「円環少女の質問受付」の回答の後半部をアップロードいたします。
前編はこちらです。→http://pub.ne.jp/para_shift/?entry_id=3643444
ちょうど現在(5/8)、イラストの深遊さんのblogで円環少女祭をやっているので、アップ時間をすこし早めました。
作家もはじめて見るメイゼル初期ラフや、表紙の没案、リクエスト絵など、驚きの盛りだくさんっぷりな企画になっています。
深遊さんのblog 「TEA TIME BLOG」 (エントリ「◇円環祭」)
http://teezeit.en-grey.com/Entry/48/
今日アップロードの後半部は、いただいた質問のうち、各巻の内容と近いものや、一冊だけに出てきた事柄への回答を集めています。
こうでもしないと、特に魔法設定についての質問が収集がつかなかったとも言います。
こうしてみると、やはり13巻はものすごいはしょりっぷりです。
けれど逆に、これを全部作中で説明するのは不可能だったろうなとも思います。
それと、皆さんに、この質問受付エントリの内容についてはひとつお願いしたいことがあります。
前編もそうだったのですが、今度は本当に身も蓋もない話を書いています。なので、「これは知りたくない」と思ったら、皆さんの自己判断でスルーしてやってほしいのです。
「これを知りたい」と思った読者さんの質問に答えて、エントリは書かれています。
けれど、自分は知りたくない、自分には別の答えがあるというのであれば、そちらを大切にしてやってください。書き手としては、皆さんの気持ちの中にあるものが一番大事だと思います。
質問への回答を前後編にわけたことには、そういう理由もあります。
□■ 各巻の内容に強く結びついた質問
[1巻の内容について]
(1-1)他者に「生命円環」をかけるのは「人体への直接干渉」に該当しないのか?
該当します。
このため、他人の生命円環を保持するのは、円環魔導師にとって高等技術です。
(1-2)魔法で抽象概念は取り扱えないはずなのに、宣名大系では普通に扱っているのはなぜか?
抽象物を取り扱うのは高度魔術で、普通には決して到達できませんが、まったく目がないわけではありません。
たとえば、1巻でも、抽象概念を扱う神音魔術が登場しています。天盟大系の、マチルダが呼び出したインマラホテプは言うにおよばずです。
宣名大系は、抽象概念を扱うのが得意な、普通からは少し外れた魔法なのです。
そのせいで、《貪欲の化身》で対象をとらえてからでないと、魔法による変化を加えることができません。
[3巻の内容について]
(3-1)複製障壁が消去に弱い理由
複製障壁が消去に弱いのは、コピー元の物質とまったく同じものを作っているためです。
複製扉をくぐった参照元と同じものが、いわば物質版の《ゆらぎの化身》に近いものとして現れます。これは、コピーするものが観測者(魔法使い)ではないためいくらでも増やせ、自然物としか言いようのない精度です。
けれど、これはエネルギーの単純な増大であるため、なかば閉鎖した系の中では環境を大きく変動させる要因にもなります。このため消去がじわじわかかることになり、相似秩序によるバックアップでは守りきれず、消去が十分に強力だと破壊されてしまいます。
完全大系による物質精製も、これと同じ欠点を持っています。
遡航抵抗を挟みきれないほど、短期間に大規模にやりすぎるとマズイということです。
グレンの作った水が10トン程度なら、消去に耐えきっていました。
[4巻の内容について]
(4-1)王子護さんが仁を見つけた時に真なる悪鬼を見つけた!って言ったのはどこまでを指すんでしょうか?なんで彼は分かったのでしょう?
4巻での回想シーンの解説になってしまいますね。
王子護は、中学時代の仁を見つけたときは、魔法使いかと勘違いをしていました。仁が魔法消去を止めていたからです。
そして、《万有の化身》を発動して飲み込もうとし、突然仁が魔法消去を発動したことで相当手痛い目にあっています。《万有の化身》発動中に魔法消去を受けると、最悪術者は死んでしまうのです。
王子護は、この段階ですでに日本に再演魔導師(1巻できずなが過去視で見た人物)の子どもが潜んでいることを知っていて、このとき彼の手元にはすでに《剣》がありました。
再演魔導師と《真なる悪鬼》のみが有効に使える《剣》という二つが、いつ出会ってもおかしくない至近距離にあることに、彼は笑ったのです。王子護は、まさにこの時点で”最後の魔法使い”の所在に勘づきました。
王子護はこのせいで、以後、長寿の魔法使いにもかかわらず生き急ぐことになりました。
本当に4巻と1巻は、見返してもわかりづらいところがいっぱいです。申し訳ない。
(4-2)「物を作る魔法」は索引型なら索引、完全大系ならイメージによって作る物を指定するが、アモンやアスタロトは、どうやって作る物を指定しているのか? またアスタロトが生み出せる「万物」「自然ならぬ奇跡」とは具体的にどのようなもので、どこまでできるのか?例えば魔法弦や神人遺物を作ることも可能か?
《魔獣使い》は、万物の源としての《気》から、自然物を作り出す魔法です。
この《気》は求めるものの設計図を内包しているため、術者が精密な指定をしなくてもきちんと動く生物を生み出せます。
実は、瑞希は、自分が一度も見たことがないものも生み出すことができます。ただ、すでに絶滅している動物を生み出すのは、困難が伴うことになります。
《魔獣使い》は、本来はいろいろと悪用ができる魔法です。瑞希が素直な性格なので、安定した変化を、応用力と運用でうまく活用する戦いかたをしています。
舞花の《蛇の女王》は、本当にあらゆるものを生み出せます。ただし、設計図を自然秩序からもらえるわけではありません。
舞花が切った髪の毛を自分で集めて、探索用の小ユニットを作ったのは、あらかじめ作っておかないと(戦闘中に)その場で生成できないためです。《魔獣使い》なら、即応性が高いのでこんな面倒をすることはありませんでした。
便利な魔法を使えるはずの舞花が肉弾戦を得意としていることも、舞花が魔法を制御しきれず消去で燃える体になったのも、取り扱いが難しいためです。
舞花による高度産物は、ほとんどが他の魔法使いからの指示通りに作ったものです。
《蛇の女王》は、設計図さえ適切ならば万能の工場になるからです。そういう意味でも、舞花は《協会》の魔法使いに接近しやすい魔法使いだったと言えます。
[6巻の内容について]
(6-1)王子護が「戦場では槍や弓のほうがよく使われるのに神話の時代から武器の象徴は剣だった。それはなぜか?」みたいな問題を仁になげかけていた気がするのですが、あれの回答はなんなのでしょうか?
神人たちが、象徴として剣を掲げる(宣伝をする)ことで、後代に作られる神人遺物の形状を剣に誘導したのです。
神人たちは、最後に至るべき《増幅器》との戦いで、刺客は魔法消去で身を守りながら武器の斬り合いで勝負をつけると読んでいました。他に勝ち目がなかったためです。
このとき遺物の一般的な形状が弓矢や槍だと、武器自体の性能が高すぎて、無数に神人遺物が転がっていると考えれば圧倒的に《増幅器》が有利になります。
けれど、棍棒だと、自分たちが《増幅器》への刺客に持たせる武器も棍棒に合わせないと怪しまれる。棍棒では、刺客がワンチャンスをもぎとっても《増幅器》を無力化しきれない恐れがある。
武器の分量の差を、個人の技術でカバーする望みがある。かつ、当たれば一撃必殺である。
と考えて、長い長い時間をかけて神人たちは、刺客に持たせる武器を選択しました。
神人遺物を魔法使いが使うとき、問題になるのはそこに封入された魔法です。
このため、再演魔導師たちは、遺物を作るとき、「それが何であるか」がわかりやすい形状を選ぶことが一般的になりました。純粋に殴り合いのために武器の形状を突き詰めるということはなかったのです。
神人たちは、その中で、シンプルな武器としての能力だけが飛び抜けて高い《剣》を、刺客である仁のために用意したのです。
この一本だけは、時の果てで使うために用意された《剣》でした。
この仕掛けに気づいて、舞花の使いやすい武器を用意した時間軸もありました。
けれど、決戦のとき、仁の手にははじめから《剣》がありました。
そして、何百万という武器を与えられた《増幅器》は、多すぎる選択肢から自分が命を預けられる一本を選び出す余力はありませんでした。
”一つ”対”万能”というかたちで、武器の選択も、仁と《増幅器》の戦いをなぞる構図になっていました。
[8巻の内容について]
(8-1)リュカはなぜメイド服を着用しているのでしょうか? 暗殺者時代の名残でしょうか?
メイド服は地球の服なので、リュカは相似世界ではちがった服を着ていました。
リュカは、「ケイツにおつかえする」ということを、何かかんちがいしたのです。
[10巻の内容について]
(10-1)スカアハ市の在った場所は地球の日本に対応しているのでしょうか?
対応しています。
名古屋あたりだと思ってください。濃尾平野はひどいことになりました。
(10-2)円環大系の《サジタリウスの矢》は相手の防御を素通りできるが、ではこれを応用して逆に相手の攻撃を素通りさせて防御する魔術は存在しうるのか?
高速で飛来する攻撃に対して魔法をかけなければならない(銃弾をすり抜けるには銃弾に魔法をかける離れ業が必要)ので、サジタリウスの矢は防御に使うのはちょっと厳しいかもしれません。
よほど特殊な条件下でない限りは、よけたほうが手っ取り早いと思います。
(10-3)《破滅の化身》は身に付けた品物ごと増えるが、なぜ術者自身ではないのに一緒に増えており、しかもその物品は増えているにも関わらず傷ついても平気なのか?
開発当時の《破滅の化身》は、肉体だけを増やしていました。
これは、運が悪いと地面に落ちた小石を踏んで次の瞬間に即死することもあり、大変危険でした。このため長い時間をかけて改良がなされ、今の《破滅の化身》になっています。
高位魔導師の間では、さらなる改良が重ねられています。物語時点では、《太陽女帝》ロザリンドの、機械化を進めて要塞化した肉体と艦載機まで同時に分身を作るものが、技術の到達点です。
(10-4)「サジタリウスの矢」は自己円環のような「肉体を強化する」タイプの防御魔法も無効化するのか?
サジタリウスの矢は、自己円環を無効化しません。
設定上、イリーズは10巻の戦闘で、「背後のスカアハ市を人質にできるとでも思ったか」とばかりに、ターゲット指定したサジタリウスの矢を噛ませた魔法を撃ちまくっています。そして、それは自己円環でわりと防がれています。
この自己円環を突破するのは、連続で打撃を加えたりといった通常の突破手段と同じ工夫が必要で、サジタリウスの矢そのものはそれに対してプラスにもマイナスにもはたらきません。
(10-5)舞花はアスタロトで自分の複製を作っていたが、これは「人体への直接干渉」に該当しないのか?しないのであれば、他の魔法大系で人間を作ることも可能か?
作中に適切な説明役がいなかったので説明省いたのですが、《蛇の女王》で作った舞花の複製とは、言い換えれば舞花にとっての”魔法秩序で記述した自分自身の姿”です。
つまり、《化身》です。《輪廻の化身》といいます。
正確な能力は、《蛇の女王》以外の魔法秩序に従う自分自身を作り出すこと。つまり、螺旋同位体を作ることです。自分が死ぬ瞬間に使ったときのみ、螺旋同位体ではなく《蛇の女王》の魔法を引き継いだ本人のコピーを作り出せます。
ただ、この《輪廻の化身》は非常に癖の強い魔法です。つまり、人間をまるごとひとり生み出すという破格の能力ですが、同位体は、知識経験は本人と同じものを持ちます。
たとえば円環魔導師の舞花を生み出したとしても、その螺旋同位体は、円環魔術を使う役に立たない《蛇の女王》の魔法知識と経験しか持っていないのです。つまり、円環魔導師として一から鍛え直さなければなりません。
舞花がこれを使って螺旋同位体を増やしまくることで魔法使いの手勢を抱えなかったのは、心理的に気持ちが悪かったためです。
魔法世界に生まれて魔法使いとして育っていれば、禁忌で制限せず彼女は化身をもっと有用に使えました。
(10-6)王子護の顔の回復具合は、どうなっていたのか?
王子護の顔は、10巻のテレビ放映のころには完全に魔法消去に耐えられるレベルに回復しています。
ワイズマンのトップは、経済に特化した魔法使いです。背景に関しては、想像がつく人もいるかもしれませんが私のほうからはノーコメントで。
[11巻の内容について]
(11-1)仁達の両親失踪の真相とトザキのオジサンの舞花に対する振る舞いの謎が疑問に残りました…。
本編で伏せた部分もあったり、話題にする適切な場所がなかったりした(舞花が牙を剥いてからはそれどころではなくなるので)こともあり、流してしまいました。
言える部分でいうと、十崎理五郎が舞花との距離が親密とは言えなかったのは、舞花のほうが理五郎を信じなかったせいです。
生前の舞花は武蔵野迷宮での戦闘のエキスパートでしたが、公館が持っていた情報は限定的なものでした。
彼女は、調査報告を公館だけではなく、中学時代に自分の命を救った《協会》にも出していました。むしろ彼女は、理五郎を信じていなかったせいで、公館には情報を一部しか送っていないのです。
(11-2)「最初の再演魔道士」をはじめとするカオティックファクターが「放浪者」到来以前から存在していたのはなぜか?カオティックファクターは地球人の信仰から生まれたもので、信仰は神音大系から伝わったものなのに。
信仰を伝えたのは、神音魔導師たちです。
ですが、カオティックファクターはそれより早く現れています。
これは、未来で降臨する《神》の影響が、過去へもさかのぼるためです。
自然秩序はあくまで自然秩序であって、自然力は、「ある時点で突然ぱっと現れる」ものではありません。
これは、再演秩序の《神》の降臨が本編11巻であるにもかかわらず、それよりずっと前から影響を及ぼしていたことと同じです。
再演秩序は”過去”に干渉するということでわかりやすかったのですが、同じ作用はすべての《神》が持っています。
どこかの時間軸で降臨した《神》は、あらゆる時間時点に影響を及ぼします。
[12巻の内容について]
(12-1)仁と舞花の両親を殺した人間は結局誰だったのか?また舞花はそれを知って復讐をしたのか?
仁と舞花の両親は、父親が《公館》を調べる監査役、母親が元刻印魔導師という、非常に危険な場所にいた身ではありました。
1巻の作中、倉本慈雄が《公館》に《鍵》をわたすために、封筒にそれを入れて郵便受けに突っ込んだ描写があります。この家が、かつての武原家です。
そして、《本》を伝ってきずなは、郵便受けに突っ込まれた後の《鍵》の行方を追えています。《公館》にそれを持ち込んだ仁の父親は、魔法消去者ではありません。
《公館》で戦闘指揮者だった十崎理五郎の親友で、魔法消去者ではなく、監査役だったわけですから、相当にうさんくさい仕事をしていたのです。
両親の死の遠因は、舞花です。
[13巻の内容について]
(13-1)仁たちがアパートに戻ってきたときに鳴り出した電話は、誰からのものだったのですか?
警察からです。とっていれば、警視庁解放のために呼び出されるはずでした。
「電話をとる」という選択肢を選ぶと、後ろの人間関係の決着が、まるごとふっとぶはずでした。
その後の展開がわかっていれば、”未来”の人々からは、再演干渉による攻撃を行うのが自然ではあります。
(13-2)運命の化身のルビは?
ルビはありません。物語で登場時が、全時間軸で初めて発動したときなので、異称がつきようがなかったからです。
英語の名前は蔑称なので、様々な理由でついていない場合があります。
グレン・アザレイの《神に近き者》にルビがなかったことのように、人徳で誰も蔑称をつけなかったケースもあります。
《雷神》クレペンスもこれです。作中では負け癖がついているように見えますが、彼はわりと偉いのです。
一応、設定上は「フォーチュン・アバター」とルビをつけてありますが、たぶん作中世界でそう呼ぶ人はいなかったと思います。
(13-3)最後で再演の神の足を固定したのはケイツなのでしょうか? そうした場合、ケイツはどのような相似を利用してあれを成し遂げたのでしょうか?
ケイツで合っています。
ケイツは倒れ伏して(地べたを這いずって)いる自分の状態と相似にしようとし、舞花はそのまま引きずられて転倒することを避けるために踏ん張らざるを得なくなりました。
固定したというより、舞花に転倒するか耐えるかの二択を突きつけ、結果的に動きを止めさせたのです。
この致命的な瞬間に相似弦を結べたのは、この瞬間だけが、舞花が《増幅器》であることをやめた、過去に対して無敵ではなくなった瞬間だからです。
隙を承知で仁を仕留めに行ったら、ひどいところから手が伸びてきたことも、願いでこれを選んだ”人間”を捨てきれなかった舞花の判断ミスではあります。
(13-4)大審問官の歴史は「過去のぐらつき」を恐れ、「過去」や他の「未来」と争っていたが、大きく歴史が変わってしまえば分枝が生じるだけで、大審問官の歴史には影響を与えないはずなのでは?(きずながイリーズ戦争を書き換えたときに、きずながいる時間軸には何の影響もなかったように)また、歴史改変によって新たな分枝が生じて不都合が発生するのであれば放置しておけばよいのでは?
大審問官と再演大系のマクロな話は、物語上で説明するスペースがなかったので大幅に放り出したところです。
物語を通して、情報を把握している適切な語り手が《大審問官》と《最後の魔法使い》しかいなかったためです。このふたりが出てくる場所を説明に使うと、物語の流れが完全に分断されてしまうため、省略してしまいました。
そのせいで13巻がわかりにくくなってしまいました。申し訳ない。
(本当は特別編として短編を一本書いてもよい内容なのですが、「13巻まで全部読んだ読者さんでないとさっぱりわからない」「番外編として書くとこの複雑 な再演大系の話を全部しなくてはならなくなる」「大仕掛けを受け止めるだけの尺が要求される」という、独立短編としてはわりと致命的な欠点を抱えているので、設定補足のかたちでやります。お時間あったら、《大審問官》の苦悩ときずなの残酷な選択、そしてアンゼロッタの糾弾を、ぱらぱら見直してみてやってください。
円環少女最終巻は、仁とメイゼルときずなのラブストーリーとしてまとめるため、わざとこのあたりを書き落としたところがあります。なので、ラブストーリーとして楽しむには、この項目の内容は読まないほうがよいことかもしれません。)
実は、未来の果てに《増幅器》を送るという計画には、大きな問題がありました。
つまり、論理的に「《本》にラストページが存在することを確定させてしまう」ということです。全人類がいなくなった「ラストページ」に《増幅器》という観測者が降り立つとは、裏返せば《降臨》が起こって再演世界が成立すると、かならず人類は絶滅するということです。
永遠に生き続けるデータ人格の魔法使いがいないのは、この「ラストページ」という極点を論理的に超えられないためです。
具体的に言うと、そういう進歩を「ラストページ」の存在が避けさせるのです。
つまり、再演世界とは、人口を増大させ続ける自然秩序と、「ラストページ」へ向かう引力という、相反する圧力を受け続ける矛盾に満ちた世界です。そして、救いと破滅の両方が、《増幅器》という無敵の干渉力を根拠にしています。
《神》は秩序の管理者であり、観測者――魔法使いが秩序を著しく揺らした場合は直接干渉を行います(参照10巻)。「ラストページ」へ向かう引力とは、つまり《栞》を作り過ぎ、分岐世界を創りすぎた世界構造を矛盾のすくないものに戻そうとする、再演の《神》のはたらきです。
だからこそ、10万年の星間文明を維持している《大審問官》たちにすら、いつか来る破局を引き延ばすことしかできません。
世界の破局とは、つまり人間が絶滅し、本編で描かれたように崩落して別の時間軸に落下することです。このとき”揺れ”が起こっています。
論理をたどれば、ラストページに《増幅器》が存在するため、人口を最大にする再演秩序が、最小の矛盾で、人類の破滅をも許容できるのです。
そして、この「ラストページ」の存在は、救われたはずの再演世界に生存競争をもたらしています。
もっとも長生きする世界とは、「ラストページに直接繋がる時間の流れ」のことだからです。彼女たちは、自分たちが”それ”であるという蓋然性を過去に干渉して守らざるを得ない。
このため、あらゆる未来の再演世界から《最後の魔法使い》は攻撃され続けます。
《最後の魔法使い》がやり遂げて《増幅器》に刺客を送り込む時間の流れが確定するとは、「自分たちはラストページに繋がる流れではない」ということだからです。
かくして、救われたはずの再演世界は、常に「ラストページ」へ向かう引力、滅亡して他の時間軸と合流しようとする引力にさらされ続けることになりました。
他の魔法秩序にまったく関係なく、再演秩序の都合だけでです。
《望まれざる救世主》という、きずなへのアリーセ・バンシュタインの罵倒は、世界に対峙する魔法使いの矜持が吐かせたことばでもあるのです。
(13-5)大審問官の歴史が「揺れ」を恐れたのは、単に自分達の歴史も同じ結末をたどるという不安ゆえか?それとも「揺れ」自体が有害なものなのか?
再演世界にとって、”揺れ”自体は有害なものではありません。
むしろプラスマイナスで言えば、他の時間軸から神人遺物が転がり込んでくるのですから、全体としてはプラスです。
ただし、”揺れ”は時間軸全域で観測できるため、どうしても政情は不安になります。
(13-6)13巻p93では「別の時間の流れという《本》には直接干渉できない」とあるが、合流した世界の歴史を操作できないのであれば、「アンプ」も「合流した歴史」を操作することはできないのでは?
《増幅器》は、すべての未来の結果としての「ラストページ」に存在するので、ここからはあらゆる過去に干渉できます。
裏を返すと、あらゆる過去に干渉可能である、あらゆる過去の再演秩序を補強できる位置は、ここしかないのです。
(13-7)アンプを送る計画は、作中で描かれている歴史だけでなく、極星を追うものの歴史でも存在したようだが、成功した歴史は他にあるのか?あったとして、複数のアンプが競合を起こさないのか?
《増幅器》は、全時間軸でひとつしか送れていません。
「ラストページ」からの干渉があるため、次を送ろうとする試みは自動的に失敗しています。
(13-8)仁がアンプを破壊したことで、全ての時間軸がアンプの支配から解放されたのか?解放されたのなら、きずなももうアンプに支配されることはないのか?解放が確定したのならば、作中の「きずな」が「最後の魔法使い」にならなくても、縛られることはないのでは?
アンプの支配からは解放されました。しかしそれは、「本来は無限の時間を使って無限に過去を修正し続けられる」アンプが、発生後数分で破壊されてしまったことで、操作にかけられる時間を有限に区切られただけです。著しく弱まっただけで消えてはいません。
また、きずなはタイムパラドックスを無視できないので結局《最後の魔法使い》にならざるをえません。
円環少女の設定では、タイムパラドックスを無視した時間軸は、「ラストページ」からの引力に耐えきれず、滅亡して分岐元の時間軸に早晩合流することになります。
この破壊が確定した時点できずなが戦いをあきらめてしまう時間軸もあるのですが、これはあまり長生きしていない世界です。前述のような再演世界同士の生存競争が続いているためです。
最後まで《最後の魔法使い》が残って、《増幅器》のところまで仁を送り込む時間軸があるから、黄金の雨が降るのです。
そして、円環少女という《本》は、他の無数の可能性ではなく、《最後の魔法使い》に至る時間の流れを編集して記した物語です。
再演秩序(未来の無数の分岐世界)同士の生存競争は、13巻の作業中に書くかどうかわりと迷ったところでした。
最終的には、13巻は、仁とメイゼルときずなの物語が一番目立つようにするべきだろうと思い切り、すべて削りました。
《大審問官》とアンゼロッタの叫びは、ここが残っていれば、もうすこしわかりやすくなっていたかもしれません。
(13-9)ケイツが再演魔法を観測・解除しているのは「大系の枠を超えた魔法」か?
ケイツによる再演魔法の観測・解除は、大系の枠を超えた魔法です。魔法を直接操作対象としているからです。本来、再演秩序が似ているかどうかは、相似魔術では照準できません。
ただ、この類の魔法としてはまだ易しい部類に入ります。
これは、本人がまったく気づいていませんが、きちんと使いこなせるようになると強力な魔法です。
楽器を使った神音魔術のような、「出てくる魔法がすべて同じもの」(たとえば概念魔弾のような)が、根こそぎ吹っ飛ばされてしまうためです。
グレンは、この同じ技術で、魔弾を何万発撃たれても一網打尽にできます。グレンが生き残る時間軸では、この英雄は、神聖騎士団にとっては異常にやりにくい相手でした。
(13-10)スセラミス派の吸血鬼たちは「様々な世界の魔法使いが体に施した強化をコピーして」とあるが、他の大系の肉体強化魔法もコピーできるのか?できるとすればそれは「大系の枠を超えた魔法」か?
魔法による肉体強化を移すのは、大系の枠を超えた魔法になります。
スセラミス派の吸血鬼たちが「魔法使いをさらってきて」奪わなければならなかったのは、これが簡単ではなかったためです。
ただ、相似大系の《原型の化身》のおかげで、このハードルはまったく超え得ないものではありませんでした。
(13-11)「最後の魔法使い」はどうやって仁を時間跳躍をさせたのか?またメイゼルはどうやって時間跳躍をしたのか?
《最後の魔法使い》は、”未来”に対して干渉できないという再演大系の基本ルールを、ほんの数分ぶんだけ破って仁を「自分の死より未来」に飛ばしました。
最後に会った《最後の魔法使い》は、死の数分前の姿です。
ちょっとややこしい手順なので、設定上の事柄の流れを整理して書いてみます。
①《最後の魔法使い》が、自分のいる世界以外の再演世界が、全滅していることを確認する。《最後の魔法使い》が最後の魔法を使う。
※この魔法によって、仁のいる時代では、アパート階段前に《扉》が出現。
②《最後の魔法使い》死亡。これによって、すべての再演世界で人口がゼロになる。(《本》のラストページの開始)
③人間が誰もいなくなった極遠未来の世界に、舞花の落下が開始。
④仁が「ラストページ」に到着。(①の魔法で発生した《扉》から、この時点に仁が転送された。)
※この時点では、魔法で運ばれてきた仁が、魔法消去を発動していないことに注意。
⑤腕を切断された状態の舞花が、「ラストページ」に転送されてくる。
※舞花に落下してきてもらわないと困るので、仁は魔法消去停止中。
、
⑥仁が魔法消去を発動、舞花を殺しにかかる。この段階では、舞花はまだ《増幅器》になっていません。
※《増幅器》にまだなっていないのは、再演大系が《本》のページの上(時間の正常に流れている場所)を操作する魔法だからです。ページ外での操作が可能なら、仁を「ラストページ」に到着させないよう遮断できました。
⑦最後の”揺れ”が発生。神人遺物の大量落下。これによって仁の感覚が妨害されて、その隙に舞花は《増幅器》として完成する。
※遺物の大量落下がこのタイミングだったのは、時間の辻褄を合わせるための再演秩序の干渉です。この期に及んで、これの発生を読みきれず舞花を《増幅器》にせず殺しきれると思っている様子だったので、仁は妹に笑われました。
⑧仁vs舞花の戦闘。
⑨《増幅器》の破壊。
※神人遺物がすべて破壊され、再演魔導師たちが遠大な時間で負荷をかけてきた再演秩序の、ひずみが解消される。「ラストページ」の引力が完全に消失。
⑩仁の死亡。全時間軸での人類絶滅。
このタイミングで、人間の存在そのものを自然力として織り込んでいる再演秩序は、矛盾をきたして緩む。
という流れになっています。
メイゼルの時間跳躍は、あまり余韻をぶち壊すのもなんなので、設定的にはこの流れと衝突しない理屈で行われているというだけに留めておきます。
■□ 以上
※番外(深遊さんblogエントリより)
Q:担当さんに止められた専任係官どんなキャラだったのかすごく気になる。
あとベルニッチの《理想の化身》についてkwsk
A:止められた専任係官は、本編に登場した某キャラクタのお兄さんです。ダメな方向に完成度が高かったのが、鬼門だった模様です。
ベルニッチの《理想の化身》は、本人が恥ずかしがって使いませんでした。《理想の化身》は、術者自身の理想の姿に生命を与える魔法なのです。
前編はこちらです。→http://pub.ne.jp/para_shift/?entry_id=3643444
ちょうど現在(5/8)、イラストの深遊さんのblogで円環少女祭をやっているので、アップ時間をすこし早めました。
作家もはじめて見るメイゼル初期ラフや、表紙の没案、リクエスト絵など、驚きの盛りだくさんっぷりな企画になっています。
深遊さんのblog 「TEA TIME BLOG」 (エントリ「◇円環祭」)
http://teezeit.en-grey.com/Entry/48/
今日アップロードの後半部は、いただいた質問のうち、各巻の内容と近いものや、一冊だけに出てきた事柄への回答を集めています。
こうでもしないと、特に魔法設定についての質問が収集がつかなかったとも言います。
こうしてみると、やはり13巻はものすごいはしょりっぷりです。
けれど逆に、これを全部作中で説明するのは不可能だったろうなとも思います。
それと、皆さんに、この質問受付エントリの内容についてはひとつお願いしたいことがあります。
前編もそうだったのですが、今度は本当に身も蓋もない話を書いています。なので、「これは知りたくない」と思ったら、皆さんの自己判断でスルーしてやってほしいのです。
「これを知りたい」と思った読者さんの質問に答えて、エントリは書かれています。
けれど、自分は知りたくない、自分には別の答えがあるというのであれば、そちらを大切にしてやってください。書き手としては、皆さんの気持ちの中にあるものが一番大事だと思います。
質問への回答を前後編にわけたことには、そういう理由もあります。
□■ 各巻の内容に強く結びついた質問
[1巻の内容について]
(1-1)他者に「生命円環」をかけるのは「人体への直接干渉」に該当しないのか?
該当します。
このため、他人の生命円環を保持するのは、円環魔導師にとって高等技術です。
(1-2)魔法で抽象概念は取り扱えないはずなのに、宣名大系では普通に扱っているのはなぜか?
抽象物を取り扱うのは高度魔術で、普通には決して到達できませんが、まったく目がないわけではありません。
たとえば、1巻でも、抽象概念を扱う神音魔術が登場しています。天盟大系の、マチルダが呼び出したインマラホテプは言うにおよばずです。
宣名大系は、抽象概念を扱うのが得意な、普通からは少し外れた魔法なのです。
そのせいで、《貪欲の化身》で対象をとらえてからでないと、魔法による変化を加えることができません。
[3巻の内容について]
(3-1)複製障壁が消去に弱い理由
複製障壁が消去に弱いのは、コピー元の物質とまったく同じものを作っているためです。
複製扉をくぐった参照元と同じものが、いわば物質版の《ゆらぎの化身》に近いものとして現れます。これは、コピーするものが観測者(魔法使い)ではないためいくらでも増やせ、自然物としか言いようのない精度です。
けれど、これはエネルギーの単純な増大であるため、なかば閉鎖した系の中では環境を大きく変動させる要因にもなります。このため消去がじわじわかかることになり、相似秩序によるバックアップでは守りきれず、消去が十分に強力だと破壊されてしまいます。
完全大系による物質精製も、これと同じ欠点を持っています。
遡航抵抗を挟みきれないほど、短期間に大規模にやりすぎるとマズイということです。
グレンの作った水が10トン程度なら、消去に耐えきっていました。
[4巻の内容について]
(4-1)王子護さんが仁を見つけた時に真なる悪鬼を見つけた!って言ったのはどこまでを指すんでしょうか?なんで彼は分かったのでしょう?
4巻での回想シーンの解説になってしまいますね。
王子護は、中学時代の仁を見つけたときは、魔法使いかと勘違いをしていました。仁が魔法消去を止めていたからです。
そして、《万有の化身》を発動して飲み込もうとし、突然仁が魔法消去を発動したことで相当手痛い目にあっています。《万有の化身》発動中に魔法消去を受けると、最悪術者は死んでしまうのです。
王子護は、この段階ですでに日本に再演魔導師(1巻できずなが過去視で見た人物)の子どもが潜んでいることを知っていて、このとき彼の手元にはすでに《剣》がありました。
再演魔導師と《真なる悪鬼》のみが有効に使える《剣》という二つが、いつ出会ってもおかしくない至近距離にあることに、彼は笑ったのです。王子護は、まさにこの時点で”最後の魔法使い”の所在に勘づきました。
王子護はこのせいで、以後、長寿の魔法使いにもかかわらず生き急ぐことになりました。
本当に4巻と1巻は、見返してもわかりづらいところがいっぱいです。申し訳ない。
(4-2)「物を作る魔法」は索引型なら索引、完全大系ならイメージによって作る物を指定するが、アモンやアスタロトは、どうやって作る物を指定しているのか? またアスタロトが生み出せる「万物」「自然ならぬ奇跡」とは具体的にどのようなもので、どこまでできるのか?例えば魔法弦や神人遺物を作ることも可能か?
《魔獣使い》は、万物の源としての《気》から、自然物を作り出す魔法です。
この《気》は求めるものの設計図を内包しているため、術者が精密な指定をしなくてもきちんと動く生物を生み出せます。
実は、瑞希は、自分が一度も見たことがないものも生み出すことができます。ただ、すでに絶滅している動物を生み出すのは、困難が伴うことになります。
《魔獣使い》は、本来はいろいろと悪用ができる魔法です。瑞希が素直な性格なので、安定した変化を、応用力と運用でうまく活用する戦いかたをしています。
舞花の《蛇の女王》は、本当にあらゆるものを生み出せます。ただし、設計図を自然秩序からもらえるわけではありません。
舞花が切った髪の毛を自分で集めて、探索用の小ユニットを作ったのは、あらかじめ作っておかないと(戦闘中に)その場で生成できないためです。《魔獣使い》なら、即応性が高いのでこんな面倒をすることはありませんでした。
便利な魔法を使えるはずの舞花が肉弾戦を得意としていることも、舞花が魔法を制御しきれず消去で燃える体になったのも、取り扱いが難しいためです。
舞花による高度産物は、ほとんどが他の魔法使いからの指示通りに作ったものです。
《蛇の女王》は、設計図さえ適切ならば万能の工場になるからです。そういう意味でも、舞花は《協会》の魔法使いに接近しやすい魔法使いだったと言えます。
[6巻の内容について]
(6-1)王子護が「戦場では槍や弓のほうがよく使われるのに神話の時代から武器の象徴は剣だった。それはなぜか?」みたいな問題を仁になげかけていた気がするのですが、あれの回答はなんなのでしょうか?
神人たちが、象徴として剣を掲げる(宣伝をする)ことで、後代に作られる神人遺物の形状を剣に誘導したのです。
神人たちは、最後に至るべき《増幅器》との戦いで、刺客は魔法消去で身を守りながら武器の斬り合いで勝負をつけると読んでいました。他に勝ち目がなかったためです。
このとき遺物の一般的な形状が弓矢や槍だと、武器自体の性能が高すぎて、無数に神人遺物が転がっていると考えれば圧倒的に《増幅器》が有利になります。
けれど、棍棒だと、自分たちが《増幅器》への刺客に持たせる武器も棍棒に合わせないと怪しまれる。棍棒では、刺客がワンチャンスをもぎとっても《増幅器》を無力化しきれない恐れがある。
武器の分量の差を、個人の技術でカバーする望みがある。かつ、当たれば一撃必殺である。
と考えて、長い長い時間をかけて神人たちは、刺客に持たせる武器を選択しました。
神人遺物を魔法使いが使うとき、問題になるのはそこに封入された魔法です。
このため、再演魔導師たちは、遺物を作るとき、「それが何であるか」がわかりやすい形状を選ぶことが一般的になりました。純粋に殴り合いのために武器の形状を突き詰めるということはなかったのです。
神人たちは、その中で、シンプルな武器としての能力だけが飛び抜けて高い《剣》を、刺客である仁のために用意したのです。
この一本だけは、時の果てで使うために用意された《剣》でした。
この仕掛けに気づいて、舞花の使いやすい武器を用意した時間軸もありました。
けれど、決戦のとき、仁の手にははじめから《剣》がありました。
そして、何百万という武器を与えられた《増幅器》は、多すぎる選択肢から自分が命を預けられる一本を選び出す余力はありませんでした。
”一つ”対”万能”というかたちで、武器の選択も、仁と《増幅器》の戦いをなぞる構図になっていました。
[8巻の内容について]
(8-1)リュカはなぜメイド服を着用しているのでしょうか? 暗殺者時代の名残でしょうか?
メイド服は地球の服なので、リュカは相似世界ではちがった服を着ていました。
リュカは、「ケイツにおつかえする」ということを、何かかんちがいしたのです。
[10巻の内容について]
(10-1)スカアハ市の在った場所は地球の日本に対応しているのでしょうか?
対応しています。
名古屋あたりだと思ってください。濃尾平野はひどいことになりました。
(10-2)円環大系の《サジタリウスの矢》は相手の防御を素通りできるが、ではこれを応用して逆に相手の攻撃を素通りさせて防御する魔術は存在しうるのか?
高速で飛来する攻撃に対して魔法をかけなければならない(銃弾をすり抜けるには銃弾に魔法をかける離れ業が必要)ので、サジタリウスの矢は防御に使うのはちょっと厳しいかもしれません。
よほど特殊な条件下でない限りは、よけたほうが手っ取り早いと思います。
(10-3)《破滅の化身》は身に付けた品物ごと増えるが、なぜ術者自身ではないのに一緒に増えており、しかもその物品は増えているにも関わらず傷ついても平気なのか?
開発当時の《破滅の化身》は、肉体だけを増やしていました。
これは、運が悪いと地面に落ちた小石を踏んで次の瞬間に即死することもあり、大変危険でした。このため長い時間をかけて改良がなされ、今の《破滅の化身》になっています。
高位魔導師の間では、さらなる改良が重ねられています。物語時点では、《太陽女帝》ロザリンドの、機械化を進めて要塞化した肉体と艦載機まで同時に分身を作るものが、技術の到達点です。
(10-4)「サジタリウスの矢」は自己円環のような「肉体を強化する」タイプの防御魔法も無効化するのか?
サジタリウスの矢は、自己円環を無効化しません。
設定上、イリーズは10巻の戦闘で、「背後のスカアハ市を人質にできるとでも思ったか」とばかりに、ターゲット指定したサジタリウスの矢を噛ませた魔法を撃ちまくっています。そして、それは自己円環でわりと防がれています。
この自己円環を突破するのは、連続で打撃を加えたりといった通常の突破手段と同じ工夫が必要で、サジタリウスの矢そのものはそれに対してプラスにもマイナスにもはたらきません。
(10-5)舞花はアスタロトで自分の複製を作っていたが、これは「人体への直接干渉」に該当しないのか?しないのであれば、他の魔法大系で人間を作ることも可能か?
作中に適切な説明役がいなかったので説明省いたのですが、《蛇の女王》で作った舞花の複製とは、言い換えれば舞花にとっての”魔法秩序で記述した自分自身の姿”です。
つまり、《化身》です。《輪廻の化身》といいます。
正確な能力は、《蛇の女王》以外の魔法秩序に従う自分自身を作り出すこと。つまり、螺旋同位体を作ることです。自分が死ぬ瞬間に使ったときのみ、螺旋同位体ではなく《蛇の女王》の魔法を引き継いだ本人のコピーを作り出せます。
ただ、この《輪廻の化身》は非常に癖の強い魔法です。つまり、人間をまるごとひとり生み出すという破格の能力ですが、同位体は、知識経験は本人と同じものを持ちます。
たとえば円環魔導師の舞花を生み出したとしても、その螺旋同位体は、円環魔術を使う役に立たない《蛇の女王》の魔法知識と経験しか持っていないのです。つまり、円環魔導師として一から鍛え直さなければなりません。
舞花がこれを使って螺旋同位体を増やしまくることで魔法使いの手勢を抱えなかったのは、心理的に気持ちが悪かったためです。
魔法世界に生まれて魔法使いとして育っていれば、禁忌で制限せず彼女は化身をもっと有用に使えました。
(10-6)王子護の顔の回復具合は、どうなっていたのか?
王子護の顔は、10巻のテレビ放映のころには完全に魔法消去に耐えられるレベルに回復しています。
ワイズマンのトップは、経済に特化した魔法使いです。背景に関しては、想像がつく人もいるかもしれませんが私のほうからはノーコメントで。
[11巻の内容について]
(11-1)仁達の両親失踪の真相とトザキのオジサンの舞花に対する振る舞いの謎が疑問に残りました…。
本編で伏せた部分もあったり、話題にする適切な場所がなかったりした(舞花が牙を剥いてからはそれどころではなくなるので)こともあり、流してしまいました。
言える部分でいうと、十崎理五郎が舞花との距離が親密とは言えなかったのは、舞花のほうが理五郎を信じなかったせいです。
生前の舞花は武蔵野迷宮での戦闘のエキスパートでしたが、公館が持っていた情報は限定的なものでした。
彼女は、調査報告を公館だけではなく、中学時代に自分の命を救った《協会》にも出していました。むしろ彼女は、理五郎を信じていなかったせいで、公館には情報を一部しか送っていないのです。
(11-2)「最初の再演魔道士」をはじめとするカオティックファクターが「放浪者」到来以前から存在していたのはなぜか?カオティックファクターは地球人の信仰から生まれたもので、信仰は神音大系から伝わったものなのに。
信仰を伝えたのは、神音魔導師たちです。
ですが、カオティックファクターはそれより早く現れています。
これは、未来で降臨する《神》の影響が、過去へもさかのぼるためです。
自然秩序はあくまで自然秩序であって、自然力は、「ある時点で突然ぱっと現れる」ものではありません。
これは、再演秩序の《神》の降臨が本編11巻であるにもかかわらず、それよりずっと前から影響を及ぼしていたことと同じです。
再演秩序は”過去”に干渉するということでわかりやすかったのですが、同じ作用はすべての《神》が持っています。
どこかの時間軸で降臨した《神》は、あらゆる時間時点に影響を及ぼします。
[12巻の内容について]
(12-1)仁と舞花の両親を殺した人間は結局誰だったのか?また舞花はそれを知って復讐をしたのか?
仁と舞花の両親は、父親が《公館》を調べる監査役、母親が元刻印魔導師という、非常に危険な場所にいた身ではありました。
1巻の作中、倉本慈雄が《公館》に《鍵》をわたすために、封筒にそれを入れて郵便受けに突っ込んだ描写があります。この家が、かつての武原家です。
そして、《本》を伝ってきずなは、郵便受けに突っ込まれた後の《鍵》の行方を追えています。《公館》にそれを持ち込んだ仁の父親は、魔法消去者ではありません。
《公館》で戦闘指揮者だった十崎理五郎の親友で、魔法消去者ではなく、監査役だったわけですから、相当にうさんくさい仕事をしていたのです。
両親の死の遠因は、舞花です。
[13巻の内容について]
(13-1)仁たちがアパートに戻ってきたときに鳴り出した電話は、誰からのものだったのですか?
警察からです。とっていれば、警視庁解放のために呼び出されるはずでした。
「電話をとる」という選択肢を選ぶと、後ろの人間関係の決着が、まるごとふっとぶはずでした。
その後の展開がわかっていれば、”未来”の人々からは、再演干渉による攻撃を行うのが自然ではあります。
(13-2)運命の化身のルビは?
ルビはありません。物語で登場時が、全時間軸で初めて発動したときなので、異称がつきようがなかったからです。
英語の名前は蔑称なので、様々な理由でついていない場合があります。
グレン・アザレイの《神に近き者》にルビがなかったことのように、人徳で誰も蔑称をつけなかったケースもあります。
《雷神》クレペンスもこれです。作中では負け癖がついているように見えますが、彼はわりと偉いのです。
一応、設定上は「フォーチュン・アバター」とルビをつけてありますが、たぶん作中世界でそう呼ぶ人はいなかったと思います。
(13-3)最後で再演の神の足を固定したのはケイツなのでしょうか? そうした場合、ケイツはどのような相似を利用してあれを成し遂げたのでしょうか?
ケイツで合っています。
ケイツは倒れ伏して(地べたを這いずって)いる自分の状態と相似にしようとし、舞花はそのまま引きずられて転倒することを避けるために踏ん張らざるを得なくなりました。
固定したというより、舞花に転倒するか耐えるかの二択を突きつけ、結果的に動きを止めさせたのです。
この致命的な瞬間に相似弦を結べたのは、この瞬間だけが、舞花が《増幅器》であることをやめた、過去に対して無敵ではなくなった瞬間だからです。
隙を承知で仁を仕留めに行ったら、ひどいところから手が伸びてきたことも、願いでこれを選んだ”人間”を捨てきれなかった舞花の判断ミスではあります。
(13-4)大審問官の歴史は「過去のぐらつき」を恐れ、「過去」や他の「未来」と争っていたが、大きく歴史が変わってしまえば分枝が生じるだけで、大審問官の歴史には影響を与えないはずなのでは?(きずながイリーズ戦争を書き換えたときに、きずながいる時間軸には何の影響もなかったように)また、歴史改変によって新たな分枝が生じて不都合が発生するのであれば放置しておけばよいのでは?
大審問官と再演大系のマクロな話は、物語上で説明するスペースがなかったので大幅に放り出したところです。
物語を通して、情報を把握している適切な語り手が《大審問官》と《最後の魔法使い》しかいなかったためです。このふたりが出てくる場所を説明に使うと、物語の流れが完全に分断されてしまうため、省略してしまいました。
そのせいで13巻がわかりにくくなってしまいました。申し訳ない。
(本当は特別編として短編を一本書いてもよい内容なのですが、「13巻まで全部読んだ読者さんでないとさっぱりわからない」「番外編として書くとこの複雑 な再演大系の話を全部しなくてはならなくなる」「大仕掛けを受け止めるだけの尺が要求される」という、独立短編としてはわりと致命的な欠点を抱えているので、設定補足のかたちでやります。お時間あったら、《大審問官》の苦悩ときずなの残酷な選択、そしてアンゼロッタの糾弾を、ぱらぱら見直してみてやってください。
円環少女最終巻は、仁とメイゼルときずなのラブストーリーとしてまとめるため、わざとこのあたりを書き落としたところがあります。なので、ラブストーリーとして楽しむには、この項目の内容は読まないほうがよいことかもしれません。)
実は、未来の果てに《増幅器》を送るという計画には、大きな問題がありました。
つまり、論理的に「《本》にラストページが存在することを確定させてしまう」ということです。全人類がいなくなった「ラストページ」に《増幅器》という観測者が降り立つとは、裏返せば《降臨》が起こって再演世界が成立すると、かならず人類は絶滅するということです。
永遠に生き続けるデータ人格の魔法使いがいないのは、この「ラストページ」という極点を論理的に超えられないためです。
具体的に言うと、そういう進歩を「ラストページ」の存在が避けさせるのです。
つまり、再演世界とは、人口を増大させ続ける自然秩序と、「ラストページ」へ向かう引力という、相反する圧力を受け続ける矛盾に満ちた世界です。そして、救いと破滅の両方が、《増幅器》という無敵の干渉力を根拠にしています。
《神》は秩序の管理者であり、観測者――魔法使いが秩序を著しく揺らした場合は直接干渉を行います(参照10巻)。「ラストページ」へ向かう引力とは、つまり《栞》を作り過ぎ、分岐世界を創りすぎた世界構造を矛盾のすくないものに戻そうとする、再演の《神》のはたらきです。
だからこそ、10万年の星間文明を維持している《大審問官》たちにすら、いつか来る破局を引き延ばすことしかできません。
世界の破局とは、つまり人間が絶滅し、本編で描かれたように崩落して別の時間軸に落下することです。このとき”揺れ”が起こっています。
論理をたどれば、ラストページに《増幅器》が存在するため、人口を最大にする再演秩序が、最小の矛盾で、人類の破滅をも許容できるのです。
そして、この「ラストページ」の存在は、救われたはずの再演世界に生存競争をもたらしています。
もっとも長生きする世界とは、「ラストページに直接繋がる時間の流れ」のことだからです。彼女たちは、自分たちが”それ”であるという蓋然性を過去に干渉して守らざるを得ない。
このため、あらゆる未来の再演世界から《最後の魔法使い》は攻撃され続けます。
《最後の魔法使い》がやり遂げて《増幅器》に刺客を送り込む時間の流れが確定するとは、「自分たちはラストページに繋がる流れではない」ということだからです。
かくして、救われたはずの再演世界は、常に「ラストページ」へ向かう引力、滅亡して他の時間軸と合流しようとする引力にさらされ続けることになりました。
他の魔法秩序にまったく関係なく、再演秩序の都合だけでです。
《望まれざる救世主》という、きずなへのアリーセ・バンシュタインの罵倒は、世界に対峙する魔法使いの矜持が吐かせたことばでもあるのです。
(13-5)大審問官の歴史が「揺れ」を恐れたのは、単に自分達の歴史も同じ結末をたどるという不安ゆえか?それとも「揺れ」自体が有害なものなのか?
再演世界にとって、”揺れ”自体は有害なものではありません。
むしろプラスマイナスで言えば、他の時間軸から神人遺物が転がり込んでくるのですから、全体としてはプラスです。
ただし、”揺れ”は時間軸全域で観測できるため、どうしても政情は不安になります。
(13-6)13巻p93では「別の時間の流れという《本》には直接干渉できない」とあるが、合流した世界の歴史を操作できないのであれば、「アンプ」も「合流した歴史」を操作することはできないのでは?
《増幅器》は、すべての未来の結果としての「ラストページ」に存在するので、ここからはあらゆる過去に干渉できます。
裏を返すと、あらゆる過去に干渉可能である、あらゆる過去の再演秩序を補強できる位置は、ここしかないのです。
(13-7)アンプを送る計画は、作中で描かれている歴史だけでなく、極星を追うものの歴史でも存在したようだが、成功した歴史は他にあるのか?あったとして、複数のアンプが競合を起こさないのか?
《増幅器》は、全時間軸でひとつしか送れていません。
「ラストページ」からの干渉があるため、次を送ろうとする試みは自動的に失敗しています。
(13-8)仁がアンプを破壊したことで、全ての時間軸がアンプの支配から解放されたのか?解放されたのなら、きずなももうアンプに支配されることはないのか?解放が確定したのならば、作中の「きずな」が「最後の魔法使い」にならなくても、縛られることはないのでは?
アンプの支配からは解放されました。しかしそれは、「本来は無限の時間を使って無限に過去を修正し続けられる」アンプが、発生後数分で破壊されてしまったことで、操作にかけられる時間を有限に区切られただけです。著しく弱まっただけで消えてはいません。
また、きずなはタイムパラドックスを無視できないので結局《最後の魔法使い》にならざるをえません。
円環少女の設定では、タイムパラドックスを無視した時間軸は、「ラストページ」からの引力に耐えきれず、滅亡して分岐元の時間軸に早晩合流することになります。
この破壊が確定した時点できずなが戦いをあきらめてしまう時間軸もあるのですが、これはあまり長生きしていない世界です。前述のような再演世界同士の生存競争が続いているためです。
最後まで《最後の魔法使い》が残って、《増幅器》のところまで仁を送り込む時間軸があるから、黄金の雨が降るのです。
そして、円環少女という《本》は、他の無数の可能性ではなく、《最後の魔法使い》に至る時間の流れを編集して記した物語です。
再演秩序(未来の無数の分岐世界)同士の生存競争は、13巻の作業中に書くかどうかわりと迷ったところでした。
最終的には、13巻は、仁とメイゼルときずなの物語が一番目立つようにするべきだろうと思い切り、すべて削りました。
《大審問官》とアンゼロッタの叫びは、ここが残っていれば、もうすこしわかりやすくなっていたかもしれません。
(13-9)ケイツが再演魔法を観測・解除しているのは「大系の枠を超えた魔法」か?
ケイツによる再演魔法の観測・解除は、大系の枠を超えた魔法です。魔法を直接操作対象としているからです。本来、再演秩序が似ているかどうかは、相似魔術では照準できません。
ただ、この類の魔法としてはまだ易しい部類に入ります。
これは、本人がまったく気づいていませんが、きちんと使いこなせるようになると強力な魔法です。
楽器を使った神音魔術のような、「出てくる魔法がすべて同じもの」(たとえば概念魔弾のような)が、根こそぎ吹っ飛ばされてしまうためです。
グレンは、この同じ技術で、魔弾を何万発撃たれても一網打尽にできます。グレンが生き残る時間軸では、この英雄は、神聖騎士団にとっては異常にやりにくい相手でした。
(13-10)スセラミス派の吸血鬼たちは「様々な世界の魔法使いが体に施した強化をコピーして」とあるが、他の大系の肉体強化魔法もコピーできるのか?できるとすればそれは「大系の枠を超えた魔法」か?
魔法による肉体強化を移すのは、大系の枠を超えた魔法になります。
スセラミス派の吸血鬼たちが「魔法使いをさらってきて」奪わなければならなかったのは、これが簡単ではなかったためです。
ただ、相似大系の《原型の化身》のおかげで、このハードルはまったく超え得ないものではありませんでした。
(13-11)「最後の魔法使い」はどうやって仁を時間跳躍をさせたのか?またメイゼルはどうやって時間跳躍をしたのか?
《最後の魔法使い》は、”未来”に対して干渉できないという再演大系の基本ルールを、ほんの数分ぶんだけ破って仁を「自分の死より未来」に飛ばしました。
最後に会った《最後の魔法使い》は、死の数分前の姿です。
ちょっとややこしい手順なので、設定上の事柄の流れを整理して書いてみます。
①《最後の魔法使い》が、自分のいる世界以外の再演世界が、全滅していることを確認する。《最後の魔法使い》が最後の魔法を使う。
※この魔法によって、仁のいる時代では、アパート階段前に《扉》が出現。
②《最後の魔法使い》死亡。これによって、すべての再演世界で人口がゼロになる。(《本》のラストページの開始)
③人間が誰もいなくなった極遠未来の世界に、舞花の落下が開始。
④仁が「ラストページ」に到着。(①の魔法で発生した《扉》から、この時点に仁が転送された。)
※この時点では、魔法で運ばれてきた仁が、魔法消去を発動していないことに注意。
⑤腕を切断された状態の舞花が、「ラストページ」に転送されてくる。
※舞花に落下してきてもらわないと困るので、仁は魔法消去停止中。
、
⑥仁が魔法消去を発動、舞花を殺しにかかる。この段階では、舞花はまだ《増幅器》になっていません。
※《増幅器》にまだなっていないのは、再演大系が《本》のページの上(時間の正常に流れている場所)を操作する魔法だからです。ページ外での操作が可能なら、仁を「ラストページ」に到着させないよう遮断できました。
⑦最後の”揺れ”が発生。神人遺物の大量落下。これによって仁の感覚が妨害されて、その隙に舞花は《増幅器》として完成する。
※遺物の大量落下がこのタイミングだったのは、時間の辻褄を合わせるための再演秩序の干渉です。この期に及んで、これの発生を読みきれず舞花を《増幅器》にせず殺しきれると思っている様子だったので、仁は妹に笑われました。
⑧仁vs舞花の戦闘。
⑨《増幅器》の破壊。
※神人遺物がすべて破壊され、再演魔導師たちが遠大な時間で負荷をかけてきた再演秩序の、ひずみが解消される。「ラストページ」の引力が完全に消失。
⑩仁の死亡。全時間軸での人類絶滅。
このタイミングで、人間の存在そのものを自然力として織り込んでいる再演秩序は、矛盾をきたして緩む。
という流れになっています。
メイゼルの時間跳躍は、あまり余韻をぶち壊すのもなんなので、設定的にはこの流れと衝突しない理屈で行われているというだけに留めておきます。
■□ 以上
※番外(深遊さんblogエントリより)
Q:担当さんに止められた専任係官どんなキャラだったのかすごく気になる。
あとベルニッチの《理想の化身》についてkwsk
A:止められた専任係官は、本編に登場した某キャラクタのお兄さんです。ダメな方向に完成度が高かったのが、鬼門だった模様です。
ベルニッチの《理想の化身》は、本人が恥ずかしがって使いませんでした。《理想の化身》は、術者自身の理想の姿に生命を与える魔法なのです。
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