クリスマス実装
最悪だ・・
こんな年の瀬に職を失う事になるとは
安っぽいクリスマスソング流れる
シャッターが目立つ商店街を抜け
安アパートに帰り重い気分で
戸を開けると音程の外れたクリスマスソングを
口ずさむ我が家の居候の姿が見える
寝転びながらケーキだの寿司だのと広告を広げ
それらに見入っている
無視して着替えてベットになだれ込む
このまま全てを忘れて寝りたい・・・
しかしこのささやかな望みすら叶わないのが今の現状だ
先程から緑の居候が耳元で煩く歌っている
渋々ベットから顔を上げると居候は嬉々として
自分の足元に広がる広告の御馳走を要求すかのように
お愛想を演じる
「うるせぇな 今の俺はそれどころじゃねぇんだ早く寝ろ!!」
リンガルを使うのもめんどくせぇ
言い終わるとそのままベットに顔を埋めた
しばらく居候は泣き喚いていた
しかし今日の居候は諦め無かった
いつまでもケーキの広告を抱いて要求し続けた
仕方なくリンガルを使い
「家にはもうサンタも来ないしクリスマスも無いの
解ったらさっさっと糞して寝ろ!!」
と言い放って背を向けてベットに寝転ぶ
職場では毎年小さいながらでもケーキを貰っていた去年までは
年を追うごとに小さくなっていき
とうとう今年はそれも無くなった惨めな話だ
背中では切り忘れたリンガルから我侭放題の居候の声が流れる
聞く気も無かったが居候の口から放たれた一言が
今日の俺には我慢出来なかった
おもむろに起き上がり掴み上げ居候を睨みつけ
昨夜の夕食のコンビニ弁当に付いていたプラ製ピックで
居候の左目を突き刺した
「この目か!!この目がつまらん物を見て俺に要求するのか!!えぇ!!」
突然の事でキョトンとした居候だがすぐに襲う激痛に泣きじゃくる
その声が余計に俺の怒りを助長させ行動がエスカレートし
気が付けば居候の両の目は針で串刺しになっていた
泣きじゃくる居候に手を焼いた俺は紐でグルグル巻きにして
ベランダに放り出しガラス戸とカーテンを閉め
ベッドに潜り込み両手で耳を塞いで寝た
夜も明けきらぬ早朝ベランダで居候は冷たくなっていた
「ケーキの一つも食べられない私は世界で一番不幸デス!!」
昨夜この一言を聞かなければ いやもし昨夜でなければ
俺は今でもコイツと仲良く暮らしていたかもしれない・・
終
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