旧統一教会問題第一人者が語る「空白の30年」 なぜ日本で対カルトの法律ができなかったのか
銃撃事件が起きる2年ほど前、私は、雑誌『中外日報』に「後を絶たない『カルト被害』」と題したコラムを寄稿しました。オウム真理教による地下鉄サリン事件から25年が経過しているにもかかわらず、カルト宗教による被害がまだ続いていることと、被害者の救済対策が今なお不十分であることを強く主張したのです。記事の一部を抜粋して引用しましょう。
安倍元首相銃撃事件について、後日警察から、容疑者(当時)の犯行動機が「統一教会への恨み」に端を発するものであったと公表されました。まさに、「日本の未来に託された課題」が解決されないまま、危惧していたことが現実になってしまったのです。
国もメディアも動いてくれなかった「空白の30年」
銃撃事件から遡ること30年――1992年に統一教会が主催する合同結婚式や、霊感商法がクローズアップされたことがありました。それ以来、統一教会が社会の表舞台に登場することはありませんでした。しかし、私や、カルト被害者の救済に取り組む同志たちは、その後も統一教会による被害が続いているということ、そして、その対策を講じる必要があるということを、さんざん訴えてきました。
それにもかかわらず、国は動いてくれませんでした。メディアも、なかなか取り上げようとはしてくれませんでした。こうして、ずっと野放しにされてきた結果、「空白の30年」が生まれ、元首相が銃撃されるという非常にショッキングな事件を引き起こすきっかけとなってしまったのです。
もしも空白の30年がなかったら、事件の発生を未然に防ぐことができたと断言はできませんが、可能性を小さくすることはできたのではないかと思います。少なくとも、霊感商法等で金銭を収奪される被害者や、生まれたときから生き方や考え方を強要される宗教2世(両親がカルト宗教の信者)の数を大きく減らすことはできたでしょう。統一教会のみならず、カルト宗教や自己啓発セミナーなどのカルト的な団体に苦しめられる人を少なくすることができたはずです。
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