pixivは2023年6月13日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
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左馬刻はコンビニの買い物袋を片手にそっと自宅のリビングへ続く扉を開けた。ドアはきしむことなくなめらかに開いた。そのままリビングに入っていく。彼が歩くたびに、袋はカサカサとなった。
リビングのソファーには毛布にくるまった彼の妻が眠っていた。ソファーの前のローテーブルにコンビニの袋を置くと、左馬刻は彼女の肩を軽く揺さぶった。
「おい、起きろ。ここで寝んなっていつも言ってんだろ」
「んん……」
身じろぎをした彼女の体ががソファーから転げ落ちそうになり、左馬刻がソファーからはみ出した彼女の肩を支える。それでやっと、彼女は目を開いた。
「さまとき……?」
「おう、昼飯買ってきたから食うか?」
「うーん、もうちょっとねる」
寝起きのとろけた目でそう答えた彼女の腹部は毛布ごしでもわかるほどふっくらと膨らんでいる。彼女はいま左馬刻の子供を身ごもっていた。
そのまままたソファーで寝ようとする彼女を、左馬刻は毛布ごと持ち上げた。
「ベッド行くぞ」
妊娠しているからか、彼女は最近よく眠る。夜も寝るが、昼間も眠気があるらしく、四六時中寝ている。なんとか家事をしようとベットから起き出しても、リビングのソファーで力尽きて眠ってしまう。以前は毛布もかけず眠りこけていたので、左馬刻が「毛布くらいかけろ」とソファーに薄手の毛布を置くようになった。
左馬刻としては、眠いのならベッドで寝ていればいい、腹の中に子供がいるのだから無理をするなと思うのだが、彼女としてはそうはいかないらしい。洗濯物が、料理が、掃除が、となにかと理由をつけてソファーまでやってきては、そこで寝てしまっている。
「え……ご飯作らないといけないのに」
「なんでだよ、昼飯ならテーブルに――」
「ちがうよ晩ごはん。さまとき昨日ハンバーグ食べたいっていってた」
「ああ……」
たしかに、そんなことを言った記憶があった。しかし今の状態を見ると、彼女がハンバーグを作るのは厳しそうだ。自分のためにハンバーグを作ろうとしてくれる気持ちは嬉しいが、、無理をさせてまで作ってほしいとは思わない。
「かいものいかないと……」
寝ぼけた声のままでつぶやく彼女を、左馬刻はそっとベッドに下ろす。布団をかけてやると、彼女はもう睡魔に囚われ始めているのか、かろうじて開けていた目を閉じた。
「お前はガキ育てることだけ考えてりゃいいんだよ。晩飯のことなんて考えずに寝てろ」
左馬刻は眠りはじめた彼女の髪を指先で梳く。
「わかった……」
もう半分寝てしまっている彼女の返答を聞き届けてから、左馬刻は仕事に戻った。
Twitterであげたやつです。短い。