生き残り仔実装
命からがら逃げ延びた仔実装
「テヒィ…、テヒィィ…。」
家族や仲間達を殺したあの怖いヤツは追っては来ないようだ
「た、助かったテチ…?でもなんか背中が痛いテチ…。」
仔実装の背には小さな水晶の破片が突き刺さっているが、仔実装にはそれが見えない
「テェェェ…、それよりも外は寒いテチ。このままだと凍え死んでしまうテチ。」
周りを見ると道路脇に自販機が何台か設置されている
寒さもいけないが、仔実装がたった一匹でいるのも危険極まりない状況だ
一刻も早く身を隠したかった仔実装は自販機の後ろへと潜り込んだ
自販機が稼動しているせいか、そこは思いのほか暖かかった
仔実装はこの場所でとにかく体を癒そうと横になる
「テェ…。何でこんなことになったテチ?ワタチだけでどうすればいいテチ…?」
今は亡き親実装の温もりを仔実装は思い返していた
「ママ…、助けて…テチィ…。」
そこで意識は眠りに落ちた
1日目翌朝、仔実装はあまりの空腹感に目が覚めた傷と体力の回復は出来たが
胃袋の中はスッカラカンだ
背中の水晶もいつの間にか消え失せていたが仔実装はそのことを知る由も無い
「…テェ、おなか減ったテチュ…。」
周りの様子を伺いながら自販機の裏から出ると
すぐ側にコンビニがあったコンビニの店先では若者が二人、
菓子をつまみながら談笑している
「ニンゲンサンは怖いテチ。でもおなかペコペコテチ…。」
食欲旺盛な実装石にとって餓えはあまりに耐え難いとは言え小さな自分一匹では食料の確保は難しい
仕方なく仔実装は若者達に菓子を分けて貰うべく媚びてみた
「テッチュ~ン♪ニンゲンサン、カワイイワタチにお菓子を貢ぐテチ♪」
「はぁ?何コイツwバカw?」「珍しいじゃん、クソガキ一匹なんて。」
「ちょ、ムカつくんすけどw」「服剥いでからかってやっか。」
そう言って一人が仔実装を抓み上げ服を脱がし始めた
「テチィィッ!?ナ、ナニするテチュー!!」
服を奪われまいと仔実装は必死に暴れるが抵抗虚しくあっさり裸に剥かれてしまった
「!?うわっ、なんだよコイツっ!?」
裸になった仔実装の体には紫色の筋模様が全身に浮かび上っていた若者は思わず仔実装を投げ捨てる
「チュベッ?!」
「キモ!何コレ、なんかの病気じゃねぇだろーな?」「手、洗った方がいいんじゃね?ちょ、さわんなよ!」
慌てた様子で若者達は食べかけの菓子もそのままにしてどこかへ走り去る
運良く食料を手に入れた仔実装だがそれよりも自身の異変に動揺していた
「…なんテチ、コレは?ワタチは一体…?」
3日目
手に入れた菓子が尽きた仔実装は朝早くに起きて食料の調達に出掛けた
昨日のうちに拾っておいた紙袋を被り、手には自衛の爪楊枝
記憶が確かならば今日は人間のゴミが道路に積み上げられる日だ
「テチュ~ん♪宝の山テチュー♪」
早速、仔実装はゴミ袋の山に向かおうとする
しかし別の野良の親仔実装がゴミの山に近づいていったので
仔実装は仕方なく離れたところから様子を窺うことにした
「蛆チャンは、ここで待ってるテチュ。」
「わかったレフ~♪」
蛆に待つように言い野良親仔はゴミ漁りを開始した
「…蛆チャン、…おいしそうテチュ…。」
(!?ワタチ、今何を…!?)
仔実装は自身から出た言葉に驚愕した
ボスによってある程度、規律が守られていた公園で育った仔実装には
同属喰いなど考えたことも無かったのだ
しかしその驚きとは裏腹に、足は勝手に蛆の方へと進んでいく
「レフ?何レフ、コレ…。ッ!?」
足元で不思議そうに見上げる蛆を見た瞬間、仔実装の理性は崩れた
すばやく蛆を紙袋に引き入れ、首をへし折ると仔実装はその場を走り去った
「蛆チャン?蛆チャァァァン!?」
遠くから聞こえてきた声に仔実装は理性を取り戻す
ここはあの自販機の裏、手には屍と化した蛆
「ワ、ワタチはなんてコトを…。」
仔実装は自分の行いにただ恐怖するしかなかった