3-2.被告安芸高田市に不法行為責任が認められた場合(安芸高田市が敗訴した場合)
① 安芸高田市が判決を受け入れた場合
この場合、「被告石丸伸二」ではなく、「市長石丸伸二」に国家賠償法1条1項の不法行為が認められたということになりますので、被告安芸高田市が損害賠償責任を負うことになります。
そして、「被告石丸伸二」への請求は棄却され、また、不法行為をした市長石丸伸二個人は損害賠償請求をされることはありません(最高裁判例)。
したがって、市長は、石丸伸二個人が賠償責任を負うわけではありませんので、控訴しないということも選択肢として考えられるわけです。
しかし、市長の性格からして、必ず控訴して市長の座に居座るのは間違いないでしょう。
なお、市長石丸伸二が山根議員の名誉を毀損したことなどの認定事実は動かないので、市長としての道義的・政治的責任を追及され、辞職せざるを得ない状況に追い込まれるのは必定です。
[注]求償権
被告安芸高田市に賠償責任が認められて、市が山根議員に賠償額を支払うと、石丸伸二に故意又は重過失が認められる場合には、国家賠償法1条2項で市に石丸伸二に対する求償権を認めています。
ただ、この求償権は必ず行使する必要はありませんので、市長石丸伸二が市長に留まっている限り、安芸高田市が市長石丸伸二に対して、この求償権を行使することはないでしょう。
市議会や市民はこうした状況を放置することは許されませんので、市長石丸伸二を直ちに失職させ、新たな市長が求償権を行使することになります。
② 安芸高田市が敗訴し、控訴する場合
安芸高田市が敗訴し控訴する場合は、判決の宣告日から2週間以内に行う必要があります。
この場合、安芸高田市が裁判の当事者になりますので、「安芸高田市が控訴するか否か」を議会で議決する必要があります。
②-ア 控訴に対する議会の承認
日本は三審制をとっていますので「一審から三審までを一連のものとし、控訴については議会の議決は必要としない」という解釈もあり、東京都は最近まで控訴に対して議会の議決を求めないでいました。
しかし、最近では東京都も議会の議決を求めていますので、「控訴には議会の議決を必要とする」ことが一般的になっています。
②-イ 議会の議決なしに上告を強行突破
市長の性格からすると、「東京都の例を出して、議会の議決は必要ない」と強弁し、強行突破する可能性が非常に高いと見ています。
議会は、これに対して法的処置をとることはできますが、むしろ「市長不信任(案)」を即座に提出して対抗する以外に的確な方法はないと考えられます。
②-ウ 控訴に専決処分で対応
最後に、市長は控訴に対する議会議決が必要であると判断しても、「緊急性がある」と主張して「専決処分」を行い、「次の3月定例議会で承認を求める」という手段に出ることが想定できます。
しかし、議会の多数派が3月定例議会で専決処分を否認しても、専決処分の効力は継続しますので、安芸高田市は控訴審を続けざるを得ないことになります。