9月30日に行われた「小沢健二 東大900番講堂講義」に行ってきた。同大学の副産物ラボ(中井悠研究室)が主催する「影響学セミナー」の一環として、「イメージの影響学」を講じるのだという。
当日は「思い思いのパーティーに向いた格好」というドレスコードがあり、懐中電灯などのライトを持参すること、とされていた。当日まで講義内容は全く明かされず、ライブを含む「アトラクションのような講義」とだけ聞かされていた。100Pを超えるオリジナルの教科書を使った講義はいったい、どんなものだったのか?
小沢健二が東大900番講堂講義で問題提起したこと「情報イナフな世界の中で我々は何を信じればいいのか?」
9月30日、シンガーソングライターの小沢健二が、自身の母校である東京大学駒場キャンパスの900番教室で講義を行った。三島由紀夫の伝説的な討論会の会場としても知られる、歴史ある講堂で繰り広げられた「アトラクションのような講義」とは、どのようなものだったのか。ワーキングマザーとしての情報発信で知られる一方、元フリッパーズ・ギターの二人(小沢健二と小山田圭吾)の活動を追いかけてきたライター、kobeni氏がレポートする。
うさぎの仮面をかぶって小沢健二が登場
駒場キャンパス900番教室の前では大きな木がライトアップされ、パーティールックの来場客が数多く集まった
歴史を感じる900番教室入口。三島由紀夫が全共闘の学生と議論を交わしたことでも有名
教室の中に入ると中は真っ暗で、長机の上には表紙にハートが描かれた教科書が。ドット絵で描かれたハートは、ピンクとブルーにぼんやりと光っていた。
計125ページの教科書と、猫の仮面。おまけ冊子として配られた「赤い山から銀貨が出てくる」は、小沢が東大在籍時に授業にも参加していた、柴田元幸氏の文芸誌「MONKEY」に寄稿した文章を抜き出したもの
撮影が入るので、顔を隠したい人のために販売されていた「光る猫の仮面(500円)」をつけてみた。ドットで描かれた猫が光る。自分が着ているヘンテコなドレスと光る猫仮面のおかげで、ワクワクは最高潮に。間もなくおもむろに前方で柔らかい色のライトが点灯し、うさぎの仮面(※)を被った小沢健二が現れた。
(※) 小沢が、父親である小澤俊夫氏の発行する昔話の専門誌「子どもと昔話」で連載していた文章のタイトルは「うさぎ!」。うさぎをはじめ3人の15歳が、「世の中に対し真摯な悪態をつきまくる」(教科書の説明文より)物語
イラスト/kobeni
「では、教科書を開いてください」
小沢健二の指示に従い、シールを剥がして分厚い教科書をめくる。1ページ目には野球選手がちょうどボールを打とうとしている絵がドットで粗く描かれており、その周囲には「夜空」「歓声!」「音!」などの文字が少しだけ書いてある。
さらに次のページはたくさんの文字が書かれた透明のシートでできており、ページをめくると「チーム公式SNS」「選手からのビデオメッセージ」「選手のポッドキャスト」「過去の試合が全部見られます」「QRコード」などの無数の情報が、1ページ目の野球選手の上に乗っかっている。私たちの住む世界がいかに情報過多か、「情報イナフ」であるか…といった調子で、アトラクションのような講義は幕を開けた。
関連記事
小山田圭吾の”いじめ”はいかにつくられたか――活動再開の背景にあった女性ファンの「集合的知性」
小山田圭吾が炎上した”イジメ発言”騒動。雑誌による有名人の「人格プロデュース」は罪か?
小山田圭吾はなぜ炎上したのか。現代の災い「インフォデミック(情報感染拡大)」を考える
「音楽も自由競争がなかったら発展しない」圧倒的に嘘や見せかけがばれるようになった日本の音楽芸能。BE:FIRSTを手がけたSKY-HIが目指す「芯のあるエンタテインメント」
マネジメントのはなし。#3
新着記事
【こち亀】定価15万円の高級駅弁も食べた覚えなし…「いちいち覚えてる方が気味悪いだろ!」
“絶対的エース”マルケスの離脱で、歴史的な低迷が続くホンダにさらなる試練【MotoGP】
知らない男たちが突然家に入り、ひきこもり女性を拉致。民間の自立支援センターによる「暴力的支援」の恐怖。「引き出し屋」と呼ばれるその実態とは
『ブラック支援』#1
「星」を急激に下げた食べログ運営会社に店に対して3840万円の賠償命令。なぜグルメ雑誌・サイトは信用ならないのか「九州の人はバリ固ラーメンをさほど頼まない」
『過剰反応な人たち』#3
【こち亀】呪文かよ! 「トミックスとメルクリンを統一させる様なもんだからな」地下鉄が便利な理由
「足を失って、1人でトイレに行けるの? 子どもは産めるの? ディズニー行けるの?」16歳で両足を失ったモデル・葦原海がSNSに挑戦して感じた“環境の変化”
私はないものを数えない。 #1