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会話

ジャニーズ事務所が10日のプレスリリースで、私のマイクなしの質問を「不規則発言」だと勝手に断定しているのは、私だけでなく、世界のあらゆる記者会見での記者たちの質問を、中傷し、愚弄するものだと思います。記者が、マイクなしで質問するのは、逃げようとする会見者に説明責任を求める際のごく普通のやり方です。それを、会見とは関係ない「ヤジ」であるかのように印象づけようと、「不規則発言」などとプレスリリースにまで書き込むジャニーズ事務所からは、強い悪意を感じます。 マイクなしの質問は、「不規則発言」などでは全くなく、正当な質問です。これは私が、東日本大震災が発生した2011年3月11日、ホワイトハウスでたまたまあった記者会見で、マイクなしで「大統領、日本メディアから質問させてください」とオバマ氏に呼びかけ、質問に答えてもらった際のやりとりです。 オバマ氏は、マイクなしの私の声がけを聞き、私を指してくれました。マイクが回ってきて、大統領に、東日本大震災の被災地から伝わってくる痛ましい映像を見て、個人としてどう思うのかを問いました。 オバマ氏はこの会見冒頭で震災についてのメモを読み上げていました。私は、そんな事前に用意されていた声明ではなく、オバマ氏本人の個人的な思いをどうしても聞きたいと考え、マイクなしで質問の声を上げました。会見場の後ろのほうから、懸命にオバマ大統領に呼びかけました。 オバマ氏が心情を吐露したこの回答は、朝日新聞以外の多くの日本メディアが詳しく報じ、ほとんどの米主要メディアも流していました。CNNは「日本人記者に聞かれて初めて、オバマは本音を語った」と詳報していました。(朝日では、デスクがなぜか「お涙ちょうだいの原稿はいらない」と言い、質疑の原稿としては紙面に載りませんでした) オバマ氏が、私のマイクなしの質問に普通に答えてくれた通り、こうした質問は、米国や世界、日本の会見で、ごく普通の手法です。それを、ジャニーズ事務所は、「不規則発言」だなどと勝手に断じ、記者の質問の信頼性を意図的に毀損しようとしており、きわめて不誠実だと思います。日本や世界の現場で、真剣に質問しようとしている多くの記者たちに対する、攻撃でもあると感じます。ただでさえ、報道の自由度ランキングが他の主要国に比べて著しく低い日本において、権力側が記者への攻撃をさらに強める行為です。 それだけでなく、ジャニーズ事務所は10日のリリースで、「NGリスト」の記者として、望月氏、佐藤氏、私の名前を勝手に発表しました。一方で、芸能リポーターらの「候補」記者の名前は一切明かさず、隠したままです。NGリストの記者だけを名指しし、攻撃するように仕向ける、一種の「犬笛」だと私は感じます。 ジャニーズ事務所が問われているのは、世界史上最悪と言っていい、子供に対する組織的な性加害事件に対する説明責任です。50年近くにわたり、少なくとも数百人、おそらくは数千人が被害に遭っているとみられる、おぞましい性加害事件への説明責任と、真摯な改善策が問われているのです。 にもかかわらず、自らの非には向き合わず、記者攻撃に転じたジャニーズ事務所からみえるのは、性加害事件を数十年間にわたって組織的に隠蔽してきた会社の真の姿です。そのジャニーズ事務所の本質に、メディアは改めて目を向け、厳しく検証する必要があると強く思います。
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