よりよい環境づくりのため、店内をリニューアルしました。 もっとお菓子づくりを充実させたい。スタッフのために働きやすい環境をつくりたい。よりおいしいお菓子をお届けしたい。との想いから、2006年に2階仕事場拡張のための改装を行ないました。そこにはさらにクオリティを高めたいという思いがこめられています。 お菓子づくりをより充実させるための決断 「お客様にゆっくりくつろいでお菓子を楽しんでいただきたい」。現在のビルを建てるにあたり、2階にティーサロンを設けることは三嶋のかねてよりの願いでした。けれど、時が流れ、お菓子の種類はしだいに増え、それにつれて仕事量も増し、製造スペースが足りないという現実問題が立ちはだかってきました。もはや、現状のままでやりくりできるスペースはない。けれど、本当に納得のいく商品を作るためにはより広いスペースを確保しなければならない。それが「残念ではあるけれどティーサロンを変えるしかない」という決断を三嶋にさせてのです。 窓に面したオールカウンターの喫茶コーナー 改装によって解放感が増した1階店舗。2階へはエレベーターでの行き来となります。2階に上がり一歩進むと、ガラス越しにパイ生地をつくる風景が見えてきます。このパイ生地を手づくりすることへの強いこだわりこそが、今回の改装のきっかけでもあります。「これまでパイ生地は3階で作ってきましたが、パイの需要が増えていく中で物理的に手狭になってしまったのです」。明るく広い窓に面したオールカウンターの喫茶コーナーでは、より気軽にお菓子やお茶をお楽しみいただけるようになりました。 パイ生地を手作りすることへのこだわり 時代の流れか、パイ生地を手作りしない店が大半となり、問屋さんから冷凍生地を取り寄せる店がほとんどです。延ばしては折り、折っては延ばすを繰り返すパイ生地作りは大変な手間と労力がかかります。製造するスペースやスタッフも必要です。けれど、パイと名のつく商品にとってパイ生地はおいしさの命。特にブルーベリーパイやマロンパイをはじめ、パイが充実している16区にとってはなおさらです。これを既製品にすることは三嶋には考えられないことなのです。「僕がパティシエになったのは、おいしいお菓子を作りたかったから。作る、という原点は譲れない」。パイ生地を自分の店で手作りすることを、三嶋は16区の生命線であると考えています。 エルグワルシュ氏が認める最後の弟子として 三嶋が手作りにこだわるそのルーツにはパリ時代の師であり、多くのパティシエの尊敬を集めるムッシュ・エルグワルシュの存在があります。彼はすべて手間ひまかけて一から手作りすることに徹底的にこだわりました。また、彼は素材にもとことんこだわる人でした。市場で買えば済むフルーツもわざわざ車を走らせて信頼のおける生産者の元に買い付けにいくのです。今、三嶋がよりよい素材を求めて山梨へ、島根へ、奄美へと足を延ばすのも、エルグワルシュ氏の思いを受け継いでいるからに他なりません。「タカオは日本人だが私の仕事への姿勢を理解してくれた最後の弟子だ」。エルグワルシュ氏のその言葉は三嶋隆夫の支えであり、誇りでもあります。 パティシエを目指した時の気持ちを忘れない この秋(2011年)、フランス菓子16区はおかげさまで30周年を迎えます。「開店当時から16区の原点は、“その日作ったお菓子はその日のうちに売り切る”ことと“自分の作ったものは自分の目の届く範囲で提供する”ことにあります」。三嶋はこの言葉通り、毎日作るという鉄則を守り抜いています。その日に作った生ケーキはその日だけ。焼菓子も常に新しいものをお出ししているので脱酸素剤は入れません。「どんなに忙しくても手作りしているから、すべての商品を堂々とお客様にお出しできる。スタッフ全員が誇りを持っています」。三嶋がパティシエを目指した時の気持ちは今も心の中で輝き続けています。 |
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