昨年12月定例議会において、コンプライアンス条例案が提出され、否決されました。

本来コンプライアンス条例は制定されるべきものだと考えていますが、今回の条例案は大きな問題があるとともに、市長の恣意的な意図が見られ、否決されて当然であると考えます。



◎ 「コンプライアンス」とは

  「コンプライアンス」とは、「市長以下職員が、法令遵守だけでなく、倫理観、
  公序良俗などの社会的な規範に従い、公正・公平に業務を行うこと」です。

  このことは至極当たり前のことですが、この「当たり前のこと」が往々にして
  行われないことがあります。

  この為、この条例の制定が求められています。



◎ コンプライアンスを逸脱した例

  コンプライアンスをもう少し理解する為に、それを逸脱した例を見てみましょ
  う。


 ① 業務の執行中にミスをしたり、市民に損害を与える事案が生じた時、又は
   不正が発生した時、それを隠蔽すること。

 ② 特定の個人、グループ、地域等に便宜を図り、それらに利益を与えること。

 ③ セクハラ、パワハラを行うこと。

 ④ 贈収賄等明らかな法令違反を行うこと。等々



◎ コンプライアンスの前提である「行政の透明化」

  コンプライアンスの遵守を声高に叫んでも、「行政の透明化」がなされていない
  と、市民や議員等の市政への監視が行き届かず、見えない闇の中で「不正の芽」
  が出がちになります。

  まずは「行政の透明化」がなされないと「コンプライアンス」は「絵に描いた
  餅」になります。

 「行政の透明化」には、次の要件が必要になるのです。


 ① 市民の願いや要望等が市政に反映されるシステムを備えている。

 ② 施策や事業の形成過程や執行過程が記録化されている。

 ③ 市民が要求すれば、この記録は開示される。

 ④ 市長は説明責任を果たし、市民との協働と参画を得る努力をする。



◎ 今回のコンプライアンス条例案は何が問題なのか。

 ① この条例案には、コンプライアンスの前提である「行政の透明化」を確保する
   為の基本的な考え方と手法が完全に欠落しています。

   「行政の透明化」を図るという市長の姿勢が全く見えません。


 ② 今、市長と議員間で、トラブルになっていることがあります。それは、


  ア 8月の水害で避難所が開設された時、A議員が避難所の状況や市民の要望
    をお聞きする為に訪問したところ、市長が「業務を妨害した」と公文書で
    議長に通告し、今後こうしたことがないよう要求しました。


  イ 新型コロナワクチンの接種で、高齢者に情報が行き届いていない実態がある
    ことから、担当課にきめ細かい対応を求めたところ、その必要性を認めない
    ばかりか、「不当要求行為をした」と公文書で議長に通告し、今後こうした
    ことがないよう要求しました。(当該議員は、大きな声を出したり、委員会
    で質問する等の発言については、パワハラに当たることを認め、陳謝しまし
    た。)


    こうした調査や要望は、いずれも正当な議員活動ですが、この条例が成立す
    ると、これらの例に見られるように、市長の恣意的な判断で「条例に触れる
    業務妨害や不当要求」になることを意味しています。


 ③ 上記のことは、市民の皆さんも「市長の気に入らない行為や要望」をすれば、
   市長から「コンプライアンス条例に触れる業務妨害や不当要求をした」と名指
   しで糾弾される可能性があることを示しています。

   この条例は、市長の意に沿わない議員や市民の行動を押さえつける機能を持っ
   ているのです。

   「市長に物申せば、唇寒し」となり「市民の市政への参画と協働」どころか
   「市長の独裁」に道を開くことになりかねません。

   つまり、市民の権利である正当な行動や要望が保障される仕組みが欠落してい
   るのです。


 ④ その仕組みとは、

  ア 市民の要求・要望を、職員は記録する。

  イ 不正な要望等と判断した記録については、要望者にその内容を書面で確認す
    る。

  ウ 要望者がその記録の開示要求した場合には、開示する。

  の3点ですが、条例案には全く規定されていません。市民が保護される規定が全
  くないとは、呆れてものが言えません。

  石丸市政の本質を見た気がします。


 ⑤ この条例により、市長の恣意的な判断や行動が許容され、議員ばかりか市民さ
   え不当に糾弾される行政体質が広がると、職員は常に「市長の顔色」をうかが
   い、「市長への忖度」が当たり前になり、職員の主体性、積極性、創造性は失
   われていきます。

   こうなるとコンプライアンスどころではなく、市政が一番避けなければならな
   い状態に突入していきます。



市長はマスコミの取材に「議員がコンプラの重要性をこれほどまでに理解していないとは驚いた」と談話していますが、「恫喝されたと大うそをでっち上げるような、コンプライアンスからもっとも遠い市長」が、しかも問題が多い条例案を提出し、コンプライアンスの重要性を説くとは、安芸高田市の混乱を象徴していると言わざるを得ません。   
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