三谷幸喜の群像劇をこよなく愛するゆうきまさみが、稀代の脚本家との初対面を遂げたのは2016年1月だった(「月刊!スピリッツ」2016年3月号に対談掲載)。その後、ゆうきは「北条早雲」の名で知られる室町時代の英傑を主人公にした『新九郎、奔る!』の連載を始め(2018年〜)、三谷は鎌倉時代に材を採った大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)の脚本を執筆した。
7年余りの時を経て歴史モノの同志となった二人は、何を語るのか?
ゆうき 前回、三谷さんとお会いした後に描き始めた『新九郎、奔る!』が連載100回を迎えることになりまして、編集者がこの機会にもう一度対談のお願いをしてみます、と。二度も対談を受けていただきとてもびっくりしています(笑)。
三谷 いやいや(笑)、僕もびっくりしました。この対談はシリーズだったのかって。嬉しかったです。
ゆうき 前回の対談は『真田丸』(※1)の放送が始まってすぐのことでしたが、その後三谷さんは『鎌倉殿の13人』(※2)で三度目となる大河の脚本をお書きになられて。僕は、『新九郎、奔る!』が初めての歴史ものです。
三谷 歴史ものを描きたいという思いは昔からあったんですか?
ゆうき あったんですけれども、あまり若いうちにはかけないかなと思って、ずるずるっと。さすがにこれ以上引き延ばしたら体力ももたないし、とにかく一本描こうって感じでした。
三谷 北条早雲には興味があったんでしょうか。
ゆうき 実は、三谷さんが『鎌倉殿の13人』で主人公に据えた 北条義時(※3)にするか、伊勢宗瑞(北条早雲)にするかで悩んだんです。
三谷 本当ですか!? 良かった〜。
ゆうき いや、僕も『鎌倉殿』を見て、義時にしないで良かった〜って(笑)。
三谷 僕は子どもの頃、カゴ直利さん(※4)という方の歴史漫画が大好きで、そこで多分 北条早雲のことも知ったんだと思うんですが。その時から情報が止まっていたんですよ。どこからやってきたかわからない素浪人がどんどん立身出世して、戦国大名の先駆けになってという。だから『新九郎、奔る!』を読むと、 僕が知っている話とは全く違うのでびっくりしました。 そもそも、北条早雲って言っちゃいけない?
ゆうき そんなことはないですが、北条早雲は後世の異名なので、僕は伊勢宗瑞、あるいは新九郎と呼んでいます。
※1 『真田丸』
2016年のNHK大河ドラマ。堺 雅人演じる主人公・真田信繁(幸村)の青年期から、大坂の陣で戦国最後にして最強の砦「真田丸」を作り上げるまでを描いた。三谷幸喜脚本の大河ドラマとしては2作目。
※2 『鎌倉殿の13人』
2022年のNHK大河ドラマ。小栗 旬演じる主人公・北条義時を中心に、大泉 洋演じる源 頼朝ならびに鎌倉幕府を支えた御家人たちを描いている。頼朝の死後、組織された合議組織「13人の御家人」は義時のほか、北条時政(坂東彌十郎)、比企能員(佐藤二朗)、三浦義澄(佐藤B作)、安達盛長(野添義弘)、和田義盛(横田栄司)、梶原景時(中村獅童)、足立遠元(大野泰広)、八田知家(市原隼人)、三善康信(小林 隆)、大江広元(栗原英雄)、中原親能(川島潤哉)、二階堂行政(野仲イサオ)と言われている。三谷幸喜脚本の大河ドラマとしては3作目。
※3 北条義時
鎌倉幕府の第2代執権。初代執権である北条時政の次男で北条政子の弟。『鎌倉殿の13人』では、家族のため、坂東武者のため、幕府のために、葛藤を抱えながらも奮闘する心優しき青年が、“鎌倉”を守るために非道な手段をも厭わない最高権力者へと変貌していく様子を小栗 旬が熱演した。
※4 カゴ直利
漫画家。貸本作家として活動を始め、1967年より『日本の歴史』シリーズ(集英社)を執筆。以降、『学研まんが歴史シリーズ』(学研)でも活躍するなど「歴史学習まんが」ジャンルで多数の作品を残している。
“縛り”から解き放たれているのがうらやましい。
三谷 応仁の乱のことも全然知らなかったんです。面白い時代ですよねえ、とにかく人間関係がむちゃくちゃ。何より将軍・足利義政、あいつがよろしくないですね。
ゆうき 優柔不断ですよね(笑)。
三谷 『新九郎、奔る!』は漫画なんですけれども、大河ドラマのつもりで読んでいます。ただ、「これ、大河ドラマだったら絶対にクレームがくるな」というセリフとか単語が結構出てくるんですよ。「脳筋」とか。
ゆうき はい(笑)。「GO、GO、GO!!」とか。
三谷 確かに、山名宗全グループとか、「脳筋」としか言いようがないわけじゃないですか。でも大河じゃ絶対無理。当時「脳筋」なんて言葉、あるわけないから。そういう縛りから解き放たれている感じがすごくうらやましかったです。自由度が高いんですよね。
ゆうき そこは先祖返り的なところもあるんです。白土三平さん(※5)の歴史ものの漫画を読んでいると、「スパイ」とか「チャンス」とか平気で出てくるんですよね。読者にわかってもらわなければ楽しんでもらうこともできませんから、それでいいと思うんです。そんな言葉は当時なかった、とか言われても困ります(笑)。でも、三谷さんも『鎌倉殿の13人」で第一話から「首ちょんぱ」と......いろいろ言われました?
三谷 言われましたね。僕は狙ったわけでもなく、あまり考えずに使ってしまった。時代考証の先生は当然抵抗されたみたいですけど、プロデューサーが「ここは三谷さんのこだわりですから」と説得して下さった。結局「日本の歴史上、北条時政(※6)が初めて首ちょんぱと言った人だっていうことにしましょう」ということに(笑)。
▲山名勢を「脳筋」と毒づく細川勝元。(単行本2巻より)
▲軍勢のかけ声が「GO、GO、GO!!」(単行本2巻より)
※5 白土三平
漫画家。1957年に貸本作品『こがらし剣士』で活動を始め、以降多くの忍者作品を手がける。‘59年〜‘62年に発表した貸本『忍者武芸帳 影丸伝』で、忍者ブームを巻き起こした。‘64年〜‘71年に雑誌『ガロ』(青林堂)で連載された『カムイ伝』は忍者の少年を中心に、様々な立場の人々の視点から、江戸時代の身分社会の構造やそれによって生じる差別への抵抗を描いた歴史漫画作品の名作。その他の代表作に『カムイ外伝』『サスケ』などがある。
※6 北条時政
北条義時の父で、鎌倉幕府の初代執権。『鎌倉殿の13人』では、家族や領民を大切にする坂東武者が溺愛する妻に振り回され、権力を手に入れようと暴走してしまう憎めないキャラクターを歌舞伎役者の坂東彌十郎が演じた。
史実にはないけれども、本当にそうだったのかも。
三谷 僕が歴史ものを書く上で一番大事にしていることは、何より「面白くなければいけない」。基本的に史実にないものは描きたくないし描かないんだけれども、その上で、より面白くするためにどうすればいいかってことは常に考えるようにしているんです。史実には沿っているけど、ドラマとしてつまらないものは描きたくないんです。その辺りはいかがですか。
ゆうき その人物についての俗説であるとか、今まで語られてきたようなお話ってすごく面白くできているんですよ。それって、要はフィクションだったりするんですよね。最新研究の結果は案外面白くないというか、身も蓋もない(笑)。
だけど新しい事実がわかっちゃっているのに今さら、昔から語られてきたフィクションはなぞれない。最新研究を元にどれだけ面白くできるか、という方向で常に考えるようにしています。
三谷 僕は本当に伊勢宗瑞について何も知らずに読んでるんですけども、漫画の中に描かれていることは基本的には史実なのでしょうか。
ゆうき いや、新九郎の、特に前半生は全くわかっていないんです。歴史的な流れ自体は史と思っていただいて構いませんけれども、主人公周辺の動きは僕のほうで作っていますね。
三谷 例えば、顔に大きな傷があるお兄さんのエピソードなどは……
ゆうき あの辺りは全部、作りました。
三谷 えええええっ創作なんですか、あれ!? 矢に撃たれて死んでしまう場面とか、めちゃくちゃ面白いじゃないですか。
ゆうき お兄さんは、系図に名前が載っているだけなんです。裏話をしますと、北条早雲と言われている人が若い頃に足利義視に仕えてて、一緒に伊勢に逃げたりした、という言い伝えがあるんですね。ただ、年齢を考えるとどう考えても義視の近習になったのはお兄さんぐらいの年じゃないとなれないだろうな、と。
三谷 じゃあ、お兄さんはいつ死んだかもわからない?
ゆうき わからないんです。ただ、実際に新九郎は家督を継いでいるので、それより前に死んでいるのは確かです。
三谷 なるほど! 史実に残ってはいないけども、本当にそうだったのかもしれない、と。
▲新九郎の兄、八郎貞興。(単行本2巻より)
ゆうき かもしれない。だから、描いている時は本当にそうだったかもしれないと思いながら描く。
三谷 そこは大事な気がしますね。
ゆうき 4巻から6巻にかけての荏原編、今の岡山県井原市の所領の話なんかも全くのフィクションです。
三谷 ええええええええっあんなに詳しく描かれているのに?
ゆうき あの時は井原市の市史とかを買い集めて、その時代のその土地のことや系図なども調べに調べました。
三谷 いや、あれがもう絶対、史実だったと思いますよ。間違いない!
一同 (笑)。
三谷 僕も『鎌倉殿」で上総介(※7)が暗殺される回を書く時、詳しい資料なんかほぼ何も残ってない状態から、ゼロから架空のクーデターを考えたんです。時間もかかったし一番苦労した回でした。当時誰が鎌倉にいたかはわかっているから、彼ら一人一人が置かれた環境、利害関係みたいなものを図にして、それを見ながらそれぞれの「思惑」を細かく細かく想像していった。すると全ての辻褄が合う瞬間があったんですね。それが気持ち良かったです。「見つけた!」って感じで。
▲兄の死が新九郎の運命を激変させた。(単行本3巻より)
ゆうき あの回はすごかったです。上総介を演じた佐藤浩市さんも素晴らしかったですね。
三谷 これは大河の脚本を書いていていつも思うことなんですけど、「この時代に携帯電話があったら、絶対この人死んでないのにな」と。ちょっと情報が遅れたとか、誤解とかで、間違って死んじゃったりするんですよ。そんな中で戦争をするわけですからね。
▲新九郎の初恋もちろんフィクション。(単行本4巻より)
※7 上総介
平 広常。上総介は官位である。打倒平氏を掲げ挙兵した頼朝の下に参じた、初期の御家人。寿永2年に誅殺された。『鎌倉殿の13人』では粗野だが忠誠心の厚い武将を佐藤浩市が演じている。
あからさまな悪人を決して描かない理由。
三谷 漫画を描くのって、大河ドラマで言ったら脚本も書き演出もして、さらに主人公も脇の役も全部演じて、しかも時代考証や美術設定もすべて一人で手がけるってことじゃないですか。到底僕なんかにはできるもんじゃない。しかもまた、みんなキャラが立っているし、いい芝居をするんですよね。
ゆうき 三谷さんに芝居のことを褒めてもらえるのはめちゃくちゃ嬉しい(笑)。
三谷 「この役はこのキャストでやってほしいな」とか考えながら読みました。例えば山名宗全は、僕の中では花沢徳衛さん(※8)。
ゆうき なるほど。お亡くなりになられていますが……(笑)。
三谷 実際に山名宗全に会ったわけではないけど、絶対あの顔なんですよ。細川勝元は、僕の中ではレイフ・ファインズ(※9)。日本の俳優さんではちょっと浮かばなかったですね。僕が一番気に入っている『新九郎、奔る!』の自分流キャストは、足利義視。あれはチョコレートプラネットの長田さんで決まりです。顔も似ているし、長田さんだったらいい感じで演じてくれそうな気がするんです。お芝居上手な方だし。っていうふうに、描いている時にどなたかをイメージしたりってされますか?
ゆうき あまりないですね。ただ、もちろん顔の描き分けは大事にしています。キャラクターの描き方でこだわっているのは、これは『鎌倉殿』でも同じなんじゃないかなと感じているんですが、あからさまな悪人、それからあからさまな愚か者は描かないようにしようと思っているんです。あからさまな悪人が出ると、盛り上がりはするんですけどね。
三谷 そもそもそんなやつ、いないですからね。
ゆうき そうなんです。いないんですよ。
三谷 みんな自分の利益のために必死に生きてるわけで、それは別に悪いことでもなんでもないですから。サイコパスみたいな人が出てくる時は別ですけれども、それ以外は、一人一人の理をちゃんと掬い取ってあげないと、ご本人に失礼な気がするんです。
ゆうき 当時は当時の倫理観があるのに、そこに今の倫理観を当てハメたらウソになる。
▲山名宗全。(単行本1巻より)
▲足利義視。(単行本3巻より)
※8 花沢徳衛
俳優。1937年に映画『権三と助十』でデビュー。戦後はフリーとなり『警視庁物語』シリーズなどに出演。‘66年のNHK連続テレビ小説『おはなはん』でヒロインの義理の祖父役を演じ、人気を博した。昭和の頑固な中高年役の代名詞ともいえる名俳優。また、絵画を得意とし、美術展に入選するなど評価も高い。
※9 レイフ・ファインズ
イギリスの俳優、映画監督。‘93年『シンドラーのリスト』でアカデミー助演男優賞、‘96年『イングリッシュ・ペイシェント』では同主演男優賞にノミネートされた。『ハリー・ポッター』シリーズ第4作『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』より闇の魔法使い・ヴォルデモート卿を演じたことでも有名。
どの集団にもいる「上総介的な男」。
ゆうき 大河ファンとしてはぜひお聞きしたかったことがあるんです。大河ドラマの『草燃える』(※10)のことはどれぐらい意識されました? というのも、『鎌倉殿』と扱う時代がほぼ同じじゃないですか。
三谷 『草燃える』は、意識しないように意識しました(笑)。高校の時にリアルタイムで観ていたので、記憶には残っている。『鎌倉殿』を書くにあたって、NHKさんから映像を全部いただいたんですが、一話、二話観たあたりでやめました、面白すぎて。これは観たらダメだ、引きずられてしまうと。プロデューサーの方はもちろん観てらっしゃるから、もし僕が書いて、『草燃える』と近くなりすぎていたら軌道修正してくださいとお願いしました。
ゆうき 興味深いです、『草燃える』からどう変えてくるんだろうなとか、大河ファンとしてはそういう楽しみ方もしていたので。
三谷 『草燃える』は源 頼朝が主役で、頼朝が死んだ後は北条政子が主役になりますよね。松平 健さんが演じられた義時は副主人公みたいな感じで、常にサブキャラのイメージでした。最強のサブキャラ。
ゆうき あのキャラクターが強烈なんですよね。さわやかな若者で現れた義時が、最後はもう凄まじい権力の鬼になる。
三谷 僕もそこのところはすごく印象に残っていましたし、正直なところ、義時という人物を知ったのは『草燃える』からです。あのドラマはとにかく最高に面白かった。でもちょっとだけ不満もあって。視聴者としてですよ。僕は御家人たちの話がもっと観たかった。頼朝が死んだ後は、特に政子がどうやって未亡人ではありながら鎌倉を引っ張っていったか、というところがドラマのメインになるので、御家人たちはどうしても脇に追いやられてしまう。そんな印象だったんです。「僕だったらこうするのになぁ」と思いながら観ていたんですよ。高校生のくせに偉そうなんだけど(笑)。
ゆうき すごいエピソードですね。
三谷 その時の思いを『鎌倉殿』に生かしているようなところもある。からもう構想40年以上です。
ゆうき タイトルに表れていますよね。『北条義時』ではなく、『鎌倉殿の13人』というタイトルに、三谷さんが何をお書きになりたかったかが表れている。
三谷 群像劇ですね。頼朝亡き後に執権政治と行なった御家人たちの物語。実は頼朝の下で鎌倉を作った彼らと新選組って似ていると昔から思っていたんですよ。仲間たちが力を合わせて目的に向かって突き進んでいって、目標にたどり着いた瞬間から……
ゆうき 自壊を始める。
三谷 そうなんです。面白いのは、どちらにも旗揚げの頃はリーダー的な役割を果たし、そして組織が軌道に乗り始めたあたりで退場する人物がいる。『鎌倉殿』でいえば上総介。新選組で言えば初代筆頭局長の芹沢 鴨(※11)。
ゆうき たぶん、何か新しい集団を立ち上げた時に、そういう人は必要不可欠なんでしょうね。
三谷 初期段階で滅んでいくやつは絶対、必要なんだと。
ゆうき しかも、自分が滅ぼされるとは全然思わないようなやつ(笑)。
三谷 本人は誰よりも役に立っていると思っているんですよね。でも、真っ先に死ぬ。そいつの死を乗り越えていくことで、新しい時代が生まれる。そして僕の中ではそういう人はみんな、上総介と芹沢 鴨を演じてくれた、佐藤浩市の顔をしているんです(笑)。
※10 『草燃える』
1979年のNHK大河ドラマ。永井路子の『北条政子』『炎環』『つわものの賦』などの小説や随筆を原作とし、北条政子の生涯を軸に鎌倉幕府の樹立から承久の乱までを描いている。源 頼朝を石坂浩二、北条政子を岩下志麻、北条義時を松平 健が演じている。
※11 芹沢 鴨
新選組の初代筆頭局長。破天荒で傍若無人な振る舞いのため、近藤 勇や土方歳三に粛清された。芹沢の死後、新選組は近藤・土方体制を強固なものとし、組織として団結する。三谷幸喜脚本の大河ドラマ1作目『新選組!』では豪快で侠気あふれる人物像を佐藤浩市が演じた。
シームレスに年齢を重ねていける表現。
三谷 漫画がうらやましいなと思うのは、常に理想のキャストが組めること。大河などの場合、自分たちの中には理想のキャストはありますけれど、スケジュールの都合とか他の役者とのバランスなどで、実現しないケースも必ずある。この男優さんとこの女優さんは昔、熱愛報道があって結局別れちゃったから共演は難しいだろうとか(笑)。
ゆうき いろんな現実が関わってくるんですね(笑)。僕が、これは映像作品ではなかなかできないぞ、漫画の強みだぞと思っているのは、登場人物たちをシームレスに齢を取らせていけることなんです。
三谷 それ、読んでいて思いました! 主人公はちょこちょこ齢を重ねてきてますもんね。
ゆうき これもぜひ聞いてみたかったんですけども、『鎌倉殿』の第一話は、史実だと(北条)義時が13歳で(三浦)義村(※12)が8歳ぐらいのはずなんです。普通だったら、子役を使うかなと思うんですよね。でも、小栗 旬さんと山本耕史さんをそのまま使っていた。三谷さんがもともと舞台の人だから、わりと気にせずにそうしたのかなと思ったんです。
三谷 そこは僕、全然気にならなかったんです。
ゆうき そこで妄想しちゃったんですけども、もしも「舞台版『鎌倉殿の13人』」があったら、小栗さんとか山本さんに子どもの芝居をやらせたいんじゃないかなと思ったんです。
三谷 生まれたとこからやってもいいぐらいですよ。舞台だったら、赤ちゃんだって演じてもらえますからね。
ゆうき 舞台だとシームレスに成長していくっていう(笑)。
三谷 ドラマだと確かに無理があるんですけど、大河の時は、僕はあまり意識しないですね。やっぱり子役がずっと出ているよりも、早く本役で観たいですから。
ゆうき (北条)泰時(※13)が子役から、坂口健太郎さんに変わった時は驚きましたよ。前の週まで義時の膝に抱っこされてた小さな男の子が、次の週で坂口さんになった。普通だったらもうワンクッションくらい入れるところを、「成長著しい」というテロップで処理されていましたよね。
三谷 あれね、最初僕は、あの回で坂口さんになるのが嫌だったんですよ。そのつもりで書いてなかったから。でも確かにあの辺で子役から坂口さんにしておかないと、後々困ることになる。でも出来上がった映像を観たらやはり少し無理があったんで、だったら「成長著しい」のテロップを入れてくださいとお願いしたんです。だから脚本家としてはちょっと恥ずかしいんです。いくらなんでも強引すぎる。
一同 (笑)。
ゆうき 役者さんってすごいなと思ったのは、画面で見ると坂口健太郎さんが10代前半くらいの子どもに見えるんですよね。晩年の義時を演じた小栗さんも、ちゃんと60代の男に見えました。
三谷 プロデューサーの意向で、今回は特殊メイク、老けメイクやめようってことになったんです。やろうと思えば、もっとシワシワにできたはずなんだけれども、役者に託して芝居で老けてもらおう、と。よかったと思いますね。それができる人たちだった。
ゆうき (北条)政子役の小池栄子さんも、芝居で老けてましたね。
三谷 開き直って、山本耕史なんて第一回とほぼ変わってない(笑)。老け芝居すらしてないですから。
ゆうき そうそう(笑)。面白いことをしてるドラマだなと思いましたよ。
三谷 結構、いろんな冒険はしていましたね。大河3本目にしてようやく全体の配分であるとか、一話一話をどう盛り上げていくかも含めて、やっと見えてきたところもありました。次はもっとうまく書ける気はする。
▲11歳の新九郎(1話)
▲16歳(17話)
▲22歳(62話)。最新100話は31歳!
※12 三浦義村
鎌倉幕府の有力御家人。父は合議制の13人の御家人の一人、三浦義澄。『鎌倉殿の13人』では義時の幼馴染で、表向きは常に味方というスタンスを取りつつ、最高権力者としての階段を登り続ける義時の失脚を目論む側面を持つ、食えない人物を山本耕史が演じた。
※13 北条泰時
鎌倉幕府の第3代執権。北条義時の息子。幼名は金剛。御成敗式目を制定した名執権として名高い。『鎌倉殿の13人』では坂口健太郎が父・義時の非情で冷酷な采配に反発し、悩み、成長していく好青年を演じている。
幕府の役人がどうして、一大王国を築けたのか。
ゆうき 信長、秀吉、家康といった大スターの光で目がくらまされてしまうんですが、室町って実は面白い時代なんですよ。
三谷 ここがわかってないと、この後に来る戦国時代の本当の意味はわからないですもんね。
ゆうき そうなんです。地味だし、人間関係が複雑でわかりづらいのもあると思うんですが、実は「乱」続きですし。でも、大河で室町時代が描かれたのって、『花の乱」(※14)だけなんです。三谷さん、室町をやりません?(笑)
三谷 興味はあるけど室町は難しそうですよ。今のところ、僕の大河は徐々に時代が下がってきているんですよ。幕末(『新選組!』(※15))があって、戦国(『真田丸』)があって、鎌倉があったので、室町はすでに通り過ぎている(笑)。次はもっと時代が下がって、奈良なのかどこに行くのか。最終的には、原始時代まで行きたいですけどね。
ゆうき それは楽しみです(笑)。僕も『新九郎』の連載を頑張らないとな、と。あまり長くやりすぎるのも良くないので、連載はここからスピードアップしていく予定です。幕府の役人である新九郎が、どうして縁もゆかりもない関東で一大王国を築き上げる祖になれたのか。そこを面白くやりたいなと思っています。
三谷 それはすごく興味がありますね。アメリカン・ドリームみたいなものを感じます。ムロマチ・ドリーム。
ゆうき もしよければ……完結したらもう一回ぐらい、対談させてください(笑)。
――完結記念対談を夢見て。『新九郎、奔る!』の今後の展開をお見逃し無く!
※14 『花の乱』
1994年のNHK大河ドラマ。室町幕府第8代将軍・足利義政の妻である日野富子の生涯と、応仁の乱前後の様子を描いている。主演は三田佳子。
※15 『新選組!』
2004年のNHK大河ドラマ。三谷幸喜脚本の大河ドラマ第1作。主演の近藤 勇は香取慎吾が務めた。「近藤 勇の人生における重要な49日」を一日一話で構成する形を基本として制作されている。
ゆうきまさみ
1980年「ざ・ライバル」(「月刊OUT」みのり書房)でデビュー。『機動警察パトレイバー」で第36回小学館漫画賞を受賞。代表作に「究極超人あ〜る」、『じゃじゃ馬グルーミン★UP!」「白暮のクロニクル』など。現在、弊誌にて伊勢宗瑞(北条早雲)の人生を描く「新九郎、奔る!』を連載中。
三谷幸喜
1983年に劇団「東京サンシャインボーイズ」を結成。以降、演劇にとどまらず、ドラマ、映画と幅広く活躍。日本を代表する脚本家。NHK大河ドラマでは『新選組!』(2004年)、「真田丸」(2016年)、「鎌倉殿の13人』(2022年)と三作の脚本を執筆。『鎌倉殿の13人』で第41回向田邦子賞を受賞。
●写真/斎藤大 ●取材・文/吉田大助 ●スタイリング(三谷幸喜)/中川原寛(CaNN) ●ヘアメイク(三谷幸喜)/立身恵(フレックルス) ●対談収録/グラナータTBS店 ●デザイン/吉村勲+ベイブリッジ・スタジオ
三谷幸喜さんも太鼓判の面白さ!
『新九郎、奔る!』最新14巻 10/12(木)発売!!!!!!!!!!
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