歌舞伎町の売春客待ち、初犯9割 ホストや地下アイドルで借金
2023.10.7
東京・歌舞伎町の大久保公園周辺で売春のための客待ちをする女性が増えている。ホストクラブやメンズ地下アイドルなどにはまった末の借金返済や遊興費を稼ぐ目的が多く、9月に逮捕された女性の約7割が20代で、初犯が約9割を占めた。警視庁は取り締まりを強めるとともに、昨年から専門相談員も置き、社会復帰に向けた支援にも力を入れている。
7月の金曜日。まだ明るい午後5時ごろ、公園周辺には既に数人の女性が立っていた。売春1回の相場は1万5千円前後とされる。女性を眺めていた男性が声をかけ、しばらくすると2人で近くのホテル街に向かっていった。
こうした客待ち行為は「立ちんぼ」と呼ばれる。大久保公園周辺は以前から多い場所だったが、新型コロナウイルス禍での行動制限が緩和された上、客待ちの様子の動画が交流サイト(SNS)で拡散されたことで訪れる女性と客が増えたとみられる。
捜査関係者によると、栃木、千葉、埼玉、神奈川といった関東圏から通う女性も多く、捜査員は「1日5回客をとる女性もいた」と話す。逮捕者数は、2019~22年の4年間は53人、23人、34人、51人と推移したが、23年は1~9月で既に80人に上った。こうした客待ち行為は売春防止法違反に当たり、6月以下の懲役または1万円以下の罰金を科される。
警視庁は釈放時に福祉制度を紹介する活動にも力を入れる。専門相談員の菊地恵美子さん(65)はこれまでに数十人の女性を支援した。釈放前に警察施設内で約30分面談して、就労支援や生活保護に関する自治体窓口を紹介する。実際に窓口まで同行することもある。
菊地さんによると、家庭や人間関係に悩んでホストなどにのめり込み、売春に手を染めてしまうケースが多い。過去には多額のツケを回収しようとするホストが売春を勧めたケースもあった。逮捕でわれに返る女性は多く、面談で「もう歌舞伎町に近づかない」と泣いたり「逮捕されてよかった」と安心したりする女性もいるという。
望まない妊娠を招き、父親が誰かすら分からず中絶した女性もいた。菊地さんは「売春をした過去に将来苦しむこともある。一人でも減ってほしい」と願っている。