フランス「40年前の統一教会事件」が社会を変えた 日本とは大違い「カルト規制」の厳しい中身
フランス人のクリスチャン・グラベル氏は、最近の日本での旧統一協会(世界平和統一家庭連合)に関する話を聞いた時、40年前にフランスで起きた事件を思い出した。「カルトの危険性がフランス国民に初めて広く知れ渡ったのは、統一教会がきっかけだった」(グラベル氏)からだ。
グラベル氏はフランス警察庁で、官僚60人からなる「犯罪・過激化・セクト的逸脱行為の防止に関する省庁間委員会(CIPDR)」を率いている。同氏はまた、カルト的逸脱行為を担当する内部部局である「カルト的逸脱行為関係省庁警戒対策本部(MIVILUDES)」のトップでもある。つまり、この問題に関してはフランス政府内の最重要人物だ。
フランス人が釘付けになった「事件」
1982年3月、フランス国民はクレール・シャトーというフランス人女性の報道に釘付けとなった。当時21歳で熱心な統一教会信者だったシャトーさんが、彼女を脱会させようと必死に試みていた(彼女の両親と兄弟を含む)7人によって誘拐されたのだ。
シャトーさんは自由意思を持っていることが示されたため、フランスの裁判所は彼女を解放し、彼女を誘拐した家族らを罪に問わざるを得なかった。解放されたシャトーさんは統一教会に復帰し、(当初は両親含む)誘拐者たちを訴えた。裁判により彼女は被害者となったので、誘拐は統一教会信者のイメージにとって「すばらしい機会」となったとさえ主張したのだ。
この事件は世間を二分した。シャトーさんの信じたいものを信じる権利を擁護する者もいれば、娘の精神状態を心配する両親を擁護する者もいた。事件を担当した裁判官でさえ世論に引き裂かれたように見えた。
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