よう実×呪術廻戦   作:青春 零

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 まず先にお伝えしておきます。

 私、以前4話のあとがきでクラスポイントの評価に関して軽く言及していたんですけど、原作読み返しているうちに、自分が勘違いしていることに気が付き、おかしいぞと思うことが色々と出てきまして。

 とりあえず今回、何に悩んだかというと、入学初日にSシステムを把握した場合、ポイント減少を0に抑えることは可能かどうかという点です。

 この辺り、意見は色々と別れると思うので、とりあえず今回の流れになった経緯というか弁明? は後書きにて記載しております。

 少々長々と語っております。本編で特に違和感を抱かなかった場合は、読む必要もないと思いますが、違和感を抱いた方は、気が向きましたらお目通し頂ければと思います。



16話 システム説明再び

 5月1日、朝。

 護は学生寮のロビーにて学生端末を起動し、振り込まれているポイントを確認した。

 

「10万ポイント、減算は無しか」

 

 先月同様に変わりなく支給されたポイント。

 どうやら水泳授業で休んだ件は評価に響くことはなかったらしい。

 

(校内の呪霊も粗方減ったし、ポイントも余裕が持てそう。そろそろ外の仕事も再開できるかな)

 

 元々、呪術高専に正式に所属していない護は、兄の五条悟から直々に仕事を斡旋され、それをこなしていた。

 今回、学校警備の任に当たって、それらの仕事は一旦止めてもらっていたわけだが、それは状況が安定するまでの一時的な措置に過ぎない。

 呪術師は万年人手不足。そもそも護がこの仕事を任されたのも、術式の関係上出入りが容易く、警備を兼任しつつ外の仕事もこなせると見込まれてのことだ。

 

 最近は生活も落ち着いてきたところであるが、呪術師として未熟であると自認する護としては、碌な実戦経験を積めない今の環境に不満を感じるのもまた事実。

 

 そんなことを考えていると、目の前を人の指が生えた体長20cm程の百足が通り過ぎた。

 

蠅頭(ようとう)……寮内は大方祓ったのに、落ち着いたと思ったそばからこれか)

 

 げんなりとしながら即座にその呪霊を祓うと、丁度そのタイミングで、ロビーのエレベーターからポーンとチャイムが鳴り、中から有栖が現れた。

 

「御機嫌よう、護君」

 

「ああ、おはよう」

 

 もはや当たり前のように二人はロビーで合流すると、共に寮を出た。

 道中、先月同様の支給ポイントについて話したりすることはなかった。

 どちらにしろ、今日学校側から何かしらの説明があることは予想できる。別段今話すこともないというのが二人の共通認識だった。

 

「そういえば昨日、真澄さんとお買い物に行ったんですが、せっかくなのでカラオケで親睦でもと思ったら、『カラオケくらい一人でも行けるでしょ』なんて言うんですよ。ひどいと思いませんか?」

 

「ひどいかは知らんけど、なに、有栖さんってカラオケ好きなの? なんか意外」

 

「好きというよりは、あまり行ったことが無いものですから、興味があったんです」

 

「それなら、他のクラスの連中誘いなよ」

 

「そこは、なら一緒に行こうと言うべきでは?」

 

「奢りなら考える」

 

 この一か月で、護は有栖に対する遠慮はかなぐり捨てていた。

 

「おや、女性に支払いを任せるなんて、紳士のすることではありませんよ?」

 

「紳士でなくて結構だ」

 

「仕方ありませんね。では支払いは私が持ちますので、護君は私が選んだ曲を真澄さんとデュエットしてください」

 

「完全に玩具にする気だろそれ。カラオケの楽しみ方として正しいのか?」

 

 それほど仲が良いわけでもない相手同士のデュエット。ただでさえ気まずい空気が流れること間違いないのに、有栖の選曲というのがまた不吉である。

 

 

 そんな感じで他愛もない会話をしながら。二人は学校までの道のりを歩いて行った。

 

 

 学校に到着し教室に入ると、生徒たちがざわざわと何かを話し合っている。

 

「おっす、ご両人」

 

 席に着くなり、橋本が挨拶をしながら近づいてきた。

 二人が挨拶を返すと、橋本は早速他の生徒たちが話している話題について切り出してくる。

 

「聞いたか? 他のクラスじゃ、やっぱ支給ポイントが下がってるらしいぞ」

 

「へぇ、やっぱそうなんだ」

 

 言われなくても予想していたことだけに、護の反応は淡白だ。

 

「反応薄いな。よそじゃ1ポイントも貰えなかったって慌ててる連中だっているくらいだぞ」

 

「は? 1ポイントも?」

 

「それは、少し意外ですね」

 

 その言葉には、流石に二人とも驚きを露わにした。

 入学当初の真嶋の言葉をそのまま、ポイント=生徒の価値と判断するならポイント0はつまり無価値と評価されたということ。

 水泳授業一回見学したくらいで評価が下がらないのは検証済み。その程度の寛容さは学校側も持っている。

 にも拘らず、そんな評価を得るとはいったい何をやらかしたのか。

 

「だな。俺も今朝自分のポイント見たときは、予想が外れたかと思ったけど、今となっちゃ安心してる。

 マジで五条には感謝だな」

 

 その橋本の言葉に追随して、周囲にいたクラスメイト達も口々に感謝の言葉を口にする。

 

「ほんとだよねー」

 

「ああ、無様な姿を晒さずにすんで助かった」

 

「まったくだ」

 

 何やら酷い言い草の者が混ざっているが、感謝しているのは本当らしい。

 

 そんな風に話していると、始業を告げるチャイムが鳴った。

 生徒たちは全員流れるような動きで席に着き、しばらくして担任の真嶋が教室に入ってくる。

 

「おはよう諸君。これよりホームルームを始めるが、今日は説明することが多い。質問は都度機会を設けるので、まずはこれを見てほしい」

 

 そう言うなり、真嶋は厚手の白い紙を黒板に貼りだした。

 紙にはAからDまでの各クラスの名前と、その横に各クラス異なる数字が記されている。

 

 Aクラス――1000

 Bクラス――790

 Cクラス――540

 Dクラス――0

 

「この数字を何を意味するか、既に何名かは察しがついているだろう。これは、諸君らの一か月の授業態度や生活態度などから判断したクラスの評価、通称クラスポイントだ。

 おそらく、今朝の時点で他のクラスで支給されているポイントが減少しているという話を聞いた者もいるだろうが、その答えがこれだ。

 このポイントは、各クラスで生徒に支給されるポイントと連動している」

 

 その言葉に対し、目に見えて驚いた様子を見せる者はいなかった。

 何名かと真嶋は言ったが、実際にはこのクラスのほとんどの者が、この程度の情報は共有済みである。

 

「生徒に支給されるポイントはプライベートポイントと呼ばれ、クラスポイント1がプライベートポイント100に相当する。例えばBクラスの場合は、クラスポイント790を有しているので、生徒には7万9千ポイントが支給されるかたちだな。ここまで、何か質問がある者は?」

 

 そこで真嶋は一旦区切り、生徒達を見渡した。

 

(めっちゃ見られてる……)

 

 真嶋は全員に対して問いかけているようであるが、明らかに護に対してだけ長い時間、視線を止めていた。

 入学初日の前科があるせいか、どこか警戒したような雰囲気を感じる。

 

 そんな中、ふと葛城が手を挙げた。

 

「葛城か。何だ」

 

「ポイントの評価基準について、詳細を教えていただけますか?」

 

「残念だがそれはできない。人事考課、つまり詳細な査定の内容に関しては、教えられない決まりとなっている。

 これは社会においても通じることだが、実際に企業に入社したとして、詳しい人事の査定内容が伝えられるとは限らないからな」

 

「わかりました。自分からは以上です」

 

「ただ、こちらから言えることがあるとすれば、諸君らの成したこの成績は当校が始まって以来の快挙だろう。

 私の知る限り、入学後初めの一か月で、完璧にポイントを維持したクラスはなかったからな」

 

 真嶋からの称賛の言葉に、生徒たちは誇らしげな表情を浮かべた。

 

「さて、クラスポイントの存在を明かしたところで、次の説明に移ろう。

 クラスポイントの役割は、単なる君たちの小遣いを決めるためのものではない。

 このポイントは、クラスの順位付けにも関わってくる」

 

 嬉しそうだった生徒達の顔が引き締まる。

 順位付けまでは予想できていた。問題はどのようなペナルティが存在するか。

 

「国営直下で管理されるこの学校が、高い進学率と就職率を誇るのは周知のことだろう。当校は卒業していく者に対し、最大限の支援を行っている。

 だがこの恩恵を受けられるのは、Aクラスで卒業した生徒に限られる」

 

 その言葉に、多くの者は口元を押さえたり目を見開いたりと、驚きを隠せない様子だった。

 それでも大きな騒ぎにならなかったのは、自分たちが安全圏にいるという安心故だろう。

 

(え、それだけ?)

 

 その中で一人、護だけは違う意味で驚いた様子を見せていた。

 護にしてみれば進学や就職の保証なんていうのはどうでもいい話。

 最悪の場合、退学やそれに準ずるペナルティを覚悟していただけに、拍子抜けもいいところである。

 

「つまり、仮に今回の結果がAとB逆のものだった場合、今のBクラスがAに、お前達がBクラスに落ち、この恩恵を失っていたことになる。さて、質問は?」

 

 再び質問の機会が設けられるが、大したペナルティが無いとわかった護としては、クラス争いそのものへの関心は薄まっていた。

 

(とはいえ、まだ退学の危険がなくなったわけじゃないか)

 

 そうでなければ、理事長が退学に関して注意を仄めかした理由が無い。下位クラスに落ちることが、直接退学に結び付くことはなくてもその過程で、退学の要素が絡んでくることはあり得る。

 

 そう考えていると、今度は有栖がスッと手を挙げた。

 

「坂柳」

 

「はい。先ほど先生は、人事考課については明かせないと仰いましたが、ポイントを増やす手段についても同様でしょうか?」

 

「いい質問だ。ポイントを増やす手段に関しては現時点で全てを明かすことはできない。

 不明な点を自ら考察し紐解いていく能力も、社会においては求められるからだ。

 だが、同時に今の段階でも幾つか明かせることはある」

 

 そこで一旦話を区切り、真嶋は再びクラス内を見渡した。

 

「この中には部活に所属している者も多いだろうが、大会などで優秀な成績を収めた場合、成果としてプライベートポイントが支給される他、クラスポイントが増加することもある。

 そしてもう一つ。次の中間テストに限って言えば、成績次第で最大100ポイントのクラスポイントが支給される」

 

 その回答を聞き、有栖は再び手を挙げて質問を重ねる。

 

「限って、ということはそれ以降は支給されないと?」

 

「その通りだ。これは、入学して初めての試験を乗り越えた場合の褒賞のようなものだからな」

 

 乗り越えた場合の褒賞。真嶋の口ぶりが何やら含みのある言い回しに聞こえて、護は眉をひそめた。

 

「ふむ、せっかくなのでこのまま中間テストの説明に移ろう。

 まず、これを見なさい」

 

 そう言って、真嶋は改めて黒板に1枚の紙を追加で貼りだした。

 紙に書かれたのはAクラスの生徒全員の名前と、その横にはまた数字が書かれている。

 

「これは、先日やった小テストの結果だ。平均点は82点。まったくもって見事な結果だ」

 

 真嶋は見事と褒めているが、それほど驚くような結果でもない。

 内容としては、全20問で構成されており、最後3問だけは異様なまでに高難度であったが、それを除けば簡単な問題ばかり。

 基礎さえできていれば8割程度とることは難しくなく、実際クラスの半数以上の生徒が80点以上を記録していた。

 ちなみに護は85点。1位は100点で坂柳有栖の名前が、ただ一人そこに記されていた。

 

「さて、この小テストを仮に中間テストの結果だとしよう。その場合の赤点のラインは平均点の半分41点となる。

 今回、赤点となった生徒はいなかったが、もしこれが本番のテストで赤点となった者がいた場合、その者はその時点で退学処分となる」

 

(ほらきた、退学)

 

 護としては、ようやくその話が出たかという心境だが、他の生徒達にしてみればやはり驚きの内容らしく、一部を除き目に見えて驚いた反応をする者がほとんどだった。

 今回、点数的には余裕があった生徒にしてみても、もし万が一ケアレスミスがあったらと考えると、冷汗も出てくるというものだ。

 

「この処分を厳しいと思う者もいるだろうが、諸君の学校生活は国の資金によって賄われている。成果を出せない者にいつまでも投資を続けるほど、世の中は甘くない。

 逆に言うならば、成果を出しさえすればこの学校はそれを評価する。処分を恐れるのであれば、自らが投資に見合った存在であると示し続けることだ」

 

 厳しい言葉に聞こえるが、これも真嶋なりの激励の言葉なのだろう。

 その言葉に、戸惑いを見せていた生徒たちは、僅かに気を引き締めたような顔つきとなる。

 

「さて、以上で説明を終えるが、最後に何か質問はあるか」

 

 そう言って、真嶋は再びクラス全員を見渡して、また最初と同じように護のところで視線を止めた。

 今度は警戒するような雰囲気ではなく、何か語り掛けるかのような視線。

 

(ん、……ああ、もうあれも聞いていいのか)

 

 真嶋が何を言いたいのかを察した護は、入学初日にもしたあの質問をするべく手を挙げた。

 

「五条、質問は?」

 

「はい。仮に退学処分となった生徒が出た場合、これをポイントによって取り消すことは可能ですか?」

 

 おそらくは、学校のシステムについて説明した今だからこそ、明かせるようになっただろうこの質問。

 真嶋は深く頷いてから、口を開いた。

 

「可能だ。無論、暴力やいじめ等、大きな問題行動を起こしていない場合に限るが、クラスポイント300とプライベートポイント2000万を支払うことで、退学処分を取り消すことは可能になる」

 

「ありがとうございます」

 

 礼を言いつつ、しかしその答えに、護は内心で舌打ちをした。

 

(クラス全体で意思決定が必要となると、これをあてにはできないな)

 

 場合によってはクラスの順位が変動しかねない額のポイント。

 ただ1人の救済のために、それを支払う価値があると認めさせるのは容易ではない。

 実質、退学処分が下ったらもうアウトと思うしかないだろう。

 

「では、他に質問が無いようであれば、これにてホームルームを終了する」

 

 そうして、5月最初のホームルームは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 




 ポイント減算0はやりすぎかなと思ったのですが、とりあえずそこに至った経緯を説明させていただきます。
 
 まず、原作を読み返して気付いたのですが、私勘違いしてました。

 アニメにおいて、中間考査では最大100clが成績によって与えられると明言されていて、私もずっとその方式で考えていたんですが、原作の方では、中間考査を乗り越えた場合全クラスに最低100clが支給されると書いてありました。

 つまり中間考査後のAクラスのポイント変動を見ると。

 アニメ
 5月 940cl → +中間考査(64cl) → 7月 1004cl ではなく

 原作
 5月 940cl → +中間考査(≧100cl)-生活評価 → 7月 1004cl となる

 つまり、システム把握後も減算0を維持するのは難しいということになります。
 じゃあ、やっぱりポイント丸ごと残すのはおかしいじゃんとなるんですが、ただこれ以降生活態度で差し引かれた描写もやはり無いんですよね。

 少なくとも、サラリと体育祭終了後10月まで確認したんですが、各試験の増減以外は反映されてませんでした。
 
 更に茶柱は最低100と明言しているあたり、成績次第では110、120と与えられていた可能性もあります。

 そうなると、気になるのは生活態度で引かれたポイント数。
 中間テスト後から、5月時点のクラスポイントの差分から考えて、Aクラス36以上 Bクラス87以上 Cクラス98以上 Dクラス13以上。
 最低でも、このポイントが生活態度で引かれていたことになります。 

 特にDクラスの場合は、過去問の存在で好成績だったため、他クラスより多めにもらえていたはず。
 つまり中間考査後そのポイントを与えられた後で、半月足らずの時間で少なくとも20、30、下手すれば50以上のポイントが減算されていることになります。

 他クラスにも言えることですが、システム把握しているにしては、ポイントの減算が大きすぎると感じました。


 では次に考えられる可能性。

 これらが原作の描写ミスで、アニメの計算の方が正しいという可能性。
 ただ、これも少しおかしな点がありまして、これだとBクラスCクラスが中間考査で13clと2clしか、それぞれ稼げていないことになるんですよね。


 他にも幾つか可能性を考えました。中間考査までは辛口で生活評価を計算してる可能性や、アニメ基準の計算で生活態度の減算が入った可能性など。

 ただ、どのパターンもやはり違和感があったので、最終的にこう考えました。


 もう、書き易い方でいいや ( ̄▽ ̄) と。

 はいすみません。長々と語っておいて最終的にぶん投げました。すみません。

 ただ実際問題、原作では序盤以降生活態度で減算されてないあたり、システム把握してればマイナス0も不可能ではないと思うんですよね。
 車の運転だって初心者ドライバーの方が意外と事故率低いように、入学時点で緊張感維持してたらいけるかなと。
 唯一の懸念材料は水泳授業の見学ですが、2年生編6巻で、病欠に関しては割と寛容なのは確認済み。

 ちなみに中間考査に関しては、アニメ基準の0~100clの幅で成績によって振り分けられるという方式で行くことにしました。

 以上、Aクラスが1000cl残した経緯です。


 ちなみに、B、Cクラスが原作よりポイント上昇しているのは月半ばの時点で噂から情報をキャッチしていたため。ただ、Cに関しては龍園の統率が不完全で半信半疑な生徒が多かったために、劇的な上昇にはなっていません。


 Dクラスに関しても櫛田、平田経由で噂は流れていましたが、池や山内を筆頭に楽観的な生徒が多く、所詮噂と切り捨てる可能性の方が高いため、原作通り0としました。


3/16追記

 様々な方から感想にてご意見を、私の中でも色々と納得できる点があったので御礼申し上げます。
 ともあれ、マイナス0ポイントという点に関しては、特に違和感もないようでしたので、この点に関しては修正なしで進めさせて頂く所存です。
 
 いつも応援、ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

 


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