アプリのキャロルのチャレンジカップだったりプロットが迷走してその修正したり書き直したりといろいろありました…
一応クリスちゃんのせいでねじれたプロットの練り直しは終わったので次話の投稿はたぶん今回よりは速い…と思う…思いたい…
余りの遅筆ですが、読んでくださった方には本当に感謝しかありません
あとアドバイスとか感想とか頂けると幸いです
ところでこのシンフォギアとゴジラのコラボってこれは一体…どういうことなの…
では、第五話です
機械音、それと共に身体を乗せた台が輪をくぐる。幼い頃より見慣れた景色。消毒液をはじめとした薬品が漂うこの匂いもまたもはや古馴染みのものと言えるだろう。嫌悪感は示さないが特段と興味も湧かない。ただのいつも通り。やがて機械の動きが止まり、時を待つ。
『高町シュテルさん、検査が終わりましたのでもう起きても大丈夫ですよ』
そのアナウンスと共に、シュテルは身を起こした。
「シュテルちゃん久しぶりね。4年ぶりだっけ?」
「私が向こうに行ったのが小6の頃ですからそれぐらいだったかと」
「あんな小さな子がこんなに大きくなって…ちゃんとご飯食べてる?」
「いえ、ご心配なく。ただ、向こうの食文化は日本とは結構違ってたので行ってしばらくの間は慣れませんでしたね」
「確かイギリスよね?シュテルちゃんの実家って。先生も一度行ってみたいなぁ」
目の前の女医師はシュテルを見ながら感慨深そうに頷く。石田幸恵、シュテルの4年前の主治医だった人物だ。まだギリギリ20代という年齢でありながらも本人自体が優秀すぎるため、相手が勝手に引け目を感じてなかなか出会いがないのが悩みらしい。魔法やその他の異端技術の存在すら知らない完全なる一般人だが、それでも当時のシュテルを助けようと尽力してくれた。
「そうそう、響ちゃんと未来ちゃん東京の高校に進学しちゃったのよ。確かリディアン音楽院って名前だったかしら。一応先生も連絡先貰ってるけど、シュテルちゃんが帰ってきたこと連絡しておく?」
「あっ、いえ。実はすでに会ってきたんです。たまたま偶然でしたけど」
「あらそう」
幸恵の提案は善意からのものだったが、あの二人には非常に顔を合わせずらかったので慌てて誤魔化す。罪悪感が胸を走るが響に逢ったのは事実なので別に嘘は言っていない。
そんな小話をしているうちに幸恵が準備を終え、モニターに資料を表示する。先ほどシュテルが行った検査の結果だ。胸部にある複数の小さな砕片、わずかに変色した肉体、そして脚より神経系に沿って伸びる黒い蔦のようななにか。
「これだけを見るなら4年前と比べるとかなり進行してると言えるわ。以前は脚だけだったのに今はそれが胸のところにまで来てる。それ以外は健康体と言っても過言ではないかな。確かお母さまの研究所で治療を受けていたって聞いたけど実際のところ調子はどうかしら?」
「まだ本調子ではないですがもう大分普通の日常生活を送れるようには戻ってますね」
「よかった…一時期は本当にどうなることかと思ったけど、こうして元気な顔を見せてくれるなら先生は安心するわ」
現代医学では解明できなかった難病だったはずの少女、一時は余命を宣告されるほどだったが今は特段と異常があるようには見えない。過去の症状を知るだけに、幸恵は回復したシュテルのことを我が身のように喜ぶ。自分たちの治療では十分な効果を出せなかったが、そんなプライドも患者が完治してくれることと比べれば取るに足らないものだ。
そうやっていくつか質問されながら納得したのか、幸恵は大きな封筒をシュテルに渡す。
「はい、これ過去のメディカルチェックの結果ね。今回のと合わせて同封してあるわ。治療に必要なんでしょ?」
「あっはい、なんでも治療をあともう一押しするには発症当初のデータが必要なんだそうなんです」
手渡される封筒の中身を軽く確認しつつ、シュテルはそれをカバンの中に仕舞う。
「言ってくれれば郵送してもよかったのに」
「いい加減その、日本の味が恋しくなったんです。大分回復したってこともあって今回は特別にって言われましたね」
少し恥ずかしそうにするシュテル。欧州大陸のあちらこちらを転々としてきたが、どうも自分の舌は正直者だった。別に美味しくない訳じゃないんだが落ち着かないというか慣れない。日本に戻ってからデュランダル捜索の傍らに大量の食料品を買い込んだのは内緒の話。まあ、日本に来たのは財団にすら無断であったのだが。
「そうだ!シュテルちゃん、この後時間あるなら一緒にお食事にでも行かない?」
「あっ、いえその…実はまたすぐに出発しないといけないんです…」
「もう行っちゃうの?それは残念。いろいろとお話したいこともあったんだけどなぁ~」
「あはは…それはまた次の機会ということで…」
お誘いに乗りたいのは本心、しかし今こうして追われる身である以上時間がない。申し訳なさそうにするシュテルに幸恵は少し残念そうにしながらも笑って了承する。
「しかし本当に無事でよかったわ。4年前突然病院から姿消しちゃったときは本当に焦ったもん」
「その節は本当にご迷惑おかけしました」
「いいのいいの。あなたはまだ子どもなんだから。こうしたことを背負うのも大人の役目ってことよ」
過去のことは絶対突っ込まれるとは予測していたが、いざ話題に出されるとシュテルは若干顔を引きつらせながら苦笑いするしかない。病院から失踪したことの事後処理は財団が裏で手をまわしたと聞くが、一体どれほどの人に迷惑を掛けたことか。本当に頭が上がらない。
「シュテルちゃんも、響ちゃんもこうして元気になったんだからそれでいいじゃない」
笑いながら慰める幸恵。しかし予想外の名前が出たことにシュテルは思わず疑問が浮かぶ。病院とかとはあまり縁がなさそうな響の名前をここで聞くのは少しばかり想定外だった。
「響が…ですか?」
「あれ?シュテルちゃん本人から聞いてないの?」
「えっと、なにをですか…?」
シュテルのその様子に幸恵は首をかしげる。
「響ちゃんは2年前にツヴァイウィングのライブ会場でノイズに襲われて大けがして、そのあとずっとこの病院でリハビリ生活してたのよ?」
その言葉を聞いた瞬間、全身の血の気が引いたのをシュテルは自覚した。
「何も教えてなかったのかしらね」
シュテルが帰った後、一人コーヒーに口を付けながら幸恵はつぶやく。
あの感じだと響はシュテルに自分がノイズ災害に被災したことを何一つ教えなかったのだろう、本人からすれば隠しておきたかったことなのかもしれない。そのことに思い至って、一応シュテルには
少しでも患者のためになるのであればなんだってやるというのが幸恵のスタンスだ。給料にはならないが、場合によっては退院した後のケアも行う。だから響が退院した後も私的にそれなりに付き合いはあったし、退院した後の彼女に何が襲ったのかも知っていた。その時の自分は何もできず、ただ話を聞いてあげることしかできなかったが。
「あとで響ちゃんに謝らなくちゃね…」
申し訳ないと思いつつ、中身が飲み干されたカップを机に置いて目の前のカルテと向き合う。
原因不明の神経性麻痺、それが4年前にシュテルがこの病院に運び込まれた理由。その病は彼女から自分の足で歩く機能を奪った。そしてどんな手を尽くそうとも麻痺の侵食は徐々にしかし着実に進んでいき、いずれ内臓に達して死に至ると予測された。それを告げてから数日後であったか、シュテルが姿を消したのは。だから今日こうして彼女が再び現れ、自分の足でしっかりと歩く姿を見せたことには本当に驚いたし喜んだ。
すでに腹部、胸部に達しつつあるそれは、過去のデータと比較すればあと半年もすれば心臓へと到達することが予測できる。彼女を蝕む黒い蔦は未だそこに残っているが、今のデータには身体が麻痺して機能不全となっている様子はない。
「一体どんな方法を使ったのやら…」
そういえば亡くなったシュテルのお母さんは元々は機械工学の権威でありながら生体工学へと転向した人物であったと聞く。やはりそういう多角的なアプローチを持って初めて対処できる病だったのだろうか。素直に己の敗北を認めつつ、シュテルの治療を担当した医療研究機関とやらに幸恵は感謝の念を送った。
マグカップを片づけるために席を立とうとしたとき、卓上の電話が鳴る。とりあえず手に取ってみればフロントからの内線らしい。
『あの、石田先生。今お時間大丈夫ですか?面会したい方がいらっしゃるようですけど…』
「面会?とりあえず通しちゃって」
心当たりはあまりないが特に急ぎの用事もなかったので幸恵は承諾することにした。
そして待つこと数分、現れたのはスーツを着た若い男だった。差し出される名刺にある聞き慣れない名前に幸恵は少々眉を顰める。
「特別災害対策機動部…っていうのは政府の方ですか?」
「はい。主にノイズ災害について担当しています」
ノイズと聞いて真っ先に思い浮かんだのは響のこと。そういえば響が入院していたころもそのような人たちが動いていた記憶がある。
「それで緒川さん…でしたか。本日はどのようなご用件で?」
「実は高町シュテルさんについていくつかお尋ねしたいことがありまして────」
◇
「仲良しミーティング…なんてとても言える雰囲気じゃないけど、とにかく始めちゃいましょう」
「…」
いつもの発令所にてほぼいつものメンツ。なのにその場の空気はいつもと違う。その原因となったのは無論響だ。明るく、もはや二課のムードメーカー的な存在にもなっていた彼女は今酷く沈んでおり、これにはあの了子ですら普段のテンションで話しかけることを断念する始末。
けどそんな響のことを責めるような人はこの二課には誰一人として居ない。元々響には随分と苦労を掛けてしまったという自覚はあるし、発令所のメインモニターに映し出されている少女との関係を知ってしまってはなおさらだ。
「高町シュテル、15歳。戸籍上は千葉県遠見市在住で、父親は不明、母親は4年前に亡くなっており、本人もほぼ同時期に行方不明」
「そして響君の幼馴染…」
淡々と読み上げる藤尭に苦々しい顔をする弦十郎、そしてソファーの上で膝を抱える響。その様子を横目で見ながら了子はある画像を表示させる。茶色のカバーのついた辞書分厚い一冊の本。昨日、シュテルが姿を消したときに現れたものだ。
「財団からの同定結果も出たけど、彼女はどうも思ったよりも厄介な代物を抱えてるみたいね」
「あれは一体なんなんですか…?」
おずおずと響が尋ねる。シュテルになにがあったのか、なぜ自分たちの前から姿を消して、なぜ自分たちと戦っているのか。それを知りたいという想いは真っ当なものだろう。そんな響の疑問に答えるべく了子は口を開く。
「あれは財団が独自に策定したランクの中で第一級危険指定遺失物に分類される聖遺物。ロストテクニクス・データストレージ。通称────闇の書」
いつものおちゃらけた雰囲気はなく、まるで別人のような冷たさに藤尭が思わず了子を二度見するが構わず続ける。
「人の持つ精神エネルギーを蒐集することで力に変える魔導書。蒐集されたエネルギーはページとなって保存され、666ページすべてを埋め尽くして完成させたとき、失われた文明の魔法と秘められた膨大な力によってどんな願いもかなえられる。なんて伝承を持っているわ」
「実際にそんな能力を持つとはにわかには信じられんが…」
願いを叶えられると聞いて弦十郎が訝しむ。それもそうだろう、古来より願いをかなえる願望具は世界中の伝承に登場する。しかし、多くはなにかしらのしっぺ返しの逸話とセットになっており、教訓として語り継がれているパターンが多い。つまるところ胡散臭いことこの上ないのだ。
「ええ、そうよ。あれにはそんな機能はないもの」
「ないのか!?」
あんまりにもあっけらかんに言うものだから藤尭だけではなく弦十郎までもが腕を組んだまま虚を突かれたかのような表情を晒す。
「けどあながちすべてが嘘というわけでもないわ。あれは本来の機能は技術を記録すること。内部に蓄積されているのはかつて存在した魔法文明の残滓、失われた異端技術なの。だからそれらを十全に使えるようになれば大抵のことはできるようにはなる。それこそ世界を滅ぼすことだって簡単にね」
「滅ぼすって…」
「初めてその存在が観測されたのはおよそ600年ほど前。以来、未完成の状態ですら街一つ焼き滅ぼすほどの力を振るった事例はいくつもあったそうよ。だから闇の書は破壊の象徴としての側面もあったし、その力を巡っての争いも起きたことがある。案外シュテルちゃんの目的も──」
「シュテるんはそんなことしませんッ!!」
了子が言葉を言い切る前に響は思わず立ち上がって叫んだ。思い返せば親友のことについて知らないことの方が多かった。それでもこれだけははっきりと断言できる。
「シュテるんはそんなことをする人じゃあありません!だってそれは…それだけは絶対に絶対なんですッ!!」
突然荒げた声に、発令所に沈黙が訪れる。俯いた顔を上げれば感じるのは自分に向けられた視線。
「あっ……すみません…急に大きな声を出して…」
難しいことはよくわからない。でも師匠も二課のみんなも、いろんなことを考えなきゃいけない立場の人だってことはわかっていたはずなのに…。
自己嫌悪に陥ってたまらず響は顔を再び俯かせて背け、
「ふぇっ…?」
頭に暖かいものが乗せられるのを感じた。見上げれば弦十郎のごつごつした大きな手だ。
「俺は響君の言葉を信じるさ。なぁに、響君にそこまで啖呵を切らせた相手だからな」
「師匠…」
その温もりに響はわずかに安心感を得る。そういえばもう何年も誰かに頭を居なかったなぁ…などと場違いな思いを抱きながら。
「それに、これまでの戦闘記録を見るに、彼女は戦うときはいささか周りへの被害に気を使いすぎるきらいがある。破壊の力を求めてるような輩とは違うのだろう。であるならなにか別の目的があるように思える。そうだろ?了子君」
「えっ?ええ、そうね…」
言葉につられて視線を向ければ、弦十郎にいきなり話を振られて少し不意を突かれたような表情を浮かべつつ、どこかバツの悪そうに申し訳なくする了子のことが響の目に入った。
「響ちゃんごめんなさい。少々気が立ってたみたい…」
「いえ、その…もう大丈夫ですから…。それよりも!それよりも、シュテるんの別の目的って一体なんですか?」
いつも余裕たっぷりな了子でもこんなことがあるのを意外だと思いつつ、このままでは長い謝罪合戦になりそうだと感じたので響は先を促す。少しでも多く知りたいのだ、シュテルのことを。
「本題に入る前に。さっきの闇の書の話でどこか変だと感じないかしら?」
「変ですか?うーん…?」
頑張って答えを探そうと頑張るが、いかんせん普段から頭脳労働を避けてきた響の脳みそでは解答を導き出せそうにない。代わりに手を挙げたのは先ほど了子の話を振った弦十郎だった。
「これほど長い間その存在が確認され、なおかつ稼働していたと思われる完全聖遺物。完成の方法や完成すれば絶大な力を得られるというはっきりした伝承が残っている割には些かおとなしすぎる。であるならば、過去に闇の書を完成させてその力を完全に引き出せた者はいない。そんなところか?」
「いい答えね、さすがと言ったところかしら」
おおよそ求めていた理想的な回答に了子は少し微笑み、そして再び真剣な表情へと戻る。
「過去に完全起動させた形跡が存在しないのは、結論から言ってしまえば闇の書はその正常な機能をとうの昔に喪失していることに起因する」
「闇の書の産み出された目的はさっきも言ったように蒐集した人の持つ技術や技能を次の代へと継承させること。でも歴代主の中に、さらなる力を求めて闇の書の機能に手を加えようと試みた人たちがいて、それが原因で闇の書に致命的なエラーが発生してしまった」
「伝承に従い闇の書を完成させてもすぐに主は意識を奪われ闇の書は暴走、内包する天文単位クラスのエネルギー量がそのまま周囲に破壊をまき散らして文明を、いえ星をも破壊してしまうほどにね」
そこで了子は一旦話区切って喉を潤わす。聞き手に回っていた弦十郎たちは神妙な顔つきをしていた。
「なんというか、聞けば聞くほど物騒な代物だな。過去に完成してなくてよかったというしかないなこれは」
職業柄、完全聖遺物はどれもこれもろくなものではないと知っていたが、星を破壊しうると言われても実感が湧かない。しかしその弦十郎の言葉も了子によって訂正される。
「闇の書が過去に完成しなかったというのも少し違うわ。財団の記録では闇の書は600年前に一度完成して暴走していたそうよ」
「だがさっきの話の通りであれば被害が相当なものになるはずだが…」
弦十郎の疑問も当然のもの。少なくとも今告げられた情報だけではどうしてもそのような結論になる。
「押しとどめられたのよ。それ以上被害が広がらないように、暴走を止めた子たちの命と引き換えに──」
答える了子の視線はどこか遠くを見ているかのようで、響はその音色にわずかに怒りと悲しみが込められていた気がした。
「あの…思ったんですけど、そんなに危ない物なら完成させないようにするとか、どこかに保管しておくってのはできないんですか…?」
話をここまで聞いてきて、響の中で疑問が浮かぶ。現に昨日起動したデュランダルも今は二課の地下深くに再封印されている。同じようなことをすればいいはずなのだ。対して了子は一息をついて座り直す。
「闇の書には無限転生機構といって、前の主が死んだら次に素質を持った存在の中からランダムに選ばれた人の元に渡るシステムが組み込まれているの。だから闇の書の存在を財団は把握していても確保することができなかったわ。それと」
「ある意味こっちが闇の書の一番厄介なところだけど、闇の書は一定期間蒐集行為を行われなければ主に対しても侵食を行い、果てには命を喰らう。身体機能の一部を奪ったりしてね。響ちゃんにも心当たりあるでしょ?」
「まさか…それってッ!?」
心当たりしかない。だってシュテルが4年前に入院したのは身体を襲った激痛と足の機能を奪われたからだ。病院の石田先生があの手この手尽くして原因や治療法を探したのにすべて徒労となっていた。でもそれが闇の書のせいならば、お医者さんでしかない石田先生ではなにもできなかったのも当然と言うしか…
「本来それらを主に伝えてくれる守護騎士システム*1や闇の書の制御を司る管制人格*2も存在していたけど、前回の暴走の際に永遠に失われたそうよ。歴代主の多くが闇の書の完成をめざしたのもそういう所が理由。実にタチの悪い呪いね。ただ…」
手元の資料には母親が財団の直系に位置する人物であり、この数年間に何度も財団の本部が置かれてるロンドンに滞在していた記録があることが記されていた。
「亡くなった前代表のグレアム氏を含む一派が秘密裏に彼女と接触していたみたい。前代表のグレアム氏は財団とは違う目的で動いてたそうよ」
「ならば彼女が闇の書のリスクを知らなかったとは思えないわけだが。それにしても財団はよくそこまでの情報を開示したな」
どんな組織も一枚岩ではないのは弦十郎も身をもって知っている。だがそれはあくまでも内面の話であり、普通であれば自分の組織が半分に割れていることを伺わせるようなことは外部に言おうと思わないだろう。財団がそこまで開示したのであればそこにはなにかしらの思惑があると見える。
「財団からの情報開示の際につけられた条件が一つ。もし私たちが闇の書を確保し、彼女を拘束することに成功した場合、なんとしても高町シュテルの身柄を引き渡すこと。腕や脚の一本二本はちぎれる程度なら別にかまわないとね。最悪死亡してもその遺体だけでも絶対にとまで念を入れられたわ」
「…」
明らかに穏やかではない話に弦十郎の目付きが険しくなる。聞くだけでも財団は彼女をあまり人間扱いしていないような節があると感じた。
「いずれにしろ彼女の目的は依然不明でも、少なくとも闇の書の完成自体は目指していると見て間違いない」
「そうか。ならばこれからについてだが…響君は俺たちで対処するつもりだがそれでいいか?」
了子が一通り解説を終えたことで今後の方針を決めようとする弦十郎は響に目を見やる。ノイズを操るもう一つの勢力もあってか、現状満足に動かせる戦力は響しかない。
今の響を戦場に出すのはいささか危険すぎると弦十郎は感じるが、それと同時に響をこの件から外したところで彼女が割り切れそうもないということも予感していた。結局のところ最後はやはり本人の意思にゆだねるしかない。
「師匠、その…少し考えさせてください…」
「いいだろう…」
いつもの響らしからぬ煮え切らない返答だったが、事情が事情だけに弦十郎はそう返すよりほかなかった。
「緒川、そっちの方の首尾はどうだ?」
ミーティングが終わり、通路で端末片手に弦十郎は緒川に連絡を取っていた。
『兄上の力も借りて調査したのですが、高町シュテルという人物が響さんたちと出逢う半年前より以前に存在していた痕跡はどこにも見当たりませんでした。それと』
「それとなんだ?」
『シュテルさんの父親が判明しました。今詳細資料を送ります』
言葉と共に弦十郎の持つ端末に情報が表示される。
『名前はグランツ・
「だがこれは…」
顔写真と経歴に目を通していた弦十郎の目にある文字が止まる。
「海鳴市*3遺跡調査事故ですでに亡くなっている…だと…?」
遺跡調査を専門とするスクライアの調査チームを襲った遺跡内での火事。多数の死傷者を出した大惨事であったことから、朧気ながらも弦十郎も覚えているニュースだ。経緯は奏の一家を襲った悲劇とよく似ている。
だが致命的におかしいことがある。
端末をスクロールしてある名前と一つの写真を見つけたとき、弦十郎は目を顰めた。
少し頼りなさそうに危なっかしく肩車する男性と、それを微笑みながら見つめる優しそうな女性、そして肩車されて大喜びしている一人の幼女。どこにでもあるようなありふれた家族の幸せなひと時を切り抜いたもの。
それが決して存在するはずのない時系列のものであることを除けば。
「シュテル君…君は一体なにものなんだ…?」
高町星光と記された資料の少女は弦十郎の問いかけになにも答えず、ただ快活な笑顔を浮かべるだけだった。
◇
海に近い公園のベンチで響は一人黄昏ていた。
昨日今日とでいろんなことがあり過ぎて、師匠には考えてから結論を出すなんて言ったものの何も見えて来そうにない。
シュテルに対しての想いはいろいろと複雑だ。
もう一度逢いたいという切望、傍にいてほしかったという想い、どうしてなにも相談してくれないのかという困惑、勝手に姿を消したことへのわずかばかりの怒りと大きな悲しみ、何もできなかった無力感と焦り、そして彼女に力を振るってしまった恐怖と罪悪感。何もかもがぐちゃぐちゃになって整理ができずに溢れ出そうになる。
ミーティングで何度も聞いたシュテルが抱えるモノ。どれも子どものころのように、ただ手を繋いで走り回れば忘れられるようなものではなくなってしまった。
「シュテるん…」
その名前を呟いても答えは帰ってこない。
あの日、戦場に立つ覚悟を問われたときに触れられた両手。優しくて暖かくて、ゆえにシュテルが破壊の力を求めていないって確信してる。だからちゃんと話し合って、なにをしようとしているのかを知って、シュテルのことを助けたい。
でも────
夕日に照らされた手のひらを見つめる。
シュテルは私の手は壊すためのものじゃないって言ってくれた。けれどデュランダルに触れたとき、全身を走ったのは昏い衝動。了子さんは聖遺物同士の反発によるものだって言っていたけど、あの時ほんの少し、邪魔するものは消えちゃえと心の奥底で思ってたんだ。
奏さんから託されたシンフォギア、みんなを助けられるかもしれない歌の力。だけど今は少しだけそれが怖い。
「どうすればいいのかわからないよ…」
思わず膝を抱えて顔をうずめる。吹き付けてくる夕方の風が少し冷たい。ふと、目の前が暗くなったのに気づく。
「響、こんなところに居たんだ」
「未来…」
私の大切な陽だまりがそこに居た。
「ここ、座るね」
「…」
響がなにか返事する前に未来は隣に腰を下ろす。
いつもなら傍にいてくれるだけで暖かな気持ちになれるのにこんな時に限ってちょっぴり居心地が悪い。未来にはいろいろ隠し事をしてしまってるせいだ。
より膝を抱え込み、二人の間に沈黙が流れる。
「こうしていると少し昔のことを思い出すね」
先に静寂を破ったのは未来の声。響のことを責めるのでもなく咎めるのでもなく、遠くを見て懐かしんでいるような。響はそんな未来の顔をまじまじと見た。
「シュテルと初めて出会ったときのこと。響も覚えてるでしょ?」
「うん…」
「あの時もこんな感じの空だったなぁ」
もちろんちゃんと覚えてる。空気がよく冷えて、空がきれいな茜色に染まっていて。そんな中でシュテルは一人公園で膝を抱えて座り込んで、泣いた。本人はきっと否定するだろうけど。
それもみんな遠い昔の出来事であり、もう取り戻せない時間。
「ねぇ響、約束通り私が響に秘密にしてたこと教えるね」
そういえばおとといの呼び出し前に未来とそんな約束を交わしていた気がする。いろいろあり過ぎてすっかり忘れてしまってたけど。その未来が打ち明けようとすることに響は耳を傾ける。
「前に私がノイズに襲われたことってあったでしょ?」
「うん」
確か今月初めのことだったはず。小さい子どもを助けようとしたときにノイズに襲われかけたという話は聞いた。
「その時に私はたぶんシュテルに助けられたの」
「────ッ」
その名前に胸の鼓動が強く波打つ。
ああ、そうだ。あの日、響たちが出動した場所とリディアンを挟んだ反対方向に出現したノイズを殲滅したのはあの紫色の少女。つまりシュテルだ。ヒントはあったのにすっかりそのことを見落としていた。
「顔を隠して魔法のような力を使って、たけどあれは間違いなくシュテル」
そろそろ沈みそうな太陽を見つめながら未来は語る。
「未来はさ、シュテルが今なに考えてるのか気にならないの…?」
ふと口から漏れ出た疑問。シュテルのことを案じてたのは未来も同じだし、シュテルが自分たちの知らない何かを抱えているのも目の当たりにした。なのにどうしてそんな風に穏やかでいられるのか、わからない。
「心配だよ、ほんとはとってもとっても。脚のこともあるしなんか変な魔法みたいな力持ってたし言いたいこともたくさんある。だけどね」
「だけど…?」
「あの時シュテルは見ず知らずの誰かを助けるために戦ってたの。だからたぶんどこに居ても何をしても、シュテルの根の部分は変わらずシュテルのままなんだと思う」
秘密主義なのは相変わらずだけどねと未来は少し困ったように笑った。
「とにかく、私の隠し事はこれでおしまい。響にはもっと早く伝えたかったけどごめんね?」
「あ、あのね未来。わ、私も…」
自分の秘め事をすべてさらけ出した未来。だから響もまた告げようとして、しかし言葉を繰り出せずにいる。
(どうして…未来みたいに言えないの…!?)
本当は全部言ってしまいたいのに、だけど未来を戦いに巻き込むことになってしまう。そのことがたまらず怖くて、最後の一歩を踏み出ずにいた。
そんな響の手を未来は握りしめる。
「いいよ、無理して言わなくても」
「でも…!」
「私が響に隠し事をしてほしくなかったのは響の力になりたかったからだよ。響の背負ってるものを一緒に背負ってあげたい」
その目に宿るのは強い決意。今の響が見失っているものだ。
「でもね、もし響にとって秘密を打ち明けることが重荷になるなら私は知らないままでいい。だって響には笑っていてほしいから」
夕焼けに照らされて微笑む未来の笑顔が響にはやけに眩しくて、だから────
突然自分たちを囲むようにして現れた大量のノイズと、沈む太陽の逆光の中に立つ白い少女に、心臓を鷲掴みされたような気分になった。
唐突に出現したノイズは力を持たない人にとって死の象徴そのもの。だが取り囲むだけで襲ってこないノイズとそれを操っているであろう存在がさらに未来を混乱させる。
そんな中で、白い鎧を着た少女はただ静かに響のことをじっと見つめていた。
「未来…ごめん…」
「響…?」
視線を受け、響は俯きながら未来より一歩前に出る。聞こえるのは困惑の声。つられて罪悪感と心苦しさが押し寄せる。
だけど、未来を助けるためならばそんなのどうだっていい。
かすれた声で聖詠を紡いだ。
Balwisyall nescell gungnir tron────
光が奔り、シンフォギアを身に纏う。
「ひ、びき…?それ…」
未来からの問いかけには答えず、代わりに顔を上げてネフシュタンの少女を見つめ返す。
「私が目的なら未来を、この子を見逃して」
むちゃくちゃなこと言っているのは自覚している。だけどこれほどのノイズで囲ませながらも攻撃してこなかった。なら今はその優しさに賭けたい。
「ああ、アタシも構わねぇ…用があるのは元よりお前だけだ」
一瞬呆けるものの、わずかな間を置いて言葉と共に少女は杖をかざし、ノイズに道を開かせる。
「ほら、早くいけ」
ぶっきらぼうな物言いだが、そこにわずかな安堵が込められているように響は感じた。
「ひ、響も一緒に…!」
だけど言われた方の未来は状況を飲み込めておらず、響の手を引っ張って一緒に逃げようとする。
そんな未来の行動を嬉しく思いながらも響はその手を離す。
「未来は行ってて」
「どうして!?響がまた危ないことに巻き込まれてるんだよ!?」
普通の人として生きてほしいのに響を襲う理不尽の数々。やりきれない想いが未来から溢れる。
「これは私がやらなくちゃいけないことだから」
「響…」
未来を護って、目の前の少女とお話する。それが今の響にとって絶対にしなくちゃいけないこと。
崩れ落ちて涙を零す陽だまりに背を向け、響は一歩前に出る。同時にシンフォギアの通信装置を起動させて二課に繋ぎ、
「師匠。民間の要救助者がいます。至急、保護をお願いします…」
言い終えるとともに駆けだした。
◇
本当はそいつを見つけた瞬間に襲うつもりだった。
だけどそいつの隣には無関係な人がいて、巻き込むのが気が引ける。だからノイズで囲んで脅そうとした。
敵であるあたしを信じて逃がしてくれだなんて乞うあの頭のお花畑っぷりには胸やけがしそうだったが、幸いこちらにとっても渡りに船。すぐに道を開いてやって逃がそうとした。普通の人なら他人を犠牲にしてでも逃げだそうとするノイズが相手だ。きっと一目散にどっかに行くに違いない。
なのにアイツの横に居たやつは逃げようとしなかった。
力なんてない弱者なのに、逆立ちしたって敵わないノイズが目の前に居るのに、あのどんくさい装者モドキを庇おうとする。
なんでだよ…そいつは戦う力を持ってるやつなんだぞ……
戦場で弱いやつにできることなんてなんにもないってのに。
胸が痛くなるがここは戦場。
どんくさいのが市街地を避けて人気のない場所へと走るのを見て誘いに乗った。そうだ、あたしが今フィーネから課せられたことはあのどんくさい装者モドキを攫うこと、ほかは一旦置いておけ。
森深くへと入り込んだところで装者モドキ目掛けてネフシュタンの鞭を飛ばすが躱された。
「どんくせえのがやってくれる…ッ!」
数日前に比べてもなお動きがいい。まだまだあの風鳴翼のが上だが、成長速度が異常だ。認めたくはないがフィーネが気に掛けるのもわかるというもの。
けど、そんなあたしの言葉にどんくさいのが食って掛かる。
「私はどんくさいのなんて名前じゃない!!立花響ていうちゃんとした名前がある!」
いや、それは知ってる。知ってるから。フィーネからは二課の戦力に関する情報は大体教えられているから。
こっちが呆けてる間にそいつは聞いてもないことをべらべらを喋り出す。好きなものだとか、身長とか。体重は秘密にしてたがあいにくこっちはすでに資料で見せられてるが。彼氏いない歴などどうだっていいだろ!?
「なにトチ狂ってやがるんだお前…」
あまりの脳天気さに思わずうめく。とても戦場でするような会話じゃない、頭のお花畑具合が爆発してる、し過ぎてる。頭を抱えたくなる現状だがそいつは両手を広げて叫ぶ。
「私は話し合いたい!話し合おうよ!」
「この期に及んでなにをッ!」
その減らず口を黙らせるための必中の一撃。されど躱され、続いて二発三発と連撃を繰り出すがこれも危なげなく避けられる。そして気づく、こいつは躱してても反撃を一切してきていない。ふざけているのか…!
「さっきだって未来のことを見逃してくれた!だからきっと私たちはわかり合えるんだ!」
違う。あの子を見逃したのは巻き込みたくなかったからで。だけどソイツの言葉は徐々にあたしの触れてほしくないところへと近づいてゆく。
「私たちはノイズと違って言葉が通じるんだよ!言葉が通じれば人間はきっと────」
「────うるさいッ!!!」
最後の一線に触れたとき、感情が爆発した。
「人と人が!わかり合えるなようにできちゃ居るもんかよッ!」
鞭を大きく振るった。まだなにかピーチクパーチク御託を並べようとするがそんな隙なんざ与えない。鞭で動きを制限してそこに打撃と蹴りの連撃を入れていく。そいつも回避しようとするが徐々に命中だが増えて押され気味になった。
人の、特に大人の醜さはよく知っている。どいつもこいつもクソッタレ。小さい頃に紛争地帯に取り残されてからずっと見せつけられてきた。力を持ったやつは弱者をいたぶろうとして、弱者は弱者でメソメソ泣くか他人を売る。人と人がわかり合えるものか。
だからあたし戦争の火種を消すために戦いの意思と力を持つ人間を叩き潰すと決めたッ!
怒りと嘆きを全部拳に乗せて叩きつける。しかし、
「なにッ!?」
あたしの一撃がそいつの突き出した拳とぶつかった。完全聖遺物の力と拮抗したそれに驚愕する。アームドギアすら纏えなかったへなちょこだったはずなのに。
一歩飛びのいて引いて見たら疑問が氷解した。やつはアームドギアを形成するはずのエネルギーをそのまま叩きつけてきたのだ。下手すればあの日の風鳴翼の絶唱にすら等しきエネルギー。先ほどまでできていなかったことからあることに気づく。
「まさか戦ってる最中に成長してるってのか…!?」
しかしその驚きを消化する時間はない。一息置いて今度は向こうから突撃してきた。一撃一撃が重く、さっきまで押していたはずなのに今や押されているではないか。鞭で受け止めようにもガードごと吹き飛ばされる。圧倒されっぱなしだ。
血が上った頭もこの状況には思わず冷やされる。一つはっきりしていることはこのままでは負けてしまうということ。
(あたしが負ける?)
そこに思い至ったとき、足場が急に消えてしまったような恐怖が駆け巡った。
もうすでに何度も課せられた任務を失敗してきた。今回も失敗すれば、今度こそフィーネから見限られる。戦争の火種をなくす夢も果たせずに捨てられる。
また独りぼっちになる────
思わず歯ぎしりをした。本当は使いたくないもう一つの力。ネフシュタンの鎧は強力だが手数の少なさから自分の戦い方とはイマイチ噛み合ってなかった。
だけど今は使うしかない。
あたしは負けられない、負けたくない────
「アーマーパージだッ!」
「!?」
ネフシュタンの鎧を解除してあたり一面を吹き飛ばす。
「見せてやる、あたしの、雪音クリスとイチイバルの力を」
Killter Ichaival tron────
フィーネから与えられ、パパとママが遺してくれた大っ嫌いな歌の力を、シンフォギアを纏って、
「お前を連れて行く────ッ!」
あたしは引き金を引いた。
思い出すのは遠くから聞こえた爆音。あの時響の手を離してしまったときの後悔。
緒川さんという人に連れられて二課と呼ばれる場所で説明を受けて、司令である弦十郎さんに頭下げられて精一杯謝られてもどこか現実味がなくて。家に帰った今でもずっと逆光の中に立つ響の背中がリフレインする。
響が隠し事していたのは怒ってない。シュテルですでに慣れたから。頭の中がぐちゃぐちゃでなにもできそうにない。一人で寝る二段ベッドはいつもよりやけに広く感じる。
一つ言えることは、
響が連れ去られて、帰ってこなかったこと。
「逢いたいよ…もう逢えないなんて嫌だよ…響、シュテル…」
◇
世界はいつだってこんなはずじゃないことばかり。
石田先生からもらったカルテを見ながらため息をつく。
胸部にある複数の小さな砕片はダインスレイフの欠片、脚より神経系に沿って伸びる黒い蔦のようなものは闇の書による浸食の痕跡、そしてわずかに変色した肉体はシュテルが産まれたときよりともに有ったものであり、母さんの幸せを奪った
だけど溜息はこれが原因じゃない。
この命のろうそくの残りの長さを知るために生まれ育った街へと帰った。しかしそこで知ったのは響がノイズに襲われたという過去。
ツヴァイウィングのライブ事件。それはシュテルが居た海外でも大ニュースとして報じられていた。ましてや風鳴翼のファンでもあったシュテルが受けた衝撃は少なくない。とても痛ましい事件だと思った。でも、それだけだった。
だけどそこに、その場所に響が居た。ニュース画面の向こう側じゃなく、もっと現実に、身近な出来事。
「もし、私が響たちのそばを離れていなかったら…」
響は、普通の人のままで居られたんだろうか?
無意味な仮定、後悔はいつだって後からやってくる。
夜の街灯に照らされた影はどこまでも伸びていて、目の前の暗闇はまるでシュテルの未来を暗示しているようで。けれど立ち止まるわけにはいかない。悲劇の連鎖を終わらせるためにと、時計の針を進めたのだ。
歩き続けたその脚を止め、目の前の建物を見上げる。
時刻は深夜、もう誰も居ないグランドと電気一つついていない校舎。
「リディアン音楽院…いえ、特異災害対策機動部二課。デュランダルがここにある…」
調査によって既に判明した相手の本丸。虎穴に入らずんば虎子を得ず。
もうあとに引けないなら進むしかない。
そうやって、シュテルは足を踏み出した────
クリスちゃんが頑張り過ぎたせいで無印のプロット全部書き直しになったんですけお…(ガバ4回)
クリスちゃんが勝つとか作者的にちょっと想定外…
なおズバババーンは絶唱負荷+闇の書の蒐集でコンディションが原作よりも悪くて動けなかった模様