夜明けの明星   作:高杉ワロタ

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シンフォギアTVシリーズ完結ということでスタートです


Episode01 再会

 私には自分ではない誰かの記憶が宿っている。

 

 宿っているとは言うものの人生丸々一回分というほどの量はなく、せいぜいいくつかの出来事や風景、知識が断片のような形で存在しているにすぎない。

 

 私自身の今世ではっきりと思い出せる最も古い記憶はどこかの病院で医者たちに囲まれた治療ポッドの中で、母さんがポッドの外から私のことを心配そうに覗き込んでいた姿だった。

 母さんから聞かされた話だが、どうやら私は大きな()()に巻き込まれてしまっていたらしく、一緒に居た父さんは私を庇って亡くなって私は()()()()助かったのだという。

 

 その事故の影響かは不明だが私は自分のそれ以前の記憶をほとんど思い出せず、必然的に自分に宿った誰かの記憶だけが私が私足るすべてだった。

 

 

 病院を退院した後は母さんと二人暮らしになったが、一日の中で母さんと一緒に居られる時間はあまり多くはなかった。

 世間一般では5歳の小娘を一人家に残して仕事三昧なのは眉をひそめられることだろうが、あいにく母さんはかなり優秀な研究者だったようで、休みさえも自分で取ることができないほど多忙であった。

 

 

 おかげでいつも家に帰ってくるのは日付を越えてからだし、土日祝日も返上で出勤。せっかく取った有給休暇も電話一本ですぐにお釈迦に。

 独りで居るのは寂しかったが、それでも毎日疲れ切って帰ってきてはソファで力尽きたように寝込んでしまう母さんを見ると弱音も吐けず、私は母さんを心配させまいといい子で居ようと努めた。

 

 母さんの負担を少しでも減らそうと掃除や洗濯、料理のための買い物をやりながら本を読んだりして時間を潰しながら母さんの帰りを待つのが私の日常だった。

 初めは大変だったけど人間とは慣れる生き物のようで、2、3ヵ月もするころにはどうにか一通りこなせるようになった。

 私に宿った知識は私がこれらの作業をこなすことに大いに役に立ったし記憶のおかげで独りでいるのにも耐えることができた。

 

 だが、多少の事情を知っていた商店街のおじさまやおばさま方はいつも優しくしてくれたが、5歳の子どもらしかぬ落ち着きや、妙に理屈っぽい物言いは同世代の周りからは酷く気味悪がられ、一緒に遊んでくれるどころか話しかけて来ようとする子どもさえ誰一人居なかった。

 

 

 そして人間の精神年齢というものはどうやら肉体に引っ張られやすいものだったらしい。

 

 自分の置かれた境遇を理解していても、記憶を頼りに大人ぶろうとしても、埋め様のない寂しさだけは年相応の心に募るばかりで、公園で仲良く遊んでいる子どもたちの輪を遠目で眺めては少しでも寂しさを紛らわそうと本を読むのであった。

 

 

 

 

 

 そうやって半年ほど経ったある日、いつも通り母さんからは事前に帰ってくるのが遅れるというメールを受け取っていた私は家に居てもとくにやることがないのでベンチで本を読んでいた。

 すでに夕方のチャイムが鳴り終わり、子どもたちは親御さんに手を引かれながら帰っている。

 

 あれだけ騒がしかった公園も子どもたちが居なくなれば途端に静かになり、その静寂が私の心を蝕んでいく。

 

 

 いつまでこうなんだろうか?明日も変わらないんだろうか?母さんは悪くない。心配させちゃダメ、いい子で居ないと。

 思考がまとまらず、本の活字も頭に入らず、心が締め付けられるように重く感じて私はたまらず膝を抱えた。

 秋の夕暮れの寒気が徐々に私の身体を蝕む。ふと突然目の前が暗くなったことに気づき、思わず顔を上げると、

 

「ねぇ、もしかして寒いの?」

 

「うわっ!?」

 

 いきなり真正面に現れた人影に私はびっくりしてベンチから転げ落ちてしまった。

 

「ち、ちょっと!?」

 

「大丈夫だった!?ケガない!?」

 

 お尻をさすりながら顔を上げると目の前に私の同じぐらいの年の女の子が2人。

 私がびっくりしたのにびっくりしているようだった。

 

「だからいきなりそんな声掛けちゃダメだって」

 

「ごめん…みく…そんなつもりじゃなくて…」

 

「謝るなら私じゃなくてそっちの子にでしょ?」

 

 どうやら私を驚かせようとしたわけではなかったようで、向日葵色の子が一緒にいた黒髪の子にしょっ引かれていた。

 いきなり声を掛けられたことにびっくりこそしたものの、自分が原因で誰かが怒られてるのを見るのも後味が悪いので私は二人の会話に割り込む。

 

「私はこの通り大丈夫です」

 

「よかったー!」

 

 怒られていた方は私が無事だったのを見るや否や若干オーバーリアクション気味に喜んでいた。

 目の端にちょっぴり涙が浮かんでたような気がしたけど見なかったことにしよう。怒られたことがよっぽど堪えたのだろうか?

 

「ところでどうして私に声をかけたんですか?私にはあなたたちのような知り合いはいなかったようなはずですが」

 

 スカートについた砂をはたきつつ起き上がると二人に向き合った。少なくと私の記憶が正しければ間違いなく彼女たちとは初対面であり、接点がないはずである。

 

 相手は子どもとはいえ、いきなり自分のテリトリーに入ってきたのでは多少不信感を覚えてしまう。経験上ほかの子どもが私のテリトリーに入ってくるのは私を使った遊び(イタズラ)である場合がほとんどであるため、あまりいい印象がない。であるならばこの子たちは一体なぜ…?

 

「実はさっきひびきがあなたのことを見てきっと寒がってるから洋服貸してあげないとって言っていきなり走り出して…ごめんね?」

 

「えー!?だってだってなんか丸まってたし!震えてたし!今日こんなに冷たいのにスカートだしこれじゃあ風邪ひいちゃうよ!?」

 

「なんと…」

 

 まさかの100%の善意だった。

 思い返せば向日葵色の子は確かに自分が羽織っていたであろうジャケットを私に被せようとしていた。これには私も思わず脱力してしまう。

 

「ご心配なさらずともこの服は意外と暖かいんです。むしろあなたこそ上着脱いでいますがいいのですか?」

 

「この程度へいきへっちゃら!全然寒くないもんねーって…へッ…へッ…」

 

「へ?」

 

「ヘクチッ」

 

「ああ、もうひびきったら!ほら羽織って!」

 

「えへへ…ありがとーみくー」

 

 どうもあまり問題ではなかったようで、みくと呼ばれた黒い髪の子があわててひびきらしき子にジャッケットを着せた。

 

 だが、元はと言えば自分が彼女たちに心配をかけたせいだし、それで風邪をひかれてしまうのも寝覚めが悪い。これ以上引き留めるのもよくない。

 そしてなによりも、彼女たちは私にとっては()()()()なのだから…。

 

「私はこの通り問題ありません。むしろ「そっか!じゃあ遊ぼ!」すみません人の話聞いてください!?あなたたちはもうそろそろ家に帰った方がよろしいのではないでしょうか?チャイムが鳴り終わってからはもうずいぶん経ってますよ?」

 

「このあとお父さんが迎えに来るんだって。それまでひびきと公園にで時間潰してたの」

 

「ですが気温はこれ以上下がりますよ?それで風邪を引いたらッ」

 

「こーやってみくを抱きしめるとすごく温まるんだよー」

 

「もうひびきったら…」

 

「な、ならば…」

 

 なぜこうもムキになっているのだろうか。自分がこうも動揺することに驚きつつも何とか追い返そうとする。しかしそれらの抵抗は空しく、まったくもって役に立ってくれやしない。

 口論は徐々にヒートアップしていく。私自身も自分の中の熱を抑えられなくなっていくのを自覚する。そして

 

 

「大体私とあなたたちは今日初めて会った他人同士じゃないですか!他人なら私に構わないでください!」

 

 

 その言葉を発した途端、私は急に頭が冷えたのを自覚した。

 彼女たちは善意だったのだというのに私は彼女たちを拒絶した。してしまった。

 顔も合わせられずに俯く。

 

 そしてなぜ自分がこんなにも必死になっているのかも理解してしまった。

 彼女たちは私にはないものを持っている。それはきっと今のままの私では決して手に入れることができないものだ。人は簡単に変われるものではない。変われるはずがない。

 

 そうやって手に入れられないことの苦しみを味わうぐらいならばいっそ初めから知らなければいい。

 母さんとのこともそうだ。温もりなど知らなければ私はとりあえず生きていける。知ってしまって、そしてそれが手に入らないとわかってしまったときにきっと私は壊れる。

 

 こんなチンケな自己防衛理論など、記憶の中の"彼女"が聞けばきっと怒るだろう。なによりもそんなものを振りかざして誰かの好意を踏みにじろうなどと。

 そんな罪悪感がある一方、心の中のもう一方ではこれで彼女たちはどこかに行ってくれるだろう、また元の生活が戻ってくるだろうとほっとしているのを自覚する。

 

 そんな感じで俯いたまま1秒2秒と過ぎていく。

 

 しかしいつまで経っても彼女たちが離れていく気配がない。恐る恐る顔を上げて様子を見ると、ひびきと呼ばれた子がうーん、うーんと唸りながらなにか考えているのが目に映る。

 そして────

 

 

「つまり友だちになればいいってことなんだよね!?」

「うん、うn…?」

 

 

 想定遥か上に暴投球を寄こされた。

 

「友だちになれば他人じゃないし一緒に遊んでもいいし!」

 

 一体なにを言っているのだこの子は…

 助け船を出してもらおうと黒い髪の子に目をやるがどうやら彼女はこちらを助けるつもりらしい。私は独り空しく最期の抵抗を続ける。

 

「待ってください!私はあなたたちのことをまだなにも知りませんよ!?それに私は友だちの成り方だって…」

 

「友だちになるならないのにそんなことは関係ないよ?」

 

「簡単だよ。友だちになるのすごく簡単」

 

 二人が私の両手を包み込む。

 

 

「名前を呼んで────」

 

 

 彼女たちの言葉と、遠い、遠い私の記憶の奥底にある言葉が重なった。

 

 

「はじめはそれでいいの。ちゃんと相手の目を見て、名前を呼んで。」

 

 両手から伝わる彼女たちの手は暖かく、冷めきった心に再び炎が灯ったかのようで、私の止まっていた時間がまた動き始めた気がした。

 

「私なんか、でいいんですか…?」

 

「もちろん!大歓迎だよ!ね?みく」

 

「うん、私もできればあなたと友だちになりたい」

 

 その温もりに触れてやっと気づいた。私はただ自分は変わるはずと決めつけ、変わることを恐れていただけだったのだ。

 

「あ、そうだ名前まだ教えてなかったっけ…わたしは響!立花響!でこっちが…」

 

「小日向未来です。あなたは?」

 

 でも今ならばきっと変われる。変わっていける。

 正直言ってまだ気恥ずかしさはある。それでも、これからたぶんきっと彼女たちと長い付き合いになるのかもしれないという予感をしつつ、

 

 

 

「私は────高町星光(シュテル)、星の光と書いてシュテルです」

 

 夕焼けの逆光に包まれた二人にそう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────もう、十年も前の記憶だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず暑いですねこの国は…」

 

 空港のターミナルから出るや否や栗色の髪の少女──シュテルはそう愚痴をこぼす。

 5月というにはいささか激しい日差しが容赦なく降りそそいでおり、加えて先ほどまで居た空港内は空調が効いていただけに外の気温との格差とこの国特有の湿気が、ここが日本であるということを思い出させた。

 

《東京の現在の気温は28度、ベルリンと比べればおよそ気温は7度高くなっておりますマスター》

 

「もう一昔前の夏と大して変わらないじゃないですかそれ…昔はもっと涼しかった記憶がありましたが…」

 

《いえマスター、その感想には思い出補正が含まれているかと。少なくとも4年前の今頃も同じぐらいの気温でした》

 

「なんと…」

 

 そうやって軽口を叩いているのだがあいにくシュテルの傍にはほかに誰もいない。せいぜい胸元に下げた赤い宝石状のペンダントが若干点滅しているだけである。

 だがそれは彼女があまりの暑さでトリップしてしまい、幻覚と会話しているというわけではない。このペンダントこそがシュテル会話相手だ。

 

 シュテルのことをマスターと呼ぶ彼女──人工知能搭載型デバイス(インテリジェント・デバイス)であるルシフェリオンは今や遺された唯一の()()であり、戦場(いくさば)における相棒でもあった。

 

「しかしまあ、日本を離れたときは戻ってくるのに4年もかかるとはさすがに想定外です」

 

《おまけに確保は失敗。まんまとEUと日本政府にしてやられましたね》

 

「ええ…ですがアレが日本にあるとわかっただけでも収穫です。少なくとも時間はまだありますから」

 

 この4年間、シュテルとルシフェリオンはあるものを入手するためにヨーロッパに飛んでいた。だが残念ながらいくつもの邪魔者たちに阻まれながらもやっとのことでソレの在り処に辿り着いたときには、彼女の探し物はすでにヨーロッパからは姿を消していた。

 どうやらEU政府は経済破綻してしまった際に不良債権の一部である、日本円にして数十兆にも及んだ巨額な金額を日本政府に肩代わりしてもらった代わりに、ソレを日本政府に引き渡してしまったらしい。

 

 引き渡しは極秘裏に行われたそうで、その取引の痕跡は日本政府によってまるでニンジャが雲隠れしたかのように巧妙に隠ぺいされていた。

 アメリカ政府が日本政府にソレをアメリカに引き渡すよう要求していたという情報を入手できていなければ遺された短い一生をあのままヨーロッパ大陸を彷徨っていたのかもしれない。

 

「どちらにせよ過ぎたことを悔やんでも仕方ありません。それに今の在り処も事前にアタリはつけたのでしょ?ならば問題ありません、行きましょう」

 

《All, right my master》

 

 

 

 

 

 

 

 海に面したその街は都心郊外ではあるものの、小さな丘から街全体と海を一望できるということで景色もよく、それなりに栄えていた。市街地中心の建物は比較的新しく、またこの街に東京の新たなる観光名所となるべくして建てられた東京スカイタワーもどこからでも見つけることができる。

 

 

 そんなこの街が、シュテルたちがアタリを付けた場所であった。

 

 シュテルたちの探し物はモノがモノであるために普通に保管できるような代物ではなく、当然それ相応の組織が必要になってくる。さらに加えて相手はEUとの巨額な取引を隠ぺいできるほどの手腕を持つことができる組織であり、金額からしても国の直轄組織であることは間違いないだろう。正攻法ではとてもではないが探れるものではない。

 

 

 ならばどうするか?シュテルたちが採った答えは、周りに散らばる情報の断片から全体像を描き出すことであった。

 

 国と絡む以上どんな組織でもほかの組織とのつながりを持っている。そしてその周辺組織のすべてが必ずしも標的の組織と同等のセキュリティを持っているわけではなく、比較的手薄になっているは多くの場合存在している。

 事実、一番お目当てな組織であった防衛省のガードはそれ相応に固かったが、財務省や総務省をはじめとしたほかの省庁のものはそれと比べると一段と下がるものだった。

 

 

 そうやっていろんなところを覗き見した結果候補は3か所ほどに絞ることができた。

 一つは永田町の最深部にある特別電算室、通称〝記憶の遺跡″。二つ目がおおよしかわからなかったが長野県松代に存在する旧日本陸軍が組織したとされる国土安全保障を司る〝特務室″。

 

 そして最後の一つが輪にかけて実態をつかめなかった推定この街付近に存在するであろう〝謎の組織X″であった。

 十数年前より行われた再開発計画の中でこの付近一帯はとりわけ政府からの助成金が多く、少し離れた場所に陸上自衛隊の駐屯地も10年前に新設されている。そして日本とアメリカ両国の事業活動の実態がない会社(ダミーカンパニー)がここ10年でいくつも増えている。

 

 どれか一つだけならば疑問を抱かなかっただろう。だがいくつの要素がこうも重なってしまえばさすがに邪推をしたくもなる。そこにもう一つ、どちらかと言えばこちらが最大の要因がシュテルに邪推を見過ごせない疑念へと変えた。

 

 しかしながらこれらの情報はすべて日本にやってくる前に調べたものであり、そしてこれ以上探れないということでもあった。そのため、シュテルはこの街に赴いてその目で確かめることにしたのである。

 

 

 

 

 

 

「しかし、ここは本当にいい街ですね。空気は澄んでいて景色もキレイで」

 

 荷物を一旦拠点に置いて来てからシュテルは街を散策していた。

 時刻はすでに夕方に差し掛かっており、商店街にはちらほら女子高生たちが見えた。

 

「あれは確か…」

 

《私立リディアン音楽院の生徒のようですね》

 

 

 私立リディアン音楽院。

 海に臨む高台にあるその学校は十数年前より始まった都心再開発計画の際に建てられ、今年で設立10周年を迎えるという。小中高とそれぞれ存在しているが、高等科だけでも生徒数は1200人ほど在籍しており、国内最大の音楽学校でもあった。

 

 財政界から寄付金のおかげで私立であるにもかかわらず異様なまでに安い学費や国内最先端の学校設備などもこの学校の特色の一つとして挙げられるが、現在日本を代表するトップアーティストである〝あの風鳴翼″が在籍していることも有名である。

 全国各地から彼女を目当てにこの学校に通う生徒も少なくはなく、学校側もそういった生徒たちのために学生寮も完備しているという。

 

 

 

 ふと、シュテルの脳裏に4年前まで一緒に居た二人の少女のことがよぎる。

 

「そういえば今年は高校に進学する時期でしたか…響は歌が好きでしたし、案外ここに通っているのかもしれませんね」

 

 シュテルはもう一度彼女たちのことを見た。

 帰宅の途についているであろうリディアンの生徒たちは、ある者は学校の宿題の多さを嘆き、ある者は深夜アニメの話の展開について友だちと議論していたり、またある者は最近食べたお好み焼きがいかにおいしいかを語っていたり。

 皆、青春を謳歌しているようであった。

 

「私ももしかしたら響と未来と一緒にここに通ってた未来もあったのでしょうか…」

 

 リディアンの生徒たちにシュテルは思わず自分があの中に混じってた〝もしも″を思い浮かべてしまう。だがそれは決して叶わないであろう願いだ。

 

「いいえ、これは未練ですね。自分で選んだ道だというのに…」

 

《…》

 

 ルシフェリオンはなにも答えない。答えたところできっと主はそれを必要としていないし、むしろこれから為すことを考えればむしろ迷いを増やしてしまいかねない。

 

 シュテルにも人並みの弱さがある。だが彼女は自分が背負っているモノの重さを正確に理解してしまっている。そしてその背負った因縁をすべて終わらせると自分で決意した。

 故に、慰めの言葉を掛けても彼女自身が納得しないし、使命を果たすまでは絶対に止まろうとはしない。

 

 それはきっと人としては歪んでいるのだろう。それでも、ルシフェリオンはこの主の助けになりたいと願い、この主が前に進むのを支える〝杖″となるのだと決めたのだ。

 

 

 

「感傷に浸るのもここまでにするとして、そろそろ夜になりますから帰るとしましょう。荷ほどきもありますからね。」

 

《そういえばマスター、先月入手できなかった新曲を購入すると言っていませんでしたか?》

 

「すっかり忘れるところでした…ルシフェリオン、帰りに寄り道して翼さんのCDを買いに行きますよ。いい加減ヨーロッパでも邦楽を取り扱ってくれるショップが増えてくれると嬉しいのですが」

 

《音楽のダウンロード配信が一般のご時世で外国のCDを取り扱ってくれる方が稀ですよ》

 

 そうやってシュテルは軽口を叩きながら足をCDショップの方向へと向けようとして──

 

 

 

 

 突然サイレンが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 聞き慣れないサイレンにシュテルは判断に迷う。しかし周りの人たちは違っていたようだ。

 

「に、逃げろぉ!!アレがやってくるぞぉ!」

 

「みんな早くシェルターに避難だ!」

 

「こんなところで死にたくない!」

 

 先ほどまでにぎわっていた商店街は途端に戦場のような有り様と化し、人々は我先にと逃げ出した。

 

「これは一体…」

 

「そこのアンタも早く逃げろ!サイレンが鳴ってるんだぞ!?」

 

 突然の事態に困惑するも現状を把握するため静観しようとしていたシュテルに対して、逃げようとしていた人のうちの一人が叫ぶ。

 

「あの、私越してきたばかりで、これは一体…」

 

「の、ノイズだ!ノイズが来るんだよッ!」

 

「──ッ!」

 

「死にたくなかったらアンタもさっさと逃げろ!」

 

 言い切る前に男はすでに逃げ出していた。ここに来てシュテルも状況を完全に理解する。

 

 

 ────ノイズ。

 

 あるいは特異災害とも呼ばれるそれは、遥か昔から存在していたようであるが、13年前に国連によって認定された人類の脅威である。

 

 人間だけを襲い、人間に触れれば自身が崩壊するとともに人間をも炭化させる人間だけを殺す存在。通常の兵器は物理エネルギーの減衰によって攻撃が中々効かず、別の国では過去には山の地形を変えかねないほどの絨毯爆撃を行ってようやく倒せるほどの化け物。

 

 空間から突然滲み出るようにして出現するソレはわずかな数でも人にとっては悪夢なのにいつも必ず数百体に近い規模出現する。そしていつどこに現れるのかも予測できず、なぜ人間だけを襲うのかも謎。

 

 まさに災害であり、人類の脅威と呼んでもふさわしい存在。

 

 

 そして人類はその脅威に対して未だ有効な対抗手段を持っていない、()()()()()()()()

 

 

 

 

 一般的に現れたノイズに対しては出現から一定時間経ってノイズが自己崩壊を起こすまでは逃げる以外に対抗手段はないとされる。

 

「ルシフェリオン、周辺を索敵しつつ私たちも避難しますよ」

 

 当たり通り一帯は避難が済んでいるのか道にはもう人影がほぼ見えなかった。逃げ遅れたシュテルも後を追うようにシェルターへと急ぐことにした。だが──

 

《マスター!後方450mに逃げ遅れている一般人が2名、逃げ遅れているようです!》

 

「なにッ!?」

 

 急いで振り返ると遠目に先ほど見た。リディアンの制服を着た黒髪の少女がツインテールの小学生の女の子の手を引いて必死に逃げていた。

 そして彼女たちの後ろには10体近いノイズが彼女たちをさながら鬼ごっこのように追いかけてくるのが見える。

 

 だが恐怖故か、はたまた走り疲れてしまったのだろうか、小学生の女の子はついに躓いて転んでしまう。黒髪の少女は慌てて踵を返して女の子を抱きかかえて再び走り出そうとするが、時はすでに遅く彼女たちはノイズに囲まれてしまい、誰もが二人の死を予感する事態となった。

 

 

 その前にシュテルはすでに二人に向かって全力で駆けだしていた。

 

 シュテル自身ノイズとは相性が悪い上にこの段階で動けば今後の計画に支障が出ると彼女の理性が告げる。しかしシュテルには微塵の迷いもなかった。

 

「あの二人を助けます!行けますねッ!?」

 

 主の叫びに応じて赤い宝石のペンダントは輝きだす。

 

《Stand by, ready》

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!セットアップ!」

 

 

 

 

 瞬間、シュテルの身体は光に包まれる。

 

 身に付けていた衣服は格納され、代わりに彼女の戦闘衣装ともいえるバリアジャケットが構築が開始し、赤紫色をベースとして随所に赤色のラインの入ったジャケットとロングスカートが出現する。

 そして左手には白い柄と、真ん中に赤色の球状のコアがハメられている金色の半円状のフレームが柄の先端に接続された杖が握られていた。

 

 念のため顔を見られぬよう黒いバイザーを魔力で構築して装着しつつ、シュテルは己の魔導の力を解放する。魔力による身体強化されたことで走る速度はさらに上がり、二人との距離は200mまで詰めた。されどシュテルがいくら急いでもノイズが二人に触れて炭化させる方が早い。

 故に、

 

「ディバインシューターッ!」

 

《Fire》

 

 即座に誘導射撃魔法を展開、魔力で練り上げた桃色の小石ほどの光球を4つ生成して手前のノイズに向けて弾丸として撃ち出す。しかしが命中すれどノイズにはあまり効果がなかったようで、仰け反らせる程度にとどまる。

 

「十分ッ」

 

 ノイズに攻撃があまり効かなかったのは始めからわかっていた。ノイズが仰け反ったことで囲まれた二人に対する包囲網に生まれたほころびこそシュテルが求めていた結果。

 

 だが残り距離はあと50m。シュテルはいまだ届かず、ノイズが体勢を立て直そうとしてせっかく空けた風穴もじきに塞がれるであろう。間から見えた二人は今まさに襲い掛かってこようとする死にせめて恐怖を和らげようと思わず縮こまって目を閉じた。

 

「ッ!間に合えッ!」

 

《Flash Move》

 

 そうなる前に加速魔法をルシフェリオンが詠唱。瞬間的に加速したシュテルの身体は閉ざしきる前の隙間を飛び込むことですり抜け、ついに包囲の内部へとたどり着く。

 

 そこで目にした二人はあちらこちらに擦り傷はあれど炭化されていないことにシュテルはわずかに安堵する。

 

「お二人とも無事ですか!?」

 

「わ、私は、って危ないっ!」

 

 されど包囲網の中は死中であることに変わりなく、四方八方からノイズが三人まとめて炭化させようと襲い掛かってくるのを見た黒髪の少女は悲鳴を上げた。

 

《Active Protection》

 

 そうはさせまいとシュテルは触れたものを弾き飛ばす特性を持つバリアによって飛びかかってきたノイズたちを吹き飛ばした。

 ノイズは物理エネルギーを減衰させることで通常の攻撃を受けにくくすることができるが、唯一ノイズ側が攻撃をしてこようとする瞬間だけは減衰率は大きく低下するため、このような芸当が通用する。

 

 一息つこうとしたところに少女が話しかけてきた。

 

「あ、あのッ!この子さっき転んじゃって!」

 

 振り返って見れば黒髪の少女に抱きかかえられていた小学生の女の子の膝が擦り剝けて血が流れていた。彼女も身に着けていたであろう白い布で傷口を巻きつけて応急処置を施すが血はその上からにじんでいる。

 元々シュテル自身が囮になって血路を開き、その間に二人を逃がすつもりだったがこれでは自力で走って逃げてもらうのも期待できそうにない。

 

「──ッ!」

 

 その間にも先ほど吹き飛ばしたノイズたちが再度立ち上がってこちらに突撃し、バリアに激突する。

 しかも今の一撃は先ほどの一撃とは違い、シールドにわずかな亀裂が入った。それを見てシュテルは思わず顔を歪める。元々攻性防御であるその魔法は発動速度こそは速いが防御力はそこまで高くないのだ。そう何度も攻撃を受け切れるものではない。

 

 そして吹き飛ばされたノイズたちが力をためているのが目に映った。確実に先ほどのよりも遥かに威力がある攻撃だとうかがえる。

 

「お姉ちゃん…わたしたち死んじゃうの…?」

 

 小学生の女の子はノイズたちの姿に思わず黒髪の少女にしがみ付いていた。それを見たシュテルは即断をする。

 

「失礼」

 

「わっ!?」

 

 強化された両手で少女二人をお姫様抱っこの要領で抱え上げる。それと同時にシュテルはバリアを解除して腰を沈める。ノイズたちはすでに前兆態勢に入っていた。

 

「舌を噛まないで!」

 

「は、はい!」

 

《Accel Fin》

 

「え?キャァアアアアッ!?」

 

 ノイズたちが身体を矢のように変えたのと同時にデバイスによって詠唱された高速飛行魔法によってシュテルの靴に光の羽根が生える。

 そしてノイズたちが飛来してくる瞬間、シュテル地面を蹴って飛びあがる。

 ノイズたちの攻撃はシュテルの靴底をわずかに掠めたものの三人はギリギリ回避に成功する。

 

 おそらく人生で初であろう生身で空を飛ぶ経験に今まで耐えていた黒髪の少女は思わず悲鳴を上げる。

 

「お姉ちゃんあれ!」

 

「ッ!」

 

 女の子がの指先をたどると先ほどのノイズたちが再度こちらを狙おうとしているのが見えた。三人とも未だ窮地を脱していなかった。

 回避しようにも3人分の重さではさすがのシュテルでもいつまでも躱せる自信はなく、シューターのような誘導射撃魔法の効果が薄いのも先ほどですでに判明している。踏ん張る地面のない空中でプロテクションに頼ろうものならば吹き飛ばされて体勢を崩して終わりだろう。

 

 この状況を打開したくば自力であのノイズたちを片づけるしかない。だがそれには地形を変えかねないぐらいの爆撃でもなければ物理エネルギーを減衰させる能力を持つノイズは倒せない。それにそんな火力がこんなところで放たれれば両側のビルが崩壊してその二次災害にむしろ巻き込まれかねない。

 

 そうこうしてる間にもノイズたちは待ってくれやしない。地上に居たすべてのノイズたちがこちら狙っていた。

 きっとこれですべてが決まる。

 

 

 シュテルも覚悟を固めた。

 

「二人とも、しっかり掴まっててください」

 

「わかった!」

 

「うん」

 

 静かに話しかけると二人もなにかを察したのかシュテルの首にしがみ付き、シュテルは両手でルシフェリオンを握りしめる。地上のノイズたちもすでに攻撃準備を終えているようだった。

 

《来ます》

 

 ルシフェリオンの宣告と同時にすべてのノイズがシュテルたちの今居る空中へと迫りくる。

 

 だがシュテルはまだ動かない。ひたすら限界までひきつける。しがみ付く二人の力も緊張で徐々に強まったのを感じた。それでもシュテルはまだ動かない。胸のうちの炎がすべてを焼き尽かんと滾るが思考はむしろ凍えんばかりに冷えていく。一秒が10倍にも100倍にも引き延ばされる。

 ただひたすらその時を見極めるために──

 

 そしてそのときが訪れた。

 

「ッ!」

 

 ノイズたちがシュテルたちに触れるか触れないかあとわずかまで迫ったその時、シュテルは()()と加速する。

 直前になって獲物を逃したノイズたちは物理減衰率が低下したままシュテルたちが先ほどまで居た位置にてお互いに衝突した。

 

《Restrict Lock》

 

 その瞬間、シュテルは事前にその位置に伏せていた捕縛魔法レストリクトロックを発動。突如虚空より現れた光の環がノイズたちを縛り付ける。

 されど長くは持たない。攻撃直前の物理減衰率が低下していた瞬間だったからこそ通用したのだ。減衰率が元に戻ればすぐに抜け出すであろう。

 

 しかしシュテルにはそのわずかな隙で十分だった。落下しながら杖の先端をノイズたちに向ける。

 

「ルシフェリオン、モードシフト」

 

《Cannon Mode》

 

 赤色のコアを囲んでいた半円状のフレームが音叉状へと変形する。それと同時にトリガーユニットも展開し、シュテルはそのグリップを握った。

 

 シュテルはノイズとは相性がよろしくない。シュテルの魔法は普通の物理攻撃と同じ様にノイズに減衰されてしまう。そしてノイズを完全に倒すためには地形を変えかねないほどの爆撃に相当する威力が必要である。

 

 

 

 しかしシュテルは()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。ただそれだけの話。

 

 

 杖の先端に膨大な魔力が集束する。

 

「ディバイン──」

 

 ノイズはあと少しで拘束を抜け出すだろう。だがこちらの方が速い。

 

「バスタァァァアアアアーーーッ!!」

 

 地上に被害を出さぬよう空中に向けられて放たれた砲撃魔法は極大な光の奔流となってすべてを飲み込んで微塵も残さず消滅させた。

 

 

 

 

 

 

「ルシフェリオン、周辺の索敵を」

 

《All right, my master》

 

 あのあと、シュテルは二人を付近のシェルターの入り口へと運んだ。

 

「助けていただいてありがとうございます」

 

「ありがとう!お姉ちゃん!」

 

「お二人とも無事で本当によかったです」

 

 黒髪の少女と小学生の女の子はシュテルに礼を言った。あれだけのものを見せられたのに化け物と言われなかったのは珍しいと思いつつシュテルは立ち去ろうとする。シュテルはまだ自身の目的を果たせていないのだ。

 

「あの!お礼とかは…」

 

 そこへ先ほど助けた黒髪の少女が声をかけてきた。目の前の少女に強烈な既視感を覚えるが、今はそれよりも優先して確認したこともあったシュテルは思案する間もなく答える。

 

「今日の出来事を内緒にして頂ければ私はそれで構いません。こう見えてもお金はそれなり身は持っていますので」

 

「約束するー!」

 

「それはいいけど…」

 

 少女たちと会話しながら、同時に脳内のリソースのほとんどをルシフェリオンよりもたらされる索敵データにチェック割り当てていた。

 

「ありがとうございます。それではわたしはこれにてお暇をさせていただきます」

 

「バイバイ!かっこいいお姉ちゃん!」

 

 シュテル少女たちに手を振りながら飛行魔法を発動させて今度こそ立ち去った。索敵データに大きな発見があったのでその分析を落ち着いて行おうとしたために。

 

 

 

「あっ、待って…!」

 

 故に聞きそびれる。自分を呼び止めようとする黒髪の少女の声を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルシフェリオン、状況は?」

 

 あの場から離れたシュテルは少し離れたビルの屋上に降り立った。

 識別阻害の魔法が掛かったバイザーを外し、眼が外気に触れる。すでに日は沈みかけており、街の避難警報も解除されたようで、人々の戻った街には明かりが灯り始めた。

 

《本日出現したノイズはおよそ300体ほど。そしてそのほとんどが発生から40分以内に消滅しています》

 

「随分早いですね…」

 

 ルシフェリオンからもたらされたのは戦闘中も行っていた周辺索敵のデータであった。

 通常ノイズは出現してから時間経過で消滅する。しかしそれは間違っても40分という短時間ではない。シュテルのように何者かがノイズを倒していなければあり得ない数値だ。そしてノイズの出現から現場への移動時間を考慮すれば実質の所要時間はもっと短い。

 

「過去一ヵ月の()()ノイズ出現回数は、ヨーロッパ大陸のおよそ50倍から100倍…でしたか」

 

《比較する向こうの地域によっても違いますがおおよそのオーダーは合っています》

 

 そう、これこそがシュテルが自分の探し物がここであると判断した最後の理由。この街は異常なまでにノイズの発生率が高いのだ。

 国連によるノイズの災害認定以降に民間企業によって行われた調査の結果、人間一人当たりのノイズ災害と出くわす確率は〝一生涯に通り魔事件に巻き込まれる確率を下回る″というもの。

 

 東京は人口密集地である。だがそれを差し引いてもこの頻度はおかしい。シュテルがサイレンを聞き慣れなかったのもそもそもヨーロッパでは()()()()()()とはほとんど出くわしたことがなかったからであった。

 

《しかし都市ごとの人口減少率から見てもこの街の数値はほかの街と比べてもあまり高いとは言えません》

 

 

 あり得ないほど高すぎるノイズの出現率、その割には少ない人口減少率。そして、異常に早いノイズの消滅までの経過時間。

 

 〝謎の組織X″のデータを直接入手できずとも、こうしてデータの欠片をかき集めれば見えてくるものもある。

 

「やはりこの街にはノイズに対抗するナニカを持った組織が存在していますね」

 

《それも、おそらく少人数でノイズを殲滅できる類の》

 

 とある完全聖遺物。それがシュテルたちが追い求めるものであった。聖遺物とは古来より遺された謎の力を秘めたオーパーツであり、そしてそれはいくつかの国が公表していないものの、人類がノイズに対抗しうる手段の一つ。

 ノイズに対抗しうる兵器として使えうる完全聖遺物。それとノイズに対抗できているナニカを保持している組織。その二つの関連性を疑わないほうが無理があろう。

 

 邪推は疑念に、そしてついぞ確信へと至った。

 

 

 

 

「やっと尻尾を掴みましたよ。()()()()()()────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒髪のリディアンの生徒であった少女は自分を助けてくれた少女(シュテル)の立ち去った方向をずっと見つめていた。すでに太陽はほとんど沈みかけており、空には星の光が輝いている。

 

 彼女の手には先ほど別れた、一緒に逃げていた女の子の止血に使った髪飾りであった()()()()()()()()が握りしめられていた。

 

 先ほどの少女を思い出す。自分よりもわずかに高い身長で、逆に自分よりわずかに小さい胸。顔は見えなかったが、如何なる時でも冷静な声。

 

 

 そしてその奥底にある炎のような闘志。

 

 

 最後に名前を聞けなかった。少女は少し悔やむ。

 たぶん初対面なはずなのに、彼女はどうしてもそうとは思えなかった。

 

 まるで4()()()()()()()姿()()()()()大切な大切な幼馴染の成長した姿のようで──

 

 

 

 

 

「────シュテル…?」

 

 

 

 

 黒髪の少女────小日向未来はリボンを胸に抱きかかえてそうつぶやいた。

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  • 別に多くても大丈夫
  • これぐらいなら許容範囲内
  • ちょっとついていけてない
  • もう無理。勘弁
  • ちくわ大明神

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