しんぶん赤旗

お問い合わせ

  • 文字サイズ
  • 小
  • 中
  • 大

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら

2023年9月20日(水)

主張

女性支援基本計画

法の理念生かした拡充議論を

 2022年に成立した「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援法)」が24年4月に施行されます。生活困窮、DV被害、性的搾取などに苦しむ女性を公的枠組みで包括的に支援することが法の目的です。今年3月、国は基本方針を示しました。現在はこの方針に基づき都道府県が基本計画を策定中です。施策の拡充に向けた取り組みが重要です。

人権と福祉増進の観点

 従来、多様な困難を抱える女性の支援施策は売春防止法(1957年施行)が根拠でした。同法は女性が売春に「転落」しないよう保護収容し「更生」させるのが目的でした。売春をあっせんした業者は処罰対象ですが、買う側の男性は罪に問われず、女性のみを犯罪者扱いする差別的な法律でした。婦人相談所、婦人相談員、婦人保護施設の3機関が支援施策を担いましたが、福祉と人権増進の観点は不十分でした。

 DV防止法(2001年)、改正ストーカー規制法(13年)などが成立し、それらの被害者保護の受け皿の役割も3機関に求められました。高い秘匿性を必要とする利用者と、地域に開かれた社会生活が必要な利用者とが混在するようになって、かみ合った支援が難しくなり現場の苦労は増しました。支援対象の統一した基準がなく、施策も地域で異なる状況でした。

 こうした矛盾の解消のために女性支援法が成立しました。困難を抱える女性が意思を尊重されながら最適な支援を受けられ、「人権の擁護」と「男女平等の実現」に資することが基本理念に掲げられました。国が示した基本方針は、女性が「性暴力や性被害、性的搾取等の性的な被害に、より遭遇しやすい」ことを明確にしました。

 行政のみでは行き届きにくい支援活動をしている民間団体との対等な立場での協働も重視します。国の基本方針は、性搾取など女性を困難に追いやる構造に依存せずに生活できる支援の重要性も強調しています。一般社団法人Colabo(コラボ)など民間団体の粘り強い実践と提言が反映した大事な到達点です。これらの取り組みを敵視する勢力が若年女性支援団体に対するバッシングを続けています。逆流をはねのけ、女性支援法の理念が貫かれる支援施策を拡充することが求められています。

 婦人相談員(女性相談支援員に名称変更)は1579人(22年4月1日現在)ですが、市区の設置率は50・8%にすぎず、相談員の8割強が非常勤です。無期雇用の常勤職員とし、専門性に見合った処遇に改善することが急務です。

 婦人相談所(女性相談支援センターへ変更)の一時保護所は、生活が制約されることなどから若年女性が利用しにくいと言われます。加害者の追及の危険がなければ携帯電話を使用可とするガイドラインを厚生労働省が出しました。実施状況の確認が必要です。

全ての人を支える社会に

 婦人保護施設(女性自立支援施設へ変更)は未設置や休止中が8県あります。県を超えた広域利用の状況や、充足率など現状を把握することが大切です。

 福祉と人権の視点に立った公的支援を拡充することは、男性の性暴力被害者などを含め、全ての人を支える社会づくりにつながります。女性支援法を力に、各地で取り組みを前進させましょう。