……!
ヒィン──……!
『デルタブルースさん、ダービーって何のことかわかりますか』
厩務員に綱を引かれながら、ウオッカはブモモ、と鳴いた。
半馬身先を歩くデルタブルースが、その鳴き声に振り返り、フルーン、と声を返す。
『ダービー?……ああ、暑くなってきた頃にやるやつかあ。この前終わったよな?』
『暑くなってきた頃にやるやつ……?』
『あれ大変らしいよなー!他のとこで暮らしてる同族が、それに出るから毎日走ってて辛い!って言ってた』
2頭の会話に割り込むようにハットトリックが振り返る。
デルタブルースは1度頷いてから、また短い鳴き声を上げた。
『でもそのダービーって牡馬だけなんじゃないのか?牝馬はたしか、なんだっけ、オクラ?』
『オークス、だろ?前にシーザリオが出たやつだ。ウオッカはシーザリオの部屋に入ったし、ウオッカも同じやつなんじゃない?』
『デルタブルースさんたちも出たんですか?』
『出てないよ!ちなみにカネヒキリも出てないぞ』
『でもサンジェニュインくんはダービーに出たって言ってたよな!』
「今日は騒がしいな」
「3頭も集まればそりゃあ」
頭上で賑やかに嘶く3頭を見つめてから、厩務員たちは互いに苦笑した。
その手はしっかりと綱を持ち、足取りは淀みなく厩舎へと向かっていく。
ウオッカの厩務員は、初めての敗北でも思ったより元気そうな愛馬に安心しながら、しかし油断はできないと綱を握り直した。
この厩務員は、ウオッカとデルタブルースたちの併せ馬にサンジェニュインが加わると聞いた時、唯一反対していた。
彼が、カネヒキリを通して見てきたサンジェニュインは、併せ馬をレースの一種だと思っている節があったからだ。
いくら素質があるとはいえデビュー前の2歳馬と、すでにG1を複数勝っている4歳馬とでは、単に素質という言葉では埋められない大きな溝があることを、厩務員はよく知っていた。
ただの併せ馬でさえ、勝つために全力で走り抜くサンジェニュインが相手では、ウオッカが潰れてしまうのでは無いか?
今は元気そうに見えるが、次の調教では走らなくなるのでは無いか?
厩務員の心配事は尽きなかった。
しかし、そんな厩務員の心情を推し量ることなどできない馬たちは、ブモブモと話を続ける。
『でもさあ、なんだって急にダービーについて聞いたんだよ。もう終わってるのに』
『それが、サンジェニュインさんに次のダービー楽しみにしてる、頑張れって』
『言われたのか?』
『次って、ずいぶん先だろ?なんでまた』
『さあ……』
ブルルーン、と3頭が鼻を鳴らす。
そうしてなんでだろう、と各々が思いを巡らせているうちに、あっという間に厩舎についていた。
馬房に入れられたウオッカは、用意された飼い葉桶に頭を突っ込みながらも思いを馳せる。
『サンジェニュインさんはとても強かった。そのサンジェニュインさんが出たダービー……私も出たいな……』
小さな葉っぱを流星に乗せたウオッカが、64年ぶり史上3頭目となる牝馬によるダービー制覇を成し遂げたのは、この1年後のことだった。
「本原先生、現地についたらそのまま出走するんでしたね」
「はい。シャンティイ調教場に入厩せず、そのままサンクルー競馬場で調整を行ってすぐです」
「サンジェニュインの状態は大丈夫なんですか?」
「栗東での調教は問題なく済みました。サンジェニュインも調子はすこぶる良いですよ」
そう言ってテキが俺の首をぽんぽん撫でる。
水野のおっちゃん── 俺を所有するサイレンスレーシングクラブのお偉いさんは、テキの言葉を聞いて満足げに頷いた。
今日はフランスに向けて出発する日。
日本での出国検疫を終えたのだが、実はレース開催日までギリギリである。
なんとレース開催日の3日前!ドッ!
いやドッじゃねえわ。
ギリギリもギリッギリだよ。
なんでこんなことになっているのかと言うと、俺がこれから出走するレースのスケジュールに間に合わせるためだ。
今回出るのは「サンクルー大賞典」というフランスのレース。
このレース名を聞いてすごいギャグを思いついたのだが、滑ったら縁起が悪そうなので言わない!
俺は自制できるウッマだから!
……で、このレースの開催日は現地時間の6月25日。
その次に出走するのは「キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス」だ。
長くて覚えるまでに時間がかかったが、こっちはイギリスのレースで開催日は7月29日。
ハーツクライさんも出るぞ!
3戦目も同じくイギリスのレースである「インターナショナルステークス」で、開催日が8月22日。
う~ん、毎月レース!
だけど日本の馬場よりは俺にとっては走りやすいから、たぶん日本で3ヶ月連続出走だ!って言われるよりは楽、なはず。
目黒さん曰く、海外遠征が65日以上になった場合、これまで3週間だった着地検査が3ヶ月に伸びるらしいので、超えないギリギリのところで帰国してセーフにしたいようだ。
水野のおっちゃんとテキのやりとりを聞いていると、どうもクラブ側は今年の最後は有馬記念を走らせたいみたいだし。
でも前にテキが「凱旋門賞」にも出るから秋もフランスだ、って言ってた気がするんだけど。
日本に戻って3週間の着地検査が終わったら、またすぐにフランスに飛ぶんだろうか。
それはそれでハードなスケジュールだな!
まあ着地検査って1頭ぼっちになるだけで調教自体ができないわけじゃないから、そこできっちり調教しつつフランスへってところか?
そう今後のローテーションについて考えていると、どうやら輸送コンテナの準備ができたようだ。
目黒さんが俺の手綱を握り、最後に馬体をチェックする。
前脚良し、後ろ脚良し、ケツ良し、背中良し、ということで乗るか!
鼻を鳴らしてコンテナの入り口を見ると、前のフランス遠征の時にもお世話になったピエールさんの姿が見えた。
どうやら今回もコンテナのところから一緒のようだ。
テキも輸送の準備が済んでいるのが見えたのか、話を切り上げようと頷いたように見えた。
「ではそろそろ」
「ああ、その前にこれを」
ピエールさんが俺が見ているのに気づいて面白いポーズを取り始めたのでそっちに気を取られていたが、目黒さんが俺の手綱を緩く引いたので視線を逸らす。
綱を引かれた方向に顔を向けると、水野のおっちゃんが黒っぽい布のようなものを手にしていた。
うん?なんかそのソレ見たことあるな。
「これは……ヴァーミリアン号のメンコでは?確か今は……」
「ええ。この前のレースで心房細動を発症しましてね。今は長期休養でノータンファームに。当初はアメリカ遠征も考えていたのですが、今は復帰時期も未定で……せめてこのメンコだけでも、一足早く海外に連れていってやって欲しい」
心房細動。……ヴァーミリアンが?
確か不整脈の一種だったよな?
前にイサノちゃんが「近くの厩舎の馬がレース中に心房細動で最下位だった」って言っていたのを覚えている。
状況によっては予後不良── つまり、回復が極めて困難な状態となって、そのまま死んでしまうこともあるって聞いた。
水野のおっちゃんの口ぶりから、ヴァーミリアンは休めば大丈夫な状態のようだけど、どうやら復帰までにかなり時間が掛かる見込みらしい。
俺とカネヒキリくんがドバイに発つ前の日、ダイオライト記念で優勝したって聞いたばっかりだったのに。
目黒さんの方を向いて、ヴァーミリアンは本当に大丈夫なんだよな、治るんだよなと目で聞く。
俺の目からすぐに汲み取れたのか、目黒さんはゆっくりと俺の首を撫でながら口を開いた。
「心配するな、サンジェニュイン。元気にやっていると聞いてる」
それなら良いんだけどさ。
カネヒキリくんも屈腱炎で休養中、ラインクラフトちゃんもレース疲れが酷いからって放牧に出されている。
シーザリオちゃんだって怪我が元で引退したわけだし。
みんな大丈夫かな……このまま、俺がフランスで走っている間にみんな、引退しちゃうのかな。
そうしたら俺、本当に1頭ぼっちになっちまうな。
「サンジェニュイン」
名前を呼ばれて顔を上げる。
水野のおっちゃんが、俺の前に布を広げた。
黒地に赤色の太い線が交差して、ローマ字の「X」に見えるヴァーミリアンのメンコ。
前に、俺がつけてる栗色のメンコはダサいから同じやつにしろ、なんて言われたっけ。
あの時はお前の方がダサいわ、と返したけど、黒鹿毛のヴァーミリアンがつけると格好良いのは確かだ。
……これを言うと興奮しそうだから言わないけどな!
目黒さんが代わりに受け取って、俺にそのメンコをつける。
俺がいつもつけている栗色のメンコよりも、心なしか重く感じた。
「似合うなあ」
「白毛に黒はやっぱり映えますね」
テキたちには好評なようだ。
水野のおっちゃんがカメラを取り出すと、何枚か写真を撮られた。
ヴァーミリアンへの見舞い品にするらしい。
見舞いに要る?俺の写真。
普通に人参とかリンゴの方が喜ばれそうなんだが。
目黒さん、厩舎に残ってる俺のサンふじリンゴ、ヴァーミリアンの見舞い品として一緒に送るよう伝えといて!
「テキ、そろそろ時間です」
「うん。……それでは、水野さん」
「はい。日本から応援してますよ。……サンジェニュイン、思うがまま走ってきておくれ」
メンコをつけたまま、目黒さんに綱を引かれてコンテナの方へと進む。
ちらりと後ろを振り返ると、水野さんがひらひらと手を振っていたので、俺も尻尾を何度か振り替えした。
2006年6月22日。
フランス、サンクルー競馬場を目指して、俺は空の旅に出た。
騎手とは、馬の案内人だ。
馬が勝つためのチャンスを模索し、掴み、与える者。
そうあるべきだと、ある1人の騎手── グラン・リュベールは考えていた。
時に実力差は想像の及ばないところで逆転される。
それが起きるのは、弱点の無い馬など存在しないことの証明。
すり切れるほどテープを回し、リュベールはその馬のフォーム、走法、クセ、息の入れ方。
そしてその鞍上に乗る騎手の手癖、姿勢、騎乗中の行動のすべてを、頭に入れた。
完璧な競馬などあり得ない。
ゆえに、あらゆる準備を行う。
どんな実力差があろうとも、勝つチャンスを逃さないように。
今回、リュベールが投じた一手は、愛馬が勝つための助けになるだろう。
「紳士淑女のみなさま、こんにちは。今回の実況もアラン・ベルナント、解説はミシェル・ドーヴァーがお送りするよ」
「よろしく」
「よろしくミシェル。さて、これから始まるサンクルー大賞典、馬場状態は聞いたかい?」
「
「昨年の凱旋門賞馬・
「あのレース、後から映像を確認したら、本当にサンジェニュイン以外の馬が映って無くて笑ってしまったよ。何馬身差も相手につける勝ち方と、近縁にセクレタリアトがいることから、彼をビッグホワイトって呼ぶ人もいるみたいだけど、個人的には
「他に類を見ない美しい毛色に美しい走り方。まるで王子様が乗る白馬みたいだ、って若い子たちの間でブームになってるんだって?日本でしか発売されていないぬいぐるみ、フランスでも売って欲しいよ」
「いや、止めた方がいいね。もし発売されたらあちこちでストライキが始まるに違いない。僕なら解説役をボイコットして買いに行くね」
「ストライキは国民の権利さ!……さあ僕らが楽しいおしゃべりをしている間に、ゲート入りが進んでいくよ。8頭でのレースだけど、うち3頭がペースメーカー役かな。今までペースメーカーを連れていなかったプライドが、ここに来て初めて同厩の牝馬を連れてるよ」
「7番のヴァネッサだね。プライドの鞍上であるリュベールが、今回ばかりはつけた方が良いって言ったらしいけど、効果あるかな?」
「ペースメーカーをつけていないのは3番のラヴェロックと、サンジェニュイン、8番だ。サンジェニュインに関しては、まあこの馬自体が大逃げのスタイルだから、パートナーはむしろいらないかもね」
「3頭もペースメーカーがいる状態でサンジェニュインが上手く逃げ切れるか、注目だね」
「さ、いよいよスタンバイ完了だ。サンクルー大賞典── スタート!」
開け放たれたゲートから、8頭の馬が駆け出した。
2番ポリシーメイカーのペースメーカー役ペトログラッド1番と、4番ハリケーンランのペースメーカー役である5番のニアーオナーの2頭が出だしから速度を上げるが、それをねじ伏せるようにサンジェニュインが勢いよく進出した。
誰もがガネー賞のような圧倒的な差ができると思った、次の瞬間。
サンジェニュインの両側から、2頭の馬がぐんっと頭を伸ばした。
「これはこれは、序盤から予想外!」
「中段にペースメーカー共々ひとまとめになっているハリケーンラン、ポリシーメイカー、ラヴェロックを置き去りに、プライドとヴァネッサの
虎視眈々と栄冠を狙う、その牝馬の鞍上で、グラン・リュベールは笑った。
次回、サンクルー大賞典、本戦
※注意※
着地検査が3ヶ月以上となる条件の1つを、この物語では以下のように変更しています。
元:海外遠征60日以上
変:海外遠征65日以上
完全にローテーションのミスですが許してください。
登場馬(架空馬のみ)
ヴァネッサ 牝5
プライド(史実馬:牝6)のペースメーカー役
今回の参考資料
・サンクルー競馬場2006年 6月25日第5競走
・世界の名馬列伝集:プライド
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35.親の心、仔知らず ─ 2006年6月25日サンクルー大賞典
前話の感想で「色仕掛け」って言われているのに笑いました。
これまで競走馬回は8割サンジェニュイン視点だったので、今回はサンジェニュインが知らない話。
ほぼテキの視点です。
「本原先生、今回のレースでは序盤から牝馬に挟まれていましたが、この奇策はどう思われましたか!」
サンクルー大賞典が終わり、ごった返す通路を急いでいると、日の丸の腕章をつけた記者にそう呼び止められた。
ちらり、時計を見ると、会見までそう時間はない。
目黒くんが止めに入ろうとしたのを制止して、俺は口を開いた。
「怖かったですね。何せサンジェニュインは── 牝馬と走るのが苦手だったので」
例えば、三冠馬・シンザンはどんなに急かしても調教ではまったく走らなかった、とか。
例えば、マルゼンスキーは返し馬で騎手が立ち止まった場所を記憶して、レース中に自発的にその場所に止まった、とか。
例えば、サイレンススズカは馬房の中で左旋回する癖がいつまでも抜けなかった、とか。
歴史にも、人の記憶にも残る名馬にはいくつか変わったエピソードがあるもので、サンジェニュインのアレやコレや、いつか面白いエピソードとして世に残るかもしれないと、俺── 本原佳己は考えていた。
そう思うほど、風変わりな
それは2005年の初夏。
東京優駿まであと数日のことだった。
「なんて?」
湯呑を机に置いて聞き返すと、眼前の目黒くんが言いづらそうに口を開いた。
「おそらくですが、サンジェニュインは牝馬が苦手です」
耳を疑うような言葉だ。
サンジェニュインが苦手なのは牡馬であって、牝馬はその限りではないはず。
今日の併せ馬の相手はラインクラフト号、牝馬だが、嫌がる素振りもなく走っていた。
何かの間違いじゃないのか、トラブルでもあったのか、と言葉を返すと、目黒くんは首を横に振った。
「併せ馬は終始穏やかに終わりました」
「なら問題ないじゃないか」
「いえ……問題は、実際に走っている時です」
目黒くん曰く、サンジェニュインは牝馬相手に競り合うことができない、と。
詳しく聞いてみると、終盤の競り合い、もっと言うと、馬体がぶつかりそうになると減速してしまうのだと言う。
その言葉を聞いて、若い馬にありがちな「怯え」によるものではないことは、俺にもすぐにわかった。
ラインクラフト号は馬体重が460キロ前後であるのに対して、サンジェニュインは510キロ近くもあるし、体格のそう変わらないヴァーミリアン号にぶつけられた時も、なにくそとすぐに跳ね返すような性格をしているのだ。
自分よりもさらに小柄なラインクラフト号が相手ならなおさら、怯むわけがない。
「……仲が良すぎて闘志が湧かない、とか」
「併せ馬ともなれば、カネヒキリ号が相手でも跳ね飛ばすような馬ですよ、サンジェニュインは」
「だよなあ……」
サンジェニュインとカネヒキリ号の仲の良さは、栗東トレーニングセンター内では知らぬ者はいないほど有名だ。
お互いの厩舎の位置を覚え、行き来するような馬などあの2頭だけだろう。
むしろあの2頭だけであってくれ、もう1頭いてたまるか……!
そのカネヒキリ号との併せ馬はもうしなくなったが、最後に併走した時は容赦なく親友を撥ねていたのを覚えている。
「苦手、には見えないんだがな」
「牝馬そのものが、というよりは、牝馬と鍔迫り合いすることが苦手、に近いでしょうか。走ることには走りますし、追えば競り合おうともするのですが……思い返せば、シーザリオ号との初併せの時から予兆はありました」
サンジェニュインとシーザリオ号が初めて併せ馬をしたのは弥生賞の前。
1年近く共に調教してきたカネヒキリ号がダート路線に進むため、調教ローテーションが組み辛くなった影響で同厩舎のシーザリオ号が相手となった。
顔合わせは滞りなく済み、さあ芝コースで走らせようと手綱を扱くも、何故か走らない。
シーザリオ号は走る素振りを見せていたものの、サンジェニュインは脚踏みするようにゆっくりとした歩様でコースを回り、鞍上から4度鞭が入ってようやく走り出した。
この時はかろうじてサンジェニュインが先着しているが、内と外で2頭はかなり離れている状態。
これがカネヒキリ号やヴァーミリアン号が相手ならば、鞭が一発入ったところで走り出し、接触ギリギリの距離で競り合い始める。
「一応、シーザリオ号だけなのかと思ってずっと様子を見たのですが」
「今回のラインクラフト号でも同じことになったか」
「はい。こちらはラインクラフト号がすんなりとコース入りしたので、それに続くように走り出してくれたのですが……ラインクラフト号がふらついた事に反応したのか、一気に鈍くなったと鞍上から報告が入っています」
「うぅむ……」
ラインクラフト号は好位追走を得意とする先行馬。
今年の桜花賞の勝ち馬でもあり、次走はオークスではなくNHKマイルという変則二冠を狙っている。
噂によれば適性距離の問題のようだが、陣営は1600メートル── マイル路線なら敵なしだと意気込んでいるようだ。
同世代の牝馬の中でも飛びぬけたスピードの持ち主とも聞いている。
ただ贔屓目なしに言って、スタートの瞬発力と2度加速するサンジェニュインの脚を持ってすれば、苦戦はしても最終的に競り負けることはないと思っていた。
「ウッドチップ6ハロン83秒、か」
ヴァーミリアン号との併せ馬では80を切って79秒を出しているコースだ。
83秒も決して悪い数字ではないが、もっと速いタイムを出しているだけに違和感は残る。
たまたま調子が出なかったというだけならかまわない。
そういう日もある。
だが、シーザリオ号との併せ馬のタイムも見ると、確かにヴァーミリアン号ら牡馬との併せ馬よりはタイムが落ちていた。
「そもそも牝馬との併せ馬の回数自体が少なかった……こういう日もあるか、と見逃すべきではなかったな」
「今年に入ってからはヴァーミリアン号との併せ馬が一番多いですね。シーザリオ号はまだ3回、ラインクラフト号は今日が初ですから」
サンジェニュインが出走を予定している東京優駿、神戸新聞杯、菊花賞に登録している馬は、今のところ牡馬のみ。
もちろん牡馬限定戦ではないため、牝馬が出走してくることもあるだろう。
ジャパンカップや有馬記念といった古馬戦に出るようになれば、当然牝馬の姿もある。
これがシーザリオ号、ラインクラフト号との併せ馬でしか発生しないのなら良いが、もし本番で牝馬と競り合って減速したらと思うと、頭を抱えずにはいられない。
サンジェニュインが抱える問題は、同性馬との関係性だけだと思っていたのに。
「矯正しないとなあ」
どうすれば直せるか。
口で言って聞かせるか、と無謀に見えて一番効果がありそうなことを口にすると、目黒くんは首を横に振った。
どうやらすでに試した後のようだ。
「まず本人に自覚がありません。減速、まあ悪く言うと“手抜き”ですね、そのつもりが一切ないので、口で言っても余計に拗れると思います」
「うぅむ……そもそも、減速してしまう原因は、何か心当たりある?」
「……そう、ですね」
目黒くんは少し悩んだあと、根拠のない考えですが、と言葉を続けた。
「ハルノメガミヨの影響が強いと思います」
ハルノメガミヨは、2005年末までうちの厩舎にいた牝馬だ。
サンジェニュインとは隣同士の馬房で、穏やかな性格だったからそれなりに上手くやれていたと思う。
この牝馬は元々繁殖に上がることが決まっていたため、退厩する時は五体満足健康で返してくれ、とオーナーサイドから何度も頼まれていた。
1度右前脚を負傷していたこともあって、厩舎内では念入りにケアされていた馬。
「競走馬としてはかなり過保護に扱った記憶があります。1度サンジェニュインとすれ違いざまに接触してしまった時、馬体検査まで行いましたから」
当時のハルノメガミヨの担当厩務員はイサノだった。
彼女がうちの厩務員になって初めて担当した馬でもある。
思い入れも深かっただろうから、最後の3か月間のケアは目黒くんが言う通りかなり過保護だった。
「……サンジェニュインは、賢い馬です。我々の他馬に対する扱いや、雰囲気なども素直に吸収してしまう。おそらく彼の中で、ハルノメガミヨに対して行われていたケアがよほど印象的に映ったのでしょう。牝馬に怪我させてはいけない、という無意識のブレーキがかかっているのではないか、と。荒唐無稽な、推測と言うには稚拙な考えですが、今のところコレが一番しっくりきます」
これまでの馬の常識に照らし合わせて考えれば、目黒くんが言った事は確かに荒唐無稽で、どこにも根拠のない不自然なものだ。
だが、サンジェニュインという馬が持つ特異性や、異様なほどの物分かりの良さを「馬の常識」などに当てはめる方が、もしかしたら不自然なのかもしれない。
「……アイツの中身が元は人でした、と言われたら信じてしまいそうだな」
もちろん、そのようなことはあり得ないだろう。
ドラマならいざ知らず、人間が馬になってあんなに素直に順応できるものか。
アイツが特別なだけなのだ。
まるで神が作り給うたと見紛うほど。
「牝馬に怪我をさせることを恐れて減速しているのなら、もう慣れしかないな」
ふぅ、と息を吐いて立ち上がった。
サンジェニュインに一切自覚がないなら、目黒くんが言う通り言って聞かせるのは悪手だ。
むしろ何も知らせず、ただ牝馬との接触を増やして存在に慣れてもらうしかない。
競り合っても相手は簡単には怪我をしないことを、牝馬も競争相手なのだと、刷り込みを上書きする。
「年内の併せ馬の相手は全頭牝馬でいく。ヴァーミリアン号もダート路線に切り替える噂があるからな、これを機に掛け合ってみるか。まずは馬体重の近い、それなりに大きい牝馬で」
「近いとなると、同世代だとエイシンテンダー号、上の世代だとヤマニンシュクル号、ベストアルバム号、マイティーカラー号、あとはオースミハルカ号でしょうか」
目黒くんがメモに牝馬たちの名前を書き連ねる。
この内、聞き覚えのある名前はオースミハルカ号とヤマニンシュクル号。
この2頭は重賞勝ちの経験がある。
特にオースミハルカ号は、3歳で挑んだ2003年のクイーンステークス、前年のエリザベス女王杯勝ち馬・ファインモーションを相手にクビ差で競り勝った馬だ。
この牝馬との併せ馬は、サンジェニュインにとって大きな実りになるはず。
「相手はフケの影響を気にするだろうけど」
「サンジェニュインなら大丈夫です。どうもフケにも気づいていないみたいなので」
「それは気づいてほしいな。……不能とかじゃないよね?」
「そうでないと願いたいです」
また不安がひとつ増えてしまったが、フケの影響を受けないならそれはそれで良い。
……一応サイレンスレーシングにも連絡しておくか。
「まったく、どこまでも手のかかる馬だなあ」
「その割には嬉しそうですね、テキ」
そりゃあ嬉しいさ。
嬉しいよ、アイツに手のかかる部分がまだまだあることが。
初めて会った時から素直で物分かりの良い仔だったから、本当なら数か月はかかる調教が3か月の間にほとんど済んでしまった。
ゲート検査もすんなりと熟して、騎乗馴致も嫌がる素振りひとつしない。
トントンと済んでしまうから、自分が手掛けた馬というよりは、サンジェニュインが勝手に出来上がるのを傍で見ていただけ、という感覚に近かった。
馬の最も近いところにいる目黒くんたち厩務員はまた違った印象を持っているだろうけど、俺にはサンジェニュインは「完成品」のように見えていたよ。
それが、併せ馬をするかと調教場に連れ出せば嫌がって、牡馬に追い掛け回されると暴れて逃げて。
厩舎内では「隠れ気性難」だなんだと言われたが、そこでようやく、俺もサンジェニュインにしてやれることがまだあったかと思えた。
「尽くせる人事はすべてやろう」
牡馬も苦手、牝馬も苦手。
そんなサンジェニュインが頼れるのは、もう俺たち人間しかいなのだから。
ゴールしたあと、サンジェニュインが笑ってこの腕の中に帰ってこれるよう、なんでもやろう。
「そのために被った苦労なんて、アイツの笑顔でチャラだ!」
俺がそういうと、目黒くんは声を上げて笑った。
「この厩舎で厩務員やっててよかったな、と思いますよ、本当に」
「お、嬉しいこと言ってくれるな。でもそれは、サンジェが牝馬とも競り合えるようになってからもう1度言ってくれ」
目黒くんが書いたメモを受け取って厩舎を出る。
もう決して若くはないが、少し駆け足で栗東内を動き回った。
オースミハルカ号との併せ馬を取り付けることができたのは、その3日後。
そしてサンジェニュインが牝馬を弾き飛ばせるようになったのは、それからちょうど1年後の初夏だった。
「ギリギリだったな、目黒くん」
最初のコーナーを回る白い馬体を見つめ、俺は口を開いた。
右横の目黒くんは小さく頷いて、間に合ってよかったです、と言葉を続けた。
「走り始めからウオッカ号がぶつかってきた時はどうなるかと思いましたが、跳ね返した後も減速するどころか加速していました。2度目の併せ馬でもかなり近い距離で競り合っていたので、もう大丈夫だと思います」
目の前の馬は── サンジェニュインは、牝馬2頭に挟まれながらも依然先頭をキープしていた。
プレッシャーを掛けるように、外側を走るヴァネッサ号が徐々に距離を詰めているようにみえるが、サンジェニュインは減速せずに走り続けている。
鞍上の芝木くんも焦った様子はなく、2頭の間から抜け出すタイミングを計っているように見えた。
むしろ焦っているのは、内ラチ沿いを走るプライドの鞍上、グラン・リュベール騎手だろう。
こんなはずではなかった、と思っているかもしれない。
「リュベール騎手の着眼点は外れていない、どころか良く気づいたよ。普通、牡馬に追い掛け回されているってところに意識がいってしまうから、牝馬としか併せない理由まで考えないだろう?」
「牡馬が苦手だから牝馬とだけ併せている、が世間の認識ですからね。それを「牝馬との競り合いが苦手」な可能性にまでたどり着くのは、並の執念じゃないですよ」
敵ながらアッパレだとしか言いようがない。
とても勤勉で情熱的な騎手でもあるのだろうと思う。
正直言って、重馬場でのサンジェニュインはほとんど無敵と言っても良い。
今回のように「牝馬に囲まれる」といったアクシデントがなければ、ガネー賞と同じく大逃げ
自分が乗る馬を勝たせるためのわずかなチャンスを求めて、それを実行に移しているのだから。
だが彼は少し遅かった。
「ガネー賞でやられていたら危なかったですね」
目黒くんの言葉にそっと頷いた。
サンジェニュインの「牝馬相手に減速する悪癖」は、古馬戦が近づくにつれて大きな不安の種だった。
だが併せ馬等、地道に牝馬に慣れるよう交流させていくうちに、その悪癖も徐々に改善の兆しを見せる。
その決定打になったのが、ガネー賞後に栗東に帰厩してすぐ行われた、ウオッカ号との併せ馬だ。
果敢にも何度もサンジェニュインに突撃する彼女と接することで、サンジェニュインの中にあった牝馬への認識が変わったのだ。
とはいえ、サンジェニュイン自体は何も変わったとは思っていないのだろうが。
「親の心、子知らず、か」
それでかまわない。
思うがまま、その力のあるまま走ってくれたらそれで良い。
サンクルー競馬場の、重い芝の上を白い馬体が往く。
その脚が2度目の加速を見せるのは、第3コーナーから。
「まもなく第3コーナー、先頭を争う3頭はここまでものすごいスピード。後続集団と6馬身差が開いているよ」
「ただヴァネッサがそろそろ限界かな?3番手のプライドにはまだ余力がありそうだ。後続を引っ張っているのはニアーオナー、そのすぐ後ろにピタリと張り付いているのがハリケーンラン。外側に半馬身向いているのがペトログラッドだけどスタミナ切れかやや失速、1馬身離れてポリシーメイカーが追走、その内を回ってラヴェロックが現在最後方」
「重馬場としては結構速いペースだね。2番手まで上がってきたプライドの体力が持つか心配だ。サンジェニュインは両側を挟まれたことで思うように前にいけないのかな?頭ひとつ分抜けてはいるけど、前走よりはスピードを感じないな」
「騎手が押さえているようにも見えるよ。ただ脚色に一切の衰えを感じないし、まだ何か隠してそうな雰囲気だ。……おっと、後続集団も忘れないでとハリケーンラン、凱旋門賞馬ハリケーンランがここでニアーオナーを抜かして集団から抜け出した!先頭集団との差をジリジリ詰めていくけど── 抜けた!ここでサンジェニュインが3頭のもみ合いから抜け出してスパートをかける!第3コーナーから最後、ゆるやかなカーブを曲がってさあゴールへ一直線だ!」
パシン、とケツに鞭が入る。
「我慢させて悪かったな、サンジェ」
まったくだぜ芝木くん!
牝馬2頭に挟まれたときは、そらあ最初はビックリしたよ?
めっちゃピタっと俺に張り付いてくるし。
それ以上に俺のスタートダッシュについてくるとか思わないじゃん。
特に俺の外側を走っていた牝馬!
すげー脚速くね?
やっぱりレースに絶対とか油断とかそういうのは無いっていうのがよく分かりますねえ!?
先頭取られるのだけは嫌だと思って頭だけは突き出したけどさあ、芝木くんったら俺がぶち抜こうとすると止めるから参ったわ。
ぶち抜くときに接触しちゃったら妨害扱いで失格になっちゃうから?
でも故意とかよっぽど危険じゃ無い限りはセーフってテキも言ってたやろがい!
まあ安全なコース取りで馬を走らせるのも騎手の仕事だっていうからな。
だからって大外回って行こうぜ、と言わんばかりに一旦下げようとするのはやめろや!
後ろにはオッスどもがいるんだぞ!
ゲート入りの時からずっと鼻息荒いやつが1頭いるところに下がれるか!俺は馬房に戻らせて貰う!って死亡フラグ立てるとこだったぜ。
「本当に悪かったよ。……さ、お待ちかねの先頭だ。3秒数えたら── ぶち抜くぞ」
あいあい、待ってましたよ、っと!
でもゴールした後はどつくからなお前!
俺が鼻を鳴らすと、芝木くんは一瞬だけ苦笑いを浮かべて、すうっと雰囲気を変えた。
「さん」
一瞬だけ空気を吸い込み、前を向く。
「にぃ」
後ろから俺を追う音が聞こえる。
「いち」
でも関係ないよな?
「ぜろ」
先頭は──……この俺!
「笑っちゃうくらいのスピードだ、こんなの隠し持ったまま2000メートル走ってたの?まるでラスト400メートルまで遊んでいたみたいじゃないか」
「ハリケーンランがプライドに並ぶもサンジェニュインとは4馬身差!ここから巻き返しを狙えるのかハリケーンランもぐんぐん上がっていくよ。プライドは序盤の激走がここで影響したかやや苦しそうだ。2番手争いが激化する2頭を尻目にサンジェニュイン、まだ伸びる伸びる!残り200メートル!」
まだまだ後ろから気配がする。
突き放しても追いすがってくる。
誰も彼もが必死だから。
眼前にあるゴール板を1番に踏み抜くのは、この8頭の内たった1頭だけ。
「サンジェニュイン、サンジェニュインがまだ行く!最後まで加速が止まらないそのスピード、すさまじい上がり方だ!なんなんだ、君は!」
ワッと上がった歓声に、芝木くんが右腕を突き出す。
よっしゃ、とか言ってるところ悪いが、すぐに検量室に行きます。
どつくからなお前。
……ん?
なんか後ろからものすごい気配が──
「最後の最後に圧倒的な力を見せてくれました、サンジェニュイン!」
「2000メートル走っても残り400メートルで2度も加速できるなんて……もしかして、規格外ってこの馬のためにあったりする?」
「ナポレオンの辞書には書いてなかったけど、たぶんそう」
「全世界の辞書メーカーへ、規格外の意味に「サンジェニュイン」を付け足してください」
「切実なお願い──……あれっ、ああ……どうやら規格外だけじゃなくて、常識外れの項目にも付け足す必要があるみたいだね……」
なんだあ、コイツ!?
「うおっ、お!ちょっ、落ち着けサンジェ……っ」
バッ、落ち着けるか芝木……!
に、逃げるぞ!
「……僕が渡されたスケジュールには、サンクルー大賞典後のレースは無いって聞いてたんだけどね」
「会場の皆さん、そしてテレビの前のみなさん。今、お送りしているレースは想定外のレースです」
聞こえる、聞こえるぞ……うーうまだっち!?
アッ、テメいま俺のケツタッチしただろ!
ケツでケツタッチしただろ!?
ああああ来るな来るな来るなァ──ッ!!!!
「レース前に元気になっている馬は見たことあるけど、レース後にご立派なモノを見せられるとはねぇ……びっくりだよ」
「たぶんだけど、いちばんビックリしてるのはサンジェニュインだろうね」
このあとメチャクチャ爆走した俺だが、この時に俺のケツを追いかけ回していた馬── ハリケーンランとこの後2度も対戦することになろうとは、まったく想像していなかったのである。
ヒィン──……!!!!
Natdekeiba.com
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【海外速報】サンジェニュイン、仏GⅠ・サンクルー大賞典を制覇 |
フランス現地時間6月25日(16時25分発走)に開催されたサンクルー大賞典(GⅠ、芝2400m)を、サンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)が第3コーナーから圧倒的な加速力を武器に逃げると、そのまま2着馬に5馬身差をつけて勝利した。 序盤こそ地元の有力馬・プライドと、そのペースメーカー役・ヴァネッサの牝馬2頭に挟まれるアクシデントが発生したが、冷静に受け流してレースを進め、第3コーナーから勝負に打って出た。サンジェニュインを管理する本原佳己調教師は「牝馬と競り合うのが苦手だったので心配したが、杞憂に終わってホッとした。リュベール騎手の慧眼には恐れ入る。今後も油断はできない相手だが、最後は強い勝ち方を見せてくれたと思う」とコメントしている。
サンジェニュインは3月からドバイを始め海外レースへ出走しており、今レースが3戦目だった。 ガネー賞に引き続き、強い競馬を見せてくれたサンジェニュインの次走は、舞台をイギリスに移して行われる。7月29日のキングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス(英GⅠ、芝12f=約2400m)だ。このレースにはハーツクライ(牡5、栗東・大橋弘継厩舎)も出走する。 ドバイシーマクラシック以来の対戦であり、サンジェニュイン陣営はリベンジを狙っている。
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次回、キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス!ハーツクライさんもいるよ!
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36.俺の道
キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス(長い)のレース半分
1万超えたので分けました
7月も半ば過ぎである。
今月末にはイギリスで開催されるレースへの出走が決まっているので、俺もサンクルー大賞典後イギリスに向けて出発── は、しなかった。
あれからもシャンティイの国際厩舎で過ごし、調教場で走っている。
ここからイギリスって近いんか?遠くね?と最初は思ったのだが、目黒さん曰く開催3日前に飛行機で現地入りする予定なんだと。
ピエールさんが「VIPだ!」って言ってたけど、イサノちゃんとのやりとりを聞いている限りでは、船で移動した方が飛行機より安く済むらしい。
ただ時間はそこそこ掛かるって話で、テキと、俺を所有しているクラブのお偉いさんたちが話し合った結果、輸送が短時間で、かつあんまりストレスにならない方法を選んでくれたっぽい。
サンキュー、クラブ!
ただ、クラブ馬っていうのはお金がカツカツだからあんまり海外飛べない、とかって前に来た記者のおっさんは言ってたが、そこら辺は大丈夫なんだろうか。
俺以外にも馬がいるわけだし、他の馬の分を俺に回してるとかないよね?
そう俺が不安になっていると、目黒さんが苦笑いを浮かべながら「お前はリターンがデカいから大丈夫だ」って言った。
リターンが何のことかはイマイチ解らなかったが、決して安くない金額をドバドバ使われているのは理解した。
テキがそっとお金のハンドサインを……やめろテキ!生々しい!
サンジェはコレだからなあ、って言いながら親指と人差し指で丸を作るんじゃないよ。
でも、うぅんこりゃあ、次もなんとしてでも勝たないとな!
マジで俺に掛かっている金がヤバそうだから……そうなると、なおさら滞在する厩舎はイギリスにした方が安いんじゃね?とも思ったが、このシャンティイには調教相手のパンジャンマックスもいるし、ピエールさんから紹介されたマンデュロとの相性も良い。
ちなみにこのマンデュロ、ガネー賞でも一緒に走った牡馬なのだが、オッスでも気性が穏やかなヤツで害はない。
というか、
「まさかメンコ変えるだけでこうも違うとはな」
それな。
俺の鞍上で呟いた芝木くんに、内心で同意する。
俺がマンデュロと初併せしたのは、サンクルー大賞典が終わった1週間後。
併せ馬っていうよりはマジでただの顔合わせだったのだが、この時の俺、メンコをつけていたにも拘わらずマンデュロに追いかけ回された。
素顔の時ならともかく、メンコをつけてたのにあれほど追いかけ回されたことはない。
せいぜいディープインパクトくらいである。
アイツは俺がメンコしてようが構わず真横にへばりつくからな……もしかしてケツ派?
絶望した、ライバルやめます。
あとはサンクルー大賞典で俺にケツタッチしたハリケーンランとかいう馬な!
コイツはシャンティイで調教されているので、ガネー賞の為に滞在していたときも何度かすれ違ったことがある。
その時は大人しい印象だったのに……とんでもねえオッスだったわ。
もう2度と会いたくねえと思ってるけど、どうも次のレースも一緒みたいで泣いた。
なんかもう、馬着のままレースに出てえな。
……あ、ダメ?ハイ。
メンコの話に戻るが、マンデュロと会った時や、ハリケーンランにケツタッチされた時につけていたメンコは、休養中のヴァーミリアンから借りたメンコである。
クラブの勝負服をイメージした、黒い生地に赤い線がローマ字の「X」のように交差しているヤツな。
マンデュロとの初併せが終わってすぐ、このメンコは水野のおっちゃんに渡された。
ちなみに水野のおっちゃんがコッチに来ていたのは、俺の様子を見るため。
遠路はるばる日本から飛んできてくれたのだ。
むちゃくちゃ元気なアッピル!してやったわ。
そのおっちゃんにメンコが渡った── トロフィー授与式の俺の写真と共に。
最後の要らなくね?と思ったが、勝った記念だからってことでスゴイ枚数持ってかれた。
っていうかデジカメのメモリーカードごと持ってかれた、って目黒さんが落ち込んでた。
現像終わったら返せよな!
その写真とメンコはもうヴァーミリアンの元に届いているらしい。
今日の朝、国際電話で目黒さんが確認してくれたようだ。
オッスに追いかけ回された曰く付きのメンコにしてしまったが、大丈夫、ヴァーミリアンがつける分にはなんのうまぴょい効果もないはずだ!
それに海外GⅠを制した
ヴァーミリアンにメンコを返したことで、俺の美貌を覆い隠すメンコはいつもの栗色のメンコに戻った。
つけていなかった期間は2週間も無かったのに、なんだか懐かしい気持ちすら感じる。
やっぱこれだな~!と思って、その翌日からルンルンとシャンティイ調教場で引き運動していたら、気が緩みすぎていたのか、なんとうっかりオッスに遭遇してしまったのだ。
それもハリケーンランとマンデュロのセット。
この2頭、同じ厩舎に所属する僚馬だったようだ。
ヒエッ!?うまぴょい!?
とすぐに逃げの体勢に入ったのだが、2頭とも俺に近づいてくるものの、前に会った時のような興奮状態にはならなかった。
強いて言うなら、ハリケーンランから執拗に「どこ住み?」とか「何歳?」とか、この後に「てかLINEやってる?」とでも続きそうなことを言われた程度。
ナンパか?
念のため確認を、と恐る恐るハリケーンランの下も覗いてみたが、ジュニアくんは起きていなかったのでセーフ。
そのまま俺がいる時は寝ててほしい。
たまたまか?理性があるときに遭遇したのか?次はうまぴょいされちゃう?と警戒していたのだが、その次のマンデュロとの併せ馬の時も、最初のアレはなんだったんだよ!と言いたくなるくらい大人しかった。
俺は特に何もしていない。
何かあったかと言えばメンコを変えただけなので、もしかしたらメンコの影響……?
違うのは色とか柄だけなんだが……?
ハッ……やっぱり……栗色が……最高だな!
カネヒキリくんはすべてを解決する!今回カネヒキリくん関係ないが!
「……サンジェ、今日の併せ馬が終わったら、次にお前と会うのは現地だな」
レース開催まであと少し。
芝木くんは一足早く現地入りするらしく、この併せ馬が終わったらシャンティイを離れる。
俺はしばらく単独で調整を進める予定だ。
心配するなよ芝木くん、俺は輸送もそんなにストレスじゃないからな!
次会うときも元気な俺がそこにいるよ。
そう不安そうな顔をするな。
軽く揺すってやると、芝木くんから笑い声が上がった。
「お前はほんと敏感だな」
言い方!
「芝木くん、準備は大丈夫か」
「はい、いつでもいけますよ目黒さん」
芝木くんの言葉に目黒さんが頷く。
前方からマンデュロが歩いてくるのが見えて、俺も短く鼻を鳴らした。
最後の併せ馬である。
ここを先着して、鞍上を安心させないとな!
よっしゃ、行くぞ、芝木くん!
2006年7月29日 イギリス キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス GⅠ 芝12ハロン = 約2400メートル
日本調教馬が2頭出走するこのレースは、日本でも地上波で放送されることとなった。
ドバイシーマクラシックを制して以降、これが初レースとなるハーツクライは、イギリスのニューマーケットで活躍するルゥカ・ファニーニ調教師の厩舎で始動した。
当初はサンジェニュインもいるシャンティイに入る計画もあったが、ハーツクライ自体が輸送にさほど強くないこともあり、現地での調整が決定。
ドバイとは状況が異なり、帯同馬のいないハーツクライの調子はなかなか上がらなかったが、レース開催3日前になってサンジェニュインが現地入りすると、みるみるうちに調子を取り戻した。
パドックを歩く姿は堂々としたもので、それを通路から見守る橋本弘継調教師は安心したように頷いた。
「テキ、ハーツクライは勝てるんやろか」
「……正直、トモはまだ寂しい状態だ。完璧な出来とは言えない。間違いなく厳しいレースになるだろうな」
それでも、残り3日というところでハーツクライは頑張ろうとしていた、と橋本は内心思いながらも、悔しさを隠せずにいた。
── ああやはり、輸送の難しさを加味しても、サンジェニュインのいるシャンティイに入れるべきだったのではないか。
「後に悔いるから後悔、とはよく言ったものだ。だが本当に、タラレバ言っても仕方ないところまで来た。あとは、ハーツクライとリュベール騎手を信じるしかない」
隣に座る厩務員は、その言葉に静かに頷いた。
そうして2人がしばらくパドックを見ていると、ワッとひときわ大きな歓声が上がった。
その声を纏うように、白い影がターフに揺れる。
おそらく今、もっとも世界から注目されている4歳馬が、軽やかな脚取りでパドックに現れた。
「サンジェニュイン号は調子が良さそうやなあ」
「ああ。ガネー賞は26馬身差、サンクルー大賞典は第3コーナーから加速して5馬身差。それも、ハリケーンランを押さえての1着だ。……ドバイ後、重い馬場が本来の戦場だ、と言われた時は苦笑したものだが、全部本当だったわけだ」
フランスGⅠレースを2戦2勝。
その勝ち方のすべてが「強い」と賞賛するほか無い、圧倒的なものだった。
特にサンクルー大賞典。
前年の凱旋門賞馬・ハリケーンランに対して、終始先頭で脚を使っていたにも拘わらず伸び続け、5馬身差を叩きつけたことは、日本でも大きなニュースとなった。
未だ制することが叶っていない凱旋門賞という固い扉を、サンジェニュインならば突破できるのではないか、という希望。
「……凱旋門賞、か」
「確か、ディープインパクトも出走を予定してると」
「ああ。この間の宝塚記念も2着に6馬身差で圧勝。この勢いのまま行きたいんだろう。今のところ、国内で最も強いのはディープインパクトだからな」
ただしそれは、
「ディープインパクトの最たる懸念は、海外レースの経験がないこと。日本とコッチでは馬場が違い過ぎる。日本でどれほど強くても、欧州の馬場に適応できないなら意味は無い」
「それは、ステップレースを使うんじゃ……」
「だと良いが」
ディープインパクト陣営は、その次走を凱旋門賞としか発表していない。
故に橋本は、このままステップレースも使わず、ぶっつけ本番で行くつもりでは無いかと勘ぐっていた。
その場合、ディープインパクトがどこまで食らいついていけるかは、橋本の想像の外にある。
ただ、凱旋門賞が生やさしいレースでないことだけは確かだった。
「テキ、そろそろ……」
「ああ、始まるか」
騎手たちが続々と馬に跨がっていく。
闘志を燃やす相棒を乗せて、1頭、また1頭とゲートへと向かっていった。
「……頑張れよ、ハーツクライ」
小さな嘶きが、橋本の耳に届いた気がした。
「いよいよゲート入りの時を迎えました。キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス。以降はキングジョージと省略してお送りします。今回の解説役には岡林さんにお越し頂いています」
「どうもみなさん、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
ざわざわと、フランスで走ったときよりも騒がしい場内を見渡す。
俺は7番ゲートへと向かいながら、今日はなんかあったのかな、と芝木くんを見上げた。
「騒がしいのが気になるのか、サンジェ」
そらもう。
日本のスタンド前とかはやかましくて仕方ないんだが、フランスとかはそうでもなかったじゃん?
欧州の競馬ってそこまでギャーギャー騒がないんだなあ、って思ってたんだけど、イギリスの競馬場── ここはアスコットだっけ。
アスコット競馬場はなかなかに騒がしい。
俺以外にも他の馬も若干そわそわしてるしな。
妙に静かなのはハーツクライさんだけだよ。
あのヒト、じゃねえやあの馬、久しぶりにあったら俺の鬣食べまくってたけどお腹大丈夫かな。
「今日は特別なレースなんだよ、ちょっとだけ我慢なサンジェ」
特別なレース?
今日は、ってことは、毎回こういうワケじゃ無いんだなあ。
他の馬がゲート入りを嫌がっているのを横目に、俺はゆったりゲートにイン。
まあ騒がしくてもいいや。
先頭でゴールすることだけを考えて、走っている間は芝木くんの声以外は無視!
時と場合によっては芝木くんの声も無視するが!
……おっしゃ、切り替え完了!
今日はハナからぶっちぎるからな芝木くん!
しっかり俺にしがみついとけよ!
「そう言えば岡林さん、今レースはなんと、英国の女王陛下と孫のハロルド王子が専用席から御覧になっているということで、優勝者へのトロフィー授与式も参加されるそうですが。日本でも「天覧競馬」ということで、天皇皇后両陛下が御覧になることもありますよね」
「ですねえ。最近だと、昨年の天皇賞・秋ですかね」
「その時の勝ち馬はヘブンリーロマンス。鞍上の松富騎手が敬礼した姿がまだ記憶にあります。英国王室は競馬に深く接しており、女王陛下も馬主としての一面をお持ちですよ。今回、御覧になる理由は明らかにされていないとのことですが、国民にとっては注目すべきレースのひとつであることに間違いはありません」
「この状態のレースで日本調教馬が勝ったら、と思うとワクワクしてきましたね」
「ドキドキもしてきました。さ、日本からはハーツクライとサンジェニュインの2頭が出走しますが、どうでしょう岡林さん、2頭の様子は」
「そうですねえ。ハーツクライは、前に見たときはガレてて心配だったんですけど、この3日で上手く持ち直せたのか、毛艶良いですよね。ただちょーっとトモの張りがあんまり、という感じです。サンジェニュインの方は見るまでもなく絶好調ですね。ここ2戦はパドックでも返し馬でも落ち着いてますよ。今日はハリケーンランに張り付かれていましたが。スタートダッシュが決まれば、ガネー賞のように大逃げに出るかも知れませんね。ハーツクライもスタートがキマればサンジェニュインに付いていく可能性があります」
「それは、ドバイの再現もあり得る、と?」
「うーん、それは難しいと思いますよ。サンジェニュインは固い馬場が不得手なので、まずドバイはソレでスピードが出ていませんでした。今回は芝の長い、そして深い馬場という、完全にサンジェニュインのフィールドなので」
「なるほど」
「ただハーツクライは戦術が広いんでね、いろんな手で走ってくるでしょう。鞍上のリュベール騎手も研究熱心ですから」
「サンクルー大賞典では、奇策で一時的ではありますがサンジェニュインを封じることができたリュベール騎手。他にもまだ策はあるのか、気になるところですね。……さあ、今、ゲートに全頭収まりました。本日は7頭立ての少数レースですが、7頭とも選りすぐりの名馬です。2006年のキングジョージ── スタートしました」
パン、とゲートが開き、俺は勢いよく飛び出した。
アスコット競馬場は特徴的な形をしている。
目黒さんが紙に描いてくれたのはおむすびみたいな三角形で、カーブは2つだけ。
ただスタートから下り坂があり、コースの高低差は22メートル近くあるという。
馬になってからというものの、距離感や重さの感覚が若干バグってしまったが、かなりキツイってのは解る。
芝木くんはなるべく俺のスタミナを落とさないよう、内々を回って進ませようとしているのだが、すまんな芝木くん。
最内には俺のケツを狙っているオッスどもがいる!
あとな、もし今、内々に寄ると確実にハリケーンランに張り付かれる。
アイツ、別に追い込み馬ってワケじゃないと思うんだわ。
いや1回しか走ってないけど、ディープインパクトと比べたときにすっごい襲ってくる!って感じではなかった。
たぶん先行でもイケイケで来れるのでは?俺は訝しんだ。
ハーツクライさんもいるし、何も油断できねーのだ。
ということで俺は、
「スタートは全頭キレイに出ましたがサンジェニュイン、外に寄れています掛かっているか?ただスピードはぐんぐん出て現在先頭、リードは5馬身となっています。それを2番手で追うのはチェリーミックス、3番手にハリケーンラン、その内側にハーツクライが続き、半馬身差でエレクトロキューショニストが追走、エンフォーサーとマラーヘルが横並びの状態です」
「外に出ると大きくスタミナを消費してしまうのですが、内々にはチェリーミックスがいるのでコレを避けたのだと思います。サンジェニュインは近くに他の馬がいると嫌がるので。これが終盤に影響しないと良いのですが」
芝木くんが一瞬だけ綱を引いてきたが、構わず走ったら緩くなった。
おう、覚悟キメてけ芝木!
鋭いカーブも来てるけどぶん回すぞ!
あ。
「おっとサンジェニュインどうした……!?」
「……後ろの右脚、出血してますね」
イッテエ──……!?
次回、本戦!!!!
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37.無痛 ─ 2006年7月29日KGVI&QES
大スクリーンに映し出された光景に、目黒は眉を顰めた。
現地の実況者の声に合わせてズームされた場面では、サンジェニュインの右後脚から確かに出血しているのが解った。
「……テキ、今のは」
「ウン……前脚と後脚の交差が上手くいかなかったかな。サンジェは元々カーブが得意じゃない、というか、スピードが出すぎて上手く曲がれない馬だ。日本のカーブだと外側に進路を寄せて、余分に回らせることで誤魔化していたんだけど……アスコットのこの形では少し難しかったか」
本原は考え込むように腕を組み、目の前のレースを見つめた。
アスコット競馬場のメイントラックは、俵型に近いコースレイアウトが多い日本の競馬場とは異なり、角の丸い三角形── 所謂おむすび型をしている。
キングジョージのレースはこの三角形の辺のうち、左辺の下部からスタートする。
このコースレイアウトで注目すべき点は2つ。
1つめは800メートルの下り坂。
これはスタート直後から始まる。
おむすびの頂点部分、現地では「スウィンリーボトム」と呼ばれるコーナーとの高低差は約22メートル。
2つめは600メートルの上り坂。
スウィンリーボトムを回った後に続くこの坂の高低差は約20メートルであり、中山競馬場の高低差と比べても4倍近い差がある状態だ。
さらに最後の直線500メートルでも、ラスト1ハロンは上り坂になっている。
単純なパワーとスタミナだけではない、厳しいアップダウンに耐えられるかどうか、人馬に高い精神力が求められるコースなのだ。
だが本原は、この部分に関してはそこまで警戒していなかった。
「22メートルも20メートルも、サンジェニュインには大きな障害にはなり得ない」
その言葉に目黒が頷く。
「栗東の坂路を1日4本も熟すのは、まあアイツだけですからね」
「ああ。サンジェは「坂」に対する苦手意識もなければ、むしろソレを楽しんでいるような節すらある。4倍の差が気にならないのかと言われれば嘘になるが、心配かと言われたら違うな。アイツは乗り越えられる。……ただ、やはり「コーナーカーブ」だ」
サンジェニュインのフォームは独特だ、と本原は言葉を続けた。
まるで1本の線のような前傾姿勢は、数多いる競馬評論家に「低すぎる」と言われるほど真っ直ぐと伸びている。
誰が教えたわけでもなく、逃げるための最速を求めた、サンジェニュインが自然と身につけたフォームだった。
だがそのフォームとスピードが、サンジェニュインに「コーナーカーブ」という、矯正困難な弱点を作ってしまった。
「トップスピードのまま曲がろうとすると、最悪の場合、そのまま芝に沈んでしまう。皐月賞や東京優駿、菊花賞なんかでも外側に寄せて曲がらせた。有馬記念では最内を回っていたにも拘わらずカーブの時だけ外に持ち出した。……矯正するには、カーブでの意識的減速を覚えさせるしかない。だが」
「サンジェニュインは減速を嫌がりますからね。後ろとの差が5馬身だけならなおさら、もっと差を広げなければと加速するでしょう」
その姿がありありと想像できて、本原は苦笑いを浮かべた。
普段はのんびりとした姿を見せてはいるが、サンジェニュインという馬が極度の馬群、減速嫌いであることを、2人はよく解っていた。
「馬群に呑まれる方が嫌だからな、アイツは。まあ、日本の競馬場だったり、シャンティイの調教場やロンシャン競馬場のように、カーブが緩やかなところならそれでも構わない」
しかしアスコットのコーナーカーブは、サンジェニュインがトップスピードをキープしたまま曲がるには、あまりにも急すぎた。
柵にぶつかるギリギリのところまで外に持ち出してようやく、最速のまま曲がりきることができる。
しかし先ほどのサンジェニュインはまだ中頃にいた。
減速できないまま曲がろうとして、右前脚と右後脚が接触したのだ。
「……さっき見えた出血の位置からすると、裂蹄ではないな。
サンジェニュインの1歩は深い。
例え小さな傷だったとしても、何度も力強く叩きつけられている状態で、痛みを感じていないわけがないのだ。
本原は唇を噛みしめて、再びレースに視線を戻した。
「右後脚から出血したままですがサンジェニュイン、このまま走り続けるようです。ただスピードは落ちているか、2番手はチェリーミックスを躱してハーツクライが差を詰めています。かなり速いペースで上がっているが鞍上リュベールが綱を引いて、これは掛かり気味でしょうか。ッしかし5馬身、5馬身の差が3馬身に縮んでいるぞ、このまま躱してハナを取るかハーツクライ。外側1馬身差でそれを追うのはハリケーンラン、最内にするりとエレクトロキューショニストが続くと2馬身差の位置にマラーヘル、大外にエンフォーサー現在シンガリです」
「サンジェニュインはコーナーカーブのところでかなりよれていましたね。隙が無いようでこの馬、コーナーはかなり苦手です。上手くいく方が珍しいのかな。ただ芝木騎手が追わなくてもスピードが上がり始めているのは……いやあ、恐ろしいですね」
「まだ馬ナリの状態ですサンジェニュイン、高低差20メートルの上り坂を先頭で駆け上がる。これを後ろでピタリと追走しているハーツクライ、サンジェニュインの影まであと少しだがどのタイミングで抜け出すか、リュベール騎手の手腕に注目です」
── 目黒さん曰く、気にするのは坂だけ。
……いやコーナーカーブ!?!?
なんだアレ、鋭角か?
カーブっていうかもう完全に「角」だよアレは!
ああクッソ、ミスったあ……!
「サンジェ、大丈夫か……ッ」
めちゃくちゃ心配そうな声色の芝木くんを安心させるため、強めにハミを食んで答える。
ヘーキヘーキ、痛いと言えば痛いけど、激痛って言うほどでもない。
ないんだが、こう、紙で指先をシュパッ!てやった時の「痛い瞬間」が持続してるだけ。
まあ俺、ヒトの時から普通のやつよりは痛みに強いほうだったからな、これくらいならまだ無痛に近いわ。
っていうか俺の脚、今どうなってる?
固い馬場を走破したレベルの痺れだし、たぶんそこまで酷い怪我じゃないと思うんだが。
ああ、それにしてもやっちまったわ、まさかコーナーカーブで脚がもつれるなんて。
目黒さんから事前に言われていた、注意すべきポイントは2つの坂だけ。
サンクルー大賞典後の調教も坂路での調教を中心に行われていたし、たぶん目黒さんたちもそれ以外のところで俺が大きく躓くとは思ってなかっただろう。
もしくは、あったとしても短いタイムロス程度か。
散々言い聞かされたとおり、最初の下り坂は結構力を使ったけど、坂路調教のおかげで問題なくクリアできた。
それよりも問題はコーナーカーブの方なんだわ。
「思ったよりも狭かった、もっと外に……クソ……ッ」
それな~~!
もっと外側ギリギリまで持ち出してから曲がれば、と悔い改めモードに入っている芝木くんに同意しつつ、しかし今回は8割俺に責任がある。
コーナーカーブを曲がる時の感覚、俺の中でシャンティイ調教場や日本の競馬場から更新できてなかった。
特にシャンティイのコーナーカーブはゆるやかで、外から入って曲がりきる時に内に寄せる、俺的には気持ちの良い走り方ができるから、それがずっと残ってしまったのだ。
『おむすびの絵まで描いてもらったっていうのに俺ってやつは……!』
小回りの下手な俺には、外に出る選択肢しかないってのに。
中途半端なとこで曲がろうとしたからダメだった。
俺1頭が転ぶならともかく、バランス崩して芝木くん道連れにターフにドボン、だけは避けたかったので、それを回避できたのは良かったけど。
ただ、踏ん張った時、傷ができた方の脚を思いっきり叩きつけてしまったことで一瞬だけ痛みが増し、脚が鈍ってしまった。
『その隙にハーツクライさんにかなり詰められちまったなあ……でもちょっと掛かってない?』
ハミを噛みしめながら、広い視界の端にいる馬を見る。
風になびく鹿毛の
ハーツクライさんはオフの時はいたずらや冗談好きの、近所の大人びたお兄さんって感じなのだが、レースの時は「差すぞ!」という殺気に満ちてるんだよな。
俺とうまぴょいする気、というよりは俺を殺す勢いで追ってきてない?
ドバイの時はラスト1ハロンまでキッチリ粘られ、最後の最後に差し切られたし。
あの時はスタートから常に3から4馬身差をキープされ、明らかに終盤でスピードが落ちる一瞬を狙われていた。
終盤の瞬発力に優れたハーツクライさんの脚力であれば、例えば5馬身程度の差ならすぐに追いつかれて躱される可能性もある。
今の差がどれくらいかはわからないが、余裕で並ばれるほど近いことはわかっていた。
『もっと差を作らないと……だろ?芝木くん!』
「っな、サンジェ、まだ……!?」
なあに躊躇ってるんだ芝木くん!
さっきから鞭打ってねえし手綱も扱いてないな!?
さては俺の傷に遠慮してんな、もうお前の性格わかってきたわ。
芝木くん、いざって時は俺と一緒に地獄までランデブー!みたいなこと言う割には、こういう時に躊躇ったりするんだよなあ。
いやまあわからなくもないんだよ、ここで競走中止した方が俺の安全は確かだもんな。
俺も芝木くんがレース中に怪我しちまったら、エッ、レースどうしよう止めた方がいいか?って一瞬は考えるし。
でも俺だったら、そうだなあ。
『スピードさらに上げて、最速でお前を医務室に連れてく覚悟をキメるかな……!』
── だって芝木くん、自分が怪我した場合はレース止める気なんてないんだろ?
坂を登り切ったところでスピードを上げる。
ギリギリまで外に持ち出しているので、俺はたぶん他馬よりも余計に走っているが、気にはならない。
体力だけは有り余るほど持ってるんで……!
おら芝木!ここからさらにスピード上げっから、お前も本気出すんだよお!
「ハーツクライが猛追を仕掛けるがここでハリケーンラン、ハリケーンランが勢いよく追い上げてハーツクライに並びました!内からはエレクトロキューショニスト鋭く切り込むがここはハーツクライ、耐えてまだ2番手をキープ。チェリーミックスは勢いが落ちたかズルズル後退してポツンと最後方。エンフォーサーがマラーヘルを躱して2番手集団に食い込もうとするが8馬身差、やや距離が空きすぎたか。やや縦長の展開、ハイペースを作り出した先頭は依然サンジェニュイン──!?……の、伸びる!サンジェニュイン伸びる!伸びる伸びる、まるで跳ねるようにスピードを上げていきます!ものスゴイ加速力だ!3馬身のリードからぐいーっと差を広げていきます!」
「ハリケーンランとエレクトロキューショニストを押さえての2番手、ハーツクライの緩急の使い方が上手い。リュベール騎手の作り上げたリズムを見事走りに反映していますね。しかしサンジェニュインのね、スピードがものすごい。ここからさらにスピードを上げられるとは……負傷している右脚への負担が心配ですが、痛みを押して走り続ける精神力は完全に頭一つ抜けてるでしょう」
視界の端には3頭の馬。
どうやらハーツクライさんが他馬に並ばれたようだが、あの馬は並ばれたり挟まれたくらいでバテるような馬じゃない。
鞍上が必死に追ってないし、まだ余裕はあるんだろう。
となると……さっきのは俺へのプレッシャーか?
ハーツクライさんの騎手ってそういうことよくする~~!
サンクルー大賞典でも俺を挟んでた牝馬の片方、このヒトが主戦だって聞いたし。
ヒィン、なんか俺に恨みでもあるんか!?
「……サンジェ、ホントに行けるんだな?」
おうよ!
最速で医務室に向かうプランで覚悟決まったか?
ヨシ、じゃあとっとと構えてくれ、ラストスパートまでもうちょいだぞ!
俺がハミを食いしばると、芝木くんはクッソデカいため息を吐いて手綱を持ち直した。
なんのため息、ソレ?
「ゴール後は説教だな。目黒さんから」
なんでえ!?
「ッここで、ここでまだ加速するのか!?サンジェニュインさらに伸びて7馬身リード!2番手ハーツクライ、ハーツクライが追うがいやエレクトロキューショニストがここで頭を突っ込んできた!だが負けじとハーツクライが粘る、粘る粘る!その外からハリケーンランが大きく伸びて躱しました、躱されましたハーツクライ!しかしハリケーンランからサンジェニュインまで遠い!その差は8馬身に延びたが行けるのかハリケーンランこのまま── ッ来た!来た来たハーツクライもう1度伸びて、伸びて、懸命の大駆けだ!」
パシン、と1度だけ芝木くんから鞭が入る。
外ギリッギリまで持ち出して2つめのカーブを曲がる。
そこから最後の直線を、さらに脚に力を入れて走り続けた。
右後脚の痛みはもうない。
ただジリジリとした痺れが、脚から頭のてっぺんまで上がってきていた。
跳ぶように脚を出して、次の瞬間。
怒りにも似た無言の嘶きが、俺の背中に突き刺さった。
「ハーツクライか!?ハリケーンランハーツクライ!内からエレクトロキューショニスト、ッエレクトロキューショニストこの三角関係もつれながらぐん、っとサンジェニュインとの距離を縮めようと追いかけます!7馬身!6馬身!5馬身!?だが遠すぎる!」
芝木くんが手綱を扱く。
そのリズムに合わせてスピードを上げ続けた。
後続が差を詰めてきているのはわかる。
俺のケツを燃やしてる視線は3頭分。
追い越してやるっていう声なき声は、しかし誰の耳にも届くことはない。
ただ、ただ、その一言一言が、俺の闘志に
「追いかける3頭、ラスト1ハロン200メートル上り坂!先頭はサンジェニュイン!サンジェニュイン!2番手はハーツクライかハリケーンランかエレクトロキューショニストか!?揉み合う3頭必死の猛追もサンジェニュインが先頭!先頭!先頭のままアスコットの三角形、白い軌跡を刻む……ッ!」
テキ曰く、俺と走る馬は大変らしい。
どんなに追いかけても遠ざかって、追いつけないからもがいて。
苦しくて仕方ないだろうな、と。
でもそれは俺も一緒だよ。
どこまでも逃げて、息が上がっても逃げて、逃げ続けて。
あがいてる、どこまでも。
例え他馬をズタボロにしてでも、掴みたいものがあるから。
だから、ここでは止まれない。
止まらない。
止まってやらない。
勝利を前に、ゴール板も踏み越えないまま、止まるだなんて。
そんなこと、俺は俺に許せない。
「ああ、3頭、ひたむきに、一途に……!ッそれでも届かない!サンジェニュイン、サンジェニュイン圧勝!ゴールイン……!右脚を赤く染めてなお、君臨する王者──ッ!」
視界の端で芝木くんが右腕を挙げる。
その手が指し示す方向は、太陽。
「……よし、このまま目黒さんのとこに行くぞサンジェ」
エッ、勘弁して!
ちょっ、ごめんて、でもほんとにちょびっとしか痛くなくて……あっ、あっあっ、アーッ!?
── このあとめちゃくちゃ叱られてめちゃくちゃ手当てされた。
ひぃん……!
「……強さとは、なんだと思う」
橋本がそう問うと、厩務員は戸惑いながらも口を開いた。
「レースに勝つこと、ですか?」
その言葉に頷いて、橋本は立ち上がった。
「私は、勝利への執着だと思う」
その言葉を掻き消すように、アスコット競馬場を大歓声が包んだ。
「これより、ジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスの優勝トロフィー授与式に移ります。優勝トロフィーは女王陛下より、馬主、騎手、生産者に手渡されます」
会場に響くアナウンスに、私は目を細めた。
今日、あの場に立つのは私だと思っていたんだがな、と小さく呟くと、真横に座っていた騎手が申し訳なさそうに頬を掻いた。
「いや、なに、今回の君の騎乗が悪かったとは思っていない。……あらゆる努力を上回って、サンジェニュインの方がより強く、在り続けただけ」
私の愛馬── エレクトロキューショニストが劣っていたとはもちろん、思っていない。
ドバイワールドカップこそ逃したが、プリンスオブウェールズステークスでは2着と好走しているし、前年のインターナショナルステークスも制している。
実力はなんの問題もなかった。
勝ち負けに絡むと確信していた。
だが、サンジェニュインという馬は、私の想像の遙か上を歩み続ける。
「それでも、だ。私は今でも、ラムタラこそ“神の馬”だと思っている。それと同時に、こうも思っているんだ」
── サンジェニュインは、神が選んだ馬に違いない、と。
「確率はどれくらいだろうか」
「え?」
「青鹿毛と鹿毛の両親の間に、白毛の馬が産まれて、それが大柄なのに身体が強くて、脚が速くて、従順で、愛くるしくて」
どれかひとつだけなら、ありふれた馬と同じだ。
だけど彼にはすべてある。
すべて、備わっている。
「神が誂えたとしか思えない」
栄光と名誉で塗りたくられたトロフィーを抱える、彼等は理解しているのだろうか。
これは、偉大なる歴史のひとかけらに過ぎないこと。
その隣に佇み、彼等に倣うように
「君もこの光景をよく見ておくと良い。私たちは今、歴史の1ページが作られる、まさにその瞬間に立ち会っているのだから」
レースが始まる前はあんなに淀んでいた空が、今、見上げると見蕩れるほど美しい青空を描いていた。
そこには白き太陽の勝利を祝福するように、雲ひとつすらなく、澄み渡っている。
騎手の合図とともに頭を上げた、その馬がゆったりとした動作で1歩、前に進む。
そして馬は、サンジェニュインは自然な動作で顔を傾けると、目の前の相手を覗き込むように見ていた。
その、まるで子犬のような愛らしい仕草に、場内からは次々とやわらかい笑い声が増える。
私は、その後に続いた光景を見て、他の人々とは異なる観点で笑いが零れるのを、必死に耐えねばならなかった。
「っふ、くく……ああ、クイーンに撫でられて、あんなに気持ちよさそうな顔をする馬は、世界中を探しても彼だけだろうな?」
にわかにどよめく場内で、私は瞳を閉じる。
そして、その瞼の裏に夢を描くのだ。
美しく、白い、夢を。
「……なあ、君。私は、近い将来あそこに立つだろう」
アスコットの芝を踏み、栄光の
その時、私の隣にいるのは白毛の馬に違いない。
「神が選んだ馬の、その仔で、私はあそこに立つ」
不思議なことに、これは真実になるだろうという予感が、私の中にあった。
── 2012年7月21日 イギリス アスコット競馬場 芝12F = 約2400メートル
目映いほどの晴天が広がる中で、白い
その瞬間、場内に響き渡った大歓声の向かう先を追って、人々は笑い合う。
「影も踏ませぬ圧倒的な大逃げ!見たかこれが英国三冠馬の力だ!サニーファンタスティック!父も制したキングジョージを、父と同じく鮮やかな逃げ切り勝ちです。白毛の
あふれんばかりの祝福の中で、男はひとり、笑う。
「ほら、言っただろう?」
まだ走り足りないと駆けていく、その馬の名は──
凱旋門賞馬・サンジェニュインの初年度産駒である。
次回、掲示板回!
本日を含めて4日連続で更新します。
09/20:22時→58話目
09/21:22時→59話目
09/22:22時→60話目
登場人馬
サンジェニュイン 牡4
日に日に精神力がすごいことになってる
お上品なおばあさまと好青年に撫でられたが王族だとは知らされていない
ハーツクライさん 牡5
近所の大人びてるけど意地悪なお兄さんポジションに落ち着いた
芝木くん ヒト族
死ぬときは一緒だが死なないんであれば無理するなと思ってる
叱れない
目黒さん ヒト族
叱った
テキ ヒト族
心配した
橋本調教師 ヒト族
なんだこの馬(なんだこの馬)
リュベールさん ヒト族
なんだこの馬(なんだこの馬)
某殿下 ヒト族
おそらく作中でいちばん核心に近い
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閑話 掲示板回 Ep-7
※この掲示板は「サンジェニュインがウマ娘として実装決定になった時期」よりも前の掲示板です※
区別しやすいよう年月日をいれています。
○お願い○
掲示板回では誤字報告はなしでお願いします
※レス先違いも含む
掲示板内で(>>1)となっているものは、その投稿に対するアンカーを表現しています。
番号2の投稿で(>>7)とついている場合は、番号7が番号2に対して返信しています。
今回の投稿に伴い、ニヤニヤ大百科を更新しました。
PC閲覧の方はこちら↓
サンジェニュイン ─ NIYANIYA PEDIA(夜間モード非推奨)
スマホ閲覧の方はこちら↓
サンジェニュイン ─ NIYANIYA PEDIA(夜間モード非推奨)
09/21 追記
10月の更新予定をマイページに追記しました
掲示板回のみ誤字報告不要です。
【馬親父】太陽一族応援スレ111
1:走れナナシ 2021/9/19 ID:3NxRHr0Kb
ここは「サンジェニュイン」とその産駒を応援したり語ったりするスレです
・sage推奨
・次スレは >>900 が立てること
・立てられない場合は言うべし。次は >>950 が立てること
・太陽一族に無関係な雑談はなるべくしないこと
・アンチ、荒らしは無視すること
・↑触るやつも荒らしです
前スレ
【馬親父】太陽一族応援スレ 110
サンジェニュイン本スレ
先頭至上主義にして美しき逃亡者・サンジェニュインを語るスレ part.772
関連スレ
近代競馬の至宝・ディープインパクトを語るスレ 709
競馬総合スレ 1026
・
・
・
・
・
・
567:走れナナシ 2021/9/20 ID:6x7noeK3M
>>565
やっぱコレよ
568:走れナナシ 2021/9/20 ID:44pX8DeJ8
>>565 サンジェの列伝ポスターはなんでもかっこいい
569:走れナナシ 2021/9/20 ID:sLZnG8jCY
(>>574)
>>565
これナンバリングされてる方か
個人的にはキングジョージのポスター好き
番外編扱いだから列伝ポスターって括りじゃないけど
570:走れナナシ 2021/9/20 ID:tVn8gy0fX
>>565
サンのコレいいよな~~!
571:走れナナシ 2021/9/20 ID:ZXlwWHOFz
(>>574)
サンジェニュインもそうだけど、ディープインパクトとかハーツクライとか、あの世代のポスターはマジで良い
あとサンジェニュイン産駒の列伝ポスターも好き
個人的にはブエナビスタ(スペ産駒)の「まだ見ぬ絶景を求めて」が一番だと思ってたんだが、アイシテルサニーの「愛してるよ、サニー」はマジでイイ
572:走れナナシ 2021/9/20 ID:VPQjk1Vnr
(>>576 >>577)
「選ばれた夢」が好きな俺氏、「天の盾に夢を乗せて」が嫌いになるはずもなく
鞍上・竹で秋天で逃げ切り勝ちしたサンサンドリーマー、永遠に推す
573:走れナナシ 2021/9/20 ID:ZdHBtxdhw
(>>577)
現時点のサンジェ産駒列伝ポスター
・サンサンドリーマー
・サニーメロンソーダ
・シルバータイム
・タイヨウチャン
・アイシテルサニー
・サンサンプリンス
これで全部?
574:走れナナシ 2021/9/20 ID:GXQIbV49s
>>571
アイシテルサニーはシンプルなのが良いよね
>>569
「The aesthetics of God's beloved lace」
直訳したら「神に愛されたレースの美学」になるところを
「神が愛した競走美」として翻訳したの好き
575:走れナナシ 2021/9/20 ID:3JNuJgHLK
(>>578 >>579)
サニーファンタスティックのやつがないじゃん
576:走れナナシ 2021/9/20 ID:NwXm8fR38
(>>582)
>>572
サンサンドリーマー!!!!
天皇賞秋と春の制覇うれしいけど菊花賞出て欲しかったって未だに思う馬
577:走れナナシ 2021/9/20 ID:cU7lSBy3c
>>572
サンジェ産駒随一の気性難ドリーマーくん
2度もゲート再試験したときはヤバイなと思ったけど、なんだかんだ走ったな
竹がデレデレしてた記憶しかないが
>>573
それで全部
あとはナンバリングされてない海外の産駒とかそこらへん
578:走れナナシ 2021/9/20 ID:KHWHoaw98
>>575
サニファは海外だから
579:走れナナシ 2021/9/20 ID:xbyRZds+8
>>575
英国産だから列伝ポスターに入ってない
番外編の「SUNGENUINメモリアルポスター」シリーズにはある
「Orthodox and royal ── 正統にして、王道」
580:走れナナシ 2021/9/20 ID:2YkXzTTu5
(>>582 >>583)
サンジェニュインの代表産駒と言えば
イギリスのSunny Fantasticとか
アメリカのShining Top Ladyみたいな海外産駒
国内の馬では代表産駒(笑)止まりという悲しい現実
581:走れナナシ 2021/9/20 ID:kkc4eq8w1
なんでやサニメロとかサンドリ、シルバータイムおるやん
582:走れナナシ 2021/9/20 ID:bd2SOFKpb
(>>658)
>>576
サンドは長距離向きか?って言われると首を傾げるが、春天の勝ち方見ると菊花賞でも走れそうだったんだよなあ
少なくとも竹は菊花賞走らせる気だったみたいじゃん
なんで陣営は菊花賞を走らせなかったんだろ
>>580
国外age国内sageアンチさんチーッス
583:走れナナシ 2021/9/20 ID:oofPkCyRa
>>580 言いたいことはわからんでもないが言い方が気に食わない
584:走れナナシ 2021/9/20 ID:aT3sJXA8h
海外に残した産駒の方が走るっていうのは事実
国内のクラシックシーズン見ると、ディープがダービー馬を6頭出している中、サンジェはまだ1頭も出せてないからなあ
こればっかりは仕方ないわ
585:走れナナシ 2021/9/20 ID:tLMAgdDU5
そもそもが日本の馬場適性すっげえ低いじゃん
サンジェ産駒にカチカチの中山競馬場は合わない
586:走れナナシ 2021/9/20 ID:bGO8sLkdP
(>>592 >>593)
初年度産駒から朝日杯FSのサンドリとかGⅠ馬出したり、サンジェの国内での仔出だしもまあ悪くは無かったんだが、それ以上に海外の産駒が強すぎた
初年度産駒だけで
イギリスのSunny Fantastic が41年ぶりの英国三冠
アメリカのShining Top Ladyが33年ぶり&牝馬初の米国三冠
フランスのLumineux Helissioが仏クラシック2冠(ジョッケクルブ賞とパリ大賞典)
587:走れナナシ 2021/9/20 ID:x/s3jJYHW
ハレルヤマーチは惜しかった、あそこで競り負けてなかったら産駒初の凱旋門賞馬&日本調教馬2頭目の凱旋門賞馬になれたのに
588:走れナナシ 2021/9/20 ID:shAtzgLui
サニファはもう別格だろ、次元が違う
熱発さえなければ2012年の凱旋門は取れてたレベル
589:走れナナシ 2021/9/20 ID:KWbLBcsk7
まーた国外産駒ageの国内産駒sageですか
もう国外に移住しろよ
590:走れナナシ 2021/9/20 ID:Z+gsVxLQB
(>>592 >>595 >>602)
あれもこれもマツリカが死んでなければなあ
産駒で1番サンジェに走り方が似てたのはマツリカだと思う
591:走れナナシ 2021/9/20 ID:e05kbtexC
(>>598)
サンジェの国外産駒、いっつも初年度産駒が持ち出されてるけど、その後の産駒もやばい
2年目産駒でフランスのLouvre Blanche がプール・デッセ・デ・プーランとモーリス・ド・ギース賞
3年目産駒でこれもフランスのBlanche Blanche が凱旋門賞を勝ってるし、その4年後にアイルランドのlightning Passion も凱旋門賞を制してるから、既に2頭の凱旋門賞馬を出してる
出してるんだよ
ただ国内の産駒からはまだ出てないから、未だに日本では「サンジェ産駒で凱旋門賞は取れないのか」みたいな話で盛り上がってたりする
適性外の馬場で走らせて国内に閉じ込めてる馬が都合良く凱旋門賞勝てるかってーの
592:走れナナシ 2021/9/20 ID:+hC6hcEsy
>>586 これが初年度なんだから笑う
>>590 サニメロの方が似てないか?フィルター乙
593:走れナナシ 2021/9/20 ID:YHdLuHJb6
>>586 これ以降で海外の種付けめっちゃ増えたよな
2014年とかサンジェもうほとんど日本にいなかったじゃん
594:走れナナシ 2021/9/20 ID:Izqw9jn7I
ハレルヤマーチはむしろよく2着まで食い込んだなと思った
国内だとGⅡ勝ちが精一杯で、現地でもサンジェ産駒だけど何しに来たんだって扱いだったのによう走ったな
595:走れナナシ 2021/9/20 ID:4sDrBqDdK
(>>602)
>>590
マツリカの話はやめろ、俺に効く
596:走れナナシ 2021/9/20 ID:b6J9LmGBh
サンジェニュイン自体が洋芝の鬼みたいな馬だったのに、その産駒が日本の馬場に耐えられるかって話なんだよ結局
597:走れナナシ 2021/9/20 ID:ixzS5azVv
ディープとサンジェで国内の牝馬を取り合う状態だったし、社来SSはやっぱサンジェを売り飛ばすべきだったんじゃね
598:走れナナシ 2021/9/20 ID:3NxRHr0Kb
(>>599)
>>591
ググるとおっそろしいくらい国外産駒の凱旋門賞の話でないのウケる
「サンジェニュイン産駒から凱旋門賞が出て、父子制覇を期待している」みたいな記事しかねえ
黒い金の気配を感じるわww
599:走れナナシ 2021/9/20 ID:Kfc3jDLXG
>>598 勝手に感じてろ
600:走れナナシ 2021/9/20 ID:U9c1uneLo
(>>600)
海外ageのつもりはないんだが、国内産駒よりは外の産駒の方が戦績良いのは確か
ここでも挙がってるサンドリとかサニメロのような初年度産駒は、無冠ではあるけどクラシック賑わせたしGⅠも勝ってる
でも2年目とか3年目は悲惨だっただろ
601:走れナナシ 2021/9/20 ID:sq1MJ3IBH
シルバータイムの悪口はそこまでだ!
602:走れナナシ 2021/9/20 ID:OShS6+GEd
>>590
>>595
タイヨウマツリカは未だに「どうして」って思ってる
オルフェーヴルとたたき合ってダービー1cm差2着、これは菊花賞勝てますわ、と期待したところで無情にも骨折で予後不良
ゴール後に倒れ伏した姿がまだ忘れられんし、川添振り落として駆け寄ったオルフェーヴルの嘶きも耳から離れん
603:走れナナシ 2021/9/20 ID:VveDtwPwp
同厩舎で馬房隣同士、調教いつも一緒だったオルフェとマツリカのダービーは正直泣いた
調教師とか管理馬がワンツーだったことに対する喜びの涙っていうか、ガチ泣きだったし
604:走れナナシ 2021/9/20 ID:Elixu0/Oj
このスレ内でもマツリカの複勝馬券を換金できなかったやつ多いみたいだしな
オルフェーヴルにはもう三冠とってもらわねえとな……と思いつつ当日はサニメロの馬券握ってました
>>600 おいやめろシルバータイムさんが泣いちゃってるだろ!!
605:走れナナシ 2021/9/20 ID:cepji9a0q
マツリカとは別だけど、ウイニンサニーとかハレマノユメとか、走るだろと思ったら走らなかった産駒が多い印象
なおシルバータイムさん
606:走れナナシ 2021/9/20 ID:sIESSOiRa
シルバータイムは……まあ……
607:走れナナシ 2021/9/20 ID:PSy9T7RvD
期待がバカみたいにデカすぎたんだよな
だからその落差が酷く感じられる
608:走れナナシ 2021/9/20 ID:gNeMUk7mq
あの馬に関しては期待するなって言う方が難しかった
父サンジェニュイン(凱旋門賞馬)
母父トニービン(凱旋門賞馬)
こんな如何にも「凱旋門賞取らせたい」配合だとさあ……
せめて海外のクラシックに挑ませてやってほしかった
609:走れナナシ 2021/9/20 ID:mapDwweUw
日本で走らせて良かったんか、と思う洋芝配合
新馬戦も札幌、初重賞も札幌2歳S、初めて固めの馬場を踏んだのは弥生賞という、不安しかないローテだったわけだが
610:走れナナシ 2021/9/20 ID:Z15kCAbCK
馬柱に「父:サンジェニュイン、母:エアグルーヴ」って載ってる馬がいたらとりあえず買うよな?
シルバータイム、それは馬券のゴミ箱……
競馬場で1000万おじさんの発狂が聞こえた時はもう競馬できねえと思った
611:走れナナシ 2021/9/20 ID:F6z5U6Air
エアグルーヴも札幌記念2連覇で洋芝適性高いのは目に見えていたのに、どうして頑なに国内クラシックに拘ったのか
欧州のクラシックシーズンなら十分勝ち負けに絡めたはず
612:走れナナシ 2021/9/20 ID:fI41WC8Yz
クラシックシーズンのシルバータシム、ジャスタウェイとゴールドシップと同じ厩舎で3頭仲良し、以外の目立った情報が無い
というかあの世代はサンジェニュイン産駒自体の影が薄かった
613:走れナナシ 2021/9/20 ID:uu4tMeIGi
もっとシンプルに言おうぜ
ゴルシ世代のサンジェニュイン産駒は弱かった
ディープが三冠牝馬ジェンティルドンナを出したっていうのもあって余計差が酷かったわ
614:走れナナシ 2021/9/20 ID:tyJDlNQMt
シルバータイム、皐月賞7着、東京優駿11着、菊花賞9着はいろんな意味で涙出るな
しかもこれ全部、他の馬を避けるように大外ギリギリまで持ち出して逃げてるし
615:走れナナシ 2021/9/20 ID:d4NN0RHj2
(>>617)
スレで散々な言われようのシルバータイムさんだが、列伝ポスターのキャッチコピーは「その生き様、ゴールデンタイム」という
やっぱ名付けがダメなんだって!
某エイリアンが闊歩する江戸漫画の主人公から貰っちゃダメだったんだわ
616:走れナナシ 2021/9/20 ID:hOkxbKV/3
3歳まで酷かったのは紛れもない真実なんだが、4歳でなんとか結果だしてるから許してやって欲しい
617:走れナナシ 2021/9/20 ID:XZtnPhRqu
>>615
親父も勝てなかったドバイシーマクラシックを制したんだから、シルバータイムのキャッチコピーがゴールデンタイムでも間違ってはいない
618:走れナナシ 2021/9/20 ID:/IPctdcqQ
「残り200メートルだゴールに向かってジェンティル、ッいやシルバータイム!シルバータイムが大外から精一杯伸びている!行けるかシルバー、シルバー、シルバータイム!差が縮んで……ッ抜かした!拾うか父が落とした2センチ!──息子が2馬身リードに変えて、今、見事な押し切り勝ちだ!シルバータイム!ドバイ、メイデン競馬場に刻まれるレコードはゴールデンタイム!」
すき
619:走れナナシ 2021/9/20 ID:BLYEJ/NUF
それまで札幌記念しか目立った勝ち鞍がなかったのに、ジャパンカップで半兄・ルーラーシップを押さえてオルフェーヴルとタイム差無し3着に食い込んでるのを評価されて招待
現地では「ジェンティルドンナのペースメーカー」扱いだったし、レース当日は大逃げでペースを握るもドンナちゃんにアッサリ抜かされちゃうから「マジでペースメーカーじゃん」って言われてたのにな
まさか最後の最後に伸びるとは
620:走れナナシ 2021/9/20 ID:XcxAzFRSA
サンジェ産駒最大の特徴じゃん
>最後に伸びる
621:走れナナシ 2021/9/20 ID:BK3PIYaLf
シルバータイムのドバイシーマクラシックは「お前、やれんじゃねえか!」という気持ちにですね、ハイ、次は馬券買いますね!と思った
でもゴール後にリュベールが「シルバータイムはパパには似てない、メンタルが貧弱、でも素質は誰よりもある」って言ってたの笑ったが
622:走れナナシ 2021/9/20 ID:/PFsnTfwL
親父が勝てなかったレースに息子が勝つ、っていう展開はマジで熱いんだよな
検量室に戻るときにジェンティルドンナに鬣噛まれて襲われてたけど熱いレースだったぜ!
なお日本ダービー
623:走れナナシ 2021/9/20 ID:PE0R/qNUc
サンジェニュイン産駒はダービー勝てねえよ
624:走れナナシ 2021/9/20 ID:SS5dE2FGq
稍重ならワンチャンある(震え声)
625:走れナナシ 2021/9/20 ID:nUpbxsISQ
欧州のダービーならチャンスしかない、日本だと重くないと無理だろ
合わない馬場でトップスピード、マックスパワーで走ったらどうなるか、タイヨウマツリカが証明してんじゃん
626:走れナナシ 2021/9/20 ID:QqCPnppbw
種牡馬成績はディープが上か
627:走れナナシ 2021/9/20 ID:Qgi7dZ7NR
まず適性が違うって話をですね……
シルバータイムもそうだけど、サンジェニュイン産駒は日本の馬場が本当に合わない
これはサンジェニュインが洋芝に高い適性を持っているからで、しかもそれがおっそろしい確率で産駒にも引き継がれるからな
ディープインパクトはガチガチの日本向きだから、輩出する産駒が国内で勢い出るのは当然
どっちが上かとかじゃなくて、そもそも戦ってるフィールドが違う
628:走れナナシ 2021/9/20 ID:+h2hhoQA0
インターナショナルSの勝ち馬3頭、凱旋門賞は2頭、キングジョージ4頭、BCターフ4頭、BCクラシック2頭、国内外三冠馬4頭
国際的評価が高いのはサンジェニュイン
629:走れナナシ 2021/9/20 ID:MQKzJCn/p
シルバータイムはドバイシーマクラシック以外だと、同年のガネー賞で1着、インターナショナルSで1着とGⅠ・3勝だかんな
翌年もまたジェンティルドンナさんとドバイに飛んでボコされ2着(1位はドンナさん)、ガネー賞2着、サンクルー大賞典1着、凱旋門賞2着と好走してる
凱旋門賞のパドックでゴールドシップの手綱くわえて歩いてる姿がyourtubeにあがってるぞ
630:走れナナシ 2021/9/20 ID:FfSMqsOOI
2年目が3年目が弱い!って話は、シルバータイムが成長遅かったのと、マジで馬場の適性の問題と、あとサンジェの3年目産駒は日本で走ってないっていうことで全部終わり!
631:走れナナシ 2021/9/20 ID:c5AWd+GP3
そういやサンジェニュインって2009年はフランスにいたんだったな
632:走れナナシ 2021/9/20 ID:qn4uekXJC
(>>635)
2012年デビューのシルヴィアーナがいるからダウト
633:走れナナシ 2021/9/20 ID:IILwRAPWo
サンジェニュインが2009年の1月から6月までの5ヶ月間フランスで繋養されてたのはマジ
https://sungenuin.com/news_id=11451444
634:走れナナシ 2021/9/20 ID:A7Y541gxS
4年目産駒のタイヨウチャンの鞍上がマツリカの騎手でオークス勝つっていうストーリーのために3年目産駒は消されたんだゾ
635:走れナナシ 2021/9/20 ID:ZnS7I96/c
>>632 シルヴィアーナはマル外
636:走れナナシ 2021/9/20 ID:X6EEI9Vfa
こうやってサンジェ産駒の手薄な世代で話題になるの、毎回2年目と3年目よなww
ここしか突っつくところがないっていうなら仕方ないが
何回同じ話すんねん
637:走れナナシ 2021/9/20 ID:ZMro8cW+k
国外産駒の活躍が目立ちだした2011年から種付けは海外がメインになったから、国内にいる産駒の数自体がめちゃめちゃ少ないんだわ
それでも数少ない国内産駒からGⅠ勝ちの馬が出てるから、種牡馬成績悪いとか笑えなくなったんだよな、アンチくんたちは
国内産駒が少ない世代だと、
4年目のマツリカ全妹タイヨウチャンがオークス、6年目のアイシテルサニーが牝馬三冠、7年目のタニノサニーロックはジャパンカップも勝ってるし、8年目のサンサンプリンスは皐月賞と菊花賞の二冠馬
ディープインパクトが死んでからは国内での種付け数が増えたらしいから、今年産まれたのは100頭はいるんじゃね?
638:走れナナシ 2021/9/20 ID:8rP9HUhC3
タニノサニーロックは母ウオッカだからダービーもめっちゃ期待したけど、ゴール前で心房細動発症して競争停止
けど皐月賞2着、菊花賞2着と好走してるし、3歳で同世代のダービー馬・レイデオロにJC勝ってるから評価対象でしょ
639:走れナナシ 2021/9/20 ID:Nux1wXjDB
プリンスは輸送事故が無ければ凱旋門賞行けてたかな
たらればだけど、出走できてたらエネイブルにもヴァルトガイストにも勝てたと思ってる
640:走れナナシ 2021/9/20 ID:A/O2ltIbX
マツリカといい、プリンスといい、こいつこそはって産駒ほど事故るのなんなんだろうね
641:走れナナシ 2021/9/20 ID:5r7Dffr0T
(>>643 >>647)
マツリカとプリンスは別案件だろ
プリンスのは事故じゃなくて故意
「こんなことになるなんて」じゃねーんだよなサイレンスレーシング死ね
642:走れナナシ 2021/9/20 ID:YDatdHhNI
プリンスの列伝キャッチコピー「偉大なる父を目指して」
Twitterで「偉大なる父=サンジェニュイン」じゃなくて、「偉大なる父=種牡馬入りした自分」じゃないかっていうのを見て辛くなった
643:走れナナシ 2021/9/20 ID:2xL+X9HTa
>>641 お前もうサイレンスレーシングの馬買わなくていいぞ
644:走れナナシ 2021/9/20 ID:eM3dFqnsb
オルフェの子供が走ってるの見ると、マツリカにもいたらなーって思う
645:走れナナシ 2021/9/20 ID:L6y6bZdEq
(>>648 >>650)
こんなタイミングで投稿してごめんだが、
ウマ娘のハッピーミークはタイヨウマツリカ説ってなに?
646:走れナナシ 2021/9/20 ID:8EV8oY5IX
プリンスが積まれていた飛行機がハイジャックされて墜落なので、まあ……
647:走れナナシ 2021/9/20 ID:DgdhzCyb5
>>641 調教師も厩務員もクラブスタッフもこれで亡くなってるのであたる先が違うんだよカス
648:走れナナシ 2021/9/20 ID:xvgNetlQ1
>>645
ハッピーミークは架空のウマ娘だぞ、あとここでウマ娘ネタは推奨できない
サンジェニュインも産駒も実装されてないんでな!
649:走れナナシ 2021/9/20 ID:Dl1Oxnh9m
(>>651)
プリンスの件、今年で2年だけど傷が癒える気がしない
メモリアルブックが届いたけどまだ開けねえよ
650:走れナナシ 2021/9/20 ID:D0cZuIzzY
>>645
ハッピーミーク = タイヨウマツリカ
というよりは、
ハッピーミーク = タイヨウマツリカ+タイヨウチャン
の方がそれっぽい
マツリカの幼名 = ミーク
チャンの幼名 = ハッピー
651:走れナナシ 2021/9/20 ID:8jnhwJT9q
>>649
見た方が良い
当歳の、サンジェニュインと暮らしてた頃の写真もあるから
652:走れナナシ 2021/9/20 ID:kw9LdkHQg
タイヨウチャンの小さい頃の名前がハッピーなのは知ってたけどマツリカのは初耳
653:走れナナシ 2021/9/20 ID:8xRPDRrCp
マツリカはうるさいことで知られるサンジェ産駒の中でも飛び抜けて大人しい性格
タイヨウチャンは水族館の図鑑を見るのが好き
これらを合体してハッピーミークが完成する(という説)
654:走れナナシ 2021/9/20 ID:QjinY9STJ
親父より先に実装される産駒は存在しない、ということでハッピーミークがタイヨウマツリカ・チャン兄弟説は否定させていただく(震え声)
655:走れナナシ 2021/9/20 ID:k78tu1tEP
なおサンデーサイレンス
656:走れナナシ 2021/9/20 ID:b+PbP4wkY
親父より先に実装されてる産駒しかいねえな
657:走れナナシ 2021/9/20 ID:n6OzONKFx
サンもサンデーサイレンスポジの可能性が……?
658:走れナナシ 2021/9/20 ID:+8vIFe6qC
>>582
遅レスだが、サンドリが菊花賞進まずに秋天に出たのはクラブの指示だぞ
サンドリとオルフェが同じクラブで、オルフェの方に三冠取らせたいから回避させてる
659:走れナナシ 2021/9/20 ID:0xserb2OZ
ぶっちゃけサンジェのウマ娘実装はクソ難しいと思う
っていうか無理では?
確かイギリスの女王陛下もサンジェ産駒所有してるから、その父馬を萌えキャラ化はハードルが高杉
660:走れナナシ 2021/9/20 ID:CFpiTpx7W
「白毛初」をたった1頭で連発しまくった、どころか生きてるだけで「白毛初」であり続ける馬だからな
661:走れナナシ 2021/9/20 ID:uR9E2VBzO
(>>666)
サンジェニュイン伝説!!!!
持ちかけられた金銭トレードの額
・現役時:200億
・種牡馬:250億
持ちかけてきた相手はゴンゴルドンの殿下で大草原不可避
662:走れナナシ 2021/9/20 ID:oQbBUqWJe
2度もチャレンジしてるのは草
663:走れナナシ 2021/9/20 ID:l70kO0ptD
怖すぎて草も生えねえよ、更地だよ
664:走れナナシ 2021/9/20 ID:Qj81xWV6D
200億超えというところが一周回ってギャグ
665:走れナナシ 2021/9/20 ID:F/gUj/A3t
サンジェのシンジゲート総額は非公表だけど、SSの血が薄い欧州での人気はバリバリに高く、SNSだと60億はあるんじゃないかって噂
ただの噂だし60億は盛りすぎだと思うがww
666:走れナナシ 2021/9/20 ID:GTCVLbO8W
>>661 この250ってシンジゲートじゃないよな?
自家種牡馬としてもありえん金額だけど、これでシンジゲートは組めないだろ
667:走れナナシ 2021/9/20 ID:keHPcRHuP
250億÷60 とか考えただけで頭おかしくなる
668:走れナナシ 2021/9/20 ID:pceFFmArr
まあ産駒が嘘みたいに走ってるし……多少はね?
669:走れナナシ 2021/9/20 ID:+DnSmdw1U
欧州は別の系統で血が濃くなってきてるから、サンジェが入ることでそれを緩和できるのはデカい
しかもめちゃくちゃ走るからな
産駒のSunnyFantasticも種牡馬として活躍馬を送り出してるし、サンジェの血が途絶えることはねえなコレ
670:走れナナシ 2021/9/20 ID:nVc9fNKHl
産駒の種牡馬成績を含めるとサンジェとディープならダントツでサンジェの方が上なの草
671:走れナナシ 2021/9/20 ID:1gVSXQM2C
国内での現役産駒成績はいいんだが、ディープは後継と言えるほどの種牡馬を出せてないから……コントレイルが種牡馬入りしたらどうなるか、ってところかな
ディープもサンも、SSの死後に成功した馬なわけだし、残された世代から大物が出る可能性も否めないわ
672:走れナナシ 2021/9/20 ID:yl1o5Yz9A
ディープは母父としてキセキとかアリストテレス出してるから、そっちで伸びていきそう
サンも似たようなモンだけど、というかサンの場合は「カネヒキリとサンジェ牝馬」「カネヒキリ産駒とサンジェ牝馬」の組み合わせでニックス染みてるからなあ
去年のBCクラシック勝ち馬のソウルオブラヴァーも母・シャイニングトップレディ(父・サンジェ)、父・ハートオブイマジニング(父・カネヒキリ)の配合
レコードでケンタッキーダービーを制してるから、母、父、子の3頭ダービー馬になってる
673:走れナナシ 2021/9/20 ID:PMEFDhIhP
えげつなくて草も生えない
674:走れナナシ 2021/9/20 ID:TlZHXOplR
国内だとあんまり走ってないカネヒキリ産駒、アメリカで元気に活躍してて嬉しい
675:走れナナシ 2021/9/20 ID:KMEn9Cbp5
初年度のHart Of Imaginingがアホみたいに強かったからな
そのカネヒキリ牡馬とサンジェニュイン牝馬との配合、最初はSSの3*4とかそんな血量で大丈夫か……?って感じだったんだが、サンジェとカネヒキリが気性難とはほど遠い性格だったので無問題
676:走れナナシ 2021/9/20 ID:hojDnGOFF
恋人配合は優秀すぎる
JCダートを制したハシルヒカリノユメとか、ライノヒビキとか
サンの頑丈すぎる馬体とカネヒキリの鋭い脚が合わさるのは強い
677:走れナナシ 2021/9/20 ID:6zG7ucoRa
というかサンジェニュインの血がすごい
あのハルウララとの仔がオープン馬として走った事実はもっと広まるべき
678:走れナナシ 2021/9/20 ID:SDouLq7/x
ハルノキボウ、冠名が「ハルノ」だったからてっきりハルノメガミヨとの仔かと思ってたのにウララの方だったのは笑ったし、そのウララの馬主がさらっと「ハルノ」の人になっててもっと笑った
679:走れナナシ 2021/9/20 ID:u7wHTQIRS
高知ではゆる~く盛り上がってたぞ
680:走れナナシ 2021/9/20 ID:mV064T71m
新馬戦勝った時はnatdekeiba.comの掲示板も盛り上がりもしたが、デビューした年がゴルシ世代のクラシックだったからすぐに埋もれたという……
オモシロ芸人馬ゴルシと三冠馬ジェンティルドンナ姉貴に挟まれた霞んじゃうのも無理はない
681:走れナナシ 2021/9/20 ID:gaddhNHSo
重賞の1つでも勝てばまた違ったかもしれんが、未勝利の母からオープン馬が産まれたのは普通にすげえからな
682:走れナナシ 2021/9/20 ID:gUmSn9tlA
言うてサンジェニュイン自体が「未出走の母から生まれた凱旋門賞馬」なので
やっぱあいつおかしいな
683:走れナナシ 2021/9/20 ID:5ZoF20v22
ウマ娘でウララが再び脚光を浴びてるから、これを気にハルノキボウも表に!って思ってたのに一切その気配がなくて泣いた
悔しかったからウララのWikipediaにハルノキボウを追記した
684:走れナナシ 2021/9/20 ID:c4+bGVktY
(>>699 >>703)
オルフェ*チャンが配合されたってマ?????
685:走れナナシ 2021/9/20 ID:3cgxt73+Z
(>>699)
血が近い、ダウト
686:走れナナシ 2021/9/20 ID:HdPVjHldE
親友の妹に種付けは精神的にキッツそう
687:走れナナシ 2021/9/20 ID:48zsN2iK4
馬にはそういう感覚ないからヘーキじゃね
688:走れナナシ 2021/9/20 ID:NrfxsWlon
(>>691)
ハルノキボウも繁殖にあがって欲しい
っていうか列伝ポスター作って欲しい
689:走れナナシ 2021/9/20 ID:gDdSZSOAH
(>>693)
エネイブルの2022、もし無事産まれたら日本で走るらしいぞ
690:走れナナシ 2021/9/20 ID:sOPbWvLuU
(>>691)
待ってカレンチャンの2021を金城ホールディングスが所有する可能性が高いって
カレンチャンのとこって馬主全部一緒じゃないんか
691:走れナナシ 2021/9/20 ID:Nu/h7J+89
>>688
ハルノキボウは重賞勝ちがないから無理ゾ……
>>690
配合前から約束してたんじゃね
692:走れナナシ 2021/9/20 ID:LhQc4bKcf
ほんとだカレンチャンの2021を金城氏が所有か、ってnatdekeiba.com のニュースにもなってるわ
693:走れナナシ 2021/9/20 ID:HFT/Nfjtb
>>689
そうかエネイブルの今年の配合相手ってサンジェか
とんでもない馬が産まれそう
694:走れナナシ 2021/9/20 ID:fjmuhagzm
父母そろってすえげ馬……期待される産駒の活躍……シルバータイム……うっ頭が!
695:走れナナシ 2021/9/20 ID:xvMEjLcZJ
メジロリベーラ……メジロダイボサツ……ジューダ……タニノフランケル……
○○冠ベビーで大成功するウッマは少ないってあれほど
696:走れナナシ 2021/9/20 ID:wr6XVkm4B
タニノフランケルに関しては半兄のタニノサニーロックがイギリスのクルーモイズスタッドで繋養されてるわけだが、今年デビューの初年度が順調に向こうの新馬戦勝ってるっぽいし希望は在る、はず
697:走れナナシ 2021/9/20 ID:h8wkVM72h
(>>699)
そういやずっと思ってたんだが、サンジェ×ウオッカの配合はあってなんでサンジェ×ダスカの配合がないんだ?
698:走れナナシ 2021/9/20 ID:FuS5PTqp1
血
699:走れナナシ 2021/9/20 ID:I5Gt2R5SF
>>697 これはコレ >>684 >>685 と同じ理由
血が近い
ダスカはアグネスタキオン(父SS)の産駒で、サンジェはSSの直仔
産まれる仔はSSの2*3という超インブリードになる
700:走れナナシ 2021/9/20 ID:jbTe47m+7
エネイブルも2*3配合だけど、これはかなり危険だから軽々しくはできない
無事に仔が産まれても酷い気性難とか虚弱体質の可能性が高まるからな
日本国内だとSSの血が濃すぎるのもあってなおさらね
701:走れナナシ 2021/9/20 ID:dj34ss0Aa
サンジェとハニーハントでSSの2*3配合はあるけどな
2019年、2020年、2021年と3年連続でやってて、今年デビュー
6月の新馬戦で逃げ切り勝ちしてるけど、今後も走るかはわからん
702:走れナナシ 2021/9/20 ID:tDokMxMtn
ハニーハントの2019こと「ライングッドデイ」ちゃん、元気に走って欲しいわ
おっさんはこの仔の阪神ジュベナイルフィリーズと桜花賞を楽しみにしてます
703:走れナナシ 2021/9/20 ID:0x2bcwhkM
>>684 オルフェーヴル×タイヨウチャンの配合マジだったな……
https://natdekeiba.com/news_id=1414888888
704:走れナナシ 2021/9/20 ID:ZSmYlbwA5
走る馬が出るといいな
705:走れナナシ 2021/9/20 ID:ThNNmn/5v
オルフェはメロディレーンのイメージが強すぎる
706:走れナナシ 2021/9/20 ID:PqFEYUEwD
(>>707)
ところで身体の大きさはタイヨウチャンの方が大きい……閃いた!
707:走れナナシ 2021/9/20 ID:bxasz1/6b
>>706 通報した
708:走れナナシ 2021/9/20 ID:qfqhuwVcw
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次回、競走馬回!
明日も更新あります!
2021/09/21 追記
スレ内で記載されているハイジャック等について
・競走馬の飛行機輸送
下記をベースに、この美貌馬世界では馬と世話する関係者は一緒に乗るという扱いになっています
参照:https://www.jairs.jp/sp/contents/w_news/2017/11/6.html
(参照先引用)>>競走馬の乗る飛行機には搭乗から着陸まで馬の世話をするフラインググルームが少なくとも1人は同行している
参照:https://flyteam.jp/news/article/133665
(参照先引用)>>フライトでは、馬だけでなく、飼育員59名、(省略)
・貨物機のハイジャック
現実世界にも類似例があることから、まったくあり得ないレベルではないと考えたため、美貌馬世界では発生したことになっています
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38.約束 ─ 2006年8月22日インターナショナルS【挿絵有】
今回ありがたいことにサンジェニュイン(ウマ娘)のイラストを頂きましたので、あとがきにてご紹介させていただいています。
アスコットでのレースを終えて約20日が経ち、今日は8月20日、時刻は午後8時。
今回の遠征で最後となるレース、インターナショナルステークスまで後2日に迫っていた。
俺は怪我のこともあってシャンティイに戻らず、ハーツクライさんと同じ厩舎でお世話になっている。
怪我自体は大したことはなかったのだが、輸送負担を考えてのことらしい。
こっちにいる間はハーツクライさんが調教相手になってくれたので、結構快適に過ごせた。
そのハーツクライさんは5日前に日本に帰国している。
白毛に血という、紅白おめでたくない色合いが記憶に残ったのか、去り際のハーツクライさんはかなり渋っていた。
『痛くないのか』
『治るまで付き添う』
『一緒に帰ろう』
など、いろいろと言われたのだが、俺にはまだ一戦残っている。
これを残して帰ることはできない。
勝ったら欧州のレースは4戦4勝になるからな、ここが踏ん張りどころなのだ。
だが、俺がどんなに言葉を尽くして元気アピールをしても、ハーツクライさんはかえって『そういってキングカメハメハは帰ってこなかった』と声色を硬くしてしまった。
しまいには馬運車に乗るのを嫌がったり、俺の鬣噛んだり厩務員の頭噛んだり……いやこれはいつものことだったわ。
結局最後は男の厩務員3人掛かりで馬運車に詰め込まれ、心配そうな嘶きを残して去って行った。
次に会うのは、うーん、早くて11月のジャパンカップだろうか。
俺、8月の終わりに帰国したら10月からまたフランスだしな。
でも11月は日本で走らせたい、とか水野のおっちゃんたちが言ってた気がするから、それまでには帰国するんだろう。
その時にまた怪我をしていると余計に心配させてしまいそうなので、今回のレースでは怪我しないようにしないとな。
『そのためにも早く調教を進めたいんだが……しっかし、芝木くんへの質問なっげえな!』
退屈で仕方ないぜ、と頭を軽く揺すると、俺の手綱を握っていた目黒さんが宥めるように鬣を撫でてくれた。
記者会見、と言うのが近いのだろうか。
テキと芝木くんとそれから水野のおっちゃん、と、クラブの一番偉いヒトが一列に並んで記者たちからの質問を受けている。
会見が行われている部屋は外側に面していて、俺は大きく開かれたガラス窓から頭を突っ込むようにしてそれを見ていた。
最初こそ「え、馬?」「なんで馬?」とざわ……ざわ……されたのだが、しばらくしたら「この馬は普通じゃないしな」みたいな雰囲気になった。
俺が言うのもなんだがそれでいいのか?
時々近くからパシャッて音が聞こえるから、たぶん俺の写真も撮られているんだろうが、今回のメインはテキたちである。
会見の内容は海外レースの手応えがどーたら、とか、次走はこれこれこうなります、とかだな。
そもそもなんで俺が会見を見ているのかっていうと、そらもう暇だからだよ。
今日の調教はもう終わっているのだが、20時は寝るのには早いし、話し相手もいないし1頭ぼっちは寂しいし。
自分に関する会見なんだから俺が見てもよくないか?と思って目黒さんに連れてきたもらったのだ。
でも思った以上に会見は長いし、本当に見ているだけなので暇で暇で仕方ない。
馬房に戻って逆さてるてる坊主で遊んだ方が良かったかもなあ。
もう退屈であくびがでちゃうぞ、と口を開けた時だった。
俺の耳がひときわ鋭い声を拾った。
「ソレは答える必要ありますか」
声の主は芝木くんである。
……いや声色!!!!
こんな地獄を煮詰めたような低い声、芝木くんからも出るんだなあ、という驚き以上に、一体何をしたら芝木くんからこんな声を引き出せるんだと驚いた。
芝木くんと言えば、レース中はともかく、オフの時は俺にゲロ甘な主戦騎手である。
リンゴは頻繁にはくれないけど、俺が顔を近づかせればいつまでも撫でているような男だぞ!
それに俺の記憶の中にいる芝木くんは、ニコニコ笑顔が8割、俺が無茶して心配そうな顔2割くらいで、あんな鉄仮面は知らん知らん。
ナニアレ、芝木くん双子だったか?
思わず目黒さんを振り返ると、苦笑いが返ってきた。
うぅん、確かに会見が始まった時から芝木くんはお硬い表情をしていたのだが、今はもうひたすら「無」だよ。
一体なにがお前から感情を奪ったんだ、と思ったのだが、今回の会見の様子を振り返ると、まあ納得できる部分は多いか。
というのも会見の後半から、フリータイムもとい質問タイムが設けられたのだが、コレがまた大変なものだった。
7割近くが芝木くん宛ての質問だったし、最初は「騎手としてレースに思うこと」「サンジェニュインの手応え」とか競馬関連の内容だったのに、途中からプライベートな話が増えているのだ。
『兄弟構成』
『ご家族はどう思われてるか』
『フランス滞在中の過ごし方』
『休日なにをしているか』
『好きなタイプは』
芝木くんは競馬以外の質問をされるのが嫌みたいで、質問タイムが始まってからは「あと一刺しで飛ぶ黒髭危機一髪」みたいな雰囲気ではあった。
あからさまに「これ以上質問すんなや」みたいな空気も醸してたのに、質問止めない記者のメンタルもすげえけど。
芝木くんの台詞に室内は一気に極寒モード、さすがにここからプライベートな質問をする記者はいないだろう、と思っていたその時。
「で、では次が最後の質問です。あるかたは手を── はい、8番の方どうぞ」
「女性情報誌「リカ」の青羽です!スバリ、芝木騎手に恋人は!?」
ズバリじゃねえよ。
この空気でよく聞いたな!
メンタルオリハルコン製か?
「……答える必要がありますか」
「ハイ!」
こんな状態でそんな元気な返事する?
もうあんたが勝者だよ、と思いつつ、俺はどんどん虚無に近づいていく芝木くんの顔を見つめた。
すげえよ、イケメンが真顔になると怖いってアレほんとなんだな!
思わず「ヒィン」って言いそうになって口を閉じた。
これ芝木くんはどうするんだ?
答えるのか、答えたくないのに。
っていうか恋人いるのか芝木くん、いたらいたでちょっと……イサノちゃんが……。
「恋人いますよ」
いるんだ!?
「アイツです」
どいつだよ。
……ん?
あ、俺!?
「サンジェニュイン、かわいいでしょ」
それはそうだが。
「恋人」
じゃねえよ。
……こっち見んな!
「これで質問終わりですよね」
「えっ?……あ、ハイ!質問タイムは以上です。本日の会見にご参加いただき──」
まだ「エッ?」ってなってる質問者を置き去り、テキたちが部屋から出る。
俺を見た途端ニコニコしはじめた芝木くんが近づいて来るが、撫でようとする手を押し返した。
オイ芝木、お前とんでもないことしてくれたな。
明日から週刊誌にあることないこと書かれて──……いや、こいつのこの顔なら「馬が恋人!というお茶目な一面も」ってハートマーク付きで書かれるだけか。
あの堅物騎手にもこんな姿が!?ってギャップ萌えになるやつだろ?
かーッ!これだからイケメンは!
前世のヒト俺が言ったら「うわ……孤独……」って引かれるオチだからなソレ。
う……ッ!自分で言っててむなしくなってきた!
「ど、どうしたサンジェ、ほらもう馬房、馬房に戻るんだろ?」
戻るけど今日はじゃれねえぞ。
ケッ、イケメンが!
「一体なにが……め、目黒さん!」
「はは……まあ、サンジェニュインにも好みがあるということだな」
「好み……?あ、ほ、ほらサンジェ、リンゴだぞリンゴ!お前の好きなサンふじ」
お前、リンゴ与えとけば俺が機嫌よくなると思ってないか?
そこまで単純な馬じゃねえぞこっちはんまあい!
「そうかそうか、美味いか」
でもお前、今度アレ訂正しとけよな!変人だと思われるぞ。
そう思いつつモゴモゴとリンゴを食べていると、馬房の掃除で残っていたはずのイサノちゃんが走ってくるのが見えた。
その腕には何か包みのようなものを抱えているようだった。
かなり急いだのだろう、息は上がっていて、その表情はお世辞にも明るいとは言えない。
芝木くんが俺の口元を拭うのを押しのけて、イサノちゃんの前に歩く。
『どうしたんだイサノちゃん、なんかあったのか?』
肩で息をするイサノちゃんを覗き込む頃には、離れたところにいたテキたちも近くに移動していた。
「て、テキ……テキ……っ」
「どうしたイサノ、サンジェの前だぞ、落ち着け。何があった」
テキがイサノちゃんの背中を軽く叩いて落ち着かせる。
イサノちゃんは目黒さんからもらった水を一口飲むと、少し青ざめた顔を上げた。
「すみません、取り乱して」
「落ち着いたか?」
「はい。……先ほど厩舎にニューマーケットのスタッフと一緒にJRAの職員が来て、言伝とコレを、と」
「言伝?それに、その包みは……」
聞き返すテキに、イサノちゃんが小さく頷いた。
内容を伝えるために開かれた口は、でも俺の姿を見て躊躇うように閉じられた。
何か俺に関係する言伝なのだろうか。
急かすテキに、イサノちゃんは先に包みを開けて、その中のものを取り出した。
包みの中からでてきたそれは、黄色みが掛かった赤い紐のように見えた。
── あれ、どこかで見たことあるような。
俺が首を傾げていると、イサノちゃんは何度も躊躇いながら、苦しそうに口を開いた。
「ラインクラフト号が、死んだそうです」
は?
2006年8月22日 イギリス ヨーク競馬場 インターナショナルステークス GⅠ 芝10f 56y = 約2063メートル
「2005年、ゼンノロブロイが出走して2着となったこのレース、今年はサンジェニュインが日の丸を背負って出走です。気になるサンジェニュインの人気ですが、パリミュチュエル方式が採用されている日本とは異なり、イギリスではブックメーカーが主流です。大手3社が出している人気順を見ると、3社ともサンジェニュインが1番人気となっています。これについてはいかがでしょうか岡林さん」
「ガネー賞26馬身差、サンクルー大賞典5馬身差、キングジョージは怪我を負いながらも6馬身差で1着ですからね。欧州でのレースはここまで全戦全勝、競った相手も勝ち方も強いとくれば、納得の人気でしょう。気になる点があるとすれば、前走に比べるとトモの様子が寂しいところですかね。調子はイマイチなのか、どこかソラを使っているようにも見えます」
「直前の情報によると馬体重は前走からマイナス3キロ、飼い葉食いがやや厳しい状態。ただ大きく調子を落としているわけではない、とのことですので、レースになればシャッキリとしてくれるかもしれません。今回から装いを新たに、赤色の手綱が白の馬体にフィットしています。この手綱は今月19日、急性心不全により亡くなった同世代の桜花賞馬・ラインクラフトのものです。関係者の手により、サンジェニュインに引き継がれました」
「この2頭はお互いが最たる併せ馬の相手、仲は非常に良かったそうですね。サンジェニュインには亡き友の分まで、このレースで活躍を見せて欲しいです」
いつもなら大きく響く歓声が、今日ばかりは遠く聞こえた。
8月も終わりに近づく中、脚を踏み入れたヨーク競馬場の空は雲一つない晴天。
いつもなら、勝つにはもってこいの日だな、と思えるのに、今日ばかりは思えなかった。
こんなに良い天気なのに。
こんなに気持ちの良い風が吹いているのに。
こんなに俺の心臓は波打っているのに。
ラインクラフトちゃんが死んだなんて嘘だ。
「返し馬、1番のゼッケンをつけたチェリーミックスにやや絡まれましたがサンジェニュイン、するりと躱してゲートに進みます。パッと見では落ち着いた様子です。するすると8番ゲートにキレイに収まりました。まもなくインターナショナルステークス、っと、2番ゲートからディラントーマス、3歳牡馬が抜けました、入り直しです」
ガチャガチャと騒がしい「外」の音を掻き消すように、芝木くんが俺の頭を撫でた。
ラインクラフトちゃんが死んだと聞かされて2日。
まともに飼い葉が食えなかった。
呆れるほど好きだったリンゴも喉を通らない。
あれほど鮮明に理解できていたテキたちの言葉の一切が、俺の中に届かなかった。
だって、4歳だ。
俺と同い年なんだよ、ラインクラフトちゃんは。
3歳の時から併せ馬をして、たまに一緒におやつ食べたり、それで。
あんなに元気だったのに。
また会おうって約束もした。
ドバイに発つ前に、次は、同じレースに出れたらいいって。
ラインクラフトちゃんはマイラーで、俺は距離が長い方が好きだからいつになるか解らないけど。
その直前の併せ馬で競り負けて、悔しくて、今度は負けないからって俺は。
そしたら君は、次も自分が勝つんでって、笑っていたじゃないか。
笑って、また走ろうって、約束をしたのに。
約束を、したのに。
「……サンジェ。俺がついてるからな」
不鮮明な声色が鞍上から響く。
あの日から、俺はヒトの言葉がわからなくなっていた。
今、芝木くんが俺に投げかけただろう言葉もわからない。
テキも、イサノちゃんも、目黒さんの言葉も。
ただ解るのは、目黒さんたちが精一杯、俺に寄り添おうとしていることだけ。
狭苦しいゲートに入って、少しの間だけ目を閉じた。
ガチャリ、ガチャリと音が聞こえる。
もう少しで、このゲートが開いてレースが始まるのだ。
ゆっくりと目を開けて、前だけを見る。
ぎゅ、と芝木くんが綱を握った、その瞬間に、赤い光が真横を過ぎていった。
「ゲートが開け放たれて2006年、インターナショナルステークス、スタートしました。ハナを征くのはサンジェニュイン、軽快な走り出しです。向正面から始まりましたが、まずは緩やかなコーナーカーブ、ここを外側たっぷり使って左回りに過ぎていきます」
「ヨーク競馬場は前走のアスコット競馬場とは異なり起伏の少ない穏やかなコースレイアウト。コーナーカーブも鋭くはありません、サンジェニュインには有利な作りに見えますね」
「5馬身離れて2番手はチェリーミックス、最内を軽やかに走ります。続く3番手にマラーヘル、半馬身差ブルーマンデー、外に持ち出してノットナウケイトが2馬身差をじわじわと縮めているが、スノカルミーボーイがぴたりと後ろにつけています。それを追走するのはレイヴロック、3馬身差のシンガリにディラントーマスという流れ。やや縦長の展開でしょうか、しかし後続はまだ巻き返せる差と言えるでしょう」
ゲートが開いた瞬間、いつもの倍のスピードで走り出した。
鞍上の芝木くんが手綱を引くけど、それを押し切り、俺はさらに加速した。
もっと速く走らなければならない理由が、目の前にあったから。
脚を1歩、前に出しては遠ざかる背中に向けて叫んだ。
『まって……待ってくれよ── ラインクラフトちゃんッ!』
俺の声に、彼女は一瞬だけ振り向いた。
どうしてここにいるんだよ、とか。
やっぱり死んでなかったじゃないか、とか。
頭の中はいろんな感情で埋め尽くされていた。
もうどれが一番最初に思い浮かべたことなのかすらわからなかった。
ただ、ただ追いかけていた。
その鹿毛の馬体を、友の背中を、ひたすらに追いかけていた。
「早くもサンジェニュインが2つ目のコーナーカーブに入ろうとしています。なんてスピードだ、後続に8馬身リードのまま、サンジェニュイン悠々と大きなコーナーカーブを曲がって征く!ここから先は一切の誤魔化し無し、シンプルイズベスト、900メートルの一直線だ!」
2つ目の大きなコーナーカーブのところで、俺はラインクラフトちゃんに並んだ。
『ラインクラフトちゃん』
呼びかけても彼女はこちらを見ない。
ただ、その走りだけが多弁だった。
── どうしてソラなんて使ってるんスか、サンジェニュインくん、走る以外で牝馬にモテる要素ないのに
『久しぶりにあったトモダチに言うことがそれえ!?失礼な、顔だって良いよ!』
頭の中に響く声は、少し懐かしいトモダチの声。
あまりにもいつも通りの声色に、俺は嬉しくなって弾んだ声で返した。
ラインクラフトちゃんは走りながらでも器用にため息を吐いた。
── サンジェニュインくん、今回のレース、勝つ気あるんスか?
『あるよ!……そりゃああるけどさ』
今日、まさにこの瞬間、レースに集中していたかと聞かれたら、俺は間違いなくしていなかっただろう。
言いよどむ俺に、ラインクラフトちゃんが呆れたようにまた息を吐いた。
── これだからダメなんスよ
『ねえ、1回貶さないとダメな感じ?泣くよ?みっともなく泣くよ?』
── いいよ
ギュ、と思わずハミを食んだ。
鞍上の芝木くんが異変に気づいて声を掛けてくれるけど、その言葉の意味はやっぱり解らない。
頭を振る俺に、真横のラインクラフトちゃんは小さく笑った。
── サンジェニュインくん、ヒトの声色聞き分けられるくらい頭良いのに、自分のことになるとちょっと頭弱くなるっスよね
『……んなことねーし』
弱くねえし、ちゃんとわかってる、自分自身のことなんだから。
そう続けようとして、続けられなかった。
ラインクラフトちゃんから響く声が、あまりにも優しく聞こえたから。
── ごめんね
なんでそんな声でそんなこと言うんだ。
ラインクラフトちゃんは何も悪くことしていないだろ。
── 約束守れなくて、ごめんね
……そんなこと言うなら、逝かないで。
「どうしたのでしょうかサンジェニュイン、しきりに横を気にしている様子。これが最後の直線だが大丈夫か、スピードに緩みはありません。2番手集団は今、コーナーを抜けて直線に入りました。一気に襲いかかるか、集団から飛び出たのはブルーマンデー、ブルーマンデーが後続を2馬身突き放して追うが大外からイッキ!ノットナウケイトがぐるっと回ってブルーマンデーに並びます、ここで2番手争いか、4番以下はやや縦長。マラーヘルがこれを率いていますがレイヴロックはもう苦しいか、一杯一杯のようです。チェリーミックス、ディラントーマスが横並び、シンガリはさらに8馬身離れてポツンとスノカルミーボーイ」
ハミを食いしばって走る俺の真横で、ラインクラフトちゃんが歌うように言う。
── サンジェニュインくん、寂しいっスか?
寂しいよ、寂しくないわけないだろ。
たった1年の付き合いだと言うなよ。
1年も一緒だった。
1年も一緒に走って、食べて、笑って、生きてきたんだ。
俺には、今の俺には、それがすべてで。
だから。
── 牡馬が簡単に泣いちゃダメっスよ
『泣いてねえよ』
ターフでは、人前では泣かないって決めてる。
俺の言葉にラインクラフトちゃんは笑って、わかったわかった、と言った。
拗ねた弟を宥める、姉のような声だった。
── そう言うことにしとくっス。……でも、あのね、サンジェニュインくん
遠くに見えるゴールに視線を向けて、ラインクラフトちゃんが囁いた。
── 自分が見えなくなっても、サンジェニュインくん、1頭ぼっちじゃないっスよ
そこにいるから、とラインクラフトちゃんが笑う。
──
優しさで満たした声が響く。
ああ、この1年で、この声を何度聞いただろうか。
例えば、俺が牡馬に絡まれていたのを助けてくれた時に。
例えば、俺が菊花賞を勝った時に。
例えば、俺が夜の厩舎で1頭ぼっちだと伝えた時に。
ありったけの暖かさを詰め込んだ声に包まれて、俺は、感情に絆創膏があると知った。
やわらかくて、甘くて、少しだけ、泣きたくなるような。
その全部が、ついこの間の事のように思い出せて、目の前が滲む。
あの頃、カネヒキリくんに会えなくて、ヴァーミリアンともシーザリオちゃんとも併せ馬ができなくなって。
年上の牝馬とばかり併せる中で、どれほどラインクラフトちゃんの存在に助けられたか。
君は知らないまま逝く。
優しいまま、逝く。
『ラインクラフトちゃん』
── なんスか
『痛くなかった?』
彼女の最期は知らない。
知ろうとしなかった。
死んだなんて信じたくなかったから。
でも今は、知りたいと思う。
彼女を、覚えていたいと思う。
── ……痛くなかったっスよ
『そっか……そっか』
眠るように逝けたのかな。
それはわからないけれど、痛くないならそれが答えだ。
彼女が最期に感じたものが痛みではなかったなら、それはきっと、最期の瞬間まで彼女の側にいたヒトのぬくもり。
── サンジェニュインくん
ラインクラフトちゃんが俺を呼ぶ。
……君の優しい声で名前を呼ばれるのが、とても好きだったと伝えたら驚くかな。
何より俺が照れ臭くなったから、これは言わないでおこう。
いつかまた会えた時にでも、そっと打ち明けようか。
虹の向こう側に楽しみを見出して、けど、その声こそが、さよならの合図。
『……もうちょっと一緒に走ってくれよ』
── 無理っスよ、自分マイラーっスもん、ここが限界っス
『距離適性の都合じゃ仕方ないか』
俺がそう言って笑い声をこぼすと、ラインクラフトちゃんも笑いながら続けた。
── サンジェニュインくん、これからもっと、置いてかれることが増えると思うんスけど
想像して、胸が痛む。
“ 虹の橋は、いつかみんな渡るもの ”
ラインクラフトちゃんもシーザリオちゃんも、カネヒキリくんだってそう俺に言った。
そういうものだから、と。
その通りだ。
死は平等にやってくる。
それでも、置いて逝かれたくない、置いて逝きたくない。
それに気づいたのか、ラインクラフトちゃんが「大丈夫」と続けた。
── みんな、遺していくから。大きな宝物を遺して、そこで寄り添っているから
俺の馬体に掛かる赤い手綱が視界に入った。
これが、ラインクラフトちゃんが俺に遺すもの。
── それに心配しないで、虹の向こう側もきっと良いところっスよ
『そうかなあ』
── そうっスよ、だって
ラインクラフトちゃんの言葉が遠くなる。
霞んでいく。
その最期の音に耳を澄ませて、俺は笑った。
── だって、誰も向こうから帰ってこないんだから!
そうだと良い。
満ち足りた世界だと良い。
とても住み心地が良いから、みんな帰ってこない。
虹の向こう側はきっと、良いところ。
俺のトモに、パシン、とひとつ、鞭が入った。
「── いけるか、サンジェ!」
おうよ!
「ノットナウケイトが飛び出して差を縮めに掛かるが残り200メートル!もうサンジェニュインの独走だ!広げた9馬身リード!もう無理か、ここから追うのはさすがに無理か!まだ差が広がるぞ残り100メートル!10馬身、11馬身、そして最後は12馬身!ッサンジェニュイン!サンジェニュイン圧勝のゴールイン!夏のヨーク競馬場に、菊と桜が咲き乱れる──ッ!」
騒々しくなる世界に身を預ける。
叩きつけるような大歓声を浴びて、俺は思う。
── では俺は、何を遺せるのだろうか?
テキよりも、目黒さんよりも、芝木くんよりも、イサノちゃんよりも。
先に逝くだろう俺は、彼等にどんな宝物を遺して逝けるだろう。
優勝トロフィー?
ゼッケン?
蹄鉄?
白毛初、という称号?
はたまた鬣の一部?
それとも、最高の馬を育てた達成感?
最後のは希望込みだけど。
ラインクラフトちゃんの赤い手綱が目に入って、そう言えばもうひとつ、と思い至る。
彼女が夢として語ったもの。
俺が、もっとも濃く遺せるもの。
あるひとつの絆の形。
── 仔、を遺す。
俺の血を継いだ仔を。
白くなくていい、鹿毛だろうが栗毛だろうが青毛だろうがなんでもいい。
俺の血を持って生きる仔。
この世のあらゆるものよりも強い、血という絆。
2021年9月20日 中山競馬場 2歳新馬戦 芝右回り2000メートル
「後方から大外一気にまくってあがってきたのはピンクの帽子11番!ぐんぐん上がってこれはどうなる残り200メートルで抜けた抜けた!見事な末脚!鞍上の福沢、巧みなコース取りでゴールへと導きました!」
後に桜花賞を制することになる、この2歳牝馬の名を、ライングッドデイ。
父は凱旋門賞馬・サンジェニュイン。
母は中央3勝、重賞未勝利ながらも、母系は社来グループ伝統の牝系でもあるファンシミン系に属するハニーハント。
サンデーサイレンスの2×3という濃いインブリードを持つこの牝馬が、近い将来ファンシミン系の名を広く知らしめることになるとは、この時、誰も想像していなかった。
次回、ウマ娘回!ススズとスペとデジタルとロイヤルターフ!
ハニーハントさんは実在の馬です。
よかったら調べてみてください。
まえがきにもあります通り、今回、素敵なイラストを描いていただけたのでご紹介させてください。
イラストを描いてくださった方:ぴょー様
最高のイラストをサンクスサンクス!!!!
とても可愛い(語彙力)
これがポンコツなんだからたまんねえよな!
https://img.syosetu.org/img/user/272009/85802.jpeg
なんとフードバージョンもあるとのこと!ヒュウ!
https://img.syosetu.org/img/user/272009/85803.jpeg
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side:ウマ娘 ー Ep.10
記念すべき60話目がコレです。
2万文字超えたので分割しました。
アグネスデジタルさんのオリトレ目線とアグネスデジタルさん目線があります。
最後だけちょろっとサンジェニュイン目線。
「そ、そんな……そんなの嘘ですよね、トレーナーさん……ッ!」
俺の肩をつかんで揺さぶる担当ウマ娘── アグネスデジタルに、俺は力なく首を横に振った。
「残念な話だがなデジタル……お前が出る予定の同人イベントとロイヤルカップの開催日が同日になった」
「嘘だ──ッ!!!!」
形容しがたい声で泣き叫び、床を転がるアグネスデジタルの姿には、とてもじゃないが「勇者」の面影はない。
時々オットセイのような濁音を漏らしながら、信じたくない、と呟く彼女にため息を吐いた。
俺はどこにでもいる平凡なトレーナーだったが、この自称・どこにでもいる平凡なウマ娘こと、戦場を選ばないスーパーウマ娘・アグネスデジタルの担当になってからは、それはもう忙しない日々を過ごしていた。
俺を「同じ業を背負いし同志」や「
好きすぎるあまり、芝かダートか選べずに悩み続け、スカウトも受けずデビューも先延ばし。
挙句に「中途半端になるくらいなら走らないほうがいい」とまで言い出すので、それはもったいない、と思って追いかけ回し── もとい、なんとか説得して、オールラウンダーとしての道を歩き始めたばかりだ。
夏はジャパンダートダービーを制して、続く9月のユニコーンステークスを目指して練習に励む毎日。
だが8月は推し活、デジタル曰く「ウマ娘ちゃんオールジャンル同人イベント」と、それから「ワールドロイヤルカップ」と呼ばれる新設レースを観戦するために、休みを増やしていた。
このワールドロイヤルカップは2つの国で開催される。
最初に開催されるのは、アメリカのチャーチルダウンズレース場のダート2000メートルで行われるワールドロイヤルダート。
その翌日にイギリスで開催されるのは、アスコットレース場の芝2400メートルで行われるワールドロイヤルターフ。
このどちらのレースにも、日本のウマ娘が出走する。
「うぅ……あ、あの『ウマドル』様がアメリカに……!それだけじゃなくて、ッヒョ、おにゃ、同じレースに『雷神』様までえ……!?それって、新旧ダートクイーン対決、ってコト……!?かーッ!見るしかないじゃないですか!?」
「う、うん、そうだな」
「ロイヤルターフなんて3人で……へへへ……3人……スペちゃんが憧れの先輩と共に挑む大舞台ってその時点でだいぶ尊みマックスでもう胸いっぱいになるんですけどそれだけじゃなくてコレその憧れの先輩にとっては長い距離でまさに適性外にすら果敢に挑むという闘志がッハァもうしゅき……ッ!それにもう1人は──ウッ、胸が……!?」
「水を飲めデジタル」
渡した水をごくごくと飲むデジタルを横目に、俺は小さく頷いた。
楽しみにしているのは十二分に伝わった。
俺はデジタルのイキイキとしたところを見て、このウマ娘を担当したいなと思ったワケなので、こうして元気な姿が見れるのはいいことだ。
……たまに外で発狂する癖をどうにかしてほしいとは思うが。
「それで、だ。本題なんだが、同日開催のためデジタルにはどちらかを諦めて貰う必要があるんだ」
そもそも7月末時点では開催日は同日ではなかった。
だが推し活── ウマ娘ちゃんオールジャンル同人イベントが会場の都合により1週間の延期となった結果、ロイヤルカップの開催期間と同日になってしまったのだ。
どちらも楽しみにしていたデジタルには酷なことだが、彼女の身体が1つしかない以上、両方とも参加するわけにはいかない。
床に転がったまま頭を抱えるデジタルを見て、俺は開催日が変更された時から考えていたある事を伝えた。
「デジタル。ロイヤルカップを見に行け」
「うぐぅ……でもそうしたらウマ娘ちゃんの尊い同人誌が……!神絵師が懇切丁寧に描いた麗しのウマ娘ちゃんイラスト……会場限定のきゃわわなグッズ……あたしが徹夜したオールジャンルワイワイ本が~~……!」
「トレーニングの間も頑張って書いていたもんな、出せなかったら悔しいよな。だが大丈夫だ、俺に考えがある」
「はえ……?考え?」
もともとウマ娘ちゃんオールジャンル同人イベントには俺も同行する予定だった。
なので、デジタルが買う予定の本やグッズのリストも共有している。
イベントに参加するのもコレが初ではないし、何度か売り子という形でスペースというところに立ったこともある。
「イベントの方は俺が買い子と売り子をやるから、デジタルはロイヤルカップを見に行け」
「エッそれは!いくらトレーナーさんがウマ娘ちゃん好きトレーナーと言えど、同人イベント経験は毛が生えた程度……か、かなりディープなジャンルなんですよう!?」
「大丈夫だ。……たぶん」
「エッ心配なんですけど!?」
同人界隈とやらのマナーはネットを駆使してある程度は頭に入れた。
デジタルと何度かイベント会場に通ううちに空気もつかめた。
彼女ほどスムーズにはやれないかもしれないが、俺にできることもあるはずだ。
「いいか、デジタル。レースもイベントも一期一会なのは同じだが、今回のロイヤルカップは別格だ」
俺の言葉に、頭を抱えて床に転がっていたデジタルが姿勢を正した。
先にデジタルが言った通り、今回のロイヤルカップには、ダートにウマドル様ことスマートファルコン、そして雷神様ことカネヒキリが出走し、ターフにはスペシャルウィークと、彼女と同チームのサイレンススズカ、そして── サンジェニュインが出走する。
「スマートファルコンは国内では知らぬ者は存在しないレベルのダートのスーパーウマ娘、カネヒキリはドバイワールドカップ、BCクラシックを制し、海外ダートの頂点にも立った経験がある、こちらも伝説的なウマ娘だ。アメリカ三冠ウマ娘のセントクリアートらも出走するというから、まさに世界ダートウマ娘の頂上決戦と言っても過言ではない」
デジタルがうんうんと頷く。
全世界のキラキラしたパワフルなウマ娘ちゃんたちが青春の熱い汗をほとばしらせながら疾駆する最高のレースを見れると思うだけでご飯3杯いけます、と小声で続けるデジタルに、来年はお前も出るんだぞ、と思いつつ口を開いた。
「ロイヤルターフに出走するスペシャルウィークは日本ダービー、ジャパンカップの覇者。ジャパンロイヤルターフこそサンジェニュインに敗れてはいるが、人気薄の中であれほど好走できる例はなかなか無い。サイレンススズカは「最速の機能美」と称えられ、2月のアメリカロイヤルターフでは4番人気でありながら逃げ切り勝ちを収めている優秀なウマ娘だ。……サンジェニュインに関してはもう言うことがないな。凱旋門賞を2度制した、文字通り我が国の太陽だろう」
その光の強さのあまり、どれほどのウマ娘を焼き焦がした知れないほど、圧倒的な。
デジタルはひときわ強く頷いて、頬を赤く染め、早口で捲し立てた。
「その美しさたるや天上の天使さえウフフッとなってしまうほどの素晴らしさ……!美の女神も嫉妬を通り越してメロメロ~!立てば晴天、座れば陽だまり、走る姿は太陽王!圧倒的美貌で見る者すべてを虜にしてしまう魅惑のウマ娘ちゃ──いや様!ウマ娘様!恐れ多くて同人誌のネタにすらできなかった……エモを詰め込んだ存在なのに……!」
ネタにできなかったというか、デジタルの場合はネタにしようとして妄想だけで気絶してしまうからでは、と思ったが、話が逸れそうなので言わないことにする。
ごほん、とわざとらしく咳き込み、俺は話を続けた。
「サンジェニュインとサイレンススズカと言えば、逃げウマ娘。どちらが最速なのか度々話題にもなっていた。これまで公式レースで2人が対戦した記録がないのもあって、今レースを逃したらまた次いつ見られるか……だからデジタル、お前はロイヤルカップを見に行け」
未だ悩ましそうな顔をしつつも、デジタルは覚悟を決めたように強く、強く頷いた。
「……わかりました。同志たるトレーナーさんがイベントに出てくれるほど、安心できるものはありませんッ!当日はトレセン内のライブビューイング会場でペンライトを握っているので何かあれば──」
「ああそれだが、コレ」
そう言ってジャケットの内ポケットから2枚のチケットを取り出した。
それを見たデジタルの目が丸くなっていくのを見ながら、口を開く。
「その、なんだ、デジタルはここまで本当に頑張ってきたからな。ジャパンダートダービーのお祝いも兼ねてプレゼントだ」
小刻みに震える彼女を立ち上がらせ、チケットを握らせる。
少し照れ臭いが、デジタルが芝とダートの二刀流でここまで頑張って走ってきたのは本当のことだ。
俺は彼女とは違ってただの凡人だが、だからこそできることはなんだってしてやりたい。
トレーニングはもちろん、推し活のサポートをするのも、メンタル面を支えるトレーナーとして当然の役割だと思ってるから。
「オ゛……ア……ッ!?トレーナーさん、これは……!?」
「イギリス行きのチケットと── アスコットレース場のウマ娘専用ライブビューイング会場、のS席チケットだ。ロイヤルダートも同じチケットで見ることができるぞ。あと限定グッズとの引換券にもなっているから、それを忘れないように。あ、ついでに泊まるホテルの部屋も手配しておいた。昨年のキングジョージでサンジェニュインが泊まったと言われている部屋だな。現地で、生?推し活、あ、いや、聖地巡礼?を楽しんでくれ!……デジタル?」
チケットを見つめていたデジタルが大きく震えたかと思うと、そのまま床に崩れ落ちた。
「ミ゜」
興奮あまり気絶したようだ。
俺は鼻血を出して倒れたデジタルを抱え、保健室へと急いだ。
あたしはどこにでもいる平凡なオールラウンダーウマ娘、アグネスデジタル。
スーパーウルトラスゴスゴトレーナーさんと二人三脚で推し活をしている。
夏レースならではのほとばしる情熱に身を委ねるウマ娘ちゃんたちの尊さで浄化されながら、せっせと徳を積んでいたのももう遙か昔、もとい2日前。
あたしはトレーナーさんという最高の同志から、これまた最高のプレゼントを貰ってここ、イギリスに来ていた。
「はぁ~~ッ!さい、っこう!」
アスコットレース場にあるウマ娘専用ライブビューイング会場からの帰宅道。
あたしの頭の中は、ダートを力強く蹴り進む尊いウマ娘ちゃんたちの姿でいっぱい。
胸の前で手を組み、あの感動を頭の中で再生した。
「あのままファル子さんがちぎって行くかと思ったら、後方からカネヒキリさんの豪快な追い上げ!もうあれはまくりっていうか全員ねじ伏せられたって感じで、こう、これぞ雷鳴!っていう……語彙力溶ける~~!最後に交わされたファル子さんの決死の表情に、これまで積み重ねた努力とか、カネヒキリさんの背中を睨みつけてるところなんてファル子さんが抱く……つまり、あの……そういうことですよねぇ……!?」
ぐぅ……一緒のレースに出るのは恐れ多いけど、でも、でも!
同じレースに出れたらあの、あの最高の瞬間を間近で見ることが……!?
ファル子さんのパワフルでありながら同時に軽快さも感じるあの逃げ脚と、カネヒキリさんの静かに
アグネスデジタル、いっきまーす!!!!
「って、ダメダメ!あたしが尊いウマ娘ちゃんの間に挟まるなんて……!」
興奮のあまり禁断の妄想をするところでした……!
落ち着け、あたし、落ち着け。
ふぅ、と息を吐いて、レース後の、同人誌も真っ青な光景を思い出しながら歩く。
「ファル子さんがアメリカのファンにもキラッキラのウマドルスマイルでファンサしてたの女神……!一瞬のくやしさを押し隠して、魂のコールを飛ばしたファンたちに向けるあの、わかりますよねトレーナーさ、いやトレーナーさんいないんだった。あの慈愛と感謝を込めた「ありがとう」の言葉……泣いた……これからも推します!それからカネヒキリさんの、あれ幻覚じゃないよね?本当にやってたよね投げキッス!?エッしてたよね!?同人誌の読みすぎでもう現実がわからない……でもやってた、やってたはずチュッ!て、ヴァーミリアンさんが持ってたスマホに向けて……ん?」
スマホに向けてってことはファン向けじゃなくてもしかしてそのスマホの向こうにサン──!?
気づいたら病院で手当てを受けていました。
どうやら鼻血を出して気絶していたところを運ばれた模様。
運んでくれたらしい親切で優しいウマ娘ちゃんたちを女神と奉って信者として生きていきます。
滞在先のホテルまで送っていこうか、と極上の優しさを差し出されたけど、そこまで迷惑になるのは……!
いっぱい頭を下げ、彼女たちに見送られて再び帰宅道についた。
ホテルまで無事にたどり着くために、ロイヤルダートの記憶を封じ、淡々と道を行こうと決意するも、右を見ても左を見ても、誇らしげな顔で歩くイギリスウマ娘ちゃんだらけの楽園……ッ!
しなやかな四肢、均整の取れた肉体、まさに走るために鍛え上げてきた者のみが持つ闘志の輝きが、ウッ!目と心に沁みる……!
このままだと尊みで魂ごと浄化されそうなので、途中から駆け足でホテルを目指した。
たどり着いたホテルは豪華絢爛。
場違いでは?と思いつつ、トレーナーさんから渡されたチケットを受付で見せると、目の前のスタッフさんよりもさらに上の立場っぽいスタッフさんに案内され、キラキラのエレベーターに乗ってようやく部屋にたどり着いた。
すれ違うウマ娘ちゃんたちのキラキラ度が3倍くらい上がったような気がして、心のシャッターを押しまくる。
視線が合ったウマ娘ちゃんがニコッと笑いかけてくれてあたしは……!
もうこの時点で最高がすぎる……ありがとう……健やかに生きて通りすがりのウマ娘ちゃん……!
荷物をベッド脇に置いて、ぱふん、と寝転がる。
最高の1日だった。
楽しみにしていたイベントとロイヤルカップの開催日が被った時は、もうこの世の終わり、天使も地に落ちて蔓延るのは悪魔ばかり、と絶望したけど、神は、ッいやトレーナーさんは私を見放さなかった……!
イベントで売り子と買い子を熟してくれるだけじゃなくて、まさかイギリス行きのチケットとホテルの手配、それにライブビューイング会場の席まで取ってくれるなんて~~!
し、しかも、ただの席じゃなくてS席!
スペシャルな席で堪能したロイヤルダートのすばらしさは帰国後すぐにトレーナーさんと共有しなくては!
……そういえばS席って裏ではウン十万円するとかっていう噂だったのにどうやって手にいれたのか……トレーナーさんの事だから違法な手段は取ってないだろうけど。
ホテルだってコレ、あの、スウィートルームですよねぇ……!?
あのサンジェニュイン様がイギリス遠征中に1ヶ月も泊まったと噂の!
「つまり、あのソファも、あのテーブルも、ハッ!?こ、このベッドもサンジェニュイン様が、使った……!?」
おねむなサンジェニュイン様がここで寝転がり、すやすやと眠り、そのまろい頬がこの枕に──!?
想像しただけで意識が飛びそうになったのを耐える。
「トレーナーさん、よく自分のこと凡人だなんて言うけど、あたしの推し活に文句なく付き合ってくれるし、あたしの意思を尊重してトレーニングメニューやレースを決めてくれるし……そ、そんじょそこらのスパダリも真っ青なことしてる!」
前に、なんでこんなに良くしてくれるんですか、って聞いたら、あたしがイキイキしているところを見るのが面白いから、なんて言ってくれたけど、それだけでこんなに良くしてくれるトレーナーさんは早々いない。
何か恩返しがしたいけど、あたしがトレーナーさんにできる恩返しは、レースで精一杯走ることと、トレーナーさんの推しウマ娘ちゃんを一緒に応援することだけ!
……そう言えばトレーナーさんの推しってどのウマ娘ちゃんだろう、聞いたことなかったな。
次の推し活の時にでも聞いてみよう!
「失礼します、お夕食をお持ちしました」
「アッハイ……はえ……?夕食……?」
「はい。事前に夕食はお部屋でお召し上がりになるとお伺いしています。窓際のテーブルに並べるようご指示を頂いていますが、ご変更されますか?」
「ヒョ……イエ……そのままで……ハイ……」
金髪のスタッフさんから流暢な日本語が飛び出して動揺したけど、ここはサンジェニュイン様もお泊まりになるような高級ホテル。
しかも部屋はスウィートルーム。
そりゃあスタッフさんたちも多言語に対応できるようなハイスペックな人たちばかり、ということですね!
……トレーナーさん、こんなすごいホテルのスウィートルームを取ったトレーナーさんはやっぱり凡人じゃないですよ!?
帰国したら凡人の定義について話し合わなきゃ……!
「それではこれにて失礼いたします。何か御用があればこちらのボタンをご利用ください。いつでもお伺いします」
「アッハイ!ありがとうございます……!」
スタッフさんが退室したのを見て、あたしは窓際のテーブルに近寄った。
レストランだと英語を話さないといけないし、部屋で夕食を食べられるようにしてくれたのはトレーナーさんの配慮なんだろうな、と思っていた、まさにその時でした。
窓の向こう側に広がる楽園を目にしたのは……!
「あ、あ、あああれはスペちゃ……!?ッその隣に居るのはまさか、エッウソ!そんな……スペちゃんの憧れの先輩こと、さ、さい、ささサイレンススズカさん……!?」
あたしの目に飛び込んできた、栗色の髪を風に遊ばせる可憐なウマ娘ちゃんの姿。
そしてそのウマ娘ちゃんに乱れた髪を直して貰って、照れ臭そうに笑う純情ウマ娘ちゃ──ッ!!!!
……ハッ!
一瞬だけ意識が飛んでしまった……なんてもったいないことを!
さっきのは幻覚じゃないよね、現実だよね、と窓から身を乗り出すと、そこには確かに2人のウマ娘ちゃんが楽園を築いていた。
「現実だった~~!うそ~~!こんな突然の供給ある!?ありがとうございます女神様ウマ娘様トレーナー様!」
ホテルの裏側にウマ娘用のトレーニングコースがあるとは事前に聞いていたけど、まさかあたしの部屋からそれが一望できるなんて……!
部屋から飛び出し、絢爛豪華な階段を駆け下りる。
あの場所からでは聞こえない、ウマ娘ちゃんたちの尊い声が!
コースが見えたところで近くの草木に滑り込んで身を隠す。
あたしはウマ娘ちゃんたちの会話が聞きたいだけであって、間に入りたいわけではないので!
ピン、と耳をアンテナのように立てて、少し遠くにいる2人の会話に集中する。
お願いじょうの──あたしの耳!あんたがここで会話を聞き取れなかったら、あたしはどうなっちゃうの?
まだライフは残ってる!
ここを耐えれば、尊いウマ娘ちゃんたちのキャッキャウフフが聞こえるんだから!
次回、アグネスデジタル、死す!
な~んて──
「スペちゃんと同じレースに出走できるなんて、嬉しい」
「私も!スズカさんと同じレースに出れるなんて思っても見なかったです。それも、こんな大舞台で……!」
「……ふふ、私はいつか、走れると思っていたわ」
「スズカさん……!」
聞こえますか、トレーナーさん。
遺言です。
ウマ娘ちゃんは尊い。
「あれっ、先輩、あそこに誰か倒れてませんか?」
「ん?……ほんとだ」
翌日にワールドロイヤルターフを控え、オレ── サンジェニュインは、サポートとして一緒に渡英したラインクラフトちゃんやシーザリオちゃん、オルフェーヴルと共に最終調整を行っていた。
アメリカで行われるワールドロイヤルダートにカネヒキリくんが出走するため、そちらのサポートにはヴァーミリアンとディープインパクトが付いている。
最初はディープインパクトもイギリスに来る予定だったのだが、ヴァーミリアンに引き摺られて向こうについていった。
あちらは今日がレースの日で、オレたちは専用の部屋で生中継されていたレースを観戦。
共に出走したスマートファルコンちゃんのスタートダッシュが上手く、途中で11馬身差近くついた時はさすがのカネヒキリくんでも追いつけないんじゃないか、なんて思ったが、最後の2ハロンで猛烈な追い上げを見せて差し切り勝ち。
カネヒキリくんは見事、ロイヤルダートの王冠を手に入れた。
ヴァーミリアンが向けたスマホに投げキッスを贈るほど、勝てたことが嬉しかったらしい。
普段はあまりみない、カネヒキリくんのはしゃいだ顔にオレもニッコリだ。
オレも明日のレースで勝てたらやろ~!って言ったらラインクラフトちゃんに頬を抓られた。
どうしてえ!?
……思い出したらなんか頬が痛くなってきたな。
思いっきりやりすぎだよお、と頬をさすりながら、明日のレースに思いを馳せた。
ワールドロイヤルターフが開催されるイギリス・アスコットレース場の馬場はオレの得意な洋芝。
何度も走ったコースっていうのもあって、勝つ自信もやる気も人一倍あるが、レースに絶対など存在しない。
なにより明日のレースには、スペちゃんだけじゃなく── あのススズもいるのだから。
すべてのウマ娘が油断ならない相手ではあるが、模擬レースを除けば1度も対戦したことがないススズは、同じ逃げウマ娘ということもあって意識せざるを得ない。
もちろん意識すべき相手はススズだけじゃないから、誰が相手でも、どんな展開になっても勝ち筋を見失わないよう、最後の一瞬まで努力を重ね、一切の油断を棄てて挑む必要がある。
今回も追い切りメニューを順調に熟し、何故かオレよりも疲れ果てていたオルフェーヴルを引き摺って、夜風の気持ち良い外を熱覚まし代わりに歩いていた。
その道中に、オルフェーヴルが指さした行き倒れたウマ娘がいた。
「あのう、大丈夫ですかー?」
オルフェーヴルが地面に膝をつき、ウマ娘を軽く揺する。
だが反応がなく、困り顔のオルフェーヴルがオレの方を振り向いた。
「気絶してるっていうか、半分寝てる感じなんですけど、どうしましょうか」
「このままほっとくわけにもいかないからなあ。ここにいるってことは、すぐそこのホテルに滞在してんだろ。あそこ、オレも何回か使ったことあるし、支配人とは顔見知りだから連れてくか。……うん、オレが運ぶわ」
ちらりとオルフェーヴルを見て頷いた。
彼女ではこのウマ娘を運べないだろう、体格的に。
「いえいえっ!先輩に運ばせるわけには……!」
「でもオレの方がでかいからなあ。途中で落としちゃってもアレだし、オルフェーヴルは10月に菊花賞が控えているだろ?ここで怪我したらシャレにならないぞ、せっかく三冠まであと1つなんだから」
オレがそう言うと、いや先輩も明日レースじゃないですか、と小声で反論されたが、それを無視してウマ娘を抱き上げた。
その拍子に、ウマ娘の顔を隠していた髪の毛が横にズレて、その顔があらわになる。
ウマ娘って種族はどの子も美少女なのだが、現れた顔はアグネスデジタルによく似ていてびっくり。
うわあデジたんそっくり~~!このリボンとかもよく似てて──
「いや本人だな!?」
「うわびっくりした!!先輩どうしたんですか急に」
「あっごめん……」
アイエエ!?デジたん!?デジたんナンデエエ!?
ここにデジたんがいるなんて、もしかして明日のレースに出るのか!?
……いや、日本から出るのはオレとスペちゃんとススズだけって聞いてるから、別のレースだろうか。
それとも、スペちゃんたちの応援とか?
前々世でヒトだった頃のオレがプレイしていたアプリ版ウマ娘には、記憶が正しければ彼女はまだ未実装だった。
だからデジたんまわりの関係性はあまり知らないのだが、スペちゃんやススズと仲の良いウマ娘なのかもしれない。
そもそもオレが彼女のことで知っているのは、ものすごくウマ娘が好きで、アプリ版のホーム画面でウララちゃんにメロメロになっていたくらいだからな。
でもこんなところで倒れてるなんて……レースのために来てるなら彼女のトレーナーがいるはずだが。
何故か幸せそうな表情を浮かべているから、事件性はなさそうだけど。
……一応、あとで彼女のトレーナーにも伝えておくか。
そう1人で決断し、もう1度腕に力を入れて彼女を抱えなおした。
うん、軽い。
ウマ娘ってみんな軽くないか?
前にラインクラフトちゃんやカネヒキリくん抱えたときも軽かったなあ。
まあ単純にオレがでかくてパワーSSレベルって言うのもあるけど!
「ほらオルフェーヴル、行くぞ」
「あ、ハイ!」
まだブツブツと言っているオルフェーヴルを急かしてホテルを目指す。
レース中の荒ぶりが嘘のようにおとなしい彼女は、つい3か月ほど前に日本ダービーを制して二冠を達成したばかりだ。
このウマ娘ワールドでは妹分となっているサンサンドリーマーとサニーメロンソーダ、ハッピーミークが蹴散らされた時は複雑な気持ちにもなったけど、オルフェーヴルの努力も知っているから、純粋にうれしい。
次の菊花賞を獲れば、彼女はブライアン先輩以来の三冠ウマ娘になる。
オレもディープインパクトも成し遂げられなかった偉業を達成するチャンスがあるのだ。
……それが楽しみやら、懐かしいやら。
「うぅ……ん」
「お」
腕の中でデジたんが身動ぎをする。
ゆったりと開いた目はまだ眠そうに見えた。
キョロキョロと辺りを見回すその視線がオレを捉える前に、緩んだ表情を引き締める。
オレはお嬢様、お嬢様、冷酷無慈悲なお嬢様……ってこの設定、やっぱりヴァーミリアンの性癖はやばいな!
「ここ、は……あれ、あたし……」
「あら、目が覚めて?」
「……ふぁ?」
冷徹な表情をどうにか作って、そのピンクっぽい瞳を覗き込んだ。
まだ覚醒しきっていない瞳が、オレの姿を捉えてじわじわと見開かれていく。
あ、近すぎたか?とオレが顔を遠ざけようとすると、デジたんが小さく呟いた。
「夢かあ」
「いや現実だが……っぉほん、現実でしてよ」
オレがそう言うと、デジたんはオレの頬に手を伸ばしてうっとりとした表情を見せた。
ちょっ、オルフェーヴル!ステイ、待て待て!落としましょうとか言うな!
「いやあ夢ですよ……夢じゃないとおかしいです、あのサンジェニュイン様のお顔がこんなに近くに……ッ!……近くに?近く……」
「あ」
ふしゅう、とまるで風船から空気が抜けるような音がしたかと思えば、デジたんはまた気絶した。
次回もウマ娘回!ロイヤルターフ本戦!うまぴょいうまぴょい
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side:ウマ娘 ー Ep.11【挿絵有】
3万文字になったので分割しました(白目)
あともう1話ウマ娘回が続きます
それと明日の更新ですが2話分やります
今回もありがたいことにイラストを頂いたのであとがきで紹介させていただいてます!
「もしもし、デジタル?……ああ、起きているな、おはよう。……ん?ああ、こちらは今し方イベントが終わったところだ。本はすべて売り、失礼、頒布し終えた。買い物リストもすべて……1点だけ、リストには無かったがお前の推し?てる作家が無配ペーパーとシークレット本というのを出していたから── うん、買った。差し入れもすべてした」
時刻は16時。
2日間に及ぶウマ娘ちゃんオールジャンル同人イベントを無事に終え、買った作品、いわゆる戦利品をトレーナー寮宛てに送り、俺は会場を後にした。
時差8時間のイギリスでは、今が朝の8時ごろ。
予め決めていた通り、デジタルにモーニングコールをすべく電話した。
まだ微睡みの中に脚を突っ込んでいるような声も、徐々に覚醒して今は元気いっぱい。
向こうで1人きりのため少し心配したが、日本各地を聖地巡礼の為に1人で駆け回っていたデジタルなので、余計な心配だったようだ。
「身体は大事ないか?……うん、うん、そうか、それは親切なウマ娘に助けて貰えたな。念のため後で病院の名前を教えてくれ、うん。……そうか、ロイヤルダートがすごかったか、うん、わかった、その話は帰国してから聞こう、うん」
興奮したようにロイヤルダートの話を始めようとしたデジタルを遮り、今日の予定を聞く。
「ロイヤルターフは15時だったな。それまで暇だろう、近くにウマ娘の歴史資料館があるから、ホテルのスタッフに声を掛ければ案内して貰えるぞ?……至れり尽くせりで怖い?何を言っているんだデジタル、それが高級ホテルの長所……1人きりが良いのはわかるが、せめて会場まではタクシーで行くように。手配しておくから。うん、わかったわかった、帰国したらいくらでも話を聞こう。ああ、道中も観戦中も帰宅中も気をつけて」
イギリスに1人だけで送り出すのは迷いもしたが、これも良い経験になると思って決めた。
だが、当然不安はある。
これぞと決めた担当ウマ娘のことだ、多少過保護なくらいが丁度良いものだと先輩トレーナーからも助言されたため、宿泊先には殊更、念を入れて選定した。
それに新人トレーナーの身とはいえ、そんじょそこらの安宿にウマ娘を1人で放り込むほど、俺は甲斐性無しのトレーナーではない。
持ちうるコネクションをフルに活用し、デジタルの安全なイギリスでの宿を手に入れた。
「……丁度よく電話が来たな」
デジタルとの通話を終え、仕舞っていた携帯がブルブルと震える。
画面を開くと、着信者には今、ちょうど頭に思い浮かべていた相手の名前があった。
「はい、もしもし」
『もしもし。休暇中に電話して悪いな』
「いえ、大丈夫ですよ……
芝里先輩は、トレセン学園では知る者がいないほど有名なチーム・メテオのサブトレだ。
ウマ娘専門の医者一家の三男として、幼いころから医者になることを切望されていながら、あらゆる期待を振り切ってトレーナーを志した。
ご実家はあのメジロ家の主治医も輩出しているほどの名門だと言うから、そこから飛び出すのは簡単にできることではない。
ほぼ独学で知識を蓄え、そして最も優秀な成績でトレーナー資格を得たにも係わらず、先輩は担当ウマ娘を持つこともなくサブトレのままだった。
多くのトレーナーはその理由を知りたがっていたが、先輩がそれに答えたことはない。
ただ、思うに先輩は、あのチームに支えるべきウマ娘を見つけたのではないか、と思う。
であればハーツクライのトレーナーのように共に独立すれば良いのに、先輩1人でだって問題ないはず、と考えたこともあるが、そうしないのには何か深い事情があるのかもしれない。
野暮なことには首を突っ込まないのが賢いトレーナーの在り方だ、と俺に説いた先輩に倣い、今までソレに突っ込んだことはないのだが、そのおかげなのか先輩には可愛がられている方だと思う。
今回デジタルが滞在しているホテルを押さえることができたのも、芝里先輩あってこそだ。
『今日は早朝から悪かったな』
「早朝……ああ、サンジェニュインからの電話ですか。いえ、大丈夫です。むしろ俺の担当ウマ娘がすみません」
『いやいや、サンジェニュインが気絶させたようなものだから……』
実は今日の朝6時くらいに、見知らぬ番号から電話が掛かった。
はじめは悪戯電話かと考えたが、番号を調べるとデジタルが滞在しているホテルのナンバーだったためすぐに出たのだ。
デジタルに何かあったのかと思ったが、電話口の相手はサンジェニュイン── 日本トレセン学園が世界に誇る、最上のウマ娘だった。
冷静沈着、誇り高く知的、の前評判を踏襲するように、その声はハキハキと、そして冷ややかに聞こえた。
少し棘のようなものも感じつつ話を聞けば、ホテルの外で気絶しているデジタルを拾ってくれたのだと言う。
まずはお礼を述べ、デジタルがロイヤルカップを見に渡英しているのだと伝えると、言葉尻はずいぶんと柔らかくなった。
……もしかしなくとも、ウマ娘をロクに管理せずに放置するクズのようなトレーナーだと思われていたのだろうか。
心外だが、夜遅くにウマ娘が外で気絶しているのを見てしまえば、疑いたくなる気持ちもわからなくはない。
俺も気絶しているのがデジタルでなければ、管理しているトレーナーの無能ぶりを疑っただろう。
サンジェニュインは、デジタルを無事にホテルに届けたこと、届けきる前に意識が回復したデジタルと目があってしまい再び気絶したこと、などを教えてくれたが、最後に関してはデジタルの持病のようなものだ。
デジタルは全ウマ娘を推しと言って憚らないウマ娘だが、その中でも特にサンジェニュインを推していた。
推し活の一環として、あらゆるウマ娘の同人誌を書いているデジタルが、サンジェニュインは恐れ多くて手が出せないと言うほど。
常々、あの顔の、あの走りのここが美しいのだ、と語って止まないデジタルが、至近距離でその美しさを目の当たりにすれば気絶するのも当然。
だがそれを知らないサンジェニュインは、自分のせいで気絶させてしまったと思っているのか、最後は何度か謝られた。
「デジタルはサンジェニュインが見れた興奮で気絶したに過ぎません。サンジェニュインの所為ではないので、気にしないようお伝えください」
『……興奮で気絶?』
「ハイ。デジタルはウマ娘が好きで……なのでよくあるんです」
『……他にもいたのかそういうタイプ』
「え?」
『いや、こっちの話。……サンジェニュインにもそう伝えるが、アグネスデジタルにはサンジェニュインが運んだことを言わないでほしい。アイツ、目立つのはそんなに好きじゃ無いんだ』
「わかりました」
まあ、サンジェニュインに運ばれたなんていう事実を知ったら、デジタルはその瞬間からロイヤルターフを観戦するどころではなくなるだろうことは予想がつく。
サンジェニュインから連絡があった時点で、ホテル側にも「ホテルスタッフの手を借りて戻ってきた」という事にするよう頼んでいた。
それにしても、目立つことがそんなに好きじゃない、というのは意外だったな。
見た目もレースもド派手だから、てっきり注目されるのが好きなのだと思っていたが。
思わず口に出していたのか、芝里先輩は苦笑いを零しながらも言葉を続けた。
『みんなが思うより、本当はすごく繊細なやつでなあ、これがまた、すげえ手が掛かるんだよ』
紡ぎ出す言葉に反して、その声色が少し嬉しそうなのは聞かなかったフリをする。
手が掛かる子ほど可愛いと思える気持ちは、俺にもよくわかったからだ。
「それではこれで」
『おう、休み中に悪かったな、──』
呼ばれた名に、軽く唇を噛む。
「
『……お前も難儀なやつだよなあ』
「先輩だって似たようなものでしょう」
俺の言葉に、先輩は小さく笑った。
『だからだよ』
その声は懐かしさを帯びているようだった。
── ある哲学者は言った
“ 友情は幸福を向上させ、悲惨さを和らげ、喜びを2倍にし、悲しみを半分にする ”
つまり──
「イギリスという異国の地に戦場を移したウマ娘ちゃんに寄り添い、励まし、時には痛みを分け合い、時には喜びを重ね合う── 帯同ウマ娘ちゃんは尊いッ!!!!」
あたしはアグネスデジタル。
ホテルの外で気絶したと思ったら、ベッドで寝こけていたどこにでもいる平凡なウマ娘。
昨日はあの後、運良くホテルスタッフさんに拾って貰えたらしい。
ありがとうホテルスタッフさん、ありがとう……!
おかげで今日も元気良く、ウマ娘ちゃんたちのキラキラとした姿を見ることができる。
「くぅ~~……!同郷のウマ娘ちゃんが挑む大舞台のために自分の練習を横に置いて献身的にサポートするウマ娘ちゃんの姿はそうまるで聖母ッ!!!!今日の観戦はさながら受胎告知を
ワールドロイヤルカップの2日目、アスコットレース場で開催されるロイヤルターフは、出走するウマ娘ちゃんたちがメイントラックに現れる、レース開始10分前からその他のウマ娘の立ち入りが禁止される。
でもそれより前であれば、観客席に限って立ち入りが許可されていた。
あたしはカメラを片手に観客席に入り、これからウマ娘ちゃんたちが駆け抜けるコースを必死に撮影する。
おっとうっかり他のウマ娘ちゃんもフレームインしたけど仕方ない、ねッ!!ウマ娘ちゃんいっぱいだから、ねッ!!
「ふぅ、撮った撮った。帰国したらトレーナーさんと一緒に見よお、っと……?」
一通りの撮影を終えて退散しようとしたところで、ウマ娘ちゃんの声は聞き逃さないデジたんイヤーがピン、と立つ。
「ヒョ……ッ!?オイオイオイ、死んだわあたし」
雑踏に紛れて聞こえる涼やかなお声、健やかな言葉遣い、張り合うような脚音、間違いない……ッ!
これは──
「うおー!すっげー!」
「ちょっとウオッカ!子供みたいにはしゃがないでよ、側にいるアタシまで同類だと思われるじゃない」
「ああ!?だったら離れりゃいーだろ!?」
「あんたが迷子にならないように一緒にいてあ・げ・て・る、のよ!」
「誰も一緒にいろとは頼んでねーだろッ!」
ウオッカさんとスカーレットさんだ~~~~!!!!
えっ、いやいや、えっウソ……ここでも2人……?えっ理解が……現実なのコレ現実ですか??
ヒッ、鼻先がピタッとくっついた状態で言い合ってる~~~~!?!?
どういう心境?どういう距離感?
その間に生じるわずか数センチの差は柔らかい心の隙間、埋め切れない距離に込められた複雑な気持ちから垣間見えるお互いへの……つまり、えへへ、そういう、そういうことですかぁ……!?
「よきみがすぎるぅ……!」
「はぁ?」
「……デジタルじゃない!アンタもこっちへ来ていたの?」
「ほえ……?」
し、しまった……!
お2人の声が聞こえてとっさに伏せたものの、場所はお2人からさほど離れていない。
「なんでそんなとこで蹲ってんだよ、ほら」
「あばばば……ッ!」
ウオッカさんに手を引かれて立ち上がる。
── Oh……!手に触れてしまったYO!
自然とお2人の間に挟まれる立ち位置になってしまい、あたしは脳内で頭を抱えた。
だ、ダメダメ!
あたしが間に挟まるなんてずぇーったいダメ!
こんなのフルーツサンドのクリームの間にわさびをいれるようなモノ!
しかし逃げ場はなく、あたしはウオッカさんとスカーレットさんというキラキラなお2人に挟まれてしまった。
「デジタルも見に来てたんだな」
「ひゃい……」
「ちょっと、アンタが急に腕掴むからびっくりしてるじゃない」
「エッちが……」
「お前がでかい声だすからだろ!」
「エッちが……」
「なんですって!?」
「なんだよ!?」
ヒエエエ~~~~~ッ!!!!
かんっぜんに2人の世界ッ!!もうお互いしか眼中にないという気迫ッ!!
誰が間に入ろうとも、気になるのは相手のことだけ、ってコト……!?
ええ~~!!
ソレって、ソレってえ!!
た・ま・ら・ん……ッ!
「デジタル……?デジタル、鼻血出てるぞ!?」
「はぇ……?」
「ちょ、アンタこれ使いなさい!」
「しゅ、しゅびばぜぇん……!」
可憐なウマ娘ちゃんの前で鼻血を出してしまうなんて、アグネスデジタル、一生の不覚……ッ!
……あ、このハンカチ良い匂いがする~~!!
「もう大丈夫?デジタル」
「は、はい……すみませんでした……!」
「いいのよ。……もしかして最初から具合悪かった?」
「蹲ってたのってそのせいか!?だったら急に腕引っ張っちまって……悪かったな、デジタル」
「い、いえいえ!!全然、本当にぜんっぜん具合悪くなくて……むしろ元気いっぱいだったと言いますか、あれは興奮のあまりといいますか……!」
「興奮?」
何いっちゃってんのあたし~~!
怪訝そうな顔をする2人だったけど、ウオッカさんがピンときた顔で頷いた。
「アスコットレース場、でかくて豪華で興奮するよな!オレはわかるぜ!」
「そ、そうなんです……!こんなきれいなターフをウマ娘ちゃんたちがあらゆる覚悟の中で走り競り合い叩き合い一瞬のきらめきを残すなんて想像しただけで胸がいっぱいになって叶うなら最前列で見たいレベルでッヒャハ!」
「デジタル!?」
「なんでもないです……本当に興奮してるだけです……!」
「そ、そう。伝統と格式あるレース場、いつかアタシも走ってみたいと、ッ!?なに!?」
ワッと響きあがった歓声に、あたしたちは思わず耳を押さえた。
まだレースが始まるまで十分に時間はある。
出走するウマ娘ちゃんはまだ来ないはずなのに、なにかスペシャルイベントでもあるのだろうか。
「歓声……?向こうの入り口になんか集まってんな」
「……ねえ、アレ、白い髪って、サンジェニュインさんじゃない?」
「サンジェニュイン先輩!?……確かに、白い髪に、アッ」
人垣が少しだけ割れて、その中央にいるウマ娘ちゃんの姿が見えた。
白い髪の毛はまるで真珠のごとく光り輝き、そのつやつやと光り輝く肌は乳白色、実に優雅な脚取りで前に進むウマ娘ちゃんの頭上には天使の輪が光っているのでは……?と思ってしまうほど。
全体的に白いワンピースを風に揺らしているその姿は、スカーレットさんが言う通りサンジェニュイン様に似ていた。
でも──
「サンジェニュイン様じゃない」
「えっ?」
「サンジェニュイン様の最新の髪型は顎の下ギリギリの長さのふわふわ真珠色で、パチリとしたおめめは確かに似ていますが光の輝きが違う、それにサンジェニュイン様は白い勝負服を着こなせど耳カバーは栗色に金刺繍なので」
「く、詳しいのねデジタル」
「でもよお、顔もそっくりだぜ……?サンジェニュイン先輩じゃなかったら誰なんだ?」
少しだけ頬を赤く染めたウオッカさんの言葉に、スカーレットさんも確かに、という顔をする。
口にしないあたりが「ウオッカに同意するなんて」という若干のくやしさがにじんでいるように見えて、うふふ、ちょっとご飯3杯いけそうです!
じゅるりら、と流れそうになったよだれを拭って、あたしは頭の中に浮かんだある1人のウマ娘の名前を口にだした。
「サニーファンタスティックさん」
「さ、さにー……?」
「サニーファンタスティックって、前にトレーナーが言ってた「英国三冠ウマ娘にもっとも近いウマ娘」じゃない!?」
「……ああ!!」
そう、スカーレットさんがおっしゃる通り、サニーファンタスティックさんは英国三冠ウマ娘に最も近いお方。
そして、我が国の太陽とまで称されたサンジェニュイン様の──
「妹様」
眼前に見えるお姿にうっとりしながら、あたしは胸の前で手を合わせた。
「妹ォ!?サンジェニュイン先輩の!?」
「……シルバータイムさんもサンジェニュインさんの妹だったはず。ってことは、ウオッカ!シルバータイムさんが前に言っていた海外の親戚!」
「……そう言うことか!」
スカーレットさんやウオッカさんが所属するチーム・スピカに、シルバータイムさんが接触している情報って本当だったんだ~~!?という驚きを感じつつ、あたしは努めて冷静にふるまった。
「シルバータイムさんと言えばサンジェニュイン様の妹分の中でも特に期待値の高いウマ娘としてあまりに有名。しかしサニーファンタスティックさんはそれらを上回るのです。ウマ娘としての知名度はもちろん、その走りも姉であるサンジェニュイン様が「英国三冠を取るとしたらサニーファンタスティックが一番近い」と豪語なさるほどッ!サンジェニュイン様の慧眼は確かなものとしてファンやトレーナー陣の間では有名ですし実際に二冠ですからねそれとアメリカにいるシャイニングトップレディさんもサンジェニュイン様の妹ですが既に米国三冠を達成しておりこちらもデビュー前からサンジェニュイン様が「米国三冠を取るとしたら」として名前をあげて──」
「デジタル長い長い長い」
ハッ、しまった……!
ついついオタク特有の「早口長文」になってしまった~~!!
両手で口を押さえ、お2人の反応を伺った。
「サンジェニュイン先輩ってご姉妹が多いのね。たしか、ハッピーミーク先輩やサニーメロンソーダ先輩も妹だったはず……合ってる?デジタル」
「ご名答です!現在日本のトレセンには4名ほど妹様がご在籍中なんですねえ!」
「そうだったのか。……でも、そのサニー……ええっと」
「サニーファンタスティックよ。その人がここにいるのは、お姉さまであるサンジェニュインさんの応援のためでしょうけれど、どうしてわざわざ観覧席まで来たのかしら」
それはおそらくファンの下見でしょうけれど、と言ってもどういう意味か聞かれたら答えに詰まる~~!!
サニーファンタスティックさんは、ある界隈では非常に有名なお方。
その界隈とは何か、と言えば── シスコン界隈です。
姉であるサンジェニュイン様を猛烈に慕っているサニーファンタスティックさんは、お姉様に仇なす存在がお好きではない。
というか嫌い!
そのため、国外でお姉様がご出走される時は観覧席の下見に訪れ、害になるものを排除、げふん、退けていらっしゃるのです。
ああ、なんて美し姉妹愛……!!
「あ、戻っていった」
「なんだったのかしらね」
「さあ……アッ、やべえ、おいスカーレット、もう少しでライブビューイングの会場入りが始まるぞ!?」
慌てたように会場の大時計を指さすウオッカさん、なんてかわいらしい動き!
常にエネルギッシュで少しワイルドな動きをなさるお方ですが、ふとしたときにちいちゃく動くときがあり── 今まさに、震える手で指さすという非常にかわゆい……かわゆい!
ライブビューイング会場には何時から入場しなければならない、という決まりはないけれど、一般席は座ったもの勝ちなので早めに入るに越したことはない。
あたしは指定のS席をトレーナーさんが取ってくれたので、レースが始まるギリギリに入場すればセーフ。
ありがとうトレーナーさん!!!!
アッていうか。
……待って、待って待って待ってください。
今からお2人でライブビューイング会場に赴くということは、ライブビューイング会場の一般席が座ったもの勝ちということは、それってつまり、つまり……!
顔が向き合えばかるぅく喧嘩になってしまうお2人が、並んだだけでムスッとしてしまうお2人が、気に入らないっていがみ合うお2人が──
ウオッカさんとスカーレットさんが隣同士で座る可能性が……!?
オ゜……ア゛……ッ!!!!
「うそ、もうそんな時間!?デジタル、アンタもライブビューイング会場に行くわよね?せっかくだから一緒に行きましょう」
「ミ゜」
「行くぞデジタル!」
次に意識が戻った時にはライブビューイング会場の入り口でした。
「サンジェニュイン」
引き留める声に、サンジェニュインちゃんが振り返る。
栗色の髪の毛を揺らしたウマ娘は、サイレンススズカ。
サンジェニュインちゃんと双璧をなすという、逃げウマ娘の姿に自分はついつい視線を向けてしまった。
均整の取れたボディライン、のびやかな四肢はなるほど、自分らのトレーナーさんが要注意と言うだけのことはある。
こちらも昨年から海外レースが中心だと言うし、マスコミ各社が「逃げのライバル対決」と呼んで煽るのも無理はない。
でも、自分としてはそんなことよりも、大事なことがある。
「私、今日はあなたに勝ちに来たわ」
「……そう。よろしくってよ」
扇で口元を隠すサンジェニュインちゃんの、その口角がゆるりと上がっている。
反対側に控えていたシーザリオちゃんにもそれが見えたのか、表情は動かさずでもギュっと拳を握りしめているのが見えた。
── わかるよ、珍しいっスもんね、サンジェニュインちゃんがメテオや生徒会のウマ娘以外に反応を見せるなんて
それが好意的であるにせよ、悪意的であるにせよ、関係ない。
大事なのは、サンジェニュインちゃんが反応しているということ。
「用はそれだけかしら」
自らを守るための鎧が、サンジェニュインちゃんの口から漏れる。
その口調と見た目とが相まって「冷酷無慈悲、誇り高き女王」などと呼ばれるサンジェニュインちゃんが、実は虫取りと標本作りが趣味で、森で駆けまわるほうが好きな野生児だと言っても、誰も信じないだろう。
最も、サンジェニュインちゃんがそんな姿を見せるのは自分らの前だけっスけど。
反応をしないサイレンススズカを見て踵を返すサンジェニュインちゃんに道を譲り、その後を付いて歩き出す。
2メートルほど歩いたところで、大きな声がサンジェニュインちゃんを引き留めた。
「あのッ!サンジェニュインさん……!」
「……なにかしら」
半分だけ振り返ったサンジェニュインちゃんに、大きな流星を持つウマ娘が口を開いた。
「私、今回は、今回は、負けません……ッ!」
よく見れば、ジャパンロイヤルターフでサンジェニュインちゃんに負けたウマ娘だ。
名前は確か、スペシャルウィーク。
その友人だというハルウララとは親交があるので、彼女の話は何度か聞いたことがある。
日本ダービーとジャパンカップを制した実力は間違いないだろう。
でも相手は、サンジェニュインちゃんだ。
「……よろしくってよ」
扇が少しだけズレる。
その合間から見えただろう微笑みに、サイレンススズカとスペシャルウィークが固まるのを見て、サンジェニュインちゃんは今度こそ脚を進めた。
通路の角を曲がり、自分らしかいなくなったところで、サンジェニュインちゃんが扇を下す。
その時に浮かべていた表情の、獰猛さ。
「── まもなく、ワールドロイヤルターフが始まります。出走するウマ娘は、ゲート前に集合してください。また、未出走のウマ娘は、順次会場から移動してください」
響いたアナウンスに、自分は手を差し出した。
広げた手のひらに、サンジェニュインちゃんの扇が乗る。
今度はシーザリオちゃんが手を差し出すと、羽織っていた白いコートが手渡された。
「今日もオレは最高だ。……そうだよな?」
もちろん、いつだってサンジェニュインちゃんは最高っスよ、と。
異口同音が響いた。
「いよいよ始まりました。ワールドロイヤルカップ、ターフ部門。出走する16人のウマ娘をご紹介します」
イヤホンから流れ込んでくる音声は日本語。
アスコットレース場のウマ娘専用ライブビューイング会場では、観戦するウマ娘1人につき1個イヤホンが渡されている。
スイッチひとつで言語を変えられる優れものだ。
「いよいよ始まりましたねえ」
「……サンジェニュイン先輩、大丈夫ですかね」
「問題ないっスよ、いつも通り」
そう、
── そもそもあの
物怖じしない、緊張しない。
たったそれだけのことが、どれほど強いか。
「肉体は、完璧な精神によって錬成される」
「え?」
「……どんなに素質があろうとも、心で負けては話にならない、ってことっスよオルフェーヴルちゃん。さ、前を見て。……君が目指すすべてが、そこにある」
太陽よりも眩いと評された、サンジェニュインちゃんの白い勝負服が緑に映える。
彼女が歩んだ覇道を、今度はこの栗毛の後輩が引き継ぐのだ。
その精神を、走りを、在り方を、輝きを。
見れるうちにすべて、生で感じて貰わなくてはならない。
「── 1番、サイレンススズカ。アメリカロイヤルターフの優勝者です。現在4番人気。この評価には少し不満か。距離適性への不安視と、アメリカとの芝質の違いで人気がやや伸び悩みました。しかし安定感のあるボディメイク、仕上がりは上々です」
「得意の軽やかな走りで魅せてほしいですね」
・
・
・
「── 12番人気、7番、スペシャルウィーク。海外レースはこれが初参加。パワフルな脚質を武器に、後方からの差し込みイッキを狙います。日本ダービーやジャパンカップを制している実力の持ち主、チャンスは十分にありますよ」
「焦らず、自身のペースでレースを進めて貰いたいですね」
・
・
・
「1番人気はこの
「これ以上無い仕上がりでしょう、レースに期待大」
ファンファーレもないアスコットレース場のゲート入りは静か。
全員が黙してその時を待っているのが、ライブビューイング会場からでも解った。
自分は無意識に唾を飲み込み、その時が来るのを今か今かと待つ。
心配かって?
まさか、なにも心配していない。
あるとしたら──
「ゲート入り完了。体制整いました。──ゲートが開いて今、スタートしました!」
彼女に押しつぶされるウマ娘たちが泣きださないか、っていう心配だけ。
「ハナを奪い合うのは1番サイレンススズカ、大外からグンッと伸びてコレに並ぶのは16番サンジェニュイン。双方見事なスタートダッシュをキメました!」
「勝利の鍵は「ハナ」にあると語ったのはサイレンススズカ。宣言通り、大逃げに打って出ましたね。ただしサンジェニュインのスピードも負けていませんよ」
「互いに逃げウマ娘。スピードの頂点を競い合います。続く3番手集団を率いるのはウィジャボード、内に入ってエルメスロード、外から外からビーショットウィリー、2バ身差の位置にマッチポインター、差がなくキングリリーフ、ナイトナハトマジーク少し蛇行しているか、それを追走するのはロイヤルラスキー、半バ身差で外に持ち出しているのはスペシャルウィークこの位置です。そこから4バ身空けてペルシャビナーズが上がってくるか、最内を縫い進むマスターズランとその背後にピタリとついて上がってくるのはリッカパッカ、リッカパッカがマスターズランを抜かしてベルシャビナーズに並んできたが苦しそうだ」
「掛かっているのでしょうか、一息つけると良いですね」
「後方もつれ合う3人はバイロン、オールドパスが競り合う状態で進み、シンガリにぽつんとアイランドリリー」
サンジェニュイン先輩が並ばれてる、と声を漏らしたのはオルフェーヴルちゃん。
シーザリオちゃんも一瞬だけ心配そうな顔をしたけれど、それはすぐに消えた。
サイレンススズカとサンジェニュインちゃん。
お互いに逃げウマ娘。
序盤から競り合いになるのは日を見るよりも明らかだったから、サンジェニュインちゃんはあえて並ばれることを選んだ。
「真横にウマ娘がいるの、すっごい嫌なのにね」
しかし仕方ない。
相手はほぼ同じスピードの持ち主だから。
「スタミナ勝負ってワケですねえ」
「サンジェニュインちゃんはスタミナもパワーも並じゃないっスから」
サイレンススズカはマイルから中距離を得意とするウマ娘。
彼女には2000メートルが最適であると判断したトレーナー── 日野トレーナーの判断はおそらく間違ってはいない。
ただし、サイレンススズカは芝2400メートルのアメリカロイヤルターフで優勝している。
決して走れないわけではない。
「だからこその、スタミナとパワーの勝負」
アスコットレース場は洋芝。
日本やアメリカの芝よりも多くの力を必要とする馬場。
力がありすぎるサンジェニュインちゃんにとっては最適だが、果して、その他のウマ娘にとってはどうだろうか?
「先頭2人は悠々とアスコットの最初のコーナーを抜け、上り坂を駆けあがって── おおっとここでサンジェニュイン、サンジェニュイン前に出たッ!サイレンススズカちょっと苦しいか、上り坂でスピードが落ち気味ですがこれは大丈夫でしょうか」
「日本やアメリカよりも深い馬場ですから、通常より多く体力を消費している可能性があります。どこかのタイミングで力を溜められると良いのですが」
「3番手集団からはウィジャボード、スペシャルウィークが共に上がってくるぞ、エルメスロードは疲れが出たか、集団の後方へと下がっていきます。代わりにキングリリーフがグッと伸びてきて、それに倣うようにペルシャビナーズ、ビーショットウィリーが追走しますが先頭2人に引っ張られて、レースはかなりのハイペースを刻んでいます。後方集団はここから巻き返せるのでしょうか、気になる開きです」
「やや縦長ですね。3番手集団がいい位置にいるので、前の2人に隙ができた場合は展開が大きく変わりそうな気がします」
「もう1度先頭から見てみましょう。現在ハナを征くのはサンジェニュイン、堂々とした走りで2番手サイレンススズカに1バ身リード、さらに3バ身差の位置にウィジャボード、大外からスペシャルウィークが虎視眈々と── いやここで一気に仕掛けたスペシャルウィーク!その走りはまさに全身全霊だ!いつもより早いタイミングで前の方に来ていますが、スペシャルウィークこれは正解でしょうか」
「彼女の脚質には合っていますね。あとはここからどのくらい差を縮められるか、どれくらい力を残せるかで展開が変わります」
サンジェニュインちゃんが先頭をひた走る。
どんなに追いかけようとも遠ざかる背中に、多くのウマ娘が手を伸ばす。
その背中に、大きな翼が、きらきらと光り続けていた。
次回もウマ娘回!!!!
なので(?)明日の更新は2話あります
今回も嬉しいことにイラストを頂きました!!!!
イラストを描いてくださった方:ヨモモ様
キラキラしてるサンジェニュインかわいい~~!!若干得意げなのがいいっスねえ!!
https://img.syosetu.org/img/user/212460/85982.jpeg
イラストを描いてくださった方:ぴょー様
なんと2枚目……!前回に引き続きありがとうございます!
メッセージ頂いたときのタイトルが「カネヒキリハッピーラブラブライフ」だったのでその世界戦に紛れ込んだかと思いましたありがとうございます!!
https://img.syosetu.org/img/user/272009/85955.jpeg
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side:ウマ娘 ー Ep.12【挿絵有】
更新遅くなってすみません。
活動報告に書いた通り、盲腸で手術・入院してました。
今はただ唐揚げが食べたいです。
今回もイラストを描いて頂いたのであとがきにてご紹介させて頂いてます。
おかあちゃん、私はいま、“ すべてのウマ娘の故郷 ”── イギリス ニューマーケット・トレセン学園 に来ています。
「でっけぇ……!」
「うそ、メイントラックだけでこの大きさ……!?最先端の施設がこんなに……!?」
「お、見ろよシルバー、あの柱に登ったら良い眺めになりそうだな!」
「やめろやめろやめろォ!!ケツぶっ叩くぞ!!」
「おいおいお前ら、あんまり大声ではしゃぐなよ。……でもまあ、騒ぐのもわかるわ。さすが “ すべてのウマ娘の故郷 ” と呼ばれるだけあって、何もかもがウマ娘用に考え尽くされてる。なあ、スペ」
「はい!」
ワールドロイヤルカップの2日目、ワールドロイヤルターフに出走するため、私はチーム・スピカのみんなと渡英した。
出走当日までの調整をこんな素晴らしいところで行えるとは思っていなかったけど、シルバータイムさんのツテを頼りに、お世話になることができた。
「シルバータイム、ここを紹介してくれたのは本当に有り難いんだが、お前は大丈夫なのか?」
「……ここまで関わった以上、中途半端に終わらせるのは……それはそれで気分悪いので。それに、無断で決めたわけではありません。お姉様には事前に許可をいただきました」
そう、このニューマーケットのトレセン学園でお世話になるにあたって、シルバータイムさんが頼ったツテというのが、サンジェニュインさんご本人だった。
サンジェニュインさんには複数人の妹、正しくは妹分らしいのだけれど、それが世界各地に散らばっているのだそうで、ここニューマーケットにも、今年の英国二冠ウマ娘となった妹さんが所属しているとシルバータイムさんが教えてくれた。
「うちの一族で今、クラシック級なのはサニファ……お姉様を始めとして、米国三冠ウマ娘になったシャトーお姉様とか、あとシニア級を撥ね除けて宝塚を制したサニメロお姉様とか、国内外で6人。そのお姉様たちは基本お互いしか眼中にないですし、あたしも落ちこぼれみたいなもんなんで。サンジェニュインお姉様は妹分たち全員を気に掛けてくれるのでまあ、今回みたいに頼めば融通してくれるわけですが」
自虐的な発言を繰り返すシルバータイムさんだけど、彼女と走ったこの5ヶ月を振り返っても、彼女は決して【落ちこぼれ】などではない。
むしろメイクデビューを済ませたばかりのジュニア級でありながら、その走りはクラシック級と言っても遜色ないと思う。
走ったあとに入念に脚のマッサージをしているから、もしかしたら脚元が不安定なのかもしれないけれど。
彼女がやけに自虐的なのは、不安定な脚元との付き合いが上手くいっていないからなのかな、とぼんやりと考えていると、シルバータイムさんが先導する形でトレーナーさんたちが歩き始めたので、私もその後を追うことにした。
「ここ一棟まるまる使っていいって言われました」
「一棟まるまる!?」
「ハイ」
まず案内されたのはしばらく寝泊まりする寮。
ニューマーケットのトレセン学園は、海外レースのために長期遠征するウマ娘専用の寮、通称・国際寮というものが存在するそうで、私たちが使うのもその国際寮のひとつ。
ピカピカに磨き上げられた床はキラキラしていて、シルバータイムさん曰く大理石。
寮の床が大理石!?とウオッカちゃんやスカーレットちゃんがビックリしていた。
他にも天井には大きなシャンデリアがあったり、壁に絵画が飾られていたり、とても華やかな内装だった。
華やかなだけじゃなくて、部屋のひとつひとつが広く、ベッドは基本ダブルサイズ。
簡易的なキッチンも備え付けられていて、寮の団欒スペースには誰でも使えるドリンクサーバーがあったり、何故かコンシェルジュがいたり。
コンシェルジュなんて初めてだから、海外はどこでもそうなのかな、と思っていると、ゴールドシップさんがため息を吐きながら口を開いた。
「いやコンシェルジュはいらねえだろ」
「ここでは必要なの!ニューマーケットのウマ娘は厳しく管理されていて、休日以外は学園外に出れない決まりだから。コンシェルジュに欲しいものを言って買ってきて貰ったりすんのよ」
「マジか……例えばコーラとメントスキャンディ頼んでも買ってくれんのか?」
「うん何しようとしてんのか解ったわ、コンシェルジュには絶対にあんたの言うこと聞くなって言っとく。……脱線しちゃったけど、次はトレーニングルームね」
次に案内されたトレーニングルームは、国際寮からほど近いところにあった。
トレーニングをするためだけにこの建物は3階建てで、それぞれの階に専属のトレーナーが配属されているとシルバータイムさんは言った。
このトレーナーたちは、ウマ娘を担当する育成トレーナーとは異なり、筋トレのアドバイスとかをするためにいるらしい。
誰でも聞けば今の体重、体格に合わせた適切な筋トレメニューが貰える、と知ってウオッカちゃんの目がキラキラと輝いていた。
「ここはメイントラック。使用時間はかなり厳しく管理されているので、申請無しで使うことがないよう。向こうのコースは事前の申請なしでも順番さえ守れば使えるので」
トレーニングルームを紹介された後に向かったのはメイントラック。
他にも使用できるコースを見せて貰ったり、実際に走ってその芝感を確かめたりした。
スカーレットちゃんは日本と比べて芝が長いことが気になったみたい。
私も脚を踏み入れてから、想像していたよりも質感が違って少し驚いた。
前にエルちゃんが海外レースのために長期遠征をする、って聞いた時は「大レースに出るから」だと思っていたけど、こういった芝の違いに慣れるための期間が必要だったのかもしれない。
「まあ考えるよりは慣れろ、ですよね。明日からメイントラック使えるよう申請しておいたので、今日はひとまず休みませんか」
「だな。長旅だったし、今日のところは疲労回復に集中して、本格的な練習は明日からだ。スペもそうだが、他もしっかり休むように!じゃあ俺、ちょっとお偉いさんに挨拶してくるから。シルバータイム、ゴールドシップあとは頼んだぞ」
「おう、任せとけ!ゴルシ様が退屈しないよういろんなサプライズを企画しといたからな!」
「シップはこっちでなんとかします」
「頼む」
シルバータイムさんとトレーナーさんが固く握手する。
スカーレットちゃんが「シルバータイムさんが居て助かったわ」と口にするので、私は思わず苦笑いを浮かべた。
奇行が多い、なんて言われるゴールドシップさんだけど、シルバータイムさんがトレーニングの為にスピカに顔を見せるようになってからは、いつも嬉しそうだ。
マックイーンさんといるときも楽しそうだけど、それとはまた違う、年相応のはしゃぎ方をしているような……ゴールドシップさんが何歳かは知らないんだけどね。
じゃれ合う2人の後に続いて寮に戻る。
1人一部屋、与えられた個室はやっぱり広くて、私は少し緊張した。
壁の向こう側にはウオッカちゃんやスカーレットちゃんがいると解っていても、中央トレセン学園の2人部屋に慣れたからか、ちょっと寂しい。
渡英して早々にホームシックになるなんて、と頭を振って、持ち込んだバッグの中から写真立てを出した。
「お母ちゃん、私、頑張るからね!」
渡英直前、遠い実家から空港まで見送りに来てくれた母ちゃんは、私の手を握って「大丈夫」と言ってくれた。
その魔法の言葉がずっと胸に残って、温かい。
お母ちゃんの声を思い出していると、少しだけあった不安が薄れていくようだった。
あらかたの荷物を整理して、みんながいるだろう1階の団欒スペースに降りると、ウオッカちゃんとスカーレットちゃんが声を掛けてくれた。
2人ともすっかりくつろいでいるみたい。
私もドリンクバーから飲み物を取って戻ると、そのタイミングでウオッカちゃんが口を開いた。
「スペ先輩だけじゃなくてオレたちも使っていいなんてなー!テイオーたちもこっちに来れば良かったのに」
「そうね。寮はかなり広々としていたし、あそこ使うのはアタシたちだけなんでしょう?テイオーやマックイーンがいても問題なかったでしょうけど……仕方ないわよ、片や生徒会の、片や御実家のお誘いだもの」
スピカのみんなと渡英したとは言っても、今回はテイオーさんもマックイーンさんもいない。
2人ともワールドロイヤルカップの観戦のために渡英はしているんだけど、テイオーさんは会長さんに、マックイーンさんはメジロ家の方々にそれぞれ誘われているため、私たちとは別々に行動していた。
「テイオーたちはホテルだっけ?」
「ええ。アスコットレース場近くのホテルだそうよ。……そういえばスペ先輩、私たちもレース前日はアスコットレース場近くに移動するんですよね?」
「うん、確かそのはずだよ。ここからアスコットレース場までは2時間ちょっとみたいなんだけど、当日に渋滞に巻き込まれたら大変だから近くのホテルを押さえた、ってシルバータイムさんが言ってた」
「……シルバータイムさんが居て本当によかったですね」
スカーレットちゃんの言う通り、シルバータイムさんが居て本当に良かった。
トレーナーさんも私たちも、海外レースへの出走はこれが初めて。
もちろんトレーナーさんも尽くせる限りの手は尽くしてくれるだろうけど、シルバータイムさんが居なければ、現地での調整はそれ以上に苦労したと思う。
「でもよ、姉が出走するレースに参加する別のウマ娘を手助けする、って、シルバータイムさんとこの、太陽の一族?からすりゃ敵みたいなもんだろ?なんでこんなに良くしてくれんだろうな」
「── そりゃあ、シルバーが世話焼きで、1度関わると放っておけなくなるタイプだからだよ」
「ゴールドシップさん!」
ウオッカちゃんの真横に顔を出したゴールドシップさんは、何故かワインレッドのバスローブに身を包んでいた。
ここバスタブに薔薇が浮いてんぞ!と笑いながら、私の隣に座ったゴールドシップさんが水を一口飲む。
「アイツ、遠慮されると逆に居心地悪くなるタイプだから、申し訳ないとかヘンなこと思わずに「ありがとう」だけ言っとけ。一族のすべてを取り仕切る大お姉様に許可も貰っているって言うんだ、こっちがイロイロ考えたってしゃーないしな」
「でも、シルバータイムさん気まずくなんねえのかなって」
「ならないならない。単独でやりゃあ、まあ、2番目のお姉様には睨まれたかもしんねーけど、大お姉様がイイって言ったら大丈夫だろ」
ゴールドシップさんが言う「2番目のお姉様」は、今日話題に上がったサニファ── 英国二冠ウマ娘のサニーファンタスティックさんのことらしい。
彼女の名前を口に出した時、シルバータイムさんは少し顔をしかめていたから、もしかしたら仲はあんまりよくないのかもしれない。
……もし、今回、私を手伝ったことでさらに仲が拗れたら、と思うと申し訳ない気持ちになった。
「シルバーは何も考え無しにコッチに手を貸してるわけじゃないからな。ダービー制したスペとの並走は、シルバーにとっても得るものがあるんだよ。……だからスペも余計なことは考えず、自分が走ることだけを考えな」
そう言って私の頭を撫でたゴールドシップさんは、大人びた顔立ちもあってお姉ちゃんのようだった。
渡英した翌日からトレーニングを開始して、早1週間。
ワールドロイヤルカップの1日目がアメリカで開催される当日になって、私はスピカのみんなとアスコットレース場の近くまで移動した。
これまでの1週間は本当に大変だった。
特に洋芝に慣れるためのトレーニングは厳しいものだったけど、短期間とは言え練習できたことでだいぶ慣れてきたと思う。
走りやすさで言えばやっぱり日本の芝の方が良い。
でも重い馬場状態に耐えられるよう鍛えた脚の調子は安定していて、今回のレースへの小さな自信に繋がっていた。
「さすが世界の先鋭が揃うだけあって、誰も彼も知った顔のウマ娘ばかりだな」
うぅん、と唸り声を上げるトレーナーさんを横目に、私は1人、ホテルの外に出た。
頭の中には、ロイヤルターフ直前SPと称してテレビに映し出された、サンジェニュインさんの走り。
前年のアスコットレース場で開催されたキングジョージで、ハナを切って突き進む白い光は、ジャパンロイヤルターフで見た光に似ていた。
それを思い出すと、不思議と身体が熱くなって、前へ前へと走りたくなった。
その
8月なのに涼しい風が吹き抜けて、しばらくすると身体はいい感じに冷やされていた。
「あれ……スペちゃん?」
「え?」
呼ばれて振り返ると、そこには明るい栗色の髪を夜風に揺らしながら笑う、スズカさんが立っていた。
「スズカさん!?」
「久しぶりね、スペちゃん」
「はい!お久しぶりです!まさかスズカさんもこっちの方だったなんて」
「私は1ヶ月前からこっちにいるの。……スペちゃん、元気そうでよかったわ」
そう言って微笑むスズカさんに、少しだけ胸が痛くなる。
私は夏に入ってから、スズカさんに連絡することをやめていた。
それはレースに集中したいっていう気持ちもあったけど、それ以上に、私がスズカさんに甘えきっていると自覚したからだ。
ジャパンロイヤルターフでの敗北からしばらく、気遣うような連絡を多くくれたスズカさんの優しさに縋り、何度も何度も不安を口にした。
あの光に届かなかったこと、その眩しさが焼き付いて離れないこと、1歩進むごとに遠のいていくすべてが怖くなったこと。
スズカさんだって渡米で決して楽では無かったはずなのに、大きな時差があるなかで遅くまで話を聞き続けてくれた。
宥めてもなかなか不安を消せない私の、当てつけのような台詞を受け流して、手を離さずにいてくれたスズカさんの存在は、前を向くための多くの勇気を私にくれたのに。
敗北を飲み込めるようになったのと同時に、どれだけ負担を掛けていたのかを思い知った。
「すみません、スズカさん」
「どうして謝るの?」
「ッわたし、スズカさんに甘えて……」
「それは私も同じよ」
「……え?」
スズカさんはニコリと笑って、口を開けた。
「スペちゃん、前に私、サンジェニュインとは模擬レースでしか走ったことがない、って言ったわよね」
そう言ったスズカさんに頷くと、彼女は話を続けた。
「あの頃の私は、スペちゃんとも、チーム・スピカのみんなとも出会う前だった」
悩んでいたの。
何に悩んでいたかと言われると、難しいわね。
胸を締め付ける、もやもやとした不安感があって、わけも解らず悩んでいた。
この苦しみから抜け出したかったけど、苦しみの原因もわからないから解決のしようもなくてね。
ただ走っていたわ。
がむしゃらに、ひとりっきりで、孤独に。
そんな私を見かねたのか、トレーナーさん── 当時いたリギルのトレーナーさんがセッティングしてくれたのが、サンジェニュインとの模擬レースだった。
あの頃のサンジェニュインはメイクデビュー前でね。
それでもあの美しさと、速さの理想型と呼ばれたレースフォームから注目を浴びていた。
私はあんまりみんなの噂話には詳しくなかったから、実際に顔を合わせるまで彼女のことを知らなかったわ。
でも向こうは私を知っていたみたいで、今日が楽しみで眠れませんでした、って。
ふふ、トレーナーの小脇に抱えられての登場じゃなかったら、とてもよかったのだけれど。
……今と印象が違う?
そうでしょうね。
私からしたら、変わってしまった、という印象だけど。
メイクデビュー前の、遅くてもクラシック級に上がる前のサンジェニュインは、はつらつとしていて、よく笑う子だった。
口調も、どこか男っぽくて、そうね、スピカだとウオッカに近いかしら。
とにかく、底抜けに明るい、文字通り太陽のような子だったのよ。
だけど変わってしまった。
スペちゃんたちが知るような、みんなが噂するような「冷酷無慈悲な」姿へと。
思い出すのも痛ましい、と言いたげに、スズカさんは1度言葉を句切って、短く息を吸い込むと再び話し始めた。
「スピカのみんなと出会ってから、しばらく。……だから、サンジェニュインがシニア級になってからね」
先頭の景色とは何か。
私が本当に見たかったものは、その意味は。
スペちゃんに出会えたことで見えてきた、在りたい「私」の形を追うのに夢中になって、ふと、サンジェニュインの走りを思い出した頃には遅かったわ。
活動の場を日本から海外に移したサンジェニュインの、そのすさまじい戦歴は聞いていた。
彼女はどこへ行っても楽しそうに走っているのだろう、と思ってそのレースを見なかったことを後悔した。
だって、久々にテレビ越しで見た彼女の顔に、笑顔なんてひとつもなかったから。
もしかして、似ているだけで別のウマ娘なんじゃ無いかって何度も調べたけど、サンジェニュインで間違いないと知ったときの動揺は、今でも鮮明に思い出せる。
私の知っている彼女とは何もかもが違った。
「私が、ようやく夢の形に触れている間に、彼女は楽しみを喪ったように見えた」
勝つことを当然のように求められ、それに応えるサンジェニュイン。
レースに絶対などないのに、絶対を求められてきた彼女の強烈な輝きが、多くの人の目を眩ませているようだった。
こんな状況で、彼女が笑えないのはもう当然だと思ったの。
私だったら重くて耐えられないいろんなものを、それでも彼女は背負って走る。
自らが解き放った輝きの責任を負うように。
「ワールドロイヤルカップが開催されると知ったのは、それとほぼ同時期だったわ」
ワールドロイヤルカップの2日目、ロイヤルターフはイギリスで開催される。
イギリスはサンジェニュインの庭のようなものよ。
ロイヤルターフが王家協賛なのもあって、あちらの王族に気に入られているサンジェニュインが出走しないはずがない、と思ったの。
今の彼女は、レースにでもならなければ人前には出てこない。
チャンスがあるとしたらここだ、と思って、トレーナーさんにロイヤルターフの出走申請をお願いした。
「洋芝の2400メートルは、私にとって未知の世界」
ハッキリ言って、厳しい戦いになるとは思うわ。
私の脚が最も活かせる距離は2200メートルが最高だと自覚している。
それ以上の距離で今のパフォーマンスを保てるかと言われたら、自信を持って頷くことは難しい。
それでも挑むわ。
立ちはだかった距離の壁を乗り越える気持ちと同じくらい、このレースで私、彼女に聞きたいことがあるから。
「聞きたいこと、ですか?」
「ええ。聞きたいの。サンジェニュインに、速さは自由か── 孤独か」
私のひとりっきりの先頭に光を灯したあの子。
その光を広げてくれたスペちゃんやスピカのみんな。
今の私にとって、速さは自由で、先頭はみんなで見る景色。
だけど、笑顔ひとつ浮かべることのできないサンジェニュインにとっては?
その先頭は、その速さは、その力強さは。
サンジェニュインただひとりが抱きしめる、悲しいものなのか。
「……誰もが眩しいと言う、誰もが仕方ないと言う。彼女に負けるのは」
でもスペちゃんは言ったわね。
悔しかったって。
痛いって、追いつけなかったって、追いつきたかったって。
何度悪夢を見ても、何度苦しんでも、何度も藻掻いて、足掻いて、前へと進もうとするスペちゃんの姿に私、安心していた。
「スペちゃんが電話口で私に当てる感情のすべてに、甘えていたのよ」
私だけじゃ無かった。
サンジェニュインの光に焼かれながらも、前を目指して、彼女を諦めずに走るのは。
「取り戻したいなんて大げさなことは言わないわ。彼女と特別親しいわけじゃないから、そんなこと言う資格もないけど。……もう1度だけ見たい」
私が、スペちゃんが、彼女に追いついたとき。
彼女を追い越したとき。
その表情が変わる瞬間を、獰猛に、柔らかく、激しく、苦しく、嬉しそうに歪むところを。
「縺れ合いの末に見る先頭の景色だって悪くないと、教えたい」
「最後の直線500メートル!ここまで一気に駆け抜けて来ましたスペシャルウィーク、脚はまだ持つか!先頭争いは3人のウマ娘の叩き合い!まだ粘るぞスペシャルウィーク!内からグンッと前傾、サイレンススズカ脚色は衰えない!ハナを征くサンジェニュインの1馬身リードをじわじわと浸食して、2人のウマ娘が絶対女王を追い詰めている!逃げ切れるのかサンジェニュイン、追いすがるサイレンススズカとスペシャルウィークがここで並ぶか、ッ並んだ!並んだ!並んだ残り200メートルだ!」
目の前で光るサンジェニュインさんの白い背中と、スズカさんの明るい栗色の髪の毛が風に揺れる。
私は迫り上がってくる苦しみを堪えて、脚に目一杯の力を入れた。
頭の中には、スズカさんの言葉がぐるぐると巡る。
スズカさんはサンジェニュインさんの笑顔がみたいと言った。
本当はいつも浮かべていたのだという、笑顔を。
私の知るサンジェニュインさんは、いつも冷ややかな表情で辺りを見ていた。
何人にも心を踏み荒らされないように、警戒心の強い猫のように。
でもそれが、誰もたどり着けない先頭の寂しさからくるものだとしたら。
「ッ私にはやっぱり、わかりません……!」
あの日のスズカさんにも同じ事を言った。
私は、私だけの先頭を知らない。
いつも、揉み合いと、叩き合いと、昇る闘志の中で先頭を見てきたから。
そこには私だけじゃ無くて、エルちゃんやグラスちゃんみんながいるから。
どうあっても、ひとりっきりの先頭の孤独を理解することはできない。
でも、寂しさだけはわかる。
途方もない寂しさと、それを乗り越えたい気持ちだけはわかる!
サンジェニュインさんの眩しさを忘れた日はない。
今だって、もう夢には見なくなっても時々思い出す。
あの光に焼かれた。
あの光に痛みを与えられた。
苦しんだ、辛かった、たどり着けないもどかしさを100年分味わった。
あんな苦しいレース、もう走りたくない。
それと同じくらい、サンジェニュインさんとまた、走りたい。
あの背中を追い越した先にある、サンジェニュインさんの笑顔を、私も、見たくなったから!
「スペシャルウィーク先頭!先頭!内からサイレンススズカまた伸びて、サンジェニュイン意地の叩き合いだ!もはや意地だ、プライドだ、それだけだ──ッ!」
頭の中に流星がきらめく。
スズカさんを初めて見たときの感動を、サンジェニュインさんと走ったときの渇望を。
トレセン学園に来る前、私の手をぎゅっと握って、大丈夫だとおまじないを掛けてくれたおかあちゃんの声が包んで、私の背中を押す。
「ッ見ててね、おかあちゃん──!私、ぜん、っしん、ぜん、っれい……!」
残ったすべての力を、脚に託して大地を蹴り上げた。
「……やっと見えた!スピードの向こう側、静かで、どこまでもキレイな!私が見たかった
その横をスズカさんが並ぶ。
力強い疾走が、私の心を揺らす。
その私たちの間に風穴を空けるように、白い光が、キレイな線を描いた。
「あらゆるレースで、あらゆる場所で!頂点に立つのはこのオレ── サンジェニュインだ!」
見たことも、聞いたこともない力強い声が響いて、突風が吹き荒れる。
横並び一線に跳び越えたゴールの向こう側は、キラキラと輝いていた。
私は、涙があふれるのを止められなかった。
それはジャパンロイヤルターフでながした、苦しみや痛みなんかじゃなくて、もっと深くて、もっと温かくて、もっと柔らかい。
目の前で太陽が昇る。
指さした方角にキラキラと光る。
私は眩しさに目を細めて、それでも逸らさないでいよう。
振り向きざまに、薄紅色の唇が、大きく開いて咲き誇る。
その美しさを、忘れたくなかった。
次回、掲示板回!
本日22時にももう1話更新あります。
今回もイラスト頂きましたッヒュ~~!!
イラストを描いてくださった方:ときわいろ様
デコルテのとこのスケスケレースが良すぎる……!
これはカネヒキリくんがセレクトした私服に違いない!俺は詳しいんだ!
https://img.syosetu.org/img/user/96109/85990.jpeg
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閑話 掲示板回 Ep-8
○お願い○
掲示板回では誤字報告はなしでお願いします
※レス先違いも含む
本日2話目です。
明日凱旋門賞!明日凱旋門賞!!
前話うまむす回のサンジェニュインさん
「ッシャアオレの勝ちィッ!チョゲップリィ!」
掲示板回のみ誤字報告不要です。
先頭至上主義にして美しき逃亡者・サンジェニュインに夢を託すスレ part.72
1:夢見るギャンブラーナナシID:pnOr77nx7
タイトルの通り、2004年デビューの4歳牡馬・サンジェニュインに夢を託すスレです
馬券を握ってないやつ、馬券を捨てたやつは書き込む資格ナシ
サンジェニュインにまったく関係がない話題はNG
以下ノータッチリスト
・アンチ
・荒し
・荒しに触るやつ
>>960 が次スレよろしく
前スレ 先頭至上主義にして美しき逃亡者・サンジェニュインに夢を託すスレ part.71
他の馬の話は個別スレにイケ
※他スレでサンジェニュイン最強の話題だすと過激派がキレるので注意されたし
近代競馬の至宝・ディープインパクトを語るスレ 101
最強の逃亡者はサイレンススズカで決まり 77
ツインターボに活躍馬がいたらどんな馬か考えるスレ 48
やっぱりカブラヤオー思い出雑談 23
・
・
・
掲示板回のみ、誤字報告、レス違い報告等不要です。
711:夢見るギャンブラーナナシ ID:8NnO5Gujj
ご要望にお応えしてここまでの振り返り
4月:ガネー賞26馬身差圧勝
重馬場だったのに他馬をカメラアウトさせるほど大逃げする
サンジェ、ご褒美に高級りんご「サンふじ」を買って貰う
某石油王から金銭トレードの依頼→20億報道から120億判明
6月:サンクルー大賞典5馬身差逃げ切り勝ち
リュベールの奇策→ガン無視逃げ切り
ゴール後にn度目n回振りの本編レース開幕
ハリケーンランからのケツタッチがストレスになって丸1日調教拒否
2005年10月29日~2006年5月7日までのTOP50レーティング発表
7月:キングジョージ後ろ右脚負傷しながら6馬身差逃げ切り勝ち
レース中に右前脚と右後脚が接触し右後脚を負傷→そのまま走りきる
異例の馬参加OKのトロフィー授与式で王族になでなでされる
女王陛下に顔を寄せるシーンが翌日のイギリス各紙の一面を飾る
8月:インターナショナルS 12馬身差圧勝
陣営の会見を窓越しに眺める
レース2日前にラインクラフト死亡→形見として赤い手綱を受け取る
突如として不調に陥り、馬体重マイナス3キロ、機嫌最悪で出走し優勝
9月:日本に一時帰国し、再度フランスへ出国するため検疫厩舎にて待機中
世界の著名な競馬関係者が選ぶ名馬10頭に選出される
サンジェニュイン写真集発売決定
香港表記判明:太陽神華(読みはおそらくタイヨウシンカ)
サン:太陽、ジェニュイン:真価→神華 だと思われ
こんなもんか
712:夢見るギャンブラーナナシ ID:1uHEqlMcG
>>711 サンクス
713:夢見るギャンブラーナナシ ID:9Yy4MuYto
>>711 まとめサンクス
改めて見ると頭おかしくて好き
714:夢見るギャンブラーナナシ ID:LhUWiemS1
でかした >>711 には名誉スレまとめ大使の称号を贈るわ
715:夢見るギャンブラーナナシ ID:Vn03GVGz1
ドバイSCで負けた以外は欧州レース連勝連戦は強すぎ
716:夢見るギャンブラーナナシ ID:HyeB8OELL
漫画でもこうはならんわ
717:夢見るギャンブラーナナシ ID:gQbRXYHDY
事実は小説よりも奇なり
だからといって強すぎィ!?
これは凱旋門賞に出走するのも納得の成績
718:夢見るギャンブラーナナシ ID:nftKiOAUk
むしろこの戦歴で凱旋門賞いかない選択肢があったらそれはそれで異常なんだよなあ
719:夢見るギャンブラーナナシ ID:de1M02BD9
>>715 動揺しすぎて逆になってるぞ
ガネー賞26馬身差の時点で凱旋門賞は考えてただろうな
BCターフは馬場の関係から対象外だろうし、秋の大レースだとここが一番目に付くから
サンクルーで前年の凱旋門賞馬のハリケーンランを負かしたのは強い
720:夢見るギャンブラーナナシ ID:6Gv+yUWBo
ハリケーンラン、今年に入ってから不調気味だし、そこまで評価の軸にはなってなさそう
他の馬もGⅡレベルの相手だしな
721:夢見るギャンブラーナナシ ID:C6oTLULdV
地元の有力馬であることに間違いは無いだろ
前年のレーティングと比較すれば相手は悪くない
これが接戦だったら微妙だったかもしれないが、4戦とも5馬身以上の着差をつけてるんだから
722:夢見るギャンブラーナナシ ID:DFf0mzTG4
ガネー賞に関しては相手の馬がどうこう、っていうよりは、歴代のレコードとの一騎打ち感がすごい
去年ガネー賞勝ったバゴ(2004年凱旋門賞馬)も重馬場でのレースだったけど、そのタイムを縮めに縮めまくってんだから
723:夢見るギャンブラーナナシ ID:QNJ8dsnTO
この定期的に沸く「サンそんなにすごくない勢」はなんなんだ
724:夢見るギャンブラーナナシ ID:zBI0T1RIs
>>723 暇人だ
725:夢見るギャンブラーナナシ ID: QNJ8dsnTO
>>724 理解した
726:夢見るギャンブラーナナシ ID:nQo/Rw6J2
サンクルーでのリュベールの奇策、日本のスレだと散々コケにされてるが、本原調教師のnatdekeiba.com のインタビュー記事を読んでると、タイミングがかち合ってたら効果てきめんのヤバイ策だったみてえだな
727:夢見るギャンブラーナナシ ID:VN1DQ/q1b
>>720 お前は2着3着に入ることを不調って言っちゃうタイプの人間なのか
新人類だな
728:夢見るギャンブラーナナシ ID:+sft7Yg3J
サン、メスが苦手とか意外でビックリした
オスが苦手なのは目に見えてたけどさ
729:夢見るギャンブラーナナシ ID:cV6ehYh8d
逆に得意な馬とかいない説
730:夢見るギャンブラーナナシ ID:JgPxqIvsO
牝馬相手だと勝負に出れない悪癖、女のケツに敷かれてるだらしねえ男みたいで親近感ある
731:夢見るギャンブラーナナシ ID:xBvhXYA+R
去年のダービーあたりから併せ馬の相手が全頭牝馬だから、牡馬が苦手なのをカバーするためだと思ってたのに、悪癖矯正の溜めだったとか予想外だろ
これに気づいたリュベールはヤバイやつ
732:夢見るギャンブラーナナシ ID:CHBEdULoj
気づいても「よっしゃじゃあ牝馬で包んだろ」とはならんだろ
733:夢見るギャンブラーナナシ ID:E666yhEod
なってるからやべーんだろ
日本語読めてる?
734:夢見るギャンブラーナナシ ID:rWo+VE7WP
実際本原先生もインタビューで言ってるしな
>気づいても実践するホースマンがいるとは想定していませんでした
735:夢見るギャンブラーナナシ ID:LEDmgbhIZ
それはそうだろ
想定できてたら逆に気持ち悪いわ
736:夢見るギャンブラーナナシ ID:h1uQVtzIr
でも万一の可能性を否定せずコツコツ矯正していったのは大正解なわけで
サンクルー大賞典で間に合って良かったな!
737:夢見るギャンブラーナナシ ID:jG20Dq96X
リュベールにとっては渾身の策だったろうに・・・
738:夢見るギャンブラーナナシ ID:XgoTgUKdl
規格外の馬には規格外の策をぶつける
これがこれからのスタンダートってワケ
739:夢見るギャンブラーナナシ ID:W8MuX9bll
>>738 そんなスタンダート認めたくない
740:夢見るギャンブラーナナシ ID:W6thgm8P/
規格外の馬は何しても規格外なのは否定しないわ
キングジョージとかまんまそうだったろ
741:夢見るギャンブラーナナシ ID:BQI3/k8vV
誰も怪我した状態で走り抜くとは思ってなかったわ
アスコットのコースはめちゃめちゃタフだって噂なのに、ラスト1ハロンの上り坂をぶっちぎってきた時は意味がわかりませんでしたね
742:夢見るギャンブラーナナシ ID:tepWw6ZAa
レース後にリュベールが「もうどうしたらいいかわからないです」って応えてて、はじめて「わかる」って声に出た
743:夢見るギャンブラーナナシ ID:5bD7GlQeq
深く考えるな、感じろ
744:夢見るギャンブラーナナシ ID:1lPh+zmUP
何も感じられない、この馬のこと何もワカラナイ
745:夢見るギャンブラーナナシ ID:oD9Rabin0
ハリケーンランに襲われてぐったりしてたサンクルー大賞典、あの本編レースの有様でサンジェへの理解がますます遠のく
746:夢見るギャンブラーナナシ ID:urDn5J7HA
本編レース久しぶりに見た
去年の神戸新聞杯でディープに追いかけ回された時以来じゃないのか
747:夢見るギャンブラーナナシ ID:EwfHqgtnj
ほぼ全頭に追われてたのは皐月賞以来だな
ダービーからはメンコ着用するようになって、本編レース開催が遠のいてた
なおディープインパクト
748:夢見るギャンブラーナナシ ID:LrBlq/l4m
何しても襲ってくるディープの話はやめてやれ
俺たちからするとサンのケツを追いかけ回す元気な馬だが、世間一般的には国内最強の名馬やぞ
749:夢見るギャンブラーナナシ ID:7JKieRO67
サンジェが居なくなった途端、圧勝しまくる深い衝撃さん
750:夢見るギャンブラーナナシ ID:XUUGd3hxs
向かい風がきつかった阪神大賞典で後続に6馬身差つけてぶっちぎったのは笑う
ゴール後にキョロキョロ辺りを見渡してたのも笑う
751:夢見るギャンブラーナナシ ID:aFDpEpP2q
ディープ、今年に入ってからレース前とレース後にめっちゃ落ち着きないのなんなんだろ、と思ったら竹Jがインタビューで「たぶんサンジェニュインを探してますね。今までずっと一緒だったので」って応えてて納得した
今まで目印にしてた白いケツが無くて不思議だったんやろな
752:夢見るギャンブラーナナシ ID:DvlbdGm51
白っぽい馬を見かけるたびにそっちによっていくディープさん、目当ての白毛のケツじゃないとわかると華麗にUターンしてくの好き
753:夢見るギャンブラーナナシ ID:lOydIYJmt
ディープが国内でぶいぶい言わしてる横で海外レースを圧勝しまくるサンジェ
2005年10月29日~2006年5月7日までのTOP50レーティングで有馬記念1着、ドバイSC2着、ガネー賞26馬身差1着が評価されて126で単独1位
サンクルー、キングジョージ、インターナショナルSで全戦1位だから、これ次のレーティングも1位あるわ
754:夢見るギャンブラーナナシ ID:W4xB1ghv5
インターナショナルSのレースレーティングって1位だっけ?
役者が揃いに揃ったキングジョージでの1位も評価値かなり高そう
755:夢見るギャンブラーナナシ ID:lCTVuZIb6
今年のキングジョージは、前年の凱旋門賞馬・ハリケーンラン、前年のインターナショナルS覇者で今年のドバイWCで2着のエレクトロキューショニスト、ドバイSCのハーツクライでメンツが良かった
その中を逃げ切り勝ちしたのは強い、それも怪我を負った状態だからな
756:夢見るギャンブラーナナシ ID: 6Gv+yUWBo
まあエレクトロキューショニストは死んでしもたわけやが……それを引き合いにだしてもねえ
757:夢見るギャンブラーナナシ ID:Kb79W9WyO
死んだからってそれまでの戦歴が無になるわけではないが?
758:夢見るギャンブラーナナシ ID:mbIfFDf5O
死してなお輝き続けるんだよエレクトロキューショニストもラインクラフトも
759:夢見るギャンブラーナナシ ID:8c3ovidQp
さっきの野郎と同じやつじゃねえか
どうせアンチマンだぞ、ノータッチの精神守ってけ
760:夢見るギャンブラーナナシ ID:758HjbnXY
まあキングジョージで女王陛下になでなでされてご満悦サンジェでも見て落ち着こうや
http;//natdekeiba.com/news_id=1145148889
761:夢見るギャンブラーナナシ ID:NR0L6CEGS
馬にとっちゃ全部同じ人間だろうから気にせずこんな顔できるんだろうが、それはそれとしてすごい絵面やな
762:夢見るギャンブラーナナシ ID:VllSaP3fs
>>760
こんな「気持ちええで」ってのが一発でわかる表情も珍しいww
763:夢見るギャンブラーナナシ ID:IipDSmQLn
自分から頭つきだして撫でろってアピってたしな
サンジェは中身人間入ってるだろ、ってネタにされてるけど、人間だったらこんなの度胸試しでもしないわ
764:夢見るギャンブラーナナシ ID:/ezGfnUDp
馬らしいことしてて安心した
765:夢見るギャンブラーナナシ ID:K568/YdYj
馬らしい・・・?
766:夢見るギャンブラーナナシ ID:r4tI6IF34
>>765 なんでや今までの行動の中ではダントツの馬っぷりやろが
767:夢見るギャンブラーナナシ ID:k1blq8AYh
普通の馬は人間と一緒にお辞儀したり、落としたハンカチ拾ったりしないんだわ
ましてや初対面の人間に無警戒に首を差し出したりしないって、みんな麻痺ってんな
768:夢見るギャンブラーナナシ ID:KASPErtL0
サンジェニュインはUMAだから
769:夢見るギャンブラーナナシ ID:0QuQ/5636
UMA、読みが「ウマ」であればまあ間違いではない
770:夢見るギャンブラーナナシ ID:XoG78UmgB
どうせユーマ読みだぞ
771:夢見るギャンブラーナナシ ID:vb9ZzQ04j
キングジョージで怪我してんのに走り抜くって異常性を見てもまだウマだと信じてる人が居るんですか!?!?
772:夢見るギャンブラーナナシ ID:gtRzVbUFm
馬の本能に従い、怪我したまま止まったら襲われることを理解して走り続けていた可能性!
773:夢見るギャンブラーナナシ ID:DiQZr7RqZ
怪我していようがしていまいが、騎手の鞭もないまま勝手に加速する馬が一般的だとは思われたくないですね
774:夢見るギャンブラーナナシ ID:Y1AisZ1Fj
否定できなくてワロタ
775:夢見るギャンブラーナナシ ID:/WzcYi12S
サンジェニュインはUMAかもしれないがかわいいからいいわ
776:夢見るギャンブラーナナシ ID:ejdUlURcq
会見中に窓から顔突っ込んでも微笑ましいで済むような馬やぞ
もう今更やろが
777:夢見るギャンブラーナナシ ID:/wKDOejLN
会見といえば、前スレとかでも散々ネタにされてたが、芝木のあんな茶目っ気あるとこ初めて見たわ
778:夢見るギャンブラーナナシ ID:pQfI9BHUW
馬の会見とは思えない質問が飛び交ってて、人気になると大して調べもしないにわか記者が増えて最悪だな
779:夢見るギャンブラーナナシ ID:yOdckEBZt
マスコミさんはもうちょい考えてもろて
780:夢見るギャンブラーナナシ ID:ux7m/nKeS
あいつらは話題にするのが仕事だからな
どんなことでも盛り上がればいいって発想なわけで
781:夢見るギャンブラーナナシ ID:Ux18ymEQi
俺らの知ってる芝木:鉄仮面、無愛想、返事は「はあ」「へえ」「そうなんすか」
この前の会見の芝木:鉄仮面、無愛想、返事は「それ答える必要ありますか」「恋人いますよ(はにかみ)」
782:夢見るギャンブラーナナシ ID:aTHl7x65U
好みのタイプとか休日の過ごし方とかいらんやろ
個別に聞け
783:夢見るギャンブラーナナシ ID:MfZcXHwJv
どこの記者かと思ったら女性雑誌やん
芝木の顔目当てか
784:夢見るギャンブラーナナシ ID:DGP7hJpmO
>>782 マスコミかばうわけじゃないが、芝木が個別のインタビューを受けないからああいう会見に出てくるんだよ
芝木がもっと柔軟に対応すべき
785:夢見るギャンブラーナナシ ID:3nmGmQXk/
がっつりかばってて笑う
786:夢見るギャンブラーナナシ ID:oNmeSE6eq
1度でも許可したら私生活まで張り付かれそうじゃん
787:夢見るギャンブラーナナシ ID:A4zKZYFSR
ぶっちゃけ騎手が競馬関係以外のインタビューに応じて得することなんてないだろ
芝木に関しては8割競馬以外の話題って見えてるからなおさら
788:夢見るギャンブラーナナシ ID:8rwnREQ+g
芝木はイケメンだから嫌いだが、サンに上手く乗れるのはコイツだと思ってるから騎手としては好き
なのでコイツの調子が落ちるような取材はNGでいいと思うわ
789:夢見るギャンブラーナナシ ID:TqJ2V6s9E
芝木が応じないからって競馬の会見で関係ない質問をするマスコミにカバーできる要素なんてないのでは??
790:夢見るギャンブラーナナシ ID:/c0CUEX8O
お前らマスコミの話になるとワラワラ沸いてくるな
この調子で社会復帰しろ
791:夢見るギャンブラーナナシ ID:6s5RxuVc/
当然のようにニート扱いすんなwww
792:夢見るギャンブラーナナシ ID:SwAFTDkm3
あの会見で面白かったのは、誰が見ても半ギレの芝木が恋人の有無を聞かれて「いますよ」って視線向けた先がサンジェニュインだったとこだけだよ
793:夢見るギャンブラーナナシ ID:4fUG7O+QC
馬が恋人です、って言う騎手はわりといるが、芝木が真顔だったせいで冗談に聞こえないのが一周回って笑えた
794:夢見るギャンブラーナナシ ID:tUJIoBoeh
本当に笑って言い要素だったのでしょうか・・・?
795:夢見るギャンブラーナナシ ID:IcaUVXY9I
芝木のあの顔面と成績からいって結婚相手には困らなかろう
796:夢見るギャンブラーナナシ ID:MnAT4Hb9V
極度の馬好きに目をつむればすぐにでも結婚できそう
797:夢見るギャンブラーナナシ ID:yOatdvUmx
先月発売された「月刊優駿たち」に乗ってる芝木のインタビュー、サンジェニュインへの愛情が重くて胸がもやもやしてすごく良かった
798:夢見るギャンブラーナナシ ID:vGw2+wXkv
良さそうな雰囲気だとは思えないんだが
799:夢見るギャンブラーナナシ ID:6fjKFJe+M
今月出た月刊優駿たち、「世界の著名な競馬関係者が選ぶ名馬10頭」でのサンジェのページ、推薦したフランス最大の競馬雑誌の編集長が寄せた「偉大なる先駆者」の文言と、キングジョージのゴール後に太陽を指さした芝木の姿がマッチしすぎてワロタ
800:夢見るギャンブラーナナシ ID:2brvlQN+y
白毛で史上初を立てまくりだから、まあ先駆者よな
801:夢見るギャンブラーナナシ ID:V/JhlcQ2a
オグリやタマモが現れる前の葦毛といい、平成初期の栗毛といい、毛色で走る走らないを見るのがナンセンスなんだわ
802:夢見るギャンブラーナナシ ID:smqGujn3F
それはそうなんだが、色のインパクトってでかいからな
世界的に少数派の白毛が、多数はの毛色の馬をぶっちぎって勝ち続けるのは、ほら人間ってそいうドラマに弱い生き物だから
803:夢見るギャンブラーナナシ ID:by/aljShU
やたら馬に属性つけたがるしな
804:夢見るギャンブラーナナシ ID:ANaMVAmSl
サンジェニュインは属性付けでもしないと収拾付かないとこもあるから
805:夢見るギャンブラーナナシ ID:N6+TFEHC6
サンクルー大賞典でヴァーミリアンのメンコつけたときから思ってたけど、むりくりドラマ性ひっつけないでほしいわ
同じクラブだからってさあ
806:夢見るギャンブラーナナシ ID:pnA39sD8F
>>805 サンとヴァーミリアンは併せ馬の相手でもあるし、少なくともむりくりではないんだわ
807:夢見るギャンブラーナナシ ID:wHvEZ147p
ラインクラフトの件も、形見の手綱だってやりすぎだとは思うけど
ここは長いこと併せ馬の相手だったり、引き運動の相手だったりしたからな
馬主もせめて手綱だけでも世界に連れてってやって欲しいって気持ちは理解できなくもない
808:夢見るギャンブラーナナシ ID:HvthRLp8q
関係者はドラマ性つけるつもりなんてなくて、ただ外野の俺らがこれはドラマだなんだギャーギャー言ってるに過ぎないんやで
809:夢見るギャンブラーナナシ ID:rqpGMNOSB
夢見てるやつらオオスギww
商業的につけてることは否めないとはおもうけどなあww
でもまあこんな花畑なやつらと議論するまでもないわ
810:夢見るギャンブラーナナシ ID:amL5C6Rip
>>809 商業的云々、妄想ですか?脳みそお花ですか?
811:夢見るギャンブラーナナシ ID:CBdK7I6f3
人為的にドラマ性を付与するまでも無く、生まれから現在までドラマチックなのはあってるだろ
812:夢見るギャンブラーナナシ ID:VQOEAqP6k
>ドラマチック
競馬にレース結果以外のものを求めてないやつからしたらイラナイ、ってのはわかるが、ここはサンジェニュインに夢を託すスレなので
ドラマチックいらない、とかサンジェの商業展開気に入らないやつとかは見ててもつまんないぞ
馬券のことだけ話してるスレあるからそっちに移動しな
813:夢見るギャンブラーナナシ ID:7vfjKF8CJ
ドラマチックは個人的に興味ないがオモシロエピソード好きの俺は居座るで
814:夢見るギャンブラーナナシ ID:q+fFBG6Et
ドラマチック嫌いなやついてもいいだろ
他のやつに突っかからなければいいんだよ、あと過度に物語性付与した話を語りすぎるなっての
815:夢見るギャンブラーナナシ ID:B3GiCutPH
ギスギスし出したな
カルシウム足りてないんか?
ハゲてんのはみんな一緒なんだから落ち着け
凱旋門賞での枠順でも予想して気楽に書き込みしろよな
816:夢見るギャンブラーナナシ ID:RWZmUXCJN
その凱旋門賞もうすぐだけど、ここまでサンのこと使いすぎじゃね?
817:夢見るギャンブラーナナシ ID:Ru2ABsF6v
6月~8月と3ヶ月連続でレースに出してるからな
日本なら二冠馬に走らせるローテーションじゃねえわ
でも取れるだけのGⅠぶんどってこよう、という陣営のやる気は感じる
818:夢見るギャンブラーナナシ ID:HhU5kwzes
こっちで走らせるならたぶんもっと間を空けてたぞ
サンはパワーありすぎてパンパンの日本の馬場じゃ疲労が溜まりすぎるから
819:夢見るギャンブラーナナシ ID:HGdczAQtY
フランスとかイギリスの深くて重い馬場だからこそ3ヶ月連続でだしても、日本で走らせるよりは負担にならないし、使えば使うほど身体が仕上がるタイプっぽいもんな
820:夢見るギャンブラーナナシ ID:wekMNZ5T5
ドバイSCで530キロあったのが、レースで使うごとに徐々にスマートになって今は520キロ
これがベスト体重なんかな
インターナショナルステークスはこれでサラッと走ってたけど
821:夢見るギャンブラーナナシ ID:shVBMMvkP
528キロで出走したガネー賞を見ても、たぶん馬体重はあんまり参考にならないかも
こいつの増減って、太め残りとかガレとかじゃなくて、筋肉量だから
822:夢見るギャンブラーナナシ ID:7ib+jukv2
見た目すら~っとしてるけどサンはマッチョだからな~
823:夢見るギャンブラーナナシ ID:1sjEL0inG
馬体重とかの情報がなければ、細身の王子系みたいな馬なのに・・・
馬体重知ったあとに香港表記の馬名みるとギャップが
824:夢見るギャンブラーナナシ ID:SHYhd2rpK
前スレでもさんざん話題になったな、香港表記
825:夢見るギャンブラーナナシ ID:SVG4GfLBY
俺はあれすき
戦績がド派手なサンジェにあってるじゃん
826:夢見るギャンブラーナナシ ID:F6HvlhUI/
太陽神華
「ジェニュイン」の部分を正真正銘→真価→シンカの読みから当て字で神華にしたのは命名者さてはサンジェが好きだな
827:夢見るギャンブラーナナシ ID:sra1K/8qn
ディープはドシンプルに「大震撼」なのに
828:夢見るギャンブラーナナシ ID:12TGf/qE7
>>827 深衝撃じゃなかったことに安心すらある
829:夢見るギャンブラーナナシ ID:yatkoQH9O
大震撼はインパクト=衝撃まんまじゃなくて揺れに例えたところがいいわ
サンジェは上のやつもいってるけど、ド派手なのがマッチしてんだろ
830:夢見るギャンブラーナナシ ID:QPaRMrCA5
カネヒキリの雷神精欞っていうまんまにもほどがある名前もあるわけだし多少はね?
831:夢見るギャンブラーナナシ ID:PqBQNVHKi
候補にあった「光陽一閃」の方が個人的には好きだったが、光陽のとこ以外サンジェの名前にかすりもしなかったからしゃーない
832:夢見るギャンブラーナナシ ID:2c1lLR1fB
太陽神華と雷神精欞
ならべると神々しくてワロタ
833:夢見るギャンブラーナナシ ID:ZMB3toeny
つまりこの2頭の併せ馬は神々の会合ってこと・・・?
834:夢見るギャンブラーナナシ ID:L08UsmpaJ
壮大すぎる
835:夢見るギャンブラーナナシ ID:3XCEdas0L
>>805 ヴァーミリアンの名前が出て思い出したが、今回の検疫厩舎の帯同にヴァーミリアンが出てるんだな
836:夢見るギャンブラーナナシ ID:2sTvAoEnL
ヴァーミリアンもフランス行くのか?
11月からレース復帰じゃ無かったっけ
837:夢見るギャンブラーナナシ ID:PBFcgmcZ4
>>836 検疫厩舎の中だけだぞ
838:夢見るギャンブラーナナシ ID:Dc3y4yIfn
検疫厩舎だけ帯同とかできんの??
っていうかなんで検疫厩舎に帯同馬必要なん
839:夢見るギャンブラーナナシ ID:Zw344yTRF
環境変わるから必要だろ
840:夢見るギャンブラーナナシ ID:M7UoCSiva
検疫厩舎っていってもマジで環境違うからな
サンジェは3月にドバイ→フランス、5月に栗東に戻って調整したあと、6月下旬からフランス→イギリス、8月末に帰国して着地検査→フランス入りのために再度検疫厩舎にイン、と高頻度で環境が変わるから、それだけストレス溜まるんだよ
今回、検疫厩舎にヴァーミリアンが帯同するのは、そのストレスを軽減するため
841:夢見るギャンブラーナナシ ID:am9QudxnT
2006年もっとも移動した馬で賞を受賞する可能性が一番高い馬だぞ
842:夢見るギャンブラーナナシ ID:DPbOxA4a/
架空の賞をつくるなww
843:夢見るギャンブラーナナシ ID:NtjkOWbeA
出国前のストレスを抑えるのは今後のレースにも影響あるだろうしな
844:夢見るギャンブラーナナシ ID:L2tTBBYDb
でも同じタイミングでディープインパクトも検疫厩舎にいるんだろ?
845:夢見るギャンブラーナナシ ID:WgJIklIIh
そいやディープも同日に出発か
846:夢見るギャンブラーナナシ ID:goh72e0EE
ドバイ旅行でサンジェニュイン⇔カネヒキリが相互帯同だったよういに、今回の凱旋門賞はサンジェニュイン⇔ディープインパクトなんじゃね
847:夢見るギャンブラーナナシ ID:rv8DLxL5w
検疫厩舎にヴァーミリアンおいてるの、ディープ対策だろww
サンジェ、自分を負かした相手がディープだって認識しているみたいだからな
そうじゃなくても毎回襲われてるから、ディープと2頭きりだと逆にストレスになるんじゃないのか
848:夢見るギャンブラーナナシ ID:pwfPvP/YU
馬ってそういうとこまでわかるか??
849:夢見るギャンブラーナナシ ID:U0+1PRfDW
サンジェニュインならあり得る
850:夢見るギャンブラーナナシ ID:awgk8yCjC
っていうかディープが宝塚から凱旋門賞直行なのがなんかなー
851:夢見るギャンブラーナナシ ID:YIbXWy6lG
ディープインパクトの専用スレ、阿鼻叫喚でクソみたいにスレが伸びた挙句ひっでえ有様だったのが今では通夜みたいに静かで過疎ってるから、応援してるやつら的には海外レース踏んで欲しかったんだろ
852:夢見るギャンブラーナナシ ID:lFaAaXfv0
国内でディープの馬券握ってた俺氏、今までと馬場が違いすぎるんだから、フォワ賞踏んで欲しかったわ
853:夢見るギャンブラーナナシ ID:t1TximJHH
もしくは宝塚終わった後に遠征煮出して欲しかった
854:夢見るギャンブラーナナシ ID:ZDCN6LNbg
遠征代も無料じゃ無いからな
クラブ所有で、やろうと思えばいろんなところから資金引き出せるサンとは違って、ディープインパクトは個人馬主なわけだし
普通に輸送費とか考えるとガンガン使えなかったんじゃないの
っていうかサンは使いすぎ!
リターンもデカいからそれで相殺どころか金は増やせてるかもしれないけど
855:夢見るギャンブラーナナシ ID:hpKvHupcj
それでもいきなり凱旋門賞は難易度高すぎでしょ
856:夢見るギャンブラーナナシ ID:vNRJFj7QW
サンジェのスレだからディープのことぐだぐだ言うつもりはないが、宝塚からノってる勢いを保つためにそのまま凱旋門賞に突き出すつもりなのかもしれない
逆に他のレースで使って何かアクシデント有った方が陣営としては嫌じゃん?
857:夢見るギャンブラーナナシ ID:7lsGMGk6c
フォワ賞にはサンジェがいないし、帯同なしでディープを遠征させるつもりもない、なら最初からサンジェと同じタイミングでフランスに送り出した方がディープのコンディション的にいいって判断されたのかもね
ディープの方はサンジェのこと気に入ってるから、サンジェと一緒なら輸送もそれほど苦にならなさそうだし
858:夢見るギャンブラーナナシ ID:xabBzOQDy
なおサンジェニュインのほうは
859:夢見るギャンブラーナナシ ID:VMX7cHGRS
>>858 シッ、言っちゃダメ!
860:夢見るギャンブラーナナシ ID:FRaghKKeU
他の海外レースで使ってアクシデントがどうたら、って言ってるやついるが、凱旋門賞で故障する方がまずいだろ
あのエルコンドルパサーでさえ、長期の海外遠征を熟しても凱旋門賞2着
繰り返し遠征してたサンジェはともかく、ディープはパンパンの日本の馬場から急に環境変わるのに、調子保てるのかって話だよ
ステップレースに出た方が安全性は高いってのが俺の持論
861:夢見るギャンブラーナナシ ID:vTs5/Tijg
それはそうだとしても、馬主でもなんでもない俺たちがこんな匿名だらけの場末でぐだぐだいってもしゃーないんやで
862:夢見るギャンブラーナナシ ID:iYmQL3LjR
残念ながら馬主には馬のファン人気を保つ義務はなく、もちろんブランド展開とかを考えると人気はあるに超したことは無いんだが
863:夢見るギャンブラーナナシ ID:ZGHVe4JfA
ネットでもリアルでも、ディープは純粋な日本馬で、サンジェは海外で遊んでるみたいな面白いこと言うやつもいるぞ
864:夢見るギャンブラーナナシ ID:OEABMoDpf
1度も海外に行かず、初の海外レースでいきなり優勝したら、まあできるかどうかは別としてインパクトあるもんな
865:夢見るギャンブラーナナシ ID:xvdcCO/4/
サンのスレだから当然かもしれんが、ディープへの見方が尖ってるやつら大杉ィ!!
866:夢見るギャンブラーナナシ ID:ACS8fOqU9
向こうは向こうで「サンは過大評価されすぎてかわいそう」扱いだから似たようなもの
867:夢見るギャンブラーナナシ ID:ATRVcRzX7
過大評価・・・?
868:夢見るギャンブラーナナシ ID:z9ME9rgBs
俺らがディープの凱旋門賞出走に関して「国内での勝ち鞍しかないのに何言ってんだ」って言っているのと同じだろ
しゃーない、自分が好きで応援してる馬の方が数倍素晴らしく見えるから
その馬の視点に立つとどうしても噛み合わなくなるもの
869:夢見るギャンブラーナナシ ID:hlQGBiJKN
貶し合ったら最後、落ちるところまで落ちるだけだぞ、理性を保て
870:夢見るギャンブラーナナシ ID:kd6EbYEgG
サンジェニュインに恥ずかしくない太陽の人間で在れよ
それはそれとして逆さてるてる坊主は今回も量産するがな!!
871:夢見るギャンブラーナナシ ID:cE8q+j9Y7
向こうは常に稍重状態だと解っていながら逆さてるてる坊主を作らずにはいられない
872:夢見るギャンブラーナナシ ID:fCIKqSBfs
やっぱりサンジェニュインには重苦しい馬場で軽やかに走り抜けてほしいからな
873:夢見るギャンブラーナナシ ID:xIPI84BtJ
ズブズブの馬場で他馬が悪戦苦闘する中、1頭だけテンションたかいまま、ドロドロになりながらゴールして欲しい
874:夢見るギャンブラーナナシ ID:WdUr9yO+1
愛情が歪んでらあ!
875:夢見るギャンブラーナナシ ID:nLuaFLWhi
おいハゲども、フジイテレビでサイレンスレーシングクラブと金城氏の合同会見が始まったぞ
876:夢見るギャンブラーナナシ ID:b35MhDbtm
誰がハゲだ!!!!!
877:夢見るギャンブラーナナシ ID:PKMuyDOlb
ハゲって言った方がハゲなんだぞボゲが
878:夢見るギャンブラーナナシ ID:6QpPR5sJN
グリチャ以外で競馬関連の会見を見る日が来るとはな
879:夢見るギャンブラーナナシ ID:FI4sQrMqf
今テレビつけたんだが、クラブ関係者と同席してる本原先生、なんかめっちゃ緊張してね?
880:夢見るギャンブラーナナシ ID:QM+Sbe/cA
ガチガチやん
881:夢見るギャンブラーナナシ ID:VjBhxAfFh
本原先生にとってはサンジェが初のGⅠホース、当然取材なれしていなければこんな大がかりな会見にもなれていないので・・・
882:夢見るギャンブラーナナシ ID:XMu57OzUW
芝木の方が堂々としてるまである
883:夢見るギャンブラーナナシ ID:T4AL6YPs5
こいつは会見に興味が無いだけだ
たぶん頭の中はサンジェのことしかないぞ
884:夢見るギャンブラーナナシ ID:uWAxD7drh
なんて残念なイケメンなんだ
俺が結婚するまでそのままでいてくれ
885:夢見るギャンブラーナナシ ID:3v58W5/O8
それだと芝木一生だめじゃん
886:夢見るギャンブラーナナシ ID: uWAxD7drh
>>885 俺が結婚できないって言いてえのかテメェ!!!!
887:夢見るギャンブラーナナシ ID:Uwx0G4N89
この場に見えないだけでサンジェがいるんじゃないかと思ってしまうな
888:夢見るギャンブラーナナシ ID:AxasB+MjW
室内だからさすがにないな
テレビの前で見てそうだが
889:夢見るギャンブラーナナシ ID:jOIazx+4m
それはねーだろと言えなくて辛い
890:夢見るギャンブラーナナシ ID:lhE3F0zvP
金城側とクラブ側で雰囲気真逆なの面白いわ
891:夢見るギャンブラーナナシ ID:I9uutwUjC
サンの厩務員かわいくね?
892:夢見るギャンブラーナナシ ID:Xs6AruwGu
目黒さんがかわいい・・・?ソッチか
893:夢見るギャンブラーナナシ ID:4gbvfZ4oA
難易度高いやつまぎれててワロタ
894:夢見るギャンブラーナナシ ID:pYfi20AAT
枯れ専ってやつか?肩の力抜けよ
895:夢見るギャンブラーナナシ ID: I9uutwUjC
女の方だよ!!!!
896:夢見るギャンブラーナナシ ID:xbrgSL1Qc
お、始まるぞ
次回、競走馬回!!!!
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【特集:凱旋門賞直前】
妙に長くなっちゃったので、今日は2話構成ではなく3話構成でいきます。
記事のところだけ抜き出して先に投稿するので今回は3千文字でめっちゃ短い。
次の投稿は本日18時で、その次が22時です。
2021/10/10 追記
下記再編成により、65~67話まで加筆修正を行いました。
よりによって凱旋門賞でプロットのガバが発生したので組み直しです。
70話完結予定だったのですが、このガバでどう足掻いても70話無理だったので再編成した結果74話でまとまりそうです。
体調と相談しながらですが、10月の完結を目指して更新スケジュールも立て直しました。
予定通りいかない回もあるかと思いますが、どうか最後まで温かくお見守りいただけたらと思います。
よろしくお願いします!
《史上初を目指して── 待ち望んだ大舞台へ、サンジェニュイン号》
ガネー賞26馬身差。
サンクルー大賞典5馬身差。
キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス6馬身差。
そしてインターナショナルステークス12馬身差。
圧倒的な逃げ脚を武器に、ここまで4戦4勝で駆け抜けてきたサンジェニュイン号の次走は、凱旋門賞。
スピードシンボリが日本調教馬として初めて参戦し、近年はエルコンドルパサー、マンハッタンカフェ、そして昨年のタップダンスシチーが挑んでは、その固く閉ざされた門の前に立ち尽くした。
その門を打ち壊すために、日出ずる国の太陽馬として、サンジェニュイン号が挑む。
凱旋門賞への出走は、ガネー賞での大勝利を受けてすぐに発表された。
距離こそ違えども、ガネー賞と凱旋門賞は共にロンシャン競馬場で開催される。
そのターフで軽やかに走り抜けて叩きつけた26馬身差は、記録にも記憶にも深く残る印象深いレースだ。
凱旋門賞へ向けて、大きなアピールになったことも確かだろう。
続くサンクルー大賞典では、ターフの技巧者ことグラン・リュベール騎手の奇策で、その愛馬・プライド号に序盤は包まれたものの、そこから鮮やかに抜け出して逃げ切り勝ち。
重い馬場でスタミナを削られてもなお、終盤で加速できる地力の高さを見せつけた。
遠征場所をイギリスに移して参戦したキングジョージでは、右後ろ脚を負傷するアクシデントに見舞われるも、その影響を見せることもなく先頭のままゴールイン。
同レースには、ドバイシーマクラシックで敗れたハーツクライ号も出走していたため、約4ヶ月ぶりにリベンジが叶った形だ。
また、相手は世界一級クラスの馬が多く、ハリケーンラン(前年・2005年の凱旋門賞勝ち馬)やエレクトロキューショニスト(前年・インターナショナルステークス勝ち馬)も脚を揃えていた。
ここではサンジェニュイン号という馬が持つ、諦めを許さず、どこまでも先頭を狙い続ける意識の高さが垣間見えるレースだったと言えるだろう。
私が特に素晴らしいと思ったのは、インターナショナルステークスでの12馬身差圧勝だが、
この決め手はレースの中で調子を回復できた点。
走りながら自らの調子を整え、身体をつくり、持ち直して走り続ける。
このような馬は希有と言えるだろう。
レース前から調子が悪ければ、走らないのが定説だが、サンジェニュイン号はいつも通りの見事なスタートダッシュを見せると、最後のコーナーから一気に立ち上がって加速。
終始、他馬に影すら踏ませずに走り続け、勝ち時計はレコードタイムをマークした。
その白い馬体にきらめく赤い手綱は、亡き僚馬・ラインクラフト号の形見だが、天国へ駆け抜けて行った彼女へ手向ける、世界で最も美しい勝利の花束になったのではないだろうか。
この勢いのまま、凱旋門賞の舞台でも、赤い手綱がキラリと光るシーンを見せて欲しい。
ところで、2006年になってから1度も日本で走っていないサンジェニュイン号を指して、海外かぶれと断ずる妙な風潮がここ数ヶ月で広がっていたが、彼が積み上げる勝利の前に、それらは囁きにすらならないのである。
凱旋門賞という大舞台での日本調教馬の勝利を願いながら、海外遠征を重ねる馬を軽視するのはいかがだろうか。
長期遠征へと繰り出し、歴代の日本調教馬として最高順位となる2着まで戦いきったエルコンドルパサーの例を取っても、この軽んじるような風潮は今回限りで払拭すべきだろう。
彼等は勝利を得るために必要なあらゆる手段を選んでいるにすぎず、そのような挑戦もせずに勝てるような楽なレースでないことは、この40年近い挑戦の歴史の中で痛いほど味わっているはずなのだから。
そもそも私がサンジェニュイン号を強気に推すのは、もちろん彼への期待に拠るところが大きいが、それと同じくらい、サンジェニュイン号の勝利のために邁進する陣営の姿に好感を抱いているからだ。
その脚の適性が洋芝にあると判断し、掛かる遠征費に苦慮しながらも海外レース1本に絞って走らせた成果は、4戦4勝という華やかな戦績はもちろん、
ヨーロッパのタフな馬場に適応した脚、漲るパワー、疲れ知らずのスタミナ、他馬の追走を許さないスピード。
それらはディープインパクト号とたたき合ってきたクラシックレースから、海外遠征を経てさらに凄味を増し、世界中のホースマンの目を奪うだろう。
ロンシャン競馬場に刻まれた数多の名馬たちの勝利への渇望を踏み切って、その力のある限り前だけを目指す白毛の名が、未来永劫そのターフに残る日を、楽しみにしている。
《世界に走る衝撃の風── 日本のレースから世界へ羽ばたく、ディープインパクト号》
2006年度、国内無敗の4歳牡馬・ディープインパクトにとって、立ちはだかる壁の名はひとつだ。
“ サンジェニュイン号 ”
クラシックレースの激戦からまもなく1年が過ぎようとしている。
私にとって、やはりディープインパクトのライバルと言えば、この馬だ。
ただ残念ながら、サンジェニュイン号は海外遠征を繰り返し、日本の競馬場では走らなくなった。
ライバル不在の古馬戦線を、ディープインパクトは調子を落とすことなく、どのレースも強い走りを見せて3戦3勝。
阪神大賞典では向かい風を撥ね除けて6馬身差。
天皇賞・春では後続に5馬身差、勝ち時計3分13秒ジャストのレコードタイムを出した。
続く宝塚記念でも第4コーナーから強襲して一気に先頭に躍り出ると、そのまま6馬身差で勝利した。
鞍上の竹騎手がほとんど持ったままのゴールだったため、実力の半分も出していない状態だろう。
どんな場面であっても、後方から見事な末脚を爆発させて登ってくる鹿毛の馬体は、ターフで力強く輝いている。
管理する沼江調教師も満足気で、次走となる凱旋門賞への期待を滲ませる。
海外レース初参戦などの不安感もあるようだが、距離適性は間違いなくあっていること、また稍重でのレースとなった神戸新聞杯での上がり3ハロンのタイムを見ても、決して苦になる馬場ではないと発言している。
また、北海道にあるノータンファームの洋芝のコースを利用して調教を重ねているようで、不安感はないとのことだ。
その沼江調教師が警戒している馬が2頭。
うち1頭が、国内にいた時から最たるライバルであったサンジェニュイン号。
そしてもう1頭が、昨年の凱旋門賞の勝ち馬・ハリケーンラン号だ。
「サンジェニュインもハリケーンランも楽な相手じゃないよ。逃げ馬と先行馬は、終盤バテるところが狙い目だけど、この2頭はどっちもスタミナがあるタイプだからね、ディープとはちょっと相性が悪いかな。かといって、勝てない相手じゃないよ」
何やら秘策があるようだ。
教えて貰えないかと粘ってみたが、当日の楽しみと言うことなので、フランスで見られることを待つこととしよう。
国内では「日本馬を2頭も出す必要があるのか」と度々議論になる。
海外レースでの成績も良いサンジェニュイン号1頭だけで良いとする動きもあるが、私からすればそれは危険な思考だと思う。
サンジェニュイン号の成績は確かに優れているが、馬群に包まれたときの負担や、戦術の少なさなど、決して完璧な馬というわけではない。
さらに他馬が苦手で落ち着きがなくなる等、レース前後での気性の悪さが目立つ。
これまでの海外レースは少数立てだったためカバーできたかも知れないが、凱旋門賞ではより多くの馬が出走するため、陣営の不安感は増しているのではないだろうか。
ましてや競馬に絶対がない以上、多くの戦術を用いることが出来、また隙の少ないディープインパクトの方が勝機はあるのではないかと思う。
何にせよ、我が国から2頭もの馬が出走するのはこれが初。
どちらが勝っても喜ぶべきではあるのだろうが、この記事を執筆するほどには私はディープインパクトの大ファンである。
日本で生まれ、日本で育まれ、日本の馬場だけを走り抜いたディープインパクト号の最初の軌跡が、凱旋門賞の勝利になったとしたら。
応援するいちファンとして、これ以上の喜びはないだろう。
ターフを揺るがす衝撃の風が、ロンシャンに吹き荒れる瞬間を待っている。
『ってえな!俺の鬣かむなよディープインパクト!!……ちょっと聞いてる?ヴァーミリアンも止めろよ、って、ちょっ、やめ、や……ッやめろって言ったんだろがこのあんぽんたん!おたんこなす!おひたし!』
『ふぁふぁい』
『お前の鬣ながすぎじゃね?』
『うわああ目黒さああああん!!!!!!!』
── フランス入国まで、後12時間。
「本原調教師、凱旋門賞への意気込みは……!?」
「サンジェニュインの調子は大丈夫なのですか!?」
「ここで勝てば日本馬として初の凱旋門賞ですが──」
「鞍上が若手の騎手で本当に大丈夫なんですか!?」
「ライバルはやはりディープインパクトか、それとも前年の覇者・ハリケーンラン……」
サンジェニュインとディープインパクトを乗せた輸送機が日本を発って間もなく。
俺も現地入りするため、芝木くんと共に空港で案内を待っていた。
「とんでもない数ですね、テキ」
「あ、ああ……こんなに記者に囲まれるとは思ってもみなかったよ……ど、どうしたものか」
調教師になって10年近いが、サンジェニュインを管理するようになるまではGⅠレースに勝ったこともなかった。
当然、大勢の記者に囲まれたりマイクを向けられた経験もない。
それは騎手歴3年目の芝木くんにも言えることだった。
押し寄せてきた記者に2人そろって戸惑っていると、背後から声が響いた。
「本原さん、芝木騎手、こちらですよ!」
「── 沼江さん!」
「そろそろ出るみたいで……さあ早くこちらに、吉里さんたちもいますよ」
さすが凄腕の調教師。
マスコミの対応には手慣れているのか、追いすがる取材陣を軽やかに退け、俺たちは沼江さん、ディープインパクトの調教師に案内されて関係者が待つラウンジへと向かった。
「た、助かりました!ああいいったのはどうも上手くできなくて……」
「いえいえ。あちらもアレが仕事とはいえ、もう少し考えてもらいたものですな」
「ははは……そうですね……」
沼江さんはにこやかに微笑んだが、うんざりした雰囲気から彼自身もこういった騒がしさは好んでいないのだろう。
記者たちも沼江さんに相手にしてもらえないのが解っているから、俺たちの方に群がったのかもしれない。
「前にもお世話になったのに……すみません、まだ慣れず」
「いいと言ったじゃないですか。こいうのはね、まあ、お互い様でしょう。我々も本原さん方には遠征準備で助けて頂きましたから。たった2頭の日本馬なんです、できる範囲で助け合っていきましょう」
これがベテランの風格というべきか。
成人すれば10や20の年の差など些細なものと言われることもあるが、沼江さんの姿を見るとやはり経験した年数が違うな、とハッキリわかった。
出発前の記者会見の時でも、返答に困る質問は沼江さんがトントンと捌いてくれたおかげで、焦らず回答できたように思う。
もし俺が沼江さんの立場だったら、あんなにスムーズに助けられたかは断言できない。
ただいつか俺も、沼江さんのように後輩調教師をサポートできるくらいデキた男になりたいものだ。
「やあ沼江先生、本原先生、調子はどうですか」
ラウンジの奥から、コーヒーを手にした金城さん── ディープインパクトの馬主が現れると、沼江さんは快活な話しぶりで大きく頷いた。
「金城くん。ああ、ディープインパクトは良い感じだよ。やっぱりサンジェニュインが一緒だからか、機嫌がよくてね。本原さんには申し訳ないんだけれど」
「あはは……でもサンジェニュインも調子は良いですよ。検疫厩舎にいた間に、精神的に折り合いがついたのか……前ほど他馬を気にすることもなくなりましたから」
俺がそう言うと、
「2頭とも元気でよかったです。……ディープインパクトにとってはこれが初の海外遠征なので不安も強かったのですが、本原さん、本当にありがとうございます。クラブの方にもなんとお礼を申し上げたらいいのか」
「い、いえいえいえっ!どうか頭をあげてくださいっ!帯同馬の件はこちらもどうしようかと考えていたところですので……」
元々、今回の遠征でもサンジェニュインは帯同馬をつけずに単独で行動させるかどうか、クラブ内では意見が分かれて決着が付かない状態だった。
ただ移動が続いたため、サンジェニュインのメンタルケアも兼ねて、検疫厩舎ではヴァーミリアン号が帯同することだけが先に決まっていた。
欲を言えば牝馬か、もしくはカネヒキリ号に帯同してもらいたかったが、サンジェニュインと交流のある同世代の牝馬はほとんど引退しており、またカネヒキリ号も療養中のためそれが叶わなかった。
ヴァーミリアン号は、比較的早い段階からサンジェニュインと併せ馬をしていた牡馬だ。
2頭で併せている時、たまにサンジェニュインが大きく嘶く時もあるが、牡馬を嫌がってと言うよりは、軽くじゃれている時の方が多いので問題ないだろう。
俺が気にしていたのはディープインパクト号。
当初は滞在する厩舎も同じではなかったが、金城さんからの帯同依頼をクラブ側が承諾したことによって、ドバイでのカネヒキリ号と同じく、互いを帯同馬として凱旋門賞に出走することが決まったのだ。
主戦騎手である芝木くんは難色を示していたが、厩務員の目黒くんが問題ないと判断したため、ひとまず検疫厩舎で状態を見ることになったのだが、牡馬2頭と過ごしているにしては、調子は一定を保ち崩れる様子はなかったため、正式に決定した。
サンジェニュインがディープインパクト号とまみえるのは、前年の有馬記念以来のことだ。
栗東での厩舎の位置が離れているため、調教場所で会う機会がそもそもす少ないことに加え、今年はほぼ海外にいたためまったく会っていなかった。
もしかしたら、サンジェニュインの中でディープインパクト号に関する記憶がすっかり無くなり、初対面の馬だと思っているかもしれない……いや、アイツはやたら賢いから忘れるなんてことはなさそうだな。
普通の馬には決して抱かない謎の信頼感を持ちつつ、俺は響いたアナウンスに「いよいよか」と小さく呟いた。
「行きますか」
沼江さんの言葉に頷くと、金城さんが「ダービー以上のドキドキですよ」と口にしたので、俺はつい笑ってしまった。
「そのドキドキを、今年もう5戦くらい味わいました。今回で6戦目です」
海外遠征でドキドキしなかったことはない。
重馬場でこそ真価を発揮する、スピードが増すなど、普通の馬とは異なるサンジェニュインの特別な脚ならば、欧州のレースで輝けると確信はしていた。
でもそれと、緊張しないのとでは話が違うのだ。
管理調教師の贔屓目など抜きに、誰の目から見てもサンジェニュインは本当に普通の馬ではない。
だからこそ、我々が今まで常識としていたような考えに基づく安心感など、得られない。
俺が「ヨシ」とホッと息を吐けるのは、その白毛の馬体が元気よく帰ってきた時だけだ。
「本原さんが言うと、なんだか重みが増しますね」
「キングジョージはヒヤヒヤしたでしょう」
「いやもう、あの時は叫びましたから」
「あんなとこを見ればねえ……私もつい「ああっ」と口から」
「よく走れたものですよ」
本当に、よく走れたものだ。
初めての欧州レースでも、牝馬に囲まれた時も、怪我をした時も、精神的に苦しんだ時も。
最後まで歩みを止めずに走り続けた、その勝負根性に、東京優駿のあの瞬間を思い出す。
“ 努力を裏切るのは諦めだ ”
“ 諦めないことが名馬の条件だと、俺に信じさせてくれ ”
そうして
乗り込んだ飛行機の、その浮遊感に身を任せて目を閉じ、10月1日のフランスロンシャンの空を思う。
晴れて欲しい。
とびきりの晴天になってほしい。
その空から降り注ぐ光を道にして、サンジェニュインの軌跡は世界に刻まれるだろう。
それは史上初の、もっとも美しき白毛の凱旋門賞馬として。
2021/10/10 追記
下記再編成により、65~67話まで加筆修正を行いました。
よりによって凱旋門賞でプロットのガバが発生したので組み直しです。
70話完結予定だったのですが、このガバでどう足掻いても70話無理だったので再編成した結果74話でまとまりそうです。
体調と相談しながらですが、10月の完結を目指して更新スケジュールも立て直しました。
予定通りいかない回もあるかと思いますが、どうか最後まで温かくお見守りいただけたらと思います。
よろしくお願いします!
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39.似ている
2話目の更新。
本日22時にもう1話更新あります。
2021/10/10 追記
下記再編成により、65~67話まで加筆修正を行いました。
よりによって凱旋門賞でプロットのガバが発生したので組み直しです。
70話完結予定だったのですが、このガバでどう足掻いても70話無理だったので再編成した結果74話でまとまりそうです。
体調と相談しながらですが、10月の完結を目指して更新スケジュールも立て直しました。
予定通りいかない回もあるかと思いますが、どうか最後まで温かくお見守りいただけたらと思います。
よろしくお願いします!
2ヶ月に及んだ海外遠征を終えて、約1ヶ月。
帰国後の検疫厩舎での5日間の隔離と、牧場での3週間の着地検査を終えた俺は、栗東に戻らずそのまま再度検疫厩舎に入った。
フランスで開かれる芝のGⅠレース・凱旋門賞に出走するためだ。
これが4度目の海外遠征だが、今回の検疫厩舎では帯同馬がつくことになった。
なんでも俺を移動させすぎたとかで、ストレスケアの為に行うことにしたらしい。
最初はデルタブルース先輩が帯同してくれるって話だったのだが、ヴァーミリアンが療養を終えて栗東に戻ってきたと言うことで、ヴァーミリアンに白羽の矢が立てられたようだ。
まあアイツはやかましいだけで悪い馬じゃないしな。
そんな身構えることもないだろ、ヘーキヘーキ。
── そう舐めて掛かったのがいけなかったのでしょうかねえ、神様よお!
『ハァン?オイ待てよ……俺様が見てない間に、お前、ッなに「かわいさレース」で優勝してんだ!?この顔面天国!ここが天上か?光り輝いて眩しいから顔隠せよ!……顔見せろ!!』
『エッナニ!?!?情緒不安定!?!?』
開幕キレ芸。
もはや安心感まである。
親の声より聞き慣れた叫びが、一周回って五臓六腑に沁みるわあ。
そう思って息を吐くと、ヴァーミリアンはゼェハァ言いながら「ウッかわいい」と呟いた。
今ならボロ落としただけでもかわいい言いそうだなコイツ。
馬房の扉越しに再会したヴァーミリアンは、最後に会った時よりは筋肉がついているように見えた。
心房細動で長期療養に入った時はどうなるかと思ったが、元気そうでなにより。
まあだからといって?俺の無口を噛んだまま勢いよく振り回すのはどうかと思うがな!
頭を回してヴァーミリアンから距離を取り、尻尾を壁に叩きつけた。
『カーッ!しなやかな腰回り!肉付きのいいケツ!すらりとした脚!たくましい胸筋!どこ目指してんだ、これ以上かわいくなってどうするつもりだ!?アア!?観光牧場でにんじんどころか一生分の飼い葉貢がれそうなキラキラになりやがって!!愛らしさグランプリホース!やーい神の子!!』
ある意味「神の子」ではあるかもしれん。
っていうかお前のその語彙力はどこで培ってんだ!ノータンファームはナニを育成してるんだ!?
『イロイロ言いたことはあるけど、まあ落ち着けよヴァーミリアン。お前、療養終えたばっかりなんだろ?あんまり興奮するとまた酷くなるんじゃ……』
『ぜぇ……っはぁ、っはぁ……ッうるせえ!!コレが興奮せずにいられるか!!!!ッこの歩く興奮材料が!!!!』
『なんだとテメェ!!!!』
その暴言は聞き逃せねえぞ!!
半ば本当のことだとしてもな!!
「どうどう、どうしたサンジェニュイン、何をそんなに興奮しているんだ」
『俺が興奮してんじゃなくてコイツが興奮してんだよ目黒さあん!!』
『このふにゃケツがぁ……はぁ……はぁ……っ』
ふにゃチ○みたいなニュアンスで言うな!
「ヴァーミリアン号は直接襲ってこないし、何度か併せ馬をしたからいけるかと思ったんだがな」
『そりゃあ他の馬よりはな!!コイツ興奮するだなんだ言ってもうまだっちは……うまだっちしてないよな?』
ちょっと躊躇ってしまったが、ヴァーミリアンの馬房に近づいてその股ぐらを覗き込む。
……なんか字面だけだと俺の方が変態みたいだなあ。
サッと見てサッと頭の位置を戻したが、ウン、確かにうまだっちはしていなかったのでセーフ。
これで元気にうまだったしていたらコイツとの縁もこれきりだっただろう。
俺はこれ以上トモダチを失いたくはない。
「……よし。これで準備できた。今日からまた5日間、隔離に入るが、隣にはヴァーミリアン号もいるから夜も寂しくなくて良いな」
『それはそうかもしれないが、皐月賞の時みたいに眠れなくなる可能性の方が高いと思うんだが……?』
「お前はなんだかんだで熟睡できるタイプだろ?」
『まああと2日も一緒に過ごせば慣れる自信は……あるけどな!それはそれとしてやっぱり会話成立してるよな?』
「じゃあ俺は行くからな、はしゃぎすぎないように」
『アッちょっと!?逃げるな目黒さん!?』
確実に俺と会話できてるよ……こわ……やっぱ前世馬か?
前世ヒトの馬がいるんだし前世馬のヒトもあり得る。
でもこれ以上深く考えたら別の扉が開けそうだから考えないようにしよ。
それより。
『ぜぇ……ぜぇ……ウェッ……はぁ……はぁ……』
『ちょ、大丈夫かヴァーミリアン、厩務員呼び戻すか?』
興奮通り越して入っちゃいけないとこまでイってる感がある。
『い、いい……あと少しでお前の顔にも耐性ができそうなところだ……ウッ、こっちに顔近づけるな警戒心赤ちゃんか!?でも遠ざけるな~~!!』
『どっちい!?!?』
このままだと堂々巡りな気がするから、馬房に引っ込んで横になる。
俺の顔を見なければこれ以上興奮することはないだろう、たぶん、おそらく、メイビー。
ふかふかにしてもらった寝藁は、新品なのかまだ香りが強い。
ここまで結構な長旅だったので、俺はヴァーミリアンの『大人になったのにまだカワイイ……なんで……』を聞きながらスヤスヤした。
『……ジェ……イン!サ……ニュ……ッ』
……ッんだよさっきから、こっちは寝てるってのにうるせえな!!
『寝かせろ!ちょっとでいいから!』
『寝過ぎだから起こしてんだよ!……ピクリとも動かねえから焦ったぜまったくよぉ』
ガバッと立ち上がって馬房の窓から顔を出すと、さっきまで明るかったはずの空が暗くなっていた。
エッ、俺マジで寝過ぎィ!?
1時間以上も寝た気はしないんだが……もしかして途中で気絶したか?
やば……道理でなんか右側だけ痛いと思ったわ。
寝違える一歩手前だったのかもしれない。
ここで起こして貰えなかったら寝違えた状態でレースに出走してた可能性がある……ありがとうヴァーミリアン、ありがとう!!
『マジ助かったわ~~ッ!ありがとう!俺の分のおやつ後で分けるぜ!』
『ヴァッ!?!?急にふにゃふにゃ笑うな!!!!こっちはそういうのに耐性ねえんだぞ!?!?』
『うわうるさっ』
夜でも元気だなコイツ。
ぎゃあぎゃあ騒がしいヴァーミリアンのよそに、俺は窓の下にある飼い葉桶を見る。
うん、たくさん飼い葉入ってるな。
長く寝ていたからか、おなかペコペコだったので、まだ騒がしいヴァーミリアンを他所に、飼い葉桶に顔を突っ込んで食べ始めた。
うわこれニンニク味噌はいってる~~!
俺これ嫌いだからいれないでって目黒さんに言ったのに!
でも用意されてしまったからには食べるしかない。
ごはんのこすのはわるいぶんめい……!
水道の水で耐え忍んでいたヒト時代の記憶が蘇り、なんだか涙が出そうになったのでニンニク味噌をひと舐めした。
なんかニンニク味噌好きな馬もいるらしいが、俺はこの匂いが苦手なんだよなあ。
でも息を殺して食べればまあ……それに目黒さんお手製だし……。
内心でぶつくさ言いながらもモゴモゴと食べ続けていると、反対側の馬房から懐かしい視線を感じた。
俺に穴でも空けるつもりかってくらい熱い、この視線の主を俺はイヤってほど知っている。
全身を突き刺すようなガン見と言えばカネヒキリくんを思い出すが、カネヒキリくんは療養中なのでここにはいない。
他の馬でこんな風に俺をガン見してくるやつといったら── まあ、お前だよな!
『アイエエ!?ディープインパクト!?ディープインパクトいつから!?』
『ああ、そいつならついさっき来たぞ』
ディープインパクトも凱旋門賞に出走するので、同じタイミングで検疫厩舎に入ること、輸送も一緒だって言うのは聞いていたが、馬房同士が隣り合うのは初めてだったのでびっくりした。
っていうか、真横を見たらいきなりガン見されてたら俺じゃなくてもビビるからな!?
コイツ、目が大きいからガン見される余計プレッシャー感じるんだよなあ。
びっくりして思わず口に入っていた飼い葉を吐き戻してしまった。
も、もったいないことをしてしまった……!
夜中にもったいないオバケが来るかも知れないが、ま、まあ両隣にコイツらいるしそもそもオバケ怖くないしオバケいないしヘーキヘーキ……!
ペッペッと口の周りについている草を落として、変わらず俺を見ているディープインパクトに向き直った。
最後に会ったのは去年の有馬記念以来か?
馬体は相変わらず俺よりも小柄なので、万が一の時は必死に抵抗するからな、この蹄で!
とはいえ、この馬は俺をガン見したり俺にピタッと張り付いてきたり俺のケツめがけて走ってくる以外は無害。
ハーツクライさんみたいに鬣噛んでくるわけじゃないしな……たまに無口を噛んでくるけど。
お互い4歳の大人になったしもうそんなこともないだろう。
思い返してみれば俺たちは若かったのだ……3歳、それは性に目覚めし思春期とほぼ同じようなもの。
ディープインパクトのアレも一時の気の迷いの可能性がある、なんだかんだ言ってコイツもうまだっちしたことはないし。
『よお、久しぶりだなディープインパクト。元気だった?春の長距離レースですげえ走りしたって聞いた。久々にお前と走れるの楽しみだ。敵同士ではあるけど、帯同馬でもあるし今回から仲良くしような……でも俺のケツタッチしたら本気で蹴るからな……!』
俺も海外遠征を通して精神的に大人になった。
相手が牡馬だからってもう必要以上に警戒しないぜ。
すべてのヒトオッスが痴漢くそ野郎ではないのと同じで、すべてのウマオッスが俺の顔とケツに魅了されるわけではない……はずだから。
鬣をハムハムされるくらいならハーツクライさんで慣れたし。
真横でガン見されたり、ガン見されたり、ガン見されるだけならいいんだよ。
そこまでは許容できるがケツタッチされたら蹴らずにはいられない止められない。
ケツタッチは本当にダメだから、アレは鬣ハムハムよりもストレートに身の危険を感じる!
『シャンティイの、あー、外の部屋も隣同士って噂だし……夜はお互い暇にならずに済みそうだな!……まあなんだ、よろしくな』
そう言って頭を突き出して近づくと、ディープインパクトも顔を近づかせた。
近くで見ると穏やかそうな馬である。
とてもじゃないが、終盤で俺に差し込んでくるあのヤベー追い込み馬とは同じやつだとは思えねえなあ。
……いやまあレース中に性格変わる馬とかたくさんいるしな!!なっ!?
ウンウン、と自分を納得させる。
ディープインパクトは相変わらず無口な馬で、俺の言葉にはなんの返事もしなかったが、聞いてないことはないだろう。
カネヒキリくんも割と無口でクールなナイスガイだし、これが栗東のトレンドなのかもしれないな。
でも噂によると俺以外の馬の前では饒舌らしいから……つまり俺相手は喋る価値もない、ってコト……!?そういうことなのか!?オオン!?
ッい、いや落ち着け俺、普通にあんまり仲良くないやつ相手だと緊張しているだけかもしれん。
オッス相手になると穿った見方になるクセどうにかしないとな!!
すべてのオッスがオッスオッスでオッスなワケじゃないんだから!!
俺のカバッ!!自意識過剰被害妄想オッス!!
深呼吸をして自分を落ち着かせる。
いったん離れようと頭を引こうとすると、ぐい、とディープインパクトに無口を食まれた。
アア!?急になんじゃい!!と叫びそうになって、ぐっと堪えて言葉を飲み込む。
そう、俺は大人になった。
すぐには大声出さない、俺は大人の馬、大人の馬、クールでナイスガイ。
『……お?なに?』
ディープインパクトは動かない。
特に何を言うでもなく、ただ食んでじっとしている。
でもなんか言いたそうだし、それを待ってやりたい気持ちもあるが、俺の首もそろそろ限界なのだ。
1回元に戻したい。
軽く頭を揺すると、ディープインパクトは食んでいた無口をそっと放した。
有馬記念でガッツリ引っ張られたときよりは素直じゃねえか。
俺はぐるぐると頭を軽く回して、痛みがないことを確認すると、再び窓から頭を出した。
『で?なに?』
もう1度尋ねると、ディープインパクトは何度か口を開いては閉じ、開いては閉じ。
とても大事な、大事な何かを俺に伝えようとしているのか?
ゴクン、と唾を飲み込み、ディープインパクトの言葉を待つ。
開閉する口をじっと眺めていると、小さな嘶き一つの後に、やわらかい声が聞こえた。
『かわいい』
……はは、ディープインパクト、お前ってヤツはあ──
『さんっざん溜めて言う台詞がソレか!?!?このあんぽんたん!!!!おたんこなす!!!!お前のとーちゃんおひたし!!!!』
『そうなるとサンジェニュインの父親もおひたし?ってやつじゃね?』
『うるさいばーか!!!!』
『かわいい』
『うるせ~~!!!!』
こいつとは仲良くなれない、そう思った。
検疫厩舎での5日間の隔離は瞬く間に過ぎ去った。
最終日、俺とディープインパクトが空港に向かうため馬運車乗り込みの準備をしていると、ヴァーミリアンもそわそわとしだした。
『やはり外か……いつ出発する?俺様も帯同する』
『いやお前、ここだけだよな?』
『ハ?』
『え?』
外に行くのが俺とディープインパクトだけで、自分はここに残されると知ったヴァーミリアンが暴れ出したりと一悶着はあったが、俺たちは無事に馬運車で空港まで運ばれ、輸送機にも乗り込んだ。
フランスでの滞在先はシャンティイなので、今回もピエールさんが乗り込んでいる。
前とは違って、俺1頭の広々空間ではないが、俺とディープインパクトが入ってもそこそこの広さはある。
俺はヒトがいても気にならないタイプだけど、ディープインパクトはそうではないらしく、ピエールさんやイサノちゃんたち厩務員はスタッフ専用の席へと引っ込んでしまった。
フランスに着くまでの数時間をディープインパクトと過ごしたが、コイツの視線だけで腹に穴ができそうだわ。
っていうかもっと話せよ。
結局コイツの口から聞けたのは『かわいい』の言葉だけで、目が合うたびに言ってくるから言い合いになった。
といっても俺が一方的に捲し立ててるだけなんだけどな!!
ヴァーミリアンが便乗してかわいい言ってくるのが一番腹立ったわ。
アイツら俺がアレ言われるたびに騒ぐのを面白がってるだけだろ絶対。
おかげで退屈せずにいられたけど、同じくらい疲れたわ。
フランスに着いてやっとレースに集中できるって言っても、隣ディープインパクトだしな。
まあヴァーミリアンの分の騒音がないだけマシだけど。
「お、よしよし、サンジェニュインもディープインパクト号も飼い葉食べてるな」
「本当にすみませんでした目黒さん」
「いやいや、テキたちの確認も取れたんですし、いいですよ」
お互い頭を下げ合うのは、俺の厩務員である目黒さんと、ディープインパクトの厩務員。
2人が話題にしているのは『飼い葉』── 俺たちのゴハンのことだ。
というのも、フランスに着いてからディープインパクトが飼い葉を食わなくなったのだ。
この時はビックリして、なんで食わないんだよ、レースで力出せねえぞとイロイロ行ってみたが響かず。
ただその視線お向く先を見ていると、どうも俺と同じメニューが良かったらしい。
早速目黒さんに伝えると、次の日から俺と同じメニューを、俺よりも少なめにした飼い葉を出すようにしたら、それまでと打って変わってモリモリ食べだした。
俺の飼い葉って他の馬と違って全部目黒さんがキッチリ配合したやつなんだよな。
既製品じゃなくて、いろんなところから取り寄せたのをブレンドしてるっぽい。
俺はかなり食べる馬なのだが、既製品オンリーだと量を増やすと栄養が偏ってしまうため、栄養素が高くバランスの良いモノを作って貰っている。味も良いぞ!
検疫厩舎にいた時、あまりにも俺の飼い葉をジッと見るのでちょろっと食わせたことがあるのだが、それを気に入ったのか、ディープインパクトはそれ以外は嫌がるようになってしまったのだ。
ディープインパクトの厩務員よ、なんかすまんな。
イギリスだかアイルランドだかのお高い飼い葉を取り寄せてたんだって?
値段のことは考えたくないが……これは俺が悪いわな。
『ソレ、美味いか?』
こくん、とディープインパクトが頷く。
コイツの口からは『かわいい』しか聞けなかったが、頷いたり首を横に振ったりの反応はしてくれるようになった。
意外とこれだけでもコミュニケーションは取れるものだ。
レースまであと数日はあるし、当日まではライバルらしいやりとりができるかもしれない。
……かわいい?こんなのはライバルに言わねえんだよ!!!!
もっとこう、お前と戦える日を楽しみにしてたぜ、とか、ここであったが100年目!とか、そういったやりとりがしたいんだよ俺は!!
この馬生でディープインパクトの口から聞けたのが『かわいい』と『サンジェニュイン』の2つだけなのは嫌すぎるぞ。
『……サンジェニュイン』
キャアアアシャベッタアアア!?!?
……ハッ、喋れるんかお前え!?!?
それにしてもタイミングとかそういう……ほっぺに草ついてっぞ!!
『ウエッ、びっくりして飼い葉吐いた……』
『ごめん』
『ああ、いや、おかまいなく……?』
変なしゃべり方しちゃった。
『ようやく動揺が収まって』
『今までずっと動揺してたのか!?』
『うん……君が隣にいると思って……いろいろ言いたいことはあったんだが、かわいいしか出なかった』
『逆によくソレが出たな』
『僕もそう思う』
ディープインパクトってぼくっこだったんだ……意外……だと思ったけど口には出さなかった。
俺は空気の読める馬だから。
例え「思ったより高めの声」「割とハキハキしゃべるじゃん……」などと思っても口にしないのだ!
『サンジェニュイン』
『……なに?』
ディープインパクトの声は淡々としている。
まるで、静かな夜の、川のせせらぎみたいに。
『僕と君は似ている』
淀みなく言い切った声は、どこかで聞いたことがあるような気がした。
ついさっき?いいや、もっと昔に。
でもどうしてか思い出せなくて、俺は首を傾げた。
『俺、白毛、お前、鹿毛。俺、逃げ馬、お前、追込馬……真逆じゃね?』
『いいや、似ている。もっともっと深い部分で……僕らは、いちばん、似ている』
力のこもった声には、否定を許さない強さがあった。
何がディープインパクトにそこまで思わせているのかは解らなかった。
俺にはまったくもって似ているという気はしかったからだ。
むしろ真逆と言ってもいいだろう。
ディープインパクトに言ったように、毛色も、脚質も、これまでも、これからも。
それでも真っ直ぐに、似ていると断じたディープインパクトの声と瞳は、何かを悟っているようだった。
『僕は、ヒトの期待に応えたいと思って走ってきた』
ピクリ、とその言葉に耳を立てた。
“ ヒトの期待に応えたい ”
確かに、俺もそう思って走ってきた。
俺のことを最高の馬だと抱きしめてくれるテキたちにとって、誇れる俺でありたかったから。
『お母様は、僕にヒトを信じろと言った。同胞は最期までいてくれないけど、ヒトはずっと寄り添ってくれるだろうからって』
ディープインパクトが言葉を続ける。
『今日会えた同胞に、明日は会えない』
つい最近感じたばかりの悲しみが底から引きずりだされる。
『僕たちに同じレースは2度ない』
瞼の裏に、耳の奥に。
『ヒトだけが、ヒトだけはいるから……僕は、彼等の言葉を理解できないけれど、その愛に応えたくて、応えたくて。ヒトだけが最期に、僕の隣にいるから』
嘘偽りのない真っ直ぐさが、俺の心臓の表面を撫でた。
『でも君もいた』
言葉のひとつひとつが揺れる。
『君もいたんだ』
それは静かに、でも叫びたそうに。
『いつも君が前を走る。僕はそれを追う。君の白さを道標に追う。追って、並んで、抜いて、抜き返されて。僕らは最後まで隣り合う』
1度途切れた言葉に、息が吹き込まれた。
『きっときっと、最後まで隣り合う』
それは祈りにも似ていた。
2006年10月1日 フランス ロンシャン競馬場 凱旋門賞 GⅠ 芝・2400メートル
「今年一番待ち望んでいた日が来たと言っても過言ではありません。秋の大レース、フランス凱旋門賞。芝2400メートルで争われます。日本からは2頭。ここまでヨーロッパのレースは4戦4勝、最速の名をほしいままにする美しき逃亡者・サンジェニュイン。今日の馬場は好みの稍重、調子良くパドックに登場、私の本命です。2頭目はディープインパクト。2006年は国内戦線に集中し3戦3勝、天皇賞・春のレコードも更新し、無敗のままここロンシャンのターフを踏みました。末脚自慢のパワー技巧者、鞍上竹と息の合った走りに期待大です」
「ここで日本調教馬、ワンツーフィニッシュが見れたらもう言うことはないですな」
人々の大歓声を背に、俺はターフを歩く。
あと数分もすれば、この身はゲートの中だ。
俺の手綱をしっかりと握る鞍上の芝木くんを背に感じながら、俺は少しの間だけ目を瞑った。
暗くなった視界の中であの夜の、ディープインパクトの言葉が脳裏を過る。
── 僕と君は似ている
── きっと最期まで隣り合う
この言葉の意味を、今も考える。
見た目も性格も脚質も違う、俺たちは生まれだって違う。
大牧場で生まれ、母に育てられたアイツと、小さな牧場に生まれ、母に棄てられた俺。
それでも俺はヒトに愛されて生きてきたし、アイツだってヒトに愛され期待されて生きてきた。
確かにその部分は似ていると言われたらそうだろう。
けど、俺はやっぱり似ているとは思えない。
今日、共に並んだとしても見る景色はきっと同じじゃない。
俺が抱く感情と、ディープインパクトが内包する感情だって同じじゃないだろう。
何が何でも勝ちたい、ヒトのために勝ちたい、そんな言葉は同じだったとしても。
『俺は、自分のためにも勝ちたい』
テキたちが俺を最高の馬だと言うのと同じだけ、俺は俺自身を誇りたい。
この勝利の行く先に、決して揺るがないプライドを持ちたい。
揺れる赤い手綱に、俺は走り切ってやったぞと笑いたい。
短く息を吸い込み、そして勢いよく吐き出す。
いつの間にか真横にぴたりとつけていた、鹿毛の馬を振り返った。
『俺は、お前に勝つ』
秋の風が吹く。
『絶対に勝つ』
俺たちを隔てる。
『このターフに射し込むのは、
ここより先、言葉はいらない。
燃え盛る闘志だけが、雄弁だった。
「1頭、また1頭、この日のために各国選りすぐりの精鋭たちが堂々たる足取りでゲート入りをしていきます。今年の凱旋門賞は9頭で争われます。1番ゲートにハリケーンラン、最初から敵はサンジェニュインただ1頭と力強く宣言しました。得意の好位追走で粘り切れるか注目です。続く2番に鹿毛の馬体、ディープインパクトするりと入りました。これが海外初レースですが、環境の変化を気にせずマイペースに走れるのがこの馬の良いところ。自慢の末脚で先行馬をごぼう抜きする可能性も十分にあるますよ」
「いいですね、ゲート入りがすごくスムーズです。落ち着いているのが見えます。鞍上竹騎手、かなり早い段階からディープインパクトの調教に参加していました。息の合ったコンビネーションに期待」
「3番にベストネーム、5番に入ったプライドの鞍上はグラン・リュベール騎手です。6番シロッコは今年のジョッキークラブステークス、コロネーションカップ、そして凱旋門賞の前哨戦にあたるフォワ賞で1着、こちらも無敗で駒を進めてきました。これを獲れば管理するファイブル調教師にとって2年連続の凱旋門賞制覇となります」
「去年の凱旋門賞は15頭立ての8番人気で4着、実に惜しい競馬でした。今年こそは、という闘志を感じますが、今レース、ファイブル厩舎所属馬はシロッコ以外にはハリケーンラン、レイルリンクと3頭いますからね、その中でもシロッコへの期待は高いでしょう」
「最終9番ゲートに入ったのはサンジェニュイン。欧州競馬は4戦4勝、すべてGⅠレースの勝ち鞍。ド派手な着差に注目されがちですが、何よりの注目ポイントは自在に加速するその脚。そして遠征を通して磨いた洋芝への適応性がどこまで光るか」
「1番人気は伊達じゃないですよ。重いロンシャンのターフですが、今日は稍重でさらに力が要る馬場、まさにこの馬にとって最高のコンディションとなりました。これをうまく利用して、日本調教馬初、そして世界初の白毛の凱旋門賞馬になってほしいものです」
ゲートは相変わらず窮屈だ。
それでも今までのレースよりも苦に感じないのは、きっと、心が燃えているから。
「……サンジェ」
芝木くんの声が響く。
頭に、身体に、すべてに。
「サンジェ」
励ますような。
「サンジェ」
祈りを込めるような。
いいや。
次に聞こえた言葉が、それらを塗り替える。
希望を蒔き代わりに焼べて広がる、その光の言葉に応えるように、俺は力強く大地を蹴った。
「── さあ、世界を照らしに征こう」
俺とお前とで、照らしに征こう。
次回、凱旋門賞本戦(本日10/03の22時更新)
2021/10/10 追記
下記再編成により、65~67話まで加筆修正を行いました。
よりによって凱旋門賞でプロットのガバが発生したので組み直しです。
70話完結予定だったのですが、このガバでどう足掻いても70話無理だったので再編成した結果74話でまとまりそうです。
体調と相談しながらですが、10月の完結を目指して更新スケジュールも立て直しました。
予定通りいかない回もあるかと思いますが、どうか最後まで温かくお見守りいただけたらと思います。
よろしくお願いします!
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40.決闘 ─ 2006年10月1日凱旋門賞
3話目の更新。
とんでもないミスに気付いてしまって、文章の半分をカットしました。
プロットに矛盾が生じるところだった……ということで明日も投稿あります。
BGMはPENGUIN RESEARCHさんの「決闘」で(凱旋門賞でサンジェニュインと)対戦お願いします
2021/10/10 追記:活動報告
下記再編成により、65~67話まで加筆修正を行いました。
よりによって凱旋門賞でプロットのガバが発生したので組み直しです。
70話完結予定だったのですが、このガバでどう足掻いても70話無理だったので再編成した結果74話でまとまりそうです。
体調と相談しながらですが、10月の完結を目指して更新スケジュールも立て直しました。
予定通りいかない回もあるかと思いますが、どうか最後まで温かくお見守りいただけたらと思います。
よろしくお願いします!
フランス・ロンシャン競馬場。
欧州各国から多くの観客が集まり、場内は賑わいを見せていた。
うっすらと雲がかかった空を見て、握りしめた手をゆっくりと開いた。
「本原さん、いよいよですねえ」
「沼江先生……ええ、もうこの日が来たかと思うと、感慨深いですよ」
「初めて競り合った日が昨日のことのようですな。ただお互い、無事にここまでこれたことを祝いましょう」
「ええ」
この日が来るのを待っていた。
誰よりも待っていた自信がある。
あのこの脚が、その適性を持っていると知った日から、夢に描いていた。
決してたどり着けない夢物語ではないと確信していた。
凱旋門賞。
このロンシャン競馬場のターフに、白毛の馬が姿を見せた時、俺は誰にも見えないようにこぶしを握り直した。
(サンジェニュイン、いよいよだ)
走らないかもしれない、と言われていた馬だった。
どうにか走らせてやってよ、と言われて預かった、この白毛の馬が、俺にとっての幸福の源。
多くの馬が手元から去って行って、たった1頭残されたこのこだけは、絶対に高みへと連れて行ってやろうと思っていた。
ただ、俺が思うよりもうんと高いところに、俺が連れていくというよりは、連れて行ってもらう形になったが。
その背に芝木騎手を乗せ、ゲートへと収まる姿にうっすらと涙がにじむ。
だめだだめだ、こんな場面で泣いては。
出走できただけで御の字、なんて思っては。
勝つためにきたので。
ほかの馬を蹴散らして、その頂点に立つために。
これまで走り抜けてきたすべてのレースは、この時のためにあるのだから。
それでも。
「楽しめよ、サンジェ」
勝てよ、でもなく。
あのこが楽しく走れることを願ってしまうのは、調教師失格なのかもしれない。
だけど、不思議とそんな自分が誇らしかった。
痛みを刻む勝利よりも、楽しかったと笑って帰ってくる姿のほうが、俺にとっては大きな価値だった。
それでいいとも思う。
楽しんで、楽しみぬいて。
楽しかったよ、テキって、そう言って帰ってきてくれ。
怪我もなく、ただ泥んこまみれになって。
そうしたら「またこんな汚して」なんて言いながら、それでも最後は抱きしめるから。
「……楽しめよ、サンジェ」
誰もがそうであるように、その名前に、祈りを込めた。
向けられたマイクにため息を吐く。
これ以上どんな言葉をむしり取ろうというのだろうか。
輝き出す門の向こう側へと吸い込まれていく、馬たちの背を眺めてなお、まだ足りないか。
「意気込みは」
「自信は」
「調子は」
「手ごたえは」
言葉を変えても、本質は一緒だ。
絶対など存在しないレースに対して投げかけられた質問への回答は、ただひとつだけ。
「負けるつもりで走る馬などいませんよ」
勝利も、敗北も、すべて紙一重。
でも誰もが追いかける。
栄光を追いかける。
最初から負けを知り、あきらめ、投げ出す騎手も馬も存在しない。
「どうぞ好きなだけ書き立ててください。あなた方の創造の上を行くのが、ホースマンの仕事ですから」
書き立てるがいい。
存在しない苦みを、存在しない幸福を、妄執を、苦悩を、快楽を。
それらすべてを塗り替えて、光を与えよう。
無音のファンファーレが響く。
閉ざされた凱旋門をこじ開けて、その向こう側へと。
馬たちは駆け抜けた。
「全頭ゲートイン完了、体勢が整いまして── 第85回凱旋門賞、スタートしました!」
そうしてどよめく場内に、私は小さく笑った。
「……思う存分、走ってきてくださいよ、竹さん、ディープ」
ディープインパクトがすぐ後ろにいてワロタ。
いや笑ってる場合がじゃないが!?
アイエエ!?ディープインパクト!?ディープインパクトナンデエ!?
「ハナを切ったのは9番サンジェニュイン、安定のスタートダッシュ!出だしでこの馬に敵う相手は早々いないでしょう。後続に3馬身リードをつけてスイスイとロンシャンの直線を進みます。2番手につけたのは1番ハリケーンラン、そのすぐ後ろ、半馬身差の位置に── ディープインパクト!ディープインパクトがもう前にいるぞ、鞍上竹、このコース取りは正解なのか!?4番手集団は込み合いの様子、アイリッシュウェールズがやや抜けて、ベストネーム、プライドがたたき合う状態で進むが、外側1馬身の位置にシロッコ、ほぼ横並びでレイルリンク、シックスティーズアイコンはやや遅れているか現在シンガリ」
「いやあ、サンジェニュイン先頭は想定内でしたが、ディープがあんなに前に出るのは珍しいことです。馬場が稍重である以上、重い馬場を得意とするサンジェニュインのスピードは上がります、後方からのスタートでは分が悪いという判断でしょうか、竹騎手の思惑が気になります」
広すぎる視界の端に、確かにディープインパクトの鹿毛の馬体が見え、俺は嘶きたい気持ちを押せつけた。
『ええ……お前いつも後方からの競馬だったやろがい!!』
と思いつつも、まあ、こういうパターンもあるとは思っていましたよ、ウン。
は?強がりじゃないし、本当に思ってたしい!
実際、ディープインパクトって出遅れが多いから追込で使われてるだけで、本質は前へ行きたがるタイプっぽいんだわ。
ただヒトのいうことちゃんと聞くやつだし、ヒトのことちゃんと信頼してるから掛かるコトは早々にない。
後方に下げられたって大人しく走って、最高の瞬間を最高のタイミングで飛び出すのだ。
俺だったら「前へ行かせろオラァ!」って叫んでたところだわ。
コイツの我慢強さは本当にすげえな!
「クソッ、ディープインパクトがまさかこんなに早くでてくるなんて……ッ」
おうおう芝木くん、焦るな焦るな。
お口も悪うなってますわよッ!
いやまあね、確かに怖いよな、こいつ後方から追い込んでくるくせにスタミナばっちりあるしスピードもパワーもトップレベルだもん。
逆にコイツに足りないものはなに?って聞きたいくらいだわ。
なあ芝木くんよ、覚えてるか菊花賞の時、俺が坂で疲れて一瞬スピード落とした瞬間に、後方からすげえ勢いで切り込んできた鹿毛の馬体。
アイツあのレースを2000メートルだって勘違いして走ってたっぽいから、たぶん走るペースは崩れてたワケだろ?
それなのにグングン上がってきて並んできた時は、なんだこいつ、怖っ!?って思ったもんな。
どうしても負けたくない、コイツにだけは、このレースだけはって意地だけで加速してなんとか勝てたわけだが。
しかもレース後さあ、爆走の反動で俺は立てなくなってたのに、ディープインパクトのやつはピンピンしてたって聞いて、もう意識ぶっ飛ぶかと思った。
アイツもやべえペースで走ってたのになんで反動来てないんだよ……!
それと今回の遠征な!
シャンティイでの調教でアイツ、初めての洋芝のはずなのにすいすい走っちゃってまあ。
あのハーツクライさんだって「思った以上に重い」って走り方ぎこちなくなってたのに。
なんで最初の1本目から調教のタイム差無しなんですかねえ!?
俺は洋芝や重い馬場が最高にマッチする分、パンパンの和芝では脚を痛めるリスクがあるっていうのに、ディープインパクトはそんな様子もなさそうなのがこう……胸に来るモノがあるわ。
っていうか、ものすごく嫉妬した、アイツの才能に。
テキや芝木くんは俺贔屓だから「お前は完璧だ」って言ってくれることもあるけど、完璧っていうのはディープインパクトみたいに、和洋問わずどんな芝でもリスク無く走れる馬のことを指すんだってことを理解した。
そもそもだよ、俺はヒトの言葉が理解できるから、テキたちの調教計画をまったく崩さずに熟せる。
そのおかげで無駄な時間は一切省けて、ひたすらに成長できた。
でもディープインパクトは違う。
コイツは純粋な馬だ。
俺みたいにヒトが入っているワケでも、ヒトの言葉が理解できるワケでもない。
それなのに時々、俺を上回るのは、純然たるベースの違いだ。
やっぱ本質的な部分で、俺とディープインパクトは似ていないし同じじゃない。
秀才が天才には成り得ないように、届かない一瞬の壁が俺たちを隔てているのだ。
だから仕方ない、ディープインパクトが洋芝に適性を見せてても、ぐんぐん迫られちゃっても仕方ない。
……ってんなわけあるかッ!
「サンジェニュイン、ここでワンテンポ上げてきた、やや加速し3馬身縮まったリードを4馬身、5馬身に引き延ばそうとしています。鞍上芝木からはまだ鞭はないぞ、完全に馬ナリ、マイペースで走る重馬場の王様サンジェニュインです」
才能がなんぼのもんじゃい!
才能だけで生きていけるような世界じゃないのは、これまで走ってきた多くの馬たちが証明してくれただろうが。
どんなに優れた才があっても、そのためだけに走り続けたヤツには、天才とはまた違う、ソイツだけが抱え持つ強さがある。
才能という高くて頑丈な壁に、ヒビを割り入れる強さが。
それは経験であり、知識であり、情熱であり。
『プライドだろうが……ッ!』
さらにもう1回、加速する。
芝木くんが綱を引いてくるのもお構いなしに走った。
「サンジェ──ッ!?」
あーもうっ!!芝木ィ!!
お前の乗ってるこの白毛馬は、相手の才能や努力や奇策にビビっちまうような馬だったか!?
違うよな!!ちょっとオッスどもに追われると逃げ脚速くなるけど、誰よりも先頭を駆けてきた馬だろ!?
オラオラッ!!いつもの言葉を思い出せや!!
テンションぶち抜く、いつものやつを!!
リピートアフターミー!!
今日も、今日だって、いつだって俺は── !?
「……お前は、お前が、最高だ!」
以心伝心、人馬一体!
わかってるなら今回も張り切って先頭キープしましょうね~~!
「最初の直線600メートルを過ぎて先頭は依然サンジェニュイン!サンジェニュインがキープしています。そのすぐ後ろ、ハリケーンランを交わしてディープインパクトが前へ出てきました、先頭との差は6馬身。4番手集団から抜け出したアイリッシュウェールズ、続くのはレイルリンク、プライド。重めの馬場です、スローペースで回りたいところ、先頭がハイペースを刻むので全頭つられている様子、時計はやや早めです」
「先頭がサンジェニュインだとよく陥るパターン、決して珍しくはありません。流れを変えるには先頭を交代するか、サンジェニュインがペースを落とすか」
「上り坂抜けて、ディープインパクトが少しスピードを上げたか、ハリケーンランとの差が出てまいりました、ただしレイルリンク、レイルリンクが粘り強く前を目指しています。先頭サンジェニュインとは7馬身差、最後方シックスティーズアイコンとは15馬身差近くがついていますよ。このまま逃げ切り勝ちで新時代を切り開けるか、白毛の先駆者・サンジェニュイン」
直線を抜けて目指す先はカーブ。
ロンシャン競馬場のコーナーカーブは俺、だいすき!!
アスコット競馬場のコーナーカーブが無慈悲なおむすびカーブだったことを思い出すと、慈悲深くて泣いちまうわ。
いつもとは違ってやや内よりの真ん中を選んで曲がり抜く。
スピードは落とさず、されど無理せず。
首をぐっと下げ、ひたすらに前をだけを見て走り続けた。
1つ目のカーブを曲がったところで、芝木くんから鞭が入った。
それは2番手の馬── ディープインパクトとの差が3馬身以内になったという合図。
……直線のところで6馬身以上は突き放したはずなのに、本当に油断できねえ馬だな。
ちらりと視界の端に映った鹿毛は、久々のレースだっていうのに全然懐かしさを感じない。
むしろ「いつものやつな」と思うくらいには、最後、競り合う馬はこいつになるから。
ある意味、そうあるべきなのかもしれないけれど。
そうなってしかるべき、引かれ会うように、等というと、運命だというやつがいる。
運命に導かれるからそうなるのだと。
でも俺は、運命ってやつのことは信じていない。
そりゃあ俺は、こいつを一発ぶん殴りてえと思っていたし、っていうか今も思っている。
バリバリに思っている。
機会さえあればこの自慢の後ろ脚で蹴っ飛ばしたい気持ちに駆られることがある。
それはケツを追われているからじゃなくて、そもそも俺がこんなことになってしまった原因── クソ親父が追い続けていた馬がディープインパクトだから。
元々こいつを一発殴れなかった未練が、俺が馬になるきっかけだったわけだ。
だから運命なんかじゃない。
── ただ必然なだけ
俺の走り切った軌跡をなぞるように追ってくる、鹿毛の気配を感じた瞬間、俺は加速した。
「ここで大きく伸びるサンジェニュイン!2つめのコーナーを軽やかに回って、内側をぐんぐん進むその視線の先にあるのはゴールだけ!しかしディープインパクトの脚色は衰えない!ハリケーンランとレイルリンクの3番手争いを制してレイルリンク、ディープインパクトの半馬身差まで迫りましたがディープ、ディープインパクト抜かされないッ!内側を完璧にキープして、小柄な馬体がぐるりとめぐってサンジェニュインまであと少しだッ!」
あの有馬記念から10ヶ月以上が経ったな。
あの時は脚の痛みと、敗北を与える痛みとでいっぱいいっぱいだった。
ゴール後のお前は下を向いて、ただ黙っていたことを思い出す。
悔しそうにしていたかどうかはわからなかったけど。
でも帰りの馬運車で、お前はまっすぐと前を向いていたよな。
憂い無く。
揺るぎなく。
『……俺たちは似てるってお前は言ってたけど、俺たちはやっぱ似てねえよ』
負けたことを覚悟に変えるのに、俺がどんだけ多くの時間を使ったか、一緒に走ってきたお前も知っているだろ?
泣きわめいていた新馬戦や皐月賞、東京優駿での敗北を持ってようやく、勝てない痛みを勝つための痛みに変えることができた。
けどお前は、黙りこくっていたあの菊花賞からわずか2ヶ月で覚悟を決め、有馬記念でその覚悟を形に変えた。
……物語において、成長する主人公のための踏み台は、だいたい負けキャラらしい。
でも俺たちの場合は逆だな。
成長するのは負けたほうだ。
俺がお前に負ける度、悔しさが積み重なって前へと歩き続けたように。
お前は俺に負ける度、あらゆる感情を強さへと変えていった。
お互いがお互いの踏み台だった。
それでも俺がそれを踏み切って前に進むまでの時間と、お前が踏み切って歩き出した時間とではあまりにも違うから。
どうしたって同じではないと知る。
そして、同じになる必要がないことも。
俺は、この数か月のお前のことは知らない。
どんな走りで、どんな思いで走ってきたかを知らない。
でもそれはお前も同じだろう。
お互いの走りを知るのは、この背に乗せた人間どもだけ。
場内で檄を飛ばす大勢の人間どもだけ。
知りたいとも思わない、知ろうとも考えていない。
知る必要などない。
そんなことよりも、今、この瞬間の走りがすべてだと、解っているから。
『教えあう必要もないよな、勝手に解っちまうよ、早く先頭で競り合いてえなあ!?』
俺の叫びに呼応するように、背後の気配が一気に濃くなった。
『サンジェニュイン……ッ!』
ディープインパクトが俺の名前を呼ぶ。
喜びに満ちた声が腹立たしい。
その声に反応して、弾むようにならされる鞭の音も。
大地を蹴り上げる。
勢いよく頭を前に突き出して、最後のコーナーカーブを回った。
芝木くんの鞭は鳴り止んでいる。
それでいい。
それでいいよ。
ここから先はもう直線だけ。
ただまっすぐだけ。
声なんてない、歓声なんてない。
いらない、いらない。
俺と、お前と、俺たちの鞍上と。
たったそれだけの世界だ。
たったそれだけの世界の中で、俺は、お前に勝つ。
駆って、狩って、勝って。
『ここまで3勝3敗1引き分け── 決着をつけようぜ、ディープインパクト!』
『ッやっぱり最後に隣り合うのは君だな── サンジェニュイン!』
俺たちには多くの期待がある。
寄せられた祈りがある。
勝手に背負わされた宿命がある。
人間って勝手だよな、馬になって改めて思ったわ。
でもそれと同じくらい、俺は愛されてきたよ。
真心を込めて世話されたよ。
冷めない情熱で一緒に走り続けたよ。
そんな人間どもに、俺が……いや、
だからこそ、お前にだけは絶対負けられない──ッ!!
「いよいよ最後の直線だ!サンジェニュイン!ディープインパクト!ここまで粘り強く追ってきた3歳馬レイルリンク各馬半馬身差の縺れ合い!ディープインパクト苦しいか、歩様が少し乱れたが持ち直す!その隙をついてレイルリンク!頭を突き出すがサッとディープインパクトもう1度躱す!サンジェニュインが間に挟まれて、それでもぐんぐん、まだあきらめずに前を目指す残り200メートルだ!」
踏み込む。
突き出す。
前へ、前へ、前へ!
「行くぞ、サンジェ──ッ!」
「止まるなディープ……ッ!」
俺たちの馬体に、最後の鞭が入った。
ロンシャン競馬場のターフを、2頭の馬が競り合う。
日の丸の冠を背負った馬たちの疾走に、声を出さずにはいられなかった。
ただ走り続ける、その姿に光を見た。
突き出して競り合う2頭に、声の限り叫んだ。
今日、この瞬間に灯った明かりが消えないように。
やわらく燃え続ける美しさが損なわれないように。
力ある限り大地を蹴り続ける、その軌跡の向こう側。
「……征け、征け、征け──ッ!」
誰かが叫ぶ、その声が数珠なりにつながってひとつの言葉になる。
シルエットでしかなかった感情が形をもって、大きな波にかわってあたりを飲み込んだ。
刻まれる情熱が、願いが、祈りが、逆さに作られたてるてる坊主を伝って響き渡る、その3文字。
「照らせ──ッ!」
大合唱が、空にかかる雲を追い払う。
その、隙間から。
「……抜けた、抜けた、サンジェニュインが抜けた!」
燦燦と降り注ぐ輝きの名を、天に向かって放つ。
そうして形作られた、いつまでも消えない光があるとして。
「フランスロンシャンの空に咲く、これが無敵の太陽馬──ッ!!」
── 人はそれを、伝説と呼ぶ
JRAヒーロー列伝ポスター第〇〇回 サンジェニュイン
父馬:サンデーサイレンス
母馬:ピュアレディー
誕生:2002/07/02
生産:社来ファーム・陽来
馬主:サイレンスレーシングクラブ
成績:現役(15戦10勝4敗1同着/うちGⅠ・8勝(同着含む))
惜敗で泣く度、お前は強くなった
瞳から零れる涙は力に変わり、お前の道を照らす
その眩しさは、世界の頂点へ
いままでも、これからも
『 伝説だけを照らして征け 』
── その光の中に、希望がある
明日10/4の22時に裏:凱旋門賞を更新します(今回プロット上の都合により入らなかったもの)
2021/10/04 追記
作者、39度の高熱下がらず、本日本編(裏:凱旋門賞)の更新が難しかったため、今週日曜日にズラします。申し訳ない。
かわりに、以前公開していて削除した番外編から一部、修正済のものをこちらに投稿します。
下は活動報告です。お礼と今後の予定について。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=268790&uid=53018
2021/10/10 追記:活動報告
下記再編成により、65~67話まで加筆修正を行いました。
よりによって凱旋門賞でプロットのガバが発生したので組み直しです。
70話完結予定だったのですが、このガバでどう足掻いても70話無理だったので再編成した結果74話でまとまりそうです。
体調と相談しながらですが、10月の完結を目指して更新スケジュールも立て直しました。
予定通りいかない回もあるかと思いますが、どうか最後まで温かくお見守りいただけたらと思います。
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41.あの日、君を追いかけた ─ 裏・凱旋門賞
凱旋門賞に至るまでのディープインパクト陣営の話(ヒト族いっぱい)
65~67話に加筆修正しました。
https://syosetu.org/novel/259581/65.html
https://syosetu.org/novel/259581/66.html
https://syosetu.org/novel/259581/67.html
大百科を更新しました。
https://syosetu.org/novel/259581/1.html
例えば、僕のことなんか知らないって前を向く、目のギラギラを見たとき。
例えば、そのふわふわの鬣が風に揺れて、甘い匂いがしたとき。
例えば、その丸い目から涙が零れて、キラキラして見えたとき。
共感と、感動と、うれしさと、ほんのすこしの動揺。
それが、僕が彼に抱く、すべて。
「どういうことですか、沼さん」
事務所の扉を無遠慮に開いて、低く唸るように呟いた目の前の男に、沼江はわざとらしく肩を竦めた。
「どういうことって?」
「ディープインパクトのローテーションです!なんですか、これは」
そう言って男── 竹が沼江に叩きつけたのは1枚の紙だった。
なんの変哲も無い、次走について書かれただけの紙を見やって、だからなんだと沼江は言葉を返した。
そんな沼江の様子に、竹は憎たらしそうに、怒鳴るように口を開いた。
「10月の凱旋門賞に出走することは聞いていました、聞いていましたがしかし、しかしステップレースをひとつも使わないとはどういうことですか!?」
10月に行われる凱旋門賞には、いくつかの前哨戦、ステップレースが存在する。
その前哨戦を叩く、つまり出走してから本戦となる凱旋門賞に挑むのが、ひとつのパターンとなっていた。
凱旋門賞2着まで駆け上がったエルコンドルパサーもまた、前哨戦となる「フォワ賞」を勝ち抜いて本戦へと出走している。
1度も海外レースの経験がないディープインパクトは、だからこそ、その前哨戦を使ってから本戦へと進むべきだと竹は考えていた。
「使わないものは使わない、そう私とオーナーとで決めた」
「ッ僕は、使わない理由を聞いているんです……!沼さん、知らないわけないでしょう凱旋門賞がどんなものか!」
「ちょっと、
今にも掴み掛かりそうな勢いで迫る竹を、沼江の息子・寿馬が止める。
それを飄々とした様子で気にもとめていないような沼江の態度に、竹はますます眉間の皺を深くした。
「なんのステップレースも触らずに凱旋門賞直行……これで勝てると本当に思ってますか?」
「なんだ、お前は勝つ気がないのか?」
「あるから言ってるんですよ……!?僕は、僕とディープインパクトはね、負けるつもりで走ってきたことなんて1度もない!」
寿馬の腕を振り払い、竹は沼江の肩をつかんだ。
それから2度揺さぶると、どうしてですか、とか細い声で呟いて、唇を強く噛みしめる。
耐えがたい痛みに身を焦がすような表情を浮かべ、苦しそうに口を開いた。
「ディープインパクトは、サンジェニュインとは違うんですよ」
その言葉に寿馬が気分を害したように表情を歪めるも、沼江は依然として表情を変えることはない。
竹は眉間に皺を寄せたまま、言葉を続けた。
「欧州初戦で26馬身差。これが出せたのは、重馬場が本来の適性であり、荒れ地を駆け抜けるパワーを持つサンジェニュインだからです。ディープインパクトでは、今日明日と欧州で走らせて出せるような着差ではない。違うんです、この2頭は」
「創くん」
「目が眩みましたか、日本調教馬でも世界に通用することを確信して油断ができましたか、3度サンジェニュインに勝って、負けたって2センチ差まで追いすがったことが自信になりましたか。……それがなんになるっていうんだ」
「言葉が過ぎるぞ、創くん……ッ!」
竹の肩をつかみ、沼江から引き離そうとする寿馬の腕を振り払って、竹は再び沼江の肩を掴んだ。
「僕は、ディープインパクトは強い馬だと確信を持って言えます。この馬は強い。今年だけで2つのレースレコードを塗り替えた。古馬相手にも怯まず、勝ち続けたんです。国内最強だと言われても、僕は否定しません。この馬は本当に強いから」
「……そこまで言うほど強い馬なら、かまわんだろう、このまま出走しても」
「強いからこそ!……強いからこそ、僕は彼を万全の状態で持って行きたい!」
沼江の言葉を遮るように叫んだ竹の言葉に、事務所は一瞬の静寂に包まれた。
それを気にすることなく、竹は話を続けた。
「稍重の神戸新聞杯」
沼江は一瞬だけピクリと反応した。
「あの時、サンジェニュインを追って走るディープインパクトの脚は、中盤からすでに一杯一杯でした。理由は誰の目から見ても明らかでしょう。ディープインパクトは重い馬場に慣れていなかった。……しかしそれは、サンジェニュインも同じでした」
条件は同じはずだった。
だが結果は違った。
サンジェニュインは逃げ切り、ディープインパクトは差し切れずに沈む。
その着差の大きさは、ファンよりも厩務員よりも調教師よりも、乗り手である竹が一番よく解っていた。
「ディープインパクトとて稍重の馬場で走れないわけではない。ただ経験が足りなすぎた。重い馬場で走り抜けた経験が。……誰もが口を揃えて言う通り、サンジェニュインは重馬場に関して天賦の才を持っています、僕もそうだと思っているし、アレはもはや努力がどうこうではなく、単純な資質の違い。それをとやかくいうつもりはありません。大事なのは、ディープインパクトもまた、経験さえあればそれに追いつけるくらい、高い資質の持ち主ということです」
重い馬場に、丈の長い芝に慣れ、最適な走り方を覚えて行ければ、ディープインパクトは十二分サンジェニュインを追い詰めることができる。
竹はそう確信していた。
確信していたからこそ、そのためのチャンスが得られない事実を、受け入れたくなかった。
「どうしてですか」
震える声が響く。
「沼さんだってわかっていたはずでしょう、ディープインパクトに足りないのは経験だと」
沼江は答えない。
「僕とディープインパクトは……ッ!本気で……本気でサンジェニュインに勝とうと……ッ!それなのに……」
沼江の肩を掴む竹の手に、もう力は無い。
ゆっくりと離れていくその両手を、沼江はぐっと掴んだ。
そのまま引き離されるだろうと考えていた竹は、しかし、いつまでも両手を包む沼江を不思議に思って、その表情を覗き込む。
ずっとしかめっ面をしていたはずの沼江は、竹と視線が合うと、ほっとしたような表情を浮かべた。
「よかったよ、お前がそんなに怒ってくれて。てっきり── そこまで興味ないのかと思っていた」
「は……」
予想外の台詞に竹が言葉を詰まらせていると、沼江は竹の手を離し、椅子に深く座り込んだ。
「去年から少し考えていたんだ。お前の騎乗について……ずっと囚われていたものについて」
アレから8年が過ぎた。
沼江はそう話し始めて、内心でそれを否定する。
沼江にとっては
沼江の過去の管理馬に、メジロマックイーンという名馬がいた。
竹はこの馬の、古馬になってからの主戦騎手。
この頃の竹は22歳と若く、前年、21歳にして稀代のアイドルホース・オグリキャップの引退レースを彩った騎手として、注目の最中にいた。
だが周囲の熱狂を他所に、竹はいつも冷静で、澄ましている印象だったことを、沼江はそっと思い出した。
その冷静さとは裏腹に、誰よりも青臭く、競馬をまっすぐに愛していたことも。
大多数に望まれるような「竹創」像を演じながら、内心の熱を隠して走り続けていた竹が、それを堪えきれなかった馬こそが、サイレンススズカだった。
「あれほどまでに、たった1頭の馬に入れ込む姿を見たのは初めてだった。このまま潰れやしないか心配もした」
恐ろしいことに、竹の理性は強く、たった1度の痛飲以降、酒に身を任せることなく努めて冷静に、何事もないように、荒れ狂う競馬の世界へと戻っていった。
それでもその胸の内に、栗毛の馬がしっかりと住み着いていたことは、沼江の目から見ても明らかだった。
しばらく感傷に浸らせ、心の整理をつける時間をやるべきか考えた沼江の元にディープインパクトが預けられたのは、神の悪戯だろうか。
明らかに他の馬とは格の違う、美しい馬体をした馬に乗せる騎手を竹に定めたのは、沼江なりの、竹という騎手への愛情だった。
「調教では順調だった。相性が良いと見て取れたし、お前もディープインパクトに集中しているのがわかった」
それが崩れたのは、2004年12月19日。
阪神競馬場5R新馬戦、芝2000メートル。
噂は聞いていた、写真越しにも見たことがあった。
その白毛が風に揺れるたび、馬も人も視線を奪われた。
ただそこに立っているだけで、馬は特別な空気を放っていた。
「他馬を置き去りにする圧倒的な大逃げは、いっそ罪深いとさえ思えたよ」
どうして今、現れる。
沼江は、その一瞬で思い浮かべた感情に翻弄されながらも、その時はまだ冷静さを保っていた。
しかしまたもや感情を揺さぶられることになる。
年明け2005年の弥生賞で、ゴール後にサンジェニュインが倒れると、竹の空気は一変した。
サイレンススズカの一件から持ち直しているように見えた、竹の胸の傷が一気に広がったのを、沼江もまた感じていたのだ。
それでも騎手として誇りを失わず、レースではそれらを欠片も見せなかった竹のプロ根性には、拍手を送らざるを得ない。
皐月賞、東京優駿と、ディープインパクトの主戦騎手として恥じない走りを見せてくれた。
「満足だった」
最後の菊花賞へと、シンボリルドルフ以来21年ぶりの無敗三冠を頂く道は開けた、と。
そう思うと同時に、沼江の心中を酷い罪悪感が渦巻いていた。
「お前がサンジェニュインに乗りたがっているのは知っていた」
弥生賞での出来事を経てからますます強まっただろう、サイレンススズカへの思い。
今は亡き名馬へと向かうはずの、その感情の行き先がサンジェニュインだと知っていてなお、沼江ははいそうですかとそれを許すわけにはいかなかった。
それはもちろん、竹と沼江の間に横たわる信頼のことでもあり、もっと大きく考えると、今後の竹の騎手人生に大きな影を落とすだろうと解っていたからだ。
「ディープインパクトと出会ったことで、お前はサイレンススズカではない、新しい夢を見られると思っていたが、それがかえってお前の枷になってしまった」
「違います、そんなことは……!」
沼江にとって竹は、競馬という厳しい道のりを共に戦い抜くパートナーであると同時に、もう1人の息子も同然だった。
叶うならば憂い無く好きな馬に乗り、力ある限り走って欲しい。
しかしそれはできない、許されない。
競馬は感情だけで動いているわけではないと、沼江はよく知っているからだ。
1頭1頭の馬に詰められたドラマの内側に、多額の金銭が動いている。
好き嫌いではどうにもならない世界なのだ。
「調教時の騎乗を許可したのは苦渋の決断だったが、あの夏以降のお前の顔を見ていたら、間違っていなかったと思っている。それでも……」
沼江は悩み続けた。
ディープインパクトと竹が阪神大賞典を、天皇賞・春をレコードで制してもなお、悩み続けたのだ。
「今、国内にサンジェニュインはいない」
今や画面の向こう側にいる白毛の馬。
ディープインパクトに集中できているのは、その馬がいないからではないか、という疑心。
もしディープインパクトを早い段階で海外遠征に行かせたら、そこで竹がサンジェニュインの走りを見てしまったら。
好みの馬場を自由に走り、他の追随を許さない圧倒的な走りは、竹でなくても魅了される。
いつまでの栗毛の幻影を追い求める竹であればなおさら、強く惹かれてしまうだろうと、沼江は考えていた。
「僕を……信じ切れなかったと、いうことですか……」
竹はそう力なく口にした。
暗に、いつか裏切るだろうと思われていたことが、竹にとってはショックで仕方なかった。
沼江はギョッとしたように口を開きかけると、小さく
「ッいや……いや、そうだ。正直に言おう、信じ切れなかった」
「父さん!?」
寿馬が驚いたように沼江を見た。
沼江はまた頭を振って、それから言葉を続けた。
「申し訳ないと思っている。お前にも、ディープインパクトにも。それくらい……それくらいサンジェニュインの輝きは、見る者を眩ませる。良くも悪くも。あの馬に夢を見ている者の大半が……私や創のように、一級戦の戦いを制した者たちがほとんどだ。それが何故なのか、寿馬、わかるか」
沼江の問いかけに、寿馬は悔しそうに俯いた。
「国内で並み居る名馬たちを退け手にした栄光── それを抱いたことで我々は、さらに上を見るようになる。国外に目を向け、険しい戦いを知る。40年以上の挑戦の中で、駆け抜ける前に崩れ落ちる優駿の門の、耐えがたい苦しさを知っているから、あの馬に── サンジェニュインに期待して止まない」
国内外の、特に欧州の競馬場と日本はあまりにも違い過ぎる。
芝質はもちろん、気候が異なることで馬場状態もまったく違う。
パンパンに張った高速馬場が当たり前になりつつある日本に適応した馬が、重く沈み、スタミナとパワーを最も必要とする欧州のレースに適応することも、勝ち上がることも難しい。
「しかしサンジェニュインは適応しただけでなく、圧倒して見せた」
国の違いによって生じる多くの不利を撥ね除けて勝ち進んだ。
「この馬ならば」という思いが関係者のみならず、競馬界全体に広がりつつある。
長く業界に身を置いている沼江には、方々から話が入ってくるから、誰よりも敏感だった。
「父さんもその波に呑まれているのか……自分の馬では無理だと……」
「……いいや。私はやはり、自分の馬で勝ちたい。勝ちたいからこそ、このままコイツを乗せ続けて良いか悩んだ」
心に迷いのある竹を乗せ続けて良いのか。
オーナーより託され、沼江自身もまた「馬としてこれ以上ない素質」を持っていると信じている、ディープインパクトの鞍上に。
サンジェニュインに心揺れる騎手を背にして、競り合いの最中に隙が生まれやしないか。
竹が乗るんだ、まったくそんなことはないだろう、と断言できないくらいには、深く悩んでいた。
「沼さん……」
竹は、8年間抱え続けてきた、撫で続けてきた傷が、自分以外にも大きな影を落としている事実に、酷く動揺していた。
それ以上に申し訳なく思った。
避けられない事故など、サイレンススズカの一件だけではない。
竹はいい加減前を向き、歩き始めなければならなかったのかもしれない。
それでもいつまでも私情で振り切れずにいた。
それが、こうして恩ある沼江を悩ませていたことが、ただただ申し訳なかった。
項垂れる竹を見て、沼江がその肩をポンと叩いた。
「だが今日のやりとりでそれらは杞憂だと知れた」
竹が顔を上げると、沼江は穏やかそうな顔で笑って頷いた。
「お前の口から、あんなことが聞けるなんて」
“ 僕とディープインパクトはッ!本気で……本気でサンジェニュインに勝とうと……ッ!それなのに…… ”
心揺れる騎手の放つ台詞ではなかった。
ディープインパクトただ1頭に心を預け、共に戦い抜くことを誓った男の言葉だった。
沼江は、この一連のやりとりで、竹の声色から、目から、言葉のすべてから思い知った。
「疑って悪かった」
心を込めた声色でそう言うと、沼江はその場に膝をついた。
竹は慌てたようにその身を起こそうとするが、沼江は動かない。
きっかり5分間、額を地面につけた沼江は、しばらくすると竹の手を借りて再び立ち上がった。
「沼さん……僕が未熟だったばかりに……」
「騎手を信じ切れない、私にも非がある、すまなかった」
繰り返される謝罪に、竹が待ったを掛けた。
「本当に、謝らないでください。不安を抱かせた僕の非は大きい。それに……ディープインパクトが海外で調整するためのチャンスをふいにしたのは、きっと僕のソレがあったからでしょう」
ならば僕自身がチャンスを潰したも同然です、と竹が言葉を続けると、沼江はハッキリと首を横に振った。
「それとこれとは話が違う」
「え?」
困惑する竹を前に、沼江は寿馬に車を出すように指示する。
用意された車に竹を放り込むと、寿馬が運転する車の助手席に乗って、短く行き先を告げた。
「北海道へ」
数時間後。
沼江が竹をつれてやってきたのは、広い放牧地を持つある牧場だった。
どこか目的地に向かって歩き続ける沼江を追いながら、竹はさりげなく周囲を観察した。
古い施設と真新しい施設とがアンバランスな牧場だったが、それ故か珍しく視線があちこちに吸い寄せられていく。
不思議な雰囲気の牧場だと思いつつ、竹は口を開いた沼江の言葉に耳を立てた。
「寿馬、サンジェニュインが向こうで月イチ出走しているのは何故か、わかるか」
「GⅠのタイトルを積むため、じゃないんですか?」
困惑したような寿馬の回答に、沼江は首を横に振った。
「サンジェニュインが月イチでレースに出走するのは、向こうの馬場がサンジェニュインの脚に負担を掛けないからだ」
そして「サンジェニュインは使われるごとに調子を上げていくタイプだ」と説明する沼江を、竹はすかさず肯定した。
「だがうちのディープインパクトは違う」
凱旋門賞のステップレースはいくつかあるが、宝塚記念に出走した後でも出走可能なレースの場合、かなり限られてくる。
望ましいのは同じロンシャン競馬場で開催されるフォワ賞への出走。
しかし、フォワ賞から凱旋門賞までの日程は中2週と、決してゆとりはない。
過去のGⅠ勝ち馬にも共通するように、蹄の薄いディープインパクトを前哨戦となるフォワ賞で使用して中2週の凱旋門賞は、体調も含めてかなりリスキーだと言える。
毎月叩くことができないタイプの馬なのだ。
「あの、テキ……ソレより前に遠征とか、できんかったのかなーって、思いまして……」
手続きのために沼江がつれてきた厩務員が、そうおずおずと沼江に質問すると、沼江はひとつ頷いて再び首を横に振った。
「そもそもディープインパクトを国内戦に集中させたのは、もちろん国内の芝がディープインパクトに合うからということもあるが、何より引退後を考えてのことだ」
かなり早い段階から「阪神大賞典、天皇賞・春、宝塚記念」の3レースに関しては出走予定だった。
古馬になった時の大レースと言えば天皇賞・春/秋に宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念が主たるところ。
サンジェニュインの海外遠征が決まるまでは、凱旋門賞出走すら予定外だったことを考えると、無難な選択だと言えた。
そしてその無難な選択とやらは、引退後、つまり種牡馬入りした後のディープインパクトの扱いに大きく影響する。
「サンデーサイレンスの後継種牡馬としてスペシャルウィークらが仔を出し始めている現状、三冠を逃し、有馬もすり抜けていったディープインパクトの種牡馬入りは、決して楽観視できるものではない」
二冠を制した時点で種牡馬になれない、ということはまずない。
そもそもディープインパクトは良血であり、それに見合う戦績は3歳時点で既に出している。
種牡馬入りは目標ですらなく、当たり前の通過点だと、沼江は強調した。
それでも国内戦に集中させたのは、より好条件での種牡馬入りのため、そしてより多くの名牝を集めるためには、国内での影響力を強めていく必要があるからだ。
それまでは海外に行くことなどそうそうできなかった。
「伝統の天皇賞・春と宝塚記念への出走は確定だった。そして期待通り結果を出してくれた」
いずれも5馬身差以上、天皇賞・春に関してはレコードタイム。
これで国内で求められてきた力は見せきった。
後は、世界の大舞台で魅せる時だ。
宝塚記念を制してすぐ、沼江は長期遠征も企画していたが、ディープインパクトの疲労や馬主との折り合いを前に難しく、前述の通り中2週からの凱旋門賞の厳しさも考えて、あえて直行することにしたのだ。
竹への疑心が、海外遠征を断念した主軸ではないことを繰り返し宣言しながらも、しかしそれが判断材料のひとつになったことだけは、沼江は否定しなかった。
竹はヘンに誤魔化されるよりも、こうしてありのまま言葉にする沼江に内心で感謝した。
竹という男が、下手に慰められることの方が苦しい性分だと、沼江は知っていたのだ。
騎手への疑心に、馬主との折り合いに、馬の体調。
様々な悩みの中で、沼江が決断したあらゆること。
それらに思いを馳せ、納得しきれない思いを抱えながらも、竹は割りきることにした。
ステップレースに挑めないとしても、竹自身ができる全力でディープインパクトを支える。
勝つための道筋を描き続け、決してブレないと心に誓ったところで、沼江が表情を緩めた。
「確かにステップレースは使えないし、長期間向こうで調整することもできない。……だが何もしないわけじゃない」
ピタリ、と沼江の歩きが止まる。
その視線の向く先を見て、竹は大きく目を見開いた。
「ディープインパクトと共に優駿の門をくぐる……そのために選んだ道がこれだ」
育成牧場かと錯覚するほどの広大なトラック。
パッと見でもわかる丈の長い芝は、札幌競馬場で見たモノや、欧州のレースで竹が見たモノに似ていた。
「今年の春に完成したばかりの施設だ。元々リハビリ用だった洋芝コースを、さらに広く、坂をつけるよう改修したそうだ」
「リハビリ用……?」
そもそもこの牧場はなんだ、と竹が困惑した様子で首を傾げた。
竹たちが乗っていた車は牧場の関係者用の道を通ったため、その看板を一度も見ずに進んでいた。
困惑が見て取れたのか、沼江が苦笑いを浮かべながら話を進めた。
「ああ。
社来ファーム・陽来は、その前身を「陽来牧場」と言った。
北海道で2番目に古いサラブレッド生産牧場であったが、1990年代後半から生産数が減少し、2000年代に入る前には競走馬専用リハビリセンターとしての機能のみを残していた。
2000年に社来グループに吸収された後は「社来ファーム・陽来」となり、リハビリを中心として今は繁殖牝馬1頭、その仔馬を1頭だけ有している。
サンジェニュインはこの牧場の吸収後初めて生まれた仔で、現在有している繁殖牝馬というのが、その母馬であるピュアレディーだ。
仔を2頭出したが、そのどちらも育児放棄したほか、配合予定のキングカメハメハを蹴ろうとしたため年明けにはアメリカに戻される予定となっていた。
陽来には元々リハビリ用に洋芝のコースがあり、サンジェニュインの初等育成にも使用されていたという。
それを改良して新たな洋芝コースが整備され、社来グループの許可を貰ってここでディープインパクトの調教をすることになったと、沼江は語った。
「ここでなら、万一の時でも熟練のスタッフによる迅速な手当てを受けることもできる。装蹄師も控えてるってことだから、脚のケアもしっかりしてくれるだろう」
沼江が言い終わるのとほぼ同時に、陽来の事務所から2人の男が駆け寄ってくる姿が見えた。
「ようこそ、陽来へ。沼江さんは先日ぶりで」
「その節はありがとうございました。今回はディープインパクトの主戦にも施設を見て貰おうと思いまして」
「ああなるほど」
沼江の短いアイコンタクトで何をくみ取ったのか、男はウンウンと頷くと竹に向き直った。
「私、ここでディープインパクト号の担当をしています、米村と申します。隣にいる大津は、当歳から1歳秋までのサンジェニュイン号の担当を務めておりました。今回はサポートとして付きます」
「ご紹介にあずかりました、大津と申します。若輩者ですが、精一杯サポートさせていただきます」
そう言って生真面目そうな好青年、大津が頭を下げると、竹も慌てて頭を下げた。
サンジェニュインを担当していたというから、もっと年上の手慣れた男が出てくるかと思っていた竹は、予想外の若さに驚きつつも感心した。
自慢でも驕りでもないが、竹も沼江も競馬界では名の知れた人間だ。
それに臆さず、失礼なことを言うわけでもなく、背筋を伸ばして立つ大津に好感を抱いていた。
その大津は、竹の右後ろにいる厩務員の顔をじっと見ると、にこりと笑顔を見せた。
「サンジェニュインの担当をしていましたが、だからと言って手を抜くような真似は一切しません!むしろ、サンジェニュインを担当していたからこそ、手抜きなど言語道断。陽来のスタッフとして誇りを持って、ディープインパクト号のサポートを全力で行います!」
「あ、ああ、すんません……!失礼な
「いえいえ!心配になるのはわかるので」
その2人のやりとりに、先ほどの視線の意味を知った沼江も頭を下げた。
「いや、大津くん、すまないね」
「いやいやいやいや!!本当に気にしないでください!!それよりも!!……ディープインパクト号、今はリハビリセンターの方にいますので」
「リハビリセンターに?……どこかまずいところが?」
沼江が張り詰めた表情を浮かべると、大津は大げさなくらいに首を横に振った。
「まったく元気ですよ!ただ疲労回復を早めるためだけに、洋芝コースを走った後はマッサージするようにしてるんです。今、そのマッサージを受けてるところです」
その言葉に沼江も竹も安堵したように息を吐いた。
沼江は大津や米村といくらか言葉を交わし、2人と別れると、再び竹に向き合った。
「本場でやるほどの効果は得られないかもしれない。しかし、この最良の限りを尽くした施設で積む経験は、決して無駄にはならないと思っている。ここで9月まで洋芝に慣れる訓練を続けるつもりだが……創にも、時間の許す限り手伝って欲しい」
聞けばこの施設は、翌年の9月から社来グループの幼駒の育成用に準備されていたらしい。
それを使用できるよう交渉しただろう、沼江の努力を思ったとき、竹はたまらない気持ちになった。
竹自身がディープインパクトに抱く情熱を遙かに上回って、沼江のディープインパクトに賭ける思いに強く触れたのだ。
「……言ったじゃないですか。
力強く言い切った竹の言葉が、陽来の空に溶ける。
それに心を合わせるように、小さな嘶きがひとつ、竹の耳に響いた。
2006年10月1日。
白毛の馬が、赤い手綱をつけてターフを走り抜く。
後続は完全にちぎられていて、その影を踏むことさえ許されていない。
圧倒的な大逃げは、美しい軌跡をターフに残して花開く。
その1歩1歩が、世界の中心を揺さぶっているように見えてしかたがなかった。
それでも。
「止まるな、ディープ……ッ!」
僕は、僕らは。
初めて出会ったあの日からずっと、ずっと、ずっと。
君を、追い駆けている。
きっと、これからも。
Natdekeiba.com |
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【史上初へ】サンジェニュインが仏GⅠ・凱旋門賞を制覇!日本調教馬ワンツーフィニッシュ |
現地時間の10月1日、フランスのロンシャン競馬場で開催された凱旋門賞(サラ3歳以上、GⅠ・芝2400メートル)に出走したサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)は、いつも通り調子よくスタートするとハナを切って進む展開。2番手にディープインパクト(牡4、栗東・沼江琢郎厩舎)を引き連れて3番手以下に6馬身差つけたまま終盤までレースを進めた。追うレイルリンク、ディープインパクトに並ばれるも抜き返して、日本調教馬として初の凱旋門賞制覇となった。これで欧州レースは5戦5勝。 また、2着にはディープインパクトが入線。後方からレースを進めるいつものパターンから先行に脚質を変えると、サンジェニュインの背中にピタリと張り付いて猛追。パリ大賞典を制した地元有力の3歳馬・レイルリンクとの叩き合いを制してラスト2ハロン(=400m)をサンジェニュインと競り合った。
サンジェニュインを管理する本原佳己調教師は「感無量。これ以上の喜びはありません」とコメント。騎乗した芝木真白騎手は、2003年デビューし、今年3年目、22歳で掴んだ栄光となった。芝木騎手は記者団へのコメントとして「サンジェニュインは僕の太陽です」と空を指さして答えた。 惜しくも2着となったディープインパクトを管理する沼江琢郎調教師からは「サンジェニュインにはおめでとうの一言。そしてディープインパクトおつかれさま。よく走り抜いた。実りある2着だった」とコメント。竹創騎手からは「サンジェニュインと勝負になるとしたらディープインパクトだと確信を持って挑んだ。最後の叩き合いに勝てなかったのは悔しいが、この経験がディープインパクトをさらに強くする」と次走に向けた前向きなコメントが届いた。
サンジェニュイン1着、ディープインパクト2着となったことで、以下を達成した。 ①史上初の日本調教馬の制覇 ②史上初の白毛の勝ち馬 ③日本初のGⅠ・8勝目(同着の皐月賞を含む) ④凱旋門賞において日本調教馬によるワンツーフィニッシュ
2頭の次走は、サンジェニュインはジャパンカップ、ディープインパクトは天皇賞・秋を予定している。 10月3日の便で共に帰国して検疫を受けた後、ディープインパクトは東京競馬場で、サンジェニュインは競馬学校で着地検査を受ける予定だ。
2004年12月19日に共にデビューし、2005年のクラシックを盛り上げた2頭が、凱旋門賞という世界の大舞台で叩き合い、競り合い、高めあったことは、日本競馬史に残すべき重要なレースになっただろう。 |
冒頭の台詞はディープインパクトです
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side:ウマ娘 ー Ep.13
1万6千文字!!!!(ドッカンドッカン)
「ふんふふーん、今日はアップルアップルアップルパイデーイ!カネヒキリくんの手作り焼きたてアツアツアッポーパイッ!!食べたいッ!!」
「うるっさいぞサンジェニュイン!!!!」
「爆音ヴァッ!?!?」
鼻唄歌いながらポンポンと書類にハンコを押していると、エアグルーヴ先輩が額に青筋を浮かべて机を叩いた。
ごめんなさい!!!!
「今日のおやつがアップルパイだからつい……楽しみで……」
カネヒキリくんが1週間に1度しか作ってくれない、カスタード入りアップルパイがおやつとして出てくる今日。
なんとしてでもこの書類の山を捌ききり、カネヒキリくんのアップルパイを手に入れなくては……!
「……おやつにアップルパイ?なら貴様が食べているソレは?」
「おやつのまんじゅう!!」
「吐け!!!!」
「なんでえ!?!?」
ヒンヒン言いながらもまんじゅうを頬張る。
あ、美味い。
このまんじゅうはデジたんのトレーナーからの贈り物である。
イギリスのホテルで倒れていたデジたんを拾ったお礼だそう。
某老舗和菓子店の有名まんじゅうに舌鼓を打ちつつ、オレはポンポンと小気味よくハンコを押し続けた。
……あ、これ書類の不備あるわ、あぶね~!
「はあ……お前、太るぞ」
「いやあ……オレ、いくら食っても太らないんすよね」
「メジロマックイーンの前で同じことを言ったらとんでもない事になりそうだな。口には注意しろ」
「ふぁい」
むにゅむにゅと頬を掴まれたまま返事をする。
そんなオレたちを見ていたルドルフ会長が小さく笑った。
「そういえばエアグルーヴ。サンジェニュインに聞きたいことがあるんじゃなかったのか?」
「む?聞きたいこと?」
5個目のまんじゅうに手を伸ばしつつ、オレは目の前に立つエアグルーヴ先輩を見上げた。
エアグルーヴ先輩は、オレの視線に居心地悪そうにしつつも、オレの机に置いていたまんじゅうの箱を手にソファへと向かった。
そしてソファ前のテーブルにまんじゅうを置かれてしまったので、オレは書類ごとソファの方へと移動。
まんじゅうを食べない選択肢?
そんなものはねえ!!
「サンジェニュイン」
「ふぉ?」
「口の中のものを飲み込んでから話せ」
よく噛んでから飲み込み、6個目を手に取りつつエアグルーヴ先輩の顔を見た。
エアグルーヴ先輩は咳払いをしつつも、オレに向き合って真剣そうな表情で口を開いた。
「サンジェニュインお前、スズカと何かあったか?」
「ほ……?サイレンススズカ、先輩とですか?……なんもないっすけど」
ススズとは8月のワールドロイヤルターフ以来会っていない。
何もないのだが?と首を傾げると、エアグルーヴ先輩も同じように首を傾げた。
……普段きっちりしてる人が、ちょっと幼い感じの行動をするとキュン!ってくるよな!
「何もないか……そうか……」
「サイレンススズカ、先輩、何かあったんすか?」
オレがそう問いかけると、エアグルーヴ先輩は悩ましげな顔をした。
「アレ以降、様子がおかしいのだ」
エアグルーヴ先輩の言葉に同調するように、ルドルフ会長も口を開いた。
「確かに、少しボーッとしているようだったな。小テストでも、普段やらないようなミスをしていたようだし」
「普段やらないようなミス?」
「ああ。なんでも名前を書き忘れたそうだ」
確かにススズなら絶対やらなさそうなミスだな!!
「何か心当たりはないのか、サンジェニュイン」
ルドルフ会長の問いかけに、エアグルーヴ先輩もオレの目を覗き込んで返事を待っていた。
オレはまんじゅうを手に取った右手を眺めながら、何かあったっけ、と首を傾げた。
「うーん、
そう言うと、エアグルーヴ先輩が両腕をさすりながら首を横に振った。
「いつもと変わらず完璧な擬態だった。……完璧すぎて鳥肌が立つくらいだ。なんなのだアレは」
「アレはヴァーミリアンの性癖で── っていうかソレはいいんすよ。お嬢様プレイが問題なかったとすると……うぅん、どれだ?」
あんとき、あんとき、そうあんときは── 。
8月、ワールドロイヤルターフ当日。
レースが終了してライブも終えて、後は着替えて帰るだけだな、というタイミング。
1着ゴールとライブセンターの興奮が収まらないオレは、ラインクラフトちゃんとシーザリオちゃんが抱えて、ぐるぐると回っていた。
「ラインクラフトちゃん、シーザリオちゃん!そしてオルフェーヴル!3人が帯同してくれたおかげでスッキリバッチリ走れたぜ!ありがとなあ!!」
そう言ってその場でジャンプすると、ラインクラフトちゃんがギャーッと大きな声を出した。
「わかったわかった、わかったから降ろすっスよお!!!!」
「あらあらあらあら」
回しすぎたかも、と思って2人を地面に降ろすと、オレたちの直ぐ側で控えていたオルフェーヴルが目をキラキラと輝かせているのが見えた。
どうやら今の高い高いモドキが気に入ったらしい。
今度おんなじことしてやろ、と思ってオルフェーヴルの頭を撫でた。
オルフェーヴルには主に併走相手としてイロイロと手伝って貰った。
今回のレース、オレが勝てたのはオルフェーヴルとのトレーニングや、帯同してくれたラインクラフトちゃんたちのおかげだ。
そう思いながら、オレは今回の興奮マックスのレースを思い返していた。
「それにしても最後は危なかったぜ、あそこまで粘られるとはなあ」
「サンジェニュインちゃんが追い詰められるなんて久々に見たっス。去年の凱旋門賞以来じゃないっスか?ほら、ディープインパクトちゃんと走ったときの」
そう言われて2度目の凱旋門賞を思い出していた。
馬時代、オレが凱旋門賞に挑んだのは1度きり。
ただいつ引退するか自分の意思で決められる今世では、2連覇を目指して元気に走っていた。
去年はディープインパクトも海外への長期遠征を行ったから、結構ギリギリの戦いだったな。
アレももう1年前なのか。
時の流れって早いなあ。
「あの時は凄かったですよねえ。ラスト2ハロン、ほぼ頭突きしあいながらの激走だったじゃないですかあ」
「いや頭突きはしてないよ、さらっと話盛らないでシーザリオちゃん。……でもそうだな、確かにディープインパクトと走った時以来かも。それより前だとハーツクライさんとのキングジョージか?国内だと芝質もあってあんまり……逆にディープインパクトは和芝だとテンション爆上がりするからスピード増して接戦になるんだけど……それが洋芝になるとオレ、めちゃくちゃ脚速くなるからなあ」
ぶっちゃけ、ここ2年くらいは洋芝で負けたことはない。
海外レースでは何度か負けているが、それはアメリカ遠征だったりドバイ遠征だったりでだ。
1度目のドバイ遠征でハーツクライさんに、2度目のドバイ遠征でディープインパクトに負けたときは「エッ、オレ、もしかしてドバイに呪われてる……?」と思ったもんだぜ。
でも欧州でのレースになると一転して、先頭を譲ったことは1度もなかったのだ。
自分でもビビるほど洋芝適性が高いのである。
アプリ版だったらパラメータのところに「洋芝:S」は確実だな!
「あれって「脚が速くなる」ってレベルで済ませていいやつなんですか……?」
「サンジェニュインちゃんのオカシイところなんて、細かいとこまで考えると頭パンクするっスよ、オルフェーヴルちゃん」
どう言う意味だラインクラフトちゃん。
「サイレンススズカさんとは初対戦でしたね。以前からお噂は聞いていましたが、
それな~!
「ゴール直前まで競ってたっスよねえ。アメリカロイヤルターフも芝2400メートルっスけど、芝質の違いもあるし、重めの洋芝でサンジェニュインちゃんがあそこまで並ばれるとは」
「個人的には中盤まで脚を溜めた上で差し込んできたスペシャルウィークに度肝を抜かれましたね。ジャパンロイヤルターフではサンジェニュイン先輩がかなりの着差をつけたじゃないですか。和芝でアレなら、洋芝じゃさすがに……と思ったんですけど。あの噂は本当だったのかも……」
ん?噂?噂ってなんだ、とオレたちが首を傾げていると、オルフェーヴルも首を傾げた。
「あれ?先輩方、聞いたことないですか?」
「だいたいロクでもないやつばっかりじゃないっスか?聞くだけ無駄だなあって」
オレも同じく。
「ロクでもないものが多いのは確かにそうなんですけど……今回のも眉唾ものだったので信じてるやつはそんなにいなかったんですけどね」
頬を掻きながら、オルフェーヴルは噂について話し始めた。
「噂っていうか、中等部生の中でちょっと話題になってて……スペシャルウィークはチーム・スピカ所属でしょう?なんか最近、そのチームに謎の青ジャージが出入りしていて、学園内に設けられた洋芝コースを高頻度で使用してるとかなんとか。その青ジャージが白髪だから太陽一族のウマ娘じゃないかって」
太陽一族。
それはオレ、サンジェニュインと、その妹分たちをまとめた名称だ。
オレやサニファ、サニメロ、サンドリなど、太陽にちなんだ名前のウマ娘が多いからそう呼ばれているようだった。
「サンジェニュインちゃんとこのウマ娘って……一族以外とはあんまり関わらないって聞いたっスけど。実際にサニーファンタスティックちゃん、かなりのシスコンで他のウマ娘を威嚇したりするじゃないっスか」
「ですねえ。私たちも初対面のときに「お姉様はわ、た、く、し、の!お姉様でしてよ」って怒られましたものねえ」
「ああ……その説はむす、じゃなくて妹分が大変ご迷惑を……。サニファはちょっと同族意識が強いだけで、特に排他的ってわけじゃないんだけどな。アイツ、ふつーに栗毛の仲良しウマ娘いるし。オルフェーヴルが言ってる噂ってのも、まあ噂って言うか事実だしなあ」
ちなみにサニファは馬時代、母馬に何を吹き込まれたのか、オレのことを「完全無欠、孤高にして至高の凱旋門賞馬」だと思っていた時期があり、サニファが期間限定で社来SSに来た時は「こんなぽんこつが噂のお父様!?……詐欺だ!」って泣かれたっけな。
ごめんなポンコツで……!!
でも一緒に過ごしているうちにオレに慣れてきたのか、帰国する頃には「まだ帰らない!!お父様~~!!」って泣きながら馬運車に詰め込まれてた。
今世でも「そんな……憧れの美貌の凱旋門賞ウマ娘がこんなポンコツなんて……詐欺よ!!」って言われたけど、今じゃ「お姉様!おそろいにしましょう」って懐いてくれてるし。
オレがサニファの事を思い出していると、オルフェーヴルがプルプルと震えながら叫んだ。
「エッ、じゃあ青ジャージの白髪って本当にサンジェニュイン先輩の妹分なんですか!?……ってことは、妹分が敵チームに協力してるってことですか!?」
「敵チームってお前。……んー、そもそも洋芝コースの優先貸し出し、融通したのオレだよ。イギリスでの滞在先をサニファのいるニューマーケットのトレセンにしたのもオレ」
そう言うと、オルフェーヴルはまたしても「エッ」という顔で首を傾げた。
逆にラインクラフトちゃんやシーザリオちゃんは「ああなるほどね」と納得顔だ。
なんか理解が早くて助かる。
「サンジェニュイン先輩にはかなりお世話になってますけど……やっぱりわからない点が多すぎて……」
「そお?オルフェーヴルが考えている以上にオレ、めちゃくちゃ単純だよ、シンプルシンプル!」
「シンプルなやつはお嬢様プレイなんてしないんスけどね」
お黙りラインクラフトちゃん!
なんでオレが敵── この言い方は好きじゃないから、ライバルと呼ばせて貰うが、ライバルであるスペちゃんに手を貸すような真似をするか。
答えはマジでシンプルだ。
強くなって欲しいから。
「いやあ、スペシャルウィークは、まあオレが手助けするまでもなく、元々強いウマ娘なのはわかってるんだが、慣れない洋芝じゃ本来の実力を発揮できないかも知れないだろ?それに、頑張る
スペちゃんはアニメ版1期の主人公であり、日本ダービー、ジャパンカップを制し、強者揃いのグラスワンダー、エルコンドルパサーやキングヘイロー、セイウンスカイら同世代の中でも力強い光を放つ。
根気強く前を追い、ため込んだ力を一気に解き放すラストの末脚は、なるほど多くのファンがつくのも納得というものだ。
ジャパンロイヤルターフの開催が決まり、出走するメンバーの一覧にスペちゃんの名前を見たとき、いちばん厄介な相手になりそうなのはスペちゃんだと思っていた。
もちろん、欧州レースで何度か激突したウィジャボードさんも強いのだが、彼女は実は和芝が苦手なのだ。
フランスロイヤルターフも開催される中、なぜわざわざ日本を選んだかはわからないけど、芝質を考えるとウィジャボードさんの危険度はかなり低いと予想した。
ウィジャボードさんは左耳リボンウマ娘なので、オレの顔を見て掛かったりとかはしない。
ただ逃げウマ娘がいるとついスピードが上がるクセがある。
ジャパンロイヤルターフにはオレの他に、パンジャンマックスも出走しているため、逃げ馬娘がダブルでいる状態となって掛かり気味に前に出ていた。
……まあ逃げウマ娘の片割れであるパンジャンマックスは、何故かスタートに失敗して後方集団に呑まれてたけど。
アイツ、セン馬だったからなのか両耳リボンなんだよなあ。
もしかして元オッス馬だとオレの魅了が効いちゃうのか……?と思いつつ、そのレースでのスペちゃんの走りを思い出す。
終盤になってから爆発した末脚でぐんぐん差を詰められたけど、それまでにつけていた7馬身差を縮められることはなく、そのままオレが逃げ切ってゴールした。
予想していた通りの鋭い脚に、途中までの差がわずかだったら差し切られていた可能性もあってヒヤヒヤしたが、それ以上に感じたのは「思っていたのと違うな」だった。
オレが予想していたのは、もっと早い段階でスペちゃんが前に出てきて、ラスト2ハロンはガッチガチの競り合いになる、というもの。
ジャパンカップでのスペちゃんの走りから、そうなるだけのパワーがあると思っていたのだが、どうやらオレが思っていた以上にオレ自身の能力が上がっていたようだ。
考えてみれば、ここ3年はやべー猛者どもが揃っている海外を転戦しながら走り続けていたので、脚が鍛えられるのはそれはそうなんだよな。
オレはシニア級に上がってからそこそこ長いし……この際、オレよりも長く学園にいるルドルフ会長やシービー先輩の事は一度脇に置くとして、一方のスペちゃんは今年がシニア2年目のピッチピチである。
才能はスペちゃんの方が上だとは思うが、単純に「経験の差」が現れた結果、ということだ。
レースを重ね、様々な経験を積んでいけば、オレが何もしなくても、彼女は勝手に強くなっていくだろう。
今回のロイヤルターフに間に合わなくても、あと数ヶ月、年明けには数段仕上がった姿が見られると思う。
でも待てなかった。
そこまで待てなかったんだ。
オレは、もう終わるから。
ワールドロイヤルターフの次走は、URAファイナルズと決まっていた。
日野トレーナーの振り分け通り、オレはディープインパクトと共に長距離部門に出走する。
予選、準決勝、決勝の3レースを最後に、オレはターフを去ることを決めていた。
スペちゃんが同じ長距離部門に出走してこない限り、もう2度と走ることはないだろう。
だからどうしても早く、早く強くなって貰う必要があった。
「去年から思ってたんスけど、どうしてそのスペシャルウィークって
ラインクラフトちゃんの言う通り、昨年の凱旋門賞にオレとディープインパクトと共に出走したエルコンドルパサーや、トウカイテイオーと言った強いウマ娘は他にもいる。
それなのにスペちゃんに強くなってもらいたいほど、オレが彼女と走りたい理由はひとつ。
前前世のヒトだったオレがウマ娘にハマるきっかけが、スペちゃんだったからだ。
彼女の存在がなければアニメ版ウマ娘を見ることも、アプリ版ウマ娘で遊ぶこともなかっただろう。
ひたむきに、まっすぐに、めげずに、諦めずに前を向き続ける彼女の勇姿が、母親を喪って間もなく、たったひとり、ボロアパートで蹲っていたオレの光になったのだから。
今のままでも十分強いスペちゃんに、洋芝で走り抜けるための強さを身につけて貰うには、それ相応の設備と助っ人が必要だった。
だからオレは、彼女のために準備もした。
……スペちゃんはもしかしたら、あの
でもあれは、オレが「こうなったらいいのに」とばらまいた、あらゆる種のひとつが実った結果だ。
ジャパンロイヤルターフが終わってから、シルバーには「もしスピカのメンバー3人以上からどうしてもと頼まれたら協力してあげるといい」と、ゴールドシップが通り掛かったタイミングで伝えたり。
日本トレセンにいる一族とのティータイムを、スピカの練習時間に合わせて、その光景をシルバーやサニメロ、サンドリたちに見せてみたり。
海外にいるサニファたちは難しかったが、成長が楽しみなウマ娘としてスペちゃんの名前を出してみたり。
ばら撒けるだけの種をばら撒いたのだ。
シルバーとのやりとりをゴールドシップがしっかり聞いていたことで、ほぼシルバーのルートで決定したようなものだったが、シルバーが実際に頷くまでは結構ドキドキした。
ちょっとお人好しなところもあるシルバーのことだから、親友であるゴールドシップと、その後輩たちに土下座のひとつやふたつでもされたら頷かずにはいられないだろう、とは解っていたけど。
オレがそう言うと、ラインクラフトちゃんが「なんでこういう時だけ妙な賢さを発揮するんスか……?こわ……」と言われた。
心外な!!!!オレはいつだって賢いだろうが!!!!
「普段のサンジェニュインちゃんが賢いとか……小学生に謝って」
「そこまで言う!?!?」
「園児って言わなかっただけ感謝してほしいっス」
「辛辣じゃん……。で、でも、別にスペちゃ、スペシャルウィークに強くなって貰うためだけにシルバーをけしかけたワケじゃないからな!?これはシルバーのためでもあるんだよ!!」
オレの産駒であり、現在妹分であるシルバー、正確にはシルバータイムというウマ娘は、名前の元ネタを反映しているかのようなキレのあるツッコミとは裏腹に、非常に卑屈なところがある。
シルバーのひとつ上の世代に、サニファやシャトーといった激ヤバつよつよウマ娘がいて、彼女らは「オレの再来」として様々なマスメディアに取り上げられてきた。
同族として常に彼女らと比べられてきたというのもあるし、同世代の中でもかなり注目度が高いゴールドシップとも比べられているから、自分は他者より劣っているのだとすり込まれてしまっている。
シルバーの口癖は「どうせ○○と違ってあたしは」だ。
前世父として、今世姉貴分として情けない話なのだが、ウマ娘のシルバーと出会った頃には、彼女はすっかり卑屈になってしまっていた。
オレが、お前はお前だけだ、オンリーワンの存在なんだ、と言ったところで、そもそも比べられる原拠がオレである以上、シルバーには響かない。
オレが引退するまでのどっかで、シルバーが自分自身を誇れるような体験をさせたいと思っていた。
今回のスペちゃんの件にシルバーを巻き込むことで、小さくてもたくさんの成功体験を積ませてやりたかったのだ。
「レース後、ちらっとみたけどシルバーのやつ、スピカのやつらと笑ってたよ。一族の会合の時にはなかなか見られない表情だった。……寂しい気持ちもあるけど、妹分が徐々に成長していく姿が見られたのは、今日のレース内容と同じくらい満足だわ」
そう言って鼻を鳴らした。
オルフェーヴルは呆けたような顔をしていたけど、ラインクラフトちゃんはクソデカため息を吐くと、オレの頬をつまんだ。
「だーかーら、その思慮深さと賢さを普段でも発揮して!!」
「ヒィン……!!ちゅままにゃいでえ……!!」
むにーっと頬を引き延ばされて抵抗していると、どこからか、ドサッと重いものが落ちるような音がした。
音にいち早く反応したオルフェーヴルが、アッと声をあげて指さした方向を見ると、ヒトの手が見えた。
ラインクラフトちゃんとシーザリオちゃんから悲鳴があがり、オレは思わず2人を抱き込んで、その手から距離を取った。
「なんだアレ、ヒト!?倒れてる!?」
「ちょ、ちょちょちょっと!!サンジェニュインちゃんすぐ行こうとするのやめるっスよ!!前に似たようなトラップ仕掛けられて物陰に引きずり込まれたことあるっしょ!?」
それはまだメイクデビューする前の事件じゃん!?よく覚えてたな!!
「でもマジで具合悪くて倒れてるだけかもしれないし……この中で一番デカいのオレだし」
「そうなんスけど、そうなんスけどねえ……!?」
「先輩!自分が行きますよ!」
オレの両腕をがっちりと掴んだラインクラフトちゃんとシーザリオちゃんを振りほどけずにいると、オルフェーヴルが代わりに手の正体を確かに行った。
ちょ、何かあったらどうすんだ菊花賞前だぞ!!と叫んだら、ブーメランだから口を閉じろって言われた。
ひぃん。
「あ、えぇ……こんなことある……?」
「ど、どうしたオルフェーヴル!!ヒトは無事か!?」
「いや無事っていうかなんていうか……幸せそうな顔はしてるんですけど……」
ん?幸せそうな顔?
とりあえず無害ですよ、というオルフェーヴルの一言でラインクラフトちゃんたちから解放されたオレは、早速オルフェーヴルのいる方へと向かい、倒れているヒトを覗き込んだ。
そこにはピンク掛かった髪の毛に、ふにーっとした笑顔で倒れる── ウマ娘が。
「これ、昨日倒れてたウマ娘と同じヤツですよね?」
「……だな」
アイエエ!?!?デジたん!?!?デジたんナンデエ!?!?
まさか2日連続で倒れたデジたんを拾うことになろうとは。
オルフェーヴルが言う通りめちゃくちゃ幸せそうな顔で倒れているので、事件性はないようだけど……一体何でこんなところで倒れてたんだ?
ツンツン、と頬を突いてみても起きる気配はない。
昨日、デジたんのトレーナーと電話したとき、興奮のゲージが一定数に達するとこうなるらしいけど、しばらくすると勝手に回復するとかなんとか。
見に来たラインクラフトちゃんたちに「どうしたんスかこの
な、なに……?
「まさかこの世にカネヒキリちゃんの同類がいるとは思わなかったっス」
「ちょっと髪色も似てますし……ご親戚の方でしょうか?」
「いや違うよ。髪色も似てないよ!カネヒキリくんの栗毛は深みがあって日に当たるとハチミツみたいな色に──」
「もうわかったっス、ゴメンネ」
同じ栗毛でもみんなちょっとずつ違うように、カネヒキリくんの栗毛もまたオンリーワン栗毛なのだ!!!!
オレが力強く心の中で力説していると、オルフェーヴルが躊躇いがちに口を開いた。
「で、このウマ娘はどうするんですか?さすがに放置はないとして」
「医務室に連れて行くべきでしょうね。パッと見なにもないようにみえて、実は……なんてことがあったら大変ですもの」
「そうっスね、自分もシーザリオちゃんに賛成っス!」
「じゃあ自分が運びますよ!サンジェニュイン先輩はお疲れでしょうし!」
「お、いけるっスか~?」
トントンと3人のなかで話が進んでいくので、オレは待ったを掛けた。
「いやこの
「じゃあ自分が!」
「ラインクラフトちゃんも!右に同じ!」
「では──」
「シーザリオちゃんもな!!」
オレ以外の3人は150センチ台。
いちばん背が高いシーザリオちゃんでも157センチなのだ。
対してオレは175センチで、シーザリオちゃんとでさえ18センチ差なのである。
馬時代も体高171センチ、馬体重530キロ台だったもんなあ……とはいえ、カネヒキリくんの方が身長あるけどね。
今世ではこの儚げ美少女フェイスの影響か、遠目で見ると小柄に見えるらしいけど。
並んだらデカくてビックリ、っていうパターンはよくあるんだよなあ。
あとカネヒキリくんとヴァーミリアンがヒールとか厚底系の靴履いてるから、2人と並んでるとオレが小さく見えるってのも影響してるんだろうな。
って、オレの身長の話はいいんだよ、っとデジたんを抱き上げると、そのまま歩き出した。
「サンジェニュインちゃん!……もう、腕が痺れたらすぐに言うんスよ?おんぶでもなんでも、自分らもできるんスから」
「痺れたらね~」
まあ、オレのパワーはアプリ版のパラメータ風に表記すると「SS+」みたいなモンだから大丈夫だけどな!!
腕の中で幸せそうな表情のデジたんを見下ろしつつ、医務室まで向かっていると、廊下の曲がり角から大きな声が聞こえた。
思わず脚を止めると、ラインクラフトちゃんたちも「なんスかね?騒がしいっスけど」とお互い顔を見合わせて首を傾げた。
オレは耳をピンッと立てて声に集中すると、わあわあと広がる声の中に聞き慣れた声がした。
「それで?アグネスデジタルとはぐれたのはいつなんだ」
「えっと、レースが終わって10分くらいで……デジタルはお手洗いに行く、と。トレイまで見に行ったんですけど、デジタルは入っていないみたいで!」
「電話もしたんすけど、繋がらなくて……っ!オレたちどうしたら……」
「ふむ。……エアグルーヴ」
「はい、会長。会場運営者に報告して、アナウンスを掛けるよう話をつけてきます」
やべえ大事になってる。
オレはデジたんを見下ろし、内心で「とんでもないことになってるぞデジたん、あとちょっとで君の迷子アナウンスがこの会場に響いちまうぞ」と語りかけた。
むにゃむにゃと幸せそうな顔で口を動かすデジたんは、まだ起きそうにない。
ここらへんでデジたんを置いて、ルドルフ会長にメールを打つっていう手もあるが、冷たい床にウマ娘を横たわらせるのは気が引ける。
この廊下の曲がり角の向こう側に、生徒会の面々がいると察したラインクラフトちゃんが首を横に振るけど、オレも同じように首を横に振った。
覚悟をキメて行くしかないのだ。
オレはいかにも通りがかったら偶然会いましたわ、という顔を作る。
女優さんばりに表情を取り繕えるようになったのは、ヴァーミリアンの厳しい演技指導のたまものだろうか。
今だけは感謝したい。
「お探しのウマ娘はこの
ラインクラフトちゃんたちを引き連れるような形で登場すると、ルドルフ会長とエアグルーヴ先輩、そして2人の間に立っていたトウカイテイオーが驚いたように目を見開いた。
でもそれ以上に驚いていたのは、チーム・スピカ with シルバータイムご一行だ。
お、目ん玉をまるくしてるシルバー!
おいおいどうしたちょっと青ざめた顔をして……。
「で、デジタル……!」
「廊下で倒れていたのを拾ったのよ」
オレの腕の中にいるデジたんに気づいて声を挙げたウオッカに、オレは努めて冷静な声で言葉を発した。
ろ、廊下で!?と狼狽えているダスカを横目に、オレは目の前のルドルフ会長とエアグルーヴ先輩と視線を合わせた。
2人は「お前なんでアグネスデジタル抱えてるんだ」と言いたげな目をしていたが、オレはそれにかぶせるように目で訴えかけた。
お願いですルドルフ会長!!エアグルーヴ先輩!!
ワケは聞かずにこの
そしたらオレたちすぐ退散するので!!
それが通じたのか、エアグルーヴ先輩が動揺しながらも口を開いた。
「そ、そうか、廊下で。……レース後で疲れていたところ悪いな、サンジェニュイン」
「いいえ。これしきのこと……わたくしも生徒会の者として、当然のことをしたまでだわ」
「ン゛ン゛ッ……そ、そうだな、うん……」
動揺しすぎだぞエアグルーヴ先輩!!
「これから医務室に向かう予定なのだけれど……」
「アッ、お、オレが代わります……!」
そう言ってウオッカが腕を伸ばしてくるので、お言葉に甘えてデジたんを渡すと、「ウッ重!?」とちょっと苦しんでいた。
意識のないヒトって本当に重いから……。
支えようかと思って再度手を伸ばしたら、すかさずダスカがウオッカを支えていて、んふふ、この2人なんだかんだいって相性良いよな。
表情筋が緩みそうになったのをキュッと絞っていると、オレの限界を悟ったのか会長が話し始めた。
「アグネスデジタルのことは君たちに任せてもいいだろうか。念のために……エアグルーヴ、彼女たちに付き添って欲しいのだが」
「……はい、会長」
チラッと会長と視線が合い、オレは力強くアイコンタクトを返した。
ありがとうございます会長!!
トレセンに戻ったら生徒会の仕事バリバリやりますんで……!!
オレの後ろにいたラインクラフトちゃんたちもホッとしたのか、緊張していた空気がちょっとだけ戻った。
緊張していたのは、たぶんオレがうっかり素を出さないかだな……生徒会室に居るときも素だもんな、オレ。
でも大丈夫!
時と場合は選んでるよ!!
エアグルーヴ先輩が、医務室の場所をウオッカたちに教えているのを横目に、オレは着たままだった勝負服をひらりと揺らしながら、その場で一礼した。
トレセンの制服を着ていたなら、ここらへんでスカートの端でも掴んでお嬢様っぽい挨拶をしたが、オレの勝負服はピチピチなのでね……!
「用はこれだけだわ。それではみなさま……」
「ッあの!!待ってください!!」
ごきげんよう、と続けようとしたところで、ずっとウオッカたちの後ろにいたスペちゃんが、大きな声でオレを引き留めた。
視界の端では、ルドルフ会長の隣で棒立ちになりながらオレをガン見するトウカイテイオーの姿。
……地味に怖いな!!
「……なにかしら?」
内心の動揺を隠して、オレはなんでもないような顔をしてスペちゃんを見つめ返す。
スペちゃんはちょっとだけ顔を赤くしながらも、オレと視線を合わせたまま口を開いた。
「私、今回のレース……全力で挑みました。私は、私は勝つために走って、それでもあなたに届かなかった」
「スペちゃん……」
悔しそうな声色でそう言って拳を握るスペちゃんを、トウカイテイオーが心配するような声色で呼んだ。
それだけなら友情の一ページなのだが、トウカイテイオーがオレを見たままなのでちょっとしたホラーである。
「私の!!……私の、夢は……ッ日本一のウマ娘になることです!!なること、でした。……ッでも、今日からは──」
かすれるようなその叫びに、オレは思わず1歩、後退った。
自分でもなんでそんなことをしたのか解らなかったのだが、オレ以上にラインクラフトちゃんたちの動揺が酷く感じられて、なんとか両足を踏ん張る。
なんだろう、このビリビリした感じは?
後退ったオレに気づかなかったのか、スペちゃんは1度目を閉じると、睨み付けるようにオレを見た。
「今日から、私の夢は── 世界一のウマ娘になることです……ッ!!」
ドーン、と胸の中の鐘を鳴らされたような気持ちになった。
こんな強い気持ちになったのは、クラシックシーズンでディープインパクトとボコりあったとき以来。
一切の躊躇いのない、純粋な言葉がキラキラと光っているように見えて、オレは思わず目を細めた。
その眩しさは、アニメで見た、初めてのジャパンカップに負けて、宝塚記念に負けて、それでも諦めず走り続けたスペちゃんの真っ直ぐさと重なって、少し苦しい。
それと同じくらい、嬉しかった。
「そう……その瞬間を、楽しみにしているわ」
目を見開くスペちゃんと、その周りのウマ娘の表情を見て初めて、自分が笑っていると気づいた。
お嬢様プレイ中は押さえていたのに……堪えきれなかった喜びが溢れ出すように、ゆるやかに持ち上がった頬は戻らず、オレはそのまま再び一礼した。
「それでは皆様、ごきげんよう。……行くわよ、ラインクラフト、シーザリオ、オルフェーヴル」
今度は引き留める声もなく、来た道をぐんぐんと引き返した。
その間、後ろを着いてくるラインクラフトちゃんたちは無言。
でもその無言が、返ってオレに冷静になるための時間をくれた。
ドキドキ、と高鳴る胸に手を伸ばし、落ち着け、と念じる。
そう言ってすぐに落ち着くようなものではないけど、さっきよりは少しだけマシ担った気がする。
それにしても、「世界一のウマ娘」か。
これまでいろんなウマ娘に「次、世界一になるのは自分だ」と言葉を換えていろいろ宣言されたけど、そのどれも響かなかったはずの言葉が、今回ばかりはジーンと胸にきた。
これからスペちゃんが世界一のウマ娘になるために突き進む道にオレはいないけど、いつか画面越しでも、彼女が走り続ける様を見れたら楽しいと思う。
スペちゃんが世界を目指すきっかけになれたのは、嬉しい誤算だけど、前にルドルフ会長が言っていた「夢を与える側」に自分もなれたのかもしれない、と思うとまた胸がドキドキしてきた。
彼女だけじゃない。
その後ろにいたシルバーの表情も、今まで見たことがないほどキラキラしていた。
やっと指針を見つけたような、そんなキラキラ。
シルバーにとっての夢の道標は、スペちゃんだったのかもしれないと思うと、今回のスペちゃんとシルバーの出会いを神様に感謝すべきなのは、このオレだろう。
「サンジェニュインちゃん」
「ん?」
これを機にシルバーも自信を持って次のレースに挑んでくれれば、と思っていると、ラインクラフトちゃんに呼ばれて振り返った。
「オーラ消して!!」
「ほ?」
「オーラ!!レース中みたいなギラギラなの出てるから!!仕舞って!!」
そう叫びながら、ちょっと頬を赤くしたラインクラフトちゃんたちに首を傾げる。
オーラってなんだよ、と口を開き掛けたところで、もう1人、オレを呼び止める声が響いた。
「サンジェニュイン!!少し待って……」
風に揺れるオレンジ味の強い栗毛の持ち主はススズだった。
その姿を認識した瞬間、オレは耳を立てて周囲の音を確認する。
……うん、ススズ以外の足音ない、ヨシ!
「ちょお、サンジェニュインちゃん、表情……っ」
ラインクラフトちゃんが焦ったようにオレに声を掛けるけど、オレは大丈夫、と言って笑った。
そうこうしているうちに、気づいたらススズがオレの近くまで来ていた。
どこか焦った様子のラインクラフトちゃんたちと揃えるように、彼女もちょっとだけ焦った顔をしていた。
「サンジェニュイン……ッわたし、今日のレース──」
……そうだ、今日のレース!
さすがススズというか、スタートしたときからほぼ差無しでピタッと真横に張られたのはビビったわあ!!
メイクデビュー前の模擬レース以来だから、何年ぶりだろ?
あの時はオレ、カブト狩り── カブトムシ捕まえてる最中に芝里くんにとっ捕まってしまい、小脇に抱えられた状態でススズに対面したんだよなあ。
まだお嬢様プレイをする前だったから、ほぼ素のまま喋ってたっけ。
ってことで、ススズはオレの素を知ってるから、お嬢様プレイしなくってもいい!ヨシッ!
あの頃に比べて、オレもめちゃめちゃ成長したと思ってたけど、やっぱススズの瞬発力ってすげえな!!
オレみたいに、右耳リボンウマ娘に追われての逃げじゃなくて、スピードありすぎるから普通に走っても逃げになるって、その時点でだいぶ強いわ。
これまでの戦歴を見ると、マイル路線への偏りが見られたから、てっきり今回のレースみたいに2400メートルの中距離には出てこないかと思ってたけど、いやあ、本当にすごかった。
逃げにはかなり自信があるし、今回のレースの予想では、張り付かれても中盤までだと思い込んじまったわ。
結果としてガッツリ最後までマークされたし、油断も隙もねえや。
いやあそれにしても本当に久々だわ。
オレはメイクデビューしてから翌年のクラシックシーズンが終わると早々に海外飛んだし、ススズはあの頃はリギルだったから……メテオとリギルのミーティングルームって、対極の位置にあるからすれ違わないんだよな。
なんか日野トレーナーとリギルの先代トレーナーの仲があんまりよろしくなくて……育成方針の違い……?
それはともかく、本当に久々だ!
「楽しいレースだったっすよねえ、サイレンススズカ先輩!」
「……えっ?」
「模擬レースで2回走っただけだったけど、やっぱ本戦ともなると違うっていうか……あっアメリカでのレースみましたよ~!向こうの芝硬くないっすか!?オレ、踏み込み深いから脚がガツガツ地面にあたっちゃって──」
「さ、さ、サンジェニュインちゃん!!」
「ん?」
どうしたラインクラフトちゃん、そんなに慌てて。
オレが首を傾げると、ラインクラフトちゃんは「時間っスよ!」とオレの腕を引いた。
時間まだあるはずでは?と思いつつも、ラインクラフトちゃんの鬼気迫る表情に、オレは大人しく首を振った。
ヒト族の女と左耳リボンウマ娘には逆らうなって父ちゃんも言ってた……!
「……あ、じゃ、オレたち行くんで!」
「えっ、あの、サンジェニュイン……?」
「うん?……ああ、そうだった言い忘れてた!」
ラインクラフトちゃんに腕を引かれるまま歩き出したオレは、そうだコレ言わなきゃ、と思ってススズの近くまで戻る。
そのタイミングで、ススズがやってきた方の道からドタバタと足音が聞こえるから、誰かがススズを呼びに来たのかも知れない。
オレはススズにだけ聞こえるように、オレよりも低い位置にある彼女の耳に唇を寄せた。
「今日も最高の走りだった── やっぱり、あんたと先頭を争うのは楽しいな!」
何故か脳裏を過った栗毛のオバケを追い払いつつ、オレは言葉を続けた。
「また走ろう!」
興奮からついタメ口になってしまったが、オレは目を見開いた彼女に向かってニッと笑った。
「スズカさーん……?」
「す、スペちゃん」
「── それでは、ごきげんよう」
「あっ」
ススズが何かを言いかけたけど、後ろにいるラインクラフトちゃんの圧が強すぎてオレはサッと背中を向けた。
そこから結構早足で、オレ用に整えてもらった控え室に戻ったのだ。
エアグルーヴ先輩たちと遭遇してからの一連の流れを思い出していたが、うん、やっぱりヘンなことはしてないな!!
「思い出してみましたが、やっぱりヘンなことしてないですよ……?」
「む……ではスズカはなぜあんな状態に」
眉間に皺を寄せたエアグルーヴ先輩に首を傾げながら、オレはまんじゅうをむぐむぐと頬張った。
そもそもエアグルーヴ先輩の言う「あんな状態」とはなんだろう?
「サイレンススズカ先輩、いまどんな状態なんですか?」
「どんな……そうだな、言葉にするのは難しいのだが、物思いに耽ることが増えたのがひとつ」
「ふむふむ」
「空を眺めてはため息を吐いたり」
「ふむふむ」
「白いノートを長時間眺めたり」
「ふむふむ……?」
「目玉焼きを見て「サンジェニュイン」と呟いたりしている」
「ふむふむ……!?」
えっ、なにそれ……とオレが慄いていると、ルドルフ会長が苦笑しながらもオレに問いかけた。
「心当たりは?」
「まっっったくないです……」
ええ……本当に何だろ……お嬢様プレイが気持ちわるかったとか……?
そう言えばススズと直接会話したのは模擬レースの時と、今回のレースの時だけだから、ススズが知っているのは素のオレだけか!
急にお嬢様プレイしだして「なんだこいつ」って思ったのかも……!
「そうだとしたら申し訳ない……」
オレが半べそで10個目のまんじゅうを頬張ると、エアグルーヴ先輩が真顔で首を横に振った。
「おそらくだが、お前が想像しているやつではない。断じてないな。うん。お前に聞いたのがダメだった。すまなかった。ラインクラフトたちに聞き直すから現在地を教えてくれ」
「酷くない!?!?今カフェテリアですよたぶん!!!!」
オレは泣きながらハンコを押す作業に戻った。
ヒィン──……!!!!
次回もウマ娘回!サービスサービスゥ!!
そしてコレは大百科の小ネタや引退後のSSが載ってるやつ
https://syosetu.org/novel/270791/
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side:ウマ娘 ー Ep.14
秋華賞、もちろんソダシさんに賭けたんですけどあの、沈みましたね……泣いた。
ワールドロイヤルターフから約2ヶ月が経ち、オレはウララちゃんと久々の再会を果たしていた。
「サンちゃんひさしぶりだねえ!」
「だねえ!ウララちゃん元気だった?」
「うん!元気だったよ!あのねあのね、トレーナーが『JBCスプリント』に登録してくれたんだっ!」
「ほんとに!?よかったねえ、ウララちゃん!」
JBCスプリントは、日本国内では数少ないダートのGⅠレースだ。
同じJBCでも、去年のJBCレディスクラシックをヴァーミリアンが、JBCクラシックをカネヒキリくんが制している。
開催日は11月の第1週目。
つまりあと2週間ちょっとなのだが、ウララちゃんは8月のエルムSを制したことで出走が決定したようだ。
前から「JBCスプリントに出たい」って言ってたから、それが叶ってよかった。
「今年もししょーたち出るんだよね?」
「えっとね、カネヒキリくんはBCクラシックがあるから出ないんだけど、ヴァーミリアンはJBCクラシックの方に出るよ!」
「そっかあ!ししょーたちすごいねーっ!」
ちなみにウララちゃんがカネヒキリくんとヴァーミリアンを『師匠』と呼んでいるのは、2人がウララちゃんのダートトレーニングを手伝っていたからだ。いた、というか、今も手伝ってるのかな。
カネヒキリくんたちはオレが知らないと思っているみたいだけど、ウララちゃんの様子からすぐにわかった。
まあ正確には、オレが察するより前にウララちゃんの方から「ししょーができたんだ!」って言われたからな!
2人はどうしてか、オレにはバレたくなさそうだったので、オレは今も気づいていないフリをしているわけだが。
なんていうか、オレに言われるのはイヤだろうけど、あの2人も隠し事が上手いようで下手だからなあ。
今だってほら、オレたちの事を見てるの、バレバレなわけだし。
「2歳からずっとカネヒキリくんに見つめられてんだもん……視線ですぐ解るよなあ」
「ふふぇ?どーふぃふぁふぉ?」
「なんでもない!ウララちゃん口の中にもの入ったまま喋っちゃだめだよ!」
オレはウララちゃんにお茶を渡しつつ、カネヒキリくんがお昼に持たせてくれたおにぎりを食べた。
前にウララちゃんとお昼が一緒になったときに食べたサンドイッチも美味しかったけど、カネヒキリくんが握るおにぎりも最高なのだ。
ふっくらしたお米、ほどよい塩味、パリパリの海苔。
なによりおにぎりの中身!!
量が多すぎるわけでもなく、かといって少なすぎるわけでもなく……絶妙に調整されお米と完璧なハーモニーを奏でてる……ッ!!
んまい!!!!
やっぱりおにぎりはツナマヨなんだよなあ。
カネヒキリくん解ってるわ。
「あ~!みてサンちゃん!これハンバーグだよっ!」
「エッほんとだ!!これツナマヨだけど……アッうそ、もしかしてこれ……からあげだ~~っ!!」
「すごいねーっ!!」
それから1時間くらいかけて『おにぎりに合う具はなんだ選手権』を開催した。
玉子焼きが優勝した。
サンジェニュインとハルウララがじゃれあう、その光景を見つめていた3人のウマ娘がいた。
「もう溶けた。あとは任せたぞカネヒキリ」
原型を失い溶けきったこのウマ娘、名をヴァーミリアン。
「溶けるのはいいが双眼鏡を渡せ」
液体と化した同胞を雑に扱うこのウマ娘、名をカネヒキリ。
「心配する素振りくらい見せろや!なあディープ……ディープ?息をしろディープ!」
息が止まっていた死にかけのこのウマ娘、名をディープインパクト。
サンジェニュインとハルウララの和やかな時間を守っているのがこの3人であることは、サンジェニュイン本人ですら知らないのであった。
「おいしかったねえ」
「だねえ」
これまたカネヒキリくんが用意してくれたお茶を飲みつつ、食後のひとやすみ。
拳くらいの大きさのおにぎり20個あったのに、2人でペロッと平らげてしまった。
カネヒキリくん、こんなに大量のおにぎり作るの大変だっただろうなあ。
おにぎりだけじゃなくて、普段からいろいろお世話になってるし、カネヒキリくんに何かお礼の気持ちを込めてやりたいなあ。
今度、カネヒキリくんを温泉旅行につれていこうかな……サプライズで!
2泊3日、同じ部屋でいいよな、枕投げとかしよ~!
「あ、そうだサンちゃん!サンちゃんにねえ、お願いがあるんだっ!」
「ん?おねがい?」
「うん!」
同じようにお茶を啜っていたウララちゃんが、思い出した!と言わんばかりの動作で立ち上がった。
ウララちゃんに見下ろされるとは新鮮だ。
いつもオレが見下ろしてるからな……身長差35センチあるから仕方ないんだけど。
フンス、と鼻を鳴らしたウララちゃんが「あのね」と話を切り出した。
「キングちゃんがね、サンちゃんとしゃべってみたいんだって!それでね、いっしょにおやつたべたいなって思ったんだ」
「キングちゃん……?」
「そう、キングちゃん!ウララと同じへやだよ!」
ウララちゃんの同室のキングちゃん、ってことは、キングヘイローか!
……アイエエ!?キングヘイロー!?キングヘイローナンデエエ……とはならんな、うん。
キングヘイローと言えば、オレ、というかメテオ内では知らないやつがいないほど、有名なウマ娘だった。
なんで有名なのかと言えば、彼女はオレが出走した全レースを見にきていたから。
メイクデビューだった阪神レース場も、クラシック全レースも、ドバイシーマクラシックをはじめとした海外レースも。
文字通り、全レースに彼女は来ていた。
シバキ、じゃなくて
もしかしたらオレ以外のウマ娘を応援しに来てるんじゃないか、と最初は思っていたのだが、ウイニングライブでしっかりがっちりオレの応援タオルとペンライトを握っていたので、まあオレのファンでいてくれているのだろう。
それだけじゃなくて、オレのファンクラブのTシャツまで着ていたから、たぶんその、ファンクラブにも入ってるんだろうなあ。
まさか公式ウマ娘、という表現の仕方もどうかと思うけど、少なくとも画面の向こう側にいたキングヘイローに推されるようになるとは……。
まったく想像もしていなかったので、照れ臭いやらなにやら。
まあ何はともあれ、応援してくれているのは純粋に嬉しいものだ。
んふふ、喜びからかついつい身体が小刻みに揺れちまうぜ。
「キングちゃんね、サンちゃんのキラキラしてるところが好きなんだって!いつか同じレースで走るんだって言ってたよ!」
ウララちゃんの言葉に、オレはピタリと動きをとめた。
“ いつか同じレースで走る ”
その、いつかが、オレにはもうない。
「……ゴメン、ウララちゃん。まだ未発表だから知らないのも当然なんだけど、オレ、次のURAファイナルズが終わったら引退するんだ」
「ええ──っ!?そうなの!?」
「うん……もうそろそろかなって思って。キングヘイローはURAファイナルズには出ないの?」
まだ立ったままのウララちゃんが、困惑したような顔で首を傾げた。
「うーん?えっと、どうだろう……キングちゃんはね、この前のスプリンターズステークスに出て勝ったばっかりで、今週は天皇賞に出るんだよ!」
今週末に開催されるのは天皇賞・秋だ。
ディープインパクトも出走するけど、これにキングヘイローも出るんだな。
秋天は中距離だけど、勝ったって言うスプリンターズステークスは短距離。
今年の高松宮記念の勝ちウマ娘も確かキングヘイローだったはずだから、仮にURAファイナルズに出走することになった場合は短距離部門の可能性の方が高いか。
仮に秋天に勝った場合でも、中距離かマイル部門を選択するかも知れない。
少なくとも、オレが出走予定の長距離部門を選ぶ可能性は低いだろうな。
「レースで会うのは、厳しいかもなあ」
「そっか……キングちゃん、サンちゃんのことすごい好きでね!おへやのなか、サンちゃんのグッズがいっぱいなんだよっ!タオルとか、うちわとか、マグカップとか……あとあとお人形とかっ!」
「……うん?」
お人形……たぶんフィギュアだ。
あれ、オレの公式グッズにフィギュアあったっけ?
そこらへんは芝里くんが管理してくれているわけだが、グッズは企画段階で必ずオレに見せてくれる。
オレが不快になるようなグッズは絶対作らない、っていうのが芝里くんとの約束だった。
タオルもうちわもマグカップもあるのは知っているけど、フィギュアは聞いてない。
芝里くんがオレに黙って勝手に作るなんてことは絶対ないから、公式のものではないだろう。
だとすると……ファンクラブの限定グッズか?
キングヘイローはファンクラブ会員限定Tシャツも持っていたから、たぶんファンクラブに加入してくれているはず。
ファンクラブが作成しているグッズ、まあほぼ公認の同人グッズなのだが、そっちは卑猥なものや公序良俗に反するようなものでさえなければ、基本的には好きに作っていいことになっていた。
あれの会長はヴァーミリアンだったはずなので、あとで本人に確認を取るとしよう。
「でもそっかあ……サンちゃん、引退するんだね。さみしくなるね……」
「ウララちゃん……」
しょんぼりと眉を下げ、その場に座ったウララちゃんが肩を丸めた。
オレはその肩をぽんぽんと撫でながら、大丈夫だよ、と口を開いた。
「ウララちゃん、オレは確かに引退するけど、もうずっと走らないわけじゃないから」
「……そうなの?」
「うん。レースには出なくなるけど、今まで通り走りたいときに走るよ。ウララちゃんが声を掛けてくれれば、また一緒に併走するし」
「ほ、ほんとにっ!?」
「もちろん!……だから悲しい顔をしないで。大丈夫、今までとなんにもかわらない。例えオレが引退したって、オレはオレのままだから」
そう言うと、ウララちゃんは少しだけ泣きそうな顔をして、またニッコリと笑ってくれた。
うーん、愛嬌百点満点スマイルだッ!!
「あーっ!」
「うわびっくりした!……どうしたの、ウララちゃん」
「ご、ごめんねサンちゃん、また話それちゃった……」
「ああ……いいっていいって。えっと……確か、キングヘイローがオレと喋りたいって話?」
再びお茶を啜りながら聞くと、ウララちゃんは勢いよく首を振った。
ウララちゃんはちょっと移り気で飽きっぽいところがある。
興味のある方へと話が脱線していってしまい、本線から逸れてしまうことを、ここ最近になって本人は気にし始めたようだ。
せいいっぱいお話してくれるウララちゃんかわいいのに……でも直したいと思って努力しているウララちゃんもかわいいです。
「そう、そうだよ!おやつたべながらね、おしゃべりしたいなって思ってるんだけど、サンちゃんどうかなっ?」
オレとしては、正直、やりたい。
キングヘイローにはこれまでずっと応援してくれていたお礼もしたいし、一緒にレースに出れないお詫び、というのも失礼だけど、その熱い思いに報いたかった。
ただ、忘れがちになってしまうのだが、キングヘイローは右耳リボンウマ娘。
ウララちゃんのトモダチだし、何よりキングヘイローというウマ娘は奇行になんて走らないだろうけど、それでも念には念を入れなければならないのだ。
相手はアニメにも出てきた善良なウマ娘だし大丈夫だろ、と気を抜いたが最後!
オレはスーパークリークに追いかけ回されて……ヒィン!!
ダメだダメだ、思い出してはいけないやつを思い出した。
アレはそもそもタキオンさんの「圧倒的美貌もコレ1瓶で解決!?フェロモンヘラース」を服用した結果、何故か幼児化するという現象の── いや、これは今回関係ねえな、特殊すぎる。
「うーん、カネヒキリくんの許可が貰えたら、でもいいかな?」
「うんっ!……あっ、ししょーもいっしょにおやつたべたらどうかなっ!?」
「それは……アリよりのアリだな!」
とはいえ、カネヒキリくんも一緒にいくとなると、問題はヴァーミリアンとディープインパクトである。
オレだけが行く、という話だと誰も何も文句は言わないんだけど……心配だとは散々言われるけど、カネヒキリくんも一緒だ、となるとこの2人、途端に自分も行きたいと言い出すのだ。
ウララちゃん、キングヘイローの2人に対して、オレがスタンドよろしく3人も張り付けていったら、うーん、萎縮しないだろうか?
そもそもの話として、カネヒキリくんもBCクラシック出走のためにそろそろ渡米しなきゃいけないからなあ。
「今日帰ったらカネヒキリくんに聞いてみる!一緒におやつたべるの、何日にする!?」
「キングちゃんのレースが終わってからの方がいいかも!」
「今週末がレースだろ?で、2週間後だとウララちゃんがレースだし、3週間後だとカネヒキリくんは渡米しちゃうし……12月に入ってからの方がいいのかなあ」
「わたし、12月レースないよ!」
「……ヨシッ!12月にしよっか!」
オレもウララちゃんもうっかりが多いタイプなので、忘れないうちにウマイン── ウマ娘に爆発的に流行っているチャットアプリを立ち上げ、ウララちゃんとのトーク画面に日時を書き込んで送信した。
12月のこの日なら、カネヒキリくんもアメリカ遠征から帰ってくる頃だろう。
カネヒキリくんは、オレが右耳リボンウマ娘とお茶会をすることには少し否定的だ。
たぶん、というか99%の確率で反対されるだろうけど、カネヒキリくんも一緒ということであれば一発逆転サヨナラホームラン、99%の確率でOKを出してくれるのだ。
確実にヴァーミリアンたちがゴネるだろうけど、後日2人の好きな衣装を着て撮影会をするということで免れる予定だ。
「おやつ!!オレ、めっちゃデカいパンケーキ焼けるから、それ持ってくね!」
オレの数少ない得意料理、炊飯器パンケーキ!
最近になってようやく満足いく炊き時間を見つけたのだ。
おいしさのあまりカネヒキリくんも泣き出すレベルなので、自信を持って作れるぞ!
「ほんと!?ウララもさいきん気に入ってるおかしがあってね!えんせーにいったときにいっぱい買ってきたんだ!」
「ウララちゃんの高知土産、いつも美味しいよねえ!楽しみ!!」
んふふ、と笑いながらお茶を啜ったらむせた。
12月某日。
オレはカネヒキリくんと共に、ウララちゃんとキングヘイローとのお茶会に赴いた。
BCクラシックを制したことでカネヒキリくんはたくさんの記者に追われていたけど、どんな手段を使ったのか、数日前から記者たちの姿は見かけなくなったな。
そうそう、お茶会に行くにあたって、予想通りヴァーミリアンとディープインパクトはゴネた。
正確にはゴネていたのはヴァーミリアンだけで、ディープインパクトからは無言の圧を浴びせられただけだけど。
お茶会が終わったら2人の好きな衣装を着て撮影会してもいいぞ、と言うと笑顔で送り出してくれた。
なんてちょろいやつらなんだ……オレのブロマイドにつられて知らないオッサンについていかないように、と念を押したら「お前が言うな」って言われた。
失礼な!オレだってアップルパイちらつかれても着いていかねえよ!
「サンジェニュイン、着いたぞ」
「お、ここかあ。おしゃれなカフェだなあ。おやつは持ち込みって聞いてるんだけど、大丈夫なんだろうか」
「……店は貸し切りだ。料理人も下がらせている。器具なんかは自由に使っていいそうだが」
「貸し切り!?マジで!?」
「ああ。……ディープインパクトが、黒いカードで」
「黒いカードで!?」
そういやディープインパクトのやつ、大財閥のご令嬢だったな。
いつも持ち歩いてるあの黒いカード自体はディープインパクトが自分で稼いだ金だけど。
ディープインパクト自身は頻繁に散財するようなウマ娘ではないが、使うときはとことん派手な使い方をする。
前は「海が見たい」というだけで豪華客船貸し切ってたし。
アイツとは1度、金の使い方について話し合う必要がありそうだな……でも今回はいいや。
今回はディープインパクトのことじゃなくて、目の前のことに集中しなくては。
「……オレはお嬢、お嬢、お嬢。ヨシ!行こうか、カネヒキリくん」
こくん、と頷いたカネヒキリくんを引き連れ、オレはカフェの中に入った。
白を基調にした室内は、ところどこに飾られている観葉植物の影響か、無機質というよりは自然な印象を受けた。
やわらかい柑橘類の香りが、それを引き立てている。
雰囲気のいいお店だなあ、と思いつつも、オレは中央のテーブルに座っていた2人に視線を向けた。
「おまたせしたかしら?」
「ううん!待ってないよ、サンちゃん、ししょー!」
「久しぶりだな、ハルウララ」
「ひさしぶりーっ!ししょーげんき!?」
「ああ」
ぴょん、と飛び跳ねたウララちゃんの頭をカネヒキリくんが軽く撫でる。
んふふ、ちょっと年の離れた姉妹みたいでかわいい。
心のカメラでパシャパシャ撮ったわ。
いいもの見れたなあ、と和みながらも、本題はこっちだ、とオレは視線を動かした。
テーブルには高知土産と思わしきお菓子が並んでいて、一部食べかけのようだ。
オレたちが来る前に先にちょびっと食べてたのかな?
キングヘイローは椅子に座ったまま、そして右手にお菓子を持ったまま、こちらを凝視して固まっていた。
「あなたとは……直接会うのははじめて、ね」
「あ……あ……」
「知っているとは思うけれど、わたくしはサンジェニュイン。隣にいるのはカネヒキリよ」
「あ……え……ッ」
……なんか様子がおかしいな。
オレが首を傾げると、異変を察したカネヒキリくんがさらっとオレの真横に移動した。
ウララちゃんが「キングちゃーん?」と声を掛けると、キングヘイローはウララちゃんの方に向き直り、その肩を掴んだ。
「ちょ……ッア……え……!?」
「キングちゃんどうしたのっ!?おなかいたいのっ!?」
「ちが……なん……ど……!?」
「ちがなんど?」
めちゃくちゃ混乱してるな。
これ、もしかしてキングヘイローはオレたちが来るって知らなかったのでは?
ウララちゃんがワザと伝えなかった、なんてことはないだろうし、たぶん伝えたつもりになっていたけど実際は伝えてなかった、っていうパターンかも。
カネヒキリくんも同じ結論に達したようで、混乱しているキングヘイローを尻目にテーブルにお菓子を並べ始めた。
うーん、カネヒキリくんのこの流れるようなモーション、そこに痺れる憧れるう!!
「とりあえず、2人もお座りなさい」
オレの言葉にピタリ、と動きをとめたキングヘイローは、まるで油も差していないロボットのようにギギギ、と硬い動きで俺の方に顔を向けた。
頭のてっぺんから爪の先までゆっくりとガン見されたが、やがて夢でも何でも無い現実だと自覚したのか、崩れるようにその場に座った。
座って、倒れた。
「き、キングちゃーん!?どうしたのっ!?」
「あばばば!?カネヒキリくん!?」
「大丈夫だ、意識を飛ばしてるだけだ」
「それ全然大丈夫じゃないやつだよ!?!?」
お茶会はオレたちが着いてそうそうにお開きになった。
オレが持ち込んだクソデカパンケーキは、その後カネヒキリくんの胃袋へ。
キングヘイローはしばらくカフェのソファで横になって休んでいたけど、オレたちが、というかオレがいつまでも近くにいるとまた倒れそうなので、ウララちゃんから高知土産を貰ってすぐに帰宅した。
この1ヶ月後の年明けすぐ。
再度開催したお茶会でキングヘイローに土下座されることになろうとは、この時のオレは知らなかった。
「引退するのは何故ですか。これからが楽しみなウマ娘たちもまだいるのに……勝負から逃げるのですか」
浴びせられるフラッシュと言葉を真正面から受け止める。
響き渡る「笑止!」に、オレはゆっくりと目を閉じた。
「サンジェニュインは今期URAファイナルズを持って引退するが、それは競走能力の衰えによるものでないことは、
力強く告げられた言葉を受けて、閉じていた目を開いた。
静まりかえった会場を刻むように眺め、オレは口を開く。
「瞬くような数年でした。勝利だけを夢想し、ひたむきに駆け抜けて来たと胸を張って言えるのも、偏にファンの皆様からいただいた声援あってのことです。残りあとわずかですが、どうか最後の一瞬まで、暖かい声援を送って頂けたらと思います」
下げた頭の向こう側は、まだざわりとした動揺が広がっている。
それでも。
それでもパラパラと響きだした拍手の音が、オレの背を押す。
もっと遠くへ。
もっともっと遠くへ。
果てのない、夢へ。
「よかったのか、サンジェニュイン」
「よかったのかって、なにが?」
オレたち以外誰もいない廊下を進む。
シバキ──
「最後の舞台がURAファイナルズで」
「……ああなんだ、そっちか」
「そっちって……これ以外なんだと思ってたんだよ」
てっきり「引退していいのか」の方かと思ったわ。
オレの言葉に困ったような顔をした芝里くんの、その頬を突っついて離れる。
何すんだ、と声を挙げた芝里くんはスルー。
オレはぐっと背伸びをして肩の力を抜くと、その場でくるりと一回転した。
脚は軽い。
身体のどこも痛くはない。
きっと来年も、満足いくような結果を出せるだろう。
それでも。
「今だと思ったから」
ウマ娘が「現役を引退する」というのは、様々な理由がある。
例えば、勝利を挙げられずに泣く泣く引退する、とか。
例えば、競走能力に繋がる重大な怪我により引退する、とか。
例えば、走ることよりもサポート側の方が性に合うから引退する、とか。
10人のウマ娘がいれば10通りの答えがある。
オレの場合は「今だと思ったから」だ。
本当に、ただそれだけだった。
「漠然とさあ、そろそろかなーとは思ってて」
1度目の凱旋門賞を制した時、
翌年には種牡馬としての仕事が始まって、その翌年にサニーファンタスティックやサンサンドリーマーたちが生まれ、2年後にはシャイニングトップレディが産駒初のGⅠ勝ちをしてくれた。
そんなことが記憶の波になって押し寄せてきて、じゃあそろそろじゃん、なんて思ったのだ。
そろそろ、次の子たちの時代だな、と。
「凱旋門賞も2連覇した。ガネー賞も、サンクルー大賞典も、キングジョージも。あとインターナショナルSもな。惜しむべくはドバイシーマクラシックでは2年連続で負けたことと、国内のレースにあんまり出られなかったことか。……でもオレは、もう十分走ったな、と思ってるんだよ」
オレがそう言うと、芝里くんは苦笑いを浮かべながらも「まあ、お前がそう言うならそれでいいよ」と言った。
「俺としては、もう少しお前と一緒に同じ景色を見たかった、って気持ちもあるけど」
「……んふふ、芝里くん、オレのこと大好きだもんな!」
「まあな。……でもお前の直感は外れないからなあ。ここで退くんだと思ったのなら、そうなのかもしれない。何より、お前の決めたことだ。俺はただ、お前の幸せを祈るだけだよ」
大きな手がオレの頭を撫でる。
馬だった時のオレを撫でてくれた手よりは柔らかくて暖かい手のひらだ。
手綱は握らず、鞭も持たず。
それでもオレの手を握り続けた、暖かくて優しい手だ。
オレはその手に自分の手を重ねると、芝里くんの目を真っ直ぐと見た。
「芝里くん」
「おお……どうした?」
オレの目を見つめ返してくれる目は、芝木くんに似ていた。
「オレのこと、ずっと見ててくれてありがとう」
言葉のひとつひとつに思いを込める。
「ずっと手を握っててくれてありがとう」
感謝を。
「ずっと同じ夢を見てくれてありがとう」
喜びを。
「ずっと信じてくれてありがとう」
ありったけの祈りを。
「URAファイナルズは絶対に勝つ。だってオレは──」
絶えず、絶えず、言われ続けてきた言葉をつなげる。
ニッと笑って見つめ返すと、芝里くんも笑って頷いた。
「ああ、そうだよ、お前は最高だ。……いつまでもな!」
── ああやっぱり、この言葉、好きだわ
魂に引き継がれた歓喜が力に変わる。
いつまでも燃える闘志の在処は
絶えず
「よし、じゃあ帰るか!」
「帰るって芝里くん、まさかそれに乗るのか?」
「そりゃあこれでここまで来たからな……って、サンジェお前、ほんとコレ嫌いだよなあ」
芝里くんが呆れたようにため息を吐いたが、オレは身体を震わせ、毛を逆立てながら唸った。
「ヴヴヴ……オレの方が速い……ッ!」
「いやさすがにコイツ── バイクの方が速いよ」
スイッチが入らないと動かないお前と違って、オレは乗った瞬間に動き出すんだからな!?
あとオレの方が絶対乗り心地いいはずだから……!!
芝里くんの愛車名乗るのは40年はえーぞ若造がッ!!
ヒヒーン──……!!!!
次回、競走馬回!
登場ウマ娘
サンジェニュイン
「ウララちゃん口の中にもの入ったまま喋っちゃだめだよ!」
ブーメランである
バイクをライバル視している
カネヒキリくん
サンジェニュインの生命線
いろいろ手慣れてる
ハルウララちゃん
とてもかわいい
キングヘイローさん
何も聞いてなかったので心臓にダイレクトアタックされた
ヴァーミリアンお嬢
溶けてから再生するまでが早い
ディープインパクトさん
金を使うタイミングは大体サンジェニュイン絡み
芝里くん
愛車はDuc●tiの『1299 PA●IGALE R FIN●L EDITI●N』のカラーチェンジ版
青色塗装にするために特別料金になっている(から値段はエグイことになってる)
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42.主役不在
明日土曜も投稿あります!!!!
23と24日の2日連続です。
「『主役不在のジャパンカップ』って、ウチのお坊ちゃまじゃ主役になれへんっちゅーことかいな……!」
「まあまあ
「これが落ち着いていられるか~~!」
ディープインパクトの担当厩務員・
そして市谷が床に叩きおとした雑誌を拾って、そのページをめくる。
【凱旋門賞馬・サンジェニュインがジャパンカップを回避。主役不在の同レースで誰が勝ち名乗りを挙げるのか】
【ドバイSC勝ち馬・ハーツクライが喉ナリを公表。1週前追い切りでは好調を見せるも1年越しのJCへ暗雲立ちこめる】
【パリ大賞典覇者・レイルリンク、前年の凱旋門賞馬・ハリケーンランらファイブル厩舎管理馬がJC回避。外国馬はわずか2頭が参戦予定】
【天皇賞・秋から約1ヶ月、JC参戦のディープインパクトを阻む「レース疲れ」JC当日までに回復できるのか】
見出しを見ただけでも言いたい放題だな、と竹は呆れたように息を吐いた。
これがマスコミの仕事なのだ、とこれまで関わったすべての調教師に言い聞かせるように言われた竹だったが、あまりにも好き勝手に書き立てる様子には、あまり好感を持てないでいた。
竹はもちろん、競馬を多くの人に好意を持って伝えようとする優れた記事と、それを書きあげる競馬記者の存在も知っている。
ただどうしても負の面が大きく見えてしまうのが人間というものだ。
竹が悩ましげに眉間に皺を寄せていると、大きな影が背後から伸びた。
「── まあある意味、予想できていたことじゃないか」
「ッ沼さん!ぬるっと背後に立つのはやめてくださいよ」
「おお、すまんすまん」
開いたままの扉からするりと入った沼江は、事務所の椅子を引っ張り出すと、そこにドカンと座った。
机の上には様々な雑誌や新聞が散らかっており、沼江は小さく息を吐くと、市谷の名前を呼んだ。
「こんなものに惑わされるなよ市谷くん。……凱旋門賞を制したサンジェニュインの影響はデカい。純粋に素晴らしい結果だし、彼が主役として祭り上げられるのは、実績面、アイドル性共に解りきっていたことじゃないか」
「そら、そうなんですけど……!ディープかて秋天を制したやないですか!凱旋門賞こそ競り負けはしましたが──っ!」
愛馬・ディープインパクトの扱いがよほど不満だったのか、なおも熱冷めやらぬ様子の市谷に対して、沼江はとても静かに名前を呼んだ。
「市谷厩務員」
「は、はい!」
市谷は背筋を伸ばして立ち上がると、真剣な表情をした沼江を前に、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「私ももちろん、ディープインパクトの扱いに満足しているわけではない。凱旋門賞直前の雑誌記事など読めたものではなかったし、そのほかも……当然悔しい思いはあるが、
「い、いいえ!いいえまったく、ディープはどんなに酷評されたって強い!」
市谷の言葉に、沼江は表情を緩めて頷いた。
「そうだ。ディープインパクトは強い。外野がどんな風に口だししようが、育てているのは私たちだ。私たちがあの子を正当に評価していけば、自ずと他の者にも理解して貰える日がくる。耐えろとは言わないが、それだけは解ってくれ」
諭すような沼江の言葉を聞いて、市谷は小さく頷いた。
(沼さん、こういうカリスマ性があるから、多少強引にされても周りの厩務員に慕われてるんだよなあ)
そう竹が内心で呟いているとも知らずに、沼江はニッと笑うと竹の背を叩いた。
「お前も、勝ちに行けよ」
「もちろんです」
ジャパンカップまで残り1週間。
竹の瞳には、ゴールだけが見えていた。
うららかな秋日である。
『にいちゃん、どこいくんだ?』
『どこって、厩舎に帰るんだよ。お前も今のうちに道を覚えておくんだぞ、アン』
『わかった!』
フンス、と鼻を鳴らした目の前の葦毛馬は俺の半弟、アン── アセンドトゥザサンだ。
俺が元気にクラシックシーズンを駆け抜けていた、2005年の春に生まれた弟。
ちなみに父親はクロフネという葦毛らしく、現役時代はカネヒキリくんやディープインパクトの馬主が所有していたと、目黒さんが教えてくれた。
今年1歳になり、この秋、本原厩舎にやってきたのだ。
『にいちゃん、おなかすいたよう』
『厩舎に戻れば飼い葉を出してくれるぞ!あとたぶん、今日のおやつはリンゴだな!』
『リンゴ!?にいちゃんどうしてわかるんだ!?』
『んふふ、にいちゃんここにいて長いからな……感覚でわかるんだよ』
『かんかくで!?にいちゃんすげー!』
すごかろう、すごかろう。
もっと兄ちゃんのこと褒めていいぞ、とは思いつつ、俺は努めて冷静に振る舞った。
せっかくできた弟だ、できるだけ格好良い兄ちゃん像をキープしておきたい。
前世ヒトだった頃は一人っ子だったし、弟か妹欲しいなとは思ってたんだよなあ。
……ま、母親ともども過労死したことを考えると、弟妹がいたらダブルで苦労掛けそうだから、ヒト時代にいなくてよかったのかもしれない。
『もどったらさあ、えっちゃんとタオル引きやるんだ』
『お、いいじゃん。でも目黒さんが許してくれるかなあ』
『にいちゃんたのんでよー!』
『うーん、アンがもっと真面目に調教熟したら考えようかなあ』
ちなみ「えっちゃん」っていうのは、アンとほぼ同時期にうちに入厩した1歳馬・エカヒロノくんのことだ。なんとカネヒキリくんの全弟です!
カネヒキリくんと似た栗毛の馬体だが、エカヒロノくんは尾花栗毛と呼ばれる、鬣とか尻尾とかが金色の馬だ。
このエカヒロノくんの他にも3頭がこの秋から本原厩舎にきていた。
俺のクラシックシーズンや古馬になってからの活躍を見た馬主たちが、テキの能力を評価してくれたらしい。
海外遠征に行く直前までは俺1頭だけの厩舎だったけど、来年にはさらに15頭が増える予定で、合計20頭になる。
すかすかだった馬房が埋まっていくのを考えると、それはとても楽しいことのように思えた。
少なくとも、アンが俺みたいに寂しい夜を過ごすことはない、と思えるだけで、十分楽しい。
……危惧していた「牡馬に好かれる体質」を弟は持っていなかったようで安心したし。
まあこれは、あの神だと名乗るやつがつけた要らない特典だったわけだけど、万一にも血の繋がった弟にまで出ていたら、可哀想だと思っていたのだ。
俺は中身人間だったからこれまでなんとかなっただけで、純粋な馬が同性馬に追われて混乱するなと言う方が無理な話なのである。
「いよいよだな、どうなると思う」
「ディープインパクトかハーツクライか、ま、ここだよな」
「ウィジャボードは?」
「日本でガンガン走ってるっていうイメージがないんだよ、去年のジャパンカップだって見せ場なかったしな」
「やっぱ欧州とは馬場が違うし」
「そうなんだよ。ま、サンジェニュインが出てたらちょっと考えたかも」
「ああ、そうだよそれそれ、惜しいよな」
すれ違いになった他の厩舎の厩務員たちが話している内容を聞いて、俺はしょんぼりと耳を伏せた。
今日は11月26日。
そう、ジャパンカップ当日である。
今頃東京競馬場では出走馬たちが準備を始めている頃だろう。
俺は、アンにバレないように小さくため息を吐いた。
でも俺の手綱を握っている目黒さんにはお見通しだったようで、心配そうに俺の横顔を撫でてくれた。
『大丈夫だって目黒さん、ちょっとがっかりだなあって思っているだけ』
そうは言っても、1度伏せた耳をなかなか立てられず、俺はやや首を下げてのっそりと歩いていた。
そんな俺の様子を見かねたのか、目黒さんはしばらく何かを考えていたかと思ったら、アンの手綱をイサノちゃんに渡すと、俺の手綱を引いて厩舎とは別方向に進んだ。
『あれっ、にいちゃーん!?』
『ちょ、ちょっと寄り道するー!イサノちゃんの言うこと……手綱引きにはちゃんと従うんだぞー!』
焦ったように振り返ったアンにそう叫び返して、俺は目黒さんに引かれるまま歩いた。
ついた先は本原厩舎の事務所のような建物だ。
ここでテキは調教内容を練ったり、書類なんかを捌いたりしていると聞いた。
目黒さんは俺の手綱を事務所前の柵にくくりつけると、1人建物の中へと入っていった。
『ええ……俺、ここで放置?』
そりゃないぜ目黒さん。
一体なんだろう、落ち込んでるから慰めにお高いリンゴを出してくれるとか?
目黒さんが出てきたのを待ちながら、俺は何が貰えるんだろうとワクワクしていた。
ここまで連れてきたからには、ただの放置ではないだろう。
秋と言えばリンゴのシーズン。
個人的にはサンふじリンゴこそが史上なのだが、最近はやりのリンゴも食べたいと思ってたところだ。
俺が柵に顔をこすりつけている間に、目黒さんが厩舎の窓を開けだした。
扉の直ぐ横にある窓は、俺が顔を突っ込んでもまだ余裕があるくらいには大きい。
1度建物から出てきた目黒さんが、柵にくくりつけていた俺の綱を取ると、今度は窓の近くのポールに俺の綱を巻き付けた。
そして再び建物の中に戻ると、窓から俺に手招きをするので、それに従って首を突っ込んでみた。
おお、事務所の中ってこうなってたのか。
テキのハッキリした性格がレイアウトに反映されているのか、想像していたよりはキレイな室内だった。
ところどころに見えるキテ●さんのぬいぐるみは誰の趣味だろう。
イサノちゃんがポ●ポ●プリン派なのは聞いているので、イサノちゃん以外の厩務員か、テキの趣味ということになる。
本原厩舎の厩務員はイサノちゃん以外全員30代より上の男しか……深く考えないようにしよう。
「よいしょ、っと。……どうだ、サンジェニュイン。これでテレビが見れるか?」
ハロー、キ●ィ、おいしいポプコーンはいかがと脳内にBGMを流していると、目黒さんに声を掛けられた。
その方向を見ると、大型のテレビが1台。
この時代はブラウン管という印象だったが、パッと見では薄型テレビといった感じだ。
馬の俺が小さく感じないくらいには大きいので、かなりお高い金額だと思われる。
このテレビを買えるだけのお賃金をテキに出せるくらいには、俺も稼いでいるということなのだろうか。
目黒さんの言葉に頷きつつ、俺はちょっとだけ感動した。
それと同時に、金がないからテレビがないのに、受信料払えって追いかけ回された事も思い出した。
要らん記憶は消去消去。
「……ジャパンカップ、出たかったよな」
目黒さんの声は小さく、でも俺の良く聞こえる耳にはバッチリと届いた。
『まあなあ。俺、去年の有馬記念から日本で走ってないし……それに、ディープインパクトとまた日本で走るって約束しちゃったから』
それは凱旋門賞が終わった当日。
揃って馬運車に揺られながらの帰り道で、ディープインパクトがぼそりと言った。
“ また一緒に走りたい ”
その言葉に俺は、じゃあ帰国したら走ろうぜ、と答えたのだ。
テキからジャパンカップに出走する話は聞いていたし、ジャパンカップは国内でもかなり大きなレースだから、ディープインパクトが出ないってことはないだろう。
聞くところによるとジャパンカップは芝の2400メートルらしいから、俺もディープインパクトも適性距離内だ。
場所が東京競馬場だって言うので、今以上に雨乞いの儀式を強化する必要はあるなと思ったけど。
でも、それは叶わなかった。
俺が倒れたからだ。
凱旋門賞を終え、帰国した俺たちは検疫厩舎に入った。
いつからそこでスタンバっていたのか、置いていかれた事に激おこぷんぷんなヴァーミリアンと共に、また5日間の隔離期間を過ごしていた。
隔離と言ってもずっと馬房に閉じ込められていたわけではなく、合間合間に引き運動をして貰っていたのだが、その引き運動の最中に事は起きた。
検疫厩舎に滞在する最終日の午後。
ディープインパクトが先導する形で、2頭で小さな放牧地をぐるぐると回っていた時に、俺は激しい動悸とめまいに襲われて、その場に倒れたのだ。
俺自身には倒れたという認識はなく、ただ目の前が暗くて、全身が脈打つ感覚に支配されていた。
あまりにも前触れなく突然に起きたものだから、当事者の俺でさえまったく状況を把握できていなかった。
ただ何事かを叫ばれているような記憶がぼんやりとある程度だ。
まるで心臓がむき出しになってしまったかのような、身体の隅から隅までばくん、ばくんと打ち鳴らされている感覚。
体感にして数時間はその状態だった気がするのだが、すべてが収まって自力で立てるようになった時も、空は倒れる寸前に眺めていた色そのままだったので、たぶん数分しか経っていなかったと思う。
レースのように全速力で走っている時にこれになっていたら、と思うとぞっとする。
その後、自分の脚で馬運車に乗り、そのまま競走馬の病院まで運ばれた。
いろいろと検査を受けた結果、心房細動を発症したと診断された。
そう、ヴァーミリアンが発症したものと同じやつだ。
「倒れたのは10月初旬。11月の下旬に開催されるジャパンカップに間に合うんじゃないか、という声もあったが、それをテキが聞き入れなかった理由は、わかるか」
目黒さんの言葉に頷く。
もちろんわかっている。
俺の身体のためだ。
テキは、いくら走り安い洋芝だからといって、毎月のようにレースに出したことを少し後悔していた。
俺としては洋芝になれる良い機会だったし、あのレースのおかげで凱旋門賞でも躊躇うことなく自信をもって最後まで走れたと思っている。
だからテキは何も悪いと思う必要はないのだが、今回、俺が心房細動を発症した原因のひとつに、そうした過密スケジュールが影響したのではないかと、テキは自分を責めているのだ。
臆病者だと、名誉も期待も台無しにしたと言われてでもジャパンカップを回避したのは、ただただ、俺の身体を第一に考えてくれた結果。
それが骨の髄までわかっているから、俺は、なるべくテキや厩務員達の前では残念がっている素振りを見せたくなかった。
俺がきままに過ごしていれば、馬だからヒトのアレコレわからなくて当然だよな、という空気でうやむやにできるから。
でも、やっぱり。
『でたかったなあ』
今回のジャパンカップにはディープインパクトの他にハーツクライさんも出走する。
喉ナリ── 喘鳴症という病気だと公表したハーツクライさんは、このジャパンカップを最後に現役を引退する可能性がある、と目黒さんから聞いていた。
最後に走ったのはキングジョージ。
別れ際の、俺の脚を最後まで心配していたハーツクライさんの表情や声色を思い出すと、元気にしている姿を見せてやりたい気持ちでいっぱいだった。
大丈夫、あんな怪我たいしたことない、ほら、また戻ってきたじゃないですか、俺。
そう言って、失うことを恐れていたハーツクライさんに伝えたかった。
そしてディープインパクト。
ジャパンカップでまた一緒に走る約束を守れなかったのもそうだが、俺が倒れた時に、俺の名前を繰り返し何度も呼んでいたアイツの、去り際の泣きそうな顔。
馬運車に乗っていく俺の姿に何を想像したのか、酷く動揺した顔をしていたっけな。
アレ以来会っていない。
ディープインパクトは天皇賞・秋に出走するため、あの後すぐ、検疫厩舎から東京競馬場に移動したと聞いたから。
ハーツクライさんと同じく、俺は元気だ大丈夫だ、と言ってやりたかったのに。
でももう、レースでそれを伝えることは難しいかもしれない。
ハーツクライさんが引退する可能性があるように、俺もまた、年内での引退が決定していた。
今回の心房細動が引退の原因か、と思っていたが、年内引退自体は結構前から決まっていたようだ。
12月24日の有馬記念。
それが俺のラストランになる。
これを最後に俺は現役を引退し、新しい道へと進むことになっていた。
「……テキには前もって許可は貰っている。他の厩務員には仕事を振ったからこっちには来ないだろう」
目黒さんが淡々とそう言って、テレビのリモコンらしきものを持った。
「今日、東京競馬場には連れて行ってやれないが、せめて画面越しにだけでも、見ようか」
そう言って輝きだしたテレビの向こう側から、大歓声が聞こえた。
《本日の東京競馬場はまばらな雨。内は少し荒れ模様でしょうか。第26回ジャパンカップは御覧の11頭で争われます。圧倒的1番人気を背負うのはこの馬。6枠6番ディープインパクト。前走の天皇賞・秋から馬体重はプラス2キロ。GⅠ・6勝目を目指して挑みます。続く2番人気はハーツクライ。喉ナリの公表から約12日。1週前追い切りでは豪快な上りを見せてくれました。天皇賞馬に一矢報いるか、楽しみです》
馬の色覚故か、画面越しのディープインパクトやハーツクライさんは褪せて見えた。
だけどその堂々とした歩様は、まさに戦士に相応しい姿だった。
《 ディープインパクト、少し落ち着きがないか 》
《 うーん、頭を左右に振っていますね。時々尻っ跳ねしているのでなんでしょう、ややうるさい印象です 》
《 あ、ハーツクライに絡んでいますね……ああっ 》
《 ディープインパクト、立ち上がる素振りを見せましたがすぐ落ち着きました、間もなくゲートインです 》
……いや、ディープインパクト、落ち着きないな!
アイツ、あんなに騒がしい馬だったっけ?
俺以外の他馬に絡んでいる印象がない。
気づけば真横にいるしな……去年の有馬記念とか、俺がハーツクライさんに絡まれてた時もハーツクライさんじゃなくて俺に絡んできてたし。
心なしかハーツクライさんも苛ついている感じだな。
どちらも、一緒に競馬場に居るときには見られない姿だったので、新鮮、それ以上に驚きが勝っていた。
そういや前に目黒さんが、秋天── 天皇賞・秋でも、ディープインパクトはキョロキョロと忙しなかったと言っていた。
白っぽい色を見るたびにそっちに動いていたそうだから、もしかしたら俺を探していたのかも知れない。
それで集中力を欠いたのか、スタートダッシュに失敗して後方からの競馬になった、と聞いた時は何故か申し訳ない気持ちになった。
けどアイツ、シンガリから走り始めたはずなのに、最後の直線でブチ抜いて1着ゴールイン!になったらしいから、やっぱやべえやつだわ。
ちなみに当日の秋天には芝木くんも出走していた。
3歳馬のアドマイヤムーンっていう牡馬に騎乗していたんだが、この馬は元々、竹騎手が主戦を務めていたらしい。
竹騎手は分裂できないので、ディープインパクトを選んだことで空いたアドマイヤムーンの鞍上に、凱旋門賞で勝ったことで人気が上がった芝木くんが収まったというワケだ。
芝木くんは一応「本原厩舎所属」なのだが、今、この厩舎にいる現役馬は俺だけなので、俺が出ない以上、芝木くんはフリーも同然だからな。
そのアドマイヤムーンはディープインパクトと同じく追込を得意とする馬で、秋天でもキレのある上がり方を見せたらしいけど、ディープインパクトにズタボロにされてしまったという。
そんなやべえやつだけど、俺を心配して探していたのかもと思うと、なんだかむず痒い気持ちになった。
……JCが終わったらアイツもトレセンに帰ってくるだろうし、その際に無事だと伝えておくか。
べ、べつに心配掛けてごめんとか、そういうのは思ってないんだから……ッ!
脳内で1頭ツンデレしていると、いつの間にかゲート入りが始まっていた。
続々と出走馬たちがゲートに収まっていく様子は壮観だ。
俺たちってこんな風にテレビに出てたんだなあ。
心なしか全頭、格好良く見えるわ。
なんかフィルターかけてる?
《 今回のジャパンカップは例年よりも少ない11頭立てとなりました。混戦が予想されますがどうでしょう 》
《 そうですね。逃げ馬という逃げ馬がいないので、レースのペースを誰が掴むか、それによって動きが大きく変わりそうです 》
今年のジャパンカップは11頭。
去年の出走馬がフルゲート18頭だと考えると、かなり少ない方らしい。
欧州のレースが長かったらちょっと感覚が麻痺していたが、そういえばこっちだとフルゲートの方が多いんだっけ。
「……1981年に第1回が行われて今回で26回目。出走馬の数で言えば最も少ないだろう。それは凱旋門賞馬であるサンジェニュイン、お前が出走予定だったことはもちろん、2着馬であり秋の盾を得たディープインパクト、ドバイシーマクラシック優勝馬のハーツクライ、凱旋門賞3着のレイルリンクらが登録してきていたからな。国際競争に相応しい、強豪だらけになる予定だったんだ、勝ち目の薄いレースに好んで出走させようとは思わないだろう」
『ふぅん、そう言うものなか。っていうか目黒さん俺の心、読めてね?』
「レイルリンクを初めとしたファイブル厩舎の管理馬は、初めから『打倒サンジェニュイン』で登録していたから、こちらが出ないのであればと回避した可能性があるが。最もそれだけが原因ではないだろうけど、判断材料のひとつにはなったんじゃないか。少なくとも外国馬にとっては、お前の出走可否は大きな理由だろう」
『あれ、無視?無視なのか?……まあいいや。でもそうか、俺が出走する、または回避するかどうか、で出ない馬なんていうのもいるのか』
でもまあ、俺たちって経済動物だしな。
馬主の目的は勝って賞金を得ることだし、勝てない可能性が高いレースに出そうって言う馬主はそうそういないか。
外国馬にとっては、負かしたい相手が出ないのに、高い遠征費用を払ってまで出走させる理由がない、ってのもまあ、そうだよな。
どうしてもって理由がない限り、時刻のレースに出走差せた方が良い、ってのは当然と言えば当然なのかもしれない。
ただレースっていうのは、最後までどうなるかわからないものだ。
強い馬が必ず勝つわけじゃない。
最後まで誰が相手でも油断も慢心もなく戦い、ゴール板を先頭で駆け抜けた馬こそが強いのだから。
……なんかの漫画の影響だけどな!タイトル忘れたけど、キャプテン的なやつがこんなこと言ってた気がするわ。
なんだったけなあ、と思い出そうとしていた俺を他所に、レーススタートまで残りわずかとなっていた。
鳴り響くファンファーレに耳を澄ませた。
6枠6番に収まったディープインパクトは、画面越しには平気そうに見える。
出遅れなしにスタートできるといいが、この馬は出遅れても強いのでさほど心配はしていない。
ただ、しつこいくらい繰り返すが、競馬に、レースに絶対はない。
約束された勝利は存在しない。
油断も、慢心も、驕りも、諦めもあってはならない。
最後まで勝利を夢想したものにこそ、競馬の女神は微笑むのだと、何よりも俺が知っているから。
《 雨音を覆い隠す大歓声とファンファーレ。11頭の馬たちがいまかいまかとその瞬間を待ちわびます。……最後に大外メイショウサムソン、するりとゲートインとなりまして、いよいよ、第26回ジャパンカップ、スタートしました……ッ! 》
── ディープのやつ、前に馬がいると抜かしたくてウズウズしちまうんだと
『どうりで俺のケツが見えるとすげえスピードで追ってくるわけだよ』
ヴァーミリアンの言葉を思い出しながら、俺は小さく嘶いた。
『……他の馬が前にいるってだけであそこまで力強く追えるんだ、お前に、油断もクソもねえよな?』
画面には、黒い馬が1頭、先頭を目指して駆け上がっていた。
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【JC速報】最終直線大外イッキ!ディープインパクト |
11月26日(小雨)、第26回ジャパンカップをディープインパクト(牡4、栗東・沼江琢郎厩舎)が制した。 レースを最後方、シンガリで進めたディープインパクトは、逃げるコスモバルク(牡5、地方・畑部和夫厩舎)の背を見ながら進むと、第4コーナー、最後の直線で一気に捲って上がり、先行していたハーツクライ(牡5、栗東・橋本弘継厩舎)ごと撫で切るように差し切ってゴールした。 これでGⅠ・6勝目となる。
管理する沼江調教師は「理想の走りをした。レース全体の展開がややスローに向いたのもディープインパクトには良かっただろう。この調子のまま最後のレースに挑みたい」とコメントしている。 また騎乗した竹創騎手のコメントでは「落ち着きがないのは余裕の証。ディープインパクトなりに自分の調子を整えて、目指すべきゴールまで駆け抜けてくれた」としている。
ディープインパクトは年内での引退を表明しており、ラストランとして有馬記念への出走を予定している。 同レースには同じく年内引退を表明しているサンジェニュインも出走するため、2頭が揃うレースが有馬記念が最後となりそうだ。 |
「晴れやかな冬の空に雲はありません。晴天に恵まれました中山競馬場、第51回有馬記念は15頭で争われます。1番人気はこの馬。凱旋門賞馬・サンジェニュイン。約18万票を得て、この中山の大地を1年ぶりに踏みました。これがラストラン。有終の美を飾れるでしょうか。2番人気に推されましたディープインパクトは天皇賞・秋、ジャパンカップを制して国内無敗。凱旋門賞では惜しくも2着となりましたが、ここでリベンジとなるか。サンジェニュイン同様これがラストランです」
ざわめく中山競馬場に、一瞬の静寂が満ちる。
「……2004年12月19日、この2頭が出会った新馬戦から約2年が経ちました。2頭が競り合った激闘のクラシックシーズン、有馬記念、そして凱旋門賞。本当の意味で、これが、2頭が競り合う最後のレースとなります。わずか2年、されど2年。競馬界に多くの伝説を作り上げたこの2頭のラストランに、私はこの言葉を贈りたい」
「ありがとう」
そうして溢れ出した万感の拍手は、ファンファーレが鳴り響いても止むことはなかった。
次回も競走馬回
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43.再会を祈る
前回、2万文字超えたから1万文字と1万文字で分割して投稿したのですが、
1万8千文字になったので、8千文字と1万で分割して予約入れました。
長くなって申し訳ない。
10/23 24時に73話「44.駆け抜ける ─ 第51回有馬記念」
10/24 22時に74話「閑話 掲示板回 Ep-final」
の更新予約済みです。
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【第51回有馬記念】3枠4番ディープインパクト、サンジェニュインは8枠15番に | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
24日に中山競馬場で行われる第51回有馬記念(3歳以上・牡牝・GⅠ・芝2500m)の枠順が21日に確定した。
天皇賞・秋、ジャパンカップを制し、GⅠ・7勝目を目指すディープインパクト(牡4、栗東・沼江琢郎厩舎)は3枠4番に、欧州GⅠ・5勝、日本馬初の凱旋門賞を制したサンジェニュイン(牡4、栗東・本原佳己厩舎)は8枠15番からGⅠ・9勝目を目指す。 そのほか、マイルCSを制したダイワメジャー、メルボルンカップ制覇のデルタブルース、2着入線のポップロック、JC2着のドリームパスポートや、2006年クラシック二冠のメイショウサムソンら、有力馬が脚を揃えた。
ファン投票は前年の第50回有馬記念の有効票数「1,951,473票」を上回り、総計「1,960,058票」となった。日本初の凱旋門賞制覇などの話題が、投票への追い風になったと見られる。 うち、約18万票をサンジェニュインが、約16万票をディープインパクトが獲得している。サンジェニュインの獲得票数は、平成元年にオグリキャップが記録した約19万票に次ぐ、歴代2位の記録だ。
出走15頭の枠順は以下の通り。
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もっと見る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
サンジェニュイン快調 2年連続の有馬記念制覇へ 上がり3F=33秒 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
心房細動によりジャパンカップを回避していた凱旋門賞馬・サンジェニュインが、12月2日に公開調教を行った。管理する本原佳己厩舎によると、飼い葉食いにも問題はなく、歩様にも支障はないとのことで、有馬記念には予定通り出走となる・・・ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
サンジェニュインの初年度種付け料・1500万円の予定 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2007年から社来スタリオンステーションにて種牡馬として繋養されることが決まっているサンジェニュインの初年度種付け料が、同牧場の所属グループである社来グループから発表された。そのシンジゲートが約60億近くになる可能性がある・・・ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
凱旋門賞馬・サンジェニュインの半弟・アセンドトゥザサンが入厩 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
11月5日、栗東の本原佳己厩舎に、サンジェニュインの半弟・アセンドトゥザサン(父・クロフネ、牡、1歳)が入厩した。半兄のサンジェニュイン同様、早期入厩となる。翌年夏の2歳新馬戦を目指して調教中で、主戦は兄同様、芝木真白騎手と・・・ |
それは11月30日。
ジャパンカップが終了して4日後のことだった。
『ハーツクライさん!ハーツクライさんお久しぶりです!!』
いつもより早めに調教を切り上げると、俺は目黒さんに導かれる形で、ハーツクライさんとキングジョージ以来の再会を果たした。
ジャパンカップでは、序盤は上手くコース取りして走っていたハーツクライさんだが、調子が余り良くなかったのか、終盤では思うように進まず10着。
目黒さん曰く、やはり喉ナリがキツいらしく、ジャパンカップを最後に引退することが正式に決定。11月30日の今日、ここ、栗東を出ると聞いていた。
年内ならまだ会うチャンスはあるだろう、と思っていたが、想像していたよりも早い引退に、もうハーツクライさんに会えるチャンスは今しかないと無理矢理連れていって貰った。
馬運車を前に、大勢の関係者に囲まれているハーツクライさんは、キングジョージで会った時よりは元気そうに見えた。
『サンジェニュイン!……無事か』
『めちゃめちゃ無事っすよ~!ほら、脚の怪我もすっかり!ピンピンしてます!』
その場でポンポンと跳ねて見せると、ハーツクライさんはホッと安堵したような表情を見せた。
やっぱり心配を掛けていたらしい。
いつもより鬣を噛む力も弱く、右脚は念入りにチェックされた。
『ハーツクライさん、実家に帰るんすね』
『それはどうだろう。ユートピアのように、実家ではないところで過ごすことになるかもしれないが』
『ああ……そっか……』
ハーツクライさんのトモダチであるユートピアさんは、あのドバイの後、あちらのセレブに金銭トレードされたらしく、今は海外にいるようだ。
前にテキに聞いた話では、現役引退後── つまりは種牡馬入りなのだが、それも海外になるらしい。
ユートピアさんは実家、産まれ牧場に帰る予定はないそうだ。
でも向こうのスタッフに大事にされているようだと、イサノちゃんがネット記事に載っていた写真を見せてくれたのは、今年の夏。
確かに元気そうなユートピアさんが、厳ついおっちゃんたちに囲まれて堂々と立っていた。
ハーツクライさんは、自分もユートピアさんのようになる可能性があるのではないかと思ってるみたいだった。
そういや前、目黒さんが「ハーツクライ号の繋養先はまだ発表されていない」って言ってたっけな。
『……サンジェニュイン』
『はい』
俺の鬣をやわやわと噛んでいたハーツクライさんが、真剣そうな声色で俺の名前を呼んだ。
『おそらく、私たちが会うのはこれが最後になるだろう』
『ハーツクライさん……』
『ヒトの声色から、決して悪いことにはならないだろうと思っているが、こればかりは私たちにはどうにもならないことだ』
そう、俺たちは経済動物。
ヒトの夢を背負って走り、生み出す熱戦を黄金色に変える。
ヒト無しで生きていくことは叶わず、ヒトの情を頼りにしなければならない生き物だ。
故に完全な自由などない。
ハーツクライさんは純粋な馬にも拘わらず、それに対して自覚的であるようだった。
それはハーツクライさんが誰よりもヒトに愛情を感じているからこそ、汲み取れてしまった結果なのかもしれないけど。
『……案ずるな、サンジェニュイン。どこへ行こうとも私は変わらない。私はハーツクライ。ヒトの期待に応え、走り続けた、お前のトモダチだ』
その声色には、優しさだけが詰まっているようだった。
『さて、そろそろ時間のようだ。私の手綱を握るヒトの手が強くなってきたからな』
馬運車に目を向けると、扉は開き、ハーツクライさんを入れる準備が整っているようだった。
ハーツクライさんの真横でその手綱を握る厩務員が、目黒さんに一礼する。
それが、別れの合図になった。
『サンジェニュイン、怪我にだけは気をつけるように。長く走るためには、自分の身体こそを第一に考えるべきだ。何よりヒトが悲しむから』
『はい……』
手綱を引かれ、歩いて行くハーツクライさんに小さく頷いた。
ハーツクライさんは最後まで堂々とした歩きで、これからへの不安とか、戸惑いとか、悲しみとか、そう言ったものがまるで見えない。
驚くほど落ち着いていた。
でも。
『……再会を祈っている』
『ハーツクライさん……はい、はい!また会いましょう、ハーツクライさん!』
馬運車に乗り込む直前、再会を願う言葉を残したハーツクライさんの、目尻に光るものが涙に見えたことだけは、ずっと覚えていようと思った。
「ようし、どうかなサンちゃん、痛いところない?」
『ぜんぜんない~!ありがとイサノちゃん』
有馬記念に出走するために中山競馬場に輸送される、その前夜。
俺はイサノちゃんにマッサージをしてもらっていた。
日本に戻ってきたからと言うものの、やっぱりパンパンの和芝は脚に合わないのか、シャンティイでやっていたような調教量でやろうとすると、その2倍疲れてしまう。
脚に溜まった疲労を減らすために、こうしてイサノちゃんにマッサージをしてもらっていた。
イサノちゃんは俺と一緒に欧州に滞在している間、向こうで競走馬専門のマッサージ師に弟子入りしていたらしく、マッサージの腕が格段に上がっていた。
今日だけじゃなく、馬房でごろん、と寝転がり、時々イサノちゃんに腹を撫でられつつ、脚のメンテナンスをして貰うのが今の日課になっている。
毎晩遅くまでありがとねイサノちゃん、と感謝を込めて鼻先を押しつけると、イサノちゃんはくすぐったそうに笑った。
『にいちゃあん』
『ん?どうした、アン』
俺の隣の馬房を自室としている半弟・アン── アセンドトゥザサンが、情けない嘶きをあげた。
そう言えば今日は乗り運動だったな。
テキが「アセンドトゥザサンはちょっと硬いな」って言ってたけど、それと関連があるのだろうか。
俺が聞く姿勢になっていると、アンは弱り切ったような声色で口を開いた。
『にいちゃあん、はしるのつらいよお、うえにヒトがのってるのおもいよお』
『ああ……まあ、初めのうちはなれないよなあ』
わかるわ、と内心で同意する。
俺も初めてヒトを乗せた時は『いや重いな!なんでヒト乗せて走らないといけないんだよ』なんて思ったもんだぜ。
まあヒトがいないと走るペースとかそういうのわからないし、残念ながら当然としか言いようがないわけだが。
でもそういうのは、純粋な馬であるアンには理解できない点だ。
そもそも馬って基本、勝ち負けとか興味ないしな。
俺は論外として、ディープインパクトとかカネヒキリくんとかラインクラフトちゃんみたいな、勝ったら何かが変わる、と理解しているタイプは馬界でも珍しい部類。
ハーツクライさんみたいに、ヒトそのものに絆を感じている馬はもっと珍しいのだ。
中身ヒトの俺が言うと一切珍しい気がしないっていうのが惜しいところだけど。
『にいちゃんはさあ、はしるのつらくないの?』
アンにどう伝えたら良いかなあ、と考えているうちに、新しい質問だ。
走るのが辛くないか。
そらあもちろん。
『辛いよ、ハチャメチャに辛い、苦しい、今にでも走るのやめてゴロゴロしたいわ……今ゴロゴロしてるけど』
『ええ……じゃあなんではしってるの……』
ちょっと引いたような声色出すんじゃじゃないよ。
『俺が走る理由は── 辛さや苦しさを超えるほど、愛されていると思えるからだ』
その愛に報いるため、ヒトのため自分のため。
心に作ってもらった大きなコップに、なみなみと注がれた愛情を飲み干して、そこにまた愛を注ぐため。
『ことばもわからないのにぃ?』
『でも声色はわかる。優しい手はわかる』
イサノちゃんの手が俺の右後ろ脚を撫でる。
キングジョージで傷を負ったその右脚を、どこよりも丁寧に揉み込まれ、暖められ、触れられて。
そこから伝わるぬくもりのすべてが、愛だ。
『……むつかしくてわかんない』
『いいよ、今はわかんなくていい』
すべての馬が得られるかもわからない、その深い感情に触れるチャンスがあるだけで、俺たちはずいぶんと恵まれている。
世の中にはそれに触れることなく、人知れず虹の橋を渡る馬もいるだろう。
得たくても得られないぬくもりを、当たり前に思ってしまうことだけは、この弟にはしてほしくない。
今は理解できなくても、俺のように、ターフを去るその瞬間に思ってくれればいい。
あの時、兄ちゃんが言っていた優しい手はこれか、ってな。
『無理して愛情を感じようとしなくていい。今すぐわからなくてもいい。ただ、ここにいるヒトは本当に、心の底から本当に俺たちを愛してくれてるよ。だから、だからお前も信じたらいい』
走り抜いたゴールの先で、抱きしめられることを信じたらいい。
『ただまっすぐ走って、ただいまって言えばテキたちは笑ってくれるからな』
俺がそう言うと、アンはやっぱり難しいと言って嘶いた。
ハテナマークをたくさん浮かべてそうな声色を笑うと、アンが怒ったように嘶いたので、宥めるように俺も小さく嘶いてみせた。
『お前が走り抜いて、ただいまって言った先に俺もいるよ。……お前には見えなくなっても、遠く離れても、そこに兄ちゃんはいるから、だから走り続けろ』
耳を澄ませる。
もう俺1頭ぼっちではなくなった厩舎は騒がしくて、それが嬉しい。
アンは、弟は俺みたいに寂しさで1頭遊びをすることもなく、ここで仲間達と生活できるのだと思うと、ひどく安心した。
しばらく「はしるのつらい」「あしたはゴロゴロしたい」「あそびたい」と鳴いていた弟も、途中で疲れたのか、小さな寝息が聞こえる。
さっきまでうるさかったアンが鳴き止んだのでイサノちゃんが様子を見に行ってくれたが、やっぱり寝ていたようだ。
アンが寝ちゃってるから静かにやろうか、とイサノちゃんの柔らかい声色に導かれて、俺もうとうととしてきた。
おやすみ、サンちゃん。
そんな声が聞こえたような気がして、俺は夢の中でおやすみと返事をした。
翌日。
俺は中山競馬場に輸送されるため、馬運車の準備完了を待っていた。
イサノちゃんに念入りにマッサージをしてもらった馬体は、自分で言うのもなんだがツヤツヤピカピカ、それにいつもより身体が軽い感じがする。
無駄なコリもほぐしてくれたみたいで、今なら和芝でもレコードタイムで走破できそうだ。
つまりめっちゃ調子が良かった。
良かったのだが。
「うぅ……サン……元気でやれよぉ……」
『おいおい……今生の別れじゃないんだからさあ……』
「お前ね、今生の別れじゃないんだから」
テキとセリフ被ったわ。
「すみませんん……もう長くサンだけだったから、なんか感慨深くて」
「そうですよテキ。サンジェが1歳の秋から今日までずっとなんですから、俺たち感動で胸がいっぱいなんです」
「もう2年くらい、こいつだけでしたからね、うちの馬は」
苦笑いのテキに抗議するように声を挙げた3人の厩務員に、目黒さんも苦笑いを浮かべた。
ちょっと笑うだけで止めないのは、目黒さんにも思うところがあったのかも知れない。
イサノちゃんも少しだけ目を潤ませて、今日で最後だね、と呟いた。
思い返せば、ハルノメガミヨさんやガンジョウメイバ先輩が引退したのももう2年近く前なのか。
元々少なかったテキの管理馬は、いろいろとあって転厩したり、引退したりで、クラシックシーズンに入る頃には俺だけになっていた。
馬たちが複数頭いた時はもっと大勢いた厩務員たちも、管理馬が俺だけになったタイミングで他の厩舎に移動したりして、今は数人だけ。
でもたった1頭の馬の面倒を見るにはかなり多い人数だ。
俺が勝っても勝っても、今の厩務員の人数でお給料を計算すると、割と少ない方にあたると目黒さんは言っていた。
20馬房もある厩舎でただ1頭だけの管理馬で、しかもそんなにお給料も貰えない中で、全員で丁寧に俺の面倒を見てくれた。
前にアンに言った通り、1頭切りで寂しい夜もあったが、不安に感じることは今までなかった。
それは毎晩のように俺の様子を見にくれていた、みんなのおかげ。
「サンジェぇ……最後まで楽しく走ってこいよぉ……うぅ……っ」
「怪我だけはすんなよ~」
厩務員たちが俺に力を分け与えるように撫でる。
その手がいつでも暖かいことを思い出して、俺は感謝の気持ちを込めて大きく嘶いた。
ありがとう、厩務員のみんな。
俺、絶対、有終の美ってやつを飾ってやるからな!!
最後にみんなにどデカいお給料をプレゼントしてから実家に帰るわ。
「うおっ、デカい鳴き声!どうした、撫でられるのイヤだったか?」
「最後のレースなのにご機嫌ななめかよ?」
「サンジェは最後までマイペースだなあ」
失礼な!今いい感じの嘶きしたやろがい!
もっとこう、しんみりしてくれや。
「テキ、準備完了しました!」
「おお、じゃあ行こうか」
落ち着いて行けよ、リラックスリラックス、と厩務員たちからの声援を受け、俺は笑って嘶いた。
『パドックで盛大に立ち上がってやるから見てろよ!!』
輸送先の中山競馬場の馬房で爆睡したあと、翌日の有馬記念のパドックで俺は宣言通り立ち上がった。
目黒さんは苦笑い、テキは頭を抱えたが、芝木くんには大ウケだったらしい。
でもオッズが下がって2番人気になった。
ヒィン……!
「サンジェニュイン、お前ってやつは……」
いやごめんて。
でも最後だからな、なんか記憶に残ることやってやろうと思って。
今までパドックでも返し馬でも大人しかっただろ、俺。
有馬記念を見に来た何万人という観客に、サンジェニュインの最後のパドックを楽しんで貰おうと思いまして……。
というのは建前で、普通に自分がリラックスするためだ。
立ち上がった瞬間の、観客の「おお!」という声に逆にこっちがビックリしちゃったけど。
「……まあ、お前が楽しんでるならそれでいい。さあ、そろそろ芝木くんが来るな」
止まれの合図が響き、俺は顔を上げた。
真横の目黒さんは優しい顔をしている。
俺はその顔に自分の顔を擦り付けた。
『目黒さんと歩くパドックもこれが最後かあ』
「結局最後まで別周だったな」
『それな』
「でも、それがお前らしくて良い。……サンジェニュイン」
『ん?』
他の馬たちが続々と鞍上に騎手を迎え入れる中、俺は目黒さんに名前を呼ばれて首を傾げた。
目黒さんは少しだけ目尻を下げると、俺の顔を持ち上げ、メンコの太陽部分を撫でる。
「いままでも、これからも、お前は最高だ」
何度聞いても飽きない言葉が、耳の奥まで響く。
目黒さんは俺の背を押すように言葉をつなげた。
「最後まで楽しめよ、サンジェニュイン」
そして、俺の鞍上に、芝木くんが乗った。
「……芝木くん、サンジェニュインを頼んだよ」
「はい、目黒さん!」
「リラックスして、いつ通りの騎乗でいい。サンジェの力あるまま、芝木くんの力あるまま、ただ駆け抜けて行ってくれ」
「はい、テキ!」
目黒さんとテキの言葉に頷いた芝木くんが、俺の首筋をぽんぽんと撫でる。
「……さあ、行こうか、サンジェ!」
おうよ!
俺の手綱を揺らした芝木くんに笑う。
噛みしめるように踏み出した1歩は、それまでの何よりも重く感じた。
次回、
10/23 24時に73話「44.駆け抜ける ─ 第51回有馬記念」
10/24 22時に74話「閑話 掲示板回 Ep-final」
の更新予約済みです。
残り4話で完結
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44.駆け抜ける ─ 第51回有馬記念
10/23:22時に72話投稿してます。
なんだかんだ言って馬回+2話してしまったこと、どうか許して欲しい
「── 各馬、返し馬に入りました。パドックでは立ち上がる場面もありましたが、8枠15番サンジェニュイン、軽やかな走りを見せています」
「真横にディープインパクトが張り付いている姿を見るのも久しぶりですね」
「そうですねえ。国内で見るのは前年の有馬記念以来でしょうか。2頭の鞍上は苦笑いですが、その姿さえどこか懐かしく感じます。パドックでの立ち上がりや、返し馬に入った瞬間にその場を跳びはねる姿など、今日のサンジェニュインはいつもよりうるさい様子。しかし極度の発汗はなく、今は落ち着いているように見えます。むしろディープインパクトの方がやや落ち着きがないか」
「ちょっと興奮も見られますね。ただ徐々に落ち着いてきたのか、鞍上の竹騎手が綱を引くと大人しく引き下がっていきますよ」
うわあ、良馬場だあ!
パンパンだあ!
『ほん、……っとにかったい!かったいわコレ!』
あんなに逆さてるてる坊主作ったのに、またしても雨が降らなかった。
どうなってんだ?
てるてる坊主の作り方間違えた?
それとも俺が暇すぎててるてる坊主で遊んでたのがだめだったのか?
重馬場なんて贅沢は言わないから、せめて稍重の馬場であれよ。
ダンッ、と重めにジャンプすると、芝木くんが宥めるように俺の頭を撫でた。
「よしよし、やっぱり日本の馬場は硬いな、サンジェ」
まったくだぜ!
で、お前にはツッコミ入れた方が良いのかディープインパクト。
お前な、俺たちこれが最後のレースだぞ!
なんで最後のレースでも俺に張り付いてるんですかねえ……!
ちょっと、なんかこう、ライバルの最終決戦らしいギラギラとかできなかったんか?
これが最後だなライバァル……そうだなライバァル……みたいなやつやりたかった。
でもディープインパクトが急に「本気で
「今回も申し訳ない、芝木くん」
「いや、俺もサンジェもちょっと慣れたので」
ほんのちょっとだけな!
俺が耐えられるかと言ったら別の話だ!
真横にディープインパクトを張り付かせながら、俺は上下に頭を振った。
俺の手綱を噛むなよディープインパクト!
それはラインクラフトちゃんからの手綱なんだから!
何度か呼びかけるが、凱旋門賞で喋っていたのは何だったのか、ディープインパクトはまた無口な状態に戻ってしまったようだ。
馬体を離そうとしてもピタッと張り付いてくるので、最後は俺も諦め、ゲート入りまでだからな!とディープインパクトに言い聞かせて勝手に返し馬を始めた。
走ってみた感じ、やっぱり走りづらいわ。
チラッと周りを見ると、俺以外の全頭、隣のディープインパクトもさらーっと走っている。
たぶん他の馬的には最高の馬場状態なのかもしれん……泣いた。
『んー、でも最後だし、今回も頑張って走るかあ』
文句言ってても仕方ないし、俺、別に和芝で走れないわけじゃないからな!
俺がそう呟くと、ディープインパクトがピクリと身体を揺らし、首を伸ばして近づいてきた。
『うおっ、なんだよディープインパクト』
『……最後?』
『最後?……ああ、そうだよ、最後だろ?俺とお前が走るのは』
そう言うと、ディープインパクトは「エッ?」とでもいいそうな顔で首を傾げた。
なんだこいつ、聞いてないのか?と思ったが、俺以外の馬はヒトの言葉を完全に理解できないんだった。
あまりにも自然に目黒さんと会話してたから忘れそうになったな。
『俺とお前、今回のレースで揃って引退なんだと』
『いんたい』
『もう走らないんだよ』
『君と、僕はもう……走らない……?』
『そう』
頷くと、ディープインパクトはそれきり黙ってしまった。
ショックを受けたような顔だったのは、いきなり「今日で終わり!」って言われたからだろうか。
なんだか申し訳ないことをしたような気がするわ。
せめて走り終わってからにした方がよかったかもしれん。
なんか悪いな、ディープインパクト。
「各馬、返し馬が終わりまして、順番にゲートへと誘導されていきます。まずは先入れから」
ぐい、と芝木くんに綱を引かれて立ち止まる。
どうやらゲート入りが始まったようだ。
いつの間にかディープインパクトも剥がされていたので、俺は誘導されるまま歩き始めた。
その最中に、他の馬から声を掛けられて返事をする。
馬界でもコミュニケーションが必須なのだ……!
『サンジェニュインくん!よかった無事か!』
『お、デルタブルース先輩!!ご無沙汰してます!!無事です!!』
併せ馬でお世話になっているデルタブルース先輩とは、去年の有馬記念でも一緒だったな。
今年の5月、6月の併せ馬でお世話になったっきりだから、丁度半年ぶりの再会だ。
ハットトリック先輩やウオッカは元気だろうか?
すれ違い様にケツガン見してきたコスモバルク先輩も久しぶりだ。
というか丸1年ぶり。
彼は先行馬らしく、去年も結構前の方で追走されてたっけ。
ディープインパクトが走ってたジャパンカップでは先頭きって走ってたから、たぶん今回も前の方にきそうだな。
頭の中にいれとこ。
「今回は大外だから、ゲートインは最後だぞ、サンジェ」
あいあい、わかってるよ。
芝木くんの言葉に頷くと、近くにいた別の騎手が「エッ?」って顔をしていた。
なんか残念そうな顔で芝木くんを見ているが、違うんです、これはもうクセというか……!
首を傾げている芝木くんに、その騎手は引きつった笑いを浮かべて去って行った。
ああ……馬とお話しちゃうメルヘンな属性つけちゃったかも……ごめんな芝木くん……。
内心で芝木くんに謝りつつ、俺は後方へと下がった。
俺の今レースの枠順は8枠15番。
今回は大外枠なので最後にゲート入りだ。
昨年同様、他馬に絡まれないようにギリギリまで距離を取る。
今回の有馬記念、全15頭中俺含めて牡馬は14頭!
……驚きのオッス率だ!?
でも去年も牝馬2頭だったから、有馬記念は牝馬が少ないのかもしれない。
もっと出て欲しい。
っていうか俺以外牝馬であってほしい。
別にハーレムしたいとかじゃなくて、その、今この瞬間も俺に対してハアハアいってるオッスたちをどうにかしてほしい……!
プルプルと震えつつ、俺はそのたった1頭の牝馬を見つめた。
なんとこの牝馬、ウマ娘でお馴染みの魔女っ娘・スイープトウショウである。
アイエエ!?スイープトウショウ!?
とは思ったものの、実は俺がアプリ版ウマ娘をプレイしていたころ、スイープトウショウはまだ実装されていなかったのと、アニメ版でも未登場のため、ウマ娘としての彼女はあまりよく知らない。サポカも持ってなかったしな。
ただ目の前で起きている出来事だけを述べるとしたら── めちゃくちゃゲート入りを嫌がっている。
彼女は4枠6番の偶数組なのだが、前走で何をやらかしたのか先入れさせられていた。
一体何を……あ、鞍上が落ちた。
「4枠6番スイープトウショウ、枠入りを拒んでいます」
「かなり激しく嫌がってますね、尻っ跳ねをして、後退って……鞍上の川添騎手、なんとか首を前へと押していたのですが、落馬しちゃいましたね」
「川添騎手、再度騎乗します。いやあ、今、結構なね、大人数でスイープトウショウ、ゲートに押し込まれていくのですが、頑なに動かない。今、お尻を持ち上げて、なんとか、なんとかゲートに近づかせて……ああ、入りました、スイープトウショウ、スイープトウショウいま入りましたね」
「よかったです。場内から思わず拍手が。いやあゲート入りだけで拍手はなかなかないですよ」
「ゴール後もこの大拍手、浴びることができるかスイープトウショウ、注目です。続いて奇数組、順に枠入りが始まりました。ダイワメジャー、するりとゲートに収まる。先月、半妹ダイワスカーレットが新馬戦デビュー。妹の活躍に兄、続けるか」
スイープトウショウがゲートに押し込まれて行ったことで、待機していた奇数組が順にゲート入りしていく。
特に引っかかることなくスムーズに入っていく彼等に続くように、偶数組も順に誘導されていった。
3枠4番だからか結構早めに連れて行かれたディープインパクトがこっちをガン見しているが、大人しく収まってくれよと祈った。
『おおい、かわいこちゃ~ん!』
『……ん?この声は、アドマイヤジャ……!?ないな!?』
『フジの方だよ~!ジャパンは実家帰ったんだ』
『え!?そうなのか!?』
ディープインパクトの天皇賞・秋の時にはインティライミやローゼンクロイツの名前を見たから、同期で引退しているやつはまだまだ少ないんだと思っていたけど。
そうか、アドマイヤジャパンは引退してたのか。
今年はほぼ海外にいたから、同期のこと全然解らなかったな。
『かわいこちゃん久しぶりだな!なんか虹の橋を渡ったって噂を聞いてたから会えてうれしいよ』
『とんでもねえ噂流れてるんじゃん……』
さてはディープインパクト、からのヴァーミリアンだな?
デルタブルース先輩に「無事か?」って言われたのなんでだろって思ったけどこれだな。
なんか流れが見えてきたわ。
『ひさしぶりに一緒に走れてうれし~!』
『俺も同期に会えてうれしいぜでもちょっと近づくのは待て、あれ、ちょ、お前若干たち、いやもうなんで……!?』
『うれしくて』
『うれしくて!?』
そんなうれションみたいなことある?
「6枠10番アドマイヤメイン、7枠12番アドマイヤフジ揃ってゲート入り。ちょっとフジの方がやや嫌がるそぶりは見せましたが入りましたね。サンジェニュインが気になったのか絡んでいましたが、サンジェニュイン、大丈夫そうです」
「ディープインパクト、サンジェニュインと同世代のアドマイヤフジですね」
「前走が1月の日経新春杯でやや時間が空きましたが、馬体は問題なさそうに見えますよ。トーセンシャナオーもするっと収まって、いよいよ大外のサンジェニュインがゲート入りです」
「パドックでも返し馬でもゲート入りでも、従順で大人しいのが特徴のサンジェニュイン。今回も非常に穏やかですね」
「今回はちょっとパドックでは立ち上がっていましたが、精神面は問題なさそうです。……これで最後の1頭が収まって、全頭準備完了」
アドマイヤフジが引きずられていくのを見送り、俺も大人しくゲート入りの準備。
その前に、アドマイヤフジとほぼ同じタイミングでゲートに誘導されていく、アドマイヤメインという馬の鞍上が
し、柴畑さ~ん!!柴畑さんだ久しぶり~!!と、俺の嘶きに気づいたのか、ゲート入りギリギリで振り返った柴畑さんが手を振り返してくれた。
「よかったな、サンジェ」
ゲートへと誘導されながら、そう言って俺の頭を撫でてくれた芝木くんに頷き返した。
柴畑さんに会うのは去年の夏以来だ。
腰を痛めていたと聞いていたけど、元気そうで何より!
るんるんでゲート入りを済ませると、俺はちらりと隣ゲートをみた。
今回のお隣さんはトーセンシャナオーという3歳牡馬のようだ。
俺の方をガン見してて怪しい気配を感じる。
隣がこんな美貌でごめんな……なんか前にも同じようなこと言った気がするな。
どうかニシノドコマデモみたいに立ち上がらないでくれよ、と祈りつつ、俺は前を向いた。
「サンジェ」
芝木くんが俺の手綱をぎゅっと握る。
たった一言、俺の名前を呼んだだけの声が空気に溶ける。
「今日も、お前は最高だ」
重ねられた祈りを合図に、俺は、勢いよくゲートを飛び出した。
「第51回有馬記念、今、スタートしました。6番スイープトウショウ出遅れましたが他14頭は脚並揃ったキレイなスタート。先頭はやはりこの馬、15番サンジェニュインが抜群の瞬発性を見せて2番手集団に5馬身リード。その背を追う2番手はアドマイヤメイン、宣言通り前に出てきたがハナを奪う逃げには徹しきれないか、サンジェニュインとの差はまだ開いていく。しかしこの馬も後続に5馬身差をつけているぞ、3番手はダイワメジャー、ややセーブした走りか、徐々に内に寄せて上手いコース取り。2馬身差の位置に8番メイショウサムソン、半馬身差で追うデルタブルース、ポップロック、そしてトーセンシャナオーが横並び、さらに1馬身離れて最内に3番ドリームパスポート、6番トウショウナイトが並んだこの位置、外目4馬身差で先行集団を追うコスモバルクはいつもより後ろにいるが大丈夫なのか。コスモバルクから半馬身遅れてウインジェネラーレ、アドマイヤフジが固まった状態で走っています。さらに3馬身差で4番ディープインパクトが安定の後方スタート、さらに3から4馬身差でスイープトウショウ、出遅れが響いたがこの馬ならまずまずの位置でしょう。6馬身突き放されたシンガリにスウィフトカレント、縦山騎手この選択は正解なのか」
ンンッ!やっぱり脚に響くなあ!
大外スタートの俺はこのまま行けば他馬よりも長い距離を走ることになる。
ソレは一般的にデメリットとされているが、スタミナいっぱいの俺には正直あまり関係がない。
コーナーカーブ曲がるのが苦手っていうのはまだ直ってないからどっちみちどこかのタイミングで大外向くし、オッスどもは内側に固まってるから態々そっちによる必要性も感じないからな。
最初から大外である分、移動する手間が省けて楽ちんだ。
洋芝よりはスピードは落ちるけど、まずまずの出だしは刻めたのか、芝木くんからの鞭は入ってこない。
今回は去年の有馬記念や洋芝よりも条件を緩めて、5馬身リードを取ることにした。
前は10馬身にしてたんだけど、アレだと俺が頑張り過ぎちゃうとかなんとかで、テキが和芝の時は5馬身に変えたのだ。
差が5馬身以内になったら合図を貰う予定なのだが、第1コーナーが見えるホームストレッチに差し掛かったところで、芝木くんが俺の手綱を扱いた。
「サンジェ、ここから第1コーナーまで一息でいけるか」
ンン!?
ここから第1コーナーまで!?いやあちょっとそれは……征ける、征けるな!!
有馬記念は芝の内回り2500メートル。
そのスタート地点は第3コーナーのちょっと前で、第4コーナーにかけて緩やかな下り坂になっている。
俺は下りだろうが上りだろうが関係なく全速力で征くタイプの馬なので、もちろん下り坂も一気に走り抜いた。
それが終わると待っているのは上り坂。
下りを全速力で征った俺がそこを全速力で昇れない……ことはない!
ハミを強く噛んで答えると、芝木くんが俺のケツに1発バチン、と鞭を入れた。
「第1コーナーに向かう上り坂をサンジェニュインが駆け上がる!一切緩まないスピードでぐんぐん、ぐんぐんと後続に差をつけていくぞ現在7馬身差!スタンド前の大歓声を浴びながら、2年連続の有馬記念制覇を目指して大駆けだサンジェニュイン!」
いやうるさっ!!
んもう相変わらずうるさいなここは!!馬の臆病さに配慮して!?
アッおい誰だよ今シバキシネーって言ったのはよお!?
このレース終わったらシバきにいくからな芝木くんが!!
……ん?今うまいこといったか!?
「追いすがるアドマイヤメインから5馬身差で追走するダイワメジャー、その背後にピタリとついて、デルタブルース、ポップロック、メイショウサムソンは少し力負け、2馬身差で追うトーセンシャナオーが外側によれながらもなんとか先行集団に食らいつこうとしています。ここから各馬2馬身差でトウショウナイト、ドリームパスポート、コスモバルク、アドマイヤフジが抜いて抜かれての接戦、それを前に見るディープインパクトは4馬身差、スイープトウショウはその背を見るように後方2番手。最後方はぽんとスウィフトカレント、かわらず」
上り坂を昇りきって少しだけスピードを緩める。
大丈夫、たぶん今、5馬身以上はついてるよな?
一瞬だけ脚を休ませ、次のコーナーを曲がるための力を溜める。
短いカーブを曲がるとき、ちらりと見えた馬群の中で、鹿毛の馬がこちらを見ているのを感じた。
……こんな距離で目、合うか!?
たぶん合わない気のせいだ、と思いつつ、でもたぶん合ってる気もして震える。
ディープインパクトと目が合った、うん、あったことで、俺はレース前の、返し馬で自分がディープインパクトに言った言葉を思い出していた。
“ これが最後のレース ”
そう。
これが、正真正銘、俺とコイツの最後のレースだ。
それを改めて噛みしめると、この4年間の馬生活が脳裏を一気に駆け抜けて行った。
真っ先に思い浮かんだのは、馬になりたての頃。
あの頃はまさか自分が競走馬としてこんな風に走るようになるなんて、想像もしなかった。
そもそもヒトから馬になること自体まったくの予想外だったので、産まれた時は結構混乱したっけな。
神を名乗るやべえやつが現れた後も、これは夢なんじゃないか、目が覚めたらまたいつも通り、ひとりぼっちの冷たいアパートだと思っていた時期もある。
今はこんなにすいすい走れているが、産まれてしばらくは上手く歩けなかったし、もちろん走れもしなかった。
後から考えると、競走馬としてかなりダメダメだったと思う。
立ってるだけで精一杯で、歩こうとするとプルプルしていた俺を、それでも根気強く育ててくれたタカハルとタクミには感謝しかない。
視界も、色覚も、聴覚も嗅覚も変わってしまったから、それに慣れるのだってすごく苦労した。
色はいつも褪せて見えるし、耳は聞こえすぎるし、鼻も利きすぎる。
匂い嗅いだだけで「あ、タカハル、今うれしいんだな」と解ったときはすごいビビった。
そんな慣れないことばかりの日々で、俺は将来への希望とかまったくなかった。
毎日これからどうしたらいいんだろうと、そればかり考えていた。
でも悩んでいたってしょうがないのは確かで、そしてタカハルとタクミが俺を精一杯大事にしているのも確かで。
まずはこの若人たちに世話になったお礼をしたいなって気持ちが、俺が歩き出すきっかけになった。
いざ歩こうと思えばすんなり歩けたし、走ってみるかと思えばすんなり走れた。
俺の身体はとっくのとうに、そのための準備ができていたのだ。
足り無かったのは俺の覚悟だけ。
うじうじ悩まずにとっとと歩くなり走ってみるなりすればよかったんだよな。
ホッとしたような、我が事のようにうれしそうにしていたタカハルたちのことを思い出して、俺は改めてそう思った。
走れるようになってからは毎日のように放牧地を駆け回った。
俺以外に馬はいなかったから、だだっ広い放牧地を1頭だけで贅沢に使って、飽きるまで、疲れるまで走って。
そうやって過ごしているうちに、目黒さんが俺を迎えにきた、あの1歳の秋になった。
本原厩舎に来てからの日々は忙しない。
馬運車に揺られながら「俺はどうなるんだろう」なんて不安を感じていたけど、それを思い出す暇もないくらい慌ただしく時間は過ぎ去っていった。
そんな日々の中でテキが、目黒さんが、イサノちゃんが、厩務員のみんなが、芝木くんがたくさん良くしてくれて、いつの間にか俺は、競走馬としてこのヒトたちに恩返しがしたいなって思うようになった。
こんなに必死に俺のことを育ててくれる。
昼夜を問わず俺のことを考え、俺にとっての最適を模索するヒトたちに、走りでもって報いたくなった。
新馬戦で負け、弥生賞で負け、ダービーで負け……負けるたびに積み重なった悔しさが覚悟に変わる土台を作ったのは、間違いなくテキたちの存在だ。
「先頭は依然サンジェニュインの独走です。第2コーナーをするりと抜けて、バックストレッチへと駆け出しました。サンジェニュインの1000メートル通過タイムは58秒とハイペース。生み出したリズムに他馬が飲み込まれているか、全体的に速い仕上がりに見えますがどうでしょう」
「やっぱりサンジェニュインのスピードは格別でしょう。並の逃げ馬にはない圧倒的なスタミナがあるため、逃げバテを一切期待できない馬です。終盤まで逃がすと捉える難度は一気に上がりますよ」
「誰がサンジェニュインを捉えるか、後続の動きから目が離せません。第3コーナーまであと少し、ダイワメジャー、ダイワメジャーがアドマイヤメインとの距離をじわじわと詰めて今、4馬身、3馬身、3馬身まで縮まりましたここから躱すのか、ダイワメジャーと半馬身差まで上がってきたメイショウサムソン、二冠馬の意地をここで見せるか、1馬身差で縋って征くのはデルタブルース、ポップロックの2頭、初GⅠを狙うトウショウナイトも果敢に攻めるか勢いはおちません。ドリームパスポートから2馬身離れてトーセンシャナオー、まだ粘るがそろそろいっぱいいっぱいか、コスモバルクは馬群中頃、なかなか先行集団に混ざれません、ウインジェネラーレは内側で脚を溜めるスタイルか、1馬身差でディープインパクトがじわじわと近づいてきました、鞍上竹、どこで仕掛けるのでしょうか」
ちらりとまた視界にディープインパクトが入ってくる。
かなり後方にいたはずなのに、もう中段まで上がってきたようだ。
俺は脚に力を入れ、真っ直ぐと前を向いた。
第3コーナーを目前に背後の気配が濃くなる。
じわりじわり、追い詰めてくるような殺気に、俺は自然とスピードを上げていた。
競走馬として走る覚悟をしたからと言って、そこから都合良く覚醒して、すべてのレースで大楽勝!苦しいこと何にも無い、毎日ハッピー!なワケがない。
レースに関してはむしろ苦しかないし、レースがこんなに苦しいものだとは本当に思っていなかった。
もし産まれたての自分に会って話せるなら、真っ先に「レースはやばいほど大変だ」と言うだろう。
……でも、本当に過去の自分に何かを伝えることができるとしたら、その内容はきっとこれだけじゃない。
大変だ、辛い、苦しい、それだけで終わるような走りをしてきたわけじゃないのだから。
パシン、とケツに鞭が入る。
背後でぞわぞわと襲いかかってくる衝撃は、きっと、鹿毛の馬。
「まもなく第3コーナー、2番手はアドマイヤメインを先頭に半馬身差でダイワメジャー、メイショウサムソン、デルタブルース、ポップロックにトウショウナイトの叩き合い!しかしこれを大外からディープインパクトッ!ディープインパクトがまとめて差し切って上がってきた!強いぞディープインパクト!鞍上竹、ここが勝負所か手綱を扱いて前へ前へ、巧みなステッキ捌きでディープインパクトを前へと押し上げる……ッ!」
また2度、鞭が入る。
2番手の馬に着差を縮められているぞという合図。
その馬が誰なのか、俺は決して振り返らない。
背後の馬を見るのは芝木くんで、俺が見るべきは── 先頭だけだから!
脚に目一杯、力を入れる。
ありったけのすべてを注ぎ込んで、大地を蹴り上げる。
ただ前へ、ひたすら前へ。
ただいまを言うためだけに、前へ!
芝木くんの手綱を扱くリズムに合わせて、俺は首をぐっと下げ、最速を追求する。
その走りの中で、俺は過去の自分に向かって大声で怒鳴りあげた。
なあ、おい、聞こえるか、過去の俺!
未来のお前から教えてやるよ。
過去の俺はまだ戸惑いの毎日だろう。
慣れない感覚、ヒトだった頃と異なる視界、思うように伝えられない気持ち、これからへの大きすぎる不安。
未来への期待なんて全く持てなかったお前に教えてやる。
お前が想像する以上にレースは苦しいし、痛いし、つらいし、きつい。
それは確かだ。
オッスどもには出会えばハアハア言われるし、ケツもガン見されて怖い。
場合によってはケツタッチもされるし、突然、鬣を食われてベトベトにされたりもする。
ずっと一緒に笑えると思っていたトモダチと2度と会えなくなったり、寂しい思いもする。
だけど!
……だけど、駆け抜けたゴールは信じられないほど気持ちが良いんだ!
これだと思えるヒトを背負って走り、力ある限り踏みしめる瞬間は楽しい。
よくやった、がんばったなって抱きしめられた時なんてたまらない。
心の底から愛されていると自覚できる。
ただいま、と言っても返事が返ってこない、冷えたアパートとはワケが違うんだ。
がんばったよ、走りきったよって駆け寄った時、おかえりと言ってくれる。
心に染みて涙になりそうなくらい、そんなことが、それだけのことがうれしいと思える!
「先頭はまだサンジェニュインだ!サンジェニュインが逃げる逃げる!さあ見せるか最後の大逃げ!サンジェニュイン!一切緩まぬ逃げ脚!さあ各々方、このままでよろしいのか、ッいやよくない!6頭一気に抜き去った、その脚を伸ばすのは4番ディープインパクト!ディープインパクトがここで上がってきた!無敗の!国内無敗のディープインパクトが、今、轟然と駆け上ってくる見事な末脚!これがターフに
じわりじわりと上がってきて、叩きつけられるのは強い熱量。
「ディープインパクトがサンジェニュインを捉えて、さああと2馬身、1馬身、ッ並んだ!並んだ並んだディープインパクト並んだ!ここで2頭横並び!和芝は俺のフィールドだとディープインパクト!ここで徐々に差を広げようと鞍上竹、見事なステッキ捌きだ!サンジェニュインはちょっと苦しいか、3番手にはメイショウサムソン切り込んできて2馬身差の位置にダイワメジャーが粘る!ポップロックまだ余力はあるか、ドリームパスポートも首を差し込むが先頭2頭まで距離があるぞ!」
目の前に鹿毛の背中がある。
全身を包んだ『抜かせ』という情熱が、俺の脚に、火をつけた。
「ラスト2ハロンに入ってディープインパクトが2馬身リード!これが国内無敗の実力か!これがラストラン!GⅠ・7勝目まであと少しだディープインパクト、ここで有終の美を──ッ!?」
1度抜かされたからなんだ。
もう永遠に抜けない差か?
まだだ。
まだ、終わってない。
ゴールするまでがレースで、レースに絶対はなくて。
だから俺は、諦めない──……ッ!
「サンジェニュインが来た、来た!いやここはあえてこう呼びましょう!太陽だ!太陽がグーンッと伸びて伸びて眼前の鹿毛をジッと見つめて捉えに掛かる!大地を強く踏みしめて!蹴り上げた後はえぐれているぞサンジェニュイン!諦めないことが名馬の証か!?太陽が昇る!射し込む!精一杯伸びてディープインパクトを捉える!捉える!並ぶ!照らす中山の直線は短いぞ……っ!」
ゴール板が見える。
あと少しの位置。
並んだ鹿毛の視線が絡んで、俺は言うはずじゃなかった言葉を、大声で叫んでいた。
『ッこれが!最後だから!……ッだから、最後のウイニングランは一緒に走ってやるよ!ディープインパクト!』
『サンジェニュイン……ッ!?』
からかうように叫んだ言葉に、かすれた音が混じる。
最後だから。
お前と走るのは。
これが最後。
寂しくない。
悲しくない。
もう痛い思いをしなくていいんだっていう安堵。
でもそれと同じくらい、あと少しだけ、走ってみたかったっていう、執着。
『そ、っれじゃあ……ッ僕が勝ったら!グルーミングもさせてくれッ!』
『それはずえっっったいイヤだね!!!!』
最後の最後に欲望だすじゃん!?
真横で、ガンガンとぶつかりながら2頭で走る。
鞍上が必死に俺たちの首を押し上げて、前へ、前へ。
1歩、また1歩と進むたびに、身体の中を何かがグツグツと煮えたぎっていくような感覚。
怒りではない。
恐怖ではない。
悲しみでも、寂しさでもない。
ただ。
「さあこれが最後だッ!最後の競り合いだッ!衝撃か太陽か!?ディープかサンか!?」
ただ横目に見たその鹿毛に、今はどうしようもなく、笑いたかったんだ。
「逃げ切るぞ、サンジェ──……ッ!!」
「まだ征ける、ディープ──……ッ!!」
息を揃えたように鞍上から檄が飛ぶ。
俺たちもまた、息を揃えたように大地を蹴り上げ、その栄光へと飛び込んだ。
「17万人が見届けた、これが2頭のゴールイン……──ッ!!」
中山競馬場に雨が降る。
ありがとう、と、さよなら、と、いろんな雨が降りしきって止まない。
高らかに歌われる喜びの歌は、俺たちを包んで、いつまでもいつまでも、響き続けていた。
無事、ラストラン走破
10/24 22時に74話「閑話 掲示板回 Ep-final」予約済み
残り3話で完結
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閑話 掲示板回 Ep-final
○お願い○
掲示板回では誤字報告はなしでお願いします
※レス先違いも含む
10/27 追記
アンケートを設置しました
掲示板回のみ誤字報告不要です。
【総合】サンジェニュイン専用スレ 59
444:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:hym3DAyUv
サンジェ実装&ナイト凱旋門賞まで後12時間やで
445:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:DLvZQBrXK
長いようで長かったな
446:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:fG0l7Tcm+
本当に長かった
発表夏だぞ
447:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:yf7+9YAzB
いやまあ、3Dモデルあるのになかなか実装されなかったタマモクロスとかマンハッタンカフェとかの前例があったし・・・
多少はね?
448:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Vzlajawyl
3Dモデルどころかイラストさえなかったんですが
449:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:PBwEOXKH/
>>448 シッ
450:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:xNo0k5S/Q
ディープインパクトもこれだと思われてた初期案からちょっと違う感じでお出しされたのを見るに、やっぱ裏側でゴタゴタがあったんだろうなあ
でなきゃこんな実装決定の発表から実際の実装日まで時間掛からないっしょ
451:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:zLrlEip31
ネットでホモ馬どもに追いかけ回されるネタ馬みたいな扱いされてるけど、未だ「世界で唯一」「日本でただ1頭」の白毛の凱旋門賞馬だからな
452:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:hDJuDRKtL
サンジェ産駒にも2頭いるじゃん >凱旋門賞馬
453:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:U/JLZfKaR
サンジェニュイン産駒の凱旋門賞馬は白毛じゃないぞ
454:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:TSM/Xvx6k
産駒初の凱旋門賞馬:Blanche Blanche(仏)→鹿毛
2頭目の凱旋門賞馬:lightning Passion(愛)→青鹿毛
455:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:wAxc0KAdC
ちなみにBlanche Blanche の翌年の凱旋門賞で2着に食い込んだのがスレ民お馴染みのシルバータイムさんだ
ゴール後にラチ沿いまで牡馬5頭に追い詰められ、腰抜かしてヒンヒン言ってた姿が懐かしいな
456:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:1fIOb6gZs
>>454
Blanche Blanche = フランス語で「白」って意味なのに白毛じゃないの草
457:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:l54cLiuuX
サニーファンタスティックが出れてたら、、、って考えちゃう
熱発回避は10年以上経った今でも悔しいわ
458:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:bb3PrHVuf
サンの子ども、めっちゃ白毛が目立つだけで他の毛色もふっつーに強いからなあ
459:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:0V2KsRpTS
白毛牡馬と言えばサンジェ産駒、白毛牝馬と言えばシラユキヒメ系、みたいなイメージある
460:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ybEH1frev
実際にサンジェ産駒の牡牝で実績比較すると牡馬の方が走ってるからな
牝馬で走ってるのは、海外だとShining Top LadyとかLove Me Sunnyとかか?
国内だとタイヨウチャンとアイシテルサニーくらいしか浮かばん
461:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:IaFnfbPC0
コントレイルの永遠の2番手・サンサンパフェーちゃんを忘れないでください
ここ5年の国内牝馬だとパフェーちゃんの印象が強い
462:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:C0+WRoVX2
なに?最弱三冠馬のコントレイルがなんだって?
463:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:YbYDvm+Xu
>最弱三冠馬
当時から言われてたけど、コントレイルが最弱三冠馬なら、そのクラシック全レースでコントレイルのハナ差1cm2着に敗れたパフェーちゃんはなに?
牝馬なのに牡馬三冠にチャレンジして、僅差圧勝とかいうオペラーでしか聞かなかった走りを見せたコントレイルに、三冠すべてズタボロにされたパフェーちゃん
2021年度のガネー賞、コロネーションS、クイーンエリザベス2世Sの覇者やぞ
464:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:NtVfqa0zE
そもそも三冠馬に「最強」も「最弱」もなくね?
三冠馬の時点でツヨツヨじゃん
465:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:FWMdvg13u
コントレイルは父ディープインパクトや、そのライバルのサンジェニュインさえ成し遂げられなかったクラシック三冠の覇者なんだからその時点ですごいぞ
1984年のルドルフから36年ぶりの無敗三冠馬さまや
良血でもなんでもない童貞ニートスレ民は黙って無駄打ちしてろ
466:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:EIM3ptSTL
欧州と日本じゃ馬場が違うから、不利なはずの日本の馬場でサンサンパフェーにハナ差でしか勝てなかったことを考えると、コントレイルの実力に疑問を感じるんだがww
467:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:kaxyqmzE0
コントレイルの話題はもうスレチでは????
468:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:enGZ4++VN
サンジェニュインとその関連の話だけしろ
469:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:qY9hdO4SK
パフェーはサンジェ産駒なんだから関連した話だろ
470:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:IyAPfY7x2
まーた三冠馬最強最弱論争してるのか?懲りないなお前ら
コントレイルの三冠とかもう5年も前のことじゃん・・・
471:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:EmVwMA6Ur
コントレイルとパフェーで適性馬場うんぬん、本来の実力うんぬん抜かすなら、ディープインパクトとサンジェニュインの適性馬場についても触れろよ
皐月賞同着、東京優駿ハナ差1センチまで粘って菊花賞では2馬身差までつけたサンジェニュインの適正馬場が洋芝だったのに、ディープインパクトとはずっと対等扱いじゃん
なのにコントレイルはパフェは~って言われても・・・
472:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:vv1dXp4OQ
ディープインパクトは無敗まで残り一冠!ってところで手前の神戸新聞杯からサンジェニュインが覚醒、三冠を逃すって流れだったから、息子のコントレイルがディープインパクトが死んだ翌年のクラシックで、父の好敵手・サンジェニュイン産駒を捻じ伏せて最後の一冠まできっちり取ったの、マジで感動したけどな
実況が「亡き父に捧ぐ、15年越しの菊花!」って叫んだから涙ドバドバ
そしてパフェーに捧げた馬券が紙くずになって涙ドバドバ
473:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:hI8fp2duj
コントレイルとパフェーの話するなら、三冠すべてで本番レースが起きたことを語ってくれ
まさか、お前らの記憶の中からパフェーに張り付いていたコントレイルの姿が消えているとでも言うのか。。。
474:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:CqN5TodRz
明らかにパフェーのケツ狙ってたコントレイルさんの話はやめるんだ
475:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:uRfY2J8jf
あの姿には濃い血を感じたな
476:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:2e1CKArXP
ディープインパクト産駒だなっていう納得感をあの本番レースで感じることになるとは
477:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:EsZ3bDgax
パフェーもサンジェニュイン産駒らしい逃げ方だったな
478:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:I9Ol/EDRq
>>477 それはレースの逃げ方のことだよな????
479:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:EDOwcDXSF
>>455
もう11年も前のこととは思えんくらい鮮明に思い出せるわ
480:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:nz1IH6Oys
最弱三冠~で思い出すのはアイシテルサニー
デビュー前に牡馬に襲われて以来、出走するレースはすべて牝馬限定戦
古馬以降は限定戦が減るからって理由で3歳で引退が決まり、結局国内では一度も牡馬と戦わなかった牝馬三冠馬
牡馬をボコボコにしてたジェンティルドンナや、アイシテルサニーの後の三冠牝馬アーモンドアイがクッソ強かったのもあって存在が霞む
481:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:JYDppfFwb
まあアイシテルサニーは歴代の三冠牝馬の中でもちょっと戦績微妙感はあるけど、秋華賞で下したヴィブロスがドバイターフを制したり、ラストランに選んだ初の混合戦・香港マイルでは皐月賞馬・ロゴタイプをはじめ、地元有力馬・エイブルフレンドらを相手に逃げ切り勝ちだから、そこまで弱い印象はないな
482:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:4AI1YHPv3
でも3歳以降走ってない、国内の混合古馬戦に出てない、っていうのがマイナスイメージなるのはわかる
483:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:MgPTP6JOc
最弱だなんだ争いの種にしかならねー話をよくやるな
484:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:neLdIkl74
DSどっちが強いか論争みたい
485:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:BC6U/RMqh
サンジェとディープをDSって略すの止めてもろて・・・
486:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ep3SU79X2
この2頭はTM対決みたいにできないってあれほど議論になったろ!
487:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:UxKZB0dSy
DS対決
なんだこの圧倒的ゲーム感は
488:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:slaFTGRVB
ニン●ンドーかな?
489:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:fFoZl1PdA
せめてSD対決にしないか?
490:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:QhrVBa0YM
SDカード対決だったら各種メーカーが常にやってるよ
491:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:/VuT3a0PB
どう略してもダメだな
492:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:JTmNtVOgs
おまいら、そろそろ白毛伝説やるぞ
493:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:W2nkKsiQn
もう時間か
494:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:XGV2HLPvn
地上波で流してくれるのは助かる
なんやかんやでグリチャ加入を先延ばしにしてたんや
495:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:R6uS8e3oD
白毛伝説、ネット配信ないって聞いて素人ニキが心配になったわ
496:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:2DF/EvShN
白毛伝説8ch?
497:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Mhsh6G2Ix
そいや完全素人兄貴はおフランスか
498:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:X/w+WEmNj
今年ハマった美少女の元ネタの子どもに会うためだけに海を渡る、素人ニキの行動力はすさまじいゾ
499:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:jFYd+komH
>>496 8ch フジイテレビやぞ
500:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Cmnj8aJLE
今回の凱旋門賞もフジイテレビが流してくれるらしいが、実況が不安
501:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:uCm4ob20i
実況はどっちも同じがいいな
バラバラだとなんかなー
502:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:DcZ5sWVqG
サンジェの凱旋門賞もそうだったな
フジテレの実況とグリチャの実況の2パターン
俺はグリチャの方が好き
503:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:V4IyoDXjO
でもフジテレの「フランスロンシャンの空に咲く、これが無敵の太陽馬」は好きやろ?
504:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:7VYGuYdfY
すき
505:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Wu0qASCAY
>>503 これは素直にすき
506:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Q04Cq5jqU
みんなだいすき素人ニキのツイート
>「優駿の門 ~ 日本馬たちの挑戦 ~」通称・白毛伝説がネット配信されない事実を前に涙がとまりません。今はただ、自宅のTVの録画予約が正常に行われていることだけを祈っています。
507:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Q5TOeuS4+
グリチャの
「見よフランス、世界、これが、これが諦めないということだ!」
がやっぱり好きだな
508:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:O7cClt9Of
グリチャのは実況者がラスト2ハロンの時点で涙声になっててちょっと聞き取りづらかったけど、ゴールした後の「長く、硬く、閉ざされていた優駿の門を今、サンジェニュインが力強く駆け抜けました。これはまぐれでも、幻覚でも、間違いでも無く、日本の馬が、日本で生まれて日本で走って……日の丸を背負う日本の馬が、確かに駆け抜けたのです」って言ったところが最高だと思ったね
509:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:IBIw5NZtH
>>507 ゴール直前に叫ぶようにコレを言ったときはマジで痺れたな
510:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ASf1vn1jH
素人ニキ、完全に落ち込んでて草
511:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Fdj4ZOIeo
現地時間いま早朝だろ、何やってんだ素人ニキww
512:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ZilD0AbZZ
いまツイート見てきたけど文面病んでて笑った
帰国して録画できてないのが解ったら発狂しそう
513:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Ox5QznXzP
2時間も掛けて放送される番組なんだから、後日配信なりなんなりされるんじゃね?
もしくはDVDとかで出されるか
514:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:nZZRMpYkp
>>506 去年の凱旋門賞特番が配信されてたから、今年も配信されると思ってルンルンで渡仏したニキの悲鳴が聞こえるようだなww
515:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:zJonVkcDE
>>513 今時DVDは出ないんじゃね?
ほぼ配信一択みたいな世の中だしな
516:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:OCrHOer+X
各種動画配信サイトで配信されることを祈ってる(テレビ録画記録無しユーザー)
517:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:rUfojxSsJ
めっちゃ過疎ってるじゃん、って思ったら白毛伝説始まったのか
518:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:nYHcKdoFo
やばい
519:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:gAeLZAwkD
おいおい白毛伝説すげえじゃん、って思ってスレ覗いたらみんな死んでるな
てっきりお祭り騒ぎだと思ったのに
それとも実況スレの方にいるんか?
520:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:zupen4GHC
白毛伝説いろいろ出すやん・・・
てっきり「白毛伝説」とは名ばかりの、例年通りの凱旋門賞に挑戦した日本馬の紹介だけだと思ってたのに
521:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:tPtn0TkeI
ちょっちツイッターで白毛伝説にウマ娘出たって聞いたけどマ?
522:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:IUedOZQLJ
ウマ娘が出たっていうか、過去に凱旋門賞に出走した馬の紹介の時にちょろっとだけ
文字起こししたやつ張り付けとくわ、空耳あったら訂正よろしく
「これらの馬は競馬ファンなら誰しもが知る名馬ですが、特にシリウスシンボリ、エルコンドルパサー、マンハッタンカフェ、ディープインパクト、サンジェニュイン、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴル、ゴールドシップ、ジャスタウェイ、サトノダイヤモンドは、競馬を嗜まない今の若者にも知られています。それは2021年にリリースされたソーシャルゲーム「ウマ娘プリティーダービー」の影響によるものが大きいと、競馬評論家・小渡安氏は分析しています。若者から絶大な人気を誇る同ゲームでは、競走馬をモデルにした美少女たちがレースを通して成長していく過程が描かれているのですが、それらのストーリーには実際の競走馬のエピソードが盛り込まれているため、ゲームをきっかけに実際の馬に触れる若者が増えているのだそうです」
523:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID: IUedOZQLJ
連投でスマンやが、番組ではこの後、ゲームを通して競馬に興味を持った若者が馬券を買うようになったことで起きた変化とかをグラフ化して紹介してたぞ
524:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Qpt/Z1ejQ
ガチの競馬番組がウマ娘きっかけで増えたにわかを真面目に考察してたな・・・
525:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:bPmX4QAXy
どうせにわかファンの迷惑行為うんぬんの話なんだろ、と思ったら語りのシメが「こうした若いファンたちが握る馬券もまた、こんにちの競馬界の存続に大きく寄与していることも、確かなのです」でちょっとニチャっとしちゃった
526:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:MgE31MPU6
馬券も握らず競馬に文句言ってるにわかさんが顔真っ赤になっちゃうやつじゃん
527:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:diEBi4SpC
別にウマ娘ファン=競馬ファンじゃないんだから、馬券握って無くてもいいとは思うけどね
528:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:+3z9N58eK
>>527 に同意だが、馬券握ってないならオッズのこととか配当金のこととかに口出しすんなよ、とも思う
買いもしねーのに予想だけしてハズれたらわめき散らかすやつが最近大杉
529:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Nubo39Big
ウマファンと馬ファンは違うから
馬券握るのがファンの義務、握ってないやつは全員にわかって暴論吐くヤツも消えて欲しい
530:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Sw/7X5o/R
1時間たっぷりつかって凱旋門賞に出走した馬たちの経歴を流してくれたの、めちゃめちゃ有能番組で好き
エルコンドルパサーの長期遠征時の動画とか初出しのやつもいくつかあったんじゃね?
531:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:4wS2HX5Kb
スピードシンボリの資料良くのこってたなー
532:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:IhD3sbTOf
竹がほぼ2年間隔で凱旋門賞出てるのワロタが、芝木が2006年から毎年出走してるのもワロタ
533:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:k8Cs7DWf5
芝木、2021年にソウルオブラヴァーのBCクラシックを優先した時以外は出てるなww
534:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:oJ2ue/TCt
21年はクロノかボンドかどっちかにシバキ乗ると思ってたわ
クロノ騎乗のマルフィーも「マシロじゃないんだ、って思ったよ」って言ってて草
535:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:oKNVd22F7
洋芝用ジョッキーみたいなところあるから・・・
536:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:5FxXhE468
2013年のオルフェ鞍上
537:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:QPCRzri11
>>537 オルフェに乗るために修行したのに乗せて貰えなかった川添の話はやめるんだ
538:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Xe8QftxZI
>>537 ゾエに代わって騎乗した芝木が明らかに気まずそうな顔してたなw
539:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ImSn8xsD1
そういやあキセキもディアドラも凱旋門賞は芝木だったか
540:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:iEeWuvKXY
凱旋門賞で騎乗した全頭一桁台まで導いてるんだから、芝木の腕もたいしたもんだよ
541:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:y9PRGv62O
ウエメセで草
どういう立場なんだお前は
542:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:tR1FxdWyi
とにかくエピソードやまもりだったな・・・これでまだ1時間あるんか、と思ったらネットニュースで流れてた「白毛伝説」の部分が始まって番組名を2度見した
543:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:gsip8q0FF
後編はもう「サンジェニュイン物語」なんよ
544:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:IcFIfPtgJ
サンジェニュインの出生からデビュー戦、クラシックシーズン、海外挑戦、ラストランまで全レースが流れたのは《ガチ》
545:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:+wExwbVOB
いま実況用のスレ覗いたらお祭り騒ぎでこっちが若干過疎ってるのは大草原
546:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:mgLzgqVb+
向こうもう追えないくらいはえーんだよ
547:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:v2nenBlX7
5スレ目に入ってるからな>実況スレ
548:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:0tmOzJPfS
はえーよホセ
549:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:DvXkKE4zQ
レースの度に当時さながらのお祭りになってる
550:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:8YxXyk+2u
もう凱旋門賞流れた?
551:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:0KUgIfTii
>>550 まだ
552:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:UOR2D7q7e
実況はフジテレとグリチャどっちが採用されるんだろ
553:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:/nFfmI0O0
フジイテレビで放送されてんだからフジイテレビじゃね
554:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:TSCwwp8hT
フジテレだな
555:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:21NcLaf77
Twitterのトレンドに「サンジェニュイン」とか「エルコンドルパサー」って乗ってるからなんだと思ったら番組だったのか
556:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:iBe5qm6rl
ウマ娘公式がエルコン、サンジェ、ディープを起用した凱旋門賞応援バナーをツイートしたのも影響してそうだけどな
557:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:12yzYXHp9
何気に公式がサンジェのイラスト流すの初では?
558:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:5svdvX9O0
たし蟹
559:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:NT4ipoMdW
メテオの声優たちがツイートしてるな
560:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:0KsER7H7L
100回以上はサンジェの凱旋門賞を見たというサンジェ声優
母親が熱烈なサンジェファンらしくて、小さい頃から見てるから実況暗唱できるらしいぞ
561:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:zahP0CEfm
それは草
562:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:C1lRIIJlq
確かヴァーミリアンの声優もサンジェファンのはず
563:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Bma/RBajW
ヴァーミリアン声優はガチガチのサンジェオタクだぞ
ヴァーミリアン実装前からツイ垢持ってたひとだけど、馬のサンジェニュインの画像よく上げてたっぽい
564:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:0c3/03AqV
あの声優は父親がサンの一口馬主なんじゃなかったっけ?
それで子供の頃に合わせて貰ったサンに一目惚れしたって自分のようつべチャンネルで語ってたぞ
確か2019年の11月の配信だったはず
565:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Mk+uKWU/q
ヴァーミリアン声優はガチ
サンジェやりたがってたけど声があわなくて落ちた、っていうのはデマ
566:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:kZNJureBE
まあサンジェとヴァーミリアンとの実装期間2年くらい開いてるからな
567:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:bcyXupW8X
でも本人がサンジェ役やりたがってたっていうのはマジじゃん?
ソースは本人のツイート
>サンジェニュインの実装は未定だったのでそもそものチャンスがなかったのですが、それでもいつかウマ娘に実装されるだろう彼を関係者として最初に見たかったので応募しました。今はヴァーミリアンが自分にマッチしてると思ってます。
568:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:NqRBGI/Pi
ヴァーミリアンのキレ芸はいつ聞いても良い
569:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:SU04IS3AS
お嬢ヤクザは健康に良いよほんと
570:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ngo51SidW
デジタルとは別タイプのオタク(サンジェニュイン限定)
571:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:OZQ2B88UP
お嬢様の部分とヤクザの部分の落差がうまい
これで声優本人が「ほぼ素です」って言ってるのがまたなんとも・・・
572:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:0vNnro99v
ダブルで推せる
573:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:wJfsOo2Yo
カネヒキリは女性にしては比較的落ち着いた声色の声優さん用意してきたなーって思ったけど、声優さんのクレジットみたら女性向けシチュエーションCDにいっぱい名前が載ってて納得
演じ慣れてるし場数も相当数踏んでるから安定感がすごいよな
574:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:nqC8yI0tj
あの安定感は男の俺でも「しゅき!抱いて!」って思う
575:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:7bJxkfQXq
おもわねーよ
もうだめだコイツ、カネラーだ
576:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:P9jy2QdD8
カネヒキリのストーリーに階段から落ちそうになったトレーナーの腕を引っ張り上げるシーンがあるわけだが、女にリードされたいタイプのヒトオッスには効くだろうな
577:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:tgTYqSWXc
カネヒキリさんとよべデコスケども
578:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:dypT3u/0l
そんなカネヒキリ=サンをロマンチックにしてしまうのがサンジェニュインという存在だ
579:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Ylux3w7dr
ストーリーの随所に盛り込まれる未実装ウマ娘語り・・・人一倍やわらかい声色・・・
俺たちはサンジェニュインには勝てない!!!!
580:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ET+qSQrwb
うまぴょいするのか・・・俺以外のやつと・・・
581:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:8Gmm+8vOo
卑しか女杯ならぬ卑しか男杯を勝手に開催するなよ
582:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:eHkx7vH1n
ウマ娘をしっとりさせるんじゃなくてトレーナーの方がしっとりしてしまう、それがカネヒキリというウマ娘
583:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:F+/c+FxyY
ディープインパクトもじゃね?
トレーナーの方が湿度高いの
584:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:tp35lEJrn
いやディープインパクトはテイオー枠だから
585:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:WcGrTYnG5
ディープは湿度高いイメージだけど、二次創作で扱われるシットリテイオー味ではないな
586:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:6QYcqxX6R
なんていうか、ディープインパクトの湿度の高さは純度が高いというか
競い合うライバルのケツ、もとい背中を追うことだけを考えているタイプの湿度だから
587:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:IRHuHIvcC
サンジェ未実装の今、サンジェ分を補給するためだけにディープのメインストーリーやURAストーリーを読み漁り、結果ディープに詳しくなったやつらの言うことは違うな
588:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:aZh6+sR0A
ディープインパクトの育成ストで一番感動するのは菊花賞勝った時だからな
589:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:gLgVqrhaO
皐月賞2着以内、東京優駿2着以内とかなり難度高いディープの育成
なのに菊花賞だけ「出走」になってるところにいろいろ察する部分があり
590:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:hPjxgS8pZ
そもそも菊花賞のサンジェニュインが強すぎる
ディープの菊花賞は枠順固定でサンジェニュインがNPCとして出走してくるんだが、クラシックなのに賢さ以外オールB+で出走してくるからな
ちな賢さはGや
591:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:gNCJeOCmL
めちゃくちゃ逃げデバフをディープに積んで出走させるしかない
592:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:2JG1F4MQU
菊花賞にディープインパクトを勝たせると謎の達成感があると同時に、ゴール後にちらっと見えるサンジェニュインの泣きそうな顔に崩れ落ちる俺
593:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:owV7SMDje
サンジェが実装されたら三冠達成させるので許して欲しい
594:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:vjXtL9sCl
これサンジェの育成目標は菊花賞1着とかになるのか?
逆に皐月賞とかダービーは出走だけになったりして
595:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Kv1BxaSQt
>>594 たぶんそれはないな
皐月賞同着、東京優駿ハナ差1cmだから、ディープインパクト同様になるのでは
596:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:NmF24PO+a
気になるのはシニアのラストだな
凱旋門賞→ジャパンカップ→有馬記念の流れか?
597:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:jOAGIE/wy
サンジェは1度もジャパンカップ走ってないし、そこ抜きで凱旋門賞→有馬記念か、凱旋門賞でフィニッシュじゃないの
598:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:EGW8SsUR7
有馬記念はどっちもあるだろ
ディープインパクトの目標最後は有馬記念だけど、固定でサンジェニュインが出走してくるって話だし
ラスト200をきった時にディープインパクトとサンジェニュインが並ぶと、特殊実況の「最後もこの2人の競り合いだ!衝撃か太陽か!?ディープかサンか!?」が入ってくるから
599:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:zLxuEd+aJ
ディープインパクトに春古馬三冠取らせたかったけど、阪神大賞典固定だからできなかった
かわりに秋古馬三冠取らせました
600:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ITeGSYP14
実装されたディープのストーリーがすごくよかった分、サンジェの実装も楽しみ
601:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:g56lmjrPh
ちょっとディープの感情が重かったけど
602:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:R/7luQ3Iz
デビューからラストランまで2頭いっしょの間柄だしあんなもんでは?
603:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ECqqzYC7U
カネヒキリで慣れたから重いとは感じなかった
604:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:PxUBF6ynF
2年も待ったカネヒキリさんと一緒にしないでもろて・・・
605:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:r0Ktoww6N
オアーッ!!おまいら!!
きましたわよ!!!!
606:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:QqfC9zsxG
お嬢ヤクザかな?
607:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:udf4cUkbn
きちゃ
608:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ffaZ0P/N2
やれやれ待ちくたびれたぜ
で、アクセスエラーです
609:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:WV6A+xN0l
一瞬でパンクするシャイゲちゃんどうなってんのー
610:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:GedhY28kZ
12時になったからアプリ立ち上げようとしたらエラーで草
611:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:TNZi7e7Dy
みんな焦りすぎィ!!
612:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:oV7jIUCjj
サンジェがきたときいて
613:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:TGxsgu2+4
ダイヤ2万まで貯めたけど耐えられるかわからん
614:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Bo8J48Bhl
100連で来て欲しい
615:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:5QX1Sh52z
せめて天井前には1枚でもいいから引きてえな
616:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:feB8K3cEq
アクセスエラー草
617:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:hvdsiig1b
サンジェエラーがトレンドは草
なんでそれだよ
618:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Y80gndAoi
※サンジェは正常です
619:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:m8le+F+EG
運営くん「数分でなおします」
620:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:2JQbYrrc2
はえーよ
621:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:r2hrwanc6
ある程度の準備だけは見えた
622:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:GcNMBvxA4
素人ニキ
>今が2025年で良かった!フランスからもウマ娘立ち上がります(エラー画面スクショ)
623:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:jN4fkvXaH
エラー解消まだかよ
624:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:5YNc1U+oU
サンジェひきてえええ
625:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:wSwPsbhml
とりあえず10万は用意した
626:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:soTObfx08
はよ
627:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:L0KgYSJ/u
まだかーーーー
628:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:9AgOfXhrv
いつになったら始まるんだ
629:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:DkukLody5
一気に人もどってきて流れはっや
630:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:4pj46m2Fn
うおおおおサンジェおれだーーー!!!!
631:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:tBPhs8kR1
>>622 素人ニキいまむこうは朝の3時くらいやろww
632:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:4nOBisu/U
完全素人ニキ寝てねえなこれはww
633:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:upUfDb0qV
はよねて、凱旋門賞に備えてもろて
634:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ysbCBA9so
きっちゃあ
635:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:FPlHhQSdf
きmsたわああ!!!!
636:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:v0LHro3nd
開いたな
637:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:fy/BYQB5o
エラー解消、お詫びに500ダイヤ
638:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:jtW/VQlzW
太っ腹だなシャイゲちゃん
639:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:bw35Y4cCw
引いてくるぞ
640:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:8/gkP3zwd
ダイヤすっからかんにするわ
641:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:fuSkNnMIm
今回のPU凱旋門賞組か
642:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:SZqD37iHv
メテオ声優一斉におめでとツイートだ
643:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:RwcP34XGe
サンジェ声優がサンジェコスしてる
644:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:gl1T4Prh6
めっちゃ満面の笑みだけどサンジェのイラストと並べると角度まで揃えてきてるのマジモン感あっていいな
645:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:3cD9784pO
おっひゃサンジェきません
646:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:gucoIezK7
50連回したけどこないですねえ
647:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:XJfeg22pr
ダメだ100連もダメだ
648:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:rK+5bFslj
Twitterトレンドが「サンジェ来ない」で草
649:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:jcMWyvSh3
150連目きまえん
650:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:umquug5RI
30連でこないとかいっててごめんな
651:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:XHwEQhLd7
こない・・・こないよお・・・
652:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Ck6Pz/Tqg
前のPUですり抜けたディープインパクトがめっちゃ来る
653:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:LUTcfOtlc
どうして・・・
654:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:A/TUWx9dJ
誰かサンジェ引けたやついないんか
655:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:zwH1GhPmJ
サンジェ
656:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:K3kpoWyhG
もう天井いっちゃ↑う↓
657:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:F2HbEgC1L
きましたわよ!!!!!!!!!
658:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:E7j+2ag7Z
天井きました\(^o^)/
659:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:TigtE9A5A
サンジェの成長率草
660:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:wxpGNw1vo
こないよおおおおおおおお
661:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:9uaOIoP5f
リンゴとカネヒキリグッズ揃えても来ない
やっぱり芝木グッズも必要だったか
662:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:LdBctuOGp
サンジェの写真集を媒介にしようと思ったがダメだった
663:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:hJfOtCMKX
これは草
664:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ZGkW2dA0a
サンジェの成長率パワー30%wwwwwww
665:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:T6X1X1v6J
草
666:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:/77iGSRxY
草
どうしてそうなったんだよ
667:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:0H/URzv6w
パワー30%!?!?
668:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:NHiYCfSMj
正気とは思えなくて一周回って冷静になれた、ありがとう
669:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:R4o6xWiPA
パワーに極振りになるとは誰が想像できただろうか
670:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:sg9kGFBEH
ディープがスピード20%のパワー10%という理想的なスタイルだったのにコイツは・・・
671:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:kLVRpdQLl
サンジェといえばスピードちゃうんか
672:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ZkLQRNFwt
脳筋育成しろっていうのか運営は
673:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:6qCzwtKBp
【悲報】サンジェニュイン、全☆3ウマ娘の中でいちばん賢さ初期値が低い
674:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:d4w8ZQFTq
どうして・・・
675:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:sVulS+Gjn
ヒトの声色聞き分けられると噂のサンジェニュインさんが賢さ最低値はまずいですよ!
676:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:opTygi+1M
賢いとはいったなんだったのだろうか
677:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Nqu0Dde1g
パワーガン積み、ある意味史実通りかも知れないなどと
678:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:f5AvObkA4
でもこれスピードの初期値は高いな?
☆3ままでスピード150はかなり高いのでは????
679:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:ntRUR81uF
いやスピード初期値たっっっか
680:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:iZWCCbjdX
びっくりした
681:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:KIrCczNNZ
賢さ貧弱のかわりにスピード盛ってるのか
682:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:C/ZLM1XfJ
賢さ棄ててでも爆走させるしか・・・
683:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:bSe3h1Ssa
どうしてこんなパラメータにしたのシャイゲ・・・
684:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:3ep/Eu/St
でもパワー30%ならサポカで通常SSRカネヒキリ、イベSSRヴァーミリアンとイベSSRラインクラフト使えるから
それぞれパワー初期値底上げ系
685:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:zaYA+ZQjb
でもスキルがサンジェと合わねえ
686:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:Jh07f5D8v
スピード初期値底上げ系でなんとかしたいところ
687:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:e1yerifov
ちょっっっっっとあの
688:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:xF1746zcK
SSRチケゾーつけて全身全霊持たせたらつよつよサンジェになったりないかな?
689:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:IP3hZdCa/
サンジェのストやば
690:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:fWU0MTuo1
さん、ええ・・。
691:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID:w8E9827bs
サンジェのストやばい
692:俺は名無しだって食っちまう 2025/10/× ID: 4tu0nNik1
呼吸止まった
馬主になります
・
・
・
【総合】サンジェニュイン専用スレ 621
888:俺は名無しだって食っちまう 2027/07/× ID:4tu0nNik1
以前報告したとおり、ギリギリですが馬主資格を取れたため、1歳馬のセレクトセールに参加してきました。
結果ですが・・・
無事、ファビラスタイムの2026(父サンジェニュイン)を競り落とすことに成功しました!!
思えば2025年の夏にウマ娘・サンジェニュインに出会ってから2年。
馬主になるためのあれやこれやをみなさんに手伝ってもらいながらなんとかクリアし、この日を迎えることができたと思っています。
愛馬の新馬戦は2028年の夏を予定していますが、この仔の名前を、できたらみなさんと一緒に決めたい。
11月には栗東トレセンに入れるつもりなので、10月27日までに応募をして、その中から決めたいです。
よろしくお願いします!
・
・
・
残り2話で完結!
作中にあるとおり、完全素人ニキの所有馬・ファビラスタイムの2026(オッス)の競走馬名を募集します。
なにか案があればこちらにお願いします!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=269878&uid=53018
10/27 追記
完全素人ニキの愛馬名募集にご協力頂きサンクスサンクス!!!!
計151コメントが集まり、多くの名前案を頂きました。
想像以上の数、提案を頂き、とても驚くと同時にうれしかったです。
多くの提案にうれしい悲鳴を上げつつ、そのどれか1つにすることが非常に難しかったため、もう1回、ご協力をお願いしたいことがあります。
ご提案頂いた中から6つの競走馬名をピックアップさせていただきました。
この6つから、スレ民という名の読者ニキネキにアンケートを取って、完全素人ニキの愛馬名を決めたいと思います。
詳しくはこちら↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=270030&uid=53018
10/30 10時までアンケートをとります。
よろしくお願いします!!!!
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45.満ちる
これは圧倒的美貌で凱旋門賞馬になる、
2024年10月。
海外に残した俺の産駒がウン回目の凱旋門賞2着に落ち着いたのを見守った、その翌日のことだった。
「さあ、お前の好きなものを選んでごらん、サンジェニュイン」
そう俺に言ったのは、俺が繋養されている社来スタリオンステーション、並びに所属する社来グループの代表・吉里さんだ。
そして俺の目の前に並べられているのは3枚の紙。
促されるままにソレを覗き込むと、白っぽい髪の毛をしたバインボインな少女のイラストが描いてあった。
『なんだ、これ』
思わず首を傾げ、周りを見回したのだが、吉里さんはニコニコ、俺の厩務員たちは苦笑い、そのほかの黒服のおじさんたちはハラハラ、と言った具合で、誰一人俺を助けてくれそうなヒトはいなかった。
俺は四方八方からガン見されながら、そもそもどうしてこうなったか、状況を整理するために思い出すことにした。
事の始まりは、たぶん2016年。
俺の牝馬の産駒・アイシテルサニーが無敗の三冠牝馬になった年。
この同年3月、俺はカネヒキリくんと一緒に、発表されたばかりのウマ娘のイラストを見ていた。
そのイラストには、おそらくカネヒキリくんやヴァーミリアン、ディープインパクトと思わしきウマ娘はいたのだが、なんと俺っぽいウマ娘はいなかった。
なんでや!こちとら凱旋門賞制覇してるんやぞ!と抗議したい気分。
だが厩務員たちの話によると、カネヒキリくんたちがウマ娘化するのを社来グループのお偉いさんは知らなかったらしく、上に下にてんやわんや。
シャイゲに抗議が入ったとかで、予定されていたカネヒキリくんたちの実装はいったん白紙に戻ったようだった。
そんなゴタゴタが起きたのは夏だったのだが、その時期の俺といえば、カネヒキリくんを虹の向こう側まで見送ったばかりで、その精神的ショックからまだ立ち直れていなかった。
前みたいに放牧地を駆け回れるようになれたのは、カネヒキリくんが旅立ってから1年が経った頃。
つまりは、2017年に入ってからだ。
2017年にはカネヒキリくんの初年度産駒たちから数頭が種牡馬入りした。
その中には、カネヒキリくんがアメリカに残し、2015年のケンタッキーダービーとBCクラシックを制した牡馬・Hart Of Imagining の姿も。
Hart Of Imagining── 通称ハートくんは、アメリカにある大きな牧場で種牡馬入りしていて、向こうでとても大事に扱われているようだ。
社来側はハートくんにカネヒキリくんの後継種牡馬としての活躍を期待しているらしく、この年は期間限定で社来スタリオンステーションに滞在していた。
それも1頭だけでなく、俺の娘・Shining Top Lady── シャトーと一緒に。
俺は日本での生活に不慣れな2頭の世話や、ほかにも種牡馬入りしてきた俺の産駒の面倒をみたりで毎日がてんやわんや。
落ち込んでる場合じゃねえ!ってことで、早々に立ち直ることを余儀なくされた。
そんな風にせっせと
その黒服どもはシャイゲというゲーム会社の社員たちで、話の内容はウマ娘への馬名などの使用について。
ゲームは全年齢向けだー、とか、一方的に悪役を作るような真似はしません、だとか、いろいろとシャイゲ側も必死だったようだけど、実装したいと思っているディープインパクトや俺がまだ存命で、しかも現役の種牡馬、ということで牧場の代表は渋っているらしい。
なんでも種牡馬としてのブランドイメージがどうとかで。
ちなみに情報源は厩務員たちだ。
馬が話を理解できないと思ってペラペラ喋りすぎである。
まあ聞いても言う相手なんていないけどな!……目黒さん以外に!
それからシャイゲの社員たちは数ヶ月ほど粘っていたらしいが、結果として俺もディープインパクトもカネヒキリくんたちも、誰一人としてウマ娘にならずに話は流れた。
そしてこの話は俺の中でもあっさりと記憶の隅においやられた。
というのも、ウオッカとの産駒であるタニノサニーロックが、この年のジャパンカップを制覇したのだ。
俺は喜びのあまりヘドバンを繰り返し、少しだけ首を痛めて説教された。
また、この年末に、ヴァーミリアンが種牡馬を引退してノータンファームに移ることが決定。
ヒト族が思っていたよりも産駒たちが走らなかったようで、これからは乗馬として生活することになるらしい。
馬運車に乗り込むヴァーミリアンに、俺はノータンファームで乗馬になっている息子・サンサンドリーマーをよろしく頼む、と叫んだ。
別に寂しかったけど掛ける言葉が思いつかなかったとかそう言うわけではない。
ヴァーミリアンは俺の言葉に一瞬だけ目を丸くすると、元気な声色で「俺様がしっかり面倒見てやるよ!」とテンション高く旅立った。
産駒でいちばん臆病だったサンサンドリーマーが、果たしてヴァーミリアンと仲良くやれるだろうか、と少し不安にもなったが、後日、元気良く追いかけっこをしていた2頭を見てとりあえず大丈夫だと思うことにした。ウン。
2018年にはアニメ版ウマ娘が放送スタート。
厩務員たちが「ウマ娘ってアニメは奇妙だけど面白い」と話題にしていて、徐々に人気になっているようだ。
俺は「そらお前ら、スペちゃん主人公で最高の物語だからな!」と内心ドヤ顔。
このウマ娘人気が後押しになったのか、いろんな牧場や引退競走馬を預かっている牧場に見学の依頼が殺到しているらしい、というのも厩務員たちの噂話で知った。
ウマ娘がにわかに盛り上がる中、俺の産駒であるサンサンプリンスが皐月賞、菊花賞を制して二冠馬になった。
和芝適性の低い俺の血の影響か、産駒たちは日本のクラシックにはあまり縁が無かったのだが、このサンサンプリンスの皐月賞制覇が、俺の牡馬産駒で初のクラシック勝ちだ。
俺は喜びのあまり三日三晩騒ぎ、りんごを没収された。
この年もシャイゲからウマ娘化についてプレゼンが行われたようだが、俺もディープインパクトもウマ娘にはならなかった。
アニメが放送されて1年後の2019年。
この年も俺もディープインパクトもカネヒキリくんたちも、誰一人としてウマ娘にはならなかった。
産駒でいちばん勢いに乗っていた息子のサンサンプリンスが事故で亡くなり、またしばらく塞ぎ込んでいたが、去年と変わらず種付けをして、子供たちの面倒を見て。
徐々にいつも通りの日々に戻ろうとしていた。
そんな夏の日に、ディープインパクトはあっさりと虹の向こうへと旅立った。
厩務員たちが「ディープインパクトが骨折した」と話題にしていたので、まさか……とは思っていたが、なかなか辛いものがある。
現役時代はライバルとして競り合った仲だが、種牡馬としては放牧地が隣同士の、いわばご近所さんのようなもので、長く一緒に過ごしてきた。
いろいろ思うこともあるし、複雑な気持ちもあるけど、だからといって死んでくれと思ったことは1度もない。
骨折が良くなるよう祈ったし、手術もしたと聞いたから安心していたのに。
どうやらダメだったらしい。
今日にも安楽死させる予定だと聞いて、俺は放牧に出される隙を突いて厩務員たちを振り切り、ディープインパクトの厩舎まで走った。
ディープインパクトの厩務員たちは驚いた様子だったが、俺が無理矢理覗き込もうとすると、諦めたように中に入れてくれた。
馬房の中で横たわるディープインパクトはかなり苦しそうで、正直、目を逸らしたいほど見ていて辛い。
でもディープインパクトは俺の姿を見ると、どこか安心したように微笑んだ。
『ああ、やっぱり……最期まで一緒だったな、サンジェニュイン』
それが、ディープインパクトが俺に遺した言葉だった。
俺はとうとう、1頭だけになった。
2020年には流行病の影響で海外での種付けはなし。
俺は久々に国内だけで過ごすことになった。
ディープインパクトが虹の向こうへと行ったことで、そのポジションを埋める種牡馬としての活躍も期待されているのだろう。
例年以上の種付け数を熟してくったくたになりながら、俺は、ディープインパクトの息子が無敗三冠馬になるところを見届けた。
俺の娘であるサンサンパフェーはその息子にズタボロにされたが、ディープインパクトでさえ達成できなかった無敗三冠にたどり着いた、コントレイルのことは素直に祝福しているし、スゴイとも思っている。
残念に思うことがあるとすれば、ほぼ毎年のように一緒にクラシックを観戦していたディープインパクトが、今この場にいないということだ。
でもきっと、ディープインパクトのやつも虹の向こう側で喜んでいるだろう。
この年も俺はウマ娘にはならなかったが、大きな事件が起きることもなく、平穏な1年だった。
そして2021年。
アニメ版ウマ娘2期が大きな盛り上がりを見せていた。
厩務員たちは毎週のようにアニメを見て感想を言い合っているし。
俺の馬房前には俺用のテレビも設置されているんだから、これでアニメを見させて欲しいわ。
まあ盛り上がっているのはアニメだけじゃなくて、その放送中にリリースされたアプリ版ウマ娘もまた、一大ブームになっていた。
うちの厩務員たちもアプリ版で遊んでいるらしく、ゲームに不慣れなやつでもある程度はできますよね、と好評のようだ。
意外なことに芝木くんもウマ娘をプレイしているようで、1ヶ月に1度くらいの頻度で俺のところに顔を見せては、俺にガチャを引かせてくれたり遊んでいるところを見せてくれる。
ちなみに目黒さんもウマ娘をプレイしているようなのだが、俺が実装されていないってことでそこまでやりこんでいないらしい。
お前が実装されたら毎日でも遊ぶんだがな、と目黒さんがうれしいことを言ってくれたので、俺も早く俺がウマ娘として実装されないか祈った。
でも今年も俺はウマ娘にならなかった。
2022年は驚くことが起きた。
なんとオルフェーヴルが実装された。
オルフェーヴルは今、俺の隣の放牧地にいる馬だ。
ディープインパクトが虹の向こう側へ行った後に移動になった。
俺をガン見してくる以外は大人しい馬で、馬主は俺と同じサイレンスレーシングクラブ。
生産だって社来グループだ。
つまりガッチガチの社来系なのだが、俺やディープインパクト、カネヒキリくんたちが実装されていないなか、何故か後輩であるオルフェーヴルが先に実装された。
ええ……なんで……?と思ったが、もしやこれは俺が実装されるフラグではないか、と思ってワクワクした。
だがこの年も俺はウマ娘にならなかった。
なんでだよ。
厩務員たちは「凱旋門賞とって、産駒もバンバン活躍してて……下手なことできない馬だからじゃないか」と噂している。
この時点で俺はすでに2頭の凱旋門賞馬を送り出していた。
でもどっちも俺とは違う毛色で、今でも白毛の凱旋門賞馬は俺ただ1頭だ。
産駒が活躍しないのもマズいようだが、活躍しすぎても一周回ってダメらしい。
どうして……!
明けて2023年は、後に「社来ショック」と呼ばれるような出来事が起きた。
この年に新規に実装されたウマ娘がすべて、社来系の馬をモデルにしていたからだ。
カネヒキリくん、ヴァーミリアン、ラインクラフトちゃん、シーザリオちゃん。
全頭ノータンファーム生産で、2002年産まれ。
しかもみんな俺の併せ馬フレンズ。
これはさすがに俺の実装フラグだろ、と思ったが、またしても俺はウマ娘にはならなかった。
2024年には若干の諦めムードが漂っていた。
ハーツクライさんとその息子であるジャスタウェイが実装されたけど、いやもう無理だろ……と思い始めていたのだ。
なぜならウマ娘がリリースされてから約3年。
なんなら企画発表から数えるとゆうに8年が経過していた。
それまで多くのフラグが積み上がっていたが、すべてバッキバキに折れている。
俺ってばもしかして永遠に実装されないのでは?
産駒たちがバンバン実装されているにも拘わらず、未だに実装されない父馬・サンデーサイレンスと同じ扱いなのではないか?
と、俺が涙に暮れている同年の11月に、彼等はやってきた。
黒いスーツをビシッと着こなしたシャイゲの一団は、俺のキャラデザやシナリオ資料などを大量に抱きかかえていた。
8年目の正直ですよ、とかなりイレ込んでいる様子。
一息つけると良いのですが、と思っていたのもつかの間、それからほぼ毎日、時間の許す限りプレゼンをしていくシャイゲの社員たち。
ドン引きする厩務員を横目にプレゼンし続ける、その熱意に代表は押され、最終的には俺の実装を許可することにした。
しかしそれにはいくつかの条件があったらしく、そのうちのひとつが、今、この状況そのものってワケ。
『つまり、この中から俺の好きなキャラデザを決めろ、ってことなんだよなあ』
シャイゲが持ってきたキャラデザは3パターン。
どれも甲乙つけがたいほど素晴らしいイラストで、シャイゲ内ではどのデザインにするか揉めに揉めたらしい。
最終的にうちの代表に決めてもらおう、とすべてのキャラデザや資料を持ってきてくれたらしいのだが、代表はどれが実装されても文句はない、ということでなかなか決まらず。
それどころか代表は、実装許可は出すからその3枚のうちどれがいいか俺本人── つまり馬に決めてもらう、ということを条件に組み込んだ。
とんでもねえ役目を押しつけやがったな!
俺は盛大に嘶きたい気持ちを抑え、床に並べられたキャラデザを覗き込んだ。
1枚目は「超ロングヘアでお姫様みたいな見た目」の俺。
2枚目はこれまた「超ロングヘアでふりふりのロリータ服を着た、見た目もロリっぽい」俺。
そして最後の3枚目が「顎下くらいの髪の長さで、一部分だけフリフリしてたけど、かなりシンプルな見た目」の俺だ。
この中だったら「シンプルな俺」一択だった。
ちょっと勝負服がぴちぴちだったり、生足魅惑な状態だったり、胸元が総レースでかなりきわどい見た目だったのはこの際目をつむる。
カネヒキリくんの衣装だって胸元バーンッ!なミニスカポリスっぽい勝負服だったわけだし、多少のお色気はね!
サービスサービスゥ!!
ということで、俺はドシンプルだけどちょっぴりセクシーな俺のイラストが描かれた紙を咥えた。
その瞬間、たぶんそのキャラデザを推していただろう、シャイゲの社員が「いよっしゃあ!」とバカデカい声で叫んだので、ビビって放馬した。
馬の耳ナメんな!音がデカいと自分の意思に反して逃げちゃうんだぞ!
なんやかんやで俺のキャラデザも決まり、それからはとんとん拍子で声優オーディションが開催され、つい先日には俺の声も決まった。
時の流れはやすぎぃ!
ところであの後知ったことなのだが、ウマ娘の俺は身長が175センチもある高身長ガールらしい。
オッスどもにケツを追われてきた俺をロリ系ではなくちゃんと高身長にするなんて……シャイゲわかってるう!
声もきっとクールな感じに違いねえや!
2年くらい前にあいさつに来てくれたカネヒキリくんの声優さんは、ちょっと中性的でクールな声の持ち主だったな。
俺もあんな感じにかっちょい声がいいなあ。
ちなみにカネヒキリくんの声優さんがあいさつに来たのは、俺がカネヒキリくんの親友だと思っているから、らしい。
俺がカネヒキリくんの親友って解釈、花丸満点です!
「サンジェニュイン、お客さんやで~」
俺はカネヒキリくんの親友、カネヒキリくんは俺の親友、そこになんの違いがある?と1頭で遊んでいると、馬房の扉が開いた。
俺を馬房から出した厩務員の名はリキ、性は目黒。
そう、俺が現役の競走馬だった頃の厩務員だった目黒さんの甥っ子だ。
どうやら俺が楽しみにしていたお客さんが来たようだな!
1億年と2千年前から待ってたぞ!
フンフン、と鼻を鳴らし、リキに手綱を引かれるまま歩く。
そうしてしばらくすると、俺の進路に少女の姿が見えた。
彼女の年齢は15歳くらいだと聞いてはいた。
聞いてはいたが、想像していた「15歳」よりさらに若く見えたので驚いた。
ちょっと童顔なのかな?
あどけない、かわいらしい顔立ちを引き立てるように身につけられた「白」は、俺に会うのを意識してくれたからだろうか?
そうだったらちょっとうれしい。
ファンサしちゃうぞ!
ほれリキ、はよ行くぞ!と歩き出す。
「へえ、お母様がサンジェニュインのファンだったんですか」
「は、はい!2005年の有馬記念を中山競馬場で見たって何度も──」
「お話中すみません!おまたせしました、こちらがサンジェニュインです」
「おぉあっ!?……あ、は、は、はじめまして!」
明らかに緊張した面持ちで少女が頭を下げる。
その動作に連動するように── 白い髪が揺れた。
それは夏の暑さを引きずる、10月のことだった。
「どうですか、先生」
心配そうな声でそう獣医師に聞く甥に、俺も固唾を飲んで獣医師の返事を待った。
獣医師は深刻そうな表情を浮かべると首を横に振り、そして言いづらそうに口を開く。
「かなりつらそうですよ。もしかしたら……今夜が峠かもしれないな」
「そんな……!なんとか、なんとかなりませんか!?」
獣医師に縋りつく甥を横目に見て、俺は、多くの厩務員に支えられてようやく立てている、白い馬に視線を向けた。
白い馬── サンジェニュインは、丸く美しい瞳で俺を見つめ返しては、荒く息を吐いていた。
かつて放牧地を自由に駆け回っていた、美しく雄大な姿はそこにない。
ただ苦しそうな顔で鼻を鳴らし、それでもまっすぐと顔を上げていた。
レース以外ではどんな時でも決して首を下げない、そんな姿に、サンジェニュインの矜持が見て取れた。
「サンジェニュイン」
名前を呼んで近づくと、ふるるん、と甘えたような鳴き声が響く。
その声に甥は「緊張感のないやつや」などと脱力したような顔をしたが、俺の耳には「心配するな、大丈夫だから」と言っているように聞こえた。
どこまでも気丈で我慢強い。
そしてとても頑固なサンジェニュインの性格に、現役時代どれほど困ったことか。
どんなときでも全力で走るサンジェニュインの姿を思い出して、俺は内心で小さく笑った。
それと同時に、彼の隠しきれない疲労を見て、それをどうすることもできない自分自身に酷く腹がたった。
「……先生、今夜が峠っていうと、明日の朝はどうしても無理ですかね」
「えっ?」
サンジェニュインを撫でながらそう切り出した俺に、獣医師は怪訝そうな顔をした。
「今日はこいつ、大事な日なんですよ」
そう言って再びサンジェニュインの首のあたりを撫でると、まるで同意するようにサンジェニュインが再び嘶いた。
今日は2025年10月5日。
フランス、パリロンシャン競馬場で凱旋門賞が開催される日。
そしてその凱旋門賞には、サンジェニュイン産駒のサントゥナイトが出走する。
これまでにもすでに2頭の凱旋門賞馬を輩出しているサンジェニュインだが、いずれも白毛ではない。
片方が青鹿毛で、片方が栗毛だった。
白毛の産駒も何頭も凱旋門賞に挑戦しているが、シルバータイムがマークした2着のように、どうしても最後の壁を越えられずに敗れている。
ここ数年は「サンジェニュインの白毛の産駒は凱旋門賞を勝てないんじゃないか」などと噂されるようになった。
そんな中で、今日出走するサントゥナイトは白毛。
2歳のホープフルステークスを勝ち上がってクラシックに駒を進めると、皐月賞と東京優駿では3着。
菊花賞には進まずに天皇賞・秋を選び、そこではゴールドシップ産駒ゴールドプライドの2着と好走した。
今年のドバイシーマクラシックや宝塚記念を制して凱旋門賞に挑む、日本が誇る名馬だ。
それまで青色のメンコを着用していたが、今日はサンジェニュインのメンコをつけて出走する。
その鞍上には、サンジェニュインの主戦だった芝木真白騎手が騎乗する。
管理調教師も本原先生で、担当厩務員は近藤さんだから、いろんな意味であの日の再現のような馬だ。
生産が社来ファーム・
見た目とか、厩舎が一緒とか、それだけで勝てるほど甘いレースではないのに。
サンサンファイトがサンジェニュイン産駒として初の東京優駿制覇を果たしたことが、サントゥナイトへの期待が高まった要因でもあるのだろうけど。
あと10時間もすればレースが始まる。
ここまで保てていることが奇跡だと言われた、サンジェニュインが踏ん張っている理由はきっと、その凱旋門賞が見たいから。
「コイツはね、きっと、
俺の言葉に、獣医師は戸惑いの表情を見せた。
しかしそれを無視するように、俺はサンジェニュインから手を離し、獣医師に頭を下げて願う。
「どうか夜明けまででかまいません。サンジェニュインに息子の晴れ姿を見せてやりたい。かつて自分も駆け抜けた大地を、息子が走る姿を。……せめてそれを、冥途の土産に持たせてやりたい。だからどうか、どうか」
お願いします、と何度も頭を下げると、周りにいた厩務員たちも次々と頭を下げた。
どうかお願いします。
あと少しでいい。
あと少しでいいから、サンジェニュインに見せてやりたい。
息子が精いっぱい走りぬく、その瞬間を。
こいつはきっと、それを待っているだけだから。
「わかり、ました。……確約はできませんが、できる限りのことはします」
獣医師がそう言う、サンジェニュインが大きく嘶いた。
それはきっと、「ありがとう」という意味だった。
《 さあ間もなく、間もなく始まろうとしています、2025年第104回凱旋門賞。ここ、フランスはパリロンシャン競馬場は、人馬の烟るような闘志を覆い隠すように華やかに、煌びやかに。これが人馬の社交界、凱旋門賞の会場です 》
日本時間10月5日23時。
不思議なほど晴れ渡ったロンシャンの空は、目も覚めるような青色だった。
俺は他の厩務員と同じように両手でサンジェニュインを支えながら、その視線がまっすぐと大画面に注がれていることを確認した。
サンジェニュインが種牡馬入りした年に初めて送ったテレビは、これでもう何代目か。
技術の進化により本物さながらに映るようになったディスプレイの、その向こう側の景色をサンジェニュインが覚えているのだとしたら。
少しだけうるんだ瞳の意味はきっと、懐かしさに違いない。
《 今年も日本からは2頭の馬が参戦します。1頭目はサントゥナイト。ドバイシーマクラシック、宝塚記念を制しました。まっすぐに伸びるその大逃げは、このパリロンシャンのターフにいったいどんな軌跡を残してくれるでしょうか。父は「美貌の凱旋門賞馬」サンジェニュイン。史上2頭目の白毛の凱旋門賞馬を目指して、サントゥナイト、その鞍上には芝木真白騎手が乗っています。2頭目はゴールドフィール。尾花栗毛、その金の鬣が風に揺れて光ります。父オルフェーヴルは凱旋門賞2着まで迫った、日本競馬史上6頭目の三冠馬。偉大なる父さえ未達成の栄光を目指して、天皇賞・春そしてフォワ賞を勝ち上がったその末脚を見せて欲しいです》
サントゥナイトの他に凱旋門賞に出走する日本馬・ゴールドフィールは、今年の皐月賞でサンサンファイトに競り勝ったレッドリヴェンジャーの半兄。
父オルフェーヴル譲りの持続性のある闘志と、小回りの利く小さな馬体の持ち主だ。
この馬を相手に、サントゥナイトは天皇賞・春で敗北していた。
しかもゴール後に追いかけ回されていて、サントゥナイトが萎縮していないか……と思ったが、杞憂のようだ。
「見えるか、サンジェニュイン。サントゥナイトが立派な顔つきをしているぞ」
俺の言葉に反応するように、サンジェニュインは小さく鼻を鳴らした。
そして再び画面に集中するように、2つの耳をハッキリと前に向けた。
《 さあ全頭ゲートイン完了、体制準備よし。第104回凱旋門賞── スタートしました! 》
その声と同時に、サンジェニュインの脚が1度だけ、強く寝藁を蹴った。
まるで当時のレースを思い出したかのような、タイミングの良い蹴り出しに笑いが漏れる。
「……お前、まだ走りたかったのか」
そう言葉をつなげると、サンジェニュインは拗ねたように「ブモモ」と鳴いた。
《 全頭キレイな飛び出しです!7頭立てと例年よりさらに少ない頭数での104回目の凱旋門賞。頭数が少ないからこそ、1頭1頭の力量を見ることができます。ハナを奪った7番サントゥナイト、大外を回りながらもぐんぐん、後続に6馬身、7馬身、8馬身のリードを取ります。それを追走するのは2番エリアライト、2馬身差の位置に4番シグナルスキーがついていますが徐々にスピードを落としている、後方から競馬を進めたいようです。そこから1馬身離れてレイセイレーン、差がなくステラクラリウス、オールライラックは少し内にヨレたか体勢持ち直してステラクラリウスから3馬身差の位置、シンガリは1番ゴールドフィールですが、この選択は正解か、鞍上・福沢、策はあるのか気になる流れです 》
姿勢を低く保って勢いよく飛び出す姿は、現役時代のサンジェニュインの走り方にとてもよく似ていた。
さすが親子というべきだろうか。
いや、サンジェニュイン産駒は往々にして似たような走り方をする。
血のなせる技か、それとも別の何かがあるか。
気になることではあるが、きっと今は関係の無い話だ。
それよりも。
「お前と一緒に暮らしていたころは、よくほかの牡馬に近寄っては追いかけまわされ、逃げ回っていたのに……サントゥナイトは強くなったな」
記憶の中にあるのは、産駒のなかで誰よりも父であるサンジェニュインにべったりと張り付いていた、甘えん坊のサントゥナイト。
当歳の10月から1歳の6月までの8か月の間もサンジェニュインと共に過ごしていた。
牡馬に対する警戒心が異常に高いサンジェニュインとは異なり、好奇心の赴くままにほかの馬に絡むサントゥナイトは、ほかの産駒よりも気の抜けた性質のようだった。
サンジェニュイン、お前は育成牧場に送り出すギリギリまで、いつまでも緊張感のない息子のことを心配していたな。
まるで初めて離乳する母馬のように、馬運車に乗せられていくサントゥナイトを見つめては大きな声で嘶いていた。
その声の意味はきっと「大丈夫か」という心配だっただろう。
「仔の成長はあっという間だな、サンジェニュイン」
まったくだ、と言いたげにサンジェニュインが鼻を鳴らす。
パリロンシャン競馬場のターフを駆けるサントゥナイトは、誰よりも先頭を目指して力強く大地を蹴り上げていた。
腑抜けた表情はなく、真剣に、ただまっすぐに。
鞭も入らない状態で懸命に脚を回して、目指すは優駿の門。
父・サンジェニュインが踏みしめた、栄光の向こう側。
どん、と蹴り上げた大地から悲鳴が聞こえるくらい、強く、強く前へと進む。
その輝きを、サンジェニュインはじっと見つめていた。
《 さあ間もなく最後の直線だ!先頭は7番サントゥナイト!サントゥナイトすごい脚!まったく他馬を寄せ付けない!半馬身差でこれを追うのはパリ大賞典の覇者レイセイレーン、その外に2番エリアライトが追走すると2馬身差の位置にステラ、ステラクラリウスがここで上がってエリアライトを抜いた!レイセイレーンに並んで狙うかサントゥナイトまでまだ7馬身差あるぞ!後方グループはシグナルスキーが引っ張る形か、ッいや、やや緩やかな流れから中段ゴールドフィールがオールライラックを抜き去って上がる!ここから全頭一気に仕掛けてくるか!? 》
残り600メートル。
最後のコーナーを回りきって、残るは直線だけ。
目を閉じたくなるほど眩しい、パリロンシャンのあの一本道。
……ああ、サンジェニュイン。
一瞬だけ目を細めたお前には、どんな光が見えたのか。
《 最後の直線、光射す場所、ここを……ッ昇る!昇る昇るサントゥナイト!その額に太陽のマークを光らせて!狙うは頂点ただひとつ!魅せるその大逃げは!太陽一族のプライドだ──ッ!! 》
実況者が叫ぶ。
栄光への道を叫ぶ。
射し込む太陽の光を浴びて、その馬体が帯びる金色の輝き。
1歩踏み出すごとにその輝きは増して、そして、ターフを満たすだろう。
《 残り400メートル!サントゥナイト一人旅!これを追い込む他馬は……ゴールドフィール、ゴールドフィールだ1番ゴールドフィール大外からここで一気に切り込んできたッ!父はオルフェーヴルだここで父の無念を晴らせるか大きく伸びる!差し込む!ッしかし!しかししかしだサントゥナイトは強いぞ!先頭サントゥナイト変わらず突き進んで、眼前にあるのはゴールのみッ! 》
追い込む他馬を置き去りに、その影は遠のく。
光だけを残して、遠のく。
《ラスト1ハロン200メートル!ゴールドフィールその内からシグナルスキー、シグナルスキー粘るがやはりこの馬!この馬だサントゥナイト!》
ひぃん、と小さな嘶きが聞こえた。
征け、と叫びだしたような、そんな嘶きが。
そうして歓声に掻き消されてなお、消えない声がサントゥナイトの背中を押すだろう。
力強く、力強く。
《── どこまでも駆け征く、白毛の伝説は!!太陽の父から、騎士の息子へ!!》
目に焼き付けよう。
《これが血の証明だサントゥナイト!父子の栄光、ここに極まれり──……ッ!!》
お前じゃない白さが満たした、パリロンシャンのターフを、ただ、忘れずにいよう。
《 見てるか親父──ッ!!息子がやったぞ──ッ!! 》
響く大歓声は、サンジェニュイン、お前の耳にも届いているか。
「ひぃん」
その、嘶きは。
「ひぃん」
小さく零れた、その嘶きは。
「ひぃん……っ」
うれしい、と。
よかった、と。
おめでとう、と。
それから、それから。
「ッサンジェニュイン!」
厩務員たちで支えていた、その馬体が大きく震え出す。
そして耐えきれなくなったのか、ぱたりとその場に倒れた。
「サンジェ……!」
時が止まったように動かなかった厩務員たちが、わっと周りを取り囲んだ。
そしてその白い馬体を摩って、何度か立ち上がらせようとする。
でも本当は、みんな、わかっていた。
もう無理だと、わかっていた。
「……この瞬間を待っていたのか、サンジェニュイン」
浅く息をするサンジェニュインは、ちらりとだけ俺を見た。
言葉もないそんな仕草が、俺には「そうだよ」と返事をしているように聞こえて、自然と目が熱くなった。
そうか、待っていたのか。
ずっとずっと、お前だけが抱えていた栄光を、託す宛てを。
遺さずには逝けないと思ったのだろう。
たった1頭だけで掲げてきた、伝説を。
重すぎるソレを抱えて今日まで、ずっと、俺たちの期待に、愛に、応え続けたんだな。
── でももう、大丈夫。
テレビの向こう側では拍手喝采が響き続けている。
2006年にサンジェニュインが初めて制して以降、再び硬く閉ざされてしまった優駿の門。
それを再び開いた、サントゥナイトへの賞賛の声に包まれて、サンジェニュインはゆっくりと瞬きをした。
そのたびにポロポロとこぼれ落ちる涙は── さよならの合図。
周りの厩務員がつられたように泣き出した。
陰鬱と悲しみに満ちた空間で、俺は口を開く。
「ありがとう」
さよならを言うつもりは毛頭なかった。
「ありがとう」
祝福の大歓声の中で相応しい言葉なんて、ただありがとうだけでいい。
「ありがとう、サンジェニュイン」
ひとつ、言う度にサンジェニュインは瞬きをした。
それでいいよ、と俺に同意するように。
俺はその場に膝をついて、寝藁に沈むサンジェニュインの顔を持ち上げた。
そして抱きしめると、バレないように一粒だけ涙を流して、言葉を重ねる。
「ありがとう、ありがとうサンジェニュイン」
どくん、どくん、とサンジェニュインの全身が脈を打つ。
生命が躍動する。
ひとつ、ひとつ。
どくん、と鳴るたびに思い出が蘇って、俺の目をさらに熱くした。
そしてそれは、俺だけじゃない。
「ありがとう、サンジェ」
「サンジェニュイン、よく頑張ったな」
「ありがとうね、サンジェニュイン」
「ありがとう、お疲れ様、サンジェ」
それぞれがサンジェニュインとの日々を思い出しているだろう。
俺は、2003年の秋、サンジェニュインを迎えに行った日を。
初めて走った日を、倒れた日、駆け抜けた日、涙した日、笑った日を、思い出してはありがとうに変える。
鳴り止まない拍手を後押しに、歌のようにあふれるたった5文字だけを聞かせたかった。
お前はこんなに愛されている。
こんなに多くの人間に思われている。
最初から、最期まで。
「ありがとう」
サンジェニュインは、ゆっくりと、本当にゆっくりと瞬きをした。
そして硬く閉じた瞳が開くことはなく、その身体から力が抜ける。
俺はぎゅっと、ぎゅっとサンジェニュインを抱きしめた。
最後に、どくん、と脈打って、それから、それから。
ころん、と傾いた、その横顔は──
「……お前は、最高の馬だよ、サンジェニュイン」
愛に満ちる。
この世のあらゆるものよりも強い、血という絆
(38.約束 ─ 2006年8月22日インターナショナルS から)
次回、ウマ娘回で最終回。
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side:ウマ娘 ー Ep.ー
「ちょお、サンジェニュインちゃん!?ナニ食ってるんスか!?」
「ほふぇ?」
「もの入ったまましゃべらない!……えっウソでしょ、なんでそれ、エッほんとになんで── なんでカツ丼食ってるんスか!?レース当日なんスけどお!?」
もごもご、とカツ丼を口に詰めていると、ラインクラフトちゃんはそう言ってオレからカツ丼を取り上げた。
ああっ!レース前のエネルギー補給が!
「んぐ……いやオレ、他のウマ娘よりエネルギー消費するの早いじゃん?それに食っても体重増えないから大丈夫だし」
「ハ?喧嘩売ってるんスか?10倍で買います」
「売ってないよ!?買わないで!?」
どうやら体重の話は御法度だったようだ。
でもオレが食っても食っても体重にあんまり変化がない、っていうのは本当なんだよな。
なんでそうなるのか詳しい原理はわからないんだが、とにかく何を食っても太らない。
食えば食うほど筋肉がついたりはするんだが……何か神様的なものの圧を感じるわ。
「っていうか服!せっかくの勝負服なんスよ?汚れたら……」
「でえじょうぶ!そのためにコート着てる!」
「いや……ドヤ顔してる場合じゃないんスけどね……!」
「まあまあ落ち着いてくださいよラインクラフト先輩!サンジェニュイン先輩は常日頃から右耳リボンウマ娘たちから逃げ回っている分、エネルギー消費が早いのかもしれません。お腹がすいて力が出ない、よりはたくさん食べて貰った方がいいんじゃないですか?」
そうオルフェーヴルが言うと、オレは援護するように「そーだそーだ」と声を飛ばした。
ラインクラフトちゃんに耳を掴まれた。痛い。
「栄養バーならともかく、カツ丼抱えて食うウマ娘がどこにいるっていうんスかねえ」
「ここにいるぜ!」
「ハ?」
「さーせんっした!!」
キレ気味のラインクラフトちゃんの前ではふざけない。
サンジェニュイン、学んだ!
「お、サンジェここにいたのか」
「
オレがラインクラフトちゃんに耳を掴まれてブラブラ揺さぶられながらカツ丼を食べていると、黒髪をバックに撫でつけた男が1人、部屋に入ってきた。
この男はうちのチームのサブトレ、芝里くんである。
レース前にカツ丼食べてるのかよ、と苦笑いを浮かべながらも、さすがはオレがデビューした時から一緒の相棒、それ以外はツッコミすることなく話を続けた。
ん~、そこに痺れる憧れるう!
「お前の妹分が来てるぞ」
「えっ!?マジで!?」
「マジ」
「ひゃっほい!会ってくる!」
「おー……あ、ちょ、サンジェちょっと待っ……!」
残っていたカツ丼を急いで平らげると、オレは控え室を飛び出した。
あれえ食べるの速すぎないっスか!?とラインクラフトちゃんの声が追いかけてきたけど、カツ丼は飲み物みたいなものなので大丈夫です!
それよりもオレの妹分のことだ。
……で、オレの妹分はどこ?
そう思ってキョロキョロしていると、下の方から声が聞こえた。
「あ、おねーたんっ!」
「ンンッ!?あれえ!?ナイト!?エッお前なんで……お前ひとりか!?」
「んーん!メロねーたんといっしょ!」
オレと同じ白い髪を揺らす、目の前のロリウマ娘の名はサントゥナイト。
馬だった頃のオレの産駒であり、今世では妹分。
オレの産駒の中でも割と後の方の生まれだからなのか、このウマ娘ワールドではまだ3歳くらいの幼児だ。
つまり、ひとりっきりでここに来れるわけがない。
誰に連れてきてもらったのかと思えば、メロ── サニーメロンソーダというオレの産駒でありオレの妹分が連れてきたようだ。
そうだとして、そのサニメロは一体どこに?
メロことサニメロは、ちょっと粗野なところもあるけど基本的には妹思いの良い姉ちゃんだ。
ナイトを放置することなんてないだろうに、どうしてこの場にいないのか。
思わず首を傾げていると、ナイトの後ろの方から駆け寄ってくるウマ娘が見えた。
「あ!お姉ちゃん!」
「久しぶりだなサニメロ。元気だった?」
「モチ!この前の重賞でも他のウマ娘に絡まれたけど、全員蹴散らしてやったぜ!」
「うーん、一緒に内ラチに突っ込んで競争除外になったことを『蹴散らした』と表現するのはお姉ちゃんどうかと思うぜ妹よ」
「アッハハハ!!死なば諸共!!」
「怖えよ!!!!」
一体どうしてこんな物騒に育ってしまったのか。
アレか、馬時代に「オッスどもにケツ追われたら遠慮無くはじき返すんだぞ。命とケツ以上に優先するモンなんてねえからな!」って言い聞かせた所為?
完全に育て方を間違えた感じになってる……ごめんなサニメロ。
で、でもサニメロはちょっと物騒なところがある以外は本当に気立ての良い娘だから……ヨシ!
「ねーち、ねえち!」
「おっ!ファイトも起きたかあ」
「ねえち!」
「はいはい、姉ちゃんだぞ~!レース観戦はお前にはまだ難しいかも知れないけど、ちゃんと見ておくんだぞ!」
「う?」
「ワハハ!何も理解できてねえ顔!」
サニメロの腕に抱きかかえられたファイト── 名をサンサンファイトもまた、馬時代のオレの産駒。
ナイトより1つ下の世代で、馬時代はオレも達成できなかった日本ダービーを制してくれた。
この子が古馬になる前に馬のサンジェニュインは死んでしまったので、残念ながら古馬での活躍はわからない。
でもきっと、ファイトなりに戦い抜いてくれただろうと、オレは信じている。
「そういや今日の観戦、サニメロたちだけなのか?」
「いや?サド……ッじゃなくてサンサンドリーマーも末っ子と一緒に来たんだけど、私がナイトを追いかけている内にはぐれちゃって……あれっ?」
途中で言葉を切ったサニメロが目を丸くする。
その視線はオレの背後に向けられていて、オレもまた、ちらりと振り返った。
「アイエエ!?サンドリ!?サンドリナンデエ!?」
「ね、ねえちゃ……!ねえちゃんたすけてえ!!」
「あばばば……ッ!」
そこにいたのは話題のサンドリ、とサンドリを抱きかかえるヴァーミリアンの姿。
さらにサンドリの腕の中にいるのは、オレの末の妹分0歳の姿が。
コイツさっきから見ないな、と思ってたけど、サンドリ捕獲してんじゃねえよ!!
「おまっ、ヴァーミリアンなにしてんだ!!降ろせ!オレの妹分を降ろせえ!」
「あとちょっとだけ!あとちょっとだけですわ!先っぽくらいですからッ!!」
「先っぽってなに!?あと頬ずりするのやめろや!!」
「か、かべんじでぐらさい~~……!ひぃん……!!」
これはもうだめだ、ごめんな、サニメロ……姉ちゃんは無力だ……!ひぃん……!
オレは心の中でサンドリに100万回土下座した。
ヴァーミリアンのやつ、他のオレ産駒相手にはこんなことしないのに、サンドリ相手のときはコレやるんだよな。
馬時代に同じ牧場で一緒に乗馬として繋養されていた、っていう出来事がウマソウルに強く刻まれた結果、なのかもしれない。
サンドリが「父の友人に愛されて夜も眠れない」みたいな疲労を溜めること以外は、実に平和的なスキンシップ。だと思いたい。
「おねーたん」
「ん?どうした、ナイト」
ぐい、とオレのコートの裾を引いたナイトに合わせて屈む。
ナイトは少しだけもじもじしながら、オレの耳に向かって背伸びをした。
「おねーたん、かてる?」
騒いでいるサニメロたちには聞こえない、小さな声。
心配そうに揺らぐ声色とは別に、その真っ直ぐとした目を見て、オレはニッコリと笑って頷いた。
「勝つよ。姉ちゃんは絶対に1番でゴールを駆け抜ける。……ナイト、姉ちゃんを応援してくれるか?」
そう言うと、ナイトは何度も頷いた。
「うん!おうえんする!ねえちゃんがんばれ!」
こそこそと「かてる?」と聞いてきた声とは違う、腹の底から出たような大きな声に、サニメロたちも目を丸くした。
でもその言葉が、ねえちゃんがんばれ、って言葉が、何よりもうれしかった。
打算もない、傲慢な確信もない、ただ混じりけのない声援がオレの背中を押す。
「なんだよナイト、抜け駆けじゃんか」
「ま、まあまあメロ……。あのね姉ちゃん、今日はみんなで姉ちゃんに頑張れって言いに来たんだ」
「サニメロ、サンドリ、お前ら……」
未だヴァーミリアンに抱きかかえられたままのサンドリが、ちょっと照れ臭そうに頬を掻いた。
あっおいヴァーミリアン頬ずりするな!いま感動の名場面やぞ!
「あの、姉ちゃん、レース頑張って!姉ちゃんは誰よりもすごい、最高のウマ娘なんだから!」
「お姉ちゃん頑張れ~!ぶっちぎりのナンバーワン!な、ファイト!」
「ねーち!」
「ここにはいないけど、サニファもシャトーも他の妹たちも、きっと言いたいことは同じだから……私たちみんな、姉ちゃん大好きなんだ。だから……最後まで応援してるからね!」
じわっと目が潤んで、オレは慌てて頭を振った。
ダメだ、走る前から泣くなんて!
ただどうしようもなく、妹たちの確かな成長を感じられてうれしい半分、照れ臭い半分。
オレもなにか、気の利いたなにかを返したいな、と口を開きかけた時、大きな泣き声があがった。
サニメロの腕の中にいた小さな妹の声だった。
「ハハハッ!元気な声だなあ── ドリームデイ」
「ちょっとうるさくしすぎたかも……」
「ヴァーミリアンがお前を抱えてるからだな、オラ早くオレの妹を降ろせ!」
「あと5時間は……」
「長過ぎィ!?」
ハハハ、と笑い声が広がる。
オレは少しだけ目を細めて、誇らしげな顔でオレを見る妹たちを見つめ返した。
この「頑張れ」へのアンサーは、きっと言葉ではなく、走りが相応しい。
大きな声で泣き続ける妹の額に唇を寄せて、オレは、また前を向いた。
《 まもなくURAファイナルズ決勝、長距離部門が開始します。出走予定のウマ娘は、速やかにゲート前へと集合してください 》
響き渡るアナウンスが、オレのスイッチを切り替える。
ピリッと張り詰めた緊張感の中で妹たちが後ずさり、オレは、拳を小さく握った。
アナウンスは繰り返し流れる。
流れ、流れ、日常とレースの境目を作り続ける。
その境目の真ん中に立ったまま、固く結んだ口を開いた。
「今日、このターフに射し込むのはこのオレ、サンジェニュインだ」
振り向きざまに告げた言葉は── ディープインパクトを打ち抜いた。
ボクにとってレースは、1番か、2番か。
白か、黒か。
太陽か、衝撃か。
《 雲一つない晴天のもと行われる、東京レース場芝3400 URAファイナルズ決勝。18人のウマ娘たちが挑みます 》
鳴り響くファンファーレをBGMに、眼前のサンジェニュインがコートを脱いだ。
白いコートの下から現れた純白の勝負服は、この世の何よりも彼女によく似合っている。
周りのウマ娘はみな、あらわになった目映い姿に目を細め、釘付けになり、動けずにいた。
まるで絵画のような彼女は、
そんな仕草にさえクラリと来てしまうような艶を感じて、何人かのウマ娘が喉を鳴らしたのを見た。
……その顔、覚えた。次から要警戒だな。
内心でそう思いつつも、そのあまりにも綺麗な横顔に、ボクもまた小さく息を飲む。
出会ってから10年以上も経っているのに、彼女はいつ見ても美しかった。
時を経てもすり減らない、それどころか時を重ねる度に磨かれていくようにさえ思える。
頭上にあってずっと変わらない美しさは、万人が「太陽」だと彼女を指すのも頷けるものだった。
その背中がゲートへと向かう姿をじっと眺めていると、サンジェニュインは振り返ることもせず、ただ、ボクの名前を呼んだ。
静かに、ただ淡々と。
でも。
「今日で最後だ」
今日で最後。
「予選ではお前が1着、オレが2着。準決勝ではオレが1着、お前が2着」
それでボクらの対戦戦績は引き分けになった。
共にデビューしてから今日まで、何度同じレースを走ったか。
叩き合い、高め合い、苦しみ合い、癒やし合い。
ボクらはまるで対の鏡のようだった。
サンジェニュインは否定するけど、やっぱり根本の部分でボクらはとてもよく似ている。
恐ろしいまでの勝利への執着心。
それは「期待に応えたい」という純粋さが生む、何よりも透き通った感情。
「これが最後だ」
このレースを最後にボクらはターフを去る。
だから正真正銘、これが決着。
「オレは負けねえ」
ボクも負けない。
「
《 1番人気はもちろんこの
《 実力は完全に上位ですね。貫禄すら感じます。さすが凱旋門賞ウマ娘、堂々としたゲート入り。3400は初ですが、芝のコースで実力を発揮してくれそうです 》
《 この評価には少し不満か。2番人気はシンボリルドルフ》
《 今年の春にチーム・リギルを脱退しトレーナーと二人三脚、捧げられるか栄光の冠。実力に全く不足はありません 》
《 注目の秋シニア三冠ウマ娘、ディープインパクトは4枠8番での出走となります 》
《 私が一番期待しているウマ娘。終盤に伸びる末脚からは目が離せませんよ 》
《 各ウマ娘ゲートに入って、体勢、整いまして── 今、スタートしました! 》
視界の端、大外。
そこから広がる白い翼は、多くのウマ娘を狂わせる。
立てていただろうペース配分を無に還し、誰もが必死に前へ、前にいる彼女へと駆けていく。
3400の長丁場にも拘わらず、彼女のハイスピードによってレースは完全に支配されていた。
《 全ウマ娘キレイなスタートを切りました。先頭はサンジェニュイン。他のウマ娘を突き放して、そのリードはもう8馬身。10番リボンエレジー、11番シンボリルドルフが後を追いますがサンジェニュイン、サンジェニュイン軽快に飛ばして征きます。1番人気サンジェニュイン、いつも通りの自由な大逃げだ 》
序盤からスタミナを削ったウマ娘たちが表情を歪める。
鈍くなる足が恨めしいだろう。
届かないことに頭をかきむしって、泣き叫びたいだろう。
だができない。
そんなことはできない。
目の前の白さを追いかける以外、ボクらには許されていない。
東京レース場、芝、左回り3400の戦場。
向正面、その上り坂からスタートし、ホームストレッチを抜けて直線。
2週目の向正面に差し迫った時点で、余裕を保てたウマ娘は半分も居なかった。
ボクはじっとじっと、駆け出したいのを耐えてじっと後方を陣取る。
本当は苦しい。
ボクも今すぐにでも彼女の背を追いたい。
けどそれは今じゃない。
彼女を、サンジェニュインを追い抜くための最適なタイミング。
それはプロポーズよりもなお難しい、勝利への鍵。
1人、また1人ともう届かないことを知って墜ちていく。
その悲鳴と怒声を浴びながら、ボクは、前へと1歩、踏み出した。
《 2週目最後のコーナーまであと一息だがここで大外イッキに駆け上がってきたのは── ディープインパクト!ディープインパクトだディープインパクト強い!リボンエレジー、シンボリルドルフ、フリルドアップルを抜き差して、ディープインパクトが一気に2番手に浮上です!ターフに迸る衝撃の舞い!大進撃だディープインパクト! 》
眼前に白い影が見える。
ホームストレッチに差し掛かる、あまりにも白くて、孤独な影が。
《 先頭サンジェニュインまで5馬身、4馬身、そして3馬身迫ってさあどうだ抜かせるかディープインパクト、これが最後の追い込みだ!先頭は依然サンジェニュイン!サンジェニュインもここで負けるかと足、足、足を伸ばしてぐーんっと抜けていって!3番手リボンエレジーを抜いてシンボリルドルフも攻めに掛かるがやはりこの2人から目が離せません!大ケヤキを通っていざ4コーナーへここが勝負所。気合い十分で仕掛けるのは── ディープインパクトッ!ディープインパクトがここでサンジェニュインに並んでディープ!ディープ!ディープインパクトここでキメるか!?3番手以下は誰も割って入れない、最後まで隣り合うのはこの2人だ!! 》
キミの隣には、ボクが相応しい。
これは、その証明。
ドン、と大地をかき鳴らして、ボクは前へ、前へ。
「すべてを抜き去って前へ!前へ!これがボクの走りだ──……ッ!」
「ッあらゆるレースで、あらゆる場所で!頂点に立つのはこのオレ── サンジェニュインだッ!」
ああ、キミの叫びは、心地良い。
《 向いた最後の直線!東京レース場の直線は高低差2メートルの上り坂から!ここを力強く踏みしめる2人さあどちらが制するかURAファイナルズ!衝撃か太陽か!?ディープかサンか!? 》
息が苦しい。
それでも足を止めない。
キミがいるから。
キミがいるから、誰でもない、ボクの隣に!
世界は白か黒か。
太陽か衝撃か。
たったそれだけ。
たったそれだけになった世界で、ボクらは、最後まで隣だった。
《 ── 太陽だ!サンジェニュイン1着!東京3400に刻む、これが光の軌跡! 》
一息で駆け抜け、無音だった世界が爆発する。
モノクロの視界に緑が入り込み、空は青く、太陽は眩しかった。
ボクはただ、走り続ける。
眼前に広がる白さが、絶えず駆けるから。
《 これが太陽のウマ娘!サンジェニュイン、正真正銘、お前が太陽だ──……ッ!! 》
今日もサンジェニュインは振り向かない。
並んだ横顔の眩しさだけを残して。
ボクを振り返ることはない、絶対に。
ない……なかった、はずなのに。
「ディープインパクト」
大歓声に紛れる小さな声が、ボクの胸に届く。
「ディープインパクト」
白い髪が揺れる。
まるで熱戦に燻る、光のように。
彼女は、振り向いて──
「オレの勝ち!!」
ボクに振り向いて、笑った。
きらめくステージに、一人のウマ娘が立っていた。
伏せられた顔に浮かべられた表情は笑顔か、それとも感動の涙か。
響き渡るファンファーレに、そのウマ娘は顔を上げた。
── いちについて、よーい
そのウマ娘の名前は、サンジェニュイン。
他のウマ娘を薙ぎ払う大逃げと、隔絶とした美しさを併せ持つ、唯一無二のウマ娘。
ヒトは彼女を「太陽のウマ娘」あるいは── 「美貌のウマ娘」と呼んだ
「うー!うまだっち!」
完結!!!!
最後までお読みいただきありがとうございました!!!!
あとがき長々書くのもどうなの、ということでこちらにまとめました。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=270269&uid=53018
外伝はこちら(チラシ裏設定にしてあります)
https://syosetu.org/novel/270791/
これはその外伝・番外編のネタ募集
→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=270281&uid=53018
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番外編 本編読後推奨:11/05 更新
サンジェニュイン ─ 大百科(夜間モード非推奨)
前に募集したアンケートの「大百科風」です。
有馬記念前で!
8/8 追記
スマホ版で上手く表示できてなかったみたいなので1部修正しました。
夜間モードだと上手く表示できないもよう……お手数ですが夜間モードOFFでご覧ください!
リンク踏めないって言われたので踏めるようにしました(棒読み)
PC版とSP(スマホ)版のどちらにも対応したので下部にある動画が重複していますがご了承ください(棒読み)
08/31 内容を追加
09/04 内容を追加
09/20 内容を追加
10/09 内容を追加(記事内容を追加、レイアウト一部修正、上に戻るリンク追加、産駒情報を外部に変更、PC版のみ上部の「概要 > 競走成績 > ・・・」にリンク)
10/26 全体的に加筆修正
11/02 全体的に加筆修正
サンジェニュイン | け |
い88 |
お114514 |
い いいね! |
お ニヤニ優しく応援 |
す 記事編集 |
け |
サンジェニュイン _単語_
サンジェニュイン
いいね(88)
優しく(114514pt)
その他
瞳から零れる涙は力に変わり、お前の道を照らす
その眩しさは、世界の頂点へ
いままでも、これからも
『 伝説だけを照らして征け 』
── その光の中に、希望がある
サンジェニュインとは、2002年生まれの日本の元競走馬、現種牡馬。日本調教馬初、そして世界初の白毛の凱旋門賞馬。「太陽馬」または「美しき逃亡者」と称される。2007年顕彰馬に選出された。
現在は社来スタリオンステーションを本拠地として、欧米でも種付けを行っている。
2828動画では「やたら○○に好かれる○○シリーズ」の元ネタとしても有名。
→やたら牡馬に好かれる牡馬シリーズ
サンジェニュインとその産駒についてはこちら
→太陽の一族(競走馬)
サンジェニュイン(ウマ娘)についてはこちら
→サンジェニュイン(ウマ娘)
主な勝ち鞍
2005年:牡馬クラシック二冠[皐月賞(GⅠ)、菊花賞(GⅠ)]、有馬記念(GⅠ)
2006年:凱旋門賞(仏GⅠ)、ガネー賞(仏GⅠ)、サンクルー大賞典(仏GⅠ)、KGVI&QES(英GⅠ)、インターナショナルS(英GⅠ)
■ 概要
父:サンデーサイレンス
母:ピュアレディー
同血統に皐月賞馬・ジェニュインがいる。
同馬の競走馬名:サンジェニュインは、このジェニュインから連想されている。
父は言わずと知れた大種牡馬で、母は未勝利・・・どころか未出走であり、配合の1年前まで個人が所有するペット的な存在だった。それがなぜ繁殖に上がったのかと言えば、全姉のクルーピアレディーが産んだジェニュインが皐月賞馬になったから。
成長スピードの早い馬同士を掛け合わせて、2歳戦線から活躍する競走馬を作ることを目的とした配合のもよう(2014年「サンジェニュイン ─ 運命の馬」p.114)
ただしピュアレディーの出産が2ヶ月以上遅れ、7月2日の夏生まれだったことからデビューがズレることになる。
生産した社来ファーム・陽来(あききた)は元々個人所有の牧場(旧・陽来牧場)だったのを、経営難から2000年に社来グループに買い叩かれた吸収された。
同馬は、吸収後に誕生した仔馬であり、同年はこの1頭のみの生産である。
所有は社来グループのひとつサイレンスレーシングで、募集価格は2000万円(1口50万/40口)
同世代のヴァーミリアン(2400万円)、ペールギュント(6000万円)、ローゼンクロイツ(6000万円)と比べると安価だが、その総獲得賞金は12億円以上にもおよび、一口馬主ウハウハである。
■ 2003年 1歳
同年の秋に栗東トレーニングセンター・本原佳己厩舎に入厩。
7月生まれのためこの時点で1歳2ヶ月ほどだったが、馬体重は既に500kgほどあったもよう。当時のnatkeiba.com に大柄の1歳馬が入厩した記事が上がっている(2019年現在削除されている)
サンジェニュインは社来の育成牧場を経由せず、陽来にあるリハビリ施設等を使用して育成が進められた。非常に従順な性格で、馬具の装着、引き運動、ゲート訓練なども嫌がらず、スムーズに育成が行われたようだ(凱旋門賞馬の歩み p.29)
ただ前述の通り、陽来唯一の仔馬だったサンジェニュインは人慣れ、ならぬ馬慣れしておらず、牧場スタッフの最たる懸念事項は「同族相手に上手くやれるか」であった。
入厩してから初めて同年代の馬たちと顔を合わせることになったのだが・・・後述するエピソードにもある通り、サンジェニュインは非常に同性馬に好かれるため、馬の多い時間帯に調教場所に連れて行くと必ず絡まれていたらしい。
絡まれ方については後述のエピソードを参照されたし。
サンジェニュインの父・サンデーサイレンスは気性が荒いことで知られており、他の産駒も手が掛かる馬が多かったため、管理する本原厩舎のスタッフたちはかなり気を揉んだという。だが実際に厩舎にやってきたのは、少々甘えたがりではあるものの、非常に物わかりのいい馬だったため安心したとか。
調教時も苦労話はほとんどなく、あったことと言えば牡馬に追いかけ回されて放馬したくらい(十分な苦労話では?)
ちなみにこの当時の併せ馬の相手は、のちに「砂の支配者」と呼ばれることになるカネヒキリ。
2頭は同じレースで走ったことはないが大変仲が良く、お互いの姿を見ると立ち止まっては長時間見つめ合ったまま動かなくなってしまうとか。初の海外遠征となったドバイへも、カネヒキリと共に向かっている。
これは現役引退後の2頭だが、現役時代のエピソードも紹介されているので参考にどぞ。
■ 2004年 2歳
陽来での評判の通り、性格も従順で、騎乗馴致もゲート入りも嫌がらないサンジェニュインの調教は順調に進められた。この頃になると、6月、7月の新馬戦に出走させる話も出てきたが、同馬が7月産まれであることを考慮して、秋以降にデビューさせることが決まった。
当初は新潟1800メートルで走らせる予定だったが、3本坂路で使ってもバテないため、これは距離がある方が好走する、と睨んだ本原師は、渋るサイレンスレーシングを説得して、2000メートル以上の新馬戦で使うことを決定した。サイレンスレーシング側としては、2歳戦線から活躍する馬を作るための配合だったわけなので、渋るのもまあ仕方ない。同血統のジェニュインがマイラーだったこともあり、2歳GⅠの花形・朝日杯フューチャリティーステークスへ出走させたかったそう。
だが結果として、本原師のこの決断はのちのサンジェニュインの競走馬生活に大きく影響を与えることとなる、あの馬との出会いに繋がった。
スケジュールの兼ね合いから、2004年12月19日の阪神競馬場5Rでデビュー。
鞍上は後の主戦騎手となる本原厩舎所属(当時、現フリー)で騎手歴2年目のド新人・芝木真白(当時20歳)が務めた。
この芝木騎手だが、父は開業医、母も看護師で2人いる兄も医療従事者という見事な医者家系だったため、当然のように医学部進学を望まれ、騎手になることは反対されていたらしい。
だがそれらを振り切って憧れの騎手への道を歩み、夢を叶えた。
ちなみにこの男、街に繰り出せば芸能事務所からスカウトされるほど顔が良い。それだけでなく英語、フランス語、イタリア語などの語学にも精通し、なんと歌も上手い。コイツは逆になんだったらできないんだ?シバキシネー
俺たちの敵芝木騎手を背負って乗り込んだ阪神競馬場。
当日の調子は非常に良く、最終の調教タイムも非常に良かったため当然1番人気・・・ではなく、2番人気。
このレースで白毛馬であるサンジェニュインよりも注目を浴びていたのは、当時の社来グループがゴリッゴリに宣伝していた期待の良血馬・ディープインパクトであった。
オッズ1.1倍の1番人気。これで負けたら大ブーイングでしかないレベルで押されていた。
実況アナウンサーが「1番、1番、1番人気」と繰り返すほどのヤバさである。
もはやディープインパクト1強という空気の中できられたスタート。
先行するディープインパクトに全頭ちぎられるだろうな・・・と誰もが思ったその時、サンジェニュインが抜群の出だしをキメてハナを取ると大逃げし、1番人気のディープインパクトは後方につける展開。
場内は騒然。
まさか1番人気でシンガリ負けとか・・・ないですよね!?(馬券おじさん)
そのまま直線までぶっちぎり、場内がにわかに「サンジェくっそ強くね?逃げ切っちゃうんじゃね?」という雰囲気になりかけていたところ、ゴリ押しだけが1番人気の理由ではなかったのか、終盤も終盤で末脚を爆発させたディープインパクトに追いつかれ、最後は横並びでゴールイン。
観客からするとどっちが勝ったか一目では判断できないレベルの接戦だった。
結果としてハナ差8cmでディープインパクトが先着。
これは重賞レースか?と錯覚するほどの熱戦を繰り広げた2頭に、早漏気の早いファンは「クラシックはこの2頭だな!」と大はしゃぎ。
だがそれも、すぐに困惑の声に変わった。
え?あれなに?
何故かまだ走り続けるサンジェニュインと、それを追う馬たちで勝手に第2レースが始まっていたのだ。
そう、所謂「本番レース」がこれである。
この追いかけっこのあと、サンジェニュインは負けた悔しさからか、走り疲れたからか、ぼたぼた泣きながら帰厩したんだそう。
これが公式の場で初めてファンが見た「泣き顔」であった。
■ 2005年 3歳 クラシックシーズン
負けた悔しさを晴らすように、1月23日の小倉3Rの3歳未勝利戦2000m に出走したサンジェニュインは、ここでとんでもないタイムを出す。
1:58.0
競馬おじ「はえ……?」
ちなみに出したレコードはレースレコードではなくコースレコード。
前回レコードはGⅢの小倉記念で出たレコードである。うっそだろお前。
この勢いそのままに2月12日、小倉10Rあすなろ賞(1勝クラス/500万以下)で2着馬に10馬身差つけて圧勝した。
中央で走った白毛馬といえば、サンジェニュインと同じサンデーサイレンス産駒・シラユキヒメなどがいたが、いずれも未勝利で終わっている。このサンジェニュインの勝利が、日本競馬史上初の快挙であり、白毛の馬がコースレコードを出すのも初めて。そもそもオープン馬になるのも初である。
初尽くしかよ。新年じゃないんだぞ。
毎年数千頭生まれる馬の中で白毛が希少とはいえ、たった1頭で初を連発しすぎ。
陣営はこの勢いのままクラシック戦線に殴り込もうと、続く3月6日の報知杯弥生賞へ出走を決定。
前走の若駒ステークスでも好走を魅せたディープインパクトとの再会、前年の最優秀2歳牡馬に選出されたマイネルレコルト、京成杯勝ち馬のアドマイヤジャパンらが揃っている中で、サンジェニュインはディープインパクトにつぐ2番人気に推された。
このレースでは隣ゲートのニシノドコマデモが立ち上がった影響でサンジェニュインが出遅れ、中段からのスタートとなったものの第3コーナーからハナを奪う展開。
終盤でディープインパクトに追いつかれ、またしてもハナ差3cm と惜敗したが、地力の高さを見せることはできた。
レースの内容からディープインパクトともどもクラシックシーズンを盛り上げるだろうと期待もされた。
ただこのゴール後、サンジェニュインは一時的な心停止状態となり倒れてしまう。
歓声に沸いた場内は、一瞬にしてお通夜の空気になった。
こんな良いところで予後不良かよ、とファンが悲しみに暮れていた同日の夜、管理する本原厩舎から「無事回復し、競走能力にも問題ない」とする声明が発表された。
心停止状態になった際に、直前で芝木騎手が綱を引いたらしく、顔面からいって首を折るという惨事を避けられたのがよかったのか、目立った怪我もなし。グッジョブシバキ。
ただし、当初予定していたスプリングステークスを回避することに。
そのまま皐月賞へと向かうこととなった。
クラシックシーズン
弥生賞でのぶっ倒れの影響なのか、鞍上が芝木からベテランの柴畑にチェンジ。
若手の芝木からクラシック勝ちの機会を奪うのか、とノブオミおじさんにキレちらかす競馬おじ(ノブオミシネー)も発生したが、クラブ、芝木、ノブオミおじさんの3者間で何度も話し合った末の決断なので、ただ馬券を握っているだけの俺たちにキレる権利などないのである。
余談だがノブオミおじさん曰く「きちんと乗せて貰えるまで3週間くらいかかった」とか。
サンジェニュインは乗り替わりに敏感な馬だった模様。
■ 第65回皐月賞
弥生でぶっ倒れて以来の出走だったので、馬場入りしただけで大歓声と拍手を浴びることに。2番人気ではあったもののオッズ差はほぼなし。レースが始まると、 いつもと変わらずハナを取って進み、第2コーナーカーブでふらつきを見せたもののペースを落とさずに先頭をキープ。2着馬に常に2馬身リードする。第4コーナーをまわったところでディープインパクトに追い込まれ、差し競り合いの末に同着となった。GⅠで同着優勝が出るのはコレが初。ちなみにこのレースのあと、第2レース余力があるのか走り続けていたサンジェニュインが、側にディープインパクトがいたことにビビって腰を抜かす場面が見られる。その後も側にピタッとディープインパクトが張り付いて離れず、結局2頭ともに勝利会見を開くことになった。
■ 第72回東京優駿
引き続き鞍上は柴畑。これもハナを奪って突き進むと、内に沿いながらもコーナーをなんとか回り、4馬身差で第3コーナーを回りきる。ここでいつもなら終盤の直線まで馬群に留まっているはずのディープインパクトが上がってきて、2頭並んだ状態から、いったんはディープインパクトに3馬身差を付けられる。しかし同馬はここで驚異の追い上げを見せ再びディープインパクトに並ぶと、2頭揃ってゴールインした。写真判定は十数分続き、結果として1cm差。ディープインパクトが勝った。これに関しては後述の通り、JRAに複数抗議文が届けられるなど、1cm差の先着がどちらであったかは当時かなり議論された。
■ 第66回菊花賞
初の稍重となった前走・第53回神戸新聞杯、鞍上が芝木に戻った影響か、序盤から1000m 57秒台の圧倒的な逃げ足を見せつけ、ディープインパクトに初の黒星を刻んだサンジェニュインは、その勢いのまま菊花賞に出走。ここでも3000m競走なのに前半1000m 58秒台のあたおかタイムで走ると、2周目の第3コーナーまで2番手集団に10馬身付ける大逃げ。坂路を駆け上がると疲れたのか一瞬速度が落ち、コレを見逃さなかったディープインパクトの鞍上、竹騎手が猛追を仕掛けて一度並ばれる。しかし終盤でさらに加速(!?)したサンジェニュインが差を広げて優勝した。これが初のGⅠ単独勝利であり、世界初の白毛のGⅠ馬の誕生となった。
終わってみればディープインパクトが皐月賞と日本ダービーを、サンジェニュインが皐月賞と菊花賞を勝ち、2頭の二冠馬が誕生という結果になった。
※変則二冠→皐月賞、NHK杯、またはNHK杯、日本ダービー、桜花賞→日本ダービーなどの組み合わせとは異なる
いや、同年に2頭も二冠馬がいるって・・・そうはならんやろ
なっとるやろがい!!!!
ちなみに菊花賞でサンジェニュインが出した「3:02.0」は芝3000m のワールドレコードである。
なんだあ・・・この馬・・・。
■ 2005年 3歳 有馬記念
秋に入ってから2戦2勝のため、同馬は「秋から本格化した」と言われるようになった。
メディアでも取り上げられてしばらくチヤホヤされていたが、当時のサンジェニュインのファンは未だに神戸新聞杯で勝った後のメディアの対応を恨んでるとかいないとか。競馬系のメディアはともかく一般紙の表題はどうにかしろ
この後、激走の反動が来たのか、獣医からストップが入り、2週間の休養をすることに。
予定していたジャパンカップを回避し、有馬記念に出走することが発表された。
2005年11月時点で国際競馬統括機関連盟から発表されたレーティングでは、3歳で3000mのワールドレコード更新なども評価され、122ポイントの18位タイ。そのサンジェニュインに東京優駿で競り勝ったディープインパクトが121ポイントで24位タイとなった。
有馬記念のファン投票では、中間発表までは2位、3位をいったりきたりしていたが、最終の結果発表ではディープインパクトを押さえての1位となった。これは菊花賞勝利後、世界初の白毛GⅠ勝ち馬であることが国内外のメディアで取り上げられて以降にできた、ライトなファンが多く投票した影響によるものと思われている。
最終的に獲得した有効票:160,411票
2位のディープインパクトとは114票差である。ここでも僅差で競り合うな。
迎えた12月25日。ハッピークリスマスである。競馬おじたちは家族とも友人とも恋人とも戯れず、さっむい中山にサンジェニュインというホワイトなクリスマスを求めてやってきた。
ファン投票1位で馬券人気も1位の1枠1番という、1が多すぎて逆に大コケしそうな中で、サンジェニュインはいつものようにパドック別周。馬番最終以外で番号通りパドックを回ったことがない馬はサンジェニュイン以外にはいないだろう。返し馬でもいつも通りディープインパクトを張り付けて、初対戦となる古馬のハーツクライにも絡まれつつゲートイン。
レースではこれまたいつも通りハナを切ってスタート、するかと思いきや、まさかの出遅れ。どうもゲートの中にいた時間が長かったため、集中力が切れてしまったもよう。ただし素早く反応したため、最内を突いて爆走し一気に先頭に躍り出た。出だしからスタミナを消費していたが、そんなもの構うかと差を広げに広げ、2番手とは一時11馬身差もついていた。このまま逃げ切り勝ちかと思われたが、差し追いから先行にレーススタイルを変更したハーツクライの猛追、後方から一気に仕掛けてきたディープインパクトと揉み合いになり、最終200mは3頭がたたき合う混戦状態となった。
走破タイムは2:29:1
前年のゼンノロブロイがマークしたレコードを更新した。なお、3頭同タイムであり、1着のサンジェニュインからハーツクライは1cm、そこからディープインパクトも1cmと、大接戦も大接戦である。
白毛のグランプリホースももちろん世界初。
国内外からの注目度は菊花賞勝利後の比ではなく高まり、新たな競馬ブームが到来しようとしていた。
というか到来した。
皐月賞と菊花賞の二冠を記念して作成されたぬいぐるみは競馬場内の売り場に出たその瞬間に完売。インターネット通販も即日完売。海外からも問い合わせがきて3度再販が行われた。
サンジェニュインの生産元の陽来もお手製のぬいぐるみを販売していたが、これも沖縄から北海道まで買いに行くというファンが現れるほど売れた。JRAも陽来も関係者もウハウハである。
有馬記念から明けて翌年すぐ、サンジェニュインの海外遠征が改めて発表されると連日ニュースになった。同行取材も多数申し込みがあったようだが、同馬のストレスを考えて一律でお断りされている。当然なんだよなあ。
■ 2006年 4歳 ドバイシーマクラシック
有馬記念後、陽来に2週間放牧に出されたのちに帰厩。
次走はドバイシーマクラシックとなり、有馬記念2着馬のハーツクライと早々の再戦となった。ちなみにディープインパクトは態勢立て直しのため国内戦に集中するらしく、ここで2頭はしばしの別れ。
3月17日、帯同馬であり同日のドバイワールドカップに出走するカネヒキリ、同レースに出走するハーツクライ、その帯同馬のユートピアを含めた10頭がドバイに発った。
主催が用意してくれたやたら豪華な厩舎に日本馬10頭が入厩。翌日から順次調教が再開された。
当時のドバイは朝と夜の寒暖差が激しい時期で、サンジェニュインを始めとした馬たちには馬着が着せられていた。濃紺色の馬着に身を包むハーツクライや、黒色の馬着のカネヒキリらに紛れてただ1頭、サンジェニュインだけ柄付き。
スーツっぽい柄や、スーパーマン柄、チェック柄、水玉模様などなど。中には誰の趣味か判明していないがシマウマ柄や虹色、セーラー服柄など多数の馬着を日替わりで着せられていた。ただのファッションショーじゃねえか
現地メディアには大ウケで、サンジェニュインが調教場から引き上げると厩舎前にスタンバっている始末。一応日本側はご遠慮くださいと伝えていたようだが(JRA公式サイト2006年3月アーカイブ)、「近くじゃ無ければいいんでしょ?」と言いたげに遠くから三脚立てて撮りまくる行為に走った。違う、そうじゃない。
余談だが、この時サンジェニュインが着ていた馬着は富裕層に爆売れしたらしい。
馬界のファッションスター・サンジェニュイン爆誕である。
調教場では牡馬にケツを追われ、外に出ればマスコミにファッションの出来を採点されつつ迎えた3月25日。
ゴドルフィンマイルをユートピアが鮮やかな逃げ脚で勝ち切り、幸先いいなあ、と現地の関係者が陣営問わずニッコリ。続くドバイシーマクラシックへの期待も高まり、日本調教馬でワンツーフィニッシュを・・・と願う関係者であふれた。
はたして競馬の神がそれを聞き届けてくれたのか、ゲートが開くとお馴染みのスタートダッシュでハナを取ったサンジェニュインが爆走。ハーツクライもそれを追走し、レースでは終始3番手以下に3馬身以上つける展開に。サンジェニュインとハーツクライのスピードにつられた他馬がどんどんスタミナを落とす中、2頭は悠々と最終直線へと向かっていった。残り200mのところでハーツクライがサンジェニュインに並ぶと、アタマ差しクビ差しを繰り返し叩き合いながらゴールイン。
2頭の鞍上がどちらもガッツポーズを見せたが、3回もやり直しが行われた写真判定の末、ハーツクライが2cm先着していた。
サンジェニュインにとっては東京優駿以来の敗北。
頭を下げた姿がものすごく落ち込んでいるようにしか見えず、サンジェニュイン自体は泣いていなかったものの、見ているこちらが泣きそうなくらいだった。ハーツクライを含めた他馬が戻っていくのを見て最後にターフから去ったサンジェニュインだったが、観客たちは最後まで拍手を送り続けた(ハーツクライの一口馬主ブログ 3/25ドバイ遠征③)
負けてしまったものの、差はわずか2cmでタイム差なし。
悲観するような結果じゃないぜ!
とサイレンスレーシングからの発表もあり、引き続き海外遠征を行うことが再告知された。次走は4月30日開催のフランスGⅠ・ガネー賞。帰国せずドバイからそのままフランスに直行した。
■ 2006年 4歳 欧州遠征
欧州遠征は、当初の予定ではカネヒキリがドバイに引き続き帯同する予定となっていたが、ドバイワールドカップ制覇と引き換えに屈腱炎を発症。カネヒキリが帰国することになったため、1頭での遠征続行となった。
現地ではシャンティイ競馬場付近のトレセンにある国際厩舎に滞在。
イギリスからフランスに移ったパンジャンマックスを僚馬として調教に励んだ。
余談だがこのパンジャンマックス、サンジェニュインに非常に懐いていたようで、何かと同馬の真似事をしたがったんだそう。試しに条件戦で大逃げさせるとこれが上手くハマったので、同年8月6日のモーリスドギー賞(仏GⅠ)に出走させると4馬身差で圧勝。イギリス出身で名前が某珍兵器に似ていたことから、実況者らの間で「本当にアレがフランスに上陸しちゃったよ」とネタにされている。
ちなみにサンジェニュインに懐いていた理由は毛並みにあるようで、馬着で全身を隠すと近寄らなくなるらしい。パンジャンマックスの母・パンジャンドリーはかなり白っぽい葦毛で、母を懐かしんでいるのではないか、サンジェニュインを母だと思っているのでは無いかと現地スタッフは語っている(2006年8月7日フランスニュース)
さらに余談だが、このパンジャンマックスの半妹にあたるパンジャンベリーとサンジェニュインとの間に生まれた「Blanche Blanche」(牡/鹿毛)は、サンジェニュイン産駒で初の凱旋門賞父子制覇を成し遂げることになる(でも白毛じゃないから日本ではあんまり話題にならなかった)
フランスでいきなり子持ちになったサンジェニュインだが、4月中旬に芝木騎手と合流すると本格的に調教を開始した。
国内ではヨーロッパの馬場に適応できるか心配されていたが、管理する本原師は、
「何一つ心配する必要は無い」
「勝利を確信している」
「独走できる」
と断言。
「強気過ぎてフラグでは?」とネット民に心配されるレベルで強気の発言を繰り返しており、現地の一部の調教師から反感も買ってしまう。本当に大丈夫か本原佳己。
これで大コケしたら失禁じゃすまねえだろ、と思いながらも迎えた4月30日。
前日の大雨の影響で馬場は不良馬場寄りの重馬場。現地の競馬関係者すら「これは間違いなくスローなレースになる」(キリッ)と確信する中で、サンジェニュインは完璧なスタートダッシュを見せて大逃げ。
実況者がしつこいくらい「今日は重馬場」と繰り返すほど荒れた馬場だったはずが、良馬場並のペースでドンドン逃げる逃げる。というか1頭だけ良馬場なのでは?現地民は訝しんだ。
先頭を追うカメラにはサンジェニュイン以外の馬が映らないという、一種の放送事故を起こしたその着差は26馬身差。
2025年8月現在も破られることのない大記録で、8着入線のニヤーオナーとのタイム差は6.1秒である。
こんな大差だがサンジェニュインには1度も鞭が入っていない状態であり、まさに「持ったまま」「馬の走りたいまま」やった結果と言えるだろう。鞍上の芝木はゴール後、後ろを振り返って誰もいないことに空笑いしか出なかったとコメント。
また強気の発言を繰り返していた本原師も「やれるとは思ってましたがここまでとは思ってなかったです」と青ざめていた。青ざめていいのは本原師を無能だとかサンジェニュインを駄馬だとか言ってた現地の調教師だけである。
勝ったのに驚きで青ざめるんじゃあない。
元々踏み込みがかなり深い馬で、神戸新聞杯やガネー賞のように重い馬場の方が良馬場(=軽い、固い馬場)よりも走りやすいタイプなんだそう。菊花賞後に重度の疲労状態になったのは、固い馬場を思いきり踏みしめながら爆走していた反動のようだ。
本当なら折れていてもおかしくないレベルなのに疲労程度で済んでるのがそもそもオカシイのだが、この馬に常識を求めるなという神の思し召しかもしれない。
フランス競馬史上初の白毛のGⅠ勝ち馬になった同馬は、レース前の本原師の強気の発言も相まって、フランスでの「有言実行の実力馬」としての立場を確立させた。
海外遠征のスケジュールの中にサンクルー大賞典への出走が含まれていたことから、同レースに出走を予定している前年の凱旋門賞馬・ハリケーンランとの直接対決が大きな注目を集めることに。
サンクルー大賞典は6月25日開催だが、検疫の都合もあって一時帰国が決定。
我が子僚馬・パンジャンマックスにしばしの別れを告げて5月2日に帰国した。
このガネー賞と同日に開催された第133回天皇賞(春)では、ディープインパクトが2着馬に5馬身差、走破タイム3:13.0 と芝3200m のレコードを更新した。これは2017年にキタサンブラックが走破タイム3:12.5 を出すまでの11年間も破られることのない大記録である。阪神大賞典での圧勝に続く勝利に、文字通り国内に敵無し!の強さを見せた。
2005年のクラシック二冠馬2頭が国内外で存在感を増して行くにつれ、一般人への競馬ブームもさらなる熱を帯びていた。その勢いはオグリキャップがもたらしたブームにも並び、同年のクラシックシーズンのテレビCMには、2頭のレースも組み込まれた。
詳しくは→
サンジェニュインのガネー賞、ディープインパクトの春天の勝利記念として制作された、2頭がくっついたぬいぐるみは再販に次ぐ再販で爆売れし、2頭の対戦レースを収めた写真集も爆売れ。JRAウハウハである。2005年4月から2006年4月までの1年間の売り上げは、オグリキャップが記録した売り上げを超し、歴代1位となった。
そうして人間たちの懐があったかくなる横で、サンジェニュインもご褒美として青森県産サンふじりんごを献上されご満悦。サンふじのイメージキャラクターにもなるなどちょっと大人の事情が見える
→青森・努岬農場から太陽のふじリンゴ、ガネー賞のご褒美 – natdekeiba.com
サンジェニュインは国内の検疫厩舎に規定日数滞在したのち、社来ファーム・陽来に放牧に出される予定となっていたが、5月4日にとんでもないニュースが飛び込んできたことで、検疫厩舎での滞在日数が伸びることとなる。
→サンジェニュインがゴンゴルドンへ移籍か、金銭トレードの打診 – natdekeiba.com
関係者の話によると2000万ドル、2006年当時の日本円にして約20億円がゴンゴルドンより提示されていた、とのことだが、実際に提示された額は120億近いことが判明している。
とても1頭の競走馬に出す金額ではない。
こんなの秒で売り飛ばすやろがい、と思ってしまいそうなところだが、サンジェニュインを所有するサイレンスレーシングクラブ、並びにその背後にいる社来グループはサンジェニュインが移籍することはない、と公表した。
それからまもなく、5月中旬には、「これからも変わらず日本調教馬として走らせ、秋には凱旋門賞に出走する」ことも正式に公表された。
120億なんだから売っちまえばいいのに、と思ってしまいそうだが、その後サンジェニュインが生み出した様々な経済効果を考えると、この時売らなかったのは大正解である。
5月末に栗東に帰厩したあと、交流のある居住厩舎の管理馬デルタブルースやハットトリック、翌2007年の東京優駿を制する当時2歳のウオッカらを相手に調整が進められた。
同年秋からはサンジェニュインの影響で、半弟・アセンドトゥザサン(父・クロフネ)を始め、管理馬が増えることになるのだが、この時点ではサンジェニュイン以外の管理馬はいなかったため、居住厩舎が協力する形となった。
6月下旬、再びフランスへ遠征し、サンクルー大賞典へ出走。
このレースでは、心房細動で療養に入った同クラブ所有馬のヴァーミリアンのメンコをつけている。黒地に赤いクロスラインのメンコは白毛に似合いすぎ。
レースでは、ガネー賞にも出走していたプライドの鞍上、グラン・リュベールの奇策により、終盤ギリギリまで牝馬2頭に挟まれた状態で走ることに。
後日明らかになったことだが、サンジェニュインは牡馬のみならず牝馬も苦手だそうで、牝馬と一緒に走ると何故か本気で走れなくなるもよう。この悪癖を矯正するため、前年の東京優駿から併せ馬の相手は牝馬に限定して行ったらしい。牝馬まで苦手とかそれはもう馬が苦手ということでは?
サンジェニュインは挟まれたままだが先頭をキープ。しかしコーナーカーブを曲がるために大外に進出することができず、前走よりはかなり押さえて走ることを強いられていた。
これはかなりキツイのでは?と見ている側はハラハラしていたのが、終盤になってプレッシャーを掛けてくる2頭の隙をついて飛び出し、まだそんな力を隠してたんかい、言いたくなるような加速力で一気に他馬をちぎるちぎる。
逃がすか、と先頭3頭に張り付いていた4番手ハリケーンランもここで飛び出し、プライドと叩き合いながらサンジェニュインを猛追。だがそれらの追い込みを跳ね返し、5馬身リードを保ったまま逃げ勝った。
つ、強い・・・!
純粋に強くて見てるこっち側も絶句である。
なおこのレース後、神戸新聞杯以来の本番レースが開催され、ハリケーンランからケツタッチされている。レース動画を見るとハリケーンランのハリケーンな部分が立ち上がっているため、そういう状態らしい。やっぱりピンクフェロモンの元ネタはこの馬で間違いないようだな(確信)
後日、このケツタッチの影響かは不明だが、レース後の初回の調教を拒否って丸1日馬房に引きこもっていた模様。誰だって同性におっ起てられたまま追われたらストレスにもならあ!
ヒンヒン言いながらもヨーロッパ3戦目、キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス(現在はキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスだがあんま変わんねえな)に向けて調教を再開。
併せ馬の相手はハリケーンラン・・・ってもうちょっと本人(?)のストレスに配慮してくださいよ。
おそらくセクハラされながらの調教となっただろうが、これを熟して迎えた本番。同レースには、ドバイシーマクラシックで敗北したハーツクライ、ドバイワールドカップでカネヒキリの2着につけたエレクトロキューショニストなど国際GⅠでも活躍した経験のある馬たちが揃って出走し、レベルの高いレースが期待された。
あ、ちなみにこのレースにもハリケーンランが出走しており、パドックでサンジェニュインは絡まれていたし、同郷のハーツクライにも鬣を食われそうになっていた。
スタート前からストレスフル。
当日のレースは、英国女王陛下や、その孫王子殿下がレースを御覧になる影響なのか、普段競馬をみない層の人間ですら注目されていた。
ゲート入りギリギリまで絡まれてしんどそうだったサンジェニュインだが、いざレースが始まってみると、得意のスタートダッシュでハナを切って突き進み、下り坂がなんぼのぼんじゃい!と勢いよく走る走る。
開催場所であるアスコット競馬場のコーナーカーブはかなり急なことで知られていたため、コーナーカーブが苦手なサンジェニュインは、これを大外ギリギリまで持ち出して突破しようと外に向けて進出。だがトップスピードで曲がるにはやはりカーブが急すぎたようで、右前脚と右後脚が接触。
右後脚から出血が見えたが、そのまま先頭で走り続けた。
白毛のため血がかなり目立つ状態で、場内では軽い悲鳴まで上がったそう。
続く上り坂では出血の影響かスピードが落ちる場面も見られたが、2番手でサンジェニュインを追うハーツクライがやや掛かり気味に差を縮めると、追いつかれてなるものかとさらに加速するトンデモ技を見せつけた。
競馬おじ「なんでこの状態で加速できるんですか?」
本原厩舎「わからん・・・」
2番手争いで揉めまくっている3頭(ハーツクライ、ハリケーンラン、エレクトロキューショニスト)を背に、なおも爆走を続けるサンジェニュインは、ゴール前ラストの上り坂も力任せに昇りきり、6馬身差で勝ちきった。
このレースの授賞式では特別に出席が認められ、目黒さん(サンジェニュインの担当厩務員)に手綱を引かれながら登場。白い馬体が現れると、場内から大きな拍手が送られた。
授賞式では暴れることなく終始大人しくしていたサンジェニュインだったが、女王陛下のお出ましで跪く関係者たちにつられたのか一緒に頭を下げたり上げたり、近づいてきた女王陛下に頭を差し出したり(おそらく撫でて貰うため)、かなり自由に振る舞っていた。
この時の女王陛下のお召し物が白系だったこともあり、サンジェニュインを撫でている姿は絵画のような光景だった。これは翌日のイギリスの主な新聞紙の一面を飾った。「サンジェニュイン 女王」で検索するとこの時の写真がヒットする。「サンジェニュイン 犬」で検索しても同じ写真がヒットするのはなんででしょうね・・・。
余談だがこのキングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス、長いのでKGVI&QESは後年「呪われたレース」と呼ばれることになる。
レース中のサンジェニュインの怪我もそうだが、出走したエレクトロキューショニストが翌月に死亡、2着のハリケーンランはこれ以降目立った活躍ができず、ハーツクライは喘鳴症を発症して同年のジャパンカップを最後に引退しているのだ。おそろしや・・・。
KGVI&QESでの勝利から数え、これで欧州レース3戦3勝。
続くインターナショナルSにも、もはや敵無し状態となったサンジェニュイン。怪我の影響もあるため欧州での拠点としていたフランス・シャンティイには戻らず、ニューマーケットに滞在することが決定した。
その間の調教相手を途中までハーツクライが務め、調整は滞りなく進められていた・・・開催2日前までは。
現地時間8月20日の夜、インターナショナルSを控えて日本から取材に来ていた記者を相手に会見を開いていたサンジェニュイン陣営の元に、ある荷物が届けられた。
それは赤い手綱。
日本時間8月19日の朝に急性心不全で死亡したラインクラフトの形見である。
ラインクラフトは翌年に海外遠征が計画されていたため、せめて綱だけでも、という馬主の意向もあって、渡英が決まっていたJRA職員に託される形で運ばれた。
ラインクラフトはサンジェニュインのメインの併せ馬の相手。赤い手綱は見慣れたものなのか、それとも周囲の様子に何か察してしまったのか、この日からサンジェニュインは調子を大きく崩すことになる。
飼い葉食いは一気に悪くなり、調教にも身がはいらないまま迎えた8月22日。
その白い馬体から、汗などの情報が分りづらく、パドック評価が難しかったサンジェニュイン。しかしこの時は、首がガクッと下がっており、尻尾も下がっていた。
こんな状態でレースに出して良いのか、と誰もが不安視するなか、出だしはいつも通り引っかかることなくポーンッと飛び出てハナを切った。ただいつもより自棄っぱちなのか、鞍上・芝木とも折り合いがついていないことが丸わかりの状態で爆走を開始。
ヨーク競馬場のコースは全体的に緩やかで、コーナーカーブもかなりゆとりがあるため、暴走しながらではあるが大外を脚色良く進み続けていた。最初の1000mの時点で後続には8馬身差をつけ、レースはほぼ独走状態。しきりに横に顔を向けたり、何かを気にするような素振りを見せながらも、ゴールが近づくに連れてだんだんと冷静になっていったのか、最後は芝木とも折り合いをつけて伸びきると、ダメ押しとばかりに加速して12馬身差で逃げ切った。
終わってしまえば、「調子悪かったのにレース中に勝手に調子立て直して勝つ」という意味のわからない結果になった。
同レースに出走したNotnowcatoは前走エクリプスS(GⅠ)で2着、Dylan Thomasは同年の愛ダービー覇者と、国際GⅠ級が他に3頭もいたKGVI&QESに比べるといささか物足りないかもしれないが、相手馬が極端に低レベルだったわけではないので、より一層意味の分らない強さを見せつけることとなった。
なお、このレースを含めて引退するまでの間、ラインクラフトの赤い手綱をつけて走ることになり、この手綱は15年後、ライングッドデイ(ラインクラフトと同血統の牝馬・ハニーハントを母に持つサンジェニュイン産駒)に引き継がれる。
この勝利を持って、国内外GⅠの勝利数は、同着となった皐月賞を含めて7勝。
皇帝・シンボリルドルフの偉業に並ぶことになった。
次走となる凱旋門賞を制すれば、
「史上初の日本調教勝ち馬」
「史上初の白毛勝ち馬」
「GⅠ・8勝」
の伝説を築き上げることになるため、関係者のプレッシャーもハードルもガチガチに上がっていたことだろう。
この時、鞍上の芝木は22歳、騎手歴4年目での凱旋門賞出走になるため白目になってもおかしくないレベル。帰国の際、空港に押し寄せたファンの数がそれに拍車を掛けまくっていた。
ちなみにサンジェニュインは輸送機から降ろされてすぐに検疫厩舎に運ばれたため、ファンは一目見ることもできずに帰ることになった。
■ 2006年 4歳 凱旋門賞
8月25日に帰国したサンジェニュインは、そこから規定日数を検疫厩舎で過ごした後、陽来で着地検査と調教が進められた。
明けて9月下旬には、共に凱旋門賞に出走することが決まっていたディープインパクトと共に、再度検疫厩舎に入厩。
この時、サンジェニュインのストレス軽減のため、厩舎内の帯同馬として併せ馬の相手であり、同クラブ所属のヴァーミリアンがつけられた。馬房の配置は「ヴァーミリアン」「サンジェニュイン」「ディープインパクト」の順。
サイレンスレーシングクラブのブログから、両隣にガン見されながらこっちを見つめるサンジェニュインの画像が見られる。こっちみんな
凱旋門賞を数日後に控えた9月末、サンジェニュインはディープインパクトと共に飛行機に乗り込み、フランスへと出発。シャンティイでも隣り合う馬房で、調教時もお互いが相手になった。
ディープインパクトはこれが初の海外レースとなるが、日本では宝塚記念の後から2ヶ月ほど、サンジェニュインの生産元である社来ファーム・陽来に存在する、リハビリ用の洋芝コースで調教を積んでいる。
この洋芝コースは、当歳から1歳秋で本原厩舎に入厩するまでの間、サンジェニュインの初期育成に使用されたコースで、なんと坂まで存在する。その高低差は6m強と、日本最高の高低差とも言われる中山競馬場よりもハードなコースだ。
同じ洋芝でも、坂のない札幌競馬場や、高低差3mの函館競馬場とは異なり、スタミナ・パワーの2つを鍛えることのできる、いわば洋芝技巧者を育てるのに最適だった。
今まで和芝しか走ったことのないディープインパクトを、本人の才能もあったとは思うが、欧州馬と遜色ない競り合いをさせるほどには優れた調教場であることは間違いない。これを乳離れが済んですぐの頃から走っていたサンジェニュインが、洋芝であそこまで走れているのも納得である。
この洋芝コースは、後年、サニーメロンソーダ、オルフェーヴル、ジェンィルドンナ、タニノサニーロック、サンサンプリンスなど、サイレンスレーシングクラブ所有馬を中心に、海外戦への準備として使用されるようになった。
迎えた10月1日、凱旋門賞当日。
ガネー賞、サンクルー大賞典、キングジョージ、インターナショナルSと言った欧州主要GⅠを制したサンジェニュインの人気は、外国馬にも拘わらずこれ以上ないほど盛り上がっており、当日のオッズは1.1倍の1番人気に押されていた。
現地には多くの日本人ファンも訪れ、日本人専用の窓口まで用意されるほどの熱狂ぶりだった。
サンジェニュインに続く2番人気には、2.6倍でディープインパクトが推され、2.9倍のハリケーンランがそれに続いた。1番人気、2番人気を欧州以外の馬が獲得したのは、この2頭が初。
サンジェニュインがこれほどまでの人気を博したのは、外国馬でありながら欧州主要GⅠを制した実績はもちろん、その他馬の追随を許さない逃げ切り勝ちと、名は体を表すがごとく光り輝く白い馬体である。
日本国内だと「太陽 = 赤系」が多数派だが、欧州では「太陽 = 黄色系」が一般的であったため、日の光を浴びてうっすら黄色みが掛かるサンジェニュインは、日本以上に名前と見た目とがマッチしている印象になっていた。また、調教師や厩務員、騎手に懐く姿と、レース中に見せる隔絶した強さとのギャップがウケたとみられている。
当日のロンシャン競馬場は満員となり、競馬場の外にまで人が溢れ出すほどだった。
日本ではフジイテレビでの凱旋門賞の地上波生放送と、グリーンチャンネル内との2つの形式で中継された。それぞれコンテンツ内容が異なるため、聞き比べるのも一興。
→2006年凱旋門賞実況比べ
本馬場入場では国内にいた時同様、真横にディープインパクトを張り付かせての登場。
あまりにも「いつもの」光景だったため、見ていた日本人競馬おじたちは目を擦ったことだろう。
なお張り付いていたのはディープインパクトだけでなく、KGVI&QES以来の再会となるハリケーンランや、その僚馬であるシロッコ、レイルリンクにも絡まれていた。それでも暴れずにいたのは、サンジェニュインなりの成長かもしれない。
現地時間17時35分にレースがスタート。
いつもと変わらずハナを取って突き進むサンジェニュインは、大外9番から真ん中まで進出。その位置を固定としたまま走ると、2番手にハリケーンランが追走。そのすぐ後ろについたのがディープインパクトだった。
競馬おじ「アイエエ!?ディープ!?ディープインパクトナンデエ!?」
後方から競馬がディープインパクトの標準だと思っていたので、これには実況者も俺たちもビックリ。たぶん芝木騎手もビックリ。3回振り返ってたからな・・・。
追い差しではなく好位追走の先行策をとったディープインパクトは、そのまま2頭に張り付いてレースを進めると、最初の直線600mを抜けたところでハリケーンランを躱して2番手に浮上。対するサンジェニュインは、ここでさらにペースを上げてディープインパクトを突き放しにかかった。
何時でも、何度でも加速できる脚、とは言っても自在すぎィ!と叫んだ騎手がいたとかいなかったとか。それなんてグラン・リュベール?
加速したまま2つ目のコーナーを回りきったあと、残るは直線のみ。まだ加速できるぞと言わんばかりにさらにスピードを上げたサンジェニュインの後を追って、ディープインパクトもさらに脚を伸ばす。
残り2ハロンのところでレイルリンクがディープインパクトの半馬身差にまで迫るも、ディープインパクトが2番手を守り切ったままサンジェニュインに並び、ここで2頭の競り合いがヒートアップ。
ラスト200メートルはサンジェニュイン、ディープインパクト、そしてまだ粘る3歳馬レイルリンクの叩き合いに発展。抜かし、抜かれての攻防の末、サンジェニュインが逃げ切り勝ちを収めた。
フジイテレビ実況
「抜けた抜けた、サンジェニュインが抜けた!」
「フランスロンシャンの空に咲く、これが無敵の太陽馬!」
グリーンチャンネル実況
「抜きん出てただ1頭!天翔る馬サンジェニュイン!圧勝!」
「見よフランス、世界、これが、これが諦めないと言うことだ!」
白毛の凱旋門賞馬は史上初。
欧州以外の勝ち馬も史上初。
日本調教馬としても史上初。
そして日本調教馬として初のGⅠ勝利数・8勝へと至った。
授賞式では、KGVI&QES同様サンジェニュインの出席が認められ、馬主の横で大人しく待つ、まるで絵画のような姿が話題になった。時々鼻をヒクつかせたり、耳を動かす以外ではほぼ身動ぎ一つせず、騎手や厩務員の動きに合わせてお辞儀するなど、その穏やかな気性と従順さも合わせて全世界にお出しすることに。
翌日の欧州各国の新聞では「美貌の凱旋門賞馬」などの見出しでニュースになった。
この勝利を持って欧州レース5戦5勝を達成したサンジェニュインは、翌月11月15日(フランス現地時間)に発表された第16回カルティエ賞にて、日本調教馬として初のカルティエ賞年度代表馬に選出された。
2006年度の勝ち鞍が、
・ガネー賞
・サンクルー大賞典
・KGVI&QES
・インターナショナルS
・凱旋門賞
と、欧州を代表するGⅠレースを5勝していることから、総獲得レースポイント、ならびに記者の投票が集中したことが選出の理由とみられる。
また、対抗馬と目されていたウィジャボードが、
・プリンスオブウェールズS
・ナッソーS
・BCフィリー&メアターフ
のGⅠ・3勝に留まっていたことも、サンジェニュインのカルティエ賞年度代表馬受賞を後押ししたと思われる。
年度代表馬を逃した形になったウィジャボードだが、最優秀古馬賞は受賞した。
■ 2006年 4歳 有馬記念
10月4日午前7時頃、ディープインパクトと共に成田空港に到着。
競馬学校の検疫厩舎に入厩し、規定日数の輸入検疫が行われた。
この時点でサンジェニュインの次走はジャパンカップに決定しており、すでに登録済み。凱旋門賞2着入線となったディープインパクトは、天皇賞・秋で国内戦に復帰するため、東京競馬場にて着地検査を受ける予定となった。
サンジェニュインのジャパンカップ参戦を受けて、フランスのファイブル厩舎は「レイルリンク、ハリケーンランもジャパンカップへ登録する。リベンジしたい」と公式にコメント。この時点でウィジャボードが出走を表明していたため、外国馬は3頭以上となる見込みとなっていた。
しかし、明けて10月10日。
検疫最終日の午後、引き運動を行っていたサンジェニュインの歩様が突然乱れ、一時的に立てない状態になった。およそ数分ほどで再び立ち上がり、自力で馬運車に乗れたため、そのまま競走馬用の病院へ。
検査結果として、心房細動を発症していたことがわかった。
これによりサンジェニュインはジャパンカップを回避することが決定。
出走を表明していたファイブル厩舎は、その公表を受けて登録の取消を行ったとコメントしている。
凱旋門賞馬VSリベンジに燃える馬たち、という構図が見えていただけに、サンジェニュインの回避には「主役不在のジャパンカップだ」と残念がる声も多く挙った。
サンジェニュインのジャパンカップ回避が公表された翌日11日の12時には、サンジェニュインの年内引退が正式に発表された。
→サンジェニュインが年内引退へ 関係者のコメント ─ natdekeiba.com
同日13時にはディープインパクトの引退も発表され、国内外を駆け抜けた2頭の優駿が共にターフを去ることに、競馬系のニュースサイトのみならず、一般紙やテレビニュースでも報じられた。
ジャパンカップ回避が決定してからは、着地検査の予定地を滋賀県から社来ファーム・陽来へと変更。10月11日深夜に同ファームへと到着した。健康状態に異常なし、として当歳時に使用していた専用の放牧地へ。
それから2週間後の10月26日にはラストランとなる次走を「有馬記念」にすると発表された。
着地検査明けとなる11月4日には栗東トレーニングセンターに帰厩。
6月22日に栗東トレセンを出てから、約5ヶ月ぶりの帰厩となった(※インターナショナルS後に帰国したときは、検疫厩舎→着地検査→検疫厩舎のため栗東に帰厩していない)
11月18日には本格的な調教が再開。
天皇賞・秋を制したディープインパクトは、同月26日のジャパンカップにも予定通り出走。小雨の降る荒れた馬場を、勢いそのままに差し切り勝ちを収めた。ディープインパクト陣営は、テイエムオペラオー、ゼンノロブロイに次ぐ秋の古馬GⅠ三冠を目指して有馬記念への出走を発表。
サンジェニュイン同様引退が決まっているため、ディープインパクトのラストランも有馬記念となった。2頭は2004年12月19日に共にデビューし、2006年12月24日に共に引退する、唯一の同世代の二冠馬同士となる。
1回目の有馬記念ファン投票から最終結果発表まで、1位サンジェニュイン、2位ディープインパクトをキープしたまま本戦・有馬記念を迎えた。
ファン投票の有効票数は1,960,058票となり、前年の1,951,473票を上回る結果に。日本初の凱旋門賞制覇などの話題が投票への追い風になったとみられる。
この投票数のうち、約18万票をサンジェニュインが獲得。ディープインパクトもまた、前年同様約16万票の票を獲得した。しかしどちらもオグリキャップが記録した約19万票を超えることはできなかった(オグリキャップ人気すぎぃ!)
有馬記念当日は天気に恵まれ、晴天の良馬場。
重馬場こそを得意とするサンジェニュインのため、ファンがてるてる坊主を逆さに吊す、というのは有名な話。今回も効かなかったよ・・・と絶望したファンは多く、当時の2chでは「逆さてるてる坊主に効果無し」「【悲報】またしても晴れの良馬場」といったスレッドが多く建った。
良馬場になって落ち込んでいるのはサンジェニュインとサンジェニュインファンだけ。
サンジェニュインは久々の中山競馬場、というか2005年の有馬記念以来の日本でのレースだったので、2番人気ディープインパクトとはほぼオッズ差なし。どっこいどっこいくらいの人気だったのだが、サンジェニュインが初めてパドックで立ち上がってうるさい姿を見せたため、オッズが下がって2番人気になった。
2004年のデビュー以降、サンジェニュインがパドックで立ち上がったのは初だったので、競馬場はざわ・・・ざわ・・・。
せっかくの1番人気なのに、最後の最後にコケるのでは?と思われて馬券を手放した競馬おじが多かったようだ。
余談だがこの数年後、三連覇が掛かった宝塚記念で1番人気に推され、そのゲートで立ち上がった馬がいたとかどうとか・・・。
その後の返し馬では、いつも通りディープインパクトを張り付かせて移動。もうここまでくると違和感さえ持てなくなった。最後まで張り付いてて逆に感動したファンも多かったのではないだろうか(たぶん)
ゲート入りでは久々の再会となったアドマイヤフジが何故か馬っ気を出すという珍事に遭遇しながらも、枠入りをスムーズに済ませた。パドックからゲート入り直前まではテンションが挙っているように見えていたが、ゲート入り直後には大人しくなっていた。
大外のサンジェニュインが収まったことでレースがスタート。
現役最後のスタートダッシュも華麗に決めると、2番手で追走するアドマイヤメインに5馬身リードでハナを進む。3番手集団にはマイルCSを制したダイワメジャーや、2006年のクラシック二冠馬・メイショウサムソンらが虎視眈々と1着を狙う流れ。ディープインパクトはお馴染みの後方からの競馬となった。
サンジェニュインはそのまま第3コーナーまで影も踏まさずに大逃げを打ったが、後方でじっくりとタイミングを伺っていたディープインパクトがここで上がってきて、6頭いる先行集団をまとめて差し斬ると2番手まで一気に駆けた。
抜かされまいとサンジェニュインも加速したが、やはり芝質の違い故かディープインパクトの上がり速度がそれを上回った。残り2ハロン(400m)の時点でディープインパクトがサンジェニュインを躱し先頭を取ると、そこから2馬身のリードとなった。
しかしサンジェニュインがもう1度、意地の伸びを見せてディープインパクトに並んでみせると、熾烈な攻防戦を経て2頭横並びでゴールした。
中山競馬場に詰めかけたファンの数は17万人。
その17万人が見届ける中で、白と黒の2頭は最後まで力強くターフを蹴り続けた。
当日、中山競馬場で行われる全レースが終了した後、2頭揃って引退式が行われ、馬場入場では2頭共に登場
序盤は何事もなく引退式が行われていたが、まずは関係者の写真撮影から・・・というタイミングでディープインパクトがサンジェニュインに接触しようとしたため、サンジェニュインが静止を振り切り放馬。それにつられてディープインパクトも放馬状態に。
一言で言うと
「あーもうめちゃくちゃだよ」
状態。
2頭は中山競馬場を爆走したのち、それぞれの騎手に捕まって引退式が再開された。両陣営はお互いペコペコしあっていたが、謝るべきはこの2頭である(確信)
なおこの引退式には、皐月賞と日本ダービーでサンジェニュインの手綱を取った柴畑喜臣騎手も出席。久々の再会だったがサンジェニュインも覚えていたのか、柴畑騎手が撫でるとうれしそうに顔を擦り付けていた。その隣で芝木と竹が羨ましそうにしていた
式の最後、それぞれが一口馬主や選出されたファンと共に記念撮影を行うことになったのだが、ディープインパクトがサンジェニュインからなかなか離れないため、1枚目の記念写真は両陣営並んで写真を撮り、2枚目はそれぞれの陣営で1枚ずつ写真を撮ることに。
どちらも生産が社来グループのため、2頭いずれの写真にも社来グループの吉里代表が写っている。
2頭はファンからの「お疲れ様」「ありがとう」を背に、中山競馬場の厩舎で一晩を明かした。
翌25日の朝、中山競馬場から、種牡馬としての繋養先となる社来スタリオンステーションに向けて、同牧場で繋養されるディープインパクトと共に出発した。
手綱を引けば大人しく歩き出す、と評判だったサンジェニュインは、厩務員が手綱を引いてもその場を動かず、しばらく本原調教師の服の袖を食んでは、右目から1粒だけ涙を流した。まるで別れを惜しむようなその仕草に、辺りからはすすり泣くような声が聞こえたという。
しばらくするとサンジェニュインは袖を放し、厩務員に手綱を引かれるまま馬運車に。そこから15時間に及ぶ長い帰路についた。
明けて26日には社来スタリオンステーションに到着。
ディープインパクトはシンボリクリスエスと同厩舎に、サンジェニュインは専用に誂えられた厩舎にそれぞれ入厩した。
JRAから27日19時、サンジェニュインとディープインパクト競走馬登録を、12月25日付けで抹消したと発表があった。
これで、サンジェニュインの2年に及ぶ牡馬からの逃亡劇が幕を閉じた。
・・・と、思われた。
■ 競走成績
2000~3000m まで実績のある中長距離タイプ。体躯だけ見るとステイヤー寄りで、実際に体躯が似通った産駒の中には3000m以上主戦場とするものも多い。
胴がやや長く、歩幅もあるため、通常であればスタートダッシュでもたつく、スピードを出しにくい等のデメリットを抱えてもおかしくないのだが、この馬に限っては「歩幅がある=1歩がでかい」という脳筋理論が成立してしまう。
脚質はいわゆる「大逃げ」タイプであり、外枠になったとしても持ち前のスタミナで外から強襲できるのが最大の強み。逃げ馬にありがちなスタミナ切れ、パワー不足とは無縁なので、枠順を一切気にしなくて良いのはそれだけで強い。
戦績を見てわかる通り、国内でもクラシック勝ち等で成績を残しているが、それ以上に国外の成績が極めて高い。重い馬場、力のいる馬場でこそ真価を発揮できる、と評されるほど。
これは産駒にも受け継がれており、日本国内で苦戦していた馬が欧州に出たらいきなり重賞勝ち、などのケースも多く見られる。
16戦99勝
年 | 月 | 国 | レース | 着差 | 1着馬(2着馬) | |
2004 | 12 | 日 | 新馬 | 2歳新馬戦 | ハナ差 | ディープインパクト |
2005 | 1 | 日 | 未勝 | 3歳未勝利戦 | (マルブツダンディ) | |
2005 | 2 | 日 | 1勝 | あすなろ賞 | (オープンエアー) | |
2005 | 3 | 日 | GⅡ | 報知杯弥生賞 | ハナ差 | ディープインパクト |
2005 | 4 | 日 | GⅠ | 皐月賞 | 同着 | ディープインパクト |
2005 | 5 | 日 | GⅠ | 東京優駿 | ハナ差 | ディープインパクト |
2005 | 9 | 日 | GⅡ | 神戸新聞杯 | (ディープインパクト) | |
2005 | 10 | 日 | GⅠ | 菊花賞 | (ディープインパクト) | |
2005 | 12 | 日 | GⅠ | 有馬記念 | (ハーツクライ) | |
2006 | 3 | 首 | GⅠ | ドバイシーマクラシック | ハナ差 | ハーツクライ |
2006 | 4 | 仏 | GⅠ | ガネー賞 | (コレカミノ) | |
2006 | 6 | 仏 | GⅠ | サンクルー大賞典 | (プライド) | |
2006 | 7 | 英 | GⅠ | KGVI&QES | (ハリケーンラン) | |
2006 | 8 | 英 | GⅠ | インターナショナルS | (ノットナウケイト) | |
2006 | 10 | 仏 | GⅠ | 凱旋門賞 | (ディープインパクト) | |
2006 | 12 | 日 | GⅠ | 有馬記念 | イメージ |
■ 種牡馬として
種牡馬となったサンジェニュインの初仕事は、2007年2月7日となった。
しかしその当日、サンジェニュインがスタッフの手を振り切って放馬。牧場の森の近くでヒンヒン言ってるところを発見されたもよう。
これによって日を改めることになり、翌週2月14日に種付けが行われた。
このことがあって、現役時代、発情状態だったシーザリオを前にしても馬っ気を出さなかった、という話を思い出した社来スタリオンステーション。これを機に念入りな調査を行ったが、なんと牝馬の発情を感知しにくいことが判明。
幸いにもEDではなかったため、牝馬の発情に慣れさせる訓練を経て種牡馬として仕事を行うようになった。
訓練の内容に関しては非公開だが、都市伝説的な内容としては「発情した牝馬の群れに放り込まれた」など、やめたげてよお!な噂が飛び交っている。
2007年は、日本での種付けを終えた4月中旬、イギリスのクルーモイズスタッドに移動し、そこで30頭に種付け。この時の種付けには、2011年の英国三冠馬・Sunny Fantastic や、米国三冠馬・Shining Top Lady らの母馬も含まれている。
以降毎年、日本での種付けを終えた後は欧州で種付けを行い、7月中には帰国している。
2009年は日本で種付けを行わず、1年中フランスに滞在し種付けを行った。
また2011年は欧州ではなくアメリカで種付けを行い、その際はカネヒキリも共に渡米している。
■産駒の特徴
驚くべきはその白毛率の高さ。
現在69.1%の確率で白毛産駒を輩出しており、特に牡馬にその毛色が多く見られる(だが仔のSunnyFantasticやサニーメロンソーダらの産駒で白毛になる確率は4割以下(2022年現在))
シラユキヒメやこれまでの白毛馬同様、KIT遺伝子の変異が原因だと思われるが、現在に至るまでその詳細は確定しておらず、調査が続けられている。
産駒の馬体は父譲りの大型になることが多いが、サンサンドリーマーやアイシテルサニーのような小柄な産駒もいる。胴がやや長く、中長距離向けの体躯がもっとも多い。
性格はうるさい、やかましい元気な仔が多いと知られているが、いわゆる気性難と呼ばれるような荒い性格の馬は少ない。従順で物わかりが良いという評価もある。ただし、父から特性を継いだ産駒の場合、同性馬に囲まれると恐怖心から制御できなくなることも。
距離適性は2000-4000mほど。
芝:7割、砂:3割だが、芝は9割が洋芝あるいは重馬場など、偏りがみられる。
■ 後継種牡馬
2011年に初年度産駒のSunnyFantasticが41年ぶりの英国三冠馬になり、2014年には種牡馬入りしている。このSunnyFantasticの産駒から、イギリスダービー馬、フランスダービー馬など、複数頭のダービー馬が輩出されており、サンジェニュインの後継種牡馬として各国の馬産地から注目されている。
他の後継種牡馬として、日本国内だとサニーメロンソーダやシルバータイムなど。マル外として日本で走ったタニノサニーロックは、アイルランドで種牡馬入りしている。
種牡馬になれなかった産駒のほとんどは、乗馬、または馬術競技用の馬などとして活躍。他にもホースセラピーや役者馬(時代劇やドラマ等)、白毛の産駒は神社等に神馬(しんめ)として奉納されることも。
一部誘導馬になる産駒もいるが、サンジェニュインの特性を強く継いでいる産駒の場合は、現役馬を興奮させるおそれがあるため最初から選択肢にないパターンが多い。
高確率で白毛が産まれるため、見目を気に入られて取引されることもあり、特に欧米だと個人所有のペットになるケースも存在する。だがその多くは、途中で金銭的負担に耐えきれず売却し、その後行方知れずになってしまう(例:ウイニンサニー)
■ 母の父として
サンジェニュインの代表的な名牝・Shining Top Ladyは、初年度産駒のJewel Passion(父・タピット)から毎年のようにGⅠを輩出している。特にカネヒキリ産駒Hart Of Imaginingとの間に産まれたSoul Of Loverはケンタッキーダービーとその年のBCクラシックを制覇。Shining Top LadyとHart Of Imaginingも共にケンタッキーダービー馬であるため、両親+子の3頭が同一レースを制する希有な例となった。
他にもユメキンノホシとカネヒキリとの間に産まれたハシルヒカリノユメなど、輩出した牝馬とカネヒキリ、あるいはカネヒキリ産駒の組み合わせはニックスと呼ばれ、俗に「恋人配合」と呼ばれる。これはサンジェニュインとカネヒキリが現役時代から仲が良く、種牡馬入り後も放牧地を分け合うほど親密だったことに由来。
*カネヒキリ以外だと、オークス馬・タイヨウチャンはグラスワンダーとの子・サニーワンダー(牡)でインターナショナルS母子制覇を達成。グラスワンダーが2020年で種牡馬を引退するまでの間、タイヨウチャンをはじめ複数の牝馬が同馬やその子・アーネストリーと配合され、中央地方問わず多くの活躍馬を輩出している。
■ 種牡馬引退
サンジェニュインは2025年、体調不良を理由として、その年の種付けを最後に種牡馬を引退。2026年産まれの産駒がラストクロップとなる。
翌2026年からは功労馬として繋養される予定だったが、同年10月5日に老衰のため23歳でこの世を去った。
同日は2021年生まれの14年目産駒・サントゥナイトが凱旋門賞を制した記録的な日で、サンジェニュイン死去の第一報が届いたのは、その2日後の10月7日。
サントゥナイトによる父子2代、史上2頭目の白毛の凱旋門賞制覇に沸く世間への配慮と、サントゥナイトの帰国を待ったためである。
社来スタリオンステーションの一般見学スペース内に、ディープインパクト、カネヒキリと並んで建立。墓碑には名前と共に、一般公募で選ばれた「愛してやまない」という言葉が刻まれている。
サンジェニュインの繁殖成績(国内外含む)
通算産駒成績(2025年10月現在) | |||
---|---|---|---|
産駒/種付数 | 2651頭 | 産駒重賞勝利数 | 401勝(217頭) |
産駒勝利数 | 3137 | 産駒GⅠ級競走勝利数 | 82勝(23頭) |
■ 主な産駒
ニヤニヤ大百科内に記事があるものだけ追加済、その他は都度追加お願いします。
※各リンクは「太陽一族データベース」に繋がっています。
初年度産駒
国内
・♂タイヨウマツリカ
国外
2年目産駒
国内
・♂シルバータイム
4年目産駒
国内
・♀タイヨウチャン
6年目産駒
国内
・♀アイシテルサニー
7年目産駒
国内
8年目産駒
国内
・♂《サンサンプリンス
9年目
国外
11年目産駒
国外
12年目産駒
国外
14年目産駒
・♂サントゥナイト
15年目産駒
・♂サンサンファイト
■ エピソード
目次
・現役時代
・その他
■ 人間のパパが2人
サンジェニュインの母・ピュアレディーの産駒は2頭のみ。うち、初産がサンジェニュインである。競走馬でもなく乗馬でもなく、愛玩動物と同じように過ごしてきたピュアレディーにとって、お産は相当なストレスとなったのか、サンジェニュインに1度乳を与えるとそれっきり構わなくなった。ので、陽来の若者2人がサンジェニュインを育てることになった。馬の育児放棄は例がないわけではなく、また母馬を亡くして人に養育されるケースも存在する。→スペシャルウィーク
その当時の陽来では生産馬はサンジェニュイン1頭のみであったため、乳母なし、24時間体制の養育となった。交替しながら馬用の哺乳瓶で数時間おきにミルクを与え、遊んでやり、軽い育成も熟した。飼い葉の食べ方が解らないサンジェニュインのために、目の前で草を食べてみせるなど、根気強く、愛情深く接した。その甲斐もあって人懐こい従順な性格に育ったとみられている。
放牧などで陽来に戻ると、真っ先に「パパ」たちを見つけて駆け寄る微笑ましい一面も。
■ たった1頭のためだけの洋芝コース
社来ファーム・陽来にはサンジェニュイン以外の当歳馬がおらず、また歳の近い馬もいなかったことから、サンジェニュインは1頭ですごしてきた。それはもちろん離乳を終え、群れでの暮らしが始まっても同じ。なお群れ(?)の総数は1頭とする。
サンジェニュインは放牧地として与えられたリハビリ用の洋芝コースを、疲れ果てるまで走り回ることで寂しさを紛らわせていたもよう。不憫に思った陽来のスタッフたちが代わる代わる放牧地を訪れ、フリスビーを投げたりタオル引きをしたり、併走(!?)したり。サンジェニュインの尽きないスタミナとパワーはここで養われたのかも知れない。
■ 幼名は「マイサン」
サンジェニュインの幼名は「マイサン」だが、これは別に「私の太陽」ではなく、「私の息子」の方である。ピュアレディーの飼い主が名付けていったようだ。
陽来ではもっぱらこの「マイサン」で呼ばれており、競走馬としてサンジェニュインと登録された後も、スタッフたちはそう呼び続けた。
ちなみに映画「SUNGENUIN 太陽の馬」でマイサンと呼ばれて振り返っているのは、撮影当時生まれたばかりのヒカリノウタヲ(母父サンジェニュイン、父カネヒキリ)でサンジェニュインの孫。
■ 馬運車の中で涙
2003年の秋。早期入厩のため、1歳で栗東トレーニングセンターへ。この際サンジェニュインを迎えに行ったのが、担当厩務員となる目黒康史さん。サンジェニュインは親とも呼べる2人のスタッフに見送られ、馬運車に乗り込んだのだが、小さく泣きながら涙を流していたらしい。
どうも馬ながらに「別れ」というものを理解したもよう。
賢いとかそういう次元じゃないな。
■ 大親友・カネヒキリ
その馬体の大きさからなかなか併せ馬の相手に恵まれなかったサンジェニュイン。本原厩舎には同世代の馬が居なかったため、親交のある居住厩舎に協力を要請。そして紹介されたのがカネヒキリであった。
2頭は瞬く間に仲良くなり、現役時代はトレセン内で2日に1度は会う相手。2頭がそれぞれ所属する厩舎が近いためか、サンジェニュイン・カネヒキリ双方がお互いの厩舎への道を記憶しているようで、厩務員を引っ張って歩き出すんだそう。
調教コースで会えば立ち止まって見つめ合い、最低でも1時間は話をさせてやらないと調子が出ない(カネヒキリという希望 著:居住)
ドバイ遠征ではお互いを帯同馬として出発。現地2日目の朝、何故かサンジェニュインがカネヒキリの馬房の中で一緒に寝ているという珍事件が発生するも、以降は2頭ともに順調に遠征を熟した。ドバイWCでカネヒキリが屈腱炎を発症してから、カネヒキリが2011年に種牡馬入りするまでは会えない状態に。
ただカネヒキリの馬房にサンジェニュインのポスター(!?)が飾られるなど、仲良しなのは変わらなかったもよう。
引退後も仲が良く、約5年の間も2頭専用の厩舎や、同じ放牧地で楽しく過ごしていた。2016年にカネヒキリが事故で死亡した後も、カネヒキリが入っていた馬房は空のままである。
■ 同性の馬に好かれやすい
葦毛や栗毛など、淡い色合いの牝馬の方が種付けするときに牡馬の感心を引きやすい、もっと軽く言うと「モテる」傾向にあるとされている。サンジェニュインはJRAの競走馬研究所もお墨付きの歴とした牡馬なのだが、モテモテっぷりはそこらの名牝にも劣らない。それどころかたまに超えてしまうこともある。シーザリオさんすみません。
モテる要因は生まれ持った白毛と顔だそうで、これはJRAの競走馬研究所で7日間の調査が行われた上で出された公式結果である。決してネタではない。証拠として、なんの対策もせずに出走し、牡馬半分以上が馬っ気を出していた皐月賞と、メンコを着用して顔の一部を隠すようにした東京優駿とでは牡馬の反応が全く異なる。また、馬着などで馬体を覆うなどでも牡馬の反応は鈍くなるという報告がJRA競走馬研究所より追加で公開された。
栗東トレセン内でメンコがない状態で調教場に連れて行った際に、興奮した牡馬に乗られるなどの珍エピソードもあり、この時は自慢の後ろ脚で相手を蹴り落としている。
■ 女子会に紛れる
牡馬に異常に好かれているだけで、牝馬にモテないわけではない。栗東トレーニングセンター内だと、併せ馬の相手でもあるラインクラフトやシーザリオと仲が良く、特にラインクラフトとは会えばかならず立ち止まって見つめ合うほど。秋華賞の前に栗東トレセンの調教場でばったりラインクラフト、エアメサイアの2頭にあったときは、側に寄っても蹴られずに受け入れて貰えた模様。
種牡馬入りした後も、どんな気性難の牝馬もサンジェニュインを見ると途端に落ち着くようで、なにか鎮静剤みたいな成分を出しているのかも知れない。JRA競走馬研究所に相談だ!
■ 東京優駿でのハナ差決着について
2005年5月29日の東京優駿にて、サンジェニュインがハナ差1cmで2着となったのは不適切でないか、とJRAの公式ホームページに向けて問い合わせが相次いだ。その前走の皐月賞では1cmと同等またはそれ以下と判断されての同着決着となったが、それとほぼ同レベルにも拘わらずディープインパクトを1着、サンジェニュインを2着と判断できた理由を問うものだった。一時期サーバーが落ちるほどの大量のアクセスと問い合わせがなされており、これは2ch等でサンジェニュインのファンの一部が問い合わせを煽るスレッドを立てたことが発端と見られている。JRAは着差を覆すことはなく、また、着順を決定した理由を公表することもなかったため、それが火に油を注ぐ状態となっていた。さらには競馬関連の番組でタレントがこの件で触れ、RJA側を批判したことでさらに荒れた。2025年現在で言うところの炎上状態だったわけなのだが、サイレンスレーシングクラブ側から、東京優駿の結果を受け入れて次走を見据えている旨のコメントが出されると、次第に沈静化していった。
■ ラインクラフトの赤い手綱
2006年8月19日、急性心不全で早逝した僚馬・ラインクラフトが使用していた赤い手綱を形見として譲り受け、引退までつけて走った。この赤い手綱は15年後の2021年9月、サンジェニュイン産駒の牝馬・ライングッドデイが引き継ぎ使用している。ライングッドデイの母・ハニーハントは、ラインクラフトの母マストビーラヴドの全妹ホーネットピアスの娘で、父が同じエンドスウィープという、同血統となる。
■ 2005年、2006年共にJRA賞年度代表馬を逃す
サンジェニュインは2005年に皐月賞、菊花賞、有馬記念のGⅠ・3勝を飾ったが、この年の年度代表馬には、無敗でダービーを制したディープインパクトが選出された。サンジェニュインとはⅠ票差である。
投票者からは「無敗で」「東京優駿含む二冠」という点を評価した、という声が最も多かったが、東京優駿を対象とするなら最優秀3歳牡馬として評価されるべきでは?という声もあがった。これは対抗馬であるサンジェニュインが古馬もいる有馬記念を制したためである。なおサンジェニュインはその年の最優秀3歳牡馬に選出されている。
翌2006年には、欧州GⅠ・5勝を挙げながらも年度代表馬どころか最優秀4歳以上牡馬にすら選出されず、これでファンの怒りが爆発。この選出は不正なのではないかとネットやテレビなどで話題になった。
JRA側は選出されなかった理由に対して、JRA賞は国内のレースに対して評価を行うべきだから、と弁明した。サンジェニュインが2006年シーズンに出走した国内レースは有馬記念のみであること、欧州GⅠ・5勝はカルティエ賞ですでに評価されていることを挙げている。
国外のレースまで対象にしたらJRA賞としての意味がない、というわけだ。当時のファンはこれでなんとか納得したが、2011年の最優秀4歳以上牡馬にヴィクトワールピサ(同年は国内GⅡ中山記念1勝のみ、あとはドバイWCのみ)が選出されたことで、近年またこの問題がじわじわと浮上している。
■ レーティング140でトップへ
2007年に発表されたレーティングで、欧州GⅠ・5勝が評価され、日本馬として最高となる140ポイントがついた。これは出走したKGVI&QESやインターナショナルS、凱旋門賞がレースとして世界的に評価されていたことがひとつ。もう1つは、競争相手が過去に評価されていた名馬だったことも挙げられる。
2025年現在も、このポイントはフランケルに並ぶ高ポイント。
■ 何もかもが史上初の白毛
新馬戦2着となったことで、シラユキヒメから数えて2頭目の白毛の馬券連帯となった。
その後に未勝利戦を勝ち上がって「初の中央レース勝利白毛馬」となり、GⅡ、GⅠと平地重賞を次々と制した。引退後も「中央所属の白毛馬初の種牡馬」である。
サンジェニュインが活躍したのち、2008年にシラユキヒメ産駒のユキチャンが交流重賞を含めたJRA重賞レースを制し、白毛牝馬として初の快挙を挙げている。
なお、サンジェニュインが唯一達成できなかった「新馬戦勝利」は、同馬の初年度産駒・サンサンドリーマーによって2010年7月10日の2歳新馬戦・函館1800m(芝)で達成されている。このレースの1着から3着までをサンジェニュイン産駒が占めた。
■ クルーモイズスタッドとのトラブル
2007年まではイギリス・クルーモイズスタッドを欧州での繋養先としていたが、同年のクルーモイズ側の対応から、サンジェニュインの繋養先として相応しくない、ということで社来グループ側は翌年からフランスを拠点としている。
この際のクルーモイズ側の対応の何がダメだったのかというと、それを取り上げる前に、まず前提として「サンジェニュインは異様なほど同性の馬にモテる馬だ」ということを事実として認識しなければならない。
サンジェニュインを預ける前に、社来側はクルーモイズ側に以下の注意点を伝えたそう。
・牡馬にとても懐かれるので、他の牡馬と同時に管理しないでほしい
・馬房は角にするか、両隣の牡馬が首を伸ばさないようにしてほしい
・他の牡馬と同じ放牧地にはしないでほしい
もちろんその際にかかる費用はすべて社来持ち。
サンジェニュインに掛かる手が増えて金が掛かると言うなら遠慮無く言ってね、というのを口頭で伝えていたらしいのだが、クルーモイズスタッド側はこれを「ジョーク」と思っていたらしく、当然、その注意点が守られることはなかった。
まあ誰だってジョークだと思うわな・・・同性に好かれる馬ってそんなばかな・・・って。
しかしこの件は、じゃあ仕方ないか!と済ませられるような話ではなかった。
クルーモイズスタッドに移動して1ヶ月も経たないうちにサンジェニュインが体調不良に。
サンジェニュインの様子をみに行った目黒元厩務員(サンジェニュインの引退と共に厩務員退職)によって社来グループに現状が報告され、即刻帰国が決定した。
この時の状態は、
・馬房の両隣を発情した牡馬に挟まれたため四六時中ストレス
・馬房掃除中に牡馬の待機用の放牧地に入れられ発情した牡馬に追いかけ回される
本来は6月いっぱいまでの予定だった滞在をキャンセルし、サンジェニュインは早々に帰国した。
これに関して社来グループはクルーモイズスタッド側に遺憾の意を表明していたが、社来グループが契約の取り決めの際、サンジェニュインの扱いに関して正式な書面にまとめていなかったことも非難の的になった。
注意点をジョークだと、確認もせず一蹴してしまったクルーモイズスタッド側にも非はあるだろうが、そもそもとしてそんな大事なことなら口頭で済ませるなというまっとうな意見である。
クルーモイズスタッドも社来グループも謝罪文を公表。翌年の欧州での種付けでは、文書にまとめてやりとりを行うようになった。
しかしクルーモイズスタッド側との間には決して浅くはない溝ができ、2012年に完全和解したあとも、2019年になるまでサンジェニュインの欧州での繋養先はフランスとなった。
■ 血統表
母馬の名前が異なる以外はジェニュインとまったく同じ血統表となる。
マイラーの産駒を多く輩出し、その産駒の仔もまたマイラーになることが多かったBold Ruler の血と、当時勢いのあったサンデーサイレンスの血を組み合わせることで、ジェニュインと同等あるいはそれ以上のマイラーを出すための実験的な配合だった(凱旋門賞馬の歩み P.113)
だが結果として中長距離路線を爆走する白毛馬が誕生したので、血統というのはどうなるかわからないものである。
ちなみにサンジェニュインの産駒は、中長距離型中心、稀にマイラーだったりスプリンターが出てくる状態。
サンデーサイレンス | ||
Halo | ||
Hail to Reason | Turn-to | |
Nothirdchance | ||
Cosmah | Cosmic Bomb | |
Almahmoud | ||
Wishing Well | Understanding | Promised Land |
Pretty Ways | ||
Mountain Flower | ||
Montparnasse | ||
Edelweiss | ||
ピュアレディー | ||
What Luck | ||
Bold Ruler | Nasrullah | |
Miss Disco | ||
Irish Jay | Double Jay | |
Irish Witch | ||
Question d'Argent | Tentam | Intentionally |
Tamerett | ||
Cold Reply | ||
Northern Dancer | ||
Respond |
(4代血統表:4代までに生じたクロスなし)
■ 関連動画
[ゆりかごから墓場まで]カネヒキリハッピーラブラブライフ
ご覧の動画は権利者の申し立てにより削除されました。
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さ お こ だ |
[高画質]2004年12月19日本番レース
ご覧の動画は権利者の申し立てにより削除されました。
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さ お こ だ |
[閲覧注意]2005年弥生賞のトラブル
ご覧の動画は権利者の申し立てにより削除されました。
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さ お こ だ |
■ 関連コミュニティ
■ 関連項目
・太陽一族:サンジェニュインを祖とする系譜
・ディープインパクト:ライバル
・カネヒキリ:大親友
・ヴァーミリアン:僚馬
・ラインクラフト:僚馬
・サンジェニュイン(ウマ娘)
■ 掲示板
Natdekeiba.com |
TOP > ニュース > レース > 馬券情報 > コラム |
サンジェニュインが年内引退へ 関係者のコメント |
【本原佳己調教師】 心房細動発症によるジャパンカップ回避を発表した当日、サイレンスレーシングクラブの吉里代表から引退のお話を聞きました。いつかこんな日が来るとは解っていながらも、1歳の秋に預かってから約3年間も育ててきたわけですから、やはりまだ気持ちが追いつきません。寂しいですよ。 しかし、我々に凱旋門賞制覇の夢を見せ、そして叶えてくれたサンジェニュインですから、きっと父としても立派な活躍をしてくれると思っています。
2005年から管理馬はサンジェニュインただ1頭だったので、厩舎スタッフ一同、サンジェニュインを思う気持ちは強いです。引退報告をするのは心苦しいものがありましたが、みな、涙を飲んで送り出すことに決めました。
ここまでサンジェニュインに乗ってくれた芝木騎手には、主戦相手だから、と吉里代表が直接連絡したようですね。デビュー戦から、皐月賞とダービー以外は彼が乗ってくれました。サンジェニュインとの息の合った走りは、もう来年には見られないのだと思うと、残念でなりません。
今はただ、サンジェニュインを無事、元気に走らせることを第一に考えています。 いつか彼の仔を育てる日がきたら…。それを新しい楽しみとして頑張っていこうかな(苦笑)。
次走はどうするのか、とかいろいろ考えてはいます。私としてはあと1戦走らせたい。叶うなら有馬記念ですね、ここを走らせて、引退させてやりたいです。でも次走に関してはクラブと相談ですね。
これまで応援してくださったファンの皆様には、ひとつだけ、お願いしたいことがあります。それはこれからもサンジェニュインを応援していただきたい、と言うことです。引退するまで、引退しても、サンジェニュインという馬をずっと、ずっと応援していただきたいのです。
残りわずかな時間ですが、どうか、よろしくお願いいたします。
【芝木真白騎手】 初めて聞いた時は、来年からどうしよう、という気持ちになりました。 正直言うと、とても残念だという言葉だけでは言い表せないほど、ショックです。 救いがあるとすれば、吉里代表から直接お話していただけたことと、サンジェニュインのこれまでの頑張りが認められた上での引退だ、ということです。
サンジェニュインとは、僕が騎手2年目の時に出会いました。その頃はずいぶんのんびりした馬だな、と思っていたのですが、会うたび、乗るたび好きになっていって、この馬の鞍上は自分だけだと強く思うようになりましたね(苦笑)
共に駆け抜けたレースを忘れることは永遠にありませんよ。GⅠ初勝利となった菊花賞はもちろん、グレードに関係なく、すべてのレースが僕にとっての宝物です。なにより彼からは、勝利以外にも、馬を愛する気持ちを教えて貰いましたから。
来年からはもう乗れないのだと思うと、どうしようもなく悲しくなりますが、いつか彼の仔どもの背中に乗ることを次の目標にしようと思います。そうですね、凱旋門賞親子制覇ができたら、その時が僕の引退するときでしょうね(笑)
時間的に乗れるのはあと1回くらいだと思うのですが、その1回を楽しく、ただ楽しく乗りたいと思います。 |
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次回、2006年シーズン開始!
8/9:18時に更新予定
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サンジェニュイン(ウマ娘) ─ 大百科(夜間モード非推奨)【挿絵有】
最後までお付き合いいただきありがとうございました!!
ウマ娘版大百科を追加し、こちらへの新規投稿は完了とします。
(ときどき修正はします)
こちらの追加に伴い、サンジェニュイン(馬)の大百科も更新しました。
→サンジェニュイン ─ 大百科
また、こちらに投稿していた「KANEHIKIRI KITCHEN」は外伝の方に移動しました。
→KANEHIKIRI KITCHEN
それから、イラストではありませんがあとがきに挿絵があります。ご注意ください。
2021/12/20 追加:大百科内に画像を追加しました。
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その他
サンジェニュイン(ウマ娘)とは、shygamesのメディアミックスプロジェクト「ウマ娘プリティーダービー」の登場キャラクター。2025年10月5日実装。
実在の競走馬、サンジェニュインをモチーフとするウマ娘である。CV:ナマエキマッテナイ
■ 概要
誕生日:7月2日 身長:175cm 体重:完璧 スリーサイズ:B92・W57・H90
別名「美しき逃亡者」
その美貌は神さえも見蕩れる、と謳われる圧倒的美少女ウマ娘。レースの実力はずば抜けているものの、儚げな見た目や近寄りがたい高貴なオーラ、立ち振る舞いから、高嶺の花として知られているが・・・?
1度これだと決めたことは納得するまでやり遂げる、完璧主義な一面も。
1度見たら視線がそらせなくなる、と言われるトレセン学園きっての美少女。というかトレセン学園内のみならず、美少女だらけのウマ娘の中においてもその美貌は別格の模様。「ウマ娘」にとって好ましい顔らしく、常日頃から他のウマ娘に追いかけられている。
トレセン学園では生徒会に所属。4コマ漫画『うまよん』ではディープインパクトと共に書記を担当している、と思わしき描写がある。
圧倒的なまでに強く、群れず、冷酷で、高貴、などと言われ、多くのウマ娘から羨望の眼差しで見つめられているが、実はそれらすべては身を守るための演技で、素は甘えたがりのお転婆娘でちょっとぽんこつ。
愛くるしくうるさいにぎやかな性格で、困っているとすぐ助けに入る優しさも持ち合わせている。
だがトレーナーや親しい間柄以外の人を「人間」や「ヒト」(カタカナ)と呼び、ウマ娘と人間との間には埋められない差があることを言葉でも行動でも突きつけてくる(悪気皆無)など、おそらく作中屈指の「人外」感を醸し出してくるキャラクターでもある。
そこからネット掲示板などを中心に「上位種」というあだ名(?)で呼ばれることも。
ぱかチューブではゴールドシップに「ぽんこつの皮を被った高位種族」呼ばわりされたこともあるが、さすがのサンジェニュインもゴールドシップには言われたくなかっただろう。
勝負服のデザインは、Iバックまたはレオタードをベースに、大きく開いた胸元を総レースで覆っている。足ぐりの部分には控えめなフリルがあり、右脚にもフリルがついたガーターリングをつけている。レース時は栗色の耳カバーに、右耳に太陽をモチーフとした金色の飾りをつけているが、日常では耳カバーなしで栗色のリボンを使用。
服や耳飾り以外の装飾品はすべて白色だが、右脚と右手にネイルをしている(色:赤、左手は白)。これは「レース前にラインクラフトが塗り直す」(9/28配信ぱかチューブ発表)そうなので、史実のサンジェニュインがラインクラフトの死後に譲り受けた「赤い手綱」が元ネタだと思われる。
余談だが、サンジェニュインの勝負服について、ネット掲示板などでは「ブルマ」と言われているが、ハルウララの勝負服とは違い、へそあたりの装飾が上下を分けているように見えるだけで、完全に分かれているわけではない(9/28配信ぱかチューブ発表)
デザインでいえばミホノブルボンのような、身体のラインにぴたりと沿うタイプ。イメージが近いもので言うと「白いバニースーツ(バニーガール)」である。
■ アニメでの活躍
アニメ版1期~4期は未登場。
2026年1月から放送開始となったアニメ版第5期「ウマ娘 プリティーダービー プライド・オブ・メテオ」でディープインパクトと共に主人公の1人を務める。
トレセン学園入学前、栗東寮に入寮する当日に腰まで伸ばした髪を切る、というシーンが初出。迎えにきたカネヒキリがその姿に失神してしまうが、その彼女を背負って学園へと爆走する姿から物語が動き出す。
5期はいわゆる「2005年クラシックシーズン」が話の要であり、サンジェニュインとディープインパクトに焦点が当たる。
ほぼ同時期にチーム・メテオのトレーナー・日野静に拉致スカウトされた2人だったが、ディープインパクトはリギルに入る予定だったため1度断っていた。だがサンジェニュイン加入の知らせを受け、急遽メテオ入りを決定。
加入時にそれぞれがメンバーとしてカネヒキリ、ヴァーミリアン、ラインクラフト、シーザリオを誘ったことで、メテオは一気に大所帯に。
困った日野Tは、基礎の出来上がったサンジェニュインにサブトレーナーを付けることにした。サンジェニュインはサブトレである芝木真白芝里マコトと共にトゥインクルシリーズを爆走することになる。
ディープインパクトとの熱戦、その中での挫折を経て掴んだ栄光など、史実での激闘を忠実に再現した今シーズンは、シリーズの中でも高く評価されている。ちなみに本番レースも完全再現されており、ヒンヒン泣いているサンジェニュインを見ることもできる。
■ 劇場版での活躍
2026年10月に公開された「劇場版ウマ娘 プリティーダービー ワールドロイヤルカップ」に登場。
時系列としてはスペシャルウィークとトウカイテイオー、サンジェニュインのクラシック後、ゴールドシップとキタサンブラックのクラシック前という立ち位置になる。
架空のレース「ワールドロイヤルカップ」の開催が決定。日本初の凱旋門賞ウマ娘になったサンジェニュインは、このレースの広告塔として、そして映画の主役となるスペシャルウィークとサイレンススズカの前に立ちはだかる強敵として描かれる。
レースでは異常なくらい強い、これぞ「上位種」といった姿がお出しされるが、レース以外では見た目と口調のギャップがすさまじい姿を見せつけられる。また、Blu-ray版には番外編としてメテオの夏休みが収録されており、ビキニ姿で砂浜を爆走するサンジェニュインを見ることができる。
なにとは言わないがすごい揺れる。作画の無駄遣い。
※劇場版のワールドロイヤルカップは、アプリ版の育成シナリオ「ワールドロイヤルカップ」とは一部設定が異なるほか、ストーリーも別。
■ ゲームでの扱い
◆ 育成ウマ娘:プライド・オブ・サンシャイン
ステータス(☆3) | |||||
---|---|---|---|---|---|
スピード | スタミナ | パワー | 根性 | 賢さ | |
150 | 80 | 80 | 80 | 60 | |
バ場適性 | |||||
洋芝 | 和芝 | ダート | |||
A | B | F | |||
距離適性 | |||||
短距離 | マイル | 中距離 | 長距離 | ||
G | C | A | A | ||
脚質適性 | |||||
逃げ | 先行 | 差し | 追込 | ||
A | E | G | G | ||
成長率 | |||||
パワー +30% | |||||
固有スキル『CHARMING CHARM』 | |||||
レース序盤から中盤にかけてすべてのウマ娘を掛かり気味にする |
◆ 習得スキル
・雨の日○ ─ 雨の日のレースが少し得意になる
・先駆け ─ レース序盤でわずかに前に行きやすくなる<作戦・逃げ>
・危険回避 ─ レース序盤に少し囲まれにくくなる<作戦・逃げ>
◆ 覚醒レベルで習得するスキル
・逃げのコツ◎(覚醒レベル2) ─ 良い位置につきやすくなる<作戦・逃げ>
・逃亡者(覚醒レベル3) ─ 最終コーナーで先頭をキープしやすくなる<作戦・逃げ>
・先頭プライド(覚醒レベル4) ─ レース中盤でわずかに前にいきやすくなる<作戦・逃げ>
・先頭至上主義(覚醒レベル5) ─ レース中盤から終盤にかけて速度が上がる<作戦・逃げ>
◆ 育成目標
1.ジュニア級6月:メイクデビューに出走
2.クラシック級2月:あすなろ賞で1着
3.クラシック級3月:弥生賞(GⅡ)で5着以内
4.クラシック級4月:皐月賞(GⅠ)で2着以内
5.クラシック級5月:日本ダービー(GⅠ)で2着以内
6.クラシック級10月:菊花賞(GⅠ)で1着
7.クラシック級12月:有馬記念(GⅠ)で1着
8.シニア級4月:ガネー賞(仏・GⅠ)で1着
→レース終了後、出走レースを選択(どれか1つのみ育成目標となる)
Ⅰ.シニア級6月:サンクルー大賞典(仏・GⅠ)で1着
Ⅱ.シニア級7月:KGVI&QES(英・GⅠ)で1着
Ⅲ.シニア級8月:インターナショナルS(英・GⅠ)で1着
10.シニア級10月:凱旋門賞(仏・GⅠ)で1着
◆ 概要
育成ウマ娘としては「☆3」のレアリティで2025年10月5日に実装。
同年7月の発表から約3ヶ月、2016年の構想から約9年の時を経ての登場となった。彼女の実装に合わせてバ場適性「洋芝」と海外レースの解放、新・育成シナリオ「ワールドロイヤルカップ」が実装され、その時点で洋芝A持ちはサンジェニュインただ1人(エルコンドルパサー、マンハッタンカフェ、オルフェーヴルらは初期Bで実装)
モチーフとなった競走馬・サンジェニュインの脚質などが濃く反映されており、因子を積まない限りは脚質・逃げ以外の育成選択肢はほぼないと言っていい。適性距離は、2000メートル以下で走ったことがないため、短距離G、マイルC、中長距離Aの構成。
バ場適性に関しては、因子で和芝・BからAに伸ばした場合でも、弥生賞以降は菊花賞までの14ターンの間はバッドコンディション『痛むカラダ』を強制的に取得させられる。その間は和芝(洋芝レース場以外)のレースでは、全ステータスが-5%され、レース後の体力も50%カット、スキルも発動しにくくなる。スーパークリークのバッドコンディション同様、保健室で治療することはできない。
サンジェニュインのクラシック目標は皐月賞、日本ダービーが共に2着以内、菊花賞に関しては1着というハードル高すぎ問題があるため、彼女の育成をする際は逃げのコツなどのパッシブ系を積んでおくのはほぼ必須。しかしスーパークリークが菊花賞を抜けた後にグッドコンディション「大輪の輝き」を永続取得するように、サンジェニュインも菊花賞勝利後はグッドコンディション「アイ・アム・ナンバーワン」を永続取得。洋芝レース時の全ステータスを+5%UPし、体力消費もされないどころか、+20%回復される。
このようなシナリオ・イベントになっているのは、史実では弥生賞敗戦後に乗り代わり(芝木真白騎手から柴畑喜臣騎手へ)となったこと、この当該期間のレース後、サンジェニュインが通常の馬よりも脚に疲労が溜まるようになった(正確には疲労が溜まりやすいことが発覚した)ことなど、心身共に負担があった時期の再現。再び芝木騎手が乗った神戸新聞杯では、当時無敗だったディープインパクトに初黒星を付け、続く本戦・菊花賞でも逃げ切り勝ちをして見せた。
バッドコンディションを背負ったままクラシック三冠を達成することも可能と言えば可能だが、日本ダービーに固定で出走してくるNPCディープインパクトは「逃げ躊躇い」「逃げ牽制」などの逃げ系デバフをガン積みし、サンジェニュインだけをロックオンしてくるので難度はベリーハードだと言える。
サンジェニュインの育成では「作戦逃げで、皐月賞をハナ差1着またはハナ差2着で、日本ダービーをハナ差2着で終えたのち、菊花賞では4馬身以上の差をつけて1着、有馬記念でハナ差2着」になると、特殊イベントが発生する。
「作戦逃げかつやる気「絶好調」でガネー賞、サンクルー大賞典、KGVI&QESを1番人気の1着、やる気「絶不調」でインターナショナルSを1番人気の1着、かつ凱旋門賞までにパワー1000以上、スピード800以上の状態で凱旋門賞1着、全戦2着以下なし」を達成すると、サンジェニュインの固有二つ名「神が愛した太陽王」を獲得することができる。難度ベリーハードどころではない。
◆ サポートカード
サポートカードはアニメ版5期の1話目最速配信日に、放送開始記念としてSSR「呼べよその名は」が実装された。タイプ:スピード、固有ボーナスは得意率とトレーニング効果、初期値スピード持ちでパワーボーナスありなど、逃げ特化のSSRキタサンブラックみたいなもの。
育成イベントで取得できるスキル
・先頭至上主義
・先頭プライド
所持スキル
・逃げ直線○
・危険回避
・集中力
・リードキープ
・勢い任せ
・逃げのコツ◎
・リスタート
・追込ためらい
・差しためらい
・先行ためらい
・逃げためらい
・スピードイーター
◆ 楽曲
Center of the World
作詞・作曲・編曲:shygames
CD「PRIDE OF METEOR 01」収録。ハードロック楽曲。クラシック三冠のウイニングライブ楽曲。タイトルは直訳すると「世界の中心」で、サンジェニュイン本人のことを歌っているのかと思いきや、歌詞はトレーナーへの感謝に始まり、最後は「お前と照らそう Center of the World!(世界の中心で!)」で終わる。
これを聞いた後に育成に失敗すると罪悪感がすごい。
Dreaming for YOU
作詞・作曲・編曲:shygames
CD「PRIDE OF METEOR 01」収録。アニメ版5期のOP・主題歌。サンジェニュインとディープインパクトがメインボーカルを務める。1期主題歌同様、正統派アニソン。ウマ娘に夢を託すトレーナーと、その夢を背負って走るウマ娘を歌った楽曲。
うまぴょい伝説
作詞・作曲・編曲:shygames
アニメ版5期7話で、メテオメンバーに頼み込まれ、身内向け単独ライブを行ったサンジェニュインがソロで歌った。芝里STによる「俺の愛バが!」というコールが入るが、これは収録時に芝里の中の人(not芝木真白)が「芝里ならここで叫びますよ」と言ったことで急遽入ることになった。
◆ 関連ウマ娘
ディープインパクト
デビューからラストランまで殴り合うことになるライバル。アニメ版5期では同じチームに所属している。どんなときでもひっついてくるためサンジェニュインは突き放そうとするが、実は嫌いなわけではない。
ディープインパクトはサンジェニュインの背中を道標に走っており、彼女が世界の頂点を目指して海外遠征に向かった後は絶不調に陥り、苦しむ場面も。アニメ版5期第2クールでは、海外でのサンジェニュインの活躍を励みに、阪神大賞典、天皇賞・春、宝塚記念を走破する。
アプリ版ではサンジェニュインより先に実装された。育成ストーリーの8割にサンジェニュインが登場する。かなりサンジェニュインを意識しているが、その心底にあるのは「友達になりたい」という純粋な気持ち。サンジェニュインの育成ストーリーとは対になっているようだ。
史実ではクラシック三冠を争い、至上初の2頭の二冠馬に。関係者一同から「やけにサンジェニュインに懐いていた」と口を揃えて言われるほど。凱旋門賞ではサンジェニュインに敗れたものの、種牡馬入り後の国内産駒の活躍はずば抜けており、リーディングサイアーにも輝いた。放牧地はサンジェニュインの隣。
カネヒキリ
幼少期からの親友であり、アニメ版・アプリ版ともに部屋が隣同士(同室ではない)。
サンジェニュインは訳あってカネヒキリが調理した料理か、許可したもの以外は食べられないため、実質サンジェニュインの生命維持装置である。学内では常に行動を共にし、その親密さは他者から「サンジェニュインの世界にはカネヒキリだけ」と言われるほど。
アプリ版ではサンジェニュインより先に実装されたからか、未実装のウマ娘の話を延々とするキャラクターとして定着していた。その話がまるで真横にサンジェニュインがいるかのように行われるので、その時に話に出るサンジェニュインはイマジナリーサンジェと呼ばれている。
史実では併せ馬の相手であり、ドバイ遠征にもお互いを帯同馬とするほど仲が良かった。現役引退後も、牡馬同士でありながら同じ放牧地に放たれていた(通常は1頭につき1つの放牧地)
カネヒキリの死後、その馬房は長らく空きのままだった。
ヴァーミリアン
友人。アニメ5期では、その美貌からウマ娘に追いかけ回されるサンジェニュインに対して、対抗策として「お嬢様プレイ」を提案する。なお8割ほどヴァーミリアンの趣味。
史実では皐月賞まで一緒に走った同世代の同期。カネヒキリがダート路線に向かった後のサンジェニュインの併せ馬の相手でもある。メテオ組の中でいちばんの長生き。
ラインクラフト
友人。アニメ5期ではサンジェニュインのストッパー、アプリ版では世話焼きな保護者ポジションとして登場する。興味の赴くままに行動しがちなサンジェニュインの手綱を握り、ボケがちなチーム・メテオのツッコミも熟す。
史実では2006年8月に急死。使用していた赤い手綱が形見としてサンジェニュインに受け継がれた。生前はサンジェニュインの併せ馬の相手も務めていた。
シーザリオ
友人。アニメ5期では、非常におっとりしたお嬢様でありながら、面白さのためならばなんでもする芸人のような姿も見せる。サンジェニュインと共に悪戯をしかけては、怒られるときには消えている。
史実ではカネヒキリと同厩舎所属で、その縁からサンジェニュインの併せ馬相手も務めた。2021年に亡くなった後、鬣の一部が形見としてサンジェニュインに渡されている。
サイレンススズカ
同じ逃げウマ娘。アニメ5期ではデビュー前のサンジェニュインと模擬レースを行っている。1話のみの登場だが、うまよんなどではサンジェニュインを逃げの理想の1つとして語っている。
史実では活躍時期から絡みなし。ただし鞍上の竹創騎手は、サンジェニュインを指して「白のサイレンススズカとは呼びたくないが、最上の逃げ馬2頭挙げろと言われたら、サイレンススズカとサンジェニュイン」と答えている。
エアグルーヴ
先輩。トレセン学園の生徒会副会長。アニメ版5期では、入学したばかりのサンジェニュインのぽんこつ具合からイライラを募らせ、矯正と指導もかねて模擬レースを行うことに。ゲートに入った途端空気の変わったサンジェニュインを「多重人格」と思っている。理数系が苦手なサンジェニュインの補習の面倒も見ている。
史実では活躍時期が異なるため同じレースには出ていないが、サンジェニュインが種牡馬入りしたあと、エアグルーヴとの間にGⅠ・4勝のシルバータイムを輩出している。
ハルウララ
友人。アニメ版5期ではランチ仲間。2人揃うとただの幼女になるが、なかなかレースで勝てないハルウララのために、サンジェニュインが特訓メニューを考えたり指導するなどしっかりした面も。
史実では連敗続きの負け組の星・ハルウララと、生涯連対率100%の太陽王・サンジェニュインとで、交わるはずのない2頭だったが、サンジェニュインが種牡馬入りした後の相手にハルウララもいた。仔はたった1頭だが、その1頭であるハルノキボウは母がたどり着けなかった中央OP馬にまで上り詰めている。
オルフェーヴル
後輩。アニメ版5期の最終話に登場。日本ウマ娘として初の栄光、凱旋門賞ウマ娘になったサンジェニュインの姿に瞳を輝かせるシーンが初出。アプリ版ではサンジェニュインより先に実装されていたが、その育成ストーリーの冒頭で、ある凱旋門賞ウマ娘に憧れている、と発言している。
史実のオルフェーヴルは、サンジェニュインの初年度産駒と同世代。クラシック三冠すべてでのその産駒たちをボッコボコにした。種牡馬入りした後は、2019年に亡くなったディープインパクトの放牧地を譲り受け、サンジェニュインとお隣さんになっている。
■ 史実
詳しくはこちら→サンジェニュイン
■ 関連動画
■ 関連静画
■ 関連項目
・太陽一族:サンジェニュインを祖とする系譜
・ディープインパクト(ウマ娘)
・カネヒキリ(ウマ娘)
・ヴァーミリアン(ウマ娘)
・ラインクラフト(ウマ娘)
・シーザリオ(ウマ娘)
・サイレンススズカ(ウマ娘)
・エアグルーヴ(ウマ娘)
・ハルウララ(ウマ娘)
・オルフェーヴル(ウマ娘)
■ 掲示板
作ったはいいものの使いどころが無かった画像
その1
https://img.syosetu.org/img/user/53018/87599.jpeg
その2
https://img.syosetu.org/img/user/53018/87600.jpeg
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【簡易版】登場人馬
以前感想で「登場人馬が多くて誰が誰だったかわからないから簡易的でも紹介のやつほしい」(意訳)というメッセージを頂いたので、めっちゃ簡易的ですが、作中で出番がそこそこある登場人馬をまとめました。
2021/12/20 追記
同人誌について活動報告に追記しました
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=272812&uid=53018
簡単な登場人馬
だいたいこれだけ覚えておけば大丈夫な人馬をざっくりまとめました。
馬たち
サンジェニュイン/マイサン(幼名)
種族:サラブレッド(馬)
性別:牡
この物語の主人公。
神より与えられし「牡馬にやたら好かれる」魅了の力()によってケツを追われ、脚質:逃げ以外許されない馬。
ウマ娘になった後も右耳リボンウマ娘にケツ、もとい背を追われることになる。
ディープインパクトさん
種族:サラブレッド(馬)
性別:牡
主人公が前世ヒトだったとき、主人公の父親がこの馬に惚れ込んだ末に蒸発。
最後に親父とこの馬と一発(殴り合って)やればよかった、と死に際に主人公が思ったことで奇妙な縁ができることに。
かなりの頻度で登場するにも拘わらず、喋った回数が少なすぎる名馬にして被害馬。
カネヒキリくん
種族:サラブレッド
性別:牡
主人公の大親友。現役時代も種牡馬時代もウマ娘でもずっとずっと仲良し。
よく気絶する。
だいたいのことはカネヒキリくんがすべて解決してくれる(そうじゃない場合もある)
ヴァーミリアン
種族:サラブレッド
性別:牡
性癖ヤクザ。ウマ娘になるとお嬢ヤクザになる。
主人公の悪友ポジションに位置しているが、初登場時に性癖ヤクザっぷりを見せてしまった馬。
ラインクラフトちゃん
種族:サラブレッド
性別:牝
主人公の友人。
体育会系の後輩キャラみたいな喋り方をするが、世話焼きお姉ちゃんみたいなところがある。
シーザリオちゃん
種族:サラブレッド
性別:牝
主人公の友人。
のんびりしたお嬢様みたいな馬だが、走るときだけ目が血走る。祖父(サンデーサイレンス)の血かもしれない。
ハーツクライさん
種族:サラブレッド
性別:牡
主人公の1つ上の世代。
先輩ポジションだったはずがただの無知シチュおにいさんに。
ユートピアさん
種族:サラブレッド
性別:牡
ハーツクライさんよりさらに1つ上の世代。
作中最大の常識馬。
ヒト族のみなさん
本原佳己
性別:男
主人公の調教師。
基本的に穏やかで馬が大好きなおっちゃん。
目黒康史
性別:男
主人公の担当厩務員。
前世馬か?と疑われるほど主人公(馬)の表情を読み取るのが上手い。
近藤イサノ
性別:女
主人公の担当厩務員補佐。
サバサバしたキャリアウーマンの雰囲気を漂わせた恋する乙女。
芝木真白
性別:男
主人公の主戦騎手。
騎手2年目で主人公と出会い、共に戦う良き相棒。身内とそうじゃないヒトの前でだいぶ表情が変わる。
竹創
性別:男
レジェンドジョッキー。
ディープインパクトさんやカネヒキリくんやヴァーミリアンの騎手。いろいろすごい。
柴畑喜臣
性別:男
ベテランジョッキー。
一時期主人公の背中に乗っていた、優しくて穏やかな紳士。ノブオミおじさん。
沼江琢馬
性別:男
ディープインパクトさんの調教師。
スポーツマンシップに則り、人馬をとても大事にしてくれる。
森重孝晴
性別:男
主人公が生まれた時から世話をしているスタッフその1。
髪色ド派手なチャラ男っぽいやつだが、馬への愛情は人一倍ある。
大津拓光
性別:男
主人公が生まれた時から世話をしているスタッフその2。
いかにも真面目っぽい風貌でとても涙脆い。主人公が草を食べないので目の前で食べて見せた男。
施設
栗東トレーニングセンター
関西にある競走馬トレーニングセンターで、主人公をはじめ、登場する馬の多くは栗東所属。
関東にあるのは「美浦トレーニングセンター」
馬産業関連のドデカいグループ。
主人公をはじめ、登場する馬の多くはこの社来グループに属する牧場出身者。
主人公の出身牧場は「社来ファーム・
ディープインパクトさん、カネヒキリさん、ヴァーミリアン、シーザリオちゃん、ラインクラフトちゃんは「ノータンファーム」
美貌馬完結からもう少しで2ヶ月経ちます。
活動報告にも挙げましたが、記念に同人誌を制作することにしました。
詳細はこちらです↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=272748&uid=53018
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1周年記念SS
1周忌特番:この一年を振り返って
2021年5月29日に投稿を開始してから間もなく1年。
時間が経つのは本当に早いですね。
ここまでいろいろありましたが、読んでくださる読者ニキネキのおかげで楽しく書き続けることができました。
胃がおかしくなったり骨折したりコロナ感染したりと大変なこともありましたが、何かひとつお返しをしたいと思い、一周年記念として前編/後編でSSをお贈りしたいと思います。
後編は明日29日に更新予定です。
お楽しみいただけたら幸いです。
先頭至上主義にして美しき逃亡者・サンジェニュインを偲ぶスレ part.27
1:偲ぶギャンブラーナナシ ID:pMIOZXmiW
タイトルの通り、2004年デビュー、2006年引退、2025年死去の名馬・サンジェニュインを偲ぶスレです
サンジェニュインにまったく関係がない話題はNG
以下ノータッチリスト
・アンチ
・荒し
・荒しに触るやつ
>>960 が次スレよろしく
前スレ 先頭至上主義にして美しき逃亡者・サンジェニュインを偲ぶスレ part.26
地上波放送の映画感想はこっちで↓
【一周忌】SUNGENUIN - 太陽の馬 - 地上波見守りスレ
他の馬の話は個別スレにイケ
※他スレでサンジェニュイン最強の話題だすと過激派がキレるので注意されたし
近代競馬の至宝・ディープインパクトを語るスレ 309
最強の逃亡者はサイレンススズカで決まり 110
ツインターボに活躍馬がいたらどんな馬か考えるスレ 62
やっぱりカブラヤオー思い出雑談 57
・
・
・
600:偲ぶギャンブラーナナシ ID:mASUfV6Vv
【世界の競馬関係者が選ぶ最も美しいサラブレッド】
https://gallop/galloper_utukusi-999.com
選考対象:存命の馬
ランキングにサンジェニュインがいなくてようやく死んだのを受け入れた
601:偲ぶギャンブラーナナシ ID:VN69uLfrF
1位がサニファか
まあそうなるわな
602:偲ぶギャンブラーナナシ ID:llpTH5nk6
ランキングの半分を一族が占めてる中でサンがいない事実
なかなか胸に来る
603:偲ぶギャンブラーナナシ ID:VGJjjXA5o
ぶっちゃけまだ実感わかないんだよなー
606:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Z15xHnzaK
わかる
608:偲ぶギャンブラーナナシ ID:zCf0nDt9g
ウマ娘に実装されてるし、アニメで(ウマ娘が)元気に動いてたし
なんだかサンジェがこの世から消えた気がせんのよ
611:偲ぶギャンブラーナナシ ID:nwaiDFbJC
スぺが死んだ時もデジたんが死んだ時も
妙に実感わかなかったんだよ
なんでかなって思って、俺の手のひらにいるからだって気づいて泣いた
614:偲ぶギャンブラーナナシ ID:OCS4ZU1qh
馬には会えないけどウマには会えるという奇妙な体験
616:偲ぶギャンブラーナナシ ID:kMk3Loo3w
ウマユーザーじゃないのでめためたに悲しいが
618:偲ぶギャンブラーナナシ ID:3Tg0S3/lh
むしろ悲しいが8割だと思われ
ウマ娘ユーザーでも無条件に「でもゲームで会えるから!」という脳みそではない
621:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ybaBvA+en
競走馬が死んだ時に安易に「ウマ娘世界に転生だ」とか言うのほんと無理
623:偲ぶギャンブラーナナシ ID:0jxZYBID1
それ
異世界の競走馬の魂が~云々の設定があるからだろうけど、ゲームと現実は分けてほしい
625:偲ぶギャンブラーナナシ ID:4UTF2Wldd
実装と死亡があまりにもタイムリーだったからなあ・・・
627:偲ぶギャンブラーナナシ ID:TDzxeaM4L
ネタにすんな、とは思わん
そういう気持ちの整理の仕方とかもあるだろうし、それでちょっと救われたやつもいるだろうし
630:偲ぶギャンブラーナナシ ID:PG8dpJ/+N
でも最低限の配慮くらいほしいだろ
632:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xLJGx5R+3
魂セットネタは嫌いじゃないけど、転生してからが本番だ!みたいなネタはどうにかならんか?
サラブレッドだったのが練習みたいな扱いはほんと勘弁して
634:偲ぶギャンブラーナナシ ID:TiHnlZLWf
転生ネタとか原作リスペクト無いただのイイネ集めネタじゃん
636:偲ぶギャンブラーナナシ ID:vZd73YiQp
むしろおもろいと思ってるやつもいる(俺や)
637:偲ぶギャンブラーナナシ ID:k5EBjPypA
だいたい配慮が足りん
ただでさえ未だにウマ娘化に否定的なやつが多い中で、現役時代も知らんニワカが「好きだったのに・・・」とか言いながらウマ絵出すだけでも嫌なのに
640:偲ぶギャンブラーナナシ ID:YLpCzerpG
配慮ww
お客様か?
見ないようにミュートワードなりなんなりで対処しなさいよ
641:偲ぶギャンブラーナナシ ID:B3nr3ls0f
すり抜けてくるんだから無駄だろ
ウマタグも何もつけずに投稿されたやつをどうやってブロックしろと?
こちとら超能力者ちゃうねんぞカス
643:偲ぶギャンブラーナナシ ID:1oHO99o4l
ギスギスでワロタ
644:偲ぶギャンブラーナナシ ID:CA50Kkmwq
なんですぐ荒れるん・・・?
647:偲ぶギャンブラーナナシ ID:HZw6fUs19
偲ぶどころか喧嘩は草
648:偲ぶギャンブラーナナシ ID:0HFWBwvMe
ウマ実装されてから荒れやすくなったなー
650:偲ぶギャンブラーナナシ ID:/BB6sDTkp
ウマ娘ネタでガイガイ持ち込んでくるやつ増えたせい
652:偲ぶギャンブラーナナシ ID:bRmLunb2P
懐古厨とかいう害悪
ニワカガー、ニワカガーっていうけど、そういうのが界隈が倦厭される原因だってわかってる?
655:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Bdmcl885D
どっちもどっちだわ
もう転生ネタも魂セットネタもなんでもいいんだけどさ
悲しむ時間くらいよこせよ、としか思わん
いいんだよもう
好きに面白く創作すりゃいいんだけど
懐かしみたい、いなくなったことを悲しみたい、そういう思いに浸りたくて偲ぶスレきてんのに
656:偲ぶギャンブラーナナシ ID:27g9yCvzO
それ
657:偲ぶギャンブラーナナシ ID:cm2URz20f
結局はこれ
658:偲ぶギャンブラーナナシ ID:3rk3ofDrU
あーもうやめやめ
早く懐かしもう
659:偲ぶギャンブラーナナシ ID:HjdFtBuwX
誰か懐かしんで
660:偲ぶギャンブラーナナシ ID:iEtIYvXqZ
「懐かしんで」は草
663:偲ぶギャンブラーナナシ ID:fRWpWsUcg
懐かしむのを他人に委ねるな
665:偲ぶギャンブラーナナシ ID:VdyB/KbaY
えー
じゃあ凱旋門賞の話
ちょうど20年前だし
667:偲ぶギャンブラーナナシ ID:DXfMcM/ev
いいじゃん
668:偲ぶギャンブラーナナシ ID:+exDzvySn
親の顔より見た凱旋門賞
671:偲ぶギャンブラーナナシ ID:v4VKT0zDV
もっと親の凱旋門賞も見て
674:偲ぶギャンブラーナナシ ID:6odMqREql
親の凱旋門賞ってなんだよ
675:偲ぶギャンブラーナナシ ID:IV+VXTyoC
親の凱旋門賞(意味深)……?
677:偲ぶギャンブラーナナシ ID:1ZWhWQGPK
一生見たくないが
679:偲ぶギャンブラーナナシ ID:UzXWPxUQZ
下ネタやめーや
681:偲ぶギャンブラーナナシ ID:53N/6dRhN
サンの凱旋門賞は実況暗唱できちゃうくらい見たからなー
683:偲ぶギャンブラーナナシ ID:qp0iL+sKU
欧州GⅠ・4連勝からの凱旋門賞で熱狂がピークだったあのころ
684:偲ぶギャンブラーナナシ ID:c/YPGNee4
\あのころー/
686:偲ぶギャンブラーナナシ ID:+8pmzkjlH
>>683
>>684
小学校の卒業式かな?
687:偲ぶギャンブラーナナシ ID:iYTDWzVY0
サンジェニュイン4歳、芝木22歳でつかんだ栄光
これは映画になりますわ(確信)
689:偲ぶギャンブラーナナシ ID:5zL72e/xG
実際なったしなあ
690:偲ぶギャンブラーナナシ ID:lruk7I64E
凱旋門賞の直前インタビューで芝木Jが「負ける可能性は?」って聞かれて、キレ気味に「負ける?サンジェが?」って言ってたのは草
693:偲ぶギャンブラーナナシ ID:fjCdzMp53
>>690 あにいってんだコイツ・・・って顔に出てて芝生えた
695:偲ぶギャンブラーナナシ ID:LU7YIA6zW
芝木、今でこそクールなイメージだけど当時はサン限定で割とすぐ顔に出てたよな
696:偲ぶギャンブラーナナシ ID:3JyVEwpgB
俺の愛馬が世界一
だと本気で思ってる芝木真白
699:偲ぶギャンブラーナナシ ID:PBhqCITjq
世界一なのは確か
701:偲ぶギャンブラーナナシ ID:/wTNd7a0F
レーティングまだ抜かれてなくて草
702:偲ぶギャンブラーナナシ ID:mGaM2IvKc
ちな芝木の「俺の愛馬が~」はウマアニメで見事再現された模様
705:偲ぶギャンブラーナナシ ID:eKz+WkXEN
どーきどきどきどきどきどき、、、
708:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Lt87vYvn/
>>705 俺の愛馬が!(野太い声)
711:偲ぶギャンブラーナナシ ID:9U4YPpuBR
芝木、改めアニメ版サブトレの芝里Tの声優、演技の勉強として芝木のインタビュー映像とかを見てたらしいから納得の演技です
714:偲ぶギャンブラーナナシ ID:kWdhA9TM1
ふつーに台本だからソレ関係なくね?
715:偲ぶギャンブラーナナシ ID:b28HSbgv8
アドリブやぞ
717:偲ぶギャンブラーナナシ ID:VRBTH9lXp
>>714 あれ実は中の人のアドリブなんや
芝木を研究した結果、芝木をモデルにしてる芝里ならこのタイミングで叫ぶ、と思って「俺の愛馬が!」って言ってる
719:偲ぶギャンブラーナナシ ID:XiQyFJFjO
プロの犯行で草
720:偲ぶギャンブラーナナシ ID:BWVJDPvaH
五期は結構アドリブ多いらしいな
723:偲ぶギャンブラーナナシ ID:fzMt5uY9M
そうなん?
724:偲ぶギャンブラーナナシ ID:VpotHPCDS
Blu-rayの特典だかのキャストインタビューでそんなこと言ってた希ガス
726:偲ぶギャンブラーナナシ ID:d5C+zTLkR
原作再現もきっちりしてて、アプリやってない俺もにっこりできるからアニメ版すこ
729:偲ぶギャンブラーナナシ ID:RocIqrwuP
何も弥生賞まで再現する必要は・・・何かったんじゃないスカネー
731:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xZcVO/o7v
ススズの秋天が再現された以上やるとは思ってました
734:偲ぶギャンブラーナナシ ID:znq3qfPu9
サン倒れた瞬間の芝里の顔がもうFate/Zeroなんよ
735:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xxesmtg+e
半狂乱演技上手くて芝
737:偲ぶギャンブラーナナシ ID:DXrEei8oA
ちな倒れる寸前にディープが手を伸ばす演出はタッケの原作再現や
739:偲ぶギャンブラーナナシ ID:2bHy/+RdA
ダービー1センチ差敗北のウマンジェの顔すき
742:偲ぶギャンブラーナナシ ID:cD5+5r0io
燃え尽き症候群どころか明らかに覚醒フラグを立てた顔でディープ睨みつけてるの、原作にそんなんあったか?と思って当時の動画探したら、検量室に戻る直前の目つき極悪サンジェの写真あってワロタ
目つきの治安最悪すぎんか?
745:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ryEXq/0UT
当時のノブオミオジサン「闘志が燃え尽きる気配がない。次は勝つだろう」
748:偲ぶギャンブラーナナシ ID:TACmJIq7p
ほんとに勝ったしな
749:偲ぶギャンブラーナナシ ID:GgG8tMN8f
タレント「サンは燃え尽きた!もう上がってこれないんじゃないカナ(ドヤ顔)」
↓
神戸新聞杯、菊花賞をレコード勝ち
↓
サンジェ「覚醒した。次は有馬記念やぞボケカスども」
↓
有馬記念優勝
752:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ndh7V/07a
当時のスレでも「タレントや評論家、息してる?」ってあおりが止まらなかったやーつ・・・
755:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ADs2njFdH
なおそれでも年度代表馬にはなれない模様
757:偲ぶギャンブラーナナシ ID:fxtY0l0SB
スレ荒れたよなー
同着含めてG1・3勝したのに
760:偲ぶギャンブラーナナシ ID:LqWLxW3co
無敗二冠を評価するならディープは最優秀三歳牡馬
古馬G1も勝ったンジェが年度代表馬でよろかったんでは?
763:偲ぶギャンブラーナナシ ID:peFGWTeZC
今更の話だけどな
764:偲ぶギャンブラーナナシ ID:1BT9lbleT
結局古馬になっても年度代表馬取れんかったのは笑う
767:偲ぶギャンブラーナナシ ID:9QyPz379+
欧州レースG1・5連覇、うち凱旋門賞だからこれは年度代表馬!→最優秀四歳牡馬にすらなれなかった、だと・・・?
769:偲ぶギャンブラーナナシ ID:AwynbWJ7b
ほ、ほら、かわりにカルティエ賞年度代表馬にはなれたから(震え声
771:偲ぶギャンブラーナナシ ID:sc4G/hauT
日本のレースとか有馬記念しか出てなかったんだから仕方ないだろ
773:偲ぶギャンブラーナナシ ID:CUVNH/mFF
JRAは日本のレースを見てるんだからいつまでも未練がましくすんな恥ずかしい
774:偲ぶギャンブラーナナシ ID:td7D8DTDd
つ「エルコンドルパサー、国内未出走で年度代表馬」
つ「ヴィクトワールピサ、ドバイWCのみで最優秀四歳牡馬」
776:偲ぶギャンブラーナナシ ID:pMIOZXmiW
サンジェのこれに関してはエルコンという前例があったからややこしくなったというか
779:偲ぶギャンブラーナナシ ID:1JgP3yz67
エルに関しては時勢も影響してたんじゃねえの
海外レースで勝ち負けできる馬が現れた、って
781:偲ぶギャンブラーナナシ ID:6q96hMafq
でも「日本のレース見てるんだから」論者に関してはエルコンとピサOKでサンOUTなのわけわからんすぎるでしょ
783:偲ぶギャンブラーナナシ ID:7+1Lh8hsj
エルコンもサンジェも賛否両論あるのなんてお偉いさんはわかりきってる
それでも選ばれたのにはそれなりの意味があって、
エルコンはその時の日本競馬の質的に、海外で勝ち負けできる強さを高く評価された結果
サンジェに関しては個人的にはカルティエ賞年度代表馬に選出されたことがでかいと思う
選出時期がJRAが有馬記念を含めるから年明けになるのに対して、カルティエ賞は同年の11月
これで選出されてなかったらJRAの年度代表馬はサンジェだったんじゃない?
さすがに欧州五連勝の馬が無冠なのは問題になるから
786:偲ぶギャンブラーナナシ ID:iVOXtwbP6
>>783 これだと思う
ンジェが本場のほうで評価された
だから国内GⅠ無敗のディープインパクトを心置きなく年度代表馬に選出できたって話だと思う
787:偲ぶギャンブラーナナシ ID:UkX4RPRC8
ディープも国内無敗だったのに年度代表馬になれなかったらそれはそれで大問題すぎるからなあ
788:偲ぶギャンブラーナナシ ID:EO/7gmVcJ
でも当時のD基地にクッソほど煽り倒されたの未だに根に持ってるよ
791:偲ぶギャンブラーナナシ ID:DCfFV1Jme
初年度産駒2頭が三冠馬になったときにS基地が向こう煽ってたしお相子にしようや
794:偲ぶギャンブラーナナシ ID:CXcoUhCB3
お互いを煽らずにはいられないのほんと草
796:偲ぶギャンブラーナナシ ID:9265K1oYG
てるてる坊主対決といい、おそらく当人たちよりもバチバチしてるのは面白すぎでしょ
797:偲ぶギャンブラーナナシ ID:jcgwDkaaq
そんなんだからお互いに夢中(笑)とか笑われるんですよ
800:偲ぶギャンブラーナナシ ID:8DVrFPskS
現役中は戦績で争うわ、脚質で争うわ、引退しても種牡馬成績で争うわでほんま・・・
醜いぞお前ら
803:偲ぶギャンブラーナナシ ID:S+MtXzbl7
サンが好き、ディープが好きなのはいいけど、相手を貶して愛馬を持ち上げるのは最悪のアホでしかないからそれだけてやめてクレメンス
806:偲ぶギャンブラーナナシ ID:nJBG/I39B
サンとプイの不仲説
あれだってサンは牡馬嫌いだから避けてるだけで別にプイが嫌いなわけではなさそう
808:偲ぶギャンブラーナナシ ID:OL6orHgp8
ディープ以外の牡馬も全部避けてるからな
810:偲ぶギャンブラーナナシ ID:X7EX6p7D9
ちなカネヒキリ
813:偲ぶギャンブラーナナシ ID:5aiv9LZkI
カネヒキリ△はほら、性別カネヒキリだから、、、
815:偲ぶギャンブラーナナシ ID:B8r1Dy/nc
何故かカネヒキリセーフで放牧地まで一緒だったの、競馬界七不思議すぎるだろ
818:偲ぶギャンブラーナナシ ID:PqgLhlJ8/
ヒント:サンデーサイレンスとメジロマックイーン
819:偲ぶギャンブラーナナシ ID:6b9u27W/z
>>818 放牧地までは共有してなかったじゃん(震え声)
821:偲ぶギャンブラーナナシ ID:RxhyK9Xl6
言うほどサンジェ、牡馬嫌いだったわけでもないと思うけどな
種牡馬入りしたら隣の放牧地のディープと見つめ合ってたり
ヴァーミリアンと柵越しに追い比べしたり
同じ放牧地でカネヒキリとごろんごろん日向ぼっこしてたし
822:偲ぶギャンブラーナナシ ID:D8BlMmaG2
サンは追いかけられない限り穏やかな馬やぞ
ちなソースは目黒さん
823:偲ぶギャンブラーナナシ ID:8hFeD45mB
>>822 目黒さんが言うなら間違いねえや(妄信)
824:偲ぶギャンブラーナナシ ID:oAR7tU5+V
馬っけだした同姓に追い掛け回されたらサンじゃなくても逃げるだろ
827:偲ぶギャンブラーナナシ ID:+PO0fl4sJ
種牡馬入りしたらもうケツ追われる心配もないもんな
828:偲ぶギャンブラーナナシ ID:B2Ukq0fH1
なお初年度シーズン・・・イギリス・・・
831:偲ぶギャンブラーナナシ ID:zoYHe6ydi
結局ケツ追われてた話はやめてあげよう
833:偲ぶギャンブラーナナシ ID:GEBWDCCSy
アレ、下手したらサンジェ死んでたから笑い事じゃないんだよな
835:偲ぶギャンブラーナナシ ID:JP/3Mbdpu
目黒さんが視察に来てくれてほんとよかったよかった
837:偲ぶギャンブラーナナシ ID:2kPC4BZCL
サントゥナイトが誕生したのもこの時目黒さんが渡英したおかげ
840:偲ぶギャンブラーナナシ ID:KEaHtcouU
あれの事件があったから欧州にもサンジェ専用厩舎が建てられたのはすげーと思った
841:偲ぶギャンブラーナナシ ID:kJhWpUfz0
やはりオイルマネー
石油王は格が違う
844:偲ぶギャンブラーナナシ ID:2eUXjBoPb
>>841 もともとはサンを120億円でトレードしようとしてたからね、しゃーないね
845:偲ぶギャンブラーナナシ ID:SPvl+KDJG
120億円のオイルマネーを生み出す可能性があったンジェ
120億円の紙くずを開始1秒で生み出したゴールドシップ
なるほどね・・・
847:偲ぶギャンブラーナナシ ID:+1fGvkr5/
120億円コンビとしてぱかチューブで共演してくれたのうれしかった
850:偲ぶギャンブラーナナシ ID:V6QzDdIa7
プラス120億ことサンジェ
マイナス120億ことゴルシ
851:偲ぶギャンブラーナナシ ID:DtalBuTcz
あわせてプラマイ120億
854:偲ぶギャンブラーナナシ ID:kdJRGvPyq
ぷら、まい、、、?
857:偲ぶギャンブラーナナシ ID:PQNDTGxGr
ゴルシといえば、そのあまりの奇行から「メロンソーダの弟」だと思われてたのを思い出した
859:偲ぶギャンブラーナナシ ID:s6CO4zQ4c
出遅れ、宝塚記念立ち上がり、賢い暴君
なおメロンソーダはクラシック全敗、宝塚記念で立ち上がって出遅れるも大外ブン回しで3歳馬初制覇
ゴルシはクラシック二冠、宝塚記念2連覇、史上初の3連覇がかかる中で立ち上がり120億紙くず
ちなみにここは仲良し
ゴルシはメロンソーダを見かけるとルンルンで近寄っていくんだそう(後浪さん談)
860:偲ぶギャンブラーナナシ ID:n1qX1c/TR
サンジェ産駒で稀に見る気性難だったな
芝木が「俺が死ぬのが先か、こいつが引退するのが先か」って死んだ目で語ってたのっていつだっけ?
861:偲ぶギャンブラーナナシ ID:R8nM09ECd
気性難って呼んでいいのかあれだけど、難しい馬っていったらサンサンドリーマーもかなあ
竹がめちゃめちゃかわいがってた記憶がある
864:偲ぶギャンブラーナナシ ID:XCLNm2tZU
>>859 それ、メロンソーダは逃げてませんか・・・?
ゴルシと言えばシルバータイムだな
あいつが一番追ってたケツは牝馬のケツではなくシルバータイムのケツだったことはもっと知られるべき
>>860 2012年ゴールドカップや
867:偲ぶギャンブラーナナシ ID:I6BFhHD2a
サンドリは竹からすると初めて騎乗したサンジェ産駒で
3歳で秋天、4歳で春天と思い入れが深いんじゃない?
調教の時から熱心に乗ってたらしいし
870:偲ぶギャンブラーナナシ ID:cUS0Rz8AC
竹とサンドリと言えば、秋天前に竹が北海道まで行ってサンジェに騎乗報告しに行った話すこ
872:偲ぶギャンブラーナナシ ID:12gKqf9+c
彼女の親に挨拶する彼氏かな?
874:偲ぶギャンブラーナナシ ID:cjeZqJghr
竹ってサンジェのこと気に入ってるよな
なんで?
876:偲ぶギャンブラーナナシ ID:YstChm1Yg
そら逃げ馬だからでは?
サンジェニュインと言えば「白のサイレンススズカ」の愛称でおなじみやんか
878:偲ぶギャンブラーナナシ ID:810V5rkPc
おなじみ(なお数か月で廃れた模様)
ふつーにディープのライバルポジだったからなんだよなあ
881:偲ぶギャンブラーナナシ ID:7hKIaZz4D
レースでは乗れなかったけど調教では乗ったことあるっぽいしそれつながりでは?
前になんかの座談会でタッケが「サンジェニュインの背中は乗りやすい」って言ってた希ガス
そん時にリュベールとかデルーカがウンウンうなずいてたのは芝
お前らも乗ったことあるんかい
884:偲ぶギャンブラーナナシ ID:lQ97Zm2Fr
デルーカは知らんけどリュベールはあれだろ
欧州遠征の時に芝木が渡仏遅れるからかわりに調教の乗り役したやつ
885:偲ぶギャンブラーナナシ ID:HDQBPaEGJ
欧州での好敵手といえばリュベールの馬だったなあ
887:偲ぶギャンブラーナナシ ID:qWSj7gjPT
サンがディープ以外で負けた馬がリュベール騎乗のハーツクライだけだからな
889:偲ぶギャンブラーナナシ ID:MdI4o/JDX
むしろハーツとディープ以外に負けなかったの面白すぎだろ
連帯率100%は伊達じゃないな
891:偲ぶギャンブラーナナシ ID:vd402XQAu
リュベール、サンジェが牝馬苦手なのを見抜いてサンクルーで捨て身の牝馬アタックしたのに、直前でサンジェが牝馬を克服したせいで無に返るの、ほんとすこ
893:偲ぶギャンブラーナナシ ID:KXbqzgFlW
目の付け所はすごくよかったのにな
なおレース後に本番レースが開催された模様
895:偲ぶギャンブラーナナシ ID:9AI0WUKAx
まさかハリケーンランがおったてるとはなあ・・・
898:偲ぶギャンブラーナナシ ID:nbkErf9Ql
たまげたなあ、、、
901:偲ぶギャンブラーナナシ ID:KuItTxp3r
海外にも顔がよすぎることが広まるのは芝
904:偲ぶギャンブラーナナシ ID:aTswr9DkI
この本番レース、海外でネットミームになってるんよな
男でも惚れる男のキャラを紹介するツイートとかのリプ欄にGIFがあったりする
905:偲ぶギャンブラーナナシ ID:hnbOZD7zr
男でも掘れる?
908:偲ぶギャンブラーナナシ ID:NvrYGGgSF
>>905 意味が変わっちゃうんだよなあ
910:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xqSdqJRCd
サンジェの一周忌まで残り1時間
912:偲ぶギャンブラーナナシ ID:9/mJAfgAc
お
なんか今回のスレは進行またーりだったな
913:偲ぶギャンブラーナナシ ID:+B9bmzJLu
映画スレに人が集まってるからだろ
916:偲ぶギャンブラーナナシ ID:lHTj08Mzm
ンジェの一周忌はつまりナイトの凱旋門賞制覇から一周年、ウマ実装からも一周年ということ
917:偲ぶギャンブラーナナシ ID:B4sO4kZUE
当時のスレは「サンジェの正統後継者爆誕!イエーイ!」って大盛り上がりだったのに・・・
ウマンジェもストーリーの質が良いとかで、何かを叩かないと落ち着けないスレ民すら褒める和やか進行から一転して阿鼻叫喚、悲鳴こもごも
ウマ娘の呪いダー、魂転生ダー、でクッソほど荒れたよな
920:偲ぶギャンブラーナナシ ID:7VV0llFSL
荒れた(現在進行形)
921:偲ぶギャンブラーナナシ ID:7zGhAJ0Ni
サンジェニュインは荒れた馬場が好きだし多少荒れてもセーフセーフ
922:偲ぶギャンブラーナナシ ID:/zqkulrv0
アウトなんだよなあ
924:偲ぶギャンブラーナナシ ID:V3yioRGyk
がばがばセーフ理論かよ
926:偲ぶギャンブラーナナシ ID:WH8MAgLfK
この1年でいろいろありすぎてガバガバ理論しか出せなくなった哀れなチャンネラーや
929:偲ぶギャンブラーナナシ ID:1EBMedyWc
サンジェが死んでからの1年
・アプリ版ウマ娘にサンジェ実装
・葬儀の時に芝木「ずっとすきでいる」と発言し邪悪スレ民すら涙
・サントゥナイトがJCで引退→種牡馬入り
・芝木も引退→調教師試験の準備
・ファイトが有馬記念制覇→高松宮記念を制したのちに古馬芝中長距離GⅠ路線へ(あとは秋天とJCと有馬記念)
・サンジェのラストクロップが誕生(血統登録:172頭)
・俺たちの素人兄貴が馬主資格取得を目指して準備開始
・本年限りガネー賞の副賞が「SUNGENUIN MEMORIAL」に
・アニメ版ウマ娘5期が放送開始
・一周忌の特番として映画「SUNGENUIN - 太陽の馬 -」が地上波登場←イマココ
931:偲ぶギャンブラーナナシ ID:n47IMqbyI
映画見てるけどあえてこっちのスレにいるマン
934:偲ぶギャンブラーナナシ ID:qh6Csj8Ua
全編サンジェニュイン産駒でお届け!サンジェ誕生シーンの仔馬役がミスティカルスターの15だと知った時の絶望
937:偲ぶギャンブラーナナシ ID:40yXEvr4c
>>934 もう死んでるじゃん…
939:偲ぶギャンブラーナナシ ID:H/yEqzaQ4
ミスティカルスターの15って誰やって思ったらサンサンプリンスねはいはい
942:偲ぶギャンブラーナナシ ID:LV+1gRogf
あー、ラスト五分か
944:偲ぶギャンブラーナナシ ID:E3Gp2tUGP
ヴッ、存命ヒキリ。。。
947:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Cmw2H5uTm
映画スレが爆速で伸びてるなかこっちだんまりで芝
949:偲ぶギャンブラーナナシ ID:nm0JVll9j
ナレ「サンジェニュインは今、生まれ故郷で親友と共に、第2の馬生を謳歌している」
放牧地で仲良く寝転んでるのは本馬たちです
950:偲ぶギャンブラーナナシ ID:2TE7zXP2p
公開時2015年末~~!!!!
951:偲ぶギャンブラーナナシ ID:/AYFfxM5+
どっちも死んでる・・・死んでる・・・
952:偲ぶギャンブラーナナシ ID:YQV8qHuzP
エンドロール後
「2025年10月5日 サントゥナイトの凱旋門賞制覇を見届けて永眠 23歳」
953:偲ぶギャンブラーナナシ ID:pXXCkaq3K
あ゛~~。。。
955:偲ぶギャンブラーナナシ ID:/oweUvz3+
ンジェ~~……
958:偲ぶギャンブラーナナシ ID:OgTuYwLmT
現役時代はもちろん、種牡馬入りしてからも
三冠馬4頭(シャイニングトップレディ、サニーファンタスティック、アイシテルサニー、ラヴミーサニー)
凱旋門賞馬3頭(ブランシュブランシュ、ライトニングパッション、サントゥナイト)
とんでもない名馬だった
960:偲ぶギャンブラーナナシ ID:WaysYGKcF
どうしても国内ダービーだけは勝てなくて、でも最後にファイトが日本ダービー勝ってくれて
悲願のダービー制覇ももう1年前
サンジェ、来年の産駒で日本ダービー2連覇やな、なんて笑ってたのがほんと懐かしいわ
963:偲ぶギャンブラーナナシ ID:nR/q42YIC
凱旋門賞から20年
懐かしい思い出を語ろうにも、全部が色鮮やかでちっとも褪せてなくて
そのせいで懐かしいじゃなくて、ただ楽しい記憶になってるのがさ、この馬の良さだと思う
>>960 次スレ頼む
964:偲ぶギャンブラーナナシ ID:VeAoQKIg6
勝ちすぎてつまらんとか、レース壊してるとか、いろんなこともいわれたけど
結局コイツが好きなんだよな
おもしろいとかそれ以前に、逃げて逃げて逃げ勝って
絶対後ろを振り向かんところが俺は好きだったんだろうなあ
966:偲ぶギャンブラーナナシ ID:LgKO3L2Xu
「愛さずにはいられない」
じゃなくて
「愛してやまない」
967:偲ぶギャンブラーナナシ ID:WH806qzjH
よく泣いて
笑って
怒って
でも走り続ける
人を愛し、人に愛された馬だよ、間違いなく
968:偲ぶギャンブラーナナシ ID:PqmnrJKJm
最初ギスギススレだったのに最後しんみり泣かせにかかるのなんだ?
勘弁しろ、いま涙腺いかれてるんだぞ
969:偲ぶギャンブラーナナシ ID:WaysYGKcF
なんだかんだサンジェスキーの集まりだから
ほれ次スレ
https://10ch_tid=2553182_114514/sl.com
972:偲ぶギャンブラーナナシ ID:lUmTAtWU6
死んだなんてまだ信じたくねえ
実は海外で種付けしてるだけなんだって思わせてくれ
>>969 トンクス
973:偲ぶギャンブラーナナシ ID:20DY1Av5g
来年はもう産駒いないんだって現実を見るしかないか
974:偲ぶギャンブラーナナシ ID:K9LIPRwJv
今は残された産駒の応援が楽しみだわ
>>969 でかした
977:偲ぶギャンブラーナナシ ID:lySv4Y9cF
>>974 あと素人ニキの愛馬待ち
980:偲ぶギャンブラーナナシ ID:nwDQQmE+7
ニキがいつ馬主資格取れるかだな
2年以上年収がおいくら万円~とかルールあるだろ?
983:偲ぶギャンブラーナナシ ID:aMZFCT2Xm
事業は順調そうだけどな
早めにとってほしい
欲を言うならラストクロップ間に合え
984:偲ぶギャンブラーナナシ ID:h2k/YKBmI
お前ら~~
特番パート2始まるわよ~~
986:偲ぶギャンブラーナナシ ID:2vnnQ/QWd
正直これが一番楽しみだったと言ってもいい
988:偲ぶギャンブラーナナシ ID:NvoLWSOJA
芝木、柴畑、竹、リュベールがサンジェを語る一時間が始まる
989:偲ぶギャンブラーナナシ ID:tYzIUx/pl
生産牧場や石油王からの手紙もあると聞いて豪華すぎて白目になっちゃう
991:偲ぶギャンブラーナナシ ID:rpVp7mrPW
メディアそんなに好きじゃない芝木が出ることOKしたってことは良番組確定
994:偲ぶギャンブラーナナシ ID:5hSwNTEZJ
地上波で助かる
グリチャ加入先延ばしにしてたから・・・
996:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Q40hn8/UL
始まったか
999:偲ぶギャンブラーナナシ ID:2kPC4BZCL
司会が四浦か
凱旋門賞の実況担当やん
これは気合が入ってるな
1000:偲ぶギャンブラーナナシ ID:4tu0nNik1
間に合った
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1周忌特番:唯一無二の光を放ち続ける
2021年5月29日から満1年。
去年のダービーは5月30日でした。
今年のダービー馬はドウデュースさん。おめでとうございます。
ちなみに作者はマテンロウレオさんを応援してました。最低人気からの13着なので人馬共に大健闘だと思ってます。というか人馬無事だっただけで拍手です。
ドウデュースさんは凱旋門賞に出走予定とのこと。これは未来の凱旋門賞馬(確信)
ところでウマ娘でカレンチャン新衣装を知ってしまった作者は……アーッ!(貧困)
前置きはここまでにして。
1周年記念SS後編です。
掲示板8割、小説パート2割の構成です。
ちなみに時間軸は芝木外伝「ずっとすきでいる」の最終話より前になります。
スレ民と同じようにサンジェニュインの過去を振り返っていただけたら幸いです。
その話を貰った時、断るつもりだった。
「いいんじゃないですか、出ても」
「でも……」
マスメディアに良い印象はなかった。
あることないこと書きたてられた記憶はまだ薄まらない。
サンジェが死んだ時も、落ち着かない心情をかき回されて、何度怒鳴りそうになったか。
竹さんのように上手い立ち回りができればよかったが、あいにく俺は器用にはなれなかった。
「真白さん」
妻は、イサノさんは真剣な顔で俺を見つめる。
言いたいことはわかっていた。
今後、サンジェを、サンジェニュインという馬を人前で語る機会はぐっと減るだろう。
彼は過去の馬になり、新しい思い出は作られない。
だから今。
まだその生命の残り香がある今、思いのたけを、語らうに足りる人たちとぶつけ合う。
彼女の目が俺に告げる。
これがラストチャンスだ、と。
「……最後、か」
語れ、というなら語ろう。
俺の愛馬を、一生忘れられないほど。
■
先頭至上主義にして美しき逃亡者・サンジェニュインを偲ぶスレ part.28
1:偲ぶギャンブラーナナシ ID:pMIOZXmiW
タイトルの通り、2004年デビュー、2006年引退、2025年死去の名馬・サンジェニュインを偲ぶスレです
サンジェニュインにまったく関係がない話題はNG
以下ノータッチリスト
・アンチ
・荒し
・荒しに触るやつ
>>960 が次スレよろしく
前スレ 先頭至上主義にして美しき逃亡者・サンジェニュインを偲ぶスレ part.27
地上波放送の映画感想はこっちで↓
【一周忌】SUNGENUIN - 太陽の馬 - 地上波見守りスレ
他の馬の話は個別スレにイケ
※他スレでサンジェニュイン最強の話題だすと過激派がキレるので注意されたし
近代競馬の至宝・ディープインパクトを語るスレ 309
最強の逃亡者はサイレンススズカで決まり 110
ツインターボに活躍馬がいたらどんな馬か考えるスレ 62
やっぱりカブラヤオー思い出雑談 57
2:偲ぶギャンブラーナナシ ID:aZPYLhKyz
>>1 建て乙
5:偲ぶギャンブラーナナシ ID:aIXcaKCYt
>>1 乙
6:偲ぶギャンブラーナナシ ID:0bnj2ZqjZ
>>1 乙
特番のメンツが豪華で草
8:偲ぶギャンブラーナナシ ID:fLEoLiXOZ
主戦:芝木
クラシック二戦:柴畑
ライバル騎乗:竹、リュベール
ってところか
9:偲ぶギャンブラーナナシ ID:8gBXOq3GZ
欲を言えばデルーカもいてほしかった
10:偲ぶギャンブラーナナシ ID:vyDF5N9fZ
目黒さんも出さんかい!!!!
11:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ipmg+JW5C
地上波放送だとありがちな競馬タレントが出てないことに安心感
14:偲ぶギャンブラーナナシ ID:LM8wpjToP
>>11 こう言うのだと居がちだもんな、芸人とか
16:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Om0BK8Vkg
悪かないけど、茶化されたくない時があるから・・・
19:偲ぶギャンブラーナナシ ID:KklJD0NZa
今回はウマ娘(物理)もいない、ヨシ
20:偲ぶギャンブラーナナシ ID:0j/nqw/aH
ウマ娘化してるとはいえさすがに出ないだろww
シャイゲはそういう空気読むのが上手いからなんだかんだ既存ファンにも受け入れられてる希ガス
21:偲ぶギャンブラーナナシ ID:f1L6vaBm0
テキトー競馬風アニメよりもよっぽど競馬してるからな
23:偲ぶギャンブラーナナシ ID:3+JdEaAmQ
アプリ版はコンテンツつまらんすぎてオワコン感否めないけど、他のメディアミックスは今も大成功ですしおすし
25:偲ぶギャンブラーナナシ ID:zQ5lVNnQa
オワコンて
そう思うんならとっととアンストせえよww
26:偲ぶギャンブラーナナシ ID:cQKR6ajiC
ゲームはやってないけどアニメは見てる勢はわりかしいる
29:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ynHdZn7Vk
>>25 出、出~~ww
嫌なら遊ばなければ良いで追い出し続けた結果サ終になっちゃうんですねえ
32:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ke0d6hCbQ
今からゲーム始めても初期勢には勝てんやろ・・・ってくらいインフレしてるから、まあ気持ちわからんでもない
けどゲームはやり続けていたいので改善要望を永遠に送り続けるゾ
33:偲ぶギャンブラーナナシ ID:KYQER/L8P
新育成でWRCはじまったし既存メンも楽しめるもの増えてきた
36:偲ぶギャンブラーナナシ ID:krRVGUmkO
チャンミ世界大会の猛者を見るのがここ最近の楽しみ
37:偲ぶギャンブラーナナシ ID:g8k6lOBqE
前年度の世界大会の賞金が200万で、はえ~夢があるぅ!って目ん玉出た
チャンピオンのライスシャワー輝きすぎ
38:偲ぶギャンブラーナナシ ID:8MmCYeaGX
お、前スレ1000いったか
41:偲ぶギャンブラーナナシ ID:+KSF2k9aZ
前スレ閉じる前に次スレでギスギスするんじゃないよ
っていうかよく見たら前スレに素人ニキきててワロタ
いえーい素人ニキ、見てるぅ?
43:偲ぶギャンブラーナナシ ID:hwbVy8FQ1
素人兄貴にスレ顔出しする時間あるか?
つい最近も情熱大陸で見たばっかりだけど目の下の隈えぐかったな
46:偲ぶギャンブラーナナシ ID:/oE6XtAqV
兄貴、馬主になる前に過労死するのだけは勘弁してくれよな・・・
49:偲ぶギャンブラーナナシ ID:DWVjSsQEN
はじまた
50:偲ぶギャンブラーナナシ ID:YVKgSs8JT
オープニング気合い入りすぎ!?!?
52:偲ぶギャンブラーナナシ ID:44oqKiFRd
ワラタ
53:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Kh/G4p9AZ
OPアニメは草
56:偲ぶギャンブラーナナシ ID:m9PCrpEFI
どこに金使ってんだフジイテレビww
59:偲ぶギャンブラーナナシ ID:msUJag/ox
ウマ娘じゃなくてがっつり馬アニメ草
62:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xDnWo8blo
動きぬるぬる
63:偲ぶギャンブラーナナシ ID:k4T7Ksc+R
コー●ーじゃないのだけはわかった
66:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Y5Eq232zL
無駄に作画が良い
67:偲ぶギャンブラーナナシ ID:vLG7oaaEk
おっ、新しい冬アニメっすか?
69:偲ぶギャンブラーナナシ ID:8paGjhI0L
大事故になる予感しかせえへんやん
70:偲ぶギャンブラーナナシ ID:WbQ+uzWB/
競馬アニメで成功するとかマキバキングくらいなもん
っていうかマキバキング以外の競馬アニメとか知らん
71:偲ぶギャンブラーナナシ ID://O+oahO7
そもそも馬の作画が難しすぎるからね、仕方ないね
72:偲ぶギャンブラーナナシ ID:iJQRI1Lzb
>>70 あの、あの、一応2022年にも競馬アニメはありました
73:偲ぶギャンブラーナナシ ID:gfOL7lUAM
それなんて群青?
76:偲ぶギャンブラーナナシ ID:NdzdXhU9d
エッあれ競馬アニメだったん?
てっきりオスとオスのラブコメ~馬を添えて~かと
79:偲ぶギャンブラーナナシ ID:CLkt0l39K
>>76 競馬アニメというか、騎手学校アニメや
キャラクターのひとりが各国の騎手学校を転々としている設定だったから多分別世界の別制度の話だと思うが
81:偲ぶギャンブラーナナシ ID:U3AWOXPB2
>> 騎手学校を転々 <<
82:偲ぶギャンブラーナナシ ID:dUgf8Ec8D
競馬おじさん的には心に響かなかったかもしれんが、競馬ミリも知らん層にはウケてたんじゃね?
グッズは売れてたみたいだし、当時の感想ツイで好意的なのも結構あった記憶ある
84:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xNCuTppEC
あの頃はウマ娘がドデカコンテンツだったから比較すると粗が目立ってただけかもしれん
86:偲ぶギャンブラーナナシ ID:hTU7svncZ
でも今流れてるサンジェアニメーションの方が出来が良いのはオモシロすぎるだろ
88:偲ぶギャンブラーナナシ ID:rwdGjgGlX
>>86 そりゃ短期間で十数話作るのとOPのアニメーションじゃ出来が違うのは当然じゃん
それに4年前のものに比べたら今の方がキレイに見えるのは当たり前なんだからさ
89:偲ぶギャンブラーナナシ ID:hxJoYGvI2
他作品持ち出してガヤガヤするのほんと悪い癖だぞ
92:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Igxp29ME5
スレ民すーぐ荒れる
94:偲ぶギャンブラーナナシ ID:w8quw7oAy
OPおわたな
96:偲ぶギャンブラーナナシ ID:gu32TcejL
作画も良い、動きも良い、音楽も良い
このままアニメ化しないか?
99:偲ぶギャンブラーナナシ ID:z0WvefqCI
芝木www
絵が上手いwww
100:偲ぶギャンブラーナナシ ID:IJGNheZln
アニメOPの感想が「絵が上手いですね」だけで隣の竹が苦笑
101:偲ぶギャンブラーナナシ ID:oo5FURUtf
他に言うところあったやろwww
104:偲ぶギャンブラーナナシ ID:udYDW6wH9
確かに絵は上手い
105:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ebGfwwZTH
芝木自身が画伯()だから余計そう思った可能性
107:偲ぶギャンブラーナナシ ID:VXTiFkAaO
なんでもできると思ってた芝木の弱点が絵を描くことだったとは、この李白の目を持ってしても(ry
108:偲ぶギャンブラーナナシ ID:r7frsq/S2
逆に弱点があったことに安心した
110:偲ぶギャンブラーナナシ ID:MX8VYxM7s
思ったより明るいテンポで進行するやん
112:偲ぶギャンブラーナナシ ID:nD2Ffmcbh
もっとしんみりかと
115:偲ぶギャンブラーナナシ ID:97dUDGIYy
関係者しかいない番組だし、メディア嫌いの芝木もこれで安心
116:偲ぶギャンブラーナナシ ID:VfLtGHRlq
葬儀当日はあれだけ憔悴しきってた芝木も、ようやく笑えるようになったんかと思ったら・・・
118:偲ぶギャンブラーナナシ ID:VYKqHzsVt
JCでナイトが勝ったあとに「やるべきこと全部、これで終われた気がします」って言った時はまさか後追い?なんて不謹慎なガイガイもあったけど、芝木は元気だし、むしろ残るサンジェ産駒全頭調教する勢いで調教師試験の準備始めたのは草
121:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Q7eRK1Nsl
まあ1年経ってようやくサンジェとの日々を笑って振り返れるようになった、って考えたらしんみりしますけどね
122:偲ぶギャンブラーナナシ ID:TQ3eQ/TfT
>>121 ;_;
123:偲ぶギャンブラーナナシ ID:oG1IDa1uZ
いやあ、けどこのメンツ、老けたなあ
124:偲ぶギャンブラーナナシ ID:1cxg/bFka
2021年の時点でタッケとノブオミおじさんは5爺なんて呼ばれてたしな
125:偲ぶギャンブラーナナシ ID:avJV2ekYJ
5爺wwwww
誰が上手いこと言えと
128:偲ぶギャンブラーナナシ ID:9/ZssjYmH
サンジェが現役だったときはまだ二十代だった芝木もリュベールも四十路か
129:偲ぶギャンブラーナナシ ID:FM12xbTWo
時が経つのは早い
132:偲ぶギャンブラーナナシ ID:G+wqD3Ws9
四浦「さて場もあたたまってきたところで。まず第一印象から振り返ってみようと思います」
芝木:すごく白い、やんちゃ、でも賢くて従順
柴畑:白い、大人しいかと思えば気難しい一面あり
竹 :白い、大柄で迫力がすごくある
リュ:白い、巨大なマシュマロモンスター
135:偲ぶギャンブラーナナシ ID:KP/Kz4vce
>>132 全員一言目が「白い」は草
136:偲ぶギャンブラーナナシ ID:8HpcXPg6g
>>132 そうなるわなww
139:偲ぶギャンブラーナナシ ID:CRWMhbzrc
>>132 マシュマロモンスターってなんやねんw
141:偲ぶギャンブラーナナシ ID:8HYoOe+MA
4人とも白い白い連呼してて草
142:偲ぶギャンブラーナナシ ID:74FkK84ev
まあ白毛って珍しいからね
144:偲ぶギャンブラーナナシ ID:8/krhXV8E
当時の競馬スレとかでも第一印象は「白」だったんだからこれは当然としか
146:偲ぶギャンブラーナナシ ID:D/l3blFLX
芝木がキラキラした目で「すごく可愛いんです」っていうのなんだかおもろいな
147:偲ぶギャンブラーナナシ ID:YYXTpAEoJ
そら主戦の芝木からしたら可愛い可愛いホースで間違いはない
150:偲ぶギャンブラーナナシ ID:V+I3CcoJv
一方リュベール「背中がどんどん遠くなる、恐ろしい、マシュマロモンスター」
152:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xA+Tx9/An
>>150 だからマシュマロモンスターってなんだよwww
154:偲ぶギャンブラーナナシ ID:OvJ8GjwcA
他馬騎乗の騎手からすりゃサンジェほど恐ろしい馬もいないだろ
あれだけ目立つ毛色がずっと前にいて、追いつけないスピードで駆け抜けて行く
サンクルーの奇策を完全に潰されたリュベールからしたらトラウマもんだわ
155:偲ぶギャンブラーナナシ ID:vJDhm0og5
ちょうどサンクルーの話題出たな
157:偲ぶギャンブラーナナシ ID:3SfJUsHNM
芝木「いったん後ろに下げようとしたら逆に加速した」
柴畑「一時的でも牡馬に近づくのが嫌だったんだろうな」
リュ「追いつけるかと思ったら突き放された」
竹 「よくある」
竹の『経験者は語る』感は異常
158:偲ぶギャンブラーナナシ ID:X9g59C9US
経験者(※ディープインパクト騎乗で何度もサンジェと対戦)
159:偲ぶギャンブラーナナシ ID:81oZO/OPq
今思えばサンジェの逃げって『逃げ』って読んで良いのかわからないくらい、途中で何度も加速するんだよな
162:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Gs+GCmuZo
逃げ疲れが見込めないとか怖すぎィ!
164:偲ぶギャンブラーナナシ ID:25lIVNlII
サンジェ「逃げる!追いつかれそう!加速して逃げる!また並ばれそうだからもう1回加速して逃げる!うおおお!」
俺ら「ひええ。。。」
167:偲ぶギャンブラーナナシ ID:JVDx/c9QE
>>164
ディープ「後方待機!早く前に行きたい!後方待機!そろそろ前に行きたい!第3コーナー・・・来た!来た!前だ!前!サンジェニュインいた!サンジェニュイン!うおおおお!」
俺ら「ひええ・・・」
サンジェ「ひええ・・・」
169:偲ぶギャンブラーナナシ ID:l+x5iIl4B
なんでサンジェまでひええしてんだよwww
171:偲ぶギャンブラーナナシ ID:0o5ecz4uh
>>167 サンまで怯えてて草
174:偲ぶギャンブラーナナシ ID:OVr5BBo8p
実際に怯えてたしな
175:偲ぶギャンブラーナナシ ID:5jGqbAtam
ディープインパクトに追いつかれたくない一心で伸び続ける馬がいるらしい
176:偲ぶギャンブラーナナシ ID:rKT5oDO9A
一時期ディープの誘導馬って呼ばれてたこともあったなあ
177:偲ぶギャンブラーナナシ ID:/34+s8soD
黒とか茶の馬の中でピカピカ光る白毛だったからな、目印にはもってこい
179:偲ぶギャンブラーナナシ ID:72SeKYRQt
芝木は本原厩舎が初対面
それ以外はみんなレースが初対面か
181:偲ぶギャンブラーナナシ ID:kVlDjBUuH
初レースで追いかけ回されてたの、意味がわからなくて芝木焦ってたらしいの笑う
184:偲ぶギャンブラーナナシ ID:JnNeLL3VR
それはそう
187:偲ぶギャンブラーナナシ ID:vc2f6b6QN
ダービー後に競走馬研究所に運ばれて初めて、顔がめっちゃ牡馬ウケすることが判明するの、いやそうはならんやろ感がすごい
188:偲ぶギャンブラーナナシ ID:VWsXJDW6Y
研究所「オスにめちゃめちゃ好かれる顔です」
本原組「いや、そうはならんやろ」
サン 「なっとるやろがい!」
190:偲ぶギャンブラーナナシ ID:5LV1WRGER
めんこ着用してから多少マシになったから本当にそうだったんやろなあ
191:偲ぶギャンブラーナナシ ID:0flpFeUYK
ダービー敗北の話
柴畑「よく燃え尽き症候群になる馬が出るって話だけど、サンジェニュインの場合は逆に火が付いた感じだった。」
竹「レース終わったあともスゴイ睨み付けられた。ヒトが乗ってなければどつかれたかもしれない。。。」
192:偲ぶギャンブラーナナシ ID:R4Q8YXRyd
確かに治安の悪い目つきをしてた
194:偲ぶギャンブラーナナシ ID:8lpQDv7c/
目がちゃんとつり上がってたもんな
◣ _ ◢
こんな感じで
195:偲ぶギャンブラーナナシ ID:fW5XjW2Bf
なんか当時の写真なかったっけ
ディープインパクトのに映り込んでるヤツ
198:偲ぶギャンブラーナナシ ID:KmfJCf45I
>>195 これか?
https://sugoku_niranderu_sunge.jpeg
200:偲ぶギャンブラーナナシ ID:avNPZJf/L
>>198 それそれ トンクス
202:偲ぶギャンブラーナナシ ID:W8T3laoiD
馬場から降りればぬいぐるみみたいな顔してんのにな
203:偲ぶギャンブラーナナシ ID:oVHvNufIG
パドックンジェ→めちゃめちゃおとなしい(なお別周)
本馬場ンジェ→キリリッ
返し馬ンジェ→徐々に目つきが鋭くなる
ゲートンジェ→目元の治安悪化
レースンジェ→ドドドドドド・・・
206:偲ぶギャンブラーナナシ ID:pLnL/xpNT
>>203 草
208:偲ぶギャンブラーナナシ ID:sOI1zGuGx
>>203 間違ってなくて草
209:偲ぶギャンブラーナナシ ID:W3HwR9EEM
>>203 レースンジェはドドドドドよりズババババって感じじゃないか?
210:偲ぶギャンブラーナナシ ID:U8/yH5G8D
どっちもどっちだよ
213:偲ぶギャンブラーナナシ ID:K1mHdqbFi
見たい目よりは重いよな
216:偲ぶギャンブラーナナシ ID:2XMmRL46n
サンが走った後の芝、たいてい抉れてる
218:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ofn9TIXA6
こいつなんで洋芝であんなタイムでるんだって思ったけど、マジでパワーが別格だったんだな
220:偲ぶギャンブラーナナシ ID:6iLvVy2n/
リュベールもそういってるな
「サンジェニュインのスペシャルなところは、すごく力が強いところ。力が強いというのは、前に進む力が強いということ」
222:偲ぶギャンブラーナナシ ID:XIvR6FMLd
踏み込みの一完歩が通常の馬の2倍近い力になってるらしいので、カチカチの良馬場だと脚が傷みやすいっぽい
225:偲ぶギャンブラーナナシ ID:efTFvzM4H
はえー
http://screen_shot7/801_193.jpeg
227:偲ぶギャンブラーナナシ ID:SmZG5BQT+
>>225 データ壊れてるナリ
230:偲ぶギャンブラーナナシ ID:O0xkn/jq6
サンジェの走法に関して
・分類するならストライド走法だけど、脚の回転数も他馬よりある
・地面を掘りながら走っているイメージ(セクレタリアトみたいな)
・だから「等速ストライド」に限りなく近い走り方
けど蹴り出しが本当に強いので、パッと見は短距離馬の走り
ただスタミナがえげつないから中長距離でも勢いが落ちないのが特徴
231:偲ぶギャンブラーナナシ ID:E+Df/fOE+
前提として「体が丈夫だから」って四浦が念押ししてるの草
233:偲ぶギャンブラーナナシ ID:WzGuIPd4x
サンジェってよく休んでなかったか?
235:偲ぶギャンブラーナナシ ID:EE50NR8kz
言うて熱初の知らせを聞いたことはなかったな
238:偲ぶギャンブラーナナシ ID:hlUkRumvp
>>238 怪我で休んだことはない、虚弱でもない
休んでたりしたのは、弥生賞でゴール直後にぶっ倒れたのと(これは翌日に全快)、菊花賞後に疲労:激でJC回避したのと、凱旋門賞後に心房細動でJC回避のみだな
241:偲ぶギャンブラーナナシ ID:LI1vsTOGa
弥生賞のは出遅れて中団に閉じ込められたあと、ラスト一息で上り切った疲労
しかも翌日には怪我もなく元気になってる
菊花賞後は、そもそも1000m57~58秒台で爆走してたのが原因
本来なら骨折しててもおかしくないのに疲労で済んでるのが頑丈さの表れ
心房細動に関しては虚弱関係ないからね
242:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Wf0fRJ9sh
通常の馬が怪我レベルの走りをしても怪我しないのがサンジェニュインとかいうウッマ
244:偲ぶギャンブラーナナシ ID:wRhnUlR4K
ただでさえ重く、芝質も違う欧州レースでサンが爆走できてるのも馬体が丈夫だからだもんな
前に目黒さんがそんなことを本に書いてた希ガスる
247:偲ぶギャンブラーナナシ ID:DhCpAo5XN
これで夏生まれなんだから不思議だよな
250:偲ぶギャンブラーナナシ ID:c1uqMu2c1
柴畑:サンジェニュインは早熟馬
251:偲ぶギャンブラーナナシ ID:4XimohJWP
7月生まれの馬が12月デビュー、4月のG1同着優勝、って考えたら確かに早熟
254:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ng/shsI8z
ある意味その早熟性と活躍シーズンが被ったのがよかったのかもな
257:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Ou6hHDAmT
四浦「ちょっと話戻しますが、弥生賞から乗り替わりありましたよね。それについてはどうでしょう」
芝木「仕方ないこと。むしろ、自分の中で整理をつけるためにちょうど良かった。良い乗り替わりだったと思う」
柴畑「良い巡り合いだった。乗せてもらえるまで2週間近くかかったが、皐月賞とダービー頑張ってくれた」
後になって見れば確かに良い乗り替わりだったのかも
258:偲ぶギャンブラーナナシ ID:kagszT6gZ
弥生賞でサンに縋り付いてたところ現地で見たマンやが、あの状態の芝木乗せて皐月賞勝つどころか同着までもっていけたかは怪しい
260:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Oefzj5rSz
怪しいどころか無理では?
アレがトラウマになって、もう弥生賞やあすなろみたいなガシガシ騎乗できなかっただろうし、それで負けてそう
262:偲ぶギャンブラーナナシ ID:UX8GiW5GK
ダービーのハナ差1センチどころかダービー出れたかもわからん
264:偲ぶギャンブラーナナシ ID:L1KN+X1ke
皐月賞同着、ダービー二着からの神戸新聞杯、菊花賞の話になったな
265:偲ぶギャンブラーナナシ ID:jyUZ0qOZs
柴畑「怪我は想定外。でもこのまま乗るわけにもいかない。それで、真白に戻ってもらおうと思った」
芝木「戻りたいと思っていたが、どの面下げていけば良いかわからなかった。柴畑さんと竹さんに推薦してもらえて本当によかった」
竹「推薦の件は内緒だってテキに言ったのにあっさりバラされた。調教の時にサンに乗せてもらえたのでそれでお相子ということにしてる」
柴畑→竹でオファーもあったけどさすがにそれはできん、となって、柴畑から芝木推薦の話聞いて乗っかった、という流れらしい
268:偲ぶギャンブラーナナシ ID:X4btSbB1y
>>265 竹、面倒見いいよな
271:偲ぶギャンブラーナナシ ID:gp3fvwuDk
竹も柴畑も後進の育成には積極的だから
芝木はただでさえ才能もあったのに、プラスしてすげえ意欲的だったから可愛がってたんだろう
272:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xZcQqbGWc
乗り替わりってそういう流れだったんか
274:偲ぶギャンブラーナナシ ID:tRvS1pqQe
ノブオミおじさんも怪我さえしなけりゃ・・・と思うと同時に、謎の運命力を感じた
277:偲ぶギャンブラーナナシ ID:9b2iZIYu3
っていうか俺が一番驚いたのは、長年都市伝説みたいになってた「竹がサンジェの調教で乗り役やった」「柴畑の後釜に竹が押されてた」がガチだったこと
280:偲ぶギャンブラーナナシ ID:EFCRk8x6Z
>>277 それ
282:偲ぶギャンブラーナナシ ID:yrhxZPaEc
サンジェに竹が乗るとか、あまりにもあり得んすぎてネタだと思ってた
283:偲ぶギャンブラーナナシ ID:1WdtW+kSF
そういや当時のスレで「サンジェの足に合うのは竹だけど竹が一番無い」とか言われてなかった?
284:偲ぶギャンブラーナナシ ID:oci8ZI7oz
言われてた
285:偲ぶギャンブラーナナシ ID:N/7d7mUUw
確かに竹がいちばん合いそうだけど竹じゃ無理
286:偲ぶギャンブラーナナシ ID:jo6nSIIch
芝木→柴畑→ときたら、「芝/柴」を持たない竹が選ばれるわけ・・・
289:偲ぶギャンブラーナナシ ID:w5d9YMX+9
シバシバ理論草
292:偲ぶギャンブラーナナシ ID:T9gjlQsM0
>>283
コレだな
2005年黒いのと白いのを応援するスレ34
ttps://syosetu.org/novel/259581/25.html
611:この名無しが熱い ID:Mv7o4nJF3
竹がいっちばんサンの脚に合ってるのにいっちばん乗る可能性ないの笑う
295:偲ぶギャンブラーナナシ ID:bNYqXxoqc
草
296:偲ぶギャンブラーナナシ ID:0u60YMLsI
秋からの三連勝
有馬記念でハーツクライに騎乗したリュベールと初対戦に
リュベ「全員3歳馬2頭に注目してた。特に勢いに乗っているサンジェニュインはマーク。あの逃げ足で後ろに控えてたら追えないので、背中にひっつくのが一番だと思ったし、あたりだったと思ってる」
299:偲ぶギャンブラーナナシ ID:etgl7pojH
たし蟹
300:偲ぶギャンブラーナナシ ID:JocCCmwnE
そもそも後方に控えてサンジェを捉えきれるのはディープインパクトくらいなもんなんだよなあ
302:偲ぶギャンブラーナナシ ID:PzgQL5Y4q
よっぽど末脚に自信がない限りは難しい戦法ではある
303:偲ぶギャンブラーナナシ ID:fAzpPU//R
それまで差し追いだったハーツクライを先行に切り替えたの、勇気いっただろうなあ
306:偲ぶギャンブラーナナシ ID:UDwdzw6zk
いうてJCでアルカセット相手にいい勝負できたからってのもあるだろうけど
308:偲ぶギャンブラーナナシ ID:OBB4GHd5g
リュベールの切り替えは大成功だったろ
確かに有馬では1センチ差で負けてるけど、それでも1センチだからな
310:偲ぶギャンブラーナナシ ID:BP2Fx08vL
ドバイでは背中に張り付いてラスト2ハロンで差し切ったわけだし、やっぱ策士
312:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ueg1vIIXK
なおサンクルー大賞典
315:偲ぶギャンブラーナナシ ID:N81SEgdC+
>>312 リュベールにも無理なもんはある(震え
316:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ucLHCxDDl
あの有馬の大接戦はマジで興奮したな
おそらく世代どころかその時点の全頭の中でツートップだっただろうサンプイ相手にハーツが勝ち切ったか!?と思ってドキドキした
318:偲ぶギャンブラーナナシ ID:JFVb7mKXV
あんなに楽しいレースはない
馬券も美味かったし
319:偲ぶギャンブラーナナシ ID:i5rQRYbcN
当時はワンツーをサンとディープで固定してるやつ多すぎたから、サン、ハーツ、ディープの3連単はいい金額になったよなあ
322:偲ぶギャンブラーナナシ ID:zcz9T7ipT
リュベも観客の盛り上がりを見てしてやったりって気分だったらしい
324:偲ぶギャンブラーナナシ ID:4bU+yVoUd
結局またG1を逃したけど、招待が来たからドバイSCに出走して勝つんだから、ハーツはやっぱ強い馬だわ
327:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ZuCS5DEKZ
ドバイSC勝てなかったら種牡馬入りも怪しかっただろうし、アレは純粋に勝ってよかったと思う
ハーツが種牡馬入りしなかったらジャスタウェイもワナンドオンリーもドウデュースもいなかったから
329:偲ぶギャンブラーナナシ ID:H+b/oYtxZ
あの時の俺に「ハーツクライは将来ダービー馬を2頭出す種牡馬になる」って言っても信じてくれなさそう
330:偲ぶギャンブラーナナシ ID:AuICeoYtI
サンジェが長年国内ダービー馬になる産駒を出せてなかったって言っても信じてくれなさそう
331:偲ぶギャンブラーナナシ ID:k8NlWfH6f
2006年シーズンこそ敗北からスタートしたけど、サンジェが強いのはそこからだったな
332:偲ぶギャンブラーナナシ ID:1/3jqJLt8
あ、芝木ww
335:偲ぶギャンブラーナナシ ID:lH5pJvKrE
芝木早口で草
337:偲ぶギャンブラーナナシ ID:LJVJnD+cU
早い早い
340:偲ぶギャンブラーナナシ ID:6u2xBT3X2
こいつ、オタクか?
343:偲ぶギャンブラーナナシ ID:RZtxYY2PA
ノンストップで話すやん
344:偲ぶギャンブラーナナシ ID:asveMFcE/
四浦がちょいちょい止めようとしてるのに、竹たちがウンウンうなずくだけで助けないの大草原不可避
346:偲ぶギャンブラーナナシ ID:/fonYEVhV
さっきから隙あらば語ろうとしてたもんなwww
348:偲ぶギャンブラーナナシ ID:vBiiV41gj
内容を書き込んでくれてる有志、結構略してるからここだけ見てるやつはわからんかもしれんけど、マジで長い
さっきからちょいちょい語ろうとしてくる
350:偲ぶギャンブラーナナシ ID:jP340hYCN
芝木、まだ話してるwwww
・
・
・
■
「欧州戦は全勝でしたね。特に印象的なレースはなんですか?」
その質問に、よしきた、と俺の中の何かが返事をした。
「そうですね、ふたつあるんですけど。まずは欧州一発目のガネー賞と、最後の凱旋門賞。ガネー賞は26馬身差。とにかく強い勝ち方をしてくれましたあとからビデオを見てびっくりしましたよ、後ろが本当に見えない。あんまりにも強いので、国内でのレースはセーブしてたのかなって思うくらいでした。でもそれは、ただただ洋芝が肌にあっただけなんでしょうね。水を得た魚みたいに。稍重だった神戸新聞杯と似たようなものです。反動が少ない分、走りやすかったんだと思います。ドバイで負けたのもあって、サンジェ自身がここで負けられない!とさらに力を発揮してくれた結果でもあると思います。アイツが本来持っていた力を知ることができた、印象深いレースですね。ふたつめの凱旋門賞は、まあ語る内容が薄くなってしまうんですけど。というのも散々話してる内容なので。それにみなさんもアイツの凱旋門賞はご存じなので、今更俺が語るまでも、と思ったのですが、俺の中でも特に印象的なレースのひとつだったので話をさせてください。凱旋門賞は欧州G1・5連勝が掛かっていたのですが、それはあまり考えていませんでした。勝てると踏んでいたからじゃないです。ただ、この舞台に上がるのが楽しみだったからと、まず出走するという目標が遂げられたことへの安堵がありました。あとはサンジェに俺の全部をあげるつもりで挑んだのもあって、結果がどうであれ最善を尽くすつもりでいたからです。サンジェって馬はご存じの通り堂々とした馬で、当日も緊張感はなかったと思います。いつも通り他馬に絡まれていましたが、レース中も自分のことに集中できたんです。あとは、走りやすい場所を、走りやすいスピードで駆け抜けて、他馬の猛追を振り切ってゴールしてくれました。最後は馬の意地が勝った結果だと思います。あの後に雄叫びのように嘶いていたのは、今でも鮮明に思い出せますね」
本当はまだ話したりなかったが、視界の端で困った顔をする四浦アナを見て口を閉じた。
きっと俺が気付く前から困った顔をしていたのだろう。
……竹さん、柴畑さん、グラン。わかってて俺を止めなかったな。
恥ずかしいな、と思ったが、いや、と思い直す。
印象深いレースを聞かれ、思ったことを口にしただけだ。
別にやましい話をしたわけじゃない。
俺はそう思い直し、とりあえず微笑んだ。
イサノさんから『困ったときは笑っておくと便利です』と言われていたからだ。
「ハッ、あ、ああ、そうなんですね。貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。それでは──」
四浦アナが番組のスタッフに何かを目配せする。
どうやらここからは生産牧場やスタリオンからのメッセージビデオを流すらしい。
テレビではこの時間、俺たちは映っていないのだろうか。
『VTRをどうぞ』と四浦アナが言うと、隣に座っていた竹さんが小声で話しかけてきた。
「君がこれに参加しようと思ったのは、そのため?」
主語のない言葉の意味を探ろうとして、やめた。
聞かれる理由なんてひとつだけだったからだ。
俺が頷くのを見ると、竹さんは『いいね』と言って微笑んだ。
「自分の原点を忘れないのは、馬で飯を食っていく人間としてとても大事なことだよ」
自分の原点。
すとん、と胸の真ん中に落ちてきた。
── ああ、そうだ。
確かに原点と言えるだろう。
サンジェに、サンジェニュインという馬に出会わなければ今の俺は存在しない。
『ライアンと出会えなかったら。僕の人生は今とは違うものになっていた』
いつだったか、縦山さんがそう記者に答えていたのを思い出す。
俺も同じだ。
サンジェに出会っていなかったら、今、ここに立っていたか?
いないだろう。
調教師になろうと思いさえしなかったかもしれないし、そもそも、イサノさんと結婚して、4人の子供をもうけるところまでいなかったかもしれない。
あの日、俺の青春のすべてを形どったような、と思っていた馬は。
俺の青春どころか、人生そのものだったのだ。
もっともっと深いところ。
騎手として、馬とともに生きる者としての根本に『サンジェニュイン』はいた。
「ずっとすきでいる、じゃ、足りなかったかもしれない」
サンジェ。
お前と出会わなかった世界を想像したくない。
お前のいない世界があることすら考えたくない。
サンジェ。サンジェニュイン。
それでも、今、俺は。
「俺は、今、あいつのいない世界を生きてるんですね」
喪失はいつか、昇華されるのだろうか。
胸にできた穴は、ふさがるのだろうか。
「容易なことじゃないよ」
正面のディスプレイに映るVTRを眺めながら、竹さんがぽつりとつぶやく。
「悲しみは忘れ得ないし、忘れることが正しいとも思わない。でも、胸の隙間に花を添えて、歩き続けなければならない」
その空洞を愛で満たそう。
いつまでもお前を忘れないように。
思い出と、感謝と、いろんな感情を花に変えて。
■
・
・
・
477:偲ぶギャンブラーナナシ ID:USRlgHLIC
ンジェの出身牧場、変わりすぎぃ!?
478:偲ぶギャンブラーナナシ ID:+AxuvUaqi
サンが生まれた頃と比べるともう別の建物だろwww
479:偲ぶギャンブラーナナシ ID:2kYs+bDKY
まあ凱旋門賞馬の出身牧場がずっと寂びれた建物なのもちょっとね・・・
481:偲ぶギャンブラーナナシ ID:/niq1TNwc
ここでサンとアセンドトゥザサンが生まれたのか
2002~06年がめちゃめちゃボロいけど、この当時はピュアレディーしか繁殖馬がいなかったみたいだからセーフ?
484:偲ぶギャンブラーナナシ ID:P2W2I7PBE
なおピュアレディーはキングカメハメハのタマタマを蹴りそうになった罪でアメリカに戻された
486:偲ぶギャンブラーナナシ ID:oykyK/Y65
あかん(あかん)
488:偲ぶギャンブラーナナシ ID:mycdoTHHe
さすがにタマタマはやばいですよ!
491:偲ぶギャンブラーナナシ ID:an9C+UiTo
アセサンはOP馬になったけど重賞勝てず、障害競走もちょろっと走った後にセン馬になってノータンホースパークだっけ
494:偲ぶギャンブラーナナシ ID:K8iwbGNuK
>>491 せやで
497:偲ぶギャンブラーナナシ ID:vB0bACMtU
っぱサンが異常個体だったんすよ
498:偲ぶギャンブラーナナシ ID:7lYbn1KL7
白毛も突然変異だったし、マイラーほしくて配合したら中長距離の爆逃げホースが誕生しちゃったしな
501:偲ぶギャンブラーナナシ ID:SLyaJ1jaU
雑魚因子で育成してたら謎の引きの良さでUG作っちゃった、みたいな感じ
504:偲ぶギャンブラーナナシ ID:RQbILuepy
強い(確信)
506:偲ぶギャンブラーナナシ ID:C0OpZXTOI
陽来は繁殖もそうだけど、やっぱ欧州遠征する馬のためのトレーニングコースがあるのはでかいよな
オルフェやドンナ、シルバーにジャス、ブラワンやシャフとかが使ってたみたいだし
507:偲ぶギャンブラーナナシ ID:gSWTr+bh0
シャフ→陽来はいった!これは海外遠征決定!?
ってなったのは草
陽来入りすると高確率で海外飛ぶからそうなるのもわかるけども
510:偲ぶギャンブラーナナシ ID:RMTCkoJWY
リハビリのパターンもあるもんな
陽来といえば国内随一のリハビリテーションセンター
512:偲ぶギャンブラーナナシ ID:fw6oDprz6
サンジェが丈夫な馬体だったのも、幼少から入念にケアされてたからだっていう説もある
514:偲ぶギャンブラーナナシ ID:MA9421fHl
多少の無茶をしても手厚いサポートが受けられる環境で過ごせばそりゃな
515:偲ぶギャンブラーナナシ ID:7GlSzD88T
今や世界中の馬主から自分の子馬を預かってくれーって依頼あるの、これが2000年代初頭は牧場解散の危機にあったとは思えんくらいだわ
517:偲ぶギャンブラーナナシ ID:WVRS0Gci2
陽来生産馬、取引の第一位はやっぱり社来グループだけど、二位が石油王は笑っちゃうだろ
519:偲ぶギャンブラーナナシ ID:40fE4bxoh
殿下~~!!!!
522:偲ぶギャンブラーナナシ ID:c+NdsRy88
殿下またサンジェの仔買ってる・・・
523:偲ぶギャンブラーナナシ ID:iaTt0/nUf
初年度産駒のサニファで英国三冠馬とか偉業を達成してるのにまだまだ上を目指してるのかwww
525:偲ぶギャンブラーナナシ ID:deIR4zdFY
>>523 やっぱ熱初で凱旋門賞回避したのが悔しい説
528:偲ぶギャンブラーナナシ ID:CfqIvVhIP
その殿下自らが紹介する欧州にあるサンジェ専用厩舎
529:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Rt/B10Xou
あの・・・豪邸です・・・
531:偲ぶギャンブラーナナシ ID:cTM9DHYoR
たった1頭のためだけの厩舎とは思えん
534:偲ぶギャンブラーナナシ ID:9pe/XzKed
これがオイルマネー・・・ってコト・・・!?
536:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Ur677JwPN
でも社来SSにもサンジェ専用の厩舎あるんだろ?
538:偲ぶギャンブラーナナシ ID:frFVASkXm
>>536 それは将来的にもサンジェ産駒の種牡馬が住むこと前提の厩舎
サンジェニュインが亡くなった今、メロンソーダやシルバータイムらが使ってる
539:偲ぶギャンブラーナナシ ID:LH0I9I0mP
欧州にあるやつはマジでサンジェ用だから
540:偲ぶギャンブラーナナシ ID:jEHWYOSup
今はだれが使ってんの?
541:偲ぶギャンブラーナナシ ID:eXW/z10Lf
>>540 サニファ
543:偲ぶギャンブラーナナシ ID:haLINVN3s
元々サニファが種牡馬入りした後に改築してて、サンジェとサニファの共同厩舎になってる
544:偲ぶギャンブラーナナシ ID:l4Ql+gx5B
馬房がどえらい広くてちびるかと思った
547:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Io4Z4S8IA
いいなあ
550:偲ぶギャンブラーナナシ ID:az2yyCDXz
俺の部屋より確実に広くて草
552:偲ぶギャンブラーナナシ ID:4tu0nNik1
下手するとうちのオフィスとどっこいどっこいなんですけど…
554:偲ぶギャンブラーナナシ ID:EXg4UzTWb
>>554 素人ニキぃ!
556:偲ぶギャンブラーナナシ ID:/t+ufN2ca
生きとったんかワレ
559:偲ぶギャンブラーナナシ ID:K8wNqmTMM
CM入ったと思ったら素人兄貴もIN
562:偲ぶギャンブラーナナシ ID:+xgu4/HNB
久しぶりニキ~
563:偲ぶギャンブラーナナシ ID:O13oymdJh
事業は順調?
566:偲ぶギャンブラーナナシ ID:qx8FzCDk5
組合馬主っていう選択肢もあるし、ワンチャン地方所属のままダービー出るのもありだと思います!
567:偲ぶギャンブラーナナシ ID:S/jaZ1GnO
中央で馬主になるための条件って
1:収入が1700万円以上(過去2年分)
2:継続保有する資産総額が7500万円以上
これか
569:偲ぶギャンブラーナナシ ID:eQi+aFu5h
いやーきついっす
570:偲ぶギャンブラーナナシ ID:eS0xNPk1/
最初、パンピーでしかないニキにこれは無理ぽだと思ったんですけど
今はニキなら馬主になれそうだと思ってる
不思議
573:偲ぶギャンブラーナナシ ID:+fCiiekYa
>>570 わかるマーン
576:偲ぶギャンブラーナナシ ID:4tu0nNik1
事業は今のところ順調です
社員3人の小さな会社ですが、スレ民がサポートしてくれたこともあって売り上げはすごく良いので
ラストクロップのJRAブリーズアップセール(2歳)に間に合うんじゃないか、と思ってます
今日は特番見たかったので仕事を持ち帰りました
577:偲ぶギャンブラーナナシ ID:mcVAelJzH
ええ・・・
579:偲ぶギャンブラーナナシ ID:TVdNUbq2t
休め(休め)
580:偲ぶギャンブラーナナシ ID:s1RcedbXq
情熱大陸に取り上げられるくらいだからそりゃ事業の調子ええやろ、と思ってたけど素人兄貴はそろそろ休んでもろて
過労で倒れたりしたら意味ないんだぞ
581:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ANLGOjdPP
急に伸びるじゃん、と思ったら素人兄貴じゃん
そろそろ専スレ立てたら?
583:偲ぶギャンブラーナナシ ID:TkrY1nxgj
>>576 ニキが嫌なわけじゃないが、サンジェスレが頻繁にニキ関連でガイガイしちゃうから専スレ作ったりしてほしい
586:偲ぶギャンブラーナナシ ID:o8U+cWb63
別にあれてないしええやん
587:偲ぶギャンブラーナナシ ID:4Vcn3XXco
よくないだろ
サンジェのスレなのにニキの話題だけで1スレ終わったことあったじゃんww
590:偲ぶギャンブラーナナシ ID:4tu0nNik1
書き込んじゃったのであれですけど、今日はROMするつもりです
なんだかお騒がせしてしまってすみません
専スレはこれ立てました↓
https://syosetu.org/novel/270791/16.html
それじゃあそろそろCM終わるのでここら辺でノシです
593:偲ぶギャンブラーナナシ ID:3vsNyjRUc
>>590 いいぞー
595:偲ぶギャンブラーナナシ ID:LqpumB3GO
>>590 専スレあるならありがたい
598:偲ぶギャンブラーナナシ ID:00dWnFN2S
>>590 ノシー
600:偲ぶギャンブラーナナシ ID:FH5S1waCd
ニキもすっかりネットスラング身に着けてて草
603:偲ぶギャンブラーナナシ ID:j8KotYLYL
何も知らなかったニキが成長したなあ
605:偲ぶギャンブラーナナシ ID:aum0Zylrm
>>603 成長、、、?
607:偲ぶギャンブラーナナシ ID:1VJ4mC21f
>>605 退化してるっていいたいのかテメー
608:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xcO4lqZbC
まあ事業順調ならニキが馬主になれる日も近いだろ
それはそれで楽しみにするわ
611:偲ぶギャンブラーナナシ ID:yVMP94Jvg
四浦「サンジェニュインの産駒で思い出に残っている馬」
芝木「サニーメロンソーダ。初めて騎乗した産駒で、何度も振り落とされた。気難しい性格、というよりは悪戯好き。こいつが引退するまで五体満足でいられるか不安だった。最近だとサントゥナイト。凱旋門賞父子制覇は、長年の夢だった」
竹「サンサンドリーマー。3歳で制した天皇賞・秋はとても素晴らしいレースだった。子供を残せなかったので、それだけが残念。サンサンファイトとのダービーで7度目の優勝。ドウデュース以来だったのもそうだけど、サンジェニュイン産駒初ダービー馬をエスコートできてうれしい」
柴畑「アイシテルサニー。牝馬三冠を取らせてもらった。小柄で臆病な性格だったけど、前向きでひたむきな子。産駒にも乗りたかったけど、なかなか回ってこなくて結局そのまま。悔いがあるならそれだけ」
リュ「シルバータイム。クラシックは悔しかったけど、ドバイSC、サンクルー、インターナショナルS、海外のレースで強い走りをしてくれた。凱旋門賞2着は惜しかった」
613:偲ぶギャンブラーナナシ ID:m+FPmsC1O
納得の人選、いや馬選
614:偲ぶギャンブラーナナシ ID:lv0vDifDT
そらそうだろうよ、という選択
616:偲ぶギャンブラーナナシ ID:X8Iqxf2vh
芝木やっぱりサニメロで草
619:偲ぶギャンブラーナナシ ID:WguI5QLf2
気性難の扱い方を川添に聞きに行ったエピ好き
621:偲ぶギャンブラーナナシ ID:YBHuqdyW8
やばい馬といえば川添という風潮どうにかせえよww
623:偲ぶギャンブラーナナシ ID:l53MKP8kB
スイープ、オルフェ、エール
最近だとゴールドサンタ
ここまでくるとカレンチャンも気性難だったのではと疑わずにはいられない
624:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xCxok38dc
種牡馬としてのサンジェの話になったな
627:偲ぶギャンブラーナナシ ID:vnaUw2ZkD
VTR「クラシックディスタンスに向いた産駒を多く輩出。頑丈な馬体と脚質を受け継ぐ仔どもたちは毎年のように各国のクラシックレースに出走している」
代表産駒としてサニファ、シャトー
629:偲ぶギャンブラーナナシ ID:eVFs9mQBt
受胎率があほかってくらい高かったから産駒もいっぱいいるんだよな >サンジェ
631:偲ぶギャンブラーナナシ ID:WxIDcn88E
体も丈夫だしな
632:偲ぶギャンブラーナナシ ID:qYQxbKSe4
相手がどんなダート馬でも芝に魔改造すると噂
634:偲ぶギャンブラーナナシ ID:zYzneLaUY
恋人配合が結果残しすぎた結果、カネヒキリ×サンジェ牝馬、カネヒキリ牡馬×サンジェ牝馬、カネヒキリ牝馬×サンジェ牡馬、カネヒキリ牝馬×サンジェとかいろいろ配合された記憶
635:偲ぶギャンブラーナナシ ID:tZrzwve8T
血が近いのが一番のデメリットだったけど、それ以外はデメリットらしいのがなくてよく走ったよなほんと
636:偲ぶギャンブラーナナシ ID:LYW6A2xkQ
でもダートでも走ってたよな
シャイニングトップレディとか、カネヒキリとの配合だとハシルヒカリノユメ?
638:偲ぶギャンブラーナナシ ID:EQ0PYalXN
そうそう
アメリカダートでよく走ってた
国内だとイマイチ
641:偲ぶギャンブラーナナシ ID:KpOK+lf/M
むこうって砂っていうか土では・・・?
644:偲ぶギャンブラーナナシ ID:mHahCAZfC
脚が沈むらしいので、サンジェ特有のパワーが影響していると思われ
646:偲ぶギャンブラーナナシ ID:urpEUGxkp
ちな顔の良さも遺伝する模様
648:偲ぶギャンブラーナナシ ID:iejaJKxZH
やたら追い掛け回されてる白毛→サンジェ系
追い掛け回されない白毛→シラユキヒメ牝系
649:偲ぶギャンブラーナナシ ID:g4Y3SYr6V
全世界に2千頭いる白毛の8割が血統をたどるとサンジェに行き着くはなしほんとおもろい
650:偲ぶギャンブラーナナシ ID:MyUVsYDHc
白毛の祖やん
651:偲ぶギャンブラーナナシ ID:qICtGtMAy
サンはめっちゃ白毛だすけど、その産駒からは白毛生まれにくいとかいう遺伝子の謎
654:偲ぶギャンブラーナナシ ID:9+1JSOtFb
>>651 まだ研究されてるらしいからね、仕方ないね
657:偲ぶギャンブラーナナシ ID:aa01aUZEs
お、産駒たちの直近のレース流れた
659:偲ぶギャンブラーナナシ ID:xOD4Xr5wy
今年は、っていうか今年もサンサンファイト強すぎワロタ
660:偲ぶギャンブラーナナシ ID:GGvpa6o6U
有馬記念から高松宮記念に出走するあたおかローテで勝つの、いったい何なんだろうね・・・
661:偲ぶギャンブラーナナシ ID:vNtwM3KcD
いきなりナリブみたいな使い方すんな、とファンが思ったとか思わなかったとか
664:偲ぶギャンブラーナナシ ID:PwuwD3gK5
秋天とJCと有馬勝ったら古馬中長距離G1完全制覇か?
665:偲ぶギャンブラーナナシ ID:o6zQyVCc5
強すぎて草
666:偲ぶギャンブラーナナシ ID:12dRfMDHu
あれナイトの凱旋門賞だ
667:偲ぶギャンブラーナナシ ID:1Hgb/gYKD
うおお、もう1年前か
668:偲ぶギャンブラーナナシ ID:aakyJ01JY
時がたつのは本当に早い
サンジェが亡くなってから1年でもある
671:偲ぶギャンブラーナナシ ID:FVCFap847
そうか、もう一時間経ったのか
674:偲ぶギャンブラーナナシ ID:gxZLcRPo3
ガイガイしてたらすぐ終わっちゃったな
675:偲ぶギャンブラーナナシ ID:kRyzekb59
あ
677:偲ぶギャンブラーナナシ ID:7jw+1AlYa
ああ~~~~
678:偲ぶギャンブラーナナシ ID:XFUzRFq3g
芝木~~
679:偲ぶギャンブラーナナシ ID:cRuYc1sS9
芝木号泣
681:偲ぶギャンブラーナナシ ID:q1ym9BQrP
黙とうの後に芝木が涙
683:偲ぶギャンブラーナナシ ID:iQUZ+amBn
「まだ信じられない」
俺もだよ
684:偲ぶギャンブラーナナシ ID:mpwqPKd39
リュベールが芝木の背中さすってんのいいな
686:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ThOI3RQYM
この中だと年がいちばん近いもんな
689:偲ぶギャンブラーナナシ ID:6eVCMno/V
「サンジェは、俺の命全部渡したっていいと思えるくらい、大切な存在です」
691:偲ぶギャンブラーナナシ ID:gHvad/3iJ
馬相手にそこまで言う??さすがにリップサービス
692:偲ぶギャンブラーナナシ ID:dMSZdSwh0
>>691 黙って過去映像でも見てろ
695:偲ぶギャンブラーナナシ ID:MJlJVaYTl
芝木はな~サンに出会うまではそら騎手新人賞はとったけどパッとしないところがあった
でもサンに出会ったことでデカいレースにも挑んで海外にも行って
文字通り、サンと出会ったことで人生が変わってるんだもんな
696:偲ぶギャンブラーナナシ ID:Vc38dC1g9
ノリにとってのメジロライアン、タケにとってのスーパークリークあるいはサイレンススズカみたいに、めちゃめちゃデカい存在なんだろうよ
697:偲ぶギャンブラーナナシ ID:uHla8g5LM
サン死んだの芝木とナイトが凱旋門賞取って満面の笑みでピースしてた時だろ?
そんで二日後に帰国してから死んだこと知らされるって、実感もくそもないわな
1年たってもイマイチ受け入れられんのは理解できる
698:偲ぶギャンブラーナナシ ID:ILrwpFZvE
出会ったときは芝木20歳
凱旋門賞は22歳
人生の半分以上はサンジェと歩んできたんだからそら「俺の人生」よ
700:偲ぶギャンブラーナナシ ID:YNWrFXSN5
もう放送事故並みに泣いてるけど、、、
703:偲ぶギャンブラーナナシ ID:CAdPAfwlY
まだ数分はある
706:偲ぶギャンブラーナナシ ID:mDuNzu8Xc
がんばれ芝木
707:偲ぶギャンブラーナナシ ID:hcUBL0iNj
がんばれ~
709:偲ぶギャンブラーナナシ ID:gQU7ya0eF
何を応援してるかわからんけど、でもがんばれ芝木
712:偲ぶギャンブラーナナシ ID:5bCyjPRR/
スレ民、とつぜん邪悪性がはがれて幼児になるの草
714:偲ぶギャンブラーナナシ ID:+Qkic0GtD
言いたいことは、伝えたいことは伝えられるときに口にしないと
俺たちも他人事じゃない
ちょっと今から家族に挨拶してくる
716:偲ぶギャンブラーナナシ ID:XSIKSG+03
>>714 急に挨拶される家族かわいそう
719:偲ぶギャンブラーナナシ ID:8wR6SoxC3
お
・
・
・
■
泣くつもりなんてなかった。
それでも、最後。
サントゥナイトの凱旋門賞が流れた瞬間から、目が熱くて仕方がない。
サンジェ、俺の人生のすべて。
お前と走ったパリロンシャンの空を思い出すよ。
1人と1頭で駆け抜けた日々を思い出すよ。
これからは、それらすべてが記憶になる。
いつか色あせていくだろうか。
思い出せないほど掠れていくだろうか。
そうだとしても、今は、ただ。
今はただ。
「忘れないでください。サンジェニュインという馬がいたこと。光だったこと。確かに照らし切ったこと。目に見えなくても、鼓動を感じなくても。見上げて、空の真上に、あるいは手のひらに」
世界一かわいいと思う。俺の愛馬。
世界一かしこいと思う。俺の愛馬。
世界一かっこいいんだ。俺の愛馬。
どれほど言葉をかき集めても足りない。
涙ですら、足りない。
「次は、調教師として、サンジェの仔を、もしくはその仔を、凱旋門賞に送り出せたらと思います。その時、再び、みなさんは、サンジェニュインを思い知るでしょう」
くすむことのない唯一無二の光を放ち続ける。
サンジェニュインは、いつまでたっても、最高だから。
■
── 2028年7月。
その年のJRAブリーズアップセールに上場された1頭の白毛牡馬・ファビラスタイムの2026。
祖父・シンボリクリスエスに似た大きめの耳を左右に揺らして、その2歳馬は悠然と歩いていた。
両隣に立つ人のことなんかお構いなしと言わんばかりに、興味の赴くままにあたりを見ている。
そのマイペースさが、どこか懐かしかった。
「名前は?」
「ドリームデイ── サニードリームデイです」
サンジェニュインのラストクロップ。
わずか172頭の中の1頭。
これが初の所有馬となる馬主はまだ若く、それでいて活力に満ちた目をしていた。
聞けばサンジェニュインのファンだと言う。
産駒を所有するのが夢だと語る馬主に、俺は内心ほほ笑んだ。
そんなオーナーはいままで飽きるほど見た。
みんな夢を抱いて、でも厳しすぎる現実に心が折れていく。
この青年もそうなるだろうか?
……いや、もしかしたら。
俺をまっすぐに見つめる馬、サニードリームデイの瞳は、蒼穹を映していた。
どこまでも深く、どこまでも広い。
それは、パリロンシャンの空に似ていた。
「一緒に夢を見よう」
いつか同じセリフを、この馬の父にささやいた日々を思い出す。
今日からは、お前と、俺とお前とで夢を見よう。
俺の声なき声に、サニードリームデイは確かに嘶いた。
そのサニードリームデイが無敗の皐月賞馬になり、父の名が再び世界中を照らすまで、あと、1年。
最後までお読みいただきありがとうございました。
繰り返しになりますが、完結まで漕ぎ着け、こうして1周年記念SSが投稿できたのも、読んでくださった読者ニキネキのおかげです。
本当にありがとうございます。
本編は完結しましたが、この時間軸の続きが素人ニキ外伝「魂の照明」です。
https://syosetu.org/novel/270791/16.html
今回のSSではちょい役だった完全素人兄貴と、その愛馬・サニードリームデイが主役になります。
不定期ですが連載中ですので、よかったら読んでください。
そんなに数はありませんが、小説未満のネタなどはこちらに投稿してます。
https://sungenuin.fanbox.cc/
とんでもなく暇になったらお読みください。
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