タクシー不足で地方が悲鳴 でも業界はライドシェア導入に反対(2/3 ページ)

» 2023年10月18日 07時30分 公開
[産経新聞]
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 世界遺産「五箇山合掌造り集落」を有する市の高齢化率は39.5%で、全国平均(29.1%)を大きく上回るが、「車の保有率が高く、公共交通を使うことになじみのない方が多い」と同市政策推進課の荒井昌宏係長は話す。予約に応じた「デマンドバス」の実証運行も行っているが、利用は一日平均2人と低調だ。

 荒井係長は「『足』が必要な人が多いことは分かっているが、各地域の協議会で話し合っても、どうすればよいのかが見えない」とする。

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 市は7年前、米ウーバー社日本法人(東京)との間で全国の自治体で初めてとなる協定を締結。タクシーのない空白地限定で、ボランティアが自家用車で買い物したり、通院する高齢者を無料で送迎したりするための実証実験を試みようとしたが、業界団体が難色を示し、予算取り下げに追い込まれた。

 ただコロナ禍を経た今年8月の訪日外国人客は推計値で約216万人に上り、コロナ禍前の令和元年同月比で85.6%の水準まで回復した。南砺市でも世界遺産を訪れる外国人観光客が大幅に増えた。一方、法人タクシー運転手の数(3年度)は約22万人で、10年前から12万人以上減った。事業者数と車両数も減少傾向にあり、南砺市中心部でも夜のタクシー不足は特に深刻だという。

 田中幹夫市長は「南砺市の課題は全国の地方都市の課題だ。既存事業者との対立ではなく、共存共栄のシステムを構築していきたい」と話す。

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