「八紘一宇」持ち出した三原じゅん子氏に沈黙する国会の異常

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 まさか、21世紀の国会で、この言葉を聞くとは思わなかった。16日の参院予算委で、質問に立った自民党三原じゅん子議員(50)が「八紘一宇」という戦前・戦中のスローガンを唐突に持ち出し、「日本が建国以来、大切にしてきた価値観」とまで言ってのけた。

 八紘一宇とは「全世界を天皇の下にひとつの家のようにする」という意味が込められている。先の大戦中には朝鮮半島・台湾の植民地化、中国・東南アジアへの侵略を正当化するためのスローガンとして喧伝された。

 三原議員の発言は企業の国際的な租税回避問題を取り上げる中で飛び出した。「八紘一宇の理念の下に、税の仕組みを運用していくことを安倍総理こそが世界に提案すべきだ」と語ったが、この時代がかったセンス、戦前日本の侵略行為への無反省、戦前回帰の発想にはホント、目まいがしてくる。

 敗戦を12歳で迎えた筑波大名誉教授の小林弥六氏はこう嘆く。
「これが戦争を劇画的にしか知らない世代の恐ろしさなのでしょう。戦時下の『八紘一宇』の背後には、世界を日本を中心とした“ひとつの家”にするという思い上がった発想がありました。それこそが日本が道を誤った大きな理由で、その反省の上に現在の平和がある。日本の軍国化を進める安倍首相の下、国会は今、この言葉が出てきても不思議じゃない状況になってしまった。国会の戦前回帰も極まれりですが、国民まで黙認してしまえば、国際社会から“日本人は再び戦争をしたいのか”と誤解されるだけです」

 一昔前なら大問題となったはずの暴言だが、16日の参院予算委で三原議員の発言をとがめる議員はゼロ。共産党社民党も黙って聞き流していた。この国はもはや行き着くところまで来てしまったのか。

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