「投資初心者はまずインデックス型投信、経験積んでからアクティブ型に」…三菱UFJアセットマネジメント・横川直社長
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岸田政権は、資産運用業界の改革を目指す政策プランを年内にまとめる。金融商品を提供する環境を整え、来年1月から始まる新しいNISA(少額投資非課税制度)と両輪で、国民の資産形成を後押しする。大手資産運用会社のトップに話を聞いた。
多すぎた投信、減らしていく
――新しいNISA(少額投資非課税制度)に向けた商品は。
「投資信託は、株価指数に連動して運用するインデックス型と、株価指数を上回る成長を目指すアクティブ型がある。アクティブ型は、自前での運用と、主に海外の運用会社に外部委託している商品があり、インデックス型と合わせて3本柱としている。
弊社はインデックス型に強みがあるとみられており、運用コストが小さい投信『イーマクシス スリム』は、数百万人のお客様に買って頂いている。投資の初心者には、インデックス型で経験を積み、いずれアクティブ型も保有してもらいたい」
――投信の本数はどうするか。
「弊社の投信は5年前に約700本あった。今は約600本まで絞っている。昔のように一時的な流行に沿ったテーマものは作らない。約束した価値が提供できない投信は、償還を進めていく。今後も減らす方向だ。償還手続きがもう少し簡略化されると進みやすくなる。
日本には投信が多すぎて選べない。本数を減らすべきだとの考えがある。償還は投資家の同意を得る必要があり、販売した銀行や証券会社の協力が欠かせない。販売会社にとっては手間がかかり、預かり資産残高も減るので、メリットが小さかった。最近は変わってきた。
販売会社にとっても、投信が多いと、資料を作るコストがかかり、負担が大きい」
――投信を減らすと、運用力は上がるのか。
「そういう面とそうではない面とある。インデックス型は、残高の大きい方が効率が良く、コストも小さくて済む。アクティブ型で小型株に投資している場合は、必ずしもそうとも言えない。投信は作る時よりも、日々の価格計算や帳簿付け、銘柄入れ替えなど運営に労力がかかる。投信が減れば、余力を他に回せる」
――金融庁は、投信の開示が海外に比べて遅れているとの問題意識がある。
「運用はチームでやっている。(海外のように)リーダーか担当者かの名前を出すべきかどうかを整理して、開示の範囲を広げてもいいと思っている。銘柄を開示することで、投資家が不利益を被る恐れもある。投資家の興味と運用を阻害しないようなバランスを取りたい」
投資家向けにブロガーミーティング
――親会社からの独立性をどう考えるか。
「弊社は大手金融グループ傘下の運用会社なので、利益相反が起こらない仕組みを作ってきた。最も大事なのは取締役会だ。昨年、社外取締役の人数を倍増した。親会社ではなく、外からの目で、投資家のために運用するようにしている」
――資産形成の普及で、個人投資家との距離は小さくなるのではないか。
「大きく変わったのは、以前は販売会社に売って頂くという意識が強かった。お客様がインターネット証券で指名買いする機会が増えた。販売会社を介さない流れは増えていくだろう。投資家向けに有名なブロガーを集めたミーティングを開いており、今後も増やす必要があるかもしれない。運用会社は良い商品を作るのが大事だが、個人にどう届けるかという点が大事な要素になってきている」
◆横川直氏(よこかわ・すなお) 1986年一橋大経卒、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行。2010年三菱UFJ投信(現三菱UFJアセットマネジメント)経営企画部長。20年三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役専務兼三菱UFJ信託銀行取締役副社長。21年4月から三菱UFJアセットマネジメント社長。北海道出身。