天彗のエストレラ — 蒼き血涙と竜征王の戴冠 —
夢咲ラヰカ
プロローグ
石造りの廊下を進んでいると、エストは途中の扉が半開きになっているのを見咎める。
それが妙に不自然で気になった。この教会のシスターたちは神経質な者が多い。ドアを半開きにしたまま出ていくなどあり得ないのだ。
胸騒ぎがした。見なかったことにしろ、と本能が囁くのを聞いた。けれどどうしようもない好奇心が、エストを突き動かした。
ドアを開けて中に入る。
薄暗い部屋にもやはり魔力ロウソクの火が灯っていて、それに照らされるようにシスターが一人いる。
「シスター?」
エストはその人影に近づいた。
その人はエストがよく懐いている、姉のように慕っているハーフエルフのシスターだった。
「どうしたの?」
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シスターは宙吊りになっていた。首に括られたロープは天井の梁に回されており、修道服の裾から伸びる脚には盛れた尿が滴っている。
エストにはそれがなんなのかわからなかった。いや、わかりたくなかった。
「っ、ひ……」
それがエストが初めて見た死体だった。
尻餅をついて奥歯をかちかち鳴らす。怖いというよりあり得ないという感情の方が大きく勝っていた。
「どうしたのかね」
司祭ローエルが入室した。エストは青ざめた顔で司祭を見て、泣きついてシスターを指差した。彼も息を呑んで「なぜこんなことを……」と震えた声で漏らした。
それからのことはよく覚えていない。
けれどエストはこの一件で教会に不信感を抱いたのは事実だ。
そうして間も無くしてエストは教会を飛び出し、ハンターとしての人生を歩み始めることになるのだった。
天彗のエストレラ — 蒼き血涙と竜征王の戴冠 — 夢咲ラヰカ @RaikaRRRR89
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